(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】鉄道作業車両用伸縮レール装置
(51)【国際特許分類】
E01B 23/00 20060101AFI20230328BHJP
B61J 1/10 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
E01B23/00
B61J1/10 B
(21)【出願番号】P 2019065401
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大竹 由行
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-150819(JP,A)
【文献】特開2011-208477(JP,A)
【文献】特開2001-146701(JP,A)
【文献】特開平07-329781(JP,A)
【文献】特開平06-193004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 23/00
B61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線レールの側方に設けられた作業車両の保管場所から本線レールまで作業車両を移動させるために、本線レールとほぼ直交方向に交差するように前後方向に伸縮可能に設けられるレール装置であって、
基端と先端とを有し前記本線レールに対しほぼ直交方向に伸びるように前記保管場所のベース上に固定される固定レールと、
基端と先端とを有し基端側を前記固定レールの基端部上にまた先端側を固定レールの先端部上に配置して前記固定レール上に載せ置かれる収縮位置と基端側が前記固定レールの先端側と上面を一致させて延線方向である前後方向に固定レールと連続する伸長位置との間で前記固定レールの上をそれの延線方向である前後方向に往復移動可能に設けられる可動レールとを具備する伸縮レール装置において、
前記固定レールは、作業車両の車輪を載せ受ける上部フランジと、前記ベースに固定される下部フランジと、両フランジの中央間を接続する垂直のウェブとを具備し、
前記可動レールは、作業車両の車輪を載せ受ける走行部と、当該走行部の左右両側から相対向して下方へ延出する一対の脚部とを有し、全体が断面ほぼコ字状に構成され、収縮位置において前記走行部を前記上部フランジ上に乗せ、前記固定レールを跨いで前記固定レール上に載せ置き可能に構成され、
前記可動レールの基端側の前記脚部には、伸長位置において前記固定レールの先端側の前記ウェブの左右側面に対向するように延出する支持板がそれぞれ固着され、
前記固定レールと前記可動レールとの間には、伸長位置にある前記可動レールを後退させる際に前記可動レールの基端側を前記固定レールの先端部上に押し上げるための押上手段が設けられ、
前記押上手段は、前記支持板の対向方向と反対側である外側へ突出するように
前記支持板上に設けられる押上用ローラと、伸長位置にある前記可動レールの基端側が後退して前記固定レールの先端部上に乗り上げるまでの間前記押上用ローラに係合して前記可動レールの基端側を上方へ押し上げる力を付与するように固定レールの先端側の左右両側に設けられる押上機構とを具備し、
前記押上機構は、前記押上用ローラに係合して起立・転倒する押上レバーと、この押上レバーを常時起立方向に回転付勢する付勢手段とを具備し、
前記押上レバーは、前記可動レールが伸長位置にあるとき前記押上用ローラに押されて前記付勢手段を畜勢しつつ転倒し、可動レールの基端部が前記固定レールの先端部上に乗った位置にあるとき付勢手段の放勢により押上用ローラを押し上げて起立するように前記付勢手段により付勢され、
前記可動レールを収縮方向へ後退操作する際の初期の力を前記押上機構で補助するように構成される伸縮レール装置において、
前記固定レールの先端側の前記ウェブの左右側面には、前記可動レールの基端側を前記固定レールの先端部上へ手動にて引き上げる際に、前記押上用ローラが前記押上レバーの回転半径を超えて引き上げられることがないように
前記押上用ローラの移動範囲を規制するためのストッパが突設されることを特徴とする伸縮レール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道線路における本線レールの脇に設けられた作業車両の保管場所から本線レールまで作業車両を移動させるために、本線レールとほぼ直交方向に交差するように伸縮可能に設けられるレール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道作業車両用の伸縮レール装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。これは、作業車両の保管場所に固定された固定レールの上に載せ置かれた可動レールを、必要時に引き出して所定位置まで延長する形式のものである。
この伸縮レール装置においては、固定レールが、本線レールに対しほぼ直交方向に伸びるように保管場所のベース上に固定される。可動レールは、基端側を固定レールの基端部上にまた先端側を固定レールの先端部上に配置して固定レール上に載せ置かれる収縮位置と、基端側が固定レールの先端側と上面を一致させて延線方向である前後方向に固定レールと連続する伸長位置との間で固定レールの上をそれの延線方向である前後方向に往復移動可能に設けられる。
固定レールは、作業車両の車輪を載せ受ける上部フランジと、ベースに固定される下部フランジと、両フランジの中央間を接続する垂直のウェブとを具備する。
可動レールは、作業車両の車輪を載せ受ける走行部と、当該走行部の左右両側から相対向して下方へ延出する一対の脚部とを有し、全体が断面ほぼコ字状に構成され、収縮位置において走行部を固定レールの上部フランジ上に乗せ、固定レールを跨いで固定レール上に載せ置くことができるように構成される。
可動レールの基端側の脚部には、伸長位置において固定レールの先端側のウェブの左右側面に対向するように延出する支持板がそれぞれ固着される。
固定レールと可動レールとの間には、伸長位置にある可動レールを後退させる際に可動レールの基端側を固定レールの先端部上に押し上げるための押上手段が設けられる。
押上手段は、支持板の対向方向と反対側である外側へ突出するように支持板上に設けられる押上用ローラと、伸長位置にある可動レールの基端側が後退して固定レールの先端部上に乗り上げるまでの間、押上用ローラに係合して可動レールの基端側を上方へ押し上げる力を付与するように固定レールの先端側の左右両側に設けられる押上機構とを具備する。
押上機構は、押上用ローラに係合して起立・転倒する押上レバーと、この押上レバーを常時起立方向に回転付勢する付勢手段とを具備する。
押上レバーは、可動レールが伸長位置にあるとき、押上用ローラに押されて付勢手段を畜勢しつつ転倒し、可動レールの基端部が固定レールの先端部上に乗った位置にあるとき、付勢手段の放勢により押上用ローラを押し上げて起立するように付勢手段により付勢される。
押上手段により、可動レールを収縮方向へ後退操作する際の初期の力を押上機構で補助するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の伸縮レール装置においては、伸長状態にある可動レールを収縮位置に復旧させるために、可動レールの基端側を固定レールの先端部上へ手動にて引き上げる際に、勢い余って、押上用ローラが押上レバーの回転半径を超える位置まで引き上げられると、押上用ローラと押上レバーとの係合が外れてしまう。可動レールは大重量であるから、いったん係合が外れた押上用ローラを適正位置に戻すのは容易でないという問題点がある。
したがって、この発明は、可動レールを固定レール上へ手動にて引き上げる際に、押上用ローラが押上レバーの回転半径を超えて引き上げられることがない伸縮レール装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための、本発明の伸縮レール装置は、可動レール2が、作業車両の車輪を載せ受ける走行部2bと、当該走行部2bの左右両側から相対向して下方へ延出する一対の脚部2cとを有し、全体が断面ほぼコ字状に構成され、収縮位置において走行部2bを固定レール1の上部フランジ1b上に乗せ、固定レール1を跨いで固定レール1上に載せ置くことができるように構成される。可動レール2の基端部2a側の脚部2cには、伸長位置において固定レール1の先端部1a側のウェブ1dの左右側面に対向するように延出する支持板3がそれぞれ固着される。固定レール1と可動レール2との間には、伸長位置にある可動レール2を後退させる際に可動レール2の基端部2a側を固定レール1の先端部1a上に押し上げるための押上手段4が設けられる。押上手段4は、支持板3の対向方向と反対側である外側へ突出するように支持板3上に設けられる押上用ローラ5と、伸長位置にある可動レール2の基端部2aが後退して固定レール1の先端部1a上に乗り上げるまでの間、押上用ローラ5に係合して可動レール2の基端部2a側を上方へ押し上げる力を付与するように固定レール1の先端側の左右両側に設けられる押上機構6とを具備する。押上機構6は、押上用ローラ5に係合して起立・転倒する押上レバー8と、この押上レバー8を常時起立方向に回転付勢する付勢手段9とを具備する。押上レバー8は、可動レール2が伸長位置にあるとき、押上用ローラ5に押されて付勢手段9を畜勢しつつ転倒し、可動レール2の基端部が固定レール1の先端部1a上に乗った位置にあるとき、付勢手段9の放勢により押上用ローラ5を押し上げて起立するように付勢手段9により付勢される。可動レール2を収縮方向へ後退操作する際の初期の力を押上手段4で補助するように構成される。固定レール1の先端部1a側のウェブ1dの左右側面には、可動レール2の基端側を固定レール1の先端部上へ手動にて引き上げる際に、押上用ローラ5が押上レバー8の回転半径を超えて引き上げられることがないように、それの移動範囲を規制するためのストッパ10が突設される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の伸縮レール装置においては、押し上げ用ローラ5の移動範囲がストッパ10により規制されるため、可動レール2を固定レール1上へ手動にて引き上げる際に、押上用ローラ5が押上レバー8の回転半径を超えて引き上げられることがなく、押し上げ用ローラ5が押上レバー8から外れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】伸長状態の伸縮レール装置における接続部の正面図である。
【
図2】伸長状態の伸縮レール装置における接続部の平面図である。
【
図4】可動レールが後退初期の状態にある伸縮レール装置における接続部部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
鉄道作業車両用の伸縮レール装置は、作業車両走行させるための固定レール1と可動レール2とを具備する。固定レール1は、作業車両の保管場所に固定される。可動レール2は、常時は固定レール1の上に載せ置かれた収縮位置にあり、必要時に伸長位置へ引き出され、固定レール1と接続され(
図1)、図示しない本線レールまで延長される。したがって、可動レール2は、収縮位置と伸張位置の間で固定レール1の上をそれの延線方向である前後方向に往復移動可能に設けられる。
【0009】
この伸縮レール装置においては、固定レール
1が、図示しない本線レールに対しほぼ直交方向に伸びるように保管場所のベースB上に固定される。可動レール2は、図示しない収縮位置において、基端部2a側を固定レール1の図示しない基端部上に、また図示しない先端側を固定レール1の先端部1a上に配置して固定レール1上に載せ置かれ、
図1,2に示す伸張位置においては、基端部2a側が固定レール1の先端1a側と上面を一致させて延線方向である前後方向に連続する。
【0010】
固定レール1は、作業車両の車輪を載せ受ける上部フランジ1bと、ベースBに固定される下部フランジ1cと、両フランジ1b,1cの中央間を接続する垂直のウェブ1dとを具備する。
【0011】
可動レール2は、作業車両の車輪を載せ受ける走行部2bと、当該走行部2bの左右両側から相対向して下方へ延出する一対の脚部2cとを有し、全体が断面ほぼコ字状に構成され、収縮位置において走行部2bを固定レール1の上部フランジ1b上に乗せ、固定レール1を跨いで固定レール1上に載せ置くことができるように構成される。
【0012】
可動レール2の基端部2a側の脚部2cには、固定レール1側へ延出する支持板3がそれぞれ固着される。支持板3は、
図1,2に示す伸長位置において固定レール1の先端部1a側のウェブ1dの左右側面に対向するように配置される。
【0013】
固定レール1と可動レール2との間には、伸長位置にある可動レール2を収縮位置へを後退させる際に、可動レール2の基端部2aを固定レール1の先端部1a上に押し上げるための押上手段4が設けられる。
【0014】
押上手段4は、可動レール2側の支持板3に設けられる押上用ローラ5と、固定レール1の先端側の左右両側に設けられる押上機構6とを具備する。押上機構6は、伸長位置にある可動レール2の基端側が後退して固定レール1の先端部1a上に乗り上げるまでの間、押上用ローラ5に係合して可動レール2の基端側を上方へ押し上げる力を付与する。
【0015】
押上用ローラ5は、支持板3上に、外側へ突出するように設けられる。支持板3の内側には、押上用ローラ5と同心上に外れ止め用ローラ7が設けられる。
【0016】
押上機構6は、押上用ローラ5に係合して起立・転倒する押上レバー8と、この押上レバー8を常時起立方向に回転付勢する付勢手段9とを具備する。
【0017】
押上レバー8は、
図1,2に示すように、可動レール2が伸長位置にあるとき、押上用ローラ5に押されて付勢手段9を畜勢しつつ転倒し、
図4に示すように、可動レール2の基端部2aが固定レール1の先端部1a上に乗った位置にあるとき、付勢手段9の放勢により押上用ローラ5を押し上げて起立するように付勢される。
【0018】
固定レール1の先端側のウェブ1dの左右側面には、可動レール2の基端部2a側を固定レール1の先端部1a上へ手動にて引き上げる際に、押上用ローラ5が押上レバー8の回転半径を超えて引き上げられることがないように、それの移動範囲を規制するためのストッパ10が突設される。図示の実施形態において、ストッパ10は、押上用ローラ5と同心上に設けられた外れ止め用ローラ7の動きを押上レバー8の回転半径内に規制する円弧状のガイド面10aを有する。
【符号の説明】
【0019】
1 固定レール
1a 先端部
1b 上部フランジ
1c 下部フランジ
1d ウェブ
2 可動レール
2a 基端部
2b 走行部
2c 脚部
3 支持板
4 押上手段
5 押上用ローラ
6 押上機構
7 外れ止めローラ
8 押上レバー
9 付勢手段
10 ストッパ
10a ガイド面