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  • 特許-包装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】包装材
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230329BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20230329BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230329BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D81/26 J
B32B27/00 H
B32B27/32 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018212520
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020079102
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】396023328
【氏名又は名称】株式会社タケトモ
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 一浩
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199283(JP,A)
【文献】特開2004-050159(JP,A)
【文献】特開2009-061405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0290751(US,A1)
【文献】特開2014-050988(JP,A)
【文献】特開平04-244214(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0117368(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011083872(DE,A1)
【文献】国際公開第2015/88503(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 81/26
B32B 27/00
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂と臭気吸着剤として珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム及びトリオクチルメチルアンモニウムの混合物からなる有機合成ヘクトライトとを含む臭気吸着層を備えた包装材。
【請求項2】
前記臭気がホルムアルデヒドである請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記臭気吸着層上に印刷層を備えた請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
前記臭気吸着層の両面側にオレフィン樹脂からなる保護層を備えた請求項1~3のいずれかに記載の包装材。
【請求項5】
前記包装材を包装体とした場合の最外層に、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)層、ポリオレフィン樹脂層、ポリアミド樹脂(PA)層、ポリエステル樹脂(PE)層のいずれかの1層以上からなる基材層を備えた請求項1~4のいずれかに記載の包装材。
【請求項6】
前記臭気吸着層と前記基材層との間に、アルミニウム箔層、金属蒸着層、シリカ蒸着層、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)層、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)層のいずれかの1層以上からなるバリア層を備えた請求項5に記載の包装材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の包装材から形成してなる包装袋。
【請求項8】
少なくとも1つのブリスターパックを封入してある請求項7に記載の包装袋。
【請求項9】
吸湿剤を封入してある請求項7又は8に記載の包装袋。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の包装材から形成してなる底材に、印刷層を有する蓋材をヒートシールしてあるブリスターパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気を吸着でき、特に医薬品などの包装に好適な包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品には、特異な臭気を発するものがあり、例えば、血圧降下剤のオルメサルタンメドキソミルを含有する錠剤は、不快臭を発することで知られている。このような医薬品の服用者は、不快臭を感じて服用をためらうおそれがあり、アドヒアランスの低下を招く懸念がある。
【0003】
そこで、医薬品から発する不快臭を感じにくくすることができる包装材などが開発されている。
例えば、下記特許文献1には、吸臭剤を含有する吸着層の上に、最外層となるバリア層が順に積層されたPTPブリスター用フィルムであって、吸臭剤として疎水性ゼオライトを含有する吸着層は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択した少なくとも1種類の樹脂を有する主吸着層と、主吸着層の両面に低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択した少なくとも1種類の樹脂を有する副吸着層とを有する3層構成からなり、バリア層は、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含有していることを特徴とするPTPブリスター用フィルムが開示され、臭い成分を吸着する機能を備えたものとしてある。このような構成のPTPブリスター用フィルムにおいて、バリア層にポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)フィルムを用いることもよく知られている。
【0004】
また、下記特許文献2には、プレススルーパックのポケットシートにオルメサルタンメドキソミルを含有する錠剤を包装するための包装材であって、前記包装材が臭い吸着剤を含有する吸着層及びポリ塩化ビニルを含有する基材層を有する多層フィルムであって、前記吸着層が、臭い吸着剤としてハイシリカゼオライトを10~60重量%含有する低密度ポリエチレンを含有する主吸着層及び基材層と対向する側に直鎖状低密度ポリエチレンを含有するシーラント層を有する膜厚30μm~100μmの吸着層であることを特徴とする包装材が開示され、製剤から発生する臭い物質を吸着することができるようにしてある。
【0005】
下記特許文献3には、ガスバリア性フィルム、接着層及び臭気吸着層をこの順番で積層してなる積層フィルムにおいて、該臭気吸着層が、臭気吸着剤を含有するヒートシール性樹脂からなり、該臭気吸着剤が、無機多孔体上に化学吸着剤を担持させてなることを特徴とする積層フィルムからなる医薬品包装体が開示され、医薬品由来の臭気に対して、長期にわたって高い吸着効果を発揮することができるようにしてある。
【0006】
下記特許文献4には、吸収層及び/又は水分遮断層を有する多層積層体であって、多層積層体は、少なくとも1層の吸収層及び少なくとも1層の水分遮断層を有し、水分遮断層は、積層体の少なくとも一方の表面に、又は、少なくとも一方の表面と吸収層との間に設けられた多層構造を有し、又は、少なくとも1層の吸収層を兼ねる水分遮断層が設けられた多層構造を有しており、多層積層体の総厚みが60μm以上、500μm以下であり、水分遮断層の水分透過量が0.7(g/m・40℃・90%RH・24時間)以下であることを特徴とする多層積層体が開示され、錠剤やカプセルなどの固形製剤から発生する「におい」を吸収又は吸着することができるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4659523号公報
【文献】特許第5241503号公報
【文献】特開2014-233407号公報
【文献】特開2016-55639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記例示したとおり、従来では、疎水性ゼオライト等を含む臭い吸着層を備えたフィルムなどを用いて医薬品を包装することにより、医薬品からの不快臭を吸着して抑制し、不快感を与えずに服用しやすくすることが行われている。
本発明者は鋭意研究した結果、従来とは相違する物質を用いても、臭気吸着能を有する包装材になることを見出して本発明を成し得た。
【0009】
そこで、本発明の目的は、臭いを発生する物質、特に不快臭を発する医薬品などの包装に好適な包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態の包装材は、ポリオレフィン樹脂と臭気吸着剤として珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム及びトリオクチルメチルアンモニウムの混合物からなる有機合成ヘクトライトとを含む臭気吸着層を備えたことを特徴とする。
【0011】
このように、オレフィン樹脂にスメクタイトを含有させた臭気吸着層を備えることにより、実用的に十分な吸着能を備えた包装材とすることができる。
【0012】
上記一形態の包装材は、臭気吸着層を両面側にオレフィン樹脂からなる保護層を備えることができ、また、包装材を包装体とした場合の最外層に、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)層、ポリオレフィン樹脂層、ポリアミド樹脂層、ポリエステル樹脂(PE)層のいずれかの1層以上からなる基材層を備えることができる。また、臭気吸着層と基材層との間に、アルミニウム箔層、金属蒸着層、シリカ蒸着層、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)層、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)層のいずれかの1層以上からなるバリア層を備えることができる。
【0013】
保護層を備えることにより、臭気吸着層のスメクタイトと収容物とが直接触れることを防止することができ、バリア層を備えることにより、酸素や水蒸気などの透過を防ぐことができる。
【0014】
上記一形態の包装材は、包装袋に形成することができ、この包装袋はブリスターパックや吸湿剤などを封入することが好ましい。
【0015】
上記一形態の包装材は、ブリスターパックに形成することができ、例えば、PTP包装体の底材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の包装材を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態の包装材を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の一実施形態の包装材1は、図1に示すように、少なくとも臭気吸着層2を備えたものであり、その他に、保護層3、基材層4、バリア層5などを備えることができる。
【0019】
包装材1は、例えば、シート状に形成し、ピロー袋などの包装袋やブリスターパックなどの包装体に形成することができる。包装袋は、三方シール袋、四方シール袋、自立袋などにすることもできる。ブリスターパックは、底材として使用することができ、特に、PTP包装体の底材として使用するのが好ましい。
包装材1は、巻き回したロール状や1枚からなる枚葉状にすることができる。
【0020】
臭気吸着層2は、ポリオレフィン樹脂にスメクタイトを含有させた層であり、臭気を吸着できる。
臭気吸着層2に用いるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などを用いることができる。
スメクタイトとは、層状ケイ酸塩鉱物を主成分とし、膨潤性の粘土鉱物の総称であり、その結晶構造から、水を吸収するとふくらむ性質をもち、またイオン交換性が高いものである。スメクタイトは、モンモリロナイト、サポナイト、スチーブンサイト、ソーコナイト、ヘクトライトなどを含むものである。
【0021】
臭気吸着層2は、スメクタイトとしてヘクトライト(珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム)を用いるのが好ましい。ヘクトライトは、軟らかく粘着性のある鉱物であり、主にカリフォルニア州のヘクター近郊で産出されるものである。さらには、ヘクトライトのなかでも、有機合成ヘクトライトを用いるのが好ましい。有機合成ヘクトライトとは、ヘクトライトの層間陽イオンと4級アンモニウム塩とをイオン交換して有機化したものである。
有機合成ヘクトライトとして、例えば、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム(化学式(Mg2.67Li0.33)(Si4O10)(OH)2)とトリオクチルメチルアンモニウム(化学式[(C8H17)3(CH3)N]0.33)の混合物を用いることができる。この混合物の具体例としては、製品名「スメクトン-STN」(クニミネ工業株式会社)を挙げることができる。
【0022】
臭気吸着層2は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対してスメクタイト5質量部~200質量部、特に10質量部~150質量部、さらには20質量部~100質量部含むのが好ましい。
臭気吸着層2は、ポリオレフィン樹脂にスメクタイトを混練し、単層構成として形成することができる。スメクタイトは層中に均一に分散させることが好ましい。
【0023】
臭気吸着層2の厚みは、30μm~80μm、特に40μm~60μmにするのが好ましい。
【0024】
保護層3は、臭気吸着層2に含まれるスメクタイトと収容物とが直接に触れることを防止するための層であり、ポリオレフィン樹脂からなる層である。
保護層3は、臭気吸着層2の表裏の片面側又は両面側に設けることができる。また保護層3は設けなくてもよいが、設ける場合は、臭気吸着層2に直接設けても他の層を介在させて設けてもよい。
保護層3に用いるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などを用いることができる。
【0025】
保護層3は、本層の機能を妨げない限度においてポリオレフィン樹脂以外の成分を含んでいてもよく、ポリオレフィン樹脂を95質量%以上、特に99質量%以上(100質量%を含む)含むのが好ましい。
【0026】
保護層3の厚みは、10μm~30μm、特に15μm~25μmにするのが好ましい。
【0027】
基材層4は、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)層、ポリオレフィン樹脂層、ポリアミド樹脂(PA)層、ポリエステル樹脂(PE)層のいずれかの1層以上からなる層である。基材層4は、本層の機能を妨げない限度において、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエステル樹脂(PE)以外の成分を含んでいてもよく、上記樹脂を95質量%以上、特に99質量%以上(100質量%を含む)含む層にするのが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などを用いることができる。
ポリエステル樹脂(PE)としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)などを用いることができる。
【0028】
基材層4は、2層以上の積層構成にすることもでき、同種又は異種の樹脂層を積層してもよい。
基材層4の全体厚みは、100μm~350μm、特に150μm~300μmにするのが好ましい。
【0029】
バリア層5は、酸素や水蒸気などの透過を防ぐための層であり、アルミニウム箔層、金属蒸着層、シリカ蒸着層、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)層、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)層のいずれか1層以上からなる層である。バリア層5は設けなくてもよいが、設ける場合は、臭気吸着層2と基材層4との間に設けるのが好ましい。
【0030】
アルミニウム箔としては、アルミニウム箔ラミネート品を含むものである。
アルミニウム箔としては、硬質又は軟質のアルミニウム箔を用いることができ、また、一方の面が光沢面(鏡面)、他方の面が艶消面(マット面)になっているタイプ、両面とも光沢面(鏡面)になっているタイプ、両面とも艶消面(マット面)になっているタイプのいずれも用いることができる。
アルミニウム箔ラミネート品は、例えば、アルミニウム箔の片面又は両面にポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの合成樹脂シートを積層したものを用いることができる。
【0031】
金属蒸着層及びシリカ蒸着層としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などからなるフィルムに、アルミニウム、酸化アルミニウムなどの金属や酸化ケイ素を蒸着したものを用いることができる。
【0032】
バリア層5は、2層以上の積層構成にすることもでき、同種又は異種の樹脂層を積層してもよい。
バリア層5の全体厚みは、10μm~30μm、特に15μm~25μmにするのが好ましい。
【0033】
包装材1は、臭気吸着層2、保護層3、基材層4、バリア層5以外にも、層同士を接着するための接着層やヒートシールするためのシーラント層など他の層を積層することもできる。
【0034】
包装材1の好ましい積層形態は、包装体に形成した場合の内側から順に、保護層/臭気吸着層/保護層/接着層/バリア層/基材層である。
【0035】
包装材1は、例えば、押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、サーマルラミネーション、サンドラミネーションなどにより製造することができる。
【0036】
包装材1の総厚みは、特に限定するものではないが、100μm~400μm、特に150μm~300μmにするのが好ましい。
【0037】
包装材1は、上記に示したとおり、包装袋やブリスターパックの包装体に形成することができ、この包装体は、特に限定するものではないが、臭いを発する物質、特に臭いを発する医薬品を包装するのが好ましい。臭いとしては、ホルムアルデヒドなどを含むものである。
臭いを発する医薬品としては、例えば、オルメサルタンメドキソミル、オルメサルタンメドキソミル、2-アミノ-5-イソブチル-4-{2-[5-(N,N'-ビス((S)-1-エトキシカルボニル)エチル)ホスホンアミド]フラニル}チアゾール、L-システイン、DL-メチオニン、ブシラミン、メチルチオニンスルホニウムクロライド、塩酸エチルシステイン、塩酸バカンピシリン、セフロキシムアキセチル、トシル酸スルタミシリン、ジクロフェナミド、塩酸ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン等の含硫黄化合物、ピンドロール、バルプロ酸ナトリウム、塩酸トドララジン、塩酸トルペリゾン、トリメタジオン、サラゾスルファピリジン、フルルビプロフェンなどを含有する製剤の他、漢方薬、生薬などを挙げることができる。
製剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、トローチ剤、坐剤、貼付剤などを挙げることができる。
【0038】
包装材1を包装袋に形成した場合は、ブリスターパックや吸湿剤を封入するのが好ましい。このように、吸湿剤も封入することにより、臭気だけでなく湿気も吸着することができる。包装袋に封入するブリスターパックは、包装材1から形成したものではなく従来からあるブリスターパックでもよい。
【0039】
包装材1は臭気吸着層2を備えるため、包装材1から形成した包装体で臭いを発する物質を包装すれば、臭いを吸着し、不快臭による不快感を低減することができる。
特に、包装材1から形成した包装体で臭いを発する医薬品を包装すれば、服用時に不快感を抑制してアドヒアランスの向上を図ることができる。
また、ブリスターパックの蓋材に印刷を施し、医薬品を収納した底材に封着するためヒートシールする際に、印刷インキに含まれる樹脂からホルムアルデヒドが発生し、収納した医薬品の効能などに悪影響を及ぼすことがある。例えば、ホルムアルデヒドがカプセル剤皮不溶化の原因となることが知られ、ある薬品に対しては分解反応を促進し類縁物質を惹起することが知られている。また、整腸生菌の力価を低下させるなど内用医薬品の安定性に対して重大な影響を及ぼすケースもある。
包装材1は、ホルムアルデヒドなどの臭気も吸着できるため、これらの問題を解決するのに極めて有力である。
【実施例
【0040】
以下、本発明の一実施例の包装材を説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(臭気吸着試験)
以下に示す実施例1の包装材を作製し、臭気吸着試験を行った。
【0042】
<実施例1>
実施例1の包装材を以下のように作製した。
【0043】
(臭気吸着層)
臭気吸着層として、ポリエチレン樹脂100質量部に対し、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウムとトリオクチルメチルアンモニウムの混合物である有機合成ヘクトライト(クニミネ工業(株)製「スメクトンSTN」)が80質量部になるように配合したものから形成した。
【0044】
(保護層)
保護層は、ポリエチレン樹脂から形成した。
【0045】
(バリア層)
バリア層は、ポリ塩化ビニリデン樹脂から形成した。
【0046】
(基材層)
基材層は、ポリ塩化ビニル樹脂から形成した。
【0047】
(包装材)
まず、保護層/吸着層/保護層の2種3層になるように、多層インフレーションによりフィルムAを作製した。各保護層の厚みは20μmであり、吸着層の厚みは50μmである。
次に、バリア層/基材層の2種2層からなるPTP用底材(厚み175μm、三菱ケミカル社製)をフィルムBとした。このバリア層の厚みは25μmであり、この基材層の厚みは150μmである。
【0048】
フィルムAの片面に接着剤としてドライラミネート用接着剤を塗布して乾燥させ、フィルムBの中間層側を重ねてロール圧着するドライラミネーションにより積層してシートを作製した。この包装材の総厚みは265μmである。このシートからPTP包装用底材を作製した。この底材には錠剤を納めることができるポケット部が、横2列×縦5列の計10箇所設けてある。
【0049】
<参考例1>
参考例1として、2種2層からなるPTP用底材(厚み175μm、三菱ケミカル社製)を用いた(上記フィルムB)。この底材には錠剤を納めることができるポケット部が、横2列×縦5列の計10箇所設けてある。
【0050】
<参考例2>
参考例2として、上記特許文献2(特許第5241503号公報)の実施例1として示されたシートを作製し、このシートからPTP用底材を作製した。このシートの積層構成は、PVC(200μm)/PE(10μm)/ゼオライトを含有するPE(60μm)/PE(10μm)である。この底材には錠剤を納めることができるポケット部が、横2列×縦5列の計10箇所設けた。
【0051】
<臭い官能試験>
実施例1、参考例1の底材及び参考例2の底材を用いて、以下の試験を行った。
まず、実施例1の底材に、オルメサルタンメドキソミルを含有する錠剤を10個納め、アルミニウムラミネートPET(ペットニウム)から形成された袋に入れて密封した。
次に、参考例1の底材にオルメサルタンメドキソミルを含有する錠剤を10個納め、これをアルミニウムラミネートPET(ペットニウム)から形成された袋に入れて密封した。
最後に、参考例2の底材にオルメサルタンメドキソミルを含有する錠剤を10個納め、これをアルミニウムラミネートPET(ペットニウム)から形成された袋に入れて密封した。
【0052】
これら密封した袋を、恒温恒湿器内(40℃、75%RH)に保管し、14日経過時、30日経過時、60日経過時に、それぞれを若干開封してパネラー10名に臭いを嗅いでもらい、官能試験を行った。
【0053】
各パネラーには、以下の表1に示す0点~10点の11段階で評価してもらった。なお、表1の「評点の目安」は、同じ範疇と判断されたものの個々のサンプルで差異を感じた場合、評点に反映できるように2点の幅を持たせた。
【0054】
【表1】
【0055】
(官能評価)
各パネラーに、各日に点数を評価してもらった。その平均点を以下の表2に示す。「Ave.」は、14日、30日、60日の平均を示す。
【0056】
【表2】
【0057】
(試験結果)
患者が許容できる臭いの範疇(合格ライン)を、「極僅かな臭い」までの2点(四捨五入で2.4点までを含む)とした。
実施例1は、各試料とも合格ライン以下であり、十分な吸着性能を示した。
参考例1は、各試料とも合格ラインを大きく超え、吸着性能がほとんどなかった。
なお、参考例2は、ゼオライトを含む層を備えたものであり、良好な吸着性能を示した。
【0058】
また、参考例2を基準とし、有意差検定を実施した。その結果を下記表3に示す。
実施例1は有意差がなく、このことは実施例1が十分な吸着性能を有することを示す。
参考例1は各試料ともP<0.05であった。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例1の包装材は、実用に耐え得る十分な吸着性能を有していることが見出せた。
【0061】
(ホルムアルデヒド吸着試験)
以下の実施例2、比較例1及び参考例3の包装材を作製し、ホルムアルデヒド吸着試験を行った。
【0062】
(実施例2)
ポリエチレン樹脂100質量部に対し、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウムとトリオクチルメチルアンモニウムの混合物である有機合成ヘクトライト(クニミネ工業(株)製「スメクトンSTN」)が100質量部になるように配合したものを、ダイから押し出し、厚さ200μmのシート状に形成した。これを14cm×14cm角に切り出したものを試験片として用いた。
【0063】
(比較例1)
ポリエチレン樹脂を、ダイから押し出し、厚さ200μmのシート状に形成した。これを14cm×14cm角に切り出したものを試験片として用いた。
【0064】
(試験)
ビニルアルコール系ポリマーフィルム製のバッグ(ジーエルサイエンス社製「スマートバッグPA」容量1L)に、ホルムアルデヒドガスを初期濃度40ppmになるように封入したものを4つ準備した。
1つには何も封入せずそのまま放置した(参考例3)。
残りの3つのバッグには、それぞれ実施例2、比較例1及び参考例3の試験片を封入して放置した。
120時間後(5日後)と336時間後(2週間後)に各バッグのホルムアルデヒド濃度を測定した。ホルムアルデヒドの濃度は、ガステック社製「ホルムアルデヒド 91L」を用い、各バッグから100mL採取して測定した。その結果を下記表4に示す。なお、減少率(%)は、参考例3に対するホルムアルデヒドガスの減少率を示す。
【0065】
【表4】
【0066】
(結果)
ポリエチレン樹脂に有機合成ヘクトライトを含有した実施例2は、何も封入しなかった参考例3と比較して120時間後で81%、336時間後で79%のホルムアルデヒドが減少していた。
これに対し、ポリエチレン樹脂の比較例1は、336時間後で2%のホルムアルデヒドが減少していた。
【0067】
実施例2は、比較例1と比較して有意にホルムアルデヒドを吸着していることが見出された。
【符号の説明】
【0068】
1…包装材 2…臭気吸着層 3…保護層 4…基材層 5…バリア層
図1