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特許7252211リソソーム蓄積症を治療するための薬剤、デバイス、および血液循環システム、ならびにリソソーム蓄積症を治療するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】リソソーム蓄積症を治療するための薬剤、デバイス、および血液循環システム、ならびにリソソーム蓄積症を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20230328BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20230328BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20230328BHJP
   C12N 9/38 20060101ALN20230328BHJP
   C12N 9/40 20060101ALN20230328BHJP
   C12N 11/00 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
A61K38/47 ZMD
A61P3/00
A61P43/00 111
A61M1/36 185
C12N9/26 ZNA
C12N9/38
C12N9/40
C12N11/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020514247
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 US2018050057
(87)【国際公開番号】W WO2019051297
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】62/556,076
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/556,644
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/617,940
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-5285
(73)【特許権者】
【識別番号】520076358
【氏名又は名称】ザ ヌムール ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000195524
【氏名又は名称】生化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸松 俊治
(72)【発明者】
【氏名】澤本 一樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 武彦
(72)【発明者】
【氏名】北澤 郁恵
(72)【発明者】
【氏名】二ッ森 秀幸
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06153187(US,A)
【文献】特表2002-538181(JP,A)
【文献】国際公開第2017/049161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として糖分解酵素を含むリソソーム蓄積症のための治療剤であって
前記糖分解酵素が、対象としてのリソソーム蓄積症患者の欠損タンパク質とは異なり、前記患者のリソソームに蓄積する糖を分解する活性を有し、
前記糖分解酵素が、(a)~(d)の少なくとも1つに該当し、
(a)マンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない、
(b)前記患者のリソソームに蓄積する糖の切断部位の点で、前記リソソーム蓄積症患者の欠損タンパク質とは異なる、
(c)エンド型である、
(d)微生物に由来する、
注射用製剤に製剤化されている、治療剤(ただし、治療タンパク質を発現する遺伝的に修飾された細胞を含む治療剤を除く)。
【請求項2】
前記リソソーム蓄積症が、ムコ多糖症、スフィンゴリピドーシス、糖原病II型、および糖タンパク質蓄積症からなる群から選択される、請求項1に記載の治療剤
【請求項3】
前記リソソーム蓄積症が、ハーラー病、シャイエ病、ハンター病、サンフィリポ病A、サンフィリポ病B、サンフィリポ病C、サンフィリポ病D、モルキオ病A、モルキオ病B、マロトー・ラミー病、スライ病、ムコ多糖症IX型、およびムコ多糖症プラス症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の治療剤
【請求項4】
前記糖分解酵素が、グリコサミノグリカン分解酵素、グリコシダーゼ、およびペプチド:N-グリカナーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の治療剤
【請求項5】
前記糖分解酵素が、ケラタナーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパリチナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、PNGaseF、およびエンドグリコシダーゼHからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の治療剤
【請求項6】
前記患者がヒトである、請求項1に記載の治療剤
【請求項7】
前記糖分解酵素を生産するホスト細胞が微生物である、請求項1に記載の治療剤
【請求項8】
請求項1に記載の治療剤を製造するための方法であって:
糖分解酵素を生産する微生物の培養物を得るステップと;
前記培養物から糖分解酵素を回収するステップと;
任意に、回収された前記糖分解酵素を薬学的に許容される添加剤と混合することによって組成物を製剤化するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
前記微生物が、バシラスおよびエシェリキア属に属する微生物からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
さらに、エンドトキシンが実質的に含有されない程度まで、前記回収された糖分解酵素中のエンドトキシンレベルを低下させるステップを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は配列表を含有し、これはASCIIフォーマットで電子提出されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。2018年8月27日に作成された前記ASCIIコピーは116227-0109_SL.txtと名付けられており、サイズは65,245バイトである。
【0002】
本発明は糖分解酵素を用いるリソソーム蓄積症の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞内小器官としてのリソソーム内には、酵素の種々の種類が存在し、それらは生体内の種々の糖部分、例えばムコ多糖および複合糖質の分解を担う。ヒトを包含する哺乳動物の生体内に存在するリソソーム酵素の大部分はエキソ型酵素であり、それらは基質を末端から各構成単位で切断する。ほとんどの場合、糖部分の分解は段階的な一連のエキソ型酵素反応に基づいて達成される。
【0004】
リソソーム蓄積症はリソソーム酵素の異常によって引き起こされる遺伝子疾患である。リソソーム蓄積症の始まりは、リソソーム酵素の低下した代謝活性によって引き起こされると推察され、例えば酵素欠損、機能不全、活性化メカニズムの異常などが原因であり、これがそれらの酵素の基質の蓄積に至り得る。リソソーム蓄積症のうち、ムコ多糖症、スフィンゴリピドーシス、糖原病II型、糖タンパク質蓄積症などは、ムコ多糖または複合糖質などの糖がリソソーム内に蓄積する疾患として知られている。
【0005】
リソソーム蓄積症を治療するための方法としては、酵素補充治療(ERT)が知られている。ERTでは、患者のリソソーム内における低下した代謝活性が、患者の欠損酵素に対応する酵素を投与することによって補充される(特許文献1および非特許文献1)。生体内において、リソソームの内部は5またはより低いpHを有する酸性条件に維持されている。ERTによって補充される欠損酵素もまた酸性条件において至適に活性化される。これらの理由が原因で、補充される酵素にとってpHが至適であるリソソームの内部への酵素の送達は、ERTに重要であると従来考えられてきた。
【0006】
哺乳動物の生体内でのリソソーム酵素を合成するプロセスの間において、高マンノース型糖鎖を持つアスパラギン残基を有するリソソーム酵素前駆体(すなわち、N-グリコシル化された酵素前駆体)が、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼの作用によってマンノース-6-リン酸で修飾される。マンノース-6-リン酸で修飾された酵素はゴルジ体においてマンノース-6-リン酸受容体と会合し、リソソームに輸送される(非特許文献2)。すなわち、酵素のマンノース-6-リン酸部分は酵素をリソソームに送達するためのタグである。リソソーム蓄積症の一種のゴーシェ病のERTによると、マンノース部分を有するβ-グルコセレブロシダーゼが用いられる。マンノースによるβ-グルコセレブロシダーゼの修飾もまた、リソソームへの移送のために企図される。すなわち、従来のERTでは、酵素がリソソームの内部で作用するように、マンノース-6-リン酸またはマンノースによる修飾によって、患者の欠損酵素をリソソームに移送することを促進することが不可欠である(特許文献1および非特許文献1)。ERTに用いられるマンノース-6-リン酸またはマンノースによって修飾された酵素は、哺乳類細胞内で酵素を発現することによって、あるいはマンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を酵素に化学的に組み込むことによって従来生産される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2012/012718号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【文献】アニュアル・レビュー・オブ・ゲノミクス・アンド・ヒューマン・ジェネティクス(Annual Review of Genomics and Human Genetics)2012年,第13巻:p.307-35
【文献】ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)1989年,第264巻(第21号)p.12115-12118
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、糖分解酵素を用いてリソソーム蓄積症を治療するための薬剤、デバイス、および血液循環システムと、リソソーム蓄積症を治療するための薬剤を製造するための方法と、リソソーム蓄積症を治療するための方法とが提供される。
【0010】
リソソーム蓄積症の症状を改善するためには、欠損酵素をリソソームに効率的に送達することとそこに蓄積した糖部分のクリアランスとによってリソソームにおける低下した代謝を再活性化することが、ERTにとって最も重要な点であると考えられてきた。
【0011】
一方で、本発明は、患者の血液循環中に存在する蓄積した糖を低下させる治療でさえも、リソソーム蓄積症への改善されたまたはさらには優れた治療効果を示すことができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づく。すなわち、本発明は、リソソーム蓄積症のための治療に関し、それによると、血液の糖含量が低下するように、蓄積した糖部分を含有する患者の血液が糖分解酵素と接触させられる。
【0012】
1つの実施形態によれば、リソソーム蓄積症患者の欠損タンパク質(例えば、欠損酵素、例えば遺伝子欠損した酵素または部分的に不活性な酵素)と同一ではない糖分解酵素が、患者に投与されるかまたは患者の血液と接触させられる。すなわち、通常のERTとは違って、糖分解酵素は、それが患者のリソソームに蓄積する糖を分解する活性を有する限り、リソソーム蓄積症患者の欠損酵素と同一であることを要求されない。
【0013】
別の実施形態によれば、いかなるマンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分も有さない糖分解酵素が、患者に投与されるかまたは患者の血液と接触させられる。すなわち、糖分解酵素は、リソソーム蓄積症について改善されたまたはさらには優れた治療効果を示し得るが、リソソームにもまた送達されることは要求されない。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、リソソーム蓄積症患者の元々の欠損タンパク質とは異なる分解様式を有する糖分解酵素が、患者に投与されるかまたは患者の血液と接触させられる。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、リソソーム蓄積症患者の蓄積する糖部分を分解する活性を有する微生物に由来する糖分解酵素が、患者に投与されるかまたは患者の血液と接触させられる。好ましい実施形態においては、低下したエンドトキシンレベルを有する微生物に由来する糖分解酵素が用いられる。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、ムコ多糖症、スフィンゴリピドーシス、糖原病II型、および糖タンパク質蓄積症からなる群から選択されるリソソーム蓄積症の患者に対して、
エンド型酵素が糖分解酵素として用いられる。好ましい実施形態によれば、ムコ多糖症(例えば、ハーラー病、シャイエ病、ハンター病、サンフィリポ病(A、B、C、もしくはD)、モルキオ病(AもしくはB)、マロトー・ラミー病、スライ病、ムコ多糖症IX型、またはムコ多糖症プラス症候群)の患者に対して、グリコサミノグリカン分解酵素が糖分解酵素として用いられる。
【0017】
有効成分として糖分解酵素を含有するリソソーム蓄積症を治療するための薬剤を製造するための方法と、糖分解酵素を用いる治療デバイスおよび血液循環システムと、リソソーム蓄積症を治療するための方法ともまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の1つの態様に関する治療および治療方法のための血液循環システムを例示する例示的な図式である。
図2A図2Aは、PBS(無処置群)またはケラタナーゼ(処置群)の単回静脈内投与後の、8週齢GALNS(N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ。本願において下ではGALNSともまた言われる)ノックアウトマウスのケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルを示している(平均値±標準偏差)。
図2B図2Bは、PBS(無処置群)またはケラタナーゼ(処置群)の単回静脈内投与後の、8週齢GALNSノックアウトマウスのヘパラン硫酸非硫酸化型二糖の血清中レベルを示している(平均値±標準偏差)。
図3A図3Aは、PBS(無処置群)またはケラタナーゼ(処置群)の反復静脈内投与後の、GALNSノックアウトマウスのケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルを示している。PBSまたはケラタナーゼを、生後1日または2日、ならびに4および8週齢に投与した(平均値±標準偏差)。
図3B図3Bは、PBS(無処置群)またはケラタナーゼ(処置群)の反復静脈内投与後の、GALNSノックアウトマウスのヘパラン硫酸非硫酸化型二糖の血清中レベルを示している。PBSまたはケラタナーゼを、生後1日または2日、ならびに4および8週齢に投与した(平均値±標準偏差)。
図4A図4Aは、PBSの反復静脈内投与後の12週齢マウスからの大腿骨骨端軟骨板の代表的な顕微鏡写真である(コントロール群)。ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色パラフィン切片。
図4B図4Bは、PBSの反復静脈内投与後の12週齢マウスからの大腿骨骨端軟骨板の代表的な顕微鏡写真である(無処置群)。H&E染色パラフィン切片。
図4C図4Cは、ケラタナーゼの反復静脈内投与後の12週齢マウスからの大腿骨骨端軟骨板の代表的な顕微鏡写真である(処置群)。H&E染色パラフィン切片。
図5A図5Aは、PBSの反復静脈内投与後の12週齢マウスからの大腿骨骨端軟骨板の代表的な顕微鏡写真である(コントロール群)。トルイジンブルー染色樹脂切片。
図5B図5Bは、PBSの反復静脈内投与後の12週齢マウスからの大腿骨骨端軟骨板の代表的な顕微鏡写真である(無処置)。トルイジンブルー染色樹脂切片。
図5C図5Cは、ケラタナーゼの反復静脈内投与後の12週齢マウスからの大腿骨骨端軟骨板の代表的な顕微鏡写真である(処置群)。トルイジンブルー染色樹脂切片。
図6図6は、PBS(無処置)またはケラタナーゼ(処置)の単回静脈内投与後の、4週齢GALNSノックアウトマウスのケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルを示している(平均値±標準偏差、n=9、p<0.05、対応のないt検定)。N.D.:不検出。
図7A図7Aは、PBS(無処置)またはケラタナーゼ(処置)を注射したGALNSノックアウトマウスの肝臓におけるケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖レベルを示している(平均値±標準偏差、n=4、:p<0.05、対応のないt検定)。
図7B図7Bは、PBS(無処置)またはケラタナーゼ(処置)を注射したGALNSノックアウトマウスの肺におけるケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖レベルを示している(平均値±標準偏差、n=4)。
図7C図7Cは、PBS(無処置)またはケラタナーゼ(処置)を注射したGALNSノックアウトマウスの脾臓におけるケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖レベルを示している(平均値±標準偏差、n=4、:p<0.05、対応のないt検定)。
図7D図7Dは、PBS(無処置)またはケラタナーゼ(処置)を注射したGALNSノックアウトマウスの心臓におけるケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖レベルを示している(平均値±標準偏差、n=4)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の代表的な実施形態が本願において以下で説明されるが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
本願において用いられる用語「a」または「an」は1つまたは1つよりも多くを意味するものとする。
【0021】
本発明によれば、リソソーム蓄積症について、改善されたまたはさらに優れた治療効果が達成され得る。本発明による治療効果の例は、成長段階における関節の軟骨低形成症の有意な改善を包含し得る。本発明によれば、患者の生体内のリソソームへの糖分解酵素の送達が要求されない。それゆえに、この治療は、マンノース-6-リン酸受容体の欠損によって引き起こされるリソソームトラフィック活性の喪失または機能不全を有する者などの患者にとってさえも有効であろう。さらにその上、本発明は、糖が脳内リソソームに蓄積する対象にさえも適用可能であり得る。なぜなら、糖分解酵素そのものを脳に送達することは必要でないからである。それゆえに、髄腔内または脳室内投与などの侵襲的なレジメンは、かかるケースでさえも要求されない。
【0022】
本願において用いられる用語「欠損タンパク質」は、その欠如または機能不全が原因で、リソソーム蓄積症患者のリソソーム内の基質の蓄積の原因が帰せられるタンパク質をいう。
【0023】
本願において用いられる用語「欠損酵素」は、その欠如または機能不全が原因で、リソソーム蓄積症患者のリソソーム内の基質の蓄積の原因が帰せられる酵素をいう。
【0024】
本願において用いられる、交換可能に用いられる用語「糖」および「糖部分」は、炭化水素、グリコサミノグリカン、ならびに複合糖質、例えば糖脂質および糖タンパク質を包含する。
【0025】
リソソーム蓄積症の例は、特に限定されないが、ムコ多糖症(例えば、ハーラー病、シャイエ病、ハンター病、サンフィリポ病(A、B、C、もしくはD)、モルキオ病(AもしくはB)、マロトー・ラミー病、スライ病、ムコ多糖症IX型、またはムコ多糖症プラス症候群)、スフィンゴリピドーシス(例えば、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス、ファブリー病、ファーバー病、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、およびクラッベ病)、糖原病II型(ポンペ病)、ならびに糖タンパク質蓄積症(例えば、マンノシドーシス、フコシドーシス、およびガラクトシアリドーシス)を包含する。好ましい実施形態によれば、リソソーム蓄積症は、ハーラー病、シャイエ病、ハンター病、サンフィリポ病(A、B、C、およびD)、モルキオ病(AおよびB)、マロトー・ラミー病、スライ病、ムコ多糖症IX型、ならびにムコ多糖症プラス症候群からなる群から選択される。
【0026】
特に好ましい実施形態によれば、リソソーム蓄積症はモルキオ病(ムコ多糖症IV)で
ある。モルキオ病AおよびB型はそれぞれGALNSおよびβ-ガラクトシダーゼの欠損によって引き起こされることが公知である。モルキオ病の患者に蓄積するケラタン硫酸(ガラクトシルβ-(1→4)-N-アセチルグルコサミン二糖単位のβ-(1→3)反復から形成される)は、健康な者では次の(1)および(2)の反復反応によって非還元末端から分解される。
(1)N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ(本願において下ではGALNSともまた言われる)またはN-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼによる、非還元末端糖残基からの6-O-硫酸基の脱硫酸化
(2)β-ガラクトシダーゼ(GLB1)またはβ-ヘキソサミニダーゼ(HexA)による、非還元末端糖残基を除去するための加水分解反応
【0027】
糖分解酵素はエンド酵素またはエキソ酵素であり得る。好ましい実施形態によれば、糖分解酵素はエンド酵素である。
【0028】
中性pH条件における糖分解活性の観点からは、微生物に由来する糖分解酵素が好ましい実施形態に従って用いられる。微生物の限定しない例は、バシラス、エシェリキア、シュードモナス、フラボバクテリウム、プロテウス、アルスロバクター、ストレプトコッカス、バクテロイデス、アスペルギルス、エリザベトキンギア、およびストレプトマイセス属に属する微生物を包含する。特に、高い糖分解活性の観点から、バシラス属の微生物に由来する糖分解酵素がより好ましい実施形態において用いられる。
【0029】
本発明に用いられ得る糖分解酵素の例は、特に限定されないが、グリコサミノグリカン分解酵素、グリコシダーゼ、およびペプチド:N-グリカナーゼ(PNGase)を包含する。
【0030】
好ましい実施形態によれば、グリコサミノグリカン分解酵素(例えば、ケラタナーゼ、例えばケラタナーゼIまたはケラタナーゼII;ヘパリナーゼ、例えばヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、またはヘパリナーゼIII;ヘパリチナーゼ、例えばヘパリチナーゼIV、ヘパリチナーゼV、ヘパリチナーゼT-I、ヘパリチナーゼT-II、ヘパリチナーゼT-III、またはヘパリチナーゼT-IV;コンドロイチナーゼ、例えばコンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼACIII、コンドロイチナーゼB、またはコンドロイチナーゼC;ヒアルロニダーゼ、例えば放線菌に由来するヒアルロニダーゼまたはストレプトコッカスに由来するヒアルロニダーゼ);グルコシダーゼ(例えば、微生物に由来するβ-ガラクトシダーゼまたはα-ガラクトシダーゼ);およびペプチド:N-グリカナーゼ(PNGaseF、エンドグリコシダーゼH等)からなる群から選択される少なくとも1つが、糖分解酵素として用いられる。
【0031】
1つの実施形態によれば、ケラタナーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパリチナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、PNGaseF、およびエンドグリコシダーゼHからなる群から選択される少なくとも1つが、糖分解酵素として用いられる。
【0032】
より好ましい実施形態によれば、ケラタナーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパリチナーゼ、コンドロイチナーゼ、およびヒアルロニダーゼからなる群から選択される少なくとも1つが、糖分解酵素として用いられる。
【0033】
ケラタナーゼの例は、バシラスsp.Ks36に由来するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Hashimoto Shinichi, Morikawa Kiyoshi, Kikuchi Hiroshi, Yoshida
Keiichi, and Tokuyasu Kiyochika, Biochemistry, 60, 935 (1988))およびバシラス サーキュランス(Bacillus circulans)のKsT202に由来するエンド-β-N-アセ
チルグルコサミニダーゼ(Clinical Biochemistry 48 (2015) 796-802)を包含するバシ
ラス属の微生物に由来するケラタナーゼ;エシュキリア フレンディ(Escherichia freundii)に由来するエンド-β-ガラクトシダーゼ(H.Nakagawa, T.Yamada, J-L.Chien, A.Gardas, M.Kitamikado, S-C.Li, Y-T.Li, J. Biol. Chem., 255, 5955 (1980))を包含
するエシェリキア属の微生物に由来するケラタナーゼ;ならびにシュードモナスsp.IFO-13309株に由来するエンド-β-ガラクトシダーゼ(K.Nakazawa, N.Suzuki, S.Suzuki, J. Biol. Chem., 250, 905 (1975)、K.Nakazawa, S.Suzuki, J. Biol. Chem.,
250, 912 (1975))およびシュードモナス レプチリボラ(Pseudomonas reptilivora)
によって生産されるエンド-β-ガラクトシダーゼ(特公昭57-041236号)を包含するシュードモナス属の微生物に由来するケラタナーゼを包含するが、これらに限定されない。
【0034】
ヘパリナーゼの例は、フラボバクテリウム ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)などのフラボバクテリウム属の微生物に由来するヘパリナーゼ(米国特許第4443545号);バシラスsp.BH100などのバシラス属の微生物に由来するヘパリナーゼ;およびバクテロイデス属の微生物に由来するヘパリナーゼ、例えばバクテロイデス エガーシー(Bacteroides Eggerthii)に由来するヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、また
はヘパリナーゼIII(Glycobiology., 21, 1454-1531 (2011))を包含するが、これら
に限定されない。
【0035】
ヘパリチナーゼの例は、フラボバクテリウム属の微生物に由来するヘパリチナーゼ、例えばフラボバクテリウムsp.Hp206に由来するヘパリチナーゼIVまたはヘパリチナーゼV(特開平02-057183号);およびバシラス属の微生物に由来するヘパリチナーゼ、例えばバシラス サーキュランス(Bacillus circulans)のHpT298に由来するヘパリチナーゼT-I、ヘパリチナーゼT-II、ヘパリチナーゼT-III、またはヘパリチナーゼT-IV(米国特許第5290695号)を包含するが、これらに限定されない。
【0036】
コンドロイチナーゼの例は、プロテウス属の微生物に由来するコンドロイチナーゼ、例えばプロテウス ブルガリス(Proteus vulgaris)に由来するコンドロイチナーゼABC(T.Yamagata, H.Saito, O.Habuchi, S.Suzuki, J. Biol. Chem., 243, 1523 (1968)、S.Suzuki, H.Saito, T.Yamagata, K.Anno, N.Seno, Y.Kawai, T.Furuhashi, J. Biol. Chem., 243, 1543 (1968));およびフラボバクテリウム(Flavobactericum)属の微生物に由来するコンドロイチナーゼ、例えばフラボバクテリウム ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)に由来するコンドロイチナーゼAC(T.Yamagata, H.Saito, O.Habuchi, S.Suzuki, J. Biol. Chem., 243, 1523 (1968))、フラボバクテリウムsp.Hp102に由来するコンドロイチナーゼACIII(Miyazono Hirofumi, Kikuchi Hiroshi, Yoshida Keiichi, Morikawa Kiyoshi, and Tokuyasu Kiyochika, Biochemistry, 61, 1023 (1989))、フラボバクテリウム ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)に由来するコンドロイチナーゼB(Y. M. Michelacci, C. P. Dietrich, Biochem. Biophys. Res. Commun., 56, 973 (1974))、またはフラボバクテリウムsp.Hp102に由来するコンドロイチナーゼC(Miyazono Hirofumi, Kikuchi Hiroshi, Yoshida Keiichi, Morikawa Kiyoshi,
and Tokuyasu Kiyochika, Biochemistry, 61, 1023 (1989))を包含するが、これらに限定されない。
【0037】
ヒアルロニダーゼの例は、ストレプトマイセス ヒアルロリチカス(Streptomyces hyalurolyticus)などのストレプトマイセス属の微生物に由来するヒアルロニダーゼ;およ
びストレプトコッカス ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)などのストレプトコッカス属の微生物に由来するヒアルロニダーゼを包含するが、これらに限定されない。
【0038】
β-ガラクトシダーゼの例は、アスペルギルス オリザ(Aspergillus oryzae)などのアスペルギルス属の微生物に由来するβ-ガラクトシダーゼ;ストレプトコッカス ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)などのストレプトコッカス属の微生物に由来するβ-ガラクトシダーゼ;および大腸菌(Escherichia coli)などのエシェリキア属の微生物に由来するβ-ガラクトシダーゼを包含するが、これらに限定されない。
【0039】
α-ガラクトシダーゼの例は、アスペルギルス オリザ(Aspergillus oryzae)などのアスペルギルス属の微生物に由来するα-ガラクトシダーゼ;および大腸菌(Escherichia coli)などのエシェリキア属の微生物に由来するα-ガラクトシダーゼを包含するが、これらに限定されない。
【0040】
PNGaseFの例は、エリザベトキンギア メニンゴセプチカ(Elizabethkingia meningoseptica)などのエリザベトキンギア属の微生物に由来するPNGaseF;およびフラボバクテリウム メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)などのフラボバクテリウム属の微生物に由来するPNGaseFを包含するが、これらに限定されない。
【0041】
エンドグリコシダーゼHの例は、ストレプトマイセス プリカタス(Streptomyces plicatus)などのストレプトマイセス属の微生物に由来するエンドグリコシダーゼHを包含
するが、これらに限定されない。
【0042】
微生物はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)または製品評価技術基盤機構(NITE)などの機関から得られ得る。市販の酵素製剤が糖分解酵素として用いられ得る。
【0043】
微生物に由来する糖分解酵素は、微生物に存在する天然の酵素のものと同じアミノ酸配列を有し得る。さらに、糖分解酵素は、それが患者のリソソーム内の蓄積する糖部分の分解活性を有する限り、天然の酵素の配列中のアミノ酸の一部が置換、追加、挿入、および/または欠失させられたアミノ酸配列を有し得る。微生物に由来する糖分解酵素の限定しない例は、配列番号2のアミノ酸配列を有するバシラス サーキュランス(Bacillus circulans)のKsT202に由来するケラタナーゼのSer35からGly1502の部分的なポリペプチドを含有する酵素(Clinical Biochemistry 48 (2015) 796-802)、なら
びに前記部分的なポリペプチドのドメインC(Phe81からThr192)およびドメインD(Ala227からAla294)の少なくとも1つが配列番号2のアミノ酸配列からさらに欠失したポリペプチド鎖(Glycoconjugate Journal (2017), Volume 34, Issue 5, 643-649;DOI10.1007/s10719-017-9786-3)、例えば配列番号3、4、または5のアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。本発明の1つの実施形態によれば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらにはより好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を配列番号1から5のいずれか1つのアミノ酸配列に対して有するアミノ酸配列を有し、患者のリソソーム内の蓄積する糖部分の分解活性を有するタンパク質が、糖分解酵素として用いられる。
【0044】
好ましい実施形態によれば、微生物によって生産された糖分解酵素が用いられる。ホスト細胞として動物細胞を用いて生産された糖分解酵素と比較して、ホスト細胞として微生物を用いて生産された糖分解酵素は、より低いコストで、製造ロット間の一様な品質を有する酵素として提供され得る。糖分解酵素を生産するための微生物の好ましい例は、上に記載されているバシラスおよびエシェリキア属に属する微生物(例えば大腸菌)を包含する。ホスト細胞として微生物を用いて生産された糖分解酵素は、ホスト微生物の天然に産する酵素(すなわち、微生物そのものに由来する酵素)、または所望の酵素を生産するよ
うに遺伝子操作された微生物から得られた酵素であり得る。
【0045】
1つの実施形態によれば、患者への投与後にリソソームに実質的に移送されない糖分解酵素が用いられる。用語「実質的に移送されない」は、本明細書の記載および技術水準の考慮によって、リソソームに移送する糖分解酵素の量が、投与される糖分解酵素の量全体と比較して、所望の応答の獲得に寄与しない量であるということを意味する。
【0046】
糖分解酵素は、単一またはその2つ以上の組み合わせのどちらかで用いられ得る。2種類以上の糖が患者に蓄積しているケースでは、それらの糖の少なくとも1つを分解する活性を有する糖分解酵素が用いられる。代替的には、蓄積する糖のそれぞれの糖分解酵素の2つ以上が組み合わせで用いられ得る。
【0047】
糖分解酵素は、従来公知の化学基、これに限定されないが、アセチル基、ポリアルキレン基(例えば、ポリエチレングリコール化)、アルキル基、アシル基、ビオチン、標識(例えば、蛍光材料、ルミネッセンス材料などによる標識)、リン酸基、および硫酸基が挙げられる、によって修飾されてもよい。
【0048】
1つの態様に従うと、糖分解酵素としては、リソソーム蓄積症患者の欠損タンパク質とは異なる、患者のリソソーム内の蓄積する糖部分の分解活性を有する酵素が用いられる。この実施形態においては、治療に用いられる糖分解酵素は欠損タンパク質とは異なるので、これは、ERTに用いられる酵素に対する中和抗体を有する患者にとってもまた有効である治療であり得る。
【0049】
本願において用いられる用語「欠損タンパク質とは異なる」は、患者の欠損タンパク質に対するアミノ酸配列同一性が例えば90%以上かつ100%以下、80%以上かつ100%以下、70%以上かつ100%以下、60%以上かつ100%以下、または50%以上かつ100%以下である連続ポリペプチド鎖を有さないタンパク質をいう。糖分解酵素は、例えば99%未満、好ましくは90%未満、より好ましくは85%未満、さらにはより好ましくは70%未満、尚さらにはより好ましくは50%未満、最も好ましくは30%未満のアミノ酸配列同一性を患者の欠損タンパク質に対して有し得る。
【0050】
本願において用いられる用語「欠損酵素とは異なる」は、患者の欠損酵素に対するアミノ酸配列同一性が例えば90%以上かつ100%以下、80%以上かつ100%以下、70%以上かつ100%以下、60%以上かつ100%以下、または50%以上かつ100%以下である連続ポリペプチド鎖を有さない酵素をいう。糖分解酵素は、例えば99%未満、好ましくは90%未満、より好ましくは85%未満、さらにはより好ましくは70%未満、尚さらにはより好ましくは50%未満、最も好ましくは30%未満のアミノ酸配列同一性を患者の欠損酵素に対して有し得る。アミノ酸同一性は例えばClustalWを用いることによって評価され得る(Thompson, J.D., Higgins, D.G., and Gibson, T.J. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 4673-4680)。
【0051】
1つの実施形態によれば、切断部位がリソソーム蓄積症患者の欠損酵素と同一ではない分解酵素は、元々の欠損酵素とは異なる糖分解酵素として用いられ得る。すなわち、酵素は、リソソーム蓄積症患者の元々の欠損酵素のものとは異なるグリコシド結合において切断する能力がある。例えば、ケラタナーゼIIはケラタン硫酸(KS)上のN-アセチルグルコサミン-6-硫酸を認識し、エンド加水分解的な様式によって4GlcNAcβ1-3ガラクトースの間でKSを加水分解する。それゆえに、ケラタナーゼIIの切断部位はGALNS(そのコード遺伝子はモルキオA患者における劣性遺伝子である)またはβ-ガラクトシダーゼ(そのコード遺伝子はモルキオB患者における劣性遺伝子である)のものと同一ではない。
【0052】
1つの実施形態によれば、対象としてのリソソーム蓄積症患者とは異なる生物種に由来する糖分解酵素が糖分解酵素として用いられる。好ましい実施形態によれば、リソソーム蓄積症患者はヒトであり、患者のリソソーム内の蓄積する糖部分を分解する能力がある微生物に由来する酵素が、治療の糖分解酵素として用いられる。
【0053】
患者の欠損タンパク質とリソソーム内の蓄積する糖部分との間の関係性は各リソソーム蓄積症について既に周知である。欠損タンパク質とは異なる、蓄積する糖部分の分解活性を有する糖分解酵素の例が次の表に挙げられている。しかしながら、本発明の技術範囲はこれに限定されない。
【表1-1】

【表1-2】
【表2】
【表3】
【表4】
【0054】
1つの態様に従うと、マンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない酵素が糖分解酵素として用いられる。マンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない糖分解酵素は動物細胞によって生産されることが必要ではないので、かかる酵素は、バシラス属、大腸菌属などの微生物を用いることによって低コストで大量に生産され得る。
【0055】
マンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない所望の糖分解酵素は、N-グリコシル化システムを有さないバシラス属または大腸菌属などの微生物を用いるタンパク質発現システムによって得られ得る(Process Biochemistry 47 (2012) 2097-2102を参照)。すなわち、本発明の1つの実施形態によれば、N-グリコシル化システムを有さない微生物(例えば、UDP-GlcNAcホスホトランスフェラーゼまたはその対応する触媒活性を有する酵素を有していない微生物)から生産される糖分解酵素が用いられる。この実施形態によれば、所望の糖分解酵素は、微生物の天然に産する酵素(すなわち、バシラス属に由来する酵素)として、または例えば本願において下に記載される遺伝子組換え微生物からの組換え体酵素として得られ得る。
【0056】
上で言及されている糖分解酵素は公知の精製プロセスまたは公知の遺伝子組換え技術によって得られ得る。糖分解酵素を生産するための例示的な方法は;糖分解酵素を生産するための微生物および動物細胞からなる群から選択されるホスト細胞の培養物を得るステップと;培養物から糖分解酵素を回収するステップとを包含する。ホスト細胞によって生産される糖分解酵素は、ホスト細胞の天然に産する酵素(すなわち、ホスト細胞そのものに由来する酵素)、または所望の酵素を生産するように遺伝子操作されたホスト細胞からの酵素であり得る。
【0057】
本発明の1つの実施形態は、有効成分として糖分解酵素、例えば上に記載されている糖分解酵素を含有するリソソーム蓄積症のための治療剤を製造するための方法に関し、方法は、糖分解酵素を生産する微生物の培養物を得るステップと、培養物から糖分解酵素を回収するステップと、任意に、回収された糖分解酵素を薬学的に許容される添加剤と混合することによって組成物を製剤化するステップとを包含する。糖分解酵素を生産するために用いられる微生物の例は、バシラス、エシェリキア、シュードモナス、フラボバクテリウム、プロテウス、アルスロバクター、ストレプトコッカス、バクテロイデス、アスペルギルス、エリザベトキンギア、またはストレプトマイセス属に属する微生物を包含するが、これに限定されない。好ましくは、微生物は、バシラス属の微生物およびエシェリキア属の微生物からなる群から選択される少なくとも1つである。当業者は通常の方法に従って微生物の培養条件(すなわち、培養培地成分、温度条件など)を決定することができるはずである。動物細胞を用いることによって糖分解酵素が生産される場合と比較して、微生物を用いて糖分解酵素を生産することによって、大量の酵素が低コストで生産され得る。微生物によって生産される糖分解酵素は、微生物の天然に産する酵素、または所望の酵素を生産するように遺伝子操作された微生物からの酵素であり得る。
【0058】
糖分解酵素を製造するための方法は、標的糖分解酵素をコードする遺伝子を発現するための組換え体ベクターをホストに導入するステップを包含し得る。
【0059】
ベクターについては、それに導入された遺伝子を発現することができる好適なベクター(例えば、ファージベクター、プラスミドベクターなど)(好ましくは、プロモーターのような制御配列を含有する)が用いられ得る。ベクターはホスト細胞に応じて好適に選択される。より具体的には、ホスト-ベクターシステムの例は、pETシリーズ、pTrcHis、pGEX、pTrc99、pKK233-2、pEZZ18、pBAD、pRSET、およびpSE420のような原核細胞のための発現ベクターとの大腸菌の組み合わせ;ならびにpCMVシリーズ、pME18Sシリーズ、およびpSVLシリーズのような哺乳類細胞のための発現ベクターとのCOS-7細胞およびHEK293細胞などの哺乳類細胞の組み合わせ;ならびに昆虫細胞、酵母、およびバシラス サチリス(Bacillus
subtilis)からなる群から選択されるホスト細胞とそれらの細胞に対応する種々のベク
ターとの組み合わせを包含するが、これに限定されない。生産性および生産コストの観点からは、微生物(例えば大腸菌)が好ましい実施形態に従ってホスト細胞として用いられる。
【0060】
さらに、ベクターについては、挿入された遺伝子によってコードされるタンパク質またはマーカーペプチドもしくはシグナルペプチドとの融合タンパク質を発現するように構築されたベクターもまた用いられ得る。ペプチドの例は、プロテインA、インスリンシグナル配列、Hisタグ、FLAGタグ、CBP(カルモジュリン結合タンパク質)、およびGST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)を包含する。発現ベクターは、通常の方法に従って、標的ヌクレオチド配列がベクターに挿入され得るように、標的とされる配列を含有するポリヌクレオチドとベクターとを制限酵素によって処理することによって構築され得る。
【0061】
ホスト細胞は通常の方法に従って発現ベクターによって形質転換され得る。例えば、トランスフェクションのための市販の試薬を用いる方法、またはDEAE-デキストリン法、エレクトロポレーション法、もしくは遺伝子銃に基づく方法に従って、発現ベクターはホストに導入され得る。
【0062】
当業者は、通常の方法に従って、糖分解酵素を生産するための微生物または動物細胞の培養条件(すなわち、培養培地、培養条件など)を決定するはずである。例えば、大腸菌
がホスト細胞として用いられるときには、培養培地は、LB培地などを主成分として用いることによって調製され得る。さらに、COS-7細胞がホスト細胞として用いられるときには、細胞は、約2%(v/v)のウシ胎児血清を含有するDMEMを用いることによって37℃で培養され得る。
【0063】
培養された生成物からの糖分解酵素は、生産されるべき糖分解酵素に応じてタンパク質の抽出および精製のための公知の方法によって回収され得る。例えば、糖分解酵素が培養培地(すなわち、培養培地の上清)に分泌される可溶性形態で生産される場合には、要求される場合には、培養培地が回収され、そのまま糖分解酵素として用いられるということが可能である。さらに、糖分解酵素が細胞質に分泌される可溶性形態でまたは不溶性形態(すなわち、膜結合形態)で生産される場合には、糖分解酵素は、例えば、窒素キャビテーションデバイス、ホモジナイゼーション、ガラスビーズミル法、ソニケーション法、浸透圧ショック法、凍結融解法、界面活性剤を用いる抽出、またはその組み合わせを用いることによって抽出され得る。糖分解酵素は、塩析、硫安分画、遠心、透析、限外濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、およびその組み合わせのような従来公知の手段によって精製され得る。
【0064】
1つの実施形態において、糖分解酵素を製造するための方法は、エンドトキシンが実質的に含有されない程度まで、回収された糖分解酵素中のエンドトキシンレベルを低下させるステップを包含する。表現「エンドトキシンが実質的に含有されない」は、もたらされる酵素がリソソーム蓄積症の治療に用いられる材料として好適であるように、エンドトキシンの濃度が医学的に許容されるレベルを超えないということを意味する。1つの実施形態において、回収された糖分解酵素中のエンドトキシンレベルはクロマトグラフィー精製によって低下させられ得る。1つの実施形態において、エンドトキシンレベルは50エンドトキシン単位/mgタンパク質以下まで低下させられる。好ましい実施形態において、エンドトキシンレベルは15エンドトキシン単位/mgタンパク質以下まで低下させられる。エンドトキシンレベルは、第十六改正日本薬局方に記載されている方法に従って、例えばENDOSPECY(TM)(ES-50M、生化学バイオビジネス製造)を用いることによって測定され得る。
【0065】
回収された糖分解酵素は、要求される場合には、凍結乾燥のような公知の方法によって乾燥され得る。
【0066】
本願において用いられる用語「治療」は、完全な治癒のみならず、疾患の症状の改善または快方、疾患進行の抑制(進行速度を維持することおよび低下させることを包含する)、ならびに疾患の防止をもまた包含する。本願において、防止は、低身長、精神発達遅滞、運動障害、肝脾腫、粗な顔貌、骨異常、関節形成不全、関節拘縮、四肢痛、関節痛、発汗障害、巨舌、難聴、呼吸器疾患、および/または神経障害のような障害に付随する種々の症状がまだ起こっていないときに、障害の種々の症状を前もって防止することを包含するが、これに限定されない。さらに、例えば、防止は、明瞭な器質的病変が認識されてはいないが身体および精神機能障害のような障害に付随する種々の症状の始まりを有するケースにおいて、器質的病変の始まりを前もって防止することと、それらの種々の症状のうちまだ見せられていない症状の進行を抑制することとを包含する。
【0067】
本願において用いられる用語「有効成分として」は、成分の量が適当なリスク/ベネフィット比にとって好適であり、過剰な副作用(毒性、刺激など)なしに所望のアウトカムを得るために十分であるということを指示している。有効量は、投与の対象となるべき患者の症状、体格、年齢、性別などを包含する種々の因子に応じて変わり得る。しかしながら、当業者は、本願において後で記載される具体例および通常の技術知識の参照によって
有効量を決定する能力があるであろう。
【0068】
本願において用いられる「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、およびウマ)、より好ましくはヒトをいう。
【0069】
本発明の1つの態様は、有効成分として上に記載されている糖分解酵素を含有するリソソーム蓄積症のための治療剤に関する。
【0070】
本発明のさらなる態様は、上記の治療剤を、これを必要とする患者に投与することを包含するリソソーム蓄積症のための治療方法に関する。
【0071】
インビボまたはインビトロどちらかで治療剤を投与するための剤形および投与経路は、治療されるべき疾患またはその重症度に従って好適に選択され得る。例えば、糖分解酵素は、そのままで、または薬学的に許容される担体、基剤、および希釈剤などの他の添加剤(単数もしくは複数)との医薬組成物として(例えば、注射液、錠剤、カプセル、液体製剤、軟膏、もしくはゲル製剤として)、非経口的または経口的にどちらかで投与され得る。好ましい実施形態によれば、治療剤は注射液(例えば、静脈内注射、皮下注射、脊椎注射、筋肉内注射、皮下組織注射、腹腔内注射、および関節内注射)に製剤化される。
【0072】
治療剤の有効成分としての糖分解酵素の配合量および用量は、投与方法、投与形態、製剤の使用の目的、患者の具体的な症状、患者の体重などに対応して個別に決定される。糖分解酵素の配合量および用量は、これに特に限定されないが、臨床用量の点では日あたり約10ng/kgから100mg/kgであり得る。薬剤は患者に単回または反復投与され得る。さらにその上、反復投与されるときには、投与の間隔は1から10週間の間で変えられ得る。
【0073】
本発明によれば、糖分解酵素は患者の生体内のリソソームに送達されることは必要ではない。実際に、本発明のいくつかの態様によれば、糖分解酵素は、リソソーム蓄積症を治療する目的で、患者に投与されるよりもむしろ患者の血液と接触させられるようにして用いられ得る。
【0074】
本発明の1つの態様によれば、担体と担体に固定化された糖分解酵素とを包含するリソソーム蓄積症を治療するためのデバイスが提供される。
【0075】
担体は、それが糖分解酵素を固定化し得、水および血液に不溶性である限り、特に限定されない。担体の形状は特に限定されず、ミクロ粒子、ビーズ、プレート(例えばマイクロプレートウェル)、チューブ、および膜(例えば、フィルター形態、中空糸形態、および平膜形態)を包含する。担体の材料の例は、アガロース、セルロース、セルロースエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ニトロセルロース、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、およびシリカを包含するが、これに限定されない。
【0076】
糖分解酵素は、物理吸着、共有結合、またはトラップなどの一般的な方法を用いて、物理的または化学的にどちらかで糖分解酵素を担体に結合することによって固定化され得る(固定化酵素,1975年,講談社刊,9から75頁を参照)。
【0077】
患者のリソソームに蓄積する糖が患者の血液を糖分解酵素と接触させることによって分解され得る限り、治療デバイスの実施形態は特に限定されない。治療デバイスの形状の例は、ミクロ粒子、ビーズ、プレート(例えばマイクロプレートウェル)、チューブ、およ
び膜(フィルター形態、中空糸形態、および平膜形態)を包含するが、これに限定されない。いくつかの実施形態によれば、治療デバイスは、糖分解酵素、例えば微粒子酵素が固定化されたカラムからなる。カラムの材料の例はポリカーボネート、ポリスチレン、ABS樹脂、およびガラスを包含するが、これに限定されない。
【0078】
本願において用いられる用語「血液」は、全血、血清、血漿、および血液成分を包含する未処理および処理済み血液を意味するものとする。
【0079】
本発明の1つの態様は、上記の治療デバイスと、リソソーム蓄積症患者から採取された血液をデバイスに輸送するための脱血側回路と、治療デバイスに含有される糖分解酵素と接触させられた血液をリソソーム蓄積症患者に輸送するための返血側回路と、脱血側回路および返血側回路を通して血液を圧送するための血液ポンプとが提供された血液循環システムである。血液循環システムは2つ以上の血液ポンプを備え得る。本発明の1つの実施形態は、血液循環システムを用いてリソソーム蓄積症を治療するための方法に関する。
【0080】
本発明の1つの態様はリソソーム蓄積症を治療するための方法であり、リソソーム蓄積症患者から採取された血液を糖分解酵素と接触させるステップと、糖分解酵素と接触させられた血液を患者に輸送するステップとを包含する。図1は、リソソーム蓄積症を治療するための血液循環システム(100)を例示する模式的な図式である。しかしながら、本発明の実施形態は図1のモードに限定されない。
【0081】
治療の血液循環システム(100)に従うと、患者の血液は、血液ポンプ(3)の助けによって、脱血側回路(2a)を経て治療デバイス(1)に供給される。治療デバイス(1)に関しては、リソソーム蓄積症患者から採取された血液は治療デバイス(1)に含有される糖分解酵素との接触をさせられ、それにより、血液中の上昇した糖は糖分解酵素との接触時に分解させられる。糖分解酵素と接触させられた血液は、血液ポンプ(3)の助けによって、返血側回路(2b)を経てリソソーム蓄積症患者に輸送される。血液回路(2)上には、動脈圧計、静脈圧計、および/または例示されていない医薬などを投与するための入り口が提供され得る。
【0082】
リソソーム蓄積症の治療のためには、患者の全血または血漿が用いられ得る。
【0083】
治療デバイスはインプラント型または体外型の循環装置のいずれでもあり得る。
【0084】
(実施形態)
本願において下では、本発明の好ましい実施形態が例示されるが、本発明はこれに限定されない;
(1)有効成分として糖分解酵素を包含するリソソーム蓄積症のための治療剤であって、
糖分解酵素は、対象としてのリソソーム蓄積症患者の欠損タンパク質とは異なり、患者のリソソームに蓄積する糖を分解する活性を有する。
(2)(1)に従う治療剤であって、糖分解酵素はマンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない。
(3)(1)または(2)に従う治療剤であって、糖分解酵素は、患者のリソソームに蓄積する糖の切断部位の点で、リソソーム蓄積症患者の欠損タンパク質とは異なる。
(4)有効成分として糖分解酵素を包含するリソソーム蓄積症のための治療剤であって、糖分解酵素はマンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない。
(5)(1)から(4)のいずれか1つに従う治療剤であって、糖分解酵素はエンド型酵素である。
(6)(1)から(5)のいずれか1つに従う治療剤であって、リソソーム蓄積症は、
ムコ多糖症、スフィンゴリピドーシス、糖原病II型、および糖タンパク質蓄積症からなる群から選択される。
(7)(1)から(6)のいずれか1つに従う治療剤であって、リソソーム蓄積症は、ハーラー病、シャイエ病、ハンター病、サンフィリポ病A、サンフィリポ病B、サンフィリポ病C、サンフィリポ病D、モルキオ病A、モルキオ病B、マロトー・ラミー病、スライ病、ムコ多糖症IX型、およびムコ多糖症プラス症候群からなる群から選択される。
(8)(1)から(7)のいずれか1つに従う治療剤であって、糖分解酵素は、グリコサミノグリカン分解酵素、グリコシダーゼ、およびペプチド:N-グリカナーゼからなる群から選択される。
(9)(1)から(8)のいずれか1つに従う治療剤であって、糖分解酵素は、ケラタナーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパリチナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、PNGaseF、およびエンドグリコシダーゼHからなる群から選択される少なくとも1つである。
(10)(1)から(9)のいずれか1つに従う治療剤であって、糖分解酵素は微生物に由来する。
(11)(10)に従う治療剤であって、微生物はバシラス属に属する微生物である。
(12)(1)から(11)のいずれか1つに従う治療剤であって、患者はヒトである。
(13)(1)から(12)のいずれか1つに従う治療剤であって、糖分解酵素を生産するホスト細胞は微生物である。
(14)(1)から(13)のいずれか1つに従う治療剤であって、治療剤は注射用製剤に製剤化されている。
(15)有効成分として糖分解酵素を含有するリソソーム蓄積症のための治療剤を製造するための方法であって、方法は:
糖分解酵素を生産する微生物の培養物を得るステップと;
培養物から糖分解酵素を回収するステップと;
任意に、回収された糖分解酵素を薬学的に許容される添加剤と混合することによって組成物を製剤化するステップと、
を包含する。
(16)(15)に従う方法であって、微生物は、バシラスおよびエシェリキア属に属する微生物からなる群から選択される。
(17)(15)または(16)に従う方法であって、方法は、エンドトキシンが実質的に含有されない程度まで、回収された糖分解酵素中のエンドトキシンレベルを低下させるステップを包含する。
(18)(15)から(17)のいずれか1つに従う方法であって、治療剤は(1)から(14)のいずれか1つから選択される。
(19)リソソーム蓄積症のための治療デバイスであって:
担体と担体に固定化された糖分解酵素とを包含し、
糖分解酵素は、対象としてのリソソーム蓄積症患者の欠損タンパク質とは異なり、患者のリソソームに蓄積する糖を分解する活性を有する。
(20)リソソーム蓄積症のための治療デバイスであって:
担体と担体に固定化された糖分解酵素とを包含し、
糖分解酵素はマンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない。
(21)リソソーム蓄積症を治療するための血液循環システムであって:
(19)または(20)に従う治療デバイスと;
リソソーム蓄積症患者から採取された血液を治療デバイスに輸送するための脱血側回路と;
治療デバイスに含有される糖分解酵素と接触させられた血液をリソソーム蓄積症患者に輸送するための返血側回路と;
脱血側回路および返血側回路の内部の血液を圧送するための血液ポンプと、
を包含する。
(22)リソソーム蓄積症を治療するための方法であって、(1)から(14)のいずれか1つに従う治療剤を、これを必要とする患者に投与することを包含する。
(23)リソソーム蓄積症を治療するための方法であって:
リソソーム蓄積症患者から採取された血液を糖分解酵素と接触させるステップと;
糖分解酵素と接触させられた血液を患者に輸送するステップと、を包含し、
糖分解酵素は、患者の欠損タンパク質とは異なり、患者のリソソームに蓄積する糖を分解する活性を有する。
(24)(23)に従う方法であって、糖分解酵素はマンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない。
(25)(23)または(24)に従う方法であって、糖分解酵素は、患者のリソソームに蓄積する糖の切断部位の点で、リソソーム蓄積症患者の欠損タンパク質とは異なる。
(26)(23)から(25)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素はエンド型である。
(27)(23)から(26)のいずれか1つに従う方法であって、リソソーム蓄積症は、ムコ多糖症、スフィンゴリピドーシス、糖原病II型、および糖タンパク質蓄積症からなる群から選択される。
(28)(23)から(27)のいずれか1つに従う方法であって、リソソーム蓄積症は、ハーラー病、シャイエ病、ハンター病、サンフィリポ病A、サンフィリポ病B、サンフィリポ病C、サンフィリポ病D、モルキオ病A、モルキオ病B、マロトー・ラミー病、スライ病、ムコ多糖症IX型、およびムコ多糖症プラス症候群からなる群から選択される。
(29)(23)から(28)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素は、グリコサミノグリカン分解酵素、グリコシダーゼ、およびペプチド:N-グリカナーゼからなる群から選択される。
(30)(23)から(29)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素は、ケラタナーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパリチナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、PNGaseF、およびエンドグリコシダーゼHからなる群から選択される少なくとも1つである。
(31)(23)から(30)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素は微生物に由来する。
(32)(31)に従う方法であって、微生物はバシラス属に属する微生物である。
(33)(23)から(32)のいずれか1つに従う方法であって、患者はヒトである。
(34)(23)から(33)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素を生産するホスト細胞は微生物である。
(35)(23)から(34)のいずれか1つに従う方法であって、治療剤は注射用製剤に製剤化されている。
(36)リソソーム蓄積症を治療するための方法であって:
リソソーム蓄積症患者から採取された血液を糖分解酵素と接触させるステップと;
糖分解酵素と接触させられた血液を患者に輸送するステップと、を包含し、
糖分解酵素はマンノース-6-リン酸部分またはマンノース部分を有さない。
(37)(36)に従う方法であって、糖分解酵素はエンド型である。
(38)(36)または(37)に従う方法であって、リソソーム蓄積症は、ムコ多糖症、スフィンゴリピドーシス、糖原病II型、および糖タンパク質蓄積症からなる群から選択される。
(39)(36)から(38)のいずれか1つに従う方法であって、リソソーム蓄積症は、ハーラー病、シャイエ病、ハンター病、サンフィリポ病A、サンフィリポ病B、サンフィリポ病C、サンフィリポ病D、モルキオ病A、モルキオ病B、マロトー・ラミー病、スライ病、ムコ多糖症IX型、およびムコ多糖症プラス症候群からなる群から選択される

(40)(36)から(39)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素は、グリコサミノグリカン分解酵素、グリコシダーゼ、およびペプチド:N-グリカナーゼからなる群から選択される。
(41)(36)から(40)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素は、ケラタナーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパリチナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、PNGaseF、およびエンドグリコシダーゼHからなる群から選択される少なくとも1つである。
(42)(36)から(41)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素は微生物に由来する。
(43)(42)に従う方法であって、微生物はバシラス属に属する微生物である。
(44)(36)から(43)のいずれか1つに従う方法であって、患者はヒトである。
(45)(36)から(44)のいずれか1つに従う方法であって、糖分解酵素を生産するホスト細胞は微生物である。
(46)(36)から(45)のいずれか1つに従う方法であって、治療剤は注射用製剤に製剤化されている。
【実施例
【0085】
以下では、本発明の好ましい実施形態が例の参照によってより詳細に説明される。しかしながら、本発明の技術範囲は次の例に限定されない。
【0086】
調製例
(酵素活性を測定するための方法)
酵素活性は、ケラタン硫酸の加水分解に従って生ずる末端還元糖の増大に基づいてパーク・ジョンソン法[J. Biol. Chem., 181, 149 (1949)]を用いることによって測定した
。すなわち、ウシ角膜に由来するケラタン硫酸の50μl(2.4mg/ml)水溶液に、50μlの酵素溶液および100μlの0.2M酢酸緩衝液(pH6.0)を追加し、反応が37℃で15分間に渡って起こることを許した。200μlの炭酸-シアン化物溶液(5.3gの炭酸ナトリウムおよび0.65gのシアン化カリウムを1000mlの水に溶解した)を反応溶液に追加することによって、反応を終了させた。それから、反応溶液に、200μlのフェリシアン化物溶液(1000mlの水に溶解した0.5gのフェリシアン化カリウム)を追加し、沸騰浴によって15分間に渡って加熱した。水浴によって反応溶液を冷却した後に、1mlの硫酸第二鉄溶液(1000mlの0.05N硫酸に溶解した1.5gの硫酸鉄(III)アンモニウム十二水和物および1gのドデシル硫酸ナトリウム)を追加し、次に混合した。反応が37℃で15分間に渡って起こることを許すことによって、測定溶液を得た。690nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、得られた吸光度をAとしてとった。50μlの熱不活性化した酵素溶液を上記の酵素溶液の代わりに用いたこと以外は、上と同じ処理を実施することによって得られた吸光度をAとしてとった。さらにその上、10nmol/200μlのN-アセチルグルコサミン溶液を反応溶液の代わりに処理したこと以外は、上と同じ処理を実施することによって得られた吸光度をAstとしてとった。上記の条件において1分間に1μmolのガラクトースまたはN-アセチルグルコサミンに対応する還元糖を生産する酵素の量を、1単位として定義した(本願において下では、これは「単位」または「U」と略称され得る)。1mlあたりの酵素単位数は次の等式に基づいて計算した。
【数1】
【0087】
(糖分解酵素の生産および精製)
Bacillus circulansのKsT202株を、サメ軟骨に由来する0.2(w/v)%ケラタン硫酸を追加したブレインハートインフュージョン斜面培地(20(w/v)%ウシ脳加水分解物、25(w/v)%ウシ心臓加水分解物、1(w/v)%ペプトン消化生成物、0.5(w/v)%NaCl、0.25(w/v)%リン酸二ナトリウム、および1.5(w/v)%寒天、pH7.2)によって継代培養した。
【0088】
1.5%(w/v)ペプトン(極東製薬工業株式会社製造)、0.75%(w/v)ビール酵母エキス(日本製薬株式会社製造)、0.75%(w/v)ケラタン硫酸(サメ軟骨由来、生化学工業製造)、0.5%(w/v)KHPO、0.02%(w/v)MgSO・7HO、0.5%(w/v)NaCl、および0.0015%(w/v)消泡剤(アデカノール(TM)LG109、旭電化工業製造)を含有する20Lの培地(pH8.0)を調製した。培地を30Lの体積を有するジャー発酵器に追加し、蒸気滅菌を121℃で20分間に渡って実施した。それから、37℃において16時間に渡って振盪しながら同じ培地で継代培養したBacillus circulansのKsT202株の培養された培地の1L(5%(w/v))を、上で滅菌した新しい培地に無菌的な様式で接種した。それから、培養を1vvm通気量で45℃において24時間に渡って攪拌(300rpm)しながら行った。細胞体を取り除くために、培養ブロスを連続固液分離機によって遠心し、およそ20Lの細胞外液を得た。この細胞外液中に包含されるケラタナーゼの酵素力価は11.6mU/mlであった。さらにその上、Bacillus circulansのKsT202株(受託番号:FERM BP-5285)は、1994年9月5日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現在では、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター)にFERM P-14516の微生物受託番号で寄託した。さらにその上、1995年11月6日に、これはブダペスト条約に基づき国際寄託機関に移管した。配列番号1は、Bacillus circulansのKsT202株に由来するケラタナーゼ(エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ)の全長アミノ酸配列(GenBank:AAO88279.1)を指示している。
【0089】
細胞外液からタンパク質を得るために、70%飽和を与えるように硫酸アンモニウムを追加し、もたらされた沈殿を遠心によって回収した。得られた沈殿を2.5Lの10mMトリス酢酸緩衝液(pH7.5、緩衝液A)中に溶解した。この溶液に、35%飽和を与えるように硫酸アンモニウムを追加し、もたらされた沈殿を遠心によって取り除いた。上清に硫酸アンモニウムを追加して55%飽和を与えた。それから、もたらされた沈殿を遠心によって回収した。55%飽和による沈殿を2.5Lの緩衝液A(pH7.5)中に溶解した。爾後に、酵素吸着を有するように、溶解した溶液が緩衝液Aによって前もって平衡化したDEAE-セルロースDE52(ワットマン製造)カラム(5.2cm×24cm)を通過することを許した。カラムを1.5Lの緩衝液Aによって洗浄した。それから、緩衝液A中の塩化ナトリウム濃度を0Mから0.3Mに直線的に増大させて、酵素を溶出した。活性画分を回収し、硫酸アンモニウムを追加して55%飽和を与えた。爾後に、もたらされた沈殿を遠心によって回収し、小量の10mMトリス酢酸緩衝液(pH7.5)中に溶解した。それから、溶解した溶液をSephacryl(TM)S-300(GEヘルスケア製造)カラム(3.4cm×110cm)に載せ、それから、ゲル濾過クロマトグラフィーを、0.5M塩化ナトリウムを含有する50mMトリス酢酸緩衝液(pH
7.5)を用いることによって行った。活性画分をUK-10膜(アドバンテック東洋株式会社製造)による限外濾過によって濃縮し、およそ100倍の量の緩衝液Aに対して透析した。透析の内側の液体を、緩衝液Aによって前もって平衡化したDEAE-トヨパール(TM)(東ソー株式会社製造)カラム(2.2cm×15cm)にかけた。爾後に、カラムを、0.1MのNaClを含有する150mlの緩衝液Aによって洗浄した。それから、カラムを0.1Mから0.2MのNaCl直線勾配によって溶出して、精製された酵素を得た。酵素画分を限外濾過によって濃縮し、Sephacryl(TM)S-300(GEヘルスケア製造)カラム(2.2cm×101cm)に載せて、ゲル濾過クロマトグラフィーを実施した。4MのNaCl溶液を有するように、NaClを酵素画分に追加した。それから、溶液を、4MのNaClを含有する10mMトリス酢酸(pH7.5)によって前もって平衡化したフェニルセファロース(TM)(GEヘルスケア製造)カラム(1.6cm×15cm)にかけた。爾後に、カラムを4Mから0MのNaCl直線勾配によって溶出して、精製された酵素を得た。29単位の酵素が得られ、比活性は2.09U/mgであった。タンパク質濃度は参照標準としてウシ血清アルブミンを用いるローリーアッセイによって測定した。
【0090】
エンドトキシンレベルを低下させるために、上で得られた酵素を、0.15MのNaClおよび0.1mMのCaClを有する0.02MのHEPES緩衝液によって平衡化したEndoTrap(TM)HDカラム(φ0.7cm×2.7cm、1ml、Hyglos社)にかけ、フロースルー画分を回収した。使用後に、カラムは、1MのNaClおよび2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を有する3カラム体積(CV)の0.02MのHEPES緩衝液(pH7.4)によって再生した。フロースルー画分中のエンドトキシン濃度をENDOSPECY(TM)(ES-50M、生化学バイオビジネス製造)によって測定した。このEndoTrapカラム操作を反復して8回実施した。最後に回収されたフロースルー画分を濃縮し、緩衝液を膜式限外濾過によってリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に交換した。もたらされた溶液を0.22μm濾過によって滅菌した。最終的な液体量は9mlであり、活性は50.0U/mlであり、比活性は11.5U/mgタンパク質であり、エンドトキシンレベルは12.8エンドトキシン単位/mgタンパク質であった。タンパク質濃度は参照標準としてウシ血清アルブミンを用いるローリーアッセイによって測定した。
【0091】
例1
(単回投与試験)
GALNSホモノックアウトマウスを試験に用いた。8週齢GALNSホモノックアウトマウスに、尾静脈からケラタナーゼを0.5U/ml、4μl/g体重の用量で単回投与した(処置群)。対照として、PBSを同様に投与した(無処置群)。
【0092】
血清サンプル(100μl)を8(投与前)、9、10、11、および15週齢の時点で浅側頭静脈から採取した。
【表5】
【0093】
(血清中ケラタン硫酸の定量)
血清中のケラタン硫酸およびヘパリン硫酸の定量は文献に記載されている方法に基づい
て実施した(Metabolites 2014, 4, 655-679)。簡略には、血清中のケラタン硫酸およびヘパリン硫酸をグリコサミノグリカン分解酵素の混合物によって消化し、生ずる二糖の量を定量した。ケラタンモノ硫酸化型二糖標準のガラクトースβ1→4N-アセチルグルコサミン-6-硫酸はCarbosynthから購入した(製品コードOA09703)。非硫酸化型の不飽和ヘパラン二糖(デルタdiHS-0S)標準は生化学工業から得た。より詳細な測定方法は本願において以下に記載されている。
【0094】
血清サンプルを次の方法に従って前処理した。オメガ10K膜フィルター(PN8034、ポール・コーポレーション製造)に、10μlの血清サンプルおよび90μlの50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を追加し、血清サンプル中の低分子量成分を15分間の2,500gにおける遠心によって取り除いた。膜フィルターを新たなリザーバープレートにセットし、未使用のウェルに、段階希釈された二糖標準の各10μlを追加した。10μlの内部コントロール(コンドロシン5μg/ml)、60μlの50mMトリス塩酸溶液(pH7.0)、および3つのグリコサミノグリカン分解酵素の各0.5mU/10μlを血清サンプルに追加した。これらの3つの酵素は、(i)コンドロイチナーゼABC(Proteus vulgaris由来、生化学工業製造)またはコンドロイチナーゼB(Flavobacterium heparinum由来、生化学工業製造)、(ii)ヘパリチナーゼ(Flavobacterium heparinum由来、生化学工業製造)、および(iii)ケラタナーゼII(バシラスsp.由来、生化学工業製造)であり、50mMトリス塩酸緩衝液中に可溶化した。プレートを37℃で16時間に渡ってインキュベーションし、それから2,500gで15分間に渡って遠心した。リザーバープレート上に回収された測定サンプルはケラタン硫酸二糖の定量まで-20℃で保存した。
【0095】
ケラタン硫酸およびヘパラン硫酸二糖の検出のためには、6460トリプル四重極質量分析計(アジレント・テクノロジー製造)を有する1210インフィニティーLCシステムのLC-MS/MSシステムを用いた。二糖の分離のためには、hypercarb(TM)カラム(P/N:35005-052130、φ2.0mm×50mm、5μm粒子、サーモサイエンティフィック製造)を用いた。移動相は0.025%(v/v)アンモニア中の0から90%(v/v)アセトニトリルの勾配溶出であった。ケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖は、負イオンモードに従って前駆体イオンを462.00かつ生成物イオンを97.00で検出した。ヘパラン硫酸非硫酸化型二糖(デルタdiHS-0S)は前駆体イオンを379.29かつ生成物イオンを175.10で検出した。
【0096】
(結果)
図2Aはケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルを示している。ケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルは、微生物に由来する糖分解酵素の単回静脈内投与によって2週間を超えて有意に減少した。
【0097】
図2BはデルタdiHS-0Sの血清中レベルを示している。デルタdiHS-0Sの血清中レベルは糖分解酵素の静脈内投与によって影響されなかった。
【0098】
例2
(反復投与試験)
GALNSホモおよびヘテロノックアウトマウスを試験に用いた。生後1日または2日に、ホモノックアウトマウスに、80mU/ml、25μl/g体重のケラタナーゼを浅側頭静脈から投与し、4および8週齢に0.5U/ml、4μl/g体重のケラタナーゼを尾静脈から投与した(処置群)。ケラタナーゼの代わりに、PBSを同じ様式でGALNSホモおよびヘテロノックアウトマウスに投与した(それぞれ無処置群およびコントロール群)。
【表6】
【0099】
血清サンプル(100μl)を8および12週齢に尾静脈から採取した。12週齢に、マウスを二酸化炭素暴露によって屠殺し、病理組織学用に膝関節を採取した。
【0100】
(病理組織学)
膝関節のパラフィン包埋組織標本を下に記載されているように作製した。すなわち、採取された組織を10%(v/v)中性緩衝ホルマリン溶液によって固定した。次に、骨が軟化するまで、組織を脱灰液(ギ酸:10%(v/v)中性緩衝ホルマリン:蒸留水=1:1:18(v:v:v))によって脱灰した。脱灰完了後に、組織を硫酸ナトリウムの5%(w/v)水溶液によって一晩中和し、その後、流水中で10時間ほど洗浄した。次に、組織を次の手順のようにパラフィン包埋および切片化した;組織を順に70%(v/v)、80%(v/v)、および99%(v/v)のエタノール系列によって脱水した。次に、エタノールをキシレンに置換し、キシレンをさらにパラフィンワックスに置換した。次に、パラフィンワックス浸透組織をワックスブロックに包埋した。ミクロトームを用いて3μm厚切片を作製した。切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)によって染色した。
【0101】
膝関節の樹脂包埋組織標本を下に記載されているように作製した。採取した組織を2%(v/v)グルタルアルデヒド/4%(v/v)パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液によって固定した。次に、骨が軟化するまで、組織を脱灰液(5%(w/v)EDTA2Na、pH6.0から6.5)によって脱灰した。次に、組織を四酸化オスミウムによって固定し、加工し、Spurr樹脂に包埋した。ウルトラミクロトームを用いて0.5μm厚切片を作製した。切片をトルイジンブルーによって染色した。
【0102】
(結果)
ケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルの結果が図3Aに示されている。処置群のケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルは12週齢において無処置群の30%未満であった。逆に、図3Bに示されているように、デルタdiHS-0Sの血清中レベルは有意に影響されなかった。
【0103】
12週齢マウスからの大腿骨骨端軟骨板のH&E染色組織が図4に示されている(元の倍率は400×)。無処置群のマウス(図4B)は、コントロール群のマウス(図4A)と比較して軟骨細胞の有意な肥大化および空胞化(矢頭)ならびに軟骨細胞の配列不整を示した。一方、処置群のマウスでは、軟骨細胞の肥大化および空胞化ならびに軟骨細胞の配列不整は無処置群のマウスと比較して抑制されていた(図4C)。
【0104】
12週齢マウスからの大腿骨骨端軟骨板のトルイジンブルー染色組織が図5に示されている(元の倍率は800×)。無処置群のマウス(図5B)はコントロール群のマウス(図5A)と比較して軟骨細胞の有意な肥大化および空胞化(矢頭)を示した。一方、処置
群のマウスでは、軟骨細胞の肥大化および空胞化は無処置群のマウスと比較して抑制されていた(図5C)。
【0105】
例3-1
(酵素固定化カラムの調製)
1.5gのCNBr活性化セファロース(TM)4B(GEヘルスケア製造)が2.5mM塩酸中において膨潤することを許す。ガラスフィルター上において、セファロース(TM)4B樹脂を200mlの2.5mM塩酸によって数回洗浄し、最後に、0.1MのNaHCOおよび0.5MのNaClを含有する100mlの緩衝液B(pH8.3)によって洗浄する。2.4mlの膨潤した樹脂に対して、上で得られたケラタナーゼの4mgを追加し、4mlの溶液Bによって懸濁する。懸濁液を低温(4℃)で24時間に渡ってゆっくり攪拌する。ガラスフィルターによって通過分を取り除いた後に、樹脂を樹脂体積の10倍の0.2Mトリス塩酸(pH8.0)中に再懸濁する。懸濁液を低温(4℃)で24時間に渡ってゆっくり攪拌する。それから、樹脂をカラムにパッキングし、3CVの0.1M酢酸ナトリウムおよび0.5MのNaCl(pH4.0)によってコンディショニングする。爾後に、カラムを0.5MのNaClを有する3CVの0.1Mトリス塩酸(pH8.0)によって洗浄する。最後に、カラムを25mlのPBSによって洗浄し、糖分解酵素固定化カラムを得る。
【0106】
例3-2
(C末端短縮型ケラタナーゼの調製)
C末端短縮型ケラタナーゼ遺伝子(配列番号2)をGenScriptによって合成し、6×Hisタグ配列が発現構築物のC末端に追加され得るようにしてpET26bベクターのBamHIおよびHindIII部位にサブクローニングした。発現構築物を大腸菌BL21Star(DE3)(サーモフィッシャーサイエンティフィック)に形質転換した。0.5から0.7のOD600まで、形質転換体を30μg/mlカナマイシンを有するLB培地によって37℃で培養した。0.4から1.0mMの終濃度を与えるように、イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシドを培養物に追加し、培養物を振盪インキュベーター内において3hに渡って37℃に保った。大腸菌細胞を遠心によって収穫し、10mMトリス塩酸、0.5MのNaCl、および1mMフッ化フェニルメチルスルホニルを含有する液体中に再懸濁した。超音波処理および4℃における15minの50,000×gでの遠心によって調製した大腸菌ライセートをNi-セファロースカラムにかけ、酵素画分を直線勾配の0から300mMイミダゾールによって溶出した。酵素画分中のエンドトキシンを低下させるために、5%(v/v)のTritonX-114を混合し、混合物を氷上で5minに渡って冷やした。それから、混合物を5minに渡って37℃水浴中に保ち、次に5minの2,300×gによって上相を回収した。エンドトキシンを低下させるためのこのステップを5回反復した。酵素溶液を限外濾過デバイス(アミコンウルトラ15-100K、メルクミリポア)によって濃縮し、PBSによって平衡化したHiprep(TM)16/60sephacrylカラム(GEヘルスケア)に載せた。もたらされた溶液を0.22μm濾過によって滅菌した。11.3U/mlの酵素活性および1.5U/mgの比活性および0.003エンドトキシン単位/mgタンパク質のエンドトキシンレベルを有する5mlの液体が最後に得られた。タンパク質濃度は参照標準としてウシ血清アルブミンを用いるマイクロBCAアッセイによって測定した。
【0107】
(酵素固定化カラムの調製)
1gのCNBr活性化セファロース4B(GEヘルスケア製造)が2.5mM塩酸中において膨潤することを許した。ガラスフィルター上において、セファロース4B樹脂を200mlの2.5mM塩酸によって数回洗浄し、最後に、0.1MのNaHCOおよび0.5MのNaClを含有する10mlの緩衝液B(pH8.3)によって洗浄した。上で得られた1.0mlの緩衝液B中のおよそ4.5mgのケラタナーゼを1.0mlの膨
潤した樹脂に懸濁した。代替的には、1.0mlの膨潤した樹脂を1mlの緩衝液B単独(コントロール)に、または10mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)を含有する1mlの緩衝液Bに懸濁した。懸濁液を常温で2時間に渡ってゆっくり攪拌した。使い捨て空カラム(ポリプレップ(TM)クロマトグラフィーカラム、バイオ・ラッド)を通過する画分を取り除いた後に、樹脂を10mlの0.2Mトリス塩酸(pH8.0)中に再懸濁した。懸濁液を4℃で一晩ゆっくり攪拌した。それから、未固定化(コントロール)、BSA固定化、またはケラタナーゼ固定化樹脂の各1mlをそれぞれポリプレップ(TM)カラムにパッキングした(ベッド高2cm)。残存する自由なCNBr基がブロッキングされ得るようにして、パッキングしたカラムを3CVの緩衝液Bおよび0.2Mトリス塩酸(pH8.0)によって3回洗浄し、次に5CVのPBSによって洗浄した。このやり方で、コントロールカラム、BSA固定化カラム、およびケラタナーゼ固定化カラムを得た。
【0108】
循環血液からのケラタン硫酸の量を減少させる効果を評価するために、カラムを35℃にセットし、3CVのウサギ血清(CEDERLANE)によって平衡化した。それから、5mg/mlのケラタン硫酸(サメ軟骨由来;生化学工業製造)を含有するウサギ血清をカラムにかけ、溶離液を40cm/時間の流量で3つのチューブに1ml毎に逐次的に分画した。分画された血清を水によって10倍希釈し、直ちに5minに渡って煮沸した。サンプルの各0.8mlを遠心デバイス(オメガ10Kを有するNanosep(TM)、ポールライフサイエンス)によって限外濾過し、フロースルー画分は捨てた。残留液を0.5mlの水によって1回洗浄し、それから別のチューブに移し、水によって250μlの体積に調節した。
【0109】
(固定化カラム溶離液中のケラタン硫酸の定量)
各カラムからの溶離液中のケラタン硫酸含量を定量した。簡略には、カラム溶離液の残留液をケラタナーゼIIによって消化し、生ずる二糖の量を次のように定量した。
【0110】
250μl残留液からの100μl、40μlの0.1M酢酸ナトリウム(pH6.0)、および10μlの1mUケラタナーゼIIを混合し、37℃で16時間に渡ってインキュベーションした。消化されたオリゴ糖を、オメガ10K(ポールライフサイエンス)を有するNanosep(TM)を用いてフロースルーとして分離した。それから、フロースルー画分の5μlを、5μlの10μg/mLガラクトース-6-硫酸(シグマ・アルドリッチ)溶液、100mM重炭酸アンモニウムを有する5μlの1Mギ酸アンモニウム、および60μlのアセトニトリルによって希釈した。
【0111】
ケラタン硫酸二糖の検出のためには、Xevo-TQ-XS質量分析計(ウォーターズ製造)を有するACQUITY-UPLC-IクラスシステムのLC-MS/MSシステムを用いた。二糖の分離のためには、ACQUITY-UPLC-BEHアミドカラム、130Å、1.7μm、2.1mm×100mm(P/N:186004801、ウォーターズ)を用いた。移動相は、10mMギ酸アンモニウムおよび10μM重炭酸アンモニウムを含有する0.004%(v/v)アンモニア中の50から90%(v/v)のアセトニトリルの勾配溶出であった。ケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖を、負イオンモードに従って前駆体イオンを462.068かつ生成物イオンを97で検出した。
【表7】
【0112】
例4
(マウス組織中のケラタン硫酸レベルの測定)
GALNSホモノックアウトマウスを試験に用いた。4週齢GALNSホモノックアウトマウスに尾静脈から0.5U/ml、4μl/g体重の用量でケラタナーゼを単回投与した(処置群)。ケラタナーゼの代わりに、PBSを同じ様式で投与した(無処置群)。マウスを投与後24時間に屠殺した。血清および組織サンプルを採取し、使用時まで冷凍保存した。凍結した組織をSKミル(凍結破砕器具、株式会社トッケン)によって破砕し、12Uのテルモリシン(シグマ、T7902)によって、5mMのCaClを有する200mM酢酸アンモニウムpH8.1中において70℃で16hに渡って消化した。可溶化したサンプルを20,000×gで15minに渡って遠心し、上清を9体積の冷エタノールと混合し、それから-20℃に16h保った。ケラタン硫酸を15minの20,000×gにおける遠心によって沈殿させた。沈殿を300μlの蒸留水によって戻し、ケラタン硫酸レベルの測定に用いた。血清および組織サンプル中のケラタン硫酸の量を、例1に記載されている同じ様式でLC-MS/MSシステムによって測定した。
【0113】
(結果)
ケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルの結果が図6に示されている。処置群のケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の血清中レベルは無処置群よりも有意に低かった。
【0114】
数個の組織のケラタン硫酸モノ硫酸化型二糖の量が図7Aから7Dに示されている。処置群の肝臓および脾臓のケラタン硫酸量は無処置群よりも有意に低かった。
【0115】
本明細書において引用される文書はそれらの全体が参照によって本願に組み込まれる。
【0116】
本発明を具体的な例および種々の実施形態との関連において記載したが、本発明の趣旨および範囲からの逸脱なしに、本願に記載されている実施形態の多くの改変および適合が可能であるということは当業者によって容易に理解されるはずである。本明細書は本発明、一般的には本発明の原理のいずれかの変形、使用、または適合をカバーすることが意図されており、本発明が関わる分野の公知および通例の慣行のうちに入る本開示からの逸脱を包含する。
【0117】
本願は、2017年9月8日出願の米国仮特許出願第62/556,076号、2017年9月11日出願の米国仮特許出願第62/556,644号、および2018年1月16日出願の米国仮特許出願第62/617,940号の優先権の利益を請求し、これらの内容全体は参照によって本願に組み込まれる。
【符号の説明】
【0118】
1 治療デバイス
2 血液回路
2a 脱血側回路
2b 返血側回路
3 血液ポンプ
100 治療血液循環システム
[配列表]
>AAO88279.1 エンド-ベータ-N-アセチルグルコサミニダーゼ[Bacillus
circulans](配列番号1)
MSSRLKRKCSMLLTFTMIFQLLGLFLFKGEIVSASIRQDPTTGNYYKNVPLVGADFDDASNSNIVAKGTWDDNTAPLNTFFVDKGTATDGGFTTARITTVTDQVYEGGSLQFGDGSTYPINLNYKVDGLEVGATYRLSAYMKLFPGYPAKGGQFGVKNHDTANYTTGGETKSVNFSTVTADWKEYSVTFTPTYPHAKIFFWGSNNLPKVLVDKLRLEKVLEHPGPAAPAVTADDVNNIVVGIDETMEYNINGAGWVAYKEYAKPDLKGDLIVQIRVKETLNTLAGEVTTLTFTAQNDPAPGQPEQLLLKDGDFEAGAASVTTDTNVQNQFFSKNNQYEIVTGDTASGQYALKLRSPETIGYHKTDLKPSTKYQISFMAKVGSASQKLSFRISGYKNDNPYDLDNVMNYIEHTQMKNTGWSRFYYDLETGPSATSAFIDFSTAAGSTAWIDDVKLVEQGPADPPVTEPTLSRGSRLFLEKGLQIQSWVPTDVAYATRKWMKPPTAEEIVDLGLTTVQYNDAPNYSKTLHEEYKKLQQTNPSLPDLKWGVAFGPNANHLSSSYFDSETIAKHDPNKTGAPTEEQKARGFLTPDQLANVQNLNNIGFGDEEDYSDTLTQTLKEWFEVSKKHYPNVLVHHNEVGNTPPPTMSLISTFNENMLRKYMRTAKPDFITYDMYYFRENRQSSEVGGTVIPFYDDLNRYRKVASEGYDGSGLSPIPFGTYLQGWRTGPGAATYEKRGDGWYEITESQAYLSAFANWTFGAKWLSMFRWIEDTPGYLFSDYRPDEDGNWPKYHIYGQYKEMFRQSKNLGEHLIRINNKDVVIVPGQHMKDGQITKNNRPKDNPEWTKSGDRAFIDSLEISNLGKTNHSLKGDVFIGYFDPLPGIDTTQFFTSTAPKYFMLLNGLTSGQGLPAEEQTGSSYETRQEIKVTFDLSGGQARADQLRKVSRLTGELVAAPLKDLGNGKYEMTVVLGGGMADLYFWELGSLNTGNSKPVVADTPHDVRLTGDPKYAKNREIRDLTGKTVTVGWIKDTYSPVPQPLIHYNFSFTKDQNGKLQPMKNPDILSYFTRYYENTLWNKRVERIQKESNVKLEFVADIAWTKQELMDNIRKVKEGQTVDGMPDILIVPDEWTWSGLIQNEMILPASSFSEFDFTERKWNKSYKAMTTWKDQIYGMYAGPTMNSTGLFVNKALQASIGVTDDLMALQQNNAWDWNKLREVASAFQASANREGKYLLAGTDELFKQMVYANGAARGSVGGAMNQEFDLTSSSFREAAELYSELHAAGLIAAKPEGATDDWYVEQFSKNNILFLALPYQQTVDKLKFSYTNQDAVIEMKEGSFLGQPALIPTIVDAYETAYPDGIYKMAQGDWVFLMFPKGPSATGYAAMIDNPAYPVLLSSSANPADAAYVWNILSHEFEGVAYDRFLKLYLNQREVDKTTLKRIGLKEGVWDSYSGTGAWEQVIKPGVLPMLQAGVIDEAKLAELSVEAASYVTNNMTKPAQPGEEPGEEPGEQPGEQPGEQPGEQPGEQPGEQPGEQPGEQPGEQPGAGNGSENQGGNEDQGGNGSQGGNGPKPEKIIVKPGELIAVEGKVTIVVPAGATEIVLPPQAAELPQQHKVELKTDRVTLEVPSGLLKKLASRIADKDVSISLKAAPLTAAQAKDAISKNKSVSPSAITLAGGVYDFKLSAAGANGSYAELSEFDQPITISLKIESGVNPEQVGIYYISGNGKLDYIGGEYRDGELAAEVTHFSQYAVLKVVKVFDDVPAGHWAEGVISKLTSRLMVDGTSETTFEPERVVTRAEFTALLARALKLTAGGTPTFADVKAGDWYADAVTAAVEAGIAEGKSAGQFEPQARITREEMVVMTMRAYNKAKDKGPSTGVEASFTDENQISAWAVEQVKAAAALQLIQGRAQGKFEPQGTATRAEAVQVIFNMLLK
//
>C末端短縮型ケラタナーゼ[人工配列](配列番号2)
SIRQDPTTGNYYKNVPLVGADFDDASNSNIVAKGTWDDNTAPLNTFFVDKGTATDGGFTTARITTVTDQVYEGGSLQFGDGSTYPINLNYKVDGLEVGATYRLSAYMKLFPGYPAKGGQFGVKNHDTANYTTGGETKSVNFSTVTADWKEYSVTFTPTYPHAKIFFWGSNNLPKVLVDKLRLEKVLEHPGPAAPAVTADDVNNIVVGIDETMEYNINGAGWVAYKEYAKPDLKGDLIVQIRVKETLNTLAGEVTTLTFTAQNDPAPGQPEQLLLKDGDFEAGAASVTTDTNVQNQFFSKNNQYEIVTGDTASGQYALKLRSPETIGYHKTDLKPSTKYQISFMAKVGSASQKLSFRISGYKNDNPYDLDNVMNYIEHTQMKNTGWSRFYYDLETGPSATSAFIDFSTAAGSTAWIDDVKLVEQGPADPPVTEPTLSRGSRLFLEKGLQIQSWVPTDVAYATRKWMKPPTAEEIVDLGLTTVQYNDAPNYSKTLHEEYKKLQQTNPSLPDLKWGVAFGPNANHLSSSYFDSETIAKHDPNKTGAPTEEQKARGFLTPDQLANVQNLNNIGFGDEEDYSDTLTQTLKEWFEVSKKHYPNVLVHHNEVGNTPPPTMSLISTFNENMLRKYMRTAKPDFITYDMYYFRENRQSSEVGGTVIPFYDDLNRYRKVASEGYDGSGLSPIPFGTYLQGWRTGPGAATYEKRGDGWYEITESQAYLSAFANWTFGAKWLSMFRWIEDTPGYLFSDYRPDEDGNWPKYHIYGQYKEMFRQSKNLGEHLIRINNKDVVIVPGQHMKDGQITKNNRPKDNPEWTKSGDRAFIDSLEISNLGKTNHSLKGDVFIGYFDPLPGIDTTQFFTSTAPKYFMLLNGLTSGQGLPAEEQTGSSYETRQEIKVTFDLSGGQARADQLRKVSRLTGELVAAPLKDLGNGKYEMTVVLGGGMADLYFWELGSLNTGNSKPVVADTPHDVRLTGDPKYAKNREIRDLTGKTVTVGWIKDTYSPVPQPLIHYNFSFTKDQNGKLQPMKNPDILSYFTRYYENTLWNKRVERIQKESNVKLEFVADIAWTKQELMDNIRKVKEGQTVDGMPDILIVPDEWTWSGLIQNEMILPASSFSEFDFTE
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//
>ドメインC欠失ケラタナーゼ[人工配列](配列番号3)
SIRQDPTTGNYYKNVPLVGADFDDASNSNIVAKGTWDDNTAPLNTFYPHAKIFFWGSNNLPKVLVDKLRLEKVLEHPGPAAPAVTADDVNNIVVGIDETMEYNINGAGWVAYKEYAKPDLKGDLIVQIRVKETLNTLAGEVTTLTFTAQNDPAPGQPEQLLLKDGDFEAGAASVTTDTNVQNQFFSKNNQYEIVTGDTASGQYALKLRSPETIGYHKTDLKPSTKYQISFMAKVGSASQKLSFRISGYKNDNPYDLDNVMNYIEHTQMKNTGWSRFYYDLETGPSATSAFIDFSTAAGSTAWIDDVKLVEQGPADPPVTEPTLSRGSRLFLEKGLQIQSWVPTDVAYATRKWMKPPTAEEIVDLGLTTVQYNDAPNYSKTLHEEYKKLQQTNPSLPDLKWGVAFGPNANHLSSSYFDSETIAKHDPNKTGAPTEEQKARGFLTPDQLANVQNLNNIGFGDEEDYSDTLTQTLKEWFEVSKKHYPNVLVHHNEVGNTPPPTMSLISTFNENMLRKYMRTAKPDFITYDMYYFRENRQSSEVGGTVIPFYDDLNRYRKVASEGYDGSGLSPIPFGTYLQGWRTGPGAATYEKRGDGWYEITESQAYLSAFANWTFGAKWLSMFRWIEDTPGYLFSDYRPDEDGNWPKYHIYGQYKEMFRQSKNLGEHLIRINNKDVVIVPGQHMKDGQITKNNRPKDNPEWTKSGDRAFIDSLEISNLGKTNHSLKGDVFIGYFDPLPGIDTTQFFTSTAPKYFMLLNGLTSGQGLPAEEQTGSSYETRQEIKVTFDLSGGQARADQLRKVSRLTGELVAAPLKDLGNGKYEMTVVLGGGMADLYFWELGSLNTGNSKPVVADTPHDVRLTGDPKYAKNREIRDLTGKTVTVGWIKDTYSPVPQPLIHYNFSFTKDQNGKLQPMKNPDILSYFTRYYENTLWNKRVERIQKESNVKLEFVADIAWTKQELMDNIRKVKEGQTVDGMPDILIVPDEWTWSGLIQNEMILPASSFSEFDFTERKWNKSYKAMTTWKDQIYGMYAGPTMNSTGLFVNKALQASIGVTDDLMALQQNNAWDWNKLREVASAFQASANREGKYLLAGTDELFKQMVYANGAARGSVGGAMNQEFDLTSSSFREAAELYSELHAAGLIAAKPEGATDDWYVEQFSKNNILFLALPYQQTVDKLKFSYTNQDAVIEMKEGSFLGQPALIPTIVDAYETAYPDGIYKMAQGDWVFLMFPKGPSATGYAAMIDNPAYPVLLSSSANPADAAYVWNILSHEFEGVAYDRFLKLYLNQREVDKTTLKRIGLKEGVWDSYSGTGAWEQVIKPGVLPMLQAGVIDEAKLAELSVEAASYVTNNMTKPAQPG
//
>ドメインD欠失ケラタナーゼ[人工配列](配列番号4)
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//
>ドメインC,D欠失ケラタナーゼ[人工配列](配列番号5)
SIRQDPTTGNYYKNVPLVGADFDDASNSNIVAKGTWDDNTAPLNTFQNDPAPGQPEQLLLKDGDFEAGAASVTTDTNVQNQFFSKNNQYEIVTGDTASGQYALKLRSPETIGYHKTDLKPSTKYQISFMAKVGSASQKLSFRISGYKNDNPYDLDNVMNYIEHTQMKNTGWSRFYYDLETGPSATSAFIDFSTAAGSTAWIDDVKLVEQGPADPPVTEPTLSRGSRLFLEKGLQIQSWVPTDVAYATRKWMKPPTAEEIVDLGLTTVQYNDAPNYSKTLHEEYKKLQQTNPSLPDLKWGVAFGPNANHLSSSYFDSETIA
KHDPNKTGAPTEEQKARGFLTPDQLANVQNLNNIGFGDEEDYSDTLTQTLKEWFEVSKKHYPNVLVHHNEVGNTPPPTMSLISTFNENMLRKYMRTAKPDFITYDMYYFRENRQSSEVGGTVIPFYDDLNRYRKVASEGYDGSGLSPIPFGTYLQGWRTGPGAATYEKRGDGWYEITESQAYLSAFANWTFGAKWLSMFRWIEDTPGYLFSDYRPDEDGNWPKYHIYGQYKEMFRQSKNLGEHLIRINNKDVVIVPGQHMKDGQITKNNRPKDNPEWTKSGDRAFIDSLEISNLGKTNHSLKGDVFIGYFDPLPGIDTTQFFTSTAPKYFMLLNGLTSGQGLPAEEQTGSSYETRQEIKVTFDLSGGQARADQLRKVSRLTGELVAAPLKDLGNGKYEMTVVLGGGMADLYFWELGSLNTGNSKPVVADTPHDVRLTGDPKYAKNREIRDLTGKTVTVGWIKDTYSPVPQPLIHYNFSFTKDQNGKLQPMKNPDILSYFTRYYENTLWNKRVERIQKESNVKLEFVADIAWTKQELMDNIRKVKEGQTVDGMPDILIVPDEWTWSGLIQNEMILPASSFSEFDFTERKWNKSYKAMTTWKDQIYGMYAGPTMNSTGLFVNKALQASIGVTDDLMALQQNNAWDWNKLREVASAFQASANREGKYLLAGTDELFKQMVYANGAARGSVGGAMNQEFDLTSSSFREAAELYSELHAAGLIAAKPEGATDDWYVEQFSKNNILFLALPYQQTVDKLKFSYTNQDAVIEMKEGSFLGQPALIPTIVDAYETAYPDGIYKMAQGDWVFLMFPKGPSATGYAAMIDNPAYPVLLSSSANPADAAYVWNILSHEFEGVAYDRFLKLYLNQREVDKTTLKRIGLKEGVWDSYSGTGAWEQVIKPGVLPMLQAGVIDEAKLAELSVEAASYVTNNMTKPAQPG
//
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
【配列表】
0007252211000001.app