(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】膜形成材料、リソグラフィー用膜形成用組成物、光学部品形成用材料、レジスト組成物、レジストパターン形成方法、レジスト用永久膜、感放射線性組成物、アモルファス膜の製造方法、リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜の製造方法及び回路パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230329BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20230329BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20230329BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20230329BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20230329BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/023
G03F7/11 503
G03F7/11 502
G03F7/039 601
G03F7/26 511
G03F7/004 531
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2019526895
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2018024048
(87)【国際公開番号】W WO2019004142
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2017126543
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三樹 泰
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170182(WO,A1)
【文献】特開2017-078852(JP,A)
【文献】特開2002-356669(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057192(WO,A1)
【文献】特開2007-122024(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043561(WO,A1)
【文献】特開2016-018093(JP,A)
【文献】特開2010-204661(JP,A)
【文献】特開2012-032556(JP,A)
【文献】特開2010-052028(JP,A)
【文献】特開2018-116258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(BisN-20)~
(BisN-22)及び下記式(BisN-24)~(BisN-27)で表されるトリアジン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、膜形成材料。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(上記BisN-24において、トリアジン環に直接結合する3つのベンゼン環は、各々回転することができる。)
【化5】
(上記BisN-25において、トリアジン環に直接結合する3つのベンゼン環は、各々回転することができる。)
【化6】
(上記BisN-26において、トリアジン環に直接結合する3つのベンゼン環は、各々回転することができる。)
【化7】
(上記BisN-27において、トリアジン環に直接結合する3つのベンゼン環は、各々回転することができる。)
【請求項2】
請求項1に記載の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する、リソグラフィー用膜形成用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する、光学部品形成用材料。
【請求項4】
請求項1に記載の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する、レジスト組成物。
【請求項5】
溶媒をさらに含有する、請求項4に記載のレジスト組成物。
【請求項6】
下記式(5)及び下記式(6)で表されるトリアジン系化合物
であって、下記式(BisN-23)で表されるトリアジン系化合物を除く、トリアジン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する膜形成材料と、
酸発生剤及び酸拡散制御剤からなる群より選択される少なくとも1種と、
を含有する、レジスト組成物。
【化8】
(式(5)中、R
13、R
14及びR
15は各々独立して、炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基又は炭素数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。)
【化9】
(式(6)中、R
16、R
17及びR
18は各々独立して、メタアクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基で置換された炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数1~8のアシルオキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、Y
13、Y
14及びY
15は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。)
【化10】
【請求項7】
溶媒をさらに含有する、請求項6に記載のレジスト組成物。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載のレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、
露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項9】
請求項4~7のいずれか1項に記載のレジスト組成物から得られる、レジスト用永久膜。
【請求項10】
請求項1に記載の膜形成材
料並びに下記式(5
)及び下記式(6)で表されるトリアジン系化合物
であって、下記式(BisN-23)で表されるトリアジン系化合物を除く、トリアジン系化合物を含有する膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上である成分(A)と、
ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、
溶媒と、
を含有する、感放射線性組成物であって、
前記溶媒の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して20~99質量%である、感放射線性組成物。
【化11】
(式(5)中、R
13、R
14及びR
15は各々独立して、炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基又は炭素数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。)
【化12】
(式(6)中、R
16、R
17及びR
18は各々独立して、メタアクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基で置換された炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数1~8のアシルオキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、Y
13、Y
14及びY
15は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。)
【化13】
【請求項11】
前記成分(A)と、前記ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、その他の任意成分(D)と、の含有量比((A)/(B)/(D))が、前記感放射線性組成物の固形分100質量%に対して、1~99質量%/99~1質量%/0~98質量%である、請求項10に記載の感放射線性組成物。
【請求項12】
スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる、請求項10又は11に記載の感放射線性組成物。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を用いて、基板上にアモルファス膜を形成する工程を含む、アモルファス膜の製造方法。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、
露光した前記レジスト膜を現像して、レジストパターンを形成する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項15】
請求項1に記載の膜形成材
料並びに下記式(5
)及び下記式(6)で表されるトリアジン系化合物
であって、下記式(BisN-23)で表されるトリアジン系化合物を除く、トリアジン系化合物を含有する膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する、リソグラフィー用下層膜形成材料。
【化14】
(式(5)中、R
13、R
14及びR
15は各々独立して、炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基又は炭素数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。)
【化15】
(式(6)中、R
16、R
17及びR
18は各々独立して、メタアクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基で置換された炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数1~8のアシルオキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、Y
13、Y
14及びY
15は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。)
【化16】
【請求項16】
請求項15に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料と、溶媒と、を含有する、リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項17】
酸発生剤をさらに含有する、請求項16に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項18】
架橋剤をさらに含有する、請求項16又は17に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程を含む、リソグラフィー用下層膜の製造方法。
【請求項20】
請求項16~18のいずれか1項に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程と、
前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項21】
請求項16~18のいずれか1項に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程と、
前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程と、
前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングして、中間層膜パターンを形成する工程と、
前記中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングして、下層膜パターンを形成する工程と、
前記下層膜パターンをエッチングマスクとして前記基板をエッチングして、前記基板にパターンを形成する工程と、
を含む、回路パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成材料、リソグラフィー用膜形成用組成物、光学部品形成用材料、レジスト組成物、レジストパターン形成方法、レジスト用永久膜、感放射線性組成物、アモルファス膜の製造方法、リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜の製造方法及び回路パターン形成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。そして、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されている。しかしながら、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じてくるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきている。
【0004】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、従来のエッチング速度の速いレジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、所定のエネルギーが印加されることにより末端基が脱離してスルホン酸残基を生じる置換基を少なくとも有する樹脂成分と溶媒とを含有する多層レジストプロセス用下層膜形成材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性を持つ材料としては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガスなどを原料に用いたCVDによって形成されたアモルファスカーボン下層膜がよく知られている。
【0006】
また、本発明者らは、光学特性及びエッチング耐性に優れるとともに、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構成単位を含むナフタレンホルムアルデヒド重合体及び有機溶媒を含有するリソグラフィー用下層膜形成組成物(例えば、特許文献4及び5参照。)を提案している。
【0007】
なお、3層プロセスにおけるレジスト下層膜の形成において用いられる中間層の形成方法に関しては、例えば、シリコン窒化膜の形成方法(例えば、特許文献6参照。)や、シリコン窒化膜のCVD形成方法(例えば、特許文献7参照。)が知られている。また、3層プロセス用の中間層材料としては、シルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料が知られている(例えば、特許文献8及び9参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-177668号公報
【文献】特開2004-271838号公報
【文献】特開2005-250434号公報
【文献】国際公開第2009/072465号
【文献】国際公開第2011/034062号
【文献】特開2002-334869号公報
【文献】国際公開第2004/066377号
【文献】特開2007-226170号公報
【文献】特開2007-226204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来数多くの膜形成材料が提案されているが、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが適用可能な高い溶媒溶解性を有するのみならず、耐熱性、エッチング耐性、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性を高い次元で両立させたものはない。また、従来、数多くの光学部材向け組成物が提案されているが、耐熱性、透明性及び屈折率を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。
【0010】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性とレジストパターン形状、エッチング耐性、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性に優れるリソグラフィー用膜や、耐熱性、透明性及び屈折率に優れる光学部品等を形成するために有用な、膜形成材料を提供することにある。また、本発明の更なる目的は、該膜形成材料を含有する、リソグラフィー用膜形成用組成物、光学部品形成用材料、レジスト組成物、レジスト用永久膜、感放射線性組成物、リソグラフィー用下層膜形成材料及びリソグラフィー用下層膜形成用組成物を提供すること、さらに、これらを用いたレジストパターン形成方法、アモルファス膜の製造方法、リソグラフィー用下層膜の製造方法及び回路パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する化合物を用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は次のとおりである。
【0012】
[1]
下記式(1)で表されるトリアジン系化合物を含有する、膜形成材料。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2及びR
3は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~30の直鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30の分岐状アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~30のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7~30のアルキルアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7~30のアリールアルキル基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基を示し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基、前記アルキルアリール基又は前記アリールアルキル基は、エーテル結合、ケトン結合、エステル結合又は架橋性反応基を含んでいてもよく、S
1、S
2及びS
3は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~30のアルコキシ基を示し、T
1、T
2及びT
3は各々独立して、水素原子、水酸基、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基を示し、Y
1、Y
2及びY
3は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~30のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基を示し、E
1、E
2及びE
3は各々独立して、単結合、-O-、-CH
2O-、-COO-又は-NH-を示し、Pは各々独立して0~1の整数を示す。)
[2]
前記式(1)で表されるトリアジン系化合物は、下記式(2)で表されるトリアジン系化合物である、[1]に記載の膜形成材料。
【化2】
(式(2)中、R
4、R
5及びR
6は各々独立して、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数3~8のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、ここで、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アルキルアリール基又は前記アリールアルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、S
4、S
5及びS
6は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示し、T
4、T
5及びT
6は各々独立して、水素原子、水酸基、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示し、Y
4、Y
5及びY
6は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。)
[3]
前記式(2)で表されるトリアジン系化合物は、下記式(3)で表されるトリアジン系化合物である、[2]に記載の膜形成材料。
【化3】
(式(3)中、R
7、R
8及びR
9は各々独立して、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数3~8のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、ここで、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アルキルアリール基又は前記アリールアルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、S
7、S
8及びS
9は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示し、Y
7、Y
8及びY
9は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。)
[4]
前記式(3)で表されるトリアジン系化合物は、下記式(4)で表されるトリアジン系化合物である、[3]に記載の膜形成材料。
【化4】
(式(4)中、R
10、R
11及びR
12は各々独立して、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数3~8のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、ここで、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アルキルアリール基又は前記アリールアルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、Y
10、Y
11及びY
12は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。)
[5]
前記式(2)で表されるトリアジン系化合物は、下記式(5)で表されるトリアジン系化合物である、[2]に記載の膜形成材料。
【化5】
(式(5)中、R
13、R
14及びR
15は各々独立して、炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基又は炭素数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。)
[6]
前記式(5)で表されるトリアジン系化合物は、下記式(BisN-8)で表されるトリアジン系化合物である、[5]に記載の膜形成材料。
【化6】
[7]
下記式(6)で表されるトリアジン系化合物を含有する、膜形成材料。
【化7】
(式(6)中、R
16、R
17及びR
18は各々独立して、メタアクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基で置換された炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数1~8のアシルオキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、Y
13、Y
14及びY
15は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。)
[8]
光硬化性モノマー、光硬化性オリゴマー、及び光硬化性ポリマーからなる群から選ばれる1種以上と、光重合開始剤と、をさらに含有する、[7]に記載の膜形成材料。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する、リソグラフィー用膜形成用組成物。
[10]
[1]~[8]のいずれかに記載の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する、光学部品形成用材料。
[11]
[1]~[8]のいずれかに記載の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する、レジスト組成物。
[12]
溶媒をさらに含有する、[11]に記載のレジスト組成物。
[13]
酸発生剤をさらに含有する、[11]又は[12]に記載のレジスト組成物。
[14]
酸拡散制御剤をさらに含有する、[11]~[13]のいずれかに記載のレジスト組成物。
[15]
[11]~[14]のいずれかに記載のレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、
露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
[16]
[11]~[14]のいずれかに記載のレジスト組成物から得られる、レジスト用永久膜。
[17]
[1]~[8]のいずれかに記載の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上である成分(A)と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、溶媒と、を含有する感放射線性組成物であって、
前記溶媒の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して20~99質量%である、感放射線性組成物。
[18]
前記成分(A)と、前記ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、その他の任意成分(D)と、の含有量比((A)/(B)/(D))が、前記感放射線性組成物の固形分100質量%に対して、1~99質量%/99~1質量%/0~98質量%である、[17]に記載の感放射線性組成物。
[19]
スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる、[17]又は[18]に記載の感放射線性組成物。
[20]
[17]~[19]のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いて、基板上にアモルファス膜を形成する工程を含む、アモルファス膜の製造方法。
[21]
[17]~[19]のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、
露光した前記レジスト膜を現像して、レジストパターンを形成する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
[22]
[1]~[8]のいずれかに記載の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する、リソグラフィー用下層膜形成材料。
[23]
[22]に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料と、溶媒と、を含有する、リソグラフィー用下層膜形成用組成物。
[24]
酸発生剤をさらに含有する、[23]に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。
[25]
架橋剤をさらに含有する、[23]又は[24]に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。
[26]
[23]~[25]のいずれかに記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程を含む、リソグラフィー用下層膜の製造方法。
[27]
[23]~[25]のいずれかに記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程と、
前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
[28]
[23]~[25]のいずれかに記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程と、
前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程と、
前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングして、中間層膜パターンを形成する工程と、
前記中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングして、下層膜パターンを形成する工程と、
前記下層膜パターンをエッチングマスクとして前記基板をエッチングして、前記基板にパターンを形成する工程と、
を含む、回路パターン形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性とレジストパターン形状、エッチング耐性、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性に優れるリソグラフィー用膜や、耐熱性、透明性及び屈折率に優れる光学部品等を形成するために有用な、膜形成材料等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について説明する。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0015】
[膜形成材料]
本実施形態の一態様に係る膜形成材料は、下記式(1)で表されるトリアジン系化合物を含有する。なお、本明細書における「膜」とは、例えば、リソグラフィー用膜や光学部品等(ただし、これらに限定されるものではない。)に適用されうるものを意味し、典型的には、リソグラフィー用膜や光学部品として一般的な形態を有するものである。すなわち、「膜形成材料」とは、このような膜の前駆体であり、その形態及び/又は組成において、当該「膜」とは明確に区別されるものである。また、「リソグラフィー用膜」とは、例えば、レジスト用永久膜、リソグラフィー用下層膜等のリソグラフィー用途の膜を広く包含する概念である。
【0016】
【0017】
式(1)中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~30の直鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30の分岐状アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~30のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数7~30のアルキルアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7~30のアリールアルキル基、水酸基又は水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基を示し、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基、前記アルキルアリール基又は前記アリールアルキル基は、エーテル結合、ケトン結合、エステル結合又は架橋性反応基を含んでいてもよい。S1、S2及びS3は各々独立して、水素原子、水酸基又は炭素数1~30のアルコキシ基を示し、T1、T2及びT3は各々独立して、水素原子、水酸基、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基を示し、Y1、Y2及びY3は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~30のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基を示す。E1、E2及びE3は各々独立して、単結合、-O-、-CH2O-、-COO-又は-NH-を示す。Pは各々独立して0~1の整数を示す。
【0018】
ここで、置換基を有していてもよい炭素数1~30の直鎖状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルメチル、2-ヒドロキシプロピル、2-メトキシエチル基等が挙げられる。
【0019】
置換基を有していてもよい炭素数1~30の分岐状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、1-メチルエチル基、2-メチルプロピル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-メチルへプチル基、2-メチルオクチル基、2-メチルノニル基、2-メチルデシル基等が挙げられる。
【0020】
置換基を有していてもよい炭素数3~30のシクロアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0021】
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、へプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジブチルフェニル基、ジペンチルフェニル基、ジヘキシルフェニル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、ブチルメチルフェニル基、ブチルエチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラヒドロキシフェニル基、フロロメチルフェニル基、フロロエチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、メチルシクロヘキシルフェニル基、エチルシクロヘキシルフェニル基、プロピルシクロヘキシルフェニル基、ペンチルシクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。
【0022】
置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
【0023】
置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第2ブトキシ基、第3ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクトキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
炭素数7~30のアルキルアリール基としては、以下に限定されないが、例えば、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、オクチルフェニル基等が挙げられる。
【0025】
炭素数7~30のアリールアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル、1-メチル-1-フェニルエチル基等が挙げられる。
【0026】
本明細書において「酸解離性基」とは、酸の存在下で開裂して、アルカリ可溶性基等への変化を生じる特性基をいう。アルカリ可溶性基としては、以下に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、ヘキサフルオロイソプロパノール基などが挙げられ、フェノール性水酸基及びカルボキシル基が好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。酸解離性基としては、KrFやArF用の化学増幅型レジスト組成物に用いられるヒドロキシスチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂等において提案されているものの中から適宜選択して用いることができ、特に限定されない。酸解離性基としては、以下に限定されないが、例えば、特開2012-136520号公報に記載された酸解離性基が挙げられる。
【0027】
また、本明細書において「架橋性反応基」とは、触媒存在下、又は無触媒下で架橋する基をいう。架橋性反応基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~20のアルコキシ基、アリル基を有する基、(メタ)アクリロイル基を有する基、エポキシ(メタ)アクリロイル基を有する基、水酸基を有する基、ウレタン(メタ)アクリロイル基を有する基、グリシジル基を有する基、含ビニルフェニルメチル基を有する基、スチレン基を有する基が挙げられる。
【0028】
アリル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-1)で表される基が挙げられる。
【0029】
【0030】
式(X-1)において、nX1は、1~5の整数である。
【0031】
(メタ)アクリロイル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-2)で表される基が挙げられる。
【0032】
【0033】
式(X-2)において、nX2は、1~5の整数であり、RXは水素原子、又はメチル基である。
【0034】
エポキシ(メタ)アクリロイル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-3)で表される基が挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリロイル基とは、エポキシ(メタ)アクリレートと水酸基が反応して生成する基をいう。
【0035】
【0036】
式(X-3)において、nx3は、0~5の整数であり、RXは水素原子、又はメチル基である。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリロイル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-4)で表される基が挙げられる。
【0038】
【0039】
式(X-4)において、nx4は、0~5の整数であり、sは、0~3の整数であり、RXは水素原子、又はメチル基である。
【0040】
水酸基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-5)で表される基が挙げられる。
【0041】
【0042】
式(X-5)において、nx5は、1~5の整数である。
【0043】
グリシジル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-6)で表される基が挙げられる。
【0044】
【0045】
式(X-6)において、nx6は、1~5の整数である。
【0046】
含ビニルフェニルメチル基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-7)で表される基が挙げられる。
【0047】
【0048】
式(X-7)において、nx7は、1~5の整数である。
【0049】
スチレン基を有する基としては、特に限定されないが、例えば、下記式(X-8)で表される基が挙げられる。
【0050】
【0051】
式(X-8)において、nx8は、1~5の整数である。
【0052】
上記の中でも、紫外線硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基、エポキシ(メタ)アクリロイル基、ウレタン(メタ)アクリロイル基、グリシジル基を有する基、スチレン基を含有する基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、エポキシ(メタ)アクリロイル基、ウレタン(メタ)アクリロイル基を有する基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する基がさらに好ましい。
【0053】
R1、R2及びR3としては、溶媒溶解性及び耐熱性の観点から、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、1-メチルエチル基、2-メチルプロピル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、プロペニル基、ブテニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第2ブトキシ基、第3ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が好ましい。
【0054】
前記式(1)における、S1、S2及びS3は各々独立して、水素原子、水酸基又は炭素数1~30のアルコキシ基である。炭素数1~30のアルコキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。
【0055】
S1、S2及びS3としては、溶解性及び耐熱性の観点から、水素原子、水酸基、メチル基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0056】
前記式(1)における、T1、T2及びT3は各々独立して、水素原子、水酸基、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基である。
【0057】
炭素数1~30のアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、アミル基、第三アミル基、オクチル基、第三オクチル基等が挙げられる。
【0058】
炭素数2~30のアルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
【0059】
T1、T2及びT3としては、溶解性及び耐熱性の観点から、水素原子、水酸基、メチル基が好ましい。
【0060】
前記式(1)における、Y1、Y2及びY3は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~30のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基である。
【0061】
炭素数1~30のアルキル基としては、炭素数1~30の直鎖状アルキル基又は分岐状アルキル基が挙げられる。炭素数1~30の直鎖状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルメチル、2-ヒドロキシプロピル、2-メトキシエチル基等が挙げられる。また、炭素数1~30の分岐状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、1-メチルエチル基、2-メチルプロピル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-メチルへプチル基、2-メチルオクチル基、2-メチルノニル基、2-メチルデシル基等が挙げられる。
【0062】
炭素数1~30のアルコキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第2ブトキシ基、第3ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクトキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
【0063】
炭素数1~30のアルコキシカルボニル基としては、以下に限定されないが、例えば、上記アルコキシ基の誘導体が挙げられる。
【0064】
炭素数1~30のアリールアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、クミル基、フェニルメチレン基等が挙げられる。
【0065】
炭素数2~30のアルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
【0066】
Y1、Y2及びY3としては、溶解性及び耐熱性の観点から、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、メチル基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0067】
本実施形態において、膜形成材料をリソグラフィー用膜の形成のために用いる場合には、湿式プロセスへの適用性、耐熱性、レジストパターン形状、エッチング耐性、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性をより向上させる観点から、また、膜形成材料を光学部品の形成のために用いる場合には、耐熱性、レジストパターン形状加工性、透明性及び屈折率をより向上させる観点から、式(1)におけるR1~R3の少なくとも1つが酸解離性基及び/又は架橋性反応基を有することが好ましい。同様の観点から、式(1)におけるS1~S3の少なくとも1つが酸解離性基及び/又は架橋性反応基を有することが好ましい。更に、同様の観点から、式(1)におけるY1~Y3の少なくとも1つが酸解離性基及び/又は架橋性反応基を有することが好ましい。
【0068】
本実施形態の膜形成材料中の、式(1)で表されるトリアジン系化合物の含有量は、耐熱性及びエッチング耐性の観点から、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることがさらに好ましく、80~100質量%であることが特に好ましい。
【0069】
本実施形態の膜形成材料中のトリアジン系化合物は、上記のような構造を有するため、耐熱性が高く、溶媒溶解性も高い。また、本実施形態の式(1)で表されるトリアジン系化合物は、溶媒への溶解性、耐熱性の観点から、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0070】
【0071】
式(2)中、R4、R5及びR6は各々独立して、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数3~8のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。ここで、これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。また、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アルキルアリール基又は前記アリールアルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。S4、S5及びS6は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示し、T4、T5及びT6は各々独立して、水素原子、水酸基、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示し、Y4、Y5及びY6は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。
【0072】
ここで、炭素数1~12の直鎖状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イコシル基、トリアコンチル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基等が挙げられる。
【0073】
炭素数1~12の分岐状アルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、1-メチルエチル基、2-メチルプロピル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-メチルへプチル基、2-メチルオクチル基、2-メチルノニル基、2-メチルデシル基、2-メチルイコシル基、2-メチルノナコシル基等が挙げられる。
【0074】
炭素数3~8のシクロアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロオクタデシレル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0075】
炭素数6~18のアリール基としては、以下に限定されないが、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、へプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、イコシルフェニル基、ペンタコシルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジブチルフェニル基、ジペンチルフェニル基、ジヘキシルフェニル基、ジへプチルフェニル基、ジオクチルフェニル基、ジノニルフェニル基、ジデシルフェニル基、ジドデシルフェニル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、ブチルメチルフェニル基、ブチルエチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラヒドロキシフェニル基、フロロメチルフェニル基、フロロエチルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、シクロヘキシルナフチル基、メチルシクロヘキシルフェニル基、エチルシクロヘキシルフェニル基、プロピルシクロヘキシルフェニル基、ペンチルシクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。
【0076】
炭素数3~8のアルケニル基としては、以下に限定されないが、例えば、直鎖及び分岐のプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
【0077】
炭素数7~18のアルキルアリール基としては、以下に限定されないが、例えば、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、オクチルフェニル基等が挙げられる。
【0078】
炭素数7~18のアリールアルキル基としては、以下に限定されないが、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル、1-メチル-1-フェニルエチル基等が挙げられる。
【0079】
炭素数1~12のアルコキシ基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキサオキシ基、オクトキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0080】
これらの中でも、R4、R5及びR6は、溶媒溶解性及び耐熱性の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、1-メチルエチル基、2-メチルプロピル基、2-メチルブチル基、2-メチルペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、プロペニル基、ブテニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、第2ブトキシ基、第3ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が好ましい。
【0081】
前記式(2)におけるS4、S5及びS6は、前記式(1)におけるS1、S2及びS3で例示した基が挙げられる。
【0082】
前記式(2)におけるT4、T5及びT6は、前記式(1)におけるT1、T2及びT3で例示した基が挙げられる。
【0083】
前記式(2)におけるY4、Y5及びY6は、前記式(1)におけるY1、Y2及びY3で例示した基が挙げられる。
【0084】
また、前記式(2)で表されるトリアジン系化合物は、溶媒への溶解性、耐熱性の点から、下記式(3)で表されるものであることが好ましい。
【0085】
【0086】
式(3)中、R7、R8及びR9は各々独立して、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数3~8のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。ここで、これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。また、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アルキルアリール基、又は前記アリールアルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。S7、S8及びS9は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を示す。Y7、Y8及びY9は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。
【0087】
前記式(3)におけるR7、R8及びR9は、前記式(2)におけるR4、R5及びR6で例示した基が挙げられる。
【0088】
前記式(3)におけるS7、S8及びS9は、前記式(2)におけるS4、S5及びS6で例示した基が挙げられる。
【0089】
前記式(3)におけるY7、Y8及びY9は、前記式(2)におけるY4、Y5及びY6で例示した基が挙げられる。
【0090】
また、前記式(3)で表されるトリアジン系化合物は、溶媒への溶解性、耐熱性の点から、下記式(4)で表されるトリアジン系化合物であることが好ましい。
【0091】
【0092】
式(4)中、R10、R11及びR12は各々独立して、炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数3~8のアルケニル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。ここで、これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、水酸基、炭素数1~12のアルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。また、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基、前記アルキルアリール基又は前記アリールアルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。Y10、Y11及びY12は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。
【0093】
前記式(4)におけるR10、R11及びR12は、前記式(3)におけるR7、R8及びR9で例示した基が挙げられる。
【0094】
前記式(4)におけるY10、Y11及びY12は、前記式(3)におけるY7、Y8及びY9で例示した基が挙げられる。
【0095】
また、前記式(2)で表されるトリアジン系化合物は、耐熱性の点から、下記式(5)で表されるトリアジン系化合物であることが好ましい。
【0096】
【0097】
式(5)中、R13、R14及びR15は各々独立して、炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は水酸基、又は炭素数1~12のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。
【0098】
前記式(5)におけるR13、R14及びR15の炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基は、前記式(2)におけるR4、R5及びR6で例示した基が挙げられる。
【0099】
[光硬化性膜形成材料]
本実施形態の他の態様に係る膜形成材料は、下記式(6)で表されるトリアジン系化合物を含有するものであり、特に光硬化性膜を形成するための材料として好ましく用いることができる。
【0100】
【0101】
(式(6)中、R16、R17及びR18は各々独立して、メタアクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基で置換された炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基を示し、前記アルキル基は、水酸基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアシルオキシ基で置換されていてもよい。また前記アルキル基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい。Y13、Y14及びY15は各々独立して、水素原子、水酸基、水酸基の水素原子が酸解離性基若しくは架橋性反応基で置換された基、炭素数1~12のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基を示す。)
【0102】
式(6)において、メタアクリロイルオキシ基とは、下記式(7)のZがメチル基で表される基であり、アクリロイルオキシ基とは下記式(7)のZが水素原子で表される基である。
【0103】
【0104】
(式中、Zは水素原子又はメチル基を示す。)
【0105】
前記式(6)におけるR16、R17及びR18の炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基は、前記式(2)におけるR4、R5及びR6で例示した基が挙げられる。
【0106】
また、R16、R17及びR18は、紫外線吸収能及び紫外線硬化性がメタアクリロイルオキシ基より優れるため、アクリロイルオキシ基で置換された炭素数1~8のアルキル基であることが好ましい。
【0107】
メタアクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基による置換位置は、前記炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基のどの箇所でもよい。
【0108】
炭素数1~8のアシルオキシ基としては、前記炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基の例示のうち、炭素数1~8のアルキル基に対応するアシルオキシ基が挙げられる。
【0109】
前記式(6)におけるY13、Y14及びY15は、前記式(2)におけるY4、Y5及びY6で例示した基が挙げられる。
【0110】
本実施形態の膜形成材料は、式(6)で表されるトリアジン系化合物に加え、光硬化性モノマー、光硬化性オリゴマー、及び光硬化性ポリマーからなる群から選ばれる1種以上と、光重合開始剤と、をさらに含有する光硬化性膜形成材料であってもよい。
光硬化性モノマー、光硬化性オリゴマー、光硬化性ポリマーとしては、ラジカル重合可能な官能基を1つ以上有するものが好ましく、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。光硬化性モノマー、光硬化性オリゴマー、光硬化性ポリマーの含有量は、光硬化性膜形成材料全体に対して80~95質量%であることが好ましい。
【0111】
光重合開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、BASF社製の、IRGACURE651、IRGACURE184、IRGACURE907、IRGACURE369E、IRGACURE819、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02が挙げられる。
【0112】
光重合開始剤の含有量は、光硬化性膜形成材料全体に対して0.1~10質量%であることが好ましい。
【0113】
本実施形態におけるトリアジン系化合物の具体例としては、以下に示す化合物BisN-1~BisN-19等の化合物が挙げられるが、ここに列挙した限りではない。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
前記式(5)で表される化合物は、耐熱性の観点から、前記式(BisN-8)で表されるトリアジン系化合物であることが好ましい。
【0134】
本実施形態の膜形成材料は、剛直なトリアジン骨格を有しており、高温ベークによって架橋反応を起こし易く、高い耐熱性を発現する。その結果、例えばリソグラフィー用膜形成用途において、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性に優れたリソグラフィー用下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態の膜形成材料は、芳香族構造を有しているにも関わらず、有機溶媒に対する溶解性が高く、安全溶媒に対する溶解性が高い。さらに、後述する本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物からなるリソグラフィー用下層膜は、段差基板への埋め込み特性及び膜の平坦性に優れるため、優れたレジストパターンを得ることができる。また、本実施形態の膜形成材料は、トリアジン環を導入することで、高屈折率と耐熱性を高い次元で両立させることを可能としている。
【0135】
本実施形態におけるリソグラフィー用膜形成組成物は、上述した本実施形態における膜形成材料を含有する。上述したとおり、本実施形態における膜形成材料は、前記式(1)で表される化合物及び該化合物群より選ばれる1種以上の物質を含有するが、以下、「上記式(1)で表される化合物及び該化合物群より選ばれる1種以上」を、「本実施形態の化合物」又は「成分(A)」ともいう。
【0136】
[光学部品形成用材料]
本実施形態の光学部品形成用材料は、上述した本実施形態における膜形成材料を含有する。ここで、「光学部品」とは、フィルム状、シート状の部品の他、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、コントラスト向上レンズ等)、位相差フィルム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路をいう。本実施形態における化合物はこれらの光学部品形成用途に有用である。
【0137】
[レジスト組成物]
本実施形態のレジスト組成物は、上述した本実施形態における膜形成材料を含有する。
【0138】
本実施形態のレジスト組成物は、溶媒をさらに含有することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013-024778号に記載のものを挙げることができる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0139】
溶媒としては、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、CHN(シクロヘキサノン)、CPN(シクロペンタノン)、オルソキシレン(OX)、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種である。
【0140】
本実施形態において固形成分の量と溶媒との量は、特に限定されないが、固形成分の量と溶媒との合計質量100質量%に対して、固形成分1~80質量%及び溶媒20~99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1~50質量%及び溶媒50~99質量%、さらに好ましくは固形成分2~40質量%及び溶媒60~98質量%であり、特に好ましくは固形成分2~10質量%及び溶媒90~98質量%である。
【0141】
[他の成分]
本実施形態のレジスト組成物は、上述した式(1)で表される構造を有する化合物及び該化合物群より選ばれる1種以上の物質以外に、必要に応じて、架橋剤、酸発生剤、有機溶媒等の他の成分を含んでいてもよい。以下、これらの任意成分について説明する。
【0142】
[酸発生剤(C)]
本実施形態のレジスト組成物は、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線及びイオンビームから選ばれるいずれかの放射線の照射により直接的又は間接的に酸を発生する酸発生剤(C)を1種以上含むことが好ましい。酸発生剤(C)は、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を使用することができる。これらの酸発生剤の中でも、耐熱性の観点から、芳香環を有する酸発生剤が好ましく、下記式(8-1)又は(8-2)で表される構造を有する酸発生剤がより好ましい。
【0143】
【0144】
(式(8-1)中、R13は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状、分枝状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分枝状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を示し、X-は、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオン又はハロゲン化物イオンを示す。)
【0145】
【0146】
(式(8-2)中、R14は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状、分枝状若しくは環状アルキル基、直鎖状、分枝状若しくは環状アルコキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を示す。X-は前記と同様である。)
【0147】
酸発生剤としては、前記式(8-1)又は(8-2)のX-が、アリール基若しくはハロゲン置換アリール基を有するスルホン酸イオンである化合物がさらに好ましく、アリール基を有するスルホン酸イオンである化合物がさらにより好ましく、ジフェニルトリメチルフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナートが特に好ましい。上記酸発生剤を用いることで、LERを低減することができる傾向にある。
【0148】
酸発生剤(C)の使用量は、固形成分全質量の0.001~49質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましく、3~30質量%がさらに好ましく、10~25質量%が特に好ましい。上記範囲内で使用することにより、高感度でかつ低エッジラフネスのパターンプロファイルが得られる傾向にある。本実施形態においては、系内に酸が発生すれば、酸の発生方法は限定されない。g線、i線などの紫外線の代わりにエキシマレーザーを使用すれば、より微細加工が可能であるし、また高エネルギー線として電子線、極端紫外線、X線、イオンビームを使用すればさらに微細加工が可能である。
【0149】
[酸架橋剤(G)]
本実施形態のレジスト組成物は、酸架橋剤(G)を1種以上含むことが好ましい。酸架橋剤(G)とは、酸発生剤(C)から発生した酸の存在下で、成分(A)を分子内又は分子間架橋し得る化合物である。このような酸架橋剤(G)としては、例えば、成分(A)を架橋し得る1種以上の基(以下、「架橋性基」という。)を有する化合物を挙げることができる。
【0150】
このような架橋性基としては、例えば(i)ヒドロキシ(C1-C6アルキル基)、C1-C6アルコキシ(C1-C6アルキル基)、アセトキシ(C1-C6アルキル基)等のヒドロキシアルキル基又はそれらから誘導される基;(ii)ホルミル基、カルボキシ(C1-C6アルキル基)等のカルボニル基又はそれらから誘導される基;(iii)ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基等の含窒素基含有基;(iv)グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等のグリシジル基含有基;(v)ベンジルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基等の、C1-C6アリルオキシ(C1-C6アルキル基)、C1-C6アラルキルオキシ(C1-C6アルキル基)等の芳香族基から誘導される基;(vi)ビニル基、イソプロペニル基等の重合性多重結合含有基等を挙げることができる。上記の中でも、酸架橋剤(G)の架橋性基としては、ヒドロキシアルキル基、及びアルコキシアルキル基等が好ましく、特にアルコキシメチル基が好ましい。
【0151】
上記架橋性基を有する酸架橋剤(G)としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸架橋剤(G)は単独で又は2種以上を使用することができる。
【0152】
酸架橋剤(G)の使用量は、固形成分全質量の0.5~49質量%が好ましく、0.5~40質量%がより好ましく、1~30質量%がさらに好ましく、2~20質量%が特に好ましい。上記酸架橋剤(G)の配合割合が0.5質量%以上である場合、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性の抑制効果を向上させ、残膜率が低下したり、パターンの膨潤や蛇行が生じたりするのを抑制することができる傾向にあり、一方、49質量%以下である場合、レジストとしての耐熱性の低下を抑制できる傾向にある。
【0153】
[酸拡散制御剤(E)]
本実施形態のレジスト組成物は、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(E)を含んでいてもよい。このような酸拡散制御剤(E)を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。このような酸拡散制御剤(E)としては、特に限定されないが、窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の放射線分解性塩基性化合物が挙げられる。
【0154】
上記酸拡散制御剤(E)としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸拡散制御剤(E)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0155】
酸拡散制御剤(E)の配合量は、固形成分全質量の0.001~49質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%がさらに好ましく、0.01~3質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、解像度の低下、パターン形状、寸法忠実度等の劣化を防止することができる。さらに、電子線照射から放射線照射後加熱までの引き置き時間が長くなっても、パターン上層部の形状が劣化するおそれが少ない。また、配合量が10質量%以下であると、感度、未露光部の現像性等の低下を防ぐことができる。またこのような酸拡散制御剤を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上し、また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0156】
[その他の成分(F)]
本実施形態のレジスト組成物には、その他の成分(F)(「任意成分(F)」ともいう。)として、必要に応じて、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0157】
[溶解促進剤]
溶解促進剤は、式(1)で表される化合物の現像液に対する溶解性が低すぎる場合に、その溶解性を高めて、現像時の上記化合物の溶解速度を適度に増大させる作用を有する成分であり、必要に応じて、使用することができる。上記溶解促進剤としては、例えば、低分子量のフェノール性化合物を挙げることができ、例えば、ビスフェノール類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等を挙げることができる。これらの溶解促進剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0158】
溶解促進剤の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0159】
[溶解制御剤]
溶解制御剤は、式(1)で表される化合物の現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を制御して現像時の溶解速度を適度に減少させる作用を有する成分である。このような溶解制御剤としては、レジスト被膜の焼成、放射線照射、現像等の工程において化学変化しないものが好ましい。
【0160】
溶解制御剤としては、特に限定されないが、例えば、フェナントレン、アントラセン、アセナフテン等の芳香族炭化水素類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、フェニルナフチルケトン等のケトン類;メチルフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン等のスルホン類等を挙げることができる。これらの溶解制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0161】
溶解制御剤の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0162】
[増感剤]
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(C)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、レジストの見掛けの感度を向上させる成分である。このような増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ビアセチル類、ピレン類、フェノチアジン類、フルオレン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0163】
増感剤の配合量は使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0164】
[界面活性剤]
界面活性剤はレジスト組成物の塗布性やストリエーション、レジストの現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤あるいは両性界面活性剤のいずれでもよい。好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤は、レジスト組成物の製造に用いる溶媒との親和性がよく、上述した効果がより顕著となる。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類等が挙げられるが、特に限定されない。市販品としては、以下商品名で、エフトップ(ジェムコ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業社製)、フロラード(住友スリーエム社製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子社製)、ペポール(東邦化学工業社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社油脂化学工業社製)等を挙げることができる。
【0165】
界面活性剤の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0166】
[有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体]
レジスト組成物には、感度劣化防止又はレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有させることができる。なお、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、酸拡散制御剤と併用することもできるし、単独で用いてもよい。有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルなどの誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸又はそれらのエステルなどの誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルなどの誘導体が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
【0167】
有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、単独で又は2種以上を使用することができる。有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全質量の0~49質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0168】
[上述した添加剤(溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等)以外のその他添加剤]
さらに、本実施形態のレジスト組成物には、必要に応じて、上記溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体以外の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、染料、顔料、及び接着助剤等が挙げられる。例えば、染料又は顔料を配合すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できるので好ましい。また、接着助剤を配合すると、基板との接着性を改善することができるので好ましい。さらに、他の添加剤としては、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、形状改良剤等が挙げられ、具体的には4-ヒドロキシ-4’-メチルカルコン等を挙げることができる。
【0169】
本実施形態のレジスト組成物において、任意成分(F)の合計量は、固形成分全質量の0~99質量%であり、0~49質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0~5質量%がさらに好ましく、0~1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0170】
[レジスト組成物における各成分の配合割合]
本実施形態のレジスト組成物において、本実施形態の化合物及び該化合物群より選ばれる1種以上の物質(成分(A))の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(成分(A)、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)などの任意に使用される成分を含む固形成分の総和、以下同様。)の50~99.4質量%であることが好ましく、より好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは60~80質量%、特に好ましくは60~70質量%である。上記含有量の場合、解像度が一層向上し、ラインエッジラフネス(LER)が一層小さくなる傾向にある。
【0171】
本実施形態のレジスト組成物において、(成分(A)、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)、任意成分(F)の含有量比(成分(A)/酸発生剤(C)/酸架橋剤(G)/酸拡散制御剤(E)/任意成分(F))は、レジスト組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは50~99.4質量%/0.001~49質量%/0.5~49質量%/0.001~49質量%/0~49質量%であり、より好ましくは55~90質量%/1~40質量%/0.5~40質量%/0.01~10質量%/0~5質量%であり、さらに好ましくは60~80質量%/3~30質量%/1~30質量%/0.01~5質量%/0~1質量%であり、特に好ましくは60~70質量%/10~25質量%/2~20質量%/0.01~3質量%/0質量%である。成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。上記配合割合であると、感度、解像度、現像性等の性能に優れる傾向にある。なお、「固形分」とは、溶媒を除いた成分をいい、「固形分100質量%」とは、溶媒を除いた成分を100質量%とすることをいう。
【0172】
本実施形態のレジスト組成物は、通常は、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製される。
【0173】
本実施形態のレジスト組成物は、必要に応じて、他の樹脂を含むことができる。他の樹脂としては、特に限定されず、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。上記樹脂の含有量は、特に限定されず、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0174】
[レジスト組成物の物性等]
本実施形態のレジスト組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができ、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。また、用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
【0175】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。溶解速度が5Å/sec以下であると、現像液に不溶で、レジストとするのが容易となる。また、溶解速度が0.0005Å/sec以上であると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。また、LERの低減、ディフェクトの低減効果が認められる。
【0176】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。溶解速度が10Å/sec以上であると、現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、溶解速度が10Å/sec以上であると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。また、ディフェクトの低減効果が認められる。
【0177】
溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又はQCM法等の公知の方法によって測定し、決定することができる。
【0178】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると、現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。また、ディフェクトの低減効果が認められる。
【0179】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。溶解速度が5Å/sec以下であると、現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる。また、溶解速度が0.0005Å/sec以上であると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。また、LERの低減、ディフェクトの低減効果が認められる。
【0180】
[感放射線性組成物]
本実施形態の感放射線性組成物は、上述した本実施形態の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上の物質(成分(A))と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、溶媒と、を含有する感放射線性組成物であって、前記溶媒の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して、20~99質量%である。
【0181】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、後述するジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と併用し、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線を照射することにより、現像液に易溶な化合物となるポジ型レジスト用基材として有用である。g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線の照射によって成分(A)の性質は大きくは変化しないが、現像液に難溶なジアゾナフトキノン光活性化合物(B)が易溶な化合物に変化するため、現像工程によってレジストパターンを作ることが可能となる。
【0182】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、上記式(1)に示すとおり、比較的低分子量の化合物であることから、得られたレジストパターンのラフネスは非常に小さい。また、上記式(1)中、R1~R3の少なくとも1つがヨウ素原子を含む基であることが好ましい。本実施形態の感放射線性組成物は、ヨウ素原子を含む基を有する成分(A)を含有する場合、電子線、極端紫外線(EUV)、X線などの放射線に対する吸収能が増加し、その結果、感度を高めることが可能となるため、特に好ましい。
【0183】
本実施形態の感放射線性組成物に含まれる成分(A)のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上である。成分(A)のガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、400℃である。成分(A)のガラス転移温度が上記範囲内であることにより、半導体リソグラフィープロセスにおいて、パターン形状を維持しうる耐熱性を有し、高解像度などの性能が向上する傾向にある。
【0184】
本実施形態の感放射線性組成物に含まれる成分(A)のガラス転移温度における示差走査熱量分析により求めた結晶化発熱量は、20J/g未満であるのが好ましい。また、(結晶化温度)-(ガラス転移温度)は好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは130℃以上である。結晶化発熱量が20J/g未満、又は(結晶化温度)-(ガラス転移温度)が上記範囲内であると、感放射線性組成物をスピンコートすることにより、アモルファス膜を形成しやすく、かつレジストに必要な成膜性が長期に渡り保持でき、解像性を向上することができる傾向にある。
【0185】
本実施形態において、上記結晶化発熱量、結晶化温度及びガラス転移温度は、島津製作所製DSC/TA-50WSを用いた示差走査熱量分析により求めることができる。具体的には、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス気流中(50mL/分)昇温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。さらに急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇温速度20℃/分で400℃まで昇温する。ステップ状に変化したベースラインの段差の中点(比熱が半分に変化したところ)の温度をガラス転移温度(Tg)、その後に現れる発熱ピークの温度を結晶化温度とする。発熱ピークとベースラインに囲まれた領域の面積から発熱量を求め、結晶化発熱量とする。
【0186】
本実施形態の感放射線性組成物に含まれる成分(A)は、常圧下、100℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは150℃以下において、昇華性が低いことが好ましい。昇華性が低いとは、熱重量分析において、所定温度で10分保持した際の重量減少が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下であることを示す。昇華性が低いことにより、露光時のアウトガスによる露光装置の汚染を防止することができる。また低ラフネスで良好なパターン形状を得ることができる。
【0187】
本実施形態の感放射線性組成物に含まれる成分(A)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、シクロペンタノン(CPN)、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれ、かつ、成分(A)に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上溶解する。特に好ましくは、PGMEA、PGME、CHNから選ばれ、かつ、(A)レジスト基材に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、20質量%以上、特に好ましくはPGMEAに対して、23℃で、20質量%以上溶解する。上記条件を満たすことにより、実生産における半導体製造工程での使用が容易となる。
【0188】
[ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)]
本実施形態の感放射線性組成物に含まれるジアゾナフトキノン光活性化合物(B)は、ポリマー性及び非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物を含むジアゾナフトキノン物質であり、一般にポジ型レジスト組成物において、感光性成分(感光剤)として用いられているものであれば特に制限なく、1種又は2種以上を任意に選択して用いることができる。
【0189】
このような感光剤としては、特に限定されないが、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライド等と、これら酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する低分子化合物又は高分子化合物とを反応させることによって得られる化合物が好ましい。ここで、酸クロライドと縮合可能な官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基等が挙げられるが、特に水酸基が好適である。水酸基を含む酸クロライドと縮合可能な化合物としては、特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン類、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン等のヒドロキシフェニルアルカン類、4,4’,3”,4”-テトラヒドロキシ-3,5,3’,5’-テトラメチルトリフェニルメタン、4,4’,2”,3”,4”-ペンタヒドロキシ-3,5,3’,5’-テトラメチルトリフェニルメタン等のヒドロキシトリフェニルメタン類などを挙げることができる。
【0190】
また、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドなどの酸クロライドとしては、例えば、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルフォニルクロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルフォニルクロライドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0191】
本実施形態の感放射線性組成物は、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製されることが好ましい。
【0192】
[溶媒]
本実施形態の感放射線性組成物に用いることのできる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、及び乳酸エチルが挙げられる。この中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンが好ましい。溶媒は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0193】
溶媒の含有量は、感放射線性組成物の総量100質量%に対して、20~99質量%であり、好ましくは50~99質量%であり、より好ましくは60~98質量%であり、特に好ましくは90~98質量%である。
【0194】
また、溶媒以外の成分(固形成分)の含有量は、感放射線性組成物の総量100質量%に対して、1~80質量%であり、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは2~40質量%であり、特に好ましくは2~10質量%である。
【0195】
[感放射線性組成物の特性]
本実施形態の感放射線性組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができ、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。また、用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
【0196】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると、現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる。また、溶解速度が0.0005Å/sec以上であると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果が認められる。
【0197】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、溶解速度が10Å/sec以上であると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果が認められる。
【0198】
上記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又はQCM法等の公知の方法によって測定し、決定することができる。
【0199】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により照射した後、又は、20~500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上が好ましく、10~10000Å/secがより好ましく、100~1000Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると、現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、溶解速度が10000Å/sec以下であると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果が認められる。
【0200】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により照射した後、又は、20~500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05~5Å/secがより好ましく、0.0005~5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると、現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる。また、溶解速度が0.0005Å/sec以上であると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果が認められる。
【0201】
[感放射線性組成物における各成分の配合割合]
本実施形態の感放射線性組成物において、成分(A)の含有量は、固形成分全質量(成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその他の成分(D)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは10~90質量%、特に好ましくは25~75質量%である。本実施形態の感放射線性組成物は、成分(A)の含有量が上記範囲内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる傾向にある。
【0202】
本実施形態の感放射線性組成物において、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量は、固形成分全質量に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは10~90質量%、特に好ましくは25~75質量%である。本実施形態の感放射線性組成物は、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量が上記範囲内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる傾向にある。
【0203】
[その他の任意成分(D)]
本実施形態の感放射線性組成物には、必要に応じて、成分(A)及びジアゾナフトキノン光活性化合物(B)以外の成分として、上述の酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散制御剤、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。なお、本明細書において、その他の成分(D)を「任意成分(D)」ということがある。
【0204】
成分(A)と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、感放射線性組成物に任意に含まれ得るその他の任意成分(D)と、の含有量比((A)/(B)/(D))は、感放射線性組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは1~99質量%/99~1質量%/0~98質量%であり、より好ましくは5~95質量%/95~5質量%/0~49質量%であり、さらに好ましくは10~90質量%/90~10質量%/0~10質量%であり、さらにより好ましくは20~80質量%/80~20質量%/0~5質量%であり、特に好ましくは25~75質量%/75~25質量%/0質量%である。
【0205】
各成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。本実施形態の感放射線性組成物は、各成分の配合割合を上記範囲であると、ラフネスに加え、感度、解像度等の性能に優れる傾向にある。
【0206】
本実施形態の感放射線性組成物は、必要に応じて、他の樹脂を含むことができる。当該樹脂は、特に限定されず、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂の配合量は、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0207】
[アモルファス膜の製造方法]
本実施形態のアモルファス膜の製造方法は、上記感放射線性組成物を用いて、基板上にアモルファス膜を形成する工程を含む。
【0208】
[感放射線性組成物を用いたレジストパターン形成方法]
本実施形態の感放射線性組成物を用いたレジストパターン形成方法は、上記感放射線性組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成された前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、を含む。なお、詳細には、以下のレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法と同様の操作とすることができる。
【0209】
[レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法]
本実施形態のレジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法は、上述した本実施形態のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成されたレジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程とを備える。本実施形態におけるレジストパターンは多層プロセスにおける上層レジストとして形成することもできる。
【0210】
レジストパターンを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、従来公知の基板上に上記本実施形態のレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。従来公知の基板としては、特に限定されず、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェハー、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。また必要に応じて、前述基板上に無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。基板にはヘキサメチレンジシラザン等による表面処理を行ってもよい。
【0211】
次に、必要に応じて、レジスト組成物を塗布した基板を加熱する。加熱条件は、レジスト組成物の配合組成等により変わるが、20~250℃が好ましく、より好ましくは20~150℃である。加熱することによって、レジストの基板に対する密着性が向上する場合があるため好ましい。次いで、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオンビームからなる群から選ばれるいずれかの放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、レジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。本実施形態においては、露光における高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後に加熱するのが好ましい。
【0212】
次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。上記現像液としては、使用する成分(A)に対して溶解度パラメーター(SP値)の近い溶剤を選択することが好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。具体的には、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものを用いることができる。
【0213】
現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン又はネガ型レジストパターンを作り分けることができるが、一般的に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤の場合はネガ型レジストパターンが、アルカリ水溶液の場合はポジ型レジストパターンが得られる。
【0214】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、性能を有する範囲内で、上記以外の溶剤や水と混合して使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が70質量%未満であり、50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。すなわち、現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、30質量%以上100質量%以下であり、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0215】
特に、現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液が、レジストパターンの解像性やラフネス等のレジスト性能を改善する傾向にあるため好ましい。
【0216】
現像液の蒸気圧は、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下がさらに好ましく、2kPa以下が特に好ましい。現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0217】
5kPa以下の蒸気圧を有する現像液の具体的な例としては、国際公開WO2013/024778号に記載のものが挙げられる。
【0218】
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する現像液の具体的な例としては、国際公開WO2013/024778号に記載のものが挙げられる。
【0219】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば、特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がさらに好ましい。
【0220】
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%、好ましくは0.005~2質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0221】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。パターンの現像を行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0222】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0223】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0224】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、架橋により硬化したレジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液又は水を使用することができる。上記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。パターンのリンスを行なう時間としては、特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0225】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものが挙げられる。
【0226】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
【0227】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、より良好な現像特性を得ることができる傾向にある。
【0228】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃において0.05kPa以上5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上5kPa以下がより好ましく、0.12kPa以上3kPa以下がさらに好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性がより向上し、さらにはリンス液の浸透に起因した膨潤がより抑制され、ウェハ面内の寸法均一性がより良化する。
【0229】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0230】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0231】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングの方法はプラズマガスを使用するドライエッチング及びアルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等によるウェットエッチングなど公知の方法で行うことができる。
【0232】
レジストパターンを形成した後、めっきを行うこともできる。上記めっき法としては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどが挙げられる。
【0233】
エッチング後の残存レジストパターンは有機溶剤で剥離することができる。上記有機溶剤としては、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、EL(乳酸エチル)等が挙げられる。上記剥離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。また、レジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0234】
本実施形態において得られる配線基板は、レジストパターン形成後、金属を真空中で蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶かす方法、すなわちリフトオフ法により形成することもできる。
【0235】
[リソグラフィー用下層膜形成材料]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、上述した本実施形態の膜形成材料からなる群より選ばれる1種以上を含有する。本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料に含まれる成分(A)の含有量は、塗布性及び品質安定性の点から、リソグラフィー用下層膜形成材料中、1~100質量%であることが好ましく、10~100質量%であることがより好ましく、50~100質量%であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0236】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は前述したトリアジン系化合物を用いているため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料はレジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。なお、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、本発明の効果が損なわれない範囲において、既に知られているリソグラフィー用下層膜形成材料等を含んでいてもよい。
【0237】
[リソグラフィー用下層膜形成用組成物]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、上記リソグラフィー用下層膜形成材料と溶媒とを含有する。
【0238】
[溶媒]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において用いられる溶媒としては、上述した成分(A)が少なくとも溶解するものであれば、公知のものを適宜用いることができる。
【0239】
溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら溶媒の中で、安全性の点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、アニソールが特に好ましい。
【0240】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、上記下層膜形成材料100質量部に対して、100~10,000質量部であることが好ましく、200~5,000質量部であることがより好ましく、200~1,000質量部であることがさらに好ましい。
【0241】
[架橋剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、インターミキシングを抑制する等の観点から、必要に応じて架橋剤を含有していてもよい。本実施形態で使用可能な架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものを用いることができる。なお、本実施形態において、架橋剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0242】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、より好ましくは10~40質量部である。架橋剤の含有量を上記の好ましい範囲にすることで、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0243】
[酸発生剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、熱による架橋反応をさらに促進させるなどの観点から、必要に応じて酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するものなどが知られているが、いずれのものも使用することができる。
【0244】
酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものを用いることができる。なお、本実施形態において、酸発生剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0245】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~40質量部である。酸発生剤の含有量を上記の好ましい範囲にすることで、酸発生量が多くなって架橋反応が高められる傾向にあり、また、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にある。
【0246】
[塩基性化合物]
さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性化合物を含有していてもよい。
【0247】
塩基性化合物は、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、例えば、第一級、第二級又は第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0248】
本実施形態において用いられる塩基性化合物としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものを用いることができる。なお、本実施形態において、塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0249】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、0.001~2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~1質量部である。塩基性化合物の含有量を上記の好ましい範囲にすることで、架橋反応を過度に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0250】
[その他の添加剤]
また、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、熱硬化性の付与や吸光度をコントロールする目的で、他の樹脂及び/又は化合物を含有していてもよい。このような他の樹脂及び/又は化合物としては、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレンなどのナフタレン環、フェナントレンキノン、フルオレンなどのビフェニル環、チオフェン、インデンなどのヘテロ原子を有する複素環を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を含む樹脂又は化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。上記公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0251】
[リソグラフィー用下層膜の形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜の形成方法は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて、基板上に下層膜を形成する工程を含む。
【0252】
[リソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いたレジストパターン形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いたレジストパターン形成方法は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程(A-1)と、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(A-2)と、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(A-3)と、を含む。
【0253】
[リソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いた回路パターン形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いた回路パターン形成方法は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程(B-1)と、前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程(B-2)と、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(B-3)と、前記工程(B-3)の後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(B-4)と、前記工程(B-4)の後、前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングして、中間層膜パターンを形成する工程(B-5)と、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングして、下層膜パターンを形成する工程(B-6)と、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程(B-7)と、を含む。
【0254】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物から形成されるものであれば、その形成方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布法或いは印刷法などで基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させるなどして除去することで、下層膜を形成することができる。
【0255】
下層膜の形成時には、上層レジストとのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークを実施することが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80~450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200~400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10~300秒の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、通常、30~20,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは50~15,000nmとすることが好ましい。
【0256】
下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその上に珪素含有レジスト層、或いは通常の炭化水素からなる単層レジスト、3層プロセスの場合はその上に珪素含有中間層、さらにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0257】
基板上に下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有レジスト層又は通常の炭化水素からなる単層レジストを作製することができる。3層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有中間層、さらにその珪素含有中間層上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することができる。これらの場合において、レジスト層を形成するためのフォトレジスト材料は、公知のものから適宜選択して使用することができ、特に限定されない。
【0258】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0259】
3層プロセス用の珪素含有中間層としてはポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果のある中間層としては、以下に限定されないが、例えば193nm露光用としては、フェニル基又は珪素-珪素結合を有する吸光基が導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0260】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによる中間層の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0261】
さらに、本実施形態における下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。本実施形態の下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0262】
上記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、上記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法などで塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80~180℃で10~300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30~500nmが好ましく、より好ましくは50~400nmである。
【0263】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0264】
上記の方法により形成されるレジストパターンは、本実施形態における下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態における下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させることが可能となる。
【0265】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO2、NH3、N2、NO2、H2ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0266】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上記の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0267】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公報(特許文献6)、WO2004/066377(特許文献7)に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0268】
中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号(特許文献8)、特開2007-226204号(特許文献9)に記載されたものを用いることができる。
【0269】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0270】
本実施形態における下層膜は、これら基板のエッチング耐性に優れるという特徴を有する。なお、基板は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等の種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50~1,000,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75~500,000nmである。
【0271】
[レジスト用永久膜]
なお、前記レジスト組成物を用いてレジスト用永久膜を作製することもできる、前記レジスト組成物を塗布してなるレジスト用永久膜は、必要に応じてレジストパターンを形成した後、最終製品にも残存する永久膜として好適である。永久膜の具体例としては、以下に限定されないが、半導体デバイス関係では、ソルダーレジスト、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や集積回路素子と回路基板の接着層、薄型ディスプレー関連では、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルター保護膜、ブラックマトリクス、スペーサー等が挙げられる。特に、前記レジスト組成物からなる永久膜は、耐熱性や耐湿性に優れている上に昇華成分による汚染性が少ないという非常に優れた利点も有する。特に表示材料において、重要な汚染による画質劣化の少ない高感度、高耐熱、吸湿信頼性を兼ね備えた材料となる。
【0272】
前記レジスト組成物をレジスト用永久膜に用いる場合には、硬化剤の他、更に必要に応じてその他の樹脂、界面活性剤や染料、充填剤、架橋剤、溶解促進剤等の各種添加剤を加え、有機溶剤に溶解することにより、レジスト用永久膜用途組成物とすることができる。
【0273】
前記リソグラフィー用膜形成組成物やレジスト組成物は前記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより調整できる。また、前記レジスト下層膜用組成物やレジスト組成物が充填剤や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散あるいは混合して調整することができる。
【0274】
[トリアジン系化合物の精製方法]
上記式(1)で表されるトリアジン系化合物の精製方法は、当該トリアジン系化合物を、溶媒に溶解させて溶液(S)を得る工程と、得られた溶液(S)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物中の不純物を抽出する第一抽出工程とを含み、前記溶液(S)を得る工程で用いる溶媒が、水と混和しない有機溶媒を含む。
【0275】
本実施形態の精製方法によれば、上述したトリアジン系化合物に含まれうる種々の金属の含有量を低減することができる。
【0276】
より詳細には、本実施形態の精製方法においては、上記トリアジン系化合物を、水と混和しない有機溶媒に溶解させて溶液(S)を得て、さらにその溶液(S)を酸性水溶液と接触させて抽出処理を行うことができる。これにより、本実施形態のトリアジン系化合物を含む溶液(S)に含まれる金属分を水相に移行させたのち、有機相と水相とを分離して金属含有量の低減された、本実施形態のトリアジン系化合物を得ることができる。
【0277】
本実施形態の精製方法で使用する本実施形態のトリアジン系化合物は単独でもよいが、2種以上混合することもできる。また、本実施形態のトリアジン系化合物は、各種界面活性剤、各種架橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤等を含有していてもよい。
【0278】
本実施形態の精製方法で使用される水と混和しない溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましく、具体的には、室温下における水への溶解度が30%未満である有機溶媒であり、より好ましくは20%未満であり、特に好ましくは10%未満である有機溶媒が好ましい。当該有機溶媒の使用量は、本実施形態のトリアジン系化合物に対して、1~100質量倍であることが好ましい。
【0279】
水と混和しない溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、国際公開WO2015/080240号に記載のものが挙げられる。これらの中でも、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等が好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルがより好ましい。メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等は、本実施形態のトリアジン系化合物の飽和溶解度が比較的高く、沸点が比較的低いことから、工業的に溶媒を留去する場合や乾燥により除去する工程での負荷を低減することが可能となる。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0280】
本実施形態の精製方法で使用される酸性の水溶液としては、特に限定されないが、例えば、国際公開2015/080240に記載のものが挙げられる。これら酸性の水溶液は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら酸性の水溶液の中でも、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液であることが好ましく、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液がより好ましく、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液がさらに好ましく、蓚酸の水溶液がよりさらに好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より効果的に金属を除去できる傾向にあるものと考えられる。また、ここで用いる水は、本実施形態の精製方法の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等を用いることが好ましい。
【0281】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液のpHは特に限定されないが、本実施形態のトリアジン系化合物への影響を考慮し、水溶液の酸性度を調整することが好ましい。通常、pH範囲は0~5程度であり、好ましくはpH0~3程度である。
【0282】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液の使用量は特に限定されないが、金属除去のための抽出回数を低減する観点及び全体の液量を考慮して操作性を確保する観点から、当該使用量を調整することが好ましい。上記観点から、酸性の水溶液の使用量は、前記溶液(S)100質量部に対して、好ましくは10~200質量部であり、より好ましくは20~100質量部である。
【0283】
本実施形態の精製方法においては、上記のような酸性の水溶液と、本実施形態のトリアジン系化合物と、水と混和しない溶媒を含む溶液(S)と、を接触させることにより、溶液(S)中の前記トリアジン系化合物から金属分を抽出することができる。
【0284】
本実施形態の精製方法においては、前記溶液(S)が、さらに水と混和する有機溶媒を含むことが好ましい。水と混和する有機溶媒を含む場合、本実施形態のトリアジン系化合物の仕込み量を増加させることができ、また、分液性が向上し、高い釜効率で精製を行うことができる傾向にある。水と混和する有機溶媒を加える方法は特に限定されない。例えば、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法、予め水又は酸性の水溶液に加える方法、有機溶媒を含む溶液と水又は酸性の水溶液とを接触させた後に加える方法のいずれでもよい。これらの中でも、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法が、操作の作業性や仕込み量の管理のし易さの点で好ましい。
【0285】
本実施形態の精製方法で使用される水と混和する有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。水と混和する有機溶媒の使用量は、溶液相と水相とが分離する範囲であれば特に限定されないが、本実施形態のトリアジン系化合物及び/又は樹脂に対して、0.1~100質量倍であることが好ましく、0.1~50質量倍であることがより好ましく、0.1~20質量倍であることがさらに好ましい。
【0286】
本実施形態の精製方法において使用される水と混和する有機溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、国際公開2015/080240に記載のものが挙げられる。これらの中でも、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0287】
抽出処理を行う際の温度は通常、20~90℃であり、好ましくは30~80℃の範囲である。抽出操作は、例えば、撹拌等により、よく混合させたあと、静置することにより行われる。これにより、本実施形態のトリアジン系化合物と有機溶媒を含む溶液に含まれていた金属分が水相に移行する。また、本操作により、溶液の酸性度が低下し、本実施形態のトリアジン系化合物の変質を抑制することができる。
【0288】
前記混合溶液は静置により、本実施形態のトリアジン系化合物と溶媒を含む溶液相と、水相とに分離するので、デカンテーション等により本実施形態のトリアジン系化合物と溶媒とを含む溶液相を回収する。静置する時間は特に限定されないが、溶媒を含む溶液相と水相との分離をより良好にする観点から、当該静置する時間を調整することが好ましい。通常、静置する時間は1分以上であり、好ましくは10分以上であり、より好ましくは30分以上である。また、抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。
【0289】
本実施形態の精製方法は、前記第一抽出工程後、前記トリアジン系化合物を含む溶液相を、さらに水に接触させて、前記トリアジン系化合物中の不純物を抽出する工程(第二抽出工程)を含むことが好ましい。具体的には、例えば、酸性の水溶液を用いて上記抽出処理を行った後に、該水溶液から抽出され、回収された本実施形態のトリアジン系化合物と溶媒を含む溶液相を、さらに水による抽出処理に供することが好ましい。上記の水による抽出処理は、特に限定されないが、例えば、上記溶液相と水とを、撹拌等により、よく混合させた後、得られた混合溶液を、静置することにより行うことができる。当該静置後の混合溶液は、本実施形態のトリアジン系化合物と溶媒とを含む溶液相と、水相とに分離するのでデカンテーション等により本実施形態のトリアジン系化合物と溶媒とを含む溶液相を回収することができる。
【0290】
また、ここで用いる水は、本実施形態の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えば、イオン交換水等であることが好ましい。抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に限定されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0291】
こうして得られた本実施形態のトリアジン系化合物と溶媒とを含む溶液に混入しうる水分については、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により上記溶液に溶媒を加え、本実施形態のトリアジン系化合物の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0292】
得られた本実施形態のトリアジン系化合物と溶媒とを含む溶液から、本実施形態のトリアジン系化合物を単離する方法は、特に限定されず、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理をさらに行うことができる。
【実施例】
【0293】
以下、実施例を挙げて、本実施形態をさらに具体的に説明する。但し、本実施形態は、これらの実施例に特に限定はされない。
【0294】
[耐熱性の評価]
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製EXSTAR6000TG-DTA装置を使用し、試料約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(100ml/min)気流中昇温速度10℃/minで500℃まで昇温することにより熱重量減少量を測定し、以下の基準で評価した。
実用的観点からは、下記A又はB評価が好ましい。A又はB評価であれば、高い耐熱性を有し、高温ベークへの適用が可能となる。
<評価基準>
A:400℃での熱重量減少量が、10%未満
B:400℃での熱重量減少量が、10%~25%
C:400℃での熱重量減少量が、25%超
【0295】
[溶解性の評価]
50mLのスクリュー瓶に化合物を仕込み、23℃にてマグネチックスターラーで1時間撹拌後に、化合物のオルソキシレン(OX)に対する溶解量を測定し、その結果を以下の基準で評価した。
実用的観点からは、下記A又はB評価が好ましい。A又はB評価であれば、溶液状態で高い保存安定性を有し、半導体微細加工プロセスへの適用が可能となる。
<評価基準>
A:15質量%以上
B:10質量%以上15質量%未満
C:10質量%未満
【0296】
[実施例1]
以下の式で表される構造を有するトリアジン化合物((株)ADEKA社製 LA-F70)を単独で用いて、リソグラィー用膜形成用材料とした。
【0297】
【0298】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー膜形成用材料の400℃での熱減少量は10%未満(評価A)であった。また、OXへの溶解性を評価した結果、10質量%以上15質量%未満(評価B)であり、得られたリソグラフィー膜形成用材料は十分な溶解性を有するものと評価された。
前記リソグラフィー膜形成用材料10質量部に対し、溶媒としてOXを90質量部加え、室温下、スターラーで少なくとも3時間以上攪拌させることにより、リソグラィー用膜形成組成物を調製した。
【0299】
[実施例2]
以下の式で表される構造を有するトリアジン化合物(BASF(株)社製 TINUVIN460)を単独で用いて、リソグラィー用膜形成用材料とした。
【0300】
【0301】
熱重量測定の結果、得られたリソグラフィー膜形成用材料の400℃での熱減少量は10%~25%(評価B)であった。また、OXへの溶解性を評価した結果、15質量%以上(評価A)であり、得られたリソグラフィー膜形成用材料は優れた溶解性を有するものと評価された。
前記リソグラフィー膜形成用材料10質量部に対し、溶媒としてOXを90質量部加え、室温下、スターラーで少なくとも3時間以上攪拌させることにより、リソグラィー用膜形成組成物を調製した。
【0302】
[比較例1]
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製、試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。
得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒドの分子量は、数平均分子量(Mn):562、重量平均分子量(Mw):1168、分散度(Mw/Mn):2.08であった。
【0303】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、上述のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。
得られた樹脂(CR-1)は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:4.17であった。
熱重量測定(TG)の結果、得られた樹脂の400℃での熱減少量は25%超(評価C)であった。そのため、高温ベークへの適用が困難であるものと評価された。OXへの溶解性を評価した結果、15質量%以上(評価A)であり、優れた溶解性を有するものと評価された。
なお、上記のMn、Mw及びMw/Mnについては、以下の条件にてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析を行い、ポリスチレン換算の分子量を求めることにより測定した。
装置:Shodex GPC-101型(昭和電工(株)製)
カラム:KF-80M×3
溶離液:THF 1mL/min
温度:40℃
【0304】
(耐熱性評価)
表1から明らかなように、実施例1のリソグラフィー膜形成用組成物は、耐熱性が良好であることが確認できた。
【0305】
【0306】
[実施例3~5、比較例2]
(レジスト組成物の調製)
上記膜形成材料を用いて、表2に示す配合でレジスト組成物を調製した。なお、表2中のレジスト組成物の各成分のうち、酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(E)及び溶媒については、以下のものを用いた。
酸発生剤(C):P-1:トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株))
酸拡散制御剤(E):Q-1:トリオクチルアミン(東京化成工業(株))
溶媒:S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【0307】
(レジスト組成物のレジスト性能の評価方法)
均一なレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、電子線描画装置(ELS-7500、(株)エリオニクス社製)を用いて、80nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。当該照射後に、レジスト膜を、それぞれ所定の温度で、90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンについて、ラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S-4800)により観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性を評価した。
【0308】
【0309】
表2から明らかなように、レジストパターン評価については、実施例3~5では80nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射により、良好なレジストパターンを得ることができた。一方、比較例2では良好なレジストパターンを得ることはできなかった。
【0310】
上述したように、本発明の要件を満たす化合物は比較化合物(CR-1)に比べて、耐熱性が高く、また良好なレジストパターン形状を付与できる。本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した化合物以外の化合物についても同様の効果を示す。
【0311】
[実施例6~8]
(リソグラフィー用下層膜形成用組成物の調製)
以下の表3に示す組成となるように、リソグラフィー用下層膜形成用組成物を調製した。なお、表3中のリソグラフィー用下層膜形成用組成物の各成分のうち、酸発生剤、架橋剤及び溶媒については、以下のものを用いた。
酸発生剤:みどり化学社製 ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート(DTDPI)
架橋剤:三和ケミカル社製 ニカラックMX270(ニカラック)
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0312】
【0313】
[実施例9]
実施例6のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚85nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。
【0314】
なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(16)の化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。
【0315】
式(16)の化合物は、次のように調製した。
2-メチル-2-メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ-γ-ブチロラクトン3.00g、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn-ヘキサン中に滴下した。このようにして得られる生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて下記式(16)で表される化合物を得た。
【0316】
【0317】
(式(16)中、40、40、20とあるのは、各構成単位の比率を示すものであり、ブロック共重合体を示すものではない。)
【0318】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表4に示す。
【0319】
[実施例10]
実施例6におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物の代わりに実施例7のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表4に示す。
【0320】
[実施例11]
実施例6におけるリソグラフィー用下層膜形成用組成物の代わりに実施例8のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表4に示す。
【0321】
[比較例3]
下層膜の形成を行わなかったこと以外は、実施例10と同様にして、フォトレジスト層をSiO2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。評価結果を表4に示す。
【0322】
[評価]
実施例9から11及び比較例3のそれぞれについて、得られた55nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの形状を(株)日立製作所製の電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察した。現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なものを「良好」とし、そうでないものを「不良」として評価した。また、当該観察の結果、パターン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を解像性の評価の指標とした。さらに、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を感度の評価の指標とした。
【0323】
【0324】
表4に示した結果から明らかなように、トリアジン系化合物を含む本実施形態のリソグラフィー用膜形成用組成物を用いた実施例9~11は、比較例3と比較して、解像性及び感度ともに有意に優れていることが確認された。また、現像後のレジストパターン形状もパターン倒れがなく、矩形性が良好であることが確認された。さらに、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例9~11のリソグラフィー用膜形成用組成物から得られる下層膜は、レジスト材料との密着性が良いことが示された。
【0325】
[実施例12~14]
下記表5に示す配合で光学部品形成組成物を調製した。なお、表5中の光学部品形成組成物の各成分のうち、酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散抑制剤、及び溶媒については、以下のものを用いた。
・酸発生剤:みどり化学社製 ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート(DTDPI)
・架橋剤:三和ケミカル社製 ニカラックMX270(ニカラック)
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートアセテート(PGMEA)
均一状態の光学部品形成組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中でプレベーク(prebake:PB)して、厚さ1μmの光学部品形成膜を形成した。調製した光学部品形成組成物について、膜形成が良好な場合には「A」、形成した膜に欠陥がある場合には「C」と評価した。
【0326】
均一な光学部品形成組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中でPBして、厚さ1μmの膜を形成した。形成した膜について、ジェー・エー・ウーラム製多入射角分光エリプソメーターVASEにて、25℃における屈折率(λ=589.3nm)を測定し、屈折率が1.6以上の場合には「A」、1.55以上1.6未満の場合には「B」、1.55未満の場合には「C」と評価した。また透過率(λ=632.8nm)が90%以上の場合には「A」、90%未満の場合には「C」と評価した。
【0327】
【0328】
<合成実施例1>BisN-20の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、トリアジン化合物((株)ADEKA社製 LA-F70)12.0g(17.1mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmol)とを100mLアセトンに加えた液を仕込み、更にアクリル酸3.24g(45mmol)を加え、得られた反応液を還流下で7時間撹拌して反応を行った。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BisN-20)で表される目的化合物4.1gを得た。
【0329】
【0330】
<合成実施例2>BisN-21の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、トリアジン化合物((株)ADEKA社製 LA-F70)12.0g(17.1mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmol)とを100mLアセトンに加えた液を仕込み、更にメタクリル酸3.87g(45mmol)を加え、得られた反応液を還流下で7時間撹拌して反応を行った。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BisN-21)で表される目的化合物 3.9gを得た。
【0331】
【0332】
<合成実施例3>BisN-22の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、トリアジン化合物((株)ADEKA社製 LA-F70)12.0g(17.1mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmol)とを100mLジメチルアセトアミドに加えた液を仕込み、更にエピクロルヒドリン4.g(45mmol)を加え、得られた反応液を90℃で6.5時間撹拌して反応を行った。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BisN-22)で表される目的化合物 4.0gを得た。
【0333】
【0334】
<合成実施例4>BisN-23の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、トリアジン化合物((株)ADEKA社製 LA-F70)12.0g(17.1mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmol)とを100mLアセトンに加えた液を仕込み、更に臭化アリル5.4g(45mmol)及び18-クラウン-6、2.0gを加え、得られた反応液を還流下6.5時間撹拌して反応を行った。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BisN-23)で表される目的化合物 4.0gを得た。
【0335】
【0336】
<合成実施例5>BisN-24の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、トリアジン化合物((株)BASF社製 TINUVIN460)12.0g(19.0mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmol)とを100mLアセトンに加えた液を仕込み、更にアクリル酸3.24g(45mmol)を加え、得られた反応液を還流下で7時間撹拌して反応を行った。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BisN-24)で表される目的化合物4.2gを得た。
【0337】
【化51】
(上記BisN-24において、トリアジン環に直接結合する3つのベンゼン環は、各々回転することができる。)
【0338】
<合成実施例6>BisN-25の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、トリアジン化合物((株)BASF社製 TINUVIN460)12.0g(19.0mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmol)とを100mLアセトンに加えた液を仕込み、更にメタクリル酸3.87g(45mmol)を加え、得られた反応液を還流下で7時間撹拌して反応を行った。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BisN-25)で表される目的化合物3.9gを得た。
【0339】
【化52】
(上記BisN-25において、トリアジン環に直接結合する3つのベンゼン環は、各々回転することができる。)
【0340】
<合成実施例7>BisN-26の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、トリアジン化合物((株)BASF社製 TINUVIN460)12.0g(19.0mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmol)とを100mLジメチルアセトアミドに加えた液を仕込み、更にエピクロルヒドリン4.g(45mmol)を加え、得られた反応液を90℃で6.5時間撹拌して反応を行った。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BisN-26)で表される目的化合物 4.03gを得た。
【0341】
【化53】
(上記BisN-26において、トリアジン環に直接結合する3つのベンゼン環は、各々回転することができる。)
【0342】
<合成実施例8>BisN-27の合成
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、トリアジン化合物((株)BASF社製 TINUVIN460)12.0g(19.0mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmol)とを100mLアセトンに加えた液を仕込み、更に臭化アリル5.4g(45mmol)及び18-クラウン-6、2.0gを加え、得られた反応液を還流下6.5時間撹拌して反応を行った。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BisN-27)で表される目的化合物 4.0gを得た。
【0343】
【化54】
(上記BisN-27において、トリアジン環に直接結合する3つのベンゼン環は、各々回転することができる。)
【0344】
[UV照射硬化性評価方法(実施例15~22及び比較例5~6])
表6に示す組成(表中、「含有量」は、質量%を示す)にて調製した各実施例15~30及び比較例5~6のリソグラフィー用膜形成用組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布し、240℃のオーブン中で60秒ベークしてベーク膜を形成した。ベーク膜に対して、UV照射装置(BJB267:高圧水銀ランプ、GSユアサ(株)製品)を用い、360nm波長のUVを照射し、UV硬化膜を得た。UV硬化膜の膜厚をエリプソメーター(ファイブラボ(株)製品、レーザー波長632.8nm)で計測後、UV硬化膜をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA))にそれぞれ室温で60秒間浸漬した。その後、エアーを膜に吹き付け更に100℃で60秒間加熱し、溶媒を除去した。その後、エリプソメーターでUV硬化膜の厚みを再計測し、溶媒浸漬後の残膜率下記式により算出した。
残膜率(%)=溶媒浸漬後のUV硬化膜厚/溶媒浸漬前のUV硬化膜厚×100
【0345】
算出した残膜率から下記基準に従い、UV硬化性を評価した。評価結果を表6に示す。実用的観点から、UV硬化半導体微細加工プロセスへの適用は、「S」が最も好ましく、次いで「A」、続いて「B」が好ましく、「C」までがUV硬化プロセスに適用する事が可能な水準であるものと評価した。「D」については、UV硬化プロセスに適用することができないものと評価した。
【0346】
<評価基準>
S:残膜率が90%以上であった。
A:残膜率が80%以上90%未満であった。
B:残膜率が50%以上80%未満であった。
C:残膜率が20%以上50%未満であった。
D:残膜率が20%未満であった。
【0347】
【0348】
表6に示すように、実施例15~30では、良好なUV硬化特性を示した。特に光重合開始剤が含まれると、UV硬化特性を向上できることを確認した。一方、比較例5及び6ではUV硬化しなかった。
【0349】
本出願は、2017年6月28日出願の日本国特許出願(特願2017-126543号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0350】
本実施形態の膜形成用材料は、耐熱性が比較的に高く、溶媒溶解性も比較的に高く、湿式プロセスが適用可能である。そのため、本実施形態の膜形成材料を含むリソグラフィー用膜形成用組成物は、これらの性能が要求される各種用途において、広く且つ有効に利用可能である。とりわけ、リソグラフィー用下層膜及び多層レジスト用下層膜の分野において、特に有効に利用可能である。さらに、本実施形態の膜形成用材料は、耐熱性、透明性及び屈折率に優れるため、とりわけ、光学部品形成用材料としても有効に利用可能である。