(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】張力調整装置の取付部材
(51)【国際特許分類】
B60M 1/26 20060101AFI20230329BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20230329BHJP
H02G 7/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B60M1/26 Z
F16C11/04 F
H02G7/02
(21)【出願番号】P 2018231078
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】303059071
【氏名又は名称】独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】早坂 高雅
(72)【発明者】
【氏名】清水 政利
(72)【発明者】
【氏名】常本 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 琢
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】奈良場 勇人
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-046179(JP,U)
【文献】実開昭49-149405(JP,U)
【文献】特開2015-157615(JP,A)
【文献】特開2017-053128(JP,A)
【文献】実開昭58-019833(JP,U)
【文献】実開昭49-064796(JP,U)
【文献】米国特許第05036162(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/00 - 7/00
F16C 11/00 - 11/12
H02G 7/00 - 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に取り付けられる第1の部材と、電車線に接続される張力調整装置に取り付けられる第2の部材を備え、
前記第1の部材と前記第2の部材は水平方向と交差する方向に延びる回動軸によって互いに回動自在に組み付けられ
、
前記第2の部材は、前記張力調整装置に取り付ける本体部と、前記回動軸を組み付ける回動軸取付部を備え、前記本体部は、肉盗み部が形成されて水平断面が略H状に形成されていることを特徴とする取付部材。
【請求項2】
請求項1に記載の取付部材において、
前記第2の部材は、前記張力調整装置に水平方向に延びる第2の回動軸を介して回動自在に取り付けられていることを特徴とする取付部材。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の取付部材において、
前記第1の部材は、前記支柱への取付寸法を調整する隙間調整手段を備えることを特徴とする取付部材。
【請求項4】
請求項1から
3の何れか1項に記載の取付部材において、
前記第1の部材は、前記支柱に固定される固定部を少なくとも2以上備えることを特徴とする取付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に電力を供給するために必要な電車線の張力を調整する張力調整装置を支柱に取り付ける取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電車線は張力が変化するとパンタグラフから離線したり、応力が増大するという問題があり、これを防止するためにパンタグラフとの接触状態を維持するために適切な張力で架設されている必要がある。また、電車線の張力の変動の要因として、外気温などの変化による電車線の伸縮による張力の変動が考えられている。
【0003】
このような電車線の張力を調整する手段として、電車線の引き留め箇所に張力調整装置を設けることが行われており、当該張力調整装置によって、電車線の張力が適切となるように維持されている。このような張力調整装置は種々の形態が知られているが、例えば特許文献1に記載されているように、滑車式やばね式といった形式の張力調整装置が知られている。
【0004】
また、張力調整装置の中でもばね式の張力調整装置は、
図4に示すような略三角形状の取付金具100を介して支柱に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ばね式の張力調整装置は、滑車式に比べると保守性に優れる一方、支柱の上部に重量物が配置される構造であるため、地震時に電車線や支柱にかかる荷重の増大による設備破損が懸念される。これは張力調整装置が地震荷重で水平方向に動揺したことで、支柱に取り付ける支柱バンドに過大な荷重がかかることで設備破損に繋がることが考えられる。このような荷重が伝達する理由としては、従来の取付金具100は、略三角形状の板状の部材を用いていることが考えられる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、地震時に張力調整装置が動揺した場合に、支柱バンドに荷重が伝達しないようにして支柱バンドの破損を防ぐと共に、張力調整装置が動揺した場合の対策としてより重量増加を抑えることができる取付部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る取付部材は、支柱に取り付けられる第1の部材と、電車線に接続される張力調整装置に取り付けられる第2の部材を備え、前記第1の部材と前記第2の部材は水平方向と交差する方向に延びる回動軸によって互いに回動自在に組み付けられ、前記第2の部材は、前記張力調整装置に取り付ける本体部と、前記回動軸を組み付ける回動軸取付部を備え、前記本体部は、肉盗み部が形成されて水平断面が略H状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る取付部材において、前記第2の部材は、前記張力調整装置に水平方向に延びる第2の回動軸を介して回動自在に取り付けられていると好適である。
【0011】
また、本発明に係る取付部材において、前記第1の部材は、前記支柱への取付寸法を調整する隙間調整手段を備えると好適である。
【0012】
また、本発明に係る取付部材において、前記第1の部材は、前記支柱に固定される固定部を少なくとも2以上備えると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、取付部材が第1の部材と第2の部材とに分割して構成され、第1の部材と第2の部材とが回転軸によって互いに回動自在に組み付けられているので、地震などによって張力調整装置が動揺した場合に、支柱バンドに荷重が伝達しないようにして支柱バンドの破損を防ぐと共に、重量増加を抑えることができる。
【0014】
また、本発明によれば、第2の部材が第2の回転軸を備えているので、張力調整装置が動揺した場合に、回転軸と第2の回転軸とによってより確実に荷重を支柱バンドに伝達しないように構成することができる。
【0015】
また、本発明によれば、本体部が断面略H状に形成されているので、強度を維持しつつ取付部材の軽量化を図ることができる。
【0016】
また、本発明によれば、第1の部材に隙間調整手段を備えているので、支柱バンドを確実に第1の部材に取り付けることが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、第1の部材は、少なくとも2以上の固定部によって支柱に固定されているので、確実に支柱に張力調整装置を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る取付部材の取り付け状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る取付部材の取り付け状態を示す図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る取付部材の正面図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る取付部材の平面図であり、
図4は、従来の取付金具の正面図である。
【0021】
図1に示すように、張力調整装置1は、同軸状に配置された3つ筒部材である外側筒部材2と中央筒部材3と内側筒部材4とを備えている。
【0022】
外側筒部材2と中央筒部材3との径方向の隙間には、圧縮された状態にある第1のコイルばねが収められている。第1のコイルばねの一端は、中央筒部材3に形成された外側フランジ部に接触し、第1のコイルばねの他端は、外側筒部材2に形成された内側フランジ部に接触している。
【0023】
中央筒部材3と内側筒部材4との径方向の隙間には、圧縮された状態にある第2のコイルばねが収納されている。第2のコイルばねの一端は、内側筒部材4に形成された外側フランジ部に接触し、第2のコイルばねの他端は、中央筒部材3に形成された内側フランジ部に接触している。第1のコイルばねと第2のコイルばねが、筒部材と接触する部分には、両者間の相対的な滑りを阻害しないように潤滑剤であるグリスが塗布あるいは充填されている。潤滑剤は、潤滑機能を有するものであればグリスに限定されない。
【0024】
図1における内側筒部材4の端面には、電車線取付部材5が固定されている。電車線取付部材5は、ボルト孔を備え、このボルト孔を利用して電車線10が電車線取付部材5に取り付けられる。電車線としては、鉄道用の架線が挙げられるが、他の用途の電力用架空線、信号伝送用の架空線、支持用の架空線等であってもよい。
【0025】
また、張力調整装置1は、支持部6によって支柱11に支持されている。すなわち、支持部6のフランジ部が支柱11に支柱バンド12によって取り付けられた取付部材20によって押さえられ、支持部6が外側筒部材2に対して相対的に水平方向に動かないようにされている。
【0026】
さらに、外側筒部材2の上部には、棒状の吊り部材7の一端が取り付けられ、吊り部材7の他端は、支柱11の上部に支柱バンド12によって固定されている。
【0027】
図2に示すように、本実施形態に係る取付部材20は、支柱に取り付けられる第1の部材21と、電車線に接続される張力調整装置に取り付けられる第2の部材31とを備えている。第1の部材21と第2の部材31は、水平方向に交差する方向(
図1における鉛直方向)に沿って延びる回動軸22によって互いに回動自在に組み付けられている。なお、回動軸22は、ボルト状の部材であって、先端側にナット23が取り付けられて抜け止め機構を構成している。
【0028】
第1の部材21は、略T字状の部材であって、支柱に取り付けた支柱バンドを締結する固定部24が回動軸22の挿入方向に沿って複数形成されている。また、第1の部材21は、回動軸22が挿通可能な貫通孔26を備えた回動部25を備えている。
【0029】
第2の部材31は、第1の部材21の回動部25が組み付けられる回動軸取付部32と、張力調整装置に取り付けられる本体部33とを備えている。回動軸取付部32は、本体部33から水平に延びる一対の鍔部であって、該一対の鍔部間に第1の部材21の回動部25が組み付けられる。また、回動軸取付部32には、回動軸22が挿通可能な貫通孔37が形成され、回動部25の貫通孔26と同軸に組み付けることで、回動軸22が挿通可能に構成されている。
【0030】
本体部33は、
図1に示すように張力調整装置に水平方向に延びる第2の回動軸36が組み付けられる第2の回動軸挿入部34が形成され、該第2の回動軸挿入部34と回動軸取付部32との間に肉盗み部35が形成されている。このように、本体部33は、肉盗み部35が形成されているので、
図3に示すように、鉛直断面が略H状に形成されている。
【0031】
また、第1の部材21の固定部24には、ワッシャ状の隙間調整手段27を介して支柱バンド12が組み付けられると好適である。この隙間調整手段27によって、支柱バンド12の製造誤差などが生じた場合であっても確実に支柱バンド12と取付部材20との取付け面を適切に確保することが可能となる。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る取付部材20は、第1の部材21と第2の部材31とが回動軸22によって回動自在に組み付けられているので、地震などによって張力調整装置が動揺した場合であっても第1の部材21と第2の部材31とが回動軸22回りに回動することで荷重を逃がし、支柱や支柱バンドなどの装柱金具に加わる荷重を軽減して電車線設備の破壊を防止することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る取付部材20は、回動軸22と交差する水平方向に沿って延びる第2の回動軸36によって張力調整装置に組み付けられているので、回動軸22と第2の回動軸36の二軸で荷重を低減させることで鉛直方向及び水平方向といった複数の方向の荷重低減が可能となる。
【0034】
また、第2の部材31の本体部33には、肉盗み部35が形成されて鉛直断面形状が略H状に形成されているので、取付部材20の強度を確保したまま軽量化を図ることが可能となる。
【0035】
さらに、第1の部材21は、支柱に固定される固定部24が鉛直方向に沿って2以上形成されているので、取付部材20を支柱に確実に固定することが可能となる。
【0036】
なお、上述した実施形態において、固定部24は2つ形成した場合について説明を行ったが、2以上形成しても構わない。また、支柱バンドは、隙間調整手段27を介して第1の部材21に取り付けられる場合について説明を行ったが、第1の部材21の取付面が適切に確保できれば隙間調整手段27を用いなくとも構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1 張力調整装置
2 外側筒部材
3 中央筒部材
4 内側筒部材
5 電車線取付部
6 支持部
7 吊り部材
10 電車線
11 支柱
12 支柱バンド
20 取付部材
21 第1の部材
22 回動軸
23 ナット
24 固定部
25 回動部
26 貫通孔
27 隙間調整手段
31 第2の部材
32 回動軸取付部
33 本体部
34 第2の回動軸挿入部
35 肉盗み部
36 第2の回動軸。