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特許7252210耳鳴り疾患を治療するためのエレクトロメカニカル刺激システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】耳鳴り疾患を治療するためのエレクトロメカニカル刺激システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/00 20220101AFI20230328BHJP
【FI】
A61F11/00 350
A61F11/00 310
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020511202
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 IB2018056523
(87)【国際公開番号】W WO2019038746
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】102017000096334
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517282089
【氏名又は名称】アジエンダ・オスペダリエラ・ウニベルシタリア・セネーゼ
(73)【特許権者】
【識別番号】504414721
【氏名又は名称】ユニバーシタ・デグリ・スタディ・ディ・シエナ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】マンダラ’,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】プラティッチッゾ,ドミニコ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0164381(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0064533(US,A1)
【文献】特開2002-165297(JP,A)
【文献】特表2010-502376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳鳴りを治療するための骨伝導によるエレクトロメカニカル刺激システムであって、
ユーザーの耳(1)に近接して前記ユーザーの頭蓋骨上に置かれるように構成された基端ユニット(10)と、
前記ユーザーに操作されるように構成されたインプットインターフェース(50)と、を具備し、
前記基端ユニット(10)は、
所定の周波数(f)、強度(A)及び波形を有し、前記ユーザーの頭蓋骨に伝達される機械的振動(35)を、前記ユーザーの頭蓋骨に伝達するように構成されたエレクトロメカニカルデバイス(30)と;
前記ユーザーの頭蓋骨のうち側頭骨、後頭骨、及び前頭骨から選択される特定の骨の近くに搭載される支持体を有し、前記エレクトロメカニカルデバイス(30)が前記特定の骨に対応する組織(2)との接触を維持するように構成された適用デバイス(32)であって、前記支持体が前記エレクトロメカニカルデバイス(30)を受け入れるハウジングを有する、前記適用デバイス(32)と;
前記機械的振動(35)の前記周波数(f)、前記強度(A)及び前記波形を変更できるように、前記エレクトメカニカルデバイス(30)を駆動するコントロールユニット(20)と;
前記コントロールユニット(20)のためのコントロールシグナル(45)を受信するように構成されたトランシーバー要素(40)と、を具備し、
前記インプットインターフェース(50)は、
前記基端ユニット(10)の前記トランシーバー要素(40)に、コントロールシグナル(45)を伝達するように構成された伝達要素(60)と;
20Hz~20kHzの範囲の第1の周波数(f)セットで、かつ、所定の強度限界値未満の強度で前記エレクトロメカニカルデバイス(30)の機械的振動(35)を生成するため、及び前記範囲内で複数の周波数で前記機械的振動(35)を繰り返し引き起こすための、前記コントロールユニット(20)に向かって前記コントロールシグナル(45)を伝達するように構成されたマイクロコントローラー(70)と;
インプット要素(80)と、を具備し、該インプット要素(80)は、
複数の異なる周波数での、前記エレクトロメカニカルデバイスによる前記機械的振動(35)の生成を開始する指令を前記ユーザーから受信し;
待機し;
前記ユーザーが前記耳鳴りの徴候が減少したと認識できる周波数値を、前記ユーザーが前記マイクロコントローラー(70)に通知できるように、現在生成されている前記機械的振動に対応する一定の周波数で前記機械的振動(35)の周波数の変更を停止する、周波数スキャニング停止指令をユーザーから受信し;
前記一定の周波数で前記機械的振動の生成を継続する、ように構成されている、エレクトロメカニカル刺激システム。
【請求項2】
前記マイクロコントローラー(70)は、前記周波数スキャニング停止指令を受信すると、前記機械的振動(35)の前記周波数(f)を微調整するステップを実行するように構成され、前記微調整するステップは、前記周波数スキャニング停止指令を受信した際、前記機械的振動(35)の1つの周波数(f)の近傍の周波数で前記機械的振動(35)を繰り返す、請求項1記載の刺激システム。
【請求項3】
前記マイクロコントローラー(70)は、前記一定の周波数における前記周波数スキャニング停止指令を受信すると、前記機械的振動(35)の強度調整(A)を実行するように構成されている、請求項1記載の刺激システム。
【請求項4】
前記マイクロコントローラー(70)は、前記周波数(f)の微調整ステップの終わりに前記機械的振動(35)の強度調整(A)を実行するように構成されている、請求項2記載の刺激システム。
【請求項5】
前記マイクロコントローラー(70)は、スキャン停止指令及び前記機械的振動(35)の前記強度調整(A)を受信した後、前記強度(A)の微調整ステップを実行する、請求項に記載の刺激システム。
【請求項6】
前記マイクロコントローラー(70)は、前記機械的振動(35)の最後に前記耳鳴り徴候が減少したと感じられない場合に、前記ユーザーが前記強度を変更できるように、前記機械的振動(35)の強度(A)を変更するように構成されている、請求項1記載の刺激システム。
【請求項7】
前記エレクトロメカニカルデバイス(30)は、所定の時間間隔で前記機械的振動(35)を自動的に伝達するようプログラムされている、請求項1記載の刺激システム。
【請求項8】
前記マイクロコントローラー(70)は、前記エレクトロメカニカルデバイス(30)により発せられる前記機械的振動(35)の強度(A)を、20dB HL~20dB HLの範囲で調整するように構成されている、請求項1記載の刺激システム。
【請求項9】
前記マイクロコントローラー(70)は、前記エレクトロメカニカルデバイス(30)により発せられる前記機械的振動(35)を、可聴性閾値の下限以下の強度に調整するように構成されている、請求項1記載の刺激システム。
【請求項10】
前記マイクロコントローラー(70)は、
前記機械的振動(35)の生成を開始する前記指令の後の順応時間の間、最大で可聴性閾値より10%大きな強度で前記機械的振動(35)を、前記エレクトロメカニカルデバイス(30)に発せさせ;
前記順応時間の後、前記可聴性閾値よりも低い値に前記強度の値を下げる、ように構成されている、請求項8記載の刺激システム。
【請求項11】
前記エレクトロメカニカルデバイス(30)は、ボイスコイル型アクチュエーター及び圧電アクチュエーターから選択されるデバイスである、請求項1記載の刺激システム。
【請求項12】
前記マイクロコントローラー(70)は、前記機械的振動(35)の波形を調整するステップを実行するように構成されている、請求項1記載の刺激システム。
【請求項13】
記支持体の前記ハウジングは、前記エレクトロメカニカルデバイス(30)を着脱可能に受容するように構成される、請求項1記載の刺激システム。
【請求項14】
前記支持体は、
頭蓋骨の前記骨(3)の近傍に適用されるように構成された接着部と;
前記エレクトロメカニカルデバイス(30)を脱可能に受容するための前記ハウジングを有する支持部と、を具備する、請求項13記載の刺激システム。
【請求項15】
前記強度限界値は、前記ユーザーの可聴性閾値よりもdB HLで10%高い強度に等しい、請求項1記載の刺激システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学分野に関するものであり、より詳細には、耳鳴りまたは錯覚音(phantom noise)に悩む対象を治療するためのエレクトロメカニカル刺激システムに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、そうした治療を非侵襲性に送達するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
錯覚音または耳鳴りは、音、特に言語の正確な知覚を妨げ得る聴覚の疾患である。実際には耳鳴りは、環境から生じる何らかの音響信号とは関係がない様々な周波数と強度を有する音の知覚である。これらの音は片耳で、両耳で、またはより一般的には頭の中から生じる音として聞こえ得る。
【0004】
特に耳鳴りは、例えば笛の音やカーンといった単調な音として聞こえることがある。その場合には純音性耳鳴り(tonal tinnitus)と呼ばれる。または例えばヒュッ、ブーン、囁きといった広帯域音(broadband noise)として聞こえる場合には、非純音性耳鳴り(non-tonal tinnitus)と呼ばれる。耳鳴りは非常に頻繁にあり、様々な強度を有し得る。さらに患者の日々の活動や睡眠さえも妨げることもあり、重度の認知疾患や行動疾患の原因ともなり、患者の生活の質に多大な影響を及ぼし得る。
【0005】
耳鳴りは一般的に聴覚デバイスにより治療される。そうした聴覚デバイスは、ユーザーに音調を基にした治療を提供するよう構成され、特定の耳鳴りの周波数を覆い隠す効果がある。
【0006】
そうした類のデバイスの例は、US5325872に開示されており、疾患を最良に緩和する、または覆い隠す最適値が判明するまで、所定の範囲内に適切に調整され得る伝達周波数で音声信号を提供するコントロールユニットを具備している。
【0007】
外科的に移植可能なデバイスも知られており、US6077215に記載されている。当該デバイスでは、乳様突起内に移植されたエレクトロメカニカルトランスデューサーによって、最内耳部分が刺激される。これらのデバイスは侵襲的であり副作用を生じさせる。そしていずれの場合も、有効であるとは明らかになっていない(Dobie RA.“A review of randomized clinical trials in tinnitus”.Laryngoscope 1999,109,1202.1211)。
【0008】
US5788656は、さらなる刺激システムの例を記載しており、当該システムは、内耳の蝸牛近くに配置される、電磁力で操作されるエレクトロメカニカルデバイスを具備する。このエレクトロメカニカルデバイスは、蝸牛を、耳鳴りの周波数範囲で刺激することができる。この場合、それぞれ400Hz~1000Hzで設定された範囲内の低周波数と高周波数で機能するオシレーターの一対が、刺激パイロット信号を提供する。このシステムにより、ユーザーは、駆動デバイスの振動数を調整することにより治療を自身のニーズにカスタマイズすることができる。
【0009】
この治療システムも侵襲的であり、中~長期間の疾患緩和または疾患抑制に効果的な刺激治療はできない。
【0010】
US2008/0064993A1は、エレクトロメカニカルトランスデューサーを具備したデバイスの使用を記載しており、当該デバイスは、例えば歯または口蓋骨などの口部分の骨に備え付けられた場合、調整され得る周波数および振幅で機械的振動を与える。特にこのデバイスは骨導音を利用しており、機械的振動を重ね合わせ、耳鳴りの影響をキャンセルすることで耳鳴りの知覚を覆い隠す音響信号、またはユーザーの注意を耳鳴りから逸らす快適な機械的振動を加えることで耳鳴りの知覚を覆い隠す音響信号を提供することができる。しかしUS2008/0064993A1は、どのようにして耳鳴りのキャンセルに適した周波数を特定するかを示しておらず、患者サンプルに対して行われた調査により取得された値の表を使用しているのみであるか、または各ユーザーに対し個別の聴覚検査を実行している。
【0011】
US6210321B1は、耳鳴りを緩和するためのシステムのさらなる例を記載しており、当該システムは、蝸牛近く、乳様突起骨上の耳の外側に配置される半剛体膜を具備する。当該膜は電気刺激により励起し、蝸牛に機械的振動を伝達するよう構成される。この場合、ユーザーは、刺激の周波数と強度のパラメーターを調整することによりカスタマイズされた治療を受けることができる。しかしこの調製は難しく、ユーザーにとって快適なものではない。
【0012】
耳鳴りを治療するための他のデバイスは、US2015/164381A1、US2013/163797A1、EP3184046A1、US2016/250440A1に記載されている。
【発明の概要】
【0013】
ゆえに本発明は、耳鳴りを治療するためのエレクトロメカニカル刺激システムを提供することを特徴とし、当該システムは、ユーザーの知覚を中心とする、非侵襲性で容易にカスタマイズ可能な治療を提供する。
【0014】
また本発明は、耳鳴りを治療するためのエレクトロメカニカル刺激システムを提供することを特徴とし、当該システムは、療法士およびユーザーにより簡単に調整されることができ、それにより、自宅でのシステムの通常の使用では療法士の助けはそれほど必要としない。
【0015】
また本発明は、外科手術を行うことなく適用され得る、耳鳴りを治療するためのエレクトロメカニカル刺激システムを提供することを特徴とする。
【0016】
さらに本発明は、ユーザーに通常に利用可能なデバイスにより調整されることができる、当該システムを提供することを特徴とする。
【0017】
これら、および他の目的は、以下を具備する、耳鳴りを治療するためのエレクトロメカニカル刺激システムにより実現される:
-ユーザーの耳に近接して配置されるよう構成された、以下を具備する基端ユニット:
-ユーザーの耳の近くの組織、またはいずれの場合でもユーザーの頭蓋骨に所定の周波数、強度および波形を有する機械的振動を伝達するよう構成された、エレクトロメカニカルデバイスと、
-側頭骨から選択される頭部の骨突起、特に乳様突起、後頭骨、前頭骨に対応する組織と当該エレクトロメカニカルデバイスとの接触を維持するよう構成された、適用デバイスと、
-当該機械的振動の周波数、強度および波形を変更できるように当該エレクトロメカニカルデバイスを駆動するよう構成された、コントロールユニットと、
-当該コントロールユニットに対するコントロールシグナルを受信するよう構成された、トランシーバー要素、
-以下を具備する、ユーザーにより操作されるよう構成された、インプットインターフェース:
-基端ユニットのトランシーバー要素にコントロールシグナルを伝達するよう構成された、伝達要素、
-20Hz~20kHzの範囲内の第一の周波数セット、および所定の強度限界値よりも低い強度で当該エレクトロメカニカルデバイスの機械的振動を発生させるために、ならびにこの範囲内の複数の周波数で当該機械的振動の反復を生じさせるために、当該コントロールシグナルを、当該コントロールユニットに向かって伝達するよう構成された、マイクロコントローラーと、
-以下となるように構成された、インプット要素:
-当該エレクトロメカニカルデバイスによる複数の異なる周波数の機械的振動の発生を開始する指令を、当該ユーザーから受信する、
-当該異なる周波数の当該機械的振動が発生している間、待機する、
-当該ユーザーが、耳鳴り徴候の低下を知覚する周波数値をマイクロコントローラーに通知することができるように、現行で発生している機械的振動の周波数に相当する一定の周波数で、機械的振動の周波数の変更を停止する周波数スキャニング停止指令を当該ユーザーから受信する、
-当該一定の周波数で、当該機械的振動の発生を継続する。
【0018】
このように、側頭骨から選択された頭部の骨突起、特に乳様突起、後頭骨、前頭骨に対応する組織に当該エレクトロメカニカルデバイスを接触させて維持するよう構成された適用デバイスは、
-骨伝導による聴覚刺激、
-骨伝導による前庭刺激、
-皮膚の触覚刺激、
-振動性の固有感覚刺激、
の形態で伝達される機械的振動を生じさせ、それにより多知覚性刺激を取得する技術的効果を有する。実際に、骨伝導により前庭領域に達して耳鳴りを緩和する傍らで、適切に皮膚に送られた振動は、広い意味で、振動刺激伝達領域の固有感覚性の位置確認も提供する。
【0019】
さらに本システムは、そうした多知覚性刺激の可能性のある周波数を試し、それに応じて20Hz~20kHzで設定される、特に125Hz~8000Hzで設定されるすべての周波数で機械的振動を発生させる。当該周波数は例えば1Hzごとに互いに異なっている。そして当該システムは、ユーザーが耳鳴り徴候の低下または消失を知覚するときに発生する、機械的振動の周波数スキャニング停止指令を待ち受け、その後の機械的振動の周波数を、一定の周波数値に維持する。この解決法により、各ユーザーで、耳鳴りが消失する、または強度が低下する、各個人で異なる一定の周波数値を見出すことが可能となる。
【0020】
US2015/164381A1、US2013/163797A1、EP3184046A1、US2016/250440A1と比較して、本発明は、以下に記載される差異および優位性を有する。
【0021】
本発明において、以下に記載されるように、側頭骨、および/または後頭骨、および/または前頭骨に近い皮膚領域に、聴覚の何らかの歪みまたは増大を回避して、当該デバイスの24時間の適用を容易にするために、患者の可聴閾値であり得る所定の強度閾値より低い強度で、または可聴閾値よりもやや高い強度で、機械的振動を送ることにより、多知覚性刺激を使用して耳鳴りを緩和/抑制する。当該デバイスは、高い強度では不快で、使用する気持ちが失われるであろう。多知覚性刺激は、骨伝導による聴覚刺激、骨伝導による前庭刺激、皮膚の触覚刺激、および振動の固有感覚性刺激を含む。
【0022】
例えばボイスコイル型駆動デバイスなどのエレクトロメカニカルデバイスの振動は通常、可聴閾値よりも低いか、またはやや高い強度を有する。しかし振動は、触覚閾値よりも低い強度では発生されず、それによりユーザーに固有感覚を誘発する触感が提供される。すなわちユーザーは、エレクトロメカニカルデバイスが適用され、同デバイスが皮膚に振動を送る身体の領域に気が付かされる。他方で、過去のシステムの振動は、可聴閾値よりも遥かに高い強度を有しており、ユーザーに、耳鳴り徴候の位相とは反対の位相にある音、または耳鳴り徴候を覆い隠すであろう音を聞かせることを目的としている。この理由により、そうした過去のシステムでは、固有感覚は、放出された音により遮断される。
【0023】
本発明の場合には、患者は、エレクトロメカニカルデバイスから生じる音は実質的に何も聞かず、それゆえに固有感覚は最も重要な役割を果たす。言い換えると、患者は皮膚上にわずかな振動の触覚を有し、その(固有感覚)位置を確認し、それと同時に振動が送られる皮膚領域に近い頭部の骨に振動が伝達される。すなわち骨伝導により振動が伝播され、最終的に聴覚器に到達する(前庭刺激)。多知覚性刺激と、ユーザーにより特定される固有の最適な耳鳴り緩和周波数の組み合わせ、すなわち本発明が過去の技術とは識別される2つの主要な特徴の組み合わせが、耳鳴り徴候抑制の治療効果を得ることを可能にすると考えられる。
【0024】
さらに骨伝導による刺激の間に行われる周波数スキャニングによって、本発明では過去の治療とは異なり、耳鳴り徴候の特性を決定する、または知る必要がない。たとえ耳鳴り徴候の源、または耳鳴り徴候を特徴付けるパラメーターが不明であったとしても、実際に耳鳴り徴候の抑制に適した刺激を直接選択するのは、患者自身である。
【0025】
特に本デバイスの優位性は、数時間の1回目の振動適用時間の後、耳鳴り徴候を最も良く緩和する一定の周波数で患者が機械的振動を受けている間に患者が振動を停止した場合でも、耳鳴り徴候は、最初の耳鳴り沈黙時間の間にさらに緩和されたことが確認されており、それにより振動待機時間の間、振動をオフに設定することができるという点にある。耳鳴り徴候が再び始まったときに、ユーザーは一定の周波数で2回目の振動適用工程を開始させればよく、ゆえに振動待機時間は、耳鳴り沈黙時間に等しく選択されることが好ましい。2回目の振動適用工程は、2回目の振動時間の間維持され、そして中断され、1回目の耳鳴り沈黙時間よりも長い2回目の耳鳴り沈黙時間の後に再度、耳鳴り徴候が始まるまでオフで維持される。実際に、本発明デバイスを用いた振動時間および待機時間が繰り返される場合、耳鳴り沈黙時間はつねに長くなることが確認されている。これは本デバイスの治療効果を示している。
【0026】
さらに本システムは個別にカスタマイズ可能であり、使用が簡単である。その理由は、本エレクトロメカニカルデバイスは、ユーザーの耳に近接する組織に様々な周波数で機械的振動を伝達することができ、そしてユーザーは、インプットインターフェースによりこれら機械的振動を調整することができるためである。
【0027】
実際に、モバイルアプリがインストールされたスマートフォンなどのタッチスクリーン式グラフィックディスプレイインタフェースを具備したパーソナルモバイル通信デバイスを使用して、ユーザーは自身のニーズに従い治療セッションを簡単に実施することができる。ゆえにユーザーは、療法士の助けは何も必要としない。
【0028】
代替手段として、インプット要素は、PC、スマートウォッチ、スマートテレビまたはタブレットであってもよい。この場合、ユーザーは、キーボード、リモートコントロールデバイス、またはタッチスクリーンデバイスで、開始指令および停止指令を出すことができる。
【0029】
本適用デバイスは、ユーザーの頭蓋骨の骨、特に皮膚層が薄く耳の外側にある側頭骨、後頭骨、および前頭骨から選択される骨近くに備え付けられるよう構成された支持体を具備していることも有利である。当該支持体は、受け入れ用筐体、特にエレクトロメカニカルデバイスを取り外し可能に受け入れるための筐体を有している。このように支持体は、エレクトロメカニカルデバイスと皮膚の接触を可能にし、それによって上述の4つのタイプの刺激が可能となる。
【0030】
特に本出願デバイスは、以下を具備した接着性支持体を含む:
-当該頭蓋骨の近くに適用されるよう構成された接着部分、
-当該エレクトロメカニカルデバイスを受け入れるための当該筐体を具備した支持部分。
【0031】
このように、エレクトロメカニカルデバイスは骨領域に配置され、ユーザーの耳の外に配置されるように構成されているため、システムを使用するための手術は必要ない。これにより、外科的介入に固有のリスクと副作用を排除することができる。さらに、エレクトロメカニカルデバイスは取り外し可能であるため、支持体を常に着用する必要はない。支持体は、例えば、特に治療を行うのに必要な限り、数日間、またはいずれにしても、非常に短い日数、皮膚に付着したままである接着剤によって、患者に取り付けることができ、1つの治療セッションと次のセッションの間の時間にエレクトロメカニカルデバイスを着用しないことを可能にすることに加えて、治療中全体の間、接着支持体の交換をほとんど必要としない。
【0032】
特に、エレクトロメカニカルデバイスは、軸方向に動くことのない出力シャフトを備えた小さな寸法のボイスコイル型アクチュエーターであり、シャフトによって生成される機械的力は、それ自体の電気コイルを循環する電流に比例し、たがって、時間単位でコントロールユニットによって生成される電気作動信号の強度に比例する。
【0033】
このようにして、出力シャフトを介してユーザーの耳に最も近い組織に伝達される機械的振動の周波数、強度、および波形を変更でき、ユーザーは自分のニーズに応じて治療をカスタマイズできる。
【0034】
本発明によるシステム、および特に、側頭骨または後頭骨または前頭骨に配置されたボイスコイルアクチュエーターは、振動が、2つの伝播経路、すなわち、アクチュエーターが作用する領域を囲む骨組織を通る第1の経路、および前庭領域の流体と軟組織を通る第2の経路、に沿って皮膚を介して骨に伝達される多感覚刺激を送達することを可能にする。したがって、皮膚に作用するパルスにより、触覚が、皮膚が刺激されている領域を特定することができる患者の固有受容システムをトリガーする。多感覚刺激と耳鳴り緩和値を見つけるための周波数スキャニング、およびその周波数での振動の伝達との関連付けが、本発明によるシステムが耳鳴り疾患をより効果的に治療できる理由であると考えられている。
【0035】
代替として、エレクトロメカニカルデバイスは、身体を取り巻くコイル内を循環する電流によって引き起こされる励起により振動し得る膜などの身体を含むボイスコイル型アクチュエーターであり得る。
【0036】
さらなる例示的な実施形態では、エレクトロメカニカルデバイスは、圧電タイプのアクチュエーターとすることができる。
【0037】
有利なことには、マイクロコントローラーは、ユーザーから周波数スキャニング停止指令を受け取ると、機械的振動の周波数を微調整するステップを実行するように構成される。
【0038】
特に、所定の周波数で耳鳴りの減少を感知した後、ユーザーは、耳鳴りの減少を知覚した周波数で、すなわち上記の一定の周波数で、周波数スキャニング停止指令を提供することにより、次に、一定の周波数の近傍の周波数を細かく捜査することにより、したがって、外部からの支援なしで、自分自身の認識にしたがってノイズをさらに低減または抑制するために、周波数を一定の周波数によってなされたものよりも細かく調整することにより、インプット要素とやりとりすることができる。
【0039】
有利なことには、マイクロコントローラーは、前述の一定の周波数で周波数スキャニング停止指令を受信すると、機械的振動の強度調整を実行するように構成される。
【0040】
このように、信号強度調整は、耳鳴りの治療に最も適した強度値を使用することにより、治療を改善することができる。
【0041】
有利なことには、マイクロコントローラーは、周波数を微調整するステップの終わりに機械的振動の強度調整を実行するように構成される。
【0042】
このようにして、ユーザーは、機械的振動の第1のトレインを第1の範囲内の周波数で伝達し、次に機械的振動の第2のトレインを第1の範囲よりも狭い第2の範囲内の周波数で伝達した後、知覚される耳鳴り徴候をさらに軽減することができるエレクトロメカニカルデバイスの機械的振動を生成するように、信号強度の第3の調整を実行できる。
【0043】
代替として、マイクロコントローラーは、捜査停止指令を受け取った後、および機械的振動の強度調整後に、機械的振動の強度を微調整するステップを実行することができる。
【0044】
この解決の利点は、被験者のニーズにさらに的を絞った刺激を提供することである。例えば、周波数調整または周波数微調整によって満足な耳鳴り徴候の軽減を得たユーザーは、刺激システムが自分のニーズにさらに的を絞ったものになる、捜査停止指令の後に強度微調整ステップを実行することができる。
【0045】
有利なことには、機械的振動の周波数を調整するステップの終わりに、ユーザーが耳鳴りの減少を認識していない場合、すなわち、所定の走査/調整範囲内の全ての周波数を走査した後、マイクロコントローラーは、機械的振動の強度を修正するように構成される。特に、使用される刺激は、ユーザーの聴覚閾値よりも弱いか、または被験者の通常の活動中に被験者の聴覚を妨げることができない強度レベルを持っている。
【0046】
このようにして、ユーザーは、周波数調整ステップを実行した後、刺激信号の強度を変更することを決定し、新しい強度で機械的振動を発生させることによって新しい周波数調整ステップを実行することができる。
【0047】
特に、マイクロコントローラーは、-20dB HLと20dB HLとの間の強度範囲内でエレクトロメカニカルデバイスによって放出される機械的振動を引き起こすように構成される。
【0048】
特に、マイクロコントローラーが機械的振動の強度を、それ以下に変更するように構成されている強度限界値は、ユーザーの聴覚閾値に等しい。つまり、マイクロコントローラーは、可聴性閾値以下の強度で、エレクトロメカニカルデバイスによって機械的振動が放出されるように構成されている。
【0049】
特に、マイクロコントローラーが機械的振動の強度を、それ以下に変更するように構成されている強度限界値は、dB HLで10%増加したユーザーの聴覚閾値と等しくすることができる。より詳細には、マイクロコントローラーは、ユーザーが発生した振動を音響振動として感じることができるようにするため、機械的振動の発生を開始するための指示後の順応時間中、エレクトロメカニカルデバイスに、可聴性閾値より最大10%高い強度で機械的振動を放出させるように構成され、また、順応時間が経過すると、強度を可聴性閾値よりも低い値に下げるように構成されている。
【0050】
有利なことには、エレクトロメカニカルデバイスは、所定の時間間隔で機械的振動を自動的に伝達するようにプログラムされる。
【0051】
このようにして、例えば、機械的振動送達が所定の周波数で所定の期間にわたって提供される、カスタマイズされた刺激治療プログラムを得ることができる。例えば、デバイスがオフになっている時間が経過した後、耳鳴り徴候が消えたことをユーザーが認識した場合、デバイスの待機時間を延長できる。逆に、待機時間が経過する前に再び耳鳴りが発生した場合は短縮できる。
【0052】
有利なことには、マイクロコントローラーは、機械的振動の波形を調整するステップを実行するように構成される。この調整は、ユーザーが特定の振動波形での周波数スキャニング中に軽減を経験していない場合に提供できるため、別の波形の捜査を繰り返すことができる。
【0053】
このようにして、本発明による刺激システムにより、ユーザーは、耳鳴り徴候の減少を得るために、広く区別された機械的刺激を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明のさらなる特徴および/または利点は、その例示的実施形態、および添付の図面を参照して、例示的であるが限定的ではない、その例示的実施形態の以下の説明によってより明らかになるであろう。
図1図1は、本発明による、耳鳴りを治療するためのエレクトロメカニカル刺激システムの例を図式的に示し、ユーザーの耳に最も近い組織に機械的振動を送達する、互いに通信する基端ユニットおよびインプットインターフェースを含む。
図2-1】図2は、本発明による、インプットインターフェースのマイクロコントローラーのインターフェースを制御するための、インプット要素にインストールされた仮想デバイスのフロー図を示す。
図2-2】図2A、2B、2Cは、本発明による、インプット要素において利用可能な、マイクロコントローラーのインターフェース画面の例を示す。
図3図3は、本発明による、所定の範囲で可変の周波数で機械的振動を生成するためのマイクロコントローラーの例示的なフロー図を示す。
図4図4は、本発明による、機械的振動の周波数を微調整するステップを含む、図3のものと同様の、マイクロコントローラーの例示的なフロー図を示す。
図5図5は、本発明による、機械的振動の強度を調整するステップを含む、図4のものと同様の、マイクロコントローラーの例示的なフロー図を示す。
図6図6は、本発明による、強度を微調整するステップを含む、図5のマイクロコントローラーと同様の、マイクロコントローラーの例示的なフロー図を示す。
図7図7は、本発明による、機械的振動の波形を調整するステップを含む、マイクロコントローラーの例示的なフロー図を示す。
図8図8は、本発明による、周波数を調整するステップの終わりに、ユーザーが耳鳴り徴候の減少に気付いていない場合、機械的振動の強度を変更するステップを含む、マイクロコントローラーの例示的なフロー図を示す。
図9図9は、手動操作モードにおけるエレクトロメカニカルデバイスの時間操作図を示す。図9Aは、図9を作動させるための例示的なフロー図を示す。
図10図10は、自動操作モードにおけるエレクトロメカニカルデバイスの時間操作図を示す。図10Aは、図10の図を作動させるための例示的なフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、耳鳴りを治療するためのエレクトロメカニカル刺激システムの可能な例示的な実施形態を示す。システムは、ユーザーの耳1の近くに配置されるように構成された基端ユニット10と、基端ユニット10と通信するためにユーザーによって操作されるように構成されたインプットインターフェース50とを含む。
【0056】
図示の例では、基端ユニット10は、乳様突起に近いゾーンに配置されているが、乳様突起またはユーザーの額の両方に配置することができる。
【0057】
基端ユニット10は、エレクトロメカニカルデバイス30、その適用デバイス32、コントロールユニット20、およびコントロールユニット20のためのコントロールシグナル45を受信するように構成されたトランシーバー要素40を含む。
【0058】
特に、コントロールユニット20は、トランシーバー要素40によって送信されるコントロールシグナル45に応答して、エレクトロメカニカルデバイス30のための作動信号21を生成するように構成されたハードウェアコンポーネントである。作動信号21の周波数fおよび強度Aは変更することができ、信号はさまざまな波形を有することができる。これにより、患者ごとに、エレクトロメカニカルデバイス30によって放出される機械的振動35の周波数f、強度A、および異なる波形の異なるパラメータを使用することが可能になる。コントロールユニット20はまた、ユーザーが耳鳴りの停止または減少を知覚する、作動信号21のそのようなパラメータの特定の値を組み合わせることを可能にする。
【0059】
例えば、コントロールユニット20は、動作命令が、エレクトロメカニカルデバイス30に転送される作動信号21、45を生成するために常駐することができる、CPUを含むマイクロコントローラーであり得、故に、コントロールユニット20が、作動信号21をエレクトロメカニカルデバイス30に自律的に送信できる。代替として、コントロールユニット20は、互いに異なる作動信号21のライブラリを有することができ、インプットインターフェース50からコントロールシグナル45を送信することによって生成することができる。特に、コントロールユニット20は、マイクロプロセッサを含むArduinoプラットフォームによって実装することができる。
【0060】
エレクトロメカニカルデバイスは、シャフト31によって生成される機械的力が、その電気コイルに循環する電流に比例し、したがって、時間単位でコントロールユニット20によって提供される電気作動信号21の強度に比例する、軸方向に移動可能な出力シャフト31を含むボイスコイル型アクチュエーター30とすることができる。図示されていない例示的な実施形態によれば、エレクトロメカニカルデバイス30は、シャフト31の他に膜も含むボイスコイル型アクチュエーターであり得、前述の膜は、アクチュエーターコイルに循環する電流によって引き起こされる励起に応答して自由に振動する。図示されていないさらなる例示的な実施形態では、エレクトロメカニカルデバイス30は、圧電アクチュエーターとすることができる。
【0061】
エレクトロメカニカルデバイス30は、可動要素、例えばシャフト31または、ユーザーの耳1の近くの組織2に機械的振動35を送達するボイスコイルアクチュエーターの膜を介して、ユーザーの耳1の近くの組織に機械的振動35を送達するように構成される。機械的振動35の周波数f、強度A、および波形を調整できるため、ユーザーは自分のニーズに応じて治療法をカスタマイズできる。
【0062】
適用デバイス32は、エレクトロメカニカルデバイス30、特に基端ユニット10全体を、頭の突出骨3、例えば側頭骨、特に乳様突起または乳様突起骨端3、後頭骨、または前頭骨(最後は表示されていない)で皮膚2のような外部組織と接触して、維持するように構成される。特に、適用デバイス32は、上に示した突出骨3に取り付けられるように構成された支持体を含み、好ましくは取り外し可能な方法で、エレクトロメカニカルデバイス30を受けいれるためのハウジングを有する。支持体は、皮膚2に取り付けられる接着部と、エレクトロメカニカルデバイス30を受けいれるためのハウジングを含む接着部から取り外し可能であり得る支持部とを有し得る。この適用デバイスは、エレクトロメカニカルデバイス30を支持部から、および/または支持部を接着部から取り外すのに必要な力が、接着部を患者の皮膚2から取り外すのに必要な力よりも弱いように構成される。このデバイスは、当業者が容易に実施することができるため、詳細な説明は行わない。
【0063】
インプットインターフェース50は、伝達要素60、マイクロコントローラー70およびインプット要素80を含む。
【0064】
マイクロコントローラー70は、作動信号45を発することにより、所定の範囲に設定された複数の周波数fを有する機械的振動35の発生を作動させるように構成される。より詳細には、作動信号21、45は、20Hzと20kHzとの間、特に125Hz÷8000Hzのようなより狭い範囲において、設定された所定の周波数fでコントロールユニット20によりエレクトロメカニカルデバイス30を作動させるように構成される。マイクロコントローラー70はまた、この範囲の複数の周波数を作動周波数として繰り返すようにすることができる。
【0065】
インプット要素80は、ユーザーからの指示、特に機械的振動を送達するステップ200(図3~8)を開始する指示を受け取るように構成され、前述の指示は、所定の値から開始するこのパラメータを変更することにある、機械的振動35の周波数fを修正または調整するステップ121をトリガーする。インプット要素80はまた、ユーザーが耳鳴り徴候の大幅な減少または停止を感知したときに、周波数調整ステップ121の周波数スキャニング停止指令300を待機し、ユーザーから受信するように構成される。また、機械的振動35の周波数fを調整するステップが中止されたとき、周波数スキャニング停止指令が入力されたときに使用される値で周波数を変更せずに維持しつつ、所定の時間、振動35を生成し続けるように構成されている。
【0066】
図3図8を参照してシステムのいくつかの例示的な実施形態を説明するときに説明されるように、他の開始/停止指令は、インプット要素80によって送信することができる。
【0067】
マイクロコントローラー70は、同じデバイス内のインプット要素80と統合することができる。例えば、インプット要素80は、スマートフォン、タブレット、PC、スマートTV、またはスマートウォッチであり得る。これらの場合、マイクロコントローラー70は、それがインストールされるインプット要素80で実行することができる「モバイルアプリ」を定義する。代替として、インプット要素80はPCであり得る。この場合、マイクロコントローラー70は、PCにインストールされたソフトウェアプログラムを定義する。
【0068】
マイクロコントローラー70によって生成されたコントロールシグナル45をトランシーバー要素40に送信するように配置された伝達要素60は、インプット要素80の内部または外部に存在するBlueetoothアンテナであり得る。
【0069】
代替として、図示されていない他の例示的な実施形態では、インターフェース/入口要素50、80から基端ユニットへのコントロールシグナル45の送信は、異なる方法で行うことができ、例えば、ケーブル送信であり得る。
【0070】
図2は、仮想デバイス71、72、73がインプットインターフェース50のマイクロコントローラー70のインターフェースを制御するように構成され、インプット要素80にインストールされる可能なフロー図を示す。特に、図2の例では、インプット要素80は、個人のモバイル通信デバイス、例えば、グラフィックインターフェイスが、3つの主要な仮想ユニット、すなわち、プロンプト生成器73、ボタン生成器72、および仮想タッチスクリーンデバイス71によって制御される、上に示されたタイプの中から選択されたものである。この場合、コントロールシグナルを送信するための伝達要素60は、インプット要素80にも組み込まれたblueetoothアンテナである。
【0071】
図2Aは、通常、インプット要素がパーソナルモバイル通信デバイスである場合、インプット要素80にインストールされた「モバイルアプリ」を定義するマイクロコントローラー70のインターフェース画面の例を示す。
【0072】
アプリケーションをインプット要素80にインストールした後、ユーザーは、波形90、強度91、および周波数範囲92のパラメータを選択できる。これらを使って/これらの中で、機械的振動35を生成する必要がある。動作確認ステップ93により、ユーザーは、後続の画面、図2Bを見ることができ、機械的振動35の生成および送出を開始し、少なくともこれらの機械的振動の周波数をスタートボタン100を介して調整する指示を与えることができる。予想されるように、そして以下により詳細に説明されるように、ユーザーは、特に耳鳴り徴候の減少を知覚した場合、画面の停止ボタン101を介して周波数を調整するステップ121を停止することができる。
【0073】
図2Cは、以下で説明されるシステムの例示的な実施形態における、図2Bの画面に続くマイクロコントローラー70の例示的なインターフェース画面を示す。周波数スキャニング停止指令101の後、この画面により、操作者は、作動信号45の周波数fを微調整するステップ、および微調整ステップを停止するステップ111を開始するコマンド110を入力することができる。
【0074】
図3は、機械的振動35を生成するためのマイクロコントローラー70の操作の流れ図を示す。ユーザーの指令により、機械的振動35を生成するステップ200と、同時に、周波数fを調整するステップ121が起動する。
【0075】
機械的振動35の周波数fを調整するステップは、ユーザーが選択可能な所定の時間間隔で、所定の周波数fの範囲をスキャンする間に伝達される、振動35の周波数を変更するステップを与える。
【0076】
ユーザーが耳鳴りの減少122を感じる場合、入力素子80により、周波数スキャニング停止指令を入力できる。この事象により、停止指令が入力され、刺激、すなわち振動35の伝達が、上記で識別される、耳鳴り緩和周波数に等しい固定周波数値で継続する時に、機械的振動35が伝達された周波数値で、周波数スキャニング121の遮断300が発生する。
【0077】
これに対して、周波数スキャニング停止指令がない状態で、ユーザーが、有意な耳鳴りの減少122を感じない場合、機械的振動35の伝達は、スキャン対象の周波数域を変えるステップ123と、周波数fが以前にスキャンされた範囲と異なる周波数域内で変更される、周波数を調整する新たなステップ121とで継続する。このように、該ステップは、ユーザーが有意な耳鳴りの減少122を感じない限り、周波数を調整する異なるステップ121で進行する。
【0078】
図4は、ステップ124が作動信号45、したがって、伝達されている機械的振動35の周波数fを微調整することをさらに与えられるシステムの例示的な実施形態の、図3に類似するマイクロコントローラー70の操作の流れ図を示す。
【0079】
この場合、周波数を調整するステップ121に周波数スキャニング停止指令がない状態で、マイクロコントローラー70は、スキャン対象の周波数域を変えるステップ123により図3と同じ方法で、また、異なる周波数域をスキャンすることにより周波数fを調整するステップ121とあわせて、機械的振動35が新たに生成して作動する。これに対して、機械的振動35が所定の範囲で設定される周波数fで伝達されている間、ユーザーが、有意な耳鳴りの減少122を感じる場合、この事象をマイクロコントローラー70に通知することが可能で、周波数fを微調整するステップ124を実行する。言い換えれば、マイクロコントローラー70は、後続の機械的振動35を伝達する間にスキャン対象の周波数域を限定、すなわち、耳鳴りの減少を認識・通知する周波数値の近傍である新たな周波数fの帯域を選択し、周波数fを調整する新たなステップ、今回は周波数fを微調整するステップで作動し、周波数fを微調整するステップにこの近傍をスキャンさせる。ユーザーがさらに耳鳴りの減少125を感じる場合、周波数fを微調整するステップは、微調整するステップに周波数スキャニング停止指令を与えることが可能で、このスキャニング停止指令が入力され、刺激、すなわち振動35の伝達が、上記で識別される、さらなる耳鳴り緩和周波数に等しい固定周波数値で継続する時に、機械的振動35が伝達された値で、周波数微調整124の停止300を発生させる。これに対して、微調整ステップに周波数スキャニング停止指令がない状態で、ユーザーが、さらに有意な耳鳴りの減少125を感じない場合、機械的振動35の伝達は、以前に減少を発生させた値の新たな近傍として、スキャン対象の周波数近傍を変えるステップ126と、この新たな近傍をスキャンすることにより周波数fを微調整するステップ124とで継続する。このように、該ステップは、ユーザーが有意な耳鳴りの減少125を感じない限り、周波数微調整124の新たなステップで進行する。
【0080】
このように、ユーザーは、耳鳴り徴候のさらなる減少125が生じる周波数をより正確に定義、すなわち、該周波数又はファンタムノイズ周波数に最も近い周波数を確認することができ、耳鳴りの減少を促進させる。
【0081】
図5は、ステップ127が作動信号45、したがって、伝達されている機械的振動35の強度を調整することをさらに与えられるシステムの例示的な実施形態において、図4に類似するマイクロコントローラー70の操作の流れ図を示す。周波数スキャニング停止指令がない状態で、マイクロコントローラー70は、図4と同じ方法で作動する。これに対して、機械的振動35が耳鳴り緩和値の所定の近傍で設定される周波数fで伝達される間、ユーザーが、さらなる耳鳴りの減少を感じる場合、この事象をマイクロコントローラー70に通知することが可能で、作動信号45、したがって、伝達されている機械的振動35の強度を調整するステップ127を実行する。機械的振動35の強度Aを調整するこのステップ127には、ユーザーが選択可能な所定の増加量及び減少量にしたがって、強度Aの所定の範囲をスキャンすることにより、伝達されている振動35の強度Aを変更するステップが与えられる。ユーザーがさらなる耳鳴りの減少128を感じる場合、振動35の強度Aを変更するステップは、強度スキャニング停止指令を与えることが可能で、このスキャニング停止指令が入力され、刺激、すなわち振動35の伝達が、上記で識別される、耳鳴り緩和強度に等しい固定強度値で継続する時に、機械的振動35が伝達された値で、強度Aの調整127の停止301を発生させる。これに対して、強度スキャニング停止指令がない状態で、ユーザーが、さらに有意な耳鳴りの減少128を感じない場合、機械的振動35の伝達は、スキャン対象の強度Aの範囲を変えるステップ129と、強度Aが以前にスキャンされた範囲とは異なる強度範囲内で変更される、強度を調整する新たなステップ127とで継続する。このように、該ステップは、ユーザーがさらに有意な耳鳴りの減少128を感じない限り、強度Aを調整するステップ127で進行する。
【0082】
図6は、ステップ130が作動信号45、したがって、伝達されている機械的振動35の強度を微調整することをさらに与えられるシステムの例示的な実施形態において、図5に類似するマイクロコントローラー70の操作の流れ図を示す。
【0083】
この場合、強度Aを調整するステップ127に強度スキャニング停止指令がない状態で、マイクロコントローラー70は、図5と同じ方法で作動する。これに対して、機械的振動35が所定の範囲で設定される強度Aで伝達される間、ユーザーが、有意な耳鳴りの減少128を感じる場合、この事象をマイクロコントローラー70に通知することが可能で、強度Aを微調整するステップ130を実行する。言い換えれば、マイクロコントローラー70は、後続の機械的振動35を伝達する間にスキャン対象の強度を限定、すなわち、耳鳴りの徴候の減少を認識・通知する強度値Aの近傍である強度の範囲を選択し、強度Aを調整するステップ、今回は強度Aを微調整するステップで作動し、強度Aを微調整するステップにこの近傍をスキャンさせる。ユーザーがさらに耳鳴りの減少131を感じる場合、強度Aを微調整するステップは、微調整のステップに強度スキャニング停止指令を与えることが可能で、このスキャニング停止指令が入力され、刺激、すなわち振動35の伝達が、上記で識別される、さらなる耳鳴り緩和強度に等しい固定強度値で継続する時に、機械的振動35が伝達された値で、強度微調整130の停止301を発生させる。これに対して、強度を微調整するステップに強度スキャニング停止指令がない状態で、ユーザーが、さらに有意な耳鳴りの減少131を感じない場合、機械的振動35の生成は、以前に減少を発生させた値の新たな近傍として、スキャン対象の強度A近傍を変えるステップ132と、この新たな近傍をスキャンすることにより強度Aを微調整するステップ130とで継続する。このように、該ステップは、ユーザーが有意な耳鳴りの減少131を感じない限り、強度微調整130の新たなステップで進行する。
【0084】
上述の線図に示さないが、それらから容易に派生し得るシステムの例示的な実施形態において、ステップに、強度Aの調整又はスキャンすることを与えることが可能で、また、作動信号45、したがって機械的振動35の周波数を微調整するステップを実施することなく、強度Aを微調整するステップも好ましく与えられる。
【0085】
図7は、駆動信号45の波形、したがって機械的振動35の波形を調整するステップ140を含むシステムの例示的な実施形態における、マイクロコントローラー(70)の操作の流れ図を示す。この場合、ユーザーの指令は、周波数調整ステップと同時に開始され、ユーザーが選択できる所定の周波数f範囲をスキャニングするステップを含む、機械的振動35を生成するステップ200をトリガする。この周波数調整の前、又は各周波数スキャニング段階で、マイクロコントローラー70は、機械的振動を生成するために、インプットインターフェース50に常駐している所定のライブラリから波形を選択することによって波形調整ステップ140を実行することができる。前者の場合、より詳細には、ユーザーが耳鳴りの著しい減少141を知覚しない場合、耳鳴り減少141の所望の効果が得られるまで、波形タイプを変化させるステップ142が提供される。次いで、ユーザーは、この停止指令がインプットされたときに機械的振動35が伝達されていたタイプで波形タイプをスキャニングするステップ140の停止302を引き起こすために、波形調整スキャン停止指令を提供することにより、このイベントをマイクロコントローラー70に通知することができ、刺激、すなわち振動35の伝達は、この波形タイプで継続する。
【0086】
図8の図式は、機械的振動35を生成した後、かつ所定の周波数範囲を完全にスキャニングすることによってその周波数を変更した後、ユーザーが耳鳴りの徴候の著しい減少を知覚していない場合、駆動信号45の強度、したがって機械的振動35の強度を変化させる可能性が提供されるシステムの修正に関する。この場合、機械的振動35を生成するステップ200及びその周波数を調整する現在のステップ121を開始するための指令を提供した後、耳鳴り徴候の減少122が得られないとき、ユーザーは、信号の強度の変化152を生じさせ、強度の新しい値を用いて新しい周波数調整ステップ121を開始することにより、機械的振動35の生成200を続けることができ、次いで彼/彼女は、耳鳴りの著しい減少122を知覚したら、周波数スキャニング停止指令を提供することにより、機械的振動35のこの周波数調整を停止することができる。機械的振動35の周波数を調整する第1のステップ121の後、ユーザーが耳鳴りのいかなる著しい減少も知覚しない場合、またチェックステップ150が、周波数範囲が完全にスキャンされていないと検出する場合、機械的振動35の周波数f範囲を変化させるステップ151が提供される。
【0087】
特に、マイクロコントローラー70は、患者の可聴性閾値よりも低い強度で、振動35を伝達するように構成される。例示的な実施形態では、図示されないが、機械的振動を伝達するステップ200の開始時に、すなわち、その開始指令を受信した直後に、順応のステップが提供され、マイクロコントローラー70は、患者がエレクトロメカニカルデバイス30によって生成された機械的振動35を識別できるように、患者の可聴性閾値の絶対値よりもdB HLで最大10%高い強度を有する振動35を伝達するように構成される。
【0088】
図9は、マニュアル操作モードで、エレクトロメカニカルデバイス30の伝達時間ON及び待機時間OFFを示す図式である。より詳細には、エレクトロメカニカルデバイス30の伝達時間間隔160(ΔTON)、160′ならびに待機時間間隔162(Δ
OFF MANUAL)が定義され、ユーザーはインプット要素80を介して指令を提供することにより、彼/彼女の必要性にしたがって選択することができる。
【0089】
図9Aは、図9によるマニュアル操作モードでのエレクトロメカニカルデバイス30の操作についての流れ図の一例である。このモードでは、ユーザーが、彼/彼女の耳鳴り徴候163の知覚に基づいて、及び彼/彼女自身の知覚に基づく伝達時間間隔160にしたがって、スイッチON指令160及びスイッチOFF指令162を提供する。
【0090】
代わりに、図10は、自動操作モードでのエレクトロメカニカルデバイス30の伝達値ON及び待機値OFFを示す図式である。特に、エレクトロメカニカルデバイス30は、所定の時間間隔で機械的振動35を自動的に送信するためにプログラムすることができ、エレクトロメカニカルデバイス30が作動し、周波数f、強度Aで、所定の波形で刺激を伝達している時間間隔160又はΔTON、ならびにエレクトロメカニカルデバイス30が作動していない間の待機時間間隔162、すなわち(ΔTOFF AUTOMATIC)で定義することができる待機時間間隔の両方を提供する。
【0091】
特に、自動操作モードでは、カスタマイズされた治療刺激プログラムを得ることができ、機械的振動35は、周波数f、強度A、及び所定の期間、所定の波形で伝達され、これは待機ステップと交互に行われる。特に、デバイスが作動していない所定の時間間隔の後に、ユーザーが耳鳴り徴候の著しい減少又は停止を知覚した場合、デバイスの待機時間は延長されるか、又は反対にこれらの待機時間の間に再び耳鳴りが起こる場合、短縮することができる。
【0092】
図10Aは、自動操作モードでのエレクトロメカニカルデバイス30の操作についての流れ図を示す。エレクトロメカニカルデバイス30がONである機械的振動を伝達する時間間隔160中に、システムはこの間隔の開始後、経過した時間161をカウントし、この時間が所定の伝達時間の閾値を超えた場合、エレクトロメカニカルデバイス30の待機ステップ162が開始される。反対の場合、エレクトロメカニカルデバイス30は伝達ステップ160を継続する。エレクトロメカニカルデバイス30の待機ステップ162は、OFFモード時間170がプログラムされた持続時間を超えるまで継続される。再度エレクトロメカニカルデバイス30を駆動する前に、新しい伝達ステップを開始するため、質問ステップ171が提供され、ここでユーザーは、彼/彼女がまだ耳鳴りの徴候が聞こえるかどうか尋ねられる。そうである場合、新しい伝達ステップ160のステップが開始され、耳鳴りが消えると、ステップ172が行われて、待機時間を延長する。
【0093】
いくつかの例示的な特定の実施形態の前述の説明は、概念的な観点にしたがって本発明を十分明らかにするであろう。他の人は、現在の知識を適用することにより、さらなる研究をせずに、また本発明から逸脱することなく、特定の例示的な実施形態をさまざまな用途に修正及び/又は適合させることができ、したがって、そのような適合及び修正は、特定の実施形態と同等であると見なされなければならないことを意味する。本明細書に記載される異なる機能を実現させるための手段及び材料は、この理由により、本発明の分野から逸脱することなく異なる性質を有することができる。本明細書で使用される表現又は用語は、説明の目的のためであり、限定の目的のためではないことを理解されたい。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10