(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/40 20060101AFI20230328BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230328BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230328BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20230328BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20230328BHJP
【FI】
A61K36/40
A23L33/105
A61P27/02
A61K127:00
A61K135:00
(21)【出願番号】P 2021532303
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 KR2019017206
(87)【国際公開番号】W WO2020116996
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0157405
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520283325
【氏名又は名称】全北大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL COOPERATION FOUNDATION CHONBUK NATIONAL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ヒョン
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1849301(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0123152(KR,A)
【文献】Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine,2013年, vol.2013, Article ID 131306,p.1-13
【文献】あたらしい眼科,2008年, Vol.25, No.12,p.1685-1687
【文献】眼科グラフィック,2015年,Vol.4, No.2,p.148-155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/40
A23L 33/105
A61P 27/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~40%エタノール(w/w)水溶液を用いた抽出によりアオキ抽出物を得る
ことを含む、
アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物
の製造方法。
【請求項2】
前記黄斑変性は、加齢性黄班変性である、請求項1に記載の黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物
の製造方法。
【請求項3】
前記アオキ抽出物は、アオキの葉、茎またはその混合物を抽出した抽出物である、請求項1に記載の黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物
の製造方法。
【請求項4】
20~40%エタノール(w/w)水溶液を用いた抽出によりアオキ抽出物を得る
ことを含む、
アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物
の製造方法。
【請求項5】
前記黄斑変性は、加齢性黄班変性である、請求項4に記載の黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物
の製造方法。
【請求項6】
前記アオキ抽出物は、アオキの葉、茎またはその混合物を抽出した抽出物である、請求項4に記載の黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年12月7日付の大韓民国特許出願第10-2018-0157405を優先権として主張し、前記明細書の全体は、本出願の参考文献である。本発明は、アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
目の内側網膜の中心部に位置した神経組織を黄斑とするが、視細胞のうち、円錐細胞が密集されており、物体の像が結ばれる所も黄斑の中心なので、視力に非常に重要な役割を担当している。視力とは、対象の存在と形態とを認識する能力を言うが、物体の像が黄斑の中心窩に結ばれる時、最も鋭敏であり(中心視力)、網膜周辺(周辺視力)に行くほど低下する。老化、遺伝的な要因、毒性、炎症などによって黄斑部の変形が起こるか、機能が落ちれば、視力が減少し、激しい場合、視力を完全に失うこともあるが、黄斑変性とは、視力に重要な部位である黄斑部位に損傷が生じる疾患を言う。黄斑変性は、大きく乾性及び湿性黄斑変性に分けられ、網膜にドルーゼン(老廃物が黄斑部に積もる状態)や網膜色素上皮の萎縮のような病変が生じた場合を乾性黄斑変性とし、よくみられる形態であって、年齢関連黄斑変性のあらゆる症例の約90%を占めており、通常、激しい視力喪失を誘発しないが、湿性形態に発展することができるために、定期的な経過観察と予防とが重要である。湿性黄斑変性とは、全体黄斑変性の約10%を占め、網膜下に脈絡膜新生血管が育って生じる疾患を言う。このような新生血管は、我が目の網膜中で特に重要な黄斑部に滲出物、出血などを起こして、中心視力に影響を与え、激しい場合、失明をもたらしうる。黄斑変性と関連して多様な治療法が開発されているが、症状の進行を抑制する根本的な治療は不可であり、治療よりは予防がさらに必要な実情である。例えば、特許文献1には、クロマメノキ抽出物またはクロマメノキ分画物を有効成分として含有する黄斑変性症の治療、予防または改善用組成物が開示されており、特許文献2には、ジンセノサイドRg1による網膜再生を通じた目の機能低下及び黄斑変性疾患の予防及び治療用組成物が開示されている。
【0003】
一方、アオキ(Aucuba japonica)は、大韓民国の南海及び済州一帯で育つガリア科闊葉灌木であって、主に暖かい産地で庭園樹として育ち、温帯照葉樹林を成す代表的な種類であって、大韓民国の南部、特に、鬱陵島地域に分布している。アオキの果実は、美しくて観賞用として人気があり、葉と樹皮は、薬用として使用するが、生薬名を桃葉珊瑚、天脚板あるいは青木と言う。アオキは、伝統的に神経痛や痛風性関節炎のような炎症の治療に使われ、これにより、本発明者らは、天然物で黄斑変性の予防及び治療用組成物を研究しているうちに、アオキ熱水抽出物及びエタノール抽出物が、乾性黄斑変性の原因物質であるリポフスチン(lipofuscin)の光酸化(photo-oxidation)を抑制し、特に、エタノール抽出物が熱水抽出物よりもリポフスチンの光酸化を効果的に抑制することを確認し、アオキ抽出物を用いて動物実験した結果、アオキ抽出物が、乾性黄斑変性で表われる網膜視神経細胞の損傷を抑制し、湿性黄斑変性で表われる脈絡膜新生血管の生成を抑制することができるということを確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】大韓民国公開特許番号第10-2014-0045263号
【文献】大韓民国公開特許番号第10-2014-0045263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の問題を解決するために案出されたものであって、本発明者らは、天然物で黄斑変性の予防及び治療用組成物を研究しているうちに、アオキ熱水抽出物及びエタノール抽出物が、乾性黄斑変性の原因物質であるリポフスチンの光酸化を抑制し、特に、エタノール抽出物が熱水抽出物よりもリポフスチンの光酸化を効果的に抑制することを確認し、アオキ抽出物を用いて動物実験した結果、アオキ抽出物が、乾性黄斑変性で表われる網膜視神経細胞の損傷を抑制し、湿性黄斑変性で表われる脈絡膜新生血管の生成を抑制することができるということを確認して、本発明を完成した。
【0006】
本発明の目的は、アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物を提供するところにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物を提供することができる。
【0009】
前記黄斑変性は、加齢性黄班変性である。
【0010】
前記アオキ抽出物は、アオキの葉、茎またはその混合物を抽出したものである。
【0011】
前記アオキ抽出物は、水、炭素数1~4の低級アルコールまたはその混合溶媒として抽出される。
【0012】
前記アオキ抽出物は、20~40%エタノール(w/w)水溶液として抽出される。
【0013】
本発明は、アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物を提供することができる。
【0014】
前記黄斑変性は、加齢性黄班変性である。
【0015】
前記アオキ抽出は、アオキの葉、茎またはその混合物を抽出したものである。
【0016】
前記アオキ抽出物は、水、炭素数1~4の低級アルコールまたはその混合溶媒として抽出される。
【0017】
前記アオキ抽出物は、20~40%エタノール(w/w)水溶液として抽出される。
【0018】
本発明は、アオキ抽出物をそれを必要とする個体に薬学的に有効な量で投与する段階を含む黄斑変性の治療方法を提供することができる。
【0019】
本発明は、アオキ抽出物を黄斑変性治療用組成物に使用するための用途を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアオキ熱水抽出物及びエタノール抽出物は、乾性黄斑変性の原因物質であるリポフスチンの光酸化を抑制し、特に、エタノール抽出物が熱水抽出物よりもリポフスチンの光酸化を効果的に抑制する。さらに、アオキ抽出物を用いて動物実験した結果、アオキ抽出物が、乾性黄斑変性で表われる網膜視神経細胞の損傷を抑制し、湿性黄斑変性で表われる脈絡膜新生血管の生成を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のアオキエタノール抽出物及びアオキ抽出物のHPLC分析の結果である。
【
図2】本発明のアオキエタノール抽出物及びアオキ抽出物のリポフスチン(A2E)の光酸化の抑制効果を確認した結果である。
【
図3】MNUで誘導する視神経消失動物モデルにAJEをそれぞれ100、250mg/kg/dayの濃度で1週間経口投与した後、視神経細胞の消失による外側網膜層(outer nuclear layer)の厚さを測定した組織病理学的結果である。
【
図4】MNUで誘導する乾性黄斑変性動物モデルにAJEをそれぞれ100及び250mg/kg/dayの濃度で1週間経口投与した後、網膜電位図(ERG)を測定した結果である。
【
図5】ダイオードレーザ(diode laser)を用いて誘導した湿性黄斑変性動物モデルで、AJEをそれぞれ100及び250mg/kg/dayの濃度で1週間経口投与した後、CNV(脈絡膜新生血管)の形成を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0023】
本発明者らは、天然物で黄斑変性の予防及び治療用組成物を研究しているうちに、アオキ熱水抽出物及びエタノール抽出物が、乾性黄斑変性の原因物質であるリポフスチン(A2E)の光酸化を抑制し(
図2)、特に、エタノール抽出物が熱水抽出物よりもリポフスチン(A2E)の光酸化を効果的に抑制することを確認し、アオキエタノール抽出物を用いて動物実験した結果、アオキエタノール抽出物が網膜視神経細胞の損傷を抑制し(
図3及び
図4)、湿性黄斑変性で表われる脈絡膜新生血管の生成を抑制することができるということ(
図5)を確認して、本発明を完成した。
【0024】
本発明の目的は、アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物を提供するところにある。
【0025】
「アオキ」は、双子葉植物繖形花目ミズキ科の常緑灌木一種を意味するものであって、大韓民国の南部、特に、鬱陵島地域に主に分布している。他の言葉で、桃葉珊瑚、天脚板あるいは青木とも呼ばれることもある。
【0026】
黄斑変性症の発生要因及びその進行に対して現在まで知られたところによれば、黄斑変性症の最も大きな危険因子は、体内で分解されないので、年齢増加によって網膜色素上皮に蓄積されるA2E(pyridnium bis-retinoid)である。前記黄斑変性症は、老化による黄斑変性症である。
【0027】
黄斑変性は、大きく乾性及び湿性黄斑変性に分けられ、網膜にドルーゼン(老廃物が黄斑部に積もる状態)や網膜色素上皮の萎縮のような病変が生じた場合を乾性黄斑変性とし、網膜下に脈絡膜新生血管が育って生じる疾患を湿性黄斑変性とする。本発明は、N-methyl-N-nitrosourea(MNU、Sigma、USA)を用いて乾性黄斑変性を誘導した動物モデルにアオキ抽出物を処理した結果、神経細胞の消失による外側網膜層の厚さの減少を濃度依存的に抑制し、a波(a-wave)及びb波(b-wave)の神経伝導の抑制を改善し、視細胞の活性減少を抑制することを確認した(
図3及び
図4)。また、ダイオードレーザを用いて湿性黄斑変性を誘導した動物モデルにアオキ抽出物を処理した結果、濃度依存的にCNV(choroidal neovascularization;脈絡膜新生血管)の形成を抑制した。したがって、アオキ抽出物は、乾性または湿性黄斑変性にいずれも効果的であることを確認した(
図5)。
【0028】
前記抽出物は、前記アオキの地上部の全体、その一部、またはこれらから由来した材料から溶媒によって抽出された抽出物である。前記一部は、アオキの茎、葉、花、花びらまたは種実であり、最も望ましくは、葉または茎である。抽出に使われた前記アオキの全体、その一部、またはこれらから由来した材料は、粉砕または細切りされるか、適当に乾燥されたものである。
【0029】
前記アオキ抽出物は、水、炭素数1~4の低級アルコールまたはその混合溶媒として抽出され、望ましくは、水またはエタノール水溶液であり、最も望ましくは、エタノール水溶液である。
【0030】
前記エタノールは、20~40%エタノール(w/w)水溶液であり、望ましくは、25~35%エタノール(w/w)水溶液であり、最も望ましくは、35%エタノール(w/w)水溶液である。
【0031】
前記抽出は、加温された液体抽出、加圧された液体抽出(pressurized liquid extraction:PLE)、超音波支援抽出(microwave assisted extraction:MAE)、亜臨界抽出(subcritical extraction:SE)、またはこれらの組み合わせによって行われる。前記亜臨界抽出は、亜臨界水抽出(subcritical water extraction:SWE)である。亜臨界水抽出は、超加熱された水抽出(superheated water extraction)または加圧された熱水抽出(pressurized hot water extraction:PHWE)とも言う。前記加温された液体抽出は、還流抽出である。
【0032】
前記抽出は、4~70℃、例えば、4~50℃、4~40℃、4~30℃、10~70℃、15~70℃、20~70℃、4~50℃、10~50℃、4~40℃、4~30℃、10~40℃、10~35℃、または10~30℃で行うものである。前記抽出が加温された抽出である場合、抽出に使われる溶媒が、沸き温度または植物体から所望の成分が抽出される温度で行うものであり、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、120℃以上、140℃以上、160℃以上、または200℃以上の温度で行うものであり、具体例を挙げれば、水を溶媒として用いて90~120℃の温度で行うものである。前記抽出に必要な時間は、選択された温度によって変わりうるが、1時間~2ヶ月、例えば、1時間~1ヶ月、1時間~15日、1時間~10日、1時間~5日、1時間~3日、1時間~2日、1時間~1日、5時間~1ヶ月、5時間~15日、5時間~10日、5時間~5日、5時間~3日、5時間~2日、5時間~1日、10時間~1ヶ月、10時間~15日、10時間~10日、10時間~5日、10時間~3日、または10時間~2日である。前記抽出は、前記溶媒中にアオキの地上部の全体、その一部、種実、またはこれらから由来した材料を混合し、一定時間放置するものを含みうる。前記放置は、適当な撹拌を含みうる。前記抽出は、1回以上、例えば、1~5回反復される。
【0033】
前記抽出は、植物体残余物及び抽出液を濾過などの知られた方法によって分離する過程をさらに含みうる。前記抽出は、また得られた抽出液から減圧濃縮のような知られた方法によって溶媒を除去するものを含みうる。前記抽出は、また得られた抽出物を窒素乾燥または凍結乾燥のような乾燥によって乾燥抽出物を製造するものを含みうる。前記抽出物は、乾燥された以後、必要に応じて適切な溶媒で再溶媒化される。
【0034】
前記組成物は、組成物総重量に対して0.001~80重量%、例えば、0.01~60重量%、0.01~40重量%、0.01~30重量%、0.01~20重量%、0.01~10重量%、0.01~5重量%、0.05~60重量%、0.05~40重量%、0.05~30重量%、0.05~20重量%、0.05~10重量%、0.05~5重量%、0.1~60重量%、0.1~40重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~10重量%、または0.1~5重量%のアオキ抽出物を含みうる。
【0035】
前記組成物は、その用途によって、前記抽出物を有効な量、または有効成分として含みうる。前記有効な量は、個体によって適切に選択することができる。疾患ないし状態の重症度、個体の年齢、体重、健康、性別、個体の抽出物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、投与期間、前記組成物と配合または同時使われる他の組成物を含んだ要素及びその他の生理ないし医学分野によく知られた要素によって決定される。
【0036】
本発明は、また、アオキ抽出物を含む黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物を提供することができる。
【0037】
前記組成物が、健康機能食品用組成物である場合、当該技術分野に公知されている通常の健康機能食品の剤型で製剤化される。前記健康機能食品用組成物は、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、懸濁液、乳剤、シロップ剤、浸剤、液剤、エクストラクト剤などの一般的な剤型で製造されても、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、ゼリー、アイスクリーム類を含んだ酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などの任意の健康食品の形態で製造されても良い。前記健康食品の製剤化のために、食品学的に許容可能な担体または添加剤を使用し、製造しようとする剤型の製造に当該技術分野で使用可能であると公知されている任意の担体または添加剤が用いられる。前記添加剤として各種栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有することができる。それ以外にも、天然果汁、果汁飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような添加剤成分は、独立して、または組み合わせて使用し、添加剤の比率は、組成物全体重量を基準に0.001~5重量%、または0.01~3重量%である。
【0038】
前記健康機能食品用組成物中の前記抽出物の含量は、使用目的(予防または改善)によって適するように決定される。一般的に、全体食品重量の0.01~15重量%含み、飲料として製造される場合、100mLを基準に0.02~10g、望ましくは、0.3~1gの比率で含有することができる。前記飲料は、前記抽出物以外の他の成分をさらに含み、通常の飲料に使われる多様な香味剤または天然炭水化物などをさらに含有することができる。前記天然炭水化物としては、単糖類(例:ブドウ糖、果糖など)、二糖類(例:マルトース、スクロースなど)、多糖類(例:デキストリン、シクロデキストリンなど)のような通常の糖及びびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが含有されうる。また、香味剤として天然香味剤(例:タウマチン、ステビア抽出物など)及び合成香味剤(例:サッカリン、アスパタムなど)を含有することができる。前記天然炭水化物の比率は、飲料100mL当たり、一般的に、約1~20g、望ましくは、約5~12gで含有されうる。
【0039】
前記組成物が、薬学的組成物である場合、薬剤学的に許容可能な希釈剤または担体を含みうる。前記希釈剤は、乳糖、トウモロコシ澱粉、大豆油、非晶質セルロース、またはマンニトール、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはその組み合わせである。前記担体は、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、またはその組み合わせである。前記賦形剤は、非晶質セルロース、乳糖、低置換度ヒドロキシセルロース、またはその組み合わせである。前記崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、無水リン酸一水素カルシウム、またはその組み合わせである。前記結合剤は、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはその組み合わせである。前記滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、タルク、またはその組み合わせである。前記薬学的組成物は、前記抽出物を有効な量、または有効成分として含みうる。前記有効な量は、個体によって適切に選択することができる。疾患の重症度、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、前記組成物と配合または同時使われる薬物を含んだ要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定される。
【0040】
本発明は、アオキ抽出物をそれを必要とする個体に薬学的に有効な量で投与する段階を含む黄斑変性の治療方法を提供することができる。
【0041】
本発明において、「個体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトを含んだ猿、牛、馬、羊、豚、鶏、七面鳥、うずら、猫、犬、マウス、ラット、ウサギまたはギニーピッグを含んだあらゆる動物を意味し、本発明の薬学的組成物を個体に投与することにより、前記疾患を効果的に予防または治療することができる。本発明の薬学的組成物は、従来の治療剤と並行して投与される。
【0042】
本発明は、アオキ抽出物を黄斑変性治療用組成物に使用するための用途を提供することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって、本発明の範囲が、これらの実施例によって制限されないということは当業者にとって自明である。
【0044】
実施例1.アオキエタノール還流抽出物の製造
アオキ葉と茎は、2018年8月に大韓民国慶尚南道巨済市一運面知世浦里の林野から採集し、証拠標本は、大韓民国の全北大試料保管室に保管中である。アオキ50g(葉と茎との混合物)を30%エタノール(w/w)1500mlに入れて、70~100℃で3時間1回還流抽出した後、減圧濃縮及び凍結乾燥して、30%エタノール還流抽出物を得た。
【0045】
実施例2.アオキ熱水抽出物の製造
アオキ葉と茎は、2018年8月に大韓民国慶尚南道巨済市一運面知世浦里の林野から採集し、証拠標本は、大韓民国の全北大試料保管室に保管中である。以後、アオキ50g(葉と茎との混合物)に900mlの蒸留水を加えた後、100℃で3時間煎湯して減圧濃縮した後、乾燥してアオキ熱水抽出物を製造した。
【0046】
実施例3.アオキ抽出物のHPLC分析を通じたアウクビン含量の分析
3-1.試薬及び機器
標準品アウクビン(aucubin)(純度99.5%)は、Biopurity Phytochemicals Ltd(Chungdu、China)から購入した。HPLC分析のための移動相溶媒アセトニトリルと水(J.T.Backer、USA)は、いずれもHPLC級を使用した。HPLC分析には、Agilent社の1200 analytical HPLC systemが使われ、2元ポンプ(binary pump、G1312A)、真空気泡除去機(vacuum degasser、G1322A)、カラム温度調節装置(thermostatted column compartment、G1316A)、多波長UV検出器(multiple wavelength detector、1365B、MWD)、試料自動注入器(autosampler、G1329A)で構成された。ChemStation softwareが装備運用及び分析結果の処理に使われた。
【0047】
3-2.標準溶液の製造及び検量線の作成
標準品アウクビンは、2mg/mLの濃度でMeOHに溶解させた後、段階的に希釈して、それぞれ2000、1000、500、100ug/mLの濃度で検量線用標準溶液を製造した。それぞれの検量線用標準溶液をカラムに注入し、HPLC分析を実施して、クロマトグラムを得て、このピークデータ(peak data)をプロット(plot)して、定量分析のためのそれぞれの検量線を作成した。
【0048】
3-3.検液の製造
アオキ抽出物100mgを10ml volumetric flaskに入れ、50% MeOHを使用して標線まで合わせた後、5分間超音波抽出した。製造した検液のうち、1mlを取って0.45μm Whatman PVDF syringe filterで濾過した後、HPLC分析に使用した。
【0049】
3-4.HPLC分析
Zorbax Eclipse Plus C18(4.6x250mm/5.0μm、Agilent)がHPLC分析に使われ、カラム温度は、35°に設定し、UV検出器波長は、210nmに設定し、試料注入は、試料自動注入器を用いて3μLを注入した。移動相は、水(A)とアセトニトリル(B)との混合溶液を使用して流速1.0ml/minに設定し、移動相の組成比率勾配(gradient)は、下記の表1のようである。
【0050】
【0051】
HPLC-DAD分析法で分析を行った結果、標準品アウクビンがクロマトグラムで11.33分頃に検出され、アウクビンを100~2000μg/mLの濃度範囲で分析後、検量線を作成した結果、検量線の相関係数(R2)が0.999以上に良好な直線性を示した。開発された分析法でアオキ葉及び茎抽出物内のアウクビンの含量分析を行った。アオキ抽出物のクロマトグラムでアウクビンに該当するピーク面積を求めた後、それをアウクビンの検量線に代入して含量を求めた。各抽出物内のアウクビンの含量分析結果は、下記の表2のようである。
【0052】
【0053】
実施例4.アオキ抽出物のリポフスチン(A2E)の光酸化の抑制効果の分析
A2E(Gene and cell technologies、USA)を0.5% DMSOが含まれたPBSに100μMで溶解させた後、96 well microplateにそれぞれ180μlずつ添加した後、前記培養液にvehicle(control)または実施例1及び実施例2のアオキ抽出物を20μlずつ添加した。前記混合物を青色光(430nm、intensity:2.0~2.5mW/cm2)に10分間露出させた。A2Eが光酸化された程度を測定するために、UV A照射前と後とにマイクロプレートリーダー(micro plate leader)を使用して440nmでの吸光度を測定した。リポフスチン(A2E)は、黄斑変性の原因物質であって、網膜色素上皮細胞に沈着し、青色光などに光酸化されて細胞毒性を示す。
図2のように、アオキ30%エタノール抽出物のリポフスチンの光酸化を50%抑制する濃度(inhibitory concentration 50%、IC50)が15.2ug/mlであり、熱水抽出物の場合、IC50が82.6ug/mと確認された。30%エタノール抽出物が熱水抽出物に比べて、効力が5倍量優れていることが分かった。したがって、以後のあらゆる動物モデルを利用した試験は、アオキ30%エタノール抽出物(以後、表記「AJE」)を用いて行った。
【0054】
実施例5.乾性黄斑変性モデル動物(N-methtyl-N-nitrosourea(MNU)-inudced photorecepto cell degeneration mouse)でアオキ抽出物の効力確認
5-1.組織病理学的評価
6週齢の雄C57BL/6マウスを(株)オリエント(城南、大韓民国)から購入して、1週間順化後に使用した。乾性黄斑変性で表われる網膜組織の形態学的な変化のうち、視細胞(photoreceptor cell)の損傷及び変性を誘発するために、N-methyl-N-nitrosourea(MNU、Sigma、USA)を0.05%酢酸(acetic acid)溶液に1%濃度になるように準備して、7週齢の雄C57BL/6マウスの腹腔に1% MNU溶液を各個体当たり60mg/kgほど腹腔に投与した。正常群では、同量の0.05%酢酸のみ腹腔投与した。アオキ30%エタノール抽出物(AJE)は、100及び250mg/kg/dayの濃度になるように滅菌3次蒸留水に溶かして調剤した後、MNU投与後、同日から7日間毎日1回経口投与した。対照薬物としては、ルテイン(lutein)を50mg/kg/dayの濃度で同期間経口投与した。試験薬物投与終了後、剖検を実施して眼球を摘出した後、10%中性化ホルマリンに一日間固定した後、パラフィンで包埋してスライド切片を作製した。スライド切片は、Hematoxylin & Eosin(H&E)染色して光学顕微鏡下で観察する。視細胞の損傷&変形は、網膜組織の外側網膜層の厚さの変化を測定して評価した。MNUで誘導する視神経消失動物モデルにアオキ30%エタノール抽出物(AJE)をそれぞれ100、250mg/kg/dayの濃度で1週間経口投与した結果、視神経細胞の消失による外側網膜層の厚さの減少を濃度依存的に抑制することを確認した(
図3)。特に、乾性黄斑変性の予防に広く使われているルテインと効能を比較した結果、アオキ30%エタノール抽出物(AJE)素材がさらに優れた効能を示すことを確認した。
【0055】
5-2.網膜電位図(ERG)の測定
網膜電位図(ERG、electroretinogram)とは、光に対する視神経の反応で生じた電気的な信号を示す網膜視神経の伝導で網膜損傷や疾病の有無を確認する指標として用いられる。本発明者らは、網膜電位図を測定した。剖検一日前、16時間以上の暗順応後に、ERG測定のために、isoflurane(フルラン、中外製薬)で呼吸麻酔させた後、0.5%トロピカミド(tropicamide)を用いて瞳孔を散大させて、全身麻酔下に体温を保持させたまま眼球に1% メチルセルロース(methylcellulose)を適量塗布し、Gold wire loops関電極(recording electrode)を角膜に接地させ、不関電極(reference electrode)をほおの部位に、接地電極(ground eletrode)はしっぽに接地させた後、ERGの測定は、Retiport(Roland consult、Germany)を用いて測定した。刺激(Stimulation)は、white LED lightを用いて暗順応閃光反応(scotopic flash response)からa波とb波とを求めた。ERGは、一般的にa波及びb波で構成されており、a波は、光水溶体によって表われ、b波は、網膜が光刺激によって内核層(inner nuclear layer)にあるバイポーラ(bipolar)細胞が脱分極(depolarization)されて生じる。モデル動物で網膜電位図(ERG)を測定した結果、アオキ30%エタノール抽出物(AJE)の投与がa波及びb波の神経伝導の抑制を改善し、視細胞の活性減少を抑制することを確認した。
【0056】
実施例6.湿性黄斑変性モデル動物(Laser-induced choroidal
neovascularization(CNV)rat)でアオキ抽出物(AJE)のアオキ抽出物の効力確認
7週齢の雄Brown Norway(BN)ラット(rat)(SLC Japan、Tokyo、Japan)を1週間順化させた後、ペントバルビタールナトリウム(pentobarbital sodium)(翰林製薬、25mg/kg)を腹腔注射して麻酔した。以後、1%トロピカミド点眼液(tropicamide eye drop)で瞳孔を拡張させた後、ダイオードレーザ(波長:532nm、直径:100μm、パワー:150mW、期間:0.1sec)を用いて視神経円板(optic nerve head)周囲の6箇所に光凝固(photocoagulation)点を作り、ブルッフ膜(Bruch’s membrane)の破壊は、特徴的なバブル(bubble)の形成で検証した。光凝固処理後、雄ラットは、ランダムに群当たり10匹ずつ5群に群分離した後、各群に合う濃度で薬物を調剤して10日間経口投与した。試験薬物は、100及び250mg/kg/dayの濃度になるように滅菌3次蒸留水に溶かして調剤した後、光凝固処理後、同日から10日間毎日1回経口投与した。対照薬物としては、ルテインを100mg/kg/dayの濃度で同期間経口投与した。薬物投与10日後、動物を犠牲した後、眼球を摘出して顕微鏡下で角膜と孔膜(白眼)隣接部位で眼球を切開した後、眼球の後部組織を用いて網膜を取り外した後、subretina部位が含まれた結膜組織を分離した。分離した組織は、4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)に1時間固定後、PBSで洗浄して、5% Triton X-100と1% BSAとを含んだPBSに3時間撹拌した後、再び洗浄後、PBSに1mg/mlで溶かしたendothelial cell markerであるisolectin B4(sigma)を1:50に希釈して、4℃でovernightした。0.05% Tween 20が含まれたPBSで2時間洗浄した後、streptavidin TRITCを1:500に希釈して、37℃で4時間反応させた後、PBSで30分洗浄して蛍光顕微鏡(BX51、Olympus、Japan)下で観察し、網膜下新生血管(Subretina neovascularization)部位のサイズは、Image J software(NIH、USA)を用いて分析した。湿性黄斑変性は、subretinal部位で未成熟した新生血管の発生及び浮腫を特徴とする。実験的に脈絡膜新生血管を誘発するために、レーザ(laser)を用いてブルッフ膜を破裂してCNVを誘発した後、AJEをそれぞれ100、250mg/kg/dayの濃度で10日間経口投与した結果、CNVの形成を濃度依存的に抑制することを確認した。特に、乾性黄斑変性の予防に広く使われているルテインと効能を比較した結果、AJEがさらに優れた効能を示すことを確認した。
本発明の例示的な態様を以下に記載する。
<1> アオキ抽出物を含む、黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物。
<2> 前記黄斑変性は、加齢性黄班変性である、<1>に記載の黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物。
<3> 前記アオキ抽出物は、アオキの葉、茎またはその混合物を抽出した、<1>に記載の黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物。
<4> 前記アオキ抽出物は、水、炭素数1~4の低級アルコールまたはその混合溶媒として抽出された、<1>に記載の黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物。
<5> 前記アオキ抽出物は、20~40%エタノール(w/w)水溶液で抽出された、<1>に記載の黄斑変性の予防または治療用薬学的組成物。
<6> アオキ抽出物を含む、黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物。
<7> 前記黄斑変性は、加齢性黄班変性である、<6>に記載の黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物。
<8> 前記アオキ抽出物は、アオキの葉、茎またはその混合物を抽出した、<6>に記載の黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物。
<9> 前記アオキ抽出物は、水、炭素数1~4の低級アルコールまたはその混合溶媒として抽出された、<6>に記載の黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物。
<10> 前記アオキ抽出物は、20~40%エタノール(w/w)水溶液で抽出された、<6>に記載の黄斑変性の予防または改善用健康機能食品組成物。
<11> アオキ抽出物をそれを必要とする個体に薬学的に有効な量で投与する段階を含む、黄斑変性の予防及び治療方法。
<12> アオキ抽出物を黄斑変性の予防及び治療用組成物に使用するための用途。