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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】酸化珪素膜用研磨液組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230328BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230328BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230328BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019118748
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021005631
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲史
(72)【発明者】
【氏名】菅原 将人
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104497(JP,A)
【文献】特開2018-56229(JP,A)
【文献】特開2019-121641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウム粒子(成分A)と、水溶性高分子(成分B)と、水系媒体とを含有し、
成分Bは、下記式(I)で表される構成単位b1と、下記式(II)で表される構成単位、下記式(III)で表される構成単位、及び下記式(IV)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位b2とを含む共重合体である、酸化珪素膜用研磨液組成物。
【化1】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X1はO又はNHを示し、Y1及びY2は同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示す。
【化2】
式(II)中、R7、R8及びR9は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X2はO又はNHを示し、R10は炭化水素基を示す。
式(III)中、R11、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R14は水素原子、ヒドロキシル基、炭化水素基又はアルコキシ基を示す。
式(IV)中、R15、R16及びR17は同一又は異なり、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、nは2~12の整数を示す。
【請求項2】
式(I)で表される構成単位b1がメタクリロイルエチルホスホベタイン構造を含むモノマー由来の構成単位である、請求項1に記載の研磨液組成物。
【請求項3】
pHが3.5以上9以下である、請求項1又は2に記載の研磨液組成物。
【請求項4】
成分Bの含有量が0.001質量%以上1質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項5】
成分Aの含有量が0.001質量%以上10質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の研磨液組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化セリウム粒子を含有する酸化珪素膜用研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)技術とは、加工しようとする被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で研磨液をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面凹凸部分を化学的に反応させると共に機械的に除去して平坦化させる技術である。
【0003】
現在では、半導体素子の製造工程における、層間絶縁膜の平坦化、シャロートレンチ素子分離構造(以下「素子分離構造」ともいう)の形成、プラグ及び埋め込み金属配線の形成等を行う際には、このCMP技術が必須の技術となっている。近年、半導体素子の多層化、高精細化が飛躍的に進み、半導体素子の歩留まり及びスループット(収量)の更なる向上が要求されるようになってきている。それに伴い、CMP工程に関しても、研磨傷フリーで且つより高速な研磨が望まれるようになってきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、水、酸化セリウム粒子及び添加剤を含有する研磨剤であって、前記添加剤が特定のベタイン構造化合物又は当該化合物の重合体を含む研磨剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-260236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められている。そのため、CMP研磨では、砥粒の粒径を小さくすることで欠陥の低減を図っているが、この場合研磨速度が低下する問題があり、酸化珪素膜の研磨速度の向上が要求されている。特許文献1の技術では不充分であり、更なる改善が望まれている。
【0007】
そこで、本開示は、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる酸化珪素膜用研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、水溶性高分子(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bは、下記式(I)で表される構成単位b1と、下記式(II)で表される構成単位、下記式(III)で表される構成単位、及び下記式(IV)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位b2とを含む共重合体である、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
【化1】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X1はO又はNHを示し、Y1及びY2は同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示す。
【化2】
式(II)中、R7、R8及びR9は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X2はO又はNHを示し、R10は炭化水素基を示す。
式(III)中、R11、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R14は水素原子、ヒドロキシル基、炭化水素基又はアルコキシ基を示す。
式(IV)中、R15、R16及びR17は同一又は異なり、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、nは2~12の整数を示す。
【0009】
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法に関する。
【0010】
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、研磨方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、一態様において、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる酸化珪素膜用研磨液組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らが鋭意検討した結果、酸化セリウム(以下、「セリア」ともいう)粒子を砥粒として用いる研磨液組成物に、特定の水溶性高分子を含有させることで、酸化珪素膜の研磨速度を向上できるという知見に基づく。
【0013】
本開示は、一又は複数の実施形態において、酸化セリウム粒子(成分A)と、水溶性高分子(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bは、上記式(I)で表される構成単位b1と、上記式(II)で表される構成単位、上記式(III)で表される構成単位、及び上記式(IV)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位b2とを含む共重合体である、酸化珪素膜用研磨液組成物(以下、「本開示の研磨液組成物」ともいう)に関する。本開示の研磨液組成物によれば、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる。
【0014】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
研磨速度を向上させるためには、セリア粒子の被研磨対象物(酸化珪素膜)への接触頻度を向上させることが必要となる。成分B中の構成単位b1はセリアと酸化珪素膜の双方に吸着することによりバインダーとして働き、セリア粒子の酸化珪素膜への接触頻度が向上すると考えられる。一方、さらに、成分B中の構成単位b2は研磨パッドへの吸着を促進し、研磨パッドへセリア粒子が効率よく保持されると考えられる。上記の相乗的な効果により、成分Bを用いることで、研磨速度が向上すると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0015】
[酸化セリウム(セリア)粒子(成分A)]
本開示の研磨液組成物は、研磨砥粒としてセリア粒子(以下、単に「成分A」ともいう)を含有する。成分Aとしては、正帯電セリア又は負帯電セリアを用いることができる。成分Aは、1種類でもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
【0016】
成分Aの製造方法、形状、及び表面状態については特に限定されなくてもよい。成分Aとしては、例えば、コロイダルセリア、不定形セリア、セリアコートシリカ等が挙げられる。
コロイダルセリアは、例えば、特表2010-505735号公報の実施例1~4に記載の方法で、ビルドアッププロセスにより得ることができる。
不定形セリアとしては、例えば、粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアの一実施形態としては、例えば、炭酸セリウムや硝酸セリウムなどのセリウム化合物を焼成、粉砕して得られる焼成粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアのその他の実施形態としては、例えば、無機酸や有機酸の存在下でセリア粒子を湿式粉砕することにより得られる単結晶粉砕セリアが挙げられる。湿式粉砕時に使用される無機酸としては、例えば硝酸が挙げられ、有機酸としては、例えば、カルボキシル基を有する有機酸が挙げられ、具体的には、ピコリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸及びp-ヒドロキシ安息香酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。湿式粉砕方法としては、例えば、遊星ビーズミル等による湿式粉砕が挙げられる。
セリアコートシリカとしては、例えば、特開2015-63451号公報の実施例1~14もしくは特開2013-119131号公報の実施例1~4に記載の方法で、シリカ粒子表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆された構造を有する複合粒子が挙げられ、該複合粒子は、例えば、シリカ粒子にセリアを沈着させることで得ることができる。
【0017】
成分Aの形状としては、例えば、略球状、多面体状、ラズベリー状が挙げられる。
【0018】
成分Aの平均一次粒子径は、研磨速度向上の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、そして、研磨傷発生の抑制の観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの平均一次粒子径は、5nm以上300nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、20nm以上150nm以下が更に好ましい。本開示において、成分Aの平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出されるBET比表面積S(m2/g)を用いて算出される。BET比表面積は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0019】
本開示の研磨液組成物中の成分Aの含有量は、成分A、成分B及び水の合計含有量を100質量%とすると、研磨速度向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.07質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、研磨傷発生抑制の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの含有量は、0.001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.07質量%以上2.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上1質量%以下が更に好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0020】
[水溶性高分子(成分B)]
本開示の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子(以下、単に「成分B」ともいう)は、後述する構成単位b1と後述する構成単位b2とを含む共重合体である。成分Bは、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。本開示において、「水溶性」とは、水(20℃)に対して0.5g/100mL以上の溶解度、好ましくは2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。
【0021】
(構成単位b1)
構成単位b1は、下記式(I)で表される構成単位である。構成単位b1は、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
【0022】
【化3】
【0023】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X1はO又はNHを示し、Y1及びY2は同一又は異なって、炭素数1以上4以下のアルキレン基を示す。
式(I)において、R1、R2は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、それぞれ水素原子が好ましい。R3は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R4、R5及びR6は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、メチル基が好ましい。X1は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、O(酸素原子)が好ましい。Y1及びY2は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、それぞれ、炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のアルキレン基がより好ましい。
【0024】
構成単位b1としては、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、メタクリロイルエチルホスホベタイン構造を含むモノマー由来の構成単位が挙げられ、具体的には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)等のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
【0025】
(構成単位b2)
構成単位b2は、下記式(II)で表される構成単位、下記式(III)で表される構成単位、及び下記式(IV)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位である。構成単位b2は、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
【0026】
【化4】
【0027】
式(II)中、R7、R8及びR9は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、X2はO又はNHを示し、R10は炭化水素基を示す。
式(II)において、R7及びR8は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、水素原子が好ましい。R9は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。X2は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、O(酸素原子)が好ましい。R10の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの形態でもよい。R10の炭化水素基は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、炭素数1~22のアルキル基、炭素数6~22のアリール基、又は炭素数7~22のアラルキル基が好ましく、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数7~22のアラルキル基がより好ましい。R10の具体例としては、ブチル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0028】
式(III)中、R11、R12及びR13は同一又は異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R14は水素原子、ヒドロキシル基、炭化水素基又はアルコキシ基を示す。
式(III)において、R11及びR12は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、水素原子が好ましい。R13は不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。R14の炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれの形態でもよい。R14の炭化水素基としては、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基が挙げられる。R14のアルコキシ基としては、研磨速度向上の観点から、炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。R14は、不飽和単量体の入手性、単量体の重合性および研磨速度向上の観点から、水素原子が好ましい。
【0029】
式(IV)中、R15、R16及びR17は同一又は異なり、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、nは2~12の整数を示す。
式(IV)において、R15、R16及びR17は、研磨速度向上の観点から、水素原子が好ましい。nは、研磨速度向上の観点から、2~12の整数が好ましく、3~10の整数がより好ましく、4~6が更に好ましい。
【0030】
式(II)で表される構成単位としては、一又は複数の実施形態において、ブチルメタクリレート(BMA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、ラウリルメタクリレート(LMA)、ステアリルメタクリレート(SMA)、及びベンジルメタクリレート(BzMA)から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の構成単位が挙げられる。
式(III)で表される構成単位としては、一又は複数の実施形態において、スチレン(St)、α-メチルスチレン(αMSt)に由来する構成単位が挙げられる。
式(IV)で表される構成単位は、一又は複数の実施形態において、ビニルピロリドン(VP)に由来する構成単位が挙げられる。
【0031】
成分Bとしては、一又は複数の実施形態において、研磨速度向上の観点から、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/ブチルメタクリレート共重合体(MPC/BMA)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/ステアリルメタクリレート共重合体(MPC/SMA)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/ベンジルメタクリレート共重合体(MPC/BzMA)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/α-メチルスチレン共重合体(MPC/αMSt)、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/ビニルピロリドン共重合体(MPC/VP)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0032】
成分Bの全構成単位中における構成単位b1及び構成単位b2の合計含有量は、研磨速度向上の観点から、90~100モル%が好ましく、95~100モル%がより好ましく、99~100モル%が更に好ましい。
【0033】
成分Bの全構成単位中における、構成単位b1と構成単位b2とのモル比(b1/b2)は、研磨速度の向上の観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上であり、同様の観点から、好ましくは98/2以下、より好ましくは95/5以下である。
【0034】
成分Bは、構成単位b1及びb2以外のその他の構成単位をさらに有していてもよい。その他の構成単位としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0035】
成分Bの重量平均分子量は、研磨速度の向上の観点から、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましく、そして、3,000,000以下が好ましく、2,000,000以下がより好ましく、1,000,000以下が更に好ましい。より具体的には、成分Bの重量平均分子量は、1,000以上3,000,000以下が好ましく、5,000以上2,000,000以下がより好ましく、10,000以上1,000,000以下が更に好ましい。成分Bの重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
【0036】
本開示の研磨液組成物中の成分Bの含有量は、成分A、成分B及び水系媒体の合計含有量を100質量%とすると、研磨速度向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.0025質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Bの含有量は、0.001質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.0025質量%以上0.2質量%以下が更に好ましく、0.005質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計の含有量をいう。
【0037】
本開示の研磨液組成物中における成分Aと成分Bとの質量比A/B(成分Aの含有量/成分Bの含有量)は、研磨速度向上の観点から、1以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、そして、500以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。より具体的には、質量比A/Bは、1以上500以下が好ましく、2.5以上100以下がより好ましく、5以上50以下が更に好ましい。
【0038】
[水系媒体]
本開示の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等の水、又は、水と溶媒との混合溶媒等が挙げられる。上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が挙げられる。水系媒体が、水と溶媒との混合溶媒の場合、混合媒体全体に対する水の割合は、本開示の効果が妨げられない範囲であれば特に限定されなくてもよく、経済性の観点から、例えば、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。被研磨基板の表面清浄性の観点から、水系媒体としては、水が好ましく、イオン交換水及び超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本開示の研磨液組成物中の水系媒体の含有量は、成分A、成分B及び必要に応じて配合される後述する任意成分を除いた残余とすることができる。
【0039】
[任意成分]
本開示の研磨液組成物は、pH調整剤、成分B以外の水溶性高分子、界面活性剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、防腐剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、窒化珪素膜研磨抑制剤、ポリシリコン膜研磨抑制剤等の任意成分をさらに含有することができる。本開示の研磨液組成物が任意成分をさらに含有する場合、本開示の研磨液組成物中の任意成分の含有量は、研磨速度向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.0025質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、そして、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。より具体的には、任意成分の含有量は、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.0025質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。
【0040】
[研磨液組成物]
本開示の研磨液組成物は、例えば、成分A、成分B及び水系媒体、並びに、所望により上述した任意成分を公知の方法で配合する工程を含む製造方法によって製造できる。例えば、本開示の研磨液組成物は、少なくとも成分A、成分B及び水系媒体を配合してなるものとすることができる。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B及び水系媒体、並びに必要に応じて上述した任意成分を同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は特に限定されない。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。本開示の研磨液組成物の製造方法における各成分の配合量は、上述した本開示の研磨液組成物中の各成分の含有量と同じとすることができる。
【0041】
本開示の研磨液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2液型であってもよい。2液型の研磨液組成物の一実施形態としては、成分Aを含む第1液と、成分Bを含む第2液とから構成され、使用時に第1液と第2液とが混合されるものが挙げられる。第1液と第2液との混合は、研磨対象の表面への供給前に行われてもよいし、これらは別々に供給されて被研磨基板の表面上で混合されてもよい。第1液及び第2液はそれぞれ必要に応じて上述した任意成分を含有することができる。
【0042】
本開示の研磨液組成物のpHは、研磨速度向上の観点から、3.5以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、そして、9以下が好ましく、8.5以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。より具体的には、pHは、3.5以上9以下が好ましく、4以上8.5以下がより好ましく、5以上8以下が更に好ましい。本開示において、研磨液組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0043】
本開示において「研磨液組成物中の各成分の含有量」とは、研磨時、すなわち、研磨液組成物の研磨への使用を開始する時点での前記各成分の含有量をいう。本開示の研磨液組成物は、その安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて水で適宜希釈して研磨工程で使用することができる。希釈割合としては5~100倍が好ましい。
【0044】
[被研磨膜]
本開示の研磨液組成物を用いて研磨される被研磨膜としては、例えば、酸化珪素膜が挙げられる。したがって、本開示の研磨液組成物は、酸化珪素膜の研磨を必要とする工程に使用できる。一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、半導体基板の素子分離構造を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、層間絶縁膜を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、埋め込み金属配線を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、又は、埋め込みキャパシタを形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨に好適に使用できる。その他の一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、3次元NAND型フラッシュメモリ等の3次元半導体装置の製造に好適に使用できる。
【0045】
[研磨液キット]
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を製造するためのキット(以下、「本開示の研磨液キット」ともいう)に関する。
本開示の研磨液キットの一実施形態としては、例えば、成分A及び水系媒体を含むセリア分散液(第1液)と、成分Bを含む添加剤水溶液(第2液)と、を相互に混合されない状態で含む、研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。前記セリア分散液(第1液)と前記添加剤水溶液(第2液)とは、使用時に混合され、必要に応じて水系媒体を用いて希釈される。前記セリア分散液(第1液)に含まれる水系媒体は、研磨液組成物の調製に使用する水の全量でもよいし、一部でもよい。前記添加剤水溶液(第2液)には、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の一部が含まれていてもよい。前記セリア分散液(第1液)及び前記添加剤水溶液(第2液)にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。
本開示の研磨液キットによれば、酸化珪素膜の研磨速度を向上可能な研磨液組成物が得られうる。
【0046】
[半導体基板の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程(以下、「本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板の製造方法」ともいう。)に関する。本開示の半導体基板の製造方法によれば、酸化珪素膜の研磨速度を向上できるため、半導体基板を効率よく製造できるという効果が奏されうる。
【0047】
本開示の半導体基板の製造方法の具体例としては、まず、シリコン基板を酸化炉内で酸素に晒すことよりその表面に二酸化シリコン層を成長させ、次いで、当該二酸化シリコン層上に窒化珪素(Si34)膜又はポリシリコン膜等の研磨ストッパ膜を、例えばCVD法(化学気相成長法)にて形成する。次に、シリコン基板と前記シリコン基板の一方の主面側に配置された研磨ストッパ膜とを含む基板、例えば、シリコン基板の二酸化シリコン層上に研磨ストッパ膜が形成された基板に、フォトリソグラフィー技術を用いてトレンチを形成する。次いで、例えば、シランガスと酸素ガスを用いたCVD法により、トレンチ埋め込み用の被研磨膜である酸化珪素(SiO2)膜を形成し、研磨ストッパ膜が被研磨膜(酸化珪素膜)で覆われた被研磨基板を得る。酸化珪素膜の形成により、前記トレンチは酸化珪素膜の酸化珪素で満たされ、研磨ストッパ膜の前記シリコン基板側の面の反対面は酸化珪素膜によって被覆される。このようにして形成された酸化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面は、下層の凸凹に対応して形成された段差を有する。次いで、CMP法により、酸化珪素膜を、少なくとも研磨ストッパ膜のシリコン基板側の面の反対面が露出するまで研磨し、より好ましくは、酸化珪素膜の表面と研磨ストッパ膜の表面とが面一になるまで酸化珪素膜を研磨する。本開示の研磨液組成物は、このCMP法による研磨を行う工程に用いることができる。酸化珪素膜の下層の凹凸に対応して形成された凸部の幅は、例えば、0.5μm以上5000μm以下であり、凹部の幅は、例えば、0.5μm以上5000μm以下である。
【0048】
CMP法による研磨では、被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で、本開示の研磨液組成物をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面の凹凸部分を平坦化させる。
なお、本開示の半導体基板の製造方法において、シリコン基板の二酸化シリコン層と研磨ストッパ膜との間に他の絶縁膜が形成されていてもよいし、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)と研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)との間に他の絶縁膜が形成されていてもよい。
【0049】
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨パッドの回転数は、例えば、30~200rpm/分、被研磨基板の回転数は、例えば、30~200rpm/分、研磨パッドを備えた研磨装置に設定される研磨荷重は、例えば、20~500g重/cm2、研磨液組成物の供給速度は、例えば、10~500mL/分以下に設定できる。研磨液組成物が2液型研磨液組成物の場合、第1液及び第2液のそれぞれの供給速度(又は供給量)を調整することで、被研磨膜及び研磨ストッパ膜のそれぞれの研磨速度や、被研磨膜と研磨ストッパ膜との研磨速度比(研磨選択性)を調整できる。
【0050】
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、被研磨膜(酸化珪素膜)の研磨速度は、生産性向上の観点から、50nm/分以上が好ましく、80nm/分以上がより好ましく、90nm/分以上が更に好ましい。
【0051】
[研磨方法]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、研磨方法(以下、本開示の研磨方法ともいう)に関する。本開示の研磨方法を使用することにより、酸化珪素膜の研磨速度向上が可能であるため、品質が向上した半導体基板の生産性を向上できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、上述した本開示の半導体基板の製造方法と同じようにすることができる。
【実施例
【0052】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
1.水溶性高分子B1~B6
表1に示す水溶性高分子B1~B3には下記のものを用いた。また、表1に示す水溶性高分子B4~B6を以下のようにして調製した。
【0054】
[水溶性高分子B1]
水溶性高分子B1として、MPCとBMAの共重合体(商品名Lipidure-PMB、日油株式会社)を用いた。水溶性高分子B1における構成単位のモル比(MPC/BMA)は80/20であり、水溶性高分子B1の重量平均分子量は600,000であった。
[水溶性高分子B2]
水溶性高分子B2として、MPCとBMAの共重合体(商品名Lipidure-S、日油株式会社)を用いた。水溶性高分子B2における構成単位のモル比(MPC/SMA)は80/20であり、水溶性高分子B2の重量平均分子量は100,000であった。
[水溶性高分子B3]
水溶性高分子B3として、MPCとBzMAの共重合体(日油株式会社)を用いた。水溶性高分子B3における構成単位のモル比(MPC/BzMA)は80/20であり、水溶性高分子B3の重量平均分子量は100,000であった。
[水溶性高分子B4の製造例]
内容量300mLの4つ口ナスフラスコにエタノールを20.0g入れ、80℃まで昇温させた。そこにMPC(東京化成工業(株)製)10.0g、α-メチルスチレン(αMSt)(富士フィルム和光純薬工業(株)製)0.99g、エタノール20.0gを混合させた溶液と、2,2’-アゾビス(イソブチルニトリル)(富士フィルム和光純薬工業(株)製)0.042g、エタノール10.0gを混合させた溶液を別々に2時間かけて滴下して重合した。4時間熟成させた後に溶媒を減圧留去し水に置換することで水溶性高分子B4(MPCとαMStの共重合体)を含有するポリマー水溶液を得た。水溶性高分子B4における構成単位のモル比(MPC/αMSt)は80/20であり、水溶性高分子B4の重量平均分子量は100,000であった。
[水溶性高分子B5の製造例]
内容量300mLの4つ口ナスフラスコにエタノールを20.0g入れ、80℃まで昇温させた。そこにMPC(東京化成工業(株)製)10.0g、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)(富士フィルム和光純薬工業(株)製)0.94g、エタノール20.0gを混合させた溶液と、2,2’-アゾビス(イソブチルニトリル)(富士フィルム和光純薬工業(株)製)0.042g、エタノール10.0gを混合させた溶液を別々に2時間かけて滴下して重合した。4時間熟成させた後に溶媒を減圧留去し水に置換することで水溶性高分子B5(MPCとVPの共重合体)を含有するポリマー水溶液を得た。水溶性高分子B5における構成単位のモル比(MPC/VP)は80/20であり、水溶性高分子B5の重量平均分子量は100,000であった。
[水溶性高分子B6の製造例]
内容量500mLの4つ口フラスコに超純水を50g入れ、65℃まで昇温させた。そこにN-(2-カルボキシエチル)-N-メタクリロキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン(大阪有機化学工業(株)製)5.0g、超純水33gを混合させた溶液と、V-50(富士フィルム和光純薬工業(株)製)0.063g、超純水17gを混合させた溶液を別々に2時間かけて滴下して重合した。6時間熟成させた後に室温に戻し、水溶性高分子B6(CBMAホモポリマー)を含有するポリマー水溶液を得た。水溶性高分子B6の重量平均分子量は360,000であった。
【0055】
2.研磨液組成物の調製(実施例1~9、比較例1~3)
セリア粒子(成分A)、水溶性高分子(成分B又は非成分B)及び水を混合して実施例1~9及び比較例1~3の研磨液組成物を得た。研磨液組成物中の各成分の含有量(質量%、有効分)はそれぞれ、表1に示すとおりであり、水の含有量は、成分Aと成分B又は非成分Bとを除いた残余である。pH調整はアンモニアもしくは硝酸を用いて実施した。
【0056】
研磨液組成物の調製において、成分Aには以下のものを用いた。
(成分A)
負帯電セリア[平均一次粒子径:27.1nm、BET比表面積30.8m2/g]
正帯電セリア[平均一次粒子径:28.6nm、BET比表面積29.1m2/g]
【0057】
3.各パラメータの測定方法
(1)研磨液組成物のpH
研磨液組成物の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜電波工業社製、「HM-30G」)を用いて測定した値であり、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して1分後の数値である。結果を表1に示した。
【0058】
(2)セリア粒子(成分A)の平均一次粒径
セリア粒子(成分A)の平均一次粒径(nm)は、下記BET(窒素吸着)法によって得られる比表面積S(m2/g)を用い、セリア粒子の真密度を7.2g/cm3として算出した。
【0059】
(3)セリア粒子(成分A)のBET比表面積
比表面積は、セリア分散液を120℃で3時間熱風乾燥した後、メノウ乳鉢で細かく粉砕しサンプルを得た。測定直前に120℃の雰囲気下で15分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0060】
4.研磨液組成物(実施例1~9、比較例1~3)の評価
[評価用サンプル]
評価用サンプルとして市販のCMP特性評価用ウエハ(Advantec社製の「T-TEOS MIT864 PTウエハ」、直径200mm)を用意し、これを40mm×40mmに切断した。この評価用サンプルは、シリコン基板上に1層目として膜厚150nmの窒化珪素膜と2層目として膜厚450nmの酸化珪素膜が凸部として配置されており、凹部も同様に膜厚450nmの酸化珪素膜が配置され、凸部と凹部の段差が350nmになるよう、エッチングにより線状凹凸パターンが形成されている。酸化珪素膜はP-TEOSにより形成されており、凸部及び凹部の線幅がそれぞれ100μmのものを測定対象として使用した。
【0061】
[研磨条件]
研磨装置:片面研磨機[テクノライズ製「TR15M-TRK1」、定盤径380mm]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド[ニッタ・ハース社製「IC-1000/Suba400」]
定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:90rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:50mL/分
研磨時間:1分間
【0062】
[研磨速度]
実施例1~9、比較例1~3の各研磨液組成物を用いて、上記研磨条件でパターン基板を研磨した。研磨後、超純水を用いて洗浄し、乾燥して、試験片を後述の光干渉式膜厚測定装置による測定対象とした。
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製「VM-1230」)を用いて、酸化珪素膜の凸部の膜厚を測定した。酸化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。算出結果を表1に示した。
酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(Å)-研磨後の酸化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示されるように、実施例1~9は、成分Bを用いない比較例1~3に比べて、酸化珪素膜の研磨速度が向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示の研磨液組成物は、高密度化又は高集積化用の半導体基板の製造方法において有用である。