(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】微小電気機械コンポーネントおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B81B 7/02 20060101AFI20230328BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
B81B7/02
B81C1/00
(21)【出願番号】P 2020522809
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018077310
(87)【国際公開番号】W WO2019081192
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】102017218883.9
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ルドロフ ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】デューリンク セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューリッヒ アルンド
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-134453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 7/02
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの微小電気機械エレメント(5)と、電気コンタクトエレメント(3)と、絶縁層(2.2)と、およびその上に二酸化ケイ素で形成される犠牲層(2.1)とが、CMOS回路基板(1)の表面上に形成され、前記微小電気機械エレメント(5)は少なくとも1つの自由度で自由に可動に配置され、局所的に規定された方法で除去された前記犠牲層(2.1)により、前記少なくとも1つの微小電気機械エレメント(5)は可動であり、
微小電気機械コンポーネントの外縁で、前記CMOS回路のすべてのエレメントの周囲に半径方向(radially)に延在し、フッ化水素酸に耐性があり、シリコン、ゲルマニウム、または、酸化アルミニウムで形成された気密および/または液密のクローズド層(closed layer)(4)が前記CMOS回路基板(1)の表面に形成されていることを特徴とする、微小電気機械コンポーネント。
【請求項2】
前記クローズド層(4)がアモルファスシリコン(amorphous silicon)で形成されることを特徴とする、請求項1に記載の微小電気機械コンポーネント。
【請求項3】
前記クローズド層(4)が、ドープされたアモルファスシリコン(doped amorphous silicon)、特にホウ素またはゲルマニウムがドープされたアモルファスシリコン(boron or germanium doped amorphous silicon)、またはシリコンとゲルマニウムの化合物(chemical compound of silicon and germanium)で形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の微小電気機械コンポーネント。
【請求項4】
前記微小電気機械エレメント(5)が可動に配置される前記微小電気機械コンポーネントの表面に、酸化アルミニウム(aluminium oxide)からなるバリア層(7)が形成されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の微小電気機械コンポーネント。
【請求項5】
前記クローズド層(4)が少なくとも1つのさらなる層でオーバーコートされ、前記少なくとも1つのさらなる層は、好ましくは金属、特に好ましくはチタン、アルミニウム、アルミニウム-銅合金(aluminium-copper alloy)またはチタン-アルミニウム合金(titanium-aluminium alloy)または窒化チタン(titanium nitride)で形成されることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の微小電気機械コンポーネント。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の微小電気機械コンポーネントを製造する方法であって、
二酸化ケイ素を含む絶縁体層(2.2)がCMOS回路基板(1)の表面にアプライされ、そのプロセスで電気コンタクトエレメント(3)が局所的に規定された方法で前記絶縁体層(2.2)に埋め込まれ、
外縁の前記絶縁体層(2.2)には、前記CMOS回路基板(1)の表面まで延びる少なくとも1つのトレンチ(6)が、前記CMOS回路のすべてのエレメントの周囲に半径方向に延びるように形成され、
前記トレンチ(6)は、少なくともその底部領域において、シリコン(silicon)、ゲルマニウム(germanium)、シリコンとゲルマニウムの化合物(chemical compound of silicon and germanium)または酸化アルミニウム(aluminium oxide)で形成されるクローズド層(4)で満たされ、
続いて、二酸化ケイ素で形成される犠牲層(2.1)をアプライし、その上に少なくとも1つの微小機械エレメント(5)が形成される材料を形成し、
次いで、エッチング法により、前記犠牲層(2.1)は、フッ化水素酸を使用して局所的に規定された方法で除去され、その結果、前記少なくとも1つの微小電気機械エレメント(5)
が可動
になる、製造方法。
【請求項7】
前記トレンチ(6)が、ほぼ完全に、好ましくは完全に、シリコン、ゲルマニウムまたは酸化アルミニウムで充填されることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記クローズド層(4)が、前記トレンチ内(6)において、好ましくは金属、特に好ましくはチタン、チタン-アルミニウム合金(titanium-aluminium alloy)またはアルミニウム-銅合金(aluminium-copper alloy)または窒化チタン(titanium nitride)で形成される少なくとも1つのさらなる層で覆われることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記犠牲層(2)において、酸化アルミニウム(aluminium oxide)からなるクローズドバリア層(closed barrier layer)(7)と、前記少なくとも1つの微小電気機械エレメント(5)の方向に面する前記バリア層(7)の表面上に前記微小電気機械エレメント(5)の作動に必要なさらなる電気コンタクトエレメント(3)および/または電極(13)とが形成され、これらが前記バリア層(7)の下に配置された電気コンタクトエレメント(3)に導電的に接続されており、
その後、前記バリア層(7)の上の犠牲層(2.1)の材料をエッチングにより除去し、その結果、前記微小電気機械エレメント(5)
が可動
になる、請求項6乃至8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記犠牲層(2.1)が形成される材料の局所的に規定された除去のために、液体または気体のフッ化水素酸がエッチングプロセスのために使用されることを特徴とする、請求項6乃至9の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
シリコンまたは酸化アルミニウムが、PE-CVD技術、スパッタリングまたはALDによって前記トレンチ(6)に堆積され、前記クローズド層(4)がそれとともに形成されることを特徴とする、請求項6乃至10の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械コンポーネントおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、CMOS回路上に配置された微小電気機械コンポーネント(MEMSコンポーネント)に適用されることを意図している。MEMSコンポーネントの製造では、さまざまな微小機械製造方法、特に犠牲層が使用される。後者はしばしば二酸化ケイ素(silicon dioxide)から製造される。MEMSコンポーネントの可動性を実現するために、犠牲層を部分的に除去する必要がある(リリースプロセス)。二酸化ケイ素の場合、これはフッ化水素酸(HF;hydrofluoric acid)を使用したエッチングによって達成でき、フッ化水素酸は、液体または気体の何れかの形で使用される。MEMSコンポーネントがCMOS回路に配置されている場合、異なる金属層間のゲート酸化物または絶縁体としての機能を確保するために、同様にCMOS回路に存在する二酸化ケイ素層をフッ化水素酸による攻撃から保護する必要がある。特に、CMOS部分では、例えばボロンリンガラス(BPSG;borophosphosilicate glass)からなるドープされた二酸化ケイ素層がよく使用される。後者は、犠牲層内のドープされていないケイ酸塩ガラス(USG;undoped silicate glass)よりも著しく高いエッチング速度を示すため、フッ化水素酸を使用したエッチング中に特に影響を受けやすくなる。エッチング攻撃がCMOS領域内で発生すると、短絡または層間剥離が発生する可能性がある。外縁からの攻撃の場合、過度に大きな層間剥離が発生すると、MEMSコンポーネントの電気コンタクト(ボンドパッド)および機能部品が、使用されているCMOS回路から分離する可能性がある。この場合、ワイヤボンディング、そして、この方法で影響を受けるMEMSコンポーネントの使用はできなくなる。したがって、MEMSコンポーネントのCMOS領域は、リリースプロセス中に発生する可能性のある攻撃から効果的に保護される必要がある。
【0003】
MEMSコンポーネントのMEMS部分である、CMOS回路の上面への攻撃の防止を調査する多くの研究がある。これまで、CMOS回路の横方向の保護はほとんど無視されており、一般的な保護または上からの保護、つまり上にあるMEMS部品の方向からの保護のみが取り組まれてきた。米国特許出願公開第2016/0068388号明細書では、CMOSの保護に取り組んでおり、表面を覆う追加の金属層を提案している。 これはシンプルで、おそらくよく使われる方法である。チタン、窒化チタン(titanium nitride)、アルミニウムおよびアルミニウム-銅(aluminium-copper)が材料として提案された。ただし、米国特許出願公開第2016/0068388号明細書では、これらの材料はフッ化水素酸に対して完全な耐性を示すのではなく、むしろ腐食し、その結果、特定の期間のみ効果的な保護を確保できることに注意されている。したがって、厚さは十分に厚くなるように選択する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0068388号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、エッチングプロセス(リリースプロセス)によって二酸化ケイ素を犠牲材料として除去することにより、微小電気機械エレメントを自由に可動とするように露出するプロセスで、特に、この場合における層間剥離を回避するため、MEMSコンポーネントのCMOS回路の改善された保護の可能性を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有するコンポーネントによって達成される。請求項6は、製造方法を定義する。本発明の有利な構成および発展は、従属請求項で参照される特徴を用いて実現することができる。
【0007】
本発明に係る微小電気機械コンポーネントでは、少なくとも1つの微小電気機械エレメント、電気コンタクトエレメント、絶縁層、および二酸化ケイ素で形成された犠牲層が、CMOS回路基板の表面上に形成される。この場合、従来技術から知られているように、微小電気機械エレメントは、少なくとも1つの自由度で自由に可動に配置される。本発明によれば、微小電気機械コンポーネントの外縁において、CMOS回路のすべてのエレメントの周囲に半径方向に(radially)延在し、フッ化水素酸に耐性があり、シリコンまたは酸化アルミニウムで形成される気密および/または液密なクローズド層がCMOS回路基板の表面に形成されている。
【0008】
前記クローズド層は、周囲に半径方向に延在する保護リングを形成し、エッチング剤、特にフッ化水素酸が、特にCMOS回路の重要な領域を攻撃することを防ぐ。層材料は、少なくとも犠牲層材料が十分な程度まで除去され、それぞれの微小電気機械エレメントの可動性が達成されるまで、エッチングによる犠牲層材料の除去の間、フッ化水素酸に対して耐性でなければならない。
【0009】
好ましくは、前記クローズド層はアモルファスシリコン(aSi)、好ましくはドープされたアモルファスシリコンで形成されるべきである。特に、ボロンはドーピングに使用可能である。しかしながら、代替として、酸化アルミニウム、ゲルマニウム、またはシリコンとゲルマニウムから構成される化合物も考えられる。
【0010】
二酸化ケイ素は不純物のない二酸化ケイ素である必要はない。二酸化ケイ素は、ドーピングまたは添加剤を含むこともでき、したがって、ボロンリンガラス(borophosphosilicate glass)を使用してもよい。
【0011】
また、好ましくは、酸化アルミニウムからなるバリア層が、微小電気機械エレメントが可動に配置される微小電気機械コンポーネントの表面に形成される。前記バリア層は、エッチング攻撃に対して、特にバリア層の下の犠牲層内に配置された電気コンタクトエレメントを保護することができる。
【0012】
好ましくは、周囲に半径方向に延在し、シリコンまたは酸化アルミニウムで形成される層は、より高い高さを有することができ、これにより、当該層は、CMOS回路基板の表面を超えて横方向に突出し、使用されるエッチング剤による攻撃に対する横方向の保護も提供できる。
【0013】
周囲に半径方向に延在する層は、少なくともCMOS層構造の高さに対応する高さを有するべきである。当該層は、CMOS回路の周囲に保護リングを形成できるように形成されてもよい。この場合、当該層は、CMOS回路基板の表面から、直接、微小電気機械エレメントの下側までのバリア層まで形成されてもよい。
【0014】
シリコン、酸化アルミニウム、ゲルマニウム、またはシリコンとゲルマニウムの化合物で形成された層が、少なくとも1つのさらなる層でオーバーコートされてもよい。少なくとも1つのさらなる層は、好ましくは金属、特に好ましくはチタン、アルミニウム、アルミニウム-銅合金(aluminium-copper alloy)またはチタン-アルミニウム合金(titanium-aluminium alloy)または窒化チタン(titanium nitride)で形成されてもよい。上記のさらなる層もまた、犠牲層内に配置されたCMOS回路の部分および電気コンタクトエレメントを、特にMEMSコンポーネントの縁部からのエッチング攻撃から保護することができる。したがって、シリコンまたは酸化アルミニウムで形成された層は、主にCMOS回路基板の表面を保護する。
【0015】
微小電気機械エレメントは、例えば、旋回可能な反射エレメント(マイクロミラー)または反射膜であり得る。
【0016】
本発明に係るMEMSコンポーネントの製造の手順は、二酸化ケイ素で形成された絶縁体層がCMOS回路基板の表面にアプライされ、当該プロセスにおいて、従来技術から知られた、局所的に規定された方法で、電気コンタクトエレメントまたは導電体トラックが絶縁体層に埋め込まれるようなものである。本発明によれば、外縁の絶縁体層において、CMOS回路基板の表面まで延びる少なくとも1つのトレンチが、CMOS回路のすべてのエレメントの周囲に半径方向に延びるように形成される。その後、トレンチは、少なくともその底部領域において、シリコンまたは酸化アルミニウムで形成された液密および/または気密のクローズド層で満たされる。密封性は、犠牲層材料を除去するために使用される際の、エッチング剤、特にフッ化水素酸の物質の状態を考慮に入れるべきである。さらに、周囲に延在する堅い層を構成する材料は、それ自体、使用されるフッ化水素酸に対して耐性でなければならない。
【0017】
タイトクローズ層は、好ましくはアモルファスシリコン、特に好ましくはホウ素とシリコンとの化合物またはゲルマニウムとシリコンとの化合物で形成されてもよい。
【0018】
その後、方法は、オプションで、さらなる電気コンタクトエレメント、導電体トラックまたは電極を形成し、犠牲層も形成する。犠牲層は、同様に、二酸化ケイ素で形成される。犠牲層材料は、絶縁体層の材料と同一であってもよい。しかしながら、2つの材料は、それらが異なってドープされることにより、または他の物質をさらに含む二酸化ケイ素により、異なる整合性(consistency)を有していてもよい。絶縁体および/または犠牲層を形成するために使用される二酸化ケイ素は、ガラスについてそれ自体既知の添加剤、特にホウ素およびリンを含んでいてもよい。
【0019】
続いて、周囲に延在する保護層が設けられたこのCMOS回路上に、任意の所望のMEMSエレメントがアプライされる。
【0020】
その後、エッチング法によって犠牲層材料が除去され、その結果、少なくとも1つの微小電気機械エレメントの可動性が達成される。
【0021】
トレンチは、シリコンまたは酸化アルミニウムでほぼ完全に、シリコンで好ましくは完全に充填されてもよい。結果として、エッチング攻撃に対する側面保護をさらに改善することができる。
【0022】
絶縁体層は、連続して複数の方法ステップで段階的に形成されてもよい。これらの方法ステップの間に、それ自体既知の方法で、電気コンタクトエレメントおよび/または電気導体トラックを形成し、絶縁体層材料に埋め込んでもよい。電気コンタクトエレメントおよび電極を犠牲層に埋め込んで、エッチングによって再び露出させてもよい。
【0023】
代替として、または追加として、前記クローズド層は、トレンチ内において、好ましくは金属、特に好ましくはチタン、窒化チタン(titanium nitride)、アルミニウム、アルミニウム-銅合金(aluminium-copper alloy)またはチタン-アルミニウム合金(titanium-aluminium alloy)で形成される少なくとも1つのさらなる層で覆われてもよい。
【0024】
絶縁体層と犠牲層の間に、酸化アルミニウムまたはシリコン、特にaSiからなるクローズドバリア層と、および少なくとも1つの微小電気機械エレメントの方向に面するバリア層の表面上に、微小電気機械エレメントの作動に必要なさらなる電気コンタクトエレメントおよび電極とを形成してもよく、これらは、バリア層の下に配置された電気コンタクトエレメントに導電的に接続される。その後、バリア層の上方の犠牲層の材料をエッチングにより除去し、その結果、微小電気機械エレメントの可動性が達成される。
【0025】
トレンチ内のシリコンまたは酸化アルミニウムは、PE-CVD技術、スパッタリングまたは原子層堆積(ALD)によって堆積されてもよく、これにより、前記クローズド層を形成することができる。
【0026】
ホウ素をドープしたアモルファスシリコンaSiBまたは酸化アルミニウム、ゲルマニウム、またはシリコンとゲルマニウムの化合物aSiGeを材料として使用すると、金属よりも液体状または気体状のフッ化水素酸に対して優れてまたは完全に不活性であり、これにより、事実上無制限の時間にわたって、リリースプロセスにおける望ましい保護効果を確実にすることができる。
【0027】
さらなる利点は、シリコン、特にaSiB、ゲルマニウム、またはシリコンとゲルマニウムの化合物aSiGeの、トレンチを充填する能力によって達成される。シリコン、ゲルマニウム、またはシリコンとゲルマニウムの化合物は、PE-CVD技術を使用して堆積され、リング状の保護として提供されるトレンチを完全にボイドなしで充填することができる。その後、シリコン、特にaSiB、またはゲルマニウムまたはシリコンとゲルマニウムの化合物aSiGeを平坦化することができる。これとは対照的に、これまでに使用され、すでに述べた金属層は、PVD法によって堆積され、プロセスにおいてトレンチを完全に充填するのではなく、底部と側壁のみを充填する。この場合、これらの層の厚さは、通常、構造化されていない領域に堆積された所望の厚さよりも大幅に薄い。特にトレンチ底部から側壁への移行部では、層厚が最小となり、局所的な機械的条件の結果として、マイクロクラックの形成がより多く発生する。材料の耐久性が低いことに加えて、前記マイクロクラックは追加のリークを構成し、金属で充填されたトレンチの保護効果を低下させる。このような問題は、特にコンポーネントの角部で観察され、層で形成された保護リングの必要とされる曲率半径の結果としてアンダーカットの発生がさらに増加する。対照的に、シリコン、特にaSiB、ゲルマニウム、またはシリコンとゲルマニウムで形成された化合物で完全に満たされたトレンチを使用すると、層で形成されたシリコンで満たされた保護リングの幅と高さの合計が大幅に広く、高くなるため、リークは予期されない。
【0028】
本発明に係るMEMSコンポーネントの製造中、これまで通例であったような、それ自体既知の方法に頼ることが可能である。
【0029】
本発明は、実施例として以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】
図1Aは、本発明に係るMEMSコンポーネントの一実施例の断面図を示している。この図では、微小
電気機械エレメントはまだ自由に動くことができない。
【
図1B】
図1Bは、本発明に係るMEMSコンポーネントの他の実施例の断面図を示している。この図では、微小
電気機械エレメントはまだ自由に動くことができない。
【
図2】
図2は、標準的なCMOS回路基板の断面図を示している。
【
図3】
図3は、CMOS回路基板の断面図を示している。この図では、CMOS回路基板の表面のCMOSエレメントは、二酸化ケイ素からなる絶縁体層の領域で覆われている。
【
図4】
図4は、
図3のCMOS回路の断面図を示している。この図では、絶縁層に穿孔(ビア)が形成されている。
【
図5】
図5は、
図4に示す実施例の断面図を示している。この図では、メタライゼーション(metallization)および金属の構造化が、CMOSおよび電気コンタクトエレメント上の電気スルーコンタクトを形成するために実施されている。
【
図6】
図6は、
図5に示す実施例の断面図を示している。この図では、穿孔によって、CMOS回路のエレメントの周囲の半径方向の外縁にある電気スルーコンタクト(ビア)を介して、円周方向に延在する半径方向のトレンチがシリコンウェーハまで形成されている。
【
図7】
図7は、
図6の絶縁層を備えたCMOS回路の断面図を示している。このプロセスでは、表面がaSiBでコーティングされ、トレンチがaSiBで充填されている。
【
図8】
図8は、
図7に示す実施例の断面図を示している。この図では、堆積されたaSiBの一部が、トレンチ領域を除いて、再び除去されている。
【
図9】
図9は、
図8に示す実施例の断面図を示している。この図では、さらなる領域が、aSiBで満たされたトレンチを覆うように、表面上に二酸化ケイ素からなる絶縁体層で形成されている。
【
図10】
図10は、
図9に示す実施例の断面図を示している。この図では、絶縁体層の表面が平坦化されている。
【
図11】
図11は、
図10に示す実施例の断面図を示している。この図では、平坦化された表面に穿孔(ビア)が形成されており、シリコン層と接触する金属層が表面および前記穿孔に形成されている。
【
図12】
図12は、
図11に示す実施例の断面図を示している。この図では、局所的に規定された金属層の除去により、電気コンタクトエレメントおよび導電体トラックが形成されている。
【
図13】
図13は、
図12に示す実施例の断面図を示している。この図では、絶縁層のさらなる領域が形成され、電気コンタクトエレメントがその中に埋め込まれている。
【
図14】
図14は、
図13に示す実施例の断面図を示している。この図では、絶縁層の表面の平坦化が実施されている。
【
図15】
図15は、
図14に示す実施例の断面図を示している。この図では、酸化アルミニウムまたはaSiからなるバリア層が犠牲層の平坦化された表面上に形成されている。
【
図16】
図16は、
図15に示す実施例の断面図を示している。この図では、穿孔が、酸化アルミニウムまたはaSiから構成されるバリア層を通して局所的に規定された方法で形成されている。
【
図17】
図17は、
図16に示す実施例の断面図を示している。この図では、絶縁層内に配置された電気コンタクトエレメントまで穿孔が導入されている。
【
図18】
図18は、
図17に示す実施例の断面図を示している。この図では、メタライゼーションが表面に施されており、電気コンタクトエレメントまで電気スルーコンタクトが形成されている。
【
図19】
図19は、
図18に示す実施例の断面図を示している。この図では、最終的なメタライゼーションが局所的に規定された方法で削除されている。
【
図20】
図20は、
図19に示す実施例の断面図を示している。この図では、メタライズされたCMOS回路の表面にMEMSエレメントの犠牲層が形成されている。
【
図21】
図21は、
図20に示す実施例の断面図を示している。この図では、犠牲層の表面が平坦化されている。
【
図22】
図22は、
図21に示す実施例の断面図を示している。この図では、犠牲層より前に形成された領域において、電気コンタクトエレメントまで穿孔が形成されている。
【
図23】
図23は、
図22に示す実施例の断面図を示している。この図では、微小電気機械エレメントを形成するための材料が、最後に形成された穿孔まで、犠牲層より前にアプライされた領域の平坦化された表面にアプライされている。
【
図24】
図24は、
図23に示す実施例の断面図を示している。この図では、微小電気機械エレメントを形成するための材料の局所的に規定された除去が実施されている。
【
図25】
図25は、本発明に係るMEMSコンポーネントの完成した製造例の断面図を示している。この図では、犠牲層の領域が除去されており、その結果、微小電気機械エレメントは可動となっている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の図を用いて、本発明に係るMEMSコンポーネントの実施例を方法ステップで順を追って製造する方法を明らかにすることを意図する。
【0032】
図1Aは、微小
電気機械エレメント5がまだ自由に動くことができない例を示している。この場合、CMOS回路基板1の表面上にMEMSコンポーネントの上部領域に犠牲層2.1が形成され、MEMSエレメント5の可動性を達成するために、前記上部領域は除去されることが意図される。その下に、二酸化ケイ素からなる絶縁体層2.2がCMOS回路の領域に形成され、複数の電気コンタクトエレメント3が前記絶縁体層に埋め込まれている。MEMSコンポーネントの半径方向外縁において、aSiBからなる層4がCMOS回路基板1の表面上に周方向に延在するように形成され、当該表面の他の部分は犠牲層材料および絶縁体層材料によって囲まれている。
【0033】
微小電気機械エレメント5が依然として接触している犠牲層2.1の表面から離れたところに、酸化アルミニウムで作られたバリア層7が形成され、バリア層7は、電気スルーコンタクト8が電気コンタクトエレメント3に通じる貫通穴を有する。この実施例では、微小電気機械エレメント5は、電磁放射を反射する旋回可能なエレメント(pivotable element)であることを意図している。
【0034】
図1Bに示す実施例は、単に層4が形成される方法において、
図1Aに示す実施例とは異なる。当該層4はバリア層7まで導かれる。
【0035】
図2は、製造の開始点として標準的に利用可能なCMOSエレメント15を有するCMOS回路基板1を示す。
【0036】
図3は、二酸化ケイ素からなる絶縁体層2.2の領域が、PE-CVD法によってCMOS回路基板1の表面上にどのように堆積されたかを示している。
【0037】
このようにして形成された犠牲層2に、反応性イオンエッチングによって局所的に規定された方法でコンタクトホール(ビア)9が形成され、前記コンタクトホールは、絶縁体層2.2のこれまで形成された領域の表面からCMOS回路基板1の電気コンタクト(electrical contacts)まで導かれている(
図4)。
【0038】
さらなる電気コンタクト3と電気スルーコンタクト10は、スパッタリングによる金属の堆積と、
図5に示すリソグラフィーのパターン形成によって形成された。
【0039】
図6は、
図5に示す半完成品が、MEMSコンポーネントの半径方向外縁の絶縁体層2.2の材料に、反応性イオンエッチングによって円周方向に延在する半径方向のトレンチ6を形成することによって、さらに処理された様子を示しており、前記トレンチはCMOS回路基板1の表面まで延びている。
【0040】
図7は、PE-CVD法によって、表面全体がどのようにaSiB4.1でコーティングされたかを示している。また、当該プロセスにおいて、トレンチ6は、aSiB4.1で完全に充填された。
【0041】
その後、aSiB4.1は、リソグラフィーによって局所的に規定された方法で、および反応性イオンエッチングによって局所的に規定された方法で除去され、
図8に示す層4として後の保護リングの領域にのみ残っている。層4の表面は、この実施例のようにパターン化された方法で形成される必要はなく、
図1Bに示されているように、平坦かつ平面であってもよい。
【0042】
その後、絶縁体層2.2の領域が、PE-CVD法によって再び堆積され、その結果、表面は二酸化ケイ素で完全に形成され、層4も二酸化ケイ素で覆われる(
図9)。
【0043】
図10は、それまでに形成された絶縁体層2.2の表面、および層4を形成するaSiBが化学機械研磨によってどのように平坦化されているかを示している。
【0044】
それまでに形成された絶縁体層2.2の平坦化された表面上に、ビア10がエッチングされ、AlSiCuからなる連続層11(連続層11は層4のaSiBと接触する)が、スパッタリングによって形成された(
図11)。
【0045】
図12は、どのように、層11の一部がリソグラフィー及びエッチングにより局所的に規定された方法で除去され、これにより、電気コンタクトエレメントおよび/または導体トラック3が形成されたかを示す。
【0046】
図13および
図14から、絶縁層2.2のさらなる領域がPE-CVD法によって表面上に形成され、最後に製造された電気コンタクトエレメント3がその中に埋め込まれていることがわかる。その後、絶縁体層2.2の表面は、化学機械研磨によって再び平坦化された。
【0047】
図15は、絶縁体層2.2の表面全体上への酸化アルミニウムからなるバリア層7の形成を示している。バリア層7は、ALD(原子層堆積(atomic layer deposition))によって形成することができる。それはクローズド層(a closed layer)を形成するはずである。
【0048】
図16によれば、穿孔(perforations)7.1は、反応性イオンエッチングによって局所的に規定された方法でバリア層7に形成される。
【0049】
穿孔7.1は、反応性イオンエッチングによる、絶縁層材料の局所的に規定された除去によりさらに深くされ、その結果、電気コンタクトエレメント3に到達する拡大ビア7.2を形成することができる。これは、
図17に示されている。
【0050】
図18によれば、金属層12がスパッタリングによって再び表面にアプライされ、前記金属層は、最後に形成された電気コンタクトエレメント3へのスルーコンタクト8を形成するために使用される。この目的のために、AlSiCu合金またはTiAl
合金が再び使用されてもよい。
【0051】
図19では、金属層12の局所的に規定された除去がリソグラフィーとエッチングによってどのように行われることが意図されているかを明らかにすることを目的としている。この除去により、バリア層7の表面にさらに電気コンタクトエレメント3および電極13が形成される。
【0052】
微小電気機械エレメント5を形成するために、PE-CVD技術を使用して、表面にさらに犠牲層材料を堆積する。その結果、犠牲層2.1の材料によって、最後に形成された電気コンタクトエレメント3、電極13、バリア層7が囲まれる(
図20)。
【0053】
図21によれば、犠牲層2.1の表面は、化学機械研磨によって再び平坦化される。
【0054】
図22から、反応性イオンエッチングによって、表面から、犠牲層2.1に埋め込まれるとともにバリア層7の上に配置された電気コンタクトエレメント3まで、犠牲層材料を貫通して、さらなる穿孔14が形成されることがわかる。
【0055】
その後、微小電気機械エレメント5を形成するための材料5.1の層が形成され、これにより穿孔14が材料5.1で満たされ、その結果、微小電気機械エレメント5のための導電性材料の場合、対応する電気コンタクトエレメント3への導電性接続を形成することができる。この層は、金属の場合はスパッタリングによって、例えばシリコンなどの他の材料の場合はPE-CVD法によって形成できる(
図23)。
【0056】
微小電気機械エレメント5を形成することを目的とする材料の一部は、リソグラフィーおよびエッチングによって再び除去することができ、その結果、微小電気機械エレメント5の寸法(dimensioning)および幾何学的形状(geometric shape)に影響を与えることができる(
図24)。
【0057】
その後、表面で犠牲層材料がフッ化水素酸を使用した液相エッチングまたは気相エッチング(wet or vapor phase etching)によって除去され、その結果、この場合旋回可能な反射エレメントとして具体化された微小電気機械エレメント5が、少なくとも1つの軸を中心に自由に動くことができるように旋回可能になる。ここで、外縁で層4の一部を露出させることも可能であるが、これはそうである必要はない。
【0058】
このように処理された本発明に係るMEMSコンポーネントの実施例は、
図25に示される。