(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】太陽光発電装置
(51)【国際特許分類】
H02S 20/32 20140101AFI20230328BHJP
【FI】
H02S20/32
(21)【出願番号】P 2019150871
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519203002
【氏名又は名称】衛藤 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100076093
【氏名又は名称】藤吉 繁
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 勝美
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134656(JP,A)
【文献】特開2011-035317(JP,A)
【文献】特開2015-153055(JP,A)
【文献】特開2010-238967(JP,A)
【文献】特開2017-41981(JP,A)
【文献】特開平7-45851(JP,A)
【文献】特表2014-535256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0014054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00-99/00
H01L 31/04-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなした基台
(1)と、その上面に軸支されたターンテーブル
(2)とからなり、ターンテーブル
(2)の上面には、設置場所の緯度に応じ、最も効率よく太陽光を吸収できる角度となる様に、所定の傾斜角を保って太陽光発電パネル
(9)が固定されていると共に、ターンテーブル
(2)の裏面には、その軸芯と同軸状にプーリー
(5)が固定されており、基
台(1)上のターンテーブル
(2)の設置箇所から離れた位置には、前記プーリ
(5)より径の小さい別のプーリー
(6)が軸支されていると共に、このプーリー
(6)を回転させる駆動装置(8)が設けられており、前記プーリー
(5)とプーリー
(6)のそれぞれの外周間にはワイヤーロープ(7)が緊張状態で張架されており、プーリー
(6)を駆動装置(8)で回転させることにより、プーリー
(5)が従動してターンテーブル
(2)を回転させ、ターンテーブル(2)上の太陽光発電パネル
(9)が運行軌道上の太陽の方向を向く様になっていることを特徴とする太陽光発電装置。
【請求項2】
駆動装置
(8)が油圧ポンプを動力源としたものであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置。
【請求項3】
ワイヤーロープ
(7)がステンレススチール製であることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は太陽光発電装置、詳しくは、従来のものに比べ格段に高い効率で発電することが出来る太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーとしての太陽光を利用した発電は、地球温暖化防止の為に有効であるとして、近年多く設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽光発電は、太陽から地上に降り注ぐ光エネルギーが太陽光発電パネルに当たった際の光起電力効果によって電気が起きる現象を利用したものであり、太陽光発電パネルを建築物の屋根や休閑地などに設置することにより、実施されている。
【0006】
太陽光発電は、太陽光が当たりさえすれば電力が生み出される発電方法であり、火力発電の様に燃料を必要とせず、本体にはタービンなどの精密な可動部分もないので、故障しにくく、信頼性は高いが、太陽光発電パネルに当たる太陽光の強弱、つまり日照量によって発電量が直接的に左右されるので、電力の安定的な供給という面においては、他の発電方法より劣っている点は否めない。
【0007】
一般的に、太陽光発電パネルは、建築物の南側の屋根や休閑地の南向き斜面などに設置し、少しでも高い密度で太陽光が太陽光発電パネルに当たる様、それなりに配慮はされているが、太陽光発電パネル自体は設置箇所に固定されているのが普通であり、日の出から日没までの運行軌道上を時々刻々移動する太陽の位置に太陽光発電パネルが追従出来る様にはなっておらず、太陽の位置によって太陽光発電パネルに当たる太陽光の密度が変化し、発電量の多い時刻と少ない時刻とが生じることが避けられず、太陽光のエネルギーを利用し切れてはいなかった。
【0008】
運行軌道上の太陽の位置に応じて太陽光発電パネルの向きが変更出来る様になっておれば、効率的な太陽光発電が可能となることは自明の理であるが、太陽光発電パネルは露天に設置されるのが普通であり、常に風雨に晒される過酷な条件下に置かれるので、向きを変換する為の機構も、非常に高い信頼性が要求され、コスト的にもこれに応えることはむずかしかった。
特に、休閑地などに設置される太陽光発電パネルは、効率性の点から一辺が20メートルにも及ぶ非常に大きいものが用いられつつあるが、この様な巨大な太陽光発電パネルの向きを太陽の位置に応じて手軽に変換出来る信頼性の高い装置は見当たらなかった。
【0009】
本発明者は、太陽光発電パネルによる効率的な発電を実現すべく、太陽光発電パネルの向きの変換に関する上記の問題点を解決せんとして鋭意研究を行った結果、露天の過酷な環境下にあっても、高い信頼性かつ低コストで太陽光発電パネルの向きを太陽の位置に応じて手軽に変換出来、効率的な太陽光発電を実現出来る便利な太陽光発電装置を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
板状をなした基台と、その上面に軸支されたターンテーブルとからなり、ターンテーブルの上面には、設置場所の緯度に応じ、最も効率よく太陽光を吸収できる角度となる様に、所定の傾斜角を保って太陽光発電パネルが固定されていると共に、ターンテーブルの裏面には、その軸芯と同軸状にプーリーが固定されており、基台上のターンテーブルの設置箇所から離れた位置には、前記プーリーより径の小さい別のプーリーが軸支されていると共に、このプーリーを回転させる駆動装置が設けられており、前記一対のプーリーのそれぞれの外周間にはワイヤーロープが緊張状態で張架されており、小径のプーリーを駆動装置で回転させることにより、大径のプーリーが従動して、ターンテーブルを回転させ、ターンテーブル上の太陽光発電パネルが運行軌道上の太陽の方向を向く様にすることにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
休閑地など、所望の場所に設置し、使用に供するものであるが、設置場所の緯度に応じた傾斜角を保ってターンテーブル上に回転自在に位置せしめられた太陽光発電パネルは、ターンテーブルの回転により東の方向から西の方向、つまり日の出の方向から日没の方向へと、太陽光の運行軌道に沿って、その向きを変更出来る状況に置かれる。
【0012】
従って、小径のプーリーを駆動装置によって回転させ、ターンテーブルに固定されている大径のプーリーとの間に張架されているワイヤーロープを介して大径のプーリーを連続的あるいは間歇的に回転させ、日の出には太陽光発電パネルが東の方向、南中時には南の方向、日没時には西の方向をそれぞれ向く様にすれば、太陽光発電パネルは常に運行軌道上の太陽の方向を向くことになり、日の出から日没まで、常に最も効率よい状態で太陽光発電をすることが出来る。
この際、ターンテーブル上の太陽光発電パネルを太陽の動きに追従させる機構は、ターンテーブルの裏面に固定された大径のプーリーと基台上に固定された小径のプーリー及びこれらプーリーの外周間に張架されたワイヤーロープから構成されており、ターンテーブルの駆動は一本のワイヤーロープによって行われる極めて単純な機構なので、露天において常に風雨に晒される過酷な設置条件下でも故障するおそれがほとんどなく、保守点検が容易で、高い実用性、信頼性及び経済性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
太陽光発電パネルが設置場所の緯度に応じた傾斜角で固定されたターンテーブルを基台上に回転自在に枢支し、大小のプーリーとそれらの間に張架されたワイヤーロープでターンテーブルを回転させ、太陽光発電パネルが運行軌道上の太陽の方向を向く様にした点に特徴が存する。
【実施例1】
【0014】
図中1は基台、2はターンテーブルであり、基台1は板状をなしており、その裏面に設けられた脚部3によって、休閑地などの設置場所に安定的に設置される様になっている。この実施例においては、基台1は強度や耐久性の観点から、アングル材(形鋼)と鋼板を組合わせて構成したが、コンクリートや強化プラスチックなどを素材としたものでも良い。
又、この実施例においては、基台1の一辺の長さは20m程度であるが、それより大きくても小さくても良く、その大きさは問わない。
一方、ターンテーブル2は前記基台1より小面積の板状をなしており、基台1の中央部から植設された枢支軸4によって基台1の上方に間隔をあけて回転自在に軸支される。この実施例においては、ターンテーブル2も、基台1と同様、形鋼と鋼板とを組合わせて構成したが、強化プラスチック等の他の素材を用いたものであっても良い。
【0015】
又、ターンテーブル2の裏面には、前記枢支軸4と同軸状に径の大きいプーリー5が固定されている。
更に、基台1上面側方のターンテーブル2の設置箇所から離れた位置には、前記プーリー5より小径の別のプーリー6が軸支されており、一対のプーリー5とプーリー6の外周間にはワイヤーロープ7が緊張状態で張架されており、小径のプーリー6の回転に大径のプーリー5が従動する様になっている。なお、ワイヤーロープ7は錆びにくく耐久性に富むステンレススチール製のものが好ましい。そして、このプーリー6にはこれを回転させる為の駆動装置8が接続されている。
駆動装置8は手動のものでも良いが、油圧ポンプや電気モーターなどを用いることが出来、停止時の遊びがほとんどない油圧ポンプを駆動源としたものが特に好ましい。
【0016】
又、ターンテーブル2の上面には設置場所の緯度に応じ、最も効率良く太陽光を吸収できる角度となる様、所定の傾斜角度αを保って太陽光発電パネル9が設置されている。太陽光発電パネル9は太陽電池セルを複数枚構造体に入れてパネル状にしたものであり、この実施例のものにおいては、矩形状をなしている。
【0017】
なお、ターンテーブル2と太陽光発電パネル9の接触部分にヒンジを介在させ、傾斜角αを変更可能にすれば、設置場所の緯度に応じて、この傾斜角αを適宜調整し、最も効率よく太陽光を吸収することが出来る様になるので、好都合である。
更に、基台1の上面には枢支軸4と同心円状に複数のキャスター10が、ターンテーブル2の裏面を支持する様に植設されており、これによりターンテーブル2にかかる負荷を分散させる様になっている。
【0018】
この実施例は、上記の通りの構成を有するものであり、休閑地など、所望の場所に設置し、使用に供するものであるが、設置場所の緯度に応じた傾斜角αを保ってターンテーブル2上に回転自在に位置せしめられた太陽光発電パネル9は、ターンテーブル2の回転により東の方向から西の方向、つまり日の出の方向から日没の方向へと、太陽光の運行軌道に沿って、その向きを変更出来る状況に置かれる。
従って、小径のプーリー6を駆動装置8によって回転させ、ターンテーブル2に固定されている大径のプーリー5との間に張架されているワイヤーロープ7を介して大径のプーリー5を連続的あるいは間歇的に回転させ、日の出時には
図4に示す様に太陽光発電パネル9が東の方向、南中時には
図5に示す様に太陽光発電パネル9が南の方向、日没時には
図6に示す様に太陽光発電パネル9が西の方向を向く様にすれば、太陽光発電パネル9は常に運行軌道上の太陽の方向を向くことになり、日の出から日没まで、常に最も効率よい状態で太陽光発電をすることが出来る。
【0019】
なお、駆動装置8に、太陽の動きに同期してプーリー6の回転を制御する制御装置やタイマーを付設しておけば、入手を介することなく、自動的にターンテーブル2を太陽の移動に追従させることが出来、更に便利である。
【0020】
ターンテーブル2上の太陽光発電パネル9を太陽の動きに追従させる機構は、ターンテーブル2の裏面に固定された大径のプーリー5と基台1上に固定されて小径のプーリー6及びこれらプーリー5,6の外周間に張架されたワイヤーロープ7から構成されており、ターンテーブル2の駆動は一本のワイヤーロープ7によって行われる極めて単純な機構なので、露天において常に風雨に晒される過酷な設置条件下でも故障するおそれがほとんどなく、保守点検が容易で高い実用性、信頼性及び経済性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0021】
大規模、小規模を問わず、太陽光発電の分野において大いに利用価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明に係る太陽光発電装置の実施例1の斜視図。
【
図4】同じく、日の出時における太陽光発電パネルの向きを示した使用状況の説明図。
【
図5】同じく、南中時における太陽光発電パネルの向きを示した使用状況の説明図。
【
図6】同じく、日没時における太陽光発電パネルの向きを示した使用状況の説明図。
【符号の説明】
【0023】
1.基台
2.ターンテーブル
3.脚部
4.枢支軸
5.プーリー
6.プーリー
7.ワイヤーロープ
8.駆動装置
9.太陽光発電パネル
10.キャスター