(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230328BHJP
G01R 31/08 20200101ALI20230328BHJP
H04B 10/27 20130101ALI20230328BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
G01R31/08
H04B10/27
(21)【出願番号】P 2020521520
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 US2018056143
(87)【国際公開番号】W WO2019079344
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-09
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508178054
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】ヨギースワラン,カーシック
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04801937(US,A)
【文献】特開昭61-001127(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115163(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/070974(WO,A1)
【文献】特開平01-284774(JP,A)
【文献】特表2008-512904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0077336(US,A1)
【文献】特開平09-062978(JP,A)
【文献】特開平01-114328(JP,A)
【文献】特開平10-213621(JP,A)
【文献】特開平02-007634(JP,A)
【文献】特開2003-232685(JP,A)
【文献】特開平10-162280(JP,A)
【文献】特開昭60-060712(JP,A)
【文献】特開平11-069335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
G01R 31/08
H04B 10/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線導体に沿った様々な位置で前記電力線導体に光ファイバケーブルを固定する、複数のクランプ装置であって、前記複数のクランプ装置の各々は監視装置を備え、前記監視装置が、
前記監視装置の位置で少なくとも1つの物理特性を検出する、少なくとも1つの検出コンポーネント、
前記電力線導体の現在のAC電圧信号がゼロまたは中点閾値を横切ることに基づいてゼロクロスタイミング情報を提供するように構成された、ゼロクロス検出器、
前記少なくとも1つの物理特性を示すデータを無線で送信する、送信機、および
少なくとも1つの他の監視装置からの前記少なくとも1つの物理特性を示すデータを無線で受信する、受信機
を備え、前記送信機は、前記少なくとも1つの他の監視装置からの前記少なくとも1つの物理特性を示
すデータを再送信
し、前記監視装置がさらに、
前記ゼロまたは中点閾値を横切ることに基づいて無線通信のタイミングを制御するように構成された、プロセッサを備える、複数のクランプ装置と、
データ注入装置を備える光ファイバ接続ケースであって、前記データ注入装置が、
前記電力線導体に沿った前記様々な位置で前記監視装置によって検出された前記少なくとも1つの物理特性を示
すデータを無線で受信し、
前記データを光信号に変換し、
前記光信号を、データ収集サブシステムに伝送するために前記光ファイバケーブルに注入する、
光ファイバ接続ケースと
を備え
、
前記データ注入装置が電力管理コントローラを備え、前記電力管理コントローラが、前記ゼロクロス検出器からデータを受信し、前記ゼロクロスタイミング情報に基づいて前記監視装置及び前記データ注入装置のコンポーネントの電力消費を制御するように構成された、システム。
【請求項2】
前記複数のクランプ装置の前記監視装置は、無線通信ネットワークを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの物理特性は、前記電力線導体上で運ばれる電力の少なくとも1つの電気的特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電力線導体上で運ばれる電力の前記少なくとも1つの電気的特性は、電圧、および電流のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの物理特性は、前記電力線導体を含む環境の少なくとも1つの特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電力線導体を含む前記環境の前記少なくとも1つの特性は、温度、湿度、および風速のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記光ファイバケーブルが、第1の部分および第2の部分を備え、
前記光ファイバ接続ケースは、前記光ファイバケーブルの前記第1の部分および前記第2の部分の対応する光ファイバの端部を光学的に連結するスプライストレイを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記データ注入装置が、
前記データを前記光信号に変換する電気-光信号変換器、および
前記光ファイバケーブルの前記第1の部分または前記第2の部分の前記光ファイバのシングルファイバの単一波長に、前記光信号を注入する、光アド/ドロップマルチプレクサ
を備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記電気-光信号変換器が、
前記データを電子インタフェースプロトコル信号に変換する、電子インタフェースプロトコルトランシーバ、および
前記電子インタフェースプロトコル信号を単一波長光信号に変換する、シングルファイバ単一波長光トランシーバ
を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記シングルファイバ単一波長光トランシーバが、小型フォームファクタプラグ可能トランシーバを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記監視装置のうちの少なくとも1つが、
前記電力線導体上で運ばれる電力の特性を検出する検出回路、および
通信タイミング回路であって、前記電力線導体に沿った複数の前記監視装置のうちの前記少なくとも1つの各々の位置における
前記少なくとも1つの物理特性を示
すデータを、前記電力線導体上で運ばれる電力の前記特性に基づくタイミングに従って、前記監視装置のうちの前記少なくとも1つの前記送信機に無線で送信させる、通信タイミング回路
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記検出回路によって検出される前記電力線導体上を運ばれる電力の前記特性は、前記電力線導体上で運ばれる電圧のゼロクロスを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記データ注入装置が、
前記電力線導体上で運ばれる電力の特性を検出する検出回路、および
前記監視装置のうちの少なくとも1つからの前記少なくとも1つの物理特性を示
すデータを、前記電力線導体上で運ばれる電力の前記特性に基づく
前記タイミングに従って、前記データ注入装置に無線で受信させる、通信タイミング回路
を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記監視装置のうちの少なくとも1つの前記少なくとも1つの検出コンポーネントのうちの一または複数が、前記電力線導体によって運ばれる電流または電圧のサイクルごとに複数回、前記少なくとも1つの物理特性をサンプリングする、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を、複数の監視装置によって検出することであって、前記電力線導体に沿った様々な位置で前記電力線導体に光ファイバケーブルを固定する複数のクランプ装置の各々が、前記複数の監視装置のうちの1つを備える、複数の監視装置によって検出すること、
少なくとも1つの監視装置のゼロクロス検出器によって、前記電力線導体の現在のAC電圧信号がゼロまたは中点閾値を横切ることに基づいてゼロクロスタイミング情報を提供すること、
前記複数の監視装置の各々によって、関連する監視装置で検出された、前記電力線導体に関連する前記少なくとも1つの物理特性を示すデータ
を無線で送信すること、
前記複数の監視装置のうちの少なくとも1つによって、前記複数の監視装置のうちの少なくとも1つの他の監視装置によって検出された、前記電力線導体に関連する前記少なくとも1つの物理特性を示
すデータの一部
を無線で受信し、再送信すること
、
少なくとも1つの監視装置のプロセッサによって、前記ゼロまたは中点閾値を横切ることに基づいて無線通信のタイミングを制御すること、
前記複数の監視装置で検出された、前記電力線導体に関連する前記少なくとも1つの物理特性を示
すデータを、光ファイバ接続ケースのデータ注入装置によって無線で受信すること、
前記データ注入装置によって前記データを光信号に変換すること
、
前記データ注入装置によって、前記光信号を、データ収集サブシステムに伝送するために、前記光ファイバケーブルに注入すること
、
前記データ注入装置の電力管理コントローラによって、前記ゼロクロス検出器からデータを受信すること、および
前記電力管理コントローラによって、前記ゼロクロスタイミング情報に基づいて前記監視装置及び前記データ注入装置のコンポーネントの電力消費を制御すること
を含む、方法。
【請求項16】
前記複数の監視装置が無線通信ネットワークを形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の監視装置のうちの少なくとも1つによって、前記電力線導体上で運ばれる電力の特性を検出することをさらに含み、前記電力線導体に関連する前記少なくとも1つの物理特性を示
すデータを前記複数の監視装置のうちの前記少なくとも1つによって無線で送信するタイミングは、前記電力線導体上で運ばれる電力の前記特性を検出することに基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
光ファイバケーブルを電力線導体の少なくとも一部に沿って設置すること、および
前記光ファイバケーブルに沿った対応する位置に複数のクランプ装置の各々を設置して、前記光ファイバケーブルを前記電力線導体に固定すること、
を含む方法であって、
前記複数のクランプ装置の各々が監視装置を含み、前記監視装置は、
前記光ファイバケーブルに沿った前記対応する位置
で前記電力線導体に関連付けられた少なくとも1つの物理特性を検出し、
前記電力線導体の現在のAC電圧信号がゼロまたは中点閾値を横切ることに基づいてゼロクロスタイミング情報を提供し、
前記光ファイバケーブルに沿った前記対応する位置で検出された、前記電力線導体に関連付けられた前記少なくとも1つの物理特性を示すデータを、無線で送信し、
前記光ファイバケーブルに沿った一または複数の他の位置で検出された、前記電力線導体に関連付けられた
前記少なくとも1つの物理特性を示
すデータの少なくとも一部を、無線で受信し、再送信
し、
前記ゼロまたは中点閾値を横切ることに基づいて無線通信のタイミングを制御する、
方法。
【請求項19】
データ注入装置を備える光ファイバ接続ケースを設置することをさらに含み、前記データ注入装置は、
前記少なくとも1つの物
理特性を示
すデータを無線で受信し、
前記データを光信号に変換し、
データ収集サブシステムに伝送するために、前記光信号を前記光ファイバケーブルに注入
し、
前記データ注入装置が電力管理コントローラを備え、前記電力管理コントローラが、前記監視装置のゼロクロス検出器からデータを受信し、前記ゼロクロスタイミング情報に基づいて前記監視装置及び前記データ注入装置のコンポーネントの電力消費を制御するように構成された、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本願は、米国仮出願第62/573,470号(2017年10月17日出願)および米国出願第15/938,348号(2018年3月28日出願)の利益を主張し、両者の開示は参照により全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
典型的な送配電システムは、電力線の切断その他の異常を検出するため、何らかの形態の監視機器を含む。このような機器は典型的に、ヘッドエンドライン監視機器を、送電空間(例えば、電力線導体が伝統的に長距離にわたって数千ボルトを搬送する場)、および変電所レベル(例えば、消費者への配電の前により高い電圧がより低い電圧に変換される場)のいずれかまたは両方において含むことがある。また、状況によっては、顧客の敷地内に設置された「スマート」メーターが、電圧レベルや消費電力などに関するデータを収集することもある。
【0003】
結果として、送配電システムの大部分において現在の動作状態に関するデータは、監視機器の位置に少なくとも部分的に起因して粗くなる傾向にある。例えば、送電システムにおいて、現行の監視制御・データ取得(SCADA)システムは、特定の電力線導体の故障を検出し得るが、導体が延伸し得る広範さゆえに、故障の具体的な位置を把握することが困難となる場合がある。同様に、配電システムによくある潜在的に多数の分岐回路ゆえに、そのようなシステムにおいても故障の具体的な位置や原因の特定が問題となることが判明し、正確な特定に多大な時間とコストを要することもある。
【発明の概要】
【0004】
以下により詳細に説明するように、本開示は、関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視するシステムおよび方法を記載する。一例では、システムが、(1)複数の監視装置であって、複数の監視装置の各々は、電力線導体に沿って様々な位置に位置し、かつ(a)該電力線導体に沿った該監視装置の位置における少なくとも1つの物理特性を検出する少なくとも1つの検出コンポーネント、および(b)該少なくとも1つの物理特性を示すデータを無線で送信する送信機、を含む、複数の監視装置と、(2)データ注入装置であって、(a)該電力線導体に沿った様々な位置において該複数の監視装置によって検出された該少なくとも1つの物理特性を示すデータを、無線で受信し、(b)該データを光信号に変換し、(c)該光信号を、データ収集サブシステムに送信するために、光ファイバケーブルに注入する、データ注入装置と、を含み得る。いくつかの例で、複数の監視装置のうちの少なくとも1つは、複数の監視装置のうちの別の監視装置から、電力線導体に沿った複数の監視装置のうちの他の監視装置の位置における少なくとも1つの物理特性を示すデータを無線で受信する、受信機をさらに含み、複数の監視装置のうちの該少なくとも1つの監視装置の送信機が、複数の監視装置のうちの他の監視装置から無線で受信したデータを、無線で再送信する。
【0005】
いくつかの例では、システムが、光ファイバケーブルを電力線導体に固定する複数のクランプ装置をさらに含んでもよく、複数のクランプ装置のうちの一または複数のそれぞれは、複数の監視装置のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態で、少なくとも1つの物理特性は、例えば電圧または電流のうちの少なくとも一方など、電力線導体上で運ばれる電力の少なくとも1つの電気的特性を含むことができる。また、いくつかの例で、少なくとも1つの物理特性は、温度、湿度、または風速のうちの少なくとも1つなど、電力線導体を含む環境の少なくとも1つの特性を含んでもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、システムが、データ注入装置を含む光ファイバ接続ケースをさらに含むことができる。また、いくつかの例では、データ注入装置が、(1)データを光信号に変換する電気‐光信号変換器、および(2)該光信号を光ファイバケーブルのシングルファイバの単一波長に注入する光アド/ドロップマルチプレクサを含むことができる。更に、いくつかの例では、電気-光信号変換器が、(1)データを電子インタフェースプロトコル信号に変換する電子インタフェースプロトコルトランシーバ、および(2)該電子インタフェースプロトコル信号を単一波長光信号に変換する、シングルファイバ単一波長光トランシーバを含むことができる。加えて、いくつかの実施形態では、シングルファイバ単一波長トランシーバは、小型フォームファクタプラグ可能トランシーバを含んでもよい。
【0007】
いくつかの実施形態で、複数の監視装置のうちの少なくとも1つは、(1)電力線導体上で運ばれる電力の特性を検出する検出回路、および(2)通信タイミング回路であって、電力線導体に沿った複数の監視装置のうちの少なくとも1つの各々の位置における少なくとも1つの物理特性を示すデータを、電力線導体上で運ばれる電力の特性に基づくタイミングに従って、監視装置のうちの該少なくとも1つの監視装置の送信機に無線で送信させる、通信タイミング回路を含んでもよい。さらに、いくつかの例で、検出回路によって検出された、電力線導体上で運ばれる電力の特性が、電力線導体上で運ばれる電圧のゼロクロスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、データ注入装置が、(1)電力線導体上で運ばれる電力の特性を検出する検出回路、および(2)通信タイミング回路であって、電力線導体上で運ばれる電力の特性に基づくタイミングに従って、監視装置の少なくとも1つからの少なくとも1つの物理特性を示すデータを、データ注入装置に無線で受信させる、通信タイミング回路を含んでもよい。
【0008】
いくつかの例では、複数の監視装置のうちの少なくとも1つの検出コンポーネントのうちの一または複数は、電力線導体によって運ばれる電流又は電圧の1サイクルにつき複数回、少なくとも1つの物理特性をサンプリングすることができる。
【0009】
一例において、方法は、(1)電力線導体に沿った複数の場所のうち対応する場所に位置する、複数の監視装置によって、電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を検出すること、(2)該複数の監視装置によって、該電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を示すデータを、無線で送信すること、(3)データ注入装置によって、該電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を示すデータを、無線で受信すること、(4)データ注入装置によって、該データを光信号に変換すること、および(5)データ注入装置によって、該光信号を、データ収集サブシステムに送信するために光ファイバケーブルに注入すること、を含むことができる。いくつかの実施形態では、方法が、(1)複数の監視装置のうちの少なくとも1つによって、複数の監視装置のうちの別の監視装置から、複数の監視装置のうちの他の監視装置の位置における、電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を示すデータを、無線で受信すること、および(2)複数の監視装置のうちの少なくとも1つによって、該複数の監視装置のうちの他の監視装置から無線で受信したデータを無線で再送信すること、をさらに含むことができる。本方法はまた、いくつかの例で、複数の監視装置のうちの少なくとも1つによって、電力線導体上で運ばれる電力の特性を検出することを含んでもよく、電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を示すデータを複数の監視装置のうちの少なくとも1つによって無線で送信するタイミングは、電力線導体上で運ばれる電力の特性を検出することに基づく。
【0010】
別の例では、方法が、(1)光ファイバケーブルを電力線導体の少なくとも一部に沿って設置すること、および(2)該光ファイバケーブルに沿った対応する位置に、複数のクランプ装置の各々を設置して、光ファイバケーブルを電力線導体に固定することを含むことができる。複数のクランプ装置のうちの少なくとも1つは監視装置を含むことができ、監視装置は、(a)光ファイバケーブルに沿った対応する位置における、電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を検出し、(b)光ファイバケーブルに沿った対応する位置における電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を示すデータを、無線で送信する。加えて、いくつかの実施形態において、本方法はデータ注入装置を設置することを含んでもよく、データ注入装置は、(1)少なくとも1つの物理特性を示すデータを無線で受信し、(2)該データを光信号に変換し、(3)該光信号を、データ収集サブシステムに伝送するために、光ファイバケーブルに注入する。
【0011】
上述の実施形態のいずれの特徴も、本明細書に記載の原理に従って互いに組み合わせて使用され得る。これらおよび他の実施形態、特徴、および利点は、添付図面および特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明を読むことによってより完全に理解されるであろう。
【0012】
添付図面はいくつかの例示的な実施形態を示し、本明細書の一部である。以下の説明と共に、これらの図面は、本開示の様々な原理を実証し説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視する例示的なシステムのブロック図である。
【
図2】
図1の例示的なシステムが利用できる例示的な監視環境の図である。
【
図3】
図1の例示的なシステムに使用できる例示的な監視装置のブロック図である。
【
図4】
図1の例示的なシステムに使用できる例示的なデータ注入装置のブロック図である。
【
図5】
図3の例示的な監視装置および
図4の例示的なデータ注入装置のいずれかまたは両方と共に使用できる、例示的なタイミング制御サブシステムのブロック図である。
【
図6】関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視する例示的な方法のフロー図である。
【
図7】関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視するシステムを設置する、例示的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面全体を通して、同一の参照符号および説明は、必ずしも同一ではないが類似の要素を示す。本明細書で説明される例示的な実施形態は、様々な修正および代替形態を受け入れることができるが、例示のために具体的な実施形態が図示されて本明細書で詳細に説明されることとなる。しかしながら、本明細書に記載の例示的な実施形態は、開示された特定の形態に限定されることを意図していない。むしろ、本開示は、添付の特許請求の範囲内にあるすべての修正、均等物、および代替物を包含する。
【0015】
本開示は、広くは、関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視するシステムおよび方法を対象とする。以下でより詳細に説明するように、本開示の実施形態は、電力線導体の少なくとも一部に沿って分布する複数の監視装置によって生成される、電力線導体に関する一または複数の特性に関するデータを運ぶのに、光ファイバケーブル(例えば、電力線導体の近傍に設置された光ファイバケーブル)の使用を促進することで、導体の動作状態や条件に関するより詳細かつ精度の高い情報を潜在的に提供し、故障状態、サービス窃盗などの詳細な発見を容易にすることができる。
【0016】
以下では、
図1~
図7を参照して、関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視するシステムおよび方法の詳細な説明を提供する。複数の監視装置およびデータ注入装置を含み得るこのような例示的なシステムを、
図1に関連して説明する。
図1の例示的なシステムを利用できる例示的な監視環境を、
図2に関連して説明する。例示的な監視装置を
図3を参照して示し、例示的なデータ注入システムを
図4に関連して説明する。さらに、
図5を参照して、
図3の例示的な監視装置および
図4のデータ注入装置のいずれかまたは両方と共に使用できる、例示的な通信タイミングシステムについて説明する。関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視する例示的な方法を
図6に関連して検討し、関連する光ファイバケーブルを用いて電力線導体を監視するシステムを設置する例示的な方法を、
図7を参照して提示する。
【0017】
図1は、関連する光ファイバケーブル112を用いて電力線導体110を監視する例示的なシステム100のブロック図である。いくつかの例で、電力線導体110は、電力伝送システム(例えば、約110キロボルト(kV)以上の伝送線)、副伝送システム(例えば、約35kV~110kV副伝送線)、配電システム(例えば、約35kV以下の配電線)で用いられる導電体(例えば、導電性ケーブル)、または電力を供給するための任意の他の導電体であってもよい。いくつかの実施形態で、光ファイバケーブル112は、通信データを運ぶための一または複数の光ファイバを含んでもよく、光ファイバケーブル112は、電力線導体110と何らかの方式で関連付けられ(例えば、機械的に連結され)てもよい。例えば、光ファイバケーブル112は、(例えば、空中屋外敷設(空中型OSP)光ファイバケーブル設置の一部として)電力線導体110の周囲に螺旋状に巻き付けられてもよい。しかし、光ファイバケーブル112を電力線導体110に関連付ける他の方法も可能である。
【0018】
図1に示すように、システム100は、電力線導体110に沿った様々な位置に分布し得る複数の監視装置102を含んでもよい。少なくともいくつかの例で、一または複数の監視装置102の各々は、電力線導体110に沿った監視装置102の位置において、少なくとも1つの物理特性(例えば、瞬時または略瞬時の電圧および/または電流信号(予測される正弦波形に加えて、過渡現象および/または高調波も含む)、監視装置102の近傍の環境条件等)を検出する、少なくとも1つの検出コンポーネントを含むことができる。監視装置102はまた、そのような少なくとも1つの物理特性を示すデータを無線で送信する送信機を含み得る。
【0019】
システム100はまた、
図1に示すように、一または複数の監視装置102からデータを無線で受信し、データを光信号に変換して、データ収集サブシステム106に伝送するために該光信号を光ファイバケーブル112(例えば、光ファイバケーブル112の光ファイバ)に導入または注入する、データ注入装置104を含んでもよい。いくつかの例では、データ収集サブシステムは、電力線導体110の状態または動作における不具合状態または他の異常を検出するためにデータを収集し処理する、一または複数のコンピュータシステム(例えば、コンピュータサーバ)を含むことができる。
【0020】
図2は、
図1のシステム100を利用することができる例示的な監視環境200を図示している。
図2の例に示すように、監視環境200は、複数の電力線導体110を担持する複数の電柱202を有する電力伝送または配電システムを含んでもよい。電柱202は任意の数の電力線導体110を担持してよいが、視覚的に単純化するために2本の電力線導体110が
図2に示されている。いくつかの例では、電力線導体110が絶縁体204を介して電柱202に機械的に連結されるが、様々な実施形態では他の種類のコンポーネント(例えば、タップ、スタンドオフなど)が利用されてもよい。
【0021】
また、
図2には、電力線導体110と整列し且つ機械的に結合された光ファイバケーブル112が示されている。上述したように、光ファイバケーブル112は、例えば人力または電動ロボット装置によって電力線導体110の周りに螺旋状に巻き付けられ得る。しかしながら、電力線導体110と光ファイバケーブル112との間の他の物理的関係も可能である。
図2には1本の光ファイバケーブル112のみ示すが、同じ電柱202を利用する複数の電力線導体110の各々に、対応する光ファイバケーブル112が取り付けあるいは他の方式で連結されていてもよい。
図2に示すように、光ファイバケーブル112は、一または複数のケーブルクランプ206を介して電力線導体110に固定することができる。以下により詳細に説明するいくつかの例では、一または複数のケーブルクランプ206の各々が、対応する監視装置102を含み得る。いくつかの例で、光ファイバケーブル112は、伝送される電力の特定の位相に関連する電力線導体110に追従し得るか、あるいは、電柱202の相対地遷移部210におけるように2つまたは3つの異なる位相間で変化してもよく、信号光ファイバケーブル112を用いて3つの位相すべてに何らかのレベルの監視を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、電柱202に沿って架けられた電力線導体110に沿って監視装置102を設置することに加えて、一または複数の追加の監視装置102を、顧客構内に電力を供給する変圧器(
図2には図示せず)の二次側に設置してもよい。
【0023】
加えて、
図2は、幾つかの実施例では、光ファイバケーブル112の光ファイバの対応する端部を繋ぐ光ファイバ接続ケース208を示す。例えば、電力線導体110に連結され得る比較的長い伸長(例えば、1km長の延伸)の光ファイバケーブル112は、光ファイバス接続ケース208内で、互いに機械的に連結されるか、熱的に融着されるか、または別様に連結されてよい。光ファイバケーブル112は、光カプラ、増幅器、および/または、光ファイバケーブル112の1つの伸長から次の伸長への光データ信号の伝送を容易にする他のコンポーネントを含み得る。
図2に示すようないくつかの例で、光ファイバ接続ケース208は、電柱202に取り付けられてもよく、またはその上に配置されてもよい。
図2に示すようないくつかの例で、光ファイバ接続ケース208は、電柱202のより低い部分に(例えば、光ファイバ接続ケース208の設置を容易にするため、高電圧の電力線導体110から安全な距離にある低電圧セクションに)取り付けることができる。加えて、いくつかの実施形態では、相互接続される各光ファイバケーブル112に相対地遷移部210が連結されて、電力線導体110から電気的絶縁を提供することができる。しかし、光ファイバ接続ケース208の他の場所も可能である。
【0024】
図3は、
図1のシステム100に使用可能な例示的な監視装置300のブロック図である。上述したように、いくつかの例では、監視装置102が、ケーブルクランプ206、または光ファイバケーブル112を電力線導体110に固定する他のクランプ装置に含まれ得る。
図3に示すように、監視装置102は、一または複数の検出コンポーネント(例えば、電流トランスデューサ310、電圧トランスデューサ312、加速度計314、および/または、その他)を含んでもよい。また、いくつかの実施形態では、監視装置102が、プロセッサ306、メモリ308、無線マイクロコントローラ304または他の通信デバイス、および/または、太陽電池322および/またはバッテリ324に結合された電力管理コントローラ320のうちの一または複数を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、検出コンポーネントが、電力導体110を介して運ばれる電力の電圧および電流などの特性を含む、電力線導体110の物理特性を検出することができる。いくつかの例では、電流トランスデューサ310は、交流(AC)電流信号を測定するために、電力線導体110の周囲に配置された非接触電流トランスデューサ(例えば、ロゴスキーコイル)を含んでもよい。また、いくつかの実施形態では、電圧トランスデューサ312が、AC電圧信号を測定するために、電力線導体110の物理的近傍に配置された非接触電圧トランスデューサ(例えば、コンデンサ分圧回路)を含んでもよい。そのような特性の監視は、電力線導体110の電気的不具合または異常(例えば、短絡、開回路、劣化部分など)の位置や、電力が許可なく配電網から取り出される公共設備窃盗の事象などを特定するのに、役立てることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、電力線導体110を介して運ばれている電力と直接には関連していない電力線導体110の他の物理的態様を、他の種類の検出コンポーネントによって測定することができる。例えば、監視装置102の検出コンポーネントは、電力線導体110に対する物理的な動きまたは力を測定するコンポーネントを含んでもよい。一例では、加速度計314が、電力線導体110の加速度(例えば、電力線導体110が定める長手方向を横切る一または複数の方向における微風振動および/または導体のギャロッピング)を検出することができ、監視装置102の位置において電力線導体110に望ましくない(例えば、風または他の外部要因による)運動、線の弛度の変化、線の切断などを生じている領域を特定するのに役立つことができる。他の検出コンポーネント(例えば、ジャイロスコープ、歪ゲージ等)は、例えば、電力線導体110に沿った一または複数の比較的具体的な位置において電力線導体110に課される、歪みまたは他の力を測定することができる。
【0027】
さらに他の実施形態で、監視装置102の検出コンポーネントは、温度、湿度、風速など、電力線導体110を取り囲む環境の一または複数の特性を検出するセンサまたはトランスデューサを含んでもよい。
【0028】
電力線導体110に沿った様々な位置におけるそのような特性を監視することは、電力線導体110が遭遇し得る将来の潜在的問題に関する洞察を提供するのに役立つ可能性がある。
【0029】
いくつかの例では、検出コンポーネントのうちの一または複数(例えば、センサ、トランスデューサなど)は、測定を担っている特定の特性のアナログまたはデジタル指示を生成することができる。例えば、電流トランスデューサ310、電圧トランスデューサ312、および/または加速度計314は、アナログ電圧、アナログ電流、デジタルデータ値、または測定される特性の他の指示を生成することができる。
【0030】
いくつかの例で、プロセッサ306は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または検出コンポーネントから指示を受信することができる他のハードウェアプロセッサとすることができる。一例では、プロセッサ306は、混合信号プロセッサ(例えば、Texas Instruments, Inc.によって提供されるMSP430混合信号プロセッサ)であってもよい。いくつかの例で、プロセッサ306は一または複数の指示を、1秒あたり数百または数千回(例えば、1キロサンプル/秒(kSps)から20kSpsまで)、検出コンポーネントからサンプリングすることができる。他の指示は、1秒または複数秒あたり1回などのより少ない頻度でサンプリングすることができる。いくつかの実施形態では、プロセッサ306は、検出コンポーネントによって生成された指示をデジタル値に変換することができる一または複数の回路(例えば、デジタルデータポート、アナログ/デジタル変換器(ADC)など)を含むことができる。さらに、プロセッサ306は、そのデータを一または複数の他の形態に処理することができる。例えば、プロセッサ306は、検出コンポーネントからの受信またはサンプリングされたデジタルデータの平均値(例えば、別々の期間にわたる孤立平均値、連続する期間にわたる移動平均値など)を生成することができる。さらに、いくつかの実施形態で、プロセッサ306は、受信した指示(例えば、サンプリングされた電圧および電流表示に基づく力率データ、高調波含有率、および過渡現象)に基づいた(例えば、導出された)、追加のデータを生成することができる。少なくともいくつかの実施形態で、プロセッサ306は、(例えば、得られたデータを送信するために)無線マイクロコントローラ304および/または(例えば、得られたデータを記憶するために)メモリ308とも通信し得る。
【0031】
メモリ308は、プロセッサ306によって受信および/または生成されたデータのためのストレージを提供することに加えて、本明細書でより詳細に説明される様々な機能またはタスクを実行するためにプロセッサ306によって(および以下で説明される無線マイクロコントローラ304によって)実行されるべき命令を含み得る。一実施形態では、メモリ308は、別個のメモリコンポーネントであってもよく、プロセッサ306内に組み込まれてもよい。メモリ308は、一般に、データおよび/またはコンピュータ可読命令を記憶することができる任意のタイプまたは形式の揮発性または不揮発性記憶デバイスまたは媒体を表す。他の例では代替的に、プロセッサ306および/または無線マイクロコントローラ304によって実行される上述のいくつかの機能が、監視装置102に含まれる特殊目的回路によって実行されてもよい。
【0032】
いくつかの例で、無線マイクロコントローラ304は、無線通信プロトコルを用いてデータを無線で送信および/または受信する、コントローラコンポーネントであってもよい。より具体的には、少なくともいくつかの実施形態で、無線マイクロコントローラ304は、プロセッサ306によってサンプリングされ、処理され、または他の方法で生成された、検出コンポーネントによって検出された少なくとも1つの特性を表すデータを受信し、そのデータを有線で(例えば、データ注入装置104に)送信することができる。いくつかの実施形態で、無線マイクロコントローラ304は、データの無線送信および/または受信にアンテナ302を利用してもよい。無線マイクロコントローラ304によって実装される無線通信プロトコルの例には、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi、IEEE 802.15.4E/G(例えば、低速無線パーソナルエリアネットワーク(LR-WPAN)のためのもの)、およびBluetooth(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。無線マイクロコントローラ304の一例は、Texas Instruments, Inc.によって提供されるCC2630 SimpleLink(登録商標)超低電力無線マイクロコントローラユニット(MCU)であってもよい。いくつかの実施形態で、無線マイクロコントローラ304は、監視装置102によって生成され受信されたデータを別の監視装置102またはデータ注入装置104にルーティングするロジックも含み得る。いくつかの実施形態では、単一のコンポーネントが、プロセッサ306および無線マイクロコントローラ304の両方として機能し得る。
【0033】
いくつかの例で、無線マイクロコントローラ304はまた、別の監視装置102にデータを(例えば、無線マイクロコントローラ304およびアンテナ302を用いて)無線送信し、かつ/あるいはそこからデータを受信することができる。例えば、一または複数の監視装置102とデータ注入装置104との間の距離は、無線マイクロコントローラ304の通信能力を超えていてもよい。従って、少なくとも1つの検出された物理特性を示すデータを、ある監視装置102が別の監視装置102に送信し、この別の監視装置102が、該データを無線で受信し(例えば、データ注入装置104またはさらに別の監視装置102に)再送信することができる。さらに、以下でより詳細に説明するように、いくつかの実施形態で、監視装置102および/またはデータ注入装置104は、スマートメータのデータまたは他の公共設備計測インフラからのデータを、(例えば、Zigbee(登録商標)、IEEE 802.15.4E/Gなどを介して)受信し、そのデータを監視データとともに光ファイバケーブル112の光ファイバに注入することができる。
【0034】
いくつかの実施形態で、電力管理コントローラ320は、太陽電池322および/またはバッテリ324のいずれかまたは両方を用いて、無線マイクロコントローラ304、プロセッサ306、メモリ308、電流トランスデューサ310、電圧トランスデューサ312、および/または加速度計314を含むがこれらに限定されない、監視装置102に電力を(例えば、外部電源への有線接続なしで)供給することができる。例えば、電力管理コントローラ320は、太陽電池322によって生成されたエネルギーを、蓄積のためにバッテリ324にかつ/または監視装置102の他のコンポーネントに向けることができる。また、電力管理コントローラ320は、太陽電池322によって得られるエネルギーが十分でない場合に、バッテリ324に蓄積されたエネルギーから監視装置102に電力を供給することができる。他の例では、監視装置102は、誘導変流器、静電直列コンデンサ、または一または複数の他のコンポーネントを用いて、監視装置102を動作させるために電力線導体110内の電流から電力を引き出すことができる。さらに、いくつかの実施形態で、電力管理コントローラ320は、監視装置102の様々なコンポーネントを、コンポーネントのうちの一または複数をある期間にわたって低電力状態または無電力状態に置くことなどにより選択的に動作させて、全体的なエネルギー消費を低減することができる。電力管理コントローラ320のいくつかの例は、バッテリ充電器回路、最大電力点追従器(MPPT)、および/または低ドロップアウト調整器(LDO)を含むことができる。
【0035】
各監視装置102は、光ファイバケーブル112を電力線導体110に固定するケーブルクランプ206に含まれ得るので、ケーブルクランプ206の領域における光ファイバケーブル112と電力線導体110との間の相対的な移動が制限されることで、光ファイバケーブル112または電力線導体110のいずれかに損傷をもたらし得る両者の間の摩擦または他の力を低減する。いくつかの実施形態で、ケーブルクランプ206は、監視装置102を実質的に風雨密性の容器内に包含することができ、監視装置102のコンポーネントのうちの一または複数(例えば、電流トランスデューサ310および/または電圧トランスデューサ312)が電力線導体110に対して対応する機能の実行に十分な近傍にあるような構成で、保持することができる。また、いくつかの例で、ケーブルクランプ206はアイボルトまたは他の機構を用いて構成することができ、「ホットスティック」または他のデバイスによって電力線導体110および光ファイバケーブル112上にケーブルクランプ206を設置して、起こり得る感電からの安全性を保証することができる。
【0036】
図4は、
図1のシステム100に使用可能な例示的なデータ注入装置104のブロック図である。いくつかの例で、データ注入装置104は、
図3の監視装置102の対応するコンポーネントと同じかまたは同様であり得る、アンテナ302、無線マイクロコントローラ304、プロセッサ306、およびメモリ308を含み得る。いくつかの実施形態で、無線マイクロコントローラ304は、アンテナ302を用いて、監視装置102の検出コンポーネントによって検出された少なくとも1つの物理特性のいくつかの態様を示すデータなどのデータを、一または複数の監視装置102から無線で受信することができる。いくつかの例では、データ注入装置104が光ファイバケーブルにデータを注入する前に、受信したデータをメモリ308にある期間記憶することができる。上述したように、いくつかの実施形態ではデータ注入装置104を光ファイバ接続ケース208内に設置することができる。更に、いくつかの例で、光ファイバ接続ケース208は、スプライストレイ416を含むことができる。スプライストレイ416は、機械的に連結されるかまたは融着接続された、光ファイバケーブル112の部分の一または複数の光ファイバ418の端部を、光ファイバケーブル112の別の部分の対応する光ファイバ418の端部に保持して、連続した光データ経路を提供する。一部の実施形態では、一または複数の監視装置102から受信したデータを運ぶのに単一の光ファイバ418を使用する一方、残りの光ファイバ418(例えば、24本の光ファイバ418)が、監視装置102から発信あるいはそれ以外の方法で関連付けられていない通信トラフィックを、運ぶことができる。
【0037】
いくつかの例で、データ注入装置104は、監視装置102から受信したデータ(例えば、デジタルデータ)を、光ファイバ418への導入に備えて光信号に変換する、電気-光信号変換器回路を含んでもよい。いくつかの実施形態では、
図4に示すように、電気-光信号変換器は、物理(PHY)層トランシーバ410および光トランシーバ412を含んでもよい。PHY層トランシーバ410の一例は、イーサネット(登録商標)物理層トランシーバなどの、データを電子インタフェースプロトコル信号に変換する、一種の電子インタフェースプロトコルトランシーバ(例えば、Texas Instruments, Inc.によって提供されるDP838221低電力10/100ベースTイーサネット(登録商標)物理層トランシーバ)とすることができる。いくつかの例で、光トランシーバ412は、PHY層トランシーバ410に通信可能に連結されてもよく、PHY層トランシーバ410が生成する電子インタフェースプロトコル信号を光信号(例えば、単一波長光信号)に変換し得る。より具体的には、一例で、光トランシーバ412は、シングルファイバ単一波長(SFSW)粗波長分割多重(CWDM)スモールフォームファクタプラグ可能(SFP)100メガビット(Mbit)イーサネット(登録商標)光トランシーバとすることができる。
【0038】
得られた光信号を光トランシーバ412から光ファイバケーブル112の光ファイバ418のうちの1つに注入するために、データ注入装置104は、光ファイバ接続ケース208で互いに接続されている光ファイバ112の各部分の光ファイバ418のうちの1つの端部に連結された、光アド/ドロップマルチプレクサ(OADM)414を含んでもよい。いくつかの例で、OADM414は、光トランシーバ412からのデータを、入射光ファイバ418の波長のうち予備であるか或いは別の理由で未使用の波長または波長帯に注入しつつ、他のデータ(例えば、別のデータ注入装置104からのデータ)を運び得るその他の波長は通過させて、光ファイバケーブル112の出射部分の対応する(例えば、データ収集サブシステム106へ伝送するための)光ファイバ418へと進めることができる。一方、少なくともいくつかの例で、スプライストレイ416は、入射部分から光ファイバケーブル112の出射部分へ、該その他の光ファイバ418上で運ばれる一または複数の波長の光データの光結合を容易にすることができる。
【0039】
図4の監視装置102に関して上述した方法と同様に、データ注入装置104は、無線マイクロコントローラ304、プロセッサ306、メモリ308、PHY層トランシーバ410、光トランシーバ412、および/またはOADM414などの、データ注入装置104のさまざまなコンポーネントを動作させるための電力の生成、蓄積、および/または分配のための電力管理コントローラ320、太陽電池322、および/またはバッテリ324を含んでもよい。他の例では、データ注入装置104は、電力線導体110内の電流フローから電力を引き出すことができる(例えば、
図1に示すように、光ファイバ接続ケース208の近くに配置され得るような、相対地遷移部210に内蔵した変流器を使用する)。
【0040】
図5は、
図3の監視装置102と
図4のデータ注入装置104に結合された相対地遷移部210とのいずれかまたは両方に使用可能な、例示的な通信タイミングサブシステム500のブロック図である。
図5に示すように、通信タイミングサブシステム500は、(上記で言及した)電圧トランスデューサ312およびプロセッサ306に加えて、ゼロクロス検出器502を含むことができる。上述したように、いくつかの例で、電圧トランスデューサ312は、電力線導体110上で経時的に運ばれる電力の現在のAC電圧信号を、例えば連続的またはサンプリング方式で検出し、現在のAC電圧信号を示すアナログ電圧、デジタルデータなどを生成することができる。ゼロクロス検出器502は、現在のAC電圧信号がゼロまたは中点閾値を横切る時点を決定し得る。いくつかの例で、ゼロクロス検出器502は、検出されたゼロクロスが、AC電圧のローからハイへのゼロクロスであるか、ハイからローへのゼロクロスであるかを示し得る。いくつかの実施形態で、プロセッサ306は、1つの監視装置102と別の監視装置との間、または一または複数の監視装置102とデータ注入装置104との間の無線通信のタイミングを制御して、無線通信が行われる時間の全体的な割合を低減することができる。このような低減が可能であるのは、同じ電力線導体110上に存在する装置102、104間の無線通信が、電力線導体110上で運ばれる同じAC電圧に基づくゼロクロス情報に基づいて、互いに同期され得るからである。例えば、複数の監視装置102および/またはデータ注入装置104は、AC電圧の各ゼロクロス、各正または負のゼロクロス、各n番目のゼロクロス等に応じて、無線通信を試みることができる。いくつかの例で、ゼロクロスタイミング情報は電力管理コントローラ320によって利用されて、監視装置102および/またはデータ注入装置104の様々なコンポーネントの電力消費を制御し、監視装置102および/またはデータ注入装置104が無線で通信していない時間帯の全体的な電力消費を低減することもできる。データ注入装置104での通信タイミングサブシステム500の使用に関連するいくつかの例では、相対地遷移部210が、電圧トランスデューサ312およびゼロクロス検出器502を含んでもよい。ゼロクロス情報は、誘電体ライトガイドを介して、光ファイバ接続ケース208内に位置するデータ注入装置104のプロセッサ306に、タイミング目的で送信され得る。
【0041】
図6は、関連する光ファイバケーブル(例えば、光ファイバケーブル112)を用いて電力線導体(例えば、電力線導体110)を監視するための例示的な方法600のフロー図である。いくつかの例では、方法600、一または複数の監視装置(例えば、監視装置102)とデータ注入装置(例えば、データ注入装置104)との組み合わせによって実行され得る。方法600では、ステップ610において、電力線導体に沿った複数の位置にある複数の監視装置が、各々、電力線導体に関連する少なくとも1つの物理特性を検出することができる。いくつかの例で、ステップ620において、少なくとも1つの物理特性を示すデータが監視装置によって無線で送信され得る。ステップ630において、データ注入装置は、少なくとも1つの物理特性を示す無線送信されたデータを、無線で受信することができる。いくつかの実施形態では、データ注入装置は、データを生成した監視装置から該データを無線で受信することができ、または、該データの生成元である別の監視装置から該データをリレーした監視装置から、該データを無線で受信することができる。いくつかの例で、データ注入装置は、ステップ640で、受信したデータを光信号に変換し、ステップ650で、データ収集サブシステム(例えば、データ収集サブシステム106)に送信するため光信号を光ファイバケーブルに注入することができる。いくつかの実施形態で、無線データ送信および受信のタイミングは、監視装置および/またはデータ注入装置が取得できる特定の信号のタイミング、例えば、電力線導体によって運ばれるAC電圧(または電流)波形に基づくことができる。
【0042】
図7は、関連する光ファイバケーブル(例えば、光ファイバケーブル112)を用いて電力線導体(例えば、電力線導体110)を監視するためのシステム(例えば、システム100)を設置する例示的な方法700のフロー図である。いくつかの実施形態では、ステップ710において、電力線導体の少なくとも一部に沿って光ファイバケーブルを設置することができる。更に、いくつかの例で、ステップ720において、光ファイバケーブルに沿った対応する位置に複数のクランプ装置(例えば、ケーブルクランプ206)の各々を設置することができる。クランプ装置の少なくとも1つが監視装置(例えば、監視装置102)を含む。いくつかの実施形態では、ステップ730において、クランプ装置のうちの少なくとも1つの監視装置からデータを無線で受信し、データを光信号に変換し、光信号を光ファイバケーブルに注入する、データ注入装置(例えば、データ注入装置104)を設置することができる。
【0043】
図6および
図7に示されるステップ、ならびに監視装置102およびデータ注入装置104によって実行される他のタスクは、上述のように、メモリ308に関連する無線マイクロコントローラ304およびプロセッサ306を含む、任意の適切なコンピュータ実行可能コードおよび/またはコンピューティングシステムによって実行され得る。一例では、
図6および
図7に示されるステップのそれぞれがアルゴリズムを表すことができる。アルゴリズムの構造は、複数のサブステップを含み、かつ/または複数のサブステップによって表され、サブステップの例は上記でより詳細に説明されている。
【0044】
図1~7と関連して上述したように、本明細書に記載するシステムおよび方法は、監視した物理特性に基づいてデータを生成する、電力線導体に沿って分布した監視装置によって、また監視装置から無線でデータを受信して近くの光ファイバケーブルの光ファイバに注入する、データ注入装置によって、電力線導体の一または複数の物理特性(例えば、時間および位置に関して)の比較的精密な監視を容易にすることができる。いくつかの例で、空中型OSP環境に光ファイバケーブルを設置する際に利用されるインフラ(例えば、ケーブルクランプ、光ファイバ接続ケース等)には様々な種々の装置が含まれてよく、光ファイバ通信容量を地理的区域に追加するために、電気伝送または配電システムが活用される。したがって、いくつかの例では、故障状態や公共施設サービス窃盗などを検出することで、該監視装置を含む配電網監視ネットワークを追加することによってもたらされ得る経済的利益により、光ファイバケーブルを設ける追加のコストが相殺され得る。
【0045】
上記で詳述したように、本明細書で説明および/または図示したコンピューティングデバイスおよびシステムは、本明細書で説明するモジュール内に含まれるものなど、コンピュータ可読命令を実行することができる任意のタイプまたは形態のコンピューティングデバイスまたはシステムを広く表す。それらの最も基本的な構成において、これらのコンピューティングデバイスはそれぞれ、少なくとも1つのメモリデバイスと、少なくとも1つの物理プロセッサとを含み得る。
【0046】
いくつかの例で、「メモリデバイス」という用語は、一般に、データおよび/またはコンピュータ可読命令を記憶することができる任意のタイプまたは形態の揮発性または不揮発性記憶デバイスまたは媒体を指す。一実施形態で、メモリデバイスは、本明細書に記載するコンピュータ実行可能タスクを達成するように設計された一または複数のコンピュータ実行可能モジュールを記憶、ロード、および/または保守することができる。メモリデバイスの例には下記が含まれるが、これらに限定されない。ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、光ディスクドライブ、キャッシュ、これらの一または複数のバリエーションまたは組み合わせ、または他の適切なストレージメモリ。
【0047】
いくつかの例において、「物理プロセッサ」という用語は、一般に、コンピュータ可読命令を解釈および/または実行することが可能な、あらゆるタイプまたは形態のハードウェアで実現される処理ユニットを指す。一例で、物理プロセッサは、上述のメモリデバイスに記憶された一または複数のモジュールにアクセスおよび/または修正することができる。物理プロセッサの例には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)、ソフトコアプロセッサを実装するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、それらのうち一または複数の一部、それらのうち一または複数のバリエーションまたは組み合わせ、あるいは任意の他の適切な物理プロセッサが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態では、「コンピュータ可読媒体」という用語は、一般に、コンピュータ可読命令を記憶または担持できる任意の形態のデバイス、キャリア、または媒体を指す。コンピュータ可読媒体の例には、搬送波などの伝送タイプの媒体、および磁気記憶媒体(例えば、ハードディスクドライブ、テープドライブ、およびフロッピー(登録商標)ディスク)、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、およびBLU-RAYディスク)、電子記憶媒体(例えば、ソリッドステートドライブおよびフラッシュ媒体)、ならびに他の配布システムなどの非一時的タイプの媒体が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書に記載および/または図示された工程のプロセスパラメータおよびシーケンスは、単なる例として与えられており、所望に応じて変更することができる。例えば、本明細書で図示および/または説明されるステップは、特定の順序で示されるか説明され得るが、これらのステップは、必ずしも図示または説明される順序で実行される必要はない。本明細書で説明および/または図示された様々な例示的な方法は、本明細書で説明または図示されたステップのうちの一または複数を省略することもでき、または開示されたステップに加えて追加のステップを含むこともできる。
【0050】
前述の説明は、他の当業者が、本明細書で開示される例示的な実施形態の様々な態様を最もよく利用することを可能にするために提供された。この例示的な説明は、網羅的であること、または開示された任意の正確な形態に限定されることを意図していない。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、多くの修正および変形が可能である。本明細書に開示される実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。本開示の範囲を決定する際には、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物を参照すべきである。
【0051】
別途記載のない限り、明細書および特許請求の範囲において用いられる「接続する」および「連結する」という用語(およびそれらの派生語)は、直接的および間接的な(すなわち、他の要素またはコンポーネントを介した)つながりを許容するものとして解釈されるものとする。さらに、明細書および特許請求の範囲において使用される「a」または「an」の用語は、「少なくとも1つ」を意味するものと解釈されるべきである。最後に、使用を容易にするために、明細書および特許請求の範囲で使用される用語「含む」および「有する」(およびそれらの派生語)は、単語「備える」と交換可能であり、同じ意味を有する。