(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】光走査装置、制御装置及び車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
G09G 3/02 20060101AFI20230328BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20230328BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
G09G3/02 A
G02B26/10 C
B60Q1/14 Z
(21)【出願番号】P 2019048248
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近岡 篤彦
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206094(JP,A)
【文献】特開2016-179779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0253609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/02
G02B 26/10
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源からの光を偏向して走査光を生成し、該走査光の光スポットで照射範囲を照射する光偏向器と、前記光源及び前記光偏向器を制御する制御装置とを備える光走査装置であって、
前記制御装置は、
前記照射範囲に生成する映像に対応する映像情報と、前記照射範囲内のマスク領域に係るマスク情報とが入力される情報入力部と、
前記映像情報の映像に対応する画面を構成する複数の画素の各々の輝度を前記映像情報に基づいて設定した中間画像データを生成する中間画像データ生成部と、
前記照射範囲に分布する複数の位置の各々について該位置と中心が該位置にある光スポットの寸法とを対応付けた光スポット情報を保持する光スポット情報保持部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域内に位置する第1光スポットに対応付けられる画素を第1画素として決定する第1画素決定部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域外に位置し、一部が前記マスク領域内に位置する第2光スポットに対応付けられる画素を第2画素として決定する第2画素決定部と、
前記中間画像データにおいて前記第1画素の輝度を所定輝度以下に変更し、前記第2画素の輝度を
、前記中間画像データにおける前記第2画素の輝度と前記所定輝度との中間値に低下させた補正画像データを生成する補正画像データ生成部と、
前記補正画像データに基づいて前記光源及び前記光偏向器を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
光源と、該光源からの光を偏向して走査光を生成し、該走査光の光スポットで照射範囲を照射する光偏向器と、前記光源及び前記光偏向器を制御する制御装置とを備える光走査装置であって、
前記制御装置は、
前記照射範囲に生成する映像に対応する映像情報と、前記照射範囲内のマスク領域に係るマスク情報とが入力される情報入力部と、
前記映像情報の映像に対応する画面を構成する複数の画素の各々の輝度を前記映像情報に基づいて設定した中間画像データを生成する中間画像データ生成部と、
前記照射範囲に分布する複数の位置の各々について該位置と中心が該位置にある光スポットの寸法とを対応付けた光スポット情報を保持する光スポット情報保持部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域内に位置する第1光スポットに対応付けられる画素を第1画素として決定する第1画素決定部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域外に位置し、一部が前記マスク領域内に位置する第2光スポットに対応付けられる画素を第2画素として決定する第2画素決定部と、
前記中間画像データにおいて前記第1画素の輝度を所定輝度以下に変更し、前記第2画素の輝度を前記所定輝
度にした補正画像データを生成する補正画像データ生成部と、
前記補正画像データに基づいて前記光源及び前記光偏向器を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の光走査装置において、
前記所定輝度は、0である輝度であることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記第2画素決定部は、光スポットの寸法についての情報が前記光スポット情報内に含まれていない位置の光スポットの寸法については、前記光スポット情報に含まれている位置の光スポットの寸法から内挿法により算出し、該算出した寸法に基づいて前記第2画素を決定することを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記複数の画素のうち、全部が前記マスク領域外に存在し、一部が前記第2光スポットと重なる第3光スポットに対応付けられる画素を第3画素として決定する第3画素決定部を備え、
前記補正画像データ生成部は、前記第3画素の輝度を前記中間画像データの輝度より増大させて、前記補正画像データを生成することを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
光源と、該光源からの光を偏向して走査光を生成し、該走査光の光スポットで照射範囲を照射する光偏向器とを制御する制御信号を生成する制御装置であって、
前記照射範囲に生成する映像に対応する映像情報と、前記照射範囲内のマスク領域に係るマスク情報とが入力される情報入力部と、
前記映像情報の映像に対応する画面を構成する複数の画素の各々の輝度を前記映像情報に基づいて設定した中間画像データを生成する中間画像データ生成部と、
前記照射範囲に分布する複数の位置の各々について該位置と中心が該位置にある光スポットの寸法とを対応付けた光スポット情報を保持する光スポット情報保持部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域内に位置する第1光スポットに対応付けられる画素を第1画素として決定する第1画素決定部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域外に位置し、一部が前記マスク領域内に位置する第2光スポットに対応付けられる画素を第2画素として決定する第2画素決定部と、
前記中間画像データにおいて前記第1画素の輝度を所定輝度以下に変更し、前記第2画素の輝度を
、前記中間画像データにおける前記第2画素の輝度と前記所定輝度との中間値に低下させた補正画像データを生成する補正画像データ生成部と、
前記補正画像データに基づいて生成した信号を前記制御信号とする制御部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
光源と、該光源からの光を偏向して走査光を生成し、該走査光の光スポットで照射範囲を照射する光偏向器とを制御する制御信号を生成する制御装置であって、
前記照射範囲に生成する映像に対応する映像情報と、前記照射範囲内のマスク領域に係るマスク情報とが入力される情報入力部と、
前記映像情報の映像に対応する画面を構成する複数の画素の各々の輝度を前記映像情報に基づいて設定した中間画像データを生成する中間画像データ生成部と、
前記照射範囲に分布する複数の位置の各々について該位置と中心が該位置にある光スポットの寸法とを対応付けた光スポット情報を保持する光スポット情報保持部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域内に位置する第1光スポットに対応付けられる画素を第1画素として決定する第1画素決定部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域外に位置し、一部が前記マスク領域内に位置する第2光スポットに対応付けられる画素を第2画素として決定する第2画素決定部と、
前記中間画像データにおいて前記第1画素の輝度を所定輝度以下に変更し、前記中間画像データにおいて前記第1画素の輝度を所定輝度以下に変更し、前記第2画素の輝度を前記所定輝
度にした補正画像データを生成する補正画像データ生成部と、
前記補正画像データに基づいて生成した信号を前記制御信号とする制御部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項1~5
のいずれか1項に記載の光走査装置を備えることを特徴とする車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向器の走査光を使用する光走査装置、制御装置及び車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
ADB(Adaptive Driving Beam)を装備する車両用前照灯が知られている。このような車両用前照灯では、車両前方の対向車や歩行者の領域をマスク領域(遮光領域)に設定して、照射光による対向車の運転手等の眩惑を防止する。
【0003】
一方、特許文献1は、光偏向器の走査光で照射範囲を照射する光走査装置を開示する。該光走査装置は、投影画像における画像の歪みを防止するために、所定の補正用変換式を設定し、該補正用変換式により画像データを画素ごとに補正し、補正後の画像データに基づいて光源を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光偏向器から出射される走査光の光スポットは、照射範囲の照射先の位置に応じて寸法が増減する。一般的に、光スポットは、照射範囲の中心では、小さくなり、中心から離れる程、細長くなる。
【0006】
このため、照射範囲の端側に設定されたマスク領域に対して、該マスク領域に中心が位置しない光スポットが、細長の端部においてマスク領域を照射してしまい、本来は暗くするマスク領域が明るくなってしまうということが起きている。
【0007】
特許文献1の光走査装置は、単に、画像データを投影面の形状等に応じて変換しているだけであり、光スポットの寸法増大によるマスク領域の遮光性低減に対処するものではない。
【0008】
本発明の目的は、走査光の光スポットの寸法変化に対処して、マスク領域の遮光性を改善することができる光走査装置、制御装置及び車両用前照灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光走査装置は、
光源と、該光源からの光を偏向して走査光を生成し、該走査光の光スポットで照射範囲を照射する光偏向器と、前記光源及び前記光偏向器を制御する制御装置とを備える光走査装置であって、
前記制御装置は、
前記照射範囲に生成する映像に対応する映像情報と、前記照射範囲内のマスク領域に係るマスク情報とが入力される情報入力部と、
前記映像情報の映像に対応する画面を構成する複数の画素の各々の輝度を前記映像情報に基づいて設定した中間画像データを生成する中間画像データ生成部と、
前記照射範囲に分布する複数の位置の各々について該位置と中心が該位置にある光スポットの寸法とを対応付けた光スポット情報を保持する光スポット情報保持部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域内に位置する第1光スポットに対応付けられる画素を第1画素として決定する第1画素決定部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域外に位置し、一部が前記マスク領域内に位置する第2光スポットに対応付けられる画素を第2画素として決定する第2画素決定部と、
前記中間画像データにおいて前記第1画素の輝度を所定輝度以下に変更し、前記第2画素の輝度を前記所定輝度との中間値に低下させた補正画像データを生成する補正画像データ生成部と、
前記補正画像データに基づいて前記光源及び前記光偏向器を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の光走査装置によれば、第2画素の輝度を所定輝度との中間値に低下させた補正画像データを生成して、補正画像データに基づいて光源及び光偏向器を制御する。これにより、第2光スポットによるマスク領域の照射が抑制されるので、マスク領域の遮光性を改善することができる。
【0011】
好ましくは、本発明の光走査装置において、前記補正画像データ生成部は、前記中間画像データにおいて前記第2画素の輝度を前記所定輝度以下にした補正画像データを生成する。
【0012】
この構成によれば、第2光スポットの輝度が第1光スポットの輝度と同じ所定輝度まで低下するので、マスク領域の遮光性をさらに改善することができる。
【0013】
好ましくは、本発明の光走査装置において、前記所定輝度は、0である輝度である。
【0014】
この構成よれば、0が所定輝度とされる。輝度0に対応する光スポットは、光源を消灯すれば生成できる。したがって、光源の制御を簡単化することができる。
【0015】
好ましくは、本発明の光走査装置において、前記第2画素決定部は、光スポットの寸法についての情報が前記光スポット情報内に含まれていない位置の光スポットの寸法については、前記光スポット情報に含まれている位置の光スポットの寸法から内挿法により算出し、該算出した寸法に基づいて前記第2画素を決定する。
【0016】
この構成によれば、光スポット情報内に、光スポットの寸法についての情報が含まれていない位置の光スポットについても、適切な寸法を算出して、第2画素を決定することができる。
【0017】
好ましくは、本発明の光走査装置は、
前記複数の画素のうち、全部が前記マスク領域外に存在し、一部が前記第2光スポットと重なる第3光スポットに対応付けられる画素を第3画素として決定する第3画素決定部を備え、
前記補正画像データ生成部は、前記第3画素の輝度を前記中間画像データの輝度より増大させて、前記補正画像データを生成する。
【0018】
第2光スポットの輝度の低下により、マスク領域の遮光性は改善できるものの、第2光スポットの中心が位置する照射領域の明るさが低下する。この構成によれば、全部がマスク領域外に存在し、一部が第2光スポットと重なる第3光スポットに対応付けられる第3画素の輝度が増大された補正画像データが生成される。これにより、マスク領域に隣接して、第2光スポットの輝度の低下による暗くなってしまった隣接領域の明るさを補償することができる。
【0019】
本発明の制御装置は、
光源と、該光源からの光を偏向して走査光を生成し、該走査光の光スポットで照射範囲を照射する光偏向器とを制御する制御信号を生成する制御装置であって、
前記照射範囲に生成する映像に対応する映像情報と、前記照射範囲内のマスク領域に係るマスク情報とが入力される情報入力部と、
前記映像情報の映像に対応する画面を構成する複数の画素の各々の輝度を前記映像情報に基づいて設定した中間画像データを生成する中間画像データ生成部と、
前記照射範囲に分布する複数の位置の各々について該位置と中心が該位置にある光スポットの寸法とを対応付けた光スポット情報を保持する光スポット情報保持部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域内に位置する第1光スポットに対応付けられる画素を第1画素として決定する第1画素決定部と、
前記複数の画素のうち、中心が前記マスク領域外に位置し、一部が前記マスク領域内に位置する第2光スポットに対応付けられる画素を第2画素として決定する第2画素決定部と、
前記中間画像データにおいて前記第1画素の輝度を所定輝度以下に変更し、前記第2画素の輝度を前記所定輝度との中間値に低下させた補正画像データを生成する補正画像データ生成部と、
前記補正画像データに基づいて生成した信号を前記制御信号とする制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の制御装置によれば、第2画素の輝度を所定輝度との中間値に低下させた補正画像データを生成して、補正画像データに基づいて光源及び光偏向器を制御する。これにより、第2光スポットによるマスク領域の照射が抑制されるので、マスク領域の遮光性を改善することができる。
【0021】
本発明の車両用前照灯は、前記光走査装置を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の車両用前照灯によれば、第2画素の輝度を所定輝度との中間値に低下させた補正画像データを生成して、補正画像データに基づいて光源及び光偏向器を制御する。これにより、第2光スポットによるマスク領域の照射が抑制されるので、マスク領域の遮光性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図5】光スポットについて照射範囲における位置と寸法との関係を示す図。
【
図6】光偏向器のミラー部の横方向回動角とマスク領域の左端(破線)及び右端(実線)の位置との関係を示すグラフ。
【
図7】光スポットの寸法補正を実施しないときと実施するときとのマスク領域の輝度分布の対比図。
【
図8】光スポットの寸法補正を実施しないときと実施するときとで光スポットの点灯及び消灯の切替態様を対比した図。
【
図10】制御装置が実施するマスク位置補正付き制御のフローチャート。
【
図11】複数の光走査装置を備える前照灯の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[車両用前照灯]
図1は、前照灯1の模式図である。前照灯1は、車両用前照灯として車両の前部の左右に装備される。説明の便宜上、
図2には、前照灯1からの出射光に対峙する位置に仮想スクリーン2が配置されている。仮想スクリーン2は、前照灯1から所定距離、離れた場所に、鉛直に起立したものを想定している。
【0025】
前照灯1の実際の照射範囲は、仮想スクリーン2上ではなく、前照灯1から見て仮想スクリーン2より遠方に投影される。しかしながら、仮想スクリーン2との照射範囲と実際の照射範囲とに別々の座標系を設定しても、前者の座標と後者の座標とは、写像の関係を有するので、一方の座標を特定すれば、他方の座標が一義に導出される。なお、座標は、特定の座標系で定義される位置であるとして、位置の下位概念として使用している。
【0026】
前照灯1は、制御装置4、レーザ光源5、コリメータレンズ6、光偏向器7、補正ミラー8、蛍光体プレート9及び投影レンズ10を備えている。制御装置4は、レーザ光源5の光度及び光偏向器7のミラー部31(
図2)の作動を制御する。なお、制御装置4によるレーザ光源5の光度の制御には、後述の画素ごとのレーザ光源5の点灯及び消灯の切替も含まれる。
【0027】
レーザ光源5からの出射光は、コリメータレンズ6によりコリメート光Laとなり、光偏向器7に入射する。光偏向器7は、コリメータレンズ6から入射されるコリメート光Laをミラー部31(
図2)により反射する。ミラー部31は、2軸の周りに往復回動し、コリメート光Laを反射、偏向した走査光Lbを出射する。
【0028】
補正ミラー8は、光偏向器7からの走査光Lbを補正し、補正された走査光Lcとして蛍光体プレート9に向けて反射する。補正ミラー8による走査光Lbの補正は、ミラー部31の軸周りの回動速度が回動範囲の中心と両端とで相違することに対処するためである。
【0029】
すなわち、制御装置11は、入力された映像情報に基づいてレーザ光源5の輝度を制御する(輝度の制御には、レーザ光源5の点灯及び消灯の切替も含む。)。しかしながら、光偏向器7のトーションバー32の軸回りの往復回動の速度は、トーションバー32が真正面を向いた時は速く、両端側に向いた時は遅い。通常の前照灯1では、照射範囲の中心に最適径の光スポットが生成されるように、回転速度を制御するので、照射範囲の両端範囲に生成される光スポットは、中心に生成される光スポットに比して、走査方向の寸法が長くなってしまう。このことは、照射範囲に生成される画像の歪みの原因になる。補正ミラー8は、このような画像の歪みを矯正する役割がある。
【0030】
蛍光体プレート9は、走査光Lcを蛍光粒子により波長変換することにより白色の走査光Ldを生成する。蛍光体プレート9の補正ミラー8側の面には、映像としての配光パターンが生成される。該配光パターンの映像は、走査光Ldの走査の画像となって、投影レンズ10に入射し、さらに、投影レンズ10から投影光としての走査光Leになって、仮想スクリーン2に投影される。
【0031】
[光偏向器]
図2は、光偏向器7の斜視図である。光偏向器7は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の2軸式の光偏向器である。光偏向器7の詳細は、例えば、本出願人に係る特開2012-201386号公報、特開2013-8480号公報及び特開2013-84530号公報等を参照されたい。
【0032】
光偏向器7は、ミラー部31、トーションバー32、内側圧電アクチュエータ33、可動枠34、外側圧電アクチュエータ35及び固定枠36を備える。ミラー部31は、中心において直交する軸Ax,Ayの2軸の各軸の回りに往復回動する。
【0033】
トーションバー32は、軸Ayに沿って延在し、ミラー部31と可動枠34とを相互の連結している。内側圧電アクチュエータ33は、トーションバー32と可動枠34との間に介在し、トーションバー32を軸Ayの回りに往復回動させる。
【0034】
外側圧電アクチュエータ35は、可動枠34と固定枠36との間に介在し、可動枠34を矩形の固定枠36の長辺に平行な軸線の回りに往復回動する。これにより、ミラー部31は、軸Axの回りに往復回動する。
【0035】
軸Ayの回りのミラー部31の往復回動は、共振である。軸Axの回りのトーションバー32の往復回動は、非共振である。非共振周波数は、共振周波数より低い。
【0036】
[制御装置]
図3は、制御装置11の詳細図である。制御装置11は、通信部41、配光制御部42、データ記憶部43、マスク位置補正部44、画像処理部45及び走査光源制御部46を備える。通信部41は、不図示の指示部から配光指示の情報を受信する。配光指示の情報には、照射範囲について、その方向、幅、光分布パターン及び遮光(マスク領域)の指示が含まれている。通信部41が受信した情報は、配光制御部42に出力される。
【0037】
配光指示の情報のうち、光分布パターンは、配光パターンと同義で使用している。映像は、複数の画面(フレーム)の時系列から構成される。各画面の光分布パターンは、画面の各位置の輝度をした輝度の分布パターンとなる。画面の各位置は、画面を構成する複数の画素の各々の位置でもある。
【0038】
配光制御部42は、通信部41からの入力とデータ記憶部43からの画素データとに基づいて遮光指示、中間画像データ及び照射指示の情報を生成する。配光制御部42は、生成した遮光指示、中間画像データ及び照射指示の情報をそれぞれマスク位置補正部44、画像処理部45及び走査光源制御部46に出力する。
【0039】
画素データは、配光制御部42が、画面を生成する画素ごとの輝度を光分布パターンに基づいて決定する際に用いるものであり、光分布パターンの指定輝度と対応画素との関係を規定するデータである。配光制御部42が出力する中間画像データは、画素ごとに、その輝度を光分布パターンに基づいて割り当てたデータである。中間画像データを、後述のマスク領域51、干渉領域61及び補償領域62等で補正したものが、補正画像データとなる。
【0040】
マスク位置補正部44は、配光制御部42から受ける遮光指示に基づいて後述の第1画素、第2画素及び第3画素の輝度を補正したマスク指示の情報を生成する。マスク位置補正部44が配光制御部42から受ける遮光指示には、配光制御部42が通信部41から受信した遮光の情報及び配光制御部42がデータ記憶部43から受信したマスク情報が含められている。
【0041】
マスク位置補正部44は、生成したマスク指示の情報を画像処理部45に出力する。該マスク指示には、後述の第1画素、第2画素及び第3画素の情報が含められている。
【0042】
画像処理部45は、配光制御部42及びマスク位置補正部44からの入力に基づいて補正画像データを生成し、該補正画像データを走査光源制御部46に出力する。走査光源制御部46は、配光制御部42からの照射指示に同期して、画像処理部45からの補正画像データに基づいてレーザ制御信号及びMEMS制御信号を生成する。レーザ制御信号及びMEMS制御信号は、それぞれレーザ光源5及び光偏向器7に出力される。
【0043】
レーザ制御信号とMEMS制御信号とは、同期されている。レーザ光源5は、補正画像データに基づいて点灯及び消灯を切り替えられる。レーザ光源5の点灯及び消灯は、それぞれ走査光Leの照射先における光スポットの生成及び消失に対応する。照射先における光スポットの中心の座標は、固定されるが、光スポットの寸法は、該座標に応じて変化する。
【0044】
図4は、照射範囲50の正面図である。照射範囲50は、仮想スクリーン2上に表示されたものである。照射範囲50上の位置は、x軸(水平方向の)及びy軸(鉛直方向の軸)の座標で決めることができる。原点oは、この例では、照射範囲50の中心(仮想スクリーン2の中心でもある。)に設定されている。
【0045】
照射範囲50は、通常、横長の楕円となる。H及びWは、それぞれ照射範囲50の短軸及び長軸の長さになる。前照灯1は、ADB(Adaptive Driving Beam)の機能を有するので、マスク領域51が照射範囲50に生成される。マスク領域(遮光領域)51は、人又は対向車の位置する領域に設定される。
【0046】
図5は、光スポット54について照射範囲50における位置と寸法との関係を示している。
図5では、説明の便宜上、照射範囲50は、
図4の照射範囲50から原点oを中心とする横長の矩形範囲を抽出している。L,C,Rは、それぞれx軸方向に照射範囲50の左端、中心及び右端を示している。
【0047】
光スポット54は、照射範囲50においてx軸及びy軸の各方向に走査する。x軸の方向の走査は、光偏向器7において、ミラー部31が軸Ayの回りに共振周波数で往復回動することにより光スポット54が走査する方向となる。y軸の方向の走査は、光偏向器7において、ミラー部31が軸Axの回りに非共振周波数で往復回動することにより光スポット54が走査する方向となる。
【0048】
光スポット54の横幅(x軸の方向の寸法)は、x軸方向に中央のCにおいて小さく、両端のL,Rにおいて長くなる。すなわち、Cの光スポット54は、円形となるが、L及びRの光スポット54は、横に細長い形状になる。なお、光スポット54の縦幅も、y座標に応じて変化するが、x軸の方向の変化に比して小さい。
【0049】
図6は、光偏向器7のミラー部31の横方向回動角と光スポット54の左端(破線)及び右端(実線)の位置との関係を示すグラフである。横軸方向の回動角とは、軸Ayの回りのミラー部31の回動角であり、ミラー部31の中心に設定した法線が真正面を向いたときの回動角を0°としている。そして、0°に対し、ミラー部31が右向きとなる回動角を正、左向きとなる回動角を負としている。
【0050】
ミラー部31の各横方向回動角での回動角換算の光スポット54の横幅は、ミラー部31の各横方向回動角での実線と波線との差分に相当する。
図6から、光スポット54の横幅は、回動角=0°において最小となり、回動角の絶対値の増大の連れて増大することが分かる。
【0051】
図7は、マスク位置補正部44によるマスク位置補正を実施しないときと(上段(a))、実施するときと(下段(b))のマスク領域51の輝度分布を対比している。
図8は、マスク位置補正を実施しないときと(左側(a))、実施するときと(右側(b))で光スポット54の点灯及び消灯の状態がどのように変化するかを対比している。
【0052】
なお、マスク位置補正部44によるマスク位置補正とは、照射範囲50において光スポット54の位置ごとに異なる光スポット54の寸法に基づいて、後述の干渉領域61を設定し、マスク領域51だけでなく干渉領域61に中心を置く光スポット54の輝度を減少または0にする補正処理である。
図7(a)と
図8(a)は、マスク位置補正を実施しないときに対応し、
図7(b)と
図8(b)は、マスク位置補正を実施するときに対応する。
【0053】
図8から説明する。
図8において、光スポット54は、時間経過に連れて、照射範囲50上をx軸の負から正の方向に移動する。境界線59の左側はマスク領域51外であり、境界線59の右側はマスク領域51内となっている。また、白抜きの光スポット54は、点灯していることを示し、ハッチング付きの光スポット54は、消灯していることを示す。また、各光スポット54において、「x」は、光スポット54の中心を指している。
【0054】
ここで、第1画素、第2画素及び第3画素を次のように定義する。なお、
図8において、光スポット541は第3光スポットであり、光スポット542は第2光スポットであり、光スポット543は第1光スポットである。
【0055】
第1画素:中心xがマスク領域51内にある光スポット54(第1光スポット)に対応する画素
第2画素:中心xはマスク領域51外にあるが、一部がマスク領域51内にある光スポット54(第2光スポット)に対応する画素
第3画素:全部がマスク領域51外にあるが、一部が第2光スポットと重なる光スポット54(第3光スポット)に対応する画素
【0056】
図7において、マスク領域51は、一辺がΔxの正方形に設定されている。しかしながら、光スポット54がx軸方向にL,Rに近づいたときは、光スポット54の横幅が広がる。したがって、光スポット54がマスク領域51L,51Rの近辺を走査するときは、光スポット54の中心は、マスク領域51L,51Rの外にあるにもかかわらず、光スポット54の端部がマスク領域51L,51Rを照射してしまう。
【0057】
図7(a)及び
図8(a)のマスク位置補正無しの制御では、光スポット543(第1光スポット)のみ消灯される。この結果、マスク領域51のL,Rに設定されたマスク領域51L,51Rでは、横幅の増大した第2光スポットとしての光スポット542が端部において、マスク領域51L,51Rを照射する。この結果、マスク領域51L,51Rは、x軸方向の両端部が明るくなってしまう。
【0058】
図7(a)において、ΔxL,ΔxC,ΔxRは、マスク領域51L,51C,51Rにおいて、真っ暗(輝度=0)となる長さである。ΔxL,ΔxC,ΔxRは、共にΔxより狭くなっている。しかしながら、ΔxL,ΔxRは、ΔxCに比して減少量が大きい。ΔxL,ΔxC,ΔxR<Δxは、マスク領域51L,51Rの遮光性が低下したことを意味する。
【0059】
これに対し、
図7(b)及び
図8(b)のマスク位置補正付きの制御では、光スポット543(第1光スポット)だけでなく、光スポット542(第2光スポット)も消灯される。この結果、照射範囲50のL,Rに設定されたマスク領域51L,51Rでは、横幅の増大した光スポット542(第2光スポット)の端部が、マスク領域51L,51Rを照射しないことになる。この結果、マスク領域51L,51C,51Rの遮光性は増大する。
【0060】
マスク位置補正付き制御は、x軸方向のCのマスク領域51Cにも適用される。したがって、マスク領域51L,51C,51RのΔxL,ΔxC,ΔxRは、マスク位置補正付き制御により、本来のΔxとなる。
【0061】
図9は、照射範囲50上のマスク領域51、干渉領域61及び補償領域62の説明図である。マスク領域51は、通信部41(
図3)が不図示の指示部から受信する配光指示に含まれる遮光の情報(マスク情報)に決定される。マスク領域51は、また、第1画素に対応する第1光スポット(例:光スポット543)の中心が位置する領域である。
【0062】
干渉領域61は、x軸方向にマスク領域51の外側に隣接する領域として設定される。干渉領域61は、第2画素に対応する第2光スポット(例:光スポット542)の中心が位置する領域として定義される。
【0063】
補償領域62は、x軸方向に干渉領域61のさらに外側に隣接する領域として設定される。補償領域62は、第3画素に対応する第3光スポット(例:光スポット541)の中心が位置する領域としても定義される。
【0064】
マスク領域51Cは、x軸方向に照射範囲50の中央範囲のCの設定されるのに対し、マスク領域51Lは、x軸方向に照射範囲50の端範囲のLに寄って設定されている。したがって、消灯せずに光スポット54を走査する場合には、マスク領域51Lを走査する光スポット54L(
図5)は、マスク領域51Cを走査するマスク領域51C(
図5)より横幅が増大する。したがって、マスク領域51Lに対する干渉領域61の横幅は、マスク領域51Cに対する干渉領域61の横幅より大きくなっている。
【0065】
補償領域62は、中心が補償領域62に位置する第3光スポットの輝度が補正画像データにおいて中間画像データよりも増大される領域である。全部の第3画素の輝度を増大する必要はない。また、その方が、通信部41が受信した光分布パターンから指示された輝度に対して、第3光スポットが照射範囲50の照射先に実際に生成する輝度の差分の増大が抑制される。
【0066】
図9の補償領域62は、全部の第3画素のうち、x軸方向に干渉領域61寄りの所定範囲に含まれる第3画素のみを輝度を本来の輝度としての中間画像データの輝度より増大している。したがって、
図9の補償領域62は、第3光スポットの中心が含まれる全領域よりも横幅が狭くなっている。
【0067】
図9において、P(x,ys)及びP(xe,ye)は、マスク領域51の左上端及び右下端の頂点の座標を示している。P(x’s,y’s)及びP(x’e,y’e)は、マスク領域51と該マスク領域51を左右両側から挟む干渉領域61とを第1矩形として、該第1矩形の左上端及び右下端の頂点の座標を示している。P(x’’s,y’’s)及びP(x’’e,y’’e)は、第1矩形と該第1矩形を左右両側から挟む補償領域62とを第2矩形として、該第2矩形の左上端及び右下端の頂点の座標を示している。これらの座標については、後述の数式において用いる。
【0068】
[制御方法]
図10は、制御装置4が実施するマスク位置補正付き制御のフローチャートである。
【0069】
STEP101において、情報入力部21は、照射範囲50に生成する映像に対応する映像情報と、照射範囲50内のマスク領域51に係るマスク情報とを受信する。映像情報及びマスク情報は、
図3の通信部41が受信する配光指示の情報に含まれる光分布パターンの情報及び遮光の情報にそれぞれ相当する。
【0070】
STEP102において、中間画像データ生成部22は、複数の画素に区画され映像情報に係る映像を表示する画面の各画素の輝度を映像情報に基づいて設定した中間画像データを生成する。この処理は、配光制御部42が実施する。
【0071】
STEP103において、第2画素決定部25及び第3画素決定部26は、光スポット情報を光スポット情報保持部23から取得する。光スポット情報とは、照射範囲50に分布する複数の位置(例:
図4のx-y座標)について各位置(例:
図4のx-y座標)と中心(例:
図8のx)が各位置にある光スポット54の寸法(例:光スポット54の横幅)とを対応付ける情報である。
【0072】
光スポット情報保持部23は、データ記憶部43(
図3)に対応する。第1画素決定部24、第2画素決定部25及び第3画素決定部26は、マスク位置補正部44に対応する。
【0073】
STEP104において、第1画素決定部24は、第1画素を決定する。第1画素は、複数の画素のうち、中心がマスク領域51内に位置する第1光スポット(例:光スポット543)に対応付けられる画素である。
【0074】
STEP105において、第2画素決定部25は、第2画素を決定する。第2画素は、複数の画素のうち、中心がマスク領域51外に位置し、一部がマスク領域51内に位置する第2光スポット(例:光スポット542)に対応付けられる画素である。
【0075】
STEP106において、第3画素決定部26は、第3画素を決定する。第3画素は、複数の画素のうち、全部がマスク領域51の外に存在し、一部が干渉領域61内に位置する第3光スポット(例:光スポット541)に対応付けられる画素である。
【0076】
図3のマスク位置補正部44は、第1画素決定部24、第2画素決定部25、第3画素決定部26に相当する。マスク位置補正部44の具体的な処理について説明する。
【0077】
マスク位置補正部44は、次の式(1)~(4)を使って、座標xs,ys,xe,yeから座標x’s,y’s,x’e,y’e,x’’s,y’’s,x’’e,y’’e(
図9)を算出する。
【数1】
ただし、finterp2は、二次元座標の変換式である。LUT
2d-L,LUT
2d-U,LUT
2d-R,LUT
2d-Dは、照射範囲50上の各座標(x,y)が(xs,ys)又は(xe,ye)であったときに、該座標(x,y)からそれぞれx’s,y’s,x’e,y’eを算出するための光スポット情報に含まれている導出関数である。該導出関数は、各座標(x,y)と該座標(x,y)に中心がある光スポット54の寸法との関係に基づいて設定されている。
【0078】
次に、マスク位置補正部44は、次の式(5)を用いて、(x’s,y’s)及び(x’e,y’e)に対応付けられる画面の対応画素を算出する。画面は、マトリックスに配列されたpw×ph個の複数の画素で区画されており、各画素の輝度を決めることにより対応する画面が表示される。
【数2】
ただし、式(5)において、Wmax,Hmaxは、前照灯1が光偏向器7を使って実現できる照射範囲50の最大横幅及び最大縦幅を意味する。前照灯1が実際に使用する照射範囲50の通常のW,Hは、W≦Wmax,H≦Hmaxとされる。
【0079】
補償領域62の頂点の座標P(x’’s,y’’s)及びP(x’’e,y’’e)は、上式(1)~(5)を変形して算出することができる。すなわち、上式(1)~(5)において、xs,ys,xe,yeはx’s,y’s,x’e,y’eに置き換え、x’s,y’s,x’e,y’eはx’’s,y’’s,x’’e,y’’eに置き換える。
【0080】
STEP107において、補正画像データ生成部27は、中間画像データにおいて第1画素(例:光スポット543)の輝度を0に変更し、第2画素(例:光スポット542)の輝度を0又は低下させた補正画像データを生成する。補正画像データ生成部27は、また、補正画像データでは、中間画像データにおいて第3画素(例:光スポット543)の輝度を増大させる。
【0081】
STEP107において、制御部28は、補正画像データに基づく制御信号を出力する。該制御信号の出力先は、レーザ光源5及び光偏向器7である。これにより、干渉領域61の輝度低下を補償領域62の輝度増大に補償しつつ、マスク領域51の遮光性が改善される。
【0082】
[他の実施形態]
図11は、複数(例:4個)の光走査装置66a~66dを備える前照灯65の模式図である。車両用の前照灯65において、
図1の前照灯1の要素と重複する要素については、前照灯1の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。光走査装置66a~66dは、補正ミラー8とその出射側の要素を共通に備えている。
【0083】
光走査装置66a~66dの照射範囲は、共通の仮想スクリーン2上に生成されるが、仮想スクリーン2上の各照射範囲の位置、寸法は、光走査装置66a~66dの各々において独立に制御される。前照灯65全体としては、複数の光走査装置66a~66dを使って、統合的な照射範囲を車両の前方に生成する。
【0084】
光走査装置66a~66dについても、個々に区別しないときは、光走査装置66で総称する。
【0085】
複数の光走査装置66の照射範囲は、仮想スクリーン2において、部分的に重なっていてもよいし、一方の光走査装置66の照射範囲が他方の光走査装置66の照射範囲内に完全に含まれていてもよい。複数の光走査装置66の照射範囲が重なっている領域は、重ならない領域よりも照度が高くなるのは当然である。これにより、照射範囲における最高照度を高めることができる。
【0086】
前照灯65では、マスク位置補正部44(
図3)は、光走査装置66にマスク指示の情報(補正画像データ)を個々に生成する。そして、走査光源制御部46(
図3)は、光走査装置66にレーザ制御信号及びMEMS制御信号を別々に出力する。
【0087】
[変形例]
実施形態では、マスク領域51に中心がある第1光スポットに対応付けられる第1画素の輝度が0にして、光偏向器7のミラー部31の向きが第1光スポットを生成する向きになった時は、レーザ光源5を消灯して、第1光スポットを完全な暗闇状態にしている。本発明では、第1画素の輝度を0にすることなく、輝度=0を含む所定輝度以下にすることもできる。なお、所定輝度は、マスク領域51に存在する対向車の運転手等が眩惑しないと想定される値に設定される。
【0088】
第1画素の輝度を所定輝度以下にするときは、第2画素の輝度は、中間画像データにおける第2画素の輝度と所定輝度との中間値にすることができる。
【0089】
光スポット情報保持部23が保持する光スポット情報は、照射範囲50上のP(x,y)に中心のある光スポットの寸法(例:横幅及び縦幅)に応じて、式1~5のP(xs,ys)及びP(xe,ye)に対応するP(xs,ys)及びP(xe,ye)の値についての情報が含まれている。しかしながら、光スポット情報は、照射範囲50上の全部の座標の光スポットの寸法情報を網羅していない。P(xs,ys)又はP(xe,ye)が、光スポット情報に網羅されていない座標P(x,y)である場合には、内挿法を用いて、座標P(x,y)に中心を置く光スポット54の寸法を求め、P(x’s,y’s)及びP(x’e,y’e)を決定する。
【0090】
前照灯1,65では、光源としてレーザ光源5が用いられる。本発明では、光源としてLED(light emitting diode)を用いることもできる。
【0091】
図9の説明では、干渉領域61及び補償領域62は、マスク領域51の横幅方向のみに設定されている。光スポット54は、縦方向(y軸方向)にも位置に応じて寸法が変化するので、マスク領域51の横方向及び縦方向の両方から包囲する干渉領域61を設定することができる。さらに、補償領域62についても、干渉領域61の横方向及び縦方向の両方から包囲する補償領域62を設定することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,65・・・前照灯(車両用前照灯)、4・・・制御装置、5・・・レーザ光源(光源)、7・・・光偏向器、21・・・情報入力部、22・・・中間画像データ生成部、23・・・光スポット情報保持部、24・・・第1画素決定部、25・・・第2画素決定部、26・・・第3画素決定部、27・・・補正画像データ生成部、28・・・制御部、31・・・ミラー部、50・・・照射範囲、51・・・マスク領域、54・・・光スポット、61・・・干渉領域、62・・・補償領域、66・・・光走査装置。