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特許7252424杭圧入施工方法、杭供給装置及び杭圧入装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】杭圧入施工方法、杭供給装置及び杭圧入装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/20 20060101AFI20230328BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
E02D7/20
E02D13/00 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022562974
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2022026452
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2021111181
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】大野 正明
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】森岡 芳弘
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-090795(JP,A)
【文献】特開2011-001719(JP,A)
【文献】特開2005-264647(JP,A)
【文献】特開2003-213686(JP,A)
【文献】特開2020-148042(JP,A)
【文献】特開2010-196394(JP,A)
【文献】特開平11-200368(JP,A)
【文献】特開昭61-250231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/20
E02D 13/00
E02D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サドルと、前記サドルの下部に設けられ、地盤に圧入された既設杭の上端部を把持するクランプ装置と、前記サドル上に旋回可能に立設されたマストと、昇降装置と、前記昇降装置を介して前記マストに支持され、杭を把持するチャック装置と、を備えた杭圧入装置を用いて、
地盤に圧入された既設杭の上端部を前記クランプ装置で掴んで反力をとり、杭を前記チャック装置で把持し前記昇降装置の動作により地盤に圧入し、当該既設杭による杭列上を移動しつつ連続して杭を圧入していくことで地盤上に当該杭列を延長していく杭圧入施工方法において、
前記杭圧入装置として、前記マストに交わり、前記マストと前記チャック装置とが並ぶ方向のチャック傾動軸回りに前記チャック装置を傾動可能な杭圧入装置を適用し、
前記マストの旋回と前記チャック装置の傾動により、既設杭を軸方向に見たときの前記杭列の側方に前記チャック装置を横倒しで突き出した状態としつつ、杭を横倒しにして供給し前記チャック装置に挿入し把持させる杭供給工程を有することを特徴とする杭圧入施工方法。
【請求項2】
前記杭供給工程において、前記杭列の延長方向後方から杭を前記チャック装置に挿入する請求項1に記載の杭圧入施工方法。
【請求項3】
前記杭供給工程において、前記杭列の延長方向前方から杭を前記チャック装置に挿入する請求項1に記載の杭圧入施工方法。
【請求項4】
前記杭圧入装置は、前記サドル上を水平移動可能に設けられたスライドベースを備え、前記マストは前記スライドベース上に旋回可能に立設されており、
前記杭供給工程において、前記スライドベースのストロークにより前記チャック装置への杭の挿入長さを稼ぐ請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の杭圧入施工方法。
【請求項5】
前記杭圧入装置は、前記チャック傾動軸回りに前記チャック装置とともに前記昇降装置を傾動可能であり、
前記杭供給工程において、前記昇降装置のストロークにより前記チャック装置への杭の挿入長さを稼ぐ請求項4に記載の杭圧入施工方法。
【請求項6】
前記杭圧入装置として、前記チャック装置を上下させるように前記マストを傾動可能な杭圧入装置を適用し、
前記杭供給工程の内、前記チャック装置に杭を挿入する工程の全部又は一部において、前記マストを傾動させて横倒し状態の前記チャック装置について把持中心軸の高さを調整する請求項2又は請求項3に記載の杭圧入施工方法。
【請求項7】
複数の分割杭が長手方向に連接されてなる杭を地盤に圧入する杭圧入施工方法であって、
既設杭の上端部をクランプして当該既設杭に固定可能な保持チャックアタッチメントにより、圧入の際の先頭となる前記分割杭の上端部を保持して次の分割杭を連結する杭連結工程を有する請求項1に記載の杭圧入施工方法。
【請求項8】
前記チャック装置は、杭に対して集散動作を行う複数の把持部材を有し、
前記把持部材の把持面に装着されて当該把持部材と共に集散動作する複数の把持アタッチメントと、少なくとも把持中心軸の周囲の片側に位置する前記把持アタッチメントに対して、前記把持中心軸が横を向いた状態で、前記集散動作の拡散方向への移動を規制し、前記把持中心軸が起立した状態で、前記拡散方向への移動の規制を解除するブラケットとを有する把持アタッチメントユニットにより、前記チャック装置が把持できる被把持寸法より小さい被把持寸法の杭を把持して圧入を行う請求項1に記載の杭圧入施工方法。
【請求項9】
既設杭の上端部を掴んで反力をとり、昇降可能なチャック装置で杭を把持して地盤に圧入する杭圧入装置の当該チャック装置に杭を供給する杭供給装置であって、
杭を横倒し状態のまま取り上げるとともに移動させるピックアップアームを備え、
前記ピックアップアームの先端部に、杭を取り上げ昇降可能なフォークが設けられている杭供給装置。
【請求項10】
前記フォークは少なくとも2本で構成され、複数枚が上下に重ねて積載された鋼矢板の隙間に挿入可能な形状とされている請求項9に記載の杭供給装置。
【請求項11】
前記ピックアップアームは、前記フォークを水平面内で揺動可能にするヒンジ連結部を有する請求項9に記載の杭供給装置。
【請求項12】
前記ピックアップアームは、前記ヒンジ連結部を先端に支持し水平面内で揺動する揺動アームを有する請求項11に記載の杭供給装置。
【請求項13】
請求項12に記載の杭供給装置と、
サドルと、前記サドルの下部に設けられ、地盤に圧入された既設杭の上端部を把持するクランプ装置と、前記サドル上に旋回可能に立設されたマストと、昇降装置と、前記昇降装置を介して前記マストに支持され、杭を把持するチャック装置と、を備え、
前記ピックアップアームの基端部が前記サドルに固定され、
前記マストに交わり、前記マストと前記チャック装置とが並ぶ方向のチャック傾動軸回りに前記チャック装置を傾動可能な杭圧入装置。
【請求項14】
前記サドル上を水平移動可能に設けられたスライドベースを備え、前記マストが前記スライドベース上に旋回可能に立設されている請求項13に記載の杭圧入装置。
【請求項15】
前記チャック傾動軸回りに前記チャック装置とともに前記昇降装置を傾動可能な請求項14に記載の杭圧入装置。
【請求項16】
前記チャック装置は把持中心軸回りで回転可能であり、
前記チャック装置の前記回転及び傾動を制御する制御装置を備え、
前記チャック装置は、作動油タンクを有し、
前記チャック装置の傾動時に、前記作動油タンクが前記チャック装置の下がる部位となるか否かを検出するセンサを有し、
前記制御装置は、前記チャック装置の把持中心軸回りの回転を制御して、前記センサが、前記チャック装置の前記作動油タンクが下がる部位となることを検出した状態で前記チャック装置の傾動を行う制限制御機能を有する請求項15に記載の杭圧入装置。
【請求項17】
前記チャック装置を上下させるように前記マストを傾動可能な請求項13から請求項16のうちいずれか一に記載の杭圧入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入施工方法、杭供給装置及び杭圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サドルと、前記サドルの下部に設けられ、地盤に圧入された既設杭の上端部を把持するクランプ装置と、前記サドル上に旋回可能に立設されたマストと、昇降装置と、前記昇降装置を介して前記マストに支持され、杭を把持するチャック装置と、を備えた杭圧入装置が用いられている。
当該杭圧入装置は、地盤に圧入された既設杭の上端部をクランプ装置で掴んで反力をとり、杭をチャック装置で把持し昇降装置の動作により地盤に圧入し、当該既設杭による杭列上を移動しつつ連続して杭を圧入していくことで地盤上に当該杭列を延長していくことが可能である。
その際、杭をチャック装置にクレーン等を用いて供給することが行われる。
特許文献1に記載の発明にあっては、チャック装置が後方に傾動可能に設けられ、横倒しの状態で供給された杭の端部を、後方に傾倒したチャック装置で把持した状態で当該チャック装置を傾動することにより該杭を起立させることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-148042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、橋桁等の上空制限のある領域において、上記杭圧入装置により杭を圧入する際には、杭をチャック装置にクレーンを用いて供給することができない場合がある。また、上空制限と杭の長さとの関係から、チャック装置に上から杭を挿入することすらできない状況もある。
特許文献1に記載の発明にあっては、杭圧入装置の上に横たわる杭の先端部をチャック装置が掴んでそのまま90度傾動して該杭を起立させるので、チャック装置に杭を挿入する際の杭及びチャック装置の位置が高く、また、杭を起立させる際の回転中心の位置が高い。そのため、短い杭を次々供給して、複数の杭を長手方向に継ぎ足して圧入する工法を採用しても、より低い上空制限の現場においては、杭圧入装置を導入できない状況、例えば、後方に傾動するチャック装置が橋桁に干渉する状況などが考えられ、杭圧入装置を利用できないおそれがある。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、より低い上空制限の領域に杭圧入装置の利用性を拡大することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための本発明の一つの態様は、サドルと、前記サドルの下部に設けられ、地盤に圧入された既設杭の上端部を把持するクランプ装置と、前記サドル上に旋回可能に立設されたマストと、昇降装置と、前記昇降装置を介して前記マストに支持され、杭を把持するチャック装置と、を備えた杭圧入装置を用いて、
地盤に圧入された既設杭の上端部を前記クランプ装置で掴んで反力をとり、杭を前記チャック装置で把持し前記昇降装置の動作により地盤に圧入し、当該既設杭による杭列上を移動しつつ連続して杭を圧入していくことで地盤上に当該杭列を延長していく杭圧入施工方法において、
前記杭圧入装置として、前記マストに交わり、前記マストと前記チャック装置とが並ぶ方向のチャック傾動軸回りに前記チャック装置を傾動可能な杭圧入装置を適用し、
前記マストの旋回と前記チャック装置の傾動により、既設杭を軸方向に見たときの前記杭列の側方に前記チャック装置を横倒しで突き出した状態としつつ、杭を横倒しにして供給し前記チャック装置に挿入し把持させる杭供給工程を有することを特徴とする杭圧入施工方法である。
【0007】
また本発明の他の一つの態様は、既設杭の上端部を掴んで反力をとり、昇降可能なチャック装置で杭を把持して地盤に圧入する杭圧入装置の当該チャック装置に杭を供給する杭供給装置であって、
杭を横倒し状態のまま取り上げるとともに移動させるピックアップアームを備え、
前記ピックアップアームの先端部に、杭を取り上げ昇降可能なフォークが設けられている杭供給装置である。
【0008】
また本発明の他の一つの態様は、前記杭供給装置と、
サドルと、前記サドルの下部に設けられ、地盤に圧入された既設杭の上端部を把持するクランプ装置と、前記サドル上に旋回可能に立設されたマストと、昇降装置と、前記昇降装置を介して前記マストに支持され、杭を把持するチャック装置と、を備え、
前記ピックアップアームの基端部が前記サドルに固定され、
前記マストに交わり、前記マストと前記チャック装置とが並ぶ方向のチャック傾動軸回りに前記チャック装置を傾動可能な杭圧入装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より低い上空制限の領域に杭圧入装置の利用性を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の杭圧入装置による杭圧入施工方法の実施状況を示す斜視図である。
図2図1から進んだ場面を示す斜視図である。
図3図2から進んだ場面を示す斜視図である。
図4図3から進んだ場面を示す斜視図である。
図5A】上空制限のある現場での杭圧入施工方法の実施状況を示す平面図である。
図5B図5Aの側面図である。
図6A図5Aから進んだ場面を示す平面図である。
図6B図6Aの側面図である。
図7A】上空制限のある水面上での杭圧入施工方法の実施状況を示す平面図である。
図7B図7Aの側面図である。
図8A】U型鋼矢板の運搬とフォークによるピックアップの状況を示す平面図である。
図8B図8Aの側面図である。
図8C図8Aの断面図である。
図9】ハット形鋼矢板に対するフォークによるピックアップの状況を示す断面図である。
図10】コンクリート矢板に対するフォークによるピックアップの状況を示す断面図である。
図11】PC壁体に対するフォークによるピックアップの状況を示す断面図である。
図12】本発明の一実施形態の杭圧入装置による杭圧入施工方法の実施状況を示す斜視図であり、図2に対してマストを傾動させる様子を示す。
図13】杭圧入施工時における配置も含めて示した保持チャックアタッチメントの平面図である。
図14】保持チャックアタッチメントの側面図である。
図15】保持チャックアタッチメントを用いた分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図16図15に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図17図16に続く分割杭の杭圧入施工方法の工程図である。
図18】使用時の姿勢における把持アタッチメントユニットの正面図である。
図19】横倒し状態における把持アタッチメントユニットの正面図である。
図20】横倒し状態における把持アタッチメントユニットの平面図である。
図21】規制突起が把持アタッチメントの移動を規制した状態を示す支持機構の断面図である。
図22】規制突起が把持アタッチメントの移動規制を解除した状態を示す支持機構の断面図である。
図23】杭圧入装置に装着された把持アタッチメントユニットの使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0012】
[杭圧入施工方法の実施(1)]
図1から図7Bに本発明の一実施形態の杭圧入装置による杭圧入施工方法の実施状況を示す。図1から図4は、杭供給工程における杭圧入装置の動作を4場面で示す。図5A図5B図6A及び図6Bは上空制限のある現場での実施状況における2場面を示す。図7A及び図7Bは、上空制限のある水面上での実施状況を示す。方向の明示のため前後方向軸をX軸、左右方向軸をY軸、上下方向軸をZ軸として図中に直交3軸XYZを示す。
なお、以下の説明において、「既設杭」とは、杭の種類に拘わらず、既に圧入が完了し、それ以上の圧入動作が行われない杭のことをいう。また、「圧入杭」とは、杭の種類に拘わらず、これから圧入を行う杭或いは、圧入の途中である杭のことをいう。
縦継ぎにより連接杭を構成する分割杭の場合には、杭圧入装置10のチャック装置6に把持された状態の分割杭や、地盤に圧入されている状態であって、さらに新たな分割杭が縦継ぎにより連結されて圧入動作が加えられる予定の分割杭は、いずれも「圧入杭」に相当する。
縦継ぎとは、長手方向を揃えて直列に配置された複数の杭の端部同士を連結することをいう。
【0013】
杭圧入装置10は、サドル1と、サドル1の下部に設けられ、地盤に圧入された既設杭P1-P4・・・の上端部を把持する複数のクランプ装置2F,2Rと、サドル1上を水平移動可能に設けられたスライドベース3と、スライドベース3上にマスト旋回軸MZ回りに旋回可能に立設されたマスト4と、昇降装置5と、昇降装置5を介してマスト4に支持され、杭Pを把持するチャック装置6とを備える。
チャック装置6は、チャックフレーム7に設置され、把持中心軸CZ回りで回転可能であり、チャック装置6が杭を把持した状態で回転することにより杭を回転させながら圧入する回転圧入工法が実施可能である。
さらに杭圧入装置10は、チャック傾動機構9を備え、当該チャック傾動機構9によりマスト4に交わり、マスト4とチャック装置6とが並ぶ方向のチャック傾動軸CY回りにチャック装置6、チャックフレーム7とともに昇降装置5を傾動可能である。
チャック装置6、チャックフレーム7が昇降装置5を介してマスト4に支持されている。チャック装置6及びチャックフレーム7からなる構造は、杭を挿入する貫通部8を有する。
複数のクランプ装置2F,2Rは、前方側のクランプ装置2Fと、後方側のクランプ装置2Rからなる。なお、3つ以上のクランプ装置を設けてもよい。
スライドベース3は、前後方向にスライド移動する。後方側のクランプ装置2Rも前後方向にスライド移動可能であり、前方側のクランプ装置2Fとの間隔が可変とされている。この機能により、杭と杭の間の間隔に合わせることができる。
【0014】
地盤に圧入された既設杭の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴んだ状態から杭圧入施工方法を説明する。
いま、図示するように既設杭P2,P3の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴んでいる。図1では、杭P1がすでに圧入完了されているが、杭P1をチャック装置6で把持して圧入途中である状況から説明すると、既設杭P2,P3の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴んで反力をとりつつ、図1に示すように貫通部8の軸が圧入方向(上下方向)となった圧入姿勢で昇降装置5のストローク動作により、チャック装置6、チャックフレーム7とともにチャック装置6で把持している杭P1を下降(圧入方向へ移動)させて、杭P1を地盤に圧入し図1の圧入完了状態を得る。これにより、杭P1は既設杭による杭列の先頭杭となる。
【0015】
次に杭P0を供給する。
そのために、マスト4の旋回により図2に示すように杭列P1,P2,P3・・・の側方にチャック装置6を突き出す姿勢とする。
加えて、図3図5A及び図5Bに示すようにチャック傾動機構9によるチャック装置6の傾動により、チャック装置6を横倒しにする。これにより、杭を挿入する貫通部8の軸が略水平となったので、杭P0を横倒しの状態で供給し、横倒しの状態のまま貫通部8に挿入しチャック装置6に把持させる。
すなわち、図5Aに示すように既設杭を軸方向に見たときの杭列P1,P2,P3・・・の側方にチャック装置6を横倒しで突き出した状態としつつ、図6A及び図6Bに示すように杭P0を横倒しにして供給しチャック装置6に挿入し把持させる(杭供給工程)。なお、図5A図5B図6A及び図6Bでは、杭列上を走行可能な杭運搬装置20と、杭運搬装置20から杭を取り上げ杭圧入装置10のチャック装置6に杭を供給する杭供給装置30を用いている。
【0016】
クレーンを用いて杭P0を供給してもよい。供給側で杭P0を杭列P1,P2,P3・・・に沿った水平方向に移動可能である場合には、その移動動作により杭P0を貫通部8の軸方向に移動させてチャック装置6にまで挿入してもよい。
また、杭圧入装置10の動作により、杭P0をチャック装置6にまで挿入することが可能である。その動作とは、スライドベース3のストローク動作、昇降装置5のストローク動作である。図3に示す状態においては、スライドベース3のストローク方向及び昇降装置5のストローク方向は、杭P0をチャック装置6に挿入する方向に向いている。しがたって、スライドベース3のストローク動作により、杭P0をチャック装置6に挿入してもよい。また、昇降装置5のストローク動作により、杭P0をチャック装置6に挿入してもよい。
以上のように、杭P0の移動、スライドベース3のストローク動作及び昇降装置5のストローク動作のうち、いずれか1つまたは2以上を実施して杭P0をチャック装置6に挿入する。
杭供給工程において、少なくともスライドベース3のストロークによりチャック装置6への杭P0の挿入長さを稼ぐことが可能である。
同様に杭供給工程において、少なくとも昇降装置5のストロークによりチャック装置6への杭P0の挿入長さを稼ぐことができる。
【0017】
かくしてチャック装置6により杭P0を把持したら、杭圧入装置10は図4に示すようにマスト4の旋回とチャック装置6の傾動により、杭P0を地盤に圧入する姿勢に変遷する。
杭P1の圧入と同様に杭圧入装置10は、既設杭P2,P3の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴んで反力をとりつつ、今度は杭P0を昇降装置5の動作により地盤に圧入する。
杭P0を途中まで圧入し、杭圧入装置10の重量を支えられるほど以上の支持力を得たら、杭圧入装置10は前進動作を行う。前進動作は次の通りである。
クランプ装置2F,2Rによるクランプを解除し、地盤に支持された杭P0をチャック装置6で把持したまま、昇降装置5の動作によりサドル1を上昇させる。さらにスライドベース3のストローク動作によりサドル1を前方に移動させることで、クランプ装置2Fを既設杭P1の上方に、クランプ装置2Rを既設杭P2の上方に配置し、昇降装置5の動作によりサドル1を下降させ、クランプ装置2Fにより既設杭P1をクランプし、クランプ装置2Rにより既設杭P2をクランプする。これにより、杭圧入装置10は1ピッチ分前進し、圧入時に反力をとる既設杭が杭P1,P2に移り変わる。
なお、各圧入位置の杭が、複数の分割杭を縦継ぎにより長手方向に連結した連接杭(圧入杭)である場合には、複数の分割杭(圧入杭)を同じ圧入位置で縦継ぎにより長手方向に連結して圧入を続行する過程が入る。杭圧入装置10の前進動作は、最上端部の分割杭をチャック装置6で把持した状態で行う。
【0018】
杭圧入装置10は、クランプ装置2F,2Rにより既設杭P1,P2をクランプしたら、杭P0の圧入を再開し、杭P0の圧入を完了する。これが、上述した杭P1の圧入完了(1サイクル前)に相当し、圧入作業が1サイクル進んだことになる。これを1圧入サイクルとして、圧入サイクルを繰り返し実行する。これにより、杭圧入装置10は、既設杭による杭列上を移動しつつ連続して杭を圧入していくことで地盤上に当該杭列を延長していく杭圧入施工方法を実行する。
【0019】
図6Bに示すように杭供給工程において、横倒しでチャック装置6に挿入される杭P0の中心軸は、マスト4の頂点より低い位置にある。したがって、杭圧入装置10が侵入できるより低い空間で杭の供給、受取が可能であり、より低い上空制限の領域に杭圧入装置の利用性を拡大することができる。
【0020】
次に、杭供給装置30の構成と動作の詳細につき説明する。
杭供給装置30は、杭を横倒し状態のまま取り上げるとともに移動させるピックアップアーム30Aを備える。
本実施形態ではピックアップアーム30Aは、揺動アーム31を備える。揺動アーム31の両端は、垂直軸回りに回動可能なヒンジ連結部32,33が設けられている。揺動アーム31の基端部はヒンジ連結部32を介してサドル1に固定されている。揺動アーム31は、ヒンジ連結部32により水平面内で揺動するようになっている。揺動アーム31は伸縮機能を有する。
揺動アーム31の先端部に、杭を取り上げ昇降可能なフォーク34が設けられている。揺動アーム31側から、ヒンジ連結部33、第1昇降装置35、第2昇降装置36、フォーク34の順で連結されている。ヒンジ連結部33によりフォーク34を水平面内で揺動可能にしている。第1昇降装置35と第2昇降装置36とは直列的に連結されているので、第1昇降装置35の昇降ストロークに第2昇降装置36の昇降ストロークを加えた分だけ、フォーク34を昇降することができる。
【0021】
杭供給装置30を適用した杭供給工程につき説明する。
図5A及び図5Bに示すようにピックアップアーム30Aを杭列に沿って後方に伸ばし、フォーク34が杭P0に挿入可能な高さである状態とし、杭運搬装置20の到着を待つ。
杭運搬装置20の前進により、杭運搬装置20に積載されている杭P0にフォーク34が挿入される(図5A及び図5Bの状態)。
次に、フォーク34を上昇させて、杭P0を取り上げる。
杭P0をフォーク34に取り上げたら、図6A及び図6Bに示すようにヒンジ連結部32及びヒンジ連結部33をそれぞれ略90度動作させて、杭P0を杭列の側方に配置する。このとき、杭P0の軸方向が杭列に沿った方向となり、かつ、杭P0のフォーク34を挿し入れた端部と逆側の端部が前方(チャック装置6側)に差し出される。杭P0の中心軸の高さは、横倒しになった貫通部8の軸の高さに合わせる。
上述したように杭P0をチャック装置6に挿入し、チャック装置6により杭P0を把持して杭P0を地盤に圧入する。
【0022】
杭圧入装置10及び杭供給装置30の各可動部はアクチュエーターを備え、当該アクチュエーターを統合制御する制御装置により、杭圧入装置10は上述した圧入サイクルの動作、杭供給装置30による杭供給動作が自動制御される。杭圧入装置10のみならず杭供給装置30の各可動部の動作量を検出するセンサが設けられており、各可動部の動作量が制御装置に入力されることで、正確な制御(圧入自動制御、杭供給自動制御、干渉防止制御等)が実現される。
当該制御装置は、勿論、把持中心軸CZ回りのチャック装置6の回転、及びチャック傾動軸CY回りのチャック装置6の傾動をも制御する。
当該制御装置は、チャック傾動軸CY回りのチャック装置6の傾動により図3のようにチャック装置6の下がる部位又は上がる部位を、把持中心軸CZ回りのチャック装置6の回転の制御により特定部位とする制限制御機能を有する。
チャック装置6には、把持爪を駆動するための作動油タンクTK(図3に位置を図示する)が内蔵されている。例えば、作動油タンクTKが高い位置に上がったときの作動油タンクTKの姿勢角では、作動油タンクTKに設けられた流入口、流出口が作動油タンクTK内の液面より上に上がって作動油タンクTKでの作動油の流出入に不具合を起こす場合がある。このような場合に当該制御装置は、チャック傾動軸CY回りの傾動により図3のようにチャック装置6の下がる部位を、把持中心軸CZ回りの回転の制御により作動油タンクTKが在る部位とする。
杭圧入装置10は、このような制御を実現するためのセンサを備える。当該センサは、例えば、チャックフレーム7に一又は複数設けられる(例えば図3のセンサ51L,51R)。その場合、当該センサが検出する被検出部材がチャック装置6に設けられる(例えば図3の被検出部材52)。これにより、チャック装置6の特定の回転位相を検出できるようにされる。上記例では、少なくとも作動油タンクTKがチャック傾動軸CY回りの傾動により最も下がる位相にあるか否かを検出できるようにする。図3では、図示を明確にする都合上、被検出部材52を作動油タンクTKの180°反対側に示したが、被検出部材52はこの位置でもよいし、作動油タンクTKの位置でもよい。以下では図3に示す被検出部材52の位置で説明する。
下がる部位(位相)は、チャック傾動軸CY回りのチャック装置6の傾動の方向により、チャックフレーム7の左側面部位と、右側面部位の2つとなる。図3では、チャックフレーム7の右側面部位が下がる部位(位相)となるので、被検出部材52をセンサ51Lで検出した状態でチャック傾動軸CY回りの傾動を実行するよう制御する。これとは逆回転で傾動させる場合には、チャックフレーム7の左側面部位が下がる部位(位相)となるので、被検出部材52をセンサ51Rで検出した状態でチャック傾動軸CY回りの傾動を実行するよう制御する。このように杭圧入装置10は、チャック傾動軸CY回りの両方向の傾動に対応した上記制限制御機能を有する。
なお、「下がる部位又は上がる部位を」と表現したが、表現上の問題であって、実質的に区別すべきものではない。下げたい部位を下げるようにすることと、下げたい部位の180°反対の部位を上げるようにすることとが同じことであり、また上げたい部位を上げるようにすることと、上げたい部位の180°反対の部位を下げるようにすることとが同じことであるからである。チャック傾動軸CY回りのチャック装置6の傾動に伴って下げたい部位がある場合に限らず、上げたい部位がある場合、(下げたくない部位がある場合、上げたくない部位がある場合)にも有効に適用し得る。また、チャック傾動軸CY回りのチャック装置6の傾動に伴って上げも下げもしたくない部位がある場合には、当該部位の±90°の部位を特定部位とし、下がる部位又は上がる部位としてもよい。
【0023】
図7A及び図7Bの場合につき説明する。
図7A及び図7Bに示す状況では、台船40上を杭運搬装置20が走行する。
杭運搬装置20が台船40上を走行して杭供給装置30に近づく。このとき、杭運搬装置20に積載された杭P0は、図5A及び図5Bの場合と異なり杭列から側方に離れている。そのため、図5A及び図5Bに示したピックアップアーム30Aが後方に伸びた状態を基準として、図7A及び図7Bに示すようにヒンジ連結部32を台船40側に略90度、ヒンジ連結部33をその逆側に略90度動作させたクランク状の状態とする。また、杭運搬装置20に積載された杭P0は、図5A及び図5Bの場合と異なり杭列の上端より下方に位置する。そのため、図5A及び図5Bの場合に比較して図7A及び図7Bに示すようにフォーク34を低く配置する。いずれにしてもフォーク34を杭P0に挿入可能な高さに制御する。
杭運搬装置20の前進により、杭運搬装置20に積載されている杭P0にフォーク34が挿入される(図7A及び図7Bの状態)。あとは図5A及び図5B図6A及び図6Bの場合と同様である。
【0024】
なお、上空制限S0の終端S1、S2に杭圧入装置10が近い位置に在るために、クレーンにより杭P0を杭圧入装置10に供給可能である場合には、クレーンにより杭P0を杭圧入装置10に供給してよい。その場合、杭P0を横倒しの状態でクレーンに吊り込む。
図5A及び図5Bから図7A及び図7Bには、杭供給工程において、杭列の延長方向後方から杭P0をチャック装置6に挿入する情景を示した。
しかし、杭供給工程において、杭列の延長方向前方から杭P0をチャック装置6に挿入してもよい。
上空制限S0の終端S1に杭圧入装置10が近い場合は、クレーンに吊った杭P0を後方からチャック装置6に挿入し、上空制限S0の終端S2に杭圧入装置10が近い場合は、クレーンに吊った杭P0を前方からチャック装置6に挿入してもよい。
また、図7A及び図7Bに示した台船40を杭圧入装置10より前方に配置した場合には、杭列の延長方向前方から杭P0をチャック装置6に挿入してもよい。
【0025】
以上の杭圧入装置10、杭運搬装置20、杭供給装置30の動作をオートメーション化することで、安全に効率よく上空制限下での杭列の延長工法を実施することができる。
【0026】
次に、各種の杭への対応方法につき説明する。
図1から図7Bでは、杭として鋼管杭を示したが、本発明は各種の杭に適用することができる。
図8A図8CにU形鋼矢板PUの場合を示す。
U形鋼矢板PUに対応するために、フォークは、2本のフォーク34a,34bとし、U形鋼矢板PUの中央部に2本のフォーク34a,34bを挿入して、バランスが取れるようにする。すなわち、U形鋼矢板PUを図8A図8Cに示す積載状態の向きのまま、2本のフォーク34a,34bに取り上げることができるようにする。
また、杭運搬装置20に複数枚のU形鋼矢板PUを積載することで作業効率を上げることができる。ことのき、2本のフォーク34a,34bは、複数枚が上下に重ねて積載されたU形鋼矢板PUの隙間に挿入可能な形状とされているので、2本のフォーク34a,34bにより一枚ずつ取り上げることが円滑に行える。
また、図9に示すハット形鋼矢板PHに対しても、同様に対応することができる。ハット形鋼矢板PHに対しては、2本のフォーク34a,34bを挿入する位置を両側の腕部の下とする。その他の点は、U形鋼矢板PUの場合と同様に対応することができる。
また、図10に示す平板状のコンクリート矢板PCに対しても、2本のフォーク34a,34bにより、安定して取り上げることができる。
また、図11に示す筒状のPC壁体PPに対しては、図1図7Bの鋼管杭の場合と同様に1本のフォーク34を挿入することで取り上げることができる。
特に、U形鋼矢板PU及びハット形鋼矢板PHは、これらを他の部材を介さず直接接触する条件で積み重ねると、上下に一定の隙間が生じる構造である。この隙間に挿入可能な2本のフォーク形状を採用することで、U形鋼矢板PU及びハット形鋼矢板PHの積載作業も、取り上げ作業も効率化する。
【0027】
以上の実施形態によれば、マスト4の旋回とチャック装置6の傾動により、既設杭を軸方向に見たときの杭列P1,P2,P3・・・の側方にチャック装置6を横倒しで突き出した状態としつつ、杭P0を横倒しにして供給しチャック装置6に挿入し把持させる杭供給工程を有するので、図1及び図4に示すような杭圧入姿勢時の杭圧入装置10の存在高さ範囲内にて杭をチャック装置6へ供給することが可能である。
上述したように杭圧入装置10は杭圧入を繰り返すことで杭列を延設しつつ、自らこの杭列上を自走移動していく機能を有する。杭圧入装置10が杭を圧入施工しつつ侵入できる低空領域には必ず上記杭供給工程によりチャック装置6に杭を供給できるので、杭供給不能により杭圧入施工を中断させることなく続行でき、杭列を低空領域内に延長していくことができる。
したがって、より低い上空制限の領域に杭圧入装置の利用性を拡大することができる。
また、上空制限がない、或いは、上空制限が少ないが杭周辺のスペースが限られている領域においても本発明は有用である。
すなわち、本発明は、杭周辺に設置面積を要する、クレーン等の杭を保持するための作業機械等が不要になるため、水上や砂上等での杭圧入施工においても効果を発揮する。
【0028】
なお、上記杭圧入装置10にあっては、杭圧入時の反力がチャック装置6から、チャックフレーム7、昇降装置5、チャック傾動機構9を介してマスト4に、さらにはクランプ装置2F,2Rまで伝達される。このとき、チャック傾動機構9にはその回転軸に対して側方に力がかかるため、つくりによっては破損のおそれがある。そのような場合は、可動式ロックピン機構などにより、マスト4と昇降装置5のフレーム部とを連結固定する連結固定機構を構成するとよい。圧入動作時は、当該連結固定機構を連結固定状態とすることで、チャック傾動機構9の破損を防止することができる。チャック傾動機構9を動作させる時には、当該連結固定機構による連結固定を解除状態とする。
また、チャック傾動機構9による傾動時の回転部(昇降装置5、チャック装置6及びチャックフレーム7)は、できるだけ狭い空間内で回転させることが好ましい。例えば、杭圧入装置10の全幅を直径とする範囲内程度に収める。上空制限S0に干渉しないためである。
杭圧入装置10による杭圧入工程の終盤と、杭供給装置30による杭供給工程の序盤とを同時並行して実行することが好ましい。例えば、圧入完了する前にピックアップアーム30Aに次の杭を取り上げておく。これにより、作業が効率化し工期を短縮できる。
【0029】
また、杭圧入装置10は、チャック装置6を上下させるようにマスト4をマスト傾動軸MX回りに傾動可能である。かかるマスト傾動軸MX回りにマスト4を傾動させて図12に示すようにチャック装置6をマスト4と反対側の前端が下がった状態とする。
これにより、図12に示すようにチャック装置6を低位置に保持することができる。また、チャック装置6が杭を把持している時は、チャック装置6及びこれに把持した杭を低位置に保持することができる。なお、マスト傾動軸MX回りのマスト4の傾動に従って、把持中心軸CZ及びチャック傾動軸CYも傾斜する(マスト旋回軸MZは影響なし)。
上述した杭供給工程においてチャック装置6を横倒しで側方に突き出した状態とする過程(図1図2図3)、チャック装置6に杭を挿入する過程(図3)のほか、当該杭供給工程によりチャック装置6で杭を把持した状態からチャック傾動軸CY回りにチャック装置6の傾動により杭を立ち上げる工程(図3図4)の全部又は一部において、マスト傾動軸MX回りにマスト4を傾動させてチャック装置6をマスト4と反対側の前端が下がった状態とし、チャック装置6又はチャック装置6及びこれに把持した杭を低位置に保持する。
これにより、図3の姿勢で杭圧入装置10の一番高くなる部位(昇降装置5の側部など)や、チャック装置6に把持した杭の上端が、上空制限S0に干渉することを防止することができる。
以上のように、マスト傾動軸MX回りのマスト4の傾動機能を併せて使用して、圧入姿勢(図1)から杭供給姿勢(図3)への変遷、杭供給姿勢(図3)から圧入姿勢(図4)への変遷を実行することで、より低い上空制限の領域に杭圧入装置の利用性を拡大することができる。
また、マスト傾動軸MX回りのマスト4の傾動機能は、チャック装置6に杭を挿入する過程(図3)の全部又は一部において把持中心軸CZの位置を調整するためにも使用することができる。これにより、チャック装置6と杭の接触等を抑制し、チャック装置6への杭の良好な挿入動作を行うことが可能となる。
また、杭の供給にピックアップアーム30Aを用いる場合は、チャック装置6に挿入する杭の軸位置を、フォーク34の昇降機能及び揺動アーム31の伸縮機能等により調整可能である。このため、把持中心軸CZの位置調整動作と協働して、より広範囲の調整を行うことが可能となる。
【0030】
[杭圧入施工方法の実施(2)]
以下、既に説明した杭圧入装置10において、保持チャックアタッチメント60を用いて分割杭(圧入杭)からなる杭(連接杭)の杭圧入を行う杭圧入施工方法について説明する。
図13は杭圧入施工時における杭圧入装置10及び杭列P1,P2,P3・・・に対する配置も含めて示した保持チャックアタッチメント60の平面図、図14は側面図である。
本実施形態では、分割杭Pdが鋼管杭である場合を例示する。但し、圧入の対象は鋼管杭に限定されない。
【0031】
保持チャックアタッチメント60は、複数の分割杭(圧入杭)Pd1,Pd2・・・(図15図17参照)を縦継ぎにより長手方向に連結しながら順番に埋設する際に使用される。なお、以下の記載では、分割杭Pd1,Pd2・・・を特に区別する必要がない場合には、「分割杭Pd」と総称する。
各分割杭Pdは、いずれも外径及び内径が等しく、長手方向に短い鋼管杭である。これら分割杭Pd(圧入杭)の圧入作業は、圧入と新たな分割杭Pd(圧入杭)を継ぎ足す縦継ぎとが交互に繰り返されて実施される。
【0032】
分割杭Pdは、前述したような上空制限S0が存在する上下方向に制限のあるエリアで杭圧入作業を行う場合に好適である。チャック装置6は、圧入姿勢で杭頭と上空制限S0との干渉を回避することができる長さの分割杭Pdを使用する。
一方、圧入初期の分割杭(例えば、一本目の分割杭Pd1等)の場合、昇降装置5のストロークでは、分割杭Pd1(圧入杭)の下端部が地盤に届かない場合や圧入深さが不十分となって不安定となる場合に、次の分割杭Pd2(圧入杭)の連結作業を適正に行うことができなくなるおそれがある。
【0033】
このような場合に、分割杭Pd1(圧入杭)を保持するために保持チャックアタッチメント60が使用される。
保持チャックアタッチメント60は、既設杭P1の杭頭に固定され、チャック装置6の下方で分割杭Pd1の上部を把持することで、分割杭Pd1の安定化を図り、次の分割杭Pd2(圧入杭)の連結を可能とする。
なお、保持チャックアタッチメント60は、杭圧入装置10のチャックフレーム7に対しても装着可能であって、杭圧入装置10と共に移動することもできる。
【0034】
保持チャックアタッチメント60は、図13及び図14に示すように、分割杭Pdを上下方向に遊挿可能な枠体61と、枠体61内で分割杭Pdを把持する複数の把持機構62と、枠体61の後端部に連結された連結フレーム63と、連結フレーム63に設けられた複数の固定用クランプ装置64とを有する。
枠体61と複数の把持機構62は、保持用チャック装置を構成する。
【0035】
枠体61は、上下に広く開口した平面視略八角形状の枠体であり、その内側に分割杭Pdを遊挿可能である。なお、枠体61の平面視形状は、分割杭Pdを通すことが可能であれば八角形状に限らず、任意である。
【0036】
把持機構62の個体数は複数であればよく、その数量に限定はないが、本実施形態では、把持機構62が枠体61に四つ設けられている場合を例示する。
四つの各把持機構62は、枠体61の開口中心と同心となる円の円周に沿って均一間隔で枠体61に設けられている。以下、この同心円の中心軸を枠体61の中心軸Oとする。
そして、各把持機構62は、いずれも、枠体61の中心軸Oに向かって進退移動を行う凹状の把持爪621と、当該把持爪621に進退移動動作を付与するアクチュエーターとしての図示しない油圧シリンダとを有する。
【0037】
把持爪621は、凹部の内側が分割杭Pdの外周面に圧接して把持を行う。このため、把持爪621の内側には、凹凸やスパイク構造等の摩擦力を高める加工が施された圧接面が形成されている。
枠体61の開口に上下方向に沿って遊挿された分割杭Pdは、中心軸Oに向かって進出移動を行う四つの把持爪621の凹部が分割杭Pdの外周面に嵌合し、枠体61の中心軸Oと同心となる状態で保持される。
【0038】
油圧シリンダは、例えば、複動式油圧シリンダであり、シリンダチューブとピストンロッドとを備えている。ピストンロッドは、その先端部で把持爪621を支持している。そして、油圧シリンダは、中心軸Oを中心とする円周の半径方向に沿ってピストンロッドが進退動作を行うように枠体61に保持されている。
【0039】
枠体61の上面における左右両端部の近傍と後端部の近傍とには、ブラケット66(図16参照)を介して、保持チャックアタッチメント60をチャックフレーム7に着脱可能に連結するための被連結部611~613を有する。
各被連結部611~613は、いずれも枠体61の上面から立設された板状部を有し、当該板状部を水平に貫通した二乃至三の貫通孔が形成されている。これに対して、ブラケット66の下端部には、各被連結部611~613の板状部を挿入可能な二枚の板状部を有し、これらの板状部には、被連結部611~613と同様に水平に貫通した二乃至三の貫通孔が形成されている。そして、被連結部611~613の各貫通孔とブラケット66の各貫通孔とが重合するように被連結部611~613をブラケット66の二枚の板状部の間に挿入し、重合した各貫通孔に連結ピンを挿入することで被連結部611~613の各貫通孔とブラケット66の連結を可能としている。連結ピンは、引き抜き可能であり、これにより、被連結部611~613の各貫通孔とブラケット66の分離も可能である。
なお、各被連結部611~613に対応する配置で、チャックフレーム7の下部にも被連結部611~613と同じ構造の被連結部が設けられており、ブラケット66の上端部との連結と分離が可能である。
【0040】
被連結部611~613によってチャックフレーム7の下部に装着された保持チャックアタッチメント60は、枠体の中心軸Oとチャック装置6の把持中心軸CZとが同心となるように、被連結部611~613の配置が設定されている。
従って、チャックフレーム7の下部に保持チャックアタッチメント60を装着した状態で、チャック装置6による分割杭Pdの把持を行うことができる。
【0041】
連結フレーム63は、その前面の左右両端部から前方に延出された板状の一対の連結腕631を有する。これに対して、枠体61の後端上面の左右両端部には、各連結腕631に対応する一対の連結ブラケット65が固定装備されている。
各連結腕631は、下端部に前後方向に並んで複数の連結孔632が左右方向に貫通形成されている。
これに対して、枠体61側の各連結ブラケット65は、上から連結腕631を挿入可能な二枚の板状部を有し、これらの板状部には、側方から見て同一位置に二つの連結孔651が形成されている。
そして、連結ブラケット65の二つの連結孔651と連結腕631の二つの連結孔632を重合させた状態で、重合した各貫通孔に連結ピンを挿入することで連結腕631(連結フレーム63)と連結ブラケット65(枠体61)の連結を可能としている。
また、各連結腕631には、より多くの連結孔632が前後方向に並んで形成されており、連結腕631を連結ブラケット65に対して前後方向スライドさせて他の連結孔632を連結ブラケット65の連結孔651と重合させることにより、連結フレーム63と枠体61との前後方向の相互の間隔を変更調節することができる。
【0042】
つまり、連結腕631と連結ブラケット65が固定用クランプ装置64と保持用チャック装置の相互間の間隔を調節する調節機構を構成している。
これにより、杭列P1,P2,P3・・・のピッチが異なる場合にも、分割杭Pdを適正な位置に把持することができる。
また、連結腕631が連結ブラケット65を介して枠体61の上に乗った状態で連結されているので、保持チャックアタッチメント60を既設杭Pに固定した状態で、固定用クランプ装置64よりも保持用チャック装置(枠体61)の方が低位置となる。このため、枠体61及び分割杭Pd1をより低位置に保持し、分割杭Pd2以降の分割杭Pdとして、より丈の長いものを使用することができる。
【0043】
固定用クランプ装置64は、連結フレーム63の後端部における左右両側に設けられている。
各固定用クランプ装置64は、下向きのスリット641が形成されており、当該スリット641に既設杭Pの杭頭における管壁上端部を挿入することができる。なお、二つの固定用クランプ装置64は、それぞれのスリット641が既設杭Pの管壁の接線方向に沿うように、各々が連結フレーム63の後端部に対して傾斜した状態で固定装備されている。
【0044】
各固定用クランプ装置64は、スリット641を挟んで対向配置された二つのクランプユニットを有する。
対向する二つのクランプユニットは、油圧シリンダを有し、各油圧シリンダは、可動シリンダとピストンロッドとを有する。ピストンロッドは、固定用クランプ装置64内で背圧を支えて支持されており、当該ピストンロッドに対して可動シリンダが油圧によって進退動作を行う。
可動シリンダの先端部は、凹凸やスパイク構造等の摩擦力を高める加工が施された圧接面を有する圧接体が装備されている。
これにより、スリット641に下から挿入された既設杭Pの管壁を二つのクランプユニットの圧接体によってクランプすることができる。
従って、二つの固定用クランプ装置64が、既設杭Pの管壁を二か所に渡ってクランプすることで、保持チャックアタッチメント60を既設杭Pに対して安定的に固定することができる。
【0045】
図15図17は保持チャックアタッチメント60を用いた分割杭Pdの杭圧入施工方法を順番に示した工程図である。これらの図を参照して杭圧入動作を説明する。
【0046】
図15に示すように、杭圧入装置10が既設杭P2,P3の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴み、杭列P1,P2,P3・・・の側方でチャック装置6を横倒し状態とし、杭供給装置30(可能であればクレーンでもよい)から分割杭Pd1がチャック装置6に供給された状態から説明する。
圧入の先頭(最深部)となる分割杭Pd1(圧入杭)を圧入する際には、予め、保持チャックアタッチメント60は、ブラケット66を介してチャックフレーム7の下部に装着された状態にある。保持チャックアタッチメント60は、分割杭Pd1が保持チャックアタッチメント60の枠体61に遊挿された状態でチャック装置6に把持されている。なお、今の時点では、各把持機構62は、分割杭Pd1を把持していない。
【0047】
次いで、スライドベース3のストローク動作により既設杭P1の前側の目標とする圧入位置まで分割杭Pd1を搬送し、マスト4の旋回によりチャック装置6をマスト4の前側に移動する。さらに、図16に示すように、チャック傾動機構9によるチャック装置6の傾動により、把持中心軸CZが圧入方向(上下方向)となった圧入姿勢とする。
このとき、先に既設杭P1に保持チャックアタッチメント60が取り付けられていると、チャック装置6を圧入姿勢とする際に、分割杭Pd1の下端部が保持チャックアタッチメント60と干渉してしまう。このため、分割杭Pd1は、保持チャックアタッチメント60と干渉しない長さとしなければならない。
しかしながら、保持チャックアタッチメント60をチャックフレーム7の下部に装着することにより、分割杭Pd1との干渉が回避され、上空制限S0が存在する環境であっても、分割杭Pd1をより長いものを選択することが可能となる。例えば、分割杭Pd1は、地盤から上空制限S0までの高さに近い長さのものを選択可能である。
【0048】
そして、昇降装置5が下降方向にストローク動作を行いながら、チャック装置6が分割杭Pd1の回転を行い、圧入する。
これにより、保持チャックアタッチメント60は、チャックフレーム7と共に下降し、各固定用クランプ装置64のスリット641に既設杭P1の管壁が進入する。
この段階で、分割杭Pd1の回転とチャックフレーム7の下降を一旦停止して、各固定用クランプ装置64により、既設杭P1の杭頭に保持チャックアタッチメント60を固定する。そして、連結ピンを引き抜いて、チャックフレーム7から保持チャックアタッチメント60を分離させる(移設工程)。
【0049】
その後、杭圧入装置10は、チャック装置6による把持位置の上方移動と分割杭Pd1の回転圧入とを一乃至複数回行い、分割杭Pd1の上部を保持チャックアタッチメント60が把持することが可能な高さまで圧入を行うと、保持チャックアタッチメント60は、各把持爪621により分割杭Pd1の上部を把持する。
そして、杭圧入装置10は、チャック装置6が分割杭Pd1を解放し、杭列P1,P2,P3・・・の側方でチャック装置6を横倒し状態とし、後退移動して、次の分割杭Pd2の供給を受ける。
【0050】
その後、分割杭Pd2を分割杭Pd1の上方に搬送し、図17に示すように、分割杭Pd1の上方で分割杭Pd2を圧入姿勢とする。
なお、二番目以降の分割杭Pdは、その下方に、既設杭P1に固定された保持チャックアタッチメント60及び先行する分割杭Pdが存在するので、これらとの干渉を避けるために、先頭の分割杭Pd1よりも丈の短いものが使用される。
但し、保持チャックアタッチメント60は、既設杭Pに固定することができるため、杭圧入装置側に常に保持されている保持チャックアタッチメントの場合と比較すると、保持チャックアタッチメント60をより低位置に配置することができる。従って、保持チャックアタッチメント60を使用すると、二番目以降の分割杭Pdもより丈の長いものを使用することができる。
【0051】
一方、チャック装置6と共に圧入姿勢となった分割杭Pd2は、分割杭Pd1の上端部に連結される。分割杭Pd1と分割杭Pd2は、溶接等により連結してもよい。また、分割杭Pd1と分割杭Pd2が機械継手を有する場合には、これを利用して連結してもよい。
機械継手は、分割杭Pd1と分割杭Pd2の一方と他方とに凹凸構造を設け、これらを嵌合させて連結する継手である。例えば、一方の分割杭Pdに杭端部から杭長手方向に向かい、途中から周方向に屈曲する屈曲溝を設け、他方の分割杭Pdに屈曲溝に嵌合する嵌合凸部を設ける。そして、嵌合凸部が屈曲溝を辿るように、他方の分割杭Pdを杭長手方向に移動させてから回転させることにより、嵌合凸部が屈曲溝の最深部に到達して、互いの分割杭Pdを連結することができる。
杭圧入装置10は、昇降装置5のストローク動作とチャック装置6の回転動作によって、機械継手を有する分割杭Pd同士を好適に連結することができる。
【0052】
分割杭Pd1と分割杭Pd2とが連結されると、分割杭Pd1は、保持チャックアタッチメント60による把持状態が解除され、その後は、分割杭Pd1と分割杭Pd2が一体となって回転圧入が行われる。
これ以降の分割杭Pdについては、分割杭Pd2と同様の動作が繰り返される。
そして、最後尾(一番上)の分割杭Pdまで回転圧入され、既設杭P1との天端合わせ(高さ調整)が行われると、最後尾の分割杭Pdがチャック装置6から解放される。
また、保持チャックアタッチメント60は、ブラケット66によってチャックフレーム7の下部に連結されて回収される(回収工程)。
【0053】
なお、保持チャックアタッチメント60を杭圧入装置10に連結する回収工程は、最後の分割杭Pdの圧入の完了後でなくともよい。圧入杭としての分割杭Pdのいずれかが圧入によって地盤に安定して立設された状態となれば、それ以降のいずれかのタイミングで保持チャックアタッチメント60を杭圧入装置10に連結して回収してもよい。
【0054】
このように、上記の杭圧入方法では、保持チャックアタッチメント60が既設杭P1の上端部をクランプして当該既設杭P1に固定可能であるため、杭圧入装置10に保持されている場合に比べて、保持チャックアタッチメント60を低位置に配置し易い。このため、保持チャックアタッチメント60との干渉を考慮した場合に、従来よりも長い分割杭Pdを使用して圧入を行うことが可能となる。
【0055】
また、保持チャックアタッチメント60は、既設杭P1の上端部をクランプしない状態で杭圧入装置10に装着することが可能である。このため、先頭の分割杭Pd1の圧入時に保持チャックアタッチメント60を杭圧入装置10に装着しておくことで、さらに長い分割杭Pd1を使用することが可能となる。
【0056】
[杭圧入施工方法の実施(3)]
以下、既に説明した杭圧入装置10において、把持アタッチメントユニット70を用いて小口径杭Psの杭圧入を行う杭圧入施工方法(杭間止水施工方法)について説明する。
小口径杭Psの杭圧入施工方法(杭間止水施工方法)は、前述した既設杭の杭列P1,P2,P3・・・において、杭間に生じる隙間を塞ぐように、平面視で杭間の凹状となる位置に既設杭Pよりも径の小さな小口径杭Psを圧入することで、杭間止水を行う施工方法である。
【0057】
図18は使用時の姿勢(起立状態)における把持アタッチメントユニット70の正面図、図19は横倒し状態における把持アタッチメントユニット70の正面図、図20は横倒し状態における平面図、図21及び図22は後述する支持機構74の断面図、図23は杭圧入装置10に装着された把持アタッチメントユニット70の使用状態の説明図である。
【0058】
把持アタッチメントユニット70は、杭Pに対して集散動作して把持と解放を行うチャック装置6の複数(例えば四つ)の把持部材601の把持面に個別に装着されて当該把持部材601と共に集散動作する四つの把持アタッチメント71と、これらを集散動作可能に支持するブラケット72とを有する。
ブラケット72は、少なくとも把持中心軸UZの片側に位置する把持アタッチメント71に対して、横倒し状態で、集散動作の拡散方向への移動を規制し、把持中心軸UZが起立した状態で、拡散方向への移動の規制を解除する。
【0059】
上記把持アタッチメントユニット70の把持中心軸UZは、四つの把持アタッチメント71の中心を上下に通過する軸であり、把持アタッチメントユニット70がチャック装置6に把持された状態で把持中心軸CZと同一軸上となる。
【0060】
四つの把持アタッチメント71は、把持中心軸UZを中心とする同一円周上に配置される。各把持アタッチメント71は、把持部材601の把持面に当接する背面板711と、把持中心軸UZ側を向いた把持板712と、背面板711及び把持板712を支持する本体ブロック713とを有する。
【0061】
背面板711は、把持部材601の把持面に沿った周面状の板であり、把持中心軸UZ回りの半径方向外側の面のほぼ全体を把持面に当接させることができる。
背面板711の上端部には、把持中心軸UZ回りの半径方向外側に突出し、突出先端部が下方を向いた掛止爪714が設けられている。この掛止爪714の下側から把持部材601の上端部を差し込むことで、把持アタッチメント71全体を自重によって把持部材601に掛止された装着状態にすることができる。
【0062】
把持板712は、把持中心軸UZ回りの周面に沿った板であり、把持中心軸UZ側の面が小口径杭Psの外周面に当接して把持を行う。
本体ブロック713は、背面板711及び把持板712を支持すると共に、ブラケット72により把持中心軸UZ回りの半径方向に沿って移動可能に支持されている。
これにより、各把持アタッチメント71は、各把持部材601と共に把持中心軸UZに対する集散動作を行い、小口径杭Psの把持と解放を行うと共に、小口径杭Psの回転圧入も行うことができる。
【0063】
ブラケット72は、各把持アタッチメント71の上端部と下端部とをそれぞれ支持する上ブラケット721及び下ブラケット722と、これらを上下方向について所定間隔で一体的に連結する支柱723~725を有する。
上ブラケット721及び下ブラケット722は、いずれも平板状であって、その中央部には、小口径杭Psを遊挿可能な開口部が形成されている。
各支柱723~725は、各把持アタッチメント71よりも上下方向について幾分長い。このため、把持アタッチメント71の上端部と上ブラケット721の下面との間と把持アタッチメント71の下端部と下ブラケット722の上面との間にある程度の隙間を形成することができる。
【0064】
また、ブラケット72と各把持アタッチメント71との間には、把持アタッチメント71の集散動作の移動を可能とするための支持機構73,74が設けられている。
把持中心軸UZの周囲において支柱723側の二つの把持アタッチメント71とブラケット72との間には支持機構73が設けられ、把持中心軸UZの周囲において支柱723の反対側の二つの把持アタッチメント71とブラケット72との間には支持機構74が設けられている。
【0065】
支持機構73は、上ブラケット721と下ブラケット722をそれぞれ貫通する長穴状のガイド穴731,732と、把持アタッチメント71の上端部と下端部とから突出してガイド穴731,732に挿入された凸条部733,734と、凸条部733,734の上端部において左右に延出された拡幅部735,736とを有する。
各ガイド穴731,732は、把持中心軸UZ回りの半径方向に沿って形成され、凸条部733,734を同方向に沿ってガイドする。凸条部733は、ガイド穴731に対して下から挿入され、上ブラケット721の上側に拡幅部735が位置する。凸条部734は、ガイド穴732に対して上から挿入され、下ブラケット722の上側に拡幅部736が位置する。
【0066】
また、支持機構74は、支持機構73と同一構造のガイド穴741,742、凸条部743,744及び拡幅部745,746を有すると共に、ガイド穴741,742における集散動作の拡散方向側に凸条部743,744の移動を規制する規制突起747,748が設けられている。
規制突起747,748は、ガイド穴741,742の拡散方向側の部分の両側において上方に突出した凸条であり、拡幅部745,746が当接して、凸条部743,744(把持アタッチメント71)の拡散方向側への移動を規制する。
【0067】
しかしながら、図21に示すように、把持アタッチメント71の上端部と上ブラケット721の下面との間にはある程度の隙間Nが設けられている。このため、図22に示すように、把持アタッチメント71に対してブラケット72が下方に移動すると、拡幅部745,746が相対的に上に移動し、規制突起747,748を乗り越えて拡散方向側へ凸条部743,744(把持アタッチメント71)を移動させることができる。
【0068】
上記構成の把持アタッチメントユニット70を用いた小口径杭Psの杭圧入を行う杭圧入施工方法(杭間止水施工方法)を工程順に説明する。
杭圧入装置10は既設杭P3,P4の上端部をクランプ装置2F,2Rで掴み、チャック装置6を横倒し状態とし、杭供給装置30(可能であればクレーンでもよい)から横倒し状態の把持アタッチメントユニット70がチャック装置6の各把持部材601の内側に挿入される。
【0069】
この時、把持アタッチメントユニット70は、図19に示すように、ブラケット72の支柱723が上側となる向きで横倒し状態にされてチャック装置6に挿入される。
これにより、各支持機構73に支持された二つの把持アタッチメント71が上側となり、各支持機構74に支持された二つの把持アタッチメント71が下側となる。
支持機構73に支持された把持アタッチメント71は、自重により把持中心軸UZ側に移動し、支持機構74に支持された把持アタッチメント71は、自重により半径方向外側(下方)に荷重を受けるが、規制突起747,748によって把持中心軸UZ側に維持される。
このため、全ての把持アタッチメント71を把持中心軸UZ側に集合させた状態でチャック装置6に挿入することができる。
【0070】
仮に、全ての支持機構が規制突起747,748を有さない支持機構73で構成されていた場合には、下側の二つの把持アタッチメント71は、自重によって径方向外側に移動するため、把持部材601に干渉してチャック装置6への挿入を行うことが困難となり、接触によって傷や破損の原因となりうるが、支持機構74を設けることによりこれらを抑止低減することができる。
【0071】
チャック装置6の各把持部材601を各把持アタッチメント71の背面板711側に接近させた状態で、把持アタッチメントユニット70を挿入すると、各掛止爪714の内側に把持部材601の上端部が差し込まれた状態となり、各把持部材601と各把持アタッチメント71が連結される。
この状態からチャック装置6を傾動させて、把持アタッチメントユニット70を起立状態にすると、図18に示すように、各把持部材601に連結された各把持アタッチメント71に対してブラケット72が自重によって隙間N分の下降移動を行う。その結果、規制突起747,748が図21の状態から下降して、図22の規制を解除した状態となるので、全ての把持アタッチメント71が集散動作を行うことが可能となる。
この状態で、再び、チャック装置6を横倒し状態として、杭供給装置30(又はクレーン)により、把持アタッチメントユニット70の内側に小口径杭Psを挿入し、各把持部材601及び各把持アタッチメント71により把持する。
これ以降の小口径杭Psの回転圧入動作は、杭Pの場合と同じである。但し、小口径杭Psの場合には、杭列P1,P2,P3・・・の各杭Pの中心から左右方向にずれた位置に小口径杭Psを圧入するので、回転圧入作業は、マスト4をマスト旋回軸MZ回りに幾分旋回させて、チャック装置6の左右方向の位置を調整して行われる。
また、上空制限S0がある環境での杭圧入施工を行う場合には、小口径杭Psの分割杭(圧入杭)が使用される。その場合、小口径杭Psの分割杭(圧入杭)の圧入と分割杭(圧入杭)同士の縦継ぎによる継ぎ足しとを交互に行いながら、杭圧入施工が実施される。
【0072】
上記把持アタッチメントユニット70を使用することにより、杭圧入装置10は、チャック装置6で把持できない小径な小口径杭Psに対して回転圧入を行うことが可能となる。把持アタッチメントユニット70は、支持機構74により、横倒し状態で各把持アタッチメント71が拡散方向に移動することを規制することができるので、チャック装置6に把持アタッチメントユニット70を装備する作業を容易、円滑に行うことが可能となる。
なお、上記実施形態では、規制突起747,748を有する支持機構74と規制突起を有さない支持機構73とを有する把持アタッチメントユニット70を例示したが、これに限定されず、全ての把持アタッチメント71に支持機構74を設ける構成としてもよい。
【0073】
〔保持チャックアタッチメントの発明に関する提案〕
前述した、杭圧入施工方法の実施(2)及び図13図17に記載した実施の形態は、保持チャックアタッチメント及びこれを用いた杭圧入施工方法に関するものでもあり、これらについて産業上の利用可能性がある。
【0074】
[上記実施形態の背景技術]
日本国特許第6854939号公報に記載の杭圧入装置は、地盤に圧入された既設杭の上端部を掴んで反力をとり、杭を把持して地盤に圧入し、当該既設杭による杭列上を移動しつつ連続して杭を圧入していくことで地盤上に当該杭列を延長していくことが可能である。
【0075】
ところで、複数の杭を連接した連接杭の圧入が行われる場合がある。この連接杭の圧入作業は、連接前の杭の圧入と、新たな杭の継ぎ足し(連結)とを繰り返して連接しながらの圧入作業が行われる。
【0076】
従来の杭圧入装置は、連接杭の圧入作業のために、杭を把持するチャック装置の下方に、先行する杭を把持することが可能なサブチャックを設け、先行する杭の上端部をサブチャックで把持し、次の杭をチャック装置で把持した状態で互いを連結し(継ぎ足し作業)、一体化された杭の圧入を行っていた。
【0077】
[上記実施形態の課題]
しかしながら、上記杭圧入装置にあっては、サブチャックがチャック装置の下方に配置されているため、サブチャックとの干渉を回避するために、杭の丈がより短いものしか使用することできないという問題があった。
下記に示す解決手段は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、杭と杭とを連結して圧入を行う場合に、より丈の長い杭の圧入を行うことを課題とする。
【0078】
[課題を解決するための手段]
以上の課題を解決するための解決手段1は、
既設杭の上端部を掴んで反力をとる杭圧入装置を用いて圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して地盤に圧入する際に、一方の前記圧入杭の上部を保持する保持チャックアタッチメントであって、
既設杭の上端部をクランプして前記保持チャックアタッチメントを前記既設杭に固定する固定用クランプ装置と、
前記一方の圧入杭の上部を把持する保持用チャック装置とを有する保持チャックアタッチメントである。
【0079】
解決手段2は、解決手段1において、
前記杭圧入装置に対して連結と分離が可能な被連結部を有する保持チャックアタッチメントである。
【0080】
解決手段3は、解決手段1において、
前記固定用クランプ装置と前記保持用チャック装置の相互間の間隔を調節する調節機構を有する保持チャックアタッチメントである。
【0081】
解決手段4は、解決手段1において、
前記固定用クランプ装置は、前記既設杭の上端部の板状部分を下から挿入するスリットを有する保持チャックアタッチメントである。
【0082】
解決手段5は、解決手段1において、
前記固定用クランプ装置により前記既設杭に固定された状態で、前記固定用クランプ装置よりも前記保持用チャック装置の方が低位置となる保持チャックアタッチメントである。
【0083】
解決手段6は、
解決手段2の保持チャックアタッチメントを用いて、圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して地盤に圧入する杭圧入施工方法であって、
前記既設杭の上端部をクランプして当該既設杭に固定された前記保持チャックアタッチメントが一方の前記圧入杭の上部を把持した状態で他方の前記圧入杭を連結する杭連結工程を有する杭圧入施工方法である。
【0084】
解決手段7は、解決手段6において、
前記杭連結工程より前の工程であって、
前記保持チャックアタッチメントを装着した状態の前記杭圧入装置が、前記一方の圧入杭を圧入の目標位置に配置すると共に、当該圧入の開始前又は圧入の途中で前記保持チャックアタッチメントを前記既設杭の上端部に移設する移設工程を有する杭圧入施工方法である。
【0085】
解決手段8は、解決手段6又は解決手段7において、
圧入杭と圧入杭とを縦継ぎにより連結して構成された連接杭の最後の圧入杭の圧入の完了に前後して前記保持チャックアタッチメントを前記杭圧入装置に連結して回収する回収工程を有する杭圧入施工方法である。
【0086】
[解決手段の効果]
上記の解決手段によれば、杭と杭とを連結して圧入を行う場合に、より丈の長い杭の圧入を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、杭圧入施工方法、杭供給装置及び杭圧入装置について産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0088】
P(P0-P4)杭(鋼管杭)
1サドル
2F,2Rクランプ装置
3スライドベース
4マスト
5昇降装置
6チャック装置
7チャックフレーム
9チャック傾動機構
10杭圧入装置
20杭運搬装置
30杭供給装置
30Aピックアップアーム
31揺動アーム
32,33ヒンジ連結部
34フォーク
34a、34bフォーク
40台船
【要約】
より低い上空制限の領域に杭圧入装置の利用性を拡大するために、サドル1と、既設杭P1-P4の上端部を把持するクランプ装置2と、旋回可能に立設されたマスト4と、昇降装置5を介してマストに支持され杭P0を把持するチャック装置6とを備えた杭圧入装置10を用いて、既設杭をクランプ装置で掴んで反力をとり、杭をチャック装置で把持し昇降装置により地盤に圧入し、既設杭による杭列上を移動しつつ連続して杭を圧入していくことで地盤上に当該杭列を延長していく杭圧入施工方法において実施する。マストに交わりマストとチャック装置とが並ぶ方向のチャック傾動軸CY回りにチャック装置を傾動可能な杭圧入装置を適用する。マストの旋回とチャック装置の傾動により、既設杭を軸方向に見たときの杭列の側方にチャック装置を横倒しで突き出した状態としつつ、杭を横倒しにして供給しチャック装置に挿入し把持させる杭供給工程を実施する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23