(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ヒドロキシカルボン酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/02 20060101AFI20230328BHJP
C07C 69/675 20060101ALI20230328BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20230328BHJP
C07C 69/67 20060101ALI20230328BHJP
C07C 67/03 20060101ALI20230328BHJP
C07C 51/56 20060101ALI20230328BHJP
C07C 53/126 20060101ALI20230328BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230328BHJP
【FI】
C07C67/02
C07C69/675
C07C67/08
C07C69/67
C07C67/03
C07C51/56
C07C53/126
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2021541236
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2019051541
(87)【国際公開番号】W WO2020147980
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/051120
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521302113
【氏名又は名称】アイオーアイ オレオ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマン、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライアー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーア、ミヒャエル
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/118369(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/132189(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/005818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシ酪酸
および3-アルコキシ酪酸の
少なくとも1つのグリセリドに基づく構造単位を含む脂質を生成するための方法であって、
同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR
1、R
2およびR
3が、
・水素、
・ラジカルC
1-C
11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC
12-C
29-アルキル-C(O)-、を示すが、
ただし、ラジカルR
1、R
2およびR
3の少なくとも1つ
が水素を示さないという条件の一般式(I)
R
1O-CH
2-CH(OR
2)-CH
2-OR
3 (I)
の少なくとも1つのグリセリドが、
・ラジカルR
4が、水素、または、ラジカルC
1-C
30-アルキル-C(O)-を示し、
・ラジカルR
5が、水素、または、ラジカルC
1-C
4-アルキルを示
し、ラジカルR
5
が水素を示す場合に、ラジカルR
4
が上記で定義された意味を有する前記一般式(IIa)
[CH
3
-CH(OR
4
)-CH
2
-C(O)]
2
O (IIa)
の無水物が、遊離酸の代わりに使用される一般式(II)
CH
3-CH(OR
4)-CH
2-C(O)OR
5 (II)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸誘導体と反応すること、
前記反応が、溶媒の非存在下
で実行されること、および、
前記反応は、触媒としての酵素の存在下で実行されること、
これによって、反応生成物として、
同一または異なるそれぞれお互いに独立したラジカルR
6、R
7およびR
8が、
・ラジカルC
1-C
11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC
12-C
29-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR
4が上記に定義した意味を有するラジカルCH
3-CH(OR
4)-CH
2-C(O)-を示すものであるが、
ただしラジカルR
6、R
7およびR
8の少なくとも1つまたは2つが、ラジカルCH
3-CH(OR
4)-CH
2-C(O)-示すことを条件とするものである化学式(III)
R
6O-CH
2-CH(OR
7)-CH
2-OR
8 (III)
の3-ヒドロキシ酪酸
および3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む
少なくとも2つの脂質からなる混合物が得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記触媒は、前記反応後に再利用されること;および
前記酵素は、シンテターゼ、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記酵素は、担体上に固定化された形態で、使用されること;および
前記酵素が、開始化合物(I)および(II)の総量に基づいて、0.001重量%~20重量%の範囲内の量で使用されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
同一または異なるそれぞれお互いに独立したラジカルR
6、R
7およびR
8が、
・ラジカルC
1-C
11-アルキル-
C(O)-、
・ラジカルC
12-C
29-アルキル-
C(O)-、
・
ラジカルR
4
が、水素またはラジカルC
1-C
30-アルキル-C(O)-を示すラジカルCH
3-CH(OR
4)-CH
2-C(O)-を示すが、
ただしラジカルR
6、R
7およびR
8の1つまたは2つが、ラジカルCH
3-CH(OR
4)-CH
2-C(O)-を示
し、R
6
、R
7
およびR
8
の1つが、ラジカルC
1
-C
11
-アルキル-C(O)-を示し、且つ、R
6
、R
7
およびR
8
の1つが、ラジカルC
12
-C
29
-アルキル-C(O)-を示すことを条件とする一般式(III)
R
6O-CH
2-CH(OR
7)-CH
2-OR
8 (III)
による3-ヒドロキシ酪酸
および3-アルコキシ酪酸の少なくとも1つのグリセリドに基づく構造単位を含む
少なくとも2つの脂質を含むことを特徴とする混合物。
【請求項5】
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれお互いに独立したラジカルR
6、R
7およびR
8が、
・線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C
1-C
11-アルキル-
C(O)-のラジカル、
・線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C
12-C
29-アルキル-
C(O)-のラジカル、
・線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和CH
3-CH(OR
4)-CH
2-C(O)-
であって、ラジカルR
4
が、水素またはラジカルC
1
-C
30
-アルキル-C(O)-を示すラジカル
、を示す
ものであるが、
ただしラジカルR
6、R
7およびR
8の少なくとも1つまたは2つが、ラジカルCH
3-CH(OR
4)-CH
2-C(O)-を示すことを条件とすることを特徴とする請求項
4記載の混合物。
【請求項6】
請求項
5または6に記載の混合物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
薬物または薬剤であることを特徴とする請求項
6記載の医薬組成物。
【請求項8】
人体または動物体の疾患の予防的または治療的処置
に使用されることを特徴とする請求項
6または7記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項
4または5記載の混合物を含むことを特徴とする食品生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケト体および関連する代謝の分野ならびに関連する疾患の治療に関する。
【0002】
特に、本発明は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質、ならびにこれによって得られるまたはこれによって調製される反応生成物(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質)を製造する方法およびそれらの使用、特に薬物または医薬品などの医薬組成物、または食品および/または食品生成物におけるそれらの使用、ならびにそれらのさらなる用途または使用に関する。
【0003】
さらに、本発明は、本発明の方法に従って得られるまたは生成される反応生成物(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質)を含む医薬組成物、特に薬物または医薬品、それらの適用または使用に関する。
【0004】
さらに、本発明は、本発明の方法に従って得られまたは生成される反応生成物(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質)を含む食品および/または食品生成物、特に食品サプリメント、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、ならびに強度および/または耐久性スポーツサプリメントならびにそれらの用途または使用に関する。
【背景技術】
【0005】
人間のエネルギー代謝において、ブドウ糖は短期的に利用可能なエネルギー担体であり、水と二酸化炭素を放出することによってミトコンドリア内でエネルギーに代謝される。肝臓のグリコーゲン貯蔵は、夜の睡眠期間中にすでに空になる。しかしながら、特に人間の中枢神経系(CNS)と心臓は、永続的なエネルギー供給を必要とする。
【0006】
主に中枢神経系で利用できるブドウ糖の生理学的代替物は、いわゆるケト体(同義語でケトン体とも呼ばれる)である。
【0007】
ケト体という用語は、特に3つの化合物の総称であり、主に異化代謝状態(空腹、減量食、低炭水化物食など)で形成され、ケトーシス(ケトン症)を生じるものである。ケト体という用語には、特に3つの化合物、アセトアセテート(同義語でアセタセテートとも呼ばれる)およびアセトン並びに3-ヒドロキシ酪酸(以下、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHBとも呼ばれる)またはその塩(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸またはベータヒドロキシ酪酸)を含むものであり、後者は前述の3つの化合物の中で最も重要である。3-ヒドロキシ酪酸またはその塩は、生理学的に(R)-エナンチオマーとして、すなわち(R)-3-ヒドロキシ酪酸(同義語として、3位のキラリティーの中心を強調するために(3R)-3-ヒドロキシ酪酸とも呼ばれる)またはその塩を生じる。
【0008】
これらのケト体はまた、断食時または飢餓の間に脂肪分解によって体内に蓄積された脂質から生理学的に大量に提供され、エネルギー源のグルコースとほぼ完全に置き換えられる。
【0009】
ケト体は、ベータ酸化に由来するアセチル補酵素A(=アセチル-CoA)から肝臓において形成される;それらは、人体においてアセチル補酵素Aの輸送可能な形を示している。しかし、ケト体を利用するためには、脳と筋肉は、ケト体をアセチル補酵素Aに戻すために要求される酵素を発現させることに最初に適応する必要がある。特に空腹時には、ケト体は、著しい量のエネルギー生産に貢献する。たとえば、しばらくすると、脳は1日のブドウ糖量の3分の1しか摂取できなくなる。
【0010】
生理学的に、ケト体は、脂肪酸分解の通常の中間生成物であるアセチル補酵素Aの形の活性化酢酸の2つの分子から合成され、前記中間生成物は、アセチル補酵素A単体と酵素HMG-CoAシンターゼを使用して、中間生成物3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG-CoA)に延出し、最後にHMG-CoA-リアーゼがアセト酢酸を切断する。これらの3つのステップは、肝臓のミトコンドリア(リネンサイクル)でのみ行われ、3-ヒドロキシ酪酸は最終的にD-ベータ-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼによってサイトゾルにおいて形成される。HMG-CoAは、アミノ酸ロイシンの分解の最終生成物でもあると同時に、アセトアセテートは、アミノ酸フェニルアラニンとチロシンの分解中に形成される。
【0011】
自発的な脱炭酸は、アセトアセテートをアセトンに変化させる;それは、糖尿病患者や食事制限者の呼吸の中で時々知覚される。それは、身体においてさらに使用されることはできない。しかしながら、ケト体内のアセトンの割合は、非常に少ない。
【0012】
したがって、アセトアセテートは、生理学的に適切な形態の3ヒドロキシ酪酸または3-ヒドロキシ酪酸に還元的に変換されるが、二酸化炭素の放出を伴う生理学的に使用できないアセトンに分解することもでき、これは、重度のケトーシス、ケトアシドーシスにおいて(例えば、インスリン置換のない1型糖尿病患者において)、尿中、および呼気中で検出可能であり、嗅覚的に知覚可能である。
【0013】
3-ヒドロキシ酪酸は、現在、ナトリウム、マグネシウム、またはカルシウム塩としてウエイトトレーニング部門で使用され、市販されている。
【0014】
しかしながら、植物が3-ヒドロキシ酪酸を生成せず、動物の組織における3-ヒドロキシ酪酸が、ケトーシスにおいて死んで衰弱した動物でのみ発生するため、3-ヒドロキシ酪酸は知られていないか、進化の観点から人間にはごく少量しか存在しないことから、3-ヒドロキシ酪酸は、経口投与すると吐き気を引き起こす。遊離酸とその塩の形の3-ヒドロキシ酪酸も非常に苦味があり、重度の嘔吐や吐き気を引き起こす可能性がある。
【0015】
さらに、患者、特に新生児だけでなく、成人でさえも、これらの化合物が腎臓に損傷を与える可能性があるため、3-ドロキシ酪酸の大量の塩に恒久的に耐えることができない。
【0016】
さらに、3-ヒドロキシ酪酸とその塩の血漿半減期は、たとえ数グラムを摂取したとしても、ケトーシスが約3~4時間の間でしか持続しないため、非常に短いこと、つまり患者が、特に夜間において、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩による治療の恩恵を継続的に受けることができないものである。代謝性疾患の場合、これは生命を脅かす状況につながる可能性がある。
【0017】
したがって、そのような代謝性疾患の場合、いわゆる中鎖トリグリセリド、いわゆるMCTが、現在ケト原性療法について使用される。すなわちカプロン酸、カプリル酸、およびカプリン酸の(すなわち飽和線状C6-,C8-,C10-脂肪酸の)代謝変換が意図される。
【0018】
しかし、基本的には、製薬および臨床の観点から、3-ヒドロキシ酪酸はより効果的な医薬品-薬理学的目標分子であり、先行技術によれば、原則として多数の疾患の治療に使用できるが、生理的適合性がないため使用できない(例えば、エネルギー代謝の機能不全に関連する疾患、特にケト体代謝、または認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患、脂肪代謝性疾患など)。
【0019】
次の表は、純粋に例示的なものを示しているが、有効成分3-ヒドロキシ酪酸の潜在的な治療オプションまたは可能な症状を限定するものではない。
【0020】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、特に人体または動物の身体の生理学的代謝において、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩への直接的または間接的なアクセスを生理学的に可能にする効果的な前駆体または代謝物を見つけることができることが、製薬および臨床の観点から望ましい。
【0022】
その結果、従来技術は、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的に適切な前駆体または代謝産物を見つけるという試みを欠いてはいない。しかしながら、これまでのところ、従来技術において効率的な化合物は見出されていない。また、そのような化合物へのアクセスは、先行技術によれば可能ではなく、または容易に可能ではない。
【0023】
したがって、本発明の根底にある課題は、3-ヒドロキシ酪酸(すなわち、ベータ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHB)またはそれらの塩の生理学的に適切なまたは生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝産物を生成するための効率的な方法の提供である。
【0024】
そのような方法は、特に、効率的な方法でアクセス可能な、特に大量に、そして大量の有毒な副産物なしに、それぞれのBHB前駆体および/またはBHB代謝物を製造しなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
完全に驚くべき方法において、出願人は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質が、ケト体3-ヒドロキシ酪酸またはその塩のための効率的かつ生理学的に有効なまたは生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝物を示すものであり、これに関して、これらの化合物を生産するための効率的な方法を見つけまたは開発することができ、これにより、これらの化合物への直接的かつ効果的、特に経済的および産業的に実現可能なアクセスが可能になることを発見した。
【0026】
したがって、上記の問題を解決するために、本発明は、本発明の第1の態様によれば、請求項1に記載の3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質を製造する方法を提案する。さらに、本発明の方法の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0027】
さらに、本発明は、本発明の第2の態様によれば、独立請求項(請求項36)に記載の本発明の方法に従って得られる反応生成物に関するものであり、または、それぞれの請求項(請求項48~56)による3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質に関するものであり、 または、それぞれの請求項(請求項57および58)による3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む少なくとも2つ、特に少なくとも3つの脂質の混合物に関するものであり;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0028】
同様に、本発明は、本発明の第3の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項59)による医薬組成物、特に薬物または薬剤に関するものであり;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0029】
さらに、本発明は、本発明の第4の態様によれば、それぞれ独立した請求項(請求項61)による人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置における使用のための、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドの基づく構造単位を含む本発明の反応生成物または本発明の脂質、または、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドの基づく構造単位を含む少なくとも2つ、特に少なくとも3つの脂質から成る本発明の混合物に関するものである。
【0030】
さらに、本発明は、本発明の第5の態様によれば、関連した独立した請求項(請求項62)による人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置における使用のための、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドの基づく構造単位を含む本発明の反応生成物または本発明の脂質、または、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドの基づく構造単位を含む少なくとも2つ、特に少なくとも3つの脂質から成る本発明の混合物の使用に関するものである。
【0031】
さらに、本発明は、本発明の第6の態様によれば、関連した独立請求項(請求項63)による3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む本発明の反応生成物または本発明の脂質、または、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む少なくとも2つの、特に少なくとも3つの異なる脂質の使用に関するものである。
【0032】
さらに、本発明は、本発明の第7の態様によれば、関連する独立請求項(請求項64)による食品および/または食品生成物に関する;さらに、本発明による食品および/または食品生成物の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0033】
最後に、本発明は、本発明の第8の態様によれば、関連する独立請求項(請求項66)による食品および/または食品生成物における3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリド構造単位を含む本発明の反応生成物または本発明の脂質、または、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を有する少なくとも2つ、特に少なくとも3つの異なる脂質からなる本発明の混合物の使用に関するものであり;さらに、本発明による使用の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、使用のための関連する副請求項の主題である。
【0034】
繰り返しを回避する目的で、本発明の1つの態様に関してのみ以下に列挙される特徴、実施形態、利点などは、別の言及を要求することなしに、本発明の他の態様にも適用されることは言うまでもない。
【0035】
さらに、本発明の個々の態様および実施形態はまた、本発明の他の態様および実施形態との任意の組み合わせ、特に、すべての後方参照から生じるため、特徴および実施形態の任意の組み合わせで開示されると見なされ、特許請求の範囲は、結果として生じるすべての組み合わせの可能性に関しても広範囲に開示されていると見なされることは言うまでもない。
【0036】
以下に提供されるすべての相対的または百分率の重量ベースのデータ、特に相対的な量または重量データに関して、本発明の範囲内において、これらは、特に以下に定義するように、すべての成分または含有物を含めて、それぞれ合計が最大100%または100重量%となるように、常に当業者によって選択されるべきであることにさらに留意されたい;しかしながら、これは当業者にとって自明である。
【0037】
また、当業者は、本発明の範囲を離れることなく、必要に応じて、下記する範囲指定から逸脱することができる。
【0038】
さらに、以下に指定されるすべての値またはパラメータなどは、原則として、標準化または明示的に指定された測定方法、または当業者によく知られている決定または測定方法を使用して決定または識別できることが適用される。
【0039】
これを述べた上で、本発明を以下により詳細に説明する。
【0040】
したがって、本発明の主題は、本発明の第1の態様によれば、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質を生成するための方法であり、
同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR1、R2およびR3が、
・水素、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-であるが、
ただし、ラジカルR1、R2およびR3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが水素を示さないという条件の一般式(I)
R1O-CH2-CH(OR2)-CH2-OR3 (I)
の少なくとも1つのグリセリドが、
・ラジカルR4が、水素、または、ラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-を示し、
・ラジカルR5が、水素、または、ラジカルC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(II)
CH3-CH(OR4)-CH2-C(O)OR5 (II)
の3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸誘導体と反応し、
これによって、反応生成物として、
ラジカルR6、R7およびR8が、同一または異なるそれぞれが独立している
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・上記で定義したラジカルR4を有するラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただしラジカルR6、R7およびR8の少なくとも1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-示すことを条条件とするものである化学式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
の3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む1つまたは複数の脂質が得られるものである。
【0041】
上述したように、出願人は、非常に驚くべきことに、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはそれらの塩の生理学的に適合性のある前駆体および/または代謝物であり、それらは生理学的に適合性があるため、製薬または臨床用途においても大量に使用することができることから、これによって生成された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質は効率的であることを発見した。
【0042】
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む上記の脂質は、本発明による製造方法を通じて初めて効率的な方法でアクセス可能であり、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の生理学的および薬理学的に関連する代替物を示すものである。
【0043】
従来の有機合成によるそのような化合物の製造は、3-ヒドロキシ酪酸が重合し、他の望ましくない副反応(例えば、脱水、分解など)を受ける傾向が高まるため、複雑で費用がかかる。本発明の範囲内で、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質を望ましくない副反応なしに、特に単一の段階において製造することができる効率的に機能する製造方法を初めて提供することが可能であった。
【0044】
したがって、本発明の方法は、既知の市販の、とりわけ生理学的に無害な成分または抽出物(出発化合物)からの3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む非毒性脂質を初めて提供することを可能にする。3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む結果として生じる脂質は、特に胃および/または腸で生理学的に分解され、標的分子「3-ヒドロキシ酪酸」またはその塩を放出または生成することができる。
【0045】
さらに、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む前述の脂質はまた、長期間にわたって大量に経口投与された場合でも適合性を確保するための許容可能な味を含む(例えば、一日50gの投与量)。
【0046】
同様に、本発明による製造方法は、毒性不純物を含まない3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質を提供することを可能にする。
【0047】
さらに、適切な出発物質を使用して、この方法をエナンチオ選択的に実施することもできる。例えば、本発明によれば、製造方法は、経口投与されたときに患者の腎系に負担をかけないように、生物学的に関連する形態、すなわち(R)-エナンチオマーを、特に酵素触媒作用によって濃縮することを可能にする(すなわち、 腎臓を介した排泄)。ただし、原則として、特定の条件下で使用されることが好ましく、(S)-エナンチオマーを濃縮することも可能である。
【0048】
さらに、任意のさらなる処理または精製工程を含む本発明による製造方法は、経済的に操作することができ、また大規模に実施することもできる。
【0049】
特に、本発明の製造方法は、市販の開始化合物を使用し、さらに、大規模な実施の場合でさえ、比較的単純なプロセス管理を可能にする。
【0050】
従来の従来技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法は、そのような複雑な開始材料を使用せず、単一の段階のみを使用する。それにもかかわらず、副生成物の形成が最小化または回避される本発明によれば、優れた生産性が達成される。
【0051】
さらに、本発明の方法は単純で経済的である。特に、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下および/または溶媒なしで(すなわち、質量反応として、または物質内の反応として、またはいわゆるバルク反応として)実施される。その結果、得られた反応生成物は溶媒で汚染されておらず、方法または反応が実行された後、溶媒を除去して廃棄したり、費用がかかり、エネルギーを消費する方法で再利用したりする必要はない。さらに、有毒な副産物は形成されません。
【0052】
一般式(I)の開始化合物または抽出物に関する限り、以下に言及する必要がある。
【0053】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、一般式(I)において、同一または異なる、それぞれが互いに独立したラジカルR1、R2およびR3は、それぞれが互いに独立して、
・水素、
・線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、
・線形タイプ(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、を示すものであるが、ただしラジカルR1、R2およびR3のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、水素を表さないということを条件とするものであることが提供されることが好ましい。
【0054】
本発明の方法の別の特定の実施形態によれば、一般式(I)において、同一または異なる、それぞれが互いに独立したラジカルR1、R2およびR3は、
・線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、
・線形タイプ(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、を示すものであるが、ただしラジカルR1、R2およびR3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、水素を示さないことを条件とするものであることが提供されることが好ましい。
【0055】
本発明の方法のさらに別の特定の実施形態によれば、一般式(I)において、同一または異なる、それぞれが互いに独立したラジカルR1、R2およびR3は、
・線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、
・線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、を示すものであるが、ただし、ラジカルR1、R2およびR3の少なくとも1つが、線形型(直鎖)または分岐、飽和、モノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノまたはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-ラジカルを示すことを条件とするものであることが提供されるものである。
【0056】
本発明の方法のさらに別の特定の実施形態によれば、一般式(I)において、同一または異なるそれぞれお互いに独立したラジカルR1、R2およびR3は、
・線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、
・線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、を示すものであるが、ただし、ラジカルR1、R2およびR3の少なくとも1つが、線形型(直鎖)または分岐、飽和、モノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカルを示すことを条件とするものであることが提供されるものである。
【0057】
最後に、本発明の方法のさらに別のさらに特定の実施形態によれば、一般式(I)において、同一または異なるそれぞれお互い独立したラジカルR1、R2およびR3は、
・線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、
・線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、を示すものであるが、ただし、ラジカルR1、R2およびR3の少なくとも1つが、線形タイプ(直鎖)または分岐、飽和、モノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-のラジカルであることを条件とするものであり、且つ、ラジカルR1、R2およびR3の少なくとも1つが、線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカルを示すことを条件とするものであることが提供されるものである。
【0058】
特に、一般式(I)において、同一または異なる、それぞれが互いに独立したラジカルR1、R2およびR3は、線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-のラジカルを示すものであることが提供される。
【0059】
さらに、一般式(I)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR1、R2およびR3は、線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカルを示すものであることが提供される。
【0060】
一般式(II)の開始化合物または抽出物に関する限り、以下に言及する必要がある。
【0061】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、一般式(II)において、
・ラジカルR4は、水素、または、線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C30-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和または モノ-またはポリ不飽和C1-C21-アルキル-C(O)-のラジカル、好ましくは線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C3-C21-アルキル-C(O)-のラジカルを示すものであり、
・ラジカルR5は、C1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルを示すことが提供されるものである。
【0062】
本発明による方法の別の特定の実施形態によれば、一般式(II)において、
・ラジカルR4は、水素または線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C30-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C21-アルキル-C(O)-のラジカル、好ましくは線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C3-C21-アルキル-C(O)-のラジカル、を示すこと、
・ラジカルR5は、エチルを示すことが提供されるものである。
【0063】
本発明のさらなる特定の実施形態によれば、一般式(II)において、ラジカルR4は水素を示し、ラジカルR5はエチルを示すことが提供され得る。
【0064】
特に、一般式(II)の3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸誘導体、式CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OC2H5の3-ヒドロキシ酪酸エチルエーテル(3-ヒドロキシ酪酸エチル)が使用されることが好ましい。
【0065】
原則として、一般式(II)の3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸誘導体は、ラセミ形態または(R)-エナンチオマーの形態で使用されることが好ましい。前記(R)-配置は、特に3つの位置にある炭素原子に基づいているか、または(R)-配置は、OR4ラジカルを保持する炭素原子に基づいている。
【0066】
特に、本発明の方法において、前記反応は、溶媒の非存在下および/または溶媒なしで実行される。これは、反応が質量における反応として、または物質における反応として、またはいわゆるバルク反応として実行されることを意味する。これは、得られた反応生成物が溶媒で汚染されておらず、方法または反応が実行された後、費用がかかるエネルギー集約的な方法において、溶媒を除去して廃棄するか、または再利用する必要がないという利点がある。それにもかかわらず、驚くべきことに、この方法または反応は、高い変換率および生産性で、少なくとも本質的に著しい副生成物の形成はなしに継続することできるものである。
【0067】
特に、本発明によれば、反応は、触媒、特に酵素および/または金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で、特に酵素および/または金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で、好ましくは酵素の存在下で実行されることが提供される。特に、触媒は反応後に再利用されるものである。
【0068】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、反応は、触媒としての酵素の存在下で実行されることが好ましい。
【0069】
特に、酵素は、シンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0070】
特に、前記酵素は、特にカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)、サーモマイセスランギノサス、カンジダルゴーサ、ニホンコウジカビ、シュードモナスセパシア、シュードモナスフルオレッセンス、リゾープスデレマおよびシュードモナス属細菌およびそれらの組み合わせに由来することが可能であり、好ましくはカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)およびサーモマイセスランギノサスに由来するものである。
【0071】
特に、酵素は、固定化形態で、特に担体上に、好ましくはポリマー担体上に、好ましくはポリマー有機担体上に、より好ましくは疎水性を有して、さらにより好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂ベースの担体上に固定化して使用することができる。
【0072】
特に、前記酵素は反応後に再利用されることが好ましい。
【0073】
前記反応が触媒としての酵素の存在下で行われる場合、触媒としての酵素の存在下での反応は、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらにより好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で、実行されることが好ましい。
【0074】
前記酵素は、開始化合物(I)および(II)の総量に基づいて、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%から15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲の量で特に使用されることが好ましい。
【0075】
触媒としての酵素の存在下での反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらにより好ましくは約1バールの圧力で実行されることが好ましい。
【0076】
本発明の方法の代替の特定の実施形態によれば、前記反応は、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で実行されることが好ましい。
【0077】
前記触媒は、特に(i)NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)2、NaOMe、KOMeおよびNa(OBu-tert.)のような塩基性触媒、特にアルカリまたはアルカリ土類水酸化物およびアルカリまたはアルカリ土類アルコール酸塩、(ii)例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびカルボン酸のような酸性触媒、特に鉱酸および有機酸、(iii)テトラブチレートチタン、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウムおよびトリイソプロピルアルミニウムなどのルイス酸、特にチタン、スズ、亜鉛およびアルミニウム化合物に基づくルイス酸、および(iv)特にゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ハイドロタルサイト、アルミナなどのケイ酸鉱物、ゲルマネート、炭酸塩、酸化アルミニウム、およびそれらの組み合わせに基づく不均一系触媒、から選択することができる。
【0078】
特に、アルカリまたはアルカリ土類アルコール酸塩を触媒として使用することができる。
【0079】
特に、また、この実施形態によれば、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒に基づく触媒は、反応後に再利用されることが好ましい。
【0080】
本発明によれば、前記反応は、金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下で、20℃~150℃の範囲内、特に50℃~140℃の範囲内、好ましくは70℃~130℃の範囲内、より好ましくは80℃~125℃の範囲内、さらにより好ましくは100℃~120℃の範囲内の温度で実行することができる。
【0081】
さらに、前記触媒は、式(I)および(II)の出発化合物の総量に基づいて、0.01重量%~30重量%の範囲内、特に0.05重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.2重量%~10重量%の範囲内の量で使用することができる。
【0082】
金属含有および/または金属ベースの酸性または塩基性触媒の存在下での前記反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらにより好ましくは約1バールの圧力で実行されることが好ましい。
【0083】
出発化合物または抽出物の生成に関して、以下に言及する。
【0084】
一般式(I)において、ラジカルR1、R2およびR3の少なくとも1つが、ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-を示す場合、および、ラジカルR1、R2およびR3の少なくとも1つが、ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-を示す場合、一般式(I)のグリセリドは、適切なエステル交換によって取得可能であるか、または、一般式(I)のグリセリドは、適切なエステル交換によって得られることが好ましい。
【0085】
本発明の方法の特別な実施形態によれば、エステル交換は、エステル交換条件下で、
同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR9、R10およびR11が、
・水素、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、を示すものであるが、
ただし、少なくとも2つおよびラジカルR9、R10およびR11が水素を表さないということを条件とする
一般式(Ia)
R9O-CH2-CH(OR10)-CH2-OR11 (Ia)
の少なくとも1つの化合物を、
同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR12、R13およびR14が、
・水素、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、をしめすものであるが、
ただし、少なくとも2つおよび好ましくはラジカルR12、R13およびR14が水素を示さないということを条件とする一般式(Ib)
R12O-CH2-CH(OR13)-CH2-OR14 (Ib)
の少なくとも1つの化合物と反応させることによって、
または(逆に)
上記で定義される一般式(Ib)の少なくとも1つの化合物が、エステル交換条件下で、上記で定義される一般式(Ia)の少なくとも1つの化合物と反応させることによって、
実行されることが好ましい。
【0086】
一般式(Ia)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR9、R10およびR11は、線状型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-、特に線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-ラジカルを示すことが特に好ましい。
【0087】
さらに、一般式(Ib)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR12、R13およびR14は、特に、線形型(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-、特に線状(直鎖)または分岐、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-(O)-のラジカルを示すことが特に好ましい。
【0088】
一般式(Ia)において、ラジカルR9、R10およびR11の1つが、水素を示す場合、特に一般式(Ia)の化合物が、部分的加水分解、特に一般式(Ia)のそれぞれの開始トリグリセリドの部分的(選択的)酵素触媒加水分解によって得られることが本発明によって提供されることが好ましいものにおいて、ラジカルR9、R10およびR11のいずれも水素を示さず、および/または、同一または異なるそれぞれ互いに独立したラジカルR9、R10およびR11が、ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-を示すものである。
【0089】
さらに、本発明によれば、一般式(Ib)において、ラジカルR12、R13およびR14のうちの1つが水素を表す場合、一般式(Ib)の化合物が得られ、および/または、部分加水分解、特に一般式(Ib)のそれぞれの開始トリグリセリドの部分的(選択的)酵素触媒加水分解によって得られることが特に提供されることが好ましく、ラジカルR12、R13およびR14のいずれも水素を示すものではなく、および/または、同一または異なるそれぞれ互いに独立したラジカルR12、R13およびR14が、ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-を示すものである。
【0090】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、エステル交換は酵素触媒的に行われることが意図されることが好ましい。
【0091】
本発明の方法のこの特定の実施形態によれば、エステル交換は、触媒としての酵素の存在下で実行されることによって、前記酵素は、シンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、およびそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。特に、前記酵素は、特にカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)、サーモマイセスランギノサス、カンジダルゴーサ、ニホンコウジカビ、シュードモナスフルオレッセンス、リゾープスデレマおよびシュードモナス属細菌およびそれらの組み合わせに由来するものであり、好ましくはカンジダアンタルクチカ、ムコールミエヘイ(リゾムコールミエヘイ)およびサーモマイセスランギノサスに由来するものであることが好ましい。前記酵素が、固定化された形態で、特に担体上に、好ましくはポリマー担体上に、より好ましくはポリマー有機担体上に固定化されることが好ましく、より好ましくは疎水性を有して、さらにより好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂ベースの担体上に固定化されて使用されることが好ましい。さらに前記酵素は、エステル交換後に再利用されることが好ましい。
【0092】
特に、エステル交換は、触媒としての酵素の存在下で、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらにより好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で実行することができる。
【0093】
特に、前記酵素は、開始化合物(Ia)および(Ib)の総量に基づいて、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量で使用されることが好ましい。
【0094】
前記エステル交換は、触媒としての酵素の存在下で、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらにより好ましくは約1バールの圧力で実行されることが好ましい。
【0095】
本発明の方法の特別の実施形態によれば、一般式(II)において、ラジカルR4が、ラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-である場合、一般式(II)の3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸誘導体が、
ラジカルR5が、上記で定義された意味を有し、特に水素またはC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはエチルを示す
一般式(IV)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR5 (IV)
の化合物と、
同一または異なるそれぞれ互いに独立したラジカルR15およびR16が、ラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-を示す
一般式(V)
の少なくとも1つのカルボン酸無水物と反応することによって、取得可能でありおよび/または取得され、
R5が水素を示す場合、付加的に加水分解が継続されることが提供されることが好ましい。
【0096】
特に、一般式(IV)の少なくとも1つの化合物と一般式(V)の少なくとも1つのカルボン酸無水物との反応は、60~150℃の範囲内、特に70~120℃の範囲内、好ましくは80~100℃の範囲内の温度で実行されることが好ましい。
【0097】
さらに、一般式(IV)の少なくとも1つの化合物と一般式(V)の少なくとも1つのカルボン酸無水物との反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内で、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、特に約1バールの圧力で実行されることが好ましい。
【0098】
特に、一般式(IV)の少なくとも1つの化合物と、一般式(V)の少なくとも1つのカルボン酸無水物を有する化合物との反応の間、
ラジカルR17が、それぞれ上記で定義された意味を有するラジカルR15またはR16を示す
一般式(VI)
R17-C(O)-OH (VI)
が同時に形成されるものである。特に、一般式(VI)による化合物は、反応が起こっている間または後に、特に反応が起こった後、好ましくは蒸留によって回収することができる。
【0099】
一般式(V)においてラジカルR15およびR16が互いに異なる場合、および/または、一般式(V)においてラジカルR15およびR16がそれぞれ2つ以上の炭素原子を有するアルキルラジカルを示す場合、
一般式(V)のカルボン酸無水物が、
無水酢酸(無水酢酸)と、
ラジカルR18が、それぞれ上記で定義された意味を有するラジカルR15またはR16を示すが、ただしラジカルR15およびR16が互いに異なること、および/またはラジカルR15およびR16が、同一または異なることを条件とし、および/または、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR15およびR16が、2つ以上の炭素原子を持つアルキルラジカルを示すことを条件とした
一般式(VII)
R18-C(O)-OH (VII)の少なくとも1つのカルボン酸と反応することによって、取得可能でありおよび/または取得されることが提供されることが好ましい。
【0100】
特に、無水酢酸と一般式(VII)の少なくとも1つのカルボン酸との反応は、下記する化学反応式よって生じるものである。
【0101】
【0102】
無水酢酸と一般式(VII)の少なくとも1つのカルボン酸との反応は、60~150℃の範囲内、特に70~120℃の範囲内、好ましくは80~100℃の範囲内の温度で、実行されることが好ましい。
【0103】
無水酢酸と一般式(VII)の少なくとも1つのカルボン酸との反応は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、より具体的には約1バールの圧力で実行されることが好ましい。
【0104】
この合成によれば、特に一般式(V)の対称的なカルボン酸無水物を生成することができる。 特に、一般式(V)において、ラジカルR15およびR16は同一であり、2つ以上の炭素原子を有するアルキル基を示すものである。
【0105】
しかしながら、代替の実施形態によれば、一般式(V)の不斉カルボン酸無水物もまた、この合成によって生成される。特に、一般式(V)において、ラジカルR15およびR16は、互いに異なることが好ましい。さらに一般式(V)において、ラジカルR15およびR16は、それぞれ2つ以上の炭素原子を有するアルキルラジカルを示すことが好ましい。
【0106】
本発明の製造方法に関連して、一般式(II)におけるラジカルR5が水素を示す場合、
ラジカルR4が上記に定義された意味を有する
一般式(IIa)
[CH3-CH(OR4)-CH2-C(O)]2O (IIa)
のその無水物が、遊離酸の代わりに使用されることが好ましい。
【0107】
本発明の製造方法に関して、反応生成物として、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含み、且つ、
同一または異なるそれぞれがお互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ ラジカルR4が、上記に定義された意味を有し、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-を示すラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただしラジカルR6、R7およびR8の少なくとも1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応する1つまたは複数の脂質が得られるものである。
【0108】
特に、本発明の製造方法に関して、反応生成物として、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含み、且つ、
同一または異なるそれぞれお互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-、特に線形(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-、
・線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-、特に線形(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-、
・ ラジカルR4が、上記に定義された意味を有し、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-である線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和CH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-のラジカルを示すものであるが、
ただし少なくとも1つのラジカルR6、R7およびR8が、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応する1つまたは複数の脂質が得られることが好ましいものである。
【0109】
特に、本発明の製造方法に関して、反応生成物として、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含み、且つ、
同一または異なるそれぞれがお互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ ラジカルR4が、上記に定義された意味を有し、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただし2つのラジカルR6、R7およびR8が、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応する1つまたは複数の脂質が得られることが好ましいものである。
【0110】
特に、本発明の製造方法の特別な実施形態によれば、反応生成物として、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含み、且つ、
同一または異なるそれぞれがお互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ ラジカルR4が、上記に定義された意味を有し、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただしラジカルR6、R7およびR8の2つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応する1つまたは複数の脂質が得られることが好ましいものである。
【0111】
特に、本発明の製造方法の別のさらなる実施経営によれば、反応生成物として、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含み、且つ、
同一または異なるそれぞれがお互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が、上記に定義された意味を有し、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただしラジカルR6、R7およびR8の2つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応する1つまたは複数の脂質が得られることが好ましいものである。
【0112】
特に、本発明の製造方法のさらなる実施形態によって、反応生成物として、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含み、且つ、
同一または異なるそれぞれがお互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ ラジカルR4が、上記に定義された意味を有し、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただしラジカルR6、R7およびR8の2つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応する1つまたは複数の脂質が得られることが好ましいものである。
【0113】
特に、本発明の製造方法の別のさらなる実施形態によって、反応生成物として、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含み、且つ、
同一または異なるそれぞれがお互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ ラジカルR4が、上記に定義された意味を有し、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただしラジカルR6、R7およびR8の1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応する1つまたは複数の脂質が得られることが好ましいものである。
【0114】
最後に、本発明の製造方法の別のさらなる実施形態によって、反応生成物として、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含み、且つ、
同一または異なるそれぞれがお互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ ラジカルR4が、上記に定義された意味を有し、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただしラジカルR6、R7およびR8の1つが、ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-を示すものであり、且つ、ラジカルR6、R7およびR8の1つが、ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-を示すラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応する1つまたは複数の脂質が得られることが好ましいものである。
【0115】
前述のように、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下および/または溶媒なしで(すなわち、質量反応として、または物質内の反応として、またはいわゆるバルク反応として)実施される。これは、得られた反応生成物が溶媒で汚染されておらず、方法または反応が実行された後、費用がかかりエネルギー集約的な方法において、溶媒を除去し廃棄または再利用する必要がないという利点を有する。それにもかかわらず、驚くべきことに、この方法または反応は、少なくとも本質的に、著しい副生成物の形成なしに高い変換率および生産性で進行する。
【0116】
本発明の方法は、純粋に例として、そして非限定的な方法で、以下の一般的な反応スキームによって説明される。このスキームでは、ラジカルR1’は、ラジカルC12-C29-アルキルを示し、ラジカルR2’は、ラジカルC1-C11-アルキルを示し、ラジカルR3’は、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-を示す。ラジカルR2’MCT-オイルは、ラジカルR2’を有するトリグリセリドを示す。ラジカルR1’MCTオイルは、ラジカルR1’を含むトリグリセリドを示す。3-アセトキシ-BHB無水物は、3-アセトキシ酪酸の無水物である。3-R3’-BHB-EEは、3-アセトキシ酪酸のエチルエステルである。略語「cat」は、触媒(例えば、酵素またはアルコール酸塩などの化学触媒)を表す。以下の反応スキームが示すように、3-BHBの異なるトリグリセリドは、本発明の方法で得ることができ、これは特に例えば中鎖および/または長鎖トリグリセリドまたは脂肪酸、特にいわゆる魚油によって、さらにランダム化されるものである。
【0117】
【0118】
本発明の第2の態様によるさらなる主題は、本発明の方法または本発明の反応生成物に従って得られる反応生成物(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む1つまたは複数の脂質)(請求項36~47参照)。
【0119】
特に、本発明のこの態様による本発明の主題は、請求項48~56に定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質である。
【0120】
特に、本発明のこの態様による本発明の主題は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質であり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質は、一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものにおいて、
一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が上記で定義された意味を持ち、且つ、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-を示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の少なくとも1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とする(且つ、好ましくは、ただし、ラジカルR6、R7およびR8のすべてが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-、を示す場合において、ラジカルR6、R7およびR8の少なくとも1つにおいて、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-に存在するラジカルR4が、水素を示さないことを条件とする)。
【0121】
さらに、本発明のこの態様による本発明の主題は、特に上記で定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質であり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質が、一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものであり、
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C1-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C2-C11-アルキル-C(O)-のラジカル、
・線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C12-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、特に線形(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和C19-C29-アルキル-C(O)-のラジカル、
・ラジカルR4が、上記で定義された意味を持ち、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-を示す線形型(直鎖)または分枝、飽和またはモノ-またはポリ不飽和CH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-のラジカルを示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の少なくとも1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0122】
この場合も、本発明のこの態様による本発明のさらなる主題は、特に上記で定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質であり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質は、一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものであり、
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が、上記で定義された意味を持ち、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の2つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0123】
本発明のこの態様による本発明の別の主題は、特に上記で定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質であり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質は、一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものであり、
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が、上記で定義された意味を持ち、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の2つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0124】
さらに、本発明のこの態様によれば、本発明の主題はまた、特に上記で定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質であり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質が、一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものであり、
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が、上記で定義された意味を持ち、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の2つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0125】
本発明のこの態様による本発明のさらなる主題は、特に上記で定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質であり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質が、一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものであり、
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が、上記で定義された意味を持ち、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0126】
さらに、本発明のこの態様によれば、本発明は、特に上記で定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質に関するものであり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質は、
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものであり、
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が、上記で定義された意味を持ち、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0127】
本発明のこの態様によれば、本発明はまた、特に上記で定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質に関するものであり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質は、
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものであり、
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が、上記で定義された意味を持ち、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0128】
最後に、本発明のこの態様によれば、本発明の別の主題は、特に上記で定義されるように、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質であり、
3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質は、
一般式(III)
R6O-CH2-CH(OR7)-CH2-OR8 (III)
に対応するものであり、
前記一般式(III)において、同一または異なるそれぞれが互いに独立したラジカルR6、R7およびR8が、
・ラジカルC1-C11-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ラジカルC12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-、
・ラジカルR4が、上記で定義された意味を持ち、特にラジカルR4が、水素またはラジカルC1-C30-アルキル-C(O)-、特にC1-C21-アルキル-C(O)-、好ましくはC3-C21-アルキル-C(O)-であるラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すものであるが、
ただし、ラジカルR6、R7およびR8の1つが、ラジカルCH3-CH(OR4)-CH2-C(O)-を示すこと、且つ、ラジカルR6、R7およびR8の1つが、C1-C11-アルキル-C(O)-、特にC2-C11-アルキル-C(O)-を示すこと、且つ、ラジカルR6、R7およびR8の1つが、C12-C29-アルキル-C(O)-、特にC19-C29-アルキル-C(O)-を示すことを条件とするものである。
【0129】
本発明のこの態様による本発明のさらなる主題は、上記で定義されているような一般式(III)の3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む少なくとも2つの異なる脂質を含む混合物である。
【0130】
特に、本発明のこの態様による本発明のさらなる主題は、上記で定義されているような一般式(III)の3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む少なくとも3つの異なる脂質を含む混合物である。
【0131】
それぞれ本発明の方法によって得られる反応生成物または上記定義されたような本発明の反応生成物、および/または、本発明の方法によって取得可能な3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質、または、それぞれ上記で定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む本発明の脂質、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物、または、それぞれ上記に定義されたような本発明の混合物は、従来技術と比較して多数の利点および特別な機能を具備する。
【0132】
出願人は驚くべきことに、本発明の方法によって得られる反応生成物または上記で定義された本発明の反応生成物、および/または、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記で定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む本発明の脂質、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物または上記で定義された本発明の混合物は、一方では、特に胃腸管で、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩に生理学的に変換され、他方では、特に非毒性および許容可能な官能特性に関して、優れた生理学的適合性または耐容性を同時に含むことから、それぞれ、3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の前駆体または代謝物として特に適していることを、発見した。
【0133】
さらに、本発明の方法に従って得られる反応生成物またはそれぞれが上記で定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法に従って得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記で定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む本発明の脂質、および/または、本発明の製造方法によって取得可能な混合物またはそれぞれ上記で定義されるような本発明の混合物が、容易にアクセス可能であるか、または、商業規模であっても、合成ベースで大規模に利用可能であり、要求された製薬または薬理学的品質を備えているものである。
【0134】
さらに、本発明の方法によって得られる反応生成物またはそれぞれ上記で定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法に従って得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記で定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む本発明の脂質、および/または、それぞれ上記で定義された本発明の製造方法によって得られる混合物またはそれぞれ上記で定義された本発明の混合物は、必要に応じて、鏡像異性的に純粋または鏡像異性的に濃縮された形態で提供されるものである。
【0135】
さらに、本発明の方法によって得られる反応生成物またはそれぞれ上記で定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法に従って得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記で定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む本発明の脂質、および/または、それぞれ上記で定義された本発明の製造方法によって得られる混合物またはそれぞれ上記で定義された本発明の混合物は、これによって、人体または動物体のケト体療法に関して効率的な薬理学的薬物標的を示すものである。
【0136】
以下では、本発明の残りの態様をより詳細に説明する。
【0137】
本発明のさらなる主題は、本発明の第3の態様によれば、本発明の製造方法によって得られる反応生成物またはそれぞれ上記に定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記に定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物またはそれぞれが上記に定義された本発明の混合物を含む医薬組成物、特に薬物または薬剤である。
【0138】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置における使用のための医薬組成物に関する。これは、特にエネルギー代謝の障害に関連する病気、特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトボディ代謝、心筋梗塞、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかんなどの心血管疾患、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損症(GLUT1欠損症)、VL-FAODなどの脂肪代謝性疾患、およびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星状細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、リウマチ性関節炎や尿路関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管の疾患、スフィンゴリピドー症などのライソゾーム病、特にニーマンピック病、糖尿病、そして化学療法の効果または副作用と関連することが好ましい。
【0139】
この場合も、本発明のさらなる主題は、本発明の第4の態様によれば、特にエネルギー代謝の障害に関連する病気、特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトボディ代謝、心筋梗塞、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかんなどの心血管疾患、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損症(GLUT1欠損症)、VL-FAODなどの脂肪代謝性疾患、およびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星状細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、リウマチ性関節炎や尿路関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管の疾患、スフィンゴリピドー症などのライソゾーム病、特にニーマンピック病、糖尿病、そして化学療法の効果または副作用と関連する人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置における使用のための本発明の製造方法によって得られる反応生成物またはそれぞれ上記に定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記に定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物またはそれぞれが上記に定義された本発明の混合物である。
【0140】
本発明のさらなる主題は、本発明の第4の態様によれば、人体または動物体の疾患、特にエネルギー代謝の障害、特にエネルギー代謝の障害に関連する病気、特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトボディ代謝、心筋梗塞、リフィーディング症候群、食欲不振、てんかんなどの心血管疾患、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損症(GLUT1欠損症)、VL-FAODなどの脂肪代謝性疾患、およびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星状細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、リウマチ性関節炎や尿路関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管の疾患、スフィンゴリピドー症などのライソゾーム病、特にニーマンピック病、糖尿病、そして化学療法の効果または副作用と関連する人体または動物体の疾患の予防的および/または治療的処置のためのまたは予防的および/または治療的処置のための薬剤を製造するための本発明の製造方法によって得られる反応生成物またはそれぞれ上記に定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記に定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物またはそれぞれが上記に定義された本発明の混合物の使用である。
【0141】
同様に、本発明の第6の態様によると、本発明のさらなる主題は、予防的および/または治療的治療のため、または飢餓、食事療法または低炭水化物栄養などの異化代謝状態の予防的および/または治療的治療のためのまたは適用のための薬剤を製造するための本発明の製造方法によって得られる反応生成物またはそれぞれ上記に定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記に定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物またはそれぞれが上記に定義された本発明の混合物の使用である。
【0142】
同様に、本発明の第7の態様によれば、本発明のさらなる主題は、本発明の製造方法によって得られる反応生成物またはそれぞれ上記に定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記に定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物またはそれぞれが上記に定義された本発明の混合物を含む食品および/または食品生成物である。
【0143】
特定の実施形態によれば、食品および/または食品生成物は、本質的に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、栄養補助食品、パワースナック、食欲抑制剤または 強度および/または耐久性のスポーツサプリメントであることが好ましい。
【0144】
最後に、本発明のさらに別の主題は、本発明の第8の態様によれば、食品および/または食品生成物における本発明の製造方法によって得られる反応生成物またはそれぞれ上記に定義された本発明の反応生成物、および/または、本発明の製造方法によって得られる3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質またはそれぞれ上記に定義された3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質、および/または、本発明の製造方法によって得られる混合物またはそれぞれが上記に定義された本発明の混合物の使用である。
【0145】
本発明のこの態様によれば、食品および/または食品生成物は、特に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、栄養補助食品、パワースナック、食欲抑制剤または強度および/または耐久性のスポーツサプリメントであることが好ましい。
【0146】
さらなる実施形態、本発明の修正および変形は、本発明の範囲を離れることなく、説明を読むときに当業者によって容易に認識または実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0147】
本発明は、本発明を決して限定することを意図するものではなく、本発明の例示的かつ非限定的な実施および構成を説明することのみを意図する以下の実施例によって例示される。
【0148】
生産例
本発明の製造方法は、以下の実施例によって説明される。関連する一般的な反応スキームは、一般的な説明の部分に示されて説明される。
【実施例1】
【0149】
長鎖脂肪酸(LCFA)、中鎖脂肪酸(MCFA)および3-ヒドロキシ酪酸(BHBまたは3-BHB)に基づく鎖を持つ混合トリグリセリドの製造(すなわち、混合された長鎖脂肪酸(LCFA)、中鎖脂肪酸(MCFA)および3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB)トリグリセリド)
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた2,000mlのマルチネックフラスコに、500gの中鎖トリグリセリド(トリグリセリドを含むC8/C10脂肪酸、比率60%/40%)と900gの長鎖精製漂白脱臭魚油(EPA/DHA含有量20~50%、比率50:50)を、真空(<100ミリバール)下で、12~24時間、50~70℃の温度で、14gの固定化酵素(CALB)を使用して撹拌しながら反応させる。酵素は濾過される。反応生成物は、ランダム化されたLCF/MCFトリグリセリドである。
【0150】
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた2,000mlのマルチネックフラスコにおいて、上記で調製したランダム化されたLCF/MCFトリグリセリド1,000gは、500gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHBエチルエステル)および15gの固定化酵素(CALB、例えば固定化酵素、例えばカンジダアンタルクチカ、例えばシグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435またはストレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ)によって、50℃~70℃の温度で真空下(<500ミリバール)において、24時間~36時間、エステル化される。その後、酵素はろ過される。
【0151】
反応生成物は、LCF/MCF/3-BHBトリグリセリドまたは構造化脂質である。
【0152】
胃または腸の培地(胃をシミュレートするFaSSGF培地、または腸管をシミュレートするFaSSIF培地)におけるこの反応生成物の切断実験(切断試験)は、いずれの場合もパンクレリパーゼの存在下または非存在下で、自由形式の3-BHBへの切断を示す。これらの開裂実験は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質(ここでは具体的には得られた反応生成物)が、特にそれらの意図された効果に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に適合性のある形でも存在することを証明する。
【実施例2】
【0153】
長鎖脂肪酸(LCFA)と3-ヒドロキシ酪酸(BHBまたは3-BHB)に基づく鎖を持つ混合トリグリセリドの生産(すなわち、混合長鎖脂肪酸(LCFA)と3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB)トリグリセリド)
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコに、500gの長鎖精製漂白脱臭魚油(EPA/DHA含有量20~50%、比率50:50)が、200gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHBエチルエステル)および15gの固定化酵素(CALB)を使用して、50~70℃および真空下(<500ミリバール)で、24~36時間の間、エステル交換される。その後、酵素はろ過される。
【0154】
反応生成物は、LCF/3-BHBトリグリセリドまたは構造化脂質である。
【0155】
胃または腸の培地(胃をシミュレートするFaSSGF培地、または腸管をシミュレートするFaSSIF培地)におけるこの反応生成物の切断実験(切断試験)は、いずれの場合もパンクレアチンの存在下または非存在下で、自由形式の3-BHBへの切断を示す。これらの開裂実験は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質(ここでは具体的には得られた反応生成物)が、特にそれらの意図に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に互換性のある形でも存在することを証明する。
【実施例3】
【0156】
混合中鎖脂肪酸(MCFA)/3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB)トリグリセリドの調製
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコにおいて、500gの中鎖トリグリセリド(C8/C10脂肪酸を含むトリグリセリド、比率60%/40%)を120gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-bHBエチルエステル)および15gの固定化酵素(CALB)で、50~70℃および真空下(<500ミリバール)で、24~36時間の間、エステル交換される。その後、酵素はろ過される。
【0157】
反応生成物は、MCF/3-BHBトリグリセリドまたは構造化脂質である。
【0158】
胃または腸の培地(胃をシミュレートするFaSSGF培地、または腸管をシミュレートするFaSSIF培地)でのこの反応生成物の切断実験(切断試験)は、いずれの場合もパンクレクチンの存在下または非存在下で、自由形式の3-BHBへの切断を示す。これらの開裂実験は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質(ここでは具体的には得られた反応生成物)が、特にそれらの意図に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に互換性のある形でも存在することを証明する。
【実施例4】
【0159】
部分グリセリドと3-アセトキシ酪酸無水物からの混合中鎖脂肪酸(MCFA)と3-アセトキシ酪酸(Ac-BHB)トリグリセリドの調製
デフレグメーター(部分コンデンサ)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコにおいて、25gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB)が、95gの酢酸に提供される。90gの無水酢酸が、N2雰囲気下および80℃の温度で、1時間にわたって反応混合物に滴下して加えられる。前記反応混合物は、80℃で、さらに4~5時間撹拌される。3gの中鎖モノ-/ジ-グリセリド(C8/C10脂肪酸、比率60%/40%;グリセリド分布;モノエステル30~70%、ジ-エステル10~30%、トリ-エステル1~5%)が、80℃で反応混合物に添加され、4~5時間の間撹拌される。得られた3-アセトキシ酪酸または酢酸は、100~120℃で真空(<50ミリバール)下において蒸留除去される。
【0160】
前記反応生成物は、MCF/3-アセトキシ-BHBトリグリセリドである。
【0161】
胃または腸の培地(胃をシミュレートするFaSSGF培地、または腸管をシミュレートするFaSSIF培地)におけて、この反応生成物の切断実験(切断試験)は、いずれの場合もパンクレクチンの存在下または非存在下で、自由形式の3-BHBへの切断を示す。これらの開裂実験は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質(ここでは具体的には得られた反応生成物)が、特にそれらの意図に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に互換性のある形でも存在することを証明する。
【実施例5】
【0162】
部分グリセリドと3-アセトキシ酪酸無水物からの混合長鎖脂肪酸(LCFA)と3-アセトキシ酪酸(AC-BHB)のトリグリセリドの製造
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコにおいて、500gの長鎖精製漂白脱臭魚油(EPA/DHA含有量20~50%、比率50:50)は、250gの水と03.4gの酵素リパーゼで、40℃で撹拌しながらN2雰囲気で、8~2時間選択的に切断される。主にC20未満の脂肪酸が分離される。次に、相が分離され、有機相がろ過される。有機相は、遊離脂肪酸(主に<C20)と、LCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドからなる。遊離脂肪酸(<C20)は、真空下、140~180℃の温度で、短行程蒸留によって反応混合物から蒸留除去される。LCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物が得られる。
【0163】
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコにおいて、25gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB)が、95gの酢酸に提供される。90gの無水酢酸は、N2雰囲気下80℃で、1時間にわたって、反応混合物に滴下して加えられる。反応混合物は、80℃で、さらに4~5時間撹拌される。LCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの上記混合物2gは、80℃で反応混合物に添加され、4~5時間撹拌される。得られた3-アセトキシ酪酸または酢酸は、100~120℃で真空(<50ミリバール)下において、蒸留除去される。
【0164】
前記反応生成物は、LCF/アセチル-BHBトリグリセリド(3-アセトキシ-BHBトリグリセリド)である。
【0165】
胃または腸の培地(胃をシミュレートするFaSSGF培地、または腸管をシミュレートするFaSSIF培地)でのこの反応生成物の切断実験(切断試験)は、いずれの場合もパンクレアチンの存在下または非存在下で、自由形式の3-BHBへの切断を示す。これらの開裂実験は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質(ここでは具体的には得られた反応生成物)が、特にそれらの意図に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に互換性のある形でも存在することを証明する。
【実施例6】
【0166】
部分グリセリドと3-アセトキシ酪酸無水物からの混合長鎖脂肪酸(LCFA)、中鎖脂肪酸(MCFA)および3-アセトキシ酪酸(Ac-BHB)トリグリセリドの調製
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコにおいて、500gの長鎖精製漂白脱臭魚油(EPA/DHA含有量20~50%、比率50:50)は、250gの水0.4gの酵素リパーゼを用いて40℃で撹拌しながらN2雰囲気下で8~12時間選択的に切断される。主にC20未満の脂肪酸が分離される。次に、相が分離され、有機相がろ過される。有機相は、遊離脂肪酸(主に<C20)と、LCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドで構成される。遊離脂肪酸(<C20)は、真空下、140~180℃の温度で、短行程蒸留によって反応混合物から蒸留除去される。LCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物が得られる。
【0167】
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコにおいて、25gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB)が、95gの酢酸で提供される。90gの無水酢酸が80℃でN2雰囲気下において、1時間にわたって反応混合物に滴下により追加される。前記反応混合物は、80℃でさらに4~5時間撹拌される。上記で調製したLCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド30gおよび7.5gの中鎖モノ-/ジ-グリセリド(C8/C10脂肪酸、比率60%/40%;グリセリド分布:モノ-エステル30~70%、ジ-エステル10~30%、トリ-エステル1~5%)は、80℃で反応混合物に追加され、4~5時間撹拌される。結果として得られた3-アセトキシ酪酸は、100~120℃で真空(<50ミリバール)下において蒸留除去される。残りの反応生成物は、撹拌の間40℃で、N2雰囲気下において8~12時間、固定化酵素(CALB)によってランダム化される。
【0168】
前記反応生成物は、LCF/MCF/アセチル-BHBトリグリセリド(3-アセトキシ-BHBトリグリセリド)である。
【0169】
胃または腸の培地(胃をシミュレートするFaSSGF培地、または腸管をシミュレートするFaSSIF培地)でのこの反応生成物の切断実験(切断試験)は、いずれの場合もパンクレアチンの存在下または非存在下で、自由形式の3-BHBへの切断を示す。これらの開裂実験は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質(ここでは具体的には得られた反応生成物)が、特にそれらの意図に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に互換性のある形でも存在することが証明される。
【実施例7】
【0170】
部分グリセリドからの混合長鎖脂肪酸(LCFA)、中鎖脂肪酸(MCFA)および3-ヒドロキシ酪酸(3-BHB)トリグリセリドの製造
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた1,000mlのマルチネックフラスコにおいて、500gの長鎖精製漂白脱臭魚油(EPA/DHA含有量20~50%、比率50:50)は、250gの水0.4gの酵素リパーゼを用いて、40℃で撹拌しながらN2雰囲気下において8~12時間選択的に切断される。主にC20未満の脂肪酸が分離される。次に、相が分離され、有機相が濾過する。 有機相は、遊離脂肪酸(主に<C20)と、LCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドからなる。遊離脂肪酸(<C20)は、真空下、140~180℃の温度での短行程蒸留によって反応混合物から蒸留除去される。LCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物が得られる。
【0171】
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた250mlのマルチネックフラスコにおいて、LCFA(>C20)のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの上記で調製した混合物50g、中鎖モノグリセリド、ジグリセリド(C8/C10脂肪酸脂肪酸比率60%/40%;モノ-エステル30~70%、ジ-エステル10~30%、トリグリセリド1~5%)および(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHBエチルエステル)が、0.85g固定化酵素(CALB)によって、50~70℃の温度で、真空下(<500ミリバール)エステル変換される。
【0172】
前記反応生成物は、LCF/MCF/3-BHBトリグリセリドである。
【0173】
胃または腸の培地(胃をシミュレートするFaSSGF培地、または腸管をシミュレートするFaSSIF培地)でのこの反応生成物の切断実験(切断試験)は、いずれの場合もパンクレアチンの存在下または非存在下における自由形式の3-BHBへの切断を示す。これらの開裂実験は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質(ここでは具体的には得られた反応生成物)が、特にそれらの意図に関して、遊離3-ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に互換性のある形でも存在することを証明する。
【実施例8】
【0174】
3-アセトキシ酪酸エチルエステル(3-Ac-BHBエチルエステル)の調製とその後の反応
デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた250mlのマルチネックフラスコにおいて、(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(ラセミ3-BHBエチルエステル)50gおよび無水酢酸55gが提供される。前記反応混合物は、100℃で撹拌しながら還流下で10時間反応させる。次に、酢酸および過剰の無水酢酸を真空下で蒸留除去する。純度98%の3-アセトキシ酪酸エチルエステルが得られる。特性評価は、ガスクロマトグラフィー(GC)およびGC-MS分析(質量分析カップリングを備えたガスクロマトグラフィー)によって行われる。売上高/時間曲線の結果は、次の表に要約される。
【0175】
【0176】
3-アセトキシ酪酸エチルエステル(3-Ac-BHBエチルエステル)のさらなる変換と適用試験は、以下に説明される:
さらに、このようにして得られた3-アセトキシ酪酸エチルエステルは、触媒としての酵素(例えば、カンジダアンタルクチカ、例えばシグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のpNovozym(登録商標)435またはストレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435に由来するポリマー支持体上のCALBリパーゼなどの固定化酵素)によるグリセリドへのエステル変換における開始材料として使用されるものである。トリアセチンは、さらなる出発物質として使用される。それはすでにアセチル基を含んでいるので、3-BHBエチルエステルのすでにアセチル化されたOH基でのエステル交換中に望ましくない副生成物は形成されない。副産物として簡単に除去できる酢酸エチルのみが生成される。3-アセトキシ酪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物が形成される。この製品は、本発明による製品の類似体またはモデル物質である。
【0177】
胃または腸の培地(胃をシミュレートするFaSSGF培地または腸管をシミュレートするFaSSIF培地)でのこの混合物の切断実験(切断試験)は、いずれの場合もパンクレアチンの存在下または非存在下で、遊離形式における3-BHBへの切断を示している(トリグリセリドからジグリセリドを介してモノグリセリドへ、遊離3-BHBへの切断カスケード)。これらの開裂実験は、ブロックされた3-ヒドロキシ酪酸またはその塩のグリセリドも、特にそれらの意図された効果に関して、遊離ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に適合性のある形態でも存在することを証明している。
【実施例9】
【0178】
その他の製造例:カルボン酸無水物合成(抽出物)
記載されているカルボン酸無水物の製造方法によれば、ヘプタン酸(C7酸)、ラウリン酸(C12酸)およびオレイン酸(C18酸)のカルボン酸無水物が最初に製造される。
【0179】
ヘプタン酸(C7酸)の無水カルボン酸を調製するには、ヘプタン酸860gが、デフレグメーター(部分コンデンサー)と蒸留ブリッジを備えた2,000mlのマルチネックフラスコに入れられ、無水酢酸445gが、90℃での撹拌中に追加される。次に、反応混合物は、撹拌しながら6時間、還流下、130℃で反応される。次に、酢酸および過剰の無水酢酸は、真空下で蒸留除去される。ヘプタン酸無水物が得られる。特性評価は、GCおよびGCMSによって実行される。
【0180】
ラウリン酸(C12酸)とオレイン酸(C18酸)のカルボン酸無水物も同じ方法で製造される。
【0181】
続いて-上記の3-アセトキシ酪酸エチルエステルの生成に対応して-関連するカルボン酸無水物が、3-BHBエチルエステルと反応し、その結果、3-カルボン酸無水物でキャップされた3-BHBエチルエステルが生じる。これらは、記載された合成における抽出物として使用される。
【0182】
生理学的応用試験:インビトロ消化試験
本発明の化合物の消化実験(分割または切断実験)
切断実験により、本発明によって生成された反応生成物またはそれらの混合物(前の実施例1~7からの反応生成物)は、ヒトの胃腸管で切断され得ることが示されている。上記のように得られ、精製された実施例1~7の反応生成物は、以下に記載の開裂実験に供される。
【0183】
体に近い条件下での切断実験では、2つの媒体が調査される:
・胃をシミュレートするFaSSGF
・腸管をシミュレートするFaSSIF
どちらの培地も、英国のBiorelevant(登録商標)社製である。さらに、いくつかの実験では、ブタの膵臓が追加される(Panzytrat(登録商標40,000、Faアレルガン社製)。
【0184】
Panzytrat(登録商標)有りおよびPanzytrat(登録商標)なしのFaSSGFまたはFaSSIF培地における切断実験(両方とも35℃、24時間)の結果は、すべてのサンプルがPanzytrat(登録商標)有りおよびPanzytrat(登録商標)なしのFaSSGFの条件下で、加水分解することを示しており;これは主に低いpH値(pH=1.6)によるものである。FaSSIF条件下では、Panzytrat(登録商標)を使用するより低い変換が実行される。
【0185】
すべての実験は、所望の遊離酸3-BHBが生成されることを示している。時間の経過に伴う酸価の増加を含む、本発明による化合物の水性開裂の変換/時間経過は、抽出物の遊離酸(3-BHB)への所望の分解を証明する。 これは適切な分析によって確認される。
【0186】
前述の切断実験は、3-ヒドロキシ酪酸および/または3-アルコキシ酪酸のグリセリドに基づく構造単位を含む脂質が、特にそれらの意図された効果に関して、遊離ヒドロキシ酪酸またはその塩の効率的な前駆体または代謝物であり、生理学的に互換性のある形でまた存在することを証明している。