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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】建築・土木資材用型枠
(51)【国際特許分類】
   E04G 9/08 20060101AFI20230329BHJP
   E04G 9/05 20060101ALI20230329BHJP
   E04G 9/06 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
E04G9/08
E04G9/05
E04G9/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019088169
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020183657
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】516306201
【氏名又は名称】株式会社D-PRO
(74)【代理人】
【識別番号】100098969
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 正行
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 敏
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-135176(JP,A)
【文献】特開昭63-060366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
E02D 17/20
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれも非伸縮性材料からなり、両端を有する2本以上の帯状部材Hと、無端の2本以上の帯状部材Vとを備え、底面及び底面上の空間を包囲する側面を有し、上面が開口した型枠であって、
前記底面が帯状部材Hの中間部を含み、同中間部は中点が一致するようにXY平面視放射状に重ね合わせられているか、又はXY平面視格子状に編まれており、
前記側面が、前記中間部に連なり中間部に対して直角に曲げられた帯状部材Hの非中間部とZ方向複数段に配列した帯状部材Vとを含み、同非中間部と帯状部材Vとが直交し且つ交互に厚み方向内外に位置するように編まれていることを特徴とする、建築・土木資材用型枠。
【請求項2】
前記帯状部材H及びVが、繊維織物からなる、請求項1に記載の建築・土木資材用型枠。
【請求項3】
帯状部材Vのうち、最上段の帯状部材Vは各帯状部材Hの非中間部に固定されている、請求項1に記載の建築・土木資材用型枠。
【請求項4】
隣り合う帯状部材Vが互いに接しており、n段目の帯状部材Vがある帯状部材Hの前記非中間部の厚み方向内側に位置するときはn+1段目の帯状部材Vは外側に位置するように編まれている、請求項1に記載の建築・土木資材用型枠。
【請求項5】
帯状部材Vのうち、少なくとも本が引っ張り強度の強い帯状部材VSであり、残りが引っ張り強度の弱い帯状部材VWである、請求項4に記載の建築・土木資材用型枠。
【請求項6】
前記中間部が中点が一致するようにXY平面視放射状に重ね合わせられており、帯状部材Hのうち、少なくとも本が引っ張り強度の強い帯状部材HSであり、残りが引っ張り強度の弱い帯状部材HWである、請求項1に記載の建築・土木資材用型枠。
【請求項7】
帯状部材Hの前記中間部がXY平面視格子状に編まれており、更に少なくとも一つの帯状部材H、Vの一方から対向する他方に跨がって係る条鋼を備える、請求項1に記載の建築・土木資材用型枠。
【請求項8】
帯状部材Hの前記中間部がXY平面視格子状に編まれており、更に前記側面の外面に隣接して置かれるリング鋼を備え、前記条鋼は同リング鋼を介して帯状部材H、Vに係る、請求項7に記載の建築・土木資材用型枠。
【請求項9】
帯状部材Hの前記中間部がXY平面視格子状に編まれており、隣り合う帯状部材Hが互いに接している、請求項1に記載の建築・土木資材用型枠。
【請求項10】
帯状部材Hのうち、X方向及びY方向の各々少なくとも1本が引っ張り強度の強い帯状部材HSであり、残りが引っ張り強度の弱い帯状部材HWである、請求項9に記載の建築・土木資材用型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物、標識、ガードレールなど建設現場における構造物又はその基礎となるコンクリート、土砂、改良土などの流動資材の形状を決める型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート基礎用型枠は通常、現場の地面を大きく掘って穴を設け、その穴の中で角鋼管とコンクリートパネル(合板)とで組み立てられた箱状ものである。そして、充填された生コンクリートの内圧に負けて型枠が崩れるのを防ぐために、穴内壁に打ち込まれた杭と箱の外面との間を鉄パイプなどで突っ張らせていた。型枠は、角鋼管については再利用するために、コンクリートパネルについては再利用するためと腐敗してそこに空隙が生じるのを防ぐために、コンクリートの硬化後に除く必要があった。
【0003】
このような従来の型枠の設置から脱型までの作業には熟練した職人が数名必要であるうえ、型枠や鉄パイプ自体のコストやその設置工数も大きい。また、掘削穴の埋め戻しの時間も要する。そこで、布を袋状に縫製した型枠が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-60365号公報
【文献】特開昭63-60366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2に記載の布製型枠は、袋の稜線沿いの縫い糸に硬化前のコンクリートの圧力に起因する過大の張力がかかって縫い糸が千切れてしまい、コンクリートが崩れる可能性がある。
それ故、この発明の課題は、熟練した職人によらなくても低コストで破損しにくい型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題を解決するために、この発明の建築・土木資材用型枠は、
いずれも非伸縮性材料からなり、両端を有する2本以上の帯状部材Hと、無端の2本以上の帯状部材Vとを備え、底面及び底面上の空間を包囲する側面を有し、上面が開口した型枠であって、
前記底面が帯状部材Hの中間部を含み、同中間部は中点が一致するようにXY平面視放射状に重ね合わせられているか、又はXY平面視格子状に編まれており、
前記側面が、前記中間部に連なり中間部に対して直角に曲げられた帯状部材Hの非中間部とZ方向複数段に配列した帯状部材Vとを含み、同非中間部と帯状部材Vとが直交し且つ交互に厚み方向内外に位置するように編まれていることを特徴とする。
【0007】
帯状部材H及びVは、いずれも非伸縮性材料からなり、帯状のものすなわち厚みに対して幅が大きく且つ長さが更に大きいものであればよい。材質的にはゴム、形状的には紐や縄は除かれる。帯状部材Vは、帯状部材Hと同質または異質の非伸縮性材料からなり両端を有する帯状部材の両端を縫合、結び合わせ、縛り付けなどの手段で結合することにより、得られるものであってよい。帯状部材Hの中間部が中点が一致するようにXY平面視放射状に重ね合わせられている場合は、前記底面は円形をなし、型枠は円柱状の基礎を打設するものとなる。帯状部材Hの中間部がXY平面視格子状に編まれているときは、前記底面は長方形又は正方形をなし、型枠は直方体状または複数の直方体を積み重ねた形の基礎を打設するものとなる。複数の直方体を積み重ねた形は、帯状部材Hの非中間部を階段状の曲げることにより可能である。
【0008】
この発明の型枠によれば、底面と側面とが帯状部材Hで連続し、しかも側面が無端の帯状部材Vを含んでいるので、生コンクリートなどの流動資材の圧力を全ての帯状部材H及び帯状部材Vが受ける。帯状部材Vが無端すなわちそれ自体平面視で閉じた形状を有するので、外部から側面を押さえなくても型枠が崩れることはない。しかも、同非中間部と帯状部材Vとが直交し且つ交互に厚み方向内外に位置するように編まれているので、帯状部材Hと帯状部材Vとが厚み方向に離れることなく偏荷重による相対移動を拘束しあう。
【0009】
前記帯状部材H及びVは、好ましくは繊維織物からなる。繊維は、合成繊維、天然繊維、金属繊維のいずれであってもよいが、合成繊維が好ましい。錆びることも腐敗することもないし、特に軽量だからである。
【0010】
帯状部材Vのうち、最上段の帯状部材Vは好ましくは各帯状部材Hの非中間部に固定されている。これにより、帯状部材Vから帯状部材Hがすり抜けるのを防ぐことができるからである。固定手段は、縫合、結び合わせ、縛り付けなどであってよい。
【0011】
隣り合う帯状部材Vが互いに接しており、n段目の帯状部材Vがある帯状部材Hの前記非中間部の厚み方向内側に位置するときはn+1段目の帯状部材Vは外側に位置するように編まれていると好ましい。これにより、各帯状部材VのZ方向の位置がずれにくくなるし、帯状部材Hが周方向に間欠的に配置されていても側面がほぼ塞がれるからである。
【0012】
この構成において帯状部材Vのうち、少なくとも1本が引っ張り強度の強い帯状部材VSであり、残りが引っ張り強度の弱い帯状部材VWであってよい。帯状部材VSとVWを組み合わせることで流動資材の圧力に耐えるとともに材料コストを最小限に抑えることができるからである。
同様の理由で、帯状部材Hの前記中間部が中点が一致するようにXY平面視放射状に重ね合わせられている場合、帯状部材Hのうち、少なくとも1本が引っ張り強度の強い帯状部材HSであり、残りが引っ張り強度の弱い帯状部材HWであってよい。
【0013】
帯状部材Hの前記中間部がXY平面視格子状に編まれている場合、更に少なくとも一つの帯状部材H、Vの一方から対向する他方に跨がって係る条鋼を備えると好ましい。これにより条鋼の係っている帯状部材Vが外側に膨らむのを防ぐことが容易になるうえ、条鋼が用心鉄筋としても機能するからである。条鋼としては棒鋼、形鋼いずれでもよい。このように条鋼を備える構成の場合、更に前記側面の外面に隣接して置かれるリング鋼を備え、前記条鋼は同リング鋼を介して帯状部材H、Vに係るようにすることもできる。リング鋼に一つの条鋼と、隣の型枠の条鋼を差し込むことで、隣り合う型枠を連結することができるからである。
【0014】
また、帯状部材Hの前記中間部がXY平面視格子状に編まれている場合、隣り合う帯状部材Hが互いに接していると好ましい。各帯状部材HのX方向又はY方向の位置がずれにくくなるし、帯状部材VがZ方向に間欠的に配置されていても側面がほぼ塞がれるからである。
【0015】
この構成において帯状部材Hのうち、X方向及びY方向の各々少なくとも1本が引っ張り強度の強い帯状部材HSであり、残りが引っ張り強度の弱い帯状部材HWであってよい。帯状部材HSとHWを組み合わせることで流動資材の圧力に耐えるとともに材料コストを最小限に抑えることができるからである。
【0016】
尚、建築・土木における構造物や基礎の形状は、平面視で円形や方形に限らず、台形や平行四辺形など様々である。台形や平行四辺形の場合は、それらの台形あるいは平行四辺形に外接する方形の型枠を組み立て、内側に想定される隙間相当部分に発泡スチロールや木片などの端材を置いた状態で打設し、養生後に端材を外すことにより、必要な形状の構造物や基礎を設置することができる。
この発明の型枠を使用するときは、流動資材の漏れを防ぐために、内周面にビニール、紙などからなる薄いシートを当てておくとよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、側面を押さえる突っ張り鉄パイプを施工現場で組み立てる工程がなく、工場でほぼ完成した状態の型枠を現場に配置するだけで型枠設置作業の大部分が完了するので、熟練した職人を必要としない。工数も材料費もあまりかからない。型枠をそのまま現場に残して製品の一部として使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は実施形態1の型枠に用いられる帯状部材Hを格子状に編んだ状態を示す平面図、(b)は(a)におけるA-A’断面の一部を示す拡大図である。
図2】(a)は実施形態1の型枠に用いられる帯状部材Vの前駆体である帯状部材V’を示す平面図、(b)は帯状部材V’の両端を縫合して帯状部材Vを形成した状態を示す斜視図である。
図3】実施形態1において、帯状部材Hと帯状部材Vとの組み合わせ工程を示す斜視図であり、(a)は帯状部材Vの一段目、(b)は同三段目、(c)は組み合わせ完了時を示す。
図4】(a)は棒鋼を示す正面図、(b)は2段目と4段目の帯状部材Vに各2本の棒鋼を架けた状態を示す模式的斜視図、(c)は2段目に2本、6段目のX方向に2本、同じくY方向に2本架けた状態を示す模式的斜視図、(d)は(c)のA部拡大図である。
図5】実施形態2の型枠に用いられる帯状部材H0を放射状に重ね合わせた状態を示す平面図である。
図6】実施形態2において、帯状部材H0と帯状部材V0との組み合わせ工程を示す斜視図であり、(a)は帯状部材Vの一段目、(b)は同二段目、(c)は組み合わせ完了時を示す。
図7】実施形態3の型枠に用いられる帯状部材V1、V2、V3、V4、V5、V6の前駆体である帯状部材V1’、V2’、V3’、V4’、V5’、V6’を各々示す平面図である。
図8】実施形態3の型枠に用いられる帯状部材H1と帯状部材H2、H3、H4、H5、H6、H7を格子状に編んだ状態を示す平面図である。
図9】実施形態3において、帯状部材H1~H7と帯状部材V1~V6との組み合わせ工程を示す斜視図であり、(a)は一段目、(b)は二段目、(c)は組み合わせ完了時を示す。
図10】実施形態4において、隣り合う型枠を連結する方法を示し、(a)はそれに用いられるリング鋼の斜視図、(b)は連結部分の要部Z方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
-実施形態1-
この実施形態は、立方体状の構造物や基礎となる生コンクリートや土砂などの資材を充填するための型枠を例示する。
ポリプロピレン繊維織物からなり、引っ張り強度32KN/10cm、幅50mm、厚さ2mm、長さ900mmの帯状部材Hを12本、及び長さ1250mmである以外は同形同質の帯状部材V’を6本準備した。
【0020】
12本の帯状部材Hの中間部を、そのうち6本がX方向、残り6本がY方向に平行に隙間無く並ぶように平面視格子状に編んだ(図1)。図1において格子編みされていることが判りやすくなるように前記中間部にハッチングを入れるとともに、X方向とY方向とでハッチングの種類を異ならせた。帯状部材V’には長寸方向の3個所に等間隔で折れ点が設けられ(図2(a))、その位置で直角に曲げるとともに、長寸方向の両端縁から50mmまでを互いに縫合することにより、平面視正方形の帯状部材Vとした(図2(b))。便宜上、図2において折れ点に黒塗り三角を付し、縫合部分を交差するハッチングで描いた。
【0021】
帯状部材Hのうち前記格子からはみ出た非中間部をZ方向に立ち上げ、6本の帯状部材Vを帯状部材Hと直交するように隙間無く積上げるとともに、各段の帯状部材Vに対して帯状部材Hが交互に厚み方向内外に位置するように、且つn段目の帯状部材Vがある帯状部材Hの厚み方向内側に位置するときはn+1段目の帯状部材Vは同じ帯状部材Hに対して外側に位置するように編んだ(図3)。帯状部材Vは、その縫合部分の位置が平面視で重ならないように、積み上げる段毎に周方向の位相を異ならせた。
【0022】
図示しないが、各帯状部材Hの両端部と最上段の帯状部材Vとを縫合した。次に、直径10mm、全長400mmの棒鋼Lを数本準備し、それぞれの両端縁から各50mmを直角に曲げ、曲げた部分をそれぞれ適当な段の帯状部材Vの一方から対向する他方に引っかけることにより(図4)、型枠を完成した。
【0023】
この型枠を施工現場に設置し、内周面にビニールシートを貼り付け、生コンクリートなどを充填し、養生することにより、基礎が仕上がる。各段の帯状部材Vが平面視正方形をなしているので、底面に近い部分だけでなく、底面から離れた高さにおける生コンクリートの水平断面もそれに倣ってほぼ正方形となる。仮に生コンクリートの圧力に押されて側面が膨らもうとしても、要所の帯状部材Vが棒鋼に係っているので、膨らみが阻止される。また、帯状部材Hの両端部と最上段の帯状部材Vとが固定され、それ以外の部分では互いの編み合わせによって拘束し合っているだけであるので、帯状部材Hと帯状部材Vとが厚み方向に離れることなく偏荷重による相対移動を拘束しあう。その結果、生コンクリートの圧力を全ての帯状部材Hと帯状部材Vがうけることになり、型枠が崩れること無く、立方体の基礎が得られる。
【0024】
-実施形態2-
この実施形態は、円柱状の構造物や基礎となる資材を充填するための型枠を例示する。
長さが600mmである以外は実施形態1における帯状部材Hと同形同質の帯状部材H0を12本、及び長さが678mmである以外は実施形態1における帯状部材V’と同形同質の帯状部材V0’を4本準備した。
【0025】
12本の帯状部材H0を互いの中点が一致するように平面視放射状に重ね合わせた(図5)。別途、帯状部材V0’の長寸方向の両端縁から50mmまでを互いに縫合することにより、平面視円形の帯状部材V0とした。
【0026】
各帯状部材H0の中間部300mm長の両側に連なる非中間部をZ方向に立ち上げ、4本の帯状部材V0を帯状部材H0と直交するように隙間無く積上げるとともに、各段の帯状部材V0に対して帯状部材H0が交互に厚み方向内外に位置するように、且つn段目の帯状部材V0がある帯状部材H0の厚み方向内側に位置するときはn+1段目の帯状部材V0は同じ帯状部材H0に対して外側に位置するように編んだ(図6)。帯状部材V0は、その縫合部分の位置が平面視で重ならないように、積み上げる段毎に周方向の位相を異ならせた。図示しないが、各帯状部材H0の両端部と最上段の帯状部材V0とを縫合することにより、型枠を完成した。
【0027】
この型枠を施工現場に設置し、内周面にビニールシートを貼り付け、生コンクリートなどを充填し、養生することにより、基礎が仕上がる。各段の帯状部材V0が平面視同一の円形をなしているので、底面に近い部分だけでなく、底面から離れた高さにおける生コンクリートの水平断面もそれに倣ってほぼ円形となる。また、帯状部材H0の両端部と最上段の帯状部材V0とが固定され、それ以外の部分では互いの編み合わせによって拘束し合っているだけであるので、帯状部材H0と帯状部材V0とが厚み方向に離れることなく且つ偏荷重による相対移動を拘束しあう。その結果、生コンクリートの圧力を全ての帯状部材H0と帯状部材V0が受けることになり、型枠が崩れること無く、円柱体の基礎が得られる。
【0028】
-実施形態3-
この実施形態は、一側面が階段状をなす構造物となる資材を充填するための型枠を例示する。
長さが1250mmである以外は実施形態1における帯状部材Hと同形同質の帯状部材H1を6本、同じく長さが900mmである帯状部材H2を3本、及び同じく長さが1200mm、1100mm、1000mm、900mm、800mmである帯状部材H3、H4、H5、H6、H7を各1本準備した。また、長さが1450mm、1350mm、1250mm、1150mm、1050mm、950mmである以外は実施形態1における帯状部材V’と同形同質の帯状部材V1’、V2’、V3’、V4’、V5’、V6’、を各1本準備した(図7)。
【0029】
6本の帯状部材H1を横列に隙間無く並べ、3本の帯状部材H2を帯状部材H1と直交する方向の横列に隙間無く並べ且つ帯状部材H1とH2の互いの中間部が平面視格子状となるように編んだ。同様に帯状部材H3、H4、H5、H6、H7を帯状部材H2に続けて並べるとともに帯状部材H1と平面視格子状になるように編んだ。ただし、帯状部材H3、H4、H5、H6、H7は両端が階段状をなすように長寸方向の中点を一直線上に一致させた(図8)。
【0030】
帯状部材H1の一方の非中間部と帯状部材H2の両側非中間部をZ方向に立ち上げ、帯状部材H1の他方の非中間部に山折り谷おりを50mmごとに繰り返し、帯状部材H3、H4、H5、H6、H7の両側非中間部をZ方向に立ち上げ、続いて一方の非中間部を所定の折れ点で直角に曲げるとともに帯状部材H1の水平部分と編み、最後に両端縁から50mmまでを互いに縫合した。
【0031】
帯状部材V1’、V2’、V3’、V4’、V5’、V6’には長寸方向の3個所に所定の間隔で折れ点が設けられ、その位置で直角に曲げるとともに、帯状部材H1及び帯状部材H2の非中間部と編み、最後に長寸方向の両端縁から50mmまでを互いに縫合することにより、平面視正方形の帯状部材V1、V2、V3、V4、V5、V6とし、型枠を完成した(図9)。便宜上、図7及び図8において折れ点に黒塗り三角を付し、縫合部分を交差するハッチングで描いた。
【0032】
-実施形態4-
この実施形態は、直方体状の構造物や基礎を複数個連結するための手段を例示する。
実施形態1で組み立てたような型枠を複数個と、外径45mm、内径25mm、高さ50mmのリング鋼R(図10(a))を準備した。リング鋼Rを隣り合う型枠で挟み、一つのリング鋼Rの孔内に一の型枠の棒鋼Lの端部と隣の型枠の棒鋼Lの端部を差し込む(図10(a))。これにより隣り合う型枠が連結され、その状態で生コンクリートを充填することで水平方向に長い構造物や基礎が得られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10