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特許7252138個別患者における炎症性疾患の治療に対する、スタチンの有効性を決定する方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】個別患者における炎症性疾患の治療に対する、スタチンの有効性を決定する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230328BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230328BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230328BHJP
【FI】
G01N33/53 S
G01N33/543 545A
G01N27/62 V
G01N27/62 X
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019558355
(86)(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018060813
(87)【国際公開番号】W WO2018197650
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】1706747.1
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515200272
【氏名又は名称】クイーン メアリー ユニバーシティ オブ ロンドン
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ダリ ジェスモンド
(72)【発明者】
【氏名】コーラス ロメイン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】スワレス デ ソウザ パトリシア レジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー メアリー エリザベス
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-501176(JP,A)
【文献】国際公開第2009/053523(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/015271(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別の患者において炎症性病態の治療において使用されるスタチンの有効性を評価するための方法であって、前記スタチンの投与前および投与後に前記患者から得られた生物学的サンプル中の、RvT1(7,13,20-トリヒドロキシ-8,10,14,16Z,18-ドコサペンタエン酸)、RvT2(7,12,13-トリヒドロキシ-8,10,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)、RvT3(7,8,13-トリヒドロキシ-9,11,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)、およびRvT4(7,13-ジヒドロキシ-8,10,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)から選択される、少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを測定することを含み、前記スタチンの投与後の前記レゾルビンの前記レベルの増加が前記スタチンの有効性の指標となる、方法。
【請求項2】
前記生物学的サンプル中の2つ以上の前記13シリーズレゾルビンの前記レベルが測定される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的サンプル中の3つまたは4つすべての前記13シリーズレゾルビンの前記レベルが測定される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが血液、血清、または血漿のサンプルである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプル中の前記少なくとも1つの13シリーズレゾルビンの前記レベルが、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いて測定される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の内部標識標準が前記サンプルに添加され、且つ定量が前記1つ以上の標識標準を用いて構築された線形回帰曲線を用いて行われる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル中の前記少なくとも1つの13シリーズレゾルビンの前記レベルが、イムノアッセイを用いて測定される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記イムノアッセイが酵素イムノアッセイ(EIA)である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記イムノアッセイが競合的または非競合的である、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチンから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スタチンの投与後に患者から得られたサンプルが、前記スタチンの投与の少なくとも30分間後に採取しうる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記スタチンの投与後に患者から得られたサンプルが、前記スタチンの投与の少なくとも1時間後に採取しうる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スタチンの投与後に患者から得られたサンプルが、前記スタチンの投与の少なくとも2時間後に採取しうる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記炎症性病態が心血管疾患(CVD)または関節リウマチである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
個別の患者において炎症性病態の治療に使用される、スタチンの有効性を評価するコンピューター実装方法であって、前記方法が、前記スタチンの投与前および投与後に前記患者から得られた生物学的サンプル中の、RvT1(7,13,20-トリヒドロキシ-8,10,14,16Z,18-ドコサペンタエン酸)、RvT2(7,12,13-トリヒドロキシ-8,10,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)、RvT3(7,8,13-トリヒドロキシ-9,11,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)、およびRvT4(7,13-ジヒドロキシ-8,10,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)から選択される、少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを表すサンプルデータをコンピューターで受け取ることと、
前記サンプル中の前記少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを比較(前記スタチンの投与後の前記少なくとも1つのレゾルビンのレベルの増加が、前記スタチンの有効性の指標となる)し、そして、前記比較に基づいて、前記スタチンの有効性を表す有効性データを出力するために、ソフトウェアを前記コンピューターで実行することと、を含む、方法。
【請求項16】
コンピューターによる実行時に、請求項15に記載の方法を前記コンピューターに行わせる命令を含むコンピュータープログラム。
【請求項17】
個別の患者において、炎症性病態の治療に使用されるスタチンの有効性を評価するコンピューター装置であって、前記装置が、コンピューターが組み込まれた第1のデバイスと、第2のコンピューターと、それらの間でデータを送信する前記第1のデバイスと前記第2のコンピューターとの間の通信チャネルと、を含み、前記第1のデバイスが、前記スタチンの投与前および投与後に前記患者から得られた生物学的サンプル中の、RvT1(7,13,20-トリヒドロキシ-8,10,14,16Z,18-ドコサペンタエン酸)、RvT2(7,12,13-トリヒドロキシ-8,10,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)、RvT3(7,8,13-トリヒドロキシ-9,11,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)、およびRvT4(7,13-ジヒドロキシ-8,10,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)から選択される、少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを表すサンプルデータを受け取って、前記通信チャネルを介して前記サンプルデータを前記第2のコンピューターに送信するように配置され、且つ前記第2のコンピューターが、前記サンプル中の前記少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを比較して、前記個別の患者に対する前記スタチンの有効性を決定し、前記スタチンの投与後の前記少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルの増加が有効性の指標となり、前記スタチンの有効性を表す有効性データを出力するソフトウェアを実行するように配置される、コンピューター装置。
【請求項18】
前記第2のコンピューターが、前記通信チャネルを介して、前記有効性データを前記第1のデバイスにまたは第3のコンピューターに送信するように配置される、請求項17に記載のコンピューター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別患者における炎症性疾患、たとえば、心血管疾患や関節リウマチなどの治療に対するスタチンの有効性を決定する方法に関する。
本発明はまた、本発明の方法を実施するコンピューターソフトウェア、装置、イムノアッセイ、およびデバイスを提供する。
【背景技術】
【0002】
急性炎症は、宿主を保護するとともに、内因性組織傷害または侵入微生物に反応して増加する。
消散機序(resolution mechanisms)に関与できないことが、関節リウマチ、歯周病、喘息、糖尿病、および炎症性腸疾患(IBD)、さらには神経障害たとえばアルツハイマー病をはじめとする多くの慢性疾患に伴う持続性軽度炎症の根底にありうると、現在認識されている。
【0003】
自己限定炎症の消散は、局所ケミカルメディエーターおよびそのレセプターによりレギュレートされる活性プロセスであることが現在分かっている。
レゾルビン、プロテクチン、およびマレシンと称される特殊消散促進性メディエーター(specialised pro-resolving mediators)(SPM)のファミリーが発見されており、各々、自己限定炎症性白血球リッチ滲出物(self-limited inflammatory leukocyte-rich exudates)中に産生される。
それらの生合成メタボローム(metabolomes)は、急性炎症の消散期(resolution phase)に一時的にレギュレートされる。
【0004】
SPMおよびそのそれぞれのメタボロームは、強力な白血球指向作用(potent leukocyte-directed actions)を発揮して、消散の主要な徴候を刺激する。
すなわち、部位へのさらなる多形核白血球(PMN)動員を制限して(停止シグナルとして中止)、デブリ、細菌、およびアポトーシス細胞のマクロファージ取込みを増強する。
そのほか、各個別SPMは、プログラムされた消散内でさらなる特徴的性質を引き起しうる。
たとえば、レゾルビンRvE1は、歯周炎患者のヒトマクロファージの食細胞活性不全(failed phagocytic activities)をレスキューし、Dシリーズレゾルビン(すなわち、RvD1、RvD2、およびRvD5)は、宿主による細菌封込め(bacterial containment)を増強することにより、細菌の死滅およびクリアランスに必要とされる抗生物質の用量を低減する。
一方、マレシン(MaR)経路のマレシン1(MaR1)は、消散さらには組織再生を刺激し、そして、プロテクチンは、マウスにおいてウイルス複製を直接阻害することによりインフルエンザ感染症を改善する。
【0005】
こうした消散期SPMおよびそのメタボロームには、レゾルビン、プロテクチン、およびマレシン、さらにはリポキシンが含まれる。これらのメディエーターは、古典的炎症促進性イニシエーターのプロスタグランジン(PG)およびロイコトリエン(LT)の作用をカウンターレギュレートする。
【0006】
これらの脂質メディエーターの構造は、被嚢動物、マウス、およびヒヒ、さらにはヒトを含めて、進化全体を通して保存されることが判明しているので、実験系でなされた知見をヒトに直接翻訳すること、およびその逆は容易である。
【0007】
Dalli J,Chiang N and Serhan CN.Elucidation of novel 13-series resolvins derived from n-3 docosapentaenoic acid(n-3 DPA) that increase with atorvastatin and clear infections.Nature Medicine.2015;21:1071-1075および国際公開第2017/015271A1号パンフレットには、好中球-内皮共培養物中に産生されるとともに、無菌性の炎症または感染症の後にヒトおよびマウスの組織に存在する、13シリーズレゾルビン(RvT)と称される4つの新たな宿主保護分子の構造が開示されている。
好中球-内皮細胞相互作用時におけるそれらの生合成は、内皮シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)により開始され、COX-2のS-ニトロシル化を介して、アトルバスタチンにより増加され、且つCOX-2阻害剤により低減された。
アトルバスタチンおよびRvTの作用は、マウスのE.コリ(E.coli)感染症において相加的であり、それらは、炎症の消散を加速して生存率を>60%増加させた。
これらの分子は、感染性炎症の消散において主要な先天性保護反応をレギュレートする。
【0008】
関節リウマチは、徐々に関節破壊をもたらして最終的に消耗させうる衰えない炎症反応により特徴付けられる。
この持続性炎症反応は、関節炎患者において心血管疾患(CVD)の発症リスクが増加する根本的原因であるとも考えられる。
これとの関連では、スタチンはCVDから保護し、最近の研究によれば、関節リウマチ患者において疾患活動性を低減することが示唆される。
【0009】
スタチンは、脂質低下剤の1つのクラスであり、そして、本明細書の執筆時点では、西洋諸国において最も広く使用されている薬剤である。スタチン薬剤を使用している45歳以上の成人のパーセントは、1988年から1994年までに2.4%、2005年から2008年までに25.1%増加した。
【0010】
スタチンは、高リスク者において、CVDおよび死亡率を低減することが判明している。
【0011】
国際公開第02/24194A2号パンフレットには、かかる治療を必要とする哺乳動物において、MHCクラスII媒介イムノモジュレーションを達成する方法が開示されている。
この方法は、哺乳動物においてMHCクラスII発現をモジュレートするのに有効な量で、少なくとも1つのスタチンまたは機能的若しくは構造的に等価な分子を哺乳動物に投与することを含む。
哺乳動物は、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、または紅斑性狼瘡から選択される自己免疫疾患に罹患していてもよい。
【0012】
スタチンは、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるが、スタチンのこうした多面発現作用は、HMG-CoAレダクターゼ活性の阻害にユニークに割り当てることができないことは明らかである。
【0013】
スタチンにより低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)が効果的に低減されるにもかかわらず、スタチン治療患者には依然として多くの残存リスクがある。
たとえば、ランダム化プラセボ対照試験では、平均27%の相対リスク低減は3.4%の絶対リスク低減に等しい。
スタチン療法後の大きな残存リスクに対する可能な説明の1つは、ヒト集団内のスタチン反応性の不均一性でありうる。患者は、
(1)リポタンパク質代謝、主にLDL-C低減に及ぼすスタチンの効果、
(2)リポタンパク質反応に依存しないこともありうる、臨床イベント効果に関するスタチン療法に対する反応、および
(3)スタチンの使用に起因する有害作用、
の3つの点で異なりうる。
血中脂質レベルは、脂質およびコレステロールの経路において、分子の機能および活性を変化させる遺伝子変異体によりモジュレートされることが予想される。
スタチンの薬動学に影響を及ぼす、こうした遺伝子変異体などは、スタチンの反応性にも影響を及ぼしうる(Superko HR,Momary KM,Li Yら.Statins Personalized.Med.Clinics of N.Am.2012;96(1):123-139)。
【0014】
スタチンが関与しうる潜在的機序を調べた試験では、アトルバスタチンおよびロバスタチンは、それぞれ、心血管保護および粘膜保護においてそれらの保護作用を媒介する消散促進性メディエーター15-epi-LXA4の形成をアップレギュレートすることが判明した(Birnbaum Y,Ye Y,Lin Y,et al.Augmentation of myocardial production of 15-epilipoxin-a4 by pioglitazone and atorvastatin in the rat.Circulation.2006;114(9):929-935.Planaguma A,Pfeffer MA,Rubin G,et al.Lovastatin decreases acute mucosal inflammation via 15-epi-lipoxin A4.Mucosal Immunol.2010;3(3):270-279)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
個別の患者にある程度のスタチン個別化治療を提供するために、CVD、関節リウマチ、または他の炎症性病態を有するさまざまな患者の治療に、どのスタチンがより有効でありうるかを確認する必要性が存在する。
【0016】
したがって、本発明の目的は、所与のスタチンが個別の患者において、炎症性病態の治療に使用するのに有効でありうるかを評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明の第1の態様によれば、個別の患者において、炎症性病態の治療に使用されるスタチンの有効性を評価する方法が提供される。
本方法は、スタチンの投与前および投与後に、患者から得られた生物学的サンプル中の少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを測定することを含み、スタチン投与後のレゾルビンのレベルの増加がスタチンの有効性の指標となる。
【0018】
以下の実施例に記載されるように、2つの臨床関連スタチンのアトルバスタチンまたはプラバスタチンを炎症性関節炎(IA)のマウスに投与すると、全身および組織の13シリーズレゾルビン量がアップレギュレートされて、関節疾患が有意に低減されることを、本発明者らは発見した。
一方、シンバスタチンを投与しても、有意なRvTのアップレギュレーションおよび関節炎症の低減はなかった。
また、アトルバスタチンおよびプラバスタチンは各々、血小板-単球凝集体を含めた、全身性白血球活性化の低減(約25~60%)を起こすことも判明した。
これらのスタチンは、関節への好中球の輸送、さらには関節の単球マクロファージ数を減少させた。
アトルバスタチンおよびプラバスタチンは、関節において、単球および単球由来マクロファージの両方で、CD11bおよび主要組織適合性複合体クラスII(MHCII)の発現において、著しい低減(~30~50%)を起こした。
RvT経路の開始酵素である、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2の阻害剤を投与したところ、関節炎症および全身性炎症の両方に対するこれらのスタチンの保護作用が逆転した。
【0019】
全体として、13シリーズレゾルビンは、スタチンの抗炎症作用の測定に有用でありうることが、これらの知見から示唆される。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンは、
RvT1(7,13,20-トリヒドロキシ-8,10,14,16Z,18-ドコサペンタエン酸)、
RvT2(7,12,13-トリヒドロキシ-8,10,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)、
RvT3(7,8,13-トリヒドロキシ-9,11,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)、および
RvT4(7,13-ジヒドロキシ-8,10,14,16Z,19Z-ドコサペンタエン酸)から選択しうる。
【0021】
いくつかの実施形態では、生物学的サンプル中の2つ以上の、13シリーズレゾルビンのレベルを測定しうる。
【0022】
いくつかの実施形態では、生物学的サンプル中の3つまたは4つすべての、13シリーズレゾルビンのレベルを測定しうる。
【0023】
C13位にヒドロキシル基があることから「13シリーズ」と呼ばれるn-3DPA由来の13シリーズレゾルビンの構造は、以下の通りである。
【化1】
【0024】
便宜上、サンプルは、血液、血清、または血漿のサンプルでありうる。
【0025】
好適には、サンプルは、凝固を予防するために、たとえば、ヘパリンなどの抗凝固剤を用いて採取した直後に処理しうる。
【0026】
分析前に、サンプル(たとえば、ヒト血清サンプル)を貯蔵する必要がある場合、有機溶媒中に配置して、-75℃以下(たとえば-80℃)の温度で貯蔵しうる。
好適には、有機溶媒は、メタノールを含みうるかまたはそれからなりうる。
脂質メディエーターは、凍結サンプルで長期貯蔵したとき不安定であり、いくつかのメディエーターのレベルは、3ヶ月間の貯蔵後に有意に(>50%)低減することが判明しているが、驚くべきことに、メタノールおよび任意選択的に他の有機溶媒を用いることにより、-75℃以下の温度で長期貯蔵したとき、これらの分子の安定性を改善しうることを見いだした。
好適には、サンプルは約-80℃以下の温度で貯蔵しうる。サンプルは少なくとも約1ヶ月間、いくつかの実施形態では少なくとも約3ヵ月間から約9ヶ月間以上まで貯蔵しうる。
【0027】
以下に記載されるようなジュウテリウム標識標準を、凍結前のサンプルに添加しうる。
【0028】
血液や組織などの生物学的サンプル中の、13シリーズレゾルビンのレベルを測定する方法は、当業者であれば利用可能であるので、本明細書に詳細に記載する必要はない。
【0029】
好適な方法は、たとえば、Yang R,Chiang N,Oh SF and Serhan CN.2011.“Metabolomics-Lipidomics of Eicosanoids and Docosanoids Generated by Phagocytes”.Curr Protoc Immunol.95:14.26:14.26.1-14.26.26、およびDalli J and Serhan CN.2012.“Specific lipid mediator signatures of human phagocytes:microparticles stimulate macrophage efferocytosis and pro-resolving mediators”.Blood.2012;120:e60-e72(両方ともその内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0030】
簡潔に述べると、いくつかの実施形態では、サンプル中の少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルは、サンプルからSPMを抽出した後に、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いて測定しうる。
【0031】
SPMは、固相抽出を用いて、たとえばC18カラムを用いてサンプルから抽出しうる。好適な方法は、Colas RA,Shinohara M, Dalli J,Chiang N and Serhan CN.“Identification and signature profiles for pro-resolving and inflammatory lipid mediators in human tissue”.Am J Physiol Cell Physiol.2014;307:C39-54(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0032】
サンプル中の、13シリーズレゾルビンの定量を促進するために、SPM抽出前のサンプルに1つ以上の内部標識標準を添加しうる。
好適な標識標準は、
ジュウテリウム標識5S-HETE(5S-HETE-d)、
ジュウテリウム標識ロイコトリエンB(LTB-d)、
ジュウテリウム標識リポキシンA(LXA-d)、
ジュウテリウム標識レゾルビンD2(RvD2-d)、および
ジュウテリウム標識プロスタグランジンE(PGE-d)である。
【0033】
サンプル中の、13シリーズレゾルビンのアイデンティティーは、その保持時間(RT)およびそのMS-MSスペクトルの少なくとも6つの診断イオンとSPMの合成標準または基準標準のものとのマッチングを行うことにより確認しうる。
液体クロマトグラフィーを用いて測定される分子の保持時間は、機器固有であることが多いが、いくつかの実施形態では、上述した、13シリーズレゾルビンの保持時間は以下の表1に示される通りでありうる。
【0034】
【表1】
【0035】
定量は、メディエーターの合成標準または基準標準を用いて構築される、線形回帰曲線を用いて達成しうる。
【0036】
LC-MS/MSは、たとえば病院検査室などで必要とされる装置にアクセスして使用するのに好適でありうる。
しかしながら、より便利には、サンプル中の、少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルは、イムノアッセイを用いて測定しうる。
イムノアッセイは、マイクロ流体デバイスまたは試験ストリップで実施するように小型化しうる潜在能力を有するので、臨床現場即時検査(ポイントオブケア)用途により適しうる。
したがって、イムノアッセイが組み込まれた本発明の実施形態は、個別の患者にスタチンを処方する助けとなるようにプライマリーヘルスケア提供者によりin situで使用しうる。
【0037】
少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルは、ホモジニアスまたはヘテロジニアスなイムノアッセイを用いて測定しうる。
【0038】
そのため、いくつかの実施形態では、溶液中の、このまたは各13シリーズレゾルビンのレベルは、過剰に存在する標識抗体に結合し、その結合により標識の検出可能な性質を変化させることにより測定しうる。
したがって、存在する特異的SPMの量は、特定の検出可能な性質を備えた標識の量に影響を及ぼすであろう。
当技術分野で周知のように、標識は、放射性標識、蛍光標識、または酵素を作用させたときに着色したり、蛍光を発したり、若しくは蛍光を許容したりする色素原性若しくは化学発光性の基質を有する酵素を含みうる。
【0039】
抗体は、13シリーズレゾルビンに対する特異性を有して、ポリクローナルまたはモノクローナルでありうる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体を使用しうる。
【0040】
代替的に、分離および定量のために表面結合抗体により少なくとも1つの13シリーズレゾルビンをキャプチャーするヘテロジニアス方式を使用しうる。
いくつかの実施形態では、標識二次抗体を結合させることにより表面で結合した、13シリーズレゾルビンを定量するサンドイッチアッセイを使用しうる。
【0041】
好適には、イムノアッセイは、標識が、たとえば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素である酵素イムノアッセイ(EIA)を含みうる。
HRPに対する好適な基質は、当技術分野で周知であり、例としては、ABTS、OPD、AmplexRed、DAB、AEC、TMB、ホモバニリン酸、およびルミノールが挙げられる。
いくつかの実施形態では、ELISAイムノアッセイを使用しえ、サンドイッチELISAアッセイがとくに好ましいこともある。
【0042】
イムノアッセイは競合的または非競合的でありうる。
そのため、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンの量は、以上に記載したように、ホモジニアスまたはヘテロジニアスな方法により直接測定しうる。
代替的に、過剰に存在する既知量の抗体を用いて、サンプル中の、13シリーズレゾルビンを溶液中で捕捉し、次いで、表面に結合したSPMへの結合により残留抗体の量を決定して、元のサンプル中の13シリーズレゾルビンの量の間接リードアウトを与える。
他の一変形形態では、少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンと既知量の標識SPMとを表面結合抗体への結合に関して競合させうる。
【0043】
表面結合抗体またはSPMは、当技術分野で公知のようないずれかの好適な表面上に固定しうる。
たとえば、抗体またはSPMは、ウェル若しくはプレートの表面上また複数の磁気若しくは非磁気ビーズの表面上に固定しうる。
【0044】
したがって、本発明の第2の態様では、生物学的サンプル中の、13シリーズレゾルビンのレベルを測定するイムノアッセイが提供される。
このイムノアッセイは、サンプル中の13シリーズレゾルビンをキャプチャーするために、表面上にコーティングされた、および/または、サンプル中の13シリーズレゾルビンへの結合により、検出可能に変化する標識でタグ付けされた、13シリーズレゾルビンに対する抗体、またはサンプルとの混合後に、13シリーズレゾルビンに対する抗体をキャプチャーするために、表面上に固定された、サンプル中の定量されるものと同一のある量の13シリーズレゾルビンを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、イムノアッセイは、サンプル中の定量されるものと同一であるが、検出可能標識でタグ付けされている、既知量の13シリーズレゾルビンをさらに含む、競合アッセイでありうる。
標識された13シリーズレゾルビンは、13シリーズレゾルビンに対する抗体により、好適な表面に親和性結合させうる。
サンプルを添加すると、ある割合の標識13シリーズレゾルビンは、表面結合抗体から変位することにより、サンプル中の13シリーズレゾルビンのレベルの尺度を提供しうる。
【0046】
いくつかの実施形態では、イムノアッセイは、サンプル中の定量される13シリーズレゾルビンと同一の表面結合13シリーズレゾルビンと、13シリーズレゾルビンに対する溶液中の過剰の既知量の抗体と、を含みうる。
最初に、ある割合の抗体が、サンプル中の13シリーズレゾルビンに結合するように、溶液中でサンプルと抗体とを混合する。
次いで、表面結合13シリーズレゾルビンへの結合により、残留する非結合抗体の量を測定可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、イムノアッセイは、表面結合抗体に結合された13シリーズレゾルビンの量または表面上に固定された13シリーズレゾルビンに結合された一次抗体の量を定量するために、13シリーズレゾルビンに対する標識二次抗体または13シリーズレゾルビンに対する一次抗体を含みうる。
【0048】
本発明の第3の態様では、サンプル採取デバイスと本発明の第2の態様に係るイムノアッセイとを含む、サンプル中の特異的13シリーズレゾルビンのレベルを測定する装置が提供される。
【0049】
好適には、装置は、イムノアッセイで、標識13シリーズレゾルビンまたは13シリーズレゾルビンに対する標識抗体を検出するための検出器をさらに含みうる。
好適な標識は上述されているが、好ましい実施形態では、標識は、酵素を作用させたときに、着色したり、蛍光を発したり、または蛍光を許容したりする色素原性または化学発光性の基質を有する酵素でありうる。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明のイムノアッセイまたは装置は、生物学的サンプル中の少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを測定するための、小型デバイスに組み込みうる。
好適には、デバイスはラボオンチップ(lab-on-a-chip)を含みうる。
【0051】
したがって、本発明の第4の態様によれば、患者から得られた生物学的サンプル中の少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを測定するためのデバイスが提供される。このデバイスは、入口ポートと反応ゾーンとを有する内部チャネルを規定する1つ以上の部分を含み、サンプル中の13シリーズレゾルビンの量を直接的または間接的に定量するために、サンプル中の13シリーズレゾルビンと、13シリーズレゾルビンをキャプチャーする13シリーズレゾルビンに対する固定化一次抗体と、を反応させうるか、または反応ゾーンの上流でサンプルと混合された後の13シリーズレゾルビンに対する溶液中の過剰の一次抗体と、サンプル中の測定されるものと同一であるが反応ゾーン内の表面上に固定されている13シリーズレゾルビンと、を反応させうる。
【0052】
次いで、酵素でタグ付けされている、13シリーズレゾルビンに対する二次抗体または一次抗体を用いて、キャプチャーされた13シリーズレゾルビンまたは一次抗体を検出しうる。
【0053】
以上に記載したように、酵素は、酵素を作用させたときに着色したり、蛍光を発したり、または蛍光を許容したりする色素原性または化学発光性の基質を有しうる。
好適には、少なくとも反応ゾーンに隣接してチャネルを規定するデバイスの1つ以上の部分は、そのチャネルまたはさらなるチャネルの外部に配置された、好適な検出器、たとえば、フォトダイオードなどを用いて、13シリーズレゾルビンまたは一次抗体と二次抗体との反応の検出を可能にするために、少なくとも基質の色または蛍光を包含する波長の範囲内で光透明性でありうる。
【0054】
いくつかの実施形態では、デバイスは、サンプル中の複数の異なる、13シリーズレゾルビンのレベルを並行して測定するために、各々それ自体の入口ポートを備えた複数のチャネルを含みうる。
したがって、各チャネルは、異なるそれぞれの固定化一次抗体または13シリーズレゾルビンを含みうる。
【0055】
好適には、デバイスは、一連の異なる試薬、たとえば、サンプル、洗浄溶液、一次抗体、二次抗体、酵素基質などのチャネルへの導入を制御するために、1つ以上の入口ポートに関連付けられた1つ以上の選択的に操作可能なバルブを含みうる。
【0056】
したがって、デバイスはマイクロ流体デバイスを含みうる。
チャネルは反応ゾーンを含みうる。マイクロ流体デバイスは当業者に公知である。
マイクロ流体イムノアッセイまたはタンパク質診断チップマイクロアレイのレビューは、Chin et al.2012.Lab on a Chip.2012;12:2118-2134に提供される。
臨床現場即時検査(ポイントオブケア)で、ELISAイムノアッセイを行うのに好適なマイクロ流体デバイスは、Chan CD,Laksanasopin T,Cheung YK,Steinmiller D et al.“Microfluidics-based diagnostics of infectious diseases in the developing world”.Nature Medicine.2011;17(8):1015-1019(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示される。
【0057】
いくつかの実施形態では、スタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチンから選択しうる。
【0058】
好適には、スタチンは、通常の初期用量または維持用量で患者に投与しうる。
【0059】
したがって、アトルバスタチンは、約5~80mg、好ましくは10~40mgの用量で患者に投与しうる。
セリバスタチンは、約0.2~0.8mgの用量で患者に投与しうる。
フルバスタチンは、約10~80mg、好ましくは20~80mgの用量で患者に投与しうる。
ロバスタチンは、約5~60mg、好ましくは10~60mgまたは20~60mgの用量で患者に投与しうる。
メバスタチンは、約25mgまでの用量で患者に投与しうる。
ピタバスタチンは、約0.5~4mg、好ましくは約1mgまたは2mgの用量で患者に投与しうる。
プラバスタチンは、約20~80mg、好ましくは40~80mgの用量で患者に投与しうる。
ロスバスタチンは、約2.5~40mg、好ましくは約5~20mgまたは10~20mgの用量で患者に投与しうる。
シンバスタチンは、約2.5~40mg、好ましくは約5~20mgまたは10~20mgの用量で患者に投与しうる。
【0060】
好適には、第2のサンプルは、スタチン投与の少なくとも30分後、好ましくは、少なくとも1時間後、より好ましくは少なくとも2時間後に採取しうる。
【0061】
いくつかの実施形態では、炎症性病態は心血管疾患(CVD)でありうる。
【0062】
いくつかの実施形態では、炎症性病態は関節リウマチでありうる。
【0063】
したがって、本発明は、個別の患者において、炎症性病態の治療に使用されるスタチンの有効性を評価する方法を提供する。本方法は、スタチンの投与前および投与後に患者から得られた生物学的サンプル中の少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルを比較することを含み、スタチン投与後の少なくとも1つのレゾルビンのレベルの増加がスタチンの有効性の指標となる。
【0064】
本発明の方法はコンピューターにより実施しうる。
【0065】
したがって、本発明の第5の態様によれば、個別の患者において炎症性病態の治療に使用されるスタチンの有効性を評価するコンピューター実装方法(computer-implemented method)が提供される。
本方法は、スタチンの投与前および投与後に患者から得られた生物学的サンプル中の少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルを表すサンプルデータを、コンピューターで受け取ること、および、サンプル中の少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルを比較し、スタチン投与後の少なくとも1つのレゾルビンのレベルの増加がスタチンの有効性の指標となり、比較に基づいてスタチンの有効性を表す有効性データを出力するためにソフトウェアをコンピューターで実行することを含む。
【0066】
第6の態様では、本発明は、コンピューターによる実行時に、本発明の第5の態様の方法をコンピューターに行わせる命令を含むコンピュータープログラムを提供する。
【0067】
サンプル中の少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルを比較する工程は、サンプル中の13シリーズレゾルビンのレベルを表すデータを初期に受け取るコンピューターと異なるコンピューターで行いうることが理解されよう。
【0068】
したがって、本発明の第7の態様では、個別の患者において、炎症性病態の治療に使用されるスタチンの有効性を評価するコンピューター装置が提供される。
この装置は、コンピューターが組み込まれた第1のデバイスと、第2のコンピューターと、それらの間でデータを送信する第1のデバイスと第2のコンピューターとの間の通信チャネルとを含み、第1のデバイスは、スタチンの投与前および投与後に患者から得られた生物学的サンプル中の少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルを表すサンプルデータを受け取って、通信チャネルを介してサンプルデータを第2のコンピューターに送信するように配置され、且つ第2のコンピューターは、サンプル中の少なくとも1つの13シリーズレゾルビンのレベルを比較して、個別の患者に対するスタチンの有効性を決定し(スタチン投与後の少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルの増加が有効性の指標となる)スタチンの有効性を表す有効性データを出力するソフトウェアを実行するように配置される。
【0069】
第2のコンピューターは、通信チャネルを介して第1のデバイスにまたは第3のコンピューターに有効性のデータを送信するように配置しうる。
【0070】
いくつかの実施形態では、第1のデバイスは、生物学的サンプル中の少なくとも1つの、13シリーズレゾルビンのレベルを測定する本発明の第2、第3、または第4の態様に係るイムノアッセイ、装置、またはデバイスを含みうる。
【0071】
以下は、単なる例にすぎないが本発明の実施形態の添付の図面を参照した説明である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
下図において、
図1A】炎症性関節炎時にアトルバスタチンおよびプラバスタチンが与えられたマウスの足におけるRvTの増加。関節炎誘発原性K/BxN血清(100μL、i.p.)をマウスに与えて、疾患を惹起し、そして、(A)臨床スコアを用いて、疾患進行を毎日モニターした。矢印は、マウスにスタチンまたは媒体が与えられた日を表す。(B~D)疾患発生の3日後、5日後、および7日後に、0.2mg/Kgのアトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)をi.v.で与えた。8日目に足を採取し、そして、脂質メディエータープロファイリングを用いて、脂質メディエーターの同定および定量を行った。(B)ドコサヘキサエン酸、n-3ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸に由来する、同定された脂質メディエーターの代表的なMRM(多重反応モニタリング)クロマトグラム。(C)RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の同定で利用した、MS/MSスペクトル。(D)媒体と比較した、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4のパーセントレギュレーション。(E)同定されたRvTの代表的なMRMクロマトグラム。(F)媒体と比較した、全RvT、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の定量。A、B、およびEの結果は、n=12匹のマウスに対応し、CおよびFは、平均±s.e.m.、n=4匹のマウス/群である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05および**p<0.01。結果は、平均±s.e.m.。4つの独立した実験で処置したマウスについて、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、およびシンバスタチンでは9である。媒体と対比して、p<0.05。
図1B】炎症性関節炎時にアトルバスタチンおよびプラバスタチンが与えられたマウスの足におけるRvTの増加。関節炎誘発原性K/BxN血清(100μL、i.p.)をマウスに与えて、疾患を惹起し、そして、(A)臨床スコアを用いて、疾患進行を毎日モニターした。矢印は、マウスにスタチンまたは媒体が与えられた日を表す。(B~D)疾患発生の3日後、5日後、および7日後に、0.2mg/Kgのアトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)をi.v.で与えた。8日目に足を採取し、そして、脂質メディエータープロファイリングを用いて、脂質メディエーターの同定および定量を行った。(B)ドコサヘキサエン酸、n-3ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸に由来する、同定された脂質メディエーターの代表的なMRM(多重反応モニタリング)クロマトグラム。(C)RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の同定で利用した、MS/MSスペクトル。(D)媒体と比較した、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4のパーセントレギュレーション。(E)同定されたRvTの代表的なMRMクロマトグラム。(F)媒体と比較した、全RvT、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の定量。A、B、およびEの結果は、n=12匹のマウスに対応し、CおよびFは、平均±s.e.m.、n=4匹のマウス/群である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05および**p<0.01。結果は、平均±s.e.m.。4つの独立した実験で処置したマウスについて、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、およびシンバスタチンでは9である。媒体と対比して、p<0.05。
図1C】炎症性関節炎時にアトルバスタチンおよびプラバスタチンが与えられたマウスの足におけるRvTの増加。関節炎誘発原性K/BxN血清(100μL、i.p.)をマウスに与えて、疾患を惹起し、そして、(A)臨床スコアを用いて、疾患進行を毎日モニターした。矢印は、マウスにスタチンまたは媒体が与えられた日を表す。(B~D)疾患発生の3日後、5日後、および7日後に、0.2mg/Kgのアトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)をi.v.で与えた。8日目に足を採取し、そして、脂質メディエータープロファイリングを用いて、脂質メディエーターの同定および定量を行った。(B)ドコサヘキサエン酸、n-3ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸に由来する、同定された脂質メディエーターの代表的なMRM(多重反応モニタリング)クロマトグラム。(C)RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の同定で利用した、MS/MSスペクトル。(D)媒体と比較した、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4のパーセントレギュレーション。(E)同定されたRvTの代表的なMRMクロマトグラム。(F)媒体と比較した、全RvT、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の定量。A、B、およびEの結果は、n=12匹のマウスに対応し、CおよびFは、平均±s.e.m.、n=4匹のマウス/群である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05および**p<0.01。結果は、平均±s.e.m.。4つの独立した実験で処置したマウスについて、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、およびシンバスタチンでは9である。媒体と対比して、p<0.05。
図1D-1E】炎症性関節炎時にアトルバスタチンおよびプラバスタチンが与えられたマウスの足におけるRvTの増加。関節炎誘発原性K/BxN血清(100μL、i.p.)をマウスに与えて、疾患を惹起し、そして、(A)臨床スコアを用いて、疾患進行を毎日モニターした。矢印は、マウスにスタチンまたは媒体が与えられた日を表す。(B~D)疾患発生の3日後、5日後、および7日後に、0.2mg/Kgのアトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)をi.v.で与えた。8日目に足を採取し、そして、脂質メディエータープロファイリングを用いて、脂質メディエーターの同定および定量を行った。(B)ドコサヘキサエン酸、n-3ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸に由来する、同定された脂質メディエーターの代表的なMRM(多重反応モニタリング)クロマトグラム。(C)RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の同定で利用した、MS/MSスペクトル。(D)媒体と比較した、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4のパーセントレギュレーション。(E)同定されたRvTの代表的なMRMクロマトグラム。(F)媒体と比較した、全RvT、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の定量。A、B、およびEの結果は、n=12匹のマウスに対応し、CおよびFは、平均±s.e.m.、n=4匹のマウス/群である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05および**p<0.01。結果は、平均±s.e.m.。4つの独立した実験で処置したマウスについて、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、およびシンバスタチンでは9である。媒体と対比して、p<0.05。
図1F】炎症性関節炎時にアトルバスタチンおよびプラバスタチンが与えられたマウスの足におけるRvTの増加。関節炎誘発原性K/BxN血清(100μL、i.p.)をマウスに与えて、疾患を惹起し、そして、(A)臨床スコアを用いて、疾患進行を毎日モニターした。矢印は、マウスにスタチンまたは媒体が与えられた日を表す。(B~D)疾患発生の3日後、5日後、および7日後に、0.2mg/Kgのアトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)をi.v.で与えた。8日目に足を採取し、そして、脂質メディエータープロファイリングを用いて、脂質メディエーターの同定および定量を行った。(B)ドコサヘキサエン酸、n-3ドコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸に由来する、同定された脂質メディエーターの代表的なMRM(多重反応モニタリング)クロマトグラム。(C)RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の同定で利用した、MS/MSスペクトル。(D)媒体と比較した、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4のパーセントレギュレーション。(E)同定されたRvTの代表的なMRMクロマトグラム。(F)媒体と比較した、全RvT、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の定量。A、B、およびEの結果は、n=12匹のマウスに対応し、CおよびFは、平均±s.e.m.、n=4匹のマウス/群である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05および**p<0.01。結果は、平均±s.e.m.。4つの独立した実験で処置したマウスについて、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、およびシンバスタチンでは9である。媒体と対比して、p<0.05。
図2A】プラバスタチンは、ヒト好中球-内皮細胞共インキュベーションにおいて用量依存的にRvTを増加させた。HUVEC(8.5×10細胞/cm)を、IL-1β(10ng/mL)およびTNF-α(10ng/mL)と共に16時間インキュベートした。次いで、これらを、指示濃度のアトルバスタチン、プラバスタチン、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)と共に30分間インキュベートし、その後、好中球(4×10細胞/ウェル)を添加した。1時間後、インキュベーションを、2体積の氷冷メタノールでクエンチし、脂質メディエータープロファイリングを用いてRvTの同定および定量を行った。(A)同定されたRvTの代表的なMRMクロマトグラム。(B)媒体処置インキュベーションと比較した、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4レギュレーション。結果は、4つの独立した実験の4名の健常ドナーの平均である。二元配置ANOVA(two-way ANOVA)と事後テューキー多重比較検定(post hoc Tukey’s multiple comparisons test)とを用いて、媒体と対比して、p<0.05および**p<0.01。
図2B】プラバスタチンは、ヒト好中球-内皮細胞共インキュベーションにおいて用量依存的にRvTを増加させた。 HUVEC(8.5×10細胞/cm)を、IL-1β(10ng/mL)およびTNF-α(10ng/mL)と共に16時間インキュベートした。次いで、これらを、指示濃度のアトルバスタチン、プラバスタチン、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)と共に30分間インキュベートし、その後、好中球(4×10細胞/ウェル)を添加した。1時間後、インキュベーションを、2体積の氷冷メタノールでクエンチし、脂質メディエータープロファイリングを用いてRvTの同定および定量を行った。(A)同定されたRvTの代表的なMRMクロマトグラム。(B)媒体処置インキュベーションと比較した、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4レギュレーション。結果は、4つの独立した実験の4名の健常ドナーの平均である。二元配置ANOVA(two-way ANOVA)と事後テューキー多重比較検定(post hoc Tukey’s multiple comparisons test)とを用いて、媒体と対比して、p<0.05および**p<0.01。
図3A-3D】アトルバスタチンおよびプラバスタチンは、疾患重症度を低減して関節構造を保護した。 0および2日目に、関節炎誘発原性K/BxN血清をマウス与えた。 3、5、および7日目に、(A)アトルバスタチン(0.2mg/Kg)、(B)プラバスタチン(0.2mg/Kg)、(C)シンバスタチン(0.2mg/Kg)、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)を与えたマウスにおいて、26ポイント臨床スコアを用いて疾患進行をモニターした。結果は、平均±s.e.m.。3つの独立した実験で処置したマウスに対して、媒体ではn=8、アトルバスタチンでは10、プラバスタチンでは10、およびシンバスタチンでは6である。通常の二元配置ANOVA(分散分析)を用いて、媒体と対比して、**p<0.01および***p<0.005。(D)中足蹠厚さの最大パーセント増加。結果は、平均±s.e.m.。3つの独立した実験で、処置したマウスに対して、媒体ではn=8、アトルバスタチンでは10、プラバスタチンでは10、およびシンバスタチンでは6である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05。(E)EVOS FLイメージングシステムを用いて、8日目に、採取したマウスの代表的なH&E染色膝切片(倍率4倍)。結果は、3つの独立した実験で処置したマウスに対して、媒体ではn=8、アトルバスタチンでは10、プラバスタチンでは10、およびシンバスタチンでは6に対応する。Fは、femur(大腿骨)、Tは、脛骨、mは、半月板、IFPは、膝蓋下脂肪パッド、PFは、パンヌス形成。矢印は白血球浸潤を表す。
図3E】アトルバスタチンおよびプラバスタチンは、疾患重症度を低減して関節構造を保護した。0および2日目に、関節炎誘発原性K/BxN血清をマウス与えた。3、5、および7日目に、(A)アトルバスタチン(0.2mg/Kg)、(B)プラバスタチン(0.2mg/Kg)、(C)シンバスタチン(0.2mg/Kg)、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)を与えたマウスにおいて、26ポイント臨床スコアを用いて疾患進行をモニターした。結果は、平均±s.e.m.。3つの独立した実験で処置したマウスに対して、媒体ではn=8、アトルバスタチンでは10、プラバスタチンでは10、およびシンバスタチンでは6である。通常の二元配置ANOVA(分散分析)を用いて、媒体と対比して、**p<0.01および***p<0.005。(D)中足蹠厚さの最大パーセント増加。結果は、平均±s.e.m.。3つの独立した実験で、処置したマウスに対して、媒体ではn=8、アトルバスタチンでは10、プラバスタチンでは10、およびシンバスタチンでは6である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05。(E)EVOS FLイメージングシステムを用いて、8日目に、採取したマウスの代表的なH&E染色膝切片(倍率4倍)。結果は、3つの独立した実験で処置したマウスに対して、媒体ではn=8、アトルバスタチンでは10、プラバスタチンでは10、およびシンバスタチンでは6に対応する。Fは、femur(大腿骨)、Tは、脛骨、mは、半月板、IFPは、膝蓋下脂肪パッド、PFは、パンヌス形成。矢印は白血球浸潤を表す。
図4A-4D】炎症性関節炎における各スタチンによる、循環白血球および血小板活性化の示差的レギュレーション(Differential regulation)。マウスにおいて血清誘発関節炎を惹起し、3、5、および7日目に、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン(各0.2mg/Kg)または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)を与えた。8日目に、血液を採取した。蛍光標識抗体およびフローサイトメトリーを用いて、白血球サブセットおよび活性化を同定した。(A)非古典的単球、(B)古典的単球、(C)好中球、および(D)血小板の活性化マーカーを、媒体からのパーセント減少として評価した。結果は、平均±s.e.m.。4つの独立した実験で処置したマウスに対して、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、およびシンバスタチンでは9である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05。
図5A-5C】炎症性関節炎における、アトルバスタチンおよびプラバスタチンによる、単球、好中球、およびマクロファージ活性化さらには関節への輸送の低減。マウスにおいて血清誘発関節炎を惹起し、そして、3、5、および7日目に、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン(各0.2mg/Kg)または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)を与えた。8日目に前足を採取し、消化させて浸潤性白血球を遊離させた。特異的マーカーに対する抗体およびフローサイトメトリーを用いて、白血球サブセットを規定した。(A)非古典的単球、(B)好中球、(C)単球由来マクロファージの輸送および活性化を評価した。結果は、平均±s.e.m.。4つの独立した実験で処置したマウスに対して、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、およびシンバスタチンでは9である。一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いて、媒体と対比して、p<0.05。
図6A-6C】セレコキシブによるRvT産生の阻害は、アトルバスタチンおよびプラバスタチンの関節保護作用を逆転させる。関節炎誘発原性血清を用いて炎症性関節炎を惹起した(詳細については方法を参照されたい)。3、5、および7日目に、マウスに、セレコキシブ(10mg/Kg)または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)を投与し、そして、1時間後、(A)アトルバスタチン(0.2mg/Kg)、(B)プラバスタチン(0.2mg/Kg)、または媒体(0.05%エタノールを含有するPBS)を与えた。疾患活動性を毎日評価し、通常の二元配置ANOVAを用いて、媒体と対比して、p<0.05であった。(C)8日目、足を採取し、LC-MS-MSベースの脂質メディエータープロファイリングを用いて、RvTの同定および定量を行った。一元配置ANOVAと事後シダック多重比較検定とを用いて、アトルバスタチンまたはプラバスタチンの単独と対比して、p<0.05および**p<0.01。(D)EVOS FLイメージングシステムを用いて、8日目に採取したマウスの代表的なH&E染色膝部(倍率4倍)。結果は、平均±s.e.m.。2~3つの独立した実験で各群について処置したマウスに対して、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、セレコキシブ+アトルバスタチンでは7、およびセレコキシブ+プラバスタチンでは6である。
図6D】セレコキシブによるRvT産生の阻害は、アトルバスタチンおよびプラバスタチンの関節保護作用を逆転させる。関節炎誘発原性血清を用いて炎症性関節炎を惹起した(詳細については方法を参照されたい)。3、5、および7日目に、マウスに、セレコキシブ(10mg/Kg)または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)を投与し、そして、1時間後、(A)アトルバスタチン(0.2mg/Kg)、(B)プラバスタチン(0.2mg/Kg)、または媒体(0.05%エタノールを含有するPBS)を与えた。疾患活動性を毎日評価し、通常の二元配置ANOVAを用いて、媒体と対比して、p<0.05であった。(C)8日目、足を採取し、LC-MS-MSベースの脂質メディエータープロファイリングを用いて、RvTの同定および定量を行った。一元配置ANOVAと事後シダック多重比較検定とを用いて、アトルバスタチンまたはプラバスタチンの単独と対比して、p<0.05および**p<0.01。(D)EVOS FLイメージングシステムを用いて、8日目に採取したマウスの代表的なH&E染色膝部(倍率4倍)。結果は、平均±s.e.m.。2~3つの独立した実験で各群について処置したマウスに対して、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、セレコキシブ+アトルバスタチンでは7、およびセレコキシブ+プラバスタチンでは6である。
図7A-7F】COX-2阻害は、全身および関節の両方の白血球に対するアトルバスタチンの保護作用を逆転する。血清誘発関節炎を惹起し、3、5、および7日目、そして、マウスにセレコキシブ(10mg/Kg)または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)を投与し、そして、1時間後、アトルバスタチン(0.2mg/Kg)または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS)を与えた。8日目、血液を採取し、そして、蛍光標識抗体およびフローサイトメトリーを用いて、白血球サブセットおよび活性化を同定した。循環する(A)非古典的単球、(B)好中球、および(C)血小板の活性化マーカー(A~C)。結果は、媒体からのパーセント減少として表される。(D~F)白血球は、8日目、炎症を起こした足(詳細については方法を見る)から回収された。フローサイトメトリーを用いて、(D)非古典的単球、(E)好中球、および(F)単球由来マクロファージの輸送および活性化プロファイルを評価した。結果は、平均±s.e.m.。2つの独立した実験で処置したマウスに対して、媒体ではn=9、アトルバスタチンでは11、プラバスタチンでは11、セレコキシブ+アトルバスタチンでは7である。媒体と対比して、p<0.05、一元配置ANOVAと事後ダネット多重比較検定とを用いてアトルバスタチンと対比して、p<0.05。
図8】個別の患者における炎症治療に対するスタチン(アトルバスタチン)の有効性を評価する本発明に係る方法の例を示すフロー図である。
図9】イムノアッセイを行うマイクロ流体デバイスを用いて、本発明の方法を実施する装置の模式図である。
図10】本発明のイムノアッセイが組み込まれた本発明に係るマイクロ流体デバイスの模式図である。
図11】窒素下およびメタノール下でそれぞれ-80℃で貯蔵したときの、長期にわたる脂質メディエーターの安定性を比較した実験の結果を示す。
【実施例
【0073】
実施例1
動物
Charles River(Kent,UK)から、雄C57BL/6マウス(11週齢)を調達した。すべての動物に標準的検査施設の食事および水を自由に提供し、12時間明/暗サイクルを維持した。
【0074】
炎症性関節炎
0および2日目に、マウスに、K/BxN血清(100μL、i.p.)を投与して、炎症性関節炎を惹起した。
次いで、3、5、および7日目に、i.v.注射を介して、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン(各0.2mg/Kg)、または媒体(0.05%エタノールを含有するDPBS-/-)をマウスに与えた。
26ポイント関節炎スコアリングシステムを用いて、臨床スコアを毎日モニターした。
Norling LV,Headland SE,Dalli Jら.“Proresolving and cartilage-protective actions of resolvin D1 in inflammatory arthritis”.JCI Insight.2016;1(5):e85922に記載のように、マウスの足首/手首、蹠、および指の腫脹および発赤を毎日検査した。
指定の時間インターバルで血液および足を採取した。
【0075】
選ばれた実験では、スタチン注射の1時間前に、10mg/Kgのセレコキシブをマウスに与えた。関節炎発生後8日目にまたは7日目のスタチン注射の2時間後に血および足を採取した。
【0076】
脂質メディエータープロファイリング
各500pgのジュウテリウム化(d)内部標準:d-5Sヒドロキシエイコサテトラエン酸、d-ロイコトリエン(LT)B、d-リポキシン(LX)A、d-プロスタグランジン(PG)E、およびd-レゾルビンDを含有する氷冷メタノールを、サンプルに添加した。
Dalli Jら.2015(ibid)、Colas RAら.2014(ibid)、およびRathod KS,Kapil V,Velmurugan Sら.“Accelerated resolution of inflammation underlies sex differences in inflammatory responses in humans”.J Clin Invest.2017;127(1):169-182に記載のように、脂質メディエーターを抽出し、プロファイリングを行った。
【0077】
フローサイトメトリー
ヘパリンライニングシリンジを用いて心臓穿刺により全血を採取した。FcブロッキングIgGおよび蛍光標識抗体と共に、細胞を、氷上で45分間インキュベートした。
細胞を洗浄し、0.1%Live/Dead染色液と共に、氷上で、30分間インキュベートした。
全血溶解試薬キットを用いて、赤血球細胞の溶解および固定を行った。
次いで、フローサイトメトリーアナライザーを用いて染色を評価し、好適なソフトウェアを用いて分析した。
【0078】
Dalli Jら.2015(ibid)に記載のように、足を採取して、白血球を単離した。
簡潔に述べると、37℃のRPMI-1640(0.5μg/mLコラゲナーゼDおよび40μg/mL DNアーゼIを含有する)中で激しく攪拌しながら、足を30分間インキュベートした。
単離された細胞を、70μMストレーナーに通して、2U/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン、および10%FBSを含有するRPMI-1640中に懸濁させ、次いで、400×gで10分間遠心分離した。
単離された細胞を、0.02%BSAおよび1%FcブロッキングIgG(v/v)を含有するDPBS-/-中に懸濁させ、そして、0.1%Live/Dead染色液と共に氷上で20分間インキュベートした。
DPBS-/-を用いて細胞を洗浄し、蛍光標識抗体と共に氷上で45分間インキュベートした。次いで、これを洗浄し、そして、1%パラホルムアルデヒドを用いて固定した。
絶対計数ビーズ(Absolute counting beads)を白血球計数に使用した。
次いで、フローサイトメトリーアナライザーを用いて染色を評価し、好適なソフトウェアを用いて分析した。
【0079】
ヒト好中球-内皮細胞単離
ロイヤルロンドン病院(Royal London Hospital)産科病棟の産科スタッフにより臍帯を採取し(East London and The City Health Authority Research Ethics Committee Number:06/Q0605/40により承認されたプロトコル)、Gittens BR,Wright RD,Cooper D.Methods for assessing the effects of galectins on leukocyte trafficking.Methods Mol Biol.2015;1207:133-151に記載のようにヒト臍静脈内皮細胞を単離した。
次いで、インターロイキン(IL)-1βおよび腫瘍壊死因子(TNF)-α(各10ng/mL、16時間、37℃、5%CO)と共に細胞をインキュベートした。
【0080】
Declaration of Helsinki and Queen Mary Research Ethics Committee承認プロトコル(QMREC2014:61)に準拠して健常同意ドナーの血液から好中球を単離した。Dalli Jら.2015(ibid)に記載のようにインキュベーションを行った。
【0081】
統計
結果は、平均±s.e.m.として表される。一元配置ANOVAと事後ダネット、シダック、またはテューキー多重比較検定とを用いて、GraphPad Prism7(GraphPadソフトウェア)により群間差を検定した。適宜、標準媒体と比較した1標本t検定または二元配置ANOVAを使用した。
統計的有意性の基準は、p<0.05であった。
【0082】
結果
炎症性関節炎時のアトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンによる局所および全身のRvTの示差的(Differential)レギュレーション
最初に、アトルバスタチンが、炎症性関節炎時に、RvT形成をレギュレートするか、およびこの作用がこのスタチンに特有であるかまたは他の臨床関連スタチン、すなわち、プラバスタチンおよびシンバスタチンと共有されるかを調べた。
これを試験するために、K/BxNマウスの関節炎誘発原性血清を、0および2日目に投与した。
この血清は、急速に発生する重症の炎症性関節炎を伴うFcγ媒介免疫反応をもたらす。
【0083】
次いで、血清投与後3、5、および7日目に、治療パラダイムでアトルバスタチン(0.2mg/Kg)、プラバスタチン(0.2mg/Kg)、シンバスタチン(0.2mg/Kg)、または媒体をマウスに与えて、その時点の疾患の臨床徴候を観察した(図1A)。
【0084】
最後のスタチン投与の24時間後に、血漿および足を採取し、そして、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)ベースの脂質メディエータープロファイリングを用いて、脂質メディエーターの同定および定量を行った。
関節炎マウスの足において、DシリーズレゾルビンおよびRvTを含めて、4つすべての主要バイオ活性メタボロームのメディエーターが同定された(図1B、C)。
これらのメディエーターは、基準標準または合成標準に対する保持時間(図1B)およびColas RAら.2014(ibid)に記載のMS-MSの少なくとも6つのイオン(図1C)のマッチングを含めて既報の基準に従って同定された。
【0085】
多重反応モニタリングを用いて、これらの足で同定されたメディエーターの濃度を定量した。ここで、アトルバスタチンを摂取したマウスの関節において、媒体処置マウスの足と比較したとき、RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4の増加に基づく全RvT量の増加が43%であることが分かった(図1D)。注目すべきこととして、これらのメディエーターの濃度は、Dalli Jら.2015の報告に記載のバイオ活性の範囲内にあった。
【0086】
プラバスタチンもまた、関節のRvT1およびRvT2濃度の増加を伴って足のRvTを約20%増加させたが、シンバスタチンは、関節のRvT濃度を有意に増加させなかった(図1D)。
【0087】
プラバスタチンまたはアトルバスタチンのどちらを与えたマウスにおいても、LTB4、PGD2、PGE2、PGF2α、およびTxB2が減少することが、血漿メディエーターレベルの評価から実証された。
これらのマウスにおいて、RvT濃度の血漿中レベルも増加することが分かり、RvT1は、アトルバスタチンおよびプラバスタチンの両方で増加し、一方、RvT4は、アトルバスタチンでのみ増加した。
【0088】
スタチンが循環系から急速にクリアランスされ、アトルバスタチンおよびプラバスタチンの半減期が、~14時間および~3時間であることを考慮して、次いで、これらのスタチンによるRvT生合成の全身性レギュレーションが投与直後により顕在化するかを調べた。
この目的のために、K/BxN血清を用いて関節炎を惹起し、そして、以上に記載のようにアトルバスタチンおよびプラバスタチンをマウスに与えた。
次いで、7日目の最後のスタチン投与の2時間後に血液を採取し、そして、LMプロファイリングを用いて脂質メディエーターの同定および定量を行った。
【0089】
アトルバスタチンが与えられたマウスの血漿において、媒体処置マウスと比較したとき、RvT1、RvT2、およびRvT3の増加を伴ってRvTの有意な増加(>200%)が見いだされた(図1Eおよび1F)。
これらのマウスでは、PGDおよびPGEを含めて、炎症誘発性エイコサノイドの循環量の減少が見いだされた。
また、媒体処置マウスと比較したとき、末梢血RvTの顕著な増加(>100%)も、プラバスタチンが与えられたマウスの血漿LMプロファイルの評価から実証され、RvT1は最も高い増加を示した(図1Eおよび1F)。
これらのマウスでは、循環PGDの減少(~46%)および循環PGEの減少(~29%)も観測された。
【0090】
全体として、アトルバスタチンおよびプラバスタチンは、関節および血漿の両方のRvTを増加させるとともに炎症性関節炎時の全身性炎症を減少させることが、これらの結果から実証される。
【0091】
血管系においてRvTが好中球内皮相互作用時に産生されることを考慮して、次いで、ネズミ系で観測されたプラバスタチンによるRvTの増加をヒトにも移行可能であるかが疑問であった。このため、プラバスタチンと共培養したヒト好中球-内皮細胞物をインキュベートして、そして、RvTをレギュレートするその能力を評価した。
【0092】
ここで、プラバスタチンは、アトルバスタチンにより観測されたのと同程度まで、4つすべてのRvT濃度を用量依存的にアップレギュレートすることが分かった(図2Aおよび2B)。
【0093】
アトルバスタチンおよびプラバスタチンは関節炎症を低減して、白血球媒介組織損傷から保護する
次いで、RvTを増加させる用量のアトルバスタチンおよびプラバスタチンが、関節炎症も低減するかを調べた。
関節炎を惹起し、マウスを処置し、そして、以上に記載のように、疾患進行をモニターした。
媒体が与えられたマウスにおいて、早くも2日目に疾患の徴候が観測され、疾患重症度は6日目に11.9±0.9のスコアを有して、最大に達し、その後、7日目に疾患活動性はプラトーに達した(図3A)。
【0094】
マウスにアトルバスタチンが与えられたとき、早くも4日目(治療開始1日後)に疾患進行が弱められ、疾患スコアは、5日目に9.1±1.2の最大スコアに達した。
こうした疾患活動性の低減は7日目まで持続した(図3A)。
【0095】
同様に、マウスにプラバスタチンが与えられたとき、5日目の疾患活動性は、媒体のみが与えられたマウスと比較したとき、約23%低下し、疾患活動性の低減は、7日目まで維持されることが見いだされた(図3B)。
【0096】
アトルバスタチンおよびプラバスタチンと等しい用量のシンバスタチンを投与しても、疾患活動性は有意に低減されなかった(図3C)。こうした知見は、足の腫脹の程度にも反映され、アトルバスタチンおよびプラバスタチンは、中足蹠厚さの減少により測定される関節腫脹を低減した(図3D)。
【0097】
次いで、アトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンが関節保護作用を呈するかを評価した。
アトルバスタチンおよびプラバスタチンが与えられたマウスの膝関節のヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色切片は、媒体処置マウスと比較したとき、白血球浸潤、パンヌス形成、および関節損傷の低減を示したが、これらのパラメーターは、シンバスタチンが与えられたマウスでは不変であるように思われた(図3E)。
【0098】
全体として、アトルバスタチンおよびプラバスタチンは、局所炎症のレギュレーションおよび炎症性関節炎における白血球媒介関節損傷からの保護の点でシンバスタチンよりも効力があることが、これらの知見から実証される。
【0099】
アトルバスタチンおよびプラバスタチンによる関節炎マウスの関節および血液の白血球活性化の減少
これらのスタチンが、炎症性関節炎において全身性炎症をレギュレートするか確認するために、関節炎マウスの末梢血中の血小板-白血球凝集体のレベルをこうしたヘテロタイプ凝集体および細胞活性化とCVDとの関係を考慮して評価した。
【0100】
フローサイトメトリーを用いて、アトルバスタチンは、非古典的および古典的の両方の単球上のCD11bの発現さらには血小板-単球凝集体をレギュレートすることが、これらの単球サブセット上のCD62P発現(図4AおよびB)およびCD41発現(n=9匹のマウス)の減少の測定から分かった。
【0101】
アトルバスタチン投与はまた、好中球および血小板の反応をレギュレートして、好中球CD11b発現、血小板-好中球凝集体を有意に低減するとともに(図4C)、媒体のみが与えられたマウスと比較したとき、血小板CD62P発現を~60%減少させる(図4D)。
プラバスタチンが与えられたマウスの末梢血の白血球および血小板でも類似の知見が得られ、単球CD11b発現の低減(非古典的単球で~10%および古典的単球で~40%)、血小板白血球凝集体の低減(両方の単球サブセットで~35%および好中球で~25%)、およびCD62P発現の~70%の低減を伴う血小板活性化の低減を生じた(図4)。
シンバスタチンは、白血球CD11b発現を有意にレギュレートしなかったが、古典的単球と血小板とにより形成されるヘテロタイプ凝集体および血小板CD62P発現を低減させた(図4)。
アトルバスタチンおよびプラバスタチンは、全身性炎症をレギュレートして、炎症性関節炎時に循環する単球、好中球、および血小板の活性化を減衰させることが、これらの結果から実証される。
【0102】
次いで、こうした作用が、関節における白血球の輸送および活性化のレギュレーションに移行されるかも試験した。
【0103】
最初に、疾患の発生およびK/BxN血清惹起炎症性関節炎の伝播における役割を考慮して、炎症関節への非古典的単球の輸送を評価した。
【0104】
アトルバスタチンが与えられたマウスの関節から単離された白血球のフローサイトメトリー分析から、関節に動員される非古典的単球の全数の著しい減少(>60%)が実証された。
媒体のみが与えられたマウスと比較したとき、こうした細胞上のCD11bの低減およびMHCII発現の著しい減少も見られた(図5A)。媒体処置マウスと比較したとき、アトルバスタチンを摂取したマウスにおいて、好中球の輸送が減少することが分かった(図5B)。
こうしたマウスでは、スタチン投与は、好中球のCD11b発現およびMHCII発現をダウンレギュレートするが、統計的有意性に達しないことが分かった(図5B)。
単球由来のマクロファージの数、さらには活性化マーカーCD11bおよびMHCIIの発現の有意な低下も、関節へのマクロファージ輸送の評価から実証さマイクロれた(図5C)。
【0105】
関節の単球、好中球、およびマクロファージの数、さらには活性化プロファイルを低減するプラバスタチンが与えられたマウスでも、類似の知見が得られた(図5)。
【0106】
注目すべきこととして、シンバスタチンは、こうした細胞サブセット上の活性化マーカーのいくつかの発現をレギュレートしたが、媒体のみが与えられたマウスと比較したとき、足において白血球の数を有意に低減しなかった(図5)。
【0107】
全体として、プラバスタチンおよびアトルバスタチンも、炎症性関節炎において関節の白血球の輸送および活性化をレギュレートすることを、こうした知見から実証される。
【0108】
COX-2阻害はアトルバスタチンおよびプラバスタチンの保護作用を逆転する
アトルバスタチンおよびプラバスタチンにより発揮される保護作用における、RvTの寄与を評価するために、次いで、RvT経路の開始酵素であるCOX-2の阻害がプラバスタチンおよびアトルバスタチンの保護作用を逆転するかを調べた。
【0109】
アトルバスタチンの直前にCOX-2選択的阻害剤であるセレコキシブが与えられたマウスの臨床スコアは、媒体のみを摂取したマウスのそれに類似しており、アトルバスタチンを摂取したマウスのそれよりも高かった(図6A)。
【0110】
同様に、セレコキシブも、スタチンのみを摂取したマウスと比較したとき、疾患活動の増加により測定されるプラバスタチンの抗炎症作用の鈍化した(blunted)(図6B)。
【0111】
セレコキシブが与えられたマウスにおける、プラバスタチンおよびアトルバスタチンの保護作用のこうした損失は、プラバスタチンまたはアトルバスタチンのみが与えられたマウスと比較したとき、関節RvTの~60%の低減およびRvT1濃度の>75%の低減にも関連付けられた(図6C)。
【0112】
こうしたマウスでは、両方のスタチンの関節保護作用の有意な逆転も見いだされ、セレコキシブが与えられたマウスでは、各スタチンのみが与えられたマウスと比較したとき、パンヌス形成が増加して関節構造が損なわれた(図6D)。
【0113】
次いで、COX-2阻害がアトルバスタチンおよびプラバスタチンにより発揮される白血球指向作用も逆転するかを調べた。
【0114】
セレコキシブ投与は、循環する白血球および血小板に及ぼすアトルバスタチンの保護作用を鈍化させ、血中の血小板-単球および血小板-好中球の凝集体さらには両方の白血球サブセット上のCD11bの発現を増加させた(図7AおよびB)。
セレコキシブ投与はまた、アトルバスタチンのみを摂取したマウスと比較したとき、循環血小板上のCD62P発現を増加させた(図7C)。
COX-2の阻害は、関節において白血球の輸送および活性化に及ぼすアトルバスタチンの作用を逆転し、炎症関節に動員される非古典的単球(図7D)、好中球(図7E)、および単球由来マクロファージ(図7F)の数を増加させた。
こうした白血球上の活性化マーカーの発現は、アトルバスタチンのみが与えられたマウスと比較したとき、セレコキシブ阻害後に増加した(図7D~F)。
【0115】
プラバスタチンと共にセレコキシブが与えられたマウスにおいて、全身および関節の白血球の反応および輸送を評価したときも類似の知見が得られた。
ここで、COX-2阻害は、循環する白血球および血小板の活性化プロファイルを媒体のみを摂取したマウスで観測されるものに戻すことが分かった。
同様に、関節における白血球の輸送および活性化は、媒体処置マウスに見いだされるものに類似したレベルに増加した。
【0116】
全体として、COX-2の阻害は、RvT産生を低減し、そして、炎症性関節炎においてプラバスタチンおよびアトルバスタチンの関節および全身の保護作用を消失することが、こうした知見から実証される。
【0117】
アトルバスタチンおよびプラバスタチンは両方とも、炎症性関節炎においてRvT産生を増加させることが、これらの結果から実証される。
これらのSPMの組織中および血中の濃度のアップレギュレーションは、関節の疾患活動性さらには関節の白血球の輸送および活性化の低減に関連付けられた。
そのほか、アトルバスタチンおよびプラバスタチンは両方とも、全身性炎症を低減し、血小板、単球、および好中球の活性化を低減した。
これらのスタチンの保護作用は、COX-2の阻害により逆転された。
注目すべきこととして、シンバスタチンは、RvTを増加させず、そして、関節疾患および白血球反応のレギュレーションの鈍化作用を示した。
【0118】
全体として、RvTレギュレーションにおける、アトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンのランク順効力並びにこうしたスタチンの保護作用の媒介におけるこれらの分子の役割が、こうした知見から立証される。
関節および全身におけるこれらの消散促進性メディエーターの増加は、浮腫、白血球および血小板の活性化をはじめとする局所性および全身性の炎症の各種局面を弱める、こうした3つの各スタチンの能力に関連付けられた。
そのため、これらの結果から、関節炎において炎症をレギュレートするアトルバスタチンおよびプラバスタチンの新規な作用機序が立証されるとともに、患者において局所性および血管性の炎症を制御するスタチンの有効性を測定する新規な機能的バイオマーカーが提供される。
【0119】
実施例2
個別の患者において炎症性病態の治療に使用されるスタチンの有効性を評価する本発明に係る方法は、図8に例示される。
【0120】
工程10は本方法の開始を示す。
最初に、第1の好適な生物学的サンプルを患者から採取する(工程20)。
本実施例では、生物学的サンプルは血漿サンプルであるが、他の実施形態では、サンプルは、患者から採取された全血若しくは血清または好適な組織サンプルでありうる。
【0121】
次いで、試験量のスタチンを患者に投与する(工程30)。
本発明によれば、医薬品として市販するためまたは臨床試験において治験医薬品(IMP)として使用するためのどちらかで使用が承認されているいずれかのスタチンを投与しうる。
その推奨された初回用量または維持用量に準拠してスタチンを投与しうる。好適には、その推奨初回用量に準拠してスタチンを投与しうる。
本実施例では、アトルバスタチンは10mgまたは20mgの用量で使用される。
しかしながら、他の実施形態では、異なるスタチンを使用しうる。
患者への投与量は、臨床診療に従って調整しうる。
【0122】
規定の時間後、第2の生物学的サンプルを患者から採取する(工程40)。
本実施例では、規定の時間は2~3時間であるが、この場合も、異なる実施形態では他の時間を使用しうる。
時間は、スタチンの薬理学的効果を顕在化させるのに十分な程度に長くすべきである。
【0123】
工程50では、スタチンの投与前および投与後に、工程20および40で患者から採取した第1および第2のサンプルを分析して、サンプル中の少なくとも1つの13シリーズレゾルビン(RvT)のレベルを定量する。
本実施例では、逆相液体クロマトグラフィーエレクトロスプレータンデム質量分析(LC-MS/MS)により、第1および第2のサンプル中の4つの13シリーズレゾルビン(RvT1、RvT2、RvT3、およびRvT4)のレベルを測定する。
本発明の異なる実施形態では、4つ未満の13シリーズレゾルビン、すなわち1つ、2つ、または3つの13シリーズレゾルビンを分析しうる。
第1および第2のサンプル中の13シリーズレゾルビンのレベルを定量する本方法の詳細は、Colas RAら.2014(ibid)およびDalliら.2015(ibid)(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0124】
第1および第2の血漿サンプルの各々で、患者からヘパリン中に静脈血(10mL)を採取する。
ヘパリン処理血液の遠心分離(2000g、10分間)により血漿を得て、以下に記載の固相抽出前に、4体積のメタノール中に配置する。
【0125】
定量およびサンプル回収を促進するために、4mLの氷冷メタノール中の内部標識標準である、5S-HETE-d8、LTB4-d4、LXA4-d5、RvD2-d5、およびPGE2-d4(各500pg)を各サンプルに添加する。
次いで、サンプルを、-20℃で45分間保持して、タンパク質を沈殿させ、その後、遠心分離する(2000g、4℃、10分間)。
上清を採取し、37℃に設定された水浴および15psi以下の流量の窒素供給を備えた自動蒸発システムでメタノール含有量を温和な窒素ストリーム中1mL未満にする。次いで、サンプルを遠心分離する(2000g、4℃、10分間)。
次いで、37℃に設定された水浴および15psi以下の流量の窒素供給を備えた自動抽出システムにサンプルを配置し、以下のように産物を抽出する。
【0126】
固相C18カートリッジを、3mLのメタノールおよび6mLのHOで洗浄する。
次いで、9mLのHO(pH3.5、HCl)をサンプルに添加し、コンディショニングされたC18カラムに酸性化溶液を急速にロードし、4mLのHOで洗浄して酸を中和する。
次いで、5mLのヘキサンを添加し、9mLのメチルホルメートで産物を溶出させる。
自動蒸発システムを用いて産物を乾固させ、LC-MS/MS自動注入のためにメタノール-水(50:50vol/vol)中にただちに懸濁させる。
【0127】
本実施例では、LC-MS/MSのために、高ダイナミックレンジパルス計数システムを備えた三連四重極質量分析計(triple quadrupole mass spectrometer)と組み合わせてHPLCおよびオートインジェクターを利用する。
当業者であれば代替の好適なLC-MS/MS装置を利用可能である。
50℃に維持されたカラムオーブン内にC18カラムを保持し、溶媒Aとして、0.01%酢酸を含有する水と溶媒Bとして0.01%酢酸を含有するおよびメタノールとからなる移動相を用いて、RvT脂質メディエーターを溶出させる。
80:20(A:B)の移動相を用いて、カラムを平衡化し、12秒間にわたり、50:50(A:B)にランプさせる(ramped)。このグラジエントを2分間維持し、次いで、続く9分間にわたり80:20(A:B)にランプさせる(ramped)。
次いで、このグラジエントを、続く3.5分間にわたり維持し、その後、98:2(A:B)にランプさせる(ramping)。
最後に、このグラジエントを5.4分間維持してカラムを洗浄する。プロセス全体を通して流量を0.5mL/minに維持する。
【0128】
質量分析計は、情報依存取得およびエンハンストプロダクトラインスキャンと連動させてスケジュール化多重反応モニタリング(MRM)を用いて、負イオン化モード(negative ionisation mode)で操作する。
スケジュール化MRMウィンドウは90秒間であり、各脂質メディエーターパラメーターは個別に最適化される。
【0129】
各RvT(13シリーズレゾルビン)のアイデンティティーは、その保持時間(R)を合成物質および基準物質(図1B)並びに各RvTの少なくとも6つの診断イオン(図1C)にマッチングさせることにより確認され、以下の表2に記載の親イオン(Q1)および特徴的な娘イオン(Q3)の多重反応モニタリングを用いて定量される。
【0130】
【表2】
【0131】
検量線は、3.12、6.25、12.5、25、50、100、および200pgで、基準化合物混合物およびジュウテリウム標識脂質メディエーターを用いて、各々に対して得られる。線形検量線は、各LMに対して得られ、0.98~0.99のr値を与える。内部標準回収率、マトリックス干渉、および検出限界が決定される。
【0132】
第1および第2のサンプルの各々でRvTのレベルを定量した後、レベルを比較する(工程60)。
【0133】
第1のサンプルと比較して、第2のサンプルのRvTレベルの著しい増加は、患者に投与されたスタチンが炎症の抑制に有効でありうることを示唆する。
一方、第1のサンプルと比較して、第2のサンプルのRvTレベルの増加がないのは、投与されたスタチンが、個別の患者に無効であることを示唆する(工程70)。
【0134】
これらの結果に基づいて、有効であることが示された場合(工程80)、スタチンは患者に処方しうる。代替的に、本方法は、たとえば翌日に異なるスタチンを用いて繰り返しうる。
【0135】
工程90は、本方法の終了を示す。
【0136】
実施例3
図9および10を参照して、本発明のさまざまな態様のさらなる例を以下に説明する。
この場合、マイクロ流体デバイス110に組み込まれたイムノアッセイは、患者Pから得られた血液サンプルB中の少なくとも1つの13シリーズレゾルビン(RvT)のレベルを測定するために使用される。
【0137】
図10に最良の形で示されるように、マイクロ流体デバイス110は、当業者に公知のような一般的構成を有する。
具体的には、マイクロ流体デバイス110は、チャネル検査および光学シグナル取得を可能にする、透明生体適合性エラストマーのポリジメチルシロキサン(PDMS)の少なくとも1つの層112を含み、ガラススライド114に結合する。
【0138】
PDMS層は、一方の端が、サンプルコレクターポート125および、他方の端が、廃液ドレイン130で終端する複数のマイクロチャネル120a~dと共に成形される。
本実施例では、マイクロ流体デバイス110は、4つのマイクロチャネル120a~dを有し、その1つは、血液サンプルB中の異なるそれぞれのRvT(RvT1、RvT2、RvT3、RvT4)のレベルを測定する。
以上の実施例2の場合と同様に、本実施例の変形形態では、マイクロ流体デバイスは、4つ未満のマイクロチャネル、たとえば、対応する数のRvTのレベルを測定するために、1、2、または3つのマイクロチャネルを有しうる。
【0139】
サンプルコレクターポート125と廃液ドレイン130との間に、マイクロチャネル120a~dの各々は、反応ゾーン150a~dを含む。
好適には、マイクロチャネル120a~dは、以下に記載のように、サンプルBおよびデバイスに添加された試薬の混合を促進するために、反応ゾーン150a~dにおいてサーペンタイン(serpentine)でありうる。
【0140】
サンプル採取ポート125とその反応ゾーン150a~dとの間に、各マイクロチャネル120a~dは、サンプルBと混合すべく、チャネル120a~dに一連の異なる試薬を導入するために、それぞれの試薬入口ポート140a~dを備える。
マイクロチャネル120a~dおよび入口ポート140a~dは、サンプルおよび試薬のフロー制御に好適なマイクロバルブを備える。
【0141】
各反応ゾーン150a~dでは、各マイクロチャネル120a~dの表面は、サンプルB中の定量される異なるそれぞれ1つのRvTに対するモノクローナル抗体でコーティングされる。
【0142】
各反応ゾーン150a~dに隣接して、デバイス110は、ガラススライド114上に水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)フォトダイオード175a~dを含む。
フォトダイオード175a~dは、第1のコンピューター200に接続された好適なインターフェース120に接続される。
インターフェース120は、フォトダイオード175a~dからシグナルを受信してそうしたシグナルを表すコンピューター可読データを第1のコンピューター200に送信するように配置される。
インターフェース120は、好適なデータケーブルにより、第1のコンピューター200に物理的に接続しうる。
代替的に、インターフェース120は、たとえば、Bluetooth(登録商標)などのいずれかの好適な無線データ転送方法により、第1のコンピューター200に無線で接続しうる。
いくつかの実施形態では、第1のコンピューターは、ハンドヘルドデバイスを含みうる。
【0143】
第1のコンピューター200は、マイクロプロセッサー、メモリー、および記憶デバイスを含み、そして、フォトダイオード175a~dから受信したシグナルを表すデータを、患者のアイデンティティーデータに関連付けてデータをソートすべく、ソフトウェアを実行するように配置される。
第1のコンピューター200がハンドヘルドデバイスである場合、ソフトウェアはアプリケーションでありうる。
【0144】
第1のコンピューター200は、好適なデータ通信チャネル300を介して、リモートの第2のコンピューター400に接続される。
本実施形態では、データ通信チャネル300はインターネットを含むが、他の実施形態では、第1および第2のコンピューター200、400は、ローカルまたはワイドエリアネットワークで相互接続しうる(図示せず)。
第1および第2のコンピューター200、400は、データ通信ケーブルを介して互いに物理的に接続しうるか、またはたとえばIEEE802.11a,b,g,nやBluetooth(登録商標)などの好適な無線データ通信技術を用いて、無線で相互接続しうる。
好適には、第1および第2のコンピューター200、400の各々は、好適なモデムを介してインターネット300に接続される。
【0145】
使用時、血液サンプルBは、たとえば、従来のランセットを用いて、患者から得られる。
サンプルBは、マイクロ流体デバイス110のサンプル入口ポート125に配置される。
サンプルは、毛管作用によりマイクロチャネル120a~dに吸い込まれる。
代替実施形態では、サンプルBは、マイクロポンプを用いてまたは減圧下などでマイクロチャネル120a~dに能動的に吸い込みうる。
【0146】
反応ゾーン150a~dでは、サンプル中のRvTは、マイクロチャネル120a~dの表面にコーティングされた抗体と反応する。
異なるRvTは、各反応ゾーン150a~dでキャプチャーされる。
サンプルBは、好適な時間にわたり、反応ゾーンで抗体と共にインキュベートされる。
次いで、洗浄溶液をマイクロチャネル120a~dに導入して、非結合サンプルを除去する。
マイクロチャネル120a~dから廃棄された物質は、ドレイン130を介してデバイス110から除去される。
【0147】
反応ゾーン150a~dから非結合サンプルを除去した後、それぞれのRvTに対する特異性を有するマイクロチャネル120a~dの各々に第2のモノクローナル抗体を導入する。
第2の抗体の各々は、当業者に周知の方法により、ホースラディッシュペルオキシダーゼでタグ付けされる。
第2のモノクローナル抗体は、反応ゾーン150a~dの表面にキャプチャーされたRvTと共にインキュベート可能である。
次いで、マイクロチャネル120a~dは、再び洗浄される。
【0148】
次いで、入口ポート140a~dを介してホースラディッシュペルオキシダーゼの基質をマイクロチャネル120a~dの各々に導入する。
好適な基質は、当業者に公知であるが、本実施例では、ホースラディッシュペルオキシダーゼを作用させたときに蛍光を発するルミノールを使用する。
蛍光は、インターフェース180により受信されるシグナルを発生する、フォトダイオード175により検出される。
蛍光の強度は、チャネル120a~dの各々において固定化されたRvTに結合される第2の抗体の量の指標となる。
マイクロ流体デバイス110は、マイクロチャネル120a~dの各々のRvTレベルを定量できるように当業者に公知の方法で検量しうる。
【0149】
各マイクロチャネル120a~dの蛍光強度を表すデータは、インターフェース180から、以上に記載の、第1のコンピューター200に送信される。コンピューター200は、上述したソフトウェアを実行して、フォトダイオード175により測定された蛍光強度からサンプルB中の各RvTのレベルを計算する。
【0150】
次いで、マイクロ流体デバイスは、この場合も好適な洗浄剤で洗浄される。
【0151】
以上の実施例2に記載のように、次いで、スタチンを患者Pに投与する。
好適には、スタチンは、その推奨された初回用量または維持用量に準拠して投与される。
スタチンの投与の詳細は以上に記載されるので、ここでは繰り返さない。
【0152】
適切な時間の後(たとえば2~3時間後)、第2のサンプルBを患者Pから得て、以上に記載のものに類似した他のマイクロ流体デバイス110を用いて試験する。
第2のサンプル中のRvTレベルを同じように測定し、レベルを表すデータを計算して第1のコンピューター200により記憶する。
【0153】
次いで、第1および第2のサンプル中のRvTレベルを表すデータを、患者Pを同定する情報に関連付けて第1のコンピューター200により第2のコンピューター400に送信する。
【0154】
第2のコンピューター400は、マイクロプロセッサー、メモリー、および記憶デバイスを含み、第1および第2のサンプル中のRvTレベルの比較を行って第2のサンプル中のRvTレベルが第1のサンプル中のレベルと比較して(生物学的関連量で)増加しているか否かを決定すべくソフトウェアを実行するように配置される。
第2のサンプル中のRvTレベルが第1のサンプルと比べて増加している場合、スタチンは、患者Pにおいて炎症性障害を治療するのに有効であると評価され、このことを示すデータは、第2のコンピューターから第1のコンピューター200に返信され、その保存および/または試験者への表示が行われる。
第1および第2のサンプル中のRvTレベルの比較の結果に基づいて、患者にスタチンを処方しうる。
一方、第2のサンプル中のRvTレベルが第1のサンプル中のレベルと比べて有意に増加していない場合、スタチンは、患者Pにおいて炎症性病態を治療するのに有効でないと評価される。
次いで、たとえば、翌日に異なるスタチンを用いて試験を繰り返しうる。
【0155】
本実施例では、マイクロ流体デバイス110は、非競合ヘテロジニアスELISAサンドイッチイムノアッセイを行うように配置される。
しかしながら、本発明の変形形態では、マイクロ流体デバイスは、ホモジニアスイムノアッセイおよび/または競合イムノアッセイを行うように配置しうる。
【0156】
たとえば、一変形形態では、各マイクロチャネル120a~dは、それぞれの反応ゾーン150a~dで分析されるサンプルB中のものと同一のそれぞれのRvT(すなわち、RvT1、RvT2、RvT3、またはRvT4)を用いて、そのそれぞれの反応ゾーン150a~d内の表面にコーティングを施しうる。
反応ゾーン150a~dとサンプル採取ポート125との間の各マイクロチャネル120a~dでは、サンプルBとそれぞれのRvTに対する既知量の一次抗体とを混合しうる。
一次抗体は過剰に提供され、その後、続いて、残留抗体は、サンプル中の対応するRvTと効果的に競合して、反応ゾーン150a~dの表面結合RvTと反応するであろう。
洗浄後、それぞれの一次抗体に特異的な入口ポート140a~dを介して、標識二次抗を各反応ゾーン150a~dに導入する。
以上に記載したように、二次抗体は、EIAに使用するのに好適な酵素、たとえば、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどでタグ付けされる。
次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼに対する好適な基質を、反応ゾーン150a~dに導入して、以上に記載のように蛍光または色の強度を測定することにより、サンプルとの反応後に残留する二次抗体の量を測定可能である。
【0157】
本発明に係るマイクロ流体デバイス、たとえば、以上に記載のマイクロ流体デバイス110などは、臨床現場即時検査(ポイントオブケア)環境で、たとえば、大きな実験室にのみ見いだされるLC-MS/MSなどのより精巧な装置にアクセスできないヘルスケア診療所などで、本発明の方法を実施するのに便利なデバイスを提供する。
【0158】
実施例4:脂質メディエーターの安定性を向上させる方法
ヒト血清をスナップ凍結して窒素下で貯蔵するか(以下の方法1)またはジュウテリウム標識内部標準を含有するメタノール中に配置するか(方法2)のどちらかを行った。
図11に示されるインターバルで、脂質メディエーターを抽出して、指定の産物の濃度を決定した。次いで、これらと追加の処理を行うことなく、サンプルをスナップ凍結したときの既報の値(参照)とを比較した。結果は、n=1つの実験および3つの決定値の平均であり、図11に例示される。
【0159】
方法1
a)適切な方法に従って血清を調製する。
b)血清を採取して適切な容器に移す。
c)適切な時間にわたりチューブを窒素でパージして血清の上のヘッドスペースの空気を窒素で置き換える。注:この工程は、サンプルを室温超の温度に暴露することなくサンプル採取直後に実施する必要がある。
d)凍結するまで液体窒素中に配置することによりサンプルをただちにスナップ凍結する。
e)チューブを適切な容器に移して-80℃以下で貯蔵する。注:いずれの時点でもサンプルの解凍および再凍結を行なわない。
【0160】
方法2
a)各1mLの血清に対して、メタノールを調製するために、各500pgのジュウテリウム標識内部標準を、4mlの質量分析グレードのメタノールに添加する。
b)使用前少なくとも1時間、-20℃で貯蔵する。
c)適切な方法に従って血清を調製する。
d)血清を採取して、適切な容器に移す。
e)1mLの血清に対してジュウテリウム標識内部標準を含有するメタノール4mLを添加する。
f)サンプルをただちに処理する場合、脂質メディエーター抽出前少なくとも45分間、これらを-20℃で置く。
g)サンプルを貯蔵する場合、これらを-80℃以下で貯蔵する。
【0161】
参照方法
Colas RAら.2014(ibid)。
図1A
図1B
図1C
図1D-1E】
図1F
図2A
図2B
図3A-3D】
図3E
図4A-4D】
図5A-5C】
図6A-6C】
図6D
図7A-7F】
図8
図9
図10
図11