(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】皮膚感覚提示装置、超音波変調装置及び超音波変調方法
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20230329BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20230329BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230329BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B06B1/06 A
G06F3/01 560
G06F3/041 480
G06F3/044 Z
B06B1/06 Z
(21)【出願番号】P 2019033264
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2018032850
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(72)【発明者】
【氏名】高崎 正也
(72)【発明者】
【氏名】清水 親
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-045390(JP,A)
【文献】特開2018-010413(JP,A)
【文献】特開2014-112357(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083283(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
G06F 3/01
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の
駆動周波数を算出する駆動周波数算出回路と、
前記
駆動周波数の
超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断される周期が繰り返される超音波変調信号を生成する超音波変調信号生成手段と、
該超音波変調信号によって駆動され
、前記駆動周波数の超音波と、前記遮断される周期において発生する前記減衰固有振動数の超音波からなる2種類の超音波を生成する超音波振動子と、
前記2種類の超音波を
遅延効果により合成してうなりを発生させる干渉板と、
を備えることを特徴とする超音波変調装置。
【請求項2】
対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の第1の駆動周波数、前記減衰固有振動数及び前記第1の駆動周波数のいずれとも異なる値の第2の駆動周波数を算出
する駆動周波数算出回路と、
前記第1の駆動周波数の第1の超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断され、前記第2の駆動周波数の第2の超音波駆動信号が、前記第1の超音波駆動信号が送信される時間に遮断され、前記第1の超音波駆動信号が遮断される時間に送信されるように、前記第1の超音波駆動信号と前記第2の超音波駆動信号を相補的に切り替え
る周期が繰り返される超音波変調信号を生成する超音波変調信号生成手段と、
前記超音波変調信号によって駆動され、前記第1の超音波駆動信号が励起した過渡応答振動と前記第2の超音波駆動信号が励起した過渡応答振動からなる2種類の超音波を生成する超音波振動子と、
前記2種類の超音波を合成してうなりを発生させる干渉板と、
を備えることを特徴とする
超音波変調装置。
【請求項3】
対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の
駆動周波数を算出する駆動周波数算出回路と、
前記
駆動周波数の
超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断される周期が繰り返される超音波変調信号を生成する超音波変調信号生成手段と、
該超音波変調信号によって駆動され
、前記駆動周波数の超音波と、前記遮断される周期において発生する前記減衰固有振動数の超音波からなる2種類の超音波を生成する超音波振動子と、
前記2種類の超音波を
遅延効果により合成してうなりを発生させる干渉板と、
を備え、前記干渉板の表面に指を接触させることにより、前記干渉板の表面を皮膚の感触表現を提示する皮膚感覚提示面としたことを特徴とする皮膚感覚提示装置。
【請求項4】
対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の第1の駆動周波数、前記減衰固有振動数及び前記第1の駆動周波数のいずれとも異なる値の第2の駆動周波数を算出
する駆動周波数算出回路と、
前記第1の駆動周波数の第1の超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断され、前記第2の駆動周波数の第2の超音波駆動信号が、前記第1の超音波駆動信号が送信される時間に遮断され、前記第1の超音波駆動信号が遮断される時間に送信されるように、前記第1の超音波駆動信号と前記第2の超音波駆動信号を相補的に切り替え
る周期が繰り返される超音波変調信号を生成する超音波変調信号生成手段と、
前記超音波変調信号によって駆動され、前記第1の超音波駆動信号が励起した過渡応答振動と前記第2の超音波駆動信号が励起した過渡応答振動からなる2種類の超音波を生成する超音波振動子と、
前記2種類の超音波を合成してうなりを発生させる干渉板と、
を備え、前記干渉板の表面に指を接触させることにより、前記干渉板の表面を皮膚の感触表現を提示する皮膚感覚提示面としたことを特徴とする
皮膚感覚提示装置。
【請求項5】
対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の
駆動周波数を算出するステップと、
前記
駆動周波数の
超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断される周期が繰り返される超音波変調信号を生成するステップと、
該超音波変調信号によって超音波振動子を駆動
し、前記駆動周波数の超音波と、前記遮断される周期において発生する前記減衰固有振動数の超音波からなる2種類の超音波を生成するステップと、
干渉板上において、
前記2種類の超音波を
遅延効果により合成してうなりを発生させるステップと、
を含むことを特徴とする超音波変調方法。
【請求項6】
対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の第1の駆動周波数、前記減衰固有振動数及び前記第1の駆動周波数のいずれとも異なる値の第2の駆動周波数を算出するステップ
と、
前記第1の駆動周波数の第1の超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断され、前記第2の駆動周波数の第2の超音波駆動信号が、前記第1の超音波駆動信号が送信される時間に遮断され、前記第1の超音波駆動信号が遮断される時間に送信されるように、前記第1の超音波駆動信号と前記第2の超音波駆動信号を相補的に切り替え
る周期が繰り返される超音波変調信号が生成される
ステップと、
前記超音波変調信号によって超音波振動子を駆動し、前記第1の超音波駆動信号が励起した過渡応答振動と前記第2の超音波駆動信号が励起した過渡応答振動からなる2種類の超音波を生成するステップと、
干渉板上において、前記2種類の超音波を合成してうなりを発生させるステップと、
を含むことを特徴とする
超音波変調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
皮膚感覚(触覚又は触感)とは、人間の体性感覚の一種で、指で物の表面をなぞったときの感覚等が挙げられる。「つるつる」「ざらざら」等の感触表現がその一例である。本発明は、ロボットの遠隔操作、バーチャルリアリティやゲーム機等における、仮想的皮膚感覚を再現する装置や、携帯情報端末(タブレット端末)、家庭用PC等における触覚情報提示に利用する皮膚感覚提示装置、及びこの皮膚感覚提示装置に用いることが好適な超音波変調装置、更には超音波変調装置を用いた超音波変調方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーチャルリアリティやゲームの分野においては、視覚・聴覚・力覚による表現が主流であったが、近年、皮膚感覚による表現の重要性が増してきている。触覚の提示が可能になれば操作感や臨場感の向上が見込まれる。しかし、従来の皮膚感覚提示装置の多くは、盲人用の点字装置としての応用を念頭においたものや、これらの盲人用点字装置の技術に基づいて開発されたものであり、汎用的な触感を再現する皮膚感覚提示装置は、未だ実用化されていない。
【0003】
凹凸感を再現する皮膚感覚提示装置は、盲人用点字装置をはじめとして古くより多くの研究が行われている。例えば、移動子となる薄膜の上面に導電体層を形成して、導電体層を静電的に吸引して空間的な振動の分布を発生させる皮膚感覚提示装置も提案されている(特許文献1参照。)。人間の皮膚の触感は主に2500×750μmの卵形をしたパチニ小体、直径20~40μmのマイスナー小体、直径9~16μmのメルケル細胞という三つの機械受容器(触感のセンサー)への振動刺激によって知覚されるとされている。ヨハンソン(Johansson)らは人間の指先検知能力をドットパタンの直径が50μmmでは6μm、500μmmでは1μmmの凸を検出可能としている(非特許文献2参照。)。一般的には、人間が知覚できる範囲の面粗さを構成する凹凸は、小さいものでは数十~数百μm程度の間隔で分布していると考えられ、汎用的な触感を提示するにはmm以下のオーダーの位置分解能で刺激を提示できることが望ましい。
【0004】
パチニ小体、マイスナー小体、メルケル細胞という三つの人間の機械受容器は、それぞれ振動の振幅や周波数、分布の細かさに対する感度が異なる。異なる機械受容器を同時に刺激すれば、脳内で感覚が統合されたときにより豊かな感触となることが知られている。三つの機械受容器を同時に刺激するには、時間的、空間的に広い範囲をカバーできる機械的な振動が必要になる。例えば、皮下組織側にあるパチニ小体の周波数領域は70~1000Hz、表皮側にあるマイスナー小体の周波数領域は10~200Hz、メルケル細胞の周波数領域は0.4~100Hzとされている。触覚の時間分解能とは22つの刺激提示時間間隔が短くなった場合にそれが2つであることを区別できる最小時間間隔を指す。時間分解能は、加える刺激の強さによって変化し、強い場合は10ms10ms程度、弱くすると50ms程度との報告がある。又、5秒間で知覚できる連続刺激は9つまでとの報告もある。
【0005】
いずれにせよ、皮膚感覚提示装置を実現するためには、刺激が指全体に伝わるのではなく、局所的な刺激が指の腹に提示されることが必要である。即ち、現実に皮膚感覚提示装置の面をなぞった際に、指の腹の各部分でそれぞれ異なった微細な刺激が発生することが求められる。皮膚感覚提示装置においては、人間の現実の感覚になるべく近い、紙やすり(サンドペーパ)などのような細かな凹凸が連続的に分布しているテクスチャが皮膚感覚提示装置の接触面に求められる。
【0006】
指で物の表面をなぞると、表面の微細形状と指紋の相互作用により、人間の指皮膚表面に微小な振動が発生する。その振動を皮膚組織内の神経細胞が検知しその信号が脳に伝達され、なぞり動作に対する応答としてその信号を処理することで、人間は皮膚感覚を受容していると考えられている。その表面形状が紙やすりのようになっていれば「ざらざら感」として知覚される。皮膚感覚提示を実現する方法の一つとして、なぞり動作に応じてこの振動を再現して指皮膚に供給することが有効である。
【0007】
粗さ感覚の提示に超音波振動により生じるスクイーズ膜効果を利用した方法が提案されている(非特許文献2参照。)。「スクイーズ膜効果」は振動している面に指を近づけた際に、指と振動面の間に、空気(介在流体)の膜がしぼり作用で生じ、それにより摩擦力が減少する現象である。スクイーズ膜効果により、指で物体表面をなぞる際の摩擦力が減少するため、超音波振動をAM変調することで周期的な摩擦力の増減が生じる。これにより、人間はざらざら感を認識する。又、超音波振動子のAM変調において信号波の振幅、即ち変調深度を変化させると振動表面をなぞった際の粗さ感覚の度合が変化することが知られている(非特許文献2参照。)。
【0008】
しかし、触覚の提示に用いるための超音波振動子の機械的品質係数Qmが高い場合には、同一の電圧で駆動させると変調周波数が高くなるにつれ振動子が応答できなくなり、その結果として出力される変調深度が低下し、細かい粗さの提示が困難となるという問題があった。「機械的品質係数Qm」は、振動による弾性損失を表す弾性損失係数tanδmの逆数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】R.S.ヨハンソン(Johansson)他1名,『本来滑らかな表面上にある単一の凹凸に対する触覚検出の閾値("Tactile detection thresholds for a single asperity on an otherwise smooth surface")』、体性感覚研究(Somatosens. Res.)、第1巻、第1号、1983年、p21-31
【文献】渡辺 敏雄他1名、『超音波振動を用いた表面荒さの触感の制御方法(A Method for Controlling Tactile Sensation of Surface Roughness Using Ultrasonic Vibration)』、 米国電気電子学会:ロボティクスとオートメーションに関する国際会議(IEEE International Conference on Robotics and Automation)、1995年、p.1134-1139。
【文献】昆陽雅司他2名、『超音波振動の振幅変調を用いた複合触覚提示法』、日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会講演論文集(CD-ROM)、2005巻、2005年、p.1P1-N-101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記問題点を鑑み、本発明は、高い変調周波数での機械的振動を実現することが可能な超音波変調装置及び超音波変調方法、更にはこの超音波変調装置を用いた皮膚感覚提示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(a)対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の第1の駆動周波数を算出する駆動周波数算出回路と、(b)第1の駆動周波数の第1の超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断される周期が繰り返される超音波変調信号を生成する超音波変調信号生成手段と、(c)この超音波変調信号によって駆動される超音波振動子と、(d)この超音波振動子が励起した2種類の超音波を合成してうなりを発生させる干渉板を備える超音波変調装置であることを要旨とする。
【0013】
本発明の第2の態様は、(a)対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の第1の駆動周波数を算出する駆動周波数算出回路と、(b)第1の駆動周波数の第1の超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断される周期が繰り返される超音波変調信号を生成する超音波変調信号生成手段と、(c)この超音波変調信号によって駆動される超音波振動子と、(d)この超音波振動子が励起した2種類の超音波を合成してうなりを発生させる干渉板を備える皮膚感覚提示装置であることを要旨とする。第2の態様に係る皮膚感覚提示装置においては、干渉板の表面に指を接触させることにより、干渉板の表面を皮膚の感触表現を提示する皮膚感覚提示面としている。
【0014】
本発明の第3の態様は、(a)対象となる超音波振動系の減衰固有振動数とは異なる値の第1の駆動周波数を算出するステップと、(b)第1の駆動周波数の第1の超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断される周期が繰り返される超音波変調信号を生成するステップと、(c)この超音波変調信号によって超音波振動子を駆動するステップと、(d)干渉板上において、超音波振動子が励起した2種類の超音波を合成してうなりを発生させるステップを含む超音波変調方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い変調周波数での機械的振動を実現することが可能な超音波変調装置及び超音波変調方法、更にはこの超音波変調装置を用いた皮膚感覚提示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置の主要部の概略を説明するための模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置のカバーガラス(干渉板)の下面に複数の超音波素子を配列して、カバーガラスの上面を皮膚の感触表現を提示する皮膚感覚提示面にした構造を説明する模式的な鳥瞰図(斜視図)である。
【
図3】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置の演算制御回路を含むコンピュータシステムの主要なハードウェア資源を説明する概略図である。
【
図4】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置に適用される超音波変調の基礎実験に用いたボルト締めランジュバン型振動子の概略の構造を説明する側面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4に示したボルト締めランジュバン型振動子の電極板に入力される電気信号の電気的特性で、
図5(b)は、振動計で測定したボルト締めランジュバン型振動子の機械的特性の測定結果を示す。
【
図6】
図6(a)は、
図4に示したボルト締めランジュバン型振動子に印加される電圧をAM変調した場合の電圧波形の時間変化を示し、
図6(b)は、
図6(a)の印加電圧をボルト締めランジュバン型振動子に印加した場合に現れると期待(予定)される振動振幅の時間変化を示す。
【
図7】振動計で測定したボルト締めランジュバン型振動子の振動速度の時間変化が、振動計で測定したボルト締めランジュバン型振動子の駆動電圧の時間変化に追随できないことを説明する図面である。
【
図8】
図8(a)はボルト締めランジュバン型振動子に印加されるAM変調された印加電圧を示し、
図8(b)は
図8(a)のようなAM変調された電圧が印加さえた場合に、ボルト締めランジュバン型振動子の振動板の振動面に現れる振動を振動計が測定した振動振幅の時間変化を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置に適用される超音波変調における減衰固有振動数f
dと駆動周波数f
1,f
2(f
1<f
d<f
2)の関係を説明する概念図である。
【
図10】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置の周波数変調(FM変調)における、動作周波数の時間変化を説明する図である。
【
図11】
図11(a)は駆動周波数f
2の成分が減衰する過渡状態の振動を説明する図で、
図11(b)は駆動周波数f
1の成分が立ち上がる過渡状態の振動を説明する図で、
図11(a)と
図11(b)の過渡状態が互いに干渉することによりうなりが発生することを説明している。
【
図12】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置の振動発生系を、集中定数系のケルビン・フォークトモデルで説明する模式図である。
【
図13】
図13(a)は自由振動の変位x
h(t)の時間変化を説明する図で、
図13(b)は定常振動の変位x
p(t)の時間変化を説明する図である。
【
図14】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置において、
図14(a)に示すような自由振動と
図14(b)に示すような定常振動を重ね合わせると、
図14(c)に示すようなうなりが発生することを説明する図である。
【
図15】
図15(a)はうなりの測定結果としての振幅の時間変化を説明する図で、
図15(b)はうなりの解析結果としての振幅の時間変化を説明する図である。
【
図16】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置において、振動発生器に印加される駆動電流の時間変化と振動板の振動速度の時間変化の関係を説明する図である(2つの駆動周波数の差Δf=200Hz、切替周波数f
s=100Hz)。
【
図17】第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置において、振動発生器に印加される駆動電流の時間変化と振動板の振動速度の時間変化の関係を説明する図である(2つの駆動周波数の差Δf=1.7kHz、切替周波数f
s=370Hz)。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置の演算制御回路を含むコンピュータシステムの主要なハードウェア資源を説明する概略図である。
【
図19】
図19(a)は、第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置に適用されるオン状態とオフ状態を交互に周期的に切り替えるバースト駆動を説明する図で、
図19(b)は、比較のために、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置の周波数変調(FM変調)を説明する図である。
【
図20】
図20の上段は、第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置のバースト駆動を説明する図で、
図20の下段は、ボルト締めランジュバン型振動子の圧電素子が
図20の上段に示すようにバースト駆動された場合に、ボルト締めランジュバン型振動子の振動板に発生する振動速度の測定結果を示す図である。
【
図21】
図20の測定から得られたうなりの1周期をオン時間とし、オフ時間をオン時間より短い任意の値に設定してバースト駆動された場合に、ボルト締めランジュバン型振動子の振動板に発生する振動速度の測定結果を示す図である。
【
図22】第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置において、ボルト締めランジュバン型振動子の圧電素子に印加される正弦波駆動信号が、うなりの1周期内でオン/オフが切り替られる場合の振動速度の測定結果を示す図である。
【
図23】
図20~
図22との比較のために、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置のFM変調による振動速度の測定結果を示す図である。
【
図24】第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置の説明の
図21に対応し、
図23で得られたうなりの1周期で2つの駆動周波数を切り替えた場合の振動速度の測定結果を示す図である。
【
図25】本発明の第3実施形態に係る皮膚感覚提示装置に用いられる弾性表面波を往復運動させるファブリペロー共振器の主要部の概略を説明するための模式図である。
【
図26】
図25に示された弾性表面波伝送経路を往復する弾性表面波のコンダクタンスとサセプタンスの周波数に対する変化を示す図である。
【
図27】第3実施形態に係る皮膚感覚提示装置の弾性表面波の場合であっても、うなりが発生することを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の第1~第3実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
又、以下に示す第1~第3実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置は、
図1に模式的に例示するように、上部に空洞部を有する基体(ベース)10と、基体10の空洞部に配置されたインセル型のタッチパネル基板11と、基体10の空洞部を閉じるように、タッチパネル基板11の上方に配置されたカバーガラス14を備える携帯情報端末の構造を提示装置本体(10,11,14)を物理的構造の基礎としている。インセル型のタッチパネル基板11には、例えば、液晶ディスプレイを構成している薄膜トランジスタ(TFT)の多層積層構造内に静電容量方式タッチパネルの機構が組み込まれている。カバーガラス14は2種類の超音波を合成して「うなり」を発生させる「干渉板」の機能をなしているが、カバーガラス14の表面(上面)は、この表面に指を接触させることにより、「つるつる」「ざらざら」等の皮膚の感触表現を提示する皮膚感覚提示面をなしている。
【0020】
図2(a)に示すように、カバーガラス14の下面には、複数の超音波素子12
-1,12
-2,12
-3,……12
-i,12
-(i+1),……がそれぞれ平行な配列で周期的に接合されている点が、通常の携帯情報端末に用いられているカバーガラスとは異なる。なお、
図2(b)に示すように、複数の超音波素子12
i,j,(i=1~m;j=1~n:m,nは2以上の正の整数)をマトリクス状に配置して、カバーガラス14の下面に接合して携帯情報端末の一部として組み込んでもよい。
【0021】
図1の模式的表現では、簡略化のために図示を省略しているが、基体10は、携帯情報端末を構成する筐体とこの筐体の内部に収納された電子回路基板、電池、通信装置等を含む。更に、基体10には外部回路(21,22a,23a)と複数の超音波素子12
-1,12
-2,12
-3,……12
-i,12
-(i+1),……を接続するインターフェイス24が含まれている。
【0022】
図1に概略を簡略化して示すように、外部回路(21,22a,23a)は超音波を変調する信号を生成する演算制御回路23aと、演算制御回路23aに接続されたデータ記憶装置である表示情報記憶装置21と、演算制御回路23aから出力された超音波変調信号を増幅するアンプ22aを有する。より詳細には、
図3に示すように演算制御回路23aは、対象となる超音波振動系の減衰固有振動数f
dを格納し減衰固有振動数f
dを駆動周波数算出回路232aに供給する減衰固有振動数記憶装置239と、減衰固有振動数f
dとは異なる値となるように2つの駆動周波数f
1,f
2(
図9参照。f
1 < f
d < f
2)を算出する駆動周波数算出回路232aと、切替周波数f
sを算出する切替周波数算出回路231と、駆動周波数算出回路232aが算出した2つの駆動周波数f
1,f
2を、切替周波数f
sで切り替える切替手段(コマンド送信回路)233と、切替周波数f
sで切り替えた駆動周波数f
1,f
2を合成して超音波変調信号を生成し、生成された超音波変調信号をアンプ22aに出力するダイレクトディジタルシンセサイザ234を含む。
【0023】
図3に示す構成において、駆動周波数算出回路232aは第1の駆動周波数f1及び第2の駆動周波数f2を算出する。そして、切替周波数算出回路231、コマンド送信回路233及びダイレクトディジタルシンセサイザ234によって、本発明の「超音波変調信号生成手段」を構成している。この超音波変調信号生成手段は、第1の駆動周波数f1の第1の超音波駆動信号が、
図10に示したように、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断される周期を繰り返すようにするとともに、第2の駆動周波数f2の第2の超音波駆動信号が、第1の超音波駆動信号が送信される時間に遮断され、第1の超音波駆動信号が遮断される時間に送信されるように、第1の超音波駆動信号と第2の超音波駆動信号を相補的に切り替えて超音波変調信号を生成する。
【0024】
ダイレクトディジタルシンセサイザ234は、加算器とラッチでアキュムレータを構成し、クロックに同期して周波数設定値を累積し、周波数設定値に比例した速度のノコギリ波状のディジタルデータを得る。このデータは、出力波形の位相に相当し、波形データが書き込まれたROMのアドレスとして使用する。このROMの出力をDAコンバータでアナログ信号に変換して超音波変調信号をアナログ信号として出力する。
【0025】
図3の演算制御回路23aの切替周波数算出回路231、駆動周波数算出回路232a、コマンド送信回路233等の少なくとも一部を構成するハードウェア資源には、マイクロチップとして実装されたマイクロプロセッサ(MPU)等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能であるが、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置が携帯情報端末の内部に含まれる場合であれば、
図1の基体10の内部に組み込まれた電子回路基板に実装された半導体集積回路を用いることができる。
図1の基体10の内部に組み込まれた電子回路基板に実装された半導体集積回路を用いることができる。
【0026】
又、コンピュータシステムを構成する演算制御回路23aとして、算術演算機能を強化し信号処理に特化したディジタルシグナルプロセッサ(DSP)や、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよく、
図1の基体10の内部に組み込まれたDSPやマイコンであってもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUを演算制御回路23aに用いてもよい。更に、演算制御回路23aの切替周波数算出回路231、駆動周波数算出回路232a、コマンド送信回路233の少なくとも一部のハードウェア資源をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)で構成してもよい。
【0027】
PLDによって、演算制御回路23aの一部又はすべてを構成した場合は、表示情報記憶装置21は、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、演算制御回路23aは、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、予めPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
図3に示すように演算制御回路23aは、データバス29を介してデータ記憶装置である表示情報記憶装置21及びプログラム記憶装置20と情報のやりとりを行う。更に、入力装置25からの信号がデータバス29を介して表示情報記憶装置21に格納される。
【0028】
図3に示した入力装置25はキーボード、マウス、ライトペン又はフレキシブルディスク装置などで構成できるが、
図1のように、携帯情報端末の超音波素子12
-1,12
-2,12
-3,……12
-i,12
-(i+1),……が発生する超音波を変調する場合は、携帯情報端末のキーボードやタッチパネルを用いることができる。通常のコンピュータシステムであれば、
図3に示したハードウェアの構成には出力部や表示部が更に備えられてもよい。通常のコンピュータシステムの出力部や表示部は、それぞれプリンタ装置及びディスプレイ装置等により構成できるが、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置が携帯情報端末に含まれる場合であれば、
図1に示したインセル型のタッチパネル基板11の液晶ディスプレイを、出力部や表示部として用いることができる。そして、表示部に、超音波素子12
-1,12
-2,12
-3,……12
-i,12
-(i+1),……が発生する超音波の変調に必要な入力データ、演算制御回路23aの解析結果や制御パラメータ等を表示させることも可能である。
【0029】
図3に示した表示情報記憶装置21及びプログラム記憶装置20は、例えば、一般的なコンピュータシステムの外部メモリ装置、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのプログラムを記録することができるような媒体などが対応する。具体的には、フレキシブルディスク、CD-ROM,MOディスク、カセットテープ、オープンリールテープなどが表示情報記憶装置21及びプログラム記憶装置20に用いられるコンピュータ読取り可能な記録媒体に含まれるが、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置が携帯情報端末に含まれる場合であれば、携帯情報端末に内蔵される半導体メモリ等が採用可能である。例えば、
図3に示すコンピュータシステムの表示情報記憶装置21は、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。又、キャッシュメモリは1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。
【0030】
図3に示した演算制御回路23aの本体は、例えば、フレキシブルディスク装置(フレキシブルディスクドライブ)及び光ディスク装置(光ディスクドライブ)を内蔵若しくは外部接続するように構成してもよい。フレキシブルディスクドライブに対してはフレキシブルディスクを、又光ディスクドライブに対してはCD-ROMをその挿入口から挿入し、所定の読み出し操作を行うことにより、これらの記録媒体に格納されたプログラムを演算制御回路23aに接続されたプログラム記憶装置20にインストールすることができる。又、所定のドライブ装置を接続することにより、例えばゲームパック等に利用されているメモリ装置としてのROMや、磁気テープ装置としてのカセットテープを表示情報記憶装置21及びプログラム記憶装置20として用いることもできる。更に、インターネット等の情報処理ネットワークを介して、演算制御回路23aの処理に必要なプログラムをプログラム記憶装置20に格納することが可能である。
【0031】
第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置に適用される超音波変調の基礎実験に用いたボルト締めランジュバン型振動子(以下において「振動発生器」という。)は、
図4に示すように2つの圧電素子443,445が、電極板44a,44bを挟んで、金属ブロック442と金属ブロック446の間に挟み込まれた構造である。直径30mmの金属ブロック442と金属ブロック446の間に、直径30mmの圧電素子443,445を挟み込むために、貫通ボルト447で締めつけている。圧電素子443,445を2つの金属ブロック442,446で挟んだサンドイッチ構造とすることで全長をかせぎ,低い共振周波数、例えば28kHzで共振するようにしている。
【0032】
図4に示した発振器44cには共振周波数追従装置を用い、常に超音波振動発生手段44の共振周波数となるように、電極板44a,44bを電源44cで駆動することで圧電素子443,445の最大の振動振幅を得るようにするのが好ましい。金属ブロック442にはホーン部45が接合され、超音波振動発生手段44が発生した機械的振動はホーン部45に印加される。ホーン部45は、 機械的品質係数を高くするために、有限要素法解析により設計し、ホーン部45と金属ブロック442とが一体化されている。
【0033】
機械的品質係数の減少を避けるために、例えばポリウレタン等の高分子の樹脂製のシート49上に振動発生器を置くことが望ましい。ホーン部45の端面(
図4において左側の面)には振動板46が設けられ、振動板46の振動面には、図示を省略したレーザドップラ振動速度計(以下において「振動計」という。)から出射されたレーザ光が、
図4の左側方向から照射されて、振動板46の振動が計測される。
図4の表現では、振動板46とホーン部45が別体である印象を与えるが、振動板46とホーン部45とは一体となるように、切削加工等で構成できる。振動計に備えられているレーザ光の光源には、例えばヘリウム・ネオン(He-Ne)レーザを用いることができる。
図1に示した皮膚感覚提示装置においては、カバーガラス14が2種類の超音波を合成してうなりを発生させる干渉板の機能をなしていたが、
図4に示す振動発生器の構成では、振動板46が2種類の超音波を合成してうなりを発生させる干渉板の機能をなしている。
【0034】
図5(a)は、
図4に示した振動発生器の電極板44a,44bに入力される電気信号の電気的特性で、
図5(b)は、振動計で測定した振動発生器の機械的特性の測定結果を示す。
図5(a)の横軸は周波数で、実線は左縦軸(左側の縦軸)に対応するコンダクタンスGの周波数に対する変化を、破線は右縦軸(右側の縦軸)に対応するサセプタンスBの周波数に対する変化を示す。
図5(b)の横軸も周波数で、
図5(b)の実線は左縦軸に対応する振動速度の周波数に対する変化を、破線は右縦軸に対応する位相の周波数に対する変化を示す。
【0035】
図6(a)は、振動発生器の印加電圧をAM変調した場合の電圧波形の時間変化を示す。
図6(b)は、
図6(a)の印加電圧を振動発生器に印加した場合に現れると期待される振動振幅の時間変化を示す。しかしながら、
図7に示すように振動速度の時間変化は駆動電圧の時間変化に追随できない。
図7の横軸は時間を示し、左縦軸は振動発生器の駆動電圧である。
図7の右縦軸は振動計で測定した振動速度を示す。振動発生器の駆動電圧をオン状態からオフ状態にすると、細かな○印の分布で示したように、振動速度の時間変化は駆動電圧の時間変化に追随できず、遅延が発生していることが分かる。
【0036】
このため、
図8(a)のようなAM変調した印加電圧を振動発生器に印加した場合に、
図4に示した振動板46の振動面に現れる振動を振動計で測定すると、その振動振幅の時間変化は、
図8(b)のようになる。このことは、触覚の提示に用いるための超音波振動子の機械的品質係数が高い場合には、同一の電圧で駆動させると変調周波数が高くなるにつれ、振動子が応答できなくなることを示している。その結果として皮膚感覚提示装置に出力される変調深度が低下し、皮膚感覚提示装置が細かい粗さを提示することが困難となる。
【0037】
そこで、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置では、
図4に示した振動発生器の系の減衰固有振動数f
dとした場合において、
図9に示すように、圧電素子443,445を減衰固有振動数f
dとは異なる駆動周波数f
1,f
2(f
1 < f
d < f
2)で駆動することで、駆動直後に
図16及び
図17に示すように、うなりを伴いながら振動が生じる現象を利用する。減衰固有振動数f
dは、
図4の振動発生器の系の減衰固有振動数を予め測定して、
図3に示した演算制御回路23aに内蔵された減衰固有振動数記憶装置239に格納しておく。
【0038】
図10は、演算制御回路23aの駆動周波数算出回路232aが算出した駆動周波数f
1,f
2が、切替周波数算出回路231が算出した切替周波数f
sで切り替えられる周波数変調(FM変調)の様子を示している。切替周波数算出回路231が算出した切替周波数f
sは、コマンド送信回路233に入力され、コマンド送信回路233は
図10に示すように、1周期の内の予め定めた時間の経過後の時刻t
1で駆動周波数f
2を駆動周波数f
1に切り替え、時刻t
2で駆動周波数f
1を駆動周波数f
2に切り替える。コマンド送信回路233は更に時刻t
3で駆動周波数f
2を駆動周波数f
1に切り替え、時刻t
4で駆動周波数f
1を駆動周波数f
2に切り替える、……というように、切替周波数算出回路231の算出した切替周波数f
sを用いて、演算制御回路23aのコマンド送信回路233が駆動周波数f
1,f
2を周期的に切り替える。
【0039】
図11(a)は、時刻t
1で駆動周波数を切り替え、駆動周波数f
2をオフとしたときの駆動周波数f
2の成分が減衰し、減衰固有振動数f
dである残留振動数f
rに収束して行く過渡現象を示している。
図11(b)は、時刻t
1で駆動周波数f
1をオンにして駆動周波数を切り替えたときの駆動周波数f
1の成分が減衰固有振動数f
d(=残留振動数f
r)の振動から立ち上がる過渡現象を示している。
図11(a)に示した駆動周波数f
2の成分が減衰する過渡状態の振動と、
図11(b)に示した駆動周波数f
1の成分が立ち上がる過渡状態の振動が、
図4に示した振動発生器の系で重畳して互いに干渉することにより、
図11(a)の一部と
図11(b)の一部を囲む縦長の矩形の領域の時間帯の波が合成され、振動発生器の振動板46の振動にうなりが発生する。
【0040】
そこで、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置の超音波変調に用いる振動発生器の系を、
図12に示したような重り(質点)61の質量m、バネ63のバネ定数k、ダッシュポット(粘性体)62の粘性抵抗(粘性減衰係数)cの集中定数系の力学モデル(ケルビン・フォークトモデル)で考える。質量mの質点61に減衰比ξ=c/c
0、外力F
0sinωtで強制振動を与える場合の時刻tにおける質点61の自由振動の変位x
h(t)は、
図13(a)に示すようにx
h(t)=X
0exp(-ξω
dt)sin(ω
dt+θ)で表せる。ここで減衰比ξを定義する臨界粘性減衰係数c
0=2(mk)
1/2である。
【0041】
又、質量mの質点61に外力F
0sinωtで強制振動を与える場合の質点61の定常振動の変位x
p(t)は、定常振動の振幅をXとして、
図13(b)に示すように、x
p(t)=Xsin(ωt-φ)で表せる。即ち、
図12に示した集中定数系における質点61の変位x(t)は、自由振動の変位x
h(t)と定常振動の変位x(t)の重ね合わせで表せるので、以下の式(1)で示される:
x(t)=X
0exp(-ξω
dt)sin(ω
dt+θ)+Xsin(ωt-φ)……(1)
【0042】
初期条件がx(t)=0,dx(t)/dt=0で与えられるときξ
2≒0とすると式(1)の定数φ,θ,X
0は、それぞれ以下の式(2),(3),(4)で与えられる:
φ=tan
-1(2ξω
dω/(ω
d
2-ω
2)) ……(2)
θ=tan
-1(ω
dtanφ/(ξω
dtanφ-ω)) ……(3)
X
0=X(sin
2φ+(ξsinφ-(ω/ω
d)cosφ)
2)
1/2 ……(4)
式(2),(3),(4)より、発生するうなりは自由振動と定常振動の周波数の差が要因であると捉えることができる。即ち、
図14(a)に示すような自由振動と
図14(b)に示すような定常振動を重ね合わせると、
図14(c)に示すようなうなりが発生することが分かる。
図14(a)~(c)の横軸は時間で、
図14(a)~(c)の縦軸はそれぞれ自由振動の振幅、定常振動の振幅、うなりの振幅である。
【0043】
図15(a),(b)の横軸は時間で、
図15(a),(b)の縦軸はそれぞれうなりの測定結果の振幅及びうなりの解析結果の振幅である。
図18(b)に示すように、うなりの節から節をうなりの周波数f
Bとしたとき、うなりの周波数f
Bは
、以下の式(5)で解析できる:
f
B=(1/(2π))|ω
d-ω| ……(5)
【0044】
図16の横軸は時間を示し、左縦軸は振動発生器の駆動電流を示す。
図16の右縦軸は振動計で測定した振動速度である。駆動周波数算出回路232aが算出した駆動周波数f
2と駆動周波数f
1の差Δf=f
2-f
1=200Hz、切替周波数算出回路231が算出した切替周波数f
s=100Hzのときの振動発生器に印加される駆動電流の時間変化に対し、振動板46の振動速度の時間変化が追随していることが分かる。同様に
図17の横軸も時間を示し、左縦軸は振動発生器の駆動電流を示す。
図17の右縦軸は振動計で測定した振動速度である。駆動周波数f
2と駆動周波数f
1の差Δf=1,700Hz、切替周波数f
s=370Hzのときの振動発生器に印加される駆動電流の時間変化に、振動板46の振動速度の時間変化が追随していることが分かる。
【0045】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置によれば、切替周波数fs=100~370Hz程度まで高くなっても、 振動発生器に印加する駆動電流の時間変化によって、振動板46に発生する機械的振動を変調でき、高い変調周波数で変調された超音波振動子の機械的振動を実現できる。このため、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置によれば、細かなうなりを発生させることで、細かなざらざら感を提示することができる。
【0046】
(第2実施形態)
図示を省略しているが、本発明の第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置のシステム構成は、既に
図1に模式的に例示した構造と同様に、上部に空洞部を有する基体10と、基体10の空洞部に配置されたインセル型のタッチパネル基板11と、基体10の空洞部を閉じるように、タッチパネル基板11の上方に配置されたカバーガラス(干渉板)14を備える携帯情報端末と同様な構造を提示装置本体(10,11,14)の物理的な構造としている。
【0047】
しかしながら、
図18に示すように、第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置の演算制御回路23bは、
図3に示した演算制御回路23aのハードウェア構成とは異なる。第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置の演算制御回路23bは、オン状態とオフ状態を交互に周期的に切り替えるバースト周波数f
bを算出するバースト周波数算出回路235と、駆動周波数fを算出する駆動周波数算出回路232bと、駆動周波数算出回路232bが算出した駆動周波数fを、バースト周波数f
bでオン・オフする制御信号を発生する切替手段(制御信号発生回路)236と、駆動周波数fの超音波発生信号を生成し、生成された超音波発生信号をアンプ22bにアナログ信号として出力するダイレクトディジタルシンセサイザ234と、減衰固有振動数f
d(=(1/2π)ω
d)を格納し、減衰固有振動数f
dを駆動周波数算出回路232bに供給する減衰固有振動数記憶装置239を含む。
【0048】
周期性をもって電圧印加のオン状態とオフ状態を交互に切り替える1セットを与える時間(1/T
b)の逆数が、バースト周波数算出回路235が算出するバースト周波数f
bになる。アンプ22bは、ダイレクトディジタルシンセサイザ234から出力された超音波発生信号を、制御信号発生回路236からの制御信号でオン・オフしながら増幅し、
図1と同様な構造の基体10に内蔵されたインターフェイス24に出力する。
【0049】
図18に示すシステム構成において、バースト周波数算出回路235、制御信号発生回路236、ダイレクトディジタルシンセサイザ234及びアンプ22bが、本発明の「超音波変調信号生成手段」を構成している。超音波変調信号生成手段は、
図19(a)に示すように、駆動周波数の超音波駆動信号が、1周期の内の予め定めた時間に送信され、残余の時間に遮断される周期が繰り返される超音波変調信号を生成する。
【0050】
演算制御回路23aのバースト周波数算出回路235、駆動周波数算出回路232b、制御信号発生回路236の少なくとも一部のハードウェア資源の構成をMPUやPLDで構成してもよいが、第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置が携帯情報端末の内部に含まれる場合であれば、携帯情報端末電子回路基板に実装された半導体集積回路を用いることができる。
図18に示すように演算制御回路23bは、データバス29を介してデータ記憶装置である表示情報記憶装置21及びプログラム記憶装置20と情報のやりとりを行う。更に、入力装置25からの信号がデータバス29を介して表示情報記憶装置21に格納される。
【0051】
図18に示した表示情報記憶装置21及びプログラム記憶装置20は、例えば、一般的なコンピュータシステムの外部メモリ装置、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのプログラムを記録することができるような媒体などが対応する。例えば、
図18に示すコンピュータシステムの表示情報記憶装置21は、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。又、キャッシュメモリは1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。
【0052】
図19(a)は、バースト周波数算出回路235、制御信号発生回路236、ダイレクトディジタルシンセサイザ234及びアンプ22bが構成する本発明の「超音波変調信号生成手段」が、オン状態とオフ状態を交互に周期的に切り替えるバースト周波数変調(オン・オフ駆動)の様子を示している。即ち、演算制御回路23bの駆動周波数算出回路232bが算出した駆動周波数fが、バースト周波数算出回路235が算出したバースト周波数f
bを用いて、オン状態とオフ状態を交互に周期的に切り替えられて、バースト周波数変調(オン・オフ駆動)されている様子を示している。
【0053】
即ち、1周期の内の予め定めた時間の経過後の時刻t
1において駆動周波数fの超音波駆動信号が遮断され、時刻t
2において超音波駆動信号が送信され、時刻t
3において超音波駆動信号が遮断され、時刻t
4において超音波駆動信号が送信され、時刻t
5において超音波駆動信号が遮断され、時刻t
6において超音波駆動信号が送信され、……というオン・オフの周期が繰り返される。バースト周波数算出回路235が算出したバースト周波数f
bは、制御信号発生回路236に入力され、制御信号発生回路236は
図19(a)に示すように、バースト周波数f
bを用いてアンプ22bをオン・オフ駆動する。この結果、アンプ22bは、演算制御回路23bのダイレクトディジタルシンセサイザ234が出力した駆動周波数fの正弦波駆動信号のオン状態とオフ状態を交互に周期的に切り替える。
【0054】
図19(b)は、比較のために、第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置の演算制御回路23bの駆動周波数算出回路232aが算出した駆動角周波数ω
1,ω
2が、切替周波数算出回路231が算出した切替周波数f
sで切り替えられる周波数変調(FM変調)の様子を示しており、第1実施形態で説明した
図10と等価な波形である。
図19(b)のFM変調では2つの駆動角周波数ω
1,ω
2を切替周波数f
sで交互に切り替えているが、第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置では
図19(a)に示すように、単一の駆動角周波数ωの正弦波駆動信号のオン状態とオフ状態を交互に周期的に切り替えるバースト駆動をしていることが分かる。
【0055】
図20の上段の矩形パルスは、
図4に示した振動発生器の圧電素子443,445に印加される正弦波駆動信号を約30ms毎に、オン状態とオフ状態を交互に周期的に切り替える矩形波による変調を示す。振動発生器の系が有する減衰固有角周波数ω
dとは異なる正弦波駆動信号として、圧電素子443,445には減衰固有振動数ω
dよりも2π×200ラジアン/秒低い駆動角周波数ω=ω
d-2π200の正弦波駆動信号を変調し、オン状態とオフ状態を切り替えて矩形波として印加される。
図20の下段は、圧電素子443,445が
図20の上段に示すようにバースト駆動された場合に、振動発生器の振動板46に発生する機械的振動の振動速度を振動計で測定した場合の測定結果を示す。圧電素子443,445に印加される矩形波がオン状態になった直後にうなりが発生し、オフ状態になった直後に減衰振動となる。
図20の下段に示すように、圧電素子443,445に印加される正弦波駆動信号がオン状態のときにT
b=1/f
b=5ms程度のうなりが7回繰り替えされていることが分かる。
【0056】
図21の上段の矩形パルスは、
図20の下段の測定から得られたT
b=1/f
b=5msのうなりの1周期をオン時間とし、オフ時間をオン時間より短い任意の値に設定して、バースト駆動した場合の電気信号の時間変化を示す。
図20と同様に、圧電素子443,445に、オン時間において駆動角周波数ω=ω
d-2π200の正弦波駆動信号が印加される。
図21の下段は、圧電素子443,445が
図21の上段に示すようにバースト駆動された場合に、振動発生器の振動板46に発生する機械的振動の振動速度を振動計で測定した場合の測定結果を示す。
図21の下段に示すように、圧電素子443,445に印加される正弦波駆動信号がオン状態のときにT
b=5ms程度のうなりが1回発生することが分かる。
【0057】
図22の上段の矩形パルスは、
図20の下段の測定から得られたT
b=5msのうなりの1周期内で、オン状態とオフ状態が切り替られるように設定して、バースト駆動した場合の電気信号の時間変化を示す。オフ時間は1ms以下の短い時間に設定し、うなりの1周期内で、オン状態とオフ状態が切り替られるようにオン時間も調整されている。オン時間において駆動角周波数ω=ω
d-2π200の正弦波駆動信号が圧電素子443,445に印加されるのは、
図20及び
図21と同様である。
図22の下段は、圧電素子443,445が
図22の上段に示すようにバースト駆動された場合に、振動発生器の振動板46に発生する機械的振動の振動速度を振動計で測定した場合の測定結果を示す。
図22の下段に示すように、圧電素子443,445に印加される正弦波駆動信号が、うなりの1周期内でオン/オフが切り替られる場合でもT
b=5ms程度のうなりが発生することが分かる。
【0058】
図23の上段の矩形パルスは、比較のために第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置において、駆動角周波数ω
1,ω
2(ω
1 < ω
d < ω
2)が63ms毎に切り替えられる周波数変調(FM変調)の様子を示している。
図23の下段は、圧電素子443,445が
図23の上段に示すようにFM変調された場合に、振動発生器の振動板46に発生する機械的振動の振動速度を振動計で測定した場合の測定結果を示す。
図23の下段に示すように、圧電素子443,445に駆動角周波数ω
1が63msの間印加されるときにT
b=5ms程度のうなりが12回繰り替えされ、駆動角周波数ω
2が63msの間印加されるときにT
b=5ms程度のうなりが13回繰り替えされていることが分かる。
【0059】
図24は第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置の説明で用いた
図21に対応する。即ち、
図21に示した現象と比較をするために第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置の手法である駆動角周波数ω
1,ω
2(ω
1 < ω
d < ω
2)が、5ms毎に切り替えられる周波数変調(FM変調)の様子を示している。
図24の上段の矩形パルスは、
図23の下段の測定から得られたうなりの1周期T
b=5msに合わせて、駆動角周波数ω
1,ω
2を切り替える周波数変調(FM変調)の様子を示している。
図24の下段は、圧電素子443,445が
図24の上段に示すようにT
b=5msでFM変調された場合に、振動発生器の振動板46に発生する機械的振動の振動速度を振動計で測定した場合の測定結果を示す。
図24の下段に示すように、駆動角周波数ω
1,ω
2がT
b=5msでFM変調されて圧電素子443,445に印加されるときにT
b=5ms程度のうなりが、2つの駆動角周波数ω
1,ω
2のそれぞれの印加時間毎に1回ずつ発生することが分かる。
【0060】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置によれば、バースト周波数fb=200Hz程度の高い周波数でバースト駆動をすることによって、振動板46に発生する機械的振動として、高い周波数のうなりを発生できることが分かる。第2実施形態に係る皮膚感覚提示装置によれば、AM変調では不可能な周波数となる高いバースト周波数によって、細かなうなりを発生できるので、細かいざらざら感を提示できる。
【0061】
(第3実施形態)
図示を省略しているが、本発明の第3実施形態に係る皮膚感覚提示装置は、
図1に模式的に例示した構造と同様に、上部に空洞部を有する基体10と、基体10の空洞部に配置されたインセル型のタッチパネル基板11と、基体10の空洞部を閉じるように、タッチパネル基板11の上方に配置されたカバーガラス14を備える携帯情報端末の構造を提示装置本体(10,11,14)を物理的構造の基礎としている。しかしながら、
図25に示すように、カバーガラス14の下面には、第1の櫛型電極対(31a,31b)と、第1の櫛型電極対(31a,31b)から離間して配置された第2の櫛型電極対(32a,32b)が対称配置され、第1の櫛型電極対(31a,31b)と第2の櫛型電極対(32a,32b)の間に弾性表面波伝送経路を構成している点が、
図2に示した第1実施形態に係る皮膚感覚提示装置のカバーガラス14の下面の構造とは異なる。
【0062】
第1の櫛型電極対(31a,31b)は、櫛型電極31aの櫛の歯と櫛型電極31bの櫛の歯がインターディジタル(交差指状)に組み合っている。同様に第2の櫛型電極対(32a,32b)は、櫛型電極32aの櫛の歯と櫛型電極32bの櫛の歯がインターディジタルに組み合っている。第3実施形態に係る皮膚感覚提示装置のカバーガラス14の下面には、第1の櫛型電極対(31a,31b)の弾性表面波伝送経路とは反対側の位置に第1のブラッグ反射器33が配置され、第2の櫛型電極対(32a,32b)の弾性表面波伝送経路とは反対側の位置に第2のブラッグ反射器34が配置されている。この結果、第1のブラッグ反射器33と第2のブラッグ反射器34が、それぞれカバーガラス14の両端側に対称配置されたトポロジーを構成している。
【0063】
第1のブラッグ反射器33及び第2のブラッグ反射器34のそれぞれは、弾性表面波の波長の1/2の間隔で周期的に配置されたグレーティング反射器であり、各反射素子からの反射波が同相で重なりあって100%に近い反射率が得られる。このため、
図25に示すように、第1のブラッグ反射器33、第1の櫛型電極対(31a,31b)、第2の櫛型電極対(32a,32b)及び第2のブラッグ反射器34の互いに対向する対称配置によって、弾性表面波のファブリペロー共振器が構成されている。よって、
図25に示すファブリペロー共振器の内部では、白抜きの矢印で示した弾性表面波が往復運動を繰り返すことができる。
【0064】
図26の横軸は周波数で、実線は左縦軸に対応するコンダクタンスGの周波数に対する変化を、破線は右縦軸に対応するサセプタンスBの周波数に対する変化を示す。第1の櫛型電極対(31a,31b)で励振された弾性表面波は同じ周波数のままカバーガラス14表面を伝搬し,第2のブラッグ反射器34で反射しても周波数に変化はないことが分かる。
図26の実線で示したコンダクタンスGの極大値で弾性表面波を駆動すると弾性表面波の反射を利用できる。
【0065】
図27の上段の矩形パルスは、第3実施形態に係る皮膚感覚提示装置において、弾性表面波の駆動角周波数ω
1,ω
2(ω
1 < ω
d < ω
2)を切り替える周波数変調(FM変調)の様子を示している。
図27の中段は、弾性表面波が
図27の上段に示すようにFM変調された場合に、振動計で測定した振動速度の時間変化を示す。
図27の下段は、弾性表面波が
図27の上段に示すようにFM変調する場合の第1の櫛型電極対(31a,31b)及び第2の櫛型電極対(32a,32b)に印加する電圧の時間変化を示す。
図27から第1の櫛型電極対(31a,31b)から放射されて反射して戻ってきた弾性表面波と新たに第1の櫛型電極対(31a,31b)より放射された弾性表面波の干渉によりうなりが観測されたことが分かる。
【0066】
以上のように、本発明の第3実施形態に係る皮膚感覚提示装置によれば、弾性表面波の場合であっても、放射されて反射して戻ってきた弾性表面波と新たに放射された弾性表面波のうなりを用いることで、細かなざらざら感を提示することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、本発明の第3実施形態においては、第1の櫛型電極対(31a,31b)から放射されて反射して戻ってきた弾性表面波と新たに第1の櫛型電極対(31a,31b)より放射された弾性表面波の干渉によるうなりを説明したが、例示に過ぎない。
【0068】
別の手法としては、第1の櫛型電極対(31a,31b)から放射された弾性表面波と第2の櫛型電極対(32a,32b)より放射された弾性表面波の干渉によってうなりを生成してもよい。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0069】
12-1,12-2,12-3,12-i,12-(i+1),12i,j(i=1~m;j=1~n:m,nは2以上の正の整数)超音波素子
10 基体
11 タッチパネル基板
14 カバーガラス(干渉板)
20 プログラム記憶装置
21 表示情報記憶装置
22a,22b アンプ
23a,23b 演算制御回路
24 インターフェイス(I/F)
25 入力装置
29 データバス
31a,31b,32a,32b 櫛型電極
33 第1のブラッグ反射器
34 第2のブラッグ反射器
44 超音波振動発生手段
44c 電源
45 ホーン部
46 振動板(干渉板)
49 シート
61 質点
62 ダッシュポット(粘性体)
63 バネ
231 切替周波数算出回路
232a,232b 駆動周波数算出回路
233 コマンド送信回路
234 ダイレクトディジタルシンセサイザ
235 バースト周波数算出回路
236 制御信号発生回路
239 減衰固有振動数記憶装置
442,446 金属ブロック
443,445 圧電素子
44a,44b 電極板
447 貫通ボルト
44c 発振器