(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】腸疾患を治療する装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20230328BHJP
A61F 2/48 20060101ALI20230328BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20230328BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20230328BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
A61F2/04
A61F2/48
A61M1/00 180
A61N1/05
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2021108568
(22)【出願日】2021-06-30
(62)【分割の表示】P 2019183496の分割
【原出願日】2008-10-10
【審査請求日】2021-06-30
(32)【優先日】2007-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517409413
【氏名又は名称】インプランティカ・パテント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フォーセル,ピーター
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06482145(US,B1)
【文献】国際公開第2007/041795(WO,A1)
【文献】特開2005-104722(JP,A)
【文献】特開昭62-008752(JP,A)
【文献】特開2007-135965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0215283(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0122527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04
A61F 2/48
A61M 1/00
A61N 1/05
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腸の通路に関連した不具合を有する患者を治療する装置であって、前記装置は、前記患者の体内に埋め込まれるポンプを有し、前記ポンプは、前記患者の腸の少なくとも1つの選択された部分の外側において操作可能で、かつ、腸の内容物を前記腸の通路を通してポンプ輸送するように構成され、前記装置は、前記患者
のろう孔(ストマ)および前記患者の肛門の少なくとも1つから前記内容物を排出するように構成され
、前記ポンプは、
前記腸が部分的に平坦になるが、前記腸の通路を閉鎖することはないように、前記患者の腸の前記少なくとも1つの選択された部分に対して部分的に狭さくをおこなうように構成された狭さくデバイスと、
前記腸の前記少なくとも1つの選択された部分が部分的に狭さくされるときに、前記腸の前記少なくとも1つの選択された部分の1つまたは複数の部分を刺激し、腸壁を厚くすることによって前記少なくとも1つの部分をさらに狭さくさせ、前記刺激を前記腸の前記少なくとも1つの選択された部分に沿って移動させて、前記腸の前記通路内で腸の内容物を前方に移動させる刺激デバイスと、
前記狭さくデバイスと前記刺激デバイスとを独立して制御して、部分的に狭さくされるときに前記刺激を前記少なくとも1つの選択された部分に沿って前記刺激を蠕動運動的に移動させて、前記腸の前記通路を通して内容物をポンプで排出させるように構成された制御デバイスと
を備える装置。
【請求項2】
前記腸は
、回腸ろう造設術、空腸ろう造設術、結腸ろう造設術、または直腸ろう造設術のいずれか
によって、前記ろう孔(ストマ)に接続されているか、または
、前記腸は、外科的に修正されて前記肛門に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記患者の腸は、
前記患者のまたは人工のろう孔(ストマ
)で終わるように外科的に修正され、前記ポンプは、腸の内容物を前記ろう孔
を通じて前記患者の体から排出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記腸の前記選択された部分は、前記患者の肛門で終端し、前記ポンプは腸の内容物を前記肛門から排出させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記制御デバイスは、前記ポンプを制御するための無線リモート・コントロールを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御デバイスは、直接的または間接的に前記ポンプを駆動するために、前記患者の体の外
側から無線エネルギーを送信するように構成された無線エネルギー送信器をさらに有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記送信された無線エネルギーを電気エネルギーに変えるための、移植可能なエネルギー変換デバイスをさらに有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記エネルギー変換デバイスが前記送信された無線エネルギーを電気エネルギーに変えながら、前記ポンプは、前記電気エネルギーによって直接駆動される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記患者の体外に位置するように構成された外部データ通報器と、
前記外部データ通報器と通信する、前記患者に移植可能な内部データ通報器と
をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記内部データ通報器が前記患者に関連したデータを前記外部データ通報器にフィードバックする、または、前記外部データ通報器が前記内部データ通報器にデータを供給する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記刺激デバイスは、前記腸の前記選択された部分の筋肉または神経組織を電気的に刺激して、前記選択された部分の部分的な収縮を生じさせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記刺激デバイスは、電気的パルスで前記腸の前記選択された部分の筋肉または神経組織を刺激するように構成された少なくとも一つの電極を有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記刺激デバイスは、前記狭さくデバイスから分離され、または、前記狭さくデバイスと一体化された複数の電極を有している、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記電極は、前記腸の前記選択された部分に沿って一連の電極を形成する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記患者の物理的パラメータを検知するための、移植されたセンサをさらに有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記センサは、前記腸の前記選択された部分における腸内容物の体積または前記腸の膨張または前記腸内の圧力を検知するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記制御デバイスは、前記センサが前記物理的パラメータの値がしきい値を超えたことを検知したことに応答して、音声信号や表示情報などの表示を生成するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便秘や失禁のような、患者の腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便失禁は広く知られた問題である。この問題の多数の異なる解決策が試行されており、現在、便失禁を解消するために数種の括約筋手術が使用されている。たとえば、従来、油圧人工肛門括約筋と、肛門括約筋に連結されかつ患者の陰のう内に配置されたバルーン・リザーバとを含む、手動操作可能移植システムが使用されている。この移植システムの欠点は、経時的にリザーバの周りに形成される硬い線維が、システムのポンピング構成部材の誤動作を生じさせることである。したがって、形成された線維はいずれ硬い線維層になり、それによって、バルーン・リザーバからの汲み出しが困難になることがある。他の欠点は、システムにおいて油圧流体が使用されるため、常にシステムから流体が漏れる恐れがあることである。さらに、排便が必要なときにリザーバから手動で汲み出しを行うのはかなり複雑な作業である。
【0003】
米国特許第5593443号は、反射調節および随意調節が可能な人工油圧肛門括約筋を開示している。患者の陰のう内にポンプ・システムを有する膨張可能な人工括約筋が米国特許第4222377号に開示されている。
【0004】
人工的で特殊な形態の便失禁が、回腸ろう造設術、空腸ろう造設術、結腸ろう造設術、および直腸ろう造設術によって生じる。この場合、小腸(空腸または回腸)あるいは大腸(結腸または直腸)を切断し、腸の開放端部を患者の腹壁を貫通させる。腸の開放端部を「ろう孔(ストマ)」と呼ぶ。このような手術を行う理由としては、結腸直腸癌、せん孔性憩室炎、または潰瘍性大腸炎やクローン病のような腸の様々な種類の疾患が挙げられる。通常、ろう孔を有する患者は、ろう孔を通って排出される腸内容物を連続的に収集するプラスチック製バッグを着用する。このようなバッグ構成を液密状態にするには、患者の皮膚に取り付けられた粘着プレートが必要である。粘着プレートは、患者にとって不都合であり、皮膚が赤くなったたり炎症を起こすことが多い。患者が、糞便を含んでおり、かつ通常患者の腹部に配置されるバッグを常に装着するのも不都合である。
【0005】
米国特許第6752754号は、患者の直腸の疾患部分に置き換わる人工直腸を開示している。人工直腸の入口は、患者の大腸の遠位端に動作可能に連結され、患者の肛門に連結された人工直腸の出口を通って糞便を排出するマセレータ型ポンプに糞便を連通させる。このポンプは、回転すると、糞便に対してせん断効果を生じ、糞便をスクリュー・インペラのねじに沿って下降させ、患者の肛門を通って排出させるヘリカル・スクリュー型インペラを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5593443号
【文献】米国特許第4222377号
【文献】米国特許第6752754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、患者の腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する好都合な装置を
提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、患者の腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1の態様によれば、患者の腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する装置であって、患者に移植され、腸の少なくとも1つの選択された部分に対して動作可能であり、腸の通路を通って腸内容物を汲み出すポンプを備え、ポンプが、選択された部分を狭さくさせて、選択された部分に沿って腸の通路の体積を少なくともかなり低減させることと、選択された部分を解放して、選択された部分に沿って腸の通路の体積を増大させることを交互に行い、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように構成された狭さくデバイスを含む装置が提供される。
【0010】
腸の選択された部分が患者の肛門の所で終わる患者の場合、ポンプは、腸内容物を肛門を通って患者の体から汲み出すように構成される。この解決策は、本発明のポンプが患者の腸に作用し、すなわち、ポンプの狭さくデバイスが腸を狭さくさせて腸内容物を変位させる点で、上述の米国特許第6752754号による従来技術とは異なる。
【0011】
患者の腸がろう孔の所で終わるように外科的に修正される、回腸ろう造設術、空腸ろう造設術、結腸ろう造設術、または直腸ろう造設術の患者の場合、ポンプは、腸内容物をろう孔を通って患者の体から汲み出すように構成される。
【0012】
本発明の装置は、患者の腸に外科的に接合され、腸の一部を形成しかつ狭さくデバイスによって狭さくされる腸の選択された部分の少なくとも一部を形成するように構成された人工腸部材を含んでよい。狭さくデバイスは、人工腸部材にのみ作用して腸に損傷を与える可能性を最小限に抑えることができる。ポンプの非動作時には、狭さくデバイスは、人工腸部材をしっかりと狭さくさせ、腸の通路を完全に閉鎖することができる。あるいは、ポンプの非動作時に、人工腸部材に係合して腸の通路を閉鎖するか、または選択された部分を少なくとも部分的に狭さくさせ、かつポンプの動作時に、選択された部分を解放させて腸の通路を開放するように構成された移植可能で取り外し可能な少なくとも1つの閉鎖部材を設けることができる。
【0013】
人工腸部材は、患者の腸の両端間で患者の腸と一体化される。具体的には、人工腸部材は、患者の肛門に直接または間接的に接合することができ、それによって、ポンプは、腸内容物を肛門を通って患者の体から汲み出すことができる。この解決策は、本発明のポンプが人工腸部材に作用し、すなわち、ポンプの狭さくデバイスが人工腸部材を狭さくさせてその中の腸内容物を変位させる点で、上述の米国特許第6752754号とは異なる。あるいは、人工腸部材は、ろう孔の所で終わるように構成することができ、それによって、ポンプは、腸内容物をろう孔を通って患者の体から汲み出すことができる。
【0014】
ポンプを患者の腹部の所望の位置に固定された状態に維持するには、腹壁のような患者の腹腔に関する組織にポンプを取り付けるように構成された係合デバイスをポンプに取り付けることができる。
【0015】
腸を外部から保護するには、腸の選択された部分を少なくとも部分的に覆う弾性保護チューブを設けることができ、それによって、ポンプの狭さくデバイスは保護チューブと選択された部分の両方を狭さくさせる。
【0016】
狭さくデバイスが腸の選択された部分を狭さくさせるときに腸の選択された部分を支持
する移植可能な支持体を設けることができる。あるいは、狭さくデバイスは、選択された部分を患者の体の組織または骨に接触させて狭さくさせるように構成することができる。
【0017】
この装置は、選択された部分の狭さくと解放を交互に行うように狭さくデバイスを動作させ、したがって、腸内容物が腸の通路を通って移動するようにポンプを制御する制御デバイスをさらに備える。制御デバイスは、患者によって適切に操作することができ、好ましくは無線リモート・コントロールを含む。
【0018】
腸の電気刺激 腸の選択された部分の筋肉または神経組織を電気的に刺激して、選択された部分を少なくとも部分的に収縮させる電気刺激デバイスを設けることができる。このような刺激デバイスを狭さくデバイスの補助部材として使用すると、患者の腸を特に慎重に治療することができ、したがって、後述の本発明の実施形態から明らかなように、経時的に腸を損傷する可能性が最小限に抑えられる。
【0019】
刺激デバイスは、電気パルスによって腸組織の選択された部分の筋肉または神経組織を刺激するように構成された少なくとも1つの電極を含んでよい。好ましくは、刺激デバイスは、狭さくデバイスから分離されるかあるいは狭さくデバイスと一体化された複数の電極を含み、電極が腸の選択された部分に沿って一連の電極を形成する。電気パルスは、正および/または負であってよく、好ましくは正パルスと負パルスの組合せである。望ましい刺激効果は、パルス振幅、連続するパルス間のオフタイム周期、パルス持続時間、パルス反復周波数のような様々なパルスパラメータを変化させることによって実現される。約5mAのパルス振幅および約300μsのパルス持続時間が神経の刺激に適しており、一方、約20mAのパルス振幅および約30μsのパルス持続時間が筋肉の刺激に適している。パルス反復周波数は好適には約10Hzである。
【0020】
有利なことに、制御デバイスは、選択された部分に沿って電極を可変的に、たとえば事前に設定された方式に従って通電し、選択された部分上の電極の位置を経時的に変化させる選択された部分を部分的に収縮させ、それによって、腸の現在刺激されていない部分が、再び刺激される前にほぼ正常な血液循環を回復することができるように刺激デバイスを制御する。いくつかの電極または数群の電極を腸の上流側方向または下流側方向に徐々に通電することができる。あるいは、電極を一度に1つずつ順次通電するか、または数群の電極を無作為にもしくは所定のパターンに従って順次通電することができる。
【0021】
ポンプの構成 ポンプの考えられる様々な構成を含む本発明の実施形態について以下に説明する。
【0022】
本発明の簡素な実施形態によれば、ポンプの狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする第1の狭さく部材と、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせたり解放したりする第2の狭さく部材とを含む。この実施形態では、制御デバイスは、選択された部分の狭さくと解放を互いに独立して交互に行うように第1および第2の狭さく部材を制御する。
【0023】
ポンプの動作に関して、制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物が腸の通路内を下流側に移動するように制御するように構成される。
制御デバイスはさらに、
選択された部分を解放して、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にするように第1および第2の狭さく部材を制御するように
構成される。
【0024】
ポンプの非動作時には、上述の刺激デバイスを任意の狭さく部材と協働させて腸の通路を閉鎖する。したがって、第1および第2の狭さく部材は、少なくとも1つの狭さく部材が選択された部分を軽く狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくする休止位置に維持されるように構成され、制御デバイスは、狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御する。「選択された部分を軽く狭さくさせる」という句は、腸組織内の血液循環をほとんど損なわずに腸のこの部分を狭さくさせることであると理解されたい。休止位置によって、腸の選択された部分の血管内の十分な血液循環が可能になり、したがって、選択された部分の腸組織は、選択された部分を狭さくさせる狭さく部材に長時間さらされた後でその完全性を維持する。
【0025】
刺激デバイスは、ポンプの動作時に任意の狭さく部材と協働させることもできる。この場合、刺激デバイスは、少なくとも1つの電極を含む。好ましくは、刺激デバイスは、狭さくデバイスの少なくとも1つの狭さく部材の表面に沿って一連の電極を形成する複数の電極を含み、この表面が腸の選択された部分に接触する。電極は、第1の狭さく部材と第2の狭さく部材の一方が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分の筋肉または神経組織を電気パルスによって刺激する。
【0026】
狭さく部材と刺激デバイスが協働するポンプの動作に関して、制御デバイスは、
i.選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
ii.第1の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御し、
iii.選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物が腸の通路内を下流側に移動するように第2の狭さく部材を制御する。
任意に、刺激デバイスは、第2の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を電気的に刺激して腸の通路の体積を低減させることによって第2の狭さく部材と協働することができる。具体的には、制御デバイスは、第2の狭さくデバイスが選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を連続的に刺激し、したがって、第2の狭さく部材によって狭さくされる選択された部分が徐々に収縮するように刺激デバイスを制御することができる。その結果、腸内容物は、腸の通路内を蠕動しながら変位する。あるいは、狭さくデバイスは、細長い単一の狭さく部材のみを含んでよく、この場合、制御デバイスは、狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を連続的に刺激し、したがって、狭さく部材によって狭さくされる選択された部分は徐々に収縮し、それによって、腸内容物は、腸の通路内を蠕動しながら変位する。
【0027】
本発明のより高度な実施形態では、ポンプの狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部で狭さくさせたり解放したりする第1の狭さく部材と、選択された部分をその下流側端部で狭さくさせたり解放したりする第2の狭さく部材と、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせたり解放したりする第3の狭さく部材とを含む。この実施形態では、制御デバイスは、選択された部分の狭さくと解放を互いに独立して交互に行うように第1、第2、および第3の狭さく部材を制御する。
【0028】
ポンプの動作に関して、制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分を解放するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物が腸の通路内を下流側に移動するように第3の狭さく部材を制御するように構成される。
【0029】
制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分の下流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分を解放するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で解放して、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にするように第3の狭さく部材を制御するようにも構成される。
【0030】
ポンプの非動作時には、本発明の簡素な実施形態に関連して上記に説明したように、上述の刺激デバイスを任意の狭さくデバイスと協働させて腸の通路を閉鎖する。したがって、第1、第2、および第3の狭さく部材は、少なくとも1つの狭さく部材が選択された部分を軽く狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくする休止位置に維持されるように構成され、制御デバイスは、狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御する。
【0031】
刺激デバイスは、ポンプの動作時に第1、第2、および第3の狭さく部材のいずれかと協働させることもできる。この場合、刺激デバイスは、狭さくデバイスの少なくとも1つの狭さく部材の表面に沿って一連の電極を形成する複数の電極を含み、この表面が腸の選択された部分に接触する。電極は、第1の狭さく部材と第2の狭さく部材の一方および/または第3の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分の筋肉または神経組織を電気パルスによって刺激する。
【0032】
狭さく部材と刺激デバイスが協働するポンプの動作に関して、制御デバイスは、
選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
第1の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を電気的に刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御し、
選択された部分を解放するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物が腸の通路内を下流側に移動するように第3の狭さく部材を制御する。
【0033】
任意に、刺激デバイスは、第3の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を電気的に刺激して腸の通路の体積を低減させることによって第3の狭さく部材と協働することができる。具体的には、制御デバイスは、第3の狭さくデバイスが選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を連続的に刺激し、したがって、第3の狭さく部材によって狭さくされる選択された部分が徐々に収縮するように刺激デバイスを制御することができる。その結果、腸内容物は、腸の通路内を蠕動しながら変位する。
【0034】
さらに、制御デバイスは、
選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
第2の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するよう
に刺激デバイスを制御し、
選択された部分を解放するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で解放して、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にするように第3の狭さく部材を制御する。
【0035】
刺激デバイスを含む本発明の他の実施形態によれば、狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする第1の狭さく部材と、選択された部分をその下流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする第2の狭さく部材とを含み、前記制御デバイスは、選択された部分の狭さくと解放を互いに独立して交互に行うように前記第1および第2の狭さく部材を制御する。この実施形態では、刺激デバイスは、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で電気的に刺激して選択された部分を収縮させ、腸の通路の体積を低減させるように構成される。
【0036】
ポンプの動作に関して、制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分を解放するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で連続的に刺激して、選択された部分を徐々に収縮させ、したがって、腸内容物が腸の通路内を蠕動しながら変位するように刺激デバイスを制御する。
【0037】
任意に、制御デバイスは、選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように上流側の第1の狭さく部材を制御し、かつ第1の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御する。
【0038】
さらに、制御デバイスは、
選択された部分を狭さくさせて、選択された部分の下流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように下流側の第2の狭さく部材を制御し、
選択された部分を解放するように上流側の第1の狭さく部材を制御し、
選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で刺激するのを停止し、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にするように刺激デバイスを制御する。
【0039】
任意に、制御デバイスは、選択された部分を軽く狭さくさせて、選択された部分の下流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくするように下流側の第2の狭さく部材を制御し、かつ第2の狭さく部材が選択された部分を狭さくさせる場合に選択された部分を刺激して、選択された部分を収縮させ、選択された部分の下流側端部の所で腸の通路を閉鎖するように刺激デバイスを制御する。
【0040】
本発明の他の実施形態によれば、狭さくデバイスは、腸の一連の選択された部分のうちの任意の部分を狭さくさせて腸の通路を閉鎖するように構成され、制御デバイスは、一連の選択された部分のうちの選択された部分を連続的に狭さくさせて、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動しながら移動するように狭さくデバイスを制御する。具体的には、狭さくデバイスは、各狭さく部材が、一連の選択された部分のうちの選択された部分を連続的に狭さくさせるように腸に沿って移動可能である複数の狭さく部材を含み、制御デバイスは、各狭さく部材を一連の選択された部分のうちの選択された部分に沿って次々と循環的に移動させるように狭さくデバイスを制御する。(あるいは、狭さくデバイスは単一の狭
さく部材のみを含んでよい。)好ましくは、狭さくデバイスは、狭さく部材を保持するロータを含み、制御デバイスは、ロータが回転し、したがって、各狭さく部材が、一連の選択された部分のうちの選択された部分を循環的に狭さくさせるように制御する。各狭さく部材は好適には、腸で転動して腸の選択された部分を狭さくさせるローラを含む。
【0041】
任意に、上述の刺激デバイスを狭さくデバイスと協働させて一連の選択された部分のうちの選択された部分を連続的に狭さくさせ収縮させることができる。したがって、狭さくデバイスは、一連の選択された部分のうちの任意の部分を狭さくさせて、腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、刺激デバイスは、狭さくデバイスによって狭さくされる選択された部分を電気的に刺激して腸の通路を閉鎖する。制御デバイスは、一連の選択された部分のうちの選択された部分を連続的に狭さくさせて、腸内容物を腸の通路内を蠕動しながら移動するように狭さくデバイスを制御し、一方、選択された部分を連続的に刺激して、狭さくデバイスによって行われる選択された部分の連続的な狭さくに合わせて選択された部分を連続的に収縮させるように刺激デバイスを制御する。具体的には、刺激デバイスは、狭さくデバイスの狭さく部材上に位置し、電気パルスによって腸組織を刺激するように構成された1つまたは複数の電極を含む。複数のこのような電極を各狭さく部材に対して表面に沿って分散させることができ、この表面は、狭さく部材が選択された部分のうちのいずれか1つの狭さく部材を狭さくさせるときに腸に接触する。制御デバイスは、狭さく部材を一連の選択された部分のうちの選択された部分に沿って循環的に次々と移動させるように狭さくデバイスを制御し、一方、電極を通電するように刺激デバイスを制御する。
【0042】
本発明の他の実施形態によれば、狭さくデバイスは、腸に沿って延びる細長い少なくとも1つの狭さく部材、好ましくは腸の両側を腸に沿って延びる2つの細長い部材を含む。制御デバイスは、細長い狭さく部材同士が互いに協働し、選択された部分を徐々に狭さくさせて腸内容物が腸の通路内を移動するように狭さくデバイスを制御する。細長い狭さく部材は、腸の選択された部分にその両側である長さにわたって接触するように寸法を定められた接触表面を備える。
【0043】
接触表面は好適には凸状であり、制御デバイスは、狭さく部材の凸状の接触表面が、腸の選択された部分上を転動し、腸の選択された部分を徐々に狭さくさせるように狭さくデバイスを制御する。各狭さく部材は、凸状表面が腸の選択された部分に沿って転動し腸の選択された部分を狭さくさせる狭さく状態と、凸状表面が腸の選択された部分から解放される解放状態との間で変化するように構成される。
【0044】
任意に、上述の刺激デバイスは、細長い狭さく部材と協働させることができる。したがって、制御デバイスは、細長い狭さく部材が選択された部分を徐々に狭さくさせるときに選択された部分を刺激するように刺激デバイスを制御することができる。刺激デバイスの電極は好適には、腸の選択された部分に接触する細長い狭さく部材の表面上の長手方向に分散し、制御デバイスは、電極を細長い狭さく部材に沿って連続的に通電して腸の選択された部分を徐々に狭さくさせるように刺激デバイスを制御する。
【0045】
本発明の他の実施形態によれば、前記狭さくデバイスは、腸の選択された部分の少なくとも一区間を半径方向に膨張させて、選択された部分に沿って腸の通路の膨張チャンバを形成し、かつ選択された部分の膨張区間を軸方向に狭さくさせてチャンバの体積を少なくともかなり低減させ、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように構成される。動作時には、制御デバイスは、選択された部分の膨張区間を軸方向に狭さくさせ解放し、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように狭さくデバイスを制御する。狭さくデバイスは、選択された部分のこの区間を膨張させない休止位置と、選択された部分のこの区間を膨張させる膨張位置との間で調整可能である。好適には、狭さくデバイ
スは、線維組織を成長させて膨張デバイスを外側で腸の選択された部分の壁に接合させる材料を備え、それによって、膨張デバイスは、その膨張位置にあるときに、選択された部分の壁を半径方向外側に引いて、選択された部分の膨張区間を形成する。
【0046】
任意に、上述の刺激デバイスを使用して、狭さくデバイスがその膨張位置にあるときに選択された部分の膨張区間を電気的に刺激して、選択された部分の膨張区間を軸方向に収縮させることができる。刺激デバイスの電極は好適には、腸の選択された部分の膨張区間の周りを延びる少なくとも一連の電極を形成する。
【0047】
別個の閉鎖部材 本発明の一実施形態では、腸の選択された部分に係合して腸の通路を閉鎖するか、あるいはポンプの非動作時に選択された部分を少なくとも部分的に狭さくさせ、かつポンプの動作時に選択された部分を解放して腸の通路を開放するように構成された移植可能で取り外し可能な少なくとも1つの閉鎖部材が設けられる。好ましくは、閉鎖部材は、ポンプの非動作時に、選択された部分を少なくとも部分的に狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、上述の刺激デバイスは、腸の筋肉または神経組織を電気的に刺激し、閉鎖部材が腸を狭さくさせる場合に腸を収縮させて腸の通路を完全に閉鎖するように構成される。刺激デバイスの電極は、閉鎖部材から分離されるかあるいは閉鎖部材と一体化され、好適には、閉鎖部材の、腸に接触する表面に沿って分散される。制御デバイスは、閉鎖部材と刺激デバイスが協働して、狭さくした腸の血管内で血液を十分に循環させ、したがって、腸組織が、ポンプの非動作時に、閉鎖部材に長時間さらされた後でその完全性を維持するように閉鎖部材および刺激デバイスを制御する。ポンプが、上述のように刺激デバイスの電極を備えた細長い狭さく部材を含む場合、制御デバイスは、ポンプが動作する場合に、電極を可変的に通電して、狭さくした腸の血管内で血液を常に十分に循環させることができる。
【0048】
ポンプによる患者の腸の通路の閉鎖 上述の別個の閉鎖部材を設ける代わりに、ポンプの非動作時に、ポンプの狭さくデバイスが選択された部分を少なくとも部分的に狭さくした状態に維持する休止位置に、狭さくデバイスを維持することができる。狭さくデバイスは、この休止位置にあるとき、狭さくした腸の血管内で血液を十分に循環させる程度に選択された部分を狭さくさせ、したがって、腸組織は、狭さくデバイスに長時間さらされた後でその完全性を維持する。さらに、狭さくデバイスは、休止位置にあるときに、腸を狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、上述の刺激デバイスは、狭さくデバイスが腸を狭さくさせる場合に腸を電気的に刺激し、腸を収縮させて腸の通路を完全に閉鎖するように構成される。好ましくは、制御デバイスは、刺激デバイスの電極を選択された部分に沿って可変的に通電して、選択された部分上の電極の位置を経時的に変化させる選択された部分の部分的な収縮を生じさせるように刺激デバイスを制御し、それによって、腸の、現在刺激されていない部分は、それが再び刺激される前にほぼ正常な血液循環を回復することができる。
【0049】
人工腸部材 本発明の実施形態では、人工腸部材が、患者の腸に外科的に接合され、腸の通路の一部を形成し、かつ狭さくデバイスによって狭さくされる腸の選択された部分の少なくとも一部を形成する。この実施形態の顕著な利点は、上述の様々なポンプ構成の狭さくデバイスを使用して人工腸部材だけでなく傷つきやすい腸にも作用することができることである。
ポンプの非動作時に、狭さくデバイスは、人工腸部材を狭さくさせて腸の通路を完全に閉鎖することができる。
【0050】
人工腸部材は、たとえば、癌のために直腸の一部を除去した場合に、患者の腸とその両端部間で一体化することができる。あるいは、人工腸部材を直接または間接的に患者の肛門に接合することができる。
【0051】
人工腸部材を回腸ろう造設術、空腸ろう造設術、結腸ろう造設術、または直腸ろう造設術の患者に移植した場合、狭さくデバイスは、人工腸部材を狭さくさせて、人工腸部材の下流側に配置されたろう孔を通って腸内容物を排出する。あるいは、人工腸部材は、このようなろう孔の所で終わってもよい。
【0052】
手動ポンプ ポンプの狭さくデバイスに動作可能に連結された皮下移植可能なアクチュエータを設けることができ、この場合、アクチュエータは、狭さくデバイスを操作するように手動で作動可能である。
【0053】
本発明の一実施形態では、狭さくデバイスは油圧動作可能であり、アクチュエータは、油圧動作可能な狭さくデバイスに油圧式に連結される。アクチュエータは、狭さくデバイスを操作するのに使用される油圧流体用の手動圧縮可能な弾性リザーバを含むことが好ましい。
【0054】
好適には、リザーバと油圧動作可能な狭さくデバイスを油圧式に相互に連結する反転サーボが設けられる。語「反転サーボ」は、短いストロークを有する可動部材に作用する強い力を、長いストロークを有する他の可動部材に作用する弱い力に変換する機構、すなわち、通常のサーボ機構の逆の機能と理解されたい。したがって、この場合はアクチュエータ弾性リザーバに油圧式に連結することのできるより小さなリザーバ内の流体の量のわずかな変化を、反転サーボによって、この場合は狭さくデバイスに油圧式に連結することのできるより大きなリザーバ内の流体の量の顕著な変化に変換することができる。反転サーボは、その手動操作に特に適している。
【0055】
リザーバは、油圧動作可能な狭さくデバイスに油圧式に連結され、したがって、リザーバが手動で圧縮されると、狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物を腸の通路内を下流側に移動させる。弾性リザーバが手動で解放されその非圧縮形状を回復すると、狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で解放し、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にする。
【0056】
油圧動作可能な狭さくデバイスは、狭さく部材と、膨張時に、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせるように狭さく部材を動作させる油圧蛇腹デバイスとを含む。圧縮可能な弾性リザーバは、蛇腹デバイスに油圧式に連結され、したがって、蛇腹デバイスは、リザーバが手動で圧縮されたときに膨張し、リザーバが手動で解放されその非圧縮状態を回復したときに引き込まれる。したがって、蛇腹デバイスは、引き込まれたときに、選択された部分を上流側端部と下流側端部との間で解放するように狭さく部材を動作させる。
【0057】
本発明の特定の実施形態によれば、油圧動作可能な狭さくデバイスは、選択された部分をその上流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする油圧動作可能な第1のサブデバイスと、選択された部分をその下流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする油圧動作可能な第2のサブデバイスと、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせたり解放したりする油圧動作可能な第3のサブデバイスとを含む。リザーバは、第1、第2、および第3のサブデバイスに油圧式に連結され、したがって、リザーバが手動で圧縮されると、上流側の第1のサブデバイスが、選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、下流側の第2のサブデバイスが、選択された部分を解放し、第3のサブデバイスが、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせて、選択された部分に含まれる腸内容物を腸の通路内を下流側に移動させる。弾性リザーバが手動で解放されその非圧縮形状を回復すると、下流側の第2の
サブデバイスが、選択された部分を狭さくさせて選択された部分の下流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、上流側の第2のサブデバイスが、選択された部分を解放し、第3のサブデバイスが、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で解放して、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するのを可能にする。
【0058】
狭さく装置の第1のサブデバイスは、第1の狭さく部材と、膨張時に、選択された部分を上流側端部の所で狭さくさせるように第1の狭さく部材を動作させる第1の油圧蛇腹デバイスとを含み、狭さく装置の第2のサブデバイスは、第2の狭さく部材と、膨張時に、選択された部分を下流側端部の所で解放するように第2の狭さく部材を動作させる第2の油圧蛇腹デバイスとを含み、狭さく装置の第3のサブデバイスは、第3の狭さく部材と、膨張時に、選択された部分を上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせるように第3の狭さく部材を動作させる第3の油圧蛇腹デバイスとを含む。圧縮可能な弾性リザーバは、第1、第2、および第3の蛇腹デバイスに油圧式に連結され、したがって、蛇腹デバイスは、リザーバが手動で圧縮されたときに膨張し、リザーバが手動で解放されその非圧縮形状を回復したときに引き込まれる。したがって、第1の蛇腹デバイスは、引き込まれたときに、選択された部分を上流側端部の所で解放するように第1の狭さく部材を動作させ、第2の蛇腹デバイスは、引き込まれたときに、選択された部分を下流側端部の所で狭さくさせるように第2の狭さく部材を動作させ、第3の蛇腹デバイスは、引き込まれたときに、選択された部分を上流側端部と下流側端部との間で解放するように第3の狭さく部材を動作させる。必要に応じて、上述の油圧手段を使用することによって、本明細書に開示されている実施形態のポンプを手動で操作することができる。
【0059】
動力ポンプ 本発明の一実施形態では、ポンプは動力を供給される。制御デバイスは、動力ポンプを始動させ停止する手動操作可能なスイッチを含んでよく、このスイッチが、患者に皮下移植できるように構成される。あるいは、制御デバイスは、好適には無線リモート・コントロールを保持する患者によって、ポンプを制御し、すなわち始動させ停止するように操作される無線リモート・コントロールを含んでよい。
【0060】
無線エネルギーを患者の体外から患者の体内に伝送してポンプを駆動する無線エネルギー送信器を設けることができる。このエネルギー送信器は、無線エネルギーが伝送されているときにポンプが直接駆動されるように無線エネルギーを伝送することができる。特に、無線エネルギーは、ポンプを直接駆動するための電界、電磁界、磁界や、それらの組合せや、電磁波などの電磁エネルギーを含んでよい。たとえば、ポンプが電気ポンプを含む場合、磁界または電磁界の形をした無線エネルギーを使用して電気ポンプを直接駆動することができる。
【0061】
したがって、電気ポンプは、無線エネルギーの伝送時に直接動作する。これは、a)患者に移植されたエネルギー変換デバイスを使用して無線エネルギーを異なる形態のエネルギー、好ましくは電気エネルギーに変換し、変換後のエネルギーでポンプを駆動するか、あるいはb)無線で伝送されたエネルギーを使用してポンプを直接駆動するという2つの異なる方法で実現することができる。電磁界または磁界の形をした無線エネルギーを使用して、ポンプの特定の構成部材に直接影響を与えて運動エネルギーを生じさせることが好ましい。このような構成部材は、ポンプ内にまとめられたコイルを含んでよい。
【0062】
あるいは、エネルギー伝送デバイスによって生成された電気エネルギーを蓄積する、コンデンサや再充電可能な電池などのアキュムレータを設けることができ、制御デバイスは、エネルギーを放出してポンプを駆動するようにこのアキュムレータを制御する。アキュムレータの電荷を測定する移植可能な電荷計を設けることができ、制御デバイスは、この電荷計に応答して表示を生成することができる。
【0063】
センサ 本発明の一実施形態では、患者の物理的パラメータまたは装置の機能的パラメータを直接または間接的に検知する移植可能なセンサが設けられる。物理的パラメータに関して、制御デバイスは、ポンプの非動作時に、センサが物理的パラメータの値がしきい値を超えたことを検知したことに応答して音声信号や表示情報などの表示を生成することができる。物理的パラメータは、腸の選択された部分における腸内容物の体積、腸壁の寸法、または腸の選択された部分における圧力であってよい。
【0064】
装置の機能パラメータに関して、制御デバイスは、ポンプの動作時に、センサが機能パラメータの値がしきい値を超えたことを検知したことに応答してアラーム、音声信号、表示情報などの表示を生成することができる。
【0065】
通信 本発明の上記の実施形態のいずれかでは、患者の体外に位置するように構成された外部データ通報器と、患者に移植可能であり外部通報器と通信する内部データ通報器とを設けることができる。内部データ通報器は、患者に関する情報を外部データ通報器にフィードバックし、かつ/あるいは外部データ通報器は内部データ通報器にデータを送る。
【0066】
発明の方法 本発明の第2の態様によれば、腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する方法が提供される。この方法は、
a)患者の腸の選択された部分を狭さくさせて、選択された部分に沿って腸の通路の体積を少なくともかなり低減させ、したがって、腸内容物が腸の通路を通ってその下流側方向に変位するステップと、
b)選択された部分を解放して選択された部分に沿って腸の通路の体積を増大させ、したがって、選択された部分の上流側の腸の通路内の腸内容物が選択された部分に進入するステップと、
c)ステップ(a)およびステップ(b)を任意の回数だけ繰り返すステップとを含む。
【0067】
腸の選択された部分が患者の肛門の所で終わる場合、この方法は、ステップ(a)およびステップ(b)を実行して腸内容物を肛門を通って排出することをさらに含む。あるいは、この方法は、患者の腸をろう孔の所で終わるように外科的に修正し、ステップ(a)およびステップ(b)を実行して腸内容物をろう孔を通って排出することをさらに含む。
【0068】
この方法のステップ(a)およびステップ(b)は、以下に説明するようにいくつかの代替手順に従って実行することができる。
【0069】
代替手順1.ステップ(a)は、最初、選択された部分を狭さくさせて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、次に、選択された部分全体を狭さくさせることによって実行され、ステップ(b)は、最初、選択された部分をその下流側端部の所を除いて完全に解放し、次に、選択された部分を下流側端部の所で解放することによって実行される。
【0070】
代替手順2.ステップ(a)は、
選択された部分を部分的に狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、
狭さくした選択された部分の筋肉または神経組織を上流側端部の所で電気的に刺激し、狭さくした選択された部分を収縮させて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、
次に、選択された部分全体を狭さくさせることによって実行される。
【0071】
ステップ(b)は、最初、選択された部分をその下流側端部の所を除いて完全に解放し
、次に、選択された部分を下流側端部の所で解放することによって実行される。
【0072】
代替手順3.ステップ(a)は、
選択された部分を部分的に狭さくさせて、選択された部分の上流側端部の所で腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、
狭さくした選択された部分の筋肉または神経組織を上流側端部の所で電気的に刺激し、狭さくした選択された部分を収縮させて選択された部分の上流側端部の所で腸の通路を閉鎖し、
選択された部分全体を少なくとも部分的に狭さくさせ、
次に、選択された部分をその上流側端部から下流側端部まで連続的に刺激して選択された部分を徐々に収縮させ、したがって、腸内容物を腸の通路内を蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0073】
ステップ(b)は、最初、選択された部分を刺激することを停止し、選択された部分をその下流側端部の所を除いて完全に解放し、次に、選択された部分を下流側端部の所で解放することによって実行される。
【0074】
代替手順4.ステップ(a)は、
選択された部分を部分的に狭さくさせて、選択された部分全体に沿って腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくし、
狭さくした部分をその上流側端部から下流側端部まで連続的に刺激して、選択された部分を徐々に収縮させ、したがって、腸内容物を腸の通路内を蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0075】
代替手順5.ステップ(a)は、腸の一連の選択された部分の一部を連続的に狭さくさせ、したがって、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0076】
代替手順6.ステップ(a)は、
腸の一連の選択された部分の一部を連続的に狭さくさせ、したがって、各狭さく部に、腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくさせ、
各狭さく部を電気的に刺激し、腸の狭さくした部分を収縮させて腸の通路を閉鎖し、それによって、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0077】
代替手順7.ステップ(a)は、選択された部分を徐々に狭さくさせ、したがって、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0078】
代替手順8.ステップ(a)は、
選択された部分を電気的に刺激して選択された部分を収縮させ、
収縮した選択された部分を徐々に狭さくさせ、したがって、腸内容物を腸の通路内を下流側に蠕動させながら変位させることによって実行される。
【0079】
本発明は、腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する他の方法も提供する。この方法は、
腸の選択された部分に係合して選択された部分を狭さくさせたり解放したりする狭さくデバイスを含むポンプを設けるステップと、
選択された部分を狭さくさせて選択された部分に沿って腸の通路の体積を少なくともかなり低減させることと、選択された部分を解放して選択された部分に沿って腸の通路の体積を増大させることを交互に行い、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するよ
うに狭さくデバイスを動作させるようにポンプを制御するステップとを含む。
【0080】
この方法は、患者の腸に係合する取り外し可能な少なくとも1つの閉鎖部材を設けることと、閉鎖部材を使用して、ポンプの非動作時に腸の通路を少なくともほぼ閉鎖し、ポンプの動作時に腸を解放することとをさらに含む。閉鎖部材を使用して腸を狭さくさせて腸の通路を閉鎖することができる。
【0081】
あるいは、閉鎖部材を使用して腸を狭さくさせて腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくすることができ、この方法は、腸の筋肉または神経組織を電気的に刺激し、閉鎖部材が腸を狭さくさせる場合に腸を収縮させて腸の通路を閉鎖することをさらに含む。この場合、この方法は好適には、狭さくした腸の血管内で血液を十分に循環させ、したがって、ポンプの非動作時に、腸組織が、閉鎖部材に長時間さらされた後でその完全性を維持するように、閉鎖部材の動作と腸の電気刺激との調和を図ることを含む。
【0082】
本発明は、上述の装置を使用して腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する方法(I)も提供する。この方法(I)は、
上述の装置を設けるステップと、
チューブ状の針を患者の体の腹部に挿入するステップと、
チューブを通ってガスを供給して腹部をガスで満たし、それによって腹腔を膨張させるステップと、
少なくとも2つの腹腔鏡トロカールを患者の体内に配置するステップと、
一方のトロカールを通って腹部にカメラを挿入するステップと、
患者の腸の一部を選択するステップと、
一方のトロカールを通って切開器具を挿入し、選択された部分におけるある領域を切開するステップと、
装置のポンプを腸の選択された部分に動作可能に係合するように切開した領域に配置するステップと、
ポンプを使用して腸内容物を腸の通路を通って汲み出すステップとを含む。方法(I)は、患者の皮膚および腹壁を切開して開口部を設け、ろう孔を形成する開口部に患者の腸を通し、患者の腸の、ろう孔の近傍の部分を選択することをさらに含んでよく、この場合、ポンプを使用して腸内容物がろう孔を通って排出される。
【0083】
本発明は、上述の装置を使用して、腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する他の方法(II)を提供する。この方法(II)は、
上述の装置を設けるステップと、
患者の皮膚および腹壁を切開して開口部を設けるステップと、
患者の腸の一部を選択するステップと、
開口部を通って切開器具を挿入し、選択された部分におけるある領域を切開するステップと、
装置のポンプを腸の選択された部分に動作可能に係合するように切開した領域に配置するステップと、
ポンプを使用して腸内容物を腸の通路を通って汲み出すステップとを含む。
【0084】
本発明は、上述の装置を使用して、腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する他の方法(III)を提供する。この方法(III)は、
患者の皮膚および腹壁を切開して開口部を設け、ろう孔を形成する開口部に患者の腸の一部を通すステップと、
腸を切開して、腸の、ろう孔を形成する短い部分を腸の残りの部分から分離し、一方、腸の短い部分に連結された腸間膜の血管を維持して腸の短い部分への血液の供給を確保するステップと、
腸の短い部分の所の領域を切開するステップと、
切開した領域内に人工腸部材を配置し、腸の短い部分および腸の残りの部分に人工腸部材を外科的に接合して、腸の残りの部分、人工腸部材、および腸の短い部分を通る腸の連続的な通路を形成し、人工腸部材が、患者の腸の選択された部分を形成するステップと、
上述の装置を設けるステップと、
装置のポンプを人工腸部材に動作可能に係合するように配置するステップと、
ポンプを使用して腸内容物を腸の通路を通ってろう孔から汲み出すステップとを含む。
【0085】
上記の方法(I)、方法(II)、方法(III)は、ポンプを始動させ停止する手動操作可能なスイッチを皮下移植することをさらに含んでよい。
【0086】
上記の方法(I)、方法(II)、方法(III)によれば、ポンプの狭さくデバイスは、腸の選択された部分と動作可能に係合され、ポンプは、選択された部分を狭さくさせて選択された部分に沿って腸の通路の体積を少なくともかなり小さくすることと、選択された部分を解放して選択された部分に沿って腸の通路の体積を増大させることを交互に行い、したがって、腸内容物が腸の通路を通って変位するように狭さくデバイスを動作させるように制御される。
【0087】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、取り外し可能な少なくとも1つの閉鎖部材を腸の選択された部分に動作可能に係合するように移植することと、取り外し可能な閉鎖部材を使用して、ポンプの非動作時に腸の通路を閉鎖し、ポンプの動作時に腸を解放することをさらに含む。
【0088】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、取り外し可能な閉鎖部材を動作させる、電気モータなどの駆動操作デバイスを移植することをさらに含む。あるいは、操作デバイスは、油圧動作デバイスを含む。
【0089】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、操作デバイスを駆動する無線エネルギーを伝送することと、腸の通路を通って腸内容物を汲み出すことが望ましいときに、伝送されたエネルギーによって操作デバイスを駆動して、腸の選択された部分を解放するように閉鎖部材を動作させることをさらに含む。
【0090】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、エネルギー源を患者に移植することと、外部エネルギー源を設けることと、無線エネルギーを放出するように外部エネルギー源を制御することと、無線エネルギーを蓄積可能なエネルギーに変換することと、移植されたエネルギー源に変換されたエネルギーを非侵襲的に充填することと、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材の動作に関連して使用されるエネルギーを放出するように移植されたエネルギー源を患者の体外から制御することとをさらに含む。患者の腸は、ろう孔の所で終わるように外科的に修正することができ、患者の体から腸内容物を排出するのが望ましいときに、移植されたエネルギー源が、腸の選択された部分を一時的に解放するように取り外し可能な閉鎖部材を動作させるエネルギーを供給するように制御され、かつポンプを使用して腸の通路内の腸内容物がろう孔を通って体から汲み出される。無線エネルギーは、無線エネルギーとは異なる、電気エネルギーのような蓄積可能なエネルギーに変換することができ、蓄積可能なエネルギーは、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を動作させるのに使用される。
【0091】
あるいは、方法(I)、方法(II)、方法(III)は、エネルギー源を患者の体外に設けることと、無線エネルギーを放出するように患者の体外から外部エネルギー源を制御することと、放出された無線エネルギーを使用してポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を動作させることとをさらに含む。たとえば、外部エネルギー源は、ポンプお
よび/または取り外し可能な閉鎖部材を直接動作させる無線エネルギーを放出するように制御することができる。外部エネルギー源は、非磁気無線エネルギーを放出するように制御することができ、放出された非磁気無線エネルギーは、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を動作させるのに使用される。あるいは、電磁無線エネルギーを放出するように外部エネルギー源を制御することができ、放出された電磁無線エネルギーは、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材を動作させるのに使用される。
【0092】
無線エネルギーは、移植されたエネルギー変換デバイスによって患者の体内で電気エネルギーに変換することができ、電気エネルギーは、ポンプおよび取り外し可能な閉鎖部材の動作に関連して使用される。電気エネルギーは、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材の動作に関連して直接使用することができる。たとえば、ポンプおよび/または取り外し可能な閉鎖部材は、エネルギー変換デバイスが無線エネルギーから変換した電気エネルギーによって直接動作させることができる。
【0093】
方法(I)、方法(II)、方法(III)は、
選択された部分における腸の通路を少なくとも部分的に制限して腸内容物が通過するのを防止するか、あるいは 腸を解放し、ポンプを使用することによって腸内容物を汲み出すのを可能にするように取り外し可能な閉鎖部材を制御することをさらに含む。
【0094】
ステップ(a)は、選択された部分における腸の通路を少なくとも部分的に制限するように取り外し可能な閉鎖部材を制御し、かつ腸の選択された部分を電気的に刺激し、選択された部分を収縮させて腸の通路をさらに制限し、腸内容物が通過するのを防止することによって実行される。
【0095】
本発明は、上述の装置を使用して腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する他の方法をさらに提供する。この方法は、
患者の体外からポンプを制御するように構成された無線リモート・コントロールを設けることと、
患者が排便を望むときに、患者によって無線リモート・コントロールを操作してポンプを始動させ、患者が排便を終了したときにポンプを停止させることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1A】装置のポンプが患者の腸に適用された、本発明による一般的な装置のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図1B】装置のポンプが患者の腸に適用された、本発明による一般的な装置のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図2A】電気刺激デバイスも含む
図1Aおよび
図1Bの一般的な装置のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図2B】電気刺激デバイスも含む
図1Aおよび
図1Bの一般的な装置のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図3A】蠕動ポンプが患者の腸に適用された、本発明の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図3B】蠕動ポンプが患者の腸に適用された、本発明の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図3C】蠕動ポンプが患者の腸に適用された、本発明の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図5A】ポンプが、患者の腸を半径方向に狭さくさせる狭さくデバイスを含む、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の実施形態の長手方向断面図である。
【
図5B】ポンプが、患者の腸を半径方向に狭さくさせる狭さくデバイスを含む、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の実施形態の長手方向断面図である。
【
図5C】ポンプが、患者の腸を半径方向に狭さくさせる狭さくデバイスを含む、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の実施形態の長手方向断面図である。
【
図6A】電気刺激デバイスを含む、
図5A~
図5Cの実施形態の変形例の長手方向断面図である。
【
図6B】電気刺激デバイスを含む、
図5A~
図5Cの実施形態の変形例の長手方向断面図である。
【
図6C】電気刺激デバイスを含む、
図5A~
図5Cの実施形態の変形例の長手方向断面図である。
【
図7】刺激デバイスの修正された動作を示す
図6Cの実施形態と同じ実施形態を示す図である。
【
図8】ポンプの非動作時の
図6Aの実施形態を示す図である。
【
図9A】ポンプの非動作時の
図6Aによる実施形態の刺激デバイスの修正された動作を示す図である。
【
図9B】ポンプの非動作時の
図6Aによる実施形態の刺激デバイスの修正された動作を示す図である。
【
図9C】ポンプの非動作時の
図6Aによる実施形態の刺激デバイスの修正された動作を示す図である。
【
図9D】ポンプの非動作時の
図6Aによる実施形態の刺激デバイスの修正された動作を示す図である。
【
図10A】電気刺激デバイスを含み、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の長手方向断面図である。
【
図10B】電気刺激デバイスを含み、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の長手方向断面図である。
【
図10C】電気刺激デバイスを含み、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の長手方向断面図である。
【
図11A】回転蠕動ポンプが患者の小腸に適用された、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の図である。
【
図11B】回転蠕動ポンプが患者の小腸に適用された、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の図である。
【
図13A】他の種類の蠕動ポンプが患者の小腸に適用された、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の長手方向断面図である。
【
図13B】他の種類の蠕動ポンプが患者の小腸に適用された、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の長手方向断面図である。
【
図13C】他の種類の蠕動ポンプが患者の小腸に適用された、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の長手方向断面図である。
【
図13D】他の種類の蠕動ポンプが患者の小腸に適用された、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の長手方向断面図である。
【
図15A】別個の腸閉鎖部材を含む本発明の他の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を示す図である。
【
図15B】別個の腸閉鎖部材を含む本発明の他の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を示す図である。
【
図16A】ポンプが人工腸部材に作用する、結腸ろう造設術患者に移植された人工腸部材を含む本発明の他の実施形態を示す図である。
【
図19A】ポンプが、患者の腸を軸方向に狭さくさせる狭さくデバイスを含む、本発明の他の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図19B】ポンプが、患者の腸を軸方向に狭さくさせる狭さくデバイスを含む、本発明の他の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図19C】ポンプが、患者の腸を軸方向に狭さくさせる狭さくデバイスを含む、本発明の他の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図19D】ポンプが、患者の腸を軸方向に狭さくさせる狭さくデバイスを含む、本発明の他の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示す図である。
【
図21】ポンプが、第1の動作段階で患者の腸に適用された油圧動作可能な狭さくデバイスを含む、本発明の他の実施形態の側面図である。
【
図22】それぞれ、
図21の切断線XXII-XXIIおよびXXIII-XXIIIに沿った図である。
【
図23】それぞれ、
図21の切断線XXII-XXIIおよびXXIII-XXIIIに沿った図である。
【
図24】狭さくデバイスが第2の動作段階にある
図21の実施形態の側面図である。
【
図25】それぞれ、
図24の切断線XXV-XXVおよびXXVI-XXVIに沿った図である。
【
図26】それぞれ、
図24の切断線XXV-XXVおよびXXVI-XXVIに沿った図である。
【
図27A】
図21~
図26の油圧狭さくデバイスに連結するのに適した油圧反転サーボのそれぞれの異なる動作段階を示す図である。
【
図27B】
図21~
図26の油圧狭さくデバイスに連結するのに適した油圧反転サーボのそれぞれの異なる動作段階を示す図である。
【
図28A】本発明のいくつかの実施形態で使用するのに適した機械駆動狭さくデバイスのそれぞれの異なる動作段階を示す図である。
【
図28B】本発明のいくつかの実施形態で使用するのに適した機械駆動狭さくデバイスのそれぞれの異なる動作段階を示す図である。
【
図29】結腸ろう造設術患者の小腸に適用された
図6Aおよび
図6Bの実施形態のポンプを示す図である。
【
図30】患者の肛門の所で終わる結腸ろう造設術患者の小腸に適用された
図6Aおよび
図6Bの実施形態のポンプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
図面において、同じ参照符号はいくつかの図にわたって同一のまたは対応する部材を示している。
【0098】
図1Aは、便秘や失禁のような患者の腸の通路に関する疾患を有する患者を治療する本発明による装置の一般的な実施形態を概略的に示している。この装置は、大腸の一部など患者の腸3の選択された部分2に外部から適用されるポンプ1を含んでいる。ポンプ1は、選択された部分2を狭さくさせてその中の腸内容物を変位させる狭さくデバイスを含んでいる。動作時には、装置は、
図1Aに示されているように、狭さくデバイスが選択された部分2を狭さくさせず、選択された部分2に腸内容物を充填させる第1の動作段階と、狭さくデバイスが選択された部分2を狭さくさせて、選択された部分2に沿って腸の通路4の体積を少なくともかなり低減させ、したがって、管状腸3の選択された部分2が少なくとも部分的に平坦になる第2の動作段階との間で循環的に変化する。その結果、腸内容物は、
図1Bに示されているように、選択された部分2から腸3の下流側に変位し、腸3の開放端部5を通って排出される。装置が第2の動作段階(
図1B)から第1の動作段階(
図1B)に変化すると、ポンプ1の狭さくデバイスが選択された部分2を解放して、腸内容物が選択された部分2に進入するのを可能にし、それによって、選択された部分2に腸内容物が充填されるにつれて選択された部分2に沿った腸の通路4の体積が増大する。
【0099】
図1Aの装置は、選択された部分2の筋肉または神経組織を電気的に刺激して腸壁6を収縮させ、したがって腸壁6を厚くする電気刺激デバイスを備えることができる。このような刺激デバイスを備えた装置を操作すると、装置は、一連の3つの動作段階、すなわち、
図1Aに示されているように、ポンプ1の狭さくデバイスが選択された部分2を狭さくさせず、選択された部分2に腸内容物を充填させる第1の動作段階と、
図2Aに示されているように、狭さくデバイスが選択された部分2を狭さくさせ、したがって、選択された部分2が部分的に平坦になり、それによって、ある量の腸内容物が腸3内を下流側に変位し、開放端部5を通って排出される第2の動作段階と、
図2Bを見ると分かるように、電気刺激デバイスが、狭さくした選択された部分2を電気パルス(
図2Bでは矢印Aによって示されている)によって刺激し腸壁6を厚くして腸の通路4を完全に閉鎖し、それによって、より多くの腸内容物が腸3の下流側に変位し、開放端部5を通って排出される第3の動作段階とを循環的に実行する。電気刺激デバイスを使用して腸の通路4を完全に閉鎖すると、ポンプ1の狭さくデバイスは、腸組織内の血液循環をほぼ阻害せずに選択された部分2を部分的に狭さくさせることができる。
【0100】
図3A、
図3B、および
図3Cは、装置が蠕動型のポンプ7を含むことを除いて
図1Aおよび
図1Bによる一般的な実施形態と同様の本発明の実施形態を概略的に示している。蠕動ポンプ7は、
図3Aを見ると分かるように、選択された部分2の一部に沿って延びる選択された部分2の限定された狭さく部8を形成する狭さくデバイスを含んでいる。
図3A~
図3Cに示されているように、狭さく部8を下流側方向(
図3A~
図3Cの左側から右側)に変位させて腸内容物を腸の通路4内を前方に移動させるように蠕動ポンプ7の狭さくデバイスを制御する制御デバイス9が設けられている。狭さく部8が選択された部分2の右側に変位し、腸内容物が、狭さく部8の上流側の選択された部分2に進入し選択された部分2に再充填されると、制御デバイス9は、
図3aに示されているように、選択された部分2をその右側端部の所で解放し、かつ選択された部分2の左側端部に狭さく部8を形成するように蠕動ポンプ7の狭さくデバイスを制御し、それによって、上述の動作を反復することができる。
【0101】
図4A、
図4B、および
図4Cは、
図3A~
図3Cの実施形態の装置が、
図2Aおよび
図2Bによる実施形態に関連して上記に説明した電気刺激デバイスと同じ目的を有する電気刺激デバイスも含むことを除いて、
図3A、
図3B、および
図3Cによる実施形態と同様の本発明の実施形態を概略的に示している。
図4A~
図4Cの実施形態では、選択され
た部分2の限定された狭さく部10が、2つの方式を組み合わせることによって設けられている。したがって、第1の方式によれば、蠕動ポンプ7の狭さくデバイスは、選択された部分2の一部を狭さくさせ、したがって、選択された部分2は、部分的に平坦になるが、腸の通路4を閉鎖することはない。次の第2の方式によれば、電気刺激デバイスは、選択された部分2の狭さく部を電気パルス(
図3A~
図3Cでは矢印Bで示されている)によって刺激し、腸壁を厚くして腸の通路を完全に閉鎖し、それによって狭さく部10が形成される。制御デバイス9は、
図3A~
図3Cの実施形態による対応する狭さく部8について上記に説明したのと同様に狭さくデバイスおよび刺激デバイスを制御して狭さく部10を変位させる。
【0102】
図5A、
図5B、および
図5Cは、装置が、患者の腸3の選択された部分2を狭さくさせ、すなわち、平坦化するように構成された狭さくデバイス12を有するポンプ11を含む本発明の実施形態を示している。したがって、狭さくデバイス12は、上流側の第1対の短い狭さく部材13Aおよび13Bと、下流側の第2対の短い狭さく部材14Aおよび14Bと、第1の短部材対と第2の短部材対との間に位置する第3対の細長い狭さく部材15Aおよび15Bとを含んでいる。第1対の2つの短い狭さく部材13A、13Bは、引き込み位置(
図5A)と狭さく位置(
図5Bおよび
図5C)との間で互いに接近したり離れたりするように半径方向に移動可能であり、第2対の2つの短い狭さく部材14A、14Bは、引き込み位置(
図5C)と狭さく位置(
図5Aおよび
図5B)との間で互いに接近したり離れたりするように半径方向に移動可能であり、第3対の2つの細長い狭さく部材15A、15Bは、引き込み位置(
図5Aおよび
図5B)と狭さく位置(
図5C)との間で互いに接近したり離れたりするように半径方向に移動可能である。ポンプ11は、選択された部分2に取り付けられ、したがって、各狭さく部材対の2つの狭さく部材は、選択された部分2の両側に位置し、短い狭さく部材13A、13Bは、選択された部分2の上流側端部に位置し、短い狭さく部材14A、14Bは、選択された部分2の下流側端部に位置している。
【0103】
制御デバイス9は、選択された部分2を互いに独立して狭さくさせたり解放したりするように一対の短い狭さく部材13A、13B、一対の細長い狭さく部材15A、15B、および一対の短い狭さく部材14A、14Bを制御する。
図5A~
図5Cは、制御デバイス9が、腸内容物を腸の通路4の下流側方向に循環的に変位させるうえでポンプ11の動作をどのように制御するかを示している。したがって、
図5Aでは、短い狭さく部材13A、13Bおよび細長い狭さく部材15A、15Bはその引き込み位置にあり、一方、短い狭さく部材14A、14Bはその狭さく位置にある。
図5Bは、短い狭さく部材13A、13Bも半径内側にその狭さく位置まで移動し、それによって、ある体積の腸内容物が、選択された部分2の上流側端部と下流側端部との間の腸の通路4内に閉じ込められた状態を示している。
図5Cは、短い狭さく部材14A、14Bが最初に半径方向外側にその引き込み位置まで移動し、次に、細長い狭さく部材15A、15Bが半径内側にその狭さく位置まで移動した状態を示している。この状態の結果、矢印によって示されているように、選択された部分2の上流側端部と下流側端部との間の腸の通路4内の腸内容物が、腸の通路4内を下流側に移動している。次に、制御デバイス9は、
図5Aの状態になり、腸内容物が、選択された部分2の上流側端部と下流側端部との間の腸の通路に進入し通路に充填されるのを可能にし、それによって汲み出しサイクルが完了するように狭さくデバイス12を制御する。
【0104】
図5A~
図5Cは狭さく部材対を開示しているが、単一の短い狭さく部材13A、単一の細長い狭さく部材15A、および単一の短い狭さく部材14Aのみを含む狭さくデバイス12を構成することが考えられることに留意されたい。このような場合、腸3の選択された部分2は、選択された部分2の、狭さく部材13A、14A、および15Aの反対側に位置する狭さくデバイス12の固定部材によって支持される。
【0105】
図6A、
図6B、および
図6Cは、
図6A~
図6Cによる装置が、
図2Aおよび
図2Bによる実施形態に関連して上記に説明した電気刺激デバイスと同じ目的を有する電気刺激デバイスも含むことを除いて、
図5A、
図5B、および
図5Cによる実施形態と同様の本発明の実施形態を示している。
図6A~
図6Cによる刺激デバイスは、狭さく部材13A、13B、14A、14B、15A、および15B上に位置しかつ腸組織の選択された部分の筋肉または神経組織を電気パルスによって刺激するように構成された電極16の列を含んでいる。
図6A~
図6Cでは、非作動状態の電極16は塗りつぶされていない輪で示され、一方、作動状態の電極16は黒く丸い点で示されている。この実施形態では、狭さくデバイスと刺激デバイスは協働して腸組織内の血液循環の阻害を回避する。したがって、各狭さく部材対の2つの狭さく部材は、腸の通路をほぼ閉鎖する程度に選択された部分を狭さくさせるように構成されている。電極16が、狭さくした選択された部分2を電気パルスによって刺激し、したがって、腸壁が厚くなり、腸の通路を完全に閉鎖することによって、腸の通路が完全に閉鎖される。
【0106】
図6A~
図6Cによる装置の動作時に、制御デバイス9は、
図5A~
図5Cによる実施形態に関連して上記に説明したのと同じ順序で移動するように狭さく部材13A~15Bを制御する。制御デバイス9はまた、狭さく部材13A~15Aのいずれか1つが選択された部分2を狭さくさせる腸組織を電気的に刺激するように電極16を制御する。
【0107】
図7は、細長い狭さく部材15Aおよび15B上の電極16の修正された動作を示す
図6Cと同じ実施形態を示している。したがって、制御デバイス9は、細長い狭さく部材15A、15Bが選択された部分2を狭さくさせる場合に選択された部分2を連続的に刺激し、したがって、狭さくした選択された部分が下流側方向に徐々に収縮するように電極16を制御する。その結果、腸内容物は、腸の通路内を下流側に蠕動しながら変位する。あるいは、電極16は、選択された部分2を連続的に刺激して、部分2を上流側方向に徐々に収縮させることができる。
【0108】
図8は、ポンプ11が非動作状態であり、狭さく部材13A~15Bが休止位置に維持される
図6Aの実施形態を示している。したがって、短い上流側および下流側狭さく部材13A、13B、14A、および14Bは、その引き込み位置に維持され、一方、細長い狭さく部材15A、15Bは、選択された部分を軽く狭さくさせ、腸の通路の断面積を少なくともかなり小さくする。制御デバイス9は、狭さくした選択された部分2を電気的に刺激して腸壁を厚くし、したがって、腸の通路を完全な閉鎖状態に維持するように、狭さく部材15A、15B上のすべての電極16を制御する。あるいは、一度に刺激するのを狭さく部の一部のみにすることができる。
【0109】
図9A、
図9B、
図9C、および
図9Dは、ポンプ11の非動作時の、
図6Aによる実施形態の電極16の修正された動作を示している。
図9Aを参照すると、狭さく部材15Aに沿って一列に位置する8つの電極と、狭さく部材15Bに沿って一列に位置する8つの電極がある。制御デバイス9は、事前に設定された方式に従って2つの電極列中の電極を作動させ、選択された部分上の電極の位置を経時的に変化させる選択された部分2を部分的に収縮させ、それによって、腸の、現在刺激されていない部分は、再び刺激される前にほぼ正常な血液循環を回復することができる。各電極は、細長い狭さく部材15A、15Bの中央に位置する電極から、腸の上流側方向および下流側方向に徐々に作動する。
【0110】
制御デバイス9は、2つの電極列の中央に位置する2対の互いに隣接する電極16Aおよび16Bを作動させて、選択された部分2の短い距離に沿って腸壁を厚くし、選択された部分2の中央の腸の通路を閉鎖する。
図9Bを参照すると、数秒程度の所定の期間の経過後、電極対16Aの左側の、次の一対の電極16Cと、電極対16Bの右側の、次の一
対の電極16Dが作動し、一方、電極16Aおよび16Bは作動停止される。その結果、腸壁は、選択された部分2の中央から離れた2つの異なる位置で厚くなる。
図9Cを参照すると、さらに所定の期間の経過後、電極対16Cの左側の、次の一対の電極16Eと、電極対16Dの右側の、次の一対の電極16Fが作動し、一方、電極16Cおよび16Dは作動停止される。その結果、腸壁は、選択された部分2の中央からより離れた2つの異なる位置で厚くなる。
図9Dを参照すると、さらに所定の期間の経過後、電極対16Eの左側の、次の一対の電極16Gと、電極対16Fの右側の、次の一対の電極16Hが作動し、一方、電極16Eおよび16Fは作動停止される。次に、
図9A~
図9Dによる上述の刺激動作が、ポンプ11が作動するまで循環的に繰り返される。
【0111】
図10A、
図10B、および
図10Cは、移動可能な細長い狭さく部材15Aおよび15Bが細長い狭さく部材17Aおよび17Bと置き換えられることを除いて、
図6A、
図6B、および
図6Cによる実施形態と同様の本発明の実施形態を示している。この実施形態の刺激デバイスは、固定部材17A、17B上に位置し、かつ選択された部分2の腸壁を電気的に刺激して、選択された部分2の上流側端部と下流側端部との間の腸の通路4の体積を低減させるように構成された電極16の列を含んでいる。したがって、
図10Cは、短い狭さく部材14A、14Bが最初に半径方向外側にその引き込み位置まで移動し、次に、電極16が作動して腸壁を収縮させ、したがって、選択された部分2の上流側端部と下流側端部との間の腸の通路の体積が低減し、それによって、矢印で示されているように、腸内容物が腸の通路4内を下流側に移動した状態を示している。図を明確にするために、電極16によって電気刺激を受ける腸壁の厚さは、
図10Cでは誇張されている。
【0112】
図11Aおよび
図11Bは、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の図であり、この場合、結腸ろう造設術患者の小腸19におけるろう孔の近くに回転蠕動ポンプ18が取り付けられる。蠕動ポンプ18は、ロータ20の軸23から等距離に位置する3つの円筒形狭さく部材22A、22B、および22Cの形をした狭さくデバイス21を保持するロータ20を含んでいる。狭さく部材22A~22Cは、ローラとして構成することができる。細長い固定支持部材24が、ロータ20から間隔を置いているがロータ20の近くに位置しており、ロータ20の軸23と同心の部分円筒形表面25を有している。
【0113】
制御デバイス9は、狭さく部材22A~22Cが腸19の一連の選択された部分の一部を細長い支持部材24に接触させて連続的に狭さくさせるように回転するようにロータ20を制御する。
図11Aは、狭さく部材22Aが、腸19を第1の部分25の所で狭さくさせて腸の通路4を閉鎖し、一方、狭さく部材22Bがまさに、腸19を第1の部分25の下流側の第2の部分26の所で解放しようとしている状態を示している。
図11Bは、狭さく部材22Aが、細長い支持部材24に沿ってほぼ中間部まで前進し、腸の通路内の腸内容物を変位させ、したがって、ある量の腸内容物がろう孔を通って排出された状態を示している。狭さく部材22Bは腸19を解放しており、一方、狭さく部材22Cはまさに腸19に係合しようとしている。したがって、制御デバイス9は、狭さく部材22A~22Cを細長い支持部材24に沿って循環的に次々と移動させ、一方、腸19の選択された部分を狭さくさせ、したがって、腸の通路4内の腸内容物が蠕動しがら変位するようにロータ20を制御する。同じ狭さく原理を、ロータを含まない他の機械狭さくデバイスによって実施することもできる。
【0114】
図12Aおよび
図12Bは、
図12A~
図12Bの実施形態の装置が、
図4A~
図4Cによる実施形態に関連して上記に説明した電気刺激デバイスと同じ目的を有する電気刺激デバイスも含むことを除いて、
図11Aおよび
図11Bによる実施形態と同様の本発明の実施形態を示している。
図12A~
図12Bによる刺激デバイスは、狭さく部材22A~22C上に設けられた電極16を含んでいる。この実施形態では、ロータ20は、
図11
Aおよび
図11Bによる実施形態と比べて、細長い固定支持部材23からいくらか遠くに配置されており、したがって、狭さく部材22A~22Cが、ロータ20の回転時に腸19を狭さくさせるときに機械作用によって腸の通路を完全に閉鎖することはない。電極16を作動させることによって腸の通路4が完全に閉鎖される。同じ複合狭さく・刺激原理をロータを含まない他の機械狭さくデバイスによって実施することもできる。
【0115】
したがって、いずれかの狭さく部材22A~22Cが腸19の一部を狭さくすると、その狭さく部材に関連する電極16が狭さく部を電気パルスによって電気的に刺激し、したがって、狭さく部の腸壁が厚くなり、腸の通路4を閉鎖する。
図22Aは、狭さく部材22Aが腸19の一部の狭さくを開始した状態と、腸の通路4が、狭さく部材22A上の電極16が作動することによって閉鎖される状態を示している。
【0116】
図13A~
図13Dは、それぞれの異なる動作段階を示す本発明の他の実施形態の長手方向断面図であり、この場合、患者の腸19の選択された部分に他の種類の蠕動ポンプ27が取り付けられる。ポンプ27は、選択された部分のそれぞれの側にある長さにわたって当接する凸状表面30Aおよび30Bを有する細長い2つの狭さく部材29Aおよび29Bを含む狭さくデバイス28を備えている。制御デバイス9は、
図13A~
図13Dに示されているように、細長い狭さく部材29A、29Bを、選択された部分に対して移動し、したがって選択された部分を徐々に狭さくさせるように制御する。
【0117】
したがって、
図13Aに示されている狭さく部材29A、29Bの最初の位置では、選択された部分が狭さく部材29A、29Bによって狭さくされることはない。制御デバイス9は、この最初の位置から、
図13Aを見ると分かるように、狭さく部材29A、29Bの左側端部を選択された部分(矢印で示されている)の方へ揺動させて腸19の選択された部分を狭さくさせるように狭さく部材29A、29Bを制御する。
図13Bは、腸の通路4が狭さくした選択された部分によって完全に閉鎖される状態を示している。次に、
図13Bに示されているように、制御デバイス9は、狭さく部材29A、29Bの右側端部が互いの方へ移動し(矢印で示されている)、一方、
図13Cを見ると分かるように、狭さく部材29A、29Bの凸状表面30A、30Bが狭さくした選択された部分を間に挟んで互いに転動するように移動するように狭さく部材29A、29Bを制御する。その結果、腸19の腸内容物が右側(白い矢印で示されている)に押し出される。狭さく部材29A、29Bが互いに対して
図13Dに示されている位置まで転動すると、制御デバイス9は、右側端部が互いに離れ(
図13Dの矢印で示されている)
図13Aに示されている最初の位置まで移動するように狭さく部材29A、29Bを制御する。
図13A~
図13Dに示されている動作段階は、所望の量の腸内容物が腸の通路内を蠕動しながら変位するまで循環的に数回繰り返すことができる。この実施形態は、ろう孔患者に使用するのに特に適している。したがって、蠕動ポンプ27は、患者のろう孔の近くの、患者の腸に取り付けられる。
【0118】
あるいは、狭さく部材29A、29Bのうちの1つのみに凸状表面を備えることができ、その場合、他方の狭さく部材は、選択された部分に当接する平面を有する。腸19の選択された部分を患者の骨に押し付ける凸状表面を有する単一の狭さく部材を使用することも可能である。
【0119】
図14A~
図14Dは、
図14A~
図14Dの実施形態の装置が、
図4A~
図4Cによる実施形態に関連して上記に説明した電気刺激デバイスと同じ目的を有する電気刺激デバイスも含むことを除いて、
図13A~
図13Dによる実施形態と同様の本発明の実施形態を示している。この刺激デバイスは、凸状表面30A、30B上に位置する電極16を含んでいる。
図14A~
図14Dの実施形態では、狭さく部材29Aおよび29Bは、
図13A~
図13Dによる実施形態と比べて、互いにいくらか遠くに配置されており、したが
って、狭さく部材29A、29Bが、動作時に腸19を狭さくさせるときに機械作用によって腸の通路4を完全に閉鎖することはない。電極16を作動させることによって腸の通路4が完全に閉鎖される。
【0120】
したがって、狭さく部材29A、29Bが、
図14Aに示されている最初の位置にある状態で、制御デバイス9は、狭さく部材29A、29Bの左側端部を腸19の選択された部分の方へ(矢印で示されている)揺動させるように狭さく部材29A、29Bを制御し、一方、腸19を電気的に刺激し、腸壁を収縮させて厚くするように電極16を制御する。
図14Bは、腸の通路4が、狭さく部材29A、29Bによる腸19の機械狭さくと電極16による腸19の電気刺激との組合せによって完全に閉鎖される状態を示している。
図14Cおよび
図14Dは、上述の
図13Cおよび
図13Dの動作段階に相当する動作段階を示している。
【0121】
図14A~
図14Dによる実施形態では、制御デバイス9は、狭さくした選択された部分を徐々に刺激し、狭さく部材29A、29Bの凸状表面30A、30Bが互いに転動するときに細長い狭さく部材29A、29Bの移動に合わせて徐々に収縮させるように電極16を制御する。
【0122】
図15Aおよび
図15Bは、本発明の他の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を示しており、この場合、装置は、患者の腸19の選択された部分に取り付けられた別個のポンプ31と取り外し可能な別個の閉鎖部材32とを含んでいる。ポンプ31は、上述の種類のものであり、腸19の選択された部分を交互に狭さくさせ解放し、したがって、腸内容物を腸の通路4を通って変位させる狭さくデバイスを含んでいる。閉鎖部材32は、選択された部分の両側に位置する細長い2つの狭さく部材33Aおよび33Bを含んでいる。狭さく部材33A、33Bは、ポンプ31の動作時に腸19の選択された部分が解放される引き込み位置(
図15A)と、ポンプの非動作時に狭さく部材33A、33Bが選択された部分を狭さくさせて腸の通路を閉鎖する狭さく位置(
図5C)との間を、互いに接近したり離れたりするように半径方向に移動可能である。
【0123】
腸19の選択された部分の筋肉または神経組織を電気パルスによって刺激して腸壁を収縮させる数列の電極16が狭さく部材33A、33B上に位置している。
図15Aは、非作動状態の電極を示す電極16を塗りつぶされていない輪で示し、
図15Bは、作動状態の電極を示す電極16を黒く丸い点で示している。狭さく部材33A、33Bと電極16は協働して、閉鎖部材32が腸の通路4を閉鎖するときに腸組織内の血液循環の阻害を回避する。したがって、狭さく部材33A、33Bは、ポンプ31の非動作時(
図15B)に、選択された部分を少なくとも部分的に狭さくさせ、腸の通路4の断面積を少なくともかなり小さくし、電極は、腸の筋肉または神経組織電気的に刺激して腸を収縮させ、したがって、腸壁が厚くなり、腸の通路4が完全に閉鎖される。電極は、
図9A~9Dの実施形態に関連して上記に説明した事前に設定された方式に従うか、あるいは腸の刺激を変動させる任意の他の所定のパターンまたは方式に従って作動させることができる。
【0124】
図16Aは、ろう孔35を設けられた結腸ろう造設術患者に移植された人工腸部材34を含む本発明の他の実施形態を示している。小腸19が外科的に切断され、その上流側開放端部36と、ろう孔35を形成する小腸19の短い分離部39の下流側開放端部37とが形成される。腸19の短い部分39は、患者の腹壁39Aの外科的に形成された開口部を通って延びている。人工腸部材34は、上流側端部36と下流側端部37との間で患者の小腸19と外科的に接合され一体化される。患者の腸間膜の一部の血管38は、腸の、ろう孔35を形成する分離部分39に血液を供給する。人工腸部材34は、人工腸部材34にのみ作用する狭さくデバイスを含むポンプ40を備えている。ポンプ40に取り付けられたホルダ40Aは、腹壁39Aにその開口部の所で固定されている。ポンプ40の狭
さくデバイスは、弾性チューブを含んでよい人工腸部材34を交互に狭さくさせたり解放したりし、したがって、腸内容物が患者のろう孔35を通って排出される。ポンプ40の狭さくデバイスは、本出願の各実施形態に記載された様々な狭さくデバイスのうちのいずれか1つを選択することができる。
図16Aの実施形態では、狭さくデバイスは、ポンプ40の非動作時に、人工腸部材34を狭さくさせ、人工腸部材34の通路を通常は閉鎖したままにしておくことができる。さらに、
図16Aの実施形態では、小腸を狭さくさせることのできる任意の種類のポンプ使用することができる。
【0125】
上述の人工腸部材34または43は、
図16Bに示されているように、交互に患者の肛門に直接または間接的に接合することができる。
【0126】
図17は、人工腸部材34およびポンプ40の拡大図であり、ポンプ40を有する腸部材34が腸19にその上流側端部および下流側端部36、37の所で密封された状態を示している。すなわち、織物管状ネット41が、腸19にその上流側端部36の所で取り付けられ、かつポンプ40に取り付けられている。他の織物管状ネット42が、腸19の分離部分39に取り付けられ、かつポンプ40に取り付けられている。管状ネット42は、分離部分39に完全に取り付けられているわけではなく、ネット42が部分39上で丸められた状態を示している。最初、織物ネット41および42は、通常は吸収可能な縫合糸によって腸に縫合される。管状ネット41、42は、腸19を人工腸部材34に密封する線維性組織の内部成長を推進する。PTFE、シリコーン、ポリウレタンのような他の材料を菅状ネット41、42の外部に張り付けることができる。
【0127】
図18は、ポンプ40の下流側から延び、かつろう孔45を形成する管状部44を有する人工腸部材43を含む
図17の実施形態の変形例を示している。人工腸部材43の他の管状部44Aは、ポンプ40の上流側から延びている。この変形例では、人工腸部材43の管状部44Aを患者の小腸19に接合し密封するだけでよい。
【0128】
図19A、
図19B、
図19C、および
図19Dは、本発明の他の実施形態のそれぞれの異なる動作段階を概略的に示しており、この場合、ポンプ46は、患者の腸19を軸方向に狭さくさせる狭さくデバイス47を含んでいる。
図19Aを参照すると、狭さくデバイス47は、互いにヒンジ連結された第1対の狭さく部材48Aおよび48Bと、互いにヒンジ連結された第2対の狭さく部材49Aおよび49Bとを含んでいる。2つの狭さく部材48A、48Bおよび49A、49Bは、線維性組織を内部成長させる材料50によって腸19の選択された部分にその両側で接合されている。
図19Bは、第1対の狭さく部材48A、48Bおよび第2対の狭さく部材49A、49Bが互いに離れる方向に移動して腸19の選択された部分を半径方向に膨張させ、腸の通路4の膨張チャンバ51を形成した状態を示している。
図19Cは、狭さく部材48Aおよび49Bが、互いに半径方法に旋回し、かつ腸19の選択された部分を軸方向に狭さくさせ、それによってチャンバ51の体積が低減して腸内容物を腸の通路を通って腸19から変位させた状態を示している。
図19Dは、やはり第2対の狭さく部材48Bおよび49Bが、互いに向かって旋回し、膨張した選択された部分を軸方向に狭さくさせてチャンバ51の体積をさらに低減させ、それによって、より多くの腸内容物が腸の通路4を通って腸19から変位した状態を示している。
【0129】
図20は、
図4A~
図4Cによる実施形態に関連して上記に説明した電気刺激デバイスと同じ目的を有する電気刺激デバイスも含む
図19Dの実施形態を示している。
図20の刺激デバイスは、狭さく部材48A、48B、49A、および49B上に位置する電極16を含んでいる。電極16は、狭さく部材48A、48B、49A、および49Bが腸19を軸方向に狭さくさせるのと同時に、腸19を電気的に刺激して腸壁を収縮させて厚くする。
【0130】
図21~
図26は本発明の他の実施形態を示しており、この場合、手動ポンプ52は、患者の腸19の選択された部分に取り付けられた油圧操作狭さくデバイス53を含んでいる。狭さくデバイス53は、選択された部分をその上流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする第1のサブデバイス54と、選択された部分をその下流側端部の所で狭さくさせたり解放したりする第2のサブデバイス55と、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせたり解放したりする第3のサブデバイス56とを含んでいる。第1のサブデバイス54は、フレーム57と、フレーム57に対して移動可能な狭さく部材58と、フレーム57と狭さく部材58との間に連結された油圧蛇腹部材59とを含んでいる。フレーム57の支持表面60は腸19を支持しており、したがって、
図22を見ると分かるように、狭さく部材58は、腸19を支持表面60に接触させて狭さくさせることができる。第2のサブデバイス55は、
図23を見ると分かるように、腸19の両側に位置する2つの狭さく部材61Aおよび61Bと、やはり腸19の両側に位置し、かつ狭さく部材61A、61Bを相互に連結する2つの蛇腹部材62Aおよび62Bとを含んでいる。第3のサブデバイス56は、第1のサブデバイス54と同様に構成され、フレーム63と、フレーム63に対して移動可能な細長い狭さく部材64と、フレーム63と細長い狭さく部材64との間に連結された2つの油圧蛇腹部材65Aおよび65Bとを含んでいる。フレーム63の支持表面66は腸19を支持している。蛇腹部材59、65A、65B、62A、62Bは、完全に膨張すると、蛇腹部材59の体積が2つの蛇腹部材62Aおよび62Bの体積に等しくなり、一方、2つの蛇腹部材65Aおよび65Bの体積が蛇腹部材59の体積より大きくかつ蛇腹部材62Aおよび62Bの体積より大きくなるような寸法を有している。
【0131】
ある体積の油圧流体を含む、手動圧縮可能な弾性リザーバ67の形をしたアクチュエータが、患者の体内に皮下移植可能であり、かつサイズの等しい油圧導管68A、68B、68C、68D、および68Eを介してそれぞれの蛇腹部材59、65A、65B、62A、および62Bに油圧式に連結されている。導管68Cは、単一の導管68Eを通って供給される油圧流体を2つの蛇腹部材65Aおよび65Bに分岐させる。
図21~
図23は、リザーバ67が圧縮されておらず、それによって、すべての蛇腹部材59、65A、65B、62A、62Bが引き込まれている非作動状態のポンプ52を示している。この状態の結果、サブデバイス55は、選択された部分の下流側で腸19を狭さくさせ(
図23参照)、一方、サブデバイス54および56は、腸19を解放する。
【0132】
図24~
図26は、患者が、手動でリザーバ67を圧縮して油圧流体をリザーバ67から蛇腹部材59、65A、65B、62A、62Bに分配する作動状態のポンプ52を示している。この状態の結果、蛇腹部材59が膨張し、したがって、短い狭さく部材58が、腸19を狭さくさせ、かつ腸の通路4を選択された部分の上流側端部の所で閉鎖し(
図25参照)、2つの蛇腹部材62A、62Bが膨張し、したがって、短い狭さく部材61A、61Bが、腸19を解放し、かつ腸の通路4を選択された部分の下流側端部の所で開放し(
図26参照)、2つの蛇腹部材65A、65Bが膨張し、したがって、細長い狭さく部材64が、選択された部分をその上流側端部と下流側端部との間で狭さくさせそれによって、腸内容物が腸の通路4内で変位する。蛇腹部材59は、膨張時に体積が2つの蛇腹部材65A、65Bの体積の和よりも少なくなり、かつ油圧流体が単一の導管68Eを介して蛇腹部材65A、65Bに供給されるため、蛇腹部材59は、リザーバ67の圧縮時に蛇腹部材65A、65Bよりも高速に膨張する。(この膨張率の差は、蛇腹部材65Aおよび65Bのそれぞれの体積よりも少ない体積を有する蛇腹部材59を構成し、蛇腹部材65Aを導管68Bに連結し蛇腹部材65Bを導管68Dに連結することによって実現することもできる。)したがって、狭さく部材58は、細長い狭さく部材64が腸を完全に狭さくさせるかなり前に腸19の選択された部分の上流側端部の所で腸の通路4を閉鎖し、それによって、狭さく部材64が腸19を狭さくさせるときに腸19の選択された
部分における顕著な量の腸内容物が腸の通路内を下流側に押し出される。患者がリザーバ67の圧縮を停止すると、リザーバはその非圧縮状態を再開し、蛇腹部材59、65A、65B、62A、62Bから油圧流体を吸引し、それによって、蛇腹部材59、65A、65B、62A、62Bが引き込み、ポンプ52が、
図21に示されている非作動状態に戻る。
【0133】
上述の
図21~
図23による狭さくデバイスの油圧動作手段は、
図1~
図10Cによる実施形態の狭さくデバイスおよび
図15A、15Bによる実施形態の閉鎖部材で実施することができる。
【0134】
図27Aおよび
図27Bは、
図21~
図26の実施形態で使用するのに適した油圧反転サーボ69を示している。反転サーボ69は、互いに平行な2枚の長側壁71Aおよび71Bと互いに平行な2枚の短側壁72Aおよび72Bとを有する矩形のハウジング70を含んでいる。長側壁71A、71Bと平行な可動壁73は、長側壁71A、71B間で短側壁72A、72B上を滑る。チャンバ75を形成する比較的大きなほぼ円筒形の蛇腹リザーバ74が、可動中間壁73と長側壁71Bとの間を延びかつ可動中間壁73および長側壁71Bに接合されており、大きなリザーバ74のチャンバ75よりもかなり小さいチャンバ77を形成する比較的小さなほぼ円筒形の蛇腹リザーバ76が、可動壁73と長側壁71Aとの間を延びかつ可動壁73および長側壁71Aに接合されている。小さな蛇腹リザーバ76は、圧縮可能なリザーバ67に導管68Aを通って連結される流体供給管78を有しており、大きな蛇腹リザーバ74は、蛇腹部材59、65A、65B、62A、62Bに導管68B~68Dを通って連結される流体供給管79を有している。
【0135】
図27Aを参照すると、患者がリザーバ67を圧縮すると、少量の油圧流体がリザーバ67から供給管78を通って小さな蛇腹リザーバ76のチャンバ77内に導かれ、したがって、小さな蛇腹リザーバ76が膨張し、かつ可動中間壁73を長側壁71Bの方へ押す。その結果、大きな蛇腹リザーバ74は、中間壁73によって長側壁71Bに押し付けられた状態で収縮され、それによって、
図27Bを見ると分かるように、大量の油圧流体が、大きい蛇腹リザーバ74のチャンバ75から供給管79を通し、さらに導管68B~68Dを通ってポンプ52の蛇腹59、65A、65B、62A、62B内に押し出される。
【0136】
図28Aおよび
図28Bは、
図1~
図10Cおよび
図15A、
図15Bによる実施形態で実施することのできる手動狭さくデバイス80を示している。狭さくデバイス80は、患者の腸19の選択された部分に取り付けられた開放端部付き管状ハウジング81を含むと共に、
図28Aに示されている解放位置と、狭さく部材82が腸19の選択された部分を狭さくさせる、
図28Bに示されている狭さく位置との間を、腸19に接近したり離れたりするように管状ハウジング81内を半径方向に移動可能な狭さく部材82とを含んでいる。狭さく部材82を機械的に動作させる機械操作手段は、ハウジング81に取り付けられた電気モータ83と、モータ83によって駆動されかつ狭さく部材82に動作可能に連結された伸縮デバイス84とを含んでいる。モータ83に電力を供給すると、モータ83は、伸縮デバイス30を膨張させ、したがって、
図28Bを見ると分かるように、狭さく部材82が、腸19を狭さくさせて腸の通路4を閉鎖する。狭さく部材82が腸19を解放するときは、電気モータ83が反転され、したがって、伸縮デバイス84が、
図28Aに示されている位置に狭さく部材82を引き込み、それによって、腸19が解放され、腸の通路4が開放される。
【0137】
あるいは、機械操作手段は、
図28Cに示されているように、クランプ部材82に動作可能に連結された皮下移植されたアクチュエータを含んでよく、このアクチュエータは患者によって手動で操作される。したがって、モータ83は、伸縮デバイス84を膨張させ
たままに維持し、クランプ部材82を腸19に押し付けるように作用するばね84aと置き換えられている。アクチュエータは、伸縮デバイス84に動作可能に連結されたレバー機構83aを含んでいる。患者は、皮膚を通ってレバー機構83aを押し、点線で示されているように、伸縮デバイス84をばね84aの作用に抗して伸縮デバイス84の引き込み位置まで引っ張る。患者がレバー機構83aを放すと、ばね84aが伸縮デバイス84を膨張させ、それによって、クランプ部材82が再び腸19に押し付けられる。
【0138】
【0139】
図29は、ろう孔患者の腸に取り付けられた
図6Aおよび
図6Bの実施形態のポンプ11を示しており、この場合、狭さくデバイス12の狭さく部材15A、15Bが腸19を狭さくさせ、電極16が通電されて腸の通路4を閉鎖する。制御デバイスは、無線リモート・コントロール85Aの形をした外部制御ユニットと、マイクロプロセッサを含んでよく、ポンプ11を制御する、移植された内部制御ユニット86とを含んでいる。リモート・コントロール85Aは、患者によって操作可能であり、ポンプ11のオン、オフを切り替えるように内部制御ユニット86を制御する。別個の無線エネルギー送信器85Bは、リモート・コントロール85Aと一体化することもでき、無線エネルギーを患者の体外から、伝送された無線エネルギーを電気エネルギーに変換する移植されたエネルギー変換デバイス87に伝送するように構成されている。ポンプ11に電力を供給し、かつ電極16を通電する移植された再充電可能な電池88は、エネルギー変換デバイス87によって生成された電気エネルギーを蓄積する。制御ユニット86、エネルギー変換デバイス87、および電池88は、患者の、皮膚と腹壁との間の脂肪層内にパッケージとして移植される。ポンプ11は、無線エネルギー変換デバイス87が無線エネルギー送信器85Bによって伝送された無線エネルギーから変換した電気エネルギーによって直接駆動することもできる。無線エネルギーは、エネルギー送信器85Bのコイルによって放出される電磁波を含んでよく、その場合、エネルギー変換デバイス87の対応するコイルは、電磁波を電流に変換する。
【0140】
移植されたセンサ89は、腸の選択された部分における腸内容物の体積や、腸19の膨張または腸19内の圧力のような、患者の物理的パラメータを検知する。リモート・コントロール85Aは、ポンプ11の非動作時に、物理的パラメータがしきい値を超えたことをセンサが検知したことに応答して音声信号や表示情報などの表示を生成するように構成されている。この表示は、排便すべきときであることを患者に知らせる必要がある。
【0141】
図30は、患者の肛門に外科的に連結された結腸ろう造設術患者の小腸19に取り付けられた
図6Aおよび
図6Bの実施形態のポンプ11を示している。
【0142】
本発明について、現在最も実際的で好ましい実施形態とみなされるものに関連して説明したが、本発明が、開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる様々な変形例および均等な構成を対象とするものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0143】
1 ポンプ; 2 (腸の選択された)部分; 3 (患者の)腸; 4 (腸の)通路; 5 開放端部; 6 腸壁; 7 ポンプ; 8 狭さく部; 9 制御デバイス;
10 狭さく部。