(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御システム
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20230328BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20230328BHJP
B60R 25/23 20130101ALI20230328BHJP
B60R 25/01 20130101ALI20230328BHJP
【FI】
E05B49/00 J
B60R25/24
B60R25/23
B60R25/01
(21)【出願番号】P 2019147043
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】日本電産モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】荒貝 隆
(72)【発明者】
【氏名】北條 貴大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠暉
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-043724(JP,A)
【文献】特開2005-232989(JP,A)
【文献】特開2016-094134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたドアを自動的にロックする予約を受け付けた後、所定のロック条件が成立した場合に、前記ドアをロックする制御部を備えた車両制御装置において、
前記制御部は、
前記予約を受け付けた後、前記ロック条件が成立したと判定した場合は、前記ドアのロックを実行し、かつ前記車両の走行駆動源の始動を禁止せず、
前記予約を受け付けた後、前記ロック条件が成立していないと判定した場合は、前記ドアのロックを実行せず、かつ前記車両の走行駆動源の始動を禁止する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制御部により前記走行駆動源の始動が禁止された後、当該禁止を解除するための入力部による入力を前記車両のユーザに要求する入力要求部をさらに備え、
前記制御部は、前記入力部により前記ユーザに固有の特定の入力が行われると、前記走行駆動源の始動禁止を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記制御部は、前記ユーザにより所持される前記車両の電子キーが前記車両の車室内に有り、かつ前記入力部により前記特定の入力が行われると、前記走行駆動源の始動禁止を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の車両制御装置において、
前記入力要求部は、前記走行駆動源を始動させるために、前記車両に設けられたスタートスイッチが操作されると、前記入力を要求する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の車両制御装置において、
前記入力要求部は、前記入力として、パスワードの入力を要求し、
前記制御部は、前記入力部により特定のパスワードが入力されると、前記走行駆動源の始動禁止を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の車両制御装置において、
前記入力部は、当該車両制御装置と電気的に接続された車載機器に備わっていて、
前記入力要求部は、前記入力を要求する表示を前記車載機器に備わる表示部に表示させ、
前記制御部は、前記入力部により入力された内容を前記車載機器から取得して、当該入力の内容が前記特定の入力の内容と一致するか否かを判定する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の車両制御装置において、
前記ユーザが携帯する携帯機器と無線で通信する通信部をさらに備え、
前記入力部は、前記携帯機器に備わっていて、
前記入力要求部は、前記入力を要求する情報を、前記通信部により前記携帯機器へ送信して、前記携帯機器に備わる表示部に表示させ、
前記入力部により前記特定の入力が行われたことに応じて前記携帯機器から送信される、走行駆動源の始動禁止を解除する要求が前記通信部により受信されると、前記制御部は前記走行駆動源の始動禁止を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の車両制御装置において、
前記制御部は、前記予約の受け付け後に、前記ドアが閉まったこと、または、前記車両のユーザにより所持される電子キーが前記車両の車室内に無いことを含む前記ロック条件の成否を判定する、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
車両に設けられたドアを自動的にロックする予約を受け付けた後、前記ドアをロックする車両制御システムであって、
前記ドアをロックするドアロック装置と、
前記車両の走行駆動源と、
前記ドアロック装置および前記走行駆動源の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記予約を受け付けた後、所定のロック条件が成立
したと判定した場合は、前記ドアロック装置により前記ドア
のロックを実行し、かつ前記走行駆動源の始動を禁止せず、
前記予約を受け付けた後、前記ロック条件が成立
していないと判定した場合は、
前記ドアロック装置により前記ドアのロックを実行せず、かつ前記走行駆動源の始動を禁止する、ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項10】
請求項9に記載の車両制御システムにおいて、
前記車両のユーザが前記走行駆動源の始動禁止を解除する入力を行うための入力部と、
前記入力部による前記入力を前記ユーザに要求する入力要求部とをさらに備え、
前記制御部は、前記入力部により前記ユーザに固有の特定の入力が行われると、前記走行駆動源の始動禁止を解除する、ことを特徴とする車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを自動的にロックする予約を受け付けて、当該ロックを実行する車両制御装置および車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアをロックする場合、従来は、車両のドアが閉じるのを待ってから、ドアをロックする操作を行っていたが、最近では、ドアロックの予約操作を行うことにより、ドアが閉じると自動的にドアをロックする車両制御装置が登場している。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示された車両制御装置では、ユーザがドア操作スイッチを操作して、車両のドアを自動で閉動作させているときに、さらにドアロックスイッチを操作すると、ドアを自動的にロックする予約(以下、「予約ロック」という。)が受け付けられる。そして、所定のロック条件が成立すると、ドアが自動でロックされ、ロック条件が成立しなければ、ドアがアンロック状態になって、警報が出力される。ロック条件には、ドアが閉まっていることや、車両のユーザにより所持される電子キーが車両の車室内にないことが含まれている。
【0004】
特許文献2に開示された車両制御装置では、車両に設けられた複数のドアのうち、少なくともいずれか1つのドアが開いていて、少なくともいずれか1つのドアが閉まっているときに、ユーザがその閉まっているドアに設けられたロックスイッチを操作すると、電子キー(携帯機)の位置が検出される。このとき、電子キーが車両の車室内に無く、車外にあることが検出されると、予約ロックが受け付けられて、自動施錠可能モードへ移行する。そして、ロック条件(全てのドアが閉まったことと、電子キーが車室内に無いこと)が成立すると、全てのドアが自動でロックされる。また、予約ロックの受け付け時、ロック条件の不成立検出時、およびドアの自動ロック時に、車外ブザーがそれぞれ異なる回数だけ吹鳴される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-150734号公報
【文献】特許第5173499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両のドアの予約ロックが受け付けられた後、所定のロック条件が成立しなければ、ドアがアンロック状態になる。この場合、たとえばユーザが気付かずに車両を離れると、悪意の第三者がそのアンロック状態のドアを開けて、車室内に侵入可能となる。そしてその際、たとえば車両の電子キーが車室内に置き忘れられていると、悪意の第三者により車両のエンジンが始動可能になるため、車両が盗難されるおそれがある。
【0007】
本発明は、予約ロックに基づいて車両のドアを自動的にロックすることができなかった場合に、車両の盗難を防止することができる車両制御装置および車両制御システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による車両制御装置は、車両に設けられたドアを自動的にロックする予約を受け付けた後、所定のロック条件が成立した場合に、ドアをロックする制御部を備えていて、当該制御部は、前記予約を受け付けた後、ロック条件が成立したと判定した場合は、ドアのロックを実行し、かつ車両の走行駆動源の始動を禁止せず、前記予約を受け付けた後、ロック条件が成立していないと判定した場合は、ドアのロックを実行せず、かつ車両の走行駆動源の始動を禁止する。
【0009】
また、本発明による車両制御システムは、車両に設けられたドアを自動的にロックする予約を受け付けた後、ドアをロックする車両制御システムであって、ドアをロックするドアロック装置と、車両の走行駆動源と、ドアロック装置および走行駆動源の動作を制御する制御部とを備える。制御部は、前記予約を受け付けた後、所定のロック条件が成立したと判定した場合は、ドアロック装置によりドアのロックを実行し、かつ走行駆動源の始動を禁止せず、ロック条件が成立していないと判定した場合は、ドアロック装置によりドアのロックを実行せず、かつ走行駆動源の始動を禁止する。
【0010】
このような車両制御装置および車両制御システムによると、車両のドアを自動的にロックする予約を受け付けた後、所定のロック条件が成立しなかったことで、ドアがアンロック状態になった場合、すなわち当該予約を実現することができなかった場合に、車両の走行駆動源の始動が禁止される。このため、たとえば車両の電子キーが車室内に置き忘れられていても、悪意の第三者がアンロック状態にあるドアを開けて、車室内に侵入した後、走行駆動源を始動させることはできず、車両の盗難を防止することが可能となる。
【0011】
本発明では、上記車両制御装置において、制御部により走行駆動源の始動が禁止された後、当該禁止を解除するための入力部による入力を車両のユーザに要求する入力要求部がさらに設けられ、制御部は、入力部によりユーザに固有の特定の入力が行われると、走行駆動源の始動禁止を解除してもよい。
【0012】
また、本発明では、上記車両制御システムにおいて、車両のユーザが走行駆動源の始動禁止を解除する入力を行うための入力部と、この入力部による入力をユーザに要求する入力要求部とをさらに設け、制御部は、入力部によりユーザに固有の特定の入力が行われると、走行駆動源の始動禁止を解除してもよい。
【0013】
また、本発明では、制御部は、ユーザにより所持される車両の電子キーが車両の車室内に有り、かつ入力部により特定の入力が行われると、走行駆動源の始動禁止を解除してもよい。
【0014】
また、本発明では、入力要求部は、走行駆動源を始動させるために、車両に設けられたスタートスイッチが操作されると、前記入力を要求してもよい。
【0015】
また、本発明では、入力要求部は、前記入力として、パスワードの入力を要求し、制御部は、入力部により特定のパスワードが入力されると、走行駆動源の始動禁止を解除してもよい。
【0016】
また、本発明では、入力部は、車両制御装置と電気的に接続された車載機器に備わっていてもよい。この場合、入力要求部は、前記入力を要求する表示を車載機器に備わる表示部に表示させ、制御部は、入力部により入力された内容を車載機器から取得して、当該入力の内容が特定の入力の内容と一致するか否かを判定してもよい。
【0017】
または、入力部は、ユーザが携帯する携帯機器に備わっていてもよい。この場合、車両制御装置は、携帯機器と無線で通信する通信部をさらに備え、入力要求部は、前記入力を要求する情報を、通信部により携帯機器へ送信して、携帯機器に備わる表示部に表示させ、入力部により特定の入力が行われたことに応じて携帯機器から送信される、走行駆動源の始動禁止を解除する要求が通信部により受信されると、制御部は走行駆動源の始動禁止を解除してもよい。
【0018】
さらに、本発明では、制御部は、前記予約の受け付け後に、ドアが閉まったこと、または、電子キーが車両の車室内に無いことを含むロック条件の成否を判定してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、予約ロックに基づいて車両のドアを自動的にロックすることができなかった場合に、車両の盗難を防止することができる車両制御装置および車両制御システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の車両制御システムの電気ブロック図である。
【
図2】車両制御装置が搭載される車両を示した図である。
【
図3】第1実施形態の車両制御装置の動作を示したフローチャートである。
【
図5】第2実施形態の車両制御システムの電気ブロック図である。
【
図6】第2実施形態の車両制御装置とスマートフォンの動作を示したフローチャートである。
【
図7】第3実施形態の車両制御装置の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0022】
図1は、第1実施形態の車両制御システム100の電気ブロック図である。車両制御システム100は、車両制御装置10と、その周辺の各ブロック20、28~30、33~37とから構成される。
図1では、本実施形態に関係するブロックのみ図示している(後述する
図5も同様)。
【0023】
車両制御装置10は、自動四輪車から成る車両50に搭載されている。車両制御装置10には、制御部11とLF・UHF通信部17とが備わっている。
【0024】
制御部11は、マイクロコンピュータなどから構成されている。制御部11には、キー位置検出部12、予約ロック受付部13、ドア開閉検出部14、入力要求部15、および入力判定部16が備わっている。これらのブロック12~16の各機能(詳細は後述)は、ソフトウェアにより実現される。
【0025】
LF・UHF通信部17は、車内アンテナ17Aと車外アンテナ17Bを有している。LF・UHF通信部17は、制御部11の制御の下で、アンテナ17A、17Bを介して、車両50のユーザにより所持される電子キー20に対してLF(Low Frequency)信号を送信したり、電子キー20から送信されたUHF(Ultra High Frequency)信号を受信したりする。
【0026】
電子キー20には、LF・UHF通信部、制御部、操作部、および表示部などが備わっている(図示省略)。電子キー20は、車両制御装置10とともに、スマートキーシステムを構成している。
【0027】
スマートキーシステムにおいては、電子キー20の操作によって車両50のドアの施錠・解錠を行うキーレスエントリや、車両50のドアハンドルの操作に基づく電子キー20と車両制御装置10との間の双方向通信によりドアの施錠・解錠を行う、パッシブエントリなどの動作が行われる。
【0028】
車両制御装置10には、操作部30、ドアセンサ33、ドア開閉装置34、ドアロック装置35、警報装置36、ナビゲーション装置37、およびエンジン駆動装置29が接続されている。エンジン駆動装置29には、エンジン28が接続されている。これらの各部は、車両50に設けられている。
【0029】
操作部30には、ドア操作スイッチ31、ドアロックスイッチ32、およびスタートスイッチ39が含まれている。また、これらのスイッチ31、32、39以外の、車両50の車室外や車室内に設けられたスイッチ、ノブ、レバー、ペダル、もしくはハンドル、またはそれらの操作を検出するセンサなども、操作部30には含まれている。
【0030】
ドア操作スイッチ31は、車両50のドアを開閉する際に操作されるスイッチである。ドアロックスイッチ32は、車両50のドアが閉じた後に、ドアをロックするためのスイッチである。スタートスイッチ39は、エンジン28を始動または停止させたり、車両50の電装品の電源をオンまたはオフさせたりするためのスイッチである。ドアセンサ33は、車両50のドアが開状態にあるか閉状態にあるかを検出するセンサである。操作部30の各部とドアセンサ33の出力は、車両制御装置10の制御部11に入力される。制御部11のドア開閉検出部14は、ドアセンサ33からの出力信号に基づいて、車両50のドアの開閉状態を検出する。
【0031】
ドア開閉装置34は、ドア操作スイッチ31の操作に基づいて、車両50のドアを開閉する装置である。ドア開閉装置34には、車両50のドアを開閉するためのモータなどが備わっている。ドアロック装置35は、ドアロックスイッチ32の操作に基づいて、車両50のドアをロックする装置である。警報装置36は、車両50のユーザや車両50の周囲にいる人に対して、音や光による警報を出力する装置である。
【0032】
ナビゲーション装置37は、車両50の現在位置から目的地までの経路を案内する装置である。ナビゲーション装置37には、画像を表示したり、タッチ操作を検出したりするタッチパッド38が備わっている。ナビゲーション装置37は、本発明の「車載機器」の一例である。タッチパッド38は、本発明の「入力部」と「表示部」の一例である。
【0033】
エンジン駆動装置29には、エンジン28を始動させるためのスタータモータと、エンジン28に燃料を供給する燃料供給部とが備わっている。エンジン駆動装置29は、スタートスイッチ39の操作に基づいて、スタータモータを駆動することにより、エンジン28を始動させる。また、エンジン駆動装置29は、燃料供給部によりエンジン28に供給する燃料を調整することにより、エンジン28の駆動を継続させる。さらに、エンジン駆動装置29は、燃料供給部によりエンジン28への燃料の供給を停止することにより、エンジン28を停止させる。エンジン28は、車両50を走行させるための駆動源であり、本発明の「走行駆動源」の一例である。
【0034】
図2は、
図1の車両50を示した図である。
図2に示すように、車両50の左右側部には、複数のドア51、52が設けられている。各ドア51、52を開放することで、車両50の車室55内に対して人が出入り可能になる。
【0035】
ドア51、52のうち、車両50の前側にある各フロントドア51は、手動で開閉される。各フロントドア51の後方にある各ドア52は、ドア開閉装置34に備わるモータ(図示省略)の駆動力で開閉するパワースライドドアである。
【0036】
車両50の車室55内には、スタートスイッチ39、ナビゲーション装置37、および複数(ここでは3つ)の車内アンテナ17Aが設けられている。スタートスイッチ39とナビゲーション装置37は、車両50の運転席の近傍に設けられている。
【0037】
複数の車内アンテナ17Aは、車両50の車室55内の全域にわたる車内通信領域Zaを形成している。ここでいう車内通信領域Zaとは、少なくともいずれか1つの車内アンテナ17Aから送信される電波が届いて、車室55内にある電子キー20(
図1)との通信が可能な範囲のことである。
【0038】
各フロントドア51には、車外アンテナ17Bが設けられている。詳しくは、車外アンテナ17Bは、各フロントドア51に備わるドアハンドル(図示省略)に1個ずつ設けられている。各車外アンテナ17Bは、車両50の左右側方(車室55外)に、それぞれ所定の大きさの車外通信領域Zbを形成している。ここでいう車外通信領域Zbとは、いずれかの車外アンテナ17Bから送信される電波が届いて、車両50の外側にある電子キー20(
図1)との通信が可能な範囲のことである。
【0039】
図1のキー位置検出部12は、LF・UHF通信部17の各アンテナ17A、17Bによる電子キー20との通信結果に基づいて、車両50に対する電子キー20の位置を検出する。
【0040】
具体的には、たとえばLF・UHF通信部17が、少なくともいずれか1つの車内アンテナ17Aを介して電子キー20と相互に通信(LF信号とUHF信号を送受信)することができ、かつ車外アンテナ17Bを介して電子キー20と相互に通信(LF信号とUHF信号を送受信)することができなかった場合、キー位置検出部12は、電子キー20が車室55内(車内通信領域Za)に有ると判定する。また、LF・UHF通信部17が、いずれかの車外アンテナ17Bを介して電子キー20と相互に通信することができ、かつ車内アンテナ17Aを介して電子キー20と相互に通信することができなかった場合、キー位置検出部12は、電子キー20が車室55外の車外通信領域Zbに有ると判定する。
【0041】
図2に示すように、車両50の左右側部には、車外アンテナ17B以外に、ドアロックスイッチ32とドア操作スイッチ31とが設けられている。詳しくは、ドアロックスイッチ32は、左右のフロントドア51に備わるドアハンドル(図示省略)に1個ずつ設けられている。ドア操作スイッチ31は、左右のスライドドア52に備わるドアハンドル(図示省略)に1個ずつ設けられている。
図1のドアセンサ33は、
図2で図示されていないが、各ドア51、52の近傍に設けられている。
【0042】
車両50の全てのドア51、52を自動的にロック(施錠)する予約ロックを設定するには、たとえば電子キー20を携帯したユーザが、いずれかのスライドドア52に設けられたドア操作スイッチ31を操作して、当該スライドドア52を自動で閉動作(閉方向にスライド)させているときに、いずれかのフロントドア51に設けられたドアロックスイッチ32を操作する。
図1の予約ロック受付部13は、上記のようなドア操作スイッチ31とドアロックスイッチ32の連続した2段階操作と、該操作時に電子キー20がいずれかの車外通信領域Zbに有ることとを検出したときに、予約ロックを受け付ける。
【0043】
予約ロックの受け付け後、後述する所定のロック条件が成立した場合は、制御部11の制御の下で、
図1のドアロック装置35が各ドア51、52をロックする(自動ロック状態)。
【0044】
また、予約ロックの受け付け後、ロック条件が成立しなかった場合は、制御部11の制御の下で、ドアロック装置35が各ドア51、52をロックせず、
図1の警報装置36が警報を出力し、制御部11がエンジン駆動装置29に対してエンジン28の始動を禁止する指令を出力する。つまり、少なくともいずれか1つのドア51、52がアンロック(解錠)状態で放置されるため、防犯を目的として、警報が出力され、かつエンジン28の始動が禁止される。
【0045】
図1の入力要求部15は、上記のエンジン28の始動禁止を解除するための入力を、車両50のユーザに要求する。入力判定部16は、ユーザによりエンジン28の始動禁止を解除するための正しい入力が有ったか否かを判定する。
【0046】
なお、上述した予約ロックによらずに、各ドア51、52のロックを行う際にも、ドアロックスイッチ32は操作される。つまり、全ドア51、52が閉じた後で、ドアロックスイッチ32を操作することで、全ドア51、52がドアロック装置35によりロックされる。また、全ドア51、52がロックされた状態で、ドアロックスイッチ32を操作することで、全ドア51、52がドアロック装置35によりアンロックされる。
【0047】
前述した予約ロック時、キーレスエントリ時、パッシブエントリ時、およびエンジン28の始動時に、制御部11は、LF・UHF通信部17により電子キー20と通信して、電子キー20の認証を行う。具体的には、制御部11は、LF・UHF通信部17により電子キー20から受信したUHF信号に含まれる電子キー20のIDと、予め記憶されたIDとを比較し、両IDが一致すると、電子キー20の認証が成功したと判断する。そして、制御部11は、認証が成功した電子キー20との通信を継続して、予約ロックの受け付けや実行を行ったり、キーレスエントリやパッシブエントリを実行したり、エンジン28を始動させたりする。
【0048】
図3は、第1実施形態の車両制御装置10の動作を示したフローチャートである。
【0049】
図3において、前述したように予約ロック受付部13は、ドア操作スイッチ31とドアロックスイッチ32の連続した2段階操作と、該操作時に電子キー20がいずれかの車外通信領域Zbに有ることとを検出して、ドア51、52の予約ロックを受け付ける(ステップS1;YES)。すると、制御部11は、所定のロック条件が成立したか否かを判定する(ステップS2)。
【0050】
このとき、制御部11は、LF・UHF通信部17の各アンテナ17A、17Bを介して電子キー20との通信を試み、該通信結果に基づいて、キー位置検出部12により電子キー20の位置を検出する。また、制御部11は、ドア開閉検出部14により各ドア51、52の開閉状態を検出する。
【0051】
そして、たとえば、電子キー20が車室55内に無いことをキー位置検出部12により検出し、かつ全てのドア51、52が閉じていることをドア開閉検出部14により検出すると、制御部11は、ロック条件が成立したと判定する(ステップS2:YES)。この場合、制御部11は、ドアロック装置35により全てのドア51、52をロックする(ステップS3)。つまり、受け付けた予約ロックが実現される(予約ロック成功)。また、後述のステップS5(エンジン始動禁止)は実行されない。
【0052】
一方、たとえば、電子キー20が車室55内に有ることをキー位置検出部12により検出したり、または、少なくともいずれか1つのドア51、52が開いていることをドア開閉検出部14により検出したりすると、制御部11は、ロック条件が成立しないと判定する(ステップS2:NO)。この場合、制御部11は、全てのドア51、52をそのままの状態に放置する(ステップS4)。これにより、全てのドア51、52のうち、既にロックされていたドアはそのままロック状態となり、ロックされていなかったドアはアンロック状態となる。つまり、受け付けた予約ロックが実現されず、少なくともいずれか1つのドア51、52がアンロック状態になる(予約ロック失敗)。
【0053】
そして、制御部11は、CAN(Controller Area Network)などを介して、エンジン駆動装置29に始動禁止指令を送信して、エンジン28の始動を禁止する(ステップS5)。エンジン28の始動が禁止されている間は、スタートスイッチ39が操作されても、エンジン駆動装置29がスタータモータを駆動しないため、エンジン28が始動することはない。
【0054】
また、
図3には図示していないが、制御部11は、ロック条件が成立しないと判定して(ステップS2:NO)ドア51、52をそのままの状態に放置すると(ステップS4)、警報装置36により警報を出力する。具体的には、たとえば、警報装置36に含まれる、車両50のブザーやホーンを吹鳴させたり、車両50の照明類を点灯・点滅させたりする。
【0055】
その後、エンジン28を始動させるために、スタートスイッチ39が操作されると(ステップS6:YES)、この時点ではエンジン28はまだ始動せず、入力要求部15が、ナビゲーション装置37とCANなどで通信する。そして、入力要求部15は、エンジン28の始動禁止解除用のパスワードの入力を要求するパスワード入力画面60(
図4)を、ナビゲーション装置37のタッチパッド38に表示させる(ステップS7)。
【0056】
図4は、パスワード入力画面60を示した図である。
図4に示すように、パスワード入力画面60には、パスワードの入力を要求するメッセージ61と、パスワードの入力欄62と、複数のソフトキー63~66が設けられている。これらに加えて、現在エンジン28の始動が禁止されていることを通知するメッセージや、パスワードがエンジン28の始動禁止を解除するためのものであることを示す文言を、パスワード入力画面60に表示してもよい。
【0057】
ソフトキー63~66のうち、複数あるソフトキー63は、数字、英字、または記号を入力欄62に入力するためのキーである。ソフトキー64は、各ソフトキー63により入力する情報を切り替えるためのキーである。ソフトキー65は、ソフトキー63により一旦入力した数字など情報を削除する(取り消す)ためのキーである。ソフトキー66は、入力したパスワードを決定するためのキーである。
【0058】
図4(a)では、各ソフトキー63に数字(「0」~「9」)が表示されているため、各ソフトキー63をタッチ操作することで、操作したソフトキー63に対応する数字が入力される。
図4(a)において、ソフトキー64をタッチ操作することで、
図4(b)に示すように、各ソフトキー63に英字または記号が表示される。
図4(b)において、各ソフトキー63を1回または複数回タッチ操作することで、操作したソフトキー63に対応する英字または記号が入力される。たとえば、「ABC」が表示されたソフトキー63を、1回、2回、または3回タッチ操作することで、英小文字「a」、「b」、または「c」が入力され、4回、5回、または6回タッチ操作することで、英大文字「A」、「B」、または「C」が入力される。また、
図4(b)において、ソフトキー64をタッチ操作することで、
図4(a)に示すように、各ソフトキー63に数字が表示される。
【0059】
ソフトキー63をタッチ操作して、数字、英字、または記号を入力すると、
図4(b)に示すように、入力欄62にその入力情報に代えて「*」が表示される。そして、ソフトキー66をタッチ操作すると、当該入力情報(文字列)がパスワードとして決定されて、ナビゲーション装置37から制御部11に送信される。
【0060】
入力判定部16は、ナビゲーション装置37からパスワードを受信(取得)すると、該パスワードと、予め記憶された車両50のユーザだけが知り得る特定のパスワードとを比較する。そして、両パスワードが一致すると、入力判定部16は、正しいパスワードの入力が有ったと判定する。
【0061】
また、
図3のステップS7の後、制御部11は、キー位置検出部12により電子キー20の位置を検出する。そして、電子キー20が車室55内に有ることが検出され、かつ正しいパスワードの入力が有ったことが入力判定部16により判定されると(ステップS8:YES)、制御部11は、エンジン駆動装置29に始動禁止解除指令を送信して、エンジン28の始動禁止を解除する(ステップS9)。これにより、再度スタートスイッチ39が操作されると、制御部11から電子キー20の認証に成功した旨の通知を受信したエンジン駆動装置29が、スタータモータを駆動してエンジン28を始動させる。
【0062】
ステップS9の後、入力要求部15が、ナビゲーション装置37に表示停止指令を送信して、タッチパッド38によるパスワード入力画面60の表示を停止(オフ)させる(ステップS10)。
【0063】
一方、上記のパスワード入力画面60でパスワードが入力されなかったときや、パスワードが入力されても、該パスワードが特定のパスワードと一致しなかったときは、入力判定部16が、正しいパスワードの入力が無いと判定する(ステップS8:NO)。この場合、エンジン28の始動禁止状態と、タッチパッド38によるパスワード入力画面60の表示とが継続される。
【0064】
また、ステップS7の後、電子キー20が車室55内に無いことがキー位置検出部12により検出された場合(ステップS8:NO)も、エンジン28の始動禁止状態と、タッチパッド38によるパスワード入力画面60の表示とが継続される。
【0065】
上述した第1実施形態によると、車両50のドア51、52を自動的にロックする予約ロックを受け付けた後、所定のロック条件が成立しなかったことで、少なくともいずれか1つのドア51、52がアンロック状態になった場合、すなわち予約ロックを実現することができなかった場合に、車両50のエンジン28の始動が禁止される。このため、たとえば車両50の電子キー20が車室55内に置き忘れられていても、悪意の第三者がアンロック状態にあるドア51、52を開けて、車室55内に侵入した後、エンジン28を始動させることはできず、車両50の盗難を防止することが可能となる。
【0066】
また、上述した第1実施形態では、予約ロックの受け付け後に、ロック条件が成立しなかったことで、エンジン28の始動が禁止された場合に、入力要求部15が、車室55内に設置されたナビゲーション装置37のタッチパッド38によりパスワード入力画面60を表示して、パスワードを入力することを車両50のユーザに要求する。そして、ユーザによりタッチパッド38が操作されて、ユーザだけが知り得る特定のパスワードが入力されると、エンジン28の始動禁止が解除される。このため、ユーザは、ナビゲーション装置37により表示されたパスワード入力画面60で、正しいパスワードを入力するという簡単な操作を行うことで、エンジン28の始動禁止を容易に解除することができる。そしてその後、スタートスイッチ39を操作することで、エンジン28を始動させて、車両50を運転することが可能になる。対して、悪意の第三者は、パスワード入力画面60で正しいパスワードを入力することができず、エンジン28の始動禁止を解除することもできず、エンジン28を始動させることもできない。このため、悪意の第三者による車両50の盗難をより効果的に防止することが可能となる。
【0067】
また、上述した第1実施形態では、電子キー20が車室55内に有り、かつパスワード入力画面60で正しいパスワードが入力された場合に、エンジン28の始動禁止を解除する。つまり、電子キー20とパスワードという二重の認証の成功を確認した上で、エンジン28の始動禁止を解除するので、悪意の第三者によってエンジン28が始動されるのを阻止して、車両50の盗難を確実に防止する上で有効である。
【0068】
また、上述した第1実施形態では、エンジン28の始動を禁止した後、スタートスイッチ39が操作されたときに、入力要求部15が、ナビゲーション装置37のタッチパッド38にパスワード入力画面60を表示して、パスワードの入力をユーザに要求する。このため、スタートスイッチ39を操作したのに、エンジン28が始動しなくても、エンジン28の始動が禁止されていることをユーザに認識させて、当該禁止を解除するためのパスワードを入力することをユーザに促すことができる。また、スタートスイッチ39が操作されるまでは、ナビゲーション装置37のタッチパッド38にパスワード入力画面60が表示されないので、該表示を行うために消費される車両50のバッテリの電力を抑制することができる。
【0069】
さらに、上述した第1実施形態では、エンジン28の始動禁止を解除する方法として、特定のパスワードの入力を採用している。特定のパスワードは、車両50のユーザだけが知り得るものであって、悪意の第三者に知られ難いため、エンジン28の始動禁止が悪意の第三者により解除されるのを防止する上で有効である。
【0070】
図5は、第2実施形態の車両制御システム100の電気ブロック図である。
図5では、
図1のナビゲーション装置37に代えて、車両50のユーザが携帯するスマートフォン40が用いられている。また、スマートフォン40と無線で通信するBLE通信部18が、車両制御装置10に備わっている。BLE通信部18は、本発明の「通信部」の一例である。スマートフォン40は、本発明の「携帯機器」の一例である。
【0071】
BLE通信部18は、制御部11の制御の下で、スマートフォン40に対してBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)信号を送信したり、スマートフォン40から送信されたBLE信号を受信したりする。
【0072】
スマートフォン40には、制御部41、BLE通信部42、およびタッチパッド43などが備わっている。
図5では、制御部11から
図1の入力判定部16が省略された代わりに、スマートフォン40の制御部41に入力判定部44が設けられている。この入力判定部44の機能は、ソフトウェアにより実現される。
【0073】
BLE通信部42は、制御部41の制御の下で、車両制御装置10に対してBLE信号を送受信する。タッチパッド43は、画像を表示したり、タッチ操作などを検出したりする。このタッチパッド43には、
図4のパスワード入力画面60が表示され、エンジン28の始動禁止解除用のパスワードが入力される。タッチパッド43は、本発明の「入力部」と「表示部」の一例である。
【0074】
図6は、第2実施形態の車両制御装置10とスマートフォン40の動作を示したフローチャートである。
図6で左側にあるフローチャートの各ステップは、車両制御装置10が実行する。
図6で右側にあるフローチャートの各ステップは、スマートフォン40が実行する。
【0075】
図6では、
図3のステップS7、ステップS8、およびステップS10に代えて、ステップS11~ステップS18が設けられている。
【0076】
図6において、車両制御装置10では、ステップS1、ステップS2、およびステップS4を経由して、エンジン28の始動を禁止した(ステップS5)後、スタートスイッチ39が操作されると(ステップS6:YES)、エンジン28は始動せず、入力要求部15が、パスワード入力画面60(
図4)のデータを、BLE通信部18によりスマートフォン40へ送信する(ステップS11)。
【0077】
スマートフォン40では、パスワード入力画面60のデータをBLE通信部42により受信すると(ステップS12:YES)、制御部41が、タッチパッド43にパスワード入力画面60を表示する(ステップS13)。このとき、スマートフォン40から音を出力したり、スマートフォン40を振動させたりして、タッチパッド43にパスワード入力画面60が表示されたことをユーザに通知してもよい。
【0078】
ユーザがタッチパッド43を操作して、パスワード入力画面60でパスワードを入力すると、入力判定部44が、当該パスワードと、予め記憶された特定のパスワードとを比較する。そして、両パスワードが一致すると、入力判定部44は、正しいパスワードの入力が有ったと判定する(ステップS14:YES)。この場合、制御部41は、エンジン28の始動禁止を解除する要求(信号)を、BLE通信部42により車両制御装置10へ送信し(ステップS15)、パスワード入力画面60の表示を停止(オフ)する(ステップS16)。
【0079】
一方、ユーザが、パスワード入力画面60でパスワードを入力しなかったときや、パスワードを入力しても、該パスワードが特定のパスワードと一致しなかったときは、入力判定部44が、正しいパスワードの入力が無いと判定する(ステップS14:NO)。この場合、タッチパッド43によるパスワード入力画面60の表示と、エンジン28の始動禁止状態とが継続される。
【0080】
車両制御装置10では、ステップS11の後、スマートフォン40から送信された、エンジン28の始動禁止を解除する要求がBLE通信部18により受信される(ステップS17:YES)。そして、電子キー20が車室55内に有ることが、キー位置検出部12により検出されると(ステップS18:YES)、制御部11が、エンジン28の始動禁止を解除する(ステップS9)。
【0081】
上述した第2実施形態によっても、予約ロックの受け付け後に、ロック条件が成立しなかったことで、予約ロックが実現されなくても、エンジン28の始動が禁止される。このため、たとえば車両50の電子キー20が車室55内に置き忘れられていても、悪意の第三者がエンジン28を始動させることはできず、車両50の盗難を防止することが可能となる。
【0082】
また、上述した第2実施形態では、エンジン28の始動が禁止された後、入力要求部15が、スマートフォン40のタッチパッド43によりパスワード入力画面60を表示して、エンジン28の始動禁止を解除するためのパスワードを入力することをユーザに要求する。そして、ユーザによりタッチパッド43が操作されて、ユーザだけが知り得る正しいパスワードが入力されると、スマートフォン40からエンジン28の始動禁止を解除する要求が送信される。この要求が車両制御装置10で受信されると、エンジン28の始動禁止が解除される。このため、ユーザは、スマートフォン40により表示されたパスワード入力画面60で正しいパスワードを入力するという簡単な操作を行うことで、エンジン28の始動禁止を容易に解除することができ、この後エンジン28を始動させて、車両50を運転することが可能になる。対して、悪意の第三者は、エンジン28の始動禁止を解除することができず、エンジン28を始動させることもできないので、車両50の盗難をより効果的に防止することが可能となる。
【0083】
上述した第1実施形態および第2実施形態では、正しいパスワードが入力されることにより、エンジン28の始動禁止が解除される例を挙げたが、次に述べる第3実施形態のように、正しいスイッチ操作(入力)が行われることにより、エンジン28の始動禁止が解除されるようにしてもよい。正しいパスワードの入力や、正しいスイッチ操作は、車両50のユーザであることを認証するための入力であって、本発明における「ユーザに固有の特定の入力」の一例である。
【0084】
図7は、第3実施形態の車両制御装置10の動作を示したフローチャートである。なお、本第3実施形態を実現するための構成は、
図1に示した車両制御システム100の構成と同様である。
【0085】
図7では、
図3のステップS7、ステップS8、およびステップS10に代えて、ステップS19、ステップS20、およびステップS21が設けられている。
【0086】
図7において、ステップS1、ステップS2、およびステップS4を経由して、ステップS5とステップS6とが実行された後、車両制御装置10の入力要求部15は、車両50のユーザに対して、エンジン28の始動禁止解除用の入力操作を要求する旨を出力する(ステップS19)。このとき、たとえばナビゲーション装置37によって、入力操作要求を示すメッセージを表示したり、または車両50に備わるスピーカから入力操作要求を示す音声を出力したりする。
【0087】
エンジン28の始動禁止を解除するための入力操作としては、たとえば、車両50の操作部30(
図1)に備わるスタートスイッチ39の複数回連続操作、長押し操作、もしくは連続操作と長押しの組み合わせ操作などのような、車両50のユーザだけが知り得る所定操作が予め設定されている。または、操作部30に備わるスイッチ、ノブ、レバー、ペダル、もしくはハンドルの所定操作、またはそれらを組み合わせた所定操作を、エンジン28の始動禁止を解除するための入力操作として予め設定してもよい。
【0088】
ユーザが操作部30によりエンジン28の始動禁止解除用の所定の入力操作を行った場合、入力判定部16は、正しい入力操作が有ったと判定する(ステップS20:YES)。この場合、制御部11は、エンジン28の始動禁止を解除し(ステップS9)、エンジン28の始動禁止解除用の入力操作を要求する旨の出力を停止する(ステップS21)。
【0089】
一方、ユーザが操作部30により所定の入力操作を行わなければ、入力判定部16は、正しい入力操作が無いと判定する(ステップS20:NO)。この場合、エンジン28の始動禁止解除用の入力操作を要求する旨の出力が継続される。
【0090】
上述した第3実施形態によると、ロック条件が成立しなかったことで、予約ロックが実現されなくても、エンジン28の始動が禁止されるので、悪意の第三者がエンジン28を始動させることはできず、車両50の盗難を防止することが可能となる。また、エンジン28の始動禁止後、入力要求部15が、ユーザに対して、エンジン28の始動禁止を解除するための入力操作を要求する旨を出力する。そして、ユーザが知り得る操作部30の所定の入力操作を行うことで、エンジン28の始動禁止を容易に解除することができる。対して、所定の入力操作を知らない悪意の第三者が、エンジン28の始動禁止を解除することができず、エンジン28を始動させることもできないので、車両50の盗難を効果的に防止することが可能となる。
【0091】
本発明は、上述した実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0092】
たとえば、前記の各実施形態では、予約ロックの設定時に操作するドアロックスイッチ32をフロントドア51のドアハンドルに設けた例を挙げたが、ドアロックスイッチ32は、スライドドア52のドアハンドルに設けてもよい。また、ドアロックスイッチ32を車両50のバックドアのドアハンドルに設けてもよい。
【0093】
前記の各実施形態では、電子キー20を携帯したユーザが、ドア操作スイッチ31を操作して、スライドドア52を自動で閉動作させているときに、ドアロックスイッチ32を操作することで、予約ロックを設定した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、電子キー20を携帯したユーザが、ドアロックスイッチ32を操作した後、ドア操作スイッチ31を操作することで、予約ロックを設定してもよい。または、電子キー20の携帯・不携帯や、電子キー20の車内外の位置にかかわらず、ユーザがスイッチ31、32やその他の操作部、もしくは電子キー20やスマートフォン40などの携帯機器に設けられた操作部を操作することにより、予約ロックを行ってもよい。
【0094】
前記の各実施形態では、予約ロックによって車両50の全てのドア51、52をロックする場合を例に挙げたが、予約ロックの対象となるドアは、予約ロック時に操作したドア操作スイッチ31が設置されたスライドドア52のような、特定のドアだけに限定してもよい。また、車両のフロントドアやバックドアなどの他のドアを、予約ロックの対象にしてもよい。この場合、他のドアのドアハンドルやドア枠などに、ドア操作スイッチを設けてもよい。
【0095】
前記の各実施形態では、ロック条件として、電子キー20が車室55内に無くて、車両50の全てのドア51、52が閉じていることを例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、全てのドア51、52ではなく、予約ロックの受け付け時に閉動作中であったスライドドア52だけが閉じたことをロック条件に含めてもよい。または、車室55内に人が居ないことなどのような、他の条件をロック条件に加えてもよい。
【0096】
前記の各実施形態では、ロック条件が成立しなかった場合に、ドア51、52をそのままの状態に放置した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ロック条件のうち、全てのもしくは特定のドア51、52が閉じていることを検出して、当該ドアをドアロック装置35により一旦ロックした後、電子キー20が車室55内に有ることを検出して、全てのもしくは特定のドア51、52をドアロック装置35によりアンロックしてもよい。または、ロック条件が成立しなかった場合に、全てのもしくは特定のドア51、52をドアロック装置35によりアンロックしてもよい。
【0097】
図3と
図6の各実施形態では、エンジン28の始動禁止解除用のパスワードの入力をユーザに要求するため、車両50に設けられたナビゲーション装置37のタッチパッド38、またはスマートフォン40のタッチパッド43にパスワード入力画面60を表示させた例を挙げたが、本発明はこれらに限定されない。ナビゲーション装置37やスマートフォン40以外の、他の車載機器や携帯機器に備わる表示部に、パスワード入力画面60を表示させてもよい。または、車載機器と携帯機器の両方に、パスワード入力画面60を表示させてもよい。また、車載機器や携帯機器の表示部とは異なる入力部により、パスワードを入力させるようにしてもよい。さらに、たとえば音声のような、パスワード入力画面60以外の形態により、パスワードの入力をユーザに要求してもよい。
【0098】
図6の実施形態では、スマートフォン40において、エンジン28の始動禁止解除用の正しいパスワードが入力されたか否かを判定した例を挙げが、当該判定は車両制御装置10において行ってもよい。具体的には、たとえば、
図5において、スマートフォン40の入力判定部44に代えて、車両制御装置10に入力判定部16(
図1)を設ける。そして、スマートフォン40では、タッチパッド43により入力されたパスワードを、BLE通信部42により車両制御装置10へ送信する。車両制御装置10では、スマートフォン40からのパスワードをBLE通信部18により受信すると、入力判定部16が、当該受信したパスワードを特定のパスワードと比較し、該比較結果に基づいて、正しいパスワードが入力されたか否かを判定する。
【0099】
図3と
図6の各実施形態では、エンジン28の始動禁止解除用の特定のパスワードを車両制御装置10またはスマートフォン40に予め記憶させた例を挙げたが、たとえば、ユーザがナビゲーション装置37やスマートフォン40などの端末装置で、エンジン28の始動禁止解除用のパスワードを変更することができるようにしてもよい。また、パスワードを、
図4に示した数字、英字、および記号以外の文字を含んだ文字列で構成してもよい。
【0100】
図3と
図6の各実施形態では、パスワードの入力によりエンジン28の始動禁止を解除し、
図7の実施形態では、車両50の操作部30による所定の入力操作によりエンジン28の始動禁止を解除した例を挙げたが、本発明はこれらに限定されない。たとえば、電子キー20やスマートフォン40などの携帯機器に設けられた入力部による入力操作によって、エンジン28の始動禁止解除を解除するようにしてもよい。または、たとえば、車両や携帯機器に設けられたカメラによりユーザの顔を撮像した画像や、センサにより取得したユーザの指紋などの生体情報や、マイクにより入力されたユーザの音声などに基づいて、車両のユーザの認証に成功した場合に、エンジン28の始動禁止を解除するようにしてもよい。つまり、ユーザが車両または携帯機器に設けられた入力部により行った、車両のユーザに固有の特定の入力に基づいて、エンジン28の始動禁止を解除すればよい。
【0101】
前記の各実施形態では、エンジン28を始動させるためのスタートスイッチ39の操作が行われたときに、入力要求部15がエンジン28の始動禁止を解除する入力をユーザに要求した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、エンジン28の始動を禁止した後、スタートスイッチ39の操作の有無にかかわらず、入力要求部15がエンジン28の始動禁止を解除する入力をユーザに要求してもよい。
【0102】
前記の各実施形態では、走行駆動源としてエンジン28を搭載した車両50を対象とした車両制御装置10と車両制御システム100に本発明を適用した例を挙げたが、たとえば電動モータのような他の走行駆動源を搭載した車両を対象とした車両制御装置と車両制御システムにも、本発明は適用することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
10 車両制御装置
11 制御部
15 入力要求部
18 BLE通信部(通信部)
20 電子キー
28 エンジン(走行駆動源)
37 ナビゲーション装置(車載機器)
38、43 タッチパッド(入力部、表示部)
39 スタートスイッチ
40 スマートフォン(携帯機器)
50 車両
51 フロントドア
52 スライドドア
55 車室
100 車両制御システム