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特許7252575広域エンテロウイルス抵抗性ポリペプチド及びその応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】広域エンテロウイルス抵抗性ポリペプチド及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/41 20060101AFI20230329BHJP
   C07K 14/085 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230329BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230329BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C12N15/41
C07K14/085 ZNA
C12N15/63 Z
C07K7/08
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P31/14
A61P17/00
A61P9/10
A61P25/00
A61K38/10
A61K38/16
A61K48/00
A61P31/16
A61P43/00 111
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020560535
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019072455
(87)【国際公開番号】W WO2019141263
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】201810056297.1
(32)【優先日】2018-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520266513
【氏名又は名称】中国科学院武漢病毒研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】505294816
【氏名又は名称】▲復▼旦大学
【氏名又は名称原語表記】Fundan University
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 渓
(72)【発明者】
【氏名】陸 路
(72)【発明者】
【氏名】方 媛
(72)【発明者】
【氏名】姜 世勃
(72)【発明者】
【氏名】劉 澤衆
(72)【発明者】
【氏名】秦 成峰
(72)【発明者】
【氏名】邱 洋
(72)【発明者】
【氏名】穆 敬芳
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529886(JP,A)
【文献】PLoS One,2015年,10(10):e0141415,doi: 10.1371/journal.pone.0141415
【文献】J Mol Biol,2003年,330(2):225-34,doi: 10.1016/s0022-2836(03)00577-1
【文献】Vaccine,2011年,Vol. 29,p. 4362-4372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/41
C07K 14/085
C12N 15/63
C07K 5/062
C07K 5/103
C07K 7/06
C07K 7/08
C07K 5/093
C07K 19/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
A61P 31/14
A61P 31/12
A61P 17/00
A61P 9/10
A61P 25/00
A61K 38/10
A61K 38/16
A61K 48/00
A61P 31/16
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID No.1~14のいずれか1つの配列で示されるポリペプチド。
【請求項2】
SEQ ID No.2~14からなる群より選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である、ことを特徴とする核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸を含む、ことを特徴とする組換えベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の組換えベクターを含む、ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項6】
請求項1に記載のポリペプチド及び薬学的に許容される添加物を含む、EV71、CVA16、CVB3、CVB5又はCVA6のエンテロウイルスによって引き起こされる疾患の予防又は治療のための薬物。
【請求項7】
前記エンテロウイルスによって引き起こされる疾患は、手足口病である、請求項に記載の薬物。
【請求項8】
エンテロウイルス71型の阻害剤であって、アミノ酸配列がSEQ ID No.2に示されるポリペプチドP2である阻害剤である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチドの改造体であって、前記改造体は、3A-TAT-EP、3A-EP-DRI又は3A-EP-PEG4-PAであり、前記3A-TAT-EPのアミノ酸配列がSEQ ID No.3に示され、3A-EP-DRIのアミノ酸配列がSEQ ID No.4に示され、3A-EP-PEG4-PAのアミノ酸配列がSEQ ID No.5に示される改造体。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本出願は、2018年01月20日に中国特許庁へ提出された、出願番号が2018100562971、発明の名称が「エンテロウイルス71型の阻害剤及びその応用」である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生物医薬の分野に関し、特に、広域エンテロウイルス抵抗性ポリペプチド及びその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
エンテロウイルス(Enterovirus)は、一本鎖プラス鎖RNAウイルスであり、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)エンテロウイルス属に属し、主にヒトエンテロウイルス(Enterovirus、EV)、コクサッキーウイルスA群(Coxsackie A virus、CVA)、コクサッキーウイルスB群(Coxsackie B virus、CVB)、エコーウイルス(Echovirus)、ライノウイルス(Rhinovirus)、ポリオウイルス(Poliovirus)などを含む。エンテロウイルス感染症は世界中に広く分布しており、軽度の微熱、疲労、呼吸器疾患からヘルパンギーナ、手足口病、重度の無菌性髄膜炎、心筋炎、脳炎、急性灰白髄炎まで、複雑で多様な臨床症状が見られる。現在、エンテロウイルス感染を効果的に治療または抵抗することができる対症療法薬が不足した。
ヘルパンギーナは、主に、コクサッキーウイルスA群2型(CVA2)、CVA4、CVA6、CVA9、CVA16、CVA22型、及びB群1型(CVB1)、CVB2、CVB3、CVB4、CVB5型によって引き起こされる。ヘルパンギーナは、急激な発熱になり、ほとんどの場合に軽度または中程度の発熱であり、時々40℃以上になり、ひいては、けいれんを引き起こすことが多い。発熱の病程は、約2~4日である。年長の子供は喉の痛みを訴え、嚥下に影響を与える可能性がある。乳幼児は唾液分泌、食事の拒否、落ち着きのなさを示す。頭痛、腹痛、筋肉痛を伴うこともある。5歳以下の子供の約25%は、嘔吐を伴うことがある。典型的な症状は咽頭に現れる。咽頭の充血を特徴とし、発症後2日内に口腔粘膜に小さな(直径1~2mm)灰白色のヘルペスが数個(少なくとも1~2個であり、10個以上に多くなり)現れ、その周囲に紅暈で囲まれる。2~3日後に紅暈は激しく拡大し、ヘルペスは破裂して黄色の潰瘍を形成する。このような粘膜疹は、扁桃腺の前柱に現れることが多く、軟口蓋、口蓋垂、及び扁桃腺上にも見られるが、歯肉及び頬粘膜に繋がらない。病程は、一般的に、4~6日であり、時々2週間遅れるものがある。
手足口病は、主に、エンテロウイルス71型(EV71)、CVA6、CVA8、CVA10、CVA16、CVB3及びCVB5によって引き起こされる。手足口病の一般的な臨床症状は、突然の発熱、口の痛み、食欲不振であり、口腔粘膜に散在するヘルペス又は潰瘍が現れ、舌、頬粘膜及び硬口蓋などにあることが多く、軟口蓋、歯肉、扁桃腺及び咽頭に繋がられてもよい。紅斑性丘疹は、手、足、臀部、腕部、下肢部に現れ、その後、ヘルペスに変換し、ヘルペスの周囲に炎症性紅暈があり、水疱内の水分が少ない。手及び足部には多くあり、手掌の裏面にもある。丘疹数は、少なくとも数個であり、数十個に多くなる。消退後に、痕跡や色素沈着が残らない。手足口病の一部の患児は、ヘルパンギーナを最初の症状とし、次いで、手掌、足裏、臀部などの部位に赤色丘疹が現れる。病程が急速に進行すると、少数の患児は、手足口病から重篤な無菌性髄膜炎、脳炎などを発症する可能性がある。発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、嘔吐後に伴う髄膜刺激症状を示し、体温は大きく変動し、ほとんどの場合には、低熱であり、40℃以上に高くなることもあり、二峰性発熱はしばしば病程で存在する。他の症状は、例えば、喉の痛み、筋肉の痛み、丘疹、光恐怖症、下痢、リンパ節腫脹などがあり、少数の患者は、軽度の麻痺が発生する可能性がある。
【0004】
心筋炎は、主に、CVB1-61及びEchovirusによって引き起こされる。ウイルス性心筋炎の患者の臨床症状は、病変の大きさ及び部位に依存し、軽症の場合には、症状がなく、重症の場合には、心不全、心原性ショック及び突然死が発生する可能性がある。患者は、発症の1~3週間前に上気道または腸管感染症の病歴があり、発熱、体の痛み、喉の痛み、疲労、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れ、そして、動悸、胸の圧迫感、胸の痛み又は前胸部痛、めまい、呼吸困難、浮腫が現れ、ひいては、アダムス・ストークス症候群を発症することが多く、心不全又は心原性ショックが現れる患者はごくわずかである。
エンテロウイルスは、一本鎖プラス鎖RNAウイルスであり、ゲノムサイズが約7.5kbであり、ポリタンパク質をコードできる大きなORFを含む。ポリタンパク質は、さらに4つの構造タンパク質(VP1-VP4)及び7つの非構造タンパク質(2A-2C及び3A-3D)に加水分解される。3Aタンパク質は、エンテロウイルス(EV71、CVA及びCVBなどを含み)で非常に保存されている非構造タンパク質であり、ホモ二量体として細胞内膜に存在し、ウイルスの複製及び宿主の自然免疫の調節に重要な役割を果たす。
ウイルス感染後に、宿主細胞は、一連の自然免疫機構を活性化して防御し、その防御は、RNA干渉(RNA interference、 RNAi)によって誘導される抗ウイルス防御を含む。ウイルスが宿主細胞に感染した後に、ウイルスゲノム自体の構造又は複製中間体により、ウイルスに由来する長鎖二本鎖RNA(double-stranded RNA、 dsRNA)が生成される。これらのdsRNAは、宿主細胞のDicerタンパク質によって認識され、ウイルス由来の低分子干渉RNA(viral small interfering RNA、 vsiRNA)に切断され、その後、vsiRNAがArgonaute (AGO)タンパク質と結合されて組み立てられ、RNA誘発サイレンシング複合体(RNA-induced silencing complex、 RISC)を形成し、最終的に、ウイルスの標的遺伝子RNAの分解を誘導するため、ウイルスの複製を抑制してウイルスを排除する目的を達成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、ポリペプチド及びその応用を提供する。
上記本発明の目的を達成するために、本発明は、以下の技術態様を提供する。即ち、
本発明は、ウイルス性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の調製における、標的としての抗エンテロウイルスタンパク質(Enterovirus RNA suppressing protein、ERSP)の応用を提供する。
本発明は、さらに、ERSPを標的とする阻害剤の調製におけるポリペプチドの応用を提供し、前記ERSPの機能は、前記ポリペプチドによって阻害され、ウイルスの核酸は、Dicerにより切断されてvsiRNAを生成する。
本発明は、さらに、ウイルス性疾患を予防及び治療するための薬物の調製におけるポリペプチドの応用を提供する。
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記ERSPは、エンテロウイルスの非構造タンパク質3Aである。
【0006】
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記エンテロウイルスは、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)エンテロウイルス属に属し、ヒトエンテロウイルス(Enterovirus、EV)、コクサッキーウイルスA型(Coxsackie A virus、CVA)、コクサッキーウイルスB型(Coxsackie B virus、CVB)、エコーウイルス(Echovirus)、ライノウイルス(Rhinovirus)、ポリオウイルス(Poliovirus)などを含む。
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記疾病は、前記ウイルスによって引き起こされる手足口病、心筋炎、ヘルパンギーナ、無菌性髄膜炎、脳炎、ウイルス性感冒などである。
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、CR、CK及び/又はDLLを含む。
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記ポリペプチドは、以下の配列を有する。
I:(X1) (X2)DLL、(X2)DLL(X3)、DLL(X3) (X4)
、(X5)YC(X6)、C(X6)。
(ここで、
X1は、イソロイシン(I)であり、
X2は、セリン(S)又はアラニン(A)から選ばれ、
X3は、アラニン(A)又はリシン(K)又はグルタミン(Q)又はアルギニン(R)又はセリン(S)又はシステイン(C)から選ばれ、
X4は、セリン(S)又はアラニン(A)から選ばれ、
X5は、グルタミン酸(E)又はグルタミン(Q)から選ばれ、
X6は、アルギニン(R)又はリシン(K)から選ばれる。)
或いは、II:Iに記載のアミノ酸配列において少なくとも1つのアミノ酸が欠失、挿入
又は置換されている配列、
或いは、III:I又はIIに記載のアミノ酸配列において少なくとも50%の同一性を有し、そしてERSP活性を阻害する配列、
或いは、IV:I又はII又はIIIに記載の配列に相補的な配列。
【0007】
本発明に記載の「アミノ酸」には、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸が含まれる。当業者によく知られているアミノ酸の全ては、本発明の保護範囲に含まれる。
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、Iに記載の配列は、SEQ ID No
.1~14のいずれか1つに示されるが、膜透過ペプチドの配列及びリンカーペプチドの配列が含まれない。
本発明は、さらに、ERSPの活性を阻害できるポリペプチドを提供する。
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、CR、CK及び/又はDLLを含む。
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、YCR及び/又はYCKを含む。
【0008】
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記ポリペプチドは、以下の配列を有する。
I:(X1) (X2)DLL、(X2)DLL(X3)、DLL(X3) (X4)
、(X5)YC(X6)、C(X6);
(ここで、
X1は、イソロイシン(I)であり、
X2は、セリン(S)又はアラニン(A)から選ばれ、
X3は、アラニン(A)又はリシン(K)又はグルタミン(Q)又はアルギニン(R)又はセリン(S)又はシステイン(C)から選ばれ、
X4は、セリン(S)又はアラニン(A)から選ばれ、
X5は、グルタミン酸(E)又はグルタミン(Q)から選ばれ、
X6は、アルギニン(R)又はリシン(K)から選ばれる。)
或いは、II:Iに記載の配列において少なくとも1つのアミノ酸が欠失、挿入又は置換
されている配列、
或いは、III:I又はIIに記載のアミノ酸配列において少なくとも50%の同一性を有し、そしてERSP活性を阻害する配列、
或いは、IV:I又はII又はIIIに記載の配列に相補的な配列。
【0009】
本発明の幾つかの具体的な実施態様において、前記ポリペプチドIに記載の配列は、S
EQ ID No.1~14のいずれか1つに示されるが、膜透過ペプチドの配列及びリンカーペプチドの配列が含まれない。
上記の研究に基づいて、本発明は、さらに、前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である核酸を提供する。
本発明は、さらに、前記核酸を含む組換えベクターを提供する。
それに基づいて、本発明は、さらに、前記組換えベクターを含む宿主細胞を提供する。
本発明は、さらに、前記ポリペプチド及び薬学的に許容される添加物を含む薬物を提供する。
本発明は、さらに、前記ポリペプチド及び薬学的に許容される添加物を含むワクチンを提供する。
本発明は、さらに、前記薬物を服用及び/又は注射する、エンテロウイルス感染症の治療方法を提供する。前記注射は、筋肉内注射、腹腔内注射又は静脈内注射である。
本発明は、さらに、前記ワクチンを接種する、エンテロウイルス感染症の予防方法を提供する。
【0010】
本発明では、「予防」という用語は、臨床基準によって認識される疾患の前に、疾患の様々な症状の発症又は進展を阻止又は低減するように、医学的、物理的または化学的方法を含む、疾患の発症又は進展を防止するための手段又は方法を意味する。
本発明では、「治療」という用語は、疾患の発症又は進展を阻止又は低減するように、病程の進展又は悪化を抑制、阻止、低減、改善、軽減、停止、遅延、または逆転することを意味し、記載された維持及び/又は投与中の疾患の、障害または病理学的状態のさまざまな指標は、症状又は合併症の軽減又は緩和、或いは、治愈又は消除疾患、障害又は病状の治癒又は消失を指す。
本発明では、「薬物」という用語は、ある疾患の予防又は治療に適用できる単一化合物、複数の化合物からなる組成物を意味し、或いは、単一化合物を主要な活性成分とする組成物又は製剤(formulation)、さらに、複数の化合物を活性成分とする組成物又は製剤である。「薬物」とは、各国の法律や規制に準拠し設立された行政機関によって承認されて生産された製品だけでなく、承認及び生産許可を取得するための過程で形成された単一化合物を活性成分として含有する様々な物質形態であることを理解すべきである。「形成」とは、化学合成、生物学的変換、または購入を通じて取得することを理解すべきである。
【0011】
本発明は、さらに、アミノ酸配列がSEQ ID NO.2に示されるポリペプチドP2であるエンテロウイルス71型の阻害剤を提供する。
本発明は、さらに、前記阻害剤により調製された改造体を提供し、前記改造体は、3A-TAT-EP、3A-EP-DRI又は3A-EP-PEG4-PAであり、前記3A-TAT-EPのアミノ酸配列はSEQ ID NO.3に示され、3A-EP-DRIの非天然アミノ酸配列は、SEQ ID NO.4に示され、3A-EP-PEG4-PAのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.5に示される。
さらに、本発明は、さらに、エンテロウイルス阻害剤の調製における前記阻害剤又は前記改造体の応用を提供する。
RNA干渉は、ウイルスに対する自然免疫機構である。RNA干渉によるウイルス抵抗過程では、ウイルスRNA複製によって生成された二本鎖RNAは、宿主Dicerタンパク質によって認識され、低分子干渉RNA(siRNA)に切断される。これらのウイルス由来低分子干渉RNA(vsiRNA)は、転送され、RNA誘導サイレンシング複合体に組み立てられ、相同性のあるウイルスRNAの分解を誘導するため、ウイルスに抵抗する目的を達成する。例えば、EV71の非構造タンパク質3Aは、ウイルス二本鎖RNAに結合することによりDicerの切断を防止し、vsiRNAウイルス由来低分子干渉RNAの生成を阻害することができるため、RNA干渉による抗ウイルス自然免疫を回避する目的を達成する。
本発明で提供されるポリペプチドは、効率良く、広域の抗ウイルス活性を有する。これは、EV71ウイルス、CVA16ウイルス、CVA6ウイルス、CVB3ウイルス、CVB5ウイルスの予防及び制御のために新しい戦略を提供するとともに、抗ヒトエンテロウイルス71型、CVA16ウイルス、CVB3ウイルス、CVB5ウイルスに抵抗するポリペプチド低分子薬物の研究及び開発を加速するために新しい理論的基盤も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、ポリペプチドP2が細胞膜を透過し細胞質基質に入ることを標識により検出した結果を示す。
図1B図1Bは、ポリペプチドP2が細胞膜を透過し細胞質基質に入ることを標識により検出した結果を示す。
図2図2は、CCK-8によりポリペプチドP2の細胞毒性を測定した結果を示す。
図3図3は、RD細胞内のポリペプチドP2の抗ウイルス効果を示す。
図4A図4Aは、複数種の細胞内のウイルスに対するポリペプチドP2の阻害効果を示す。
図4B図4Bは、複数種の細胞内のウイルスに対するポリペプチドP2の阻害効果を示す。
図4C図4Cは、複数種の細胞内のウイルスに対するポリペプチドP2の阻害効果を示す。
図5図5は、ポリペプチドP2の改造後のポリペプチドの抗ウイルス效果を示す。
図6図6は、ポリペプチド3A-EP-DRI及び3A-TAT-EPの抗ウイルス效果を示す。
図7図7は、マウス体内のEV71に対するポリペプチドP1の抗ウイルス活性の検出結果を示す。
図8図8は、マウス体内のCVA16に対するポリペプチドP1の抗ウイルス活性の検出結果を示す。
図9図9は、RD細胞中のポリペプチドCRの抗EV71活性の検出結果を示す。
図10図10は、マウス体内のEV71に対するポリペプチドCRの抗ウイルス活性の結果を示す。
図11図11は、マウス体内のCVA16に対するポリペプチドCRの抗ウイルス活性の結果を示す。
図12図12は、マウス体内のポリペプチドER-DRIの毒性評価の体重測定結果を示す。
図13図13は、マウス体内のポリペプチドER-DRIの毒性評価のHE染色結果を示す。
図14図14は、RD細胞中のポリペプチドP1の細胞膜透過効率の検出結果を示す。
図15図15は、ポリペプチドP1の細胞毒性試験の結果を示す。
図16図16は、ポリペプチド3A-TAT-EPの細胞毒性試験の結果を示す。
図17図17は、ポリペプチド3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAの細胞毒性試験の結果を示す。
図18図18は、ポリペプチドEP-PA、EP-CHOL、3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAの抗ウイルス效果の検出結果を示す。
図19図19は、RD細胞中のポリペプチドER-DRI及びERの細胞毒性試験の結果を示す。
図20図20は、RD細胞中のポリペプチドER-DRI及びERの抗EV71ウイルス効果の検出結果を示す。
図21図21は、マウス体内でEV71に対するポリペプチドER-DRIの抗ウイルス活性の検出結果を示す。
図22図22は、ポリペプチドP2、ER、ER-DRI、R8及びTATの抗CVA16ウイルス効果の検出結果を示す。
図23図23は、RD細胞中のポリペプチドBP8、BP10及びBP15の細胞毒性試験の結果を示す。
図24図24は、Vero細胞中のポリペプチドBP8、BP10及びBP15の細胞毒性試験の結果を示す。
図25図25は、RD細胞中のポリペプチドBP8、BP10及びBP15の抗CVB5効果の検出結果を示す。
図26図26は、Vero細胞中のポリペプチドBP8の抗CVB3効果の検出結果を示す。
図27図27は、マウス体内のポリペプチドBP8の抗CVB5効果の検出結果を示す。
図28図28は、Vero細胞中のポリペプチドER-DRIの抗CVA6効果の検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリペプチド及びその応用を開示しており、当業者にとっては、本明細書を参照し、プロセスパラメーターを適切に改良して達成することができる。特に、すべての類似した置換及び変更は、当業者にとっては明らかになり、それらはすべて本発明に含まれることを理解すべきである。本発明に係る方法及び応用は、好ましい実施例を記載し、当業者にとっては、本発明の内容、精神、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及び応用を改良し、又は適当な変更及び組み合わせを加え、本発明の技術を実現及び適用することができることは明らかである。
EV71 3Aタンパク質は、86個のアミノ酸残基を含む。3Aは、二量体化する能力があり、その二量体化は、3Aの正確な機能に重要な役割を果たす。出願人は、3A二量体化ドメインの2つの螺旋構造の構成及び配列特徴に基づいて、EPポリペプチド配列(SEQ ID NO.1に示される)を設計し、その配列は、EV71非構造タンパク質3Aに結合し、3Aタンパク質二量体の形成を妨げることができるため、ウイルスの複製及び感染を阻害する。
上記の考え方に基づいて、出願人は、該阻害剤が細胞膜を通過して細胞内に入ることによりウイルスへの阻害作用を果たすために、EPポリペプチドをコア配列とし、ポリペプチドP2(SEQ ID NO.2に示される)を設計し、そのポリペプチドP2は、α1と競争的に相互作用することができるため、3Aの二量体化を阻止し、3Aタンパクの抗自然免疫を阻害する役割を果たし、最終的に抗ウイルスの目的を達成する。
【0014】
出願人は、さらに、ポリペプチドP2に基づいてその構造を改造し、一連の改造体を構築し、試験により、改造されたポリペプチドP2は、ウイルスへの阻害効果を向上させ、ヒトエンテロウイルスに対する予防、制御及び治療に非常に重要であることが確認されている。
前記改造体は、3A-TAT-EP、3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAであり、前記3A-TAT-EPのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.3に示され、3A-EP-DRIのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.4に示され、3A-EP-PEG4-PAのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.5に示される。
エンテロウイルス71型の阻害剤の応用においては、本発明で提供されるP2及びP2改造体によりエンテロウイルス71型の阻害剤を調製すること、又は本発明で提供されるP2及びP2改造体を他の有効成分とともにエンテロウイルス71型の阻害剤を調製することを含む。
【0015】
本発明で保護されるものは、P2ポリペプチドに基づいて、それに異なる細胞膜透過性配列を置換するか、又はポリペプチドを修飾するか、又は非天然アミノ酸の設計及び改造を行った後にEV71の阻害活性を有する阻害剤である。
エンテロウイルス3Aタンパクは、ウイルスdsRNAに結合してDicerによる切断を阻止し、ウイルス由来vsiRNAの産生を阻害し、宿主のRNAiによる抗ウイルス免疫に抵抗することができる効率的なERSPである。
本発明に係るポリペプチド及びその誘導体は、エンテロウイルス3Aの抗ウイルス免疫力を阻害することができ、新たなEV71治療薬であり、新しい標的については、抗ウイルス薬の薬剤耐性などに非常に重要である。
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する。
P2系ポリペプチドは、効率よい抗ウイルス活性を持つ。これは、エンテロウイルスの予防及び制御のために新しい戦略を提供するとともに、抗ヒトエンテロウイルスポリペプチド低分子薬物の研究及び開発を加速するために新しい理論的基盤も提供する。また、P2系ポリペプチドの明確な抗ウイルスメカニズムは、その応用の安全性及び最適化方法の明確さを保証し、将来のさらなる開発に便利である。
【0016】
本発明により提供されるポリペプチドを、表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
本発明では、ポリペプチド配列のうち、RRRRRRRR(R8)、YGRKKRRQRRR(TAT)は膜透過ペプチドであり、GSGはリンカーペプチドであり、各ポリペプチドのアミノ酸配列が前記膜透過ペプチド及びリンカーペプチドの配列を除いたものは、コア配列である。本発明の各実施例におけるポリペプチドは、本発明で提供されるポリペプチドのコア配列が対応する抗ウイルス効果を有するを証明するために、陰性対照が設けられる。
本発明で提供されるポリペプチド及びその応用に使用される原料及び試薬は、いずれも市販品を購入できる。
以下、実施例と組み合わせて本発明をさらに説明する。
【実施例
【0019】
実施例1:ポリペプチドP2の細胞膜透過効率の検出
1.材料:
MEM培地(Thermo)、血清(Gibco)は、Invitrogen社から購入され、免疫蛍光用ディッシュ(NEST)は、プロモーター公司から購入され、PBS、DAPI、パラホルムアルデヒドは、迪躍創新公司から購入された。
ポリペプチドP2は、南京金斯瑞公司により合成され、その配列がSEQ ID NO.2に示された。
2.実験手順
実験は、2つの群に分けられ、EV71ウイルスの添加によるペプチドの細胞内移行に与える影響を回避するために、1つの実験群ではEV71ウイルスを添加した後、ポリペプチドP2を加え、別の実験群ではウイルスを添加ずにポリペプチドのみを加え、また、各群では、陰性対照を用意した。
免疫蛍光の手順は、以下の通りである。
(1)RD細胞1mlを免疫蛍光用ディッシュに敷き、30%コンフルエントに達したら、試料を収集した。
(2)培地を吸引し、0.01mol/L、pH7.4のPBS 1mlで残った培地を3回、各回5分間洗い流した。
(3)4%パラホルムアルデヒド溶液を調製し、PBS 100mlにパラホルムアルデヒド4gを溶解させた。調製された4%パラホルムアルデヒド 1mlを各ディッシュに加え、細胞を固定するために、5min反応させた。
(4)4%パラホルムアルデヒドを吸引し、さらに、0.01mol/L、pH7.4のPBS 1mlで残ったパラホルムアルデヒドを3回、各回5分間洗い流した。
(5)1mg/mlのDAPI溶液をPBSで100ng/mlに希釈し、ディッシュに加え、15min反応させた。
(6)反応液を吸引し、1ml 0.01mol/L、pH7.4のPBSを再度追加し、残った反応液を3回、各回5分間洗い流した。
(7)ディッシュを蛍光顕微鏡下で観察した。
蛍光標識(FITC)付きポリペプチドを使用し、RD細胞のその細胞膜透過効率を検出した。2群の実験を個別に設定し、第1群は、未処理対照群であり、それぞれR8及びP2を加え、第2群は、EV71感染群であり、EV71感染後に、さらに、それぞれR8、P2を加えた。2群の実験は同時に実行され、ウイルスMOI(Multiplicity of Infection,感染多重度)=0.1であり、濃度1μMであるポリペプチドを加えた。ポリペプチドを添加してから12時間後、試料を収集し、細胞を固定して免疫蛍光染色を行い、細胞核をDAPI溶液で染色した。結果は、ポリペプチドは、感染又は非感染の条件下で、いずれも細胞に入ることができ、優れた細胞膜透過能を持つことを示した。
図1に示すように、ウイルス添加又は無添加の細胞では、いずれもポリペプチドの細胞内移行が観察され、ポリペプチドP2は優れた細胞膜透過能を持つことを証明した。
【0020】
実施例2:ポリペプチドP2の細胞毒性測定
1.実験材料
CCK-8試薬(MCE)は、プロモーター公司から購入された。
2.実験手順
ポリペプチドP2は、ウイルスに抵抗する過程でウイルスを阻害できるだけでなく、細胞毒性がないことを確認する必要がある。従って、その指標を細胞毒性試験により検出し、未処理の細胞を対照群として使用した。
具体的な手順は、以下の通りである。
(1)RD細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり100μl播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、ウェルのP2の最終濃度がそれぞれ0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、100μMになるように一定の濃度勾配でポリペプチドP2を加えた。
(3)ポリペプチドを添加してから24h後に試料を収集し、生細胞検出試薬CCK-8を1ウェルあたり10μl加え、均一に混合した。
(4)37℃で2h静置した。
(5)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。
結果は、図2、表2に示され、未処理細胞の細胞生存率を100%とし、ポリペプチド100μMを加えた後に細胞生存率は、対照群(未処理細胞)と有意差がなく、本研究で使用されるポリペプチドP2は、100μM以内でいずれも細胞毒性がないことが証明されている。
【0021】
【表2】
【0022】
実施例3:ポリペプチドの抗ウイルス効果の測定
1.材料
トータルRNA抽出キット(Omega)、24ウェルプレート、100mmディッシュ、50ml注射器は、迪躍創新公司から購入され、孔径0.22μmのメンブレンフィルター(Millipore)は、飛げい公司から購入され、ワンステップqRT-PCRキット(Takara)は、友名公司から購入され、RNA抽出及びqRT-PCRプロセスで使用される水はDEPC水であり、実験は全体としてRNaseフリーの環境で実行された。
2.ウイルスの増幅
(1)RD細胞を5つの100mmディッシュに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、1μlの107PFU/mlのEV71ウイルス、CVA16ウイルス、CVB3ウイルス、CVB5ウイルスを加えた。
(3)2日間後に、細胞にCPE(細胞変性効果)現象が発生するか否かを観察し、病変現象が明らかになると試料を収集した。
(4)100mm ディッシュ中の上清を15ml 遠心チューブに吸引し、500g、5min遠心した。
(5)次いで、上清を別の15ml 遠心チューブに採取し、50ml 注射器及び0.22μmのメンブレンフィルターでろ過して滅菌した。
(6)ウイルス抽出RNA 100μlを採取して前に抽出された既知力価のウイルスRNAとともにワンステップqRT-PCRを実行し、ウイルスの力価を測定した。
【0023】
3.RD細胞のポリペプチドの抗ウイルス効果の測定
(1)それぞれ異なる細胞を24ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し(1ウェルあたりの2%血清含有MEM培地の添加量は、0.5mlである)、各ウェルに106PFU/mL EV71ウイルス 5μlを加えた。
(3)1時間後、それぞれ最終濃度が0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、50μMである異なるポリペプチドを加えた。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に試料を収集し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
(5)上清を捨て、ウェルにTRK細胞溶解液350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(6)次に、ウェルに70%エタノール(DEPC)350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(7)ウェルから溶液を取り出し、RNA抽出用カラムに移し、12000gで1min遠心した。
(8)回収チューブ中の溶液をカラムに再度ロードし、12000gで1min遠心した。
(9)RNA洗浄バッファー1を加え、12000gで30s遠心した。
(10)RNA洗浄バッファー2を加え、12000gで1min遠心した。
(11)ステップ(10)を繰り返した。
(12)洗浄バッファーを加えずカラムを12000gで2min遠心し、残留RNA洗浄バッファーを完全に除去した。
(13)DEPC水 50μlを加え、12000gで2min遠心した。
(14)RNAサンプル 2μlを採取し、ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
R8膜透過ペプチド(配列:RRRRRRRR)が挿入されたRD細胞を陰性対照とした。
【0024】
結果は、図3、表3に示され、EV71ウイルス感染したものにR8が加えられた実験群ウイルスRNAの量を100%とし、ポリペプチドP2を加えた後、ポリペプチド濃度が高くなるとウイルス量が低減し、ポリペプチド濃度が50μMになると、ウイルス量は約4%に低下し、ポリペプチドP2が良い抗ウイルス効果を有することを証明し、qRT-PCR法によりウイルス力価を検出し、P2のIC50値が6.372μMとして測定され、図2と組み合わせると、ポリペプチドP2は、100μM以内で細胞毒性を示さないため、薬物の安全性を前提として、ポリペプチドは優れた抗ウイルス効果を奏することが証明された。
【0025】
【表3】
【0026】
RD細胞を使用してポリペプチドP2の抗ウイルス效果を検出し、80%コンフルエントのRD細胞にEV71(MOI=0.1)を加え、1時間感染後、濃度がそれぞれ0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、50μMになるように、それぞれ特定の濃度勾配でポリペプチドP2を加えた。24時間後に試料を収集し、細胞全RNAを抽出し、qRT-PCRにより検出ウイルスゲノムRNAの発現レベルを検出し、膜透過ペプチドR8が加えられたサンプルのみに感染したものを対照群とした。結果は、ポリペプチド濃度が増加するに伴い、ウイルスRNAの発現レベルは有意に低下し、ポリペプチドP2が有意な抗EV71活性を有することを証明した。
【0027】
実施例4:複数種の細胞のポリペプチドP2の抗ウイルス効果の測定
1.材料
HEK293T、Vero、Huh7.5細胞
2.複数種の細胞のポリペプチドP2の抗ウイルス効果の測定
(1)293T細胞、Vero細胞及びHuh7.5細胞を24ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し(1ウェルあたりの2%血清含有MEM培地の添加量は0.5mlである)、各ウェルに106 PFU/ml EV71ウイルス 5μlを加えた。
(3)1時間後、それぞれ異なる細胞に最終濃度が0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、50μMであるポリペプチドP2を加えた。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に試料を収集し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
(5)上清を捨て、ウェルにTRK細胞溶解液350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(6)次いで、ウェルに70%エタノール(DEPC)350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(7)ウェルから溶液を取り出し、RNA抽出用カラムに移し、12000gで1min遠心した。
(8)回収チューブ中の溶液をカラムに再度ロードし、12000gで1min遠心した。
(9)RNA洗浄バッファー1を加え、12000gで30s遠心した。
(10)RNA洗浄バッファー2を加え、12000gで1min遠心した。
(11)ステップ(10)を繰り返した。
(12)洗浄バッファーを加えずカラムを12000gで2min遠心し、残留RNA洗浄バッファーを完全に除去した。
(13)DEPC水 50μlを加え、12000gで2min遠心した。
(14)RNAサンプル2μlを採取し、ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
図4より、RD細胞、293T細胞、Vero細胞又はhuh7.5細胞のいずれにも、ポリペプチドP2はいずれも有意な抗ウイルス效果を奏することことがわかった。
293T細胞、Vero細胞、Hμh7.5細胞で測定されたIC50値は、それぞれ9.677μM、1.958μM、1.842μMである。
【0028】
実施例5:抗ウイルス効果に対するポリペプチドP2の改造体の影響
1.材料
ポリペプチドは3A-TAT-EP(SEQ ID NO.3に示す)、3A-EP-DRI(SEQ ID NO.4に示す)及び3A-EP-PEG4-PA (SEQ ID NO.5に示す)を採用した。かかるポリペプチドは、いずれも商業的に合成されたものである。
2.抗ウイルス效果に対するポリペプチドP2の改造体の影響
(1)293T細胞を24ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し(1ウェルあたりの2%血清含有MEM培地の添加量は0.5mlである)、各ウェルに106 PFU/ml EV71ウイルス 5μlを加えた。
(3)1時間後、ポリペプチドP2、3A-TAT-EP、3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG-PAをそれぞれ最終濃度0.01μM、0.1μM、1μM、10μMで加えた。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に試料を収集し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
(5)上清を捨て、ウェルにTRK細胞溶解液350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(6)次いで、ウェルに70%エタノール(DEPC)350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(7)ウェルから溶液を取り出し、RNA抽出用カラムに移し、12000gで1min遠心した。
(8)回収チューブ中の溶液をカラムに再度ロードし、12000gで1min遠心した。
(9)RNA洗浄バッファー1を加え、12000gで30s遠心した。
(10)RNA洗浄バッファー2を加え、12000gで1min遠心した。
(11)ステップ(10)を繰り返した。
(12)洗浄バッファーを加えずカラムを12000gで2min遠心し、残留RNA洗浄バッファーを完全に除去した。
(13)DEPC水 50μlを加え、12000gで2min遠心した。
(14)RNAサンプル2μlを採取し、ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
【0029】
3.RD細胞の3A-TAT-EP及び3A-EP-DRIのCCK8キットによるウイルス阻害活性の検出
(1)まず、増殖状態が良いRD細胞を96ウェルプレートに播種し、各ウェルに1×104個、37℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。
(2)2%FBS含有MEMを使用してポリペプチド薬物(3A-TAT-EP及び3A-EP-DRI)を2倍段階希釈し、希釈濃度は40μM、20μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μM、0.313μMであり、1ウェルあたり100μl、別の96ウェルプレートに加え、各濃度は3点測定(Triplicate)を行った。
(3)希釈されたウイルスを上記ウェルに1ウェルあたり100μL加え、薬物無添加・ウイルス無添加ウェル及び薬物無添加・ウイルス添加ウェルをそれぞれ対照とし、ウイルスの最終濃度は、0.1 MOIである。
(4)混合物を細胞が播種された96ウェルプレートに移し、37℃、5%CO2の条件下で24時間培養した後、CCK8キットによりウイルスに対するポリペプチドの阻害活性を測定した。
(5)ウイルス感染に対するさまざまな濃度のポリペプチドの阻害率は、次の式を使用して計算されました。
阻害率=(処理されたODウェル-ウイルスのみ添加ODウェル)×100%/(未処理ODウェル-ウイルスのみ添加ODウェル)。ここで、ODはOD450-OD630の値を指す。
結果は、図5に示され、ポリペプチドP2から改造されたポリペプチド3A-TAT-EP(SEQ ID NO.3に示す)、3A-EP-DRI(SEQ ID NO.4に示す)及び3A-EP-PEG4-PA (SEQ ID NO.5に示す)は、いずれもEV71阻害剤として作用を発揮し、またウイルスへの阻害を向上させる効果を奏することもできる。qRT-PCRにより測定された3A-EP-PEG4-PAのIC50は3.25μMである。
図6では、CCK8キットによるポリペプチドのウイルス阻害活性の測定は、3A-TAT-EPのIC50は4.36μMであり、3A-EP-DRIのIC50は3.56μMであることを示した。
【0030】
実施例6:ポリペプチドP1の細胞膜透過効率の検出
1.材料:
MEM培地(Thermo)、血清(Gibco)は、Invitrogen社から購入され、免疫蛍光用ディッシュ(NEST)は、プロモーター公司から購入され、PBS、DAPI、パラホルムアルデヒドは、迪躍創新公司から購入された。
ポリペプチドP1は、南京金斯瑞公司により合成され、その配列はSEQ ID NO.6に示された。
2.実験手順
実験は、2つの群に分けられ、EV71ウイルスの添加によるペプチドの細胞内移行に与える影響を回避するために、1つの実験群ではEV71ウイルスを添加してからポリペプチドP1を加え、別の実験群ではウイルスを添加せずポリペプチドのみを加え、また、各群では、陰性対照を用意した。
免疫蛍光染色の手順は、以下の通りである。:
(1)RD細胞1mlを免疫蛍光用ディッシュに敷き、30%コンフルエントに達したら試料を収集した。
(2)培地を吸引し、0.01mol/L、pH7.4のPBS 1mlで残った培地を3回、各回5分間洗い流した。
(3)4%パラホルムアルデヒド溶液を調製し、パラホルムアルデヒド4gをPBS 100mlに溶解させた。調製された4%パラホルムアルデヒド1mlを各ディッシュに加え、5min反応させ、細胞を固定化した。
(4)4%パラホルムアルデヒドを吸引し、さらに、0.01mol/L、pH7.4のPBS 1mlで残ったパラホルムアルデヒドを3回、各回5分間洗い流した。
(5)1mg/mlのDAPI溶液をPBSで100ng/mlに希釈し、ディッシュに加え、15min反応させた。
(6)反応液を吸引し、0.01mol/L、pH7.4のPBS 1mlを再度追加し、残った反応液を3回、各回5分間洗い流した。
(7)ディッシュを蛍光顕微鏡下で観察した。
蛍光標識(FITC)付きポリペプチドを使用し、RD細胞のその細胞膜透過効率を検出した。2群の実験を個別に設定し、第1群は、未処理対照群であり、それぞれR8、P1及びP2を加え、第2群は、EV71感染群であり、EV71感染後に、さらに、それぞれR8、P1及びP2を加えた。2群の実験は同時に実行され、ウイルスMOI(Multiplicity of Infection,感染多重度)=0.1であり、濃度1μMであるポリペプチドを加えた。ポリペプチドを添加してから12時間後に試料を収集し、細胞を固定化して免疫蛍光染色を行い、細胞核をDAPI溶液で染色した。結果は、ポリペプチドは、感染又は非感染の条件下で、いずれも細胞に入ることができ、優れた細胞膜透過能を持つことを示した。
図14に示すように、ウイルス添加又は無添加の細胞では、いずれもポリペプチドの細胞内移行が観察され、ポリペプチドP1は優れた細胞膜透過能を持つことを証明した。
【0031】
実施例7:ポリペプチドP1の細胞毒性測定
1.実験材料
CCK-8試薬(MCE)は、プロモーター公司から購入された。
2.実験手順
ポリペプチドP1は、ウイルスに抵抗する過程でウイルスを阻害できるだけでなく、細胞毒性がないことを確認する必要がある。従って、その指標を細胞毒性試験により検出し、未処理の細胞を対照群として使用した。
具体的な手順は、以下の通りである。
(1)RD細胞を96ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり100μLである。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、ウェル中のP1最終濃度がそれぞれ0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、100μMになるように、一定の濃度勾配でポリペプチドP1を加えた。
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後に試料を収集し、各ウェルに生細胞検出試薬CCK-8 10μlを加え、均一に混合した。
(4)37℃で2h静置した。
(5)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。
【0032】
結果は、図15及表4に示され、未処理細胞の細胞生存率を100%として、100μM ポリペプチドを加えた細胞生存率は対照群と有意差がなく、本研究で使用されるポリペプチドP1は100μM以内で細胞毒性がないことを証明した。
【0033】
【表4】
【0034】
RD細胞を使用してポリペプチドP1の細胞毒性を検出し、80%コンフルエントのRD細胞では、濃度勾配でポリペプチドP1を加え、濃度はそれぞれ0μM(対照群)、0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、100μMであり、各濃度勾配ごとに3つの並行実験が設けられた。24時間後に試料を収集し、CCK-8キットにより細胞活性を検出した。結果は、100μM ポリペプチドP1を加えた細胞生存率は対照群と有意差がなく、ポリペプチドP1は100μM以内で細胞毒性がないことを証明した。
【0035】
実施例8:ポリペプチド3A-TAT-EPの細胞毒性測定
1.実験材料
CCK-8試薬(MCE)は、プロモーター公司から購入された。
2.実験手順
ポリペプチド3A-TAT-EPは、ウイルスに抵抗する過程でウイルスを阻害できるだけでなく、細胞毒性がないことを確認する必要がある。従って、その指標を細胞毒性試験により検出し、未処理の細胞を対照群として使用した。
具体的な手順は、以下の通りである。
(1)RD細胞を96ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり100μLである。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、ウェル中のEP最終濃度がそれぞれ0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、100μMになるように、一定の濃度勾配でポリペプチドEPを加えた。
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後に試料を収集し、各ウェルに生細胞検出試薬CCK-8 10μlを加え、均一に混合した。
(4)37℃で2h静置した。
(5)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。
【0036】
結果は、図16及表5に示され、未処理細胞の細胞生存率を100%として、ポリペプチド100μMを加えた細胞生存率は対照群(未処理細胞)と有意差がなく、本研究で使用されるポリペプチド3A-TAT-EPは100μM以内で細胞毒性がないことを証明した。
【0037】
【表5】
【0038】
RD細胞を使用してポリペプチド3A-TAT-EPの細胞毒性を検出し、80%コンフルエントのRD細胞では、濃度勾配でポリペプチド3A-TAT-EPを加え、濃度はそれぞれ0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、100μMであり、各濃度勾配ごとに3つの並行実験が設けられた。24時間後に試料を収集し、CCK-8キットにより細胞活性を検出した。結果は、未処理細胞の細胞活性を100%とし、ポリペプチド3A-TAT-EP 100μMを加えた細胞生存率は、未処理対照群と基本的に一致しており、ポリペプチド3A-TAT-EPは100μM以内で細胞毒性がないことを証明した。
【0039】
実施例9:ポリペプチド3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAの細胞毒性測定
1.実験材料
CCK-8試薬(MCE)は、プロモーター公司から購入された。
2.実験手順
ポリペプチド3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAは、ウイルスに抵抗する過程でウイルスを阻害できるだけでなく、細胞毒性がないことを確認する必要がある。従って、その指標を細胞毒性試験により検出し、未処理の細胞を対照群として使用した。
具体的な手順は、以下の通りである。
(1)RD細胞を96ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり100μLである。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、ウェル中の3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PA最終濃度がそれぞれ0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μMになるように、一定の濃度勾配でポリペプチド3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAを加えた。
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後に試料を収集し、各ウェルに生細胞検出試薬CCK-8 10μlを加え、均一に混合した。
(4)37℃で2h静置した。
(5)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。
【0040】
結果は、図17及表6に示され、未処理細胞の細胞生存率を100%として、ポリペプチド100μMを加えた細胞生存率は対照群(未処理細胞)と基本的に一致しており、本研究で使用されるポリペプチド3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAは50μM以内で細胞毒性がないことを証明した。
【0041】
【表6】
【0042】
RD細胞を使用してポリペプチド3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAの細胞毒性を検出し、80%コンフルエントのRD細胞では、それぞれ濃度勾配でポリペプチドEP-DRI及びEP-PEG4-PAを加え、濃度はそれぞれ0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μMである。24時間後に試料を収集し、CCK-8キットにより細胞活性を検出した。結果は、ポリペプチド 50μMを加えた細胞生存率は対照群と基本的に一致しており、ポリペプチド3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAは50μM以内で細胞毒性がないことを証明した。
【0043】
実施例10:ポリペプチドの抗ウイルス効果の測定
1.材料
トータルRNA抽出キット(Omega)、24ウェルプレート 、100mmディッシュ、50ml注射器は、迪躍創新公司から購入され、0.22μmのメンブレンフィルター(Millipore)は飛げい公司から購入され、ワンステップqRT-PCRキット(Takara)は友名公司から購入され、RNA抽出及びqRT-PCRプロセスで使用される水はDEPC水であり、実験は全体として在RNaseフリーの環境で実行された。
2.ウイルスの増幅:
(1)RD細胞を5つの100mmディッシュに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、107 PFU/mlのEV71ウイルス 1μlを加えた。
(3)2日間後、細胞にCPE(細胞変性効果)現象が発生するか否かを観察し、病変現象が明らかになる時に試料を収集した。
(4)100mmディッシュ中の上清を15ml 遠心チューブに吸引し、500g、5minで遠心した。
(5)次いで、上清を採取して別の新しい15ml 遠心チューブに入れ、50ml 注射器及び0.22μmのメンブレンフィルターでろ過して滅菌した。
(6)ウイルス抽出RNA100μlを採取して前に抽出された既知力価のウイルスRNAとともにワンステップqRT-PCRを実行し、ウイルス力価を測定した。
【0044】
3.複数種の細胞のポリペプチドの抗ウイルス効果の測定
(1)それぞれ異なる細胞を24ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し(1ウェルあたりの2%血清含有MEM培地の添加量は0.5mlである)、各ウェルに106 PFU/mL EV71ウイルス 5μlを加えた。
(3)1時間後、それぞれ最終濃度が0.01μM、0.1μM、1μM、10μMである異なるポリペプチドを加えた。ポリペプチド無添加群を対照とした。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に試料を収集し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
(5)上清を捨て、ウェルにTRK細胞溶解液350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(6)さらに、ウェル中に70%エタノール(DEPC)350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(7)ウェルから溶液を取り出し、RNA抽出用カラムに移し、12000gで1min遠心した。
(8)回収チューブ中の溶液をカラムに再度ロードし、12000gで1min遠心した。
(9)RNA洗浄バッファー1を加え、12000gで30s遠心した。
(10)RNA洗浄バッファー2を加え、12000gで1min遠心した。
(11)ステップ(10)を繰り返した。
(12)洗浄バッファーを加えずカラムを12000gで2min遠心し、残留RNA洗浄バッファーを完全に除去した。
(13)DEPC水 50μlを加え、12000gで2min遠心した。
(14)RNAサンプル2μlを採取し、ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
【0045】
ポリペプチドEP-PA、EP-CHOL、3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAの抗ウイルス効果のうちの抗EV71活性の検出結果は、図18、表7~表10に示された。
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
【表10】
【0050】
RD細胞を使用してポリペプチドEP-PA、EP-CHOL、3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAの抗ウイルス効果を検出した、80%コンフルエントのRD細胞では、EV71(MOI=0.1)を加え、1時間感染後、それぞれ濃度勾配でポリペプチドEP-PA、EP-CHOL、3A-EP-DRI及び3A-EP-PEG4-PAを加え、全てのポリペプチド濃度は、いずれも0.01μM、0.1μM、1μM、10μMに設けられた。24時間後に試料を収集し、細胞全RNAを抽出し、蛍光定量PCRによりウイルスゲノムRNAの発現レベルを検出し、ポリペプチドが添加されないサンプルのみに感染したものを対照群とした。結果は、全てのポリペプチドは、いずれも抗EV71活性を有し、ポリペプチド濃度を高めるとウイルスRNAの発現レベルを有意に阻害できることを示した。
ポリペプチドP2、ER、ER-DRIの抗CVA16ウイルス効果の検出結果は、図22、表11~15に示した。
【0051】
【表11】
【0052】
【表12】
【0053】
【表13】
【0054】
【表14】
【0055】
【表15】
【0056】
RD細胞を使用してポリペプチドP2、ER、ER-DRIの抗ウイルス効果を検出し、膜透過ペプチドR8及びTATを対照とした。80%コンフルエントのRD細胞では、EV71(MOI=0.1)を加え、1時間感染した後、それぞれ特定の濃度勾配でポリペプチドP2、ER、ER-DRI、R8及びTATを加え、全てのポリペプチドの濃度は、いずれも0.15625μM、0.3125μM、0.625μM、1.25μM、2.5μM、5μMに設定された。24時間感染した後に、CCK-8キットによりウイルスに対するポリペプチドの阻害活性を測定した。ポリペプチドの阻害率=(処理されたODウェル-ウイルスのみ添加ODウェル)×100%/(未処理ODウェル-ウイルスのみ添加ODウェル)。ここで、ODはOD450-OD630の値を指す。結果は、ポリペプチドP2、ER、ER-DRIは、いずれもCVA16を有意に阻害できるが、膜透過ペプチドR8及びTATは、ウイルスに作用を奏していない。P2のIC50は、1.533μMであり、ERのIC50は、3.211μΜであり、ER-DRIのIC50は、0.856μΜである。
【0057】
実施例11:マウス体内のEV71及びCVA16に対するポリペプチドP1の抗ウイルス活性の検出
1.材料
P1:RRRRRRRRAISDLLASは、商業的に合成されたものである。2日齢のICR系新生児マウスを採用した。
2.マウス体内のポリペプチドP1の抗ウイルス活性
(1)2日齢のICR系新生児マウス8匹をランダムに2つの群に分けられ、各群あたり4匹である。これらの新生児マウス8匹は、腹腔内注射にて用量が108PFU/mlのEV71でチャレンジされた。
(2)チャレンジされるとともに、1つの群は、P1ポリペプチドを10mg/kgで腹腔内注射されて治療群とし、別の群は、同量のPBSを注射されて対照群とした。
(3)ポリペプチド及びPBSを12時間おきに1回注射し、チャレンジ後5日目まで注射し続けた。
(4)5日目後、新生児マウスを安楽死させ、後肢の筋肉を取り、Trizolで研磨した後、組織から全RNAを抽出した。
(5)ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
結果は、図7及び表16に示され、P1は、マウス体内のEV71ウイルス量を有意に低減した。
3. マウス体内のCVA16に対するP1の抗ウイルス活性の検出は、以上と同じである。
【0058】
結果は、図8及表17に示され、P1がマウス体内のCVA16のウイルス量を有意に低減させることを示した。
【0059】
【表16】
【0060】
【表17】
【0061】
実施例12:RD細胞内のEV71に対するポリペプチドCRの阻害活性の検出
(1)増殖状態が良いRD細胞を96ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、薬物無添加・ウイルス無添加ウェル及び薬物無添加・ウイルス添加ウェル(DMEM)を対照として設置し、ウイルスの最終濃度はMOI=0.1である。
(3)1時間後、それぞれ最終濃度が5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μM、0.3125μM、0.15625μMであるCRポリペプチドを加え、また、ポリペプチドを添加せずにウイルスのみを添加する、並びにウイルス及びポリペプチドを添加しない対照群を設置した。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に、ウイルスのみを添加する対照群では病変が明らかになる場合には、各ウェルに生細胞検出試薬CCK-8 10μlを加え、均一に混合した。
(5)37℃で2h静置した。
(6)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。計算式は、ポリペプチド阻害率=(処理されたODウェル-ウイルスのみ添加ODウェル)×100%/(未処理ODウェル-ウイルスのみ添加ODウェル)であり、ここで、ODはOD450-OD630の値を指す。
結果は、図9及び表18に示され、EV71に対するCRのIC50は、1.7μMである。
【0062】
【表18】
【0063】
実施例13:マウス体内のEV71及びCVA16に対するポリペプチドCRの抗ウイルス活性
1.材料
ポリペプチドCR:YGRKKRRQRRRGSGCRは、商業的に合成されたものである。2日齢のICR系新生児マウスを採用した。
2.マウス体内のポリペプチドCRの抗ウイルス活性
(1)2日齢のICR系新生児マウス8匹をランダムに2つの群に分け、各群あたり4匹である。これらの新生児マウスの8匹に腹腔内注射にて108PFU/ml EV71用量でチャレンジした。
(2)チャレンジすると同時に、1つの群は、CRを10mg/kgで腹腔内注射し、別の群は、同量のPBSを対照として注射した。
(3)ポリペプチド及びPBSを12時間おきに1回注射し、チャレンジ後5日目まで注射し続けた。
(4)5日目後、新生児マウスを安楽死させ、後肢の筋肉を取り、Trizolにより研磨した後、組織から全RNAを抽出した。
(5)ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
結果は、図10及表19に示され、CRがマウス体内のEV71ウイルス量を有意に低減させることを示した。
【0064】
3.マウス体内のCVA16に対するCRの抗ウイルス活性の検出は、以上と同じである。
結果は、図11及表20に示され、CRがマウス体内のCVA16のウイルス量を有意に低減させることを示した。
【0065】
【表19】
【0066】
【表20】
【0067】
実施例14:マウス体内のER-DRIの毒性評価
1.材料
ポリペプチドER-DRIは、商業的に合成されたものであり、10日齢の新生児マウス12匹を採用した。
2.マウス体内のER-DRIの毒性評価
(1)10日齢の新生児マウス12匹をランダムに2つの群に分け、各群あたり6匹であり、1つの群は、ER-DRIを20mg/kgで1日1回腹腔内注射し、3日間の注射を連続した。別の群は、同量のPBSを対照として注射した。
(2)マウスの体重を毎日記録し、合計15日である。
(3)マウスに4週間投与した後、マウスを安楽死させ、解剖し、その脳、肝臓、肺、腎臓を分離させ、HE染色を行った。
結果は、図12に示され、20mg/kgのポリペプチド注射群とPBS群は体重が有意差がない。図13のHE染色像より、20mg/kgのポリペプチド注射群とPBS群は脳、肝臓、肺、腎臓に明らかな病理学的変化はなく、有意差がないことを示した。
【0068】
実施例15 RD細胞のER及びER-DRIの毒性の検出
1.実験材料
CCK-8試薬(MCE)は、プロモーター公司から購入された。
2.実験手順
ポリペプチドER及びER-DRIは、ウイルスに抵抗する過程でウイルスを阻害できるだけでなく、細胞毒性がないことを確認する必要がある。従って、その指標を細胞毒性試験により検出し、未処理の細胞を対照群として使用した。
具体的な手順は、以下の通りである。
(1)RD細胞を96ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり100μLである。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、ウェル中の最終濃度がそれぞれ0.46μM、2.34μM、4.68μM、9.37μM、18.75μM、37.5μM、75μM、150μM、300μMになるように、ER及びER-DRIを加えた。
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後に試料を収集し、各ウェルに生細胞検出試薬CCK-8 10μlを加え、均一に混合した。
(4)37℃で2h静置した。
(5)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。
【0069】
結果は、図19及び表21、22に示され、未処理細胞の細胞生存率を100%として、TAT-ER-DRIの50%細胞毒性濃度(CC50)は117μMであり、TAT-ERのCC50は290μMと計算された。本研究で使用されるポリペプチドER及びER-DRIの50%細胞毒性濃度(290μM、117μM)は、その50%阻害濃度(1.26μM、0.64μM)よりも、毒性が非常に低い薬物であることを証明した。
【0070】
【表21】
【0071】
【表22】
【0072】
実施例16 RD細胞のEV71に対するER及びER-DRIの阻害活性の検出
1.材料
トータルRNA抽出キット (Omega)、24ウェルプレート 、100mmディッシュ、50ml注射器は、迪躍創新公司から購入され、0.22μmのメンブレンフィルター(Millipore)は、飛げい公司から購入され、ワンステップq-pcrキット(Takara)は、友名公司から購入され、RNA抽出及びqRT-PCRプロセスで使用される水はDEPC水であり、実験は全体として在RNaseフリーの環境で実行された。
2.細胞中のポリペプチドの抗ウイルス効果の測定
(1)増殖状態が良いRD細胞を96ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、薬物無添加・ウイルス無添加ウェル及び薬物無添加・ウイルス添加ウェル(DMEM)を対照として設置し、ウイルスの最終濃度はMOI=0.1である。
(3)1時間後、それぞれ最終濃度が2.5μM、1.25μM、0.625μM、0.3125μM、0.15625μMであるER-DRI及びERポリペプチドを加え、また、ポリペプチドを添加せずにウイルスのみを添加する、並びにウイルス及びポリペプチドを添加しない対照群を設定した。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に、ウイルスのみを添加する対照群で病変が明らかになる場合には、各ウェルに生細胞検出試薬CCK-8 10μlを加え、均一に混合した。
(5)37℃で2h静置した。
(6)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。計算式は、ポリペプチド阻害率=(処理されたODウェル-ウイルスのみ添加ODウェル)×100%/(未処理ODウェル-ウイルスのみ添加ODウェル)であり、ここで、ODはOD450-OD630の値を指す。
【0073】
結果は、図20及び表23、24、25に示され、ERがRD細胞でEV71を阻害するIC50は、1.26μMであり、ER-DRIがRD細胞でEV71を阻害するIC50は0.64μMであることを示した。
【0074】
【表23】
【0075】
【表24】
【0076】
【表25】
【0077】
実施例17 マウス体内のER-DRIの抗EV71活性の検出
1. 実験材料
ポリペプチドER-DRIは、商業的に合成されたものであり、2日齢の新生児マウス10匹を採用した。
2.実験手順
(1)2日齢のICR系新生児マウス10匹をランダムに2つの群に分け、各群あたり5匹である。これらの新生児マウス10匹は、腹腔内注射にて用量108PFU EV71でチャレンジされた。
(2)チャレンジすると同時に、1つの群は、ER-DRIポリペプチドを10mg/kgで腹腔内注射して薬物治療群とし、別の群は、同量のPBSを注射して対照群とした。
(3)ポリペプチド及びPBSを12時間おきに1回注射し、チャレンジ後5日目まで注射し続けた。
(4)5日目後、新生児マウスを安楽死させ、肺を取り、Trizolにより研磨した後、組織から全RNAを抽出した。
(5)ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
【0078】
結果は、図21及表26に示され、ER-DRIがマウス肺内のEV71ウイルス量を有意に低減させることを示した。
【0079】
【表26】
【0080】
実施例18 RD細胞のポリペプチドBP8、BP10及びBP15の毒性アッセイ
1.実験材料
CCK-8試薬(MCE)は、プロモーター公司から購入された。
2.実験手順
ポリペプチドBP8、BP10及びBP15は、ウイルスに抵抗する過程でウイルスを阻害できるだけでなく、細胞毒性がないことを確認する必要がある。従って、その指標を細胞毒性試験により検出し、未処理の細胞を対照群として使用した。
具体的な手順は、以下の通りである。
(1)RD細胞を96ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり100μlである。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、ウェル中の最終濃度がそれぞれ3.0625μM、6.125μM、12.5μM、25μM、50μM、100μM、200μMになるように、一定の濃度勾配でポリペプチドBP8、BP10及びBP15を加えた。
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後に試料を収集し、各ウェルに生細胞検出試薬CCK-8 10μlを加え、均一に混合した。
(4)37℃放置4h。
(5)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。
【0081】
結果は、図23及表27、28、29に示され、未処理細胞の細胞生存率を100%として、BP8、BP10は、ポリペプチド200μMを加えた細胞生存率が対照群(未処理細胞)と基本的に一致し、BP15は、ポリペプチド100μMを加えた細胞生存率が対照群(未処理細胞)と基本的に一致し、ポリペプチド200μMを加えた後に細胞生存率が20%に低下した。BP8、BP10は200μM以で細胞毒性がなく、BP15は100μM以内で細胞毒性がないことを示した。
【0082】
【表27】
【0083】
【表28】
【0084】
【表29】
【0085】
実施例19 Vero細胞のポリペプチドBP8、BP10及びBP15の毒性アッセイ
1.実験材料
CCK-8試薬(MCE)は、プロモーター公司から購入された。
2.実験手順
ポリペプチドBP8、BP10及びBP15は、ウイルスに抵抗する過程でウイルスを阻害できるだけでなく、細胞毒性がないことを確認する必要がある。従って、その指標を細胞毒性試験により検出し、未処理の細胞を対照群として使用した。
具体的な手順は、以下の通りである。
(1)Vero細胞を96ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり100μLである。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地を2%血清含有MEM培地に交換し、ウェル中の最終濃度がそれぞれ3.0625μM、6.125μM、12.5μM、25μM、50μM、100μM、200μMになるように、一定の濃度勾配でポリペプチドBP8、BP10及びBP15を加えた。
(3)ポリペプチドを加えてから24時間後に試料を収集し、各ウェルに生細胞検出試薬CCK-8 10μlを加え、均一に混合した。
(4)37℃で2h静置した。
(5)マイクロプレートリーダーでOD450における吸光度を検出した。
【0086】
結果は、図24及び表30、31、32に示され、未処理細胞の細胞生存率を100%として、BP8、BP10は、ポリペプチド200μMを加えた細胞生存率が対照群(未処理細胞)と基本的に一致し、BP15は、ポリペプチド100μMを加えた細胞生存率が対照群(未処理細胞)と基本的に一致し、ポリペプチド200μMを加えた後に細胞生存率が20%に低下した。BP8、BP10は200μM以内で細胞毒性がなく、BP15は100μM以内で細胞毒性がないことを示した。RD細胞及びVero細胞における薬物の毒性は、相対的に一致する。
【0087】
【表30】
【0088】
【表31】
【0089】
【表32】
【0090】
実施例20 RD細胞のポリペプチドBP8、BP10及びBP15の抗CVB5効果の検出
1.材料
ポリペプチドBP8(SEQ ID NO.12に示され)、BP10(SEQ ID NO.13に示され)及びBP15(SEQ ID NO.14に示され)を採用した。それらのポリペプチドは、商業的に合成されたものである。
2.ポリペプチドBP8、BP10及びBP15の抗ウイルス効果への影響
(1)RD細胞を24ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地をCVB5ウイルスの2%血清を含むMEM培地に交換し、1ウェルにあたり0.5mlであり、MOI=0.01で、対照群にCVB5ウイルスが含まれない。
(3)1時間後、それぞれ最終濃度が0.78μM、1.56μM、3.13μM、6.25μMであるポリペプチドBP8、BP10及びBP15を加えた。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に試料を収集し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
(5)上清を捨て、ウェルにTRK細胞溶解液350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(6)ウェルに70%エタノール(DEPC)350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(7)ウェルから溶液を取り出し、RNA抽出用カラムに移し、12000gで1min遠心した。
(8)回収チューブ中の溶液をカラムに再度ロードし、12000gで1min遠心した。
(9)RNA洗浄バッファー1を加え、12000gで30s遠心した。
(10)RNA洗浄バッファー2を加え、12000gで1min遠心した。
(11)ステップ(10)を繰り返した。
(12)洗浄バッファーを加えずカラムを12000gで2min遠心し、残留RNA洗浄バッファーを完全に除去した。
(13)DEPC水 50μlを加え、12000gで2min遠心した。
(14)RNAサンプル2μlを採取し、ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
【0091】
結果は、図25及び表33、34、35に示され、ポリペプチドBP8、BP10及びBP15はいずれもCVB5を有意に阻害できることを示した。BP8のIC50は1.545μMであり、BP10のIC50は1.335μΜであり、BP15のIC50は6.758μΜである。
【0092】
【表33】
【0093】
【表34】
【0094】
【表35】
【0095】
実施例21 Vero細胞のポリペプチドBP8の抗CVB3効果の検出
1.材料
ポリペプチドBP8(SEQ ID NO.12に示され)は、商業的に合成されたものである。
2.ポリペプチドBP8の抗CVB3ウイルス効果への影響
(1)Vero細胞を24ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地をCVB3ウイルスの2%血清を含むMEM培地に交換し、1ウェルあたり0.5mlであり、対照群にCVB3ウイルスが含まれなく、ウイルスのMOI=0.01である。
(3)1時間後、それぞれ最終濃度が2.5μM、5μM、10μMであるポリペプチドBP8を加えた。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に試料を収集し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
(5)上清を捨て、ウェルにTRK細胞溶解液350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(6)ウェルに70%エタノール(DEPC)350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(7)ウェルから溶液を取り出し、RNA抽出用カラムに移し、12000gで1min遠心した。
(8)回収チューブ中の溶液をカラムに再度ロードし、12000gで1min遠心した。
(9)RNA洗浄バッファー1を加え、12000gで30s遠心した。
(10)RNA洗浄バッファー2を加え、12000gで1min遠心した。
(11)ステップ(10)を繰り返した。
(12)洗浄バッファーを加えずカラムを12000gで2min遠心し、残留RNA洗浄バッファーを完全に除去した。
(13)DEPC水 50μlを加え、12000gで2min遠心した。
(14)RNAサンプル2μlを採取し、ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
【0096】
結果は、図26及び表36に示され、ポリペプチドBP8がCVB3の複製を阻害できることを示した。BP8のIC50は、4.125μMである。
【0097】
【表36】
【0098】
実施例22 マウス体内のポリペプチドBP8の抗CVB5効果の検出
1.材料:ポリペプチドBP8(SEQ ID NO.12に示す)は、商業的に合成されたものである。2日齢のICR系新生児マウスを採用した。
2.マウス体内のポリペプチドBP8の抗ウイルス活性
(1)2日齢のICR系新生児マウス10匹をランダムに2つの群に分け、各群あたり5匹である。これらの新生児マウスの10匹は、腹腔内注射にて用量108PFU CVB5でチャレンジされた。
(2)チャレンジすると同時に、1つの群は、10mg/kgのBP8で腹腔内注射され、別の群は、同量のPBSを対照として注射された。
(3)ポリペプチド及びPBSを12時間おきに1回注射し、チャレンジ後5日目まで注射し続けた。
(4)5日目後、新生児マウスを安楽死させ、後肢の筋肉を取り、Trizolにより研磨した後、組織から全RNAを抽出した。
(5)ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
【0099】
結果は、図27及び表37に示され、投与群(PB10)は、ブランク対照群(PBS)よりも、ウイルス粒子のコピー数が顕著に低下し、ウイルス粒子が約80倍低減していることを示した。
【0100】
【表37】
【0101】
実施例23 Vero細胞のポリペプチドER-DRIの抗CVA6ウイルス効果の検出
1.材料
ポリペプチドER-DEI(SEQ ID No.11に示す)は、商業的に合成されたものである。
2.ポリペプチドER-DEIの抗CVA6ウイルス効果への影響
(1)Vero細胞を24ウェルプレートに播種した。
(2)70%~80%コンフルエントに達したら、10%血清含有MEM培地をCVB3ウイルスの2%血清を含むMEM培地、1ウェルあたり0.5mlであり、対照群にCVA6ウイルスが含まれなく、ウイルスのMOI=0.01である。
(3)1時間後、それぞれ最終濃度が2.5μM、5μM、10μMであるポリペプチドBP8を加えた。
(4)ウイルスに感染してから24時間後に試料を収集し、トータルRNA抽出キットでRNAを抽出した。
(5)上清を捨て、ウェルにTRK細胞溶解液350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(6)さらに、ウェルに70%エタノール(DEPC)350μlを加え、シェーカーで5min振盪した。
(7)ウェルから溶液を取り出し、RNA抽出用カラムに移し、12000gで1min遠心した。
(8)回収チューブ中の溶液をカラムに再度ロードし、12000gで1min遠心した。
(9)RNA洗浄バッファー1を加え、12000gで30s遠心した。
(10)RNA洗浄バッファー2を加え、 12000gで1min遠心した。
(11)ステップ(10)を繰り返した。
(12)洗浄バッファーを加えずカラムを12000gで2min遠心し、残留RNA洗浄バッファーを完全に除去した。
(13)DEPC水 50μlを加え、12000gで2min遠心した。
(14)RNAサンプル2μlを採取し、ワンステップqRT-PCRキットによりリアルタイム定量PCRを行った。
【0102】
結果は、図28及び表38に示され、ポリペプチドER-DEIのいずれもはCVA6の複製を阻害できることを示した。BP8のIC50は、0.625μM未満である。
【0103】
【表38】
【0104】
本発明により提供されるポリペプチド及びそれらの用途は、上記に詳細に記載されている。本明細書では、具体的な例を使用して、本発明の原理及び実施態様を説明しており、以上の実施例の説明は、本発明の方法及びそのコアアイデアの理解を助けるためにのみ使用されている。当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、本発明に幾つかの改良及び修飾を加えることができ、これらの改良及び修飾も本発明の請求の範囲の保護範囲に含まれることを理解すべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図17
図18
図19
図20
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図26
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図28
【配列表】
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