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  • 特許-穴埋め用硬化性樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】穴埋め用硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20230328BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230328BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230328BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230328BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
C08G59/50
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K5/17
H05K3/28 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019057793
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020158586
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】金沢 康代
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 ひかる
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
C08K 3/013
C08K 5/17
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂、
(B)3官能以上のエポキシ樹脂
(C)ポリアミン型硬化剤、および
イミダゾール型硬化剤
を含有し、かつ、JIS-C2161:2010に従い測定された、100℃におけるゲルタイムが、30分以下である、穴埋め用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)ポリアミン型硬化剤が、95℃以下の硬化開始温度を有する、請求項1に記載の穴埋め用硬化性樹脂組成物
【請求項3】
さらに無機フィラーを含有する、請求項1または2に記載の穴埋め用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~のうちいずれか1項に記載の穴埋め用硬化性樹脂組成物から成る、硬化物。
【請求項5】
請求項に記載の硬化物を有する、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、特に、プリント配線基板のスルーホールまたはバイアホールの穴埋め用途としての硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線基板は、部品の実装密度の上昇および回路配線の複雑化に対応する為に、絶縁性を有する樹脂から構成される絶縁層と、導体パターンがプリントされた導電層とが交互に積層されたものである。そして複数の導電層及び絶縁層を貫通するように、めっきされたスルーホールが形成されている。
【0003】
そして必然的に、このスルーホールの穴部を充填するための穴埋め用樹脂組成物の開発が望まれ、その対応する技術の提案もされている。
例えば、特許文献1は、充填性等に優れる穴埋め用樹脂組成物として、液状エポキシ樹脂と、液状フェノール樹脂と、硬化触媒と、2種のフィラーとを含むという技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-19834号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント配線基板のスルーホールに穴埋め用樹脂組成物を充填し、硬化させた場合には、通常、その表面は凸状に仕上がる。ところが、未硬化の他の樹脂層、例えば、塗布、乾燥、現像後、熱硬化前の未硬化のソルダーレジスト層が基板上に予め積層されている場合においては、スルーホールに穴埋め用樹脂組成物を充填し、乾燥(予備硬化)、本硬化後、または、乾燥工程無しで本硬化後、当該組成物が上記未硬化のソルダーレジスト層と接触することで、当該組成物の構成成分の一部が当該ソルダーレジスト層へと拡散および浸透してしまうことがある。その結果、スルーホール内に充填されるべき穴埋め用樹脂組成物の容量が全体的に減少して充填量が不十分となり、その硬化後に、スルーホール表面からスルーホール内部側へと陥没するように、その表面に凹みを形成してしまうことがある。
【0006】
この凹みは、その後にめっき工程を行う場合にはめっきの付着不良を、または、さらにソルダーレジスト層を形成させる場合には、その密着不良を引き起こし、ひいては精密なパターンの形成を妨げるおそれもあるため、回避しなければならない課題の一つである。
【0007】
この点、上記特許文献1に記載されるような、穴埋め用樹脂組成物として、液状エポキシ樹脂と、液状フェノール樹脂と、硬化触媒と、2種のフィラーとを含むという技術を採用しただけでは、上記の様な、未硬化の他の樹脂層、例えば、塗布、乾燥、現像後、熱硬化前の未硬化のソルダーレジスト層が基板上に予め積層されている場合において、スルーホールに穴埋め用樹脂組成物を充填し、乾燥(予備硬化)、本硬化後に生じることがあるスルーホール表面の凹みを十分に防止することができなかった。
そこで本発明者による検討の結果、上記のような穴埋め用樹脂組成物の硬化後の凹みの発生には、ポリアミン型硬化剤を用いて硬化速度を調整することが大きく影響しているとの知見が得られた。
ポリアミン型硬化剤を用いて硬化速度を早めることで、穴埋め用樹脂組成物の溶液のソルダーレジスト層への浸透をより効果的に抑制し得、それによって、硬化後の穴埋め用樹脂組成物の凹みの形成を防止し得ることが明らかとなった。
【0008】
以上の観点から、本発明においては、スルーホール又はバイアホールの穴埋め用樹脂組成物として、2種のエポキシ樹脂と、所定の硬化開始温度のポリアミン型硬化剤を併用することで、より早い硬化速度を有しており、それにより、未硬化の他の樹脂層、例えば、未硬化のソルダーレジスト層と接触した状態で硬化したとしても、その表面が凹むという充填の不良を引き起こすおそれが防止された、新規な穴埋め用樹脂組成物の提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、上記課題は、
少なくとも
(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂、
(B)3官能以上のエポキシ樹脂
(C)ポリアミン型硬化剤、および
イミダゾール型硬化剤
を含有し、かつ、JIS-C2161:2010に従い測定された、100℃におけるゲルタイムが、30分以下である、穴埋め用硬化性樹脂組成物によって、解決され得ることが見出された。
このうち好ましい一態様は、(C)ポリアミン型硬化剤が95℃以下の硬化開始温度を有するものである
また、より好ましい態様においては、上記穴埋め用硬化性樹脂組成物が、さらに無機フィラーを含有する。
さらにまた、他の好ましい態様においては、本発明は、上記穴埋め用硬化性樹脂組成物から成る硬化物、および、当該硬化物を有する電子部品にも関する。
【0010】
本発明においては、穴埋め用硬化性樹脂組成物(以下、単に硬化性樹脂組成物ともいう)の主成分として、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂および(B)3官能以上のエポキシ樹脂が用いられると共に、硬化剤として、(C)ポリアミン型の硬化剤が採用されている。さらには、本発明の硬化性樹脂組成物は、JIS-C2161:2010に従い測定された、100℃におけるゲルタイムが、30分以下であるという構成をも有する。
かかる構成の本発明の硬化性樹脂組成物をスルーホールやバイアホールに充填したとき、たとえ未硬化のソルダーレジストなど未硬化の他の樹脂層と接しているとしても、当該組成物の硬化後にその表面に凹みを生ずるという充填不良を引き起こすおそれが抑制され得る。
【0011】
この点は、本発明の硬化性樹脂組成物がポリアミン型硬化剤を用いて硬化速度を調整することにも関連している。詳細は実施例において後述するが、本発明の構成を有する硬化性樹脂組成物は、それ以外の構成を有する硬化性樹脂組成物と比較して、ゲルタイムがより短い、つまり硬化速度がより早いことが認められた。当該組成物は、充填後に速やかに硬化物を形成するため、充填時における未硬化の他の樹脂層、例えば、未硬化のソルダーレジスト層などへの、成分の浸透または拡散が効果的に抑制され得るものと考えられる。
以下、かような本発明の硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0012】
[(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂]
プリント配線基板のスルーホール等の穴埋め用途に用いられる樹脂組成物は、通常、液状樹脂組成物(穴埋めインキ)として使用されるため、無溶剤でペースト状にするために、液状のエポキシ樹脂、特に、硬化後の穴埋め材が、機械的、電気的、化学的性質に優れ、接着性も良好であることから、熱硬化型のエポキシ樹脂組成物が広く使用されている。
【0013】
そのなかでも、本発明においては、粘度が低く、かつ耐熱性が高いために、穴埋め用途の樹脂としてより適するビスフェノールE型エポキシ樹脂を採用している。
【0014】
ビスフェノールE型エポキシ樹脂としては、例えば、EPOX MK R710又はR1710(エア・ウォーター社製)などを使用することができる。これらはいずれも結晶化しにくく、保存安定性が良好であるため、好ましい材料である。
【0015】
この(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の全質量に基づき、1%~40%であり、好ましくは5%~30%である。
【0016】
[(B)3官能以上のエポキシ樹脂]
本発明において用いられる(B)3官能以上のエポキシ樹脂は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する樹脂とも解される。
本発明においては、この(B)3官能以上のエポキシ樹脂をも併用したことによって、より迅速な硬化を可能としている。
【0017】
このような(B)3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂(特に、トリグリシジルアミノフェノール型エポキシ樹脂)、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂を挙げることができる。(B)3官能以上のエポキシ樹脂の具体的な製品としては、例えば、アデカレジンEP-3980S(ADEKA社製)、アデカレジンEP-3950S(ADEKA社製)、jER-630(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0018】
これらの中で、液状のアミノフェノール型エポキシ樹脂、とりわけ、トリグリシジルアミノフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
この(B)3官能以上のエポキシ樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の全質量に基づき、3%~30%であり、好ましくは5%~20%である。
【0020】
[(C)ポリアミン型硬化剤]
本発明においては、硬化剤としてポリアミン型のものが用いられ、例えば、変性脂肪族ポリアミン、変性芳香族ポリアミンなどを挙げることができる。
変性脂肪族ポリアミン類としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はペンタエチレンヘキサミンの変性ポリアミン等が挙げられる。
また、変性芳香族ポリアミン類としては、フェニレンジアミン又はキシリレンジアミンの変性ポリアミン等が挙げられる。
【0021】
このうち、より早い硬化速度という観点から、95℃以下の硬化開始温度を有するものが好ましく、80℃以下の硬化開始温度を有するものがなお好ましい。
【0022】
(C)ポリアミン型硬化剤の具体的な製品としては、例えば、フジキュアーFXR-1020(T&K TOKA社製)、フジキュアーFXR-1081(T&K TOKA社製)が挙げられる。
【0023】
本発明における(C)ポリアミン型硬化剤は、これら単独でも、又は場合により2種以上を用いても良い。
【0024】
また、(C)ポリアミン型硬化剤の含有量としては、(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂、および、(B)3官能以上のエポキシ樹脂と反応して、十分な硬化が達成できるように調節されることが好ましい。
【0025】
その含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂、(B)3官能以上のエポキシ樹脂、および、含まれる場合にはその他のエポキシ樹脂の全質量に基づき、0.5%~30質量%であり、好ましくは1%~20質量%である。0.5%~30質量%の範囲内であれば、硬化性樹脂組成物の低温での硬化性に優れるだけでなく、保存安定性も良好である。
【0026】
[イミダゾール型硬化剤]
本発明においては、(C)ポリアミン型硬化剤に加えて、従来用いられてきたイミダゾール型硬化剤を併用してもよい。この場合、硬化性樹脂組成物から成る硬化物の耐熱性がより向上するため好ましい。
なお、硬化開始温度の低いイミダゾール型硬化剤を用いてゲルタイムを早く調節しても、ポリアミン型硬化剤を用いたときの凹み発生防止効果は得られない。
【0027】
イミダゾール型硬化剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンのイソシアヌル酸付加体(イミダゾールの1位のNにイソシアヌル酸が付加)等が挙げられる。
【0028】
また、その市販品の例としては、2MZ、2MZ-P、2PZ、2PZ-PW、2P4MZ、C11Z-CNS、2PZ-CNS、2PZCNS-PW、2MZ-A、2MZA-PW、C11Z-A、2E4MZ-A、2MA-OK、2MAOK-PW、2PZ-OK、2MZ-OK、2PHZ、2PHZ-PW、2P4MHZ、2P4MHZ-PW、2E4MZ・BIS、VT、VT-OK、MAVT、MAVT-OK(四国化成工業社製)を挙げることができる。
【0029】
これらイミダゾール型硬化剤は、2種類以上を併用することももちろん可能である。
また、イミダゾール型硬化剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂、(B)3官能以上のエポキシ樹脂、および、含まれる場合にはその他のエポキシ樹脂の全質量に基づき、0.5%~12質量%であり、好ましくは1%~10質量%である。
【0030】
[無機フィラー]
本発明の硬化性樹脂組成物には、通常の樹脂組成物に用いられる無機フィラーをさらに含有させることができる。
具体的には、例えば、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、ノイブルグ珪土、有機ベントナイト等の非金属フィラーや、銅、金、銀、パラジウム、シリコン等の金属フィラーを挙げることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物においては、これら無機フィラーは単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0031】
これらのうち、低い体積膨張性と印刷性に優れるシリカや、低い体積膨張性と研磨性に優れる炭酸カルシウムが好適である。
シリカはとしては、非晶質、結晶のいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。特に非晶質(溶融)シリカが好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、天然の重質炭酸カルシウム、合成の沈降炭酸カルシウムのいずれであってもよい。特に、研磨性に優れる炭酸カルシウムが好適である。
【0032】
このような無機フィラーの形状は、球状、針状、板状、鱗片状、中空状、不定形状、六角状、キュービック状、薄片状等が挙げられるが、無機フィラーの高充填の観点から球状が好ましい。
【0033】
また、これら無機フィラーの平均粒径は、0.1~25μmが好ましい。平均粒径が0.1μm以上であれば、比表面積が小さくフィラー同士の凝集作用の効果により良好に分散し、またフィラーの充填量を増やすことが容易である。一方、25μm以下であれば、スルーホールへの充填性が良くなり、さらに、穴埋めした部分に導電層を形成したときに平滑性が良くなるという効果がある。より好ましくは、1~10μmである。
なお、平均粒径とは、平均一次粒径を意味する。平均粒径(D50)は、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
【0034】
これら無機フィラーの含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の(A)ビスフェノールE型エポキシ樹脂、(B)3官能以上のエポキシ樹脂、および、含まれる場合にはその他のエポキシ樹脂の全質量に基づき、300%以下であり、好ましくは250%以下である。300%以下であれば、硬化性樹脂組成物を液状ペースト化することが容易であって、良好な印刷性および穴埋め性が得られるほか、硬化物が十分に低い体積膨張性を示すとともに、良好な研磨性をも示す。
【0035】
[その他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに必要とされる特性に応じて上記成分以外のその他の成分を含有させることももちろんできる。
そのような成分として、例えば、ホウ酸エステル化合物、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert-ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の熱重合禁止剤、クレー、カオリン、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤もしくはチキソトロピー剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類が挙げられる。
【0036】
[硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、従来より採用されている方法、例えばスクリーン印刷法、ロールコーティング法、ダイコーティング法等を利用してプリント配線基板のバイアホールやスルーホール等の穴部に容易に充填することができる。このとき、穴部から少しはみ出るように凸状に完全に充填される。次いで、穴部が本発明の硬化性樹脂組成物で充填されたプリント配線板を、例えば、70℃~110℃で10分~120分程度乾燥し(予備硬化)、約120~180℃で約10~180分程度加熱して(本硬化)、硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、硬化物となすことができる。
上記のようにして本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させた後、プリント配線板の表面からはみ出した硬化物の不要部分を、公知の物理研磨方法により除去し、平坦化してもよい。その後、表面の配線層を所定パターンにパターニングして、所定の回路パターンが形成されてもよい。なお、必要に応じて過マンガン酸カリウム水溶液などにより硬化物の表面粗化を行った後、無電解めっきなどにより硬化物上に配線層を形成してもよい。
【0037】
[電子部品]
また、本発明は、上記硬化物を有する電子部品をも提供する。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いることによって、高い品質、耐久性及び信頼性が維持された電子部品が提供される。
なお、本発明において電子部品とは、電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、プリント配線基板のスルーホールの穴埋め用硬化性樹脂組成物として、たとえ他の樹脂層、例えばソルダーレジスト層が存在しているとしても、充填の不具合を起こさずに、硬化後に表面の凹みを生じない組成物を提供し得る。従って、そのようなスルーホールの穴埋めの不具合に起因する精密なパターンの形成に悪影響を与えるおそれが低い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、プリント配線基板のスルーホールに対して、穴埋め用硬化性樹脂組成物を充填したときの状態を模式的に示す断面図である。
図2図2は、プリント配線基板のスルーホールに対して、本発明の穴埋め用硬化性樹脂組成物を充填し、硬化させたときの状態を模式的に示す断面図である。
図3図3は、プリント配線基板のスルーホールに対して、従来の穴埋め用硬化性樹脂組成物を充填し、硬化させたときの状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
なお、他に特に但書が無い限り、示される「部」および「%」は質量に基づくものとする。
【実施例
【0041】
下記のとおりに、実施例1~4、ならびに、比較例1および2の硬化剤組成物を作製した。
【0042】
<実施例1>
ビスフェノールE型エポキシ樹脂(EPOX MK R710;エア・ウォーター社製)50部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER-828;三菱ケミカル株式会社製)10部、3官能以上のエポキシ樹脂(トリグリシジルアミノフェノール)(jER-630;三菱ケミカル株式会社製)40部、95℃以下の硬化開始温度を有するポリアミン型硬化剤2(フジキュアーFXR-1081;T&K TOKA社製)6部、イミダゾール型硬化剤(2MZA-PW;四国化成工業株式会社製)6部、無機フィラーとして超微粒子重質炭酸カルシウム(ソフトン1800;備北粉化工業株式会社製)150部および非晶質シリカ(SO-C2;アドマテックス株式会社製)50部を予備混合し、その後、3本ロールミルで分散混合させて、実施例1の硬化性樹脂組成物を得た。
【0043】
<実施例2>
95℃以下の硬化開始温度を有するポリアミン型硬化剤2の代わりに、95℃以下の硬化開始温度を有するポリアミン型硬化剤1(フジキュアーFXR-1020;T&K TOKA社製)を用いた他は実施例1と同様にして、実施例2の硬化性樹脂組成物を得た。
【0044】
<実施例3>
95℃以下の硬化開始温度を有するポリアミン型硬化剤2の代わりに、95℃以下の硬化開始温度を有するポリアミン型硬化剤1(フジキュアーFXR-1020;T&K TOKA社製)20部を用い、かつ、イミダゾール型硬化剤を用いなかった他は実施例1と同様にして、実施例3の硬化性樹脂組成物を得た。
【0045】
<実施例4>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いなかった他は実施例3と同様にして、実施例4の硬化性樹脂組成物を得た。
【0046】
<比較例1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER-828;三菱ケミカル株式会社製)100部、イミダゾール型硬化剤(2MZA-PW;四国化成工業株式会社製)6部、無機フィラーとして超微粒子重質炭酸カルシウム(ソフトン1800;備北粉化工業株式会社製)150部および非晶質シリカ(SO-C2;アドマテックス株式会社製)50部を予備混合し、その後、3本ロールミルで分散混合させて、比較例1の硬化性樹脂組成物を得た。
【0047】
<比較例2>
ビスフェノールE型エポキシ樹脂(EPOX MK R710;エア・ウォーター社製)50部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER-828;三菱ケミカル株式会社製)10部、3官能以上のエポキシ樹脂(トリグリシジルアミノフェノール)(jER-630;三菱ケミカル株式会社製)40部、95℃超の硬化開始温度を有するポリアミン型硬化剤(フジキュアーFXR-1030;T&K TOKA社製)6部、イミダゾール型硬化剤(2MZA-PW;四国化成工業株式会社製)6部、充填材として超微粒子重質炭酸カルシウム(ソフトン1800;備北粉化工業株式会社製)150部および非晶質シリカ(SO-C2;アドマテックス株式会社製)50部を予備混合し、その後、3本ロールミルで分散混合させて、比較例2の硬化性樹脂組成物を得た。
【0048】
これら実施例1~4、ならびに、比較例1および2の組成を下記の表1に示す。
【0049】
【表1】
*1:EPOX MK R710(エア・ウォーター社製)
*2:jER-828(三菱ケミカル株式会社製)
*3:jER-630(三菱ケミカル株式会社製)トリグリシジルアミノフェノール(3官能エポキシ樹脂)
*4:フジキュアーFXR-1020(T&K TOKA社製)
*5:フジキュアーFXR-1081(T&K TOKA社製)
*6:フジキュアーFXR-1030(T&K TOKA社製)
*7:2MZA-PW(四国化成工業株式会社製 ※硬化開始温度100℃以上)
*8:ソフトン1800(備北粉化工業株式会社製)
*9:SO-C2(アドマテックス株式会社製)
【0050】
<試験例1>
実施例1~4、ならびに比較例1および2のそれぞれの硬化性樹脂組成物について、そのゲルタイムを測定することによって、硬化速度の速さに関する試験を行った。
【0051】
JIS-C2161:2010に規定された熱板法に準拠して、ホットプレート型ゲル化試験機(GT-D;株式会社ユーカリ技研製)を用いてゲルタイムの測定を行った。
【0052】
実施例1~4、ならびに比較例1および2のそれぞれの硬化性樹脂組成物をシリンジで0.5mL量りとった試料を、100℃に設定したゲル化試験機のホットプレート上に載置し、かき混ぜ針をホットプレート面に対して90度の角度に維持しながら、針先で90±10回/分の速度で円状に試料をかき混ぜた。このとき、かき混ぜ針が回転できなくなったり、あるいは針先に試料が粘着しなくなる等、試料がゲル状になったときを終点とし、試料を載置してから終点までの時間を測定した。この操作を3回繰り返し、それらの平均時間をゲルタイムとした。それぞれの硬化性樹脂組成物のゲルタイムは、表2に示されるとおりであった。
【0053】
<試験例2>
実施例1~4、ならびに比較例1および2のそれぞれの硬化性樹脂組成物について、スルーホールに充填後、硬化させたときの表面の凹みの有無に関する試験を行った。
【0054】
試験方法
図1に示すように、パターン形成された多層プリント配線基板1のスルーホール2部分以外に、ソルダーレジスト組成物3(製品名:PSR-4000 G23K;太陽インキ製造株式会社製)を、乾燥膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷で全面塗布した後、80℃で30分間乾燥し、室温まで放冷した。そしてこの基板を、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液により、スプレー圧0.2MPaの条件で、90秒間現像を行い、パターンを得た。なお、図1~3中の符号4は銅めっきを示す。
【0055】
次に、得られた評価用多層プリント配線基板1のスルーホール2に、実施例1~4の硬化性樹脂組成物5、ならびに比較例1および2のそれぞれの硬化性樹脂組成物5’をスクリーン印刷法により充填し、ラックに立て掛けて基板が載置面に対して90度±10度の角度となるように載置した状態で、熱風循環式乾燥炉(製品名:DF610;ヤマト科学株式会社製)にて、80℃で60分間乾燥し(予備硬化)、その後、150℃で30分加熱する(本硬化)ことにより、それぞれの硬化性樹脂組成物を硬化させた。
【0056】
硬化後の基板断面の光学顕微鏡観察(倍率:200倍)を行い、硬化性樹脂組成物を充填したスルーホール2の穴部の充填性評価を下記の評価基準により行った。
凹み無:スルーホール2の表面6が平滑であって、その表面上より下方に凹みが発生していない(図2参照)。尚、表面6の表面上より下方に凹みが発生していても、その凹みがスルーホール内部に達していないものも、凹み無しとする。
凹み有:スルーホール2の表面6において、その表面上よりスルーホール内部側に向かって大きな凹み7が発生している(図3参照)。
結果を下記表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
<結果>
実施例1~4の硬化性樹脂組成物については、ゲルタイムがより短く、かつ、硬化後の表面の凹みも観察されなかった。
これに対して、比較例1および2の硬化性樹脂組成物については、ゲルタイムがより長く、図3に示すように、表面に顕著な凹み7が観察された。これは、長いゲルタイム、つまり遅い硬化速度に起因して、組成物中の成分の一部が、それと接触しているソルダーレジスト層3に浸透または拡散してしまい、その容量を失ったためと考えられる。
また実施例1~4の硬化性樹脂組成物について270℃での5サイクルのリフロー後にクラックがなく、穴埋め用硬化性樹脂組成物として問題ないことを確認した。
【符号の説明】
【0059】
1 プリント配線基板 2 スルーホール 3 ソルダーレジスト組成物 4 銅めっき 5 実施例1~4の硬化性樹脂組成物 5’ 比較例1および2の硬化性樹脂組成物 6 スルーホール表面 7 凹み
図1
図2
図3