(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】複数のマイクロフォンを使用する自動ノイズキャンセル
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20230328BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20230328BHJP
G10L 21/0208 20130101ALI20230328BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H04R1/10 101B
G10K11/178 120
G10L21/0208 100A
H04R1/10 104Z
H04R3/00 320
(21)【出願番号】P 2019543191
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017058129
(87)【国際公開番号】W WO2018081155
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-21
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517110391
【氏名又は名称】アバネラ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Avnera Corporation
【住所又は居所原語表記】1600 NW Compton Drive,Suite 300,Hillsboro,Oregon 97006 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スキャンラン,ジェイムズ・マクレガー
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-512794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/175-11/178
G10L 21/028
H04M 1/00
H04M 1/02- 1/23
H04M 1/24- 1/82
H04M 3/00
H04M 3/16- 3/20
H04M 3/38- 3/58
H04M 7/00- 7/16
H04M 11/00-11/10
H04M 99/00
H04R 1/02
H04R 1/08
H04R 1/10
H04R 1/40
H04R 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドセットであって、
1つまたは複数のセンシング要素を含む複数のイヤフォンを備え、前記複数のイヤフォンは、フィードフォワードマイクロフォンおよびフィードバックマイクロフォンを有する第1のイヤフォンと、フィードフォワードマイクロフォンおよびフィードバックマイクロフォンを有する第2のイヤフォンとを含み、前記ヘッドセットは、さらに、
音声伝送のために音声信号を
受信するための1つまたは複数の音声マイクロフォンと、
前記イヤフォンと前記1つまたは複数の音声マイクロフォンとに結合された信号プロセッサとを備え、前記信号プロセッサは、
前記センシング要素を用いて前記ヘッドセットの装着位置を決定し、前記ヘッドセットの前記装着位置は、単一イヤフォン係合とデュアルイヤフォン係合とを含み、
前記決定された装着位置に基づいて複数の信号モデルから信号モデルを選択し、前記複数の信号モデルは、単一イヤフォン係合モデルと、デュアルイヤフォン係合モデルとを含み、
選択された信号モデルが前記デュアルイヤフォン係合モデルであるときには、前記第1のイヤフォンの前記フィードフォワードマイクロフォンと、前記第2のイヤフォンの前記フィードフォワードマイクロフォンとを、ノイズ信号を前記音声信号から分離するためのブロードサイドビームフォーマとして用い、
選択された信号モデルが前記単一イヤフォン係合モデルであるときには、前記ブロードサイドビームフォーマを用いずに、前記1つまたは複数の音声マイクロフォンを第1の指向性エンドファイアビームフォーマとして用い、前記第1のイヤフォンの前記フィードフォワードマイクロフォンおよび前記フィードバックマイクロフォンを、前記第2のイヤフォンの前記フィードフォワードマイクロフォンおよび前記フィードバックマイクロフォンを考慮することなく、前記ノイズ信号を前記音声信号から分離するために用いるように構成される、ヘッドセット。
【請求項2】
前記センシング要素は、前記第1のイヤフォンおよび前記第2のイヤフォンの各々の前記フィードフォワードマイクロフォンおよび前記フィードバックマイクロフォンを含み、前記ヘッドセットの前記装着位置は、フィードフォワードマイクロフォン信号とフィードバックマイクロフォン信号との間の差分に基づき決定される、請求項1に記載のヘッドセ ット。
【請求項3】
前記センシング要素は、光学センサ、容量センサ、赤外線センサ、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のヘッドセット。
【請求項4】
前記複数の信号モデルは、さらに、非イヤフォン係合モデルを含む、請求項1に記載のヘッドセット。
【請求項5】
前記1つまたは複数の音声マイクロフォンは、前記第1のイヤフォンおよび前記第2のイヤフォンに結合されたラペルユニット内に配置され、前記デュアルイヤフォン係合モデルは、前記1つまたは複数の音声マイクロフォンを、前記第1のイヤフォンおよび前記第2のイヤフォンが係合するときに前記ノイズ信号を前記音声信号から分離するための垂直エンドファイアビームフォーマとして用いることによって適用される、請求項1に記載のヘッドセット。
【請求項6】
前記デュアルイヤフォン係合モデルは、第1のイヤフォンおよび第2のイヤフォンが係合するときに前記ノイズ信号を前記音声信号から分離するために、前記第1のイヤフォンのフィードフォワードマイクロフォン信号および前記第2のイヤフォンのフィードフォワードマイクロフォン信号を相関させることによって適用される、請求項1に記載のヘッドセット。
【請求項7】
前記非イヤフォン係合モデルは、前記第1のイヤフォンおよび前記第2のイヤフォンが両方外れているときに追加されたノイズを軽減するために、ビームフォーマの使用を中止することによって適用される、請求項4に記載のヘッドセット。
【請求項8】
前記1つまたは複数の音声マイクロフォンは、前記第1のイヤフォンおよび前記第2のイヤフォンに結合されたラペルユニット内に配置される、請求項1に記載のヘッドセット。
【請求項9】
方法であって、
ヘッドセットの
複数のイヤフォンのセンシング要素を、前記ヘッドセットの装着位置を決定するために用いることを備え
、前記複数のイヤフォンは、フィードフォワードマイクロフォンおよびフィードバックマイクロフォンを有する第1のイヤフォンと、フィードフォワードマイクロフォンおよびフィードバックマイクロフォンを有する第2のイヤフォンとを含み、前記ヘッドセットは、1つまたは複数の音声マイクロフォンを含み、前記ヘッドセットの前記装着位置は、単一イヤフォン係合とデュアルイヤフォン係合とを含み、
さらに、
ノイズキャンセルのための信号モデルを選択することを備え、前記信号モデルは前記決定された装着位置に基づいて複数の信号モデルから選択され、前記複数の信号モデルは、単一イヤフォン係合モデルと、デュアルイヤフォン係合モデルとを含み、前記方法はさらに、
選択された信号モデルが前記デュアルイヤフォン係合モデルであるときには、
前記第1のイヤフォンの
前記フィードフォワードマイクロフォンと、
前記第2のイヤフォンの前記フィードフォワードマイクロフォンとを、音声信号を検出して、ノイズ信号を前記音声信号から分離するためのブロードサイドビームフォーマとして用いて、1つまたは複数の音声マイクロフォンにおいて前記音声信号を
受信することと、
選択された信号モデルが前記単一イヤフォン係合モデルであるときには、前記ブロードサイドビームフォーマを用いずに、前記1つまたは複数の音声マイクロフォンを第1の指向性エンドファイアビームフォーマとして用い、前記第1のイヤフォンの前記フィードフォワードマイクロフォンおよび前記第1のイヤフォンのフィードバックマイクロフォンを、前記第2のイヤフォンの前記フィードフォワードマイクロフォンおよび前記第2のイヤフォンのフィードバックマイクロフォンを考慮することなく、音声信号を検出して、ノイズ信号を前記音声信号から分離するために用いることとを備える、方法。
【請求項10】
前記複数の信号モデルは、さらに、非イヤフォン係合モデルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の音声マイクロフォンは、前記第1のイヤフォンおよび前記第2のイヤフォンに結合されたラペルユニット内に配置される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非イヤフォン係合モデルを適用することは、前記第1のイヤフォンおよび前記第2のイヤフォンが両方外れているときに追加されたノイズを軽減するために、ビームフォーマの使用を中止することを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
一般にアクティブノイズキャンセル(ANC)ヘッドセットは、各耳におけるマイクロフォンを用いるように設計される。マイクロフォンによって捕捉される信号は、ヘッドセットの装着者に対する周囲ノイズを減少させるために、補正アルゴリズムに関して用いられる。ANCヘッドセットはまた、電話をするときに用いられ得る。通話のために使用されたANCヘッドセットは、耳内の局所的ノイズを減らし得るが、環境における周囲ノイズは、遠隔受信機に変形されずに伝播される。この状況は、遠隔受信機のユーザによって体験される低下された通話品質をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
詳細な説明
アップリンクノイズキャンセルは、伝送された周囲ノイズ軽減するために用いられ得る。しかし、ヘッドセット上で動作するアップリンクノイズキャンセル処理は、ある種の課題に直面している。たとえば、電話を用いるユーザは、伝送マイクロフォンを彼らの口の近くかつスピーカを彼らの耳の近くに保持することを仮定されることができる。そしてビームフォーミングといった空間的フィルタリング処理を用いるノイズキャンセルアルゴリズムは、ノイズをユーザの口近くで記録された信号からフィルタするために用いられ得る。対照的に、ヘッドセットは複数構成において装着され得る。そのため、ヘッドセット信号プロセッサは、音声マイクロフォンに対するユーザの口の相対的方向を決定できない可能性がある。従って、ヘッドセット信号プロセッサは、ノイズを除去するために、どの空間的ノイズ補正アルゴリズムを用いるべきかを決定できない可能性がある。誤った補正アルゴリズムを選択することは、ユーザスピーチを弱め、ノイズ信号を増幅さえしかねないということに留意すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
ここに開示されるのは、装着位置を決定し、装着位置に基づきスピーチ伝送中のアップリンクノイズキャンセルのための信号モデルを選択するように構成されるヘッドセットである。たとえば、左耳内に左イヤフォンがありおよび右耳内に右イヤフォンがある状態で、ユーザは、ヘッドセットを装着し得る。そのような場合には、ヘッドセットは、さまざまな音声アクティビティ検出(VAD)技術を用い得る。たとえば、左イヤフォンにおけるフィードフォワード(FF)マイクロフォンおよび右イヤフォンにおけるFFマイクロフォンは、ユーザの左側およびユーザの右側からのノイズを弱めるためにブロードサイドビームフォーマとして用いられることができる。さらに、ラペルマイクロフォンは、ユーザの音声を周囲ノイズからさらに分離するために、垂直エンドファイアビームフォーマとして用いられることができる。加えて、ユーザの耳の外でFFマイクロフォンによって記録された信号は、ノイズをオーディオ信号から分離するために、ユーザの耳の中に配置されたフィードバック(FB)マイクロフォンと比較されることができる。対照的に、ユーザがイヤフォンを単一の耳内で用いるときに、ブロードサイドビームフォーマは、オフにされ得る。さらに、エンドファイアビームフォーマは、1つのイヤフォンが外されたときに、ラペルマイクロフォンの予測される位置に依存してユーザの口に向けられ得る。また、外されたイヤフォン内のFFおよびFBマイクロフォンは、ANC目的のために強調され得ずおよび/または無視され得る。最後に、ANCは、両方のイヤフォンが外されるときに、外され得る。装着位置は、任意のセンシング要素を用いることによっておよび/または各耳に対するFFおよびFB信号を比較することによって決定され得る。
【0004】
図面の簡単な説明
本開示の実施形態の局面、特徴および利点は、添付の図面を参照した以下の実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】アップリンク伝送中のノイズキャンセルのための例示的ヘッドセットの概略図である。
【
図2】ノイズキャンセルを行うための例示的デュアルイヤフォン係合モデルの概略図である。
【
図3】ノイズキャンセルを行うための例示的右イヤフォン係合モデルの概略図である。
【
図4】ノイズキャンセルを行うための例示的左イヤフォン係合モデルの概略図である。
【
図5】ノイズキャンセルを行うための例示的非イヤフォン係合モデルの概略図である。
【
図6】アップリンク伝送中のノイズキャンセルを行うための例示的方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、アップリンク伝送中のノイズキャンセルのための例示的ヘッドセット100の概略図である。ヘッドセット100は、右イヤフォン110、左イヤフォン120、およびラペルユニット130を含む。しかし、ここに開示される特定の機構は、単一のイヤフォンを含む例示的ヘッドセットおよび/またはラペルユニット130を有さない例において用いられ得るということに留意すべきである。ヘッドセット100は、たとえばラペルユニット130が音楽ファイルを再生するデバイスに結合されたときに、ローカルANCを行うように構成されてもよい。ヘッドセット100はまた、たとえばラペルユニット130が通話可能なデバイス(たとえばスマートフォン)に結合されたときに
アップリンクノイズキャンセルを行ってもよい。
【0007】
右イヤフォン110は、音楽および/または遠隔呼び出し元からの音声といったオーディオデータを再生することができるデバイスである。右イヤフォン110は、ユーザの外耳道に隣接して(たとえば耳の上に)配置されることができるヘッドフォンとして作られ得る。右イヤフォン110は、差込式イヤフォンとして作られ得、この場合、右イヤフォン110の少なくともいくらかの部分は、ユーザの外耳道内(たとえば耳の中)に配置され得る。右イヤフォン110は、少なくともスピーカ115およびFFマイクロフォン111を含む。右イヤフォン110はまた、FBマイクロフォン113および/またはセンサ117を含み得る。スピーカ115は、音声信号、オーディオ信号、および/またはANC信号をユーザの外耳道に向かって伝播させるための音波に変換可能な任意のトランスデューサである。
【0008】
ANC信号は、周囲ノイズを運ぶ波形を破壊的に妨害し、それによってノイズをユーザの観点からキャンセルするために生成されるオーディオ波形である。ANC信号は、FFマイクロフォン111および/またはFBマイクロフォン113によって記録されたデータに基づいて生成され得る。FBマイクロフォン113およびスピーカ115は、右イヤフォン110の近位壁上に一緒に配置される。例に依存して、FBマイクロフォン113およびスピーカ115は、(たとえば差込式イヤフォン用に)係合されるときにユーザの外耳道内側に配置されるか、(たとえばイヤフォン用に)係合されるときに音響封止されたチャンバにおいてユーザの外耳道に隣接して配置される。FBマイクロフォン113は、ユーザの外耳道に入射する音波を記録するように構成される。それゆえ、FBマイクロフォン113は、ユーザによって知覚される周囲ノイズ、オーディオ信号、リモート音声信号、ANC信号、および/またはサイドバンド信号とも称され得るユーザの音声を検出する。ユーザによって知覚される周囲ノイズおよび破壊的妨害のために破壊されないANC信号の任意の部分の両方をFBマイクロフォン113が検出するときに、FBマイクロフォン113は、フィードバック情報を含む信号を送り得る。FBマイクロフォン113の信号は、変化する条件に適合し、より良好に周囲ノイズをキャンセルするために、ANC信号を調整するために使用されることができる。
【0009】
FFマイクロフォン111は、イヤフォンの遠位壁上に配置され、例に応じてユーザの外耳道および/または音響封止されたチャンバの外に維持される。FFマイクロフォン111は、右イヤフォンが係合されるときに、ANC信号から音響的に隔離され、リモート音声信号およびオーディオ信号から一般に隔離される。FFマイクロフォン111は、周囲ノイズをユーザ音声/サイドバンドとして記録する。従って、FFマイクロフォン111信号は、ANC信号を生成するために使用されることができる。FFマイクロフォン111の信号は、FBマイクロフォン113の信号よりも高い周波数ノイズに対してより良好に適合可能である。しかし、FFマイクロフォン111は、ANC信号の結果を検出できず、それによって右イヤフォン110と耳との間の貧弱な音響封止といった非理想的な状況に適合できない。そのため、FFマイクロフォン111およびFBマイクロフォン113は、有効なANC信号を作成するために一緒に使用されることができる。
【0010】
右イヤフォン110は、耳外れ検出(OED)をサポートするためのセンシング要素を含み得る。たとえば、ANCのための信号処理は、右イヤフォン110(および左イヤフォン230)が正しく係合されることを仮定する。いくつかのANC処理は、ユーザが1つまたは複数のイヤフォンを取り外すときに予測されるように機能し得ない。それゆえ、ヘッドセット100は、イヤフォンが正しく係合されていないことを決定するためにセンシング要素を用いる。いくつかの例では、FBマイクロフォン113およびFFマイクロフォン111は、センシング要素として用いられる。そのような場合には、右イヤフォン110が係合されるときにイヤフォン間の音響絶縁により、FBマイクロフォン113の信号およびFFマイクロフォン111の信号は異なる。FBマイクロフォン113の信号およびFFマイクロフォン111の信号が同じであるときに、ヘッドセット100は、対応するイヤフォン110が係合されていないと決定することができる。その他の例では、センサ117は、OEDをサポートするためのセンシング要素として用いられることができる。たとえば、センサ117は、右イヤフォン110が係合されるときに低い光レベルを、右イヤフォン110が係合されないときにより高い光レベルを示す光学センサを含み得る。その他の例では、センサ117は、右イヤフォン110が係合されているときまたは外されているときを決定するために、圧力および/または電磁流および/または電磁場を用い得る。言い換えると、センサ117は、容量センサ、赤外線センサ、可視光光学センサ等を含み得る。
【0011】
左イヤフォン120は、右イヤフォン110と実質的に同じであるが、ユーザの左耳に係合するように構成される。具体的には、左イヤフォン120は、センサ117、スピーカ115、FBマイクロフォン113、およびFFマイクロフォン121と実質的に同じである、センサ127、スピーカ125、FBマイクロフォン123、およびFFマイクロフォン121を含み得る。左イヤフォン120は、上記の右イヤフォン110と実質的に同じ方法で動作し得る。
【0012】
左イヤフォン120および右イヤフォン110は、ラペルユニット130に左ケーブル142および右ケーブル141それぞれを介して結合され得る。左ケーブル142および右ケーブル141は、オーディオ信号、リモート音声信号、および/またはANC信号をラペルユニットから左イヤフォン120および右イヤフォン110それぞれに伝導することができる任意のケーブルである。
【0013】
ラペルユニット130は、いくつかの例では任意の要素である。ラペルユニット130は、1つまたは複数の音声マイクロフォン131および信号プロセッサ135を含む。音声マイクロフォン131は、アップリンク音声伝送のためにユーザの音声信号をたとえば通話中に記録するように構成される任意のマイクロフォンであり得る。いくつかの例では、複数のマイクロフォンは、ビームフォーミング技術をサポートするために用いられ得る。ビームフォーミングは、同じ波を複数の物理的場所から記録するために複数の受信機を用いる空間的信号処理技法である。そして記録の重み付け平均は、記録された信号として使用され得る。異なる重みを異なるマイクロフォンに適用することによって、音声マイクロフォン131は、仮想的に特定の方向に向けられることができ、音品質を向上させおよび/または周囲ノイズをフィルタして除去する。音声マイクロフォン131はまた、いくつかの例ではその他の場所に配置され得るということに留意すべきである。たとえば、音声マイクロフォン131は、ケーブル141またはケーブル142から右イヤフォン110または左イヤフォン120それぞれの下方に垂れ下がっていてもよい。ここに開示されたビームフォーミング技術は、わずかな幾何学的変更を伴うようなシナリオに等しく適用可能である。
【0014】
信号プロセッサ135は、ケーブル142およびケーブル141を介して左イヤフォン120および右イヤフォン110に、および音声マイクロフォン131に結合される。信号プロセッサ135は、ANC信号を生成可能、デジタルおよび/またはアナログ信号処理機能を実行可能、および/またはヘッドセット100の動作を制御可能な任意のプロセッサである。信号プロセッサ135は、メモリを含み得、および/またはそれに結合され得、それによって特定の機能性のためにプログラムされ得る。信号プロセッサ135はまた、アナログ信号を処理のためにデジタルドメインに変換するようにおよび/またはデジタル信号をスピーカ115および125による再生のためにアナログドメインに逆変換するように構成され得る。信号プロセッサ135は、汎用プロセッサ、および用途特定集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)、またはそれらの組み合わせとして実装され得る。
【0015】
信号プロセッサ135は、センサ117およびセンサ127、FBマイクロフォン113およびFBマイクロフォン123、FFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121、および/または音声マイクロフォン131によって記録された信号に基づいて、OEDおよびVADを行うように構成され得る。具体的には、信号プロセッサ135は、ヘッドセット100の装着位置を決定するためにさまざまなセンシング要素を用いる。言い換えると、信号プロセッサ135は、右イヤフォン110および左イヤフォン120が係合されているか外されているかを決定することができる。一度装着位置が決定されると、信号プロセッサ135は、VADおよび対応するノイズキャンセルのための適切な信号モデルを選択できる。信号モデルは、決定された装着位置に基づいて複数の信号モデルから選択され得る。そして信号プロセッサ135は、VADを行うよう選択された信号モデルを適用し、アップリンク音声伝送前にノイズを音声信号から軽減する。
【0016】
たとえば、信号プロセッサ135は、FFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121と、FBマイクロフォン113およびFBマイクロフォン123とをセンシング要素として用いることによってOEDを行い得る。そしてヘッドセット100の装着位置は、FFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121の信号とFBマイクロフォン113およびFBマイクロフォン123の信号との間の差それぞれに基づいて決定されることができる。差は、たとえば減算並びに送信機能を介してスペクトル比を比較する等の信号を比較する任意のその他の信号処理技法を含むことに留意すべきである。言い換えると、FFマイクロフォン111の信号がFBマイクロフォン113の信号と実質的に同じであるとき、右イヤフォン110は、外されている。FFマイクロフォン111の信号がFBマイクロフォン113の信号とは異なる(たとえば異なる波を特定された周波数バンドにおいて含む)とき、右イヤフォン110は係合されている。左イヤフォン120の係合または非係合は、FFマイクロフォン121およびFBマイクロフォン123を用いることによって実質的に同じ方法で決定されることができる。別の例では、センシング要素は、光学センサ117および光学センサ127を含み得る。そのような場合には、ヘッドセットの装着位置は、光学センサ117および光学センサ127によって検出される光レベルに基づいて決定される。
【0017】
信号プロセッサ135によって行われるOED処理によって一度装着位置が決定されると、信号プロセッサは、さらなる処理のための適切な信号モデルを選択できる。いくつかの例では、信号モデルは、左イヤフォン係合モデル、右イヤフォン係合モデル、デュアルイヤフォン係合モデル、および非イヤフォン係合モデルを含む。左イヤフォン係合モデルは、左イヤフォン120が係合されており、右イヤフォン110が係合されていないときに用いられる。右イヤフォン係合モデルは、右イヤフォン110が係合されており、左イヤフォン120が係合されていないときに用いられる。デュアルイヤフォン係合モデルは、イヤフォン110およびイヤフォン120の両方が係合されているときに用いられる。非イヤフォン係合モデルは、イヤフォン110およびイヤフォン120両方が外されているときに用いられる。各モデルは、以下の図を参照してより詳細に議論される。
【0018】
図2は、ノイズキャンセルを行うための例示的デュアルイヤフォン係合モデル200の概略図である。デュアルイヤフォン係合モデル200は、イヤフォン110およびイヤフォン120両方が正しく係合されているとOED処理が決定するときに用いられる。このシナリオは、示される物理構成をもたらす。示される要素は、一定の縮尺で描かれていないことがあることに留意すべきである。しかし、このシナリオは、ラペルユニット130がケーブル141およびケーブル142を介してイヤフォン110およびイヤフォン120から垂れ下がるとともに、音声マイクロフォン131が一般にユーザの口の方に向けられる構成をもたらすことにも留意すべきである。さらに、イヤフォン110およびイヤフォン120は、イヤフォン110とイヤフォン120との間の平面に垂直な平面にあるユーザの口から略等距離である。この構成では、複数の処理は、ユーザの音声を検出し記録するために用いられ得、それによって周囲ノイズをそのような記録から除去する。
【0019】
具体的には、VADは、FFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121上で受信されるオーディオ信号間の相関を検討することによって並びにビームフォーミング技術を使用して、イヤフォン110およびイヤフォン120から導出され得る。たとえば、FFマイクロフォン111とFFマイクロフォン121との間で相関される信号は、両方の耳から等距離の略平面において発生しやすく、それによってヘッドセットユーザのスピーチまたは少なくとも部分を含みやすい。その場所から発生するこれらの波形は、バイノーラルVADとも称され得る。言い換えると、デュアルイヤフォン係合モデル200は、左イヤフォン120および右イヤフォン110が係合されるときにノイズ信号を音声信号から分離するために、左イヤフォン120のFFマイクロフォン121の信号および右イヤフォン110のFFマイクロフォン111の信号を相関させることによって適用され得る。
【0020】
別の例として、ブロードサイドビームフォーマ112は、両方の耳が口から略等距離であるため、ローカルスピーチ伝播強化のために作成され得る。言い換えると、デュアルイヤフォン係合モデル200は、左イヤフォン120のFFマイクロフォン121および右イヤフォン110のFFマイクロフォン111を、左イヤフォン120および右イヤフォン110が係合されるときにノイズ信号を音声信号から分離するためのブロードサイドビームフォーマ112として用いることによって適用され得る。具体的には、ブロードサイドビームフォーマ112は、測定された波(たとえばスピーチ)がブロードサイドにおいて測定要素(たとえばFFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121)のアレイに入射し、それによって測定要素間で約180°の位相差が測定される任意のビームフォーマである。FFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121からの信号を正しく重み付けすることによって、ブロードサイドビームフォーマ112は、ユーザの耳の間で発生しない音声信号(たとえばユーザの左またはユーザの右からのノイズ)を周囲ノイズから分離できる。一度ノイズ信号が分離されると、周囲ノイズは、通話中にリモートユーザにアップリンク伝送する前にフィルタされて除去される。
【0021】
要約すれば、イヤフォン110およびイヤフォン120が良好に嵌められるとき、耳内FBマイクロフォン113およびFBマイクロフォン123の信号とイヤフォン110およびイヤフォン120の外側のFFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121の信号は、2つの信号、すなわち、ユーザのローカルスピーチおよび周囲ノイズに分解されることができる。周囲ノイズはさらには、左イヤフォン110と右イヤフォン120との間で相関されない。このため信号プロセッサ135によって動作されるOEDアルゴリズムは、ローカルスピーチをVADとして識別するために、左イヤフォン110と右イヤフォン120との間の相関、加えてFBマイクロフォン113およびFBマイクロフォン123とFFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121との相関の使用を可能とし得る。さらに、この処理は、ブラインド音源分離アルゴリズムを実行したとき、ローカルスピーチが混ざっていないノイズ信号を提供し得る。
【0022】
ローカルスピーチ推定は、ラペルユニット130からの入力を垂直エンドファイアビームフォーマ132として使用してさらに精緻にされ得る。エンドファイアビームフォーマ132は、任意のビームフォーマであり、測定される波(たとえばスピーチ)は、測定要素(たとえば音声マイクロフォン131)のアレイに直接入射し、それによって小さな角度の位相差(たとえば10度以下)が測定要素間で測定される。エンドファイアビームフォーマ132は、2つ以上の音声マイクロフォン131を用いることによって作成され得る。そして音声マイクロフォン131は、イヤフォン110およびイヤフォン120の両方が係合されているときに垂直エンドファイアビームフォーマ132の真上にあるユーザの口の方に向かって垂直に垂直エンドファイアビームフォーマ132を仮想的に向けるように重み付けされ得る。言い換えると、音声マイクロフォン131は、左イヤフォン120および右イヤフォン110に結合されたラペルユニット130内に配置され得る。それゆえ、デュアルイヤフォン係合モデル200が適用されるとき、音声マイクロフォン131は、左イヤフォン120および右イヤフォン110が係合されるときにノイズ信号を音声信号から分離するための垂直エンドファイアビームフォーマ132として用いられ得る。
【0023】
単一のイヤホンが耳に挿入されていない場合、上述された多くの手法が正しく機能しないということに留意すべきである。これは、ユーザがローカル環境の認識を維持しようとしながら音声電話を取るときに起こり得る。そのため、OEDに従いイヤフォン110およびイヤフォン120が耳に良好に嵌められていないときを検出することが望ましい。それゆえ、OED機構は、たとえば以下のようにイヤフォンが係合されないときに誤った結果を除去し、ブロードサイドビームフォーマ112をオフにすることによって、バイノーラルVADを向上するために使用されることができる。
【0024】
図3は、ノイズキャンセルを行うための例示的右イヤフォン係合モデル300の概略図である。右イヤフォン係合モデル300は、右イヤフォン110が係合されており左イヤフォン120が外されているとOED処理が決定するときに用いられる。このシナリオは、ラペルユニット130からケーブル142を介して垂れ下がっている左イヤフォン120を含む、示されるような物理構成をもたらし得る。見られるように、FFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121は、ユーザの口上方でもはや等距離ではない。それゆえFFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121をブロードサイドビームフォーマ112として用いる任意の試みは、誤ったデータをもたらす。たとえば、そのような使用は、実際には音声信号を弱め、ノイズを増幅し得る。それゆえ、ブロードサイドビームフォーマ112は、右イヤフォン係合モデル300ではオフにされる。
【0025】
さらに、左イヤフォン120は、もはや係合されず、それによってFFマイクロフォン121およびFBマイクロフォン123を比較することは、マイクロフォンがもはや音響的に分離されていないので、誤ったデータをもたらし得る。言い換えると、FFマイクロフォン121およびFBマイクロフォン123の信号は、この構成では実質的に同じであり、周囲ノイズとユーザ音声との間でもはや正しく区別されない。そのため、右イヤフォン係合モデル300は、右イヤフォン110が係合されており左イヤフォン120が係合されないときに左イヤフォン120のマイクロフォンを考慮することなくノイズ信号を音声信号から分離するために、右イヤフォン110のFFマイクロフォン111および右イヤフォン110のFBマイクロフォン113を用いることによって適用される。
【0026】
加えて、ラペルユニット130は、係合された右イヤフォン110からケーブル141を介して垂れ下がるときに真直の垂直構成に対して左に傾けられ得る。そのため、正確な音声絶縁をサポートするために、ビームフォーマは、ユーザの口の方を向くように調整され得る。そのように調整されるとき、ビームフォーマは、右指向性エンドファイアビームフォーマ133とも称され得、右指向性は、垂直ビームフォーマ132の右へのずれを示す。右指向性エンドファイアビームフォーマ133は、音声マイクロフォン131の重みを一番右の音声マイクロフォン131によって記録された音声信号を強調するように調整することによって作成され得る。それゆえ、右イヤフォン係合モデル300は、音声マイクロフォン131を、右イヤフォン110が係合されており左イヤフォン120が係合されないときにノイズ信号を音声信号から分離するための右指向性エンドファイアビームフォーマ133として用いることによって適用され得る。
【0027】
図4は、ノイズキャンセルを行うための例示的左イヤフォン係合モデル400の概略図である。左イヤフォン係合モデル400は、左イヤフォン120が係合されており右イヤフォン110が外されているとOED処理が決定するときに用いられる。これは、右イヤフォン110がラペルユニット130からケーブル110を介して垂れ下がり、ラペルユニット130が左イヤフォン120からケーブル142を介して垂れ下がることをもたらす。左イヤフォン係合モデル400は、すべての指向性処理が逆転した状態の右イヤフォン係合モデル300と実質的に同じである。言い換えると、ブロードサイドビームフォーマ112は、オフにされる。さらに、左イヤフォン係合モデル400は、ノイズ信号を音声信号から分離するため、左イヤフォン120のFFマイクロフォン121および左イヤフォン120のFBマイクロフォン123を用いることによって適用される。しかし、右イヤフォン110のマイクロフォンは、左イヤフォン120が係合されており右イヤフォン110が係合されないときに考慮されない。
【0028】
加えて、ラペルユニット130の音声マイクロフォン131は、左イヤフォン係合モデル400では垂直位置の右の方に向けられる。そのため、ビームフォーマは、正確な音声絶縁をサポートするために、ユーザの口の方を向くように調整され得る。そのように調整されるとき、ビームフォーマは、左指向性エンドファイアビームフォーマ134とも称され得、左指向性は垂直ビームフォーマ132の左へのずれを示す。左指向性エンドファイアビームフォーマ134は、音声マイクロフォン131の重みを一番左の音声マイクロフォン131によって記録された音声信号を強調するように調整することによって作成され得る。したがって、左イヤフォン係合モデル400は、音声マイクロフォン131を、左イヤフォン120が係合され右イヤフォン110が係合されていないときにノイズ信号を音声信号から分離するための左指向性エンドファイアビームフォーマ134として用いることによって適用される。
【0029】
図5は、ノイズキャンセルを行うための例示的非イヤフォン係合モデル500の概略図である。非係合モデル500では、イヤフォン110およびイヤフォン120のいずれも正しく係合されていない。そのようなシナリオでは、ANCを行うための任意の試みは、音声を弱めおよび/またはノイズを増幅させる可能性がある。従って、非イヤフォン係合モデル500は、左イヤフォン120および右イヤフォン110が両方外されるときに追加されたノイズを軽減するためにビームフォーマの使用を中止することによって適用される。さらに、FBマイクロフォン113およびFBマイクロフォン123のFFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121それぞれとの相関は、弱められた音声および/または増幅されたノイズの可能性を軽減するために中止され得る。
【0030】
要約すれば、信号プロセッサ135は、装着位置に基づいて信号処理モデル200、300、400、および/または500を用いることができ、通話中にアップリンク伝送前に記録された音声信号内の周囲ノイズの軽減をサポートする。これらのサブシステムは、VADモジュールおよびOEDモジュールといった、信号プロセッサ内の別モジュールにおいて実装され得る。これらのモジュールは、音声検出およびノイズ軽減の精度を増加させるためにタンデムに動作し得る。たとえば、イヤフォン110および120マイクロフォンから導出されるVADは、上述の伝播ノイズ削減を改善するために使用され得る。これは、複数の方法で行われることができる。VADは、マイクロフォンポッド/アレイ内のビームフォーミングの適合のためのガイドとして用いられ得る。適合的なビームフォーマは、スピーチのような信号に対して記録された音を分析することによって最終のビーム方向を決定し得る。マイクロフォンからのスピーチ検出の問題は自明ではなく、偽陰性および偽陽性の両方によって悩まされる可能性があることに留意すべきである。改善されたVAD(たとえばヘッドセット100ユーザが話しているときに認識すること)は、増加された指向精度によって適合的ビームフォーマパフォーマンスを向上する。さらに、VADは、ヘッドセット100のユーザが話していないときに伝播信号をゼロに落とすスマートミュート処理のための入力として用いられ得る。VADはまた、連続適合ANCシステムへの入力として用いられ得る。連続適合ANCシステムでは、FBマイクロフォン信号は、ダウンリンク信号のみとして扱われ得、それによって概ねノイズがない。FBマイクロフォンはまた、係合されるときに、ユーザからのローカルトークの成分を記録し得、これは信号プロセッサ135が、ヘッドセット100のユーザが話していることが確実である時に除去されることができる。また、適合中にヘッドセット100のユーザが話しているときに、FF適合は、正確性が比較的低いことが一般に観察される。従って、VADは、ユーザが話しているときに適合をフリーズさせるために用いられ得る。
【0031】
OEDモジュールは、イヤフォンから導出される情報の出力を無視するための機構として機能し得る。OED検出は、情報の有用性に影響を与えることなくFF信号をFB信号レベルと比較するといった様々な機構によって行われることができる。イヤフォンに対してOEDが決定されるときに、ノイズ削減またはVAD(たとえばビームフォーミング、FF-左信号およびFF-右信号を相関させること、ブラインドソース分離、またはその他機構を介して)のいずれかのために、ローカルスピーチ推定を得るために使用されたイヤフォンマイクロフォン間の相関は覚えられる。そのため、OEDは、VADおよびFFおよび/またはFBマイクロフォン信号を使用する任意のアルゴリズムへの入力となる。また、上述のように、FFマイクロフォンを使用するビームフォーミングは、いずれかのイヤフォンが外されるときに有効ではない。
【0032】
図6は、たとえばモデル200、300、400、および/または500に従うヘッドセット100の処理信号を用いることによって、アップリンク伝送中にノイズキャンセルを行うための例示的方法600のフローチャートである。いくつかの例では、方法600は、メモリ内に格納され、信号プロセッサ135および/またはここに開示された任意のその他ハードウェア、ファームウェア、またはその他の処理システムによって実行されるコンピュータプログラム製品として実装され得る。
【0033】
ブロック(601)において、ヘッドセットの装着位置を決定するために、ヘッドセット100のFBマイクロフォン113およびFBマイクロフォン123、FFマイクロフォン111およびFFマイクロフォン121、センサ117およびセンサ127、および/または音声マイクロフォン131といったセンシング要素が用いられる。装着位置は、記録されたオーディオ信号を相関する、光学および/または圧力センサ等を考慮する等のここに開示された任意の機構によって決定され得る。一度OEDに従い装着位置が決定されると、信号モデルは、ブロック603においてノイズキャンセルのために選択され得る。信号モデルは、決定された装着位置に基づいて複数の信号モデルから選択され得る。上記のように、複数のモデルは、左イヤフォン係合モデル400、右イヤフォン係合モデル300、デュアルイヤフォン係合モデル200、および非イヤフォン係合モデル500を含み得る。
【0034】
ブロック(605)において、音声信号は、ヘッドセットに結合された音声マイクロフォン131といった1つまたは複数の音声マイクロフォンにおいて記録される。さらに、ブロック607において、選択されたモデルは、音声伝送前に音声信号からのノイズを軽減するために適用される。ブロック607がブロック605の後におよび/または一緒に適用され得るということに留意すべきである。上記のように、デュアルイヤフォン係合モデルを適用することは、左イヤフォンのFFマイクロフォンおよび右イヤフォンのFFマイクロフォンを、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するためのブロードサイドビームフォーマとして用いることを含み得る。さらに、デュアルイヤフォン係合モデルを適用することはまた、音声マイクロフォンを、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するための垂直エンドファイアビームフォーマとして用いることを含み得る。いくつかの例では、デュアルイヤフォン係合モデルを適用することはまた、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するために、左イヤフォンのフィードフォワード(FF)マイクロフォン信号および右イヤフォンのFFマイクロフォン信号を相関することを含み得る。また、ブロック607において非イヤフォン係合モデルを適用することは、左イヤフォンおよび右イヤフォンが両方外れているときに追加されたノイズを軽減するために、ビームフォーマの使用を中止することを含む。
【0035】
さらに、ブロック607において右イヤフォン係合モデルを適用することは、右イヤフォンのFFマイクロフォンおよび右イヤフォンのFBマイクロフォンを、右イヤフォンが係合しており左イヤフォンが外されているときに左イヤフォンマイクロフォンを考慮することなくノイズ信号を音声信号から分離するために用いることを含む。ブロック607において右イヤフォン係合モデルを適用することはまた、音声マイクロフォンを、右イヤフォンが係合しており左イヤフォンが外されているときにノイズ信号を音声信号から分離するための右指向性エンドファイアビームフォーマとして用いることを含み得る。
【0036】
加えて、ブロック607において左イヤフォン係合モデルを適用することは、左イヤフォンのFFマイクロフォンおよび左イヤフォンのFBマイクロフォンを、左イヤフォンが係合しており右イヤフォンが外されているときに右イヤフォンマイクロフォンを考慮することなくノイズ信号を音声信号から分離するために用いることを含む。最後に、ブロック607において左イヤフォン係合モデルを適用することはまた、音声マイクロフォンを、左イヤフォンが係合しており右イヤフォンが外されているときにノイズ信号を音声信号から分離するための左指向性エンドファイアビームフォーマとして用いることを含み得る。
【0037】
本開示の例は、特別に作成されたハードウェア上、ファームウェア上、デジタル信号プロセッサ、またはプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作し得る。ここで使用される「コントローラ」または「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、特定用途向け集積回路(ASIC)、および専用ハードウェアコントローラを含むことを意図している。本開示の1つまたは複数の局面は、1つまたは複数のプロセッサ(監視モジュールを含む)または他のデバイスによって実行される1つまたは複数のプログラムモジュール内などのコンピュータ使用可能データおよびコンピュータ実行可能命令(たとえばコンピュータプログラム製品)で実装され得る。一般に、プログラムモジュールは、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含み、それは、コンピュータまたは他の装置内のプロセッサによって実行されたときに特定のタスクを実行するかまたは特定の抽象データ型を実装する。コンピュータ実行可能命令は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、キャッシュ、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、または他のメモリ技術などの非一時的コンピュータ可読媒体、その他の揮発性または不揮発性の任意の技術で実装されたリムーバブルまたはノンリムーバブルのメディア上に格納され得る。コンピュータ可読媒体は、信号自体および一時的な形態の信号伝送を除外する。さらに、機能は、全体的にまたは部分的にファームウェアまたはハードウェア均等物、たとえば集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などで具現化され得る。本開示の1つまたは複数の局面をより効果的に実施するために特定のデータ構造を使用し得、そのようなデータ構造は、本明細書に記載のコンピュータ実行可能命令およびコンピュータ使用可能データの範囲内で企図される。
【0038】
本開示の局面は、様々な修正形態および代替形態で動作する。特定の局面は、図面に例として示されており、以下に詳細に説明される。しかし、本明細書に開示された例は説明を明確にする目的で提示されたものであり、明示的に限定されない限り、開示された一般的概念の範囲をここに記載された特定の例に限定することを意図しない。したがって、本開示は、添付の図面および特許請求の範囲に照らして、説明された局面のすべての修正形態、均等形態、および代替形態を網羅することを意図している。
【0039】
明細書における実施形態、局面、例などへの言及は、説明された項目が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示している。しかし、開示されたあらゆる局面は、必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含んでも含まなくてもよい。さらに、そのような表現は、特に明記しない限り、必ずしも同じ局面を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が特定の局面に関連して説明されるとき、そのような特徴、構造、または特性は、そのような特徴がそのような他の開示される局面に関連して明示的に説明されるかどうかにかかわらず別の開示の局面に関連して採用されることができる。
【0040】
例
ここに開示された技術の図示の例は、以下に提供される。技術の実施形態は、以下に説明される任意の1つまたは複数の例、およびそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0041】
例1は、1つまたは複数のセンシング要素を含む1つまたは複数のイヤフォンと、音声伝送のために音声信号を記録するための1つまたは複数の音声マイクロフォンと、イヤフォンおよび音声マイクロフォンに結合された信号プロセッサとを備えるヘッドセットを含み、信号プロセッサは、ヘッドセットの装着位置を決定するためにセンシング要素を用い、ノイズキャンセルのための信号モデルを選択するよう構成され、信号モデルは、決定された装着位置に基づいて複数の信号モデルから選択され、信号プロセッサはさらに、選択された信号モデルを音声伝送前に音声信号からのノイズを軽減するために適用する。
【0042】
例2は、例1のヘッドセットを含み、センシング要素は、フィードフォワード(FF)マイクロフォンおよびフィードバック(FB)マイクロフォンを含み、ヘッドセットの装着位置は、FFマイクロフォン信号とFBマイクロフォン信号との間の差分に基づき決定される。
【0043】
例3は、例1~例2のいずれかのヘッドセットを含み、センシング要素は、光学センサ、容量センサ、赤外線センサ、またはそれらの組み合わせを含む。
【0044】
例4は、例1~例3のいずれかのヘッドセットを含み、1つまたは複数のイヤフォンは、左イヤフォンおよび右イヤフォンを含み、複数の信号モデルは、左イヤフォン係合モデル、右イヤフォン係合モデル、デュアルイヤフォン係合モデル、および非イヤフォン係合モデルを含む。
【0045】
例5は、例1~例4のいずれかのヘッドセットを含み、デュアルイヤフォン係合モデルは、左イヤフォンのフィードフォワード(FF)マイクロフォンおよび右イヤフォンのFFマイクロフォンを、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するためのブロードサイドビームフォーマとして用いることによって適用される。
【0046】
例6は、例1~例5のいずれかのヘッドセットを含み、音声マイクロフォンは、左イヤフォンおよび右イヤフォンに結合されたラペルユニット内に配置され、デュアルイヤフォン係合モデルは、音声マイクロフォンを、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するための垂直エンドファイアビームフォーマとして用いることによって適用される。
【0047】
例7は、例1~例6のいずれかのヘッドセットを含み、デュアルイヤフォン係合モデルは、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するために、左イヤフォンのフィードフォワード(FF)マイクロフォン信号および右イヤフォンのFFマイクロフォン信号を相関させることによって適用される。
【0048】
例8は、例1~例7のいずれかのヘッドセットを含み、非イヤフォン係合モデルは、左イヤフォンおよび右イヤフォンが両方外れているときに追加されたノイズを軽減するために、ビームフォーマの使用を中止することによって適用される。
【0049】
例9は、例1~例8のいずれかのヘッドセットを含み、左イヤフォン係合モデルは、左イヤフォンのフィードフォワード(FF)マイクロフォンおよび左イヤフォンのフィードバック(FB)マイクロフォンを、左イヤフォンが係合しており右イヤフォンが外されているときに右イヤフォンマイクロフォンを考慮することなくノイズ信号を音声信号から分離するために用いることによって適用される。
【0050】
例10は、例1~例9のいずれかのヘッドセットを含み、音声マイクロフォンは、左イヤフォンおよび右イヤフォンに結合されたラペルユニット内に配置され、左イヤフォン係合モデルは、音声マイクロフォンを、左イヤフォンが係合しており右イヤフォンが外されているときにノイズ信号を音声信号から分離するための左指向性エンドファイアビームフォーマとして用いることによって適用される。
【0051】
例11は、例1~例10のいずれかのヘッドセットを含み、右イヤフォン係合モデルは、右イヤフォンのフィードフォワード(FF)マイクロフォンおよび右イヤフォンのフィードバック(FB)マイクロフォンを、右イヤフォンが係合しており左イヤフォンが外されているときに左イヤフォンマイクロフォンを考慮することなくノイズ信号を音声信号から分離するために用いることによって適用される。
【0052】
例12は、例1~例11のいずれかのヘッドセットを含み、音声マイクロフォンは、左イヤフォンおよび右イヤフォンに結合されたラペルユニット内に配置され、右イヤフォン係合モデルは、音声マイクロフォンを、右イヤフォンが係合しており左イヤフォンが外されているときにノイズ信号を音声信号から分離するための右指向性エンドファイアビームフォーマとして用いることによって適用される。
【0053】
例13は、方法を含み、方法は、ヘッドセットの装着位置を決定するためにヘッドセットのセンシング要素を用いることと、ノイズキャンセルのための信号モデルを選択することとを備え、信号モデルは決定された装着位置に基づいて複数の信号モデルから選択され、方法はさらに、音声信号をヘッドセットに結合された1つまたは複数の音声マイクロフォンにおいて記録することと、選択された信号モデルを音声伝送前に音声信号からのノイズを軽減するために適用することとを備える。
【0054】
例14は、例13の方法を含み、ヘッドセットは、左イヤフォンおよび右イヤフォンを含み、複数の信号モデルは、左イヤフォン係合モデル、右イヤフォン係合モデル、デュアルイヤフォン係合モデル、および非イヤフォン係合モデルを含む。
【0055】
例15は、例13~例14のいずれかの方法を含み、デュアルイヤフォン係合モデルを適用することは、左イヤフォンのフィードフォワード(FF)マイクロフォンおよび右イヤフォンのFFマイクロフォンを、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するためのブロードサイドビームフォーマとして用いることを含む。
【0056】
例16は、例13~例15のいずれかの方法を含み、音声マイクロフォンは、左イヤフォンおよび右イヤフォンに結合されたラペルユニット内に配置され、およびデュアルイヤフォン係合モデルを適用することは、音声マイクロフォンを、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するための垂直エンドファイアビームフォーマとして用いることを含む。
【0057】
例17は、例13~例16のいずれかの方法を含み、デュアルイヤフォン係合モデルを適用することは、左イヤフォンおよび右イヤフォンが係合するときにノイズ信号を音声信号から分離するために、左イヤフォンのフィードフォワード(FF)マイクロフォン信号および右イヤフォンのFFマイクロフォン信号を相関させることを含む。
【0058】
例18は、例13~例17のいずれかの方法を含み、非イヤフォン係合モデルを適用することは、左イヤフォンおよび右イヤフォンが両方外れているときに追加されたノイズを軽減するためにビームフォーマの使用を中止することを含む。
【0059】
例19は、例13~例18のいずれかの方法を含み、右イヤフォン係合モデルを適用することは、右イヤフォンのフィードフォワード(FF)マイクロフォンおよび右イヤフォンのフィードバック(FB)マイクロフォンを、右イヤフォンが係合しており左イヤフォンが外されているときに左イヤフォンマイクロフォンを考慮することなくノイズ信号を音声信号から分離するために用いることを含む。
【0060】
例20は、例13~例19のいずれかの方法を含み、音声マイクロフォンは、左イヤフォンおよび右イヤフォンに結合されたラペルユニット内に配置され、左イヤフォン係合モデルを適用することは、音声マイクロフォンを、左イヤフォンが係合しており右イヤフォンが外されているときにノイズ信号を音声信号から分離するための左指向性エンドファイアビームフォーマとして用いることを含む。
【0061】
例21は、信号プロセッサ上で実行されるとヘッドセットに例13~例20のいずれかに従う方法を行わせるコンピュータプログラム製品を含む。
【0062】
開示された主題の前述の例は、説明されたかまたは当業者に明らかであるかのいずれかである多くの利点を有する。そうであっても、開示された装置、システム、または方法のすべてのバージョンにおいて、これらの利点または特徴のすべてが必要なわけではない。
【0063】
追加的に、この明細書による説明は特定の特徴を参照している。本明細書における開示はそれらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせを含むことが理解されるべきである。特定の特徴が特定の局面または例の文脈で開示されている場合、その特徴は可能な範囲で他の局面および例の文脈でも使用することができる。
【0064】
また、本出願において2つ以上の規定されたステップまたは操作を有する方法について言及される場合、文脈がそれらの可能性を排除しない限り、規定されたステップまたは操作は任意の順序でまたは同時に実施され得る。
【0065】
本開示の特定の例が例示の目的で図示され説明されてきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、本開示は添付の特許請求の範囲による以外に限定されるべきではない。