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特許7252582抗体-ペイロードコンジュゲートの調製のための化合物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】抗体-ペイロードコンジュゲートの調製のための化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/46 20060101AFI20230329BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C07D207/46
C07K7/08 ZNA
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021543283
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2020001145
(87)【国際公開番号】W WO2020153774
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0008943
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521400626
【氏名又は名称】アブティス・カンパニー・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514293260
【氏名又は名称】リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション ソンギュンクァン ユニバーシティ
【住所又は居所原語表記】2066, SEOBU-RO, JANGAN-GU, SUWON-SI, GYEONGGI-DO, 16419, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サン・ジョン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ファン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・グン・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウ・ソ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/199337(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061509(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/197871(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/112108(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-1-2の化合物。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオコンジュゲーションの分野に関する。本発明は、部位特異的に結合された抗体-ペイロードコンジュゲートの調製ためのリンカー、それを使用して調製された抗体-ペイロードコンジュゲート、及び抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するための方法に関する。より具体的には、本発明は、2つ以上の異なる部分正電荷を有するカルボニル基炭素及び両端部に官能基を含み、化合物、ペプチド、及び/又はタンパク質を置換反応によって生物学的(標的)分子に連結させることができるリンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオコンジュゲーションは、少なくとも2個以上の分子を連結するプロセスであり、この場合において、バイオコンジュゲーションは、少なくとも1個又は複数の分子が生物活性分子であるプロセスを指す。生物活性分子は、「標的分子」又は「興味対象の分子」と時々称されることがあり、例えば、タンパク質(又はペプチド)、グリカン、核酸(又はオリゴヌクレオチド)、脂質、ホルモン又は天然薬物(又はその断片、若しくはその組合せ)等であり得る。2個以上の分子を連結するようなリンカーは、抗体等の標的特異的タンパク質を蛍光材料等に結合させることによって、検出、診断、バイオマーカー等のために広く使用することができる。
【0003】
現在では、バイオコンジュゲーションとして検出、診断、処置等のために使用されるリンカーに関して、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が商業的に広く使用されており、なぜならば、PEGは、高水溶性、非毒性、非抗原性であり、凝集しないからである。近年、細胞毒性薬(抗がん薬)を抗体に連結させることによって特定の疾患を処置する治療薬に対する興味が増加するにつれて、細胞毒性薬を抗体等の標的分子に結合させることができるリンカーに対する研究も活発に行われてきた。これらの2個以上の分子を連結させることができるリンカーのため、インビボ血液安定性、適合性、可溶性、標的特異性等、全てが考えられる必要がある。
【0004】
一方、抗体-ペイロードコンジュゲートの分野で現在研究されているリンカーは、抗体の生物学的活性が、それの長さ及びサイズによって低減されるという問題を有する。例えば、FcRn受容体結合を遮断することによる半減期の減少等の問題、及び部位特異的結合における難しさによる均質の抗体-薬物コンジュゲートを生成する際の難しさがある。そのため、標的分子の活性を維持しながらインビボにおける優れた血液安定性、適合性、可溶性及び部位特異性を有するリンカーの開発が緊急に必要である。
【0005】
これらの問題を解決するため、本発明の本発明者らは、標的分子の生物学的活性に影響することなくペイロードを標的分子に連結することができるリンカーであって、2つ以上の異なる部分正電荷(δ+)を有するカルボニル基、並びに両端部に脱離基及び/又はクリック化合物を含むリンカーを発明した。該リンカーは、部位特異性だけでなく長さ調整を介して標的分子のための水溶性を増加させることによって反応性を増加させることができる。こうしたリンカーは厳しい反応条件を有さないとともに、バイオコンジュゲーションとして標的分子を含めた分子についての高いコンジュゲーション収率を有するので、より安定な及び経済的に高度に有効なリンカーを提供することが意図される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO/2015/122478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、カルボニル基の2つ以上の求電子性炭素及び1つ又は複数のクリック化学部分を含む新規なトランス構造を有するリンカー、並びにそれを調製するための方法を提供することを目的とする。
【0008】
本出願は、カルボニル基の2つ以上の求電子性炭素及び1つ又は複数のクリック化学部分を含む新規なシス構造を有するリンカー、並びにそれを調製するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の上に記載されている問題を解決するため、本明細書は、ペイロードを標的分子に直接的に及び/又は間接的に連結させるために輸送及び結合反応を補助するリンカーを提供する。
【0010】
ある態様において、本出願は、以下の式2によって表される化合物を提供し:
【0011】
【化1】
【0012】
式2において、R'は、エステル基活性化性部分であり、R"は、アセチレン、トランスシクロオクテン、シクロオクチン、ジアリールシクロオクチン、メチルエステルホスフィン、ノルボルネン、メチルシクロプロペン、アゼチン及びシアナイドのいずれか1つであり、R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~20アルケニレン、置換若しくは非置換のC1~10アルキニレン、置換若しくは非置換のC1~10ポリメチレン、置換若しくは非置換のC5~12アリール、置換若しくは非置換のC5~14アリールアルキレン、置換若しくは非置換のC8~16アリールアルケニレン、置換若しくは非置換のC3~10シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC3~10ヘテロシクロアルキレン、又は置換若しくは非置換のC5~12ヘテロアリールであり、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン又はヘテロアリールは、N、O及びSの群から選択される少なくとも1つ又は複数を含み、置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、Rbは、F、Cl、Br又はIであり、Xは、O、N又はSである。加えて、本出願は、R"が、ノルボルネン、トランスシクロオクテン、シクロオクチン及びメチルシクロプロペンからなる群から選択される化合物を提供する。更に、本出願は、R"がノルボルネンである化合物を提供する。
【0013】
更に、本出願は、R'''が、置換又は非置換のC1~10アルキレン、置換又は非置換のC1~10ヘテロアルキレン、及びC1~10ポリメチレンの群から選択され、ヘテロアルキレンが、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1つ又は複数を含み、置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基が、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、及び-C(-NRa)NRaRaからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、Raが、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、Rbが、F、Cl、Br又はIであり、Xが、O、N又はSである化合物を提供する。更に、本出願は、R'''が、非置換C1~5アルキレン又は非置換C1~5ポリメチレンである化合物を提供する。
【0014】
更に、本出願は、XがOである化合物を提供する。
【0015】
更に、本出願は、式2の化合物が、以下の式2-1-2によって表される化合物を提供する:
【0016】
【化2】
【0017】
別の態様において、本出願は、抗体-ペイロードコンジュゲートを生成するための方法であって、以下を含む方法:式2の構造を有するリンカーをFc結合性ペプチドと反応させることによって、リンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートを調製するステップ;リンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートを抗体と反応させることで、第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体を得るステップ;及び第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体を、第1のクリックケミストリー官能基とのクリック化学反応を行うことができる第2のクリックケミストリー官能基を含むペイロードと反応させることによって、以下の式8の構造を有する抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するステップ
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、Abは、抗体であり、R'''は、非置換C1~5アルキレン又は非置換C1~5ポリメチレンであり、Y4は、Nであり、Fpは、Fc結合性ペプチドであり、Bは、第1のクリックケミストリー官能基と第2のクリックケミストリー官能基とのクリック化学反応によって形成されるいずれか1つの構造であり、Amは、活性部分又は活性部分を含めた構造であり、活性部分は、薬物分子、画像化部分、光学的薬剤、ビタミン及び毒素からなる群から選択されるいずれか1つであり、nは、1以上及び4以下の整数である)を提供する。
【0020】
更に、本出願は、抗体-ペイロードコンジュゲートを生成するための方法であって、Fc結合性ペプチドが、以下の式13及び式14からなる群から選択されるペプチドであり
[式13]
D-C-A-W-H-Xa-G-E-L-V-W-C-T
[式14]
D-C-A-W-H-K-G-E-L-V-W-C-T
(式中、Dは、アスパラギン酸であり、Cは、システインであり、Aは、アラニンであり、Wは、トリプトファンであり、Hは、ヒスチジンであり、Xaは、
【0021】
【化4】
【0022】
であり、Gは、グリシンであり、Eは、グルタメートであり、Lは、ロイシンであり、Vは、バリンであり、Tは、スレオニンであり、Kは、リジンであり、mは、1以上及び4以下の整数であり、N末端のシステイン及びC末端のシステインは、互いに選択的に連結されている)、n=2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン246又はリジン248に含有されている、方法を提供する。
【0023】
別の態様において、本出願は、以下の式8の抗体-ペイロードコンジュゲート:
【0024】
【化5】
【0025】
(式中、Abは、抗体であり、R'''は、非置換C1~5アルキレン又は非置換C1~5ポリメチレンであり、Y4は、Nであり、Fpは、Fc結合性ペプチドであり、Bは、第1のクリックケミストリー官能基及び第2のクリックケミストリー官能基のクリック化学反応によって形成されるいずれか1つの構造であり、Amは、活性部分又は活性部分を含めた構造であり、活性部分は、薬物分子、画像化部分、光学的薬剤、ビタミン及び毒素からなる群から選択されるいずれか1つであり、nは、1以上及び4以下の整数である)を提供する。
【0026】
更に、本出願は、Fpが、以下の式13及び式14からなる群から選択されるペプチドであり
[式13]
D-C-A-W-H-Xa-G-E-L-V-W-C-T
[式14]
D-C-A-W-H-K-G-E-L-V-W-C-T
(式中、Dは、アスパラギン酸であり、Cは、システインであり、Aは、アラニンであり、Wは、トリプトファンであり、Hは、ヒスチジンであり、Xaは、
【0027】
【化6】
【0028】
であり、Gは、グリシンであり、Eは、グルタメートであり、Lは、ロイシンであり、Vは、バリンであり、Tは、スレオニンであり、Kは、リジンであり、mは、1以上及び4以下の整数であり、N末端のシステイン及びC末端のシステインは、互いに選択的に連結されている)、Fpが、アミノ酸残基6でのY4を介して連結されている、抗体-ペイロードコンジュゲートを提供する。
【0029】
更に、本出願は、Bが、
【0030】
【化7】
【0031】
(式中、A1は、抗体に連結されており、A2は、Amに連結されているか、又はA1は、Amに連結されており、A2は、抗体に連結されている)である、抗体-ペイロードコンジュゲートを提供する。
【0032】
更に、本出願は、Bが、
【0033】
【化8】
【0034】
である、抗体-ペイロードコンジュゲートを提供する。
【0035】
更に、本出願は、Amが抗がん薬を含む、抗体-ペイロードコンジュゲートを提供する。更に、本出願は、抗がん薬がメルタンシン(DM1)である、抗体-ペイロードコンジュゲートを提供する。更に、本出願は、Amが、2種以上の抗がん薬を含む、抗体-ペイロードコンジュゲートを提供する。
【0036】
更に、本出願は、Abに連結されている窒素原子が、抗体のFcのリジン246又はリジン248に含有されている、抗体-ペイロードコンジュゲートを提供する。
【0037】
更に、本出願は、nが2であり、Abに連結されている窒素原子が、抗体の両Fcのリジン246又はリジン248に含有されている、抗体-ペイロードコンジュゲートを提供する。
【0038】
別の態様において、本出願は、がんを処置するための医薬組成物であって、抗がん薬を含む抗体-ペイロードを含む、医薬組成物を提供する。
【0039】
更に、本出願は、がんが乳がんである、医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0040】
本明細書によって開示されている科学技術によると、以下の効果が生じる。
【0041】
本明細書において開示されている化合物1は、ペイロードを抗体に部位特異的に連結させることができるリンカーを提供する。該リンカーは、抗体の半減期等の生物学的活性に影響しないという効果を有し、検出、診断、バイオマーカー及び抗がん治療薬のためのバイオコンジュゲーションとして有用に使用することができる。
【0042】
加えて、本明細書において開示されている化合物2は、ペイロードを抗体に部位特異的に連結することができるリンカーを提供する。該リンカーは、標的分子の生物学的活性に影響することができ、例えば、標的分子及び/若しくはペイロードの半減期を低減する又は排泄を促進するという効果を有する。該リンカーは、検出、診断及びバイオマーカーのために利用されるバイオコンジュゲーションとして有用に使用することができる。
【0043】
更に、化合物1及び2によって提供される抗体-ペイロードコンジュゲートは、均一な結合位置による高い均一性を有するという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】化合物I (トランス)の合成プロセス全体を例示する図である。
図2】化合物II (シス)の合成プロセス全体を例示する図である。
図3】化合物6の異性体構造のHPLCスペクトル分析の結果を例示する図である。
図4】化合物6 (シス)の分子量分析の結果を例示する図である。
図5】化合物6 (トランス)の分子量分析の結果を例示する図である。
図6】HPLCを介して化合物IIの異性体構造を確認した結果を例示する図である。
図7】HPLCを介して化合物IIを得た結果を例示する図である。
図8】FcBP(6Lys)-ノルボルネンのHPLC結果を例示する図である。
図9】FcBP(6Lys)-ノルボルネンのLC質量結果を例示する図である。
図10】化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンのHPLC結果を例示する図である。
図11】化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンのLC質量結果を例示する図である。
図12】化合物II-FcBP(6Lys)-ノルボルネンのHPLC結果を例示する図である。
図13】化合物II-FcBP(6Lys)-ノルボルネンの質量分析計結果を例示する図である。
図14】化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンと抗体との反応を例示する図である。
図15】化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンと抗体との反応によって生成されたAb (Lys246/248)-ノルボルネンの構造を例示する図である。
図16】HIC-HPLCを介する、化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンと抗体との反応の反応モニタリングの結果を例示する図である。
図17】化合物II-FcBP(6Lys)-ノルボルネンと抗体との反応を例示する図である。
図18】化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンと抗体との反応によって生成されたAb(Lys246/248)-ノルボルネンの構造を例示する図である。
図19】HIC-HPLCを介する、化合物II-FcBP(6Lys)-ノルボルネンと抗体との反応の反応モニタリングの結果を例示する図である。
図20】ハーセプチン-ノルボルネンの質量分析結果を例示する図である。
図21図18における第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体を使用して生成された抗体-ペイロードコンジュゲートの構造を例示する図である。拡大された構造は、ペイロードの構造であり、非拡大部分は、図18に例示されている構造と同じである。
図22】HIC-HPLCを介する、図18におけるAb(Lys246/248)-ノルボルネンとテトラジン-PEG8-DM1との反応の反応モニタリングの結果を例示する図である。
図23】抗体-ペイロードコンジュゲートの質量分析結果を例示する図である。
図24】NCI-N87に対する細胞毒性実験の結果を示す図である。
図25】BT474に対する細胞毒性実験の結果を示す図である。
図26】MDA-MB-468に対する細胞毒性実験の結果を示す図である。
図27】NCI-N87、BT474及びMDA-MB-468に対する細胞毒性実験の結果を要約する表を示す図である。
図28】本出願によるハーセプチン及び抗体-ペイロードコンジュゲートの腫瘍成長抑制実験の結果を例示する図である。
図29】本出願によるハーセプチン及び抗体-ペイロードコンジュゲートの腫瘍成長抑制実験の結果を例示する図である。
図30】化合物II-FcBP(L6Dap)-ノルボルネンのHPLC結果を例示する図である。
図31】化合物II-FcBP(L6Dap)-ノルボルネンの質量分析計結果を例示する図である。
図32】化合物II-FcBP(L6Dab)-ノルボルネンのHPLC結果を例示する図である。
図33】化合物II-FcBP(L6Dab)-ノルボルネンの質量分析計結果を例示する図である。
図34】化合物II-FcBP(L6Orn)-ノルボルネンのHPLC結果を例示する図である。
図35】化合物II-FcBP(L6Orn)-ノルボルネンの質量分析計結果を例示する図である。
図36】化合物II-FcBP(L6Lys)-ノルボルネンのHPLC結果を例示する図である。
図37】化合物II-FcBP(L6Lys)-ノルボルネンの質量分析計結果を例示する図である。
図38】化合物II-FcBP(L6Dap)-ノルボルネンベースの抗体との結合反応をモニタリングするためのHIC-HPLC結果を例示する図である。
図39】化合物II-FcBP(L6Dab)-ノルボルネンベースの抗体との結合反応をモニタリングするためのHIC-HPLC結果を例示する図である。
図40】化合物II-FcBP(L6Orn)-ノルボルネンベースの抗体との結合反応をモニタリングするためのHIC-HPLC結果を例示する図である。
図41】化合物II-FcBP(L6Lys)-ノルボルネンベースの抗体との結合反応をモニタリングするためのHIC-HPLC結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
「ヘテロアルキル」という用語は、1個又は複数の炭素原子が、O、N又はS等のヘテロ原子で置換されているアルキル基を指す。例えば、親分子に付着されているアルキル基の炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N又はS)で置換されている場合、結果として得られたヘテロアルキル基は、それぞれ、アルコキシ基(例えば、-OCH3等)、アミン(例えば、-NHCH3、-N(CH3)2等)、又はチオアルキル基(例えば、-SCH3)である。親分子に付着されていないアルキル基の非末端炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N又はS)で置換されている場合、結果として得られたヘテロアルキル基は、それぞれ、アルキルエーテル(例えば、-CH2CH2-O-CH3等)、アルキルアミン(例えば、-CH2NHCH3、-CH2N(CH3)2等)、又はチオアルキルエーテル(例えば、-CH2-S-CH3)である。アルキル基の末端の炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N又はS)で置換されている場合、結果として得られたヘテロアルキル基は、それぞれ、ヒドロキシアルキル基(例えば、-CH2CH2-OH)、アミノアルキル基(例えば、-CH2NH2)、又はアルキルチオール基(例えば、-CH2CH2-SH)である。ヘテロアルキル基は、例えば、1個から20個の炭素原子、1個から10個の炭素原子、又は1個から6個の炭素原子を有することができる。C1~C6ヘテロアルキル基は、1個から6個の炭素原子を有するヘテロアルキル基を意味する。
【0046】
「アルキレン」という用語は、親アルカンの同じ又は2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される、2個の一価基中心を含めた分岐、直鎖又は環式の飽和炭化水素基を指す。例えば、アルキレン基は、1個から20個の炭素原子、1個から10個の炭素原子、又は1個から6個の炭素原子を有することができる。典型的なアルキレン基としては、メチレン(-CH2-)、1,1-エチル(-CH(CH3)-)、1,2-エチル(-CH2CH2-)、1,1-プロピル(-CH(CH2CH 3 )-)、1,2-プロピル(-CH2CH(CH3)-)、1,3-プロピル(-CH2CH2CH2-)、1,4-ブチル(-CH2CH2CH2CH2-)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「アルケニレン」という用語は、親アルケンの同じ又は2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される、2個の一価基中心を含めた分岐、直鎖又は環式の不飽和炭化水素基を指す。例えば、アルケニレン基は、1個から20個の炭素原子、1個から10個の炭素原子、又は1個から6個の炭素原子を有することができる。典型的なアルケニレン基としては、1,2-エチレン(-CH=CH-)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「アルキニレン」という用語は、親アルキンの同じ又は2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される、2個の一価基中心を含めた分岐、直鎖又は環式の不飽和炭化水素基を指す。例えば、アルキニレン基は、1個から20個の炭素原子、1個から10個の炭素原子、又は1個から6個の炭素原子を有することができる。典型的なアルキニレン基としては、アセチレン(-C≡C-)、プロパルギル(-CH2C≡C-)、及び4-ペンチニル(-CH2CH2CH2C≡C-)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「ポリメチレン」という用語は、1個又は複数の炭素原子を有するアルキレンを意味し、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン及びヘプタメチレンを含む。
【0050】
当業者は、「アルキル」、「アリール」及び「ヘテロシクリル」等の部分が、1個又は複数の置換基で置換されている場合、これらは選択的に、「アルキレン」、「アリーレン」及び「ヘテロシクリレン」等の部分と称することができる(すなわち、それは、親本体「アルキル」、「アリール」及び「ヘテロシクリル」部分の1個又は複数の水素原子が、記述されている置換基で置換されていることを意味する)ことを認識されよう。「アルキル」、「アリール」及び「ヘテロシクリル」等の部分が本出願において「置換されている」と称されている又は図面において置換されている(又は例えば、置換基の数が0から正数である場合、任意選択により置換されている)と例示されている場合、「アルキル」、「アリール」及び「ヘテロシクリル」等の用語は、「アルキレン」、「アリーレン」、「ヘテロシクリレン」等と相互交換可能であると理解されるべきである。
【0051】
「アシル」という用語は、-C(=O)-アルキル、-C(=O)-炭素環(置換又は非置換)、-C(=O)-複素環(置換又は非置換)を指し、そのアルキル、炭素環又は複素環部分は、本出願に定義されているものと同じである。「アシル」の非限定的な例としては、-C(=O)CH3、-C(=O)CH2CH3、-C(=O)CH(CH3)2、-C(=O)C(CH3)3、-C(=O)-フェニル(置換又は非置換)、-C(=O)-シクロプロピル(置換又は非置換)、-C(=O)-シクロブチル(置換又は非置換)、-C(=O)-シクロペンチル(置換又は非置換)、-C(=O)-シクロヘキシル(置換又は非置換)、-C(=O)-ピリジル(置換又は非置換の)等が挙げられる。
【0052】
「置換されている」、例えば、「置換アルキル」、「置換アルキレン」、「置換アリール」、「置換アリールアルキル」、「置換ヘテロシクリル」及び「置換カルボシクリル(例えば、置換シクロアルキル)」という用語は、1個又は複数の水素原子が、それぞれ非水素置換基で各々独立して置換されている、アルキル、アルキレン、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクリル、及びカルボシクリル(例えば、シクロアルキル)を意味する。典型的な置換基としては、-X、-R、-O-、=O、-OR、-SR、-S-、-NR2、-N+R3、=NR、-C(X)3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)R、-C(=O)R、-C(=O)NRR-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2R、-OS(=O)2OR、-S(=O)2NR、-S(=O)R、-OP(=O)(OR)2、-C(=O)R、アルキレン-C(=O)R、-C(S)R、-C(=O)OR、アルキレン-C(=O)OR、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)OR、-C(=O)SR、-C(=S)SR、-C(=O)NRR、アルキレン-C(=O)NRR、-C(=S)NRR、-C(-NR)NRR(各Xは、独立してハロゲン: F、Cl、Br又はIであり、Rは、独立してH、アルキル、アリール、アリールアルキル又は複素環である)が挙げられるが、これらに限定されない。アルキレン基、アルケニレン基及びアルキニレン基も同様に置換されていてよい。
【0053】
「任意選択により置換されている」は、1個、2個又はそれ以上の置換基(例えば、任意選択により置換されているアリール基)を有する式1の化合物の特別な部分を指す。
【0054】
「脱離基」は、除去される又は他の化学基によって置き換えられることができる化学部分を表す。本発明の本明細書の全体にわたって、脱離基という用語は、クリックケミストリー官能基、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、又はマレイミドを含むが、これらに限定されない。
【0055】
「標的分子」又は「興味対象の分子」という用語は、そこに連結されるペイロードを有すると意図される分子を意味する。例として、標的分子は、生物活性分子であってよく、例えば、タンパク質(又はペプチド)、グリカン、核酸(又はオリゴヌクレオチド)、脂質、ホルモン又は天然薬物(又はその断片、若しくはその組合せ)であってよいが、これらに限定されない。
【0056】
「ペイロード」という用語は、標的分子に連結されていると意図される分子を意味する。例として、ペイロードは、化合物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び/又は薬物分子であってよい。
【0057】
「クリックケミストリー官能基」という用語は、クリックケミストリー反応に関与する官能基を集合的に指す。クリックケミストリーの型及びそれに関与する官能基は、典型的に、よく知られている。クリックケミストリー反応の例としては、[3+2]付加環化、チオール-エン反応、ディールス・アルダー反応、逆電子需要ディールス・アルダー反応、[4+1]付加環化等が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、クリックケミストリー反応としては、銅(I)触媒アジド-アルキン環化付加(CuAAC)、ひずみ促進アジド-アルキン環化付加(SPAAC)、ひずみ促進アルキン-ニトロン環化付加(スパンC)、アルケン及びアジドの[3+2]付加環化、アルケン及びテトラジンの逆需要ディールス・アルダー、アルケン及びテトラゾールの光クリック反応、並びにアジド及びアルキンのヒュスゲン環化付加が挙げられるが、これらに限定されない。クリックケミストリー官能基としては、アルキン、シクロアルキン、シクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール等のシクロアルキン)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、ジエノフィル、並びにシクロアルキン、例えばシクロオクチン、シクロノニン、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、ビアリールアザシクロオクチノン(BARAC)、アリールレスオクチン(ALO)、二フッ化シクロオクチン(DIFO)、一フッ化(MOFO)、ジベンゾ-アザ-シクロオクチン(DIBAC)及びジメトキシアザシクロオクチン(DIMAC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「エステル基活性化性部分」という用語は、エステル基の酸素に連結されており、したがってエステル基を活性エステルに変換することができる部分を集合的に指す。例えば、
【0059】
【化9】
【0060】
の構造を有するエステル基が活性エステルである場合、Zは、エステル基活性化性部分である。例として、エステル基活性化性部分としては、N-ヒドロキシスクシンイミド基(NHS)、p-ニトロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のエステル基活性化性部分としては、WO/2015/122478に記述されている内容が挙げられるが、これらに限定されない。「活性エステル」という用語は、求核置換反応に感受性であるエステルを意味する。
【0061】
本明細書において、第1及び第2等の用語は、様々な成分を記載するために使用され、上記用語は、1種の成分を他の成分から区別する目的でのみ使用される。
【0062】
更に、本明細書において使用される用語は、単に、例証的な実施形態を記載するためであり、本発明を限定すると意図されないことが留意されるべきである。単数表現は、別段に文脈が明らかに示していない限り、複数表現を含む。
【0063】
本明細書において、「含む(comprise)」、「含む(include)」又は「有する」等の用語は、実現された特色、数、ステップ、操作、構成要素、又はその任意の組合せの存在を示すことが意図され、1つ又は複数の他の特色、数、ステップ、操作、構成要素、又はその任意の組合せの存在又は付加の可能性が排除されないことを意味すると理解されるべきである。
【0064】
本明細書は、様々な形態に変更されるとともに様々な例証的な実施形態を含むことができるので、特定の例証的な実施形態は、下記で詳細に例示及び記載される。しかしながら、該記載は、本発明を特定の開示に限定すると意図されず、本発明の着想及び技術範疇に含まれた全ての変化、等価物及び置換物は、本発明に含まれると理解されるべきである。
【0065】
後文において、本発明が詳細に記載される。
【0066】
本出願は、ペイロードが所望の標的分子に連結され得るように輸送及び結合反応を補助するリンカーを提供することができる。
【0067】
該リンカーは、ペイロード及び/又は標的分子と反応することができる2個以上の官能基を含むことができる。
【0068】
上記の反応は、2つ以上の同一若しくは異なる分子又は該分子の一部の官能基が互いに連結されること、或いはE1、E2、SN1、SN2及び求核置換反応等である脱離反応が生じることを意味する。該連結は、全ての直接的又は間接的な共有及び/又は非共有結合を含む。
【0069】
例において、2個以上の官能基の第1の官能基は、脱離基であってよい。
【0070】
例において、2個以上の官能基の第2の官能基は、クリックケミストリー官能基であってよい。
【0071】
該リンカーは、カルボニル基の2個以上の求電子性炭素原子を含むことができる。
【0072】
カルボニル基の求電子性炭素原子は、官能基に連結されていてよい。
【0073】
例として、カルボニル基の求電子性炭素原子及び官能基は、共有結合されていてよい。
【0074】
別の例として、1個又は複数の原子は、カルボニル基の求電子性炭素原子と官能基との間に含まれていてよい。例えば、求核性原子は、カルボニル基の求電子性炭素原子と官能基との間に含まれていてよい。この場合において、求核性原子は、O(酸素)、N(窒素)又はS(硫黄)であり得る。
【0075】
該リンカーは、異なる部分正電荷(δ+)を有する、カルボニル基の2個以上の求電子性炭素原子を含むことができる。
【0076】
カルボニル基の2個以上の求電子性炭素原子の中で、最も大きい部分正電荷(δ+)を有するカルボニル基が、第1のカルボニル基炭素原子であり得る。
【0077】
カルボニル基の2個以上の求電子性炭素原子の中で、第2の最も大きい部分正電荷(δ+)を有するカルボニル基が、第2のカルボニル基炭素原子であり得る。
【0078】
例として、第1のカルボニル基の求電子性炭素原子は、第1の官能基に連結されていてよい。この場合において、求核性原子は、第1のカルボニル基の求電子性炭素原子と第1の官能基との間に含まれていてよい。
【0079】
別の例として、第2のカルボニル基の求電子性炭素原子は、第2の官能基に連結されていてよい。この場合において、第2のカルボニル基の求電子性炭素原子は、第1の官能基と共有結合を形成することができる。
【0080】
該リンカーは、標的分子に共有結合的に結合されるべきペイロードが結合される位置を調整することができる。
【0081】
例えば、ペイロードは、第1のカルボニル基の求電子性炭素原子に連結されていてよい。
【0082】
該リンカーの水溶性は、長さ調整によって調整することができる。例えば、リンカーの水溶性は、水溶性を増加させることができる置換基を含めたアルキル基の数を増加させることによって、増加させることができる。
【0083】
後文において、リンカー構造が詳細に記載される。
【0084】
本明細書において開示されている一態様によると、以下の式1及び/又は式2によって表されるリンカー化合物が提供され得る。
【0085】
【化10】
【0086】
式1において、
R'は、エステル基活性化性部分である。エステル基活性化性部分としては、N-ヒドロキシスクシンイミド基(NHS)、p-ニトロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられるが、これらに限定されない。更に、R'は、
【0087】
【化11】
【0088】
のいずれか1つであってよい。
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルのいずれか1つ又は複数であってよいが、これらに限定されない。
【0089】
クリックケミストリー官能基がシクロアルキンである場合、シクロアルキンは、シクロオクチン、シクロノニン、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、ビアリールアザシクロオクチノン(BARAC)、アリールレスオクチン(aryl-less octyne) (ALO)、二フッ化シクロオクチン(DIFO)、一フッ化(MOFO)、ジベンゾ-アザ-シクロオクチン(DIBAC)、及びジメトキシアザシクロオクチン(DIMAC)のいずれか1つであってよい。シクロアルキンは、これらに限定されない。
【0090】
クリックケミストリー官能基が共役ジエンである場合、共役ジエンは、アルケン及びシクロアルカンであってよい。例として、共役ジエンは、テトラジン(例えば、1,2,3,4-テトラジン及び/又は1,2,4,5-テトラジン)であってよい。
【0091】
クリックケミストリー官能基がジエノフィルである場合、ジエノフィルは、アルケン及びシクロアルカンであってよく、シクロアルカンは、二環式又は縮合環構造を含む。例として、ジエノフィルは、ノルボルネンであってよい。
【0092】
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~20アルケニレン、置換若しくは非置換のC1~10アルキニレン、置換若しくは非置換のC1~10ポリメチレン、置換若しくは非置換のC5~12アリール、置換若しくは非置換のC5~14アリールアルキレン、置換若しくは非置換のC8~16アリールアルケニレン、置換若しくは非置換のC3~10シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC3~10ヘテロシクロアルキレン、又は置換若しくは非置換のC5~12ヘテロアリールであり、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン又はヘテロアリールは、N、O又はSの少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N 3 -NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、
Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、
Rbは、F、Cl、Br又はIであり、
Xは、O、N又はSである。
【0093】
式2において、
R'は、エステル基活性化性部分である。エステル基活性化性部分としては、N-ヒドロキシスクシンイミド基(NHS)、p-ニトロフェニル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられるが、これらに限定されない。更に、R'は、
【0094】
【化12】
【0095】
のいずれか1つであってよい。
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロオクチン及びシクロノニン(例えば、シクロアルキン、例えばビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルのいずれか1つ又は複数であってよいが、これらに限定されない。
【0096】
クリックケミストリー官能基がシクロアルキンである場合、シクロアルキンは、シクロオクチン、シクロノニン、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、BARAC (ビアリールアザシクロオクチノン)、ALO (アリールレスオクチン)、DIFO (二フッ化シクロオクチン)、MOFO (一フッ化)、DIBAC (ジベンゾ-アザ-シクロオクチン)、及びDIMAC (ジメトキシアザシクロオクチン)のいずれか1つであってよいが、これらに限定されない。
【0097】
クリックケミストリー官能基が共役ジエンである場合、共役ジエンは、アルケン及びシクロアルカンであってよい。例として、共役ジエンは、テトラジン(例えば、1,2,3,4-テトラジン及び/又は1,2,4,5-テトラジン)であってよい。
【0098】
クリックケミストリー官能基がジエノフィルである場合、ジエノフィルは、アルケン及びシクロアルカンであってよく、シクロアルカンは、二環式又は縮合環構造を含む。例として、ジエノフィルは、トランスシクロオクテン(TCO)又はノルボルネンであってよい。
【0099】
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~20アルケニレン、置換若しくは非置換のC1~10アルキニレン、置換若しくは非置換のC1~10ポリメチレン、置換若しくは非置換のC5~12アリール、置換若しくは非置換のC5~14アリールアルキレン、置換若しくは非置換のC8~16アリールアルケニレン、置換若しくは非置換のC3~10シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC3~10ヘテロシクロアルキレン、又は置換若しくは非置換のC5~12ヘテロアリールであり、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン又はヘテロアリールは、N、O又はSの少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、
Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、
Rbは、F、Cl、Br又はIであり、
Xは、O、N又はSである。
【0100】
本発明の式において、
【0101】
【化13】
【0102】
は、核又は骨格構造への部分又は置換基の付着点である結合を示すために使用される。
【0103】
本明細書に開示されている例証的な実施形態によると、式1によって表される化合物は、トランス型化合物であってよい。
【0104】
式1は、式1が以下と同じである場合、下記の式1-1によって表される:
R'は、
【0105】
【化14】
【0106】
であり、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、及びジエノフィル、例えばアルケンのいずれか1つ又は複数であり、この場合において、シクロアルキン、共役ジエン、並びにジエンは、上に記載されているものと同じである。
【0107】
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC1~20ヘテロアルキレン、置換若しくは非置換のC1~20ハロアルキル、又はC1~10ポリメチレンであり、ヘテロアルキレンは、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、
Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、
Rbは、F、Cl、Br又はIであり、
Xは、O、N及びSのいずれか1つである。
【0108】
【化15】
【0109】
具体的に、R'''は、
【0110】
【化16】
【0111】
の1つであり、
R1は、Hであり、
R2は、H又はC(=O)であり、
R3は、H又はC(=O)であり、
R4は、H又はC(=O)であり、
R5は、H又はC(=O)であり、
R6は、H又はC(=O)であり、
Y1は、C、N、O及びSのいずれか1つであってよく、
nは、1から20の整数のいずれか1つであってよいが、これらに限定されない。
【0112】
R5及びR6は、同時に両方ともC(=O)であってはならず、
Y1がN、O及びSのいずれか1つである場合、R4、R5及びR6は、C(=O)であり得ない。
【0113】
より具体的には、R'''は、
【0114】
【化17】
【0115】
であり、
R4は、H又はC(=O)であり、
R5は、H又はC(=O)であり、
R6は、H又はC(=O)であり、
Y1は、C、N、O及びSのいずれか1つであってよく、
nは、1から10の整数のいずれか1つであってよい。
【0116】
例証的な実施形態において、式1-1は、式1-1が以下と同じ場合、下記の式1-1-1によって表される:
R'は、
【0117】
【化18】
【0118】
であり、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
R'''は、
【0119】
【化19】
【0120】
であり、
nは、1であり、
R4は、H又はC(=O)であり、
R5は、H又はC(=O)であり、
R6は、H又はC(=O)であり、
Y1は、Cであり、
Xは、N、O及びSのいずれか1つである。
【0121】
【化20】
【0122】
別の例証的な実施形態において、式1-1は、式1-1が以下と同じ場合、下記の式1-1-2によって表される:
R'は、
【0123】
【化21】
【0124】
であり、
R"は、ノルボルネンであり、
R'''は、
【0125】
【化22】
【0126】
であり、
R4は、Hであり、
R5は、Hであり、
R6は、Hであり、
nは、1であり、
Y1は、Cであり、
Xは、Oである。
【0127】
【化23】
【0128】
別の例証的な実施形態として、式1によって表すことができる化合物は、以下のTable 1 (表1)に記載されている化合物であり得る。
【0129】
【表1A】
【0130】
【表1B】
【0131】
式1は、式1が以下と同じ場合、下記の式1-2によって表される:
R'は、
【0132】
【化24】
【0133】
であり、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィル、例えばアルケンのいずれか1つ又は複数であり、この場合において、シクロアルキン、共役ジエン及びジエンは、上に記載されているものと同じである。
【0134】
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC1~20ヘテロアルキレン、置換若しくは非置換のC1~20ハロアルキル、又はC1~10ポリメチレンであり、ヘテロアルキレンは、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、
Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、
Rbは、F、Cl、Br又はIであり、
Xは、O、N及びSのいずれか1つである。
【0135】
【化25】
【0136】
具体的に、R'''は、
【0137】
【化26】
【0138】
の1つであり、
R1は、Hであり、
R2は、H又はC(=O)であり、
R3は、H又はC(=O)であり、
R4は、H又はC(=O)であり、
R5は、H又はC(=O)であり、
R6は、H又はC(=O)であり、
Y1は、C、N、O及びSのいずれか1つであってよく、
nは、1から20の整数のいずれか1つであってよいが、これらに限定されない。
【0139】
この場合において、R5及びR6は、両方ともC(=O)であってはならず、
Y1がN、O及びSのいずれか1つである場合、R4、R5、及びR6は、C(=O)であり得ない。
【0140】
より具体的には、R'''は、
【0141】
【化27】
【0142】
であり、
R4は、H又はC(=O)であり、
R5は、H又はC(=O)であり、
R6は、H又はC(=O)であり、
Y1は、C、N、O及びSのいずれか1つであってよく、
nは、1から10の整数のいずれか1つであってよい。
【0143】
例証的な実施形態において、式1-2は、式1-2が以下と同じ場合、下記の式1-2-1によって表される:
R'''は、
【0144】
【化28】
【0145】
であり、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
nは、1であり、
R4は、H又はC(=O)であり、
R5は、H又はC(=O)であり、
R6は、H又はC(=O)であり、
Y1は、Cであり、
Xは、N、O及びSのいずれか1つである。
【0146】
【化29】
【0147】
別の例証的な実施形態において、式1-2は、式1-2が以下と同じ場合、下記の式1-2-2によって表される:
R'は、
【0148】
【化30】
【0149】
であり、
R"は、ノルボルネンであり、
R'''は、
【0150】
【化31】
【0151】
であり、
R4は、Hであり、
R5は、Hであり、
R6は、Hであり、
nは、1であり、
Y1は、Cであり、
Xは、Oである。
【0152】
【化32】
【0153】
例証的な実施形態として、式1によって表すことができる化合物は、以下のTable 2 (表2)に記載されている化合物であり得る。
【0154】
【表2A】
【0155】
【表2B】
【0156】
本明細書に開示されている例証的な実施形態によると、式2によって表される化合物は、シス型化合物であってよい。
【0157】
式2は、式2が以下と同じ場合、下記の式2-1によって表される:
R'は、
【0158】
【化33】
【0159】
であり、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィル、例えばアルケンのいずれか1つ又は複数であり、この場合において、シクロアルキン、共役ジエン及びジエンは、上に記載されているものと同じであり、
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC1~20ヘテロアルキレン、置換若しくは非置換のC1~20ハロアルキル、又はC1~10ポリメチレンであり、ヘテロアルキレンは、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、
Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、
Rbは、F、Cl、Br又はIであり、
Xは、O、N及びSのいずれか1つである。
【0160】
【化34】
【0161】
具体的に、R'''は、
【0162】
【化35】
【0163】
の1つであり、
R7は、Hであり、
R8は、H又はC(=O)であり、
R9は、H又はC(=O)であり、
R10は、H又はC(=O)であり、
R11は、H又はC(=O)であり、
R12は、H又はC(=O)であり、
Y2は、C、N、O及びSのいずれか1つであってよく、
nは、1から20の整数のいずれか1つであってよいが、これらに限定されない。
【0164】
この場合において、R11及びR12は、両方ともC(=O)であってはならず、
Y2がN、O及びSのいずれか1つである場合、R10、R11及びR12は、C(=O)であり得ない。
【0165】
より具体的には、R'''は、
【0166】
【化36】
【0167】
であり、
R10は、H又はC(=O)であり、
R11は、H又はC(=O)であり、
R12は、H又はC(=O)であり、
Y2は、C、N、O及びSのいずれか1つであってよく、
nは、1から10の整数のいずれか1つであってよい。
【0168】
例証的な実施形態において、式2-1は、式2-1が以下と同じ場合、下記の式2-1-1によって表される:
R'は、
【0169】
【化37】
【0170】
であり、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
R'''は、
【0171】
【化38】
【0172】
であり、
nは、1であり、
R10は、H又はC(=O)であり、
R11は、H又はC(=O)であり、
R12は、H又はC(=O)であり、
Y2は、Cであり、
Xは、N、O及びSのいずれか1つである。
【0173】
【化39】
【0174】
別の例証的な実施形態において、式2-1は、式2-1が以下と同じ場合、下記の式2-1-2によって表される:
R'は、
【0175】
【化40】
【0176】
であり、
R"は、ノルボルネンであり、
R'''は、
【0177】
【化41】
【0178】
であり、
nは、1であり、
R10は、Hであり、
R11は、Hであり、
R12は、Hであり、
Y2は、Cであり、
nは、1であり、
Xは、Oである。
【0179】
【化42】
【0180】
例証的な実施形態として、式2によって表すことができる化合物は、以下のTable 3 (表3)に記載されている化合物であり得る。
【0181】
【表3A】
【0182】
【表3B】
【0183】
【表3C】
【0184】
式2は、式2が以下と同じである場合、下記の式2-2によって表される:
R'は、
【0185】
【化43】
【0186】
であり、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィル、例えばアルケンのいずれか1つ又は複数であり、この場合において、シクロアルキン、共役ジエン及びジエンは、上に記載されているものと同じである。
【0187】
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC1~20ヘテロアルキレン、置換若しくは非置換のC1~20ハロアルキル、又はC1~10ポリメチレンであり、ヘテロアルキレンは、N、O及びSからなる群から選択される少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、
Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、
Rbは、F、Cl、Br又はIであり、
Xは、O、N及びSのいずれか1つである。
【0188】
【化44】
【0189】
具体的に、R'''は、
【0190】
【化45】
【0191】
の1つであり、
R7は、Hであり、
R8は、H又はC(=O)であり、
R9は、H又はC(=O)であり、
R10は、H又はC(=O)であり、
R11は、H又はC(=O)であり、
R12は、H又はC(=O)であり、
Y2は、C、N、O及びSのいずれか1つであってよく、
nは、1から20の整数のいずれか1つであってよいが、これらに限定されない。
【0192】
この場合において、R11及びR12は、両方ともC(=O)であってはならず、
Y2がN、O及びSのいずれか1つである場合、R10、R11及びR12は、C(=O)であり得ない。
【0193】
より具体的には、R'''は、
【0194】
【化46】
【0195】
であり、
R10は、H又はC(=O)であり、
R11は、H又はC(=O)であり、
R12は、H又はC(=O)であり、
Y2は、C、N、O及びSのいずれか1つであってよく、
nは、1から10の整数のいずれか1つであってよい。
【0196】
例証的な実施形態において、式2-2は、式2-2が以下と同じ場合、下記の式2-2-1によって表される:
R'は、
【0197】
【化47】
【0198】
であり、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
R'''は、
【0199】
【化48】
【0200】
であり、
nは、1であり、
R10は、H又はC(=O)であり、
R11は、H又はC(=O)であり、
R12は、H又はC(=O)であり、
Y2は、Cであり、
Xは、N、O及びSのいずれか1つである。
【0201】
【化49】
【0202】
別の例証的な実施形態において、式2-2は、式2-2が以下と同じ場合、下記の式2-2-2によって表される:
R'は、
【0203】
【化50】
【0204】
であり、
R"は、ノルボルネンであり、
R'''は、
【0205】
【化51】
【0206】
であり、
nは、1であり、
R10は、Hであり、
R11は、Hであり、
R12は、Hであり、
Y2は、Cであり、
Xは、Oである。
【0207】
【化52】
【0208】
例証的な実施形態として、式2によって表すことができる化合物は、以下のTable 4 (表4)に記載されている化合物であり得る。
【0209】
【表4A】
【0210】
【表4B】
【0211】
【表4C】
【0212】
後文において、標的分子が抗体である場合、上に記載されているリンカーを使用して抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するための方法が記載される。抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するための方法であって、以下を含む方法: (1)リンカーをFc結合性ペプチドと反応させることによってリンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートを調製するステップ;(2)リンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートを抗体と反応させることで、第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体を得るステップ、及び(3)第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体を、第1のクリックケミストリー官能基に相補的な第2のクリックケミストリー官能基を含むペイロードと反応させることによって抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するステップ。後文において、各プロセスは、分けられて記載される。
【0213】
抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するための方法は、以下を含むことができる: (1)リンカーをFc結合性ペプチドと反応させることによってリンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートを調製するステップ。
【0214】
Fc結合性ペプチドは、抗体のFcドメインに結合するという特性を有するペプチドを集合的に指す。Fc結合性ペプチドの代表例として、FcRnドメインに結合するという特性を有することが知られている、DeLanoらによって発見された13merペプチドが、よく知られている。本発明の発明者らは、13merペプチドの特定の残基が置換されているとともにFc結合性ペプチドがリンカーと反応するのを可能にした配列番号:1から5のFc結合性ペプチドを発明した。以下の構造において見ることができる通り、配列番号:1から5のFc結合性ペプチドは、残基6に含まれた遊離アミン基を介してリンカーと反応することができる。
【0215】
配列番号:1によるFc結合性ペプチドは、式13によって表されるペプチドである:
[式13]
D-C-A-W-H-Xa-G-E-L-V-W-C-T (配列番号:1)
Dは、アスパラギン酸であり、Cは、システインであり、Aは、アラニンであり、Wは、トリプトファンであり、Hは、ヒスチジンであり、Xaは、
【0216】
【化53】
【0217】
であり、Gは、グリシンであり、Eは、グルタメートであり、Lは、ロイシンであり、Vは、バリンであり、Tは、スレオニンである。この場合において、mは、1以上及び4以下の整数であり、N末端のシステイン及びC末端のシステインは、選択的に、互いに連結されていてよい。Xaは、m=1 (配列番号:3)である場合、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)であり、Xaは、m=2 (配列番号:4)である場合、2,4-ジアミノ酪酸(Dab)であり、Xaは、m=3 (配列番号:5)である場合、オルニチンであり、Xaは、m=4 (配列番号:2)である場合、リジンである。
【0218】
配列番号:2によるFc結合性ペプチドは、式14によって表されるペプチドである:
[式14]
D-C-A-W-H-K-G-E-L-V-W-C-T (配列番号:2)
Dは、アスパラギン酸であり、Cは、システインであり、Aは、アラニンであり、Wは、トリプトファンであり、Hは、ヒスチジンであり、Kは、リジンであり、Gは、グリシンであり、Eは、グルタメートであり、Lは、ロイシンであり、Vは、バリンであり、Tは、スレオニンであり、N末端のシステイン及びC末端のシステインは、選択的に、互いに連結されていてよい。
【0219】
該リンカーとしては、化学式1又は化学式2及びその具体例に従った化合物が挙げられる。
【0220】
該リンカー及びFc結合性ペプチドは、求核置換反応によって結合することができる。求核置換反応は、Fc結合性ペプチド中に存在する求核性原子が、リンカーの正に荷電された又は部分的に正に荷電された原子を攻撃する時に生じ得る。求核性原子は、リジンの窒素原子であってよい。加えて、正に荷電された又は部分的に正に荷電された原子は、カルボニル基の求電子性炭素であってよい。
【0221】
以下において、例として本明細書によって開示されている式1及び/又は2によって表される化合物、すなわちリンカーは、Fc結合性ペプチドに結合することで、リンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートを形成することが示されている。
【0222】
例として、リンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートは、式3の構造を有することができる。
【0223】
【化54】
【0224】
式3において、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルのいずれか1つ又は複数であり、この場合において、シクロアルキン、共役ジエン及びジエンは、上に記載されているものと同じである。
【0225】
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~20アルケニレン、置換若しくは非置換のC1~10アルキニレン、置換若しくは非置換のC1~10ポリメチレン、置換若しくは非置換のC5~12アリール、置換若しくは非置換のC5~14アリールアルキレン、置換若しくは非置換のC8~16アリールアルケニレン、置換若しくは非置換のC3~10シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC3~10ヘテロシクロアルキレン、又は置換若しくは非置換のC5~12ヘテロアリールであり、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン又はヘテロアリールは、N、O又はSの少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、
Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、
Rbは、F、Cl、Br又はIであり、
Xは、O、N又はSであってよい。
【0226】
Y3は、O、N及びSのいずれか1つであってよい。
【0227】
Fpは、Fc結合性ペプチドである。更に、Fpは、式13又は14から選択されるいずれか1つのペプチドであってよい。式13及び14についての詳細は、すでに記載されているものと同じである。
【0228】
Fpは、アミノ酸残基6のY3を介して連結されていてよい。この場合において、アミノ酸残基6は、リジン、オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、又は2,4-ジアミノ酪酸であり得る。
【0229】
式3によって表される化合物は、例として反応スキーム1によって生成することができる。
【0230】
【化55】
【0231】
反応スキーム1は、式1によって表される化合物を、1から50のアミノ酸を含むFc結合性ペプチドと反応させることによって、式3によって表される化合物を生成するための反応である。
【0232】
Fc結合性ペプチドと式1との間の結合反応は、置換反応によって行うことができる。
【0233】
置換反応は、求核性アシル置換反応であってよい。
【0234】
置換反応は、式1の化合物とFc結合性ペプチドのアミン基(-NH2)、チオール基(-SH)及びヒドロキシ基(-OH)のいずれか1つとの間の反応によって行うことができる。
【0235】
例として、式1の化合物が、Fc結合性ペプチドのアミン基(-NH2)と反応される場合、Y3は、N(H)であり得る。配列番号:1から5のペプチドが、残基6で2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン又はリジンを含むと、全ての対応する残基は遊離アミン基を含むので、置換反応が行われ得る。
【0236】
別の例として、式1の化合物が、Fc結合性ペプチドのチオール基(-SH)と反応される場合、Y3は、Sであり得る。
【0237】
例として、式1の化合物が、Fc結合性ペプチドのヒドロキシ基(-OH)のいずれか1つと反応される場合、Y3は、Oであり得る。
【0238】
例として、リンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートは、式4の構造を有することができる。
【0239】
【化56】
【0240】
式4において、
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルのいずれか1つ又は複数であり、シクロアルキン、共役ジエン及びジエンは、上に記載されているものと同じである。
【0241】
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~20アルケニレン、置換若しくは非置換のC1~10アルキニレン、置換若しくは非置換のC1~10ポリメチレン、置換若しくは非置換のC5~12アリール、置換若しくは非置換のC5~14アリールアルキレン、置換若しくは非置換のC8~16アリールアルケニレン、置換若しくは非置換のC3~10シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC3~10ヘテロシクロアルキレン、又は置換若しくは非置換のC5~12ヘテロアリールであり、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン又はヘテロアリールは、N、O又はSの少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数であり、
Raは、H、C1~6アルキル、C5~12アリール、C7~12アリールアルキル又は複素環であり、
Rbは、F、Cl、Br又はIであり、
Xは、O、N又はSであってよい。
【0242】
Y4は、O、N及びSのいずれか1つであってよい。
【0243】
Fpは、Fc結合性ペプチドである。更に、Fpは、式13又は14から選択されるいずれか1つのペプチドであってよい。式13及び14についての詳細は、すでに記載されているものと同じである。
【0244】
Fpは、アミノ酸残基6のY4を介して連結されていてよい。この場合において、アミノ酸残基6は、リジン、オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、又は2,4-ジアミノ酪酸であり得る。
【0245】
式4によって表される化合物は、例として反応スキーム2によって生成することができる。
【0246】
【化57】
【0247】
反応スキーム2は、式2によって表される化合物を、1から50のアミノ酸を含むFc結合性ペプチドと反応させることによって、式4によって表される化合物を生成するための反応である。
【0248】
Fc結合性ペプチドと式2との間の反応は、置換反応によって行うことができる。
【0249】
置換反応は、求核性アシル置換反応であり得る。
【0250】
置換反応は、式2の化合物と、Fc結合性ペプチドのアミン基(-NH2)、チオール基(-SH)及びヒドロキシ基(-OH)のいずれか1つとの間の反応によって行うことができる。
【0251】
例として、式2の化合物が、Fc結合性ペプチドのアミン基(-NH2)と反応される場合、Y4は、Nであり得る。配列番号:1から5のペプチドが、残基6に2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン又はリジンを含むと、全ての対応する残基は遊離アミン基を含むので、置換反応が行われ得る。
【0252】
別の例として、式2の化合物が、Fc結合性ペプチドのチオール基(-SH)と反応される場合、Y4は、Sであり得る。
【0253】
例として、式2の化合物が、Fc結合性ペプチドのヒドロキシ基(-OH)のいずれか1つと反応される場合、Y4は、Oであり得る。
【0254】
反応スキーム1及び反応スキーム2において、式3及び/又は式4によって表される化合物は、Fc結合性ペプチドのアミン基(-NH2)、チオール基(-SH)及びヒドロキシ基(-OH)残基を、第1のカルボニル基の炭素原子と反応させることによって生成することができる。
【0255】
この場合において、R'に最も密接に連結されているカルボニル基の炭素、すなわち第1のカルボニル基の求電子性炭素原子は、最も大きい部分正電荷(δ+)を有し得る。
【0256】
抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するための方法は、(2)リンカー-Fc結合性ペプチドを抗体と反応させることで、第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体を得るステップを含むことができる。
【0257】
加えて、この場合において、Fc結合性ペプチドがFcドメインの特定部位に対する親和性を有する場合、リンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートは、抗体の特定部位と反応するように誘発され得る。本発明の発明者らは、抗体のFcRnドメインに対する親和性を有する配列番号:1から5のFc結合性ペプチドを使用して、第1のクリックケミストリー官能基を、抗体の特定部位、特に、Fcのリジン246 (Fc-Lys246)又はリジン248 (Fc-248)位置に移動することができる科学技術を開発した。
【0258】
リンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートと抗体との間の反応は、求核置換反応であり得る。この場合において、求核置換反応は、抗体中に存在する求核性原子がリンカー-Fc結合性ペプチドコンジュゲートの正に荷電された又は部分的に正に荷電された原子を攻撃する時に生じ得る。この場合において、求核性原子は、リジンの窒素原子であり得る。加えて、正に荷電された又は部分的に正に荷電された原子は、リンカー構造に含まれたカルボニル基の求電子性炭素であり得る。
【0259】
例において、第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体は、式5によって表すことができる。
【0260】
【化58】
【0261】
式5において、
Abは、抗体である。特定の実施形態において、Abは、トラスツズマブであり得る。
【0262】
R"は、クリックケミストリー官能基のいずれか1つであり、
クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルのいずれか1つ又は複数であり、この場合において、シクロアルキン、共役ジエン及びジエンは、上に記載されているものと同じである。
【0263】
加えて、Abに連結されている窒素原子は、抗体のFcのリジン246又はリジン248に含有されていてよい。特定の実施形態において、Abに連結されている窒素は、抗体のFcのリジン246に含まれていてよい。特定の実施形態において、Abに連結されている窒素原子は、抗体のFcのリジン248に含有されていてよい。
【0264】
nは、1以上及び4以下の整数である。例として、nは、2であり得る。この場合において、R"は、1つの抗体における2つのFcに含まれるリジン246又はリジン248にそれぞれ連結されることで、こうした構造を生成することができる。別の例において、nは、4であり得る。この場合において、R"は、1つの抗体における2つのFcにそれぞれ含まれるリジン246及びリジン248に連結されることで、こうした構造を生成することができる。
【0265】
nは、2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン246に含有されていてよい。代替として、nは、2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン248に含有されていてよい。
【0266】
式5の抗体は、以下の反応スキーム3によって表される反応によって生成することができる。
【0267】
【化59】
【0268】
この場合において、式3及び5についての詳細は、すでに記載されているものと同じである。
【0269】
この場合において、配列番号:1から5のペプチドが、残基6に2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン又はリジンをそれぞれ含むと、全ての対応する残基は、遊離アミン基を含む炭素骨格の長さに差異を有するのみで、同様の構造を有する。したがって、配列番号:1から5の全てのペプチドは、抗体のFcドメインに結合するという特性を示す。
【0270】
別の例において、第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体は、式6によって表すことができる。
【0271】
【化60】
【0272】
式6において、
Abは、抗体である。特定の実施形態において、Abは、トラスツズマブであり得る。
【0273】
R'''は、置換若しくは非置換のC1~20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~20アルケニレン、置換若しくは非置換のC1~10アルキニレン、置換若しくは非置換のC1~10ポリメチレン、置換若しくは非置換のC5~12アリール、置換若しくは非置換のC5~14アリールアルキレン、置換若しくは非置換のC8~16アリールアルケニレン、置換若しくは非置換のC3~10シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC3~10ヘテロシクロアルキレン、又は置換若しくは非置換のC5~12ヘテロアリールであり、ヘテロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン又はヘテロアリールは、N、O又はSの少なくとも1つ又は複数を含み、
置換物は、非水素置換基で置換されており、非水素置換基は、-Ra、-O-、=O、-ORa、-SRa、-S-、-N(Ra)2、=NRa、-C(Rb)3、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N-OH、=N2、-N3、-NHC(=O)Ra、-C(=O)Ra、-C(=O)NRaRa-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2ORa、-S(=O)2NRa、-S(=O)Ra、-C(=O)Ra、アルキレン-C(=O)Ra、-C(=S)Ra、-C(=O)ORa、アルキレン-C(=O)ORa、-C(=O)O-、アルキレン-C(=O)O-、-C(=S)ORa、-C(=O)SRa、-C(=S)SRa、-C(=O)NRaRa、アルキレン-C(=O)NRaRa、-C(=S)NRaRa、-C(-NRa)NRaRa及びRbからなる群から選択されるいずれか1つ又は複数である。
【0274】
加えて、Abに連結されている窒素原子は、抗体のFcのリジン246又はリジン248に含有されていてよい。特定の実施形態において、Abに連結されている窒素は、抗体のFcのリジン246に含まれていてよい。特定の実施形態において、Abに連結されている窒素原子は、抗体のFcのリジン248に含有されていてよい。
【0275】
更に、この場合において、Fc結合性ペプチドは、第1のクリックケミストリー官能基を含むことができる。クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルのいずれか1つ又は複数であり、この場合において、シクロアルキン、共役ジエン及びジエンは、上に記載されているものと同じである。加えて、Fc結合性ペプチドは、その配列のN末端に隣接するアミノ酸残基に第1のクリックケミストリー基を含むことができる。更に、Fc結合性ペプチドは、その配列のN末端に第1のクリックケミストリー基を含むことができる。代替として、Fc結合性ペプチドは、その配列のC末端に隣接するアミノ酸残基に第1のクリックケミストリー官能基を含むことができる。更に、Fc結合性ペプチドは、その配列のC末端に第1のクリックケミストリー官能基を含むことができる。
【0276】
Fpは、Fc結合性ペプチドである。更に、Fpは、式13又は14から選択されるいずれか1つのペプチドであり得る。式13及び14についての詳細は、すでに記載されているものと同じである。
【0277】
Fpは、アミノ酸残基6のY3を介して連結されていてよい。この場合において、アミノ酸残基6は、リジン、オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、又は2,4-ジアミノ酪酸であり得る。
【0278】
nは、1以上及び4以下の整数である。例として、nは、2であり得る。この場合において、Fpは、1つの抗体における2つのFcにそれぞれ含まれるリジン246又はリジン248に連結されることで、こうした構造を生成することができる。別の例において、nは、4であり得る。この場合において、R"は、1つの抗体における2つのFcにそれぞれ含まれるリジン246及びリジン248に連結されることで、こうした構造を生成することができる。
【0279】
nは、2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン246に含有されていてよい。別の例において、nは、2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン248に含有されていてよい。
【0280】
式6の抗体は、以下の反応スキーム4によって表される反応によって生成することができる。
【0281】
【化61】
【0282】
この場合において、式4及び6についての詳細は、すでに記載されているものと同じである。
【0283】
この場合において、配列番号:1から5のペプチドが、残基6に2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、オルニチン又はリジンをそれぞれ含むと、全ての対応する残基は、遊離アミン基を含めた炭素骨格の長さに差異を有するのみで、同様の構造を有する。したがって、配列番号:1から5の全てのペプチドは、抗体のFcドメインに結合するという特性を示す。
【0284】
抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するための方法は、(3)第1のクリックケミストリー官能基を含む抗体を、第1のクリックケミストリー官能基に相補的な第2のクリックケミストリー官能基を含むペイロードと反応させることによって、抗体-ペイロードコンジュゲートを調製するステップを含むことができる。
【0285】
該ペイロードは、活性部分を含むことができる。活性部分は、核酸、ペプチド及び化合物から選択される1つ又は複数であってよい。活性部分は、薬物分子、画像化部分、光学的薬剤、ビタミン及び毒素からなる群から選択されるいずれか1つであってよい。特定の実施形態において、活性部分は、薬物分子であり得る。薬物分子は、プロドラッグ、前駆薬物又は薬物であり得る。薬物分子は、抗がん薬、抗炎症剤、別の抗疾患剤、及び抗微生物剤(抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤)であってよい。特定の実施形態において、薬物分子は、メルタンシン(DM1)であり得る。特定の実施形態において、ペイロードは、2種以上の薬物分子を含むことができる。特定の実施形態において、活性部分は、画像化部分であり得る。画像化部分は、造影剤、放射性同位体、蛍光材料であってよい。特定の実施形態において、活性部分は、光学的薬剤、ビタミン、毒素等であり得るが、これらに限定されない。
【0286】
加えて、ペイロードは、第2のクリックケミストリー官能基を含む。クリックケミストリー官能基は、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルのいずれか1つ又は複数であり、この場合において、シクロアルキン、共役ジエン及びジエンは、上に記載されているものと同じである。
【0287】
例において、抗体-ペイロードコンジュゲートは、式7によって表すことができる。
【0288】
【化62】
【0289】
式7において、
Abは、抗体である。特定の実施形態において、Abは、トラスツズマブであり得る。
【0290】
Abに連結されている窒素原子は、抗体のFcのリジン246又はリジン248に含有されていてよい。特定の実施形態において、Abに連結されている窒素は、抗体のFcのリジン246に含有されていてよい。特定の実施形態において、Abに連結されている窒素原子は、抗体のFcのリジン248に含有されていてよい。
【0291】
Bは、第1のクリックケミストリー官能基及び第2のクリックケミストリー官能基のクリック化学によって形成される構造のいずれか1つであってよい。例えば、Bは、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルから選択される2つの反応によって生成することができる構造のいずれか1つであってよい。特定の実施形態において、Bは、
【0292】
【化63】
【0293】
であり得る。式中、A1は、抗体に連結されていてよく、A2は、Amに連結されていてよい。又は、A1は、Amに連結されていてよく、A2は、抗体に連結されていてよい。
【0294】
Amは、活性部分又はそれを含む構造である。一実施形態において、Amは、2つ以上の活性部分を含むことができる。活性部分に関する内容は、ペイロードの記載に記載されているものと同じである。
【0295】
nは、1以上及び4以下の整数である。例として、nは、2であり得る。この場合において、ペイロードは、1つの抗体における2つのFcにそれぞれ含まれるリジン246又はリジン248に連結されることで、こうした構造を生成することができる。別の例において、nは、4であり得る。この場合において、R"は、1つの抗体における2つのFcにそれぞれ含まれるリジン246及びリジン248に連結されることで、こうした構造を生成することができる。
【0296】
nは、2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン246に含有されていてよい。別の実施形態において、nは、2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン248に含有されていてよい。
【0297】
式7によって表される化合物は、例として反応スキーム5によって生成することができる。
【0298】
【化64】
【0299】
この場合において、R"は、第1のクリックケミストリー官能基であり、式5が上記に記載されている場合、記載されているものと同じである。
【0300】
更に、R''''は、第2のクリックケミストリー官能基であり、ペイロードが記載されている場合、記載されているものと同じである。
【0301】
例において、抗体-ペイロードコンジュゲートは、式8によって表すことができる。
【0302】
【化65】
【0303】
式8において、
Abは、抗体である。特定の実施形態において、Abは、トラスツズマブであり得る。
【0304】
Abに連結されている窒素原子は、抗体のリジン246又はリジン248に含有することができる。特定の実施形態において、Abに連結されている窒素原子は、抗体のリジン246に含有されていてよい。特定の実施形態において、Abに連結されている窒素原子は、抗体のリジン248に含有されていてよい。
【0305】
Bは、第1のクリックケミストリー官能基及び第2のクリックケミストリー官能基のクリック化学によって形成される構造のいずれか1つであってよい。例えば、Bは、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール)、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド、共役ジエン、並びにジエノフィルから選択される2つの反応性部分によって生成することができる構造のいずれか1つであってよい。特定の実施形態において、Bは、
【0306】
【化66】
【0307】
であり得る。式中、A1は、抗体に連結されていてよく、A2は、Amに連結されていてよい。又は、A1は、Amに連結されていてよく、A2は、抗体に連結されていてよい。
【0308】
Fpは、Fc結合性ペプチドである。更に、Fpは、式13又は14から選択されるいずれか1つのペプチドであり得る。式13及び14についての詳細は、すでに記載されているものと同じである。
【0309】
Fpは、アミノ酸残基6のY4を介して連結されていてよい。この場合において、アミノ酸残基6は、リジン、オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、又は2,4-ジアミノ酪酸であり得る。
【0310】
Amは、活性部分又はそれを含有する構造である。特定の実施形態において、Amは、2つ以上の活性部分を含むことができる。活性部分に関する内容は、ペイロードの記載に記載されているものと同じである。
【0311】
Bは、Fc結合性ペプチド配列のN末端に隣接するアミノ酸残基に結合されていてよい。別の実施形態において、Bは、Fc結合性ペプチドのN末端に結合されていてよい。別の実施形態において、Bは、Fc結合性ペプチド配列のC末端に隣接するアミノ酸残基に結合されていてよい。別の実施形態において、Bは、Fc結合性ペプチドのC末端に結合されていてよい。
【0312】
nは、1以上及び4以下の整数である。例として、nは、2であり得る。この場合において、ペイロードは、1つの抗体における2つのFcにそれぞれ含まれるリジン246又はリジン248に連結されることで、こうした構造を生成することができる。別の例において、nは、4であり得る。この場合において、ペイロードは、1つの抗体における2つのFcにそれぞれ含まれるリジン246及びリジン248に連結されることで、こうした構造を生成することができる。
【0313】
nは、2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン246に含有されていてよい。代替として、nは、2であり、Abに連結されている窒素原子は、抗体の両Fcのリジン248に含有されていてよい。
【0314】
式8によって表される化合物は、例として反応スキーム6によって生成することができる。
【0315】
【化67】
【0316】
この場合において、R'''''は、第1のクリックケミストリー官能基であり、式6が上記に記載されている場合、記載されているものと同じである。第1のクリックケミストリー官能基は、Fc結合性ペプチドを合成するプロセスにおいてアミノ酸残基に関与し得る。任意の1つの残基は、第1のクリックケミストリー官能基が関与するアミノ酸残基として使用することができるが、アミノ酸残基は、残基6でないことが好ましい。これは、残基6が、リンカーとの置換反応のために設計された残基であるからである。該ペプチドの人工合成のプロセスを介して、Fc結合性ペプチドは、その配列のN末端に隣接するアミノ酸残基に第1のクリックケミストリー官能基を含むことができる。特定の実施形態において、Fc結合性ペプチドは、その配列のN末端に第1のクリックケミストリー基を含むことができる。特定の実施形態において、Fc結合性ペプチドは、その配列のC末端に隣接するアミノ酸残基に第1のクリックケミストリー官能基を含むことができる。特定の実施形態において、Fc結合性ペプチドは、その配列のC末端に第1のクリックケミストリー官能基を含むことができる。
【0317】
更に、R''''は、第2のクリックケミストリー官能基であり、ペイロードが記載されている場合、記載されているものと同じである。
【0318】
本出願は、ペイロードが所望の標的分子に連結され得るように輸送及び結合反応を補助するリンカーを提供することができる。
【0319】
該リンカー又はリンカー部分は、標的分子に直接連結することができる。標的分子に直接連結されるリンカー部分は、ペイロードに連結されていてよい。
【0320】
該リンカー部分は、リンカーの残基の一部又は官能基の一部であり得る。
【0321】
例えば、リンカー部分は、R"又はR"を含む残基の一部であり得る。
【0322】
例えば、リンカー部分は、R"を除外するリンカーの残基の一部であり得る。
【0323】
リンカー部分が連結されている標的分子は、クリック反応によってペイロードに連結することができ、すなわち、クリックケミストリー官能基間の反応であるが、これらに限定されない。
【0324】
例証的な実施形態において、リンカーが式1の構造を有する場合、
標的分子に連結されているリンカー部分は、クリックケミストリー官能基を含むことができる。
【0325】
この場合において、標的分子に連結されているリンカー部分は、ペイロードと一緒にクリック反応に参加し得る。
【0326】
こうしたリンカーは、標的分子の生物学的活性に影響し得ない。すなわち、リンカーは、標的分子の半減期、排泄、血液安定性等に対する影響をほとんど有することがない。
【0327】
標的分子の半減期は、標的分子のFcRn結合親和性によって決定することができる。例えば、標的分子は、FcRnに結合することによってインビボでリサイクルすることができ、半減期は、インビボで増加され得る。
【0328】
標的分子の排泄は、標的分子が、タンパク質本体の凝集の結果として腎臓によって排泄される程度によって、決定することができる。
【0329】
例として、リンカーは、短い細胞内半減期を有するタンパク質及び化合物を連結することによって、血液中の薬物の半減期を増加させることができる。例えば、薬物は、長い細胞内半減期を有する標的分子に連結されていてよい。
【0330】
別の例証的な実施形態において、リンカーが式2の構造を有する場合、
標的分子に連結されているリンカー部分は、クリックケミストリー官能基を含むことができない。
【0331】
標的分子に連結されているリンカー部分は、クリックケミストリー官能基を含むペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び/又は化合物に連結されていてよい。
【0332】
該ペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び/又は化合物は、クリック反応によってペイロードに連結することができる。
【0333】
こうしたリンカーは、標的分子の生物学的活性に影響し得る。リンカーが標的分子の生物学的活性に影響する場合、リンカーは、標的分子の半減期、排泄又は血液安定性に影響する。例えば、リンカーが標的分子に間接的に連結されている場合、リンカーは、標的分子の半減期を低減することによってペイロードをインビボで速やかに放出することができる。
【0334】
該リンカーは、特定の標的分子に対する結合親和性を有するペプチド又はポリペプチドに連結することができる。こうしたリンカーは、ペイロードを標的分子に部位特異的に連結することができる。
【0335】
例として、標的分子は、抗体であり得る。
【0336】
例えば、抗体は、IgG抗体又はIgG抗体の部分的断片であってよい。IgG抗体は、ヒトIgG (IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)及び/又はウサギIgGであってよい。IgG抗体は、ヒト誘導CH2-CH3ドメインであってよい。標的分子は、抗体又は抗体の部分的断片であり得るが、これらに限定されない。
【0337】
例として、Fc結合性ペプチドは、抗体との結合親和性を有することができる。
【0338】
例えば、Fc結合性ペプチドは、IgG抗体との結合親和性を有することができる。Fc結合性ペプチドは、IgG抗体の特定のドメインとの特異的結合親和性を有することができる。
【0339】
例えば、Fc結合性ペプチドは、IgG抗体の重鎖又は軽鎖可変領域に対する特異性を有することができる。
【0340】
例えば、Fc結合性ペプチドは、IgG抗体の重鎖の定常ドメインとの特異性を有することができる。この場合において、重鎖定常ドメインは、CH2ドメイン及び/又はCH3ドメインであり得る。
【0341】
Fc結合性ペプチドは、化合物が連結されているペプチド又はポリペプチドであってよい。
【0342】
例えば、Fc結合性ペプチドは、クリックケミストリー官能基を含むことができる。
【0343】
本発明は、がんを処置するための方法であって、抗体-ペイロードコンジュゲートを投与することを含む、方法を提供する。この場合において、がんは、膀胱がん、骨がん、脳がん、乳がん、心臓がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、線維肉腫、胃がん、胃腸がん、頭頸部がん、カポジ肉腫、腎がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、前立腺がん、精巣生殖細胞がん、胸腺腫及び胸腺がんから選択することができる。更に、がんは、乳がんであってよい。
【0344】
本発明は、がんを処置するための医薬組成物であって、抗体-ペイロードコンジュゲートを含む、医薬組成物を提供する。この場合において、がんは、膀胱がん、骨がん、脳がん、乳がん、心臓がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、線維肉腫、胃がん、胃腸がん、頭頸部がん、カポジ肉腫、腎がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、前立腺がん、精巣生殖細胞がん、胸腺腫及び胸腺がんから選択することができる。更に、がんは、乳がんであってよい。
【0345】
後文において、実施例を介して、本発明がより詳細に記載される。
【0346】
これらの例は、本発明をより具体的に記載するためだけに提供され、本発明の範疇が、これらの実施例によって限定されないことは、本発明が関係する当業者に明白である。以下の実施例における化合物の名称に示されている数字は、図面を参照して書かれている。
【実施例1】
【0347】
化合物I (Transリンカー: NHS &ノルボルネン、式1-1-2)の合成方法及びその構造の確認
実施例1-1.
化合物1の合成及び構造の確認
10g (68.4mmol、1.0当量)のモノメチルグルタレートを250mLのジクロロメタン(DCM)中に溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。17.7g (92.3mmol、1.34当量)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCi)及び24mL (138mmol、2.0当量)のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を、そこへ滴下によりゆっくり添加し、結果として得られた溶液を20分間撹拌し、次いで、8mL (68.7mmol、1.0当量)のO-ベンジルヒドロキシアミンを、そこへ滴下によりゆっくり添加した。18時間後に、反応溶液を減圧下で濃縮によって除去し、残渣を酢酸エチル(EA)中に再溶解させた。10%クエン酸溶液を使用して有機層を3回洗浄し、飽和塩溶液及び硫酸ナトリウムを使用して乾燥させた。標的化合物を精製することなく次の反応において使用した(粗収率: 12.9g、88%)。TLC (EA:Hex = 2:1); Rf = 0.5
1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 7.35 (d, J = 3.5 Hz, 5H), 4.75 (d, J = 3.5 Hz, 2H), 3.56 (d, J = 4.0 Hz, 3H), 2.26 (td, J = 7.3, 3.8 Hz, 2H), 1.96 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 1.78 - 1.61 (m, 2H).
【0348】
実施例1-2
化合物2の合成及び構造の確認
12.9gの化合物1を200mLのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させた後、結果として得られた溶液を0℃で撹拌した。24mL (160mmol、3.08当量)の1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(DBU)及び10mL (160mmol、3.08当量)のヨウ化メチル(MeI)を、そこへ滴下によりゆっくり添加した。0.2mLのジエチルアミンをそこへ滴下によりゆっくり添加した。結果として得られた溶液を20時間の間撹拌した後、反応溶媒をセライトと混合し、減圧下で濃縮によって除去し、標的化合物をカラムクロマトグラフィー(EA:Hex=1:1)によって精製することで、7.6g (収率: 56%)を得た。TLC (EA:Hex = 1:1); Rf = 0.5
1H NMR (300 MHz, cdcl3) δ 7.44 - 7.33 (m, 5H), 4.82 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 3.20 (s, 3H), 2.43 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 2.34 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.98 - 1.85 (m, 2H).
【0349】
実施例1-3
化合物3の合成及び構造の確認
4.18g (15.8mmol、1.0当量)の化合物2を100mLのテトラヒドロフラン(THF)中に溶解させた後、結果として得られた溶液を撹拌した。5mLの2N水酸化リチウム(LiOH)をそこへ滴下により0℃でゆっくり添加し、次いで、結果として得られた溶液を3時間の間撹拌した。60mLのH2Oをそこに添加することによって反応を停止させ、150mlのEAを使用して洗浄を水性層上で2回行った。次いで、2N HCl溶液を使用して水性層をpH3.0に滴定し、50mlのEAを使用して標的化合物を3回抽出した。飽和塩溶液及び硫酸ナトリウムを使用して、有機層を乾燥させることで、2.46g (収率: 62%)を得た。TLC (EA:Hex = 1:1); Rf = 0.1
1H NMR (300 MHz, DMSO) δ12.06 (s, 1H), 7.51 - 7.29 (m, 5H), 4.86 (s, 2H), 3.13 (s, 3H), 2.38 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.22 (dt, J = 11.7, 7.4 Hz, 4H).
【0350】
実施例1-4
化合物4の合成及び構造の確認
2.46gの化合物3を40mLのメタノール(MeOH)中に溶解させた後、水素化反応を炭素上のパラジウム(Pd/C)の存在下で18時間かけて行い、反応を停止させた後、短路カラムを介してPd/Cを除去し、次いで、標的化合物を精製及び濃縮することで、1.2g (収率: 76%)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 12.06 (s, 1H), 7.51 - 7.29 (m, 5H), 4.86 (s, 2H), 3.13 (s, 3H), 2.38 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.22 (dt, J = 11.7, 7.4 Hz, 4H).
【0351】
実施例1-5
化合物5の合成及び構造の確認
0.17g (1.06mmol、1.0当量)の化合物4を10mLのDCM中に溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。0.22g (1.73mmol、1.63当量)のエキソ-5-ノルボルネン酸塩化物及び0.2mL (1.1mmol、1.0当量)のDIPEAを、そこへ滴下により0℃でゆっくり添加した。結果として得られた溶液を2時間の間撹拌した後、10%クエン酸溶液を使用して有機層を3回洗浄し、飽和塩溶液及び硫酸ナトリウムを使用して乾燥させた。標的化合物を精製することなく次の反応において使用した(粗収率: 0.24g、68%)。TLC (DCM:MeOH = 10:1); Rf = 0.3
予想M.W. (M+H)+: 282.13g/mol
測定M.W. (M+H)+: 282.1g/mol
【0352】
実施例1-6
化合物Iの合成及び構造の確認
0.24g (0.72mmol、1.0当量)の化合物5を3mLのDCM中に溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。0.26g (0.87mmol、1.2当量)のN,N,N',N'-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオルボレート(TSTU)及び0.15mL (0.87mmol、1.2当量)のDIPEAを、そこへ滴下によりゆっくり添加した。結果として得られた溶液を1時間の間撹拌した後、10%クエン酸溶液を使用して有機層を3回洗浄し、飽和塩溶液及び硫酸ナトリウムを使用して乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(EA:Hex = 1:1)を介して標的化合物を精製することで、0.04g (収率: 15%)を得た。TLC (EA:Hex = 1:1); Rf = 0.3 (図1を参照されたい)
1H NMR (300 MHz, DMSO) δ6.18 (ddd, J = 16.9, 5.5, 3.0 Hz, 2H), 2.94 (s, 1H), 2.80 (s, 4H), 2.71 (s, 1H), 2.67 (q, J = 1.0 Hz, 3H), 2.25 (dd, J = 25.9, 18.6 Hz, 4H), 1.86 (ddd, J = 18.9, 11.5, 5.8 Hz, 4H), 1.45 - 1.26 (m, 4H).
【実施例2】
【0353】
化合物II (Cisリンカー: NHS &ノルボルネン、式2-1-2)の合成方法及び構造の確認
実施例2-1
化合物6の合成及び構造の確認
0.1g (0.88mmol、1.0当量)のN-メチルヒドロキシアミン塩酸塩を2mLのテトラヒドロフラン(THF)中に-25℃で溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。0.07g (0.88mmol、1.0当量)のグルタル酸無水物をそこに添加し、結果として得られた溶液を10分間撹拌し、次いで、0.25mL (1.76mmol、2.0当量)のトリエチルアミンを、そこへ滴下によりゆっくり添加した。1時間後に、0.14g (0.88mmol、1.0当量)の(1S,2R,4S)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2-カルボニルクロリド及び0.12mL (0.88mmol、1.0当量)のトリエチルアミンを、そこへ滴下によりゆっくり添加し、次いで、反応を室温で1時間の間行った。反応溶液を減圧下で濃縮によって除去した後、残渣を酢酸エチル(EA)中に再溶解させ、10%クエン酸溶液を使用して、結果として得られた溶液を3回洗浄し、飽和塩溶液及び硫酸ナトリウムを使用して乾燥させた。標的化合物を精製することなく次の反応において使用した。TLC (DCM:MeOH = 3:1、酢酸1滴); Rf = 0.4
算出質量 (M+H)+: 282.13g/mol
測定質量 (M+H)+: 282.1g/mol
【0354】
実施例2-2
化合物IIの合成
化合物6を2mLのジクロロメタン(DCM)中に溶解させ、0.22g (0.73mmol、0.8当量)のTSTU及び0.15mL (0.88mmol、1.0当量)のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)をそこへ滴下によりゆっくり添加した。1時間の間の反応後、10%クエン酸溶液を使用して反応溶液を3回洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和塩溶液及び硫酸ナトリウムを使用して乾燥させた。カラムクロマトグラフィー(EA:Hex = 1:1)を介して、標的化合物を精製した。TLC (EA:Hex = 2:1); Rf = 0.4 (図3を参照されたい)
【0355】
実施例2-3
化合物IIの構造の確認
実施例2-1及び2-2において特定されている方法によって、最終化合物IIを合成し、図6に例示されている通りのHPLC分析を介して、異性体の存在を確認した。図6に例示されている分析条件に基づいて、HPLC精製を行い、HPLC分析を介して、図7に示されている通りの純度を有する化合物II (シス)を得た。精製された化合物IIの構造分析を質量分光分析法によって確認することによって、最終化合物IIの分析を完了した。
算出質量(M+H)+: 379.14g/mol
測定質量(M+H)+: 379.0g/mol
【実施例3】
【0356】
異性体化合物6 (Cisリンカー又はTransリンカー: NHS &ノルボルネン)の構造の確認
高速液体クロマトグラフ(HPLC)器具を使用して、異性体である化合物6のシス及びトランス構造を確認した。HPLC分析のため、Waters社からのWaters 2695 HPLCモデルを使用し、分析カラムとして、Xbridge C18 (4.6×250mm、5μm; Waters社)を使用し、移動相溶媒の場合において、0.1%トリフルオロ酢酸を含む水をA溶媒として、及び0.075%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルをB溶媒として使用した。上記の記載に従って、各構造の特徴を吸光度によって220nmの波長で分析した。
【0357】
図3に例示されている通り、化合物6のシス形態構造について14.89分で、及び化合物6のトランス形態構造について15.32分で、ピークが観察されたことを確認した。各構造についての分析を質量分光分析法(Shimadzu社、LCMS-8050)によって確認し、図4及び図5は、化合物6のシス及びトランス構造についての質量分光分析法の結果を例示している。分子量を確認した結果として、各ピークに対応する材料として、1個の水素分子が結合されている282の分子量が観察されたことを確認した。
算出質量(M+H)+: 282.13 g/mol
測定質量(M+H)+: 282.1 g/mol
【実施例4】
【0358】
Fc結合性ペプチドの合成及び構造の確認
実施例4-1.
FcBP(6Lys)-ノルボルネンの合成及び構造の確認
【0359】
【化68】
【0360】
実施例4-1-1:
FcBP(6Lys)-ノルボルネンの合成
使用されたFmocアミノ酸のリスト、使用されたFmocアミノ酸の導入の順序
Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Val-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-L-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Asp(tBu)-OH。
【0361】
生成方法
(a)アミノ酸の導入
以下のプロセスにおいて使用される試薬の量は、0.25mモルに基づいていた。0.5gの透明なアミド樹脂(0.48mモル/g、Peptides International社、USA)を合成反応器に入れ、1mモルの各Fmoc-アミノ酸ブロックを、C末端からN末端へのペプチドアミノ酸配列の順序で秤量及び調製した。
【0362】
Fmoc-アミノ酸を活性化することによって活性化残基を透明なアミド樹脂に付着させる反応を、C末端アミノ酸から逐次行った。
【0363】
Fmocの除去を20%ピペリジン含有DMF中で行い、残基の活性化及び導入のため、該配列に従って調製されたアミノ酸を、2mLの0.5M HOBt含有DMF溶液、2mLの0.5M HBTU含有DMF溶液、及び174μLのDIPEAと5分間混合し、次いで、結果として得られた混合物を、樹脂を含有する反応器に注ぎ入れ、2時間の間混合した。
【0364】
導入反応の確認をKaiser試験方法によって行い、反応がないことが確認された場合、導入反応をもう一度反復したか、又は20% Ac2O含有DMF溶液でキャッピングを行った。樹脂をDMF及びDCMで十分に洗浄した後に、各導入反応及びFmoc除去プロセスにおける次のステップに移した。標的ペプチド配列が完了するまで、こうしたプロセスを反復して行った。
【0365】
(b) H-PEG8-OHの導入
全てのアミノ酸導入を完了した後、N末端にH-PEG8-OHを導入するため、1mLのDMF溶液中の0.5M Fmoc-N-アミド-dPEG8-酸、1mLの0.5M HBTU含有DMF溶液、1mLの0.5M HOBt含有DMF溶液、及び87μLのDIPEAを5分間混合し、次いで、結果として得られた混合物を、樹脂を含有する反応器に注ぎ入れ2時間の間混合した。
【0366】
反応の進行をKaiser試験方法によって確認し、未反応アミンが残っていると決定した場合、反応時間を1時間から3時間更に延長したか、又は反応溶液を空にし、前に記述の反応プロセスを再び反復した。20%ピペリジン含有DMFを使用して、N末端Fmoc保護基を除去し、次いで、ペプチドが付着されている樹脂を乾燥及び秤量した。
【0367】
(c)ノルボルネンの導入
N末端Fmoc保護基の除去のため、4当量のノルボルネンカルボン酸、2mLの0.5M HOBt含有DMF溶液、2mLの0.5M HBTU含有DMF溶液、及び174μLのDIPEAを樹脂と5分間混合し、次いで、結果として得られた混合物を、樹脂を含有する反応器に注ぎ入れ、2時間の間混合した。導入反応の確認をKaiser試験方法によって行い、反応がないことが確認された場合、導入反応をもう一度反復した。
【0368】
(d)ステップ(c)で調製された250mgのペプチド付着樹脂を、TFA、TIS、水及びEDT (94:1.0:2.5:2.5)の2mlの混合物と、室温で120分間撹拌することによって、ペプチドを樹脂から切断した。切断混合物を濾過し、濾液を窒素ガスで約半分濃縮し、次いで、エーテルを注ぐことで、ペプチドを沈殿させた。沈殿ペプチドをエーテルで3回更に洗浄し、窒素ガスで乾燥させた。乾燥沈殿物を0.1% TFA-30% ACN含有水中に溶解させ、結果として得られた溶液を6時間の間撹拌し、次いで濃縮した。
【0369】
5%-DMSO-20%-ACNを0.1mg/mLの濃度で含有する0.01M酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.5)溶液中に、濃縮物を溶解させた後、結果として得られた溶液を空気曝露状態において3日間撹拌した。ジスルフィド結合形成反応の進行をHPLCによって観察し、反応がこれ以上更に進行しないことを決定した場合、反応溶液をフリーズドライすることで、ペプチド沈殿物を得た。
【0370】
(e)精製
ステップ(d)において凍結乾燥によって得られたペプチド沈殿物を、以下のTable 5 (表5)に示されているprep-LC条件下で精製し、凍結乾燥させた。得られたペプチドの各々が90%以上の純度を有することを分析HPLCによって確認し、結果は、図8に例示されている。
ノルボルネン-PEG8-Asp-Cys*-Ala-Trp-His-Lys-Gly-Glu-Leu-Val-Trp-Cys*-Thr-NH2 (Cys*:ジスルフィド結合部位)
【0371】
【表5】
【0372】
実施例4-1-2:
FcBP(6Lys)-ノルボルネン(酸化形態)の構造の確認
FcBP (6Lys)の合成をLC質量ベースの分子量測定によって確認した。
測定器具: Waters Quattro Premier XE
算出分子量: 2088.40g/mol
測定分子量(M/2+H)2+: 1044.84 g/mol
【0373】
結果は、図9に例示されている。
【0374】
実施例4-2.
化合物I-FcBP (6Lys)-ノルボルネンの合成及び構造の確認
【0375】
【化69】
【0376】
実施例4-2-1:
化合物I-FcBP (6Lys)-ノルボルネンの合成
化合物I (trans-ノルボルネンWeinrebアミド)-FcBPをDMF中で合成し、化合物IをFcBP (6Lys)-ノルボルネン中に導入するため、3当量のDIPEA及び3μmolの化合物Iを、DMF中に溶解させた2.5μmolのFcBP (6Lys)-ノルボルネン中に溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。
【0377】
導入反応を確認するため、分析をHPLCによって行い、反応が停止しなかった場合、そこにDIPEAを1当量ずつ添加することによって、反応の停止を観察した。
【0378】
反応の停止を確認した後、反応溶液を濃縮し、分取-HPLCを介して、I-FcBP (6Lys)-ノルボルネンを精製した。精製後に2.07μmolを凍結乾燥によって得て、純度もHPLCを使用して確認した(純度; >95% (HPLC)、収率: 83%)。
【0379】
結果は、図10に例示されている。
【0380】
実施例4-2-2:
化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンの構造の確認
化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンの合成をLC質量ベースの分子量測定によって確認した。
測定器具: Waters Quattro Premier XE
算出分子量: 2351.69g/mol
測定分子量(M/2+H)2+: 1176.42g/mol
【0381】
結果は、図11に例示されている。
【0382】
実施例4-3.
化合物II-FcBP(6Lys)-ノルボルネンの合成及び構造の確認
【0383】
【化70】
【0384】
実施例4-3-1:
化合物II-FcBP (6Lys)-ノルボルネンの合成
化合物II (cis-ノルボルネンWeinrebアミド)-FcBPをDMF中で合成し、化合物IIをFcBP (6Lys)-ノルボルネン中に導入するために、3当量のDIPEA及び3μmolの化合物IIを、DMF中に溶解させた2.5μmolのFcBP (6Lys)-ノルボルネン中に溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。
【0385】
導入反応を確認するため、分析をHPLCによって行い、反応が停止しなかった場合、そこにDIPEAを1当量ずつ添加することによって、反応の停止を観察した。
【0386】
反応の停止を確認した後、反応溶液を濃縮し、分取-HPLCを介して、II-FcBP (6Lys)-ノルボルネンを精製した。精製後に2.02μmolを凍結乾燥によって得て、純度もHPLCを使用して確認した(純度; >95% (HPLC)、収率: 81%)。
【0387】
結果は、図12に例示されている。
【0388】
実施例4-3-2:
化合物II-FcBP (6Lys)-ノルボルネンの確認
測定器具: Waters Quattro Premier XE
算出分子量: 2351.69g/mol
測定分子量(M/2+H)2+: 1176.42g/mol
結果は、図13に例示されている。
【実施例5】
【0389】
抗体-クリックケミストリー化学物質の合成方法及び構造の確認
実施例5-1:
抗体-ノルボルネン
実施例5-1-1:
トラスツズマブ-ノルボルネンの合成方法(1)
化合物I-FcBP (6Lys)-ノルボルネンを使用する導入反応
pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中の化合物I-FcBP (6Lys)-ノルボルネンを使用して、Ab(Lys246/248)-ノルボルネンを合成した。抗体の2つの特定部位中にノルボルネンを導入するため、1抗体当たり6当量の化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンを反応溶液に入れ、次いで、反応を行った。反応は室温で1週以上かかり、反応モニタリング及び停止をHIC-HPLCによって確認した。精製のため、3回の透析(pH5.5、20mMヒスチジン酢酸緩衝液)及びサイズ排除クロマトグラフィー(分子量カットオフ40kDa)を介して、精製を行った。
【0390】
化合物I-FcBP(6Lys)-ノルボルネンと抗体との反応は、図14に例示されており、最終生成物Ab(Lys246/248)-ノルボルネンの構造は、図15に例示されており、HIC-HPLCによる反応モニタリングは、図16に例示されている。
【0391】
実施例5-1-2:
トラスツズマブ-ノルボルネンの合成方法(2)
化合物II-FcBP(6Lys)-ノルボルネンを使用する導入反応
pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中の化合物II-FcBP (6Lys)-ノルボルネンを使用して、Ab(Lys246/248)-ノルボルネンを合成した。抗体の2つの特定部位中にノルボルネンを導入するために、1抗体当たり6当量の化合物II-FcBP (6Lys)-ノルボルネンを反応溶液に入れ、次いで、反応を行った。反応を12時間の間室温で行い、反応モニタリング及び停止をHIC-HPLCによって確認した。3回の透析(pH5.5、20mMヒスチジン酢酸緩衝液)及びサイズ排除クロマトグラフィー(分子量カットオフ40kDa)を介して、精製を行うことで、150mgのトラスツズマブに起因する135mgを得た。(収率=90%)
【0392】
化合物II-FcBP(6Lys)-ノルボルネンと抗体との反応は、図17に例示されており、生成物Ab(Lys246/248)-ノルボルネンの構造は、図18に例示されている。HIC-HPLCによる反応モニタリングは、図19に例示されている。
【0393】
実施例5-2-1:
ハーセプチン-ノルボルネン結合の確認
FcBPノルボルネンリンカーが抗体に含まれている抗体中間体(図18)の確認を質量分光分析法に基づいて検証した。
測定器具: Ultraflex III (TOF/TOF)
分析モード:線形モード
極性:正
検出: m/z 2,000から300,000
レーザー反復速度: 100Hz
ショットの数: 1,000ショット
偏向:オン、5,000Da
電圧:イオン源I 25.00kV、イオン源II 23.00kV、レンズ9.00kV
算出分子量: 152,385g/mol
測定分子量: 152,407g/mol (M+Na)
【0394】
分析結果は、図20に例示されている。
【実施例6】
【0395】
抗体薬物コンジュゲートの合成及び確認
実施例6-1:
抗体-薬物コンジュゲーション
実施例6-1-1:
トラスツズマブ-DM1の合成方法
ノルボルネンの2個の分子が化合物II-FcBP(6Lys)-ノルボルネンによって導入されたトラスツズマブを使用して、抗体-ペイロードコンジュゲートの合成を行った(図18)。4.5mg/mLの濃度で25mLの量を使用して、反応を行い、テトラジン-PEG8-DM1薬物のコンジュゲーションを、抗体にコンジュゲートされているノルボルネンとの双直交化学について試みた。抗体と比較して、4当量の薬物を使用し、コンジュゲーション反応を20mM酢酸ヒスチジン溶液中でpH5.5にて室温で24時間の間行った。HIC-HPLCによってコンジュゲーション反応の観察を確認し、FcBPリンカーがトラスツズマブに結合された場合にのみ出現する、9.4分の範囲におけるピークが、抗体-FcBPリンカーが薬物と反応すると11.2分の範囲に変化されることを観察することによって、抗体-ペイロードコンジュゲートの生成を観察した。
【0396】
生成物抗体-ペイロードコンジュゲートの構造は、図21に例示されており、HIC-HPLCによる反応モニタリングは、図22に例示されている。図21において、拡大されている構造は、ペイロードの構造であり、非拡大部分は、図18に例示されている構造と同じである。
【0397】
実施例6-1-2:
トラスツズマブ-DM1精製方法
高純度抗体-ペイロードコンジュゲートを得るために、pH5.5で20mM酢酸ヒスチジン溶液を使用する透析、及び高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)を使用するHIC精製を行った。
【0398】
HIC精製条件は、以下の通りである。
FPLCモデル: AKTA純粋
流量: 1mL/min
カラム: HiPrepブチルFF16/10カラム
溶出溶媒: (A)1.5M硫酸アンモニウム+50mMホスフェートpH7.0
(B) 50mMホスフェートpH7.0
溶出条件
0:00~10:00 A:40%、B:60%
10:00~20:00 A:65%、B:35%
20:00~102.5:00 A:75%、B:25%
102:5~115:00 A:100%、B:0%
115:00~135:00 A:100%、B:0%
【0399】
精製された抗体-ペイロードコンジュゲートのHICクロマトグラムは、図19に例示されている。
【0400】
上記方法によって、薬物が2つの部位にコンジュゲートされた(薬物抗体比=2)67mgのトラスツズマブ-DM1を得た。(収率=60%)
【0401】
実施例6-1-3:
トラスツズマブ-DM1結合の確認
FcBPリンカー及び薬物を含む抗体-ペイロードコンジュゲートの確認を質量分光分析法に基づいて検証した。
測定器具: Ultraflex III (TOF/TOF)
分析モード:線形モード
極性:正
検出: m/z 2,000から300,000
レーザー反復速度: 100Hz
ショットの数: 1,000ショット
偏向:オン、5,000Da
電圧:イオン源I 25.00kV、イオン源II 23.00kV、レンズ9.00kV
算出分子量: 155,493g/mol
測定分子量: 155,523g/mol (およそ M+Na)
【0402】
分析結果は、図23に例示されている。
【実施例7】
【0403】
新規な抗体-薬物コンジュゲート(ADC、トラスツズマブ-DM1コンジュゲート)の細胞レベル(インビトロ細胞毒性試験)での医薬的効力の評価
抗体-ペイロードコンジュゲート(ADC、トラスツズマブ-DM1コンジュゲート)の効力を、がん細胞の標的マーカーレベルに基づいて評価し、標的抗原Her2の陽性発現細胞株についてはNCI-N87及びBT474並びに陰性細胞株についてはMDA-MB-468を使用して細胞毒性実験を行った。Her2過剰発現細胞NCI-N87及びBT474において、生成された抗体薬物コンジュゲートを用いて各濃度で細胞を処置することによる観察の結果として、82.1ng/mL及び29.6ng/mLのIC50値を有する優れた抗がん効果が確認された。市販のハーセプチンADC、Kadcylaと比較した場合、同等のレベルで効果が確認されたので、新たなADCとしての有用性を確認することができた。
【0404】
実験についての結果は、図24から図27に例示されている。
【実施例8】
【0405】
新規な抗体-ペイロードコンジュゲート(ADC、トラスツズマブ-DM1コンジュゲート)の動物レベル(インビボ細胞毒性試験)での医薬的効力の評価
標的抗原を過剰発現するNCI-N87胃がん細胞株を皮下に移植することによって、異種移植片モデルを調製し、異種移植片モデルを4つの群に分類することによって、抗がん効力試験を投与材料上で行った。本実験において使用されたBALB/cヌードマウスは、T細胞が欠損しており、がん細胞はマウスに容易に移植されるので、げっ歯類を使用する抗がん効力試験に適当なモデルとして該マウスを使用した。
【0406】
(a)細胞株の調製
熱失活された10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco社、10082-742)を含有するRPMI1640培地(Gibco社、22400-089)を細胞培養フラスコに入れ、1バイアルのヒト腫瘍細胞株(NCI-N87細胞株)をそこに添加し、5% CO2インキュベーター中にて37℃で培養した。PBSを使用して培養フラスコを洗浄し、2.5%トリプシン-EDTA (Gibco社、15090)を10倍に希釈することによって及び次いでそこに希釈トリプシン-EDTAを添加することによって細胞を単離した後、細胞を遠心分離した(1,000rpm、5分)後に上澄みを捨て、次いで、細胞懸濁液を新たな培地で得た。顕微鏡を使用して生存能を確認した後、1.25×107細胞/mLの濃度の培地及びマトリゲルが1:1で混合されている溶液中に細胞懸濁液を希釈することによって、細胞株を調製した。
【0407】
(b)細胞株の移植
細胞株は、「4. 3) (4)細胞株の調製」に記載されている方法に従って調製される。細胞株を調製した時に、細胞株を再懸濁及びホモジナイズし、調製された細胞株を動物に直ちに投与した。細胞株を移植した時に、動物の背部を70%アルコールで消毒し、親指及び人差し指で首の後部上の皮膚を引くことによって皮膚と筋肉との間に空隙を作り出し、次いで、26ゲージ針が備えられている注射針を、親指と人差し指との間の真皮下空隙中に動物の前方から挿入することで、細胞株を2.5×106細胞/0.2mL/頭の用量で皮下投与した。順化期間中、健康な動物を選択し、選択された動物に細胞株を接種した。したがって、細胞株の移植の部位でのサイズが約100mm3から150mm3に達した場合、ランク付けされた腫瘍のサイズに従って、各群における腫瘍のサイズが可能な限り均等に分布されるように分配する。
【0408】
(c)試験群構成、投与量及び投与方法の決定
細胞株= NCI-N87
マウス型= BALB/cヌード(CAnN.Cg-Foxn1nu/CrljOri)
群の数= 5
投与方法=静脈内注射(26ゲージ針シリンジ)の使用
投与量= 5mg/kg
用量の数= 1回/2日、3回投与
観察期間= 5週
群1: PBS、群2:ハーセプチン(トラスツズマブ)、群3:新たに製造されたADC (ハーセプチン-DM1コンジュゲート、1.5st ADC)
【0409】
(d)観察及び検査項目
一般症状
投与及び観察期間中、死亡を含めた一般症状の型、発症の日付、及び症状の程度を1日1回観察し、各個体について記録した。悪化した一般症状を経験した個体は隔離される。
【0410】
体重
体重は、群分離の当日又は試験材料の投与の開始に、及び次いで、その後2回/週、測定される。
【0411】
腫瘍サイズの測定
腫瘍のサイズは、試験材料の投与の開始日から5週間、2回/週、測定される。ノギスを使用して腫瘍の長径及び短径を測定し、以下の等式を使用して腫瘍サイズを算出した。
腫瘍サイズ= ab2/2 (a:長径長さ、b:短径長さ)
【0412】
(e)結果
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びハーセプチン(トラスツズマブ)を注射された群は、5週の観察期間中に腫瘍成長を抑制する傾向を示さなかった。本出願によって生成された抗体-ペイロードコンジュゲート(ハーセプチン-DM1)は、ハーセプチンと比較して腫瘍成長を抑制する優れた能力を有することが確認されたので、抗体-ペイロードコンジュゲートがADCとして首尾よく機能したことが確認された。
【0413】
上記関連の結果は、図28及び図29に例示されている。
【実施例9】
【0414】
炭素長さに従った部位特異的インタラクトームの合成及び確認。
実施例9-1.
化合物II-FcBP(L6Dap、L6Dab、L6Orn、L6Lys)-ノルボルネンの合成及び構造の確認
【0415】
【化71】
【0416】
実施例9-1-1:
FcBP(L6Dap、L6Dab、L6Orn、L6Lys)-ノルボルネンの合成
FcBP(L6Dap):使用されたFmocアミノ酸のリスト及び使用されたFmocアミノ酸の導入の順序(n=1)
Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Val-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Dap(Boc)-OH、Fmoc-L-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Asp(tBu)-OH。
【0417】
FcBP(L6Dab):使用されたFmocアミノ酸のリスト及び使用されたFmocアミノ酸の導入の順序(n=2)
Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Val-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Dab(Boc)-OH、Fmoc-L-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Asp(tBu)-OH。
【0418】
FcBP(L6Orn):使用されたFmocアミノ酸のリスト及び使用されたFmocアミノ酸の導入の順序(n=3)
Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Val-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Orn(Boc)-OH、Fmoc-L-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Asp(tBu)-OH。
【0419】
FcBP(L6Lys):使用されたFmocアミノ酸のリスト及び使用されたFmocアミノ酸の導入の順序(n=4)
Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Val-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-L-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Asp(tBu)-OH。
【0420】
生成方法
(a)アミノ酸の導入
以下のプロセスにおいて使用される試薬の量は、0.25mモルに基づいていた。0.5gの透明なアミド樹脂(0.48mモル/g、Peptides International社、USA)を合成反応器に入れ、1mモルの各Fmoc-アミノ酸ブロックを、C末端からN末端へのペプチドアミノ酸配列の順序で秤量及び調製した。
【0421】
Fmoc-アミノ酸を活性化することによって活性化残基を透明なアミド樹脂に付着させる反応を行い、反応は、C末端アミノ酸から逐次に行われる。
【0422】
Fmocの除去を20%ピペリジン含有DMF中で行った。そして、残基の活性化及び導入のため、配列に従って調製されたアミノ酸を、2mLの0.5M HOBt含有DMF溶液、2mLの0.5M HBTU含有DMF溶液、及び174μLのDIPEAと5分間混合し、次いで、結果として得られた混合物を、樹脂を含有する反応器に注ぎ入れ、2時間の間混合した。
【0423】
導入反応の確認をKaiser試験方法によって行い、反応がないことが確認された場合、導入反応をもう一度反復したか、又は20% Ac2O含有DMF溶液でキャッピングを行った。樹脂をDMF及びDCMで十分に洗浄した後に、各導入反応及びFmoc除去プロセスにおける次のステップに移した。標的ペプチド配列が完了するまで、こうしたプロセスを反復して行った。
【0424】
(b) H-PEG8-OHの導入
全てのアミノ酸導入を完了した後に、N末端にH-PEG8-OHを導入するため、DMF溶液中の1mLの0.5M Fmoc-N-アミド-dPEG8-酸、1mLの0.5M HBTU含有DMF溶液、1mLの0.5M HOBt含有DMF溶液、及び87μLのDIPEAを5分間混合し、次いで、結果として得られた混合物を、樹脂を含有する反応器に注ぎ入れ、2時間の間混合した。
【0425】
反応の進行をKaiser試験方法によって確認し、未反応アミンが残っていると決定した場合、反応時間を1時間から3時間更に延長したか、又は反応溶液を空にし、前に記述の反応プロセスを再び反復した。20%ピペリジン含有DMFを使用して、N末端のFmoc保護基の除去を行い、次いで、ペプチド付着樹脂を乾燥及び秤量した。
【0426】
(c)ノルボルネンの導入
N末端のFmoc保護基の除去のため、4当量のノルボルネンカルボン酸、2mLの0.5M HOBt含有DMF溶液、2mLの0.5M HBTU含有DMF溶液、及び174μLのDIPEAを樹脂と5分間混合し、次いで、結果として得られた混合物を、樹脂を含有する反応器に注ぎ入れ、2時間の間混合した。導入反応の確認をKaiser試験方法によって行い、反応がないことが確認された場合、導入反応をもう一度反復した。
【0427】
(d)ステップ(c)で調製された250mgのペプチド付着樹脂を、TFA、TIS、水及びEDT (94:1.0:2.5:2.5)の混合溶液2mLと、室温で120分間撹拌することによって、ペプチドを樹脂から切断した。切断混合物を濾過し、濾液を窒素ガスで約半分濃縮し、次いで、エーテルを注ぐことで、ペプチドを沈殿させた。沈殿ペプチドをエーテルで3回更に洗浄し、窒素ガスで乾燥させた。乾燥沈殿物を0.1% TFA-30% ACN含有水中に溶解させた後、結果として得られた溶液を6時間の間撹拌し、次いで濃縮した。
【0428】
0.1mg/mLの濃度で5%-DMSO-20%-ACNを含有する0.01M酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.5)溶液中に濃縮物を溶解させた後、結果として得られた溶液を空気曝露状態で3日間撹拌した。ジスルフィド結合形成反応の進行をHPLCによって観察し、反応がこれ以上更に進行しないことを決定した場合、反応溶液をフリーズドライすることで、ペプチド沈殿物を得た。
【0429】
(e)精製
ステップ(d)において凍結乾燥によって得られたペプチド沈殿物を、以下のTable 6 (表6)に示されているprep-LC条件下で精製し、凍結乾燥させた。得られたペプチドの各々が90%以上の純度を有することを確認した。
【0430】
(f)配列
FcBP(L6Dap)-ノルボルネン:ノルボルネン-PEG8-Asp-Cys*-Ala-Trp-His-Dap-Gly-Glu-Leu-Val-Trp-Cys*-Thr-NH2(Cys*:ジスルフィド結合部位)
FcBP(L6Dab)-ノルボルネン:ノルボルネン-PEG8-Asp-Cys*-Ala-Trp-His-Dab-Gly-Glu-Leu-Val-Trp-Cys*-Thr-NH2(Cys*:ジスルフィド結合部位)
FcBP(L6Orn)-ノルボルネン:ノルボルネン-PEG8-Asp-Cys*-Ala-Trp-His-Orn-Gly-Glu-Leu-Val-Trp-Cys*-Thr-NH2(Cys*:ジスルフィド結合部位)
FcBP(L6Lys)-ノルボルネン:ノルボルネン-PEG8-Asp-Cys*-Ala-Trp-His-Lys-Gly-Glu-Leu-Val-Trp-Cys*-Thr-NH2(Cys*:ジスルフィド結合部位)
【0431】
【表6】
【0432】
実施例9-1-2:
化合物II-FcBP (L6Dap)-ノルボルネンの合成
化合物II (cis-ノルボルネンWeinrebアミド)-FcBPをDMF中で合成し、化合物IIをFcBP (L6Dap)-ノルボルネン中に導入するために、3当量のDIPEA及び8.4μmolの化合物IIを、DMF中に溶解させた7.3μmolのFcBP (6Dap)-ノルボルネンに溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。
【0433】
反応の停止を確認した後、反応溶液を濃縮し、化合物II-FcBP (6Dap)-ノルボルネンを分取-HPLCによって精製した。精製後に14.1mgを凍結乾燥によって得、HPLCを使用して純度も確認した(純度; >99% (HPLC)、収率: 83%)。
【0434】
結果は、図30に例示されている。
【0435】
実施例9-1-3:
化合物II-FcBP (L6Dap)-ノルボルネンの構造の確認
測定器具: Waters Quattro Premier XE
算出分子量: 2309.61g/mol
測定分子量(M/2+H)2+: 1155.08g/mol
結果は、図31に例示されている。
【0436】
実施例9-1-4:
化合物II-FcBP (L6Dab)-ノルボルネンの合成
化合物II (cis-ノルボルネンWeinrebアミド)-FcBPをDMF中で合成し、化合物IIをFcBP (L6Dab)-ノルボルネン中に導入するために、3当量のDIPEA及び8.4μmolの化合物IIを、DMF中に溶解させた7.3μmolのFcBP (6Dab)-ノルボルネン中に溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。
【0437】
反応の停止を確認した後、反応溶液を濃縮し、化合物II-FcBP (6Dab)-ノルボルネンは、分取-HPLCによって精製される。精製後に13.8mgを凍結乾燥によって得、HPLCを使用して純度も確認した(純度; >99% (HPLC)、収率: 82%)。
【0438】
結果は、図32に例示されている。
【0439】
実施例9-1-5:
化合物II-FcBP (L6Dab)-ノルボルネンの構造の確認
測定器具: Waters Quattro Premier XE
算出分子量: 2323.64g/mol
測定分子量(M/2+H)2+: 1162.02g/mol
結果は、図33に例示されている。
【0440】
実施例9-1-6:
化合物II-FcBP (L6Orn)-ノルボルネンの合成
化合物II (cis-ノルボルネンWeinrebアミド)-FcBPをDMF中で合成し、化合物IIをFcBP (L6Orn)-ノルボルネン中に導入するために、3当量のDIPEA及び8.3μmolの化合物IIを、DMF中に溶解させた7.2μmolのFcBP (L6Orn)-ノルボルネン中に溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。
【0441】
反応の停止を確認した後、反応溶液を濃縮し、化合物II-FcBP (L6Orn)-ノルボルネンを分取-HPLCによって精製した。精製後に14.8mgを凍結乾燥によって得、HPLCを使用して純度も確認した(純度; >99% (HPLC)、収率: 88%)。
【0442】
結果は、図34に例示されている。
【0443】
実施例9-1-7:
化合物II-FcBP (L6Orn)-ノルボルネンの構造の確認
測定器具: Waters Quattro Premier XE
算出分子量: 2337.66g/mol
測定分子量(M/2+H)2+: 1169.03g/mol
結果は、図35に例示されている。
【0444】
実施例9-1-8:
化合物II-FcBP (L6Lys)-ノルボルネンの合成
化合物II (cis-ノルボルネンWeinrebアミド)-FcBPをDMF中で合成し、化合物IIをFcBP (L6Lys)-ノルボルネン中に導入するために、3当量のDIPEA及び8.3μmolの化合物IIを、DMF中に溶解させた7.2μmolのFcBP (L6Lys)-ノルボルネン中に溶解させ、結果として得られた溶液を撹拌した。
【0445】
反応の停止を確認した後、反応溶液を濃縮し、化合物II-FcBP (6Lys)-ノルボルネンを分取-HPLCによって精製した。精製後に15.4mgを凍結乾燥によって得、HPLCを使用して純度も確認した(純度; >99% (HPLC)、収率: 91%)。
【0446】
結果は、図36に例示されている。
【0447】
実施例9-1-9:
化合物II-FcBP (L6Lys)-ノルボルネンの構造の確認
測定器具: Waters Quattro Premier XE
算出分子量: 2351.69g/mol
測定分子量(M/2+H)2+: 1176.04g/mol
結果は、図37に例示されている。
【実施例10】
【0448】
炭素長さに従った部位特異的インタラクトームの抗体結合効率の検証
実施例10-1.
化合物II-FcBP (L6Dap、L6Dab、L6Orn、L6Lys)-ノルボルネンによる部位特異的抗体-ノルボルネンコンジュゲートの生成
実施例10-1-1:
化合物II-FcBP (L6Dap)-ノルボルネンに基づくトラスツズマブ-ノルボルネンの合成
pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中の化合物II-FcBP (L6Dap)-ノルボルネンを使用して、Ab (Lys246/248)-ノルボルネンを合成した。抗体(トラスツズマブ4mg/mL、1mL)の2つの特定部位中にノルボルネンを導入するために、1抗体当たり6当量の化合物II-FcBP (L6Dap)-ノルボルネンを反応溶液に入れ、次いで、反応を行った。反応温度及び時間について、反応を室温で行うのに12時間かかり、反応モニタリング及び停止をHIC-HPLCによって確認した。トラスツズマブは、HIC-HPLC上にて6.3分から6.4分でピークを呈する。FcBP (L6Dap)-ノルボルネン分子が、トラスツズマブの両方の結合部位のただ1つに結合する場合、ピークは、HIC-HPLC上にて8分で観察される。FcBP (L6Dap)-ノルボルネン分子が、トラスツズマブの両方の部位に結合する場合、ピークは、HIC-HPLC上にて9分で観察される。化合物II-FcBP (L6Dap)-ノルボルネンに基づく抗体との結合反応のモニタリングは、図38に例示されている。9.074分でピークを観察することによって、DAR=2を有する抗体-ペイロードコンジュゲートを合成したことが確認された。
【0449】
実施例10-1-2:
化合物II-FcBP(L6Dab)-ノルボルネンに基づくトラスツズマブ-ノルボルネンの合成
pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中の化合物II-FcBP (L6Dab)-ノルボルネンを使用して、Ab (Lys246/248)-ノルボルネンを合成した。抗体(トラスツズマブ4mg/mL、1mL)の2つの特定部位中にノルボルネンを導入するために、1抗体当たり6当量の化合物II-FcBP (L6Dab)-ノルボルネンを反応溶液に入れ、次いで、反応を行った。反応温度及び時間について、反応を室温で行うのに12時間かかり、反応モニタリング及び停止をHIC-HPLCによって確認した。トラスツズマブは、HIC-HPLC上にて6.3分から6.4分でピークを呈する。FcBP (L6Dab)-ノルボルネン分子が、トラスツズマブの両方の結合部位のただ1つに結合する場合、ピークは、HIC-HPLC上にて8分で観察される。FcBP (L6Dab)-ノルボルネン分子が、トラスツズマブの両方の部位に結合する場合、ピークは、HIC-HPLC上にて9分で観察される。化合物II-FcBP (L6Dab)-ノルボルネンに基づく抗体との結合反応のモニタリングは、図39に例示されている。9.231分でピークを観察することによって、DAR=2を有する抗体-ペイロードコンジュゲートを合成したことが確認された。
【0450】
実施例10-1-3:
化合物II-FcBP(L6Orn)-ノルボルネンに基づくトラスツズマブ-ノルボルネンの合成
pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中の化合物II-FcBP (L6Orn)-ノルボルネンを使用して、Ab (Lys246/248)-ノルボルネンを合成した。抗体(トラスツズマブ4mg/mL、1mL)の2つの特定部位中にノルボルネンを導入するために、1抗体当たり6当量の化合物II-FcBP (L6Orn)-ノルボルネンを反応溶液に入れ、次いで、反応を行った。反応温度及び時間について、反応を室温で行うのに12時間かかり、反応モニタリング及び停止をHIC-HPLCによって確認した。トラスツズマブは、HIC-HPLC上にて6.3分から6.4分でピークを呈する。FcBP (L6Orn)-ノルボルネン分子が、トラスツズマブの両方の結合部位のただ1つに結合する場合、ピークは、HIC-HPLC上にて8分で観察される。FcBP (L6Orn)-ノルボルネン分子が、トラスツズマブの両方の結合部位に結合する場合、ピークは、HIC-HPLC上にて9分で観察される。化合物II-FcBP (L6Orn)-ノルボルネンに基づく抗体との結合反応のモニタリングは、図40に例示されている。8.975分でピークを観察することによって、DAR=2を有する抗体-ペイロードコンジュゲートを合成したことが確認された。
【0451】
実施例10-1-4:
化合物II-FcBP (L6Lys)-ノルボルネンに基づくトラスツズマブ-ノルボルネンの合成
pH7.4でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中の化合物II-FcBP (L6Lys)-ノルボルネンを使用して、Ab (Lys246/248)-ノルボルネンを合成した。抗体(トラスツズマブ4mg/mL、1mL)の2つの特定部位中にノルボルネンを導入するために、1抗体当たり6当量の化合物II-FcBP (L6Lys)-ノルボルネンを反応溶液に入れ、次いで、反応を行った。反応温度及び時間について、反応を室温で行うのに12時間かかり、反応モニタリング及び停止をHIC-HPLCによって確認した。トラスツズマブは、HIC-HPLC上にて6.3分から6.4分でピークを呈する。FcBP (L6Lys)-ノルボルネン分子が、トラスツズマブの両方の結合部位のただ1つに結合する場合、ピークは、HIC-HPLC上にて8分で観察される。FcBP (L6Lys)-ノルボルネン分子が、両方の部位に結合する場合、ピークは、HIC-HPLC上にて9分で観察される。化合物II-FcBP (L6Lys)-ノルボルネンに基づく抗体との結合反応のモニタリングは、図41に例示されている。9.120分でピークを観察することによって、DAR=2を有する抗体-ペイロードコンジュゲートを合成したことが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
【配列表】
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