(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】切断体及び食品切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/26 20060101AFI20230328BHJP
A23N 15/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
B26D3/26 602C
B26D3/26 602B
B26D3/26 602A
A23N15/00 Z
(21)【出願番号】P 2019030446
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】森 祐樹子
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-107995(JP,U)
【文献】特開2001-103946(JP,A)
【文献】特開昭57-079873(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0032544(KR,A)
【文献】特開2015-160291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/26
A23N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品切断装置の回転部に取り付けられて使用される切断体であって、
前記回転部に取り付けられ、前記回転部とともに回転する回転部材と、
この回転部材に設けられ、食品を切断する平刃と、
前記回転部材にそれぞれ着脱可能に設けられ、前記平刃による切断に先立って食品を切断する複数の縦刃とを備え
、
前記回転部材は、前記縦刃の刃先の向きを設定する機能を持った複数の挿入孔部を有し、
前記縦刃は、刃部材と、この刃部材を支持する基台とを有し、前記挿入孔部への前記基台の挿入によって前記刃部材の刃先の向きが設定される
ことを特徴とする切断体。
【請求項2】
複数の縦刃は、食品への切断開始タイミングがずれるように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の切断体。
【請求項3】
複数の挿入孔部はすべて同一形状であり、かつ、複数の縦刃もすべて同一形状である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の切断体。
【請求項4】
複数の縦刃を回転部材に押え付ける押え手段を備え、
前記押え手段は、
弾性変形可能な
細長板状の弾性部材と、
この弾性部材を介して前記複数の縦刃を
まとめて同時に前記回転部材に押え付ける
細長板状の押え部材とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の切断体。
【請求項5】
回転部を有する装置本体と、
前記回転部に取り付けられて使用される請求項1ないし4のいずれか一記載の切断体と
を備えることを特徴とする食品切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を切断する切断体及び食品切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された食品切断装置(野菜切機)が知られている。
【0003】
この従来の食品切断装置(野菜切機)は、食品を切断するくし刃を備え、このくし刃は、ステンレス製の板状の複数の刃と、合成樹脂製の基台と、ステンレス製の棒状の挿通体とを有している。また、各刃は、下部に埋没部を有し、この埋没部には孔が形成されている。
【0004】
そして、複数の刃は、埋没部の孔に1本の挿通体が挿通された状態で、その埋没部が挿通体とともに基台内に一体的に埋設固定されている。それゆえ、このようなくし刃は、比較的に高い強度を有しており、耐久性が良好であるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、複数の刃のうち例えば1枚の刃だけが切れ味が悪くなり、それを交換する必要が生じた場合であっても、複数の刃を有するくし刃全体を交換しなければならない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、交換が必要な縦刃のみを交換できる切断体及び食品切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の切断体は、食品切断装置の回転部に取り付けられて使用される切断体であって、前記回転部に取り付けられ、前記回転部とともに回転する回転部材と、この回転部材に設けられ、食品を切断する平刃と、前記回転部材にそれぞれ着脱可能に設けられ、前記平刃による切断に先立って食品を切断する複数の縦刃とを備えるものである。
【0009】
請求項2記載の切断体は、請求項1記載の切断体において、複数の縦刃は、食品への切断開始タイミングがずれるように配置されているものである。
【0010】
請求項3記載の切断体は、請求項1又は2記載の切断体において、回転部材は、縦刃が挿脱可能に挿入される複数の挿入孔部を有し、前記縦刃は、前記挿入孔部への挿入によって刃先の向きが設定されるものである。
【0011】
請求項4記載の切断体は、請求項1ないし3のいずれか一記載の切断体において、複数の縦刃を回転部材に押え付ける押え手段を備え、前記押え手段は、弾性変形可能な弾性部材と、この弾性部材を介して前記複数の縦刃を前記回転部材に押え付ける押え部材とを有するものである。
【0012】
請求項5記載の食品切断装置は、回転部を有する装置本体と、前記回転部に取り付けられて使用される請求項1ないし4のいずれか一記載の切断体とを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、交換が必要な縦刃のみを交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る切断体の正面図(表面側の図)である。
【
図4】同上切断体(縦刃及び押え手段を取り外した状態)の背面図(裏面側の図)である。
【
図5】(a)及び(b)は縦刃(単一刃)を示す図である。
【
図6】(a)は弾性板を示す図で、(b)は押え板を示す図である。
【
図7】同上切断体を具備する食品切断装置の斜視図である。
【
図8】(a)同上切断体の複数の縦刃の切断開始タイミングを説明する説明図で、(b)は比較例における切断開始タイミングを説明する説明図である。
【
図9】複数の縦刃を直線上に配置する構成を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図7において、1は食品切断装置で、この食品切断装置1は、例えば給食センター等において、野菜等の食品(食材)を大量に連続的に切断するための業務用のフードスライサーである。
【0017】
この
図7に示す食品切断装置1は、モータ等の駆動手段(図示せず)からの動力により所定方向に回転する回転部である回転軸2を有する装置本体3と、この装置本体3の回転軸2に着脱可能に取り付けられて使用される切断体5とを備えている。
【0018】
この切断体5は、食品を短冊状に切断する円板状の短冊切り用のカッタープレートである。つまり、この図示した切断体5は、所望する短冊状の食品を得るための短冊切りプレートであるが、例えば短冊切り以外の輪切りや千切り等の切断処理を行う場合には、当該短冊切りプレートを回転軸2から取り外して、図示しない他の輪切りプレートや千切りプレート等のカッタープレートを回転軸2に取り付ける。
【0019】
装置本体3は、被切断物である食品を前面部(切断体5と対向する対向面部)6の開口部7に向けて搬送する搬送手段8を有している。搬送手段8は、例えば下側の送りコンベヤ9と上側の押えコンベヤ(図示せず)とによって食品を上下から挟持しながら搬送方向に搬送するものである。なお、送りコンベヤ9は、食品を載置面16に載せて搬送する無端状の搬送ベルト17を有している。
【0020】
また、装置本体3は、回転軸2に取り付けられた切断体5を覆う回動可能な開閉カバー10を有している。開閉カバー10は、前面部6の一方の側端部にヒンジ(図示せず)を介して回動可能に取り付けられており、当該開閉カバー10は、開方向への回動により開状態となって切断体5を露出させ、閉方向への回動により閉状態となって切断体5を覆う。この開閉カバー10の下部には、切断体5によって切断された切断後の食品(所望の短冊状の食品)を収納容器(図示せず)に向けて落下させるための食品落下用の開口部10aが形成されている。
【0021】
切断体(短冊切りプレート)5は、
図1ないし
図4にも示すように、装置本体3の回転軸2に着脱可能に取り付けられ、この回転軸2とともに回転する円板状の回転部材である回転板11と、この回転板11にそれぞれ着脱可能に設けられ、食品を切断する一対の平刃12と、回転板11にそれぞれ着脱可能に設けられ、対応する平刃12による切断に先立ってその直前に食品を切断する複数の縦刃(すべて同一形状の単一刃)13とを備えている。
【0022】
この図示した例では、回転板11の中心部を挟んで両側にそれぞれ位置した1枚の平刃12に対して、複数である所定数(例えば7つ)の縦刃13が一列状になって平刃12の刃先12aの近傍位置にそれぞれ個別に取り外し可能に設けられている。つまり、各平刃12ごとに、2以上の所定数の縦刃13からなる縦刃群15が対応する平刃12の刃先12aの近傍位置(回転方向前方の近傍位置)に配置されている。
【0023】
なお、1つの平刃12に対応する1つの縦刃群15を構成する縦刃(単一刃)13の数は、図示した例では「7つ」であるが、これには限定されず、所望する短冊状の食品(短冊)の幅に応じてその数が決まる。また、その数によって一列状に限らず、複列状にもなる。このため、例えば短冊の幅に応じた複数種類の回転板11が必要となる。ただし、短冊の幅によっては1つの回転板11で複数の幅に対応可能な構成とすることも可能である。
【0024】
回転板11は、装置本体3の前面部6と対向する側である内側の面に表面部21を有し、かつ、装置本体3の開閉カバー10と対向する側である外側の面に裏面部22を有している。表面部21は、搬送手段8によって搬送されてくる食品が当接する面(食品当接面)である。
【0025】
また、回転板11は、中心部に軸取付部23を有し、この軸取付部23は、装置本体3の前面部6から突出した回転軸2に着脱可能に取り付けられる。回転板11は、軸取付部23を中心として対をなす2つの長手状の食品通過用の開口部24を有し、この食品通過用の開口部24は細長板状の平刃12によって表面部21側から覆われている。
【0026】
さらに、回転板11は、縦刃13の数と同じ数である複数の挿入孔部26を有し、この各挿入孔部26に縦刃13が挿脱可能(挿入出可能)に挿入されている。そして、各挿入孔部26は、縦刃13の刃先13aの向きを設定する機能(縦刃の方向付け機能)を持ったもので、縦刃13が挿入孔部26に嵌合挿入(嵌入)されるだけでその刃先13aの向きが設定される。
【0027】
挿入孔部26は、表面部21側に位置する真円状の小孔(第1孔)27と、裏面部22側に位置する長円状の大孔(第2孔)28とを有している。この大孔28は、小孔27に連続して繋がった小孔部分と、この小孔部分の中心から一定の長さ離れた位置を中心にして当該小孔部分と同じ円状をなす膨出部分とを外径にして描かれた長円状のものである。そして、この大孔28は、長円状の外径となる小孔部分の中心を基点として当該小孔部分と同じ円状をなす膨出部分の中心を通過する直線方向と、縦刃13の刃先13aが向く方向とを同じとし、かつその方向に向かって延在するように、小孔27よりも大きく形成されている(
図3等を参照)。それゆえ、挿入孔部26のうち、大孔28の延在部分に臨んだ面には、縦刃13を所定位置に位置決めする受け面29が形成されている。なお、回転板11の外周部の2箇所には把持用の孔部30が形成され、作業者はその孔部30に指を入れて回転板11を持つことが可能である。
【0028】
平刃12は、回転方向前端に細長い緩やかな円弧状の刃先12aを有した長手状で板状をなすもので、長手方向一端部が回転板の表面部の外周部に取付具(ボルト等)31で取り付けられ、かつ、長手方向他端部が回転板の表面部の中心部に取付具(ボルト等)32で取り付けられている。このため、平刃12は、食品の切断時に平刃自身が波打つようなことがなく、刃先12aのどの位置でも食品を一定の厚さに切断できる。また、平刃12の刃先12aは、回転板11の回転方向に向かって凸の円弧状(湾曲状)に形成されている。平刃12は、例えばステンレス等の金属製のものである。
【0029】
縦刃13は、例えば平刃12と同じステンレス等の金属製の板状の刃部材である刃板41を金型内に挿入した後、当該金型内に樹脂を注入して刃板41と樹脂とを一体化したインサート成形品である。つまり、縦刃13は、
図5(a)及び(b)に示すように、帯状をなす金属製の刃板41と、この刃板41に固着された樹脂製の基台42とを有している。
【0030】
刃板41は、短手方向一端側に細帯状で断面三角状をなす片刃状の刃先部43を有し、この刃先部43の先端縁が直線状の刃先13aとなっている。また、刃板41は、基台42内に埋設固定された埋設部46と、基台42外に露出して位置する露出部47とを有している。
【0031】
埋設部46には、刃板41が基台42から抜け出ないようにするための抜止め用の孔48及び切欠き49が形成され、これら孔48及び切欠き49には樹脂が入り込んで固定されている。また、露出部47の高さ寸法(図中のH)は、所望する短冊状の食品の大きさに応じた値であり、例えば3mm、6mm、10mm等である。露出部47の上端面(刃板41の露出側の長手方向端面)は、刃先13a側ほど上方に位置するように傾斜している。また、刃板41の厚さ寸法(図中のT)は、例えば0.8mmである。
【0032】
基台42は、回転板11の挿入孔部26の小孔27に挿入(嵌入)される断面真円状の小部分(第1部分)51と、小孔27に連通した大孔28に挿入(嵌入)される断面長円状の大部分(第2部分)52とを有し、刃板41の埋設部46は、基台42の小部分51内を貫通し、大部分52の下部近傍まで埋設されているとともに、小部分51の平面視略中心に配置され、基台42の下側の大部分52は、刃板41の刃先(縦刃の刃先)13aが向く方向に向かって延在(突出)するように、上側の小部分51よりも大きく形成されている。それゆえ、この大部分52の延在部分の上面には、挿入孔部26の受け面29に当接する当接面53が形成されている。なお、小部分51の上面である平面54は、回転板11の表面部21と同一面となる。
【0033】
そして、縦刃13を回転板11に取り付ける際には、縦刃13の基台42を回転板11の裏面部22側から挿入孔部26に嵌入する。すると、基台42の小部分51が挿入孔部26の小孔27に嵌入されるとともに、基台42の大部分52が挿入孔部26の大孔28に嵌入され、かつ、基台42の当接面53が挿入孔部26の受け面29に当接することにより、縦刃13は、刃板41の刃先13aの向き(図中の方向a)が所望方向に向いた状態となって回転板11に対して位置決めされる。
【0034】
つまり、縦刃13が回転板11に位置決めされて取り付けられた状態では、2つの各縦刃群15を構成する複数(例えば7つ)の縦刃13の刃先13aの向きは、それぞれ異なっている。換言すると、軸取付部23を中心に回転する回転板11に取り付けられた各縦刃13の刃先13aの向きは、所定の位置(高さ)を通過する際に真下を向くようになっている。
【0035】
また、切断体5は、回転板11の挿入孔部26への挿入によって刃先13aの向きがそれぞれ異なる所望方向に設定された状態の複数の縦刃(各縦刃群を構成する複数の縦刃)13を回転板11に固定的に押え付ける押え手段56を備えている。つまり、切断体5は、回転板11の周方向に180°間隔で位置した2つの縦刃群15のうちの一方の縦刃群15を構成する複数の縦刃13をまとめて同時に回転板11に押え付ける一方の押え手段56と、他方の縦刃群15を構成する複数の縦刃13をまとめて同時に回転板11に押え付ける他方の押え手段56とを備えている。
【0036】
押え手段56は、弾性変形可能な細長板状の弾性部材である弾性板57と、この弾性板57を介して縦刃群15の複数の縦刃13をまとめて同時に回転板11の挿入孔部26の受け面29に押え付ける細長板状の押え部材である押え板58とを有している。
【0037】
弾性板57は、
図6(a)に示すように、平刃12の円弧状の刃先12aに対応した円弧状の細長板状をなす弾性変形可能な樹脂製又はゴム製のもので、この弾性板57の複数箇所(例えば4箇所)にはボルト挿通用の切欠き59が形成されている。なお、弾性板57は、例えばシリコンシートである。
【0038】
押え板58は、
図6(b)に示すように、平刃12の円弧状の刃先12aに対応した円弧状の細長板状をなす金属製のもので、この押え板(金属板)58の複数箇所(例えば6箇所)にはボルト挿通用の孔60が形成されている。また、押え板58は、円弧状で細長い平板部61と、この平板部61の外周部に突設され、弾性板57を収納可能な収納空間63を形成する環状突部62とを有している。なお、この環状突部62は、回転板11の裏面部22に密着するため、押え板58の内側の収納空間63には切り滓やゴミ等の雑物が入り込まない(
図3参照)。
【0039】
そして、押え板58の収納空間63に弾性板57を収納した状態で、取付具65を用いて、その押え板58を回転板11の裏面部22に取り付けると、複数の縦刃13は、押え板58によって弾性板57を介して回転板11の挿入孔部26の受け面29に押え付けられて固定される。
【0040】
取付具65は、例えばボルト66、ナット67及びワッシャ68からなるものである。そして、ボルト66は、回転板11のボルト挿通用の孔70と、弾性板57のボルト挿通用の切欠き59と、押え板58のボルト挿通用の孔60とに挿通され、その先端側にワッシャ68及びナット67が装着される。ただし、押え板58の長手方向両端部では、弾性板57の切欠き59は存在せず、ボルト66は回転板11及び押え板58の各孔60,70に挿通される。
【0041】
なお、取付具65は、このようなボルト止めには限定されず、押え板58を回転板11に着脱可能に取り付けるものであれば任意であり、例えばピン止めや、嵌め込み等の構成でもよい。
【0042】
また、切断体5では、各縦刃群15を構成する複数(例えば7つ)の縦刃13は、食品への切断開始タイミングがずれるように(言い換えると、2つ以上の縦刃13が同時に食品への切断を開始しないように)、それぞれが回転板11の軸芯からの一放射線上とは異なる位置に配置されている。
【0043】
具体的には、複数の縦刃(縦刃群15の各縦刃13の刃板41)13は、回転板11の回転中心(軸芯)P1を通る径方向に沿った直線L1上ではなく、回転板11の回転中心P1とは異なる円弧中心P2を中心とする曲率半径Rの円弧状の曲線(平刃の刃先に沿った曲線)L2上において、互いに間隔(略等間隔)をおいて配置されている(
図8参照)。
【0044】
すなわち、
図8(b)に示す比較例の構成は、複数の縦刃13が直線L1上に配置された構成である。この場合には、それら縦刃13のうち、複数、すなわち例えば互いに隣り合う2つの縦刃13が同時に食品(例えば円柱状をなす断面円形状の人参等の野菜)への切断を開始する。
【0045】
それゆえ、このとき、当該2つの縦刃13の刃板41の各対向面は、食品から比較的大きな負荷を受ける。つまり、互いに隣り合って離間対向する2つの縦刃13の刃板41が人参等の食品を同時に切断し始めた場合には、それら縦刃13の両刃板41間に挟まれた部分の食品は、両刃板41の厚さ寸法に対応した圧縮力(比較的大きな力)を両側から受けながら切断されるため、両刃板41の各対向面には当該食品から比較的大きな負荷を受けることになる(なお、次に説明する実施例では食品はそのような両側からの圧縮力を受けない)。
【0046】
これに対し、
図8(a)に示す実施例(本実施形態)の構成は、複数の縦刃13が曲線L2上に配置された構成である。この場合には、1つ1つの各縦刃13がそれぞれ異なるタイミングで回転板11の中心部側から外周部側へ向かって順番に食品への切断を開始する。
【0047】
それゆえ、前記比較例の場合に比べて、縦刃13の刃板41が食品から受ける負荷は小さい。その結果、実施例における縦刃13は、比較例に比べて耐久性が良好である。
【0048】
なお、平刃12に関しても、その刃先12aは、縦刃13の並び方向である曲線L2に沿った円弧状(湾曲状)に位置するため、食品を斜め切りしていくことで、刃先12aが直線状の場合に比べて、切断時に食品から受ける負荷が小さい。このようなことから、まずは複数の縦刃13が一つの固まりである食品に負担を与えることなく、タイミングをずらして順番に切断していくことになる。そして、各縦刃13の切断に続いて平刃12も順に切断していくことにより、切断後の短冊状の食品の切断面は、亀裂が入ることがなく、きれいな仕上がりとなる。特に、例えば人参等の比較的硬めの野菜(食品)に対して負担がかからないようタイミングをずらして順番に切断していく複数の縦刃13は、有効である。
【0049】
また、
図8(a)からも明らかなように、各縦刃群15を構成する複数(例えば7つ)の縦刃13の刃先13aの向きは、それぞれ異なっている。つまり、各縦刃13の刃先13aの向きに沿った直線(図中のα1~α7)は、互いに平行ではなく、回転板11の中心部側から外周部側に向かって徐々に水平方向に近づくようになっている。また、各直線(図中のα1~α7)と、回転板11の回転中心P1を通る径方向に沿った直線とがなす角度は、すべて90度(略90度を含む)である。これによって、各縦刃13の刃板41は、食品の切断時に負荷の小さい状態で切断を行うこととなる。なお、切断体5を取り付ける食品切断装置1の大きさや食品を切断する能力に合わせて、わずかではあるが、それぞれの所望の向きに設定が行われることもある。そして、このように所望向きに設定された縦刃13で食品が切断される際には、食品は、回転板11の中心部側に引き寄せられにくく、搬送手段8の搬送方向に対して斜めになることが少なく、仕上がりのよい短冊状とすることになる。
【0050】
なお、
図8(a)の如く複数の縦刃13が円弧状の曲線L2上に配置された構成が好ましいが、曲線ではなく直線(略直線を含む)上に配置した構成でもよい。すなわち例えば
図9に示すように、直線A(回転板11の回転中心P1を通る径方向に沿った直線)と平行な直線B(直線Aよりも回転方向前方に位置する直線)上に、複数(例えば7つ)の縦刃13を互いに間隔をおいて並べて配置した構成でもよい。
【0051】
この
図9において、a,b,c,dの各点を通る短線は、回転中心P1を中心として各点が回転したときに描く円弧の接線である。そして、直線B上にある点c、点dでの接線の傾き(水平方向に対する傾斜角度)は異なっており、点c、点dに配置された縦刃13による食品への切断開始タイミングは異なる。他方、直線A上にある点a、点bでの接線の傾き(水平方向に対する傾斜角度)は同じであり、点a、点bに配置された縦刃13による食品への切断開始タイミングは同じになる(比較例)。なお、
図9では、直線B上の縦刃の位置を2つの点c,dで示しているが、直線B上における点c,d間の複数位置に残りの縦刃が配置されている。
【0052】
次に、食品切断装置1の作用等を説明する。
【0053】
作業者が食品を搬送手段8へ投入すると、食品は、搬送手段8によって搬送方向に搬送されながら、所定方向へ回転中の切断体5によって短冊状に連続的に切断される。
【0054】
すなわち、食品は、搬送方向への搬送によって回転板11の表面部21に当接し、縦刃群15を構成する複数の縦刃13によって当該各縦刃13の刃板41での切断開始タイミングが異なり、負担の少ない状態で縦方向(搬送方向に沿った方向)に切断され、その切断の直後に、平刃12によって横方向(搬送方向に対して直交する方向)に切断されて、所望の短冊状となる。
【0055】
そして、所望の短冊状となった食品は、
図3の点線矢印に示すように、回転板11の開口部24を通過した後、開閉カバー10の開口部10aから落下して、図示しない収納容器内に収納される。
【0056】
ここで、複数の縦刃13のうち、例えば1つの縦刃13の刃板41だけに不具合(例えば切れ味が悪くなる、変形する等)が生じた場合には、押え手段56を回転板11から一旦取り外して、交換が必要な1つの縦刃13だけを新品に交換すればよい。
【0057】
このように、上記食品切断装置1によれば、各縦刃群15を構成する複数の縦刃13が回転板11の挿入孔部26にそれぞれ個別に着脱可能に取り付けられているため、交換が必要な縦刃13のみを個別に交換することができ、よって、交換コストの低減を図ることができる。
【0058】
そして、回転板11に形成されているすべての挿入孔部26の形状、およびすべての縦刃13の形状を同一としているため、縦刃13の交換に間違えが生じることなく容易に行うことができる。
【0059】
また、複数の縦刃13は、食品への切断開始タイミングがずれるように回転板11に配置されているため、食品の切断時に各縦刃13の刃板(刃部)41が食品から受ける負荷が小さく、よって、縦刃13の耐久性の向上を図ることができる。
【0060】
さらに、複数の縦刃13は、回転板11の挿入孔部26に挿入するだけで、各縦刃13の刃板41の刃先13aの向きを互いに異なる所望方向に容易に設定することができる。
【0061】
また、複数の縦刃13を回転板11に押え付ける押え手段56を備えるため、この押え手段56によって複数の縦刃13をまとめて同時に回転板11に対して適切に固定できる。
【0062】
さらに、押え手段56は、弾性変形可能な弾性板57と、この弾性板57を介して複数の縦刃13を回転板11に押え付ける押え板58とを有するので、例えば縦刃13の刃板41へ無理な負荷が掛かった際に、弾性板57の弾性変形によりその負荷を抑制できる。
【0063】
なお、食品切断装置1は、モータ等の駆動手段からの動力で回転する回転部を有する構成には限定されず、例えば作業者の人力で回転する回転部を有する手動式のものでもよい。
【0064】
また、切断体(短冊切りプレート)5は、1枚の平刃12とそれに対応する1つの縦刃群15とからなる短冊切りの食品切断部を2つ備えた構成には限定されず、例えば食品切断部を1つのみ備えた構成や、食品切断部を3つ以上備えた構成でもよい。
【0065】
さらに、切断体5の回転板11の挿入孔部(縦刃挿入孔部)26は、回転板11に孔形成加工を行う場合において、円形の加工が容易であることから、円形状が好ましいが、この円形状には限定されず、例えば角形状でもよい。なお、挿入孔部26を角形状にした場合には、それに対応する縦刃13の基台42も角形状とする。
【0066】
また、基台42と一体化している縦刃13の刃先13aの向きは、基台42の小部分51より延在している大部分52の方へ向けられているが、その反対側(180°)に向くように基台42と一体化させてもよい。そして、この場合、回転板11に形成されている小孔27および大孔28からなる挿入孔部26もそれに対応させて反対側(180°)に向けるようにすればよい。
【符号の説明】
【0067】
1 食品切断装置
2 回転部である回転軸
3 装置本体
5 切断体
11 回転部材である回転板
12 平刃
13 縦刃
26 挿入孔部
56 押え手段
57 弾性部材である弾性板
58 押え部材である押え板