(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】高い熱伝導性を有する加硫可能なHNBR組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20230328BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230328BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230328BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20230328BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/04
C08K3/22
C08K5/14
C08K9/06
(21)【出願番号】P 2020515127
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2018075185
(87)【国際公開番号】W WO2019057703
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・カイザー
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ・リーバー
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/038835(WO,A1)
【文献】特開2015-059148(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02628999(EP,A1)
【文献】特開2009-040945(JP,A)
【文献】国際公開第2009/136508(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫可能な組成物において、
(a)100重量部の少なくとも1種の水素化ニトリルゴムと、
(b)
20~100重量部の少なくとも1種の合成黒鉛、及び
150~300重量部の少なくとも1種の酸化アルミニウムと
(c)少なくとも1種の架橋
剤と
を含むことを特徴とする、加硫可能な組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の架橋剤が、過酸化物化合物、アミン系架橋剤、及び硫黄含有架橋剤から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の加硫可能な組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の水素化ニトリルゴム(a)が、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルモノマーとを含有し、任意選択で更なる共重合可能なモノマーを含有していてもよいコポリマー又はターポリマーであり、共重合された共役ジエン単位が完全に又は部分的に水素化されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の加硫可能な組成物。
【請求項4】
(b)の合成黒
鉛が、70μm以
上のDIN 51938に準拠したD
90を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項5】
(b)の合成黒
鉛が、0.5%未
満のASTM C561-16に準拠した灰分を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項6】
(b)の合成黒
鉛が、0.01~1g/cm
3
の密度(スコット体積計によって嵩密度として測定されるスコット密度)を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項7】
(b)の合成黒
鉛が、81μmのDIN 51938に準拠したD
90、0.3%未満のASTM C561-16に準拠した灰分、及び0.15g/cm
3の(嵩)密度を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項8】
(b)の酸化アルミニウ
ムが、コーティングされているか又はコーティングされておらず、95%超の純度、(DIN ISO 9277:2003-05に準拠して測定される)0.8~1.6m
2/gのBET容量、及び1~3g/cm
3の重装嵩密度(tampted density)を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項9】
(b)の酸化アルミニウム
が、アルキルシランでコーティングされていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の架橋剤(c)が
、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン 2,5-ジヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサ-3-イン 2,5-ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、ブチル 4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、
及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン
から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項11】
架橋剤(c)の量が、前記水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、1~20重量
部であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項12】
前記組成物が、
(a)100重量部の水素化ニトリルゴムと、
(b)20~100重量部の少なくとも1種の合成黒鉛、及び
150~300重量部の少なくとも1種の酸化アルミニウムと、
(c)1~20重量
部の少なくとも1種の架橋
剤と、
(d)前記水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、0~100重量
部の、カーボンブラック、シリカ、
及び酸化マグネシウム
から選択される1種以上の通常のゴム添加剤;有機シランをベースとする1種以上の充填材-活性化剤
;オリゴマー化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)、クミル化ジフェニルアミン(CDPA)
、及び4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(Vulkanox ZMB2)若しくは4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾール
から選択される1種以上の老化安定剤;並びに/又は1種以上の離型剤若しくは加工助剤と
を含有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物の、エネルギー投入によ
る加硫によって得られる加硫物。
【請求項14】
請求項13に記載の加硫物を含む構成部
品。
【請求項15】
請求項13に記載の加硫物を含む構成部品であって、ガスケット、ベルト及びホースから選択される、構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化ニトリルゴムと、合成黒鉛及び/又は酸化アルミニウムと、架橋剤とを含む加硫可能な組成物、それらの加硫物、並びに構成部品としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化ニトリルゴムをベースとする構成部品は、高い耐熱性及び耐油性のみならず、低い熱伝導性を特徴とする。純ゴムの典型的な熱伝導率は、例えば、0.1~0.5W/m*Kの範囲にある。(非特許文献1)は、0.53W/m*K(水素化ニトリルゴムをベースとする加硫物)から0.95W/m*K(クロロスルホン化ポリエチレンをベースとする加硫物)までの異なる加硫物についての値を開示している。典型的なHNBR加硫物は、例えば、30phr~100phrのカーボンブラックと、2phr~4phrの酸化マグネシウムと、老化安定剤と、硬化助剤(1phr~4phr)及び過酸化物(4phr~12phr)からなる架橋系とからなる。加硫後のこの種の混合物は、材料が600%以下の破断点伸び及び35MPa以下の引張強さを有することを意味する、良好な物理的特性を有する。熱伝導率は、典型的には、約0.4W/m*Kである。
【0003】
熱伝導性加硫物は、除熱目的を有する構成部品のために段々と使用されつつあり、ある程度金属構成部品に取って代わりつつある。加硫物は、射出成形法による加工が造形においてより高い自由度を可能にし、且つ、より低い密度が軽量設計を可能にするという金属構成部品よりも優れた利点を有する。様々な工業的用途、例えば、自動車産業におけるエレクトロニクス、メカトロニクス又は技術部品は、弾性特性及び5W/m*Kまでの高い熱伝導率を同時に必要とする。
【0004】
ゴムの固有の熱伝導性は非常に低いので、熱伝導性は、典型的には、充填材系又は添加剤系によって高められる。しかし、余りにも著しい程度まで材料の物理的特性が損なわれてはならない。
【0005】
水素化ニトリルゴムにおける熱伝導性を向上させるための公知の熱伝導性充填材の例としては、金属充填材(例えば銅)、セラミック充填材〔例えば窒化ホウ素(BN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)及びアルカリ土類金属酸化物、例えば酸化マグネシウム(MgO)〕、アルミノシリケート(SiO2*Al2O3)又は有機充填材〔黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)〕が挙げられる。
【0006】
例えば、(特許文献1)は、4W/m*Kの熱伝導率を有するHNBR組成物を開示している。熱伝導性を向上させるために使用される充填材は、変性カーボンナノチューブ、変性グラフェン及び窒化アルミニウムである。
【0007】
(特許文献2)は、請求項5において、水素化ニトリルゴム(HNBR)と、熱伝導性充填材としての窒化ホウ素塊とを含むポリマー-窒化ホウ素化合物から製造された構成部品が、少なくとも1.5W/m*Kの熱伝導率を有することを開示している。
【0008】
(特許文献3)は、HNBRと窒化ホウ素ナノ粒子とから製造されたガスケットであって、ガスケットが約1W/m*K~約3W/m*Kの熱伝導率を有するガスケットを開示している。
【0009】
1W/m*Kを超える熱伝導率を有するHNBR加硫物を得るために、大量の熱伝導性充填材が、HNBRへ混ぜ込まれなければならない。多量の窒化ホウ素又はカーボンナノチューブは、典型的には、ゴム組成物を加工することを(例えば、化合物のムーニー(Mooney)の明確な増加の結果として)困難にし、且つ、例えば、破断点伸び、引張強さ及び耐引裂伝播性の低下、又は硬度の上昇があり得るので、物理的特性を著しく変える。
【0010】
更なる公知の熱伝導性充填材はまた黒鉛である。(特許文献4)は、0.36~0.6W/m*Kの熱伝導率を有する、HNBRと60phrの黒鉛とをベースとする加硫物を開示している。
【0011】
従来の黒鉛と同様に、合成黒鉛もまた、導電性を向上させるための及びプラスチックの摩擦率を低下させるための充填材としてなどの使用について公知である。
【0012】
(特許文献5)は、例えば、ニトリルゴム(NBR)と、様々な熱伝導性充填材、例えば剥離黒鉛、CNT、アセチレンブラック、BN、Al2O3、LiClO4、ZnOと、金属粒子、例えばニッケル、銅、アルミニウム若しくは鉄とを含む、タイヤ用のジエンゴム組成物を開示しており、それらの加硫物は、少なくとも0.6W/m*Kの熱伝導率を有する。HNBRと合成黒鉛とからなる組成物の記載はない。
【0013】
(特許文献6)は、カーボンブラック及び/又は更なる充填材を含む水素化ニトリルゴム組成物を開示している。架橋剤などの更なる添加物を使用することも可能である。請求項1及び4は、架橋剤としての有機過酸化物、並びに充填材としての黒鉛及び酸化アルミニウムを開示している。
【0014】
(特許文献7)は、ガスケット用の耐熱性ゴム組成物を開示している。これらは、水素化ニトリルゴム、充填材、過酸化物及び変性黒鉛をベースとしている。変性黒鉛は、ビニルトリメトキシシランでの処理によって得られる。
【0015】
(特許文献8)は、水素化ニトリルゴムから製造されたゴムガスケットであって、過酸化物系架橋剤及び酸化アルミニウムが処理されるガスケットを開示している。
【0016】
(特許文献9)(Timrex C THERM+熱可塑性ポリマー)は、20重量%~99重量%の熱可塑性ポリマーと、0.5重量%~50重量%の1マイクロメートル超の厚さを有する膨張黒鉛小板と、0重量%超~60重量%の更なる添加剤とを含有する組成物を開示している。この組成物は、1.0~30W/m*Kの熱伝導率を有する。熱伝導性の向上のために言及されている充填材は、黒鉛、例えば、従来の「フレーク様」黒鉛よりも高い熱伝導率を有する、TIMREX C-THERM(登録商標)などの膨張/剥離黒鉛である。
【0017】
全ての先行技術公文書に共通するものは、架橋後に、高い熱伝導性並びに満足できる物理的及び機械的特性を有する加硫物を与える、HNBRをベースとする公知の加硫可能な組成物が全くないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】中国特許出願公開第A-104945702号明細書
【文献】欧州特許出願公開第A-2816083号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0339780号明細書
【文献】特開2002-080639号公報
【文献】米国特許出願公開第2016/0082774号明細書
【文献】欧州特許出願公開第A-2 700 692号明細書
【文献】中国特許出願公開第A-105 440 379号明細書
【文献】中国特許出願公開第A-104 262 724号明細書
【文献】国際公開第16120760号パンフレット
【非特許文献】
【0019】
【文献】Bayer-Handbuch[Bayer Handbook],2nd edition 1999,p.719
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明によって取り組まれる課題は、したがって、それらの加硫物が2.0W/m*K以上、好ましくは3.0W/m*K以上、より好ましくは3.5W/m*K以上、最も好ましくは4.5W/m*K以上の熱伝導率を有する、HNBRをベースとする加硫可能な組成物を提供するというものであった。
【0021】
取り組まれる更なる課題は、高い熱伝導性のみならず、良好な加工性、すなわち、155MU以下のムーニー値ML 1+4をも有するそれらの加硫可能な組成物を好ましくは提供するというものである。
【0022】
取り組まれる更なる課題は、材料が十分に弾性であり、且つ、余りにも硬くはないために、100ShA以下のショア(Shore)A硬度を更に有する加硫物をもたらすそれらの加硫可能な組成物をより好ましくは提供するというものである。
【0023】
取り組まれる更なる課題は、ブリスタリング(膨れ)が材料特性及び加工性を悪化させるので、加熱時にブリスタリングを有さないそれらの加硫可能な組成物をより好ましくは提供するというものである。この課題は、5mm超の比較的大きい層厚さの場合に特にはっきり示される。ブリスタリングの場合には、きちんと定められた形状の造形ゴム物品を製造することができない。
【課題を解決するための手段】
【0024】
意外にも、水素化ニトリルゴムと、合成黒鉛及び/又は酸化アルミニウム(Al2O3)と、架橋剤とを含む加硫可能な組成物が、高い熱伝導性並びに満足できる物理的及び機械的特性を有する加硫物をもたらすことが見いだされた。
【0025】
本発明は、
(a)100重量部の少なくとも1種の水素化ニトリルゴムと、
(b)150~300重量部の少なくとも1種の酸化アルミニウムと
(c)少なくとも1種の架橋剤、好ましくは過酸化物化合物、アミン系架橋剤、又は硫黄含有架橋剤と
を含むことを特徴とする、加硫可能な組成物を提供する。
【0026】
この解決策は、熱伝導性の向上について公知のあらゆる熱伝導性充填材が、水素化ニトリルゴムを含む加硫可能な組成物において、硬度、ムーニー粘度及び加工性などの満足できる物理的及び機械的特性を保持して2.0W/m*K以上の高い熱伝導率を有する加硫物をもたらすわけではないという点において意外であった。
【0027】
好ましい加硫可能な組成物は、
(a)100重量部の水素化ニトリルゴム、
(b)20超~100重量部の少なくとも1種の合成黒鉛、好ましくは「TIMREX(登録商標)C-THERM 001」及び
150~300重量部の酸化アルミニウム、好ましくは、Martoxid(登録商標)TM-2410又はMartoxid(登録商標)TM-1410、
(c)1~20重量部、好ましくは2~10重量部の、少なくとも1種の架橋剤、好ましくは過酸化物化合物、
(d)水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、0~100重量部、好ましくは1~80重量部の、1種以上の通常のゴム添加剤、好ましくは1種以上の充填材、とりわけカーボンブラック、シリカ、酸化マグネシウム、1種以上の充填材-活性化剤、とりわけ有機シランをベースとするもの、1種以上の老化安定剤、とりわけオリゴマー化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)、クミル化ジフェニルアミン(CDPA)、又は、4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(Vulkanox ZMB2)若しくは4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾール、並びに/又は、1種以上の離型剤若しくは加工助剤
を含むことを特徴とする。
【0028】
本開示には、
(a)100重量部の水素化ニトリルゴム、
(b)20~100重量部の、「TIMREX(登録商標)C-THERM 001」などの、70μm以上、好ましくは80μm以上、より好ましくは81μmのDIN 51938に従ったD90を有する合成黒鉛、
(c)1~20重量部、好ましくは2~10重量部の、少なくとも1種の過酸化物化合物、
(d)水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、0~100重量部、好ましくは1~80重量部の、1種以上の通常のゴム添加剤、好ましくは1種以上の充填材、とりわけカーボンブラック、シリカ、酸化マグネシウム、とりわけ有機シランをベースとする、1種以上の充填材-活性化剤、1種以上の老化安定剤、とりわけオリゴマー化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)、クミル化ジフェニルアミン(CDPA)、又は4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(Vulkanox ZMB2)若しくは4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾール、並びに/又は、1種以上の離型剤若しくは加工助剤
を含むことを特徴とする、加硫可能な組成物が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
代わりの実施形態において、特に好ましい加硫可能な組成物は、
(a)100重量部の水素化ニトリルゴム、
(b)150~300重量部、より好ましくは150~270重量の、酸化アルミニウム、
(c)1~20重量部、好ましくは2~10重量部の、少なくとも1種の過酸化物化合物、
(d)水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、0~100重量部、好ましくは1~80重量部の、1種以上の通常のゴム添加剤、好ましくは1種以上の充填材、とりわけカーボンブラック、シリカ、酸化マグネシウム、1種以上の充填材-活性化剤、とりわけ有機シランをベースとするもの、1種以上の老化安定剤、とりわけオリゴマー化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)、クミル化ジフェニルアミン(CDPA)、又は4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(Vulkanox ZMB2)若しくは4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾール、並びに/又は1種以上の離型剤若しくは加工助剤
を含むことを特徴とするものである。
【0030】
水素化ニトリルゴムが成分(a)として使用される。
【0031】
水素化ニトリルゴム(a)は、商業的に入手可能であるが、全ての場合において、文献によって当業者にアクセス可能な製造方法によっても得られる。
【0032】
本出願との関連で水素化ニトリルゴム(HNBR)は、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルモノマーとを含み、任意選択的に更なる共重合性モノマーを含んでいてもよい、コポリマー及び/又はターポリマーであって、共重合性ジエン単位が完全に又は部分的に水素化されているもの、を意味すると理解される。
【0033】
本出願との関連で「水素化」又は「水素化された」は、ニトリルゴム中に元々存在する二重結合の、少なくとも50%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%の程度の転化を意味すると理解される。
【0034】
使用されるα,β-不飽和ニトリルは、任意の公知のα,β-不飽和ニトリルであってもよく、(C3~C5)-α,β-不飽和ニトリル、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル又はそれらの混合物などが好ましい。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0035】
任意の共役ジエンを使用することができる。(C4~C6)共役ジエンを使用することが好ましい。1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ピペリレン又はそれらの混合物が特に好ましい。1,3-ブタジエン及びイソプレン又はそれらの混合物がとりわけ好ましい。1,3-ブタジエンが非常に特に好ましい。
【0036】
水素化ニトリルゴム中の共役ジエンとα,β-不飽和ニトリルとの割合は、幅広い範囲内で変わることができる。共役ジエンの、又は共役ジエンの合計の割合は、ポリマー全体を基準として、典型的には40重量%~90重量%の範囲、好ましくは50重量%~80重量%の範囲にある。α,β-不飽和ニトリルの、又はα,β-不飽和ニトリルの合計の割合は、ポリマー全体を基準として、典型的には10重量%~60重量%の範囲に、好ましくは20重量%~50重量%の範囲にある。追加のモノマーは、ポリマー全体を基準として、0.1重量%~40重量%の範囲、好ましくは1重量%~30重量%の範囲の量で存在してもよい。この場合には、共役ジエン及び/又はα,β-不飽和ニトリルの相当する割合が、追加のモノマーの割合で置き換えられ、ここで、全モノマーの割合は各場合に、合計100重量%になる。
【0037】
本発明による加硫可能な組成物に好適であるそのような水素化ニトリルゴムの調製は、当業者に十分によく知られている。
【0038】
前述のモノマーの重合によるニトリルゴムの最初の調製は、文献(例えば、Houben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry],vol.14/1,Georg Thieme Verlag Stuttgart 1961)に広範囲にわたって記載されている。
【0039】
水素化ニトリルゴムへの上記ニトリルゴムのその後の水素化は、当業者に公知の方法で達成することができる。
【0040】
均一又は不均一水素化触媒を使用してニトリルゴムの水素化を行うことは、基本的に可能である。
【0041】
国際公開第A-01/77185号パンフレットに記載されているように、均一触媒、例えば「ウィルキンソン(Wilkinson)」触媒として知られるもの((PPh3)3RhCl)などを使用して水素で反応を行うことが可能である。ニトリルゴムの水素化方法は公知である。ロジウム又はチタンが典型的には触媒として使用されるが、白金、イリジウム、パラジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、コバルト又は銅を、金属としてか或いは好ましくは金属化合物の形態でかのいずれかで使用することも可能である(例えば、米国特許第3,700,637号明細書、独国特許出願公開第A-25 39 132号明細書、欧州特許出願公開第A-134 023号明細書、独国特許出願公開第A-35 41 689号明細書、独国特許出願公開第A-35 40 918号明細書、欧州特許出願公開第A-298 386号明細書、独国特許出願公開第A-35 29 252号明細書、独国特許出願公開第A-34 33 392号明細書、米国特許第4,464,515号明細書及び米国特許第4,503,196号明細書を参照されたい)。
【0042】
均一相での水素化のための好適な触媒及び溶媒は、本明細書で以下に記載され、また独国特許出願公開第A-25 39 132号明細書及び欧州特許出願公開第A-0 471 250号明細書から公知である。
【0043】
選択的水素化は、例えば、ロジウム触媒の存在下で、達成することができる。例えば、一般式
(R1
mB)lRhXn
(式中、
R1は、同じ又は異なり、C1~C8アルキル基、C4~C8シクロアルキル基、C6~C15アリール基又はC7~C15アラルキル基であり、
Bは、リン、ヒ素、硫黄又はスルホキシド基S=Oであり、
Xは、水素又はアニオン、好ましくはハロゲン、より好ましくは塩素又は臭素であり、
lは、2、3又は4であり、
mは、2又は3であり、
nは、1、2又は3、好ましくは1又は3である)
の触媒を使用することが可能である。
【0044】
好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリド及びトリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、及び式((C6H5)3P)4RhHのテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヒドリド、並びにトリフェニルホスフィンがトリシクロヘキシルホスフィンで完全に又は部分的に置き換えられている相当する化合物である。触媒は、少量で使用することができる。ポリマーの重量を基準として、0.01重量%~1重量%の範囲、好ましくは0.03重量%~0.5重量%の範囲、より好ましくは0.1重量%~0.3重量%の範囲の量が好適である。
【0045】
式R1
mB(式中、R1、m及びBはそれぞれ、触媒について上に定義したとおりである)の配位子である共触媒と一緒に触媒を使用することが典型的には推奨される。好ましくは、mは3であり、Bはリンであり、R1は、同じであっても異なっていてもよい。トリアルキル、トリシクロアルキル、トリアリール、トリアラルキル、ジアリールモノアルキル、ジアリールモノシクロアルキル、ジアルキルモノアリール、ジアルキルモノシクロアルキル、ジシクロアルキルモノアリール、又はジシクロアルキルモノアリールを有する共触媒が好ましい。
【0046】
共触媒の例は、例えば、米国特許第4,631,315号明細書に見いだすことができる。好ましい共触媒はトリフェニルホスフィンである。共触媒は、水素化されるべきニトリルゴムの重量を基準として、好ましくは0.3重量%~5重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%~4重量%の範囲の量で使用される。好ましくは、更に、ロジウム触媒対共触媒の重量比は、1:3~1:55の範囲に、より好ましくは1:5~1:45の範囲にある。水素化されるべきニトリルゴムの100重量部を基準として、好適な方法では、0.1~33重量部の共触媒、水素化されるべきニトリルゴムの100重量部を基準として、好ましくは0.5~20、最も好ましくは1~5重量部、とりわけ2重量部超しかし5重量部未満の共触媒が使用される。
【0047】
そのような水素化の実用性能は、例えば米国特許第6,683,136号明細書から、当業者に十分よく知られている。それは典型的には、水素化されるべきニトリルゴムを、2時間~10時間、100℃~150℃の範囲の温度及び50バール~150バールの範囲の圧力でトルエン又はクロロベンゼンなどの溶媒中で水素と接触させることによって達成される。
【0048】
相当するニトリルゴムの水素化による水素化ニトリルゴムの調製用の不均一触媒を使用する場合には、触媒は、典型的にはパラジウムをベースとする担持触媒である。
【0049】
使用される水素化ニトリルゴム(a)又は、更に更なるゴムが使用される場合、全てのゴムの混合物全体(a)のムーニー粘度(100℃で測定されるML 1+4)は、10~120の範囲内、好ましくは20~110の範囲内、より好ましくは30~100の範囲内である。ムーニー粘度は、ASTM標準D 1646に従ってここでは測定される。
【0050】
本発明による水素化ニトリルゴムは、10%以下の、好ましくは7%以下の、より好ましくは1%以下の残存二重結合含有量(RDB)を有する。
【0051】
本発明による加硫可能な組成物に使用できる水素化ニトリルゴムは、20K/分の加熱速度でのDSCによって測定される、-10℃未満、好ましくは-15℃未満、より好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有する。
【0052】
商業的に入手可能な水素化ニトリルゴムの例は、17重量%~50重量%の範囲のアクリロニトリル含有量を有する完全及び部分水素化ニトリルゴム(ARLANXEO Deutschland GmbH製のTherban(登録商標)製品及び日本ゼオン株式会社製のZetpol(登録商標)製品)である。水素化ブタジエン/アクリロニトリル/アクリレートポリマーの一例は、ARLANXEO Deutschland GmbH製のTherban(登録商標)LTシリーズ、例えばTherban(登録商標)LT 2157及びTherban(登録商標)LT 2007である。カルボキシル化水素化ニトリルゴムの一例は、ARLANXEO Deutschland GmbH製のTherban(登録商標)XTシリーズである。低いムーニー粘度、それ故改善された加工性を有する水素化ニトリルゴムの一例は、Therban(登録商標)ATシリーズからの製品、例えばTherban(登録商標)AT 3404である。
【0053】
水素化ニトリルゴム、並びに少なくとも1種の不飽和ニトリルと少なくとも1種の共役ジエンとの繰り返し単位は、カルボン酸又はカルボン酸エステルの形態の1種以上の更なる共重合性モノマーを含有してもよい。
【0054】
好適な共重合性カルボン酸は、3~18個の炭素原子を有し、α,β-不飽和であるモノ又はジカルボン酸、及びそれらのエステルである。好ましいα,β-不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸及びそれらの混合物である。
【0055】
3~18個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸のエステルには、好ましくは、前述のカルボン酸のアルキルエステル及びアルコキシアルキルエステルが含まれる。3~18個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸の好ましいエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート及び1~12個の繰り返しエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEG(メタ)アクリレート)である。好ましいアルコキシアルキルエステルは、1~8個の繰り返しエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEG(メタ)アクリレート)及びブチルアクリレートである。
【0056】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルの好ましいエステルは、例えば、
○ アルキルモノエステル、とりわけC4~C18アルキルモノエステル、好ましくはn-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル又はn-ヘキシルモノエステル、より好ましくはモノ-n-ブチルマレエート、モノ-n-ブチルフマレート、モノ-n-ブチルシトラコネート、モノ-n-ブチルイタコネート;
○ アルコキシアルキルモノエステル、とりわけC1~C18アルコキシアルキルモノエステル、好ましくはC4~C12アルコキシアルキルモノエステル、
○ 1~8個の繰り返しエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールエステル(PEG)、
○ ヒドロキシアルキルモノエステル、とりわけC4~C18ヒドロキシアルキルモノエステル、好ましくはC4~C12ヒドロキシアルキルモノエステル、
○ シクロアルキルモノエステル、とりわけC5~C18シクロアルキルモノエステル、好ましくはC6~C12シクロアルキルモノエステル、より好ましくはモノシクロペンチルマレエート、モノシクロヘキシルマレエート、モノシクロヘプチルマレエート、モノシクロペンチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、モノシクロヘプチルフマレート、モノシクロペンチルシトラコネート、モノシクロヘキシルシトラコネート、モノシクロヘプチルシトラコネート、モノシクロペンチルイタコネート、モノシクロヘキシルイタコネート及びモノシクロヘプチルイタコネート、
○ アルキルシクロアルキルモノエステル、とりわけC6~C12アルキルシクロアルキルモノエステル、好ましくはC7~C10アルキルシクロアルキルモノエステル、より好ましくはモノメチルシクロペンチルマレエート及びモノエチルシクロヘキシルマレエート、モノメチルシクロペンチルフマレート及びモノエチルシクロヘキシルフマレート、モノメチルシクロペンチルシトラコネート及びモノエチルシクロヘキシルシトラコネート;モノメチルシクロペンチルイタコネート及びモノエチルシクロヘキシルイタコネート;
○ アリールモノエステル、とりわけC6~C14アリールモノエステル、好ましくはモノアリールマレエート、モノアリールフマレート、モノアリールシトラコネート若しくはモノアリールイタコネート、より好ましくはモノフェニルマレエート若しくはモノベンジルマレエート、モノフェニルフマレート若しくはモノベンジルフマレート、モノフェニルシトラコネート若しくはモノベンジルシトラコネート、モノフェニルイタコネート若しくはモノベンジルイタコネート又はそれらの混合物、
○ 不飽和ポリアルキルポリカルボキシレート、例えばジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート若しくはジエチルイタコネート;又は
○ アミノ基を含有するα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル、例えばジメチルアミノメチルアクリレート若しくはジエチルアミノエチルアクリレート
である。
【0057】
好ましい実施形態において、水素化ニトリルゴムは、少なくとも1種の不飽和ニトリル及び少なくとも1種の共役ジエンの繰り返し単位に加えて、更にα,β-エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル、及び1~12個の繰り返しエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールカルボン酸エステルを含有する。
【0058】
成分(b)-熱伝導性充填材
本発明による加硫可能な組成物は、成分(b)として、合成黒鉛又は酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の熱伝導性充填材を含む。
【0059】
合成黒鉛は、アチソン(Acheson)黒鉛としても知られ、ケイ素の存在下でのコークの加熱によって電気炉で製造される。合成黒鉛は、SGL Carbon、Schunk Kohlenstofftechnik、Imerys及びMorgan Advanced Materialsなどの供給業者から商業的に入手可能である。
【0060】
合成黒鉛は、繊維、棒、球、中空球、小板の形態で、粉末形態で、各場合に凝集形態又は塊形態のいずれかで本発明による加硫可能な組成物に使用される。本発明において、小板形態での構造物は、平坦な形状を有する粒子を意味すると理解される。したがって、粒子の高さは、典型的には、粒子の幅又は長さと比較して明らかにより小さい。粒子の長さ寸法は、標準方法、例えば、電子顕微鏡法によって確認することができる。
【0061】
商業的に入手可能な合成黒鉛は、例えば、Imerys製のTIMREX(登録商標)KS5-44、TIMREX(登録商標)KS6、TIMREX(登録商標)KS150、TIMREX(登録商標)SFG44、TIMREX(登録商標)SFG150、TIMREX(登録商標)C-THERMTM001及びTIMREX(登録商標)C-THERM(登録商標)011、C-Therm 012である。
【0062】
好ましい合成黒鉛(b)は、70μm以上、好ましくは80μm以上、より好ましくは81μmのDIN 51938に従ったD90を有するものである。
【0063】
好ましい合成黒鉛(b)は、0.5%未満、好ましくは0.3%未満のASTM C561/16に従った灰分を有する。
【0064】
好ましい合成黒鉛(b)は、0.01~1g/cm3の、好ましくは0.1~0.2g/cm3の密度(スコット(Scott)体積計による嵩密度として測定されるスコット密度)を有する。
【0065】
好ましい合成黒鉛は、Imerysから商業的に入手可能である、TIMREX(登録商標)C-Therm 001である。C-THERMラインからの合成黒鉛は、高いアスペクト比を有する。TIMREX(登録商標)C-Therm 001は、81μmのDIN 51938に従ったD90、0.3%未満のASTM C561-16に従った灰分及び0.15g/cm3の(嵩)密度を有する。
【0066】
合成黒鉛が使用される場合、本発明による組成物は、水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、20超~100重量部、より好ましくは40~100重量部、最も好ましくは80~120重量部の少なくとも1種の合成黒鉛(b)を含有する。
【0067】
代替的な実施形態において、合成黒鉛よりもむしろ、酸化アルミニウム(Al2O3)が加硫可能な組成物に使用される。
【0068】
好ましい酸化アルミニウムは、95%超の純度、0.8~1.6m2/gのBET容量(DIN ISO 9277:2003-05に従って測定される)及び1~3g/cm3の重装嵩密度(tamped density)を有することを特徴とする。
【0069】
使用される酸化アルミニウムは、それがコーティングされているか又はコーティングされておらず、好ましくはコーティングされており、より好ましくはアルキルシランでコーティングされていることを特徴とする。
【0070】
特に好ましいアルキルシランでコーティングされた酸化アルミニウムは、Martoxid(登録商標)TM-2410;純度>99%、BET=1.2m2/g;CAS番号:1344-28-1〔Martinswerk (Huber)から商業的に入手可能〕である。
【0071】
酸化アルミニウムが使用される場合、本発明による組成物は、水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、150~300重量部、より好ましくは150~270重量部の、少なくとも1種の酸化アルミニウムを含有する。
【0072】
成分(c)-架橋剤
有用な架橋剤の例としては、過酸化物系架橋剤、硫黄含有架橋剤、又はアミン系架橋剤が挙げられ、過酸化物系架橋剤が好ましい。
【0073】
好ましくは、架橋剤としての少なくとも1種の過酸化物化合物が、成分(c)として使用される。
【0074】
好適な過酸化物化合物(c)は、例えば、以下の過酸化物化合物:
ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブテン、4,4-ジ-tert-ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、メチルエチルケトンペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ポリ(tert-ブチルペルオキシカーボネート)、エチル3,3-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブチレート、エチル3,3-ジ(tert-アミルペルオキシ)ブチレート、n-ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-アミルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン 3-ジ-tert-アミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド及びカリウムペルオキソジスルフェート
である。
【0075】
本発明による加硫可能な組成物の少なくとも1種の過酸化物化合物は、好ましくは有機過酸化物、とりわけジクミルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン 2,5-ジヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサ-3-イン 2,5-ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート及び/又は1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
【0076】
好適な硫黄含有及びアミン系架橋剤は、当業者に公知である。
【0077】
使用される硫黄含有架橋剤は、例えば、可溶性若しくは不溶性の元素形態であっても、又は硫黄供与体であってもよい。
【0078】
有用な硫黄供与体の例としては、ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2-モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)及びテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)が挙げられる。
【0079】
本発明による水素化ニトリル-ジエン-カルボン酸エステルコポリマーの硫黄加硫において、架橋収率を向上させるのに役立つことができる更なる添加物を使用することも可能である。基本的に、架橋は、硫黄又は硫黄供与体単独で達成することもできる。
【0080】
しかし、逆に、本発明の水素化ニトリル-ジエン-カルボン酸エステルコポリマーの架橋は、上述の添加物のみの存在下で、すなわち、元素硫黄又は硫黄供与体を添加をすることなく達成され得る。
【0081】
それによって架橋収率が向上し得る好適な添加物には、例えば、ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲン酸塩、グアニジン誘導体、カプロラクタム及びチオ尿素誘導体が含まれる。
【0082】
使用されるジチオカルバメートは、例えば:アンモニウムジメチルジチオカルバメート、ナトリウムジエチルジチオカルバメート(SDEC)、ナトリウムジブチルジチオカルバメート(SDBC)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(ZDBC)、亜鉛ジエチルジチオカルバメート(ZDEC)、亜鉛ジブチルジチオカルバメート(ZBEC)、亜鉛エチルフェニルジチオカルバメート(ZEPC)、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(ZBEC)、亜鉛ペンタメチレンジチオカルバメート(Z5MC)、テルルジエチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジメチルジチオカルバメート及び亜鉛ジイソノニルジチオカルバメートであり得る。使用されるチウラムは、例えば:テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及びテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)であり得る。使用されるチアゾールは、例えば:2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)及び銅2-メルカプトベンゾチアゾールであり得る。使用されるスルフェンアミド誘導体は、例えば:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)、2-モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS)、N-オキシジエチレンチオカルバミル-N-tert-ブチルスルフェンアミド及びオキシジエチレンチオカルバミル-N-オキシエチレンスルフェンアミドであり得る。使用されるキサントゲン酸塩は、例えば:ジブチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルジブチルキサントゲン酸亜鉛及びジブチルキサントゲン酸亜鉛であり得る。使用されるグアニジン誘導体は、例えば:ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)及びo-トリルビグアニド(OTBG)であり得る。使用されるジチオホスフェートは、例えば:亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(アルキルラジカルの鎖長C2~C16)、銅ジアルキルジチオホスフェート(アルキルラジカルの鎖長C2~C16)及びジチオホスホリルポリスルフィドであり得る。使用されるカプロラクタムは、例えば、ジチオビスカプロラクタムであり得る。使用されるチオ尿素誘導体は、例えば、N,N’-ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)及びエチレンチオ尿素(ETU)であり得る。同様に、添加物として、例えば:亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3-ビス(シトラコニミドメチル)ベンゼン及び環状ジスルファンが好適である。
【0083】
列挙した添加物及び架橋剤は、個別又は混合物のいずれかで使用され得る。水素化ニトリル-ジエン-カルボン酸エステルコポリマーの架橋のために次の物質:硫黄、2-メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、ジモルホリルジスルフィド、テルルジエチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、亜鉛ジブチルジチオカルバメート、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、及びジチオビスカプロラクタムを用いることが好ましい。
【0084】
これらの架橋剤に加えて、架橋収率を向上させるのに役立ち得る更なる添加物を使用することが有利であり得る。これらの好適な例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジールジメタクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2-ポリブタジエン又はN,N’-m-フェニレンビスマレイミドが挙げられる。
【0085】
本発明による加硫可能な組成物中の成分(c)の量は、ゴム(a)の100重量部を基準として、典型的には1~20重量部、好ましくは2~10重量部である。
【0086】
更に、加硫可能な組成物は、更なるゴム添加剤(d)を含み得る。標準的なゴム添加剤には、例えば:成分(a)の本発明定義に包含されないポリマー、カーボンブラック、更なる充填材、シリカ、酸化マグネシウム、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、充填材-活性化剤、油、とりわけ加工油又は増量剤油、可塑剤、加工助剤、加硫促進剤、多官能性架橋剤、老化安定剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、離型剤、遅延剤、更なる安定剤及び酸化防止剤、ウォラストナイト、染料、有機及び無機繊維及び繊維パルプを含む繊維、加硫活性化剤、並びに追加の重合性モノマー、二量体、三量体又はオリゴマーが含まれる。
【0087】
有用な充填材-活性化剤には、有機シラン、特に、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン又は(オクタデシル)メチルジメトキシシランが含まれる。更なる充填材-活性剤は、例えば、74~10,000g/モルの分子量のトリエタノールアミン又はエチレングリコールなどの界面活性物質である。充填材-活性剤の量は、水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、典型的には0.5~10重量部である。
【0088】
有用な老化安定剤は、とりわけ、過酸化物加硫において最小数のラジカルを捕捉するものである。これらは、とりわけ、オリゴマー化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)、クミル化ジフェニルアミン(CDPA)、4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾール(MB2)又は4-及び5-メチルメルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(ZMB2)である。更に、立体障害のあるフェノールなどの、公知のフェノール老化安定剤、又はフェニレンジアミンをベースとする老化安定剤を使用することも可能である。記述した老化安定剤の組み合わせ、好ましくはZMB2又はMB2と組み合わせたCDPA、より好ましくはMB2と組み合わせたCDPAを使用することも可能である。純粋なCDPAが非常に特に好ましい。
【0089】
老化安定剤は、水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、典型的には0.1~5重量部の、好ましくは0.3~3重量部の量で使用される。
【0090】
有用な離型剤の例としては:飽和若しくは部分不飽和脂肪酸及びオレイン酸又はそれらの誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪アルコール又は脂肪酸アミドの形態での)、並びに金型表面に適用できる製品、例えば、低分子量シリコーン化合物をベースとする製品、フルオロポリマーをベースとする製品、及びフェノール樹脂をベースとする製品が挙げられる。
【0091】
離型剤が、水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として、0.2~10重量部、好ましくは0.5~5重量部の量のブレンド成分として使用される。
【0092】
米国特許第4,826,721号明細書の教示に従ったガラス強化エレメントを使った加硫物の強化に、芳香族ポリアミド(アラミド)での強化と同様に、可能である。
【0093】
開示される実施形態において、
(a)100重量部の少なくとも1種の水素化ニトリルゴムと、
(b)20を超えて150未満の重量部の、合成黒鉛及び酸化アルミニウムからなる群から選択される熱伝導性充填材と、
(c)1~20重量部、好ましくは2~10重量部の、少なくとも1種の過酸化物化合物と、
(d)0~100重量部、好ましくは1~80重量部の、1種以上の通常のゴム添加剤と
を含むことを特徴とする、加硫可能な組成物が提供される。
【0094】
特に好ましい実施形態は、
(a)100重量部の少なくとも1種の水素化ニトリルゴムと、
(b)40~100重量部の合成黒鉛、又は150~270重量部の酸化アルミニウムと、
(c)2~10重量部の少なくとも1種の過酸化物化合物と
を含む加硫可能な組成物である。
【0095】
また、
(a)100重量部の水素化ニトリルゴムと、
(b)80~120重量部の合成黒鉛と、
(c)2~10重量部の少なくとも1種の過酸化物化合物と
を含む加硫可能な組成物も開示される。
【0096】
本発明は更に、全ての成分(a)、(b)、及び(c)、並びに任意選択的な成分(d)を混合することによる、本発明による前述の加硫可能な組成物の製造方法を提供する。これは、当業者に公知の装置及び混合ユニットを用いて達成することができる。
【0097】
成分が互いに混合される順序は、基本的に重要ではないが、各場合に、利用可能な混合ユニット及び温度条件に適合させられる。
【0098】
成分(a)、(b)、及び(c)、並びに任意選択的な成分(d)の混合は、ゴム業界において一般に用いられる典型的な混合系を用いて、温度に応じて、ここでは達成することができる。i)混合ロール又は内部ミキサーの形態での回分式混合ユニット、及びii)混合押出機などの連続混合ユニットを用いることが可能である。
【0099】
良好な混合を達成するためにゴム加工業界において一般に用いられる上述した混合ユニットを使って十分に高い剪断力を適用することができるため、約30~40℃の範囲の規定のミキサー温度で成分(a)、(b)、及び(c)、並びに任意選択的な成分(d)の混合を行うことが特に有用であることが分かった。
【0100】
好ましくは、水素化ニトリルゴム(a)は、最初に装入され、パルプ状にされ、次に、加硫用化学薬品(過酸化物化合物及び硬化助剤)以外の全ての更なる成分が添加される。適切な混合時間後に、混合物は排出される。
【0101】
過酸化物化合物及び硬化助剤は、ロール上での第2ステップにおいて混ぜ入れられる。ロールの速度は、ここでは、安定したスキンが得られるように制御される。
【0102】
実際には、本発明による成分を混合した後に、加硫可能な組成物は、例えば、「スキン」、フィードストリップ又はフィードスラブと呼ばれる形態で、或いはペレット又は顆粒の形態で得られる。これらはその後、金型においてプレスされるか又は射出成形され、使用されるフリーラジカル供与体に応じて好適な条件下で架橋される。
【0103】
本発明は、前述の加硫可能な組成物をエネルギー投入、とりわけ熱処理にかけることによる、加硫物の製造を更に提供する。
【0104】
エネルギー投入は、例えば、熱エネルギーの形態で達成することができる。熱処理による加硫製品の製造は、本発明による加硫可能な組成物を、好適な金型中で通常の方法で、好ましくは120~200℃、より好ましくは140~180℃の範囲の温度にさらすことによって行われる。加硫は、圧縮加硫、蒸気加硫等などの、任意の方法の助けを借りてもたらすことができる。
【0105】
本発明による加硫可能な組成物の架橋の過程で、過酸化物化合物(c)は、使用される水素化ニトリルゴム(a)間のフリーラジカル架橋、及び過酸化物化合物(c)と水素化ニトリルゴム(a)とのフリーラジカル架橋をもたらす。
【0106】
本発明はまた、エネルギー投入による、とりわけ熱処理による前述の加硫可能な組成物の架橋(加硫)によって得られる加硫物、すなわち、架橋ゴムを更に提供する。
【0107】
本発明はまた、本発明による加硫可能な組成物から製造される加硫物を含む構成部品を更に提供する。
【0108】
これらの構成部品は、好ましくは、ガスケット、ベルト及びホースである。
【0109】
加硫可能な組成物の加硫によって得られる加硫物は、通常の方法によって加工してベルト、ガスケット、ホース等を得ることができ、これらの製品は、上記の特性を有する特に優れた製品である。より特に、そのような加硫物は、2.0W/m*K以上の高い熱伝導率を有する。
【0110】
したがって、本発明は、加硫物の熱伝導率を2.0W/m*K以上に向上させ、且つ、155MU未満のムーニー粘度を保持するための加硫可能な組成物であって、少なくとも1種の水素化ニトリルゴム(a)と、少なくとも1種の過酸化物化合物(c)とを含む加硫可能な組成物における、水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準として40~120重量部の合成黒鉛、好ましくはTRIMEX C-ThermTM001の使用を更に提供する。
【0111】
そのようなガスケット及びホースの基本的な製造は、当業者に公知である。ベルトの製造のために、当業者は、例えば、米国特許第4,715,607号明細書の開示と同様に、本発明による加硫可能な組成物を使用して製造することができる。
【実施例】
【0112】
組成物の製造、加硫及び特性評価
実施例C~Hは、本発明の実施例である。以下に続く実施例A*及びB*並びにI*~K*は、非発明比較例である。比較例は、以下に続く表において実施例番号の後の*で特定される。
【0113】
用いた基本混合ユニットは、GK 1.5 E型の内部ミキサー(製造業者:HF Mixing Group)である。速度は、40分-1であり、冷却水入口温度は40℃であった。これは、水素化ニトリルゴム(a)の最初の装入物を1分間パルプ状にすること、次に、加硫化学薬品(過酸化物化合物及び硬化助剤)以外の全ての更なる成分を添加することを含んだ。混合の開始の3分後に、プランジャーを引き抜き、ブラシをかけた。250秒の混合時間後に、混合物を排出させた。
【0114】
過酸化物化合物及び硬化助剤を、ロール(製造業者:Troester、ロール径20cm)上で約30℃での第2ステップにおいて混ぜ入れた。フリクションは1:1.11であった。ロールの速度を、ここでは、安定したスキンが得られるように制御した。その後、これらのスキンの加硫を、15分間180℃でのスラブプレスにおいて始めた。
【0115】
使用される成分:
Therban(登録商標)3627 部分水素化ニトリルゴム、ACN含有量:36重量%、ムーニー粘度 100℃でのML 1+4:66MU、残存二重結合含有量:最大2%、ARLANXEOから入手可能
Therban(登録商標)3407 水素化ニトリルゴム、ACN含有量:34重量%、ムーニー粘度 100℃でのML 1+4:70MU、残存二重結合含有量:最大0.9%、ARLANXEOから入手可能
Therban(登録商標)3443 VP 部分水素化ニトリルゴム、ACN含有量:34重量%、ムーニー粘度 100℃でのML 1+4:39MU、残存二重結合含有量:最大4%、ARLANXEOから入手可能
Therban(登録商標)3668 VP 部分水素化ニトリルゴム、ACN含有量:36重量%、ムーニー粘度 100℃でのML 1+4:80MU、残存二重結合含有量:最大6%;ARLANXEOから入手可能
Therban(登録商標)XT VP KA 8889 水素化カルボキシル化ニトリルゴム(ターポリマー)、ACN含有量:33重量%、ムーニー粘度 100℃でのML 1+4:77MU、残存二重結合含有量:3.5%;ARLANXEOから入手可能
Corax(登録商標)N 550 ASTMカーボンブラック;Orion Engineered Carbonから入手可能
Corax(登録商標)N 220 ASTMカーボンブラック;Orion Engineered Carbonから入手可能
Corax(登録商標)N 990 MTカーボンブラック;Orion Engineered Carbonから入手可能
Vulkasil(登録商標)A1 ケイ酸ナトリウムアルミニウム、Rheinchemie Rheinau GmbHから入手可能
Silatherm(登録商標)1360-8 アルミノシリケート、HPF Quarzwerke GmbHから入手可能
CFA 50窒化ホウ素 窒化ホウ素、3M Deutschland GmbHから入手可能
TIMREX(登録商標)C-Therm 001 合成黒鉛;D90=81μm(DIN 51938に従って)、灰<0.3%(ASTM C561-16に従って)、Imerysから入手可能、CAS番号:7782-42-5
Martoxid(登録商標)TM-2410 アルキルシランコーデッド表面コーテッド酸化アルミニウム;純度>99%、BET=1.2m2/g、タンプ密度=1.8g/cm3;Martinswerk(Huber)から入手可能、CAS番号:1344-28-1
Martoxid(登録商標)TM-1410 アンコーテッド酸化アルミニウム;純度>99%、BET=1.2m2/g、タンプ密度=1.8g/cm3;Martinswerk(Huber)から入手可能、CAS番号:1344-28-1
Silquest(登録商標)RC-1シラン 有機シラン化剤、Momentive Performance Materials,Inc.から入手可能
Dynasylan(登録商標)6490 オリゴマーシロキサン、Evonik Industriesから入手可能
Dymalink(登録商標)633 亜鉛ジアクリレート、Cray Valleyから入手可能
Mistron(登録商標)R10 C タルク、Imerysから入手可能
Maglite(登録商標)DE 酸化マグネシウム、CP Hallから入手可能
Vulkanox(登録商標)HS 2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、重合した、Lanxess Deutschland GmbHから入手可能
Luvomaxx(登録商標)CDPA 4,4’-ビス(1,1-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、Lehmann and Vossから入手可能
Vulkanox(登録商標)MB2 4-及び5-メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール;Lanxess Deutschland GmbHから入手可能
Aflux(登録商標)18 第一級脂肪アミン、Rheinchemie Rheinau GmbHから入手可能
Rhenofit TRIM/S 30%シリカ上の70%トリメチロールプロパントリメタクリレート;硬化助剤;Rhein Chemie Rheinau GmbHから入手可能
Perkadox(登録商標)14-40 シリカ上に担持されたジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン 40%、Akzo Nobel Polymer Chemicals BVから入手可能
【0116】
実施例において記述する重量部での量は、水素化ニトリルゴム(a)の100重量部を基準としている。
【0117】
ムーニー粘度は、HNBR含有混合物について100℃でDIN 53523/3又はASTM D 1646に従って測定する。
【0118】
ショア(Shore)A硬度は、ASTM-D2240-81に従って測定した。
【0119】
加硫物の破断点伸び及び引張強さは、室温でDIN 53504に従ってS2検体に関して測定する。
【0120】
熱伝導率は、定常法によって測定する。これは、試験検体中の熱流量の平衡が確立されてしまうまで、熱源及び温度センサと接触させて室温で2mm厚さの試験検体を保持することを含む。次いで、測定は、TA instruments製のDTC 300機器を用いて達成される。熱伝導率を次に、較正係数、検体厚さ及び試験検体上の温度降下から計算する。
【0121】
【0122】
試験は、加硫物C*~F*及びG~Hが2.00~4.44W/m*Kの高い熱伝導率を有することを示す。
【0123】
熱伝導性充填材として合成黒鉛(Timrex(登録商標)C-THERM 001)のみを含む加硫物C*、D*、E*及びF*はブリスタリング(膨れ)を有する。それに反して、酸化アルミニウム(Martoxide(登録商標)TM-2410)を含む加硫物は、いかなるブリスタリングをも有さず、したがって好ましい。
【0124】
加硫可能な組成物のムーニー粘度(ML 1+4)は、Timrex(登録商標)C-THERM 001の量が増加するにつれて増加する。それに反して、酸化アルミニウムを含む加硫可能な組成物は、同じ量のTimrex(登録商標)C-THERM 001を有する加硫可能な組成物よりも低いムーニー粘度を有する。より低いムーニー粘度は、加硫可能な組成物のより良好な加工性をもたらす。150重量部のTimrex(登録商標)C-THERM 001を有する組成物は、過度に高いムーニー粘度を有する。
【0125】
破断点伸びは、Timrex C-THERM 001の量が増加するにつれて減少する。それに反して、高い量の酸化アルミニウムを有する加硫物は、高い破断点伸び、それ故に好ましい破断点伸びを有する。
【0126】
【0127】
実施例A*及びB*並びにI*~K*の加硫可能な組成物は、これらが酸化アルミニウム(Martoxid(登録商標)TM-2410)を含有しないので、発明実施例のための比較試験として役立つ。
【0128】
比較例は、加硫物A*及びB*並びにI*~K*がわずか0.49~1.6W/m*Kの低い熱伝導率を有することを示している。
【0129】
これらの一連の実施例は、本発明加硫物C*~E*及びG~Hが比較例A*及びB*並びにI*~K*よりも良好な加工性を有することも示している。
【0130】
【0131】
実施例L、M、N、O及びPは、100重量部の水素化ニトリルゴム(Therban(登録商標)3443 VP;Therban(登録商標)XT VP KA 8889)と、60重量部の合成黒鉛(TIMREX(登録商標)C-Therm 001)及び200重量部の酸化アルミニウム(Martoxid(登録商標)TM-2410;Martoxid(登録商標)TM-1410)と、を含む。
【0132】
これらの実施例は、本発明加硫物L~Pが全て4.5W/m*K超の高い熱伝導率を有することを示す。
【0133】
その場シラン化(実施例O)は、向上した引張強さをもたらす。
【0134】
非官能化酸化アルミニウム(Martoxid(登録商標)TM-1410)を含む実施例Nは、官能化酸化アルミニウム(Martoxid(登録商標)TM-2410)を使った実施例Lと比較してわずかに向上した熱伝導率を有する。