(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20230328BHJP
F01N 1/00 20060101ALI20230328BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230328BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230328BHJP
F01N 1/02 20060101ALI20230328BHJP
F02D 35/00 20060101ALI20230328BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
F01N13/08 G
F01N1/00 D
F01N3/24 K
F01N3/24 J
F01N3/28 301V
F01N1/02 E
F02D35/00 368E
B62M7/02 L
(21)【出願番号】P 2019150376
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】阪口 保彦
(72)【発明者】
【氏名】野網 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓平
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-041562(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159020(WO,A1)
【文献】特開2018-053905(JP,A)
【文献】特開2019-116874(JP,A)
【文献】特開2017-218903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00-13/00
F02D 35/00
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両のエンジンの排気を消音して外部に排出する排気装置であって、
車体の下部に配置されて前記排気を消音する排気チャンバと、
前記排気チャンバの下流に配置されて前記排気を消音するマフラと、
前記排気チャンバの上流に配置された第1触媒コンバータと、
前記排気チャンバの内部に配置された第2触媒コンバータと、を備え、
前記排気チャンバは、これを貫通して排気通路の一部を形成し、かつ前記排気チャンバの内部と連通する第1消音パイプを有し、
前記マフラは、これを貫通して前記排気通路の一部を形成し、かつ前記
マフラの内部と連通する第2消音パイプを有し、
前記排気チャンバの内部に設けられた仕切り板に、前記第2触媒コンバータの下流端部が支持され、
前記第1消音パイプの外周面における前記仕切り板よりも下流の領域に、複数のパンチ孔が形成され、
前記第2消音パイプが単一のパイプ部材からなり、その外周壁に複数のパンチ孔が形成され、該パンチ孔により前記第2消音パイプ内の前記排気通路と前記マフラの空間内に充填された吸音材とが連通している排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気装置において、前記排気チャンバの入口部に、前記第2触媒コンバータの上流端部が支持されている排気装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排気装置において、さらに、
前記第1触媒コンバータの上流に配置されて前記排気中の特定成分の濃度を検出する第1センサと、
前記第1触媒コンバータの下流で前記排気チャンバの上流に配置されて前記排気中の特定成分の濃度を検出する第2センサと、を備え、
前記第2センサが、前記排気チャンバの前端よりも後方に配置されている排気装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の排気装置において、前記排気チャンバが、複数のチャンバ分割体を接合して構成され、
前記仕切り板が、前記チャンバ分割体の少なくとも一つの接合面に直交する方向に延びている排気装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の排気装置において、前記第2触媒コンバータの下流端面が、前記排気チャンバのチャンバ出口を向いている排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のエンジンの排気を消音して外部に排出する排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のような鞍乗型車両の排気装置において、マフラの上流側に排気チャンバを備えたものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1によれば、排気チャンバとマフラとで2回消音されるので、大きな消音効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のマフラは、複数の膨張室に仕切られた膨張型マフラであるから、マフラを通過する際に、膨張、収縮が繰り返される。このため、マフラを通過する際の抵抗が大きくなり、排気効率を低下させる。
【0005】
本発明は、排気効率を向上させることができる排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の排気装置は、鞍乗型車両のエンジンの排気を消音して外部に排出する排気装置であって、車体の下部に配置されて前記排気を消音する排気チャンバと、前記排気チャンバの下流に配置されて前記排気を消音するマフラとを備え、前記排気チャンバは、これを貫通して排気通路の一部を形成し、かつ前記排気チャンバの内部と連通する第1消音パイプを有し、前記マフラは、これを貫通して前記排気通路の一部を形成し、かつ前記排気チャンバの内部と連通する第2消音パイプを有している。ここで、「上流、下流」は、排気の流れ方向の上流、下流をいう。
【0007】
この構成によれば、排気は、排気チャンバ内では第1消音パイプを流れ、マフラ内では第2消音パイプ内を流れる。したがって、排気チャンバおよびマフラを通過する際の抵抗が小さくなる。これにより、排気チャンバとマフラとで2回消音することで大きな消音効果を得ることができるとともに、排気効率を向上させることが可能となり、エンジンの出力が向上する。
【0008】
本発明において、さらに、前記排気チャンバの上流に配置された第1触媒コンバータと、前記排気チャンバの内部に配置された第2触媒コンバータとを備え、前記排気チャンバの内部に設けられた仕切り板に、前記第2触媒ユニットの下流端部が支持されていてもよい。この場合、前記第1消音パイプの外周面における前記仕切り板よりも下流の領域に、複数のパンチ孔が形成されていてもよい。この構成によれば、2つの触媒コンバータを設けることで、触媒の総量を大きくできる。また、第2触媒ユニットの下流端部が仕切り板に支持されているので、排気チャンバ内で比較的重量の大きな第2触媒コンバータを安定して支持できる。
【0009】
前記第1触媒コンバータと前記第2触媒コンバータとを備える場合、前記排気チャンバの入口部に、前記第2触媒コンバータの上流端部が支持されていてもよい。この構成によれば、第2触媒コンバータの上流端部が排気チャンバの入口部に支持されているので、比較的重量の大きな第2触媒コンバータを安定して支持できる。
【0010】
前記第1触媒コンバータと前記第2触媒コンバータとを備える場合、さらに、前記第1触媒コンバータの上流に配置されて前記排気中の特定成分の濃度を検出する第1センサと、前記第1触媒コンバータの下流で前記排気チャンバの上流に配置されて前記排気中の特定成分の濃度を検出する第2センサとを備え、前記第2センサが、前記排気チャンバの前端よりも後方に配置されていてもよい。この構成によれば、鞍乗型車両の下部の限られた空間に、排気装置をコンパクトに配置できる。
【0011】
前記第2触媒ユニットの下流端部が前記仕切り板に支持されている場合、前記排気チャンバが複数のチャンバ分割体を接合して構成され、前記仕切り板が前記チャンバ分割体の少なくとも一つの接合面に直交する方向に延びていてもよい。この構成によれば、仕切り板が、チャンバ分割体の接合面に直交する方向、すなわち、チャンバ分割体の分割方向に延びているので、チャンバ分割体同士が強固に連結される。これにより、排気チャンバの剛性が向上する。
【0012】
前記第1触媒コンバータと前記第2触媒コンバータとを備える場合、前記第2触媒コンバータの下流端面が、前記排気チャンバのチャンバ出口を向いていてもよい。この構成によれば、排気チャンバ内の第2触媒コンバータを通過した排気が、排気チャンバの出口に滑らかに案内される。これにより、排気効率が向上して、エンジンの出力が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排気装置によれば、排気チャンバとマフラとで2回消音することで大きな消音排気効果を得ることができるとともに、排気効率を向上させることが可能となり、エンジンの出力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る排気装置を備えた鞍乗型車両の一種である自動二輪車を示す側面図である。
【
図3】同排気装置を斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】同排気装置の排気チャンバを斜め下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において、「前」、「後」、「右」、「左」は、車両に乗車した運転者から見た「前」、「後」、「右」、「左」をいう。また、「上流」、「下流」は排気の流れ方向の「上流」、「下流」をいう。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る排気装置を備えた自動二輪車の側面図である。本実施形態の自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。リヤフレーム2は、メインフレーム1の後部に連結されている。
【0017】
メインフレーム1の前端のヘッドパイプ4に、図示しないステアリングシャフトを介してフロントフォーク6が回動自在に支持されている。フロントフォーク6の下端に前輪8が取り付けられている。フロントフォーク6の上端部に、ハンドル10が取り付けられている。
【0018】
メインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット12が設けられている。スイングアームブラケット12に、スイングアーム13の前端が、ピボット軸14回りに上下揺動自在に支持されている。スイングアーム13の後端に、後輪15が取り付けられている。
【0019】
メインフレーム1の下方でスイングアームブラケット12の前方に、駆動源であるエンジンEが取り付けられている。エンジンEにより、チェーンのような動力伝達部材(図示せず)を介して後輪15が駆動される。
【0020】
本実施形態のエンジンEは、並列4サイクル4気筒エンジンである。ただし、エンジンEは、4気筒エンジンに限定されない。エンジンEは、クランク軸(図示せず)を回転自在に支持するクランクケース16と、クランクケース16から上方に突出するシリンダ18と、シリンダ18の上部に取り付けられたシリンダヘッド20とを有している。また、クランクケース16の下部にオイルパン22が設けられている。
【0021】
メインフレーム1の上部に燃料タンク24が配置され、リヤフレーム2に操縦者が着座するシート26が装着されている。
【0022】
シリンダヘッド20の前面に排気ポート20aが形成され、後面に吸気ポート20bが形成されている。排気ポート20aおよび吸気ポート20bは、気筒ごとに1つ、合計4つ設けられている。各吸気ポート20bに吸気系機器が接続されている。吸気系機器は、外部の空気を吸気としてエンジンEに供給する。
【0023】
各排気ポート20aに、排気通路の上流部を形成する排気管28が1本ずつ接続されている。つまり、本実施形態では、排気管28は4本である。各排気管28は、エンジンEの前方を下方に延びた後、エンジンEの下方の合流部30で集合される。合流部30において、4本の排気管28が合流して、単一の排気通路EPとなる。
【0024】
合流部30の下流側に、連結管31を介して第1触媒コンバータ32が収納された触媒管34が配置されている。第1触媒コンバータ32は、例えば、ハニカム触媒である。ただし、第1触媒コンバータ32は、これに限定されない。触媒管34を通過する際に、第1触媒コンバータ32により排気Gが浄化される。
【0025】
触媒管34の下流側に、第1接続管35を介して排気チャンバ36が接続されている。排気チャンバ36の内部に、第2触媒コンバータ38が配置されている。第2触媒コンバータ38は、例えば、ハニカム触媒である。排気Gは、排気チャンバ36を通過する際に、第2触媒コンバータ38により浄化されるとともに、排気チャンバ36内で消音される。排気チャンバ36および第2触媒コンバータ38の詳細は後述する。
【0026】
排気チャンバ36の下流側に、第2接続管39を介してマフラ40が接続されている。マフラ40は、後輪15の外側方(本実施形態では、右側方)に配置されている。マフラ40を通過する際に、マフラ40内で排気Gが消音される。マフラ40の詳細は後述する。排気Gは、マフラ40内で消音された後、外部に排出される。これら排気管28、合流部30、連結管31、触媒管34、第1接続管35、排気チャンバ36、第2接続管39およびマフラ40により、エンジンEの排気装置42が構成されている。
【0027】
連結管31に、第1センサ44が設けられている。つまり、第1センサ44は、第1触媒コンバータ32の上流に配置されている。第1センサ44は、排気中の特定成分を検出する。第1センサ44は、例えば、酸素濃度センサである。本実施形態では、第1センサ44は、燃料の濃さを調整するために用いられる。
【0028】
第1接続管35に、第2センサ46が設けられている。つまり、第2センサ46は、第1触媒コンバータ32の下流で第2触媒コンバータ38の上流に配置されている。第2センサ46は、排気中の特定成分を検出する。第2センサ46は、例えば、酸素濃度センサである。第2センサ46は、第1触媒コンバータ32の劣化を検知するために設けられている。
【0029】
本実施形態では、連結管31および触媒管34は、クランクケース16の下方で、オイルパン22の側方(右側方)に配置されている。つまり、第1センサ44も、クランクケース16の下方に配置されている。詳細には、第1センサ44は、クランクケース16の底面の下方で、クランクケース16の外側面より車幅方向内側に配置されている。第2センサ46は、クランクケース16の後端およびオイルパン22よりも後方で、スイングアームブラケット12の後方に配置されている。
【0030】
排気チャンバ36は、車体の下部に配置されている。詳細には、排気チャンバ36は、エンジンEの後方で下方に配置されている。より詳細には、排気チャンバ36は、オイルパン22の後方で、スイングアームブラケット12の下方に配置されている。
【0031】
図2は排気装置42の側面図で、
図3は排気装置42を斜め下方から見た斜視図である。
図2の排気チャンバ36は、内部のチャンバ空間SP1を形成するチャンバケース48と、チャンバ空間SP1を貫通する第1消音パイプ50とを有している。第1消音パイプ50は、単一のパイプからなり、排気チャンバ36内の排気通路EPを形成する。
【0032】
第1消音パイプ50の上流側部分の内部に、第2触媒コンバータ38が収納されている。詳細には、第2触媒コンバータ38は、第1消音パイプ50における上流端から流れ方向(前後方向)中間部の領域に収納されている。本実施形態の第2触媒コンバータ38は、真直なハニカム構造体である。第1消音パイプ50の下流側部分、すなわち第2触媒コンバータ38よりも下流側部分の外周面に、複数の第1パンチ孔55が形成されている。第1パンチ孔55により、第1消音パイプ50内部の排気通路EPと、排気チャンバ36内部のチャンバ空間SP1が連通している。
【0033】
本実施形態のチャンバケース48は、複数のチャンバ分割体を接合して構成されている。詳細には、
図3に示すように、チャンバケース48は、ケース左半体48Lとケース右半体48Rとを有し、ケース左半体48Lが第1チャンバ分割体51と第2チャンバ分割体52とからなり、ケース右半体48Rが第3チャンバ分割体53と第4チャンバ分割体54とからなる。各チャンバ分割体51~54は、板金を折り曲げ加工することで形成されている。
【0034】
第1チャンバ分割体51は、車体右側に開口した箱形である。第2チャンバ分割体52は、第1チャンバ分割体51の開口51aに合致したプレート形状である。第1チャンバ分割体51の開口51aに第2チャンバ分割体52を合致させた状態で、第1接合部J1で両チャンバ分割体51,52が接合されている。これにより、ケース左半体48Lが形成されている。つまり、第2チャンバ分割体52は、第1チャンバ分割体51の開口51aを塞ぐ蓋として機能する。第1接合部J1で構成される第1接合面S1は、ほぼ車幅方向を向いている。第2チャンバ分割体52の後半部に、ケース左半体48Lとケース右半体48Rとを連通させる連通開口52aが形成されている。
【0035】
ケース右半体48Rは、車体左側に開口した箱形であり、ほぼ上下方向に2分割された第3チャンバ分割体53と第4チャンバ分割体54とを嵌合部である第2接合部J2で接合することで形成されている。第2接合部J2で構成される第2接合面S2は、ほぼ上下方向を向いている。ケース右半体48Rの開口部56は、ケース左半体48Lの第2チャンバ分割体52の連通開口52aに合致した形状である。
【0036】
ケース左半体48Lの連通開口52aにケース右半体48Rの開口部56を合致させた状態で、第3接合部J3で両ケース半体48L,48Rが接合されている。これにより、チャンバケース48が形成されている。本実施形態のチャンバケース48は、限られたスペースで大きな容量を稼ぐために、複雑な形状をしている。このように、チャンバケース48を4分割とすることで、複雑な形状が可能となっている。
【0037】
チャンバケース48におけるケース右半体48Rの前面にチャンバ入口58が形成され、ケース右半体48Rの後面にチャンバ出口60が形成されている。チャンバ入口58に第1接続管35が接続され、チャンバ出口60に第2接続管39が接続されている。本実施形態では、第1消音パイプ50内の第2触媒コンバータ38の下流端面38aが、排気チャンバ36の出口60を向いていている。
【0038】
ケース左半体48Lとケース右半体48Rは、その上下方向寸法はほぼ同じであるが、前後方向寸法は、ケース左半体48Lの方が大きく形成されている。詳細には、ケース右半体48Rの前面が、ケース左半体48Lの前面よりも後退している。つまり、ケース左半体48Lの右側で、ケース右半体48Rの前側に空間が形成されている。この空間に、チャンバ入口58に接続される第1接続管35が配置されている。これにより、第1接続管35に取り付けられた第2センサ46(第2センサ46の座面)が、排気チャンバ36の前端36f、すなわちチャンバ左半体48Lの前端36fよりも後方に配置されている。
【0039】
第1消音パイプ50は、排気チャンバ36のチャンバ右半体48Rを貫通している。詳細には、第1消音パイプ50は、その上流端がチャンバ入口58に接合され、下流端部がチャンバ出口60に接合されている。つまり、第1消音パイプ50は、第1接続管35および第2接続管39に連通している。換言すれば、第1消音パイプ50は、その上流端がチャンバ入口58に支持され、下流端部がチャンバ出口60に支持されている。すなわち、第1消音パイプ50における第2触媒コンバータ38の上流端部38bが排気チャンバの入口部58に支持されている。
【0040】
図2に示す排気チャンバ36のチャンバ右半体48Rの内部に、仕切り板62が設けられている。水平断面図である
図5に示すように、仕切り板62は、チャンバ右半体48Rの内部空間の前半部分と後半部分を区画している。仕切り板62は、チャンバ右半体48Rの内面に接合されている。詳細には、
図6に示すように、仕切り板62は、前後方向を向いた平面を有している。つまり、仕切り板62は、第3および第4チャンバ分割体の第2接合面S2に直交する方向に延びている。
【0041】
また、仕切り板62の下端がチャンバ右半体48Rの底面に接合され、上端がチャンバ右半体48Rの天井面に接合されている。これにより、チャンバ右半体48Rが補強されている。仕切り板62の上下方向中間部は、第1消音パイプ50に連結され、第1消音パイプ50を支持している。詳細には、
図5に示すように、仕切り板62は、第1消音パイプ50における排気の流れ方向(前後方向)中間部を支持している。つまり、第1消音パイプ50における第2触媒ユニット38の下流端部38cが仕切り板62に支持されている。このように、本実施形態では、仕切り板62は、排気チャンバ36の補強と、1消音パイプ50(第2触媒ユニット38)の支持に用いられている。
【0042】
前記パンチ孔55は、第1消音パイプ50の外周面における仕切り板62よりも下流の領域に形成されている。つまり、パンチ孔55は、第1消音パイプ50の外周面における第2触媒コンバータ38よりも下流の領域に形成されている。
【0043】
仕切り板62に、複数の貫通孔64が形成されている。この貫通孔64により、チャンバ右半体48Rの内部空間の前半部分と後半部分とが連通している。つまり、チャンバ右半体48R内部の後半部分で第1消音パイプ50のパンチ孔55から導出された排気Gの大部分は、仕切り板62に案内されてチャンバ左半体48Lの内部空間に導入される。排気Gの一部は、貫通孔64を通ってチャンバ右半体48R内部の前半部分に導入される。
【0044】
本実施形態の排気通路EPは、排気チャンバ36の外側で湾曲し、排気チャンバ36の内部の第1消音パイプ50は真直である。詳細には、排気チャンバ36の上流側の第1接続管35は、後方に向かって上方に湾曲しながらチャンバ入口58に接続されている。一方、排気チャンバ36の下流側の第2接続管39は、排気チャンバ36の後方で、後方に向かって車幅方向外側に湾曲している。
【0045】
図7に示すように、マフラ40は、内部のマフラ空間SP2を形成するマフラケース65と、マフラ空間SP2を貫通する第2消音パイプ66とを有している。第2消音パイプ66は、単一のパイプからなり、マフラ40内の排気通路EPの一部を形成する。第2消音パイプ66は、真直な単一のパイプ部材からなり、その外周壁に複数のパンチ孔68が形成されている。マフラ40内部のマフラ空間SP2に、グラスウールのような吸音材70が充填されている。ただし、吸音材70は、グラスウールに限定されない。マフラ40内で、パンチ孔70により、第2消音パイプ66内の排気通路EPと吸音材70が連通している。
【0046】
このように、本発明の排気装置42は、排気チャンバ36を貫通する真直な第1消音パイプ50と、マフラ40を貫通する真直な第2消音パイプ66とを有している。つまり、本排気装置42の排気チャンバ36およびマフラ40は、排気Gを膨張・収縮させるための部屋(膨張室)を有していない。
【0047】
つぎに、本実施形態の排気装置42の排気Gの流れを説明する。
図1に示す自動二輪車が走行すると、エンジンEの排気Gが、排気ポート20aから4本の排気管28に導出され、合流部30で合流される。合流された排気Gは、触媒管34に流入し、第1触媒コンバータ32により浄化される。
【0048】
排気Gは、さらに、第1接続管35を介して排気チャンバ36に流入し、排気チャンバ36内で第1消音パイプ50を流れる。第1消音パイプ50に流入した排気Gは、第2触媒コンバータ38により浄化される。第2触媒コンバータ38を通過した排気Gの一部は、
図5に示すパンチ孔55を介してチャンバ空間SP1に導出され、消音される。
【0049】
第2触媒コンバータ38を通過した排気Gの大部分は、第2接続管39を介して、
図7に示すマフラ40に流入する。排気Gは、マフラ40内で第2消音パイプ66内部の排気通路EOを流れる。第2消音パイプ66に流入した排気Gの一部は、パンチ孔68を介してマフラ空間SP2の吸音材70に導出され、消音される。第2触媒コンバータ38を通過した排気Gの大部分は、マフラ40後端のマフラ出口40aから外部に排出される。
【0050】
上記構成によれば、排気Gは、排気チャンバ36内では第1消音パイプ50を流れ、マフラ40内では第2消音パイプ66内を流れる。したがって、排気チャンバ36およびマフラ66を通過する際の抵抗が小さくなる。これにより、排気チャンバ36とマフラ40とで2回消音することで大きな消音効果を得ることができるとともに、排気効率を向上させることが可能となり、エンジンEの出力が向上する。
【0051】
図4に示すように、第2触媒コンバータ38の上流端部38bが排気チャンバ36の入口部58に支持され、第2触媒ユニット38の下流端部38cが排気チャンバ36の内部の仕切り板62に支持されている。これにより、比較的重量の大きな第2触媒ユニット38を安定して支持できる。また、2つの触媒コンバータ32,38を設けることで、触媒の総量を大きくできる。
【0052】
排気チャンバ36は、複数のチャンバ分割体51~54を接合して構成されているので、複雑な形状の排気チャンバ36を形成することができる。これにより、車体の下部の限られた空間に、大きな容量の排気チャンバ36を配置できる。また、仕切り板62が、チャンバ分割体51~54の一つの接合面S2に直交する方向、すなわち、チャンバ分割体53,54の分割方向に延びている。これにより、チャンバ分割体53,54同士が強固に連結されるので、排気チャンバ36の剛性が向上する。
【0053】
また、
図5の第2触媒コンバータ38の下流端面38aが、排気チャンバ36のチャンバ出口60を向いている。これにより、排気チャンバ36内の第2触媒コンバータ38を通過した排気Gが、チャンバ出口60に滑らかに案内される。したがって、排気効率が向上して、エンジンEの出力が向上する。
【0054】
図1の第1触媒コンバータの上流側および下流側に、第1および第2センサ44,46がそれぞれ設けられ、第2センサ46が、排気チャンバ36の前端36fよりも後方に配置されている。これにより、車体の下部の限られた空間に、排気装置42をコンパクトに配置できる。また、2つのセンサ44,46を用いることで、第1触媒コンバータ32の劣化を検知することができる。
【0055】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、排気チャンバ36は、エンジンEの後方ではなく、エンジンEの下方(直下)に配置されていてもよい。また、上記実施形態では、本発明の排気装置42を自動二輪車に適用した例を説明したが、本発明の排気装置42は、自動二輪車以外の鞍乗型車両、例えば、三輪車、四輪バギー等にも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
32 第1触媒コンバータ
36 排気チャンバ
36f 排気チャンバの前端
38 第2触媒コンバータ
38a 第2触媒コンバータの下流端面
38b 第2触媒コンバータの上流端部
38c 第2触媒ユニットの下流端部
40 マフラ
42 排気装置
44 第1センサ
46 第2センサ
50 第1消音パイプ
55 第1パンチ孔(パンチ孔)
51~54 チャンバ分割体
58 チャンバ入口(排気チャンバの入口)
60 チャンバ出口(排気チャンバの出口)
62 仕切り板
66 第2消音パイプ
68 パンチ孔
E エンジン
EP 排気通路
G 排気
S2 第2接合面(チャンバ分割体の接合面)