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特許7252041コモンモード挿入損失を使用したケーブル又は配線設備のシールド導通試験
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】コモンモード挿入損失を使用したケーブル又は配線設備のシールド導通試験
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20230328BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20230328BHJP
【FI】
G01R31/54
G01R31/08
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019072120
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2019184606
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】15/945,600
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509233459
【氏名又は名称】フルークコーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Fluke Corporation
【住所又は居所原語表記】6920 Seaway Boulevard, Everett, Washington 98203 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エス・ボットマン
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0146666(US,A1)
【文献】特表2013-528895(JP,A)
【文献】国際公開第2013/014424(WO,A2)
【文献】米国特許第4647844(US,A)
【文献】SCHUET, Stefan R.; TIMUCIN, Dogan A.; WHEELER, Kevin R.,“Shielded-twisted-pair cable model for chafe fault detection via time-domain reflectometry”,National Aeronautics and Space Administration,2012年03月,pp. 46-59,https://ntrs.nasa.gov/api/citations/20120011154/downloads/20120011154.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 31/08-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド導通試験装置であって、
シールドを有するケーブル又は配線設備の複数の導体を通じて、コモンモードで第1の信号を伝送するように構成された伝送機であって、前記複数の導体の第1の端部において前記コモンモードで前記第1の信号を伝送するように構成される、伝送機と、
前記複数の導体の第2の端部において前記第1の信号を表す複数の第2の信号をそれぞれ受信し、前記複数の第2の信号を表すデータを出力するように構成された受信機と、
プロセッサであって、
前記複数の第2の信号を表す前記データを受信し、
前記複数の第2の信号に基づいて、前記ケーブル又は配線設備のコモンモード挿入損失を決定し、
少なくとも、
前記ケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失を決定することと、
前記予期されるコモンモード挿入損失と前記決定されたコモンモード挿入損失との差として、オフセットコモンモード挿入損失を決定することと、
前記オフセットコモンモード挿入損失に基づいて、前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定することと、によって、前記コモンモード挿入損失に基づいて、前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定し、
前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかを表すデータを出力するように構成される、プロセッサと、を備える、シールド導通試験装置。
【請求項2】
記伝送機が、周波数範囲にスイープを行い前記周波数範囲内の複数の周波数点で前記第1の信号を伝送するように構成され、請求項1に記載のシールド導通試験装置。
【請求項3】
前記周波数範囲が1~20メガヘルツ(MHz)である、請求項2に記載のシールド導通試験装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、少なくとも、
前記複数の第2の信号に基づいて、前記周波数範囲内の前記複数の周波数点の各周波数点で前記コモンモード挿入損失を決定することによって、前記コモンモード挿入損失を決定するように構成される、請求項2に記載のシールド導通試験装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、少なくとも、
前記オフセットコモンモード挿入損失の性能指数を決定することと、
前記性能指数を閾値と比較することと、によって、前記シールドが導通であるか、不導通であるかを判定するように更に構成される、請求項1に記載のシールド導通試験装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、少なくとも、
前記第1の信号が伝送される周波数範囲内の複数の周波数点にわたる前記オフセットコモンモード挿入損失の平均を決定することと、
前記複数の周波数点にわたる前記オフセットコモンモード挿入損失間の差の標準偏差、及び前記複数の周波数点にわたる前記オフセットコモンモード挿入損失の最小二乗平均フィットを決定することと、
前記平均と前記標準偏差との差として前記性能指数を決定することと、によって、前記性能指数を決定するように構成される、請求項5に記載のシールド導通試験装置。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記性能指数が前記閾値以上である場合には前記シールドが導通であると判定し、前記性能指数が前記閾値未満である場合には前記シールドが不導通であると判定するように構成される、請求項5に記載のシールド導通試験装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記周波数範囲の部分範囲内の前記コモンモード挿入損失に基づいて、前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定するように構成され、前記プロセッサが、
前記ケーブル又は配線設備の信号伝搬遅延に基づいて、前記部分範囲を識別するように構成される、請求項2に記載のシールド導通試験装置。
【請求項9】
前記伝搬遅延の増加が、前記周波数範囲の開始周波数に向かう前記部分範囲のシフトをもたらし、前記伝搬遅延の減少が、前記周波数範囲の終了周波数に向かう前記部分範囲のシフトをもたらす、請求項8に記載のシールド導通試験装置。
【請求項10】
前記ケーブル又は前記配線設備の前記複数の導体が、前記複数の導体のうちの一対の導体が互いの周囲に一対に撚り合わされたツイストペア配設を有する、請求項1~請求項9の何れか1項に記載のシールド導通試験装置。
【請求項11】
出力装置を備え、該出力装置が、前記プロセッサと通信可能に接続され、前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかを表す前記データを受信し、前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかの表示を出力するように構成される、請求項1~請求項10の何れか1項に記載のシールド導通試験装置。
【請求項12】
前記プロセッサが、少なくとも、
前記ケーブル又は配線設備のコモンモード反射損失を決定することと、
逆フーリエ変換を前記コモンモード反射損失に適用して、時間領域データを得ることと、
所定の補償ベクトルに、前記時間領域データを乗算して、前記時間領域データにおけるレベル変動を補償し、スケーリングされた時間領域データを生成することと、
前記スケーリングされた時間領域データの最大値と関連付けられたインデックスを決定することと、
前記スケーリングされた時間領域データの前記最大値と関連付けられた前記インデックスに基づいて、前記ケーブル又は配線設備に沿った前記シールドにおける前記不導通の場所を決定することと、によって、前記ケーブル又は配線設備に沿った前記シールドにおける不導通の前記場所を決定するように構成される、請求項1~請求項11の何れか1項に記載のシールド導通試験装置。
【請求項13】
前記スケーリングされた時間領域データの前記インデックスの場所は、前記シールド内の前記不導通の前記場所に対応する、請求項12に記載のシールド導通試験装置。
【請求項14】
シールド導通を試験するための方法であって、
シールドを有するケーブル又は配線設備の複数の導体を通じて、コモンモードで第1の信号を伝送することであって、前記第1の信号が、前記複数の導体の第1端部においてコモンモードである、伝送することと、
前記複数の導体の第2の端部において、前記第1の信号を表す複数の第2の信号をそれぞれ受信することと、
前記複数の第2の信号に基づいて、前記ケーブル又は配線設備のコモンモード挿入損失を決定することと、
前記コモンモード挿入損失に基づいて、前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定することであって、
前記ケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失を決定することと、
前記予期されるコモンモード挿入損失と前記決定されたコモンモード挿入損失との差として、オフセットコモンモード挿入損失を決定することと、
前記オフセットコモンモード挿入損失に基づいて、前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定することと、を含む、判定することと、
前記シールドが導通であるか、又は不導通であるかを表すデータを出力することと、を含む、方法。
【請求項15】
周波数範囲内の複数の周波数点にわたって前記第1の信号を伝送することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の第2の信号に基づいて、前記周波数範囲内の前記複数の周波数点の各周波数点で前記コモンモード挿入損失を決定することを含み、前記周波数範囲が、1~20メガヘルツ(MHz)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の信号が伝送される周波数範囲内の複数の周波数点にわたる前記オフセットコモンモード挿入損失の平均を決定することと、
前記複数の周波数点にわたる前記オフセットコモンモード挿入損失間の差の標準偏差、及び前記複数の周波数点にわたる前記オフセットコモンモード挿入損失の最小二乗平均フィットを決定することと、
前記平均と前記標準偏差との差として、性能指数を決定することと、
前記性能指数が閾値以上である場合には前記シールドが導通であると判定し、前記性能指数が前記閾値未満である場合は前記シールドが不導通であると判定することと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ケーブル又は配線設備のコモンモード反射損失を決定することと、
逆フーリエ変換を前記コモンモード反射損失に適用して、時間領域データを得ることと、
所定の補償ベクトルに、前記時間領域データを乗算して、前記時間領域データにおけるレベル変動を補償し、スケーリングされた時間領域データを生成することと、
前記スケーリングされた時間領域データの最大値と関連付けられたインデックスを決定することと、
前記スケーリングされた時間領域データの前記最大値と関連付けられた前記インデックスに基づいて、前記ケーブル又は配線設備に沿った不導通の場所を決定することと、を更に含む、請求項14~請求項17の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、コモンモード挿入損失、具体的には、ケーブル又は配線設備の1つ以上のツイストペア導体を通じてコモンモードで伝送される信号の挿入損失に基づいて、ケーブル又は配線設備内のシールドの導通を検出するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気ケーブルは、ケーブルの導体に到達し得る外部環境の電磁干渉を低減させるシールドを含む。ケーブルは、ツイストペアの導体とすることができる。シールドの破損又は破断として現れ得るシールドの不導通は、ケーブルのクロストーク(XT)性能を低下させる。シールドの導通の直流(DC)検証技術は、シールドが接地されたときに、偽陽性の試験結果をもたらし易い(すなわち、不導通シールドを「合格」にする)。更に、例えばコネクタでのシールド終端に起因する、寄生インダクタンスの存在は、シールド検証技術に、偽陰性の試験結果を生じさせる場合がある(すなわち、導通シールドを「不合格」にする)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8570049号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、シールド導通試験装置は、シールドを有するケーブル又は配線設備の複数の導体を通じて、コモンモードで第1の信号を伝送するように構成された伝送機を含む。一実施形態において、伝送機は、複数の導体の第1の端部においてコモンモードで第1の信号を伝送するように構成される。一実施形態において、シールド導通試験装置は、複数の導体の第2の端部において第1の信号を表す複数の第2の信号をそれぞれ受信し、複数の第2の信号を表すデータを出力するように構成された受信機を含む。一実施形態において、シールド導通試験装置は、プロセッサを含み、該プロセッサは、複数の第2の信号を表すデータを受信し、複数の第2の信号に基づいて、ケーブル又は配線設備のコモンモード挿入損失を決定し、コモンモード挿入損失に基づいて、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定し、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを表すデータを出力するように構成される。
【0005】
一実施形態において、第1の信号は、周波数範囲にまたがり、伝送機は、該周波数範囲内の複数の周波数点で第1の信号を伝送するように構成される。一実施形態において、プロセッサは、少なくとも、複数の第2の信号に基づいて、周波数範囲内の複数の周波数点の各周波数点におけるコモンモード挿入損失を決定することによって、コモンモード挿入損失を決定するように構成される。一実施形態において、周波数範囲は、1~20メガヘルツ(MHz)である。一実施形態において、プロセッサは、少なくとも、ケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失を決定することと、ケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失を決定することと、予期されるコモンモード挿入損失と決定されたコモンモード挿入損失との差として、オフセットコモンモード挿入損失を決定することと、オフセットコモンモード挿入損失に基づいて、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定することと、によって、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定するように構成される。
【0006】
一実施形態において、プロセッサは、少なくとも、オフセットコモンモード挿入損失の性能指数を決定することと、性能指数を閾値と比較することと、によって、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定するように構成される。一実施形態において、プロセッサは、少なくとも、第1の信号が伝送される周波数範囲内の複数の周波数点にわたるオフセットコモンモード挿入損失の平均を決定することと、複数の周波数点にわたるオフセットコモンモード挿入損失間の差の標準偏差、及び複数の周波数点にわたるオフセットコモンモード挿入損失の最小二乗平均フィットを決定することと、平均と標準偏差との差として性能指数を決定することと、によって、性能指数を測定するように構成される。
【0007】
一実施形態において、プロセッサは、性能指数が閾値以上である場合にはシールドが導通であると判定し、性能指数が閾値未満である場合にはシールドが不導通であると判定するように構成される。一実施形態において、プロセッサは、第1の信号が伝送される周波数範囲の部分範囲内のコモンモード挿入損失に基づいて、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定するように構成される。一実施形態において、プロセッサは、ケーブル又は配線設備の決定された信号伝搬遅延に基づいて、部分範囲を識別するように構成される。
【0008】
一実施形態において、周波数範囲内の部分範囲の場所は、伝搬遅延と逆相関し、よって、伝搬遅延の増加は、周波数範囲の始まりに向かう部分範囲のシフトをもたらし、伝搬遅延の減少は、周波数範囲の終わりに向かう部分範囲のシフトをもたらす。一実施形態において、ケーブル又は配線設備の複数の導体は、複数の導体のうちの一対の導体が互いの周囲に一対に撚り合わされたツイストペア配設を有する。一実施形態において、シールド導通試験装置は、出力装置を含み、該出力装置は、プロセッサに通信的に結合され、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを表すデータを受信し、シールドが導通であるか、又は不導通であるかの指示を出力するように構成される。
【0009】
一実施形態において、プロセッサは、少なくとも、ケーブル又は配線設備のコモンモード反射損失を決定することと、フーリエ変換をコモンモード反射損失に適用して、時間領域データを得ることと、補償ベクトルを使用して、時間領域データをスケーリングすることと、スケーリングされた時間領域データの最大と関連付けられたインデックスを決定することと、スケーリングされた時間領域データの最大と関連付けられたインデックスに基づいて、ケーブル又は配線設備に沿った不導通の場所を決定することと、によって、シールドの不導通の場所を測定するように構成される。一実施形態において、スケーリングされた時間領域データのインデックスの相対的な場所は、シールド内の不導通の相対的な場所に対応する。
【0010】
一実施形態において、シールドの導通を試験するための方法は、シールドを有するケーブル又は配線設備の複数の導体を通じて、コモンモードで第1の信号を伝送することであって、第1の信号が、複数の導体の第1端部においてコモンモードである、伝送することと、複数の導体の第2の端部において、第1の信号を表す複数の第2の信号をそれぞれ受信することと、複数の第2の信号に基づいて、ケーブル又は配線設備のコモンモード挿入損失を決定することと、コモンモード挿入損失に基づいて、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定することと、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを表すデータを出力することと、を含む。
【0011】
一実施形態において、方法は、周波数範囲内の複数の周波数点にわたって第1の信号を伝送することを含む。一実施形態において、方法は、複数の第2の信号に基づいて、周波数範囲内の複数の周波数点の各周波数点におけるコモンモード挿入損失を決定することを含む。一実施形態において、周波数範囲は、1~20メガヘルツ(MHz)である。一実施形態において、方法は、ケーブル又は配線設備のための予期されるコモンモード挿入損失を決定することと、予期されるコモンモード挿入損失と決定されたコモンモード挿入損失との差として、オフセットコモンモード挿入損失を決定することと、オフセットコモンモード挿入損失に基づいて、シールドが導通であるか、又は不導通であるかを判定することと、を含む。
【0012】
一実施形態において、方法は、第1の信号が伝送される周波数範囲内の複数の周波数点にわたるオフセットコモンモード挿入損失の平均を決定することと、複数の周波数点にわたるオフセットコモンモード挿入損失間の差の標準偏差、及び複数の周波数点にわたるオフセットコモンモード挿入損失の最小二乗平均フィットを決定することと、平均と標準偏差との差として性能指数を決定することと、性能指数が閾値以上である場合にはシールドが導通であると判定し、性能指数が閾値未満である場合はシールドが不導通であると判定することと、を含む。一実施形態において、方法は、ケーブル又は配線設備のコモンモード反射損失を決定することと、フーリエ変換をコモンモード反射損失に適用して、時間領域データを得ることと、補償ベクトルを使用して、時間領域データをスケーリングすることと、スケーリングされた時間領域データの最大と関連付けられたインデックスを決定することと、スケーリングされた時間領域データの最大と関連付けられたインデックスに基づいて、ケーブル又は配線設備に沿った不導通の場所を決定することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、試験装置に結合された、試験下の配線設備を示す図である。
図2図2は、試験装置の第1及び第2の試験端子のブロック図である。
図3図3は、シールド導通を試験するための方法の流れ図である。
図4図4は、シールド導通を試験するための方法の流れ図である。
図5図5は、ケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失の一例を示す図である。
図6図6は、周波数範囲にわたる2つのケーブルの予期される、及び決定されたコモンモード挿入損失の一例を示す図である。
図7図7は、シールド導通を試験するための方法の流れ図である。
図8図8は、伝搬遅延に関する周波数範囲セグメントの一例を示す図である。
図9図9は、ケーブル又は配線設備内の不導通の場所を決定するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、試験装置101に結合された試験下の配線設備100を示す。試験装置は、第1の試験端子102aと、第2の試験端子102bとを含む。配線設備100は、コネクタプラグ108及びコネクタジャック110を使用して共に接続された、第1のケーブル106a及び第2のケーブル106b(本明細書では、集合的に数字だけで称される)を含む。複数のケーブル106を含む配線設備100が図1を参照して説明されるが、本明細書で説明される技術は、任意の数のケーブルを伴う設備を試験するために、又は1つのケーブルを試験するために使用することができることに留意されたい。
【0015】
各ケーブル106は、複数のツイストペアの導体112を含む。各ペア112は、電磁放射及びクロストークを低減させ、かつ外部の電磁干渉排除を向上させるために、互いの周囲に撚られた第1の導体114a及び第2の導体114bを含む。複数のツイストペアは、図1において、4つのペアを含むように示されるが、ケーブル106は、任意の数の導体又はそのペアを有することができることに留意されたい。導体114は、それぞれ、絶縁体(図示せず)によって絶縁することができる。
【0016】
複数のツイストペア112は、シールド116によってシールドされる。シールド116は、ケーブル106の長さにわたって複数のツイストペア112を取り囲む。フォイルであってもよいシールド116は、導体114を外部の電磁波からシールドするための電気伝導性バリアを提供する。ケーブル106はまた、絶縁体118も有する。
【0017】
シールド116は、破損又は不導通を伴うことなく、導通であることが望ましい。シールド116の不導通120は、電磁干渉がツイストペア112に到達することを可能にし、したがって、他の望ましくない結果の中でも特に、ケーブル106のクロストーク(XT)性能を低下させる。
【0018】
加えて、配線設備100のシールド116は、配線設備100内の1つ以上の点において接地122に接続することができる。接地接続は、シールドに印加される電流の並列「スニーク」パスを提供することによって、シールド116の導通の直流(DC)ベースのシールド検証技術を妨害する場合がある。並列「スニーク」パスは、不導通120を迂回し、低い抵抗値を生じさせ、DCベースの検証技術の誤った「合格」をもたらす。
【0019】
シールド116はまた、寄生インダクタンスを有するドレインワイヤ124も有する場合がある。配線設備100の第2のケーブル106bは、ドレインワイヤ124を使用して、コネクタジャック110において終端されるように示される。ドレインワイヤ124の使用は、配線設備100を通したシールド116の導通を維持する。しかしながら、第2のケーブル106b(又は任意の構成ケーブル106)の下手な又は未熟な終端は、(例えば、ドレインワイヤ124が数インチの長さである、又はそれ自体の周囲にループする結果として)寄生インダクタンスを有するドレインワイヤ124をもたらす場合がある。ドレインワイヤ124の寄生インダクタンスは、コモンモード反射損失シールド検証技術の誤った失敗をもたらす場合がある。このような技術は、比較的大きい寄生インダクタンスをもたらす下手に又は未熟に終端されたドレインワイヤ124を有するにもかかわらず、実際にはシールド116が導通であるときに、シールド116が不導通であると宣言する場合がある。米国特許第8,570,049号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、シールド導通のコモンモード反射損失ベースの試験を説明する。
【0020】
図1に示されるように、試験装置101の第1の試験端子102a及び第2の試験端子102bは、配線設備100に結合される。第1の試験端子102aは主機器とすることができ、第2の試験端子102bは、試験装置101の遠隔機器とすることができる。第2の試験端子102bは、第1の試験端子102aの場所とは異なる場所に配置することができる。特に、第1の試験端子102aは、複数のツイストペア112の導体の第1端部に結合される。第2の試験端子102bは、複数のツイストペア112の導体の第2の端部に結合される。第1の試験端子102aは、周波数範囲にわたってコモンモードスイープを行う。スイープ内の複数の周波数点にわたる各周波数点において、第1の試験端子102aは、複数のツイストペア112の導体114の第1端部においてコモンモードで第1の信号を伝送する。コモンモードでは、同じ第1の信号が、配線設備100の各導体114を通じて伝送される。コモンモード信号は、設備100の導体114を横断する。
【0021】
第2の試験端子102bは、複数のツイストペア112の各導体114の第2端部において第2の信号を受信する。第2の信号は、第1の信号が導体114を横断したときに挿入損失を受けたことを表す。第1の試験端子102a又は第2の試験端子102bは、複数のツイストペア112のコモンモード挿入損失を決定する。更に、第1の試験端子102a又は第2の試験端子102bは、コモンモード挿入損失に基づいて、シールド116内に不導通が存在するかどうかを判定する。第1の試験端子102a又は第2の試験端子102bはまた、不導通の場所も決定することができる。
【0022】
図2は、試験装置101の第1の試験端子102a及び第2の試験端子102bのブロック図を示す。図2において、第1の試験端子102a及び第2の試験端子102bは、配線設備100に接続されるように示される。第1の試験端子102aは、プロセッサ130aと、メモリ132aと、出力装置134aと、通信装置136aと、複数の出力端子142を有する伝送機138とを含む。プロセッサ130aは、メモリ132a、出力装置134a、通信装置136a、及び伝送機138に通信的に結合される。第2の試験端子102bは、プロセッサ130bと、メモリ132bと、出力装置134bと、通信装置136bと、受信機140とを含む。プロセッサ130bは、メモリ132b、出力装置134b、通信装置136b、及び受信機140に通信的に結合される。
【0023】
第1の試験端子102aの伝送機138は、複数の出力端子142を有する。複数の出力端子142は、第1の端部において、配線設備100の複数の導体114にそれぞれ接続される。受信機140は、複数の入力端子144を有する。複数の入力端子144は、第1の端部とは異なる配線設備100の第2の端部において、複数の導体114にそれぞれ接続される。第1及び第2の端部は、(例えば、設置されたときに)異なる場所にあり得るので、試験装置101の2つの端子102a、102bは、ローカル端部及びリモート端部についてそれぞれ例示される。しかしながら、1つの装置/端子が、伝送機138及び受信機140の両方、又は送受信機を備えることができると認識される。装置/端子は、第1の信号を試験信号として伝送し、第1の信号が導体114を横断したことを表す第2の信号を受信することができる。
【0024】
プロセッサ130aは、メモリ132aに記憶された実行可能命令を実行するように構成された、任意のタイプの装置とすることができる。実行可能命令がプロセッサ130aによって実行されると、実行可能命令は、プロセッサ130aに、本明細書で説明される機能又は技術を行わせる。プロセッサ130aは、数ある中でも特に、コントローラ、マイクロコントローラ、又はマイクロプロセッサとすることができ、また、他の計算ユニットの中でも特に、算術論理演算ユニット(ALU)を含むことができる。プロセッサ130aは、第1の信号を伝送機138に伝送するように命令する。プロセッサ130aはまた、本明細書で説明されるように、第2の試験端子102bによって検出されたコモンモード挿入損失データを受信し、コモンモード挿入損失データに基づいて、配線設備100のシールドが不導通を有するかどうかも判定する。不導通がある場合、プロセッサ130aは、第1の試験端子102a及び第2の試験端子102bによって取得したデータに基づいて、不導通の場所を決定する。
【0025】
プロセッサ130aは、行われた試験の結果を表すデータを出力装置134aに出力する。例えば、プロセッサ130aは、シールド116が導通(例えば、「合格」)であるか、又は不導通(例えば、「不合格」)であるかを表すデータを出力することができる。プロセッサ102aはまた、第1の信号の伝送時間と第2の信号の受信時間との差に少なくとも部分的に基づいて、配線設備100の伝搬遅延も決定することができる。
【0026】
メモリ132aは、実行可能命令を記憶するように構成される任意の装置とすることができる。メモリ132aはまた、試験結果、不導通の場所、伝搬遅延、又はコモンモード挿入損失データ等の、行われた導通試験に関連するデータも記憶することができる。メモリ132aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又はリードオンリーメモリ(ROM)を含むことができる。出力装置134aは、データをユーザに出力するように構成された任意のタイプの装置とすることができる。例えば、出力装置134aは、数ある中でも特に、ディスプレイ又はスピーカとすることができる。出力装置134aは、プロセッサ130aから受信したシールド導通試験の結果をユーザに出力することができる。
【0027】
通信装置136aは、別の装置と通信し、データを他の装置に伝送する、又は該装置からデータを受信するように構成される、任意の装置とすることができる。他の装置は、第2の試験端子102bの通信装置136bとすることができる。通信装置136aは、無線又は有線通信プロトコルを使用して通信することができる。例えば、通信装置136aは、モデム又は送受信機とすることができる。通信装置136aは、コモンモード挿入損失を表すデータを受信する。通信装置136aは、データをプロセッサ130aに出力する。
【0028】
伝送機138は、信号を伝送するように構成された任意の装置とすることができ、それによって、信号は、本明細書で説明される導体114を通じて伝送されるコモンモード試験信号とすることができる。伝送機138は、本明細書で説明される複数の出力端子142を有する。複数の出力端子142を使用して、試験装置101を試験下のケーブル又は配線設備に接続する。伝送機138は、複数の出力端子142を通じて伝送するための複数の導体114を通じてコモンモード信号を出力する。
【0029】
第2の試験端子102bにおいて、プロセッサ130b、メモリ132b、出力装置134b、及び通信装置136bは、本明細書で説明される第1の試験端子102aのプロセッサ130a、メモリ132a、出力装置134a、及び通信装置136aに類似する。受信機140は、複数の第2の信号を受信するように構成された任意の装置とすることができる。受信機140は、本明細書で説明される複数の入力端子144を有する。受信機140は、複数の入力端子144において、複数の導体114を通じて伝送されたコモンモード信号をそれぞれ受信する。
【0030】
受信機140は、受信した第2の信号を表すデータをプロセッサ130bに出力する。プロセッサ130bは、データを評価して、配線設備100のコモンモード挿入損失又は伝搬遅延を決定することができる。代替的又は追加的に、プロセッサ130bは、第1の端子102aの通信装置136aに伝送するために、及びプロセッサ130aによって評価するために、データを通信装置136bに出力させることができる。
【0031】
2つの試験端子102a、102bの使用は、導体114の第1及び第2の端部が互いに近接していないときに好都合である。2つの試験端子102a、102bは、配線設備100の2つの端部にそれぞれ接続されるように本明細書で説明されるが、種々の実施形態において、1つの試験端子を使用することができることに留意されたい。例えば、試験端子は、入力端子142及び出力端子144の両方を備えることができる。入力端子142及び出力端子144は、ケーブルがケーブルリール又はスプール内にあるとき等の、特に導体114の両端部が互いに近接しているときに、該両端部にそれぞれ接続することができる。
【0032】
図3は、シールド導通を試験するための方法300の流れ図を示す。方法300において、試験装置101は、302で、周波数範囲にわたって周波数スイープを行い、周波数範囲内の複数の周波数点の各周波数点において、図1を参照して説明される配線設備100等の、ケーブル又は配線設備の複数の導体114を通じてコモンモードで第1の信号を伝送する。第1の信号は、複数の導体114の第1端部においてコモンモードで伝送され、それによって、同じ第1の信号が、複数の導体114の各導体を通じて伝送される。複数の導体114は、試験下のシールドによって取り囲まれる。
【0033】
ケーブル106又は配線設備100のケーブル106は、例えば、4つのツイストペア112(及び合計8つの導体114)を有するデータ通信ケーブルとすることができ、各ツイストペア112は、独立した伝送線である。本明細書で説明されるように、コモンモードで第1の信号を伝送することは、同じ第1の信号によって複数の導体114を同時に駆動することを含む。例えば、ケーブル106の複数のツイストペア112の全ての導体114は、同じ第1の信号によってシールド116に対して同時に駆動することができる。一実施形態において、シールド116が試験されるときには、どのツイストペア112も駆動されない状態又は中立の状態を維持することができない。例えば、第1の端部において、複数の導体114は、共に接続することができ、第1の信号は、複数の導体114の全てを通じて同時に伝送することができる。
【0034】
周波数範囲は、1~20メガヘルツ(MHz)等の低周波とすることができる。複数の周波数点は、互いから1MHzだけ分離することができ、それによって、周波数点は、1、2、3、...、20MHzとすることができる。第1の信号は、複数の導体114に同時に伝送される。
【0035】
例えば1~20MHzの範囲の低周波信号は、導体114を取り囲むシールドが不導通であるか、又は破損しているときに、第1の信号が導体114を横断するときに該信号が妨害される際に好都合である。反対に、シールドが導通である場合、第1の信号は比較的妨害されない。比較的低い周波数では、シールドが不導通であるときに比べて、シールドが導通であるときには、より大きい強度を有する信号が導体114の第2の端部において受信される。特に、シールドの開口又は破損は、シールド及び導体114によって形成されたループを信号電流が流れることを大幅に妨害する。不導通が1~20MHzの範囲内の第1の信号を妨害するという事実は、不連続検出を容易にするために好都合に使用される。
【0036】
304で、試験装置101は、それぞれの複数の導体114を横断した複数の第1の信号を表す複数の第2の信号をそれぞれ受信する。試験装置101は、複数の導体114の第2の端部において複数の第2の信号をそれぞれ受信する。306で、試験装置101は、複数の第2の信号に基づいて、周波数範囲内の複数の周波数点の各周波数点におけるコモンモード挿入損失を決定する。試験装置101はまた、複数の第2の信号のうちの第2の信号と関連付けられた伝搬遅延も測定する。伝搬遅延は、第1の信号の伝送と第2の信号の受信との間の継続時間を表すことができる。より長いケーブル又は配線設備100がより長い横断時間と関連付けられるので、伝搬遅延は、ケーブル又は配線設備100の長さの関数である。
【0037】
試験装置101は、複数のツイストペアの各ツイストペア112のコモンモード挿入損失を決定することができる。試験装置101は、複数のツイストペアのコモンモード挿入損失を平均して、配線設備100の306でのコモンモード挿入損失を決定することができる。決定されたコモンモード挿入損失はまた、複数のツイストペアの複数のコモンモード挿入損失のそれぞれの任意の関数とすることもできる。ケーブル116の全てのツイストペア112のコモンモード信号レベルは、第2の端部において測定され、平均される。ケーブル106がデータ通信ケーブルである場合には、コモンモード挿入損失を決定するために、4つのコモンモード信号レベルが(ツイストペア112ごとに1つ)測定され、平均される。
【0038】
308で、試験装置101は、コモンモード挿入損失に基づいて、ケーブル又は配線設備の不導通を識別する。種々の実施形態において、第2の試験端子102bは、有線又は無線通信によって、コモンモード挿入損失を表すデータを第1の試験端子102aに送信することができる。次いで、第1の試験端子102aは、第2の試験端子102bから受信したデータに基づいて、ケーブル又は配線設備内に不導通があるかどうかを判定することができる。更に、一実施形態において、第2の試験端子102bは、受信した複数の第2の信号を表すデータを第1の試験端子102aに送信し、第1の試験端子102aは、コモンモード挿入損失を決定し、複数の第2の信号に基づいて、不導通を識別する。
【0039】
図1を参照して説明されるようにシールドを接地させるため、低い抵抗値のDCスニークパスが存在するときには、DCスニークパスは、比較的高い関連付けられた交流(AC)インピーダンスを有することに留意されたい。試験装置101は、配線設備の導体を通じてシールド116を試験するための第1の信号を伝送する。シールドが開口(又は不導通)であり、DCスニークパスが存在する場合は、シールドが導通であった場合と比較して、挿入損失が著しく異なる。本明細書で説明される技術は、DCスニークパスが存在するときであってもシールド不導通を検出し、また、DCスニークパスが存在するときに影響を受け難い(又は偽陰性を示す)。
【0040】
図4は、シールド導通を試験するための方法400の流れ図を示す。方法400において、402で、試験装置101は、ケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失を決定する。予期されるコモンモード挿入損失は、伝搬遅延及び/又は周波数スイープの周波数点で受信された第2の信号に基づいて(又は、その関数として)、決定することができる。予期されるコモンモード挿入損失(デシベル(dB)は、周波数の一次関数であり得、及び/又は周波数と逆相関し得る。伝搬遅延は、ケーブル又は配線設備の長さの関数であるので、異なる長さのケーブル又は配線設備は、異なる予期されるコモンモード挿入損失プロファイルを有する。図5は、ケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失の一例を示す。周波数範囲内のより高い周波数は、より少ない予期されるコモンモード挿入損失と関連付けられる。図5の例示的な予期されるコモンモード挿入損失は、50メートル(m)のケーブル又は配線設備に関するものである。
【0041】
404で、試験装置101は、決定されたコモンモード挿入損失及びケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失に基づいて、オフセットコモンモード挿入損失を決定する。オフセットコモンモード挿入損失は、周波数範囲内の周波数点ごとに決定することができる。オフセットされたコモンモード挿入損失は、(ステップ306で)決定されたコモンモード挿入損失と、周波数範囲内の周波数点ごとのケーブル又は配線設備の予期されるコモンモード挿入損失との差として決定することができる。決定されたコモンモード挿入損失及び予期されるコモンモード挿入損失が互いに対応する(例えば、ゼロdBの差に近かった)場合、シールドは、導通であると判定することができる。代替的に、決定されたコモンモード挿入損失及び予期されるコモンモード挿入損失が互いに対応しない場合、シールドは、不導通であると判定することができる。406で、試験装置101は、オフセットコモンモード挿入損失に基づいて、シールドが導通であるかどうかを判定する。
【0042】
図6は、周波数範囲にわたる2つのケーブルの予期される及び決定されたコモンモード挿入損失の例を示す。第1のケーブルについて、決定されたコモンモード挿入損失604aは、主に、周波数範囲にわたる予期されるコモンモード挿入損失602aに対応し、追従する。第1のケーブルの決定されたコモンモード挿入損失604aと予期されるコモンモード挿入損失602aとの差は、周波数範囲内の任意の周波数点において2dB以下である。したがって、第1のケーブルは、導通シールドを有すると判定することができる。反対に、第2のケーブルの決定されたコモンモード挿入損失604b及び予期されるコモンモード挿入損失602aは、周波数範囲にわたり互いから逸れている。第2のケーブルの決定されたコモンモード挿入損失604bと予期されるコモンモード挿入損失602aとの差は、40dBにもなり得る。それに応じて、したがって、第2のケーブルは、不導通シールドを有すると判定することができる。
【0043】
決定された及び予期されるコモンモード挿入損失は、周波数範囲全体ではなく、周波数範囲のセグメント(又は部分範囲)にわたって比較することができる。更に、性能指数を使用して、決定された及び予期されるコモンモード挿入損失(すなわち、オフセットコモンモード挿入損失)の差を定量化することができる。性能指数は、閾値と比較して、シールドが導通であるか、不導通であるかを判定することができる。
【0044】
図7は、シールド導通を試験するための方法700の流れ図を示す。方法700において、試験装置101は、702で、オフセットコモンモード挿入損失を評価する周波数範囲のセグメントを決定する。周波数範囲のセグメントは、周波数範囲全体の任意の一部分(例えば、半分)とすることができる。例えば、周波数範囲が1~20MHzの20個の周波数点を有する場合、セグメントは、1~20MHzの任意の10個の連続する周波数点とすることができる。
【0045】
セグメントは、試験下のケーブル又は配線設備の長さ(又はケーブル若しくは配線設備と関連付けられた伝搬遅延)に基づいて決定することができる。例えば、比較的短い伝搬遅延と関連付けられる、比較的短い長さを有するケーブル又は配線設備は、周波数範囲の終わりにより近い、関連付けられたセグメントを有することができる。代替的に、比較的長い長さを有する(例えば、少なくとも42ナノ秒(ns)の伝搬遅延を有する)ケーブル又は配線設備は、周波数範囲の始まりにより近い、関連付けられたセグメントを有することができる。
【0046】
図8は、伝搬遅延に関連する周波数範囲セグメントの一例を示す。各周波数範囲セグメントのサイズは、10個の周波数点であり、該周波数点は、1~20MHzの周波数範囲全体の半分である。各周波数範囲セグメントは、開始周波数点802と終了周波数点804との間で変動する。50mを超える(又は42ns以上の関連付けられた伝搬遅延を有する)ケーブル又は配線設備は、周波数範囲の下端部(又は1~10MHz)の周波数範囲であるセグメントに基づいて試験される。この周波数セグメント以外(例えば、11~20MHz)の周波数点は、ケーブル又は配線設備のシールドの試験に使用されない。
【0047】
図7を再度参照すると、704で、試験装置101は、周波数範囲のセグメントのオフセットコモンモード挿入損失に基づいて、性能指数を決定する。性能指数は、オフセットコモンモード挿入損失のゼロ値からの偏差を表すことができる。性能指数は、標準偏差又はケーブル若しくは配線設備のオフセットコモンモード挿入損失の分散に基づくことができる。より広い分散は、予期されるコモンモード挿入損失からのより大きい偏差を表し、したがって、シールドの不導通を表す。
【0048】
一実施形態において、性能指数は、次式のように表すことができる。
【数1】
式中、μOCMILは、周波数範囲のセグメントにわたるオフセットコモンモード挿入損失の平均である。周波数範囲のセグメントにわたるオフセットコモンモード挿入損失の平均は、次式のように決定することができる。
【数2】
式中、fは、セグメント内の開始周波数点であり、fは、セグメント内の終了周波数点であり、Nは、セグメント内の(例えば、図8に示されるように10個の)周波数点の数であり、OCMIL(f)は、周波数範囲のセグメントにわたるオフセットコモンモード挿入損失である。式(1)のσOCMILは、周波数範囲のセグメントにわたるオフセットコモンモード挿入損失(OCMIL(f))と、セグメントにわたるオフセットコモンモード挿入損失の最小二乗平均(LMS)フィット(LMSOCMIL(f))との差の標準偏差を表すことができる。標準偏差は、次式のように決定することができる。
【数3】
【0049】
セグメントにわたるオフセットコモンモード挿入損失の変動は、性能指数と負に相関する。比較的大きい性能指数は、シールド導通を表し、一方で、比較的小さい性能指数は、シールドが不導通を有することを示す。
【0050】
試験装置101は、706で、性能指数を1つ以上の閾値と比較し、708で、性能指数を1つ以上の閾値と比較することに基づいて、シールドが導通であるかどうかを判定する。例えば、性能指数が閾値よりも大きい場合、試験装置101は、ケーブル又は配線設備のシールドが導通であるとみなすことができる。反対に、性能指数が閾値よりも小さい場合、試験装置101は、ケーブル又は配線設備のシールドが不導通であるとみなすことができる。
【0051】
シールドが不導通であると判定された場合、試験装置101は、ケーブル又は配線設備のコモンモード反射損失データに基づいて、不導通の場所を識別することができる。
【0052】
図9は、ケーブル又は配線設備の不導通の場所を決定するための方法900を示す。方法900において、試験装置101は、902で、ケーブル又は配線設備の端部ごとにコモンモード反射損失を取得する。904で、試験装置101は、逆フーリエ変換(IFT)をコモンモード反射損失に適用して、各端部の時間領域データを取得する。IFTは、任意のサイズを有する逆高速フーリエ変換(IFFT)とすることができる。例えば、IFFTは、1MHzのステップで301点のIFFTとすることができる。906で、試験装置101は、ウインドウを時間領域データに適用する。ウインドウは、例えば、ブラックマンウインドウとすることができる。
【0053】
試験装置101は、908で、ウインドウ化データをモジュロシフトする。試験装置101は、10点等の任意の数の点を使用して、ウインドウ化データをモジュロシフトすることができる。試験装置101は、次いで、910で、モジュロシフトされたデータを平滑化する。例えば、4のボックスカー幅を有する双方向移動平均フィルタを使用して、モジュロシフトされたデータを平滑化することができる。
【0054】
試験装置101は、912で、補償ベクトルを使用して、平滑化されたデータをスケーリングする。平滑化されたデータをスケーリングすることは、データを所定の減衰補償ベクトルと乗算して、距離による反射パルスのレベル変動を補償することができる。914で、試験装置101は、ケーブル又は配線設備の第1の端部の第1の大域的最大及び関連付けられた第1のインデックス、並びにケーブル又は配線設備の第2の端部の第2の大域的最大及び関連付けられた第2のインデックスを識別する。試験装置101は、916で、第1のインデックス及び第2のインデックスに基づいて、シールド不導通の場所を識別する。例えば、スケーリングされたデータのスパイクは、シールド不導通を示すことができる。不連続の場所は、スケーリングされた時間領域データのスパイクのインデックスに対応する。例えば、時間領域データである、補償したデータ内のインデックスの場所は、ケーブル内の不導通の場所に対応する。例えば、インデックスが補償したデータの中心にある場合、不導通がケーブルの中心にあると判定される。
【0055】
上に記載した種々の実施形態を組み合わせ、更なる実施形態を得てもよい。上記の発明を実施するための形態を考慮すれば、これら及び他の変更が実施形態に加えられてもよい。一般的に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、請求項を、明細書及び請求項に開示される具体的な実施形態に限定するものと解釈すべきではないが、このような請求項によって権利が与えられる全均等物の範囲に沿った全ての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、請求項は、開示によって制限されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9