(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】高い熱たわみ温度を有する難燃性ポリアミド組成物およびそれの使用
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20230328BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20230328BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20230328BHJP
C08K 5/5317 20060101ALI20230328BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K7/14
C08K5/5313
C08K5/5317
C08K3/32
(21)【出願番号】P 2020506715
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071447
(87)【国際公開番号】W WO2019030253
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】102017214051.8
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】バウアー・ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】ヘーロルト・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ジッケン・マルティン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-179360(JP,A)
【文献】国際公開第2009/110480(WO,A1)
【文献】特表2014-517102(JP,A)
【文献】特開2017-115101(JP,A)
【文献】特表2001-525327(JP,A)
【文献】特表2017-513817(JP,A)
【文献】特表2006-522842(JP,A)
【文献】特表2017-508832(JP,A)
【文献】特表2016-509114(JP,A)
【文献】特表2013-538926(JP,A)
【文献】特表2020-527622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次を含む、少なくとも280℃の熱たわみ温度HDT-Aを有する難燃性ポリアミド組成物。
- 成分Aとして、290℃以上の融点を有するポリアミド、
- 成分Bとして、フィラーおよび/または強化材、
- 成分Cとして、式(I)のホスフィン酸塩、
【化1】
[式中、R
1およびR
2は、エチルを表し、
Mは、Al、Fe、TiO
pまたはZnであり、
mは、2~3を表し、そして
p=(4-m)/2である]
- 成分Dとして、エチルブチルホスフィン酸の、ジブチルホスフィン酸の、エチルへキシルホスフィン酸の、ブチルへキシルホスフィン酸のおよび/またはジヘキシルホスフィン酸のAl-、Fe-、TiO
p-またはZn塩の群から選択される化合物、および
- 成分Eとして、式(II)のホスホン酸塩、
【化2】
[式中、R
3は、エチルを表し、
Metは、Al、Fe、TiO
qまたはZnであり、
nは、2~3を表し、そして
q=(4-n)/2である]
- 成分Fとしての、無機ホスホネート。
【請求項2】
MおよびMetがAlを表し、mおよびnが3であり、そして成分Dがアルミニウム塩であることを特徴とする、請求項1に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項3】
ポリアミド組成物の全量を基準としたパーセント表示で、
- 成分Aの割合が25~95重量%であり、
- 成分Bの割合が1~45重量%であり、
- 成分Cの割合が1~35重量%であり、
- 成分Dの割合が0.01~3重量%であり、そして
- 成分Eの割合が0.001~1重量%である、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項4】
成分Aの割合が25~75重量%であ
ることを特徴とする、請求項3に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項5】
成分Bの割合が20~40重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項6】
成分Cの割合が5~20重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項7】
成分Dの割合が0.05~1.5重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項8】
成分Eの割合が0.01~0.6重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項9】
前記無機ホスホネートが式(III)
【化3】
[式中、Meは、Fe、TiO
r、Zn、また
はAlであり、
oは、2~3を表し、そして
r=(4-o)/2である]
の化合物であり、当該式(III)の化合物の量が、ポリアミド組成物の全量を基準として、0.005~10重量
%であることを特徴とする、請求項
1~8のいずれか一つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項10】
国際電気標準会議規格IEC-60112/3に従って測定された500ボルト以上の比較トラッキング指数を有することを特徴とする、請求項1~
9のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項11】
3.2mm~0.4mmの厚さでUL-94に従ってV0の評価を達成することを特徴とする、請求項1~
10のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項12】
0.75~3mmの厚さでIEC-60695-2-12に従って少なくとも960℃のグローワイヤ燃焼性指数を有することを特徴とする、請求項1~
11のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項13】
少なくとも300℃の、DIN EN ISO75-3に従うHDT-Aを有することを特徴とする、請求項1~
12のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項14】
成分Aが、芳香族もしくは半芳香族ポリアミドであるか、または複数種の芳香族もしくは半芳香族ポリアミドの混合物であるか、またはポリアミド6,6と一種以上の芳香族もしくは半芳香族ポリアミドとの混合物であることを特徴とする、請求項1~
13のいずれか一つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項15】
成分Aが、芳香族もしくは半芳香族ポリアミドであるか、または複数種の芳香族もしくは半芳香族ポリアミドの混合物であることを特徴とする、請求項
14に記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項16】
成分Bとしてガラス繊維が使用されることを特徴とする、請求項1~
15のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項17】
成分Gとしてさらに別の添加剤を含み、前記のさらに別の添加剤が、酸化防止剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、酸化防止剤のための共安定剤、帯電防止剤、乳化剤、成核剤、軟化剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、染料、顔料、および/または成分C、D、EおよびFとは異なるさらに別の難燃剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~
16のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
【請求項18】
繊維、フィルムおよび成形
品の製造のための、請求項1~
17のいずれか1つに記載のポリアミド組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱たわみ温度(HDT)を特徴とする、難燃性ポリアミド組成物、並びにそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性プラスチックは、通常、プラスチック加工業者および一部の場合には立法者から求められる高い難燃性要件を達成できるためには、難燃剤とともに仕上げなければならない。好ましくは、 -エコロジーの理由からも- わずかな煙道ガスしか生じないか、または煙道ガスを生じない、非ハロゲン系難燃剤系が使用される。
【0003】
これらの難燃剤では、ホスフィン酸の塩(ホスフィネート)が特に熱可塑性ポリマーに対して有効であることがわかっている(DE2252258A(特許文献1)およびDE2447727A(特許文献2))。
【0004】
さらに、多数のポリマーにおいて、難燃剤としてホスフィネート単独よりも有効に作用する、ホスフィネートと特定の窒素含有化合物との相乗的な組み合わせが既知である(WO-2002/28953A1(特許文献3)ならびにDE19734437A1(特許文献4)およびDE19737727A1(特許文献5))。
【0005】
US7,420,007B2(特許文献6)から、少量の選択されたテロマーを含有するジアルキルホスフィネートがポリマー用の難燃剤として適していることが知られており、前記ポリマーは、当該難燃剤のポリマーマトリックスへの組み入れにおいて、非常にわずかな分解しか受けない。
【0006】
国際規格に従うプラスチックの十分な難燃性を確保するために、難燃剤は多くの場合に、高い用量で添加されなければならない。高温での難燃作用のために必要なそれらの化学的反応性のために、難燃剤は、特に比較的高量の場合に、プラスチックの加工安定性を損ない得る。ポリマー分解の増加、架橋反応、脱ガスまたは変色が起こり得る。
【0007】
WO2014/135256A1(特許文献7)から、熱安定性が大幅に改善され、マイグレーション傾向が低下し、そして良好な電気的および機械的特性を有するポリアミド成形材料が既知である。
【0008】
しかし、良好な電気的値、際だった熱たわみ温度ならびに効果的な難燃性などの全ての要求される特性を同時に達成する、難燃性ホスフィネート含有ポリアミド組成物はこれまで存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】DE2252258A
【文献】DE2447727A
【文献】WO-2002/28953A1
【文献】DE19734437A1
【文献】DE19737727A1
【文献】US7,420,007B2
【文献】WO2014/135256A1
【文献】WO2012/045414A1
【文献】US7,420,007B2
【文献】WO2016/065971A1
【文献】DE19607635A1
【文献】DE102011120218A1
【非特許文献】
【0010】
【文献】Hans Domininghausの「Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften(プラスチックおよびそれらの特性)」第5版(1998)第14頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、上記の全ての性質を同時に有し、特に良好な電気的値(GWFIおよびCTI)、優れた熱たわみ温度(HDT-A)、ならびにできるだけ短い残炎時間(UL-94、時間)を特徴とする効果的な難燃性を有する、ホスフィネート含有難燃剤系をベースとする難燃性ポリアミド組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、次を含む、少なくとも280℃の熱たわみ温度HDT-Aを有する難燃性ポリアミド組成物である。
- 成分Aとして、290℃以上の、好ましくは290℃以上の、特に好ましくは300℃以上の融点を有するポリアミド、
- 成分Bとして、フィラーおよび/または強化材、好ましくはガラス繊維、
- 成分Cとして、式(I)のホスフィン酸塩、
【0013】
【0014】
[式中、R1およびR2は、エチルを表し、
Mは、Al、Fe、TiOpまたはZnであり、
mは、2~3、好ましくは2または3を表し、そして
p=(4-m)/2である]
- 成分Dとして、エチルブチルホスフィン酸の、ジブチルホスフィン酸の、エチルへキシルホスフィン酸の、ブチルへキシルホスフィン酸のおよび/またはジヘキシルホスフィン酸のAl-、Fe-、TiOp-またはZn塩の群から選択される化合物、および
- 成分Eとして、式(II)のホスホン酸塩、
【0015】
【0016】
[式中、R3は、エチルを表し、
Metは、Al、Fe、TiOqまたはZnであり、
nは、2~3、好ましくは2または3を表し、そして
q=(4-n)/2である]
本発明のポリアミド組成物において、成分Aの割合は、通常25~95重量%であり、好ましくは25~75重量%である。
【0017】
本発明のポリアミド組成物において、成分Bの割合は、通常1~45重量%であり、好ましくは20~40重量%である。
【0018】
本発明のポリアミド組成物において、成分Cの割合は、通常1~35重量%であり、好ましくは5~20重量%である。
【0019】
本発明のポリアミド組成物において、成分Dの割合は、通常0.01~3重量%であり、好ましくは0.05~1.5重量%である。
【0020】
本発明のポリアミド組成物において、成分Eの割合は、通常0.001~1重量%であり、好ましくは0.01~0.6重量%である。
【0021】
ここで、成分A~Fの割合に関するパーセント表示は、ポリアミド組成物の全量を基準とする。
【0022】
ポリアミド組成物の全量を基準としたパーセント表示として、
- 成分Aの割合が25~95重量%であり、
- 成分Bの割合が1~45重量%であり、
- 成分Cの割合が1~35重量%であり、
- 成分Dの割合が0.01~3重量%であり、そして
- 成分Eの割合が0.001~1重量%である、
難燃性ポリアミド組成物が好ましい。
【0023】
- 成分Aの割合が25~75重量%であり、
- 成分Bの割合が20~40重量%であり、
- 成分Cの割合が5~20重量%であり、
- 成分Dの割合が0.05~1.5重量%であり、そして
- 成分Eの割合が0.01~0.6重量%である、
難燃性ポリアミド組成物が特に好ましい。
【0024】
成分Cの好ましく使用される塩は、Mm+がZn2+、Fe3+または特にAl3+を表す塩である。
【0025】
成分Dの好ましく使用される塩は、亜鉛-、鉄-または特にアルミニウム塩である。
【0026】
成分Eの好ましく使用される塩は、Metn+がZn2+、Fe3+または特にAl3+を表す塩である。
【0027】
MおよびMetがAlを表し、mおよびnが3であり、そして成分Dの化合物がアルミニウム塩として存在する難燃性ポリアミド組成物が、特に非常に好ましい。
【0028】
好ましい実施態様において、上述の難燃性ポリアミド組成物は、さらに別の成分Fとして無機ホスホネートを含む。
【0029】
本発明において成分Fとして使用される無機ホスホネートまたはさらに亜リン酸の塩(ホスファイト)の、難燃剤としての使用は既知である。例えば、WO2012/045414A1(特許文献8)は、ホスフィン酸塩の他に亜リン酸の塩(=ホスファイト)も含有する難燃剤組み合わせ物を開示している。
【0030】
好ましくは、前記無機ホスホネート(成分F)は、一般式(IV)または(V)に相当する。
【0031】
[(HO)PO2]2-
p/2 Katp+ (IV)
[(HO)2PO]-
p Katp+ (V)
[式中、Katは、p価のカチオン、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムカチオン、および/またはFe、Znのカチオン、または特にAlのカチオン(カチオンAl(OH)またはAl(OH)2を含めて)であり、そしてpは、1、2、3または4を表す]
好ましくは、前記の無機ホスホネート(成分F)は、アルミニウムホスファイト[Al(H2PO3)3]、2級アルミニウムホスファイト[Al2(HPO3)3]、塩基性アルミニウムホスファイト[Al(OH)(H2PO3)2
*2aq]、アルミニウムホスファイト四水和物[Al2(HPO3)3
*4aq]、アルミニウムホスホネート、Al7(HPO3)9(OH)6(1,6-ヘキサンジアミン)1.5
*12H2O、Al2(HPO3)3*xAl2O3
*nH2O(x=2.27~1)および/またはAl4H6P16O18である。
【0032】
前記無機ホスホネート(成分F)は、好ましくはまた、式(VI)、(VII)および/または(VIII)のアルミニウムホスファイト、
Al2(HPO3)3x(H2O)q (VI)
[式中、qは0~4を意味する]
Al2.00Mz(HPO3)y(OH)vx(H2O)w (VII)
[式中、Mはアルカリ金属カチオンを表し、zは0.01~1.5、yは2.63~3.5、vは0~2、そしてwは0~4を表す]
Al2.00(HPO3)u(H2PO3)tx(H2O)s (VIII)
[式中、uは2~2.99、tは2~0.01、そしてsは0~4を意味する]
および/または
アルミニウムホスファイト[Al(H2PO3)3]、2級アルミニウムホスファイト[Al2(HPO3)3]、塩基性アルミニウムホスファイト[Al(OH)(H2PO3)2
*2aq]、アルミニウムホスファイト四水和物[Al2(HPO3)3
*4aq]、アルミニウムホスホネート、Al7(HPO3)9(OH)6(1,6-ヘキサンジアミン)1.5
*12H2O、Al2(HPO3)3*xAl2O3
*nH2O(x=2.27~1)および/またはAl4H6P16O18である。
【0033】
好ましい無機ホスホネート(成分F)は、水に不溶性または難溶性の塩である。
【0034】
特に好ましい無機ホスホネートは、アルミニウム-、カルシウム-および亜鉛塩である。
【0035】
特に好ましくは、成分Fは、亜リン酸およびアルミニウム化合物からの反応生成物である。
【0036】
特に好ましい成分Fは、CAS番号15099-32-8、119103-85-4、220689-59-8、56287-23-1、156024-71-4、71449-76-8および15099-32-8のアルミニウムホスファイト類である。
【0037】
好ましく使用されるアルミニウムホスファイトの製造は、最大4日の期間、20~200℃で溶媒においてアルミニウム源とリン源および任意選択的にテンプレートを反応させることにより行われる。このためには、アルミニウム源およびリン源を1~4時間混合し、水熱条件または還流下に加熱し、濾別し、洗浄し、そして例えば110℃で乾燥する。
【0038】
好ましいアルミニウム源は、アルミニウムイソプロポキシド、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよび水酸化アルミニウム(例えば擬ベーマイト)である。
【0039】
好ましいリン源は、亜リン酸、(酸性)亜リン酸アンモニウム、アルカリ金属ホスファイトまたはアルカリ土類金属ホスファイトである。
【0040】
好ましいアルカリ金属ホスファイトは、亜リン酸二ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム水和物、亜リン酸三ナトリウム、亜リン酸水素カリウムである。
【0041】
好ましい亜リン酸二ナトリウム水和物は、Brueggemann社のBrueggolen(登録商標)H10である。
【0042】
好ましいテンプレートは、1,6-ヘキサンジアミン、グアニジンカーボネートまたはアンモニアである。
【0043】
好ましいアルカリ土類金属ホスファイトは亜リン酸カルシウムである。
【0044】
ここで、アルミニウムとリンと溶媒との好ましい比は、1:1:3.7~1:2.2:100molである。アルミニウムとテンプレートとの比は、1:0~1:17molである。反応溶液の好ましいpH値は、3~9である。好ましい溶媒は水である。
【0045】
特に好ましくは、前記使用において、亜リン酸塩の場合と同じホスフィン酸の塩、すなわち例えばジエチルホスフィン酸アルミニウムが、亜リン酸アルミニウムと一緒に、またはジエチルホスフィン酸亜鉛が亜リン酸亜鉛と一緒に使用される。
【0046】
好ましい実施態様において、上記の難燃性ポリエステル組成物は、成分Fとして、式(III)の化合物を含む。
【0047】
【0048】
[式中、Meは、Fe、TiOr、Zn、または特にAlであり、
oは、2~3、好ましくは2または3を表し、そして
r=(4-o)/2である]
式(III)の好ましく使用される化合物は、Meo+がZn2+、Fe3+または特にAl3+を表す化合物である。
【0049】
成分Fは、ポリアミド組成物の全量を基準として、好ましくは0.005~10重量%、特に0.02~5重量%の量で存在する。
【0050】
本発明による難燃性ポリアミド組成物は、少なくとも280℃、好ましくは少なくとも290℃、特に好ましくは少なくとも300℃の、DIN EN ISO75-3による高い熱たわみ温度を有する。
【0051】
国際電気標準会議規格IEC-60112/3に従って測定された500ボルト以上の比較トラッキング指数を有する本発明の難燃性ポリアミド組成物が好ましい。
【0052】
同様に、好ましい本発明の難燃性ポリアミド組成物は、特に3.2mm~0.4mmの厚さの成形品で測定して、UL-94によるV0の評価を達成する。
【0053】
さらなる好ましい本発明の難燃性ポリアミド組成物は、特に0.75~3mmの厚さの成形品で測定して、少なくとも960℃のIEC-60695-2-12に従うグローワイヤ燃焼性指数を有する。
【0054】
本発明のポリアミド組成物は、成分Aとして、290℃以上の融点を有する1種以上の熱可塑性ポリアミドを含む。ここで、融点は、示差走査熱分析(DSC)を用いて10K/秒の加熱速度で測定される。
【0055】
熱可塑性ポリアミド類は、Hans Domininghausの「Die Kunststoffe und ihre Eigenschaften(プラスチックおよびそれらの特性)」第5版(1998)第14頁(非特許文献1)に基づき、その分子鎖が、側鎖を有しないか、または多かれ少なかれ或る長さの、種々の数の側鎖を有し、加熱すると軟化し、ほぼ任意に成形可能なポリアミドと理解される。
【0056】
本発明により好ましいポリアミドは、様々な方法に従い製造することができ、および非常に様々な構成要素から合成でき、そして特殊な用途の場合は、単独でまたは加工助剤、安定剤もしくはポリマーアロイパートナー、好ましくはエラストマーとの組み合わせで、特別に調節された特性の組み合わせを持つ原材料に加工できる。他のポリマー、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ABSを含むブレンドも適しており、この際、場合により、一種以上の相溶剤を使用できる。ポリアミドの特性は、特にこれが強化されたポリアミドの場合には、エラストマーの添加によって例えば衝撃靱性に関して向上できる。組み合わせの可能性が多数あるということは、様々な特性を持つ非常に多数の製品を可能にする。
【0057】
ポリアミドの製造のためには多数の方法が知られており、それらでは、所望の最終生成物に応じて、種々のモノマー構成単位、標的の分子量の調節のための種々の鎖調整剤、または後続の意図された後処理のための反応性基を有するモノマーも使用される。
【0058】
ポリアミド類の製造のための工業的に重要な方法は、大抵、溶融物での重縮合を通して進行する。この枠において、ラクタム類の加水分解重合もまた、重縮合として理解される。
【0059】
好ましくは、成分Aとして使用するべきポリアミドは、部分結晶性で芳香族もしくは半芳香族ポリアミドであり、これは、ジアミンおよびジカルボン酸および/または少なくとも5つの環員を有するラクタム類または対応するアミノ酸から出発して製造できる。
【0060】
原料としては、主に芳香族のジカルボン酸、好ましくはイソフタル酸および/またはテレフタル酸またはそれのポリアミド形成性誘導体、例えば塩が考慮され、これらは、単独でまたは脂肪族ジカルボン酸もしくはそれのポリアミド形成性誘導体、好ましくはアジピン酸、2,2,4-および2,4,4-トリメチルアジピン酸、アゼライン酸および/またはセバシン酸と組み合わせて、脂肪族および/または芳香族ジアミン、好ましくはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、異性体のジアミノジシクロヘキシルメタン類、ジアミノジシクロヘキシルプロパン類、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン類、フェニレンジアミン類および/またはキシリレンジアミン類と、および/あるいはアミノカルボン酸類、好ましくはアミノカプロン酸または対応するラクタム類と一緒に使用される。複数の上記モノマーからのコポリアミドが含まれる。
【0061】
さらに、特に適したものは、芳香族および半芳香族ポリアミド、すなわち繰り返し単位の少なくとも一部が芳香族構造単位から構成される化合物である。これらのポリマーは、成形材料のまたはそれから製造される成形品の熱たわみ温度が少なくとも290℃に達する場合には、場合によっては、比較的少ない量の、例えばポリアミドの量を基準にして20重量%までの脂肪族ポリアミド、特にPA6および/またはPA6,6と組み合わせて使用できる。
【0062】
キシリレンジアミンおよびアジピン酸を原料とした芳香族ポリアミド; あるいはヘキサメチレンジアミンとイソ-および/またはテレフタル酸、場合によってはおよび調節剤としてのエラストマーから製造したポリアミド、例えばポリ-2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-テレフタルアミドまたはポリ-m-フェニレンイソフタルアミド、上記のポリアミドとポリオレフィン、オレフィン-コポリマー、アイオノマーまたは化学結合もしくはグラフトしたエラストマーとのまたはポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラメチレングリコールとのブロックコポリマーが特に適している。さらには、EPDMまたはABSで修飾されたポリアミドまたはコポリアミド、および加工中に縮合させたポリアミド(「RIM-ポリアミド系」)。
【0063】
好ましい実施形態の一つでは、成分Aは、芳香族もしくは半芳香族ポリアミド、または複数種の芳香族もしくは半芳香族ポリアミドの混合物、またはポリアミド6,6と一種以上の芳香族もしくは半芳香族ポリアミドとの混合物である。
【0064】
好ましい実施形態の一つにおいて熱可塑性ポリアミドの他に追加的に使用されるポリマーには、通常の添加剤、特に離型剤、安定剤および/または流動助剤を、溶融物中に混合できるまたはその表面上に施与できる。成分Aの熱可塑性ポリアミドのための原料は、例えば石油化学原料から合成できる、および/または化学的もしくは生化学的プロセスを介して再生可能原料に由来し得る。
【0065】
成分Bとしては、フィラーおよび/または好ましくは強化材、好ましくはガラス繊維が使用される。2種以上の異なるフィラーおよび/または強化材の混合物もまた使用できる。
【0066】
好ましいフィラーは、タルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、非晶質シリカ、ナノスケール鉱物、特に好ましくはモンモリロナイトまたはナノベーマイト、炭酸マグネシウム、白亜、長石、ガラス球および/または硫酸バリウムをベースとする鉱物性粒子状フィラーである。特に好ましくは、鉱物性粒子状フィラーは、タルク、珪灰石および/またはカオリンをベースとする。
【0067】
さらに、特に好ましくは、針状鉱物性フィラーも使用される。針状鉱物性フィラーは、本発明において、非常に顕著な針状特性を有する鉱物性のフィラーと理解される。針状珪灰石が好ましい。好ましくは、上記の鉱物は、2:1~35:1、特に好ましくは3:1~19:1、殊に好ましくは4:1~12:1の長さと直径の比を有する。本発明において成分Bとして使用される針状鉱物系フィラーの平均粒度は、CILAS粒度計で測定された場合に、好ましくは20μm未満、特に好ましくは15μm未満、殊に好ましくは10μm未満である。
【0068】
本発明で好ましく使用される成分Bは、強化材である。ここで、例えば、炭素繊維および/またはガラス繊維をベースとする強化材を挙げることができる。
【0069】
前記フィラーおよび/または強化材は、好ましい実施態様において、表面変性されていてもよく、好ましくは接着促進剤または接着促進剤系(特に好ましくはシランベースの)を用いて表面変性されていてもよい。特にガラス繊維を使用する場合、シラン類に加えて、ポリマー分散体、皮膜形成剤、分岐剤および/またはガラス繊維加工助剤も使用することができる。
【0070】
本発明において成分Bとして好ましく使用されるガラス繊維は、ガラス短繊維および/またはガラス長繊維であってもよい。ガラス短繊維またはガラス長繊維としては、チョップド・ファイバーを使用することができる。ガラス短繊維は粉砕したガラス繊維の形態でも使用できる。その他に、ガラス繊維はさらに、連続繊維の形態で、例えばロービング、モノフィラメント、フィラメントヤーンまたは撚糸の形態で使用することができ、あるいはガラス繊維は、テクスタイル製平坦形成物形態で、例えばガラスクロスとして、ガラス編物としてまたはガラスマットとして使用することができる。
【0071】
ポリアミドマトリックスへ組み入れる前のガラス短繊維の典型的な繊維長は、0.05~10mm、好ましくは0.1~5mmの範囲である。ポリアミドマトリックスへの組み入れ後、ガラス繊維の長さは減少する。ポリアミドマトリックスへの組み入れ後のガラス短繊維の典型的な繊維長は、0.01~2mm、好ましくは0.02~1mmの範囲である。
【0072】
個々の繊維の直径は、広い範囲で変動する。個々の繊維の典型的な直径は、5~20μmの範囲で変動する。
【0073】
前記ガラス繊維は、任意の断面形状、例えば、円形、楕円形、n角形のまたは不規則な断面を有することができる。単葉または複葉(mono- oder multilobalen)断面を有するガラス繊維を使用してもよい。
【0074】
ガラス繊維は、連続繊維として、または切断されたもしくは粉砕されたガラス繊維として使用してもよい。
【0075】
ガラス繊維自体は、それらの断面積および長さにかかわらず、例えば、E-ガラス繊維、A-ガラス繊維、C-ガラス繊維、D-ガラス繊維、M-ガラス繊維、S-ガラス繊維、R-ガラス繊維および/またはECRガラス繊維の群から選択することができ、E-ガラス繊維、R-ガラス繊維、S-ガラス繊維およびECRガラス繊維が特に好ましい。前記ガラス繊維には、造膜剤としてポリウレタンを、接着促進剤としてアミノシランを好ましくは含有するサイズ剤が供される。
【0076】
特に好ましく使用されるE-ガラス繊維は、以下の化学組成を有する:SiO2 50~56%;Al2O3 12~16%;CaO 16~25%;MgO≦6%;B2O3 6~13%;F≦0.7%;Na2O 0.3~2%;K2O 0.2~0.5%;Fe2O3 0.3%。
【0077】
特に好ましく使用されるR-ガラス繊維は、以下の化学組成を有する:SiO2 50~65%;Al2O3 20~30%;CaO 6~16%;MgO 5~20%;Na2O 0.3~0.5%;K2O 0.05~0.2%;Fe2O3 0.2~0.4%,TiO2 0.1~0.3%。
【0078】
特に好ましく使用されるECR-ガラス繊維は、以下の化学組成を有する:SiO2 57.5~58.5%;Al2O3 17.5~19.0%;CaO 11.5~13.0%;MgO 9.5~11.5。
【0079】
本発明において成分Cとして使用されるジエチルホスフィン酸の塩は、ポリマー成形材料用の既知の難燃剤である。
【0080】
本発明において成分DおよびEとして使用されるホスフィン酸-およびホスホン酸塩を含むジエチルホスフィン酸の塩もまた、既知の難燃剤である。これらの物質の組み合わせの製造は、例えばUS7,420,007B2(特許文献9)に記載されている。
【0081】
本発明に従い使用される、成分Cのジエチルホスフィン酸の塩は、少量の成分Dの塩および成分Eの塩を含むことができ、例えば、成分C、DおよびEの量を基準にして、10重量%までの成分D、好ましくは0.01~6重量%、特に0.2~2.5重量%の成分D、および10重量%までの成分E、好ましくは0.01~6重量%、特に0.2~2.5重量%の成分Eを含むことができる。
【0082】
本発明において成分Eとして使用されるエチルホスホン酸の塩は、例えばWO2016/065971A1(特許文献10)から、ポリマー成形材料用難燃剤におけるジエチルホスフィネートへの添加剤として同様に既知である。
【0083】
さらなる好ましい実施態様において、成分C、DおよびEは、メジアン粒径(d50)が1~100μmである粒子状形態で存在する。
【0084】
本発明によるポリアミド組成物は、成分Gとしてさらに別の添加剤を含有することができる。本発明の意味において、好ましい成分Gは、酸化防止剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、酸化防止剤のための共安定剤、帯電防止剤、乳化剤、成核剤、軟化剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、染料、顔料、および/または成分C、D、EおよびFとは異なるさらに別の難燃剤である。
【0085】
前記のさらに別の添加剤は、それ自体、ポリアミド組成物への添加剤として知られており、単独でまたは混合物でまたはマスターバッチの形態で使用することができる。
【0086】
前述の成分A、B、C、D、Eおよび任意選択的にFおよび/またはGは、多種多様に組合せて、本発明による難燃性ポリアミド組成物を調製することができる。例えば、重縮合の開始時に既にまたは終了時に、または後続のコンパウンディングプロセスにおいて、前記成分をポリアミド溶融物中に混合することが可能である。さらに、個々の成分をさらに後になってから添加する加工プロセスがある。これは特に、顔料-または添加剤マスターバッチの使用の場合に実施される。さらに、特に粉末状の成分を、乾燥プロセスを経て任意選択的に加温されたポリマーペレットに、ドラムを使用して組み入れることも可能である。
【0087】
本発明のポリアミド組成物の2種以上の成分は、ポリアミドマトリックス中に組み入れる前に混合により組み合わせることもできる。その際、従来の混合装置を使用することができ、前記成分を適当なミキサー内で、例えば0~300℃で0.01~10時間混合する。
【0088】
本発明のポリアミド組成物の成分の2種以上から、粒状物もまた製造することができ、これは引き続きポリアミドマトリックスに組み入れることができる。
【0089】
このために、本発明のポリアミド組成物の2種以上の成分を、粒状化助剤および/またはバインダーを用いて、適切なミキサーまたはパン型造粒機(Granulierteller)中で処理して、粒状物とすることができる。
【0090】
最初に形成された粗製生成物は、適切な乾燥機中で乾燥させるか、または熱処理によって他の粒子構造としてもよい。
【0091】
一実施形態では、本発明によるポリアミド組成物またはその2つ以上の成分は、ロール圧縮によって製造することができる。
【0092】
一実施形態では、本発明によるポリアミド組成物またはその2以上の成分は、構成成分を混合し、押出し、細かく砕き(あるいは任意選択的に粉砕し、分粒し)、そして乾燥する(および任意選択的にコーティングする)ことにより、製造することができる。
【0093】
一実施態様において、本発明のポリアミド組成物またはその2以上の成分は、噴霧造粒によって製造することができる。
【0094】
本発明の難燃性ポリマー成形材料は、好ましくは粒状物形態で、例えば押出物としてまたはコンパウンドとして、存在する。前記粒状物は、好ましくは、円形の、楕円形のまたは不規則な底面を有する筒形状、球状、クッション形状、立方体形状、直方体形状、プリズム形状を有する。
【0095】
粒状物の典型的な長さ対直径比は、1:50~50:1、好ましくは1:5~5:1である。
【0096】
前記粒状物は、好ましくは0.5~15mm、特に好ましくは2~3mmの直径、および好ましくは0.5~15mm、特に好ましくは2~5mmの長さを有する。
【0097】
本発明の対象はまた、成分A、B、C、DおよびEおよび任意選択的に成分Fおよび/またはGを含む、上記の難燃性ポリアミド組成物から製造される成形品に関する。
【0098】
本発明の成形品は、任意の形態であることができる。これらの例は、本発明による難燃性ポリアミド成形材料から任意の成形方法、特に射出成形または押出成形により得ることができる繊維、フィルムまたは成形品である。
【0099】
本発明による難燃性ポリアミド成形品の製造は、任意の成形方法によって行うことができる。これらの例としては、前記の難燃性ポリアミド成形材料を用いた、より高い温度での、射出成形、圧縮、射出発泡成形、ガスアシスト射出成形、ブロー成形、フィルム成形、カレンダー成形、ラミネート加工またはコーティングが挙げられる。
【0100】
前記の成形品は、好ましくは、射出成形品または押出成形品である。
【0101】
本発明による難燃性ポリアミド組成物は、繊維、フィルムおよび成形品の製造、特に電気-および電子分野における用途のための繊維、フィルムおよび成形品の製造に適している。
【0102】
本発明は、好ましくは、プラグコネクタ、電力分配装置における電流接触部品(漏電遮断)、印刷回路基板、密封材、パワープラグ、回路遮断器、ランプハウジング、LEDハウジング、コンデンサハウジング; 回路基板中もしくは上のコイル部品およびベンチレータ、接地線、プラグ;プラグ用、ケーブル用、フレキシブル印刷回路基板用、携帯電話充電用ケーブル用のハウジング、エンジンカバー、またはテクスタイルコーティング中におけるまたはこれらのための、本発明による難燃性ポリアミド組成物の使用に関する。
【0103】
本発明は同様に、好ましくは、電気/電子分野用、特に印刷回路基板、ハウジング、フィルム、ケーブル、スイッチ、分配器、リレー、抵抗器、コンデンサー、コイル、ランプ、ダイオード、LED、トランジスタ、コネクタ、調整器、メモリおよびセンサの部品用の構成要素の形態にある、大表面積の構成要素の形態、特に制御キャビネット用のハウジング部品の形態にある、ならびに精巧な幾何学的形状を有する複雑に形成された構成要素の形態にある成形品の製造のための、本発明による難燃性ポリアミド組成物の使用に関する。
【0104】
本発明の成形品の壁厚は、典型的には最大で10mmであることができる。1.5mm未満の壁厚、より好ましくは1mm未満の壁厚、特に好ましくは0.5mm未満の壁厚を有する成形品が特に好適である。
【0105】
以下の例により本発明を説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0106】
1.使用した成分
市販のポリアミド(成分A):
ポリアミド6T/6,6(310~320℃の溶融範囲):Vestamid(登録商標)HAT plus 1000(Evonik)
ポリアミド6T/6I(非晶質):Grivory(登録商標)G21,(EMS)
ガラス繊維(成分B):
ガラス繊維PPG HP3610 10μm直径、4.5mmの長さ(PPG社,NL)
難燃剤FM1(成分C、DおよびE):
US7,420,007B2(特許文献9)の例3に従って製造された、0.9mol%のエチルブチルホスフィン酸アルミニウムおよび0.5mol%のエチルホスホン酸アルミニウムを含有するジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
難燃剤FM2(成分C、DおよびE):
US7,420,007B2(特許文献9)の例4に従って製造された、2.7mol%のエチルブチルホスフィン酸アルミニウムおよび0.8mol%のエチルホスホン酸アルミニウムを含有するジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
難燃剤FM3(成分C、DおよびE):
US7,420,007B2(特許文献9)による方法に従って製造された、0.5mol%のエチルブチルホスフィン酸アルミニウムおよび0.05mol%のエチルホスホン酸アルミニウムを含有するジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
難燃剤FM4(成分C、DおよびE):
US7,420,007B2(特許文献9)による方法に従って製造された、10mol%のエチルブチルホスフィン酸アルミニウムおよび5mol%のエチルホスホン酸アルミニウムを含有するジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
難燃剤FM5(成分C):
DE19607635A1(特許文献11)の例1に類似して製造されたジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
難燃剤FM6(成分CおよびE):
8.8mol%のエチルホスホン酸アルミニウムを含有するジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
難燃剤FM7(成分F):
DE102011120218A1(特許文献12)の例1に従って製造されたホスホン酸のアルミニウム塩
2.難燃性ポリアミド成形材料の製造、加工および試験
難燃剤成分を表に記載される比で互いに混合し、二軸スクリュー押出機(Leistritz ZSE 27/44D型)のサイドフィーダーを介して、310~330℃の温度で練り込んだ。ガラス繊維は、第2のサイドフィーダーを介して添加した。均質化したポリマーストランドを引き取り、水浴で冷却し、引き続き造粒した。
【0107】
十分に乾燥した後、成形材料を射出成形機(タイプArburg 320C Allrounder)で、300~320℃の材料温度で試験片に加工し、そしてUL94試験(Underwriter Laboratories)に基づいて難燃性について試験、分類した。分類に加えて、残炎時間も示した。
【0108】
成形品の比較トラッキング指数は、国際電気標準会議規格IEC-60112/3に従って決定した。
【0109】
グローワイヤ燃焼性指数(GWIT-Index)は、IEC-60695-2-12規格に従って決定した。
【0110】
熱たわみ温度(HDT)は、DIN EN ISO75-3に従って求めた。
【0111】
HDTの測定のためには、長方形の断面を有する標準試験片を、一定の荷重下に三点曲げに付す。この際、試験片の高さに応じて、1.80(方法A)、0.45(方法B)または8.00N/mm2(方法C)のいわゆるエッジ繊維張力(Randfaserspannung)σfを達成するために、分銅および/またはバネによって力をかける。次いで、荷重された試料を、120K/h(または50K/h)の一定の加熱速度での加熱に付す。この際、試料のたわみが0.2%のエッジ繊維延びを達成した時に、対応する温度がHDT値に相当する。
【0112】
各シリーズの全ての試験は、別段の記載がない限り、比較可能性のために、同一条件(例えば、温度プログラム、スクリュー形状および射出パラメーター)下で行った。
【0113】
PA6,6を用いた例1~5および比較例V1~V3
PA6T/6,6成形材料を用いた試験の結果を、以下の表に示した例中に列挙する。全ての量は重量%として表し、難燃剤および強化材を含めたポリアミド成形材料を基準とする。
【0114】
【0115】
例1~5の本発明によるポリアミド組成物は、0.4mmで燃焼性等級UL94 V-0を達成し、同時にCTI600ボルト、GWFI960℃およびHDT-A295℃を示す成形材料である。例5における成分Fの添加は、短縮された残炎時間によって示される難燃性のさらなる改善をもたらす。
【0116】
比較例V1における成分Dの省略は、残炎時間の延長に加え、例1~4と比較してCTI値、GWFI値およびHDT/A値の低下という結果をもたらした。
【0117】
比較例V2では、成分CおよびEの濃度を高めることによって、例V2と比較して確かに残炎時間の改善が達成された。しかし、このポリアミド組成物は、なおも、例2と比べて低められたGWFI値を示した。
【0118】
比較例V3における成分DおよびEの省略は、残炎時間の延長に加え、例1~4と比較してCTI値、GWFI値およびHDT/A値の低下という結果をもたらした。
【0119】
PA6T/6Iを用いた例6~107~10および比較例V4~V6
PA6T/6I成形材料を用いた試験の結果を、以下の表に示した例中に列挙する。全ての量は重量%として表し、難燃剤および強化材を含めたポリアミド成形材料を基準とする。
【0120】
【0121】
例6~10の本発明によるポリアミド組成物は、0.4mmで燃焼性等級UL94 V-0を達成し、同時にCTI600ボルト、GWFI960℃およびHDT-A305℃を示す成形材料である。例10における成分Fの添加は、短縮された残炎時間によって示される難燃性のさらなる改善をもたらす。
【0122】
比較例V4における成分Dの省略は、残炎時間の延長に加え、例6~9と比較してHDT-A値、GWFI値およびCTI値の低下という結果をもたらした。
【0123】
比較例V5では、成分CおよびEの濃度を高めることによって、例V4と比較して確かに残炎時間の改善が達成された。しかし、このポリアミド組成物は、なおも、例7と比べて低められたHDT-A値およびGWFI値を示した。
【0124】
比較例V6における成分DおよびEの省略は、残炎時間の延長に加え、例6~9と比較してHDT-A値、GWFI値およびCTI値の低下という結果をもたらした。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 次を含む、少なくとも280℃の熱たわみ温度HDT-Aを有する難燃性ポリアミド組成物。
- 成分Aとして、290℃以上の融点を有するポリアミド、
- 成分Bとして、フィラーおよび/または強化材、
- 成分Cとして、式(I)のホスフィン酸塩、
【化4】
[式中、R
1
およびR
2
は、エチルを表し、
Mは、Al、Fe、TiO
p
またはZnであり、
mは、2~3を表し、そして
p=(4-m)/2である]
- 成分Dとして、エチルブチルホスフィン酸の、ジブチルホスフィン酸の、エチルへキシルホスフィン酸の、ブチルへキシルホスフィン酸のおよび/またはジヘキシルホスフィン酸のAl-、Fe-、TiO
p
-またはZn塩の群から選択される化合物、および
- 成分Eとして、式(II)のホスホン酸塩、
【化5】
[式中、R
3
は、エチルを表し、
Metは、Al、Fe、TiO
q
またはZnであり、
nは、2~3を表し、そして
q=(4-n)/2である]
2. MおよびMetがAlを表し、mおよびnが3であり、そして成分Dがアルミニウム塩であることを特徴とする、前記1.に記載の難燃性ポリアミド組成物。
3. ポリアミド組成物の全量を基準としたパーセント表示で、
- 成分Aの割合が25~95重量%であり、
- 成分Bの割合が1~45重量%であり、
- 成分Cの割合が1~35重量%であり、
- 成分Dの割合が0.01~3重量%であり、そして
- 成分Eの割合が0.001~1重量%である、
ことを特徴とする、前記1.または2.に記載の難燃性ポリアミド組成物。
4. - 成分Aの割合が25~75重量%であり、
- 成分Bの割合が20~40重量%であり、
- 成分Cの割合が5~20重量%であり、
- 成分Dの割合が0.05~1.5重量%であり、そして
- 成分Eの割合が0.01~0.6重量%である、
ことを特徴とする、前記3.に記載の難燃性ポリアミド組成物。
5. さらなる成分Fとして無機ホスホネートを含むことを特徴とする、前記1.~4.のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
6. 前記無機ホスホネートが式(III)
【化6】
[式中、Meは、Fe、TiO
r
、Zn、または特にAlであり、
oは、2~3を表し、そして
r=(4-o)/2である]
の化合物であり、当該式(III)の化合物の量が、ポリアミド組成物の全量を基準として、0.005~10重量%、特に0.02~5重量%であることを特徴とする、前記5.に記載の難燃性ポリアミド組成物。
7. 国際電気標準会議規格IEC-60112/3に従って測定された500ボルト以上の比較トラッキング指数を有することを特徴とする、前記1.~6.のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
8. 3.2mm~0.4mmの厚さでUL-94に従ってV0の評価を達成することを特徴とする、前記1.~7.のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
9. 0.75~3mmの厚さでIEC-60695-2-12に従って少なくとも960℃のグローワイヤ燃焼性指数を有することを特徴とする、前記1.~8.のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
10. 少なくとも300℃の、DIN EN ISO75-3に従うHDT-Aを有することを特徴とする、前記1.~9.のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
11. 成分Aが、芳香族もしくは半芳香族ポリアミドであるか、または複数種の芳香族もしくは半芳香族ポリアミドの混合物であるか、またはポリアミド6,6と一種以上の芳香族もしくは半芳香族ポリアミドとの混合物であることを特徴とする、前記1.~10.のいずれか一つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
12. 成分Aが、芳香族もしくは半芳香族ポリアミドであるか、または複数種の芳香族もしくは半芳香族ポリアミドの混合物であることを特徴とする、前記11.に記載の難燃性ポリアミド組成物。
13. 成分Bとしてガラス繊維が使用されることを特徴とする、前記1.~12.のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
14. 成分C、D、Eおよび場合によりFが粒子状形態で存在し、これらの成分のメジアン粒径d
50
が1~100μmであることを特徴とする、前記1.~13.のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
15. 成分Gとしてさらに別の添加剤を含み、前記のさらに別の添加剤が、酸化防止剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、酸化防止剤のための共安定剤、帯電防止剤、乳化剤、成核剤、軟化剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、染料、顔料、および/または成分C、D、EおよびFとは異なるさらに別の難燃剤からなる群から選択されることを特徴とする、前記1.~14.のいずれか1つに記載の難燃性ポリアミド組成物。
16. 繊維、フィルムおよび成形品、特に電気-および電子分野における使用のための繊維、フィルムおよび成形品の製造のための、前記1.~15.のいずれか1つに記載のポリアミド組成物の使用。