(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】電磁弁ユニット
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
F16K27/00 B
(21)【出願番号】P 2020546009
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2019035377
(87)【国際公開番号】W WO2020054664
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018169205
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】小櫻 英明
(72)【発明者】
【氏名】福永 秀二
(72)【発明者】
【氏名】山中 尊史
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-201413(JP,A)
【文献】実開昭62-082473(JP,U)
【文献】実開平03-098363(JP,U)
【文献】実開昭59-039362(JP,U)
【文献】特開2015-102150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御機器の収容部の受け部と押圧部材間に狭持されて保持される電磁弁ユニットであって、
前記電磁弁ユニットは、前記収容部の受け部に対向する肩部と、前記肩部に形成された
内径側に凹む凹部に挿入される凸部を有する環状弾性部材とを有しており、前記環状弾性部材は、前記凸部と軸線方向に重複せずに軸方向の変形を許容する環状の変形部を備え
、
前記環状弾性部材には、径方向に対して垂直に延びる当接面が形成されており、前記凸部は、前記当接面よりも内径側に突出する電磁弁ユニット。
【請求項2】
前記変形部は、前記肩部の外周面に沿って配置されている請求項1に記載の電磁弁ユニット。
【請求項3】
前記変形部の外径は、前記収容部の内径よりも小径である請求項1または2に記載の電磁弁ユニット。
【請求項4】
前記凸部は周方向に連続する環状を成し、前記凹部は周方向に連続する環状を成し、前記凸部は前記凹部に挿入されている請求項1ないし3のいずれかに記載の電磁弁ユニット。
【請求項5】
前記凸部は周方向に部分的に形成されており、前記凹部は周方向に部分的に形成されており、前記凸部は前記凹部に圧入されている請求項1ないし3のいずれかに記載の電磁弁ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御機器に装着され内部の流体をコントロールする電磁弁ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルと可動鉄心とを備える電磁弁ユニットにより制御機器内の流路の開度を調整し流体の流量を制御することが一般的に行われており、このような電磁弁ユニットの多くは、流体を制御する制御機器の流路に面する収納部等に収容されるように装着されて用いられている。
【0003】
特許文献1に示される電磁弁ユニットは、有底筒状のヨーク内に収容されており、バルブスリーブがヨークの開口部側から押し込まれた状態でヨークに加締められ、電磁弁ユニットがヨークの底部とバルブスリーブとで狭持されて設置されるようになっている。このヨークの底部と電磁弁ユニットの本体部との間には、ウェーブワッシャが配置されており、経年等によりヨークとバルブスリーブとの加締め部分に緩みが生じてもウェーブワッシャの反発力により電磁弁ユニットの本体部がバルブスリーブに押し付けられ、電磁弁ユニットの本体部のヨーク内での緩みが抑制されるようになっている。
【0004】
このような高反発力を有するウェーブワッシャ等に代え、制御機器の収容部の底部(受け部)と電磁弁ユニットの本体部との間に配置されるゴムや合成樹脂等からなる比較的低い反発力の弾性部材も用いられている。
図11に示されるリング状の弾性部材700は、制御機器110における収容部140の底部140aと対向する電磁弁ユニット100の肩部200に保持されている。詳しくは、肩部200は、電磁弁ユニット100の本体部の上端側角部を周方向に切り欠いて形成されており、電磁弁ユニット100の本体部の外周面100aから内径方向に水平に延びる水平面100bと、水平面100bの内径側端部から上方に立ち上がる垂直面100cと、を備える段形状を成しており、弾性部材700は、垂直面100cに外嵌されている。これによれば、電磁弁ユニット100の本体部と弾性部材700とが一体的に収容部140に挿入されるようになっているため、電磁弁ユニット100の挿入作業が簡便なばかりか、電磁弁ユニット100を収容部140の底部140a側へ押圧するための押込み量も高い精度を要求されないといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-102150号公報(第8頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されるようなゴムや合成樹脂等の弾性部材700を用いた場合、電磁弁ユニット100の肩部200詳細には垂直面100cに対して弾性部材700の締め付け力が弱いと、電磁弁ユニット100の挿入作業時に該電磁弁ユニット100が捻れてしまい、弾性部材700が捻れた状態で肩部200と収容部140の底部140aとで狭圧されると、収容部140対して電磁弁ユニット100の本体部を正確に取付けることができないといった虞があった。一方、弾性部材700の肩部200詳細には垂直面100cに対する締め付け力を強くすると、弾性部材700の径方向における内在応力が大きくなり、収容部140と電磁弁ユニット100の肩部200との間に必要な反発力を十分に確保できないといった問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、制御機器の収容部と電磁弁ユニットとの間に必要な反発力を十分に確保した状態で、収容部に対して電磁弁ユニットを容易かつ正確に取付けることができる電磁弁ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の電磁弁ユニットは、
制御機器の収容部の受け部と押圧部材間に狭持されて保持される電磁弁ユニットであって、
前記電磁弁ユニットは、前記収容部の受け部に対向する肩部と、前記肩部に形成された凹部に挿入される凸部を有する環状弾性部材とを有しており、前記環状弾性部材は、前記凸部と軸線方向に重複せずに軸方向の変形を許容する環状の変形部を備える。
これによれば、電磁弁ユニットは、環状弾性部材の凸部が肩部の凹部に挿入されて固定されており、一方電磁弁ユニットの肩部が制御機器の収容部の受け部側に押圧されたときに、凸部と軸線方向に重複していない環状弾性部材の環状の変形部が軸方向に変形するため、制御機器の収容部と電磁弁ユニットの肩部との間に十分な軸方向の反発力を確保した状態で、収容部に電磁弁ユニットを容易かつ正確に取付けることができることになる。さらに、環状弾性部材の凸部が肩部の凹部に挿入されて固定されているので、電磁弁ユニットの運搬時や取り扱い時の振動等によって、電磁弁ユニットの肩部から環状弾性部材が脱落することを防止できる。
【0009】
好適には、前記変形部は、前記肩部の外周面に沿って配置されている。
これによれば、肩部により変形部の捻れ等が規制されるため、変形部を肩部と受け部との間で正確に狭圧できる。
【0010】
好適には、前記変形部の外径は、前記収容部の内径よりも小径である。
これによれば、電磁弁ユニットを収容部に挿入しやすいとともに、変形部が外径方向に変形することができることから、変形部の軸方向の変形代を十分に確保することができる。
【0011】
好適には、前記凸部は周方向に連続する環状を成し、前記凹部は周方向に連続する環状を成し、前記凸部は前記凹部に挿入されている。
これによれば、環状弾性部材を電磁弁ユニットの肩部に対して周方向にバランスよく保持できる。
【0012】
好適には、前記凸部は周方向に部分的に形成されており、前記凹部は周方向に部分的に形成されており、前記凸部は前記凹部に圧入されている。
これによれば、環状弾性部材の周方向の回動が規制される。
【0013】
好適には、前記凹部は、軸方向に壁部を残して前記肩部の内径方向に凹むように形成されている。
これによれば、環状弾性部材が抜け方向に動いたときに凸部が壁部に引っ掛かるので、環状弾性部材が肩部から外れにくい。
【0014】
好適には、前記凹部は、前記肩部の軸方向に凹むように形成されている。
これによれば、凸部と変形部との取付方向が同一となるので、環状弾性部材の肩部への組み付けが簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1における電磁弁ユニットを備える緩衝装置を示す概略断面図である。
【
図2】実施例1における電磁弁ユニットを示す正面断面図である。
【
図3】実施例1における弾性部材を示す斜視図である。
【
図4】実施例1における弾性部材が電磁弁ユニットの肩部に取付けられた状態を示す正面断面図である。
【
図5】実施例1における電磁弁ユニットをハウジングに取付けた状態を示す正面断面図である。
【
図6】本発明の実施例2における弾性部材を示す斜視図である。
【
図7】実施例2における弾性部材が電磁弁ユニットの肩部に取付けられた状態を示す正面断面図である。
【
図9】本発明の実施例3における弾性部材を示す斜視図である。
【
図10】実施例3における弾性部材が電磁弁ユニットの肩部に取付けられた状態を示す正面断面図である。
【
図11】従来例における弾性部材が電磁弁ユニットの肩部に取付けられた状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る電磁弁ユニットを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る電磁弁ユニットにつき、
図1から
図5を参照して説明する。以下、
図1の紙面手前側を電磁弁ユニットの正面側(前方側)とし、
図1から見て左右側を電磁弁ユニットの左右側として説明する。
【0018】
本発明の電磁弁ユニット1は、例えば、自動車等の車両に設けられ、走行中に路面から車体へ伝達される振動を緩和するスプリングとともに用いられる緩衝装置10(制御機器)に取付けられ、ピストン14を通過する流体の流量を制御することで該緩衝装置10が発揮する減衰力を調整している。
【0019】
先ず、緩衝装置10の構成について説明する。
図1に示されるように、緩衝装置10は、流体を収容する筒状のシリンダ11と、シリンダ11に対して軸方向に相対移動可能なピストンロッド12と、ピストンロッド12の端部に設けられピストンリング13が外周に取付けられたピストン14とを備え、ピストン14によってシリンダ11内の空間を第1液室R1と第2液室R2とに区画している。ピストン14は、下方に開口する有底筒状をなしており(
図2参照)、ピストンリング13よりも上方の位置に径方向に貫通する貫通孔14aが周方向に複数形成されている。
【0020】
また
図2に示されるように、ピストン14の収容部としての収容凹部14Aには、電磁弁ユニット1が収容されているとともに、電磁弁ユニット1よりも下端側には、ピストン14の下端側内周面に設けられる雌ネジ部14sに螺合する雄ネジ部15sを外周面に備えた押圧部材としての筒状体15が螺合接続されており、電磁弁ユニット1は、筒状体15の上端部15cによりピストン14の底部に設けられた段部14bに押圧されている。尚、段部14bは、収容凹部14Aを構成する筒状の内周面14cと、内周面14cの上端から内径方向に延びる受け部としての水平面14dと、水平面14dの内径側端縁から上方に向けて先細りする傾斜面14eと、から構成されており、電磁弁ユニット1は、水平面14dと筒状体15の上端部15cとにより狭持されている。
【0021】
また、ピストン14には、段部14b詳細には傾斜面14eよりも上方に上下方向に貫通する貫通孔14fが形成されており、貫通孔14fには、後述するコイル部2に電力を供給する電線LNが挿通されている。尚、電線LNは、ピストンロッド12内を通って外部電源に接続されている。
【0022】
次に、電磁弁ユニット1の構成について説明する。電磁弁ユニット1は、コイル部2と、コイル部2により上下に移動する可動鉄心としてのソレノイドロッド3と、ソレノイドロッド3の下端部に接続される弁部材4と、コイル部2の下方に接続される筒状部材5と、コイル部2に取付けられる弾性部材7とから主に構成されている。
【0023】
コイル部2は、コイルが樹脂材でモールドされたモールドコイルであり、中央部には、下方に開口する穴部2aが形成されている。また、コイル部2は、その上端側角部に肩部2bが形成されており、肩部2bには、後述するリング状の環状弾性部材としての弾性部材7が取付けられている。尚、肩部2b及び弾性部材7の詳しい形状については、後に詳述する。また、コイル部2の下方には固定鉄心2yが配置されている。
【0024】
また、ソレノイドロッド3は、先端部(すなわち下端部)に雄ネジ部3aが形成されており、コイル部2の穴部2a内にソレノイドロッド3の大部分が収容されている。
【0025】
弁部材4は、小径部4aと該小径部4aの上端に設けられた大径部4bとを備える断面T字状を成し、上部中央部には、上方に開口し内周面に雌ネジ部4cを有する穴部4dが形成されている。この弁部材4とソレノイドロッド3とは、雌ネジ部4cと雄ネジ部3aとの螺合により接続されている。
【0026】
筒状部材5は、固定鉄心2yの下部に固定されており、弁部材4を覆う筒状部5aと、筒状部5aの下端から内径方向に張り出す環状の弁座部5bと、を備えている。なお、筒状部材5は固定鉄心2yと一体に形成されていてもよい。弁座部5bの内径は、弁部材4の小径部4aよりも大径であるとともに、弁部材4の大径部4bよりも小径に形成されている。また、筒状部5aには、径方向に貫通する貫通孔5cが周方向に複数形成されており、貫通孔5cは、ピストン14の貫通孔14aと軸方向(すなわち上下方向)のほぼ同一位置に設けられており連通している。また、弁部材4の大径部4bと弁座部5bとの間には、互いを離間させる方向に付勢するバネ6bが配置されている。
【0027】
次に、電磁弁ユニット1による減衰力の調整について説明する。電磁弁ユニット1は、ピストン14の貫通孔14aと、筒状部材5の貫通孔5cと、筒状部材5の下端側の開口部(すなわち弁座部5bの内側)と、筒状体15と、により第1液室R1と第2液室R2とを連通する流路が形成されている。
【0028】
コイル部2の非通電時には、バネ6bの付勢力によりソレノイドロッド3は上方に付勢され、弁部材4の大径部4bと弁座部5bとが離間し、大径部4bと弁座部5bとの間隙が寸法L1となる(
図2のソレノイドロッド3の左側を参照)。また、コイル部2の通電時には、バネ6bの付勢力に抗してソレノイドロッド3が下方に移動し、弁部材4の大径部4bと弁座部5bとが近接ないし当接して、大径部4bと弁座部5bとの間隙が寸法L1よりも小さな寸法L2となる(
図2のソレノイドロッド3の右側を参照)。
【0029】
すなわち、電磁弁ユニット1は、コイル部2を通電状態とすることで大径部4bと弁座部5bとの間隙(すなわち流路)を絞って緩衝装置10の減衰力を大きくすることができ、コイル部2を非通電状態とすることで大径部4bと弁座部5bとの間隙を大きく確保して緩衝装置10の減衰力を小さくすることができるようになっている。
【0030】
次に、弾性部材7について説明する。
図3及び
図4に示されるように、弾性部材7は、ゴムや合成樹脂等から構成される環状の部材であり、変形部としての断面縦長矩形状の環状部7aと、環状部7aの下端側内周縁から内径方向に突出する環状の凸部7bと、を備え、断面視においてL字状を成している。
【0031】
コイル部2の肩部2bは、コイル部2の上端側角部を周方向に切り欠いた形状とされており、コイル部2の外周面2cから内径方向に水平に延びる水平面2dと、水平面2dの内径側端部から上方に立ち上がる垂直面2eと、を備える段形状を成している。また、垂直面2eの下端には、内径方向に凹む環状の凹部2fが形成されている。
【0032】
弾性部材7は、環状部7aを垂直面2eに外嵌させるとともに、凸部7bを凹部2fに挿入して肩部2bに取付けられている。弾性部材7が肩部2bに取付けられた状態にあっては、環状部7aの下面7cが水平面2dに接触しているとともに、環状部7aの上面7dが肩部2bの上面2gよりも上方に配置されている。すなわち、環状部7aの上下寸法は、垂直面2eの上下寸法よりも大きく形成されている。また、肩部2bの垂直面2eの外径は僅かに弾性部材7の環状部7aの内径よりも長く形成されている。
【0033】
このように、弾性部材7は、環状部7aの内径方向の締め付け力(
図4拡大部の黒矢印参照)と、凹部2fに挿入される凸部7bによってコイル部2の肩部2bに対して確実に取付けることができる。さらに、環状の凹部2fに対して周方向に亘って凸部7bが挿入されているので、コイル部2から弾性部材7が外れにくく、且つ環状部7aの内径方向の締め付け力により弾性部材7を周方向に略均一な保持力で電磁弁ユニット1の肩部2bに取付けることができる。特に、電磁弁ユニット1の持ち運び時や輸送時に弾性部材7に対して抜け方向(すなわち上方向)に外力が働いても、凸部7bが凹部2fに挿入されていることで、該凹部2fの上側の壁部に引っ掛かるので、弾性部材7が肩部2bから外れることを防止できる。
【0034】
図5に示されるように、電磁弁ユニット1がピストン14の収容凹部14A内に収容され、且つ筒状体15をピストン14に螺合接続した状態(
図2参照)にあっては、電磁弁ユニット1が筒状体15により下方から押し上げられ、ピストン14の水平面14dと肩部2bの水平面2dとの間で弾性部材7の環状部7aが上下方向に狭持される。
【0035】
上述したように、弾性部材7の凸部7bが肩部2bの凹部2fに挿入されて固定されており、一方電磁弁ユニット1を収容凹部14Aの水平面14d側に押圧したときに、環状部7aが軸方向に変形するため、収容凹部14Aと電磁弁ユニット1との間に十分な反発力を確保した状態で、収容凹部14Aに電磁弁ユニット1を容易かつ正確に取付けることができることになる。
【0036】
具体的には、凸部7bが凹部2fに挿入されることで弾性部材7が肩部2bから脱落しないように固定されているため、環状部7aの肩部2bに保持する機能(すなわち締め付け力)が小さくて済み、環状部7aの径方向の内在応力を小さくできるので、環状部7aを軸方向に正確にかつ十分に変形させることができ、収容凹部14Aと電磁弁ユニット1との間に十分な反発力を確保できる。これにより、経年等によりピストン14と筒状体15との螺合接続が緩んだときであっても、環状部7aの反発力により電磁弁ユニット1を筒状体15に押し付けることができるので、収容凹部14Aで電磁弁ユニット1ががたつくことを抑制できる。また、環状部7aは、従来のようなウェーブワッシャ等に比べ比較的反発力が低く、電磁弁ユニット1を収容凹部14Aの水平面14d側へ押圧するときの力が小さくて済むとともに、高い取付精度も要求されないため、電磁弁ユニット1を収容凹部14Aに簡便に取付けることができる。尚、環状部7aは、凸部7bと軸線方向に重複していないので、凸部7bの内在応力が環状部7aの軸方向の変形に影響を与えない。
【0037】
また、環状部7aは、肩部2bの垂直面2eに沿って配置されているので、電磁弁ユニット1を収容凹部14Aに挿入したときに、環状部7aの捻れなどが肩部2bにより規制され、環状部7aを肩部2bと水平面14dとの間で正確に狭圧できる。
【0038】
また、環状部7aの外径は、収容凹部14Aの内径よりも小径であるため、環状部7aと収容凹部14Aの内周面14cとの間に隙間が形成される。これによれば、電磁弁ユニット1を収容凹部14Aに挿入するときに、環状部7aが収容凹部14Aの内周面14cに接触しないので、電磁弁ユニット1を収容凹部14Aに挿入しやすい。
【0039】
さらに、環状部7aが水平面14dと水平面2dとで狭圧されたときに、環状部7aが外径方向に変形できるので、環状部7aの上下方向の変形代を十分に確保することができる。これにより、環状部7aの上下方向の反発力を大きくできるとともに、電磁弁ユニット1の水平面2dと収容凹部14Aの水平面14dとを近付けて配置できるので、緩衝装置10の上下方向の寸法をコンパクトにできる。尚、本実施例では、環状部7aが狭圧された状態において、環状部7aの上面7dが肩部2bの上面2gと同一高さとなっている。
【0040】
尚、本実施例1では、凸部7bが凹部2fに挿入詳細には遊嵌され、且つ環状部7aの内径方向の締め付け力により弾性部材7と肩部2bとが固定される形態を例示したが、凸部7bが凹部2fに圧入されていてもよい。この場合、環状部7aが肩部2bの垂直面2eから離間して設置されていてもよい。すなわち、環状部7aに径方向の応力がかからない状態で弾性部材7が肩部2bに取付けられていてもよい。また、凹部2fに圧入される凸部7bの反発力と付加的に作用する環状部7aの内径方向の締め付け力により弾性部材7が肩部2bに取付けられていてもよい。
【実施例2】
【0041】
次に、実施例2に係る電磁弁ユニットにつき、
図6から
図8を参照して説明する。尚、前記実施例と重複する構成の説明を省略する。
【0042】
図6に示されるように、実施例2における弾性部材72は、断面縦長矩形状の環状部7aから内径方向に突出する凸部72b,72bが、該環状部7aの中心軸を挟んで対向する位置に設けられている。凸部72bは、環状部7aと同一の高さを有している。
【0043】
図7及び
図8に示されるように、弾性部材72は、コイル部2の肩部22bに取付けられている。詳しくは、肩部22bは、コイル部2の外周面2cから内径方向に水平に延びる水平面22dと、水平面22dの内径側端部から上方に立ち上がる垂直面22eと、を備える段形状を成している。また、垂直面22eには、内径方向に凹む凹部22f,22fが中心軸を挟んで対向する位置に設けられている。凹部22fは、上方向と外径方向に開放するように切り欠いて形成されている。尚、
図7の紙面左側は、凸部72bの位置で切断した状態を図示し、紙面右側は、凸部72bの位置とは異なる位相で切断した状態を図示している。
【0044】
弾性部材72の各凸部72bは、肩部22bの各凹部22fに圧入されており、環状部7aは、垂直面22eに対して外嵌されている。これによれば、弾性部材72は、凹部22fに圧入される凸部72bの周方向の反発力(
図8拡大部の白矢印参照)と、付加的に作用する環状部7aの内径方向の締め付け力(
図8拡大部の黒矢印参照)と、によってコイル部2の肩部22bに対して確実に取付けることができる。尚、環状部7aと凸部72bとは、軸線方向に重複していないので、凸部72bの内在応力が環状部7aの軸方向の変形に影響を与えない。
【0045】
また、凹部22fの周方向の壁部22jに凸部72bが接触するため、弾性部材72とコイル部2との相対的な回動が規制される。尚、凹部22fは、上方向が開放しているので弾性部材72を肩部22bに対して上方向から取付けることができ、弾性部材72を拡径させて配置させる必要がなく、弾性部材72の取付けが簡便である。
【0046】
尚、本実施例2では、弾性部材72の凸部72b、及び肩部22bの凹部22fがそれぞれ2つずつ設けられている形態を例示したが、凸部及び凹部の数量や大きさは自由に変更することができる。
【実施例3】
【0047】
次に、実施例3に係る電磁弁ユニットにつき、
図9及び
図10を参照して説明する。尚、前記実施例と重複する構成の説明を省略する。
【0048】
図9に示されるように、実施例3における弾性部材73は、断面縦長矩形状の環状部7aの下面7cの径方向中央部から下方に突出する凸部73bが該環状部7aに沿って環状に形成されている。すなわち、環状部7aは、凸部73bよりも径方向に幅広に形成されており、
図10に説明の便宜上一点鎖線の仮想線で示すように外径側から内径側に、軸方向に凸部73bと重複しない外径側変形部71a、軸方向に凸部73bと重複する中間部71c、軸方向に凸部73bと重複しない内径側変形部71bが位置している。
【0049】
図10に示されるように、弾性部材73は、コイル部2の肩部23bに取付けられている。詳しくは、肩部23bは、コイル部2の外周面2cから内径方向に水平に延びる水平面23dと、水平面23dの内径側端部から上方に立ち上がる垂直面23eと、を備える段形状を成しており、水平面23dに沿って環状の凹部23fが形成されている。
【0050】
弾性部材73の凸部73bは、肩部23bの凹部23fに圧入されており、環状部7aは、垂直面23eに対して外嵌されている。これによれば、弾性部材73は、凹部23fに圧入される凸部73bの径方向の反発力(
図10拡大部の白矢印参照)と、付加的に作用する環状部7aの内径方向の締め付け力(
図10拡大部の黒矢印参照)と、によってコイル部2の肩部23bに対して確実に取付けることができる。また、凸部73bと環状部7aとの取付方向が同一(上下方向)となるので、凸部73bの部分を大きく拡径させなくて済み、弾性部材73の肩部23bへの組み付けが簡便である。また、外径側変形部71a及び内径側変形部71bは、凸部73bと軸線方向に重複していないので、凸部73bの内在応力が外径側変形部71a及び内径側変形部71bの軸方向の変形に影響を与えない。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0052】
例えば、前記実施例1~3では、電磁弁ユニットが取付けられる対象の一例として緩衝装置10を挙げたが、電磁弁ユニットが収容凹部と制御機器に接続される接続部材との間で狭持される構成であれば、別の制御機器に取付けられていてもよい。
【0053】
また、前記実施例1~3では、収容凹部14Aに押圧部材としての筒状体15が螺合接続される形態を例示したが、加締めによる固定などであってもよい。また、接続部材は、電磁弁ユニットが取付けられる使用環境や分野によって自由に変更されてよい。
【0054】
また、前記実施例1~3では、弾性部材における変形部の上面が周方向に平坦な形状である形態を例示したが、これに限られず、弾性部材の変形部の上面に突起を設けてもよい。これによれば、変形部が収容凹部の受け部と電磁弁ユニットの肩部との間で軸方向に狭持したときに狭持力が突起に集中するので、軸方向の反発力を大きく確保することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 電磁弁ユニット
2 コイル部
2b 肩部
2f 凹部
3 軸部材(可動鉄心)
7 弾性部材
7a 環状部(変形部)
7b 凸部
10 緩衝装置
14A 収容凹部(収容部)
14d 水平面(受け部)
15 筒状体(押圧部材)
22b 肩部
22f 凹部
23b 肩部
23d 水平面
23f 凹部
72 弾性部材
72b 凸部
73 弾性部材
73b 凸部
700 弾性部材