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特許7252031工作機械管理システム、管理装置、および工作機械に接続される接続装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】工作機械管理システム、管理装置、および工作機械に接続される接続装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20230328BHJP
   B23Q 41/08 20060101ALI20230328BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20230328BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20230328BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B23Q41/08 Z
B23Q3/155 E
B23Q3/155 F
B23Q17/09 B
B23Q17/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019062131
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020161015
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 圭
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 信二
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓実
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜太朗
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-126942(JP,A)
【文献】特開2018-018473(JP,A)
【文献】特開2008-217045(JP,A)
【文献】特開2016-112652(JP,A)
【文献】国際公開第03/082582(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/076807(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0248128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B23Q 41/08
B23Q 3/155
B23Q 17/09
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工作機械の個々の工作機械に対しておよび/または個々の工作機械に接続された接続装置に対してネットワークを介して接続される管理装置と、を備えた工作機械管理システムであって、
前記管理装置は、
前記複数の工作機械の個々の工作機械にて発生したツール交換作業の開始に関する情報を前記ネットワークを介して取得する開始情報取得手段と、
前記ツール交換作業の終了に関する情報を前記ネットワークを介して取得する終了情報取得手段と、
取得した前記開始に関する情報と前記終了に関する情報とを用いて、前記個々の工作機械にて発生した前記ツール交換作業に要した時間を把握する把握手段と、
を備え
前記開始に関する情報は、前記個々の工作機械のオペレータの操作に応じて出された信号であり、
前記終了に関する情報は、前記個々の工作機械の連続運転を判断するための時間情報、または当該時間情報から生成された交換終了を示す情報であり、
前記把握手段は、前記時間情報から得られた連続運転の時間が予め定められた時間を超えた場合には前記ツール交換作業が終了したと判断して当該ツール交換作業に要した時間を把握すること、
を特徴とする工作機械管理システム。
【請求項2】
前記接続装置は、前記ネットワークに対するインタフェースを有しない工作機械に接続され、
前記工作機械の制御盤から当該工作機械の稼働状態に関する情報である状態情報を取得する制御部と、
前記オペレータへの出力および当該オペレータからの入力を受け付けるユーザインタフェースと、
前記ネットワークに接続して前記開始に関する情報および前記終了に関する情報を出力するネットワークインタフェースと、
を有することを特徴とする請求項1記載の工作機械管理システム。
【請求項3】
前記開始に関する情報は、前記接続装置にて前記ユーザインタフェースを介してなされた前記オペレータの操作に応じて出された信号であることを特徴とする請求項記載の工作機械管理システム。
【請求項4】
複数の工作機械の個々の工作機械と、および/または個々の工作機械に接続された接続装置と、ネットワークを介して接続される管理装置であって、
前記複数の工作機械の個々の工作機械にて発生したツール交換作業の開始に関する情報を前記ネットワークを介して取得する開始情報取得手段と、
前記ツール交換作業の終了に関する情報を前記ネットワークを介して取得する終了情報取得手段と、
取得した前記開始に関する情報と前記終了に関する情報とを用いて、前記個々の工作機械にて発生した前記ツール交換作業に要した時間を把握する把握手段と、
を備え
前記開始に関する情報は、前記個々の工作機械のオペレータの操作に応じて出された信号であり、
前記終了に関する情報は、前記個々の工作機械の連続運転を判断するための時間情報、または当該時間情報から生成された交換終了を示す情報であり、
前記把握手段は、前記時間情報から得られた連続運転の時間が予め定められた時間を超えた場合には前記ツール交換作業が終了したと判断して当該ツール交換作業に要した時間を把握すること、
を特徴とする管理装置。
【請求項5】
前記複数の工作機械の個々の工作機械で加工される製品情報と、加工に関与する作業者情報とを含む基本情報を前記ネットワークを介して取得する基本情報取得手段と、
取得した前記製品情報および前記作業者情報と、前記把握手段により把握した前記ツール交換作業に要した時間と、を関連付けて出力する出力手段と、
を更に含む請求項記載の管理装置。
【請求項6】
ネットワークを介して管理装置に接続され、当該ネットワークに対するインタフェースを有しない工作機械から情報を取得することが可能な接続装置であって、
前記工作機械の制御盤から当該工作機械の稼働状態に関する情報である状態情報を取得する制御部と、
オペレータへ情報を出力し、および当該オペレータからの入力を受け付けるユーザインタフェースと、
前記ネットワークに接続し、前記工作機械にて発生したツール交換作業の開始に関する情報を前記管理装置に出力するとともに、当該工作機械にて発生した当該ツール交換作業の終了に関する情報を当該管理装置に出力するネットワークインタフェースと、
を備え
前記制御部は、
前記工作機械の前記制御盤から前記状態情報として、稼働時間を示す稼働時間信号および加工を行なったことを示すカウント信号を取得し、
前記ユーザインタフェースから、ツール交換関連情報を含む基本情報を取得し、
前記稼働時間信号および前記カウント信号の少なくとも何れか一つと、前記ツール交換関連情報と、を用いて前記工作機械のツール警告情報を算出して出力し、
前記ユーザインタフェースは、前記ツール警告情報を表示出力すること、
を特徴とする接続装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記工作機械にて発生した前記ツール交換作業の前記開始に関する情報として、前記ユーザインタフェースの交換開始ボタンに対するオペレータからの操作を受けたことによる情報を、前記ネットワークインタフェースを介して前記管理装置に出力し、
前記工作機械にて発生した前記ツール交換作業の前記終了に関する情報として、当該工作機械の前記制御盤から取得した連続運転に関する情報を、前記ネットワークインタフェースを介して前記管理装置に出力すること
を特徴とする請求項記載の接続装置。
【請求項8】
複数の工作機械の個々の工作機械に対しておよび/または個々の工作機械に接続された接続装置に対してネットワークを介して接続される管理装置と、を備えた工作機械管理システムであって、
前記管理装置は、
前記複数の工作機械の個々の工作機械にて発生したツール交換作業の開始に関する情報を前記ネットワークを介して取得する開始情報取得手段と、
前記ツール交換作業の終了に関する情報を前記ネットワークを介して取得する終了情報取得手段と、
取得した前記開始に関する情報と前記終了に関する情報とを用いて、前記個々の工作機械にて発生した前記ツール交換作業に要した時間を把握する把握手段と、
を備え、
前記終了に関する情報は、前記個々の工作機械の連続運転を判断するための時間情報、または当該時間情報から生成された交換終了を示す情報であり、
前記把握手段は、前記時間情報から得られた連続運転の時間が予め定められた時間を超えた場合には前記ツール交換作業が終了したと判断して当該ツール交換作業に要した時間を把握すること、
を特徴とする工作機械管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械管理システム、管理装置、および工作機械に接続される接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、交換対象となる刃具を容易に特定するために、所定の寿命回数ごとに刃具を交換しながらワークを加工する工作機械に用いられる刃具交換支援システムにて、刃具の使用回数をカウントし、この使用回数と、寿命回数と、を比較する制御装置と、刃具の交換の要否を問う交換支援ガイダンスを表示する表示装置と、を備えたものが提案されている。
特許文献2では、マイクロコンピュータなどによる数値制御により、所定の加工データに基づいてワークを切削加工する加工装置にて、ツールの使用時間が寿命に達すると適正な加工が行われず、ツールが破損して加工装置に損傷を与えてしまう恐れがあることに鑑み、作業者が、加工装置の使用時間を書き留めるなどの従来の作業に代えて、寿命に達したツールを検知するとともに、検知したツールの交換を作業者に促すツール管理システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2015/011800号公報
【文献】特許第6132664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、工作機械は、主に金属の材料を削って加工することで部品を作り出す機械であり、バイトやドリルなどの工具に代表されるツールを、材料に接触させて加工が行なわれる。例えば、工作機械の一つであるNC(Numerical Control)自動旋盤では、コンピュータでツールや材料の位置、速度を制御し、人の手を介さずに自動的に部品加工が行なわれる。このようなNC自動旋盤を用いて部品加工を行なう生産現場では、例えば数十台~数百台のNC自動旋盤が、1日24時間、停止せずに連日稼働し、加工作業が行なわれている場合がある。
【0005】
ここで、生産現場では、品質の管理とともに、工程管理や生産計画などの生産管理が行なわれる。かかる生産管理では、複数の工作機械の個々の工作機械が正常に稼働しているか否か、を正確に把握することが求められる。工作機械は、諸々の理由により停止するが、この停止が異常なものであるか、正常なものであるか、を正しく見極めることが生産管理では要求される。
【0006】
一方、工作機械では、加工によりツールが摩耗し、求める加工品質が得られなくなることから、予め定められた条件によりツール交換作業が行なわれる。この交換作業に要する時間は、その内容により一定ではないが、早いもので10分程度はかかり、試し削りなどの試運転を含めると30分程度はかかるものがある。また、その交換作業は、例えば3日に1回程度の頻度で生じる場合がある。このツール交換作業を行なう際には、工作機械は停止させなければならないが、このツール交換作業のための工作機械の停止は、異常なものではなく、正常なものとして把握すべきものである。
【0007】
しかしながら、従前にて、このツール交換作業に要する時間を正確に把握することが難しく、例えばオペレータが台帳へ記載した大雑把な時間を集計する、といった程度に留まっていた。特に、現状において数多く稼働している工作機械では、イーサネット(登録商標)などのネットワークに対する接続機能を有していない場合が多く、装置の外部へ情報を発信する必要性がないことから、作業時間を区別する情報などは生成していないことが多い。そのため、このような工作機械にてツール交換作業に要する時間を正確に把握することは特に困難である。ネットワークに対する接続機能を有しているか否かに関わらず、ツール交換作業に要する時間を正確に把握することができれば、生産管理も良好なものとなり、生産現場にてさらなる生産性の向上を図ることができる。
【0008】
本発明は、工作機械のツール交換作業に要した時間を、オペレータが台帳などに記載して管理する場合に比べて、より正確に把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、複数の工作機械の個々の工作機械に対しておよび/または個々の工作機械に接続された接続装置に対してネットワークを介して接続される管理装置と、を備えた工作機械管理システムであって、前記管理装置は、前記複数の工作機械の個々の工作機械にて発生したツール交換作業の開始に関する情報を前記ネットワークを介して取得する開始情報取得手段と、前記ツール交換作業の終了に関する情報を前記ネットワークを介して取得する終了情報取得手段と、取得した前記開始に関する情報と前記終了に関する情報とを用いて、前記個々の工作機械にて発生した前記ツール交換作業に要した時間を把握する把握手段と、を備え、前記開始に関する情報は、前記個々の工作機械のオペレータの操作に応じて出された信号であり、前記終了に関する情報は、前記個々の工作機械の連続運転を判断するための時間情報、または当該時間情報から生成された交換終了を示す情報であり、前記把握手段は、前記時間情報から得られた連続運転の時間が予め定められた時間を超えた場合には前記ツール交換作業が終了したと判断して当該ツール交換作業に要した時間を把握すること、を特徴とする工作機械管理システムである
求項に記載された発明は、前記接続装置は、前記ネットワークに対するインタフェースを有しない工作機械に接続され、前記工作機械の制御盤から当該工作機械の稼働状態に関する情報である状態情報を取得する制御部と、前記オペレータへの出力および当該オペレータからの入力を受け付けるユーザインタフェースと、前記ネットワークに接続して前記開始に関する情報および前記終了に関する情報を出力するネットワークインタフェースと、を有することを特徴とする請求項1記載の工作機械管理システムである。
請求項に記載された発明は、前記開始に関する情報は、前記接続装置にて前記ユーザインタフェースを介してなされた前記オペレータの操作に応じて出された信号であることを特徴とする請求項記載の工作機械管理システムである。
請求項に記載された発明は、複数の工作機械の個々の工作機械と、および/または個々の工作機械に接続された接続装置と、ネットワークを介して接続される管理装置であって、前記複数の工作機械の個々の工作機械にて発生したツール交換作業の開始に関する情報を前記ネットワークを介して取得する開始情報取得手段と、前記ツール交換作業の終了に関する情報を前記ネットワークを介して取得する終了情報取得手段と、取得した前記開始に関する情報と前記終了に関する情報とを用いて、前記個々の工作機械にて発生した前記ツール交換作業に要した時間を把握する把握手段と、を備え、前記開始に関する情報は、前記個々の工作機械のオペレータの操作に応じて出された信号であり、前記終了に関する情報は、前記個々の工作機械の連続運転を判断するための時間情報、または当該時間情報から生成された交換終了を示す情報であり、前記把握手段は、前記時間情報から得られた連続運転の時間が予め定められた時間を超えた場合には前記ツール交換作業が終了したと判断して当該ツール交換作業に要した時間を把握すること、を特徴とする管理装置である。
請求項に記載された発明は、前記複数の工作機械の個々の工作機械で加工される製品情報と、加工に関与する作業者情報とを含む基本情報を前記ネットワークを介して取得する基本情報取得手段と、取得した前記製品情報および前記作業者情報と、前記把握手段により把握した前記ツール交換作業に要した時間と、を関連付けて出力する出力手段と、を更に含む請求項記載の管理装置である。
請求項に記載された発明は、ネットワークを介して管理装置に接続され、当該ネットワークに対するインタフェースを有しない工作機械から情報を取得することが可能な接続装置であって、前記工作機械の制御盤から当該工作機械の稼働状態に関する情報である状態情報を取得する制御部と、オペレータへ情報を出力し、および当該オペレータからの入力を受け付けるユーザインタフェースと、前記ネットワークに接続し、前記工作機械にて発生したツール交換作業の開始に関する情報を前記管理装置に出力するとともに、当該工作機械にて発生した当該ツール交換作業の終了に関する情報を当該管理装置に出力するネットワークインタフェースと、を備え、前記制御部は、前記工作機械の前記制御盤から前記状態情報として、稼働時間を示す稼働時間信号および加工を行なったことを示すカウント信号を取得し、前記ユーザインタフェースから、ツール交換関連情報を含む基本情報を取得し、前記稼働時間信号および前記カウント信号の少なくとも何れか一つと、前記ツール交換関連情報と、を用いて前記工作機械のツール警告情報を算出して出力し、前記ユーザインタフェースは、前記ツール警告情報を表示出力すること、を特徴とする接続装置である。
請求項に記載された発明は、前記制御部は、前記工作機械にて発生した前記ツール交換作業の前記開始に関する情報として、前記ユーザインタフェースの交換開始ボタンに対するオペレータからの操作を受けたことによる情報を、前記ネットワークインタフェースを介して前記管理装置に出力し、前記工作機械にて発生した前記ツール交換作業の前記終了に関する情報として、当該工作機械の前記制御盤から取得した連続運転に関する情報を、前記ネットワークインタフェースを介して前記管理装置に出力することを特徴とする請求項記載の接続装置である。
請求項8に記載された発明は、複数の工作機械の個々の工作機械に対しておよび/または個々の工作機械に接続された接続装置に対してネットワークを介して接続される管理装置と、を備えた工作機械管理システムであって、前記管理装置は、前記複数の工作機械の個々の工作機械にて発生したツール交換作業の開始に関する情報を前記ネットワークを介して取得する開始情報取得手段と、前記ツール交換作業の終了に関する情報を前記ネットワークを介して取得する終了情報取得手段と、取得した前記開始に関する情報と前記終了に関する情報とを用いて、前記個々の工作機械にて発生した前記ツール交換作業に要した時間を把握する把握手段と、を備え、前記終了に関する情報は、前記個々の工作機械の連続運転を判断するための時間情報、または当該時間情報から生成された交換終了を示す情報であり、前記把握手段は、前記時間情報から得られた連続運転の時間が予め定められた時間を超えた場合には前記ツール交換作業が終了したと判断して当該ツール交換作業に要した時間を把握すること、を特徴とする工作機械管理システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工作機械のツール交換作業に要した時間を、オペレータが台帳などに記載して管理する場合に比べて、より正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態が適用される工作機械管理システムの一例を示した図である。
図2】コレクタPCおよびサーバのハードウェア構成を示す図である。
図3】工作機械の構成を示す斜視図である。
図4】ネットワークに対するインタフェースを有しない工作機械と、この工作機械に接続される接続装置とのシステム構成を示す図である。
図5】工作機械の制御盤からデータを取得して稼働情報を算出し、これを出力する、PLCにおける処理を示すフローチャートである。
図6】(a)~(d)は、ユーザインタフェースの表示部に表示される基本情報、状態情報の一例を示す図である。
図7】(a)、(b)は、接続装置のユーザインタフェースに表示される刃物交換画面の一例を示す図である。
図8】接続装置によるツール交換時間の送信処理を説明するためのフローチャートである。
図9】サーバによるツール交換時間の把握処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔工作機械管理システムの説明〕
図1は、本実施の形態が適用される工作機械管理システム1の一例を示した図である。図1に示す工作機械管理システム1は、工作機械10,50と、コレクタPC60と、データの収集を行なうサーバ70とを有している。工作機械10,50、コレクタPC60、およびサーバ70は、例えばイーサネット(登録商標)に代表されるLAN(Local Area Network)などのネットワーク90を介して接続されている。
【0013】
工作機械10は、所謂ネットワークI/F(インタフェース)を有さず、ネットワーク90への接続機能がない機械の一例である。本実施の形態では、工作機械10の制御盤20(後述)に接続される接続装置30を工作機械10に備え、ネットワーク90を介して外部とのデータの送受信を可能としている。
工作機械50は、ネットワークI/Fを制御部(図示せず)に備え、ネットワーク90を介して直接、外部とのデータの送受信を可能としている。接続装置30の機能は内蔵しており、図1では、工作機械50に接続装置30は備えられていない。
尚、工作機械10,50としては、例えば、旋盤、ボール盤、研削盤、フライス盤、中ぐり盤、歯切り盤、などがある。この中で、最も基本的な工作機械である旋盤は、例えば回転する材料に刃物などのツールを押し当て、これを送りながら切削加工を行なっている。
【0014】
コレクタPC60は、例えば製造工場の建屋毎など、所定数(例えば100台程度の数)の工作機械10,50からの情報を束ねて中継するコンピュータ装置である。コレクタPC60は、ネットワーク90を介して工作機械10の接続装置30を複数集め、または、ネットワーク90を介して工作機械50を複数集めている。そして、集計した情報を、ネットワーク90を介して、サーバ70に送信している。
【0015】
サーバ70は、本件の管理装置の一つとして機能している。コレクタPC60にネットワーク90を介して接続される他、工作機械10の接続装置30や、工作機械50に、直接、ネットワーク90を介して接続される。すなわち、サーバ70は、工作機械10の接続装置30や工作機械50に対してコレクタPC60を間に介し、または工作機械10の接続装置30や工作機械50に対して直接、ネットワーク90を介して接続されている。
【0016】
図2は、コレクタPC60およびサーバ70のハードウェア構成を示す図である。コレクタPC60およびサーバ70は、所謂パーソナルコンピュータ(PC)により構成され、一般のコンピュータ装置が有する各種機能を備えている。より具体的には、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種ソフトウェアを実行し本件の各種機能を果たすCPU(Central Processing Unit)81と、CPU81の作業用のメモリとして用いられるRAM82と、CPU81が実行するプログラムを記憶するメモリであるROM83とを備えている。また、ツール交換作業に要した時間情報などを記憶するメモリである記憶部84を備えている。更に、液晶ディスプレイなどで構成され各種情報を表示出力するディスプレイ85と、入力手段としてのキーボード86と、補助入力手段としてのポインティングデバイス87とを備えている。更に、工作機械10の接続装置30や工作機械50との間で、またコレクタPC60およびサーバ70の相互間にて、ネットワーク90を介して各種情報の送受信を行うネットワークインタフェース(ネットワークI/F)88を備えている。
【0017】
〔工作機械10,50の説明〕
次に、本実施の形態が適用される工作機械10,50について説明する。
図3は工作機械10の構成を示す斜視図である。図3に示す工作機械10は、コンピュータによる数値制御により稼働し、主軸台が移動する主軸台移動型のNC(Numerically Control)自動旋盤の一例である。
【0018】
工作機械10は、材料供給装置11、主軸台12、送り機構13,18、刃物台14、ベッド15、操作盤16、パイロットランプ17、および制御盤20を備えている。また、ネットワーク90への接続機能がない工作機械10は、接続装置30が備えられている。
材料供給装置11は、自動運転を続けるために、1本の加工が終わると自動的に次の材料を供給している。また、主軸台12は、チャックにより材料を掴み高速回転する主軸を軸受けで支えている。送り機構13,18は、旋盤の径方向に刃物台14を送る機構である。刃物台14は、ツールを装着する台であり、ツール交換の際には、刃物台14に取付けられている刃物の取り外し、新しい刃物の刃物台14への取付け、などが行なわれる。ベッド15は、工作機械10の基礎となる部分であり、主軸台12を支え、内部に制御盤20を備えている。また、操作盤16は、機械の運転・停止などのユーザからの指示を受け付けることや、機械の動作プログラムの作成や修正などを可能としている。また、パイロットランプ17は、電源のON/OFF、運転しているか否か、機械の状態、などを、点灯状態の違いによってオペレータに示している。さらに、制御盤20は、工作機械10の各種動きを制御するとともに、各機構部を動かす際のモータ等の各種アクチュエータに電力を供給している。
【0019】
尚、ネットワーク90への接続機能を有する工作機械50では、この接続装置30は不要である。しかし、ネットワーク90への接続を行なう際に各種、表示や入力を行なうためのユーザインタフェースを備えることが一般的である。例えば、図3に示すような工作機械10の操作盤16の機能を向上させ、かかるユーザインタフェースの機能を持たせてもよい。
【0020】
図4は、ネットワークに対するインタフェースを有しない工作機械10と、この工作機械10に接続される接続装置30とのシステム構成を示す図である。
工作機械10の制御盤20は、工作機械10の全体を統括して制御するシステム制御部21と、システム制御用のプログラムメモリであるROM22と、ツールデータや初期セットデータ、各種加工プログラムなどを記憶するRAM23を備えている。また、I/O接続29によって信号を入出力するI/O通信部24と、加工プログラムの作成処理などをシステム制御部21とともに行なう自動プログラミング部25を有している。更に、RAM23に記憶された加工プログラムを用いてモータなどの駆動部の制御やセンサによるセンシングなどをシステム制御部21とともに行なう加工動作制御部27を有している。また更に、操作盤16への出力および操作盤16からの入力に関する処理を行なう入出力制御部26を有している。更に、制御盤20は、パイロットランプ17の点灯を制御している。システム制御部21、I/O通信部24、自動プログラミング部25、入出力制御部26、加工動作制御部27は、CPUによって機能させることができる。
【0021】
接続装置30は、制御装置であるPLC(Programmable Logic Controller)31と、オペレータへの出力およびオペレータからの入力を受け付けるユーザインタフェース32とを有している。ユーザインタフェース32としては、タッチパネルなどの表示・入力機能を有したものや、バーコードリーダなどがある。
PLC31は、入力された情報をもとに演算を行ない、各種の稼働情報を算出する演算部33と、演算処理に用いるデータを記憶し、また演算処理に必要なプログラムを記憶するメモリ34を有している。また、工作機械10の制御盤20に設けられたI/O通信部24との間でI/O接続29を介して信号の受け渡しを行なう入出力部35と、ネットワーク90を介してコレクタPC60および/またはサーバ70の相互間にて、各種情報の送受信を行う通信部36を有している。
ユーザインタフェース32は、例えばタッチパネルで構成され、PLC31の演算部33にて算出された稼働情報などを表示する表示部37を備えている。また、例えばタッチパネルなどで構成され、基本情報の入力や、ツール交換に関する各種情報の入力などを行なう入力部38を備えている。
【0022】
〔PLC31の処理〕
次に、接続装置30のPLC31にて行なわれる処理について説明する。
まず、本実施の形態では、以下のような意味で用語を用いている。
「状態情報」…工作機械10の稼働状態に関する情報。工作機械10の制御盤20から接続装置30に出力される。例えば、稼働時間信号、カウント信号など。
「基本情報」…工作機械10で加工される製品情報と、加工に関与する作業者情報とを含み、主にユーザインタフェース32を介して入力される。「製品情報」としては製品名、ロットNO.など。「作業者情報」としては作業者IDなど。
「稼働情報」…状態情報と基本情報とを用いてPLC31で算出される情報。
【0023】
図5は、工作機械10の制御盤20からデータを取得して稼働情報を算出し、これを出力する、PLC31にて行なわれる処理を示すフローチャートである。
まず、接続装置30のPLC31は、入出力部35を介して工作機械10の制御盤20から工作機械10の状態情報を取得する(ステップ101)。ここで取得する状態情報としては、例えば、稼働時間を示す信号である稼働時間信号、例えば、加工を行なったことを数で示す信号であるカウント信号である。このカウント信号は、例えば、1つ加工する毎に1カウントされた信号である。また、稼働時間信号としては、例えば、1つの生産単位の作業の開始時間と終了時間をそのまま示した信号、これらの時間の差分を示した信号、などが挙げられる。ここで、1つの生産単位は、同種の製品を加工して生産する際の最小単位として「ロット」の文言を用いることができる。なお、「時間」は、「期間」の意味で用いる他、「時刻」そのものを示す場合もあるが、本件では両者を含めて用いている。
【0024】
次に、接続装置30のPLC31は、ユーザインタフェース32の入力部38から、オペレータが入力した基本情報を取得する(ステップ102)。基本情報としては、例えば、製品情報、作業者情報、自主検査タイミング、ツール交換関連情報、などが存在する。オペレータからの入力は、例えばタッチパネルに表示されたキーボードを使って入力するものや、QRコード(登録商標)や1次元・2次元バーコードなどのコード情報をリーダから読み込むような態様もある。入力される製品情報としては、製品名、ロット番号(ロットNO.)、ロットサイズなどがある。また、入力される作業者情報としては、作業者IDなどがある。この作業者IDは、例えばロットの開始時に登録するようにしてもよい。また、入力される自主検査タイミングは、例えば、自主検査の1回毎の設定時間を設定して入力する。例えば、1回目は3時間、2回目は4時間、3回目は5時間等、例えば相対時間として入力する。さらに、入力されるツール交換関連情報としては、ツール交換までの生産数などのツール交換タイミングなどである。例えば、「y個毎」、ツールの寿命までの値として「ツール寿命設定値」などである。
【0025】
次に、PLC31の演算部33は、取得した状態情報と、取得した基本情報とを用いて、稼働情報を算出する(ステップ103)。算出される稼働情報としては、生産個数、サイクルタイム、稼働率、ツール交換タイミングの到達、ロット完了までの時間、自主検査時間、などがある。
生産個数は、例えばステップ101にて取得したカウント信号から算出される。
サイクルタイムは、例えば取得したカウント信号の間隔から算出される。
稼働率は、例えばステップ101にて取得した稼働時間信号から得られた稼働時間から算出される。
ツール交換タイミングの到達は、例えば、カウント信号から算出した生産個数と、オペレータが入力した基本情報の中のツール交換関連情報と、から算出される。このツール交換タイミングの到達は、「ツール寿命」であり、警告のタイミングも選定される。
ロット完了までの時間は、例えば、算出されたサイクルタイムと、ユーザインタフェース32を介して入力されたロットサイズと、から算出される。
自主検査時間は、例えばステップ101にて取得した稼働時間信号から得られた稼働時間と、入力された自主検査タイミングと、から算出される。
【0026】
次に、PLC31の演算部33は、ユーザインタフェース32の表示部37に対し、入力された基本情報と、算出された稼働情報とを出力する(ステップ104)。
図6(a)~(d)は、ユーザインタフェース32の表示部37に表示される基本情報、状態情報の一例を示す図である。
図6(a)はメニュー画面の一例を示している。この図6(a)に示すメニュー画面では、基本画面121、稼働率履歴122、ツール寿命123、ツール警告124、および刃物交換ボタン125等の、表示遷移のためのボタンが準備されている。この表示遷移のためのボタンとしては、その他、切出数履歴、設備点検、自主検査、計画停止、ブランク待ちなどがある。ここでは、PLC31がネットワーク90を介してサーバ70へ稼働状況を転送するとともに、ユーザインタフェース32のモニタである表示部37にも稼働状況を表示し、オペレータの作業の利便性を図っている。
【0027】
ここで、基本画面121は、オペレータが入力操作を行なう際に表示部37に最初に表示される画面へ推移させるボタンである。稼働率履歴122は、例えば、予め定められた時間内における稼働率の変化などを表示する画面へ推移させるボタンである。ツール寿命123およびツール警告124は、複数のツールのうち個々のツールについて寿命に達しているか否か、警告ツールが存在するか否かを表示する画面へ推移させるボタンである。刃物交換ボタン125は、ツール交換作業の一例である刃物交換作業を実行する際に、オペレータが操作を行なうための画面へ推移させるためのボタンである。
【0028】
図6(b)は、図6(a)に示すメニュー画面の中から基本画面121のボタンが押された際に表示される基本画面の一例を示している。この図6(b)に示す基本画面表示では、製品情報の一例としてロット番号(ロットNO.)、製品名の一例として部品番号、作業者情報の一例として作業者IDについて、その内容が表示される。これらは上述した「基本情報」であり、ユーザインタフェース32の入力部38からオペレータが入力した情報が表示されている。より具体的には、QRコードをリーダによって読み取った結果が表示される。
【0029】
また、図6(c)は、図6(a)に示すメニュー画面の中から稼働率履歴122のボタンが押された際に表示される稼働率履歴画面の一例を示している。この表示画面では、ステップ103にて、PLC31の演算部33にて算出された稼働率が、履歴情報として表示される。ここでは、例えば24時間前までの稼働率をグラフで表示しており、その内容を、例えば1時間毎に更新している。このように、ユーザインタフェース32の表示部37では、オペレータが入力した基本情報とともに、I/O接続29を介して制御盤20からPLC31が取得した、工作機械10の状態情報をもとに、PLC31の演算部33にて算出された稼働情報も表示出力している。
【0030】
なお、この図6(b)に示す基本画面表示には、ツールカウンタ128のボタンがあるが、これを押すことでツールカウンタ画面が別に表示される。
図6(d)は、ツールカウンタ128のボタンが押された際のツールカウンタ画面の一例を示す図である。このツールカウンタ画面では、各ツールのカウント状態と、各ツールについて、オペレータ等により入力された警告と寿命の設定値である警告数、寿命数が表示される。このカウント状態は、図5のステップ101で取得した、工作機械10のカウント信号から得られる使用回数である。また、警告数や寿命は、オペレータが入力部38を介して入力した情報である。
なお、警告および寿命の基準として、稼働時間に関する情報を加え、またはこの稼働時間に関する情報だけを用いることも可能である。
【0031】
また、図6(a)に示すツール寿命123、ツール警告124のボタンを押下することで、警告ツールが存在するか否か、ツール寿命設定値に到達しているか否かを確認できる。この表示を行なうに際し、図6(d)に示すツールカウンタ画面にて、オペレータがキーボード等を使って入力した「基本情報」の1つである「ツール交換関連情報」が用いられている。このように、本実施の形態では、工作機械10の制御盤20から状態情報として、稼働時間を示す稼働時間信号および加工を行なったことを示すカウント信号を取得し、ユーザインタフェース32から、ツール交換関連情報を含む基本情報を取得し、この稼働時間信号およびカウント信号の少なくとも何れか一つと、このツール交換関連情報と、を用いて、工作機械10のツール警告情報を算出し、出力している。
【0032】
次に、図5に示すステップ104の処理に加えて、PLC31は、状態情報、基本情報、および稼働情報の少なくとも何れか一つを、通信部を介してサーバ70へ出力する(ステップ105)。まず、PLC31が状態情報と基本情報とをそのまま通信部36を介して送信し、サーバ70で稼働情報を生成する態様がある。また、PLC31の演算部33にて、状態情報と基本情報とを用いて稼働情報を生成し、通信部36を介してこの稼働情報を送信する態様がある。状態情報と基本情報とを用いて稼働情報を生成する作業は、例えばコレクタPC60にて行なうことも可能である。このようにして、ユーザインタフェース32の表示部37でオペレータに対して表示した情報と同様な情報を、コレクタPC60やサーバ70のディスプレイで確認することが可能である。
【0033】
また、PLC31は、オペレータへの通知の必要性に応じて、工作機械10のパイロットランプ17を点灯させるための信号を、入出力部35を介して工作機械10の制御盤20に出力する(ステップ106)。ここで、「オペレータへの通知の必要性」の一例としては、ツール交換タイミングや自主検査のお知らせ等について、通知することが好ましいと判断される場合が挙げられる。制御盤20のシステム制御部21はパイロットランプ17を点灯させるための信号をI/O通信部24を介して取得すると、かかる信号に基づいてパイロットランプ17を点灯制御する。
上述したステップ101~ステップ106の処理により、稼働情報の算出・出力処理の一例が終了する。
【0034】
以上、詳述したように、本実施の形態では、ネットワーク機能がないNC自動旋盤などの工作機械10に、接続装置30を接続することで、種々の機能を実現している。例えば、基本情報の登録が、接続装置30のユーザインタフェース32に設けられたタッチパネルなどの入力部38から可能となる。また、稼働情報を、このタッチパネルなどの表示部37へリアルタイムに表示でき、生産現場での設備情報の視確認を実現している。さらに、ネットワーク90を介してサーバ70でデータ収集させ、サーバ70のディスプレイ85にて設備稼働状況の確認も可能としている。なお、サーバ70のディスプレイ85に限られず、別途設けたクライアントPCでも設備稼働状況の確認が可能である。
【0035】
〔ツール交換時間の把握処理〕
次に、工作機械10のツール交換作業に要した時間の把握処理について説明する。
図7(a)、(b)は、接続装置30のユーザインタフェース32に表示される刃物交換画面の一例を示す図である。これらは、図6(a)に示す刃物交換ボタン125を押下することで遷移する。ここでは、「ツール交換作業」として、「刃物交換作業」を例示しており、図7(a)は刃物交換開始ボタンを表示している例を示し、図7(b)は刃物交換中ボタンを表示している例を示している。
この刃物の交換作業では、古い刃物の取り外しと新しい刃物の取付けの後、例えば1サイクルの試運転で検査用品物を1個切り出し、検査用品物の寸法測定結果に応じて刃物取付け位置の再調整等を行う、といった寸法出し作業が繰り返される。そして、検査用品物の寸法測定結果が規格内となったら生産を開始する、といった処理が行なわれる。
なお、工作機械10の種類によって、交換されるツールの種類も多々、存在する。刃物としては、例えば、バイト、チップ、カッター、エンドミル、ドリル、リーマ、ボーリング、などがある。また、フライス工具や砥石車などもツールの一例である。
【0036】
図7(a)、(b)に示す表示部37は、例えばタッチパネルなどで構成され、図7(a)に示す刃物交換開始ボタン141、図7(b)に示す刃物交換中ボタン142等は、ユーザインタフェース32における入力部38に該当する。この刃物交換開始ボタン141は、刃物交換の開始に際して押すボタンであり、オペレータがツール交換作業の開始を操作する際に用いられる。ツール交換開始ボタンの一例である刃物交換開始ボタン141がONされると、ツール交換信号ONがPLC31に認識される。刃物交換中ボタン142は、「刃物交換中」の状態をオペレータに示すとともに、オペレータが押下することで刃物交換の終了を作業者に報告させるもので、本件の「ツール交換終了ボタン」として機能させている。ツール交換終了ボタンの一例である刃物交換中ボタン142がONされると、ツール交換信号OFFがPLC31に認識される。
【0037】
なお、「連続運転 3分経過で交換中を自動戻し」の説明表記は、ツール交換作業が終了したとする連続運転の時間を示している。これは、オペレータが刃物交換作業を終了したにも関わらず刃物交換中ボタン142を押し忘れた際に、刃物交換中の状態が継続することを避けるための、みなし終了時間であり、強制的な終了制御である。
なお、「連続運転 3分経過で交換中を自動戻し」の説明表示にある数字部分143について、例えばオペレータが数字部分143をタッチすると、ポップアップ画面が出て数字を変更することができる。すなわち、ツール交換作業の中断とみなす連続運転の時間は、必要に応じてオペレータが修正できる。
【0038】
図8は、接続装置30によるツール交換時間の送信処理を説明するためのフローチャートである。
まず、接続装置30のPLC31は、ユーザインタフェース32を介してツール交換画面を表示する(ステップ201)。表示される画面は、例えば、図7(a)に示すようなツール交換画面である。そして、まず、PLC31は、みなし終了時間の修正があるか否かを判断する(ステップ202)。この「みなし終了時間」は、例えば図7(a)に示すような数字部分143であり、この数字部分143が修正されたか否かが判断される。修正された場合には(ステップ202でYes)、修正されたみなし終了時間を、メモリ34に記憶する(ステップ203)。みなし終了時間が修正されていない場合には(ステップ202でNo)、そのまま次の処理に移行する。
【0039】
そして、接続装置30のPLC31は、ユーザインタフェース32の入力部38を介してツール交換開始ボタンの押下がなされたか否かを判断する(ステップ204)。図7(a)に示す例では、ツール交換開始ボタンの一例である刃物交換開始ボタン141が押下されたか否かが判断される。ツール交換開始ボタンの押下がなされたと判断された場合には(ステップ204でYes)、すなわち、ツール交換開始ボタンがONされ、ツール交換信号ONを認識した場合には、ツール交換開始時間に関する情報を、ネットワーク90を介してサーバ70に送信する(ステップ205)。ツール交換開始ボタンの押下がなされない場合には、ステップ204に戻って待機する。
【0040】
なお、ステップ204でツール交換開始ボタンの押下がなされた場合には、ツール交換画面を他の画面に推移させてもよい。例えば、図7(a)に示す状態から、図7(b)に示す状態に画面表示を遷移させる等である。図7(a)では、刃物交換開始ボタン141を有する画面が、PLC31からの指示のもと、表示部37を介して表示出力されている。また、この刃物交換開始ボタン141が押下された後、PLC31は、画面の遷移指示をユーザインタフェース32に出力し、例えば図7(b)に示すような刃物交換中ボタン142を有する画面を、表示部37を介して表示出力させる。この図7(b)に示す例では、この刃物交換中ボタン142の表示部分を反転表示させて明るく表示させ、刃物交換中であることをオペレータに示している。
【0041】
その後、接続装置30のPLC31は、ユーザインタフェース32の入力部38を介してツール交換終了ボタンの押下がなされたか否かを判断する(ステップ206)。図7(b)に示す例では、刃物交換中ボタン142が押下されたか否かが判断される。ツール交換終了ボタンの押下がなされた場合には(ステップ206でYes)、すなわち、ツール交換終了ボタンがONされ、ツール交換信号OFFを認識した場合には、ツール交換終了時間に関する情報を、ネットワーク90を介してサーバ70に送信する(ステップ211)。そして、図7(b)に示す例では、刃物交換中ボタン142が押下された後、PLC31は、画面の遷移指示をユーザインタフェース32に出力し、例えば図7(a)に示すような刃物交換開始ボタン141を有する画面を、表示部37を介して表示出力させる。ツール交換終了ボタンの押下がなされない場合には(ステップ206でNo)、オペレータが交換終了ボタンの押下を忘れた場合のために準備されている処理へ移行する。
【0042】
すなわち、接続装置30のPLC31は、工作機械10の制御盤20から得られる連続運転(自動運転)に関する信号が得られるか否かによって、工作機械10にて連続運転が開始されたか否かを判断する(ステップ207)。連続運転が開始されていない場合には(ステップ207でNo)、ステップ206へ戻り、ツール交換終了ボタンの押下がなされたか否かの判断を継続する。連続運転が開始された場合には(ステップ207でYes)、連続運転時間の計測を行なう(ステップ208)。そして、PLC31は、連続運転時間が、記憶されている「みなし終了時間」に達したか否かを判断する(ステップ209)。そして、みなし終了時間に達するまで、連続運転時間の計測が行なわれる(ステップ209でNo)。みなし終了時間に達した場合には(ステップ209でYes)。PLC31は、みなし終了時間に達したときの時間をツール交換終了時間とみなし(ステップ210)、このみなされたツール交換終了時間を、ネットワーク90を介してサーバ70に送信し(ステップ211)、一連の処理が終了する。
【0043】
このように、本実施の形態では、工作機械10に接続された接続装置30のユーザインタフェース32に、運転準備画面として、「ツール交換開始ボタン」の一例である刃物交換開始ボタン141と、「ツール交換終了ボタン」の一例である刃物交換中ボタン142とを設けた。そして、オペレータの操作に応じて、ツール交換作業に関する信号を出力するように構成した。すなわち、「ツール交換開始ボタン」の押下によりツール交換信号ONを出力し、「ツール交換終了ボタン」の押下によりツール交換信号OFFを出力した。このツール交換信号ONをPLC31が認識した時間をツール交換開始時間としてサーバ70に送信し、ツール交換信号OFFをPLC31が認識した時間をツール交換終了時間としてサーバ70に送信している。
なお、サーバ70に送信する時間情報は、オペレータの操作に応じて出された信号の一例ではあるが、送信するものが時間そのものではなく、「ツール交換信号ON」「ツール交換信号OFF」をそのまま送信するように構成してもよい。
【0044】
さらに、本実施の形態では、ツール交換時間計測の強制終了を行なっている。例えば、「ツール交換終了ボタン」をオペレータが押し忘れたとき、連続運転である自動運転が一定時間経過したら、強制的に交換終了としている。ここで「連続運転」としたのは、寸法出しを行なう際の試運転と区別するためである。
【0045】
なお、図8に示す例では、強制的な終了制御として、連続運転の時間が予め定められた時間に達したときの「みなし終了時間」を利用していたが、オペレータによる時間情報の直接入力により強制的な終了制御を行なうことも可能である。例えば、「ツール交換強制終了時間」の入力画面を別途用意し、「ツール交換強制終了時間」を直接、オペレータに入力させる。このような態様でも、PLC31は、ツール交換終了時間を把握することができる。
【0046】
図9は、サーバ70によるツール交換時間の把握処理を説明するためのフローチャートである。管理装置の一例としての集中管理サーバであるサーバ70では、コレクタPC60を介してまたは接続装置30から直接、ネットワークインタフェース88(図2参照)を介してツール交換開始時間を受信する(ステップ301)。また、このツール交換開始時間の受信と同時に、または別のタイミングで、ツール交換を行った工作機械10の情報、および加工中の製品情報と作業者情報とを、例えばネットワークインタフェース88を介して受信して認識する(ステップ302)。また、このツール交換開始時間の受信と同時に、または別のタイミングで、ツール交換を開始したツールの属性情報を、例えばネットワークインタフェース88を介して受信して認識する(ステップ303)。ここで、ツールの属性情報とは、ツールを識別する識別番号などである。
【0047】
その後、管理装置の一例としての集中管理サーバであるサーバ70では、コレクタPC60を介してまたは接続装置30から直接、ネットワークインタフェース88を介してツール交換終了時間を受信する(ステップ304)。その後、サーバ70のCPU81(図2参照)は、取得したツール交換開始時間とツール交換終了時間とから、ツール交換作業に要した時間を算出し把握する(ステップ305)。そして、サーバ70のCPU81は、取得した工作機械情報、製品情報、作業者情報、ツールの属性情報とともに、ツール交換作業に要した時間情報を、例えばディスプレイ85へ出力する(ステップ306)。例えば、表の一覧形式にて、個々の工作機械10の情報と、加工される製品名およびロットNo.からなる製品情報と、加工に関与した作業者IDからなる作業者情報と、ツールの属性情報と、と共に、ツール交換作業に要した時間が関連付けて、表示される。
【0048】
以上のようにして、管理装置の一例であるサーバ70にて、ツール交換作業に要した時間を把握する処理が実行されるが、接続装置30から、例えば、「ツール交換信号ON」「ツール交換信号OFF」の信号が受信される場合には、サーバ70にて時間に変換することもできる。すなわち、「ツール交換信号ON」を取得した時間を記憶し、「ツール交換信号OFF」を取得した時間を記憶し、これらの差から、ツール交換作業に要した時間を把握する態様である。また、「ツール交換終了ボタン」をオペレータが押し忘れたときの処理についても、「みなし終了時間」を予め取得しておけば、連続運転開始の信号と、その後に運転が終了した信号を受信していないならば、その「みなし終了時間」が終えた時間を「ツール交換終了時間」として把握してもよい。
【0049】
このようにしてサーバ70にて把握されたツール交換作業に要した時間情報は、例えば、工作機械10の稼働している全体時間からの比率で、例えば、全体稼働率(100%)に対して何%か、といった具合で把握される。本実施の形態によれば、従来、把握できなかったツール交換作業に要する時間を正確に把握でき、生産現場におけるさらなる生産性の向上に寄与させることができる。
【0050】
なお、図3図9を用いた上記説明では、ネットワークに対するインタフェースを有しない工作機械10に接続装置30を設け、この接続装置30の機能と、接続装置30から取得した情報をもとにしたサーバ70の機能について説明した。しかしながら、本実施の形態は、ネットワーク機能を備えた工作機械50に対しても同様に適用できる。ネットワーク機能を備えた工作機械50では、図4に示したような接続装置30の機能を内部に備えており、そのユーザインタフェース(図示せず)に表示された情報、例えば「ツール交換開始ボタン」や、「ツール交換終了ボタン」に対して、オペレータからの入力操作がなされ、同様な処理が実行される。
【0051】
また、本実施の形態では、オペレータが「ツール交換終了ボタン」を押し忘れた場合の対応として、連続運転時間が、記憶されている「みなし終了時間」に達したか否かで判断している。しかしながら、例えば、「連続運転ボタン」を用意し、この「連続運転ボタン」のON信号が取れるのであれば、「ツール交換開始ボタン」が押下された後、その「連続運転ボタン」が押下されたら、ツール交換終了とみなすように構成することも可能である。
さらに、連続運転の開始時を「ツール交換終了時間」とすることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1…工作機械管理システム、10…工作機械、17…パイロットランプ、20…制御盤、30…接続装置、31…PLC、32…ユーザインタフェース、50…工作機械、60…コレクタPC、70…サーバ、90…ネットワーク
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