(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】膜への膜チャネルの挿入を制御するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20230328BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
(21)【出願番号】P 2021170266
(22)【出願日】2021-10-18
(62)【分割の表示】P 2019527125の分割
【原出願日】2017-11-24
【審査請求日】2021-10-29
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ガラルデ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニソン,マイク
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン,アンドリュー
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-095314(JP,A)
【文献】特開2015-051013(JP,A)
【文献】特開平07-320752(JP,A)
【文献】特開2012-026986(JP,A)
【文献】特表2015-517799(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181465(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/099673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
C12M 1/34
C12Q 1/00-3/00
JMEDPlus(JDreamIII)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜(4)への膜チャネルの挿入を制御するための装置であって、
前記膜(4)の第1の表面と接触する第1の液体と接触するように構成されている第1の電極(14)と、
前記膜(4)の第2の表面と接触する第2の液体と接触するように構成されている第2の電極(16)であって、前記膜(4)は前記第1の液体および前記第2の液体を分離する、前記第2の電極(16)と、
前記第1の液体または前記第2の液体から前記膜(4)への膜チャネルの挿入を促進するように、前記第1および第2の電極(14、16)を介して前記膜(4)にわたって電位差を印加するように構成された駆動ユニット(15)と
を備え、
前記電位差は、電圧波形をもたらすよう時間とともに変化し、(i)経時的に電位を上昇させることにより増加し、または(ii)漸進的により高い値へ電位値の間を段階的に変化することにより増加し、
前記装置は、前記膜と直列に接続された膜電圧低減ユニットを有する回路を備え、
前記膜電圧低減ユニットは、膜チャネルが挿入された後に前記膜にわたって電位差が低下するように、前記回路にわたり印加される電位を再分配する、前記装置。
【請求項2】
前記駆動ユニットは、前記膜及び前記膜電圧低減ユニットにわたり駆動電圧を印加するよう構成され、前記駆動電圧は、前記膜にわたって電位差を提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
初期電位値は、0mV~150mVであり、最終膜電位は200~600mVである、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記電位差は、1段当たり1~15秒で1~10mVの段階で増加する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記電位は、経時的に電位を上昇させること、及び、漸進的により高い値へ電位値の間を段階的に変化することのうちの少なくとも1つにより増加する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記電位差は、線形的又は非線形的に増加する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
前記電位は、前記膜を伸ばし薄くすることにより前記挿入を容易にする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項8】
前記膜チャネルは、天然に存在するポア、天然に存在するポアから誘導された変異ポア、又は合成ポアのうちの一つである、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
複数の膜電圧低減ユニットが、複数の第2の浴に同じ駆動電圧を印加すると同時に、前記複数の第2の浴におけるチャネルの挿入を制御するために設けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、膜チャネルの挿入によって引き起こされる前記膜(4)を通る抵抗の低減が、前記膜電圧低減ユニット(20)にわたる電位差を本質的に増加させ、それによって、前記膜(4)にわたる前記電位差を低下させるように構成され、前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下は、さらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分である、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記膜(4)の前記第1の表面と接触する前記第1の液体を保持するための第1の浴(6)と、
前記膜(4)の前記第2の表面と接触する前記第2の液体を保持するための第2の浴(8)と
をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、最大抵抗までの抵抗を通して定電流を供給するように構成された電流源を備え、
前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下は、前記膜(4)を通る前記抵抗が、前記最大抵抗を上回る抵抗から前記最大抵抗を下回る抵抗に低減されることによって引き起こされる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項13】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、前記膜(4)と直列の抵抗成分を備え、前記抵抗成分の抵抗は、前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下が、さらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分でありながら、挿入前の前記膜チャネルの挿入を促進するように、挿入前に前記膜(4)にわたる前記電位差を十分に高くすることを可能にすることを確実にするように選択される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項14】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、前記膜(4)と直列のダイオードを備え、前記ダイオードは、前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下が、さらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分でありながら、挿入前の前記膜チャネルの挿入を促進するように、挿入前に前記膜(4)にわたる前記電位差を十分に高くすることを可能にするように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項15】
複数の前記第2の浴(8)が設けられ、各第2の浴(8)が、異なる膜(4)を支持するように構成されており、
複数の前記膜電圧低減ユニット(20)が設けられ、各膜電圧低減ユニット(20)が、異なる膜(4)または同じ膜(4)の異なる部分と直列に接続されており、
前記駆動ユニット(15)は、前記膜電圧低減ユニット(20)と異なる膜(4)との対の全てにわたって、または、前記膜電圧低減ユニット(20)と同じ膜(4)の異なる部分との対の全てにわたって
、駆動電圧を並列に印加するように構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
膜(4)への膜チャネルの挿入を制御する方法であって、
膜(4)のそれぞれの第1および第2の面上で、第1および第2の液体と接触しており、かつそれらを分離している前記膜(4)を提供することと、
前記第1の液体または前記第2の液体から前記膜(4)への膜チャネルの挿入を促進するように、第1および第2の電極(14、16)を介して前記膜(4)にわたって電位差を印加するために、駆動ユニットを使用することと
を含み、
前記電位差は、電圧波形をもたらすよう時間とともに変化し、(i)経時的に電位を上昇させることにより増加し、または(ii)漸進的により高い値へ電位値の間を段階的に変化することにより増加し、
前記装置は、前記膜と直列に接続された膜電圧低減ユニットを有する回路を備え、
前記膜電圧低減ユニットは、膜チャネルが挿入された後に前記膜にわたって電位差が低下するように、前記回路にわたり印加される電位を再分配する、ことを特徴とする前記方法。
【請求項17】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、最大抵抗までの抵抗を通して所定の定電流を供給することができる電流源を備え、
前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下は、前記膜(4)を通る前記抵抗が、前記最大抵抗を上回る抵抗から前記最大抵抗を下回る抵抗に低減されることによって引き起こされる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、前記膜(4)と直列の抵抗成分を備え、前記抵抗成分の前記抵抗は、前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下が、さらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分でありながら、挿入前の前記膜チャネルの挿入を促進するように、挿入前に前記膜(4)にわたる前記電位差を十分に高くすることを可能にすることを確実にするように選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、前記膜(4)と直列のダイオードを備え、前記ダイオードは、前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下が、さらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分でありながら、挿入前の前記膜チャネルの挿入を促進するように、挿入前に前記膜(4)にわたる前記電位差を十分に高くすることを可能にするように構成される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下が、論理制御なしにトリガされるように構成される、請求項1~15のいずれか1項に記載の装
置。
【請求項21】
前記膜電圧低減ユニット(20)は、前記膜(4)にわたる前記電位差の前記低下が、論理制御なしにトリガされるように構成される、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記膜が、両親媒性膜を備える、請求項1~15のいずれか1項に記載の装
置。
【請求項23】
前記膜が、両親媒性膜を備える、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜への膜チャネルの挿入を制御するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜にわたって形成されたチャネルは、分子実体を検知するために使用され得る。分子実体とチャネルとの間の相互作用は、シグナルの特性的な変調を引き起こし得る。このシグナルを監視することによって、特性的な変調を検出し、それによって分子実体を検知することが可能である。WO2008/102120、WO2009/035647、WO2000/79257、WO2001/42782、およびWO2007/057668に開示されているように、この原理に基づいて様々な技術が提案されている。その一実施例は、膜チャネルを通るイオンの流れによる電流シグナルの測定である。膜は溶液を2つに分離し、膜チャネルは溶液間に膜を通る輸送経路を提供する。溶液間の唯一の輸送経路が1つまたは複数の膜チャネルを通るように、膜は抵抗力が高い。関心のある分子実体は、チャネルと相互作用するようにさせられてもよく、例えばチャネルを移動させるようにさせられてもよい。
【0003】
この技術を使用した分子実体の検知は、蛍光標識および検出を必要とせずに、単一分子および分子実体を直接同定する方法を提供する。DNAまたは他の核酸の配列決定、安全性と防衛のための化学的または生物学的分子の検知、診断用の生物学的マーカーの検出、医薬品開発のためのイオンチャネルスクリーニング、および生物学的分子間の相互作用の無標識分析のような広範囲に可能な用途がある。
【0004】
スループットを十分に提供するために、各膜が膜チャネルを含む個々の膜の配列を提供することができる。
【0005】
膜は典型的には両親媒性であり、かつ二層であり得る。MontalおよびMueller Proc Natl Acad Sci USA.1972 Dec,69(12):3561-3566、WO-2008/102120、WO2008012552およびWO2014064444によって開示されているように、両親媒性層を形成するための技術は周知である。得られる膜の厚さは、膜材料の性質、溶媒の混入、膜の幾何学的形状、ならびに調製方法などの要因によって変わり得る。
【0006】
一部のシステムでは、追加刺激がない場合、膜チャネルは自発的に膜に挿入されず、しばしば非常にゆっくりと挿入される。そのようなシステムを選択することは、膜挿入のプロセスに対する制御を可能にするので、有利であり得る。膜チャネルの挿入を助ける技術は既知であり、最も一般的なものは膜にわたって電位差を印加することである。この電位差が膜を伸ばし、薄くし、挿入を容易にすると考えられる。電圧で補助された挿入はまた、膜チャネル挿入および膜を通る電流の対応する検出に応答して、印加電位を積極的に低下させることができる膜中に挿入される膜チャネルの数を制御するためにも使用されることができ、膜チャネルの挿入後の印加電位差を低下させることは、次のチャネルの挿入の可能性を低下させる。印加電位の低下は、膜を形成すること、および単一チャネルの記録を行うことの多くの実験室にとって一般的な慣行である使用者により行われてもよい。この手法の欠点は、使用者がチャネルの電流(または抵抗などのように、同様の観察可能なパラメータ)を観察し、そのパラメータの変化に手動で反応する必要があることである。これは単一チャネルの記録には実用的であるが、大きな配列を扱う場合は実用的ではない。したがって、このプロセスを自動化することが望まれる。
【0007】
膜の配列に対する印加電位の制御を自動化する様々な方法が開示されている。1つは、US2016/0289758に開示されているように、ナノポア挿入の結果として観察された電流の増加の検出に反応するためにコンピュータ制御を使用する。別の方法は、US2012/0052188に開示されているように、膜形成および攪拌刺激を補助して同様の効果を達成するための電極媒介気泡の使用を教示する。各膜に必要とされるチャネルの数は、使用される測定技術に応じて変わり得る。イオン流測定のためには、膜ごとに1つのチャネルを設けることが望ましい。US2016/0289758は、ナノポア中の別の化合物(例えば酵素)の作用により混合物中の個々のポリマーを検出及び制御できる装置及び方法を開示する。また、当該装置及び方法は、ポリヌクレオチドとナノポアとの間の相互作用により生成される信号を用いて、またはフィードバック制御の基に、ポリヌクレオチドのヌクレオチド塩基配列を決定する。RENNER STEPHAN ET AL: "Voltage-controlled insertion of single alpha-hemolysin and Mycobacterium smegmatis nanopores into lipid bilayer membranes", APPLIED PHYSICS LETTERS, A I P PUBLISHING LLC, US, vol. 98, no. 8, 23 February 2011 (2011 -02-23), pages 83701-83701, XP012140069, ISSN: 0003-6951, DOI: 10.1063/1.3558902には、脂質膜への単一ポアの電圧制御挿入による実験手順が開示されている。
【発明の概要】
【0008】
印加電位などの刺激のコンピュータ制御自動化の使用は、制御されたポア挿入の手動方法よりも有益であるが、それらは望ましくない多くの特徴を有する。そのような特徴の1つは、ポア挿入刺激を除去または低減させる操作を実行するためのコンピュータまたは同様の意志決定回路の必要性である。このような回路は高価であり、多くの配列の膜を扱うときには実用的ではない場合がある。各膜は良好な単一チャネルの歩留まりを保証するために、このコンピュータ制御プロセスを受けなければならず、かつ専用のコンピュータ制御装置に接続されるかまたは他の膜間でコンピュータ制御装置を共有しなければならない。チャネルごとに専用のコンピュータ制御装置を設けることは高価である。複数の膜を制御ユニットに接続すると、このコストが低減され、その結果、制御ユニットが各膜の周りを順番に循環するときにポアの挿入が連続的に行われるという結果になる。これは、配列にわたるポア挿入に必要とされる全体の時間量(選択多重化)を増加させることができ、または装置の反応時間を低減させる(時分割多重化)ことができる。さらに、膜と接触している溶液へのタンパク質ナノポアの添加による連続的な様式でのチャネルの挿入は、挿入される前に溶液中に存在するナノポアが溶液中にある時間の増加により、容器の壁へのナノポアの吸着をもたらすことが分かった。これは配列にわたって挿入されたナノポアの歩留まりを低減させる可能性がある。
【0009】
上記で詳述したような問題を克服し、本発明の態様において説明されている手法は、チャネルが挿入されたときに膜にわたって印加される電位を本質的に低減させる回路要素を用いることである。いくつかの実施形態では、これは意思決定電子機器を必要とせず、大規模配列にわたって安価に展開することができる。回路は、膜チャネルを挿入した後に膜にわたって電位差が低下するように、回路にわたって印加電位を再分配する膜電圧低減ユニットを備える。再分配の効果は、ロジック制御を必要とせずに自動的に行われる。
【0010】
本発明の範囲は特許請求の範囲に規定されている。本開示の一実施形態によれば、膜への膜チャネルの挿入を制御するための装置が提供され、装置は、
第1の液体を膜の第1の表面と接触して保持するための第1の浴と、
第2の液体を膜の第2の表面と接触して保持するための第2の浴であって、膜が、第1の液体および第2の液体を分離する、第2の浴と、
第1の液体と接触するように構成されている第1の電極と、
第2の液体と接触するように構成されている第2の電極と、
第1の液体または第2の液体から膜への膜チャネルの挿入を促進するように、第1および第2の電極を介して膜にわたって電位差を印加するように構成された駆動ユニットと、を備え、
装置は、膜と直列に接続された膜電圧低減ユニットを備え、
駆動ユニットは、膜電圧低減ユニットおよび膜にわたって駆動電圧を印加するように構成され、駆動電圧は、膜にわたって電位差を提供し、
膜電圧低減ユニットは、膜チャネルの挿入によって引き起こされる膜を通る抵抗の低減が膜電圧低減ユニットにわたる電位差を本質的に増加させ、それによって、膜にわたる電位差を低下させるように構成され、膜にわたる電位差の低下は、さらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分である。
【0011】
チャネルは、ナノポアであり得る。ナノポアは、タンパク質チャネルであり得る。
【0012】
本開示のさらなる実施形態では、膜タンパク質を膜に挿入して膜にチャネルを形成するための装置が提供され、装置は、
第1の液体を膜の第1の表面と接触して保持するための第1の浴と、
第2の液体を膜の第2の表面と接触して保持するための第2の浴であって、膜が、第1の液体および第2の液体を分離する、第2の浴と、
第1の液体と接触するように構成されている第1の電極と、
第2の液体と接触するように構成されている第2の電極と、
第1および第2の電極を介して膜にわたって電位差を印加するように構成され、電位差が、第1の液体または第2の液体から膜タンパク質の膜への挿入を促進するような、駆動ユニットと、を備え、
駆動ユニットは、膜への膜タンパク質の挿入によって引き起こされる膜を通る抵抗の低減が、駆動ユニットのいかなる論理制御もなしに駆動ユニットに膜にわたってより低い電位差を直接印加させるように構成される。
【0013】
本開示のさらに別の実施形態では、膜への膜チャネルの挿入を制御するための装置が提供され、装置は、
第1の液体を膜の第1の表面と接触して保持するための第1の浴と、
第2の液体を膜の第2の表面と接触して保持するための第2の浴であって、膜が、第1の液体および第2の液体を分離する、第2の浴と、
第1の液体と接触するように構成されている第1の電極と、
第2の液体と接触するように構成されている第2の電極と、
第1の液体または第2の液体から膜チャネルの膜への挿入を促進するように、第1および第2の電極を介して膜にわたって電位差を印加するように構成された駆動ユニットと、を備え、
装置は、膜と直列に接続された膜電圧低減ユニットを備える。
【0014】
膜チャネルの挿入は、膜と直列のその位置と組み合わされた膜電圧低減ユニットの本質的特性によって制御される。膜にわたる電位差の低下は、挿入が起こると自然に引き起こされる。これは、電位差を低下することが論理制御によって行われる先行技術の方法とは対照的であり、それは複雑および/または不便であり得る。
【0015】
膜へのチャネルの挿入は、通常、膜チャネルと膜と接触している水溶液に膜チャネルを追加することによって行われる。
【0016】
いくつかの実施形態では、装置は複数の膜を含み、各膜は第2の液体から第1の液体を分離する。第2の液体を収容するために複数の第2の浴を設けてもよく、各第2の液体は互いに分離されている。第2の液体は典型的にはそれぞれのウェル(well:井戸)に供給される。第1の液体はまた、互いに分離されているそれぞれの複数のウェル内に提供されてもよい。より典型的には、第一の液体は配列の全ての膜に共通であり、単一チャンバ中に提供される。電極を第2の液体のそれぞれに設け、共通の電極を第1の液体の中に設けてもよい。複数の第1の浴の場合には、第1の浴および第2の浴のそれぞれに電極を設けることもできる。このようにして、配列の各膜について個々のチャネルの記録を行うことができる。好適には、チャネルは、複数の膜に共通の第1の液体に加えられてもよい。装置は複数の膜を支持するように構成され、各膜は第1および第2の液体と接触してそれらを分離する。膜アレイのための好適な装置設計ならびに配列のそれぞれのウェル中に第2の溶液を提供するための適切な方法、配列を横切って複数の膜を形成するため、ならびに膜への挿入のために膜チャネルを装置に追加するための適切な方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO2014/064443、その関連する内容によって開示されている。配列にわたる膜の形成は、WO2014/064443に開示されているような段階的方法によって実施することができる。複数の膜電圧低減ユニットが設けられ、各膜電圧低減ユニットは、配列のそれぞれの膜と直列に接続されている。駆動ユニットは、膜電圧低減ユニットと異なる膜との対の全てにわたって並列に駆動電圧を印加するように構成される。
【0017】
代替的な構成では、装置は第1および第2の浴を備えてもよく、両浴は膜の配列に共通であり、各浴は電極を含む。そのような配置は、変化が電圧であるFETを使用して電圧変化を測定するときに可能であり、特定のチャネルに対して局所的である。このようにして、かついくつかの実施形態によれば、複数のチャネルを、単一の膜内に提供することができる。
【0018】
このように複数の膜電圧低減ユニットを設けることにより、複数の第2の浴に同じ駆動電圧を印加しながら、複数の第2の浴へのチャネルの挿入を同時に制御することができる。したがって、複数の独立した駆動電圧を生成することなく、複数の第2の浴にチャネルを並列に挿入することが可能であり、それによって時間を節約し、歩留まりを向上させる。
【0019】
一実施形態では、膜電圧低減ユニットは、最大抵抗まで抵抗を通して定電流を供給することが可能な電流源を備え、この抵抗で最大抵抗に達する。定電流は、事前定義されていてもよいが、代替的に、論理制御によって設定されてもよい。この実施形態では、膜にわたる電位差の低下は、膜を通る抵抗、上記最大抵抗を上回る抵抗から上記最大抵抗を下回る抵抗に低減されることによって引き起こされる。本発明者らは、この実施が特に有利な特性を提供することを見出した。膜にわたる電位差は、チャネルの挿入直後に確実に低下し、駆動電圧が最大値まで増加し続けても、安定した低い値のままである。
【0020】
本開示のさらなる実施形態によれば、膜への膜チャネルの挿入を制御する方法が提供され、該方法は、
膜を提供することであって、膜のそれぞれの第1および第2の面上で、第1および第2の液体と接触しており、かつそれらを分離している、膜を提供することと、
第1の液体または第2の液体から膜への膜チャネルの挿入を促進するように、第1および第2の電極を介して膜にわたって電位差を印加するために、駆動ユニットを使用することと、を含み、
駆動ユニットは、膜と直列に接続された膜電圧低減ユニットを備え、
駆動ユニットは、膜電圧低減ユニットおよび膜にわたって駆動電圧を印加するように構成され、駆動電圧は、膜にわたって電位差を提供し、
膜電圧低減ユニットは、膜チャネルの挿入によって引き起こされる膜を通る抵抗の低減が、膜電圧低減ユニットにわたる電位差を本質的に増加させ、それによって、膜にわたる電位差を低下させるように構成され、膜にわたる電位差の低下は、さらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分である。
【0021】
本開示のさらに別の実施形態によれば、膜タンパク質を膜に挿入して膜内にチャネルを形成する方法が提供され、該方法は、
膜を提供することであって、膜のそれぞれの第1および第2の面上で、第1および第2の液体と接触しており、かつそれらを分離している、膜を提供することと、
電位差が第1の液体または第2の液体から膜への膜タンパク質の挿入を促進するように、第1および第2の電極を介して膜にわたって電位差を印加するために、駆動ユニットを使用することと、を含み、
駆動ユニットは、膜への膜タンパク質の挿入によって引き起こされる膜を通る抵抗の低減が、駆動ユニットのいかなる論理制御もなしに駆動ユニットに膜にわたってより低い電位差を直接印加させるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照しながら、非限定的な実施例として記載され、添付の図面において、対応する参照記号は対応する部分を示し、かつ本開示のいくつかの実施形態に従う。
【0023】
【
図1】膜への膜チャネルの挿入を制御するための先行技術の装置を示す。
【
図3】一実施形態による膜への膜チャネルの挿入を制御するための装置を示す。
【
図4】
図6、8および10のシミュレーションの時間に対する駆動電圧を示すグラフである。
【
図5】膜電圧低減ユニットが電流源を備える実施形態の動作を示す等価な回路を示す。
【
図6】
図4の駆動電圧を
図5の等価な回路に印加したときの膜電圧の経時変化をシミュレーションしたグラフである。
【
図7】膜電圧低減ユニットが膜と直列の抵抗部品を備える実施形態の動作を示す等価な回路を示す。
【
図8】
図4の駆動電圧を
図7の等価な回路に印加したときの膜電圧の経時変化をシミュレーションしたグラフである。
【
図9】膜電圧低減ユニットが膜と直列のダイオードを備える実施形態の動作を示す等価な回路を示す。
【
図10】
図9の等価な回路に
図4の駆動電圧を印加したときの膜電圧の経時変化をシミュレーションしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、概して、膜への膜チャネルの挿入を制御するためのシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、膜は第1の液体を第2の液体から分離する。いくつかの実施形態において、駆動ユニットは、第1の液体に接触する第1の電極および第2の液体に接触する第2の電極を介して膜にわたって電位差を印加し、第1の液体または第2の液体から膜への膜チャネルの挿入を促進する。いくつかの実施形態では、膜と直列に接続された膜電圧低減ユニットは、膜チャネルの挿入によって引き起こされる膜を通る抵抗の低減が膜電圧低減ユニットにわたる電位差を本質的に増加させ、それによって、膜にわたる印加された電位差が低下し、場合によっては、さらなる膜チャネルの挿入の可能性を防止または低減するのに十分である。
【0025】
図3は、一実施形態による膜4への膜チャネルの挿入を制御するための装置を示す。装置は、第1の浴6を収容するハウジング2を備える。ハウジング2は、さらに4つの第2の浴8(ウェルとも称される)を含む。他の実施形態では、異なる数の第2の浴8を設けてもよい。各第2の浴8は、膜4によって封止されている。膜4は、両親媒性膜であり得る。第1の浴6は、第1の液体を保持する。第1の液体は、各膜4の第1の表面と接触する。各第2の浴8は、第2の液体を保持する。各第2の浴8内の第2の液体は、膜4の第2の表面と接触してその第2の浴8を封止している。第1の電極14は、第1の液体と接触する。第2の電極16は、各第2の液体と接触する。各第2の浴8は、それ自身の第2の電極16を有する。
【0026】
ハウジング2は、単一の第1の浴6と、関連する膜4を有する4つの第2の浴8とだけを有して示されている。他の実施形態では、さらに多くの第1の浴6および第2の浴8、ならびに対応する第1の電極14および第2の電極16を設けることができる。第2の浴の数は、1~100,000の間の任意の整数であり得る。100以上、1000以上、または10,000以上であってもよい。
【0027】
以下に記載するように、第1および第2の電極14、16を使用してチャネルの挿入を制御することができる。特定の実施形態では、チャネルが挿入された後の後の時点で、第1および第2の電極14、16はまた、チャネルとのそれらの相互作用を介して分子実体を検知するために使用され得る。
【0028】
駆動ユニット15は、第1および第2の電極14、16を介して膜4にわたって電位差(膜電圧とも称され得る)を印加するように構成される。印加膜電圧は、第1の液体6または第2の液体8から膜4への膜チャネルの挿入を促進するようなものであり得る。したがって、膜チャネル(例えば、膜タンパク質を含み得る)は、第1の液体もしくは第2の液体、またはその両方に提供される。膜電圧は、膜チャネルの挿入を促進する。明細書の導入部分で述べたように、かつ理論に束縛されることを望むものではないが、電圧は、膜4を伸ばし、薄くすることによって挿入を補助すると考えられる。挿入が起こる電圧は、膜4から膜4まで変化する。したがって、駆動ユニット15は、挿入が生じるまで膜電圧を漸進的に増加させるように構成され得る。
【0029】
ナノポアの挿入に必要な印加電位の量は、配列の膜間で異なり得る。理論に拘束されることを望むものではないが、この違いは、配列の膜間の厚さの変動に起因し、膜およびナノポアの化学的性質ならびにその幾何学的形状によって影響を受ける可能性があると考えられる。印加電圧は、典型的には、単一チャネル挿入の可能性を最大にするように大きさが段階的に変化する。例えば、開始電位が高すぎる場合、それはいくつかの膜についてさらなるチャネルの挿入を促進する可能性があり、これは印加電位が配列の他の膜にとって十分に高くない可能性があるが望ましくない。したがって、低い値の電位から始めて、より高い値に漸進的に移動することが好ましい。電位は、経時的に電位を上昇させること、または漸進的に高い値で電位の値の間をステップすることによるなど、異なる方法によって増加させることができる。増加率は線形でも非線形でもよい。選択される初期および最大駆動電圧は、膜の性質および膜チャネルに依存し、かつ適切に選択され得る。言及したように、膜チャネルを挿入するために必要とされる可能性は、配列に適用される最初の膜溶液が同じであり、かつ同じ膜チャネルが配列の膜を横切って挿入され得るという事実にもかかわらず、配列の膜にわたって変化することが観察された。したがって、膜チャネルを挿入するのに必要な電圧のいかなる変動も、おそらく、膜厚などの他の要因の変動によるものである。したがって、電圧ならびに/または初期電位および最終電位の増加速度に関するパラメータは、膜の形成プロセスによって影響を受け、決定されるであろう。例として、初期電位値は、50、75または100mVなどの0mVから150mVの間の任意の値から選択することができ、最終膜電位は、250、300、350、400、450または500mVなどの200から600mVの間の任意の値から選択することができる。膜電位の上限は、部分的には膜の安定性によって決まるであろう。例えば、脂質二重層は、いくつかの合成膜ほど堅牢ではない。同様に、初期値と最終値との間の電位の増加率もまた、膜の性質および膜チャネルに依存し、かつ、また適切に選択され得る。先行技術のコンピュータ制御方法とは対照的に、初期値と最終値との間の増加率は、1秒未満であるほどはるかに急速であり得る。初期電位と最大電位との間の増加率は、原則として10~100ms程度であり得る。実際には、増加率は、それにわたって印加される電位差の急激な変化を受けたときに、膜の性質および、それがどれほど安定しているかに依存する。先行技術では、一般的に、1工程当たり1~15秒で1~10mVの工程を使用することがあり、その場合、全プロセスは数十分かかることがある。本発明の方法および装置では、挿入が行われたことを処理装置が検出して、それに応答するのを待つ必要性が排除されたので、挿入が行われるレベルまでの駆動電圧の増加をより早く起こさせることができ、それによってスループットが向上する。
【0030】
代替的に、単一の膜電位が配列の複数の膜に印加されてもよく、すなわち、膜電位は非常に急速にまたは瞬間的により低い電位からより高い電位へと段階的に変化する。この方法は、臨界電圧を超える単一の挿入電圧を使用できるようにするために、全ての膜が十分に類似している場合に使用することができる。
【0031】
膜の挿入後、さらなる膜チャネル挿入の可能性を防止するかまたは著しく低減させるように、電圧をあるレベルまで低減する。電位が低下する程度は、膜および膜チャネルの性質に依存し、好適な値が、適切に選択され得る。電位が低下する程度は、例えば、膜チャネルを挿入するのに必要な電位の10、20、30、40、50、60または70%であり得る。チャネル挿入に必要とされる電位が配列にわたって変化し得ることを考えると、電位の低下は、膜チャネルを膜に挿入するのに必要とされる最低電位の値よりも低い値であるべきである。したがって、さらなる膜チャネルの挿入の促進を低減するために膜にわたって印加された電位差を下げることは、さらなる膜チャネルの挿入の可能性を低減する。
【0032】
所望の数の膜チャネル、例えば配列の膜中の単一の膜チャネルの挿入に続いて、例えば第1の溶液を除去し、かつ場合によっては膜チャネルを含まないさらなる溶液と交換することによって、過剰な膜チャネルを除去することができる。印加された刺激がない場合の膜チャネル挿入は、その後自動的には行われない場合があるが、それでもなお、過剰な膜チャネルの除去は、印加された刺激がない場合に、さらなる膜チャネル挿入が起こる可能性を取り除くために行われ得る。さらに、一旦膜へのチャネル挿入が起こると、典型的にはチャネルは膜内に留まり、第1および第2の溶液中に浸出する。
【0033】
いくつかの実施形態では、膜4ごとに単一の膜チャネルを設けることが望ましい。したがって、膜チャネルの挿入が起こるとすぐに、膜電圧を低下させるまたは除去することが望ましい。
【0034】
図1に概略的に示すように(
図3の特徴に対応する特徴には対応する参照符号が与えられている)、先行技術の構成では、処理ユニット50を使用して、第1の電極14と第2の電極16との間に印加される駆動電圧30のコンピュータ制御によって達成される。処理ユニット50は、コンピュータ制御を実行することを可能にする任意の既知のハードウェアおよび/またはファームウェアおよび/またはソフトウェア構成要素を備えることができる。この先行技術の構成では、処理ユニット50は、駆動電圧30を漸進的に増加させながら、第1の電極14と第2の電極16との間に(すなわち、第1の浴6、膜4および第2の浴8を通して)形成される電気回路の電気特性を監視する。膜チャネルの挿入が検出されると(例えば、第1の電極14と第2の電極16との間の電流の急激な増加によって)、処理ユニット50は、第1の電極14と第2の電極16との間に印加された駆動電圧30を直ちに減少させる(通常はゼロまで)。これは、例えば、現在選択された第2の浴8の第2の電極16を切り離すように、かつ第2の電極を浮遊させること、または駆動電圧30の代わりに、接地対接地接続することを可能にするように、スイッチングユニット(図示せず)に指示することによって行われ得る。その後、処理ユニット50は、スイッチングユニットに、駆動電圧30を異なる第2の浴8の1つに同時に接続させ、膜チャネルの挿入がその第2の浴について検出されるまで、新しい第2の浴8に印加される駆動電圧30を斬新的に増加させ始めさせ、等々、させてもよい。
【0035】
この意味で、処理ユニットによって制御されるスイッチは、電圧低減ユニットの機能を果たす。それが全て閉じているとき、駆動電圧は、膜にわたる。それが全て開いているとき、電圧は、スイッチにわたる。先行技術の構成と本発明との間の重要な違いは、先行技術は印加電圧を低減するために処理ユニットによる制御を必要とすることである。スイッチはまた、(コンピュータまたはデジタル制御を介して)スイッチを作動させるために電流源を必要とする。
【0036】
図1の実施例では、4つの膜4のそれぞれに1つの膜チャネルを挿入するために、このプロセスを4回繰り返すことができる。
【0037】
例として、単一の挿入イベントに対する駆動電圧30の変動が、
図2に概略的に示される。処理ユニット50は、挿入が検出されるまで駆動電圧30を一定の割合で斬新的に増加させる。示されている実施例では、挿入イベントは、矢印40で発生する。破線の曲線は、挿入が行われなかった場合に、駆動電圧30がどのように継続したであろうかを示す。
【0038】
図1および2を参照して上で記載した手法は、同じ膜内への複数の膜チャネル挿入を防止または低減することができるが、駆動電圧の漸進的増加を繰り返すという要件は、時間がかかり、かつ歩留まりを低減させ得る。さらに、コンピュータ制御を実施することは、複雑かつ不便である。
【0039】
図3が一実施例である一実施形態では、装置は、膜4と直列に接続された膜電圧低減ユニット20をさらに備える。
図3の特定の実施例では、4つの膜電圧低減ユニット20が設けられ、それぞれが対応する異なる膜4と直列に接続されている。
【0040】
駆動ユニット15は、膜電圧低減ユニット20および膜4にわたって駆動電圧30を印加するように構成されている。示された実施例では、駆動電圧30は、第1の電極14から第1の電極14とは反対側の膜電圧低減ユニット20側を通って印加される(すなわち、電圧は、第1の浴6、膜4、第2の浴8、第2の電極16、および膜電圧低減ユニット20を通って第1の電極14から電気経路に沿って増減する)。
【0041】
膜電圧低減ユニット20は、膜4に膜チャネルを本質的に(すなわち、外部のコンピュータ制御なしで)挿入することによって引き起こされる膜4を通る抵抗の低減が膜電圧低減ユニット20にわたる電位差を増大させるように構成される。膜電圧低減ユニット20にわたる電位差の増加は、膜4にわたる電位差を低下させる。これは、第1電極14から膜電圧低減ユニット20の第1電極14と反対側への直列回路が分圧器として機能するためである。膜電圧低減ユニット20は、膜4にわたる電位差の低下がさらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分であるように構成される。
【0042】
したがって、膜にわたって適用された膜を低減させ、その後の膜チャネル挿入を制御することは、膜4と直列の位置と組み合わされた膜電圧低減ユニット20の固有の特性によって制御される。
【0043】
膜電圧低減ユニットは、膜にわたる電位差の低下が論理制御なしに引き起こされるように構成される。膜にわたって印加された電位を下げるために論理制御は必要とされない。論理制御によって意味されることの実施例は、コンピュータ、デジタルまたは手動制御である。印加電位を下げるためにFPGAを使用することは、論理制御の一実施例である。
【0044】
対応する複数の膜4のそれぞれに1つずつ、複数の膜電圧低減ユニット20を設けることで、同じ駆動電圧30を全ての第2の浴に印加しながら、同時に複数の第2の浴へのチャネルの挿入を制御することができる。
図1および2を参照して上述したタイプの先行技術の構成と比較して、逐次的に(次々に)漸進的な電圧の上昇を印加する必要はもはやない。このようにして膜を平行に挿入することができ、時間を節約し、かつ歩留まりを改善する。さらに、挿入が行われたことを処理ユニット50が検出するのを待つ必要がもはやないので、駆動電圧30の漸進的増加をより短い期間内で行わせることができ、さらに速度を上げることができる。特定の実施形態では、(膜挿入が起こると予想されるレベルを超える電圧を直ちに印加することによって)駆動電圧30の漸進的増加を省くことさえできる。膜チャネルが挿入されるとすぐに、膜電圧はさらなる挿入を促進するには低すぎるレベルに減少する。この手法は、実施を簡略化するが、同じ第2の浴に複数のチャネルを挿入する危険性を増加させる可能性がある。最初に印加された電圧が挿入に必要なものよりも著しく高い可能性があるため、複数チャネルの挿入の危険性が高まる。
【0045】
図3の実施形態は、複数の第2の浴8が設けられている実施例であり、各第2の浴8は異なる膜4を支持する。しかしながら、各第2の浴8が異なる膜4を有することは必須ではない。他の実施形態では、各第2の浴8は、同じ膜4の異なる部分によって(すなわち、膜が複数の異なる第2の浴8への入口を覆って広がるように)封止されてもよい。このような複数の第2の浴8が設けられている場合、各膜電圧低減ユニット20は、異なる膜(各第2の浴8が異なる膜4で封止されている場合)または同じ膜4の異なる部分(膜4が複数の異なる第2浴8への入口を覆う場合)と直列に接続される。このタイプの実施形態では、駆動ユニット15は、膜電圧低減ユニット20と膜4との対の全てにわたって、または膜電圧低減ユニット20と同じ膜4の異なる部分(該当する場合)との対の全てにわたって、対応する駆動電圧30を並列に印加するように構成されることができる。
【0046】
膜電圧低減ユニット20は、様々な方法で実施することができる。
図4~10を参照して、3つの実施例の実施を以下に記載する。
図5、7および9は、3つの実施のそれぞれに対する等価な回路を示す。
図6、8および10は、
図4の漸進的に増加する駆動電圧が
図5、7および9の各等価な回路に印加されたときに膜電圧32が時間と共にどのように変化するかのシミュレーションの結果を示す。いずれの場合も、チャネル挿入は矢印40で示されている。
【0047】
図4の駆動電圧30の漸進的増加は、様々な異なる方法で構成することができる。示されたシミュレーションのために、駆動電圧30はゼロから450mVに増加された。チャネル挿入電圧は、280mVに設定した。チャネル(ポア)Rpの抵抗は、0.67ギガオームに設定された。
【0048】
図5および6の実施形態では、膜電圧低減ユニット20は電流源を含む。電流源は、最大抵抗までの抵抗を通して定電流を供給することができる。そのような電流源は当技術分野において既知であり、様々な形態で提供することができる。この実施形態では、膜にわたる電位差の低下は、膜を通る抵抗が上記最大抵抗より上の抵抗から上記最大抵抗より下の抵抗に低減することによって引き起こされる。この動作は、
図5の等価な回路を参照することで理解できる。この回路において、Cmは無傷の膜4の静電容量を表し、Rmは無傷の膜4の抵抗を表し、Rpは挿入された膜チャネルを通る抵抗を表す。挿入された膜チャネルが常に存在するわけではないことを示すために、この分岐にスイッチが示されている。RpはRmよりはるかに低いので、膜チャネルがRpを挿入するとRm(およびCm)を効果的に短絡させる。Rpブランチ内のスイッチが閉じられている(チャネルが挿入された)とき、Cm、RmおよびRpの並列配置の抵抗はRpによって支配される(すなわち、Rpにほぼ等しい)。Rp分岐内のスイッチが開いている(チャネルが挿入されていない)とき、Cm、RmおよびRpの並列構成の抵抗はRmによって支配される(すなわち、Rmにほぼ等しい)。
【0049】
本実施形態では、電流源は、グランドと駆動電圧30との間の点Xにおける電位を変化させることによって定電流を印加することができる。この実施形態では、第1の電極14は接地されているので、膜にわたる電位差(第1の浴6および第2の浴8を無視する)はほぼXに等しい。したがって、駆動電圧30は、供給源が膜4に印加することができる最大電位差である。駆動電圧30が所定の定電流を流すのに不十分である場合、電流源は、Xにおける電圧を可能な限りXに近づけるように駆動し、これは所定の定電流を試行して達成するためにできる最大の電流源である。電流源は、Rpブランチ内のスイッチが開いているときに駆動電圧30が所定の定電流を流すのに不十分となるように(所定の定電流を適切に選択することによって)構成される。したがって、Rmは、電流源がそれを介して定電流を駆動することができる最大抵抗を上回る。一方、電流源は、Rpが最大抵抗を下回るように構成されている。したがって、挿入が起こると、電流源は今や膜4を通して(ほとんど新しく挿入されたチャネルを通して)定電流を駆動することができる。さらに、これは、駆動電圧30よりはるかに低い電圧をXに印加し、それによって膜4にわたる電位差を下げて、さらなる膜チャネルの挿入を防止または低減することによって達成することができる。この機能は、標準的な方法で機能する標準の電流源を使用して実現される。電流源がチャネルの挿入に対して望み通りに応答するためには、電流源のコンピュータ制御は必要ない。好適な電流源は、シリコン内に容易に実装することができ、それによって製造を容易にする。
【0050】
図6は、
図5の実施形態を使用して得ることができる動作のタイプを示す。膜電圧32は、チャネルの挿入直後に減少し(矢印40)、駆動電圧30が増加し続けている間でも低く安定したままである。駆動電圧30がその最大値に達したとしても、膜電圧32は点40での挿入以来ほとんど変化していない。したがって、膜電圧32がさらなるチャネル挿入を促進する危険性は非常に低い。示された特定のシミュレーションでは、電流源は100pAを供給するように設定されたので、挿入後の膜電圧32は約67mV(100pA×0.67ギガオーム)であった。
【0051】
図7および8の実施形態では、膜電圧低減ユニット20は、膜4と直列の抵抗部品を備える。抵抗成分の抵抗Rlimは、Rp分岐が開いている(チャネルが挿入されていない)とき、膜電圧が駆動電圧30の十分大きな割合となり、チャネル挿入が効果的に促進されるように選択され、しかしながら、閉じている(チャネルが挿入された)場合、抵抗Rlimは、膜電圧がさらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分に低いレベルまで減少するのに十分大きい。一般に、Rlimは高く、典型的には約1ギガオームを超える必要があるだろう。
【0052】
図8は、
図7の実施形態を使用して得ることができる動作のタイプを示す。見て分かるように、膜電圧32は、チャネルの挿入直後に減少し、(ゆっくりと増加するが)駆動電圧30が上昇し続ける間は比較的低いままである。しかしながら、駆動電圧30がその最大値に達したときでも、膜電圧32はチャネル挿入を著しく促進するレベルまでは増加していない。
【0053】
図9および10の実施形態では、膜電圧低減ユニット20は、膜4と直列のダイオードを備える。ダイオードの特性は、Rp分岐が開いているとき(チャネルが挿入されていない)、膜電圧が駆動電圧30の十分大きな割合となり、チャネル挿入が効果的に促進されるように選択され、しかしながら、Rp分岐が閉じている(チャネルが挿入された)場合、膜電圧が十分に減少して、膜電圧がさらなる膜チャネルの挿入の促進を防止または低減するのに十分低いレベルまで減少する。
【0054】
図10は、
図9の実施形態を使用して得ることができる動作のタイプを示す。膜電圧32は、チャネルの挿入直後に減少し、駆動電圧30が上昇し続ける間、かなりの期間にわたって比較的低いままである。このシミュレーションで使用された特定のダイオード特性に対して、駆動電圧30がその最大値に達すると、膜電圧32はチャネル挿入が起こった電圧に匹敵するレベルまで増加した(点40)。しかしながら、この実施形態では、駆動電圧30の最大値を低減することによって、さらなる膜挿入の危険性を低減することができる。駆動電圧30の最大値を低減することは、チャネルが首尾よく挿入されている膜の割合を低減することができるが、2つ以上のチャネルが挿入されている膜の割合も低減するであろう。
図10の動作は明らかに
図6および8の動作より望ましくないが、それにもかかわらず
図9の実施形態は製造の容易さのためにある状況においては望ましい場合がある。ダイオードは、容易に入手可能であり、コンパクトな形式で実装することができ(それらはシリコン内に容易に構築されるか,またはPCB上に組み立てられる)、他の目的を意図してはいるが、本文脈における使用のために適合または利用することができる回路に存在することができる。
図9および10の実施形態は、
図7の抵抗器Rlimに必要とされる非常に高い抵抗を提供するよりも、シリコンまたはPCB上に好適なダイオードを提供することが一般的に容易であるので、
図7および8の実施形態よりも実施が容易であり得る。
【0055】
図4~10の実施形態に示すように、駆動ユニット15は、駆動電圧30が所定の最大駆動電圧まで斬新的に増加するように構成されてもよい。この動作は、ハードウェアによって制御することができ、または制御を処理ユニット50によって適用することができる(
図3に示すように)。しかしながら、上で記載したように、処理ユニット50が関与した場合、膜電圧低減ユニット20の本質的な特性のために、チャネルの挿入が生じたときに処理ユニット50は膜にわたる電位差の低下を引き起こす必要はない。
【0056】
一実施形態では、駆動ユニット15は、駆動電圧30が5秒未満で所定の最大駆動電圧まで漸進的に増加するように構成される。上述のように、この上昇は、コンピュータ制御のための時間を提供する必要がないので、先行技術の構成よりも迅速に適用することができる。膜電圧低減ユニット20の本質的特性により、(過度に高価なハードウェアを設けることなく)該ユニットは、コンピュータが通常可能であるよりも迅速にチャネル挿入に応答することが可能になる。
【0057】
明細書の導入部分で述べたように、挿入された膜チャネル(またはナノポア)を使用して検知を実行することができる。さらなる例示的な詳細は以下に与えられる。
【0058】
一実施形態では、ナノポアは、分析物の特性を決定するために分子実体検知装置で使用される。決定される分析物は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはポリヌクレオチドなどのポリマーであり得る。ポリヌクレオチドはまたは核酸は、任意のヌクレオチドの任意の組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、天然であっても人工であってもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、酸化またはメチル化されてもよい。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核酸であり得る。ポリヌクレオチドは、DNAの1本の鎖にハイブリダイズされたRNAの1本の鎖を含み得る。ポリヌクレオチドは、当技術分野において既知の任意の合成核酸であり得る。決定される分析物は、アプタマーであり得る。分子実体はポアを移動させ、分子実体とポアとの間の相互作用を測定することができる。
【0059】
チャネルを通る分析物の移動は、ポリヌクレオチド処理酵素などのモータータンパク質によって補助され得る。好ましい酵素は、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、およびトポイソメラーゼ、例えばジャイレースである。本発明において、任意のヘリカーゼを使用することができる。ヘリカーゼは、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、例えばTraIヘリカーゼまたはTrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼ、またはDdaヘリカーゼであり得るか、またはそれらに由来する。ヘリカーゼは、国際出願第PCT/GB2012/052579号(WO2013/057495として公開)、第PCT/GB2012/053274号(WO2013/098562として公開)、第PCT/GB2012/053273号(WO2013098561として公開)、第PCT/GB2013/051925号(WO2014/013260として公開)、第PCT/GB2013/051924号(WO2014/013259として公開)、第PCT/GB2013/051928号(WO2014/013262として公開)、および第PCT/GB2014/052736号に開示されるヘリカーゼ、修飾ヘリカーゼ、またはヘリカーゼ構造体のいずれかであり得る。代替的に、ポアを通る分析物の移動は、国際特許出願PCTTT/US2008/004467に開示されているように、電圧制御によっても補助され得る。
【0060】
決定されるべき特性は、ポリマーの配列特性であり得る。配列特性の決定は、国際特許出願PCT/GB2012/052343およびPCT/GB2013/050381に開示されている方法によって実行され得る。
【0061】
膜チャネルは、天然に存在するポア、天然に存在するポアから誘導された変異ポア、または合成ポアであり得る、ナノポアであり得る。膜チャネルは、典型的には0.5nmから25nmの間のチャネル幅を有し、その長さに沿ってチャネル幅が異なり得る。ポアは、ホモオリゴマー、すなわち同一のモノマーから誘導されてもよい。ポアは、ヘテロオリゴマー、すなわち少なくとも1つのモノマーが他のモノマーとは異なる場合がある。本発明に従って使用するための膜貫通タンパク質ポアは、βバレルポアまたはαヘリックスバンドルポアにから誘導され得る。好適なポアとしては、α溶血素、炭疽毒素、ならびに、ロイコシジン、細菌の外膜タンパク質/マイコバクテリウムスメグマティスポーリン(Msp)のようなポーリン、例えばMspA、MspB、MspCまたはMspD、CsgG、外膜ポーリンF(OmpF)、外膜ポーリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼAおよびナイセリアオートトランスポーターリポタンパク質(NalP)、ならびに、ライセニン、WZAおよびClyA毒素、Sp1、リセニンまたはFraCのような他のポアが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
CsgGから誘導された好適なポアは、WO2016/034591に開示されている。リセニンから誘導された好適なポアは、WO2013/153359に開示されている。ポアは、参照により本明細書に組み込まれるLangecker et al.,Science,2012;338:932-936に記載されているように、DNA折り紙ポアであり得る。
【0063】
膜は、両親媒性(両親媒性膜とも称される)であり得る。両親媒性膜は、親水および親油特性の両方を有する、リン脂質などの両親媒性分子から形成された膜である。両親媒性膜は、一分子膜または二分子膜であり得る。両親媒性膜は、Gonzalez-Perez et al.,Langmuir,2009,25,10447-10450および米国第6,723,814号に開示されているようなコブロックポリマーであってもよく、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。ポリマーは、PMOXA-PDMS-PMOXAトリブロックコポリマーであり得る。
【0064】
測定方法は、検体がポアに対して動くときにポアを通過する電流を測定することを含み得る。膜貫通チャネルポアを通るイオン電流を測定するために好適な条件は、当該技術分野で既知である。方法は、典型的には、膜およびポアにわたって電圧が印加された状態で実施される。使用される電圧は、典型的には、+5V~-5V、例えば+4V~-4V、+3V~-3V、または+2V~-2Vである。使用される電圧は、好ましくは、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-100mV、-50mV、-20mV、および0mVから選択される下限と、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、および+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲内である。使用される電圧は、より好ましくは、100mV~240mVの範囲内、最も好ましくは、120mV~220mVの範囲内である。増加した印加電位を使用することによって、ポアごとに異なるヌクレオチド間の識別を増加させることが可能である。
【0065】
代替的に、測定は、Heron al.,J.Am.Chem.Soc.,2009,131(5),1652-1653によって開示されているようなチャネルを通るイオン流を示す蛍光測定、またはFETを使用した膜にわたる電圧の測定であり得る。
【0066】
方法は、典型的には、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン塩、例えば塩化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩などの任意の電荷担体の存在下で実施される。液体は、典型的には水性であり、イオンを含有する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)、またはフェロシアン化カリウムとフェロシアン化カリウムとの混合物が、典型的に使用される。電荷担体は、膜にわたって不斉であり得る。例えば、電荷担体の種類および/または濃度は、膜の各側で異なり得る。
【0067】
塩濃度は、飽和であり得る。塩濃度は、3M以下であり得、典型的には0.1~2.5Mである。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比をもたらし、通常の電流変動のバックグラウンドに対して、ヌクレオチドの存在を示す電流の同定を可能にする。
【0068】
方法は、典型的には、緩衝液の存在下で実施される。上記に論じられる例示的な装置において、緩衝液は、チャンバ内の水溶液中に存在する。任意の緩衝液を使用することができる。典型的には、緩衝液は、リン酸緩衝液である。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態を本明細書で記載および示してきたが、当業者は、機能を実行するため、および/または結果を得るため、および/または1つもしくは複数のうちの1つもしくは複数本明細書に記載された利点、ならびにそのような変形形態および/または修正形態のそれぞれは、本開示の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載された全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本開示の教示が使用されている特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載された開示の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、または日常的な実験を超えないことを使用して確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は実施例としてのみ提示されており、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明は具体的に記載および特許請求されている以外にも実施され得ることを理解されたい。本発明は、本明細書に記載された各個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法に関する。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が互いに矛盾しない場合、そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法の2つ以上の任意の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる
【0070】
本明細書および特許請求の範囲で使用された不定冠詞「a」および「an」は、そうでないことが明確に示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0071】
本明細書および特許請求の範囲で使用された「および/または」という句は、そのように結合された要素、すなわち場合によっては接続的に存在し、他の場合には非接続的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味する。そうでないことが明確に示されていない限り、具体的に特定された要素に関連するか無関係であるかにかかわらず、「および/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素が任意に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「含む」などの開放型言語と共に使用されたときの「Aおよび/またはB」への言及は、1つの実施形態では、BなしのA(任意選択でB以外の他の要素を含む)、別の実施形態では、AなしのB(任意選択でA以外の他の要素を含む)。さらに別の実施形態では、AとBの両方(任意選択で他の要素を含む)などを指すことができる。
【0072】
本明細書および特許請求の範囲で使用されたように、「または」は、上で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離するとき、「または」または「および/または」は包括的、すなわち、少なくとも1つの、しかし複数の要素のリストの包含も含むものとして解釈されるものとし、および、任意に、リストに含まれていない追加の項目もある。明確に逆が指示されている用語のみが、例えば「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用された場合は「からなる」が、多数またはリストされた要素のうち正確に1つの要素のみの包含を示す。一般に、本明細書において、「または」という用語は、その前に排他性の用語、例えば「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの正確に1つ」などが先行する場合には、排他的な選択肢(すなわち、「両方ではなくどちらか一方」)としてのみ解釈されるべきである。特許請求の範囲で用いる場合の「本質的に~からなる」は、特許法の分野で用いられる通常の意味を有するものとする。
【0073】
本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「少なくとも一つ」という句は、1または2以上の要素のリストを参照する場合、要素のリスト中の任意の1または2以上の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであり、必ずしも、要素リスト内に具体的にリストされた全ての要素の各々を少なくとも1つ含む必要はなく、要素リスト中の要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義はまた、「少なくとも一つ」という句が言及する要素リスト中で具体的に同定されている要素以外に、具体的に同定された要素と関連するか関連しないかに関わらず、要素が任意に存在し得ることを許容する。しがたって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または等価に「AまたはBの少なくとも1つ」、または等価に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)とは、1つの実施形態においては、少なくとも1つの、および任意に2つ以上のAを含み、Bは存在しないこと(および任意にB以外の要素を含むこと)であり、別の実施形態においては、少なくとも1つの、および任意に2つ以上のBを含み、Aは存在しないこと(および任意にA以外の要素を含むこと)、さらに別の実施形態においては、少なくとも1つの、および任意に2つ以上のAと、少なくとも1つの、および任意に2つ以上のBの両方を含むこと(および任意に別の要素を含むこと)を指し得る。
【0074】
特許請求の範囲、および上記の明細書において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「運搬する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などの全ての移行句は、開放型であると理解されるべきであり、すなわち、含むが、それに限定されないことを意味する。「からなる」および「から本質的になる」という移行句だけが、それぞれ、米国特許庁の特許審査手続のセクション2111.03に記載されているように、閉鎖型または半閉鎖型の移行句であるものとする。
【0075】
クレーム要素を変更するためのクレームにおける「第1」、「第2」、「第3」などの序数の用語の使用は、それ自体では、あるクレーム要素の優先度、優先順位、順序方法の動作が実行される順序であるが、クレーム要素を区別するために、特定の名前を持つ1つのクレーム要素と同じ名前を持つ別の要素(ただし序数用語の使用)を区別するための標識として使用される。
【0076】
請求項または明細書において定義された特徴は、任意の組み合わせで一緒に使用されてもよい。