(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】成形品の検査方法、及び、成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20230329BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230329BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01N21/17 630
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2021512021
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014112
(87)【国際公開番号】W WO2020203807
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2019066862
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】青山 高久
(72)【発明者】
【氏名】津田 早登
(72)【発明者】
【氏名】桑嶋 祐己
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132324(JP,A)
【文献】特開2007-320267(JP,A)
【文献】特表2018-529075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070708(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0109611(US,A1)
【文献】DONG, Bo et al.,Microdefect identification in polymers by mapping depth-resolved phase-difference destributions using optical coherence tomography,Polymer Testing,2018年,Vol.68,p.233-237
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 21/17
B29C 45/00 - B29C 45/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有率が30質量%以上の成形品を光干渉断層撮影法
(OCT)により撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する工程(A1)を含
み、
前記OCTによる撮影を、光源からの光線の前記成形品に対する入射角αを3~30度として行う、
成形品の検査方法。
【請求項2】
フッ素含有率が30質量%以上の成形品を光干渉断層撮影法(OCT)により撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する工程(A1)を含み、
前記OCTによる撮影を、光源と前記成形品との間に、結晶性のポリマーを含むフィルタを設けて行う、
成形品の検査方法。
【請求項3】
更に、工程(A1)における検査の結果に基づいて、前記成形品が良品であるか否かを判定する工程(A2)を含む請求項1
又は2記載の検査方法。
【請求項4】
前記成形品は、含フッ素ポリマーを含む請求項1
~3のいずれかに記載の検査方法。
【請求項5】
前記成形品は、溶融加工性フッ素樹脂を含む請求項1~
4のいずれかに記載の検査方法。
【請求項6】
前記成形品は、射出成形品である請求項1~
5のいずれかに記載の検査方法。
【請求項7】
工程(A1)は、前記画像データに基づいて、前記成形品の内部のクラック及びデラミネーションを検査する工程である請求項1~
6のいずれかに記載の検査方法。
【請求項8】
フッ素原子を含む材料を成形することにより、フッ素含有率が30質量%以上の成形品を複数得る工程(B1)、
複数の前記成形品から1以上の前記成形品を選択し、当該成形品を光干渉断層撮影法
(OCT)により撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する工程(B2)、及び、
工程(B2)における検査の結果に基づいて、複数の前記成形品から良品を選別する工程(B3)を含
み、
前記OCTによる撮影を、光源からの光線の前記成形品に対する入射角αを3~30度として行う、
成形品の製造方法。
【請求項9】
フッ素原子を含む材料を成形することにより、フッ素含有率が30質量%以上の成形品を複数得る工程(B1)、
複数の前記成形品から1以上の前記成形品を選択し、当該成形品を光干渉断層撮影法(OCT)により撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する工程(B2)、及び、
工程(B2)における検査の結果に基づいて、複数の前記成形品から良品を選別する工程(B3)を含み、
前記OCTによる撮影を、光源と前記成形品との間に、結晶性のポリマーを含むフィルタを設けて行う、
成形品の製造方法。
【請求項10】
工程(B3)は、工程(B2)における検査の結果に基づいて、工程(B2)で検査された成形品が良品であるか否かを判定する工程(B3-1)、及び、工程(B1)で得られた複数の前記成形品から、工程(B3-1)において良品と判定された成形品を選別する工程(B3-2)を含む請求項
8又は9記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形品の検査方法、及び、成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れており、代表的なエンジニアリングプラスチックスの一つとして成形品等に広く利用されている。
【0003】
特許文献1には、フッ素樹脂製の被検査物を超音波によって検査する特定の方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、フッ素を含む成形品の内部の状態を非破壊で検査することが可能な、成形品の新規な検査方法、及び、当該検査方法を用いる成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、フッ素含有率が30質量%以上の成形品を光干渉断層撮影法により撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する工程(A1)を含む成形品の検査方法に関する。
【0007】
上記検査方法は、更に、工程(A1)における検査の結果に基づいて、上記成形品が良品であるか否かを判定する工程(A2)を含むことが好ましい。
【0008】
上記成形品は、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。
【0009】
上記成形品は、溶融加工性フッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
上記成形品は、射出成形品であることが好ましい。
【0011】
工程(A1)は、上記画像データに基づいて、上記成形品の内部のクラック及びデラミネーションを検査する工程であることが好ましい。
【0012】
本開示は、フッ素原子を含む材料を成形することにより、フッ素含有率が30質量%以上の成形品を複数得る工程(B1)、
複数の上記成形品から1以上の上記成形品を選択し、当該成形品を光干渉断層撮影法により撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する工程(B2)、及び、
工程(B2)における検査の結果に基づいて、複数の上記成形品から良品を選別する工程(B3)を含む成形品の製造方法にも関する。
【0013】
工程(B3)は、工程(B2)における検査の結果に基づいて、工程(B2)で検査された成形品が良品であるか否かを判定する工程(B3-1)、及び、工程(B1)で得られた複数の上記成形品から、工程(B3-1)において良品と判定された成形品を選別する工程(B3-2)を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、フッ素を含む成形品の内部の状態を非破壊で検査することが可能な、成形品の新規な検査方法、及び、当該検査方法を用いる成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の検査方法において使用し得る光干渉断層撮影(OCT)装置の一例を示す模式図である。
【
図2】本開示の検査方法において使用し得るOCT装置において、試料を傾けて配置する態様の一例を示す拡大図である。
【
図3】本開示の検査方法において採用し得る成形品の形状の例を示す模式図である。
【
図4】本開示の検査方法において使用し得るOCT装置において、スペーサーを用いて光線入射角を調整する態様の一例を示す模式図である。
【
図5】実施例のOCTにおける試料の配置態様を模式的に示す図である。
【
図6】実施例1で得られたOCT画像を示す図である。
【
図7】実施例2で得られたOCT画像を示す図である。
【
図8】実施例3で得られたOCT画像を示す図である。
【
図9】実施例4で得られたOCT画像を示す図である。
【
図10】実施例5で得られたOCT画像を示す図である。
【
図11】実施例6で得られたOCT画像を示す図である。
【
図12】実施例7で得られたOCT画像を示す図である。
【
図13】実施例8で得られたOCT画像を示す図である。
【
図14】実施例9で得られたOCT画像を示す図である。
【
図15】実施例10で得られたOCT画像を示す図である。
【
図16】実施例11で得られたOCT画像を示す図である。
【
図17】実施例12で得られたOCT画像を示す図である。
【
図18】実施例13で得られたOCT画像を示す図である。
【
図19】実施例14で得られたOCT画像を示す図である。
【
図20】実施例15で得られたOCT画像を示す図である。
【
図21】実施例16で得られたOCT画像を示す図である。
【
図22】実施例17で得られたOCT画像を示す図である。
【
図23】実施例18で得られたOCT画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0017】
本開示は、フッ素含有率が30質量%以上の成形品を光干渉断層撮影法(Optical Coherence Tomography:OCT)により撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する工程(A1)を含む成形品の検査方法に関する。
本開示の検査方法によれば、成形品の内部の状態を非破壊で検査することができるので、成形品の全数検査を行うことができる。したがって、成形品の品質の信頼性を高めることができる。
また、OCTによる画像化は高速で実施できるため、上記検査方法を成形品の生産ラインに組み込むことが容易である。したがって、生産ラインにおいて、生産性を損なうことなく、成形品の品質の信頼性を高めることができる。
【0018】
工程(A1)において検査の対象となる上記成形品は、フッ素含有率が30質量%以上である。上記フッ素含有率は、41質量%以上であることが好ましく、59質量%以上であることがより好ましい。上記フッ素含有率は、また、76質量%以下であることが好ましい。
上記フッ素含有率は、酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法で測定することにより求める。
【0019】
上記成形品は、フッ素原子を含む材料を含んでいればよいが、ポリマーの成形品であることが好ましい。
【0020】
上記成形品は、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。上記含フッ素ポリマーとしては、フッ素原子を含むポリマー、例えば、フッ素樹脂、フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、フッ素樹脂が好ましい。
【0021】
上記フッ素樹脂は、融点が100~360℃であることが好ましく、150~340℃であることがより好ましく、180~330℃であることが更に好ましく、200~320℃であることが特に好ましい。
融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0022】
上記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、テトラフルオロエチレン[TFE]/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]共重合体[PFA]、TFE/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体[FEP]、エチレン[Et]/TFE共重合体[ETFE]、Et/TFE/HFP共重合体[EFEP]、ポリクロロトリフルオロエチレン[PCTFE]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニリデン[PVDF]、ポリフッ化ビニル[PVF]、フッ化ビニリデン[VdF]/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/HFP/(メタ)アクリル酸共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/ペンタフルオロプロピレン共重合体、VdF/PAVE/TFE共重合体等が挙げられる。
【0023】
上記フッ素樹脂としては、なかでも、溶融加工性フッ素樹脂が好ましい。溶融加工性とは、射出成形機等の従来の加工機器を用い、溶融して加工することが可能であることを意味する。溶融加工性フッ素樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.01~500g/10分であることが通常である。
本明細書において、MFRは、ASTM D 1238に準拠し、温度372℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
【0024】
上記溶融加工性フッ素樹脂としては、PFA、FEP、ETFE、EFEP、PCTFE、CTFE/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、PVDF及びPVFからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PFA、FEP、ETFE、EFEP、PCTFE、CTFE/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体及びPVDFからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、射出成形が容易であることからPFAが特に好ましい。
【0025】
上記PFAにおけるPAVEとしては、例えば、式(1):
CF2=CF-ORf (1)
(式中、Rfは、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるものが挙げられ、なかでもパーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パープルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましい。
【0026】
上記PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位とPAVE単位とのモル比(TFE単位/PAVE単位)が70/30以上99.5/0.5未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.5/1.5以下である。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。上記PFAは、TFE及びPAVEのみからなる共重合体であってもよいし、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%であり、TFE単位及びPAVE単位が合計で90~99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、HFP、CZ1Z2=CZ3(CF2)nZ4(式中、Z1、Z2及びZ3は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Z4は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF2=CF-OCH2-Rf1(式中、Rf1は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
【0027】
上記PFAは、融点が180~340℃であることが好ましく、230~330℃であることがより好ましく、280~320℃であることが更に好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0028】
上記PFAは、メルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましく、0.5~90g/10分であることがより好ましく、1.0~85g/10分であることが更に好ましい。
【0029】
上記FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位とのモル比(TFE単位/HFP単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上97/3以下である。TFE単位が少なすぎると機械物性が低下する傾向があり、多すぎると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90~99.9モル%である共重合体であることも好ましい。TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、PAVE、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。
【0030】
上記FEPは、融点が150~320℃であることが好ましく、200~300℃であることがより好ましく、240~280℃であることが更に好ましい。上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0031】
上記FEPは、MFRが0.01~100g/10分であることが好ましく、0.1~80g/10分であることがより好ましく、1~60g/10分であることが更に好ましく、1~50g/10分であることが特に好ましい。
【0032】
本明細書において、フッ素樹脂を構成する各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0033】
上記フッ素ゴムは、非晶質のフルオロポリマーである。上記フッ素ゴムは、通常、明確な融点を有しないものである。
【0034】
上記フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド[VdF]系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン[TFE]/プロピレン[Pr]系フッ素ゴム、TFE/Pr/VdF系フッ素ゴム、エチレン[Et]/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]系フッ素ゴム、Et/HFP/VdF系フッ素ゴム、Et/HFP/TFE系フッ素ゴム、パーフルオロゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、フルオロホスファゼン系フッ素ゴム等が挙げられる。なかでもVdF系フッ素ゴムが好ましい。
【0035】
上記VdF系フッ素ゴムとしては、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/クロロトリフルオロエチレン[CTFE]共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/Pr共重合体、VdF/Et/HFP共重合体、VdF/式(2)で表される含フッ素単量体の共重合体等が挙げられる。
式(2):
CH2=CFRf2 (2)
(式中、Rf2は炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基)
【0036】
上記フッ素ゴムは、100℃におけるムーニー粘度が2~200であることが好ましく、10~150であることがより好ましく、30~80であることが更に好ましい。
ムーニー粘度は、ASTM D1646及びJIS K6300に準拠して測定する。
【0037】
上記成形品は、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
上記他の成分としては、フッ素非含有ポリマー、充填材、可塑剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0038】
上記フッ素非含有ポリマーとしては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリスルホン系樹脂等の非フッ素系樹脂;スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン-プロピレン-ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、アクリル系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の非フッ素系ゴム等が挙げられる。
【0039】
上記充填材としては、シリカ、カオリン、クレー、有機化クレー、タルク、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、架橋ポリスチレン、チタン酸カリウム、カーボン、チッ化ホウ素、カーボンナノチューブ、ガラス繊維等が挙げられる。
【0040】
上記他の成分の含有量は、上記成形品に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
上記成形品が、上記含フッ素ポリマーのみからなることも好ましい。
【0041】
上記成形品は、フッ素原子を含む材料(例えば、上記含フッ素ポリマー)を、必要に応じて他の成分とともに所望の形状や大きさに成形することにより製造することができる。
【0042】
成形方法は特に限定されず、圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
生産性の観点からは、押出成形法又は射出成形法が好ましく、射出成形法がより好ましい。
上記成形品が射出成形品であることは、好適な態様の1つである。射出成形品は、内部にデラミネーションやクラックといった欠陥が生じやすい。本開示の検査方法によれば、生産性に優れる射出成形品の内部の状態を容易に検査することができる。
【0043】
上記成形品の形状は特に限定されず、シート状、フィルム状、ロッド状、パイプ状等の種々の形状であってよい。
上記成形品は、表面と裏面とが平行である形状を有していてもよい。
【0044】
上記成形品は、厚みが0.05~6mmであることが好ましい。上記厚みは、3mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが更に好ましい。また、0.1mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることが更に好ましい。
【0045】
上記成形品は、波長1350nmの近赤外線の透過率が60%以上であることが好ましい。上記透過率は、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
上記透過率は、対象となる成形品そのものを近赤外分光分析装置により測定して得られた値と、当該成形品と同じ素材を用いて作成したシート又はフィルムを近赤外分光分析装置により測定して得られた値のうち、大きいほうを採用することにより求める値である。
【0046】
上記成形品は、単層構造であることが好ましい。単層構造であるとは、意図的に多層構造を構成したものではないことを意味する。
【0047】
工程(A1)の検査は、上記成形品をOCTにより撮影して得られた画像データに基づいて行う。本開示の検査方法は、上記成形品をOCTにより撮影して、当該成形品に基づく画像データを得る工程を含むものであってよい。
【0048】
OCTは、時間領域OCT(Time Domain OCT: TD-OCT)とフーリエ領域OCT(Fourier Domain OCT: FD-OCT)とに分類され、FD-OCTは更にスペクトル領域OCT(Spectral Domain OCT:SD-OCT)と周波数走査OCT(Swept Source OCT:SS-OCT)とに分類される。
工程(A1)ではいずれのOCTを採用してもよいが、感度が高く、計測可能深さが深い点で、SS-OCTが好ましい。
【0049】
OCTに用いる光線としては、可視光線、赤外線が挙げられ、近赤外線(NIR)が好ましい。
CF結合とCC結合から主になるポリマーの成形品の検査においては、多くの場合、近赤外光のほぼ全波長域の光線を使用することができる。結晶サイズが小さい場合は更に、可視領域の長波長側(600nm以上)や、赤外領域の短波長側(5000nm以下)の光線も使用することができる。
対応するOCT装置の入手が容易である点では、波長1000~2000nmの光線を使用することが好ましい。中でも、光源の安定性や、センサーの信頼性から、1100±50nm、1320±50、及び、1750±100nmを中心波長とする光線がより好ましい。
【0050】
OCT装置を用いて上記成形品を撮影する方法の一例を、
図1を参照して説明する。
OCT装置10において、光源11から出射した光線は、ビームスプリッター12によって2つに分離され、一方の光線は参照ミラー13に反射された後、参照光として光検出器14に入射する。他方の光線は試料(成形品)15に入射し、ある程度の深さまで侵入して、試料15の表面や、クラック、デラミネーション等の内部の欠陥部分で反射する。試料15からの反射光はビームスプリッター12を通り、信号光として光検出器14に入射する。光検出器14は、上記参照光と上記信号光との干渉によって生じる干渉光を検出し、信号に変換して出力する。この出力信号を強度等の特性に応じて画像化することにより、試料15の構造を示す画像が得られる。
なお、本開示の検査方法において使用し得るOCT装置及び撮影方法は、上述したものに限定されない。
【0051】
上記OCTによる撮影においては、OCT装置の光源からの光線の、上記成形品に対する入射角αが、3~30度であることが好ましい。上記入射角αは、5度以上であることがより好ましく、7度以上であることが更に好ましい。また、30度以下であることがより好ましく、20度以下であることが更に好ましく、15度以下であることが更により好ましく、10度以下であることが特に好ましい。
上記入射角αを上記範囲内とすることにより、上記画像中のノイズを低減することができ、しかも、上記成形品の欠陥によるシグナルを明確化することができる。
上記成形品の近赤外線透過率が高い場合(特に、上記成形品がフッ素樹脂を含む場合)や、上記成形品の検査対象となる表面(OCT光源側の表面)と裏面(上記表面と反対側の面)とが平行である場合は、上記の効果が顕著になる。
【0052】
上記入射角αは、上記光線の入射方向と、上記成形品の表面に対する垂線とがなす角として定義される。上記表面は、OCT光源側の表面であってよい。
図2に、試料を傾けて配置する態様の一例を示す。
図2においては、光線が試料15に対し入射角αで入射する。
上記入射角αの調整は、例えば、上記成形品(試料)を配置するサンプルステージの傾きを調整することによって行うことができる。
また、例えば、水平な面上に置いた場合に、検査したい部分が水平からずれるように成形品の形状を設計し、入射角αを上記好ましい範囲とすることもできる。
図3(b)及び(c)に例を示す。水平な台17に対し、成形品16の検査対象表面(OCT光源側の表面)が傾斜するように設計されており、OCT光源からの光線が入射角αで入射する。なお、成形品の形状は上記の例に限定されない。
上記の調整方法は、単独で用いても、併用してもよい。
【0053】
上記入射角αの調整は、また、プローブと上記成形品(試料)との間にスペーサーを設けることによっても行うことができる。上記スペーサーは、上記プローブに固定されてもよい。
上記スペーサーは、例えば、プローブから出射する光線を通過させることが可能な筒体であって、上記光線の進行方向(上記筒体の長さ方向)に垂直な面に対して傾斜を有する端部を有することが好ましい。上記筒体は、例えば、円筒であってよい。上記傾斜を有する端部は、上記スペーサーにおける、成形品側(プローブと反対側)の端部である。上記スペーサーのプローブ側の端部は、上記光線の進行方向(上記筒体の長さ方向)に対し垂直に形成されてよい。
【0054】
上記スペーサーの傾斜を有する端部を成形品に軽く当て、他端をプローブに当てるか又は固定した状態で光線を照射することにより、上記成形品に対する入射角を、上記傾斜に応じた角度に調整することができる。
図4に一例を示す。プローブ18に一端を固定されたスペーサー19の成形品16’側の端部には、光線の進行方向(スペーサー19の長さ方向)に垂直な面に対し角度αの傾斜が設けられている。当該端部を成形品16’の表面に軽く押し当てて光線を照射することで、光線が成形品16’に対し入射角αで入射する。
なお、上記スペーサーを成形品に押し当てる際は、スペーサー(あるいはプローブ)を動かして押し当ててもよく、成形品を動かして押し当ててもよく、両方を動かして押し当ててもよい。
【0055】
上記スペーサーにおいては、成形品(試料)側の端部に所望の光線入射角に応じた傾斜が設けられていることが重要である。この点において、上記スペーサーは、試料とプローブとの接触防止や試料とプローブとの距離の制御のために設けられる従来のスペーサーに、従来技術から想起しえない全く新しい機能が付加されたものである。
上記スペーサーの大きさ、素材、色等は、機械的強度、押し当てた際の成形品へのダメージ、コスト、取り扱いやすさ等を考慮して決定することができる。
【0056】
また、上記成形品の、OCT光源側の表面とは反対側の面に対する垂線と、上記光線とがなす角βを3~30度に調整することも好ましい。角βは、5度以上であることがより好ましく、7度以上であることが更に好ましい。また、30度以下であることがより好ましく、20度以下であることが更に好ましく、15度以下であることが更により好ましく、10度以下であることが特に好ましい。
上記角βを上記範囲内とすることにより、上記画像中のノイズを低減することができ、しかも、上記成形品の欠陥によるシグナルを明確化することができる。
上記態様は、成形品における検査対象部分が板状である場合に特に有効である。
【0057】
上記角βは、例えば、水平な面上に置いた場合に、検査したい部分が水平からずれるように成形品の形状を設計することにより、調整できる。
図3(d)に例を示す。水平な台17に対し、成形品16のOCT光源側の表面とは反対側の面が傾斜するように設計されており、当該面に対する垂線と、OCT光源からの光線とが角βをなしている。なお、成形品の形状は上記の例に限定されない。
また、上記成形品を配置するサンプルステージの傾きを調整することによって角βを調整することもできる。
上記の調整方法は、単独で用いても、併用してもよい。
【0058】
1の成形品において、検査したい部分が2つ以上ある場合は、OCT光学系を複数用意し、検査対象箇所を同時又は逐次測定してもよい。その場合、検査したい成形品の各部の傾きが異なっていた場合でもそれぞれ上記の好ましい範囲に入射角αや角βを調整できるので好ましい。また、測定部位が離れている場合でも、OCT装置の仕様を変更する必要がないので好ましい。また、検査したい成形品の部位間に段差が大きい場合でも、それぞれの部位に合わせて入射角αや角βを調整できることからも好ましい。
【0059】
上記OCTによる撮影においては、上記成形品に入射する光線の強度が、1mW~18mWであることが好ましい。上記光線の強度は、5mW以上であることがより好ましく、10mW以上であることが更に好ましい。また、15mW以下であることがより好ましく、12mW以下であることが更に好ましい。
上記光線の強度を上記範囲内とすることにより、上記画像中のノイズを低減することができ、しかも、上記成形品の欠陥によるシグナルを明確化することができる。
上記成形品の近赤外線透過率が高い場合(特に、上記成形品がフッ素樹脂を含む場合)や、上記成形品の表面と裏面とが平行である場合は、上記の効果が顕著になる。
本明細書において、上記成形品に入射する光線の強度は、後述するフィルタを設けない場合は、OCT装置のプローブ端における光線の強度である。
【0060】
OCT装置の光源と上記成形品との間に、上記光源からの光線の強度を低減するフィルタを設けることにより、光線の強度を上述した範囲内に制御してもよい。
上記フィルタは、OCT装置が備えるビームスプリッターと、上記成形品との間に設置することが好ましい。また、ビームスプリッターに近い所(例えば、ビームスプリッターから30mm以内、好ましくは10mm以内)に設置することが好ましい。
【0061】
上記フィルタとしては、上記光源からの光線の強度を低減することができる材質・構造を有するものを使用することができる。
上記フィルタの素材としては、例えば、結晶性のポリマーが挙げられる。結晶性のポリマーによって光線を散乱させることができ、光線の強度を低減することができる。上記結晶性のポリマーとしては、ポリエチレン(PE)(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPE)、低密度ポリエチレン(LPE)、高密度ポリエチレン(HDPE))、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)等のエチレン系ポリマー;ポリプロピレン(PP);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えば、TFEホモポリマー、変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル等が例示される。
上記フィルタの素材としては、また、光線を吸収する素材も挙げられ、例えば、OH基や芳香環を含むポリマーが例示できる。
【0062】
上記フィルタとしては、中でも、容易に多重反射ノイズを低減し、シグナルを明確化することができることから結晶性のポリマーを含むものが好ましく、PE、PP、フッ素樹脂及びPETからなる群より選択される少なくとも1種を含むものがより好ましく、PE及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むものが更に好ましく、PE、PTFE及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種を含むものが更により好ましい。
なかでも、PTFEを含むフィルタは、試料のシグナルの解像度を維持したまま効率よく多重反射ノイズを除去することができることから好ましく、変性PTFEを含むフィルタが特に好ましい。
本明細書において、変性PTFEは、TFE単位と、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含むPTFEであり、好ましくは、全モノマー単位に対し、TFE単位が99.0~99.99999質量%、変性モノマー単位が0.00001~1.0質量%の範囲であるPTFEである。
【0063】
上記フィルタは、厚みが0.05~3mmであることが好ましい。上記厚みは、2mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが更に好ましい。上記厚みは、また、0.08mm以上であることがより好ましく、0.10mm以上であることが更に好ましい。
【0064】
上記フィルタは、1層からなる単層構造であってもよく、複数の層からなる多層構造であってもよい。層を複数重ねた構造であると、試料のシグナルとノイズとのバランスを細かく調整できるので好ましい。同じ素材のものを使用してもよいし、異なる素材・異なる厚みのものを同時に使用してもよい。各層は密着している必要はなく、適宜空間を開けることができる。空間が開いているほうが各層ごとに出し入れするのが容易であるので、試料のシグナルとノイズとのバランスを調整するのが容易となる。
【0065】
サンプル(上記成形品)における測定の対象となる部分がサンプルステージに近い場合、当該サンプルを透過した光線の、ステージからの反射がノイズのもととなることがある。そのため、サンプルを透過した光線が測定に影響を与えないよう工夫することが望ましい。
例えば、サンプルを透過した光線を反射する物を、サンプルの測定の対象となる部分から10mm以上離すことが挙げられる。この場合、測定の対象とならない部分(例えば、サンプルの両端部)でサンプルを支え、測定の対象となる部分とサンプルステージとが重ならないようにすることが好ましい。
また、サンプルを透過した光線を、プローブとは違う方向に反射することも挙げられる。
また、サンプルを通過した光線が当たる位置に、当該光線のほとんどを吸収するか又は散乱させる物を置くことも挙げられる。
上記の方法は適宜組み合わせて用いることができる。
【0066】
工程(A1)においては、上記画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する。
【0067】
上記検査は、上記画像データから得られる画像を用いて行ってもよく、上記画像データを処理することにより行ってもよく、その両方を併用してもよい。
【0068】
上記検査は、上記成形品の内部の欠陥の検査であることが好ましい。
上記欠陥としては、クラック、デラミネーション、ボイド、異物等が挙げられる。上記欠陥は、成形不具合によるものであってもよい。
上記検査においては、上記欠陥の有無を判断することが好ましい。
【0069】
工程(A1)は、上記画像データに基づいて、上記成形品の内部の欠陥を検査する工程であることが好ましく、上記画像データに基づいて、上記成形品の内部のクラック及びデラミネーションを検査する工程であることがより好ましい。
【0070】
上記検査は、上記画像データにおける、上記成形品の内部の欠陥によるシグナルに基づいて行ってよい。また、上記欠陥によるシグナルに基づいて、上記欠陥の有無を判断することが好ましい。
上記欠陥の有無の判断方法としては、例えば、OCTにより得られた画像において、上記のいずれの欠陥によるシグナルも確認されない場合に、欠陥なしと判断し、上記の欠陥の少なくとも1つによるシグナルが上記画像中に確認される場合に、欠陥ありと判断する方法を挙げることができる。
【0071】
上記検査において欠陥ありと判断された場合には、更に、上記欠陥の大きさ、形状、出現頻度等を解析してもよい。このような解析により、上記欠陥が、上記成形品を不良品にするほどの欠陥であるか否かを容易に判断することが可能となる。上記解析は、例えば、上記欠陥によるシグナルを処理することにより行うことができる。
【0072】
本開示の検査方法は、更に、工程(A1)における検査の結果に基づいて、上記成形品が良品であるか否かを判定する工程(A2)を含んでもよい。
工程(A2)は、例えば、工程(A1)において欠陥なしと判断された成形品を良品と判定し、工程(A1)において欠陥ありと判断された成形品を不良品と判定する工程であってもよい。
工程(A2)は、また、工程(A1)において欠陥なしと判断された成形品と、工程(A1)において欠陥ありと判断された成形品のうち、欠陥の程度が所定の基準以下のものとを良品と判定し、工程(A1)において欠陥ありと判断された成形品のうち、欠陥の程度が所定の基準を超えるものを不良品と判定する工程であってもよい。
上記欠陥の程度の基準は特に限定されず、成形品の要求特性等に応じて適宜決定することができる。例えば、成形品の欠陥の大きさ、形状、出現頻度等と、当該成形品を部品として用いて実用試験をした時の合否データとの相関関係を予め取得し、不良品とならない欠陥の大きさ、形状、出現頻度等の許容範囲等を実験的に求めることにより、上記基準を決定することができる。
【0073】
本開示の検査方法は、成形品の内部の状態を容易に検査することができるため、成形条件の調整等に役立つ。また、成形品の内部の状態を非破壊で高速に検査することができるため、成形品の製造における良品又は不良品の選別、成形品の受入検査等に用いることができる。
【0074】
本開示は、フッ素原子を含む材料を成形することにより、フッ素含有率が30質量%以上の成形品を複数得る工程(B1)、複数の上記成形品から1以上の上記成形品を選択し、当該成形品を光干渉断層撮影法(OCT)により撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する工程(B2)、及び、工程(B2)における検査の結果に基づいて、複数の上記成形品から良品を選別する工程(B3)を含む成形品の製造方法にも関する。
本開示の製造方法によれば、成形品の内部の状態を非破壊で検査することができるので、全数検査を行った上で良品の成形品を得ることができる。したがって、成形品の品質の信頼性を高めることができる。
また、OCTによる画像化は高速で実施できるため、上記工程(B2)を成形品の生産ラインに組み込むことが容易である。したがって、生産ラインにおいて、生産性を損なうことなく、成形品の品質の信頼性を高めることができる。
【0075】
工程(B1)では、フッ素原子を含む材料を成形することにより、フッ素含有率が30質量%以上の成形品を複数得る。
【0076】
工程(B1)における上記成形品は、本開示の検査方法の工程(A1)における成形品と同様である。上記フッ素原子を含む材料としては、工程(A1)における成形品を構成し得る材料として上述したものが挙げられる。
上記フッ素原子を含む材料の成形方法としては、工程(A1)における成形品における成形方法と同様の方法が挙げられる。
【0077】
工程(B2)では、工程(B1)で得られた複数の上記成形品から1以上の上記成形品を選択し、当該成形品をOCTにより撮影して得られた画像データに基づいて、当該成形品の内部の状態を検査する。本開示の製造方法は、上記成形品をOCTにより撮影して、当該成形品に基づく画像データを得る工程を含むものであってよい。
【0078】
工程(B2)において選択する上記成形品は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。工程(B2)の検査は非破壊で実施することができるので、2つ以上を選択することが好ましく、工程(B1)で得られた上記成形品の半数以上を選択することがより好ましく、工程(B1)で得られた上記成形品の全てを選択することが更に好ましい。
【0079】
工程(B2)において、OCTによる撮影方法や、検査(例えば、欠陥の有無の判断)の方法としては、本開示の検査方法における工程(A1)について説明したのと同様の方法を採用することができる。
【0080】
工程(B3)では、工程(B2)における検査の結果に基づいて、工程(B1)で得られた複数の上記成形品から良品を選別する。工程(B3)で選別された良品の成形品が、本開示の製造方法によって製造される成形品である。
【0081】
工程(B3)は、工程(B2)における検査の結果に基づいて、工程(B2)で検査された成形品が良品であるか否かを判定する工程(B3-1)、及び、工程(B1)で得られた複数の上記成形品から、工程(B3-1)において良品と判定された成形品を選別する工程(B3-2)を含むものであってよい。
工程(B3-1)における判定の方法としては、工程(A2)について説明したのと同様の方法を採用することができる。
工程(B3-2)における選別の方法は特に限定されない。
【0082】
工程(B1)~(B3)は、フッ素原子を含む材料のロットを単位として行ってもよい。同一ロットの材料から得られた成形品は、類似の性能を有している可能性が高いからである。ただし、上述したように、本開示の製造方法においては成形品を非破壊で全数検査することが可能であるため、材料のロットにかかわらず、良品の成形品のみを選別することが可能である。
【実施例】
【0083】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
<OCT撮影>
OCT装置:SweptSys-02(株式会社システムズエンジニアリング製)
OCT用掃引レーザー光源:中心波長1310nm、スペクトル幅100nm、スキャンレート50kHz、コヒーレンス長12mm、光出力18mW(プローブ端13mW)
撮影条件:輝度100、コントラスト30
サンプルの配置方法:シグマ光機株式会社製ゴニオステージに切れ込みがある金属板を取り付け、その金属板の切れ込みの部分に測定の対象となる部分が位置するようにサンプルを載せた。
図5にその模式図を示す。ゴニオステージ23に金属板22が設置され、金属板22の切れ込みを跨ぐようにサンプルシート24が配置される。プローブ21からの光線が、サンプルシート24の測定対象部分に入射する。
【0085】
<MFR>
本実施例で用いた溶融加工性フッ素樹脂のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D 1238に準拠し、温度372℃、荷重5kgで測定した。
【0086】
実施例1
溶融加工性フッ素樹脂1(TFE/PPVE共重合体、TFE/PPVE=98.5/1.5(モル比)、フッ素含有率76質量%、MFR:15g/10分)を360℃で溶融圧縮成形して得られたシート(直径120mm、厚さ1.0mm)をサンプルとして用い、上記サンプルに対する光線の入射角αが3度となるようにサンプルの傾きを調整して、上記の方法でOCT撮影を行った。
結果を
図6に示す。OCT画像中の明瞭な2本の白線が、サンプルの表面及び裏面を示している。
なお、実施例1~6では、入射角の効果を確認するために、予めクラック、デラミネーション、ボイド等の欠陥がないことを確認したシートをサンプルとして用いた。
【0087】
実施例2
光線の入射角αを4度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図7に示す。
【0088】
実施例3
光線の入射角αを5度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図8に示す。
【0089】
実施例4
光線の入射角αを6度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図9に示す。
【0090】
実施例5
光線の入射角αを7度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図10に示す。
【0091】
実施例6
光線の入射角αを8度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図11に示す。
【0092】
実施例1~4では、サンプルがない部分にノイズがわずかに存在するのに対し、実施例5及び6では、サンプルがある部分、ない部分ともにノイズがほとんどなかった。
【0093】
実施例7
溶融加工性フッ素樹脂2(TFE/PPVE共重合体、TFE/PPVE=98.2/1.8(モル比)、フッ素含有率76質量%、MFR:26g/10分)を射出成形して、シート状の射出成形品(30mm×60mm×厚さ1.0mm)を得た。この射出成形品をサンプルとして用い、上記サンプルに対する光線の入射角αが8度となるようにサンプルの傾きを調整して、上記の方法で上記サンプルのゲートから5mmの部分のOCT撮影を行った。結果を
図12に示す。
多重反射ノイズは見られず、画像中のサンプルの断面に相当する部分に、筋状のシグナルが確認された。上記サンプルをスライスして断面を観察したところ、筋状のクラックが確認された。
【0094】
実施例8
溶融加工性フッ素樹脂3(エチレン/TFE共重合体、エチレン/TFE/パーフルオロ(1,1,5-トリハイドロ-ペンテン)=54/44/2(モル比)、フッ素含有率66質量%、MFR:16.0g/10分)を射出成形して、シート状の射出成形品(130mm×130mm×厚さ3.0mm)を得た。この射出成形品をサンプルとして用い、上記サンプルに対する光線の入射角αが8度となるようにサンプルの傾きを調整して、上記の方法で上記サンプルのゲートから3mmの部分のOCT撮影を行った。結果を
図13に示す。
多重反射ノイズは見られず、画像中のサンプルの断面に相当する部分に、筋状のシグナルが確認された。上記サンプルをスライスして断面を観察したところ、筋状のクラックが確認された。
【0095】
実施例9
溶融加工性フッ素樹脂2(TFE/PPVE共重合体、TFE/PPVE=98.2/1.8(モル比)、フッ素含有率76質量%、MFR:26g/10分)を射出成形して、シート状の射出成形品(50mm×60mm×厚さ2.0mm)を得た。この射出成形品をサンプルとして用い、プローブと上記サンプルとの間に厚さ1mmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シートをフィルタとして配置し、上記サンプルに対する光線の入射角αを0度として、上記サンプルのゲートから10mmの場所をOCT撮影した。結果を
図14に示す。
【0096】
実施例10
フィルタとして厚さ0.5mmのテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)シートを用いたこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図15に示す。
【0097】
実施例11
フィルタとして厚さ1.0mmのPFAシートを用いたこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図16に示す。
【0098】
実施例12
フィルタとして厚さ0.5mmのPFAシートを2枚重ねて用いたこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図17に示す。
【0099】
実施例13
フィルタとして厚さ0.2mmのポリプロピレン(PP)シートを用いたこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図18に示す。
【0100】
実施例14
フィルタとして厚さ0.04mmのポリエチレン(PE)シートを4枚重ねて用いたこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図19に示す。
【0101】
実施例15
フィルタとして厚さ0.1mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE、TFEホモポリマー)シートを用いたこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図20に示す。
【0102】
実施例16
フィルタとして厚さ0.1mmの変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)シートを用いたこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図21に示す。
【0103】
実施例17
フィルタとして厚さ0.1mmの変性PTFEシートを2枚重ねて用いたこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図22に示す。
【0104】
実施例18
フィルタを使用しなかったこと以外は実施例9と同様にして、OCT撮影を行った。結果を
図23に示す。
【0105】
フィルタを使用する実施例9~17では、フィルタを使用しない実施例18と比較して、多重反射ノイズが低減された。PFA、PE、PTFEのフィルタを使用する実施例10~12、14~17では、多重反射ノイズの低減効果が特に大きかった。また、PTFEのフィルタを使用する実施例15~17、特に、変性PTFEのフィルタを使用する実施例16及び17では、サンプルのシグナルの解像度は高いまま、多重反射ノイズが充分に低減された。
【符号の説明】
【0106】
10:OCT装置
11:光源
12:ビームスプリッター
13:参照ミラー
14:光検出器
15:試料(成形品)
16、16’:成形品
17:台
18:プローブ
19:スペーサー
21:プローブ
22:金属板
23:ゴニオステージ
24:サンプルシート