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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】伸縮配線部材
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20230329BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/14 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019165651
(22)【出願日】2019-09-11
(62)【分割の表示】P 2018563651の分割
【原出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2019208081
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2018004776
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】木本 貴也
(72)【発明者】
【氏名】木村 亨
(72)【発明者】
【氏名】石久保 雅道
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-145661(JP,A)
【文献】特開2016-219543(JP,A)
【文献】特開2012-033597(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010034718(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
H05K 1/11
H01R 12/61
H01R 12/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定配線を硬質基材に形成した基体と、
柔軟配線を柔軟基材に形成した伸長体と、を備え、
当該基体と当該伸長体が固着して連結している伸縮配線部材において、
前記硬質基材に、前記基体と前記伸長体との境界に生じる応力集中を緩和する第1の突出部を設け、前記柔軟配線が前記第1の突出部の両側に形成されることを特徴とする伸縮配線部材。
【請求項2】
前記第1の突出部は、前記柔軟配線から離間して配置される
請求項1記載の伸縮配線部材。
【請求項3】
前記第1の突出部を含む前記硬質基材の一部の領域の上面及び下面を、前記伸長体から伸長した基体側柔軟基材が覆う
請求項1又は請求項2記載の伸縮配線部材。
【請求項4】
前記第1の突出部の先端と前記柔軟基材との境界領域に、伸長防止部材を有する
請求項1~請求項3何れか1項記載の伸縮配線部材。
【請求項5】
前記柔軟配線の外側に位置するように前記硬質基材に第2の突出部を設けた
請求項1~請求項4何れか1項記載の伸縮配線部材。
【請求項6】
前記第2の突出部の上面が、前記固定配線が積層配置する上面に対して傾斜する湾曲形状である
請求項5記載の伸縮配線部材。
【請求項7】
前記柔軟配線と前記柔軟基材の固着力が、前記柔軟配線の引張り破断力よりも大きい
請求項1~請求項6何れか1項記載の伸縮配線部材。
【請求項8】
前記柔軟配線はその表裏を前記柔軟基材に覆われており、当該柔軟基材のゴム硬度よりも高硬度である
請求項1~請求項7何れか1項記載の伸縮配線部材。
【請求項9】
前記硬質基材の上面と下面を覆う前記基体側柔軟基材において、前記柔軟配線を備える側の前記基体側柔軟基材が、他方の前記基体側柔軟基材よりも柔軟である
請求項3記載の伸縮配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟基材に柔軟配線を備え、伸縮して利用することができる伸縮配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脈拍などの身体の状態や、歩数などの身体の動きを計測するためのセンサが搭載されたスマートウォッチや活量計、脈拍計などのウェアラブルデバイスの開発が盛んになっているが、従来のウェアラブルデバイスでは、半導体素子が硬いリジット基板に配置されたユニットが用いられており身体の動きに追従しないため、快適な装着感が得られなかった。そこで、弾性体や衣類に導電回路を形成することでフレキシブルなウェアラブルデバイスを得る技術が開発されている。こうした技術は、例えば、特開2016-076531号公報(特許文献1)や、特開2012-033316号公報(特許文献2)、特開2013-145661号公報(特許文献3)などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-076531号公報
【文献】特開2012-033316号公報
【文献】特開2013-145661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2016-076531号公報(特許文献1)には、ウェアラブル端末等に適用可能な伸縮性及び耐衝撃性に優れた複合モジュールの技術が記載されているが、伸縮する本体部の上に導電性の接続体を通じて基板を立体的に載置しているため、本体部が伸びて接続体の間隔が広がると基板から外れるおそれがあった。したがって、伸縮可能であるといっても、数%程度の小さな伸縮率にしか対応できなかった。
【0005】
また、特開2012-033316号公報(特許文献2)には、柔軟基材に接続部を直接固着した構成が記載されているが、柔軟な配線体を大きく伸長させたときに、電気回路と前記配線体の境界部分に応力が集中することで配線が大きく伸ばされることから、伸縮が大きい用途では依然として断線の懸念があった。
【0006】
さらに特開2013-145661号公報(特許文献3)には、エラストマ製の第一配線体にポリエステル製の第二配線体を接続した配線体接続構造体が記載されているが、第二配線体に形成した凸部に応力が収集するため、凸部に近接する柔軟基材に過大な負担が生じ、ひいては柔軟基材に歪みや、柔軟基材と凸部の剥離が生じ易いという懸念があった。
【0007】
本発明では、硬質部分と柔軟部分とを接続してなる伸縮配線部材について、硬質部分と柔軟部分との境界における断線を予防することに加え、伸長による柔軟部分への負担も小さい伸縮配線部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、固定配線を硬質基材に形成した基体と、柔軟配線を柔軟基材に形成した伸長体と、を備え、当該基体と当該伸長体が固着して連結している伸縮配線部材について、前記硬質基材に、前記基体と前記伸長体との境界に生じる応力集中を緩和する突出部を設け、前記突出部及び当該突出部に囲まれた凹部の上面と下面を、前記伸長体から伸長した基体側柔軟基材が覆うことを特徴とする伸縮配線部材により構成される。
【0009】
固定配線を硬質基材に形成した基体と、柔軟配線を柔軟基材に形成した伸長体と、を備え、当該基体と当該伸長体が固着して連結している伸縮配線部材について、前記硬質基材に、前記基体と前記伸長体との境界に生じる応力集中を緩和する突出部を設け、前記突出部及び当該突出部に囲まれた凹部の上面と下面を、前記伸長体から伸長した基体側柔軟基材が覆うこととして構成したため、突出部の上面と下面とを柔軟基材で覆うことで、突出部における応力を上面と下面の両面で受けることができる。そのため、従来の片面で応力を受けていた構成と比較して、柔軟基材の負担を1/2にすることでき、柔軟基材と突出部の応力集中箇所の近傍における柔軟基材の歪みや、柔軟基材と突出部の剥がれを抑制することができる。
【0010】
前記本発明は、前記突出部の先端外側において、柔軟配線のある中央部分とは反対の外側に膨出する柔軟基材でなる拡張部を有するものとして構成できる。前記突出部の先端外側において、柔軟配線のある中央部分とは反対の外側に膨出する柔軟基材でなる拡張部を有する構成としたため、突出部の外側側面を柔軟な材質でなる拡張部と固着することができ、突出部と柔軟基材との間の応力集中を軽減することができる。そのため、柔軟基材と突出部の応力集中箇所の近傍における柔軟基材の歪みや、柔軟基材と突出部の剥がれをさらに抑制することができる。
【0011】
また前記本発明は、前記突出部は先端になる程前記柔軟配線からの垂直距離が大きくなる形状として構成できる。前記突出部が先端になる程前記柔軟配線からの垂直距離が大きくなる形状としたため、突出部の中でも応力が集中しやすい先端を柔軟配線から遠ざけることで、柔軟配線が局所的に大きく伸縮してしまうことを抑止することができる。突出部の先端は、通常は他の部材と接続する接続部から最も離れた部分であり、伸縮配線部材の伸縮方向に最も伸びている部分である。
【0012】
前記本発明は、前記柔軟配線がその表裏(上下)を前記柔軟基材に覆われており、当該柔軟基材のゴム硬度よりも高硬度である構成とすることができる。前記柔軟配線の表裏が前記柔軟基材に覆われており、当該柔軟基材のゴム硬度よりも高硬度である構成としたため、伸縮配線部材が圧縮された際の抵抗値の安定化が図れ、また、製造時における柔軟配線の破断を防止することができる。
【0013】
前記本発明は、前記硬質基材の突出部の上面が、固定配線が積層配置する上面に対して傾斜する湾曲形状であるものとして構成できる。前記硬質基材の突出部の上面が、固定配線が積層配置する上面に対して傾斜する湾曲形状として構成したため、伸縮配線部材を伸長したとき、湾曲の曲率を大きくしながら縮径方向の応力を緩和することができる。したがって、突出部への応力を緩和して、柔軟基材と突出部の応力集中箇所の近傍における柔軟基材の歪みや、柔軟基材と突出部の剥がれを抑制することができる。
【0014】
前記本発明は、前記柔軟配線と前記柔軟基材の固着力が、前記柔軟配線の引張り破断力よりも大きいものとして構成できる。前記柔軟配線と前記柔軟基材の固着力が、前記柔軟配線の引張り破断力よりも大きいものとしたため、伸縮配線部材を大きく伸長させても柔軟基材から柔軟配線が剥離するおそれが生じ難い。
【0015】
前記本発明は、前記基体に積層する柔軟基材である基体側柔軟基材のうち、前記硬質基材の上面に固着する柔軟基材が、当該硬質基材の下面に固着する柔軟基材よりも柔軟であるものとして構成できる。前記基体に積層する柔軟基材である基体側柔軟基材のうち、前記硬質基材の上面に固着する柔軟基材が、当該硬質基材の下面に固着する柔軟基材よりも柔軟であるものとしたため、伸縮配線部材の製造時に硬質基材等を上下から基体側柔軟基材で挟み圧接するときに、導電配線を備える側の基体側柔軟基材をより変形し易くできるため、柔軟配線の断線を防止することができる。
【0016】
前記本発明は、前記硬質基材における伸長体との接続側とは反対側の端部を前記突出部の幅よりも細幅として構成できる。前記硬質基材における伸長体との接続側とは反対側の端部を前記突出部の幅よりも細幅としたため、伸縮配線部材を伸長させたときに伸縮配線部材全体を湾曲させることができ応力を分散させることで導電配線の破断を起こし難くすることができる。
【0017】
前記本発明は、前記硬質基材における伸長体との接続側とは反対側の端部を前記突出部の幅と略同幅として構成できる。前記硬質基材における伸長体との接続側とは反対側の端部を前記突出部の幅と略同幅として構成したため、硬質基材における伸長体との接続側とは反対側の端部を固定することで伸縮配線部材を伸長させたときに伸縮配線部材を湾曲させることなく伸長させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の伸縮配線部材によれば、伸長させても応力集中箇所における柔軟基材の破断や劣化が生じ難く、柔軟基材と硬質基材との間での剥がれが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の伸縮配線部材の説明図であり、分図1(a)はその概略平面図、分図1(b)は分図1(a)のIb-Ib線断面図である。
図2図1の伸縮配線部材を構成する基体の説明図であり、分図2(a)はその概略平面図、分図2(b)は分図2(a)のIIb-IIb線断面図である。
図3図1の伸縮配線部材を伸長した様子を説明する概略平面図である。
図4図1の伸縮配線部材の基体と伸長体との境界付近の伸長の様子を説明する説明図である。
図5】第2実施形態の伸縮配線部材の説明図であり、図1(a)相当の概略平面図である。
図6図5の伸縮配線部材の基体と伸長体との境界付近の伸長の様子を説明する説明図である。
図7】第3実施形態の伸縮配線部材の説明図であり、図1(a)相当の概略平面図である。
図8】第4実施形態の伸縮配線部材の説明図であり、分図8(a)は分図2(a)相当の概略平面図、分図8(b)は分図8(a)のVIIIb-VIIIb線端面図である。
図9図8の伸縮配線部材の伸長した様子を説明する説明図であり、分図9(a)は分図8(a)相当の概略平面図、分図9(b)は分図9(a)のIXb-IXb線端面図である。
図10】変形形態の伸縮配線部材の説明図であり、図10(a)~図10(o)はそれぞれ個々の変形形態を示す。
図11】第5実施形態の伸縮配線部材の説明図であり、分図11(a)はその概略平面図、分図11(b)は分図11(a)のXIb-XIb線断面図である。
図12】変形形態の伸縮配線部材の説明図であり、分図12(a)はその概略平面図、分図12(b)は分図12(a)のXIIb-XIIb線断面図である。
図13】別の変形形態の伸縮配線部材の図12(b)相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の伸縮配線部材について実施形態に基づいて詳しく説明する。各実施形態において重複する部位、材料、製造方法、作用効果、機能等については重複説明を省略する。
【0021】
<第1実施形態[図1図4]>: 第1実施形態の伸縮配線部材1は、図1図4で示すように、硬質基材20に固定配線30が形成されている基体10と、柔軟基材70に柔軟配線80が形成されている伸長体60と、を備え、基体10と伸長体60は、基体10に設けた「第2の突出部」としての突出部21の上面21aと下面21b、及びその突出部21に囲まれた内側に位置する凹部22の上面22aと下面22bを、伸長体60から伸長した基体側柔軟基材40が覆うことで固着され一体化されている。また、基体10と伸長体60との配線の接続は、伸長体60の柔軟配線80から伸長した基体側柔軟配線50が固定配線30の上にまで延びることでなされている。なお、本明細書および特許請求の範囲において上下で表現する文言は説明の便宜上のものであり、伸縮配線部材1の使用時における上下を限定するものではない。
【0022】
基体10は、フレキシブルプリント基板等の既存の配線等に接続する部位であって、固定配線30を硬質基材20に形成してなり一定の剛性を備えた配線基板であり、基体側柔軟基材40が硬質基材20の端部を覆うことで伸長体60と結合している。
【0023】
硬質基材20は、硬質材料からなるシート形状をしており、そのシートの面内方向にはほぼ伸縮しない程度の剛性を備えた部材である。一方で、硬質基材20は、シート面に対する垂直方向については、変形し易くても変形し難くても良い。こうした性質を備えた硬質材料としては、例えば、可撓性樹脂フィルムや、硬質樹脂基板、セラミック基板等の絶縁性の硬質材料が挙げられる。この中で、可撓性樹脂フィルムは、シートの面内方向にはほぼ伸縮せず、シート面に対する垂直方向には変形しやすい性質を有する。一方、硬質樹脂基板やセラミック基板は、シートの面内方向にはほぼ伸縮せず、シート面に対する垂直方向にも変形し難い。これらの中でもプリント配線の基材として用いられているポリイミドフィルムや、フェノール樹脂、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
硬質基材20は、絶縁性の硬質材料以外にも導電性の硬質材料を用いることができる。但し、導電性の硬質材料に、複数の固定配線30又は柔軟配線80を直接設けると、後述する固定配線30又は柔軟配線80どうしが導電性の硬質基材20を通じて導通する不都合が生じる。そこでこれを回避するため、導電性の硬質材料の表面に絶縁性被膜を介在させたり、固定配線30又は柔軟配線80の表面に導電性被覆をしたりするなどの手段を講じ、導電性の硬質基材20と固定配線30又は柔軟配線80が電気的に直接接しないようにする必要がある。導電性の硬質材料としては金属や導電性樹脂等が挙げられる。
【0025】
硬質基材20の中央部分に固定配線30が積層しているが、固定配線30に対する直交方向の外側部分には、硬質基材20の端部から固定配線30の伸長方向に向かって突出した突出部21が形成されている。この突出部21の先端側面21e、上面21a、下面21b、固定配線30側の側面となる内側側面21cには伸長体60から伸長した基体側柔軟基材40が固着している。
【0026】
このように突出部21は、平面視で柔軟配線80の伸長方向に対する直交方向の外側位置で、基体10の固定配線30と伸長体60の柔軟配線80との境界よりも導電配線(固定配線30,柔軟配線80)の伸長方向に突出した位置に設けられている。
【0027】
硬質基材20に形成されている固定配線30には、例えば銅やニッケル、アルミニウム等の良導電性金属層や、それらの粉末を樹脂中に分散させた導電性樹脂層とすることができる。これらの中でも、例えば半田で配線と固着する場合や、接続対象のコネクタに繰り返し接続する場合には、耐摩耗性の高い良導電性金属層とすることが好ましい。固定配線30は、基体10の伸長体60との接続端側には伸長体60の柔軟配線80から伸長した基体側柔軟配線50が積層しており、この積層部分を介して基体10と伸長体60の両導電配線(固定配線30,柔軟配線80)が導電接続している。一方、基体10の伸長体60との接続端とは反対側では、固定配線30は外部に露出して、他の部材、例えばコネクタやケーブル、電子素子等との固定部20hとなっている。固定配線30の形状は特に制限はなく任意の形状を採用することができる。
【0028】
伸長体60は、柔軟配線80を柔軟基材70に形成してなり一定の柔軟性を備えた配線基板であり、伸長体60から延出した柔軟基材70が硬質基材20の端部を覆うことで基体10と結合している。
【0029】
柔軟基材70は、柔軟材料でなる部材であり、伸縮可能な性質を有している。柔軟材料としては、熱硬化性ゴムや熱可塑性エラストマの他、織物やニットなどの布帛やこれらを組合せて使用することができ、少なくとも初期の長さの120%以上の長さまで伸縮可能な材料を用いることが好ましい。また、150%以上の長さまで伸縮可能であることがより好ましい。これらの材質の中で熱硬化性ゴムまたは熱可塑性エラストマを用いる場合には、JIS K6253規定のゴム硬度がA硬度で90(以後A90と記載する)以下であることが好ましい。ゴム硬度がA90を超えると、伸長したときの応力が必要以上に大きくなり、剥離の懸念が増すためである。一方、ゴム硬度の下限は特にないが、E硬度で20未満の場合は、耐摩耗性や引張り破断応力が低いことから一部の用途では懸念が生じることがある。柔軟基材70は、伸長体60の構成部分のベースを形成するとともに、伸長体60から基体10側に伸長し、基体10の硬質基材20と積層した部分では基体10の一部を形成する。
【0030】
伸長体60を構成する柔軟基材70の形状は、典型的には矩形のベルト状や、棒状とすることができる。また、基体10を構成する硬質基材20と固着する近傍部分を広くすることができる。硬質基材20との近傍を広く形成することで導電配線(固定配線30,柔軟配線80)の基体10と伸長体60との境界近傍における柔軟基材70の伸長率を低くすることができる。
【0031】
柔軟配線80は、柔軟基材70とともに伸長体60にあって柔軟基材70とともに伸縮可能な性質を有している。伸長体60の両側に基体10を設けることで、この両側に設けた基体10に備わる固定配線30どうしを柔軟配線80により電気的に接続し、固定配線30どうしの間隔が変化しても両者の導電接続状態を保持することができる。柔軟配線80には、伸縮性のある導電材料を用いる。具体的には、熱硬化性ゴムや熱可塑性エラストマに導電性粒子を分散させた柔軟導電性樹脂を用いることが好ましい。柔軟基材70として熱硬化性ゴムや熱可塑性エラストマを用いたときは、同種の樹脂の銀やカーボンの粉末を分散させた柔軟導電性樹脂を用いて柔軟配線80を形成することが好ましい。柔軟基材70と柔軟配線80との固着性が高まるからである。
【0032】
柔軟配線80も柔軟基材70も柔軟な材質で形成されるため、その両者の硬度は同一とすることもできるが、柔軟配線80の硬度を柔軟基材70の硬度よりも高硬度とすることができる。こうした硬さの関係性で伸縮配線部材1を構成すると、伸縮配線部材1が圧縮されたときでも柔軟基材70は圧縮変形し易いが柔軟配線80は圧縮変形し難い。したがって、圧縮時の柔軟配線80の体積変化を生じさせ難いため、伸長方向以外にも圧力を受ける用途で、安定した抵抗値を示すことができる。また、伸縮配線部材1の製造時に、柔軟配線80を柔軟基材70で挟んで圧接しても、柔軟配線80の変形が生じ難く柔軟配線80の断線を防止することができる。
【0033】
柔軟配線80と柔軟基材70との固着力は柔軟配線80の引張り破断力よりも大きいものとすることが好ましい。反対に柔軟配線80と柔軟基材70の固着力に対して柔軟配線80の引張り破断力が大きいと、伸縮配線部材1を大きく伸長したときに柔軟基材70から柔軟配線80が剥離するおそれがあるからである。通常は、こうした問題は生じないが、特に柔軟な場合であって200%を超えて伸長する場合に、柔軟配線80自体の縮径方向の変形が大きくなり、柔軟基材70との間に応力が生じることから剥離が起こり易いものと考えられる。
【0034】
こうした懸念に対して、柔軟配線80の引張り破断力を小さくすることで、剥離する前に、柔軟配線80に部分的な亀裂が生じるようにすることができる。こうした亀裂は、小さな亀裂が細かく生じ、抵抗値は上昇するものの、柔軟配線80を切断するほど大きな亀裂にはなり難い。したがって、剥離を抑制しながら、柔軟配線80の断線も抑制することができ、抵抗値上昇をモニタリングすることで、伸長の限界をセンシングすることもできる。なお、上記固着力と引張り破断力の関係は、伸縮配線部材1の伸長試験を行い、剥離する前に亀裂が生じるか否かで判断することができる。すなわち、前記伸長試験で亀裂が生じる前に剥離した場合には、柔軟配線80と柔軟基材70の固着力に対して柔軟配線80の引張り破断力が大きい、反対に剥離する前に部分的な亀裂が生じた場合は、柔軟配線80と柔軟基材70との固着力は柔軟配線80の引張り破断力よりも大きいと判断することできる。
【0035】
基体10側に設けた柔軟基材である基体側柔軟基材40と硬質基材20との固着方法には、材料自体の接着性を利用する方法、接着剤等を用いる方法、熱融着による方法、構造的な固定による固着方法などを採用することができる。接着性を採用できる材料としては、半硬化状態の熱硬化性ゴムを例示することができる。また、熱融着による固着を採用できる材料としては、熱可塑性エラストマや熱可塑性の布帛を例示することができる。構造的な固定を採用する場合には、例えば面ファスナーのような嵌合構造による固定、縫製による固定などにより固定することができる。
【0036】
基体10に積層する柔軟基材である基体側柔軟基材40のうち、硬質基材20の上面20aに固着する基体側柔軟基材40が、硬質基材20の下面20bに固着する基体側柔軟基材40よりも柔軟であるものとすることが好ましい。伸縮配線部材1の製造において硬質基材20と固着する際に、導電配線(基体側柔軟配線50,柔軟配線80)を備える側の柔軟基材70をより変形し易くできるため、導電配線(基体側柔軟配線50,柔軟配線80)の断線を抑制することができる。
【0037】
伸縮配線部材1は、硬質基材20の端部が他の配線部材等に固定され支持されて伸長体60が伸縮されるが、この他の配線部材等に固定され支持される固定部20hは、伸縮配線部材1の伸長の起点となる部位であり、伸縮配線部材1の横幅の両外端までを固定することが好ましい。伸縮配線部材1の外端まで固定することで、固定配線30のある他の配線部材等との接続部にかかる応力を最小限にすることができるからである。
【0038】
こうした伸縮配線部材1を伸長させると、典型的には図3で示すように、伸長体60の柔軟基材70の中央部分が細くなる一方で、基体10は形状を変えずに初期の状態が維持される。基体10と伸長体60との境界部分に注目しても柔軟基材70の伸びが観測される。図4には、伸長体60における基体10との境界部分に等間隔に設けた直線状の目印が伸長して波形になって見える様子を示す。この図4で示すように、2つの突出部21,21に囲まれた凹部22における柔軟基材70の伸長が抑制されている。また、突出部21,21の先端内側角部(内側角部)21fと、先端外側角部(外側角部)21gに応力が集中している。
【0039】
2つの突出部21,21の形成によりその内側の凹部22の柔軟基材70と柔軟配線80の伸長が抑制されるため、基体10との境界近傍における柔軟配線80の断線を防止することができる。
【0040】
また柔軟基材70の硬質基材20に固着した部分は伸長しても固定されていることから、伸長体60を伸長させたときに突出部21の先端Tに応力が集中する。このとき、柔軟基材70の中央部分は材料の応力緩和によって伸長が抑えられることから突出部21の先端内側角部21f付近で伸長量が大きい部分と伸長量が小さい部分が近接して柔軟基材に大きな歪みが生じ易い箇所となっている。一方、先端外側角部21gは先端内側角部21fと比べて伸長量が大きくなるため、応力が大きくなっている。
【0041】
<第2実施形態[図5図6]>: 第2実施形態の伸縮配線部材2は、図5図6で示すように、硬質基材20に設けた突出部21が、先端Tになる程、柔軟配線80からの距離が遠くなるような広がり形状に形成されていることを特徴としたものである。この広がり形状は、基体10の固定配線30と伸長体60の柔軟配線80との境界から配線の伸長方向に離れるにつれて、突出部21と柔軟配線80の距離が大きくなることが好ましい。
【0042】
突出部21を広がり形状に形成したため、広がり形状としていない場合に比べて先端内側角部21fに生じた応力集中を軽減することができ、柔軟配線80が局所的に大きく伸長することを抑止できる。
【0043】
<第3実施形態[図7]>: 図7は、第3実施形態の伸縮配線部材3の平面図である。伸縮配線部材3は、突出部21の先端Tにおいて、柔軟配線80のある中央部分とは反対の外側に膨出する拡張部75を備えている点が、先の実施形態で説明した伸縮配線部材1と異なる。
【0044】
この拡張部75は、突出部21の外側側面21dに固着している。この拡張部75は、伸縮配線部材3を伸長したとき、変形量が大きくなる先端外側角部21gを覆うことで、先端外側角部21g近傍の応力集中を軽減して、柔軟基材70と突出部21の応力集中箇所の近傍における柔軟基材70の歪みや、柔軟基材70と突出部21の剥がれを抑制することができる。
【0045】
もう少し詳しく説明すると、伸縮配線部材を伸長したときは、柔軟基材70は中央に向かって細長く変形する。このため、中央部分に比べて周辺部分の変形量が大きい。中央に柔軟配線80を配置したときは、突出部21は必然的に外側10dに配置されることなる。この外側10dに配置された突出部21が柔軟基材70の周辺部分と固着する構成では、この固着部分の最外端である先端外側角部21gにかかる応力が最も大きくなる。
【0046】
一方、突出部21の外側10dとなる領域に、柔軟な材質からなる拡張部75を形成し、突出部21の外側側面21dと固着することで、この固着部分を柔軟基材の最外端ではなくし、しかも突出部21の外側側面21dとの固着面積を大きくすることができる。したがって、突出部21と柔軟基材70の間の応力集中を軽減することができ、柔軟基材70と突出部21の応力集中箇所の近傍における柔軟基材70の歪みや、柔軟基材70と突出部21の剥がれをさらに抑制することができる。
【0047】
<第4実施形態[図8図9]>: 図8は、第4実施形態の伸縮配線部材4である。第4実施形態の伸縮配線部材4は、平面視では第3実施形態として説明した伸縮配線部材1と略同じ形状であるが、断面視において、硬質基材20と柔軟基材70(基体側柔軟基材40)の形状が異なっている。
【0048】
伸縮配線部材4では、硬質基材20の突出部21の部分を含み硬質基材20の外側部23が下側に湾曲していることを特徴としている。また、柔軟基材70は、上面が硬質基材20に追従して湾曲した形状とされている。伸縮配線部材4は、下側に湾曲した形状をしているため、伸長したときに伸縮配線部材1とは異なる変形挙動を示す。硬質基材20が平坦な伸縮配線部材1と比較して説明すると、平面的な硬質基材20を備える伸縮配線部材1は、面内方向の剛性が高いため、伸縮配線部材1を伸長したときに生じる応力に対して硬質基材20がほとんど変形しない。これに対して本実施形態の伸縮配線部材4は硬質基材20が立体的に形成されているため、伸縮配線部材4を伸長したときの状態を図9で示すが、この図9で示すように、伸縮配線部材4に生じる応力Fは硬質基材20の面内で角度をもつことになる。したがって、この応力Fによって硬質基材20が湾曲され、図9(b)で示すように、あたかも丸まるように曲率を大きくしながら変形する。こうした変形によって、硬質基材20の突出部21の先端Tにかかる応力を緩和して、柔軟基材70と突出部21の応力集中箇所の近傍における柔軟基材70の歪みや、柔軟基材70と突出部21の剥がれを抑制することができる。
【0049】
<第5実施形態[図11]>: 図11は、第5実施形態の伸縮配線部材6である。第5実施形態の伸縮配線部材6は、第1実施形態の伸縮配線部材1等で説明した突出部21に囲まれた凹部22に、「第1の突出部」としての別の突出部21を設けた点で先の実施形態で説明した伸縮配線部材1等と異なる。
【0050】
この別の突出部21である「第1の突出部」としての中央突出部24は、本実施形態では2本の柔軟配線80の間にあって、外側位置に設けた2つの突出部21よりも伸長方向に突出した形状としている。この中央突出部24は伸縮配線部材6を伸長したときに変形量が大きくなる先端外側角部21g近傍の応力集中を軽減して、柔軟基材70と突出部21の応力集中箇所の近傍における柔軟基材70の歪みや、柔軟基材70と突出部21の剥がれを抑制することができる。
【0051】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態の変更または公知技術の付加や、組合せ等を行い得るものであり、それらの技術もまた本発明の範囲に含まれるものである。
【0052】
図10(a)~(o)は、硬質基材20の形状を変形した様々な種類の伸縮配線部材5(5a~5o)である。なお、図10(a)~(o)では、硬質基材20の形状を見易くするため、基体側柔軟基材40に隠れる部分も実線で示している。こうした伸縮配線部材5のうち、例えば、図10(m)で示す伸縮配線部材5mでは、突出部21の先端Tが広がっており、突出部21の先端Tにかかる応力を分散させ易いといった利点がある。また、図10(n)で示す伸縮配線部材5nや図10(o)で示す伸縮配線部材5oでは、硬質基材20の固定部20h側が細くなっており、伸長させると伸縮配線部材5n,5oの全体が湾曲し易い。
【0053】
第4実施形態における伸縮配線部材4では、柔軟基材70も硬質基材20の形状に沿わせて、柔軟基材70の上面を下側に湾曲した形状としていたが、こうした形状に限定するものではなく、硬質基材20が湾曲していても柔軟基材70を平坦にすることもできる。また、柔軟基材70の伸長方向において柔軟基材70を部分的に細くすることで特定の領域の伸長率を高めることもできる。
【0054】
伸縮配線部材をプリント基板等の他の部材と接続する接続部は、固定配線を設けた硬質基材の端部となるが、この接続部自体を他の部材に固定する固定部20hとすることができ、また、それ以外の部分を固定部20hとすることもできる。例えば、拡張部75に固定部20hを備えるものとすることができる。拡張部に伸長の起点となる固定部20hを設ける構成とすれば、前記接続部を固定して伸長する場合と比較して、接続部と柔軟基材の境界にかかる応力を低減することができることに加え、柔軟基材を最大限の伸長領域として活用することができる。柔軟配線をはさんで両外端に設ける固定部20hは好ましい一態様であり、こうした構成を採用すれば接続部にかかる応力を少なくすることができる。
【0055】
硬質基材20の形状は、前記固定部20hよりも伸長方向側に、固定部20hの幅よりも幅が広い幅広部を設けこの幅広部に突出部21を設けた形状として形成することができる。このように構成すると、突出部21が固定部20hから見た伸長方向と突出部21の位置が重ならなくなる。したがって、固定部20hを起点として伸長させたとき、固定部20hから伝わる応力に対して、突出部21には伸長方向だけでなく、面内方向の応力も作用することになり、最終的には湾曲形状になり、面内方向の応力を緩和することができる。したがって、突出部21への応力を緩和して、柔軟基材70と突出部21の応力集中箇所の近傍における柔軟基材70の歪みや、柔軟基材70と突出部21の剥がれを抑制することができる。
【0056】
上記例では、伸長体60に対してその両端側に基体10を備えるものとして説明したが、伸縮配線部材1~6は、伸長体60と何れか一方の基体10とを備えていれば良い。また、伸縮配線部材を帯状のものとして、その長さ方向への一方向の伸縮の例を示したが、伸縮配線部材を正方形状等の平面状に形成し、一方向だけでなく、それに対する交差方向への伸長を行うものとすることもできる。この場合には、シート状の柔軟基材70の表裏にX方向の柔軟配線80とY方向の柔軟配線80を設ける構成を採用し、シート状の四辺に基体10を設ける構成とすることができる。
【0057】
硬質基材20と柔軟基材70の境界の補強のため、次に説明する伸長防止部材90をさらに設けることができる。伸長防止部材90を設けた伸縮配線部材7を図12に示す。伸長防止部材90は、平面視で硬質基材20に設けた突出部21の先端Tと柔軟基材70との境界が被る位置に設けることができるものであり、柔軟基材70と同等以上に硬く硬質基材20よりも柔らかい材質とすることが好ましい。硬質基材20や柔軟基材70と同じ材質のもので硬さを調整した材質を用いることができ、柔軟基材70と同様のエラストマやゴムを用いると硬さ調整が容易である。なお、柔軟基材70と同一の硬さで伸長防止部材90を形成した場合は、伸長防止部材90は柔軟基材70の一部が外側に突出したものとすることもできる。
【0058】
伸長防止部材90はまた柔軟基材70の内側に設けることもできる。図13には伸長防止部材90を柔軟基材70の内側に設けた伸縮配線部材7aを示す。この場合の伸長防止部材90は、柔軟基材70よりも硬く硬質基材20よりも柔らかい材質とすることが好ましい。硬質基材20や柔軟基材70と同じ材質のもので硬さを調整した材質を用いることができることは、図12で示す場合と同じである。
【実施例
【0059】
試料1~試料16は、図10(a)~図10(o)で示す形態の伸縮配線部材を製造したものであり、試料1~試料16について各種試験を行ってその伸長特性を観察した。以下詳細に説明する。
【0060】
加えて、試料17及び試料18は、図11図12で示す形態の伸縮配線部材を製造したものであり、試料17及び試料18についても各種試験を行ってその伸長特性を観察した。
【0061】
<試料1の作製>: 試料1は、図10(a)に示す形状の伸縮配線部材を作製したものである。より具体的には、ガラスエポキシ樹脂製フィルムからなる長さが15mm、幅が15mm、厚さが0.1mmの硬質基材の上面に、銅めっきで幅が1mmの2本の固定配線を印刷した。一方、長さが25mm、幅が20mm、厚さが0.5mmの大きさでJIS K6253規定のゴム硬度がA30のシリコーンゴム製の柔軟基材を2枚準備し、1枚の柔軟基材の上に、液状シリコーンに銀粉末を分散させた銀ペーストからなり幅が固定配線と同じとなるように柔軟配線を印刷した。そして、伸長体側の端部から反対側に10mmの位置まで、硬質基材を先の2枚の柔軟基材で挟んで押圧して一体化し、試料1の伸縮配線部材を得た。
【0062】
<試料2~試料16の作製>:試料1と同様にして、図10(b)~図10(o)に示す形状の試料2~試料15の伸縮配線部材、及び図10(a)に示す形状の試料16を得た。なお、試料2から試料16は、試料1に対して以下に説明する変更を加えた試料である。
【0063】
試料2は、図10(b)で示した形状であって、硬質基材の先端を斜めにした形状である。突出長さ、即ち、硬質基材の長さの短い方の側面と長さの長い方の側面の長さの差は5mmである。
【0064】
試料3は、図10(c)で示した形状であって、硬質基材の中央に固定配線を含む突出部を設け、この突出部を通じて柔軟基材へ柔軟配線を延ばした構造である。突出部の幅は5mm、長さを5mmとした。
【0065】
試料4は、図10(d)で示した形状であって、硬質基材の外側部分には、硬質基材の端部から柔軟基材側に向かって突出した一対の突出部が形成されており、その突出部に挟まれた箇所において、柔軟基材へ柔軟配線を延ばした構造とした。また、硬質基材における柔軟配線のある中央部分とは反対の外側に柔軟基材が膨出する拡張部を設けた。各突出部の形状は幅5mm、長さ5mmである。また、突出部どうしの間であり、凹部となる部分の幅も5mmである。
【0066】
試料5は、図10(e)で示した形状であって、硬質基材の外側部分には、硬質基材の端部から柔軟基材側に向かって突出した一対の突出部が形成されており、その突出部に挟まれた箇所において、柔軟基材へ柔軟配線を延ばした構造とした点は試料4と同様である。一方、試料5では柔軟基材の幅を15mmに変更することで拡張部を設けない構造とした。
【0067】
試料6は、図10(f)で示した形状であって、試料4に対して硬質基材の幅を両端から各2.5mm小さくした形状である。換言すると、突出部の形状は幅2.5mm、長さが5mmである。また拡張部の幅は5mmとした。
【0068】
試料7は、図10(g)で示した形状であって、試料4では2つの突出部を設けたのに対して突出部を一方側のみに設けた形状である。突出部の大きさは試料4の一つの突出部の大きさと同じである。
【0069】
試料8は、図10(h)で示した形状であって、硬質基材の中央から外側部分に向かう傾斜面でなる突出部を設ける構造とした。突出部の長さ、即ち硬質基材の最も短い長さである中央部分の長さと、最も長い長さとなる両端の側面の長さの差は5mmである。
【0070】
試料9は、図10(i)で示した形状であって、試料4と同様に硬質基材の外側部分に一対の突出部を設けているが、その先端部の幅を短くして、中央の凹部から前記先端部に亘る側面を傾斜面に変更した試料である。なお、先端部の幅は2.5mmとしている。凹部となる突出部間の幅は試料4と同じである。
【0071】
試料10、は図10(j)で示した形状であって、硬質基材の外形は試料4と同じとしつつも、外側部分に設けられた各突出部の中央部に直径2mmの貫通孔を設けた点が異なる。そして、この貫通孔内で上下の柔軟基材が固着している構造とした。
【0072】
試料11は、図10(k)で示した形状であって、試料4と同様に硬質基材の外側部分に一対の突出部を設けているが、その先端内側角部から外側に亘って傾斜面を形成した構造とした。突出部の長さは突出部の基端から頂点である先端内側角部までの長さが5mmであり、傾斜面によって末広がりとなる根元部分で突出部間の幅が5mmとなる。
【0073】
試料12は、図10(l)で示した形状であって、試料4と同様に硬質基材の外側部分に一対の突出部を設けているが、その先端内側角部と先端外側角部の角をR形状に変更した試料である。角部のRは共に半径2mmの円弧としている。
【0074】
試料13は、図10(m)で示した形状であって、試料4と同様に硬質基材の外側部分に一対の突出部を設けているが、突出部の先端を除いた中腹部分の幅を狭く変更した試料である。具体的には突出部の先端から1mmまでは幅5mmとし、先端から1~5mmの部分の幅を3mmとした。
【0075】
試料14は、図10(n)で示した形状であって、試料4と同様に硬質基材の外側部分に一対の突出部を設けているが、突出部とは反対側の端部である固定部の幅を5mmに狭めた試料である。
【0076】
試料15は、図10(o)で示した形状であって、平面視では試料14と同じ形状としたが、柔軟配線を設けた表面側の柔軟基材の中央部の肉厚を厚くした試料である。具体的には柔軟基材の中央に幅5mmにわたって肉厚を1mm厚くしている。
【0077】
試料16は、平面視では図1(a)で示す試料1と同じ外形であるが、柔軟基材を片側だけに設けた試料である。
【0078】
そして、上記試料1~試料16の形状の特徴と以下に説明する試験の結果を次の表1及び表2にまとめて示した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
<試料17及び試料18の作製>:試料4と同様にして、図11及び図12に示す形状の試料17及び試料18の伸縮配線部材を得た。試料17及び試料18は、試料4に対して以下に説明する変更を加えた試料である。
【0082】
試料17は、外側位置に設けた2つの突出部の間にこれらの突出部よりも突出した中央突出部を設けた硬質基材を用いた試料である。
【0083】
試料18は、試料5にさらに伸長防止部材を設けた試料である。
【0084】
そして、上記試料17及び試料18の形状の特徴と以下に説明する試験の結果を次の表3にまとめて示した。
【0085】
【表3】
【0086】
<各種試験>: 上記試料1~試料16及び試料17、試料18の各伸縮配線部材について、次に説明する各種試験を行った。
【0087】
破断試験: 試料1~試料16及び試料17、試料18の各伸縮配線部材の両端に露出する硬質基材の端部を引張り試験機に固定し、導電配線の長さ方向に引張速度25mm/minで引っ張り、伸縮配線部材が破断した際の伸長率(%)を計測した。そして、「断線時の伸長率(%)」の欄には、伸縮配線部材を伸長させて断線した際の初期長さからの伸長率(%)を示した。なお初期長と同一長の場合を100%とした。
【0088】
引張り試験:引張り試験では、上記破断試験と同一の条件で伸縮配線部材を引張り、一対の硬質基材に形成された突出部(突出部が無い試料においては硬質基材)の先端どうしの間隔を初期長の3倍長に伸ばした際の、導電配線の基体と伸長体との境界よりも伸長体側近傍における伸び率(%)を計測した。そして計測結果は、「境界部近傍の伸び率(%)(伸長長さ300%時)」の欄に示した。また引張り試験では、初期長の3倍長に伸ばした際の、突出部先端の伸長体側近傍における伸び率(%)を計測した。そして計測結果は、「応力集中箇所近傍の伸び率(%)(伸長長さ300%時)」の欄に示した。加えて、引張り試験では、初期長の3倍長に伸ばした際に応力がどこに集中しているかを観察した。「応力集中箇所」の欄には応力が集中した場所を記載した。なお、本発明において伸び率(%)は、所定領域の初期の長さに対して、伸縮配線部材を伸ばした後の所定領域の長さを%で表したものであり、例えば所定領域の長さが初期の3倍になったとき伸び率を300%と表現した。
【0089】
上記表1及び表2、加えて表3において、上記した以外の各項目は以下の内容を示す。「表裏被覆」の欄は、基体側柔軟基材が硬質基材の上面及び下面を覆うか否かを示し、上面と下面の両面を被覆する場合を“〇”、上面のみを被覆し、下面には基体側柔軟基材が設けられない場合を“×”とした。「突出部」の欄は、突出部が硬質基材に存在するか否かを示し、硬質基材の両外側に突出部を有する場合を“〇”、何れか一方の外側に突出部を有する場合を“△”、突出部を有しない場合を“×”とした。
【0090】
「拡張部」の欄は、硬質基材の外側に位置する基体側柔軟基材が存在する拡張部が設けられているか否かを示し、拡張部を有する場合を“〇”、拡張部を有しない場合を“×”とした。「固定部の位置」の欄は、各試料の伸縮配線部材を伸長する際に両端の基体を固定して押さえた部分を示し、基体側柔軟基材で被覆されていない硬質基材の部分が硬質基材の全幅と等しい場合を“基体全幅”、 基体側柔軟基材で被覆されていない硬質基材の中央部分が硬質基材の全幅よりも狭い場合を“基体中央”とした。
【0091】
「突出部が広がり形状」の欄は、突出部の形状が先端になる程、柔軟配線からの垂直距離が大きくなる形状であるか否かを示し、先端ほど外側に広がる形状である場合を“〇”、先端ほど外側に広がる形状とはいえない形状である場合を“×”、先端が円弧状である場合を“△”とした。「幅広部に突出部」の欄は、硬質基材における伸長体との接続側とは反対側の端部を突出部の幅よりも細幅としたか同幅としたかを示し、細幅とした場合を“〇”、同幅とした場合を“×”とした。
【0092】
「剥がれの発生」の欄は、柔軟基材に亀裂、剥がれ、その他何らかの変化があったか否かを示し、柔軟基材に亀裂が生じた場合および剥がれが1mm以上であった場合を“1”とした。また、柔軟基材の剥がれが0.5mm以上1mm未満の場合を“2”、0.3mm以上0.5mm未満の場合を“3”、0.1mm以上0.3mm未満の場合を“4”、そして0.1mm未満であった場合を“5”とした。
【0093】
<考察>: 上記試験について以下のとおり説明できる。
【0094】
試料1は、伸長率194%で境界部の柔軟配線が断線してしまった。一方、応力集中箇所は外側の角部であったが、剥がれは中程度であった。試料2は、伸長率456%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。一方、応力集中箇所は突出部の外側の角部であり、剥がれの程度はやや大きかった。試料3は、伸長率176%と断線したときの伸長率が最も小さかった。応力集中箇所は中央の境界部分全体であり、応力集中箇所と柔軟配線が重なっていたため、境界部で極めて断線がしやすいものと思われる。応力集中箇所の剥がれは試料1よりも大きかった。試料4は、伸長率358%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の外側の角部であり、剥がれは中程度であった。
【0095】
試料5は、伸長率380%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の外側の角部であり、剥がれはやや大きかった。同形状の接続基板を用いた試料4と比べて、拡張部を備えないため、剥がれを抑制する効果がやや小さいためであると思われる。試料6は、伸長率425%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の外側の角部であり、剥がれは中程度であった。試料7は、伸長率396%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の内側の角部であるが、剥がれはやや小さかった。試料8は、伸長率460%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の外側の角部であり、剥がれは中程度であった。
【0096】
試料9は、伸長率435%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の外側の角部であり、剥がれは中程度であった。試料10は、伸長率411%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の外側の角部であり、剥がれは中程度であった。試料11は、伸長率392%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の頂点であり、剥がれはやや小さかった。試料12は、伸長率423%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の円弧の頂点付近であり、剥がれはやや小さかった。
【0097】
試料13は、伸長率383%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の外側の角部であり、剥がれはやや小さかった。試料14は、伸長率439%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の内側の角部であるが、剥がれはほとんど見られなかった。なお、伸長させたとき伸縮配線部材全体が湾曲していた。試料15は、伸長率442%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は突出部の内側の角部であるが、剥がれはほとんど見られなかった。なお、伸長させたとき伸縮配線部材全体が湾曲していた。試料16は、伸長率376%で断線したが、境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近の断線だった。応力集中箇所は外側の角部であった。本形態では、境界部のみではなく突出部の上面に至る極めて大きな剥がれが見られた。
【0098】
試料17は、伸長率383%で断線したが、柔軟基材と硬質基材の境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近が断線した。応力集中箇所は中央突出部両側の角部であり剥がれは中程度であった。そうした一方で、両端の突出部の剥がれは抑制されていた。
【0099】
試料18は、伸長率396%で断線したが、柔軟基材と硬質基材の境界部の伸長は抑えられており、柔軟基材の中央付近が断線した。応力集中箇所は伸長防止部材外側の角部であるが、剥がれはほとんど見られなかった。応力集中箇所近傍の柔軟基材の伸び率は硬質基材に突出部を設けただけのものより小さく伸長防止部材も突出部と共に柔軟基材の変形を抑制することにより、柔軟基材と硬質基材の境界部分の剥がれ難さを強めていると思われる。
【0100】
以上より、突出部が形成された試料2,4~15では、境界部近傍の伸び率が最大でも208%であり、突出部が形成されなかった試料1と試料3で、境界部近傍の伸び率が何れも300%を超えたのと比較して、この部位の伸び率が小さかったことが分かる。また、硬質基材の上面だけしか基体側柔軟基材で被覆していない試料16では、境界部近傍や応力集中箇所近傍での伸び率が大きいわけではないが、この試料16のみ剥がれの発生の観察において評価が1と最低になり、全試料の中で最も悪い結果となった。
【0101】
加えて、試料17及び試料18より、中央突出部を設けたり、伸長防止部材を設けたりすることで、柔軟基材と硬質基材の境界部の剥がれ難さを、これらの部位を設けない場合と比べて増大させることがわかる。
【符号の説明】
【0102】
1~5(5a~5o),6,7,7a 伸縮配線部材
10 基体
10c 内側
10d 外側
20 硬質基材
20a 上面
20b 下面
20h 固定部
21 突出部(第2の突出部)
21a 上面
21b 下面
21c 内側側面
21d 外側側面
21e 先端側面
21f 先端内側角部
21g 先端外側角部
T 先端(突出部の先端)
22 凹部
22a 上面
22b 下面
23 外側部
24 中央突出部(第1の突出部)
30 固定配線(導電配線)
40 基体側柔軟基材
50 基体側柔軟配線(導電配線)
60 伸長体
70 柔軟基材
75 拡張部
80 柔軟配線(導電配線)
90 伸長防止部材
F 応力
図1
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