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特許7252627制御性B10細胞を枯渇させる抗体および方法並びに免疫チェックポイント阻害剤との併用における使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】制御性B10細胞を枯渇させる抗体および方法並びに免疫チェックポイント阻害剤との併用における使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230329BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230329BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230329BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 107
A61P43/00 121
A61P37/02
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019531988
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017066815
(87)【国際公開番号】W WO2018112407
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】62/434,833
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】テダー トーマス エフ
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ライクケン ジャクリーン
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0135666(US,A1)
【文献】国際公開第2016/164731(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0266562(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、ヒトCD22と特異的に結合する抗体であって、前記重鎖可変領域(“VH”)は3つの相補性決定領域、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、前記軽鎖可変領域(“VL”)は3つの相補性決定領域、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含み、ここで、(a) VHは、配列番号:27のCDR1、配列番号:29のCDR2および配列番号:32のCDR3を含み、VLは、配列番号:40のCDR1、配列番号:41のCDR2および配列番号:42のCDR3を含む;(b) VHは、配列番号:28のCDR1、配列番号:31のCDR2および配列番号:33のCDR3を含み、VLは、配列番号:34のCDR1、配列番号:35のCDR2および配列番号:36のCDR3を含む;または、(c) VHは、配列番号:27のCDR1、配列番号:30のCDR2および配列番号:32のCDR3を含み、VLは、配列番号:43のCDR1、配列番号:44のCDR2および配列番号:45のCDR3を含む、前記抗体。
【請求項2】
B10細胞のホモタイプ接着を誘発することができる、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
ヒトまたはヒト化IgG4抗体のFC部分を含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
補体を活性化せず、かつ、抗体依存細胞媒介細胞傷害性(ADCC)にも関与しないように操作されてあるFc領域を含む、請求項1-3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
配列番号:27、29および32のVH CDR並びに配列番号:40、41および42のVL CDRを含む(HB22-103)、請求項1-4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
配列番号:28、31および33のVH CDR並びに配列番号:34、35および36のVL CDRを含む(HB22-107)、請求項1-4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号:27、30および32のVH CDR並びに配列番号:43、44および45のVL CDRを含む(HB22-115)、請求項1-4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
(a) 配列番号:5の、または、配列番号:5と95%同一であり、かつ配列番号:28、31および33のCDRを含む配列の、VH、および、(b) 配列番号:15の、または、配列番号:15と95%同一であり、かつ配列番号:34、35および36のCDRを含む配列の、VL、を含む、請求項1-4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
重鎖可変領域(“VH”)が3つの相補性決定領域、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3並びに4つのフレームワーク領域、VH FW1、VH FW2、VH FW3およびVH FW4を、VH FW1-VH CDR1-VH FW2-VH CDR2-VH FW3-VH CDR3-VH FW4の順序で含み;軽鎖可変領域(“VL”)が、3つの相補性決定領域、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3並びに4つのフレームワーク領域VL FW1、VL FW2、VL FW3およびVL FW4を、VL FW1-VL CDR1-VL FW2-VL CDR2-VL FW3-VL CDR3-VL FW4の順序で含む、請求項1-のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を含む、T細胞免疫応答が抑制または阻害される疾患の治療方法に使用するための組成物であって、前記抗体は請求項1-のいずれか1項に記載の抗体である、組成物。
【請求項11】
優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を含む、免疫チェックポイント阻害剤による治療によって誘発されるT細胞活性化または抗腫瘍応答を促進または強化するための組成物であって、前記抗体は請求項1-のいずれか1項に記載の抗体である、組成物。
【請求項12】
優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を含む、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による癌の治療に使用するための組成物であって、前記抗体は請求項1-のいずれか1項に記載の抗体である、組成物。
【請求項13】
治療方法が、免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物を投与する工程をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4、CD152)、PD1(PD-1;プログラム死1受容体としても知られる)、PD-L1、PD-L2、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子-3)、OX40、A2AR(アデノシンA2A受容体)、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、BTLA(BおよびTリンパ球減衰因子、CD272)、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)、KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)、TIM 3(T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3)、VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー)、およびIL-2R(インターロイキン-2受容体)から成る群から選択される免疫チェックポイントの阻害剤である、請求項1113のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
優先的にB10細胞を枯渇させる抗体が、補体依存または抗体依存細胞傷害性を介してB10細胞を枯渇させない、請求項1014のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗体がIgG4 Fc部分を有する、請求項1015のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
優先的にB10細胞を枯渇させる抗体がB細胞のホモタイプ接着を誘発する、請求項1016のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)本出願は、米国仮特許出願62/434,833(2016年12月15日出願(参照によってその全体が本明細書に含まれる))に関し優先権を主張する。
(配列表)本出願はEFS-Webにより電子出願され、さらにテキスト形式の電子提出配列表を含む。当該テキストファイルは、2017年12月15日作成の“2017-12-15_5667-00417_ST25.txt”の表題を有する配列表を含み、サイズが32,337バイトである。本テキストファイルに含まれる配列表は本出願の部分であり、参照によってその全体が本明細書に含まれる。
【0002】
(技術分野)
本明細書では方法が提供され、前記方法では、優先的に(preferentially)制御性B10細胞を枯渇させる抗体および免疫チェックポイント経路を制御する治療が、併用治療レジメンで個体に実施される。当該方法を用いて、そのような併用療法から恩恵を受ける任意の疾患または症状を治療することができる。当該方法を用いて、既存の適応免疫応答、例えば癌に対する抗腫瘍応答を開始または活性化させることができる。当該癌は例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫および非リンパ系腫瘍であり、それらはまた免疫チェックポイント阻害剤を用いて治療される。さらにまた、当該方法および治療で使用されるCD22特異的抗体が提供される。
【背景技術】
【0003】
制御性B10細胞(“B10細胞”)はIL-10を産生する能力を有し、in vivoで炎症性応答および自己免疫応答を抑制するそれらの能力を特徴とする。B10細胞が炎症および自己免疫応答を制御し得る1つの態様は、リンパ球および先天性免疫系の細胞の活性化またはエフェクター機能、並びにそれら細胞の炎症促進サイトカインの産生を抑制するその能力による。また別には、多様な免疫チェックポイント受容体(例えばLAG-3)は、エフェクターT細胞および制御性T(Treg)細胞の両方に影響を及ぼす。大半の成熟B細胞のように、ヒトB10細胞はCD19、CD20、CD21およびCD22をそれらの細胞表面に発現する。加えて、当業者には公知のように、ヒト血液B10細胞はもっぱらCD27+であり、特に成人については大半がCD24hiCD27+である。一方、小児では、血液B10細胞はCD24hiCD38hi細胞表面表現型を発現する傾向がある。
【0004】
抗CD22抗体は例えば以下に記載されている:U.S.Pat.Nos.5,484,892;6,183,744;6,187,287;6,254,868;7,829,086;8,734,792;およびTuscano et al., Blood 94(4):1382-92, 1999。リンパ腫、白血病および自己免疫疾患の治療でのモノクローナル抗体(抗CD22抗体を含む)の使用が記載されている。一般的に、これらの治療は、抗体依存細胞媒介細胞傷害(ADCC)または補体依存細胞媒介細胞傷害(CDC)による抗体のB細胞殺滅を根拠とし、癌治療に抗体を使用することはB細胞リンパ腫および白血病に限定された。
【0005】
免疫チェックポイント阻害剤は、いくつかのタイプの免疫系細胞(例えばT細胞、マクロファージ)とともにいくつかの癌細胞によって発現されるある種のタンパク質(免疫チェックポイント受容体またはそれらのリガンド)を封鎖または係合する分子または薬剤である。総合的に、免疫チェックポイントタンパク質およびそれらの機能的経路は免疫応答を抑制するが、それらはまたT細胞の活性化を阻害して免疫系を抑制でき、それによってT細胞が癌細胞に応答することまたは癌細胞を死滅させることを妨げる。これらのタンパク質が封鎖されるとき、免疫系に対するそれらの抑制作用は解除されて、T細胞が腫瘍抗原に応答し癌細胞を殺滅するようにプログラムされることを可能にする。免疫チェックポイントはまたT細胞応答の持続および強度を制限することができる。当業者には公知のように、T細胞または癌細胞で見出されるチェックポイントタンパク質の例には、PD-1、PD-L1、CTLA-4(CD152としても知られている)、4-1BB(CD137としても知られている)、LAG-3、およびOX40(TNF受容体ファミリーメンバー)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。いくつかの免疫チェックポイント阻害剤を用いて癌が治療される。診療所では、免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD1抗体および抗CTLA-4抗体は、患者の約10%から約35%の範囲の客観的な誘発応答率を示し、約22%の患者が長期生存の恩恵を達成することを示す(用いられる免疫チェックポイント阻害剤、用量、治療される個体の免疫状態、疾患のステージ、および治療される癌のタイプのような要件に左右される)。大半の癌(特にリンパ腫および白血病)の治療のために、改善されたまたは新規な治療的処置がなお必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に提示される方法は、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体を免疫チェックポイント阻害剤と併用療法で組み合わせる結果として、T細胞(T細胞は1つ以上のCD4+細胞およびCD9+細胞を含む)活性化が共働作用で達成されるという驚くべき発見に少なくとも部分的に起因する。併用療法レジメンで、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体を含む組成物および免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物の組合せを投与するとき、当該組成物は、別々に、連続的に、間歇的に、または一緒に投与することができる。当該組合せ組成物は、別々の組成物としてまたは単一組成物として一緒に処方することができる。ある特徴では、当該方法は、T細胞免疫応答の誘発若しくは強化、または既存のT細胞免疫応答の免疫抑制の回復、克服若しくは調整をもたらす。そのような影響または免疫抑制はまた、他の疾患(例えば慢性感染症(例えばB型及びC型肝炎ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ミコバクテリウム・レプリ(Mycobacterium lepry)、および麻疹ウイルス)における異常および症状を含む)および癌で認められる。
ある特徴では、個体の既存の免疫応答でT細胞活性化または再活性化を生じる免疫療法のための方法が提供される(当該個体ではそのような既存の免疫応答は阻害または抑制されている)。前記方法は併用療法レジメンを当該個体に実施する工程を含み、当該レジメンは、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体を含む組成物および免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物を含む。
【0007】
別の特徴では、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体を含む組成物を個体に投与することによって、チェックポイント阻害剤の効果を開始または強化する方法が提供され、前記方法は免疫チェックポイント阻害剤との併用療法で実施されるとき、(免疫チェックポイント阻害剤単独実施(すなわち同じ治療レジメンで優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体が投与されない)の治療レジメンと比較して)、当該免疫チェックポイント阻害剤に対する個体の応答の改善、強化または有効化をもたらす。改善、強化、または有効化された応答は、例えばT細胞応答(例えば抗腫瘍免疫応答)の増強活性化または疾患の進行の緩和若しくは阻害によって測定でき、当該応答は併用療法レジメンによって治療的に影響されることが意図される。
【0008】
別の特徴では、免疫チェックポイント阻害剤の毒性を軽減するか、または免疫チェックポイント阻害剤の治療効果がより低い用量で得られることを可能にする方法が提供される。前記方法は、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体を含む組成物の治療的に有効な量および免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物の治療的に有効な量を個体に投与する工程を含む。この方法はまた、免疫チェックポイント阻害剤の治療効能を延長するために用いることができる。
【0009】
さらに別の特徴では、その必要がある個体(癌を有する個体)で、癌を治療するまたは抗腫瘍免疫応答を促進する(抗腫瘍免疫応答の開始、強化または延長の1つ以上)方法が提供され、前記方法は、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体の治療的に有効な量および免疫チェックポイント阻害剤の治療的に有効な量を含む治療レジメンを当該個体に実施する工程を含む。優先的にヒトB10細胞を枯渇させる抗体はさらにまた医薬的に許容できる担体を含むことができる。本明細書に記載される方法で用いられる1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤療法もまた、さらに医薬的に許容できる担体を含むことができる。
【0010】
さらにまた本明細書で提供されるものは、T細胞免疫応答は抑制または阻害される疾患の治療における、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体の使用であり、前記使用は、T細胞活性化(例えばCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞)または抗腫瘍応答を促進若しくは強化する。当該使用はまた、免疫チェックポイント阻害剤による治療によって誘発されるT細胞活性化または抗腫瘍応答の促進若しくは強化を含むことができる。本明細書で提供されるものは、免疫チェックポイント経路を阻害して癌を治療する治療方法における、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体の使用である。
【0011】
さらに別の特徴では、ヒトCD22と結合してB10細胞を枯渇させることができる抗体もまた提供される。これらの抗体は、配列番号:2、3、4および5並びに配列番号:2、3、4および5と90%同一の配列から成る群から選択されるVH、および配列番号:15、16、19および20並びに配列番号:15、16、19および20と90%同一の配列から成る群から選択されるVLを含む。ヒトCD22と特異的に結合する抗体は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで、当該重鎖可変領域(“VH”)は3つの相補性決定領域(VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3)を含み、当該軽鎖可変領域(“VL”)は3つの相補性決定領域(VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3)を含み、ここで、VH CDR1は配列番号:27、28並びに配列番号:27および28と90%同一の配列から成る群から選択され;VH CDR2は配列番号:29、30および31並びに配列番号:29および30および31と90%同一の配列から成る群から選択され;VH CDR3は配列番号:32、33並びに配列番号:32および33と90%同一の配列から成る群から選択され;VL CDR1は配列番号:34、37、40、43並びに配列番号:34、37、40、43と90%同一の配列から成る群から選択され;VL CDR2は配列番号:35、38、41および44並びに配列番号:35、38、41および44と90%同一の配列から成る群から選択され;VL CDR3は配列番号:36、39、42および45並びに配列番号:36、39、42および45と90%同一の配列から成る群から選択される。本明細書に記載される多様なVHおよびVL鎖を多様な組合せで用いることができ、さらにキメラまたはヒト化型で提供することができる。適切には、抗体はホモタイプ接着を誘発することができる。
本発明のその多の特徴、目的および特色は以下の説明から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】MC38腫瘍誘発炎症時にマウスでB10細胞数が拡大することを示すグラフである。マウスの皮下にMC38腫瘍細胞(2x106)またはPBSを0日目に投与する前および投与から7、14および21日後に、鼡径リンパ節(図1)および脾臓(図2)のIL-10コンピテントB10細胞を定量した。表示の日に、組織のリンパ球を精製し、モネンシン単独で培養するか、またはLPS、PMA、イオノマイシン、およびモネンシン(L+PIM)とともにex vivoで5時間刺激した。野生型リンパ球を細胞表面CD19および細胞内IL-10について染色してB10細胞の頻度を定量し、一方、Tigerマウスのリンパ球をCD19について細胞質GFP発現とともに染色しフローサイトメトリーによって査定した。代表的なフローサイトメトリーヒストグラムは、生存活性を有する単一CD19+ B細胞によるIL-10発現を示す。モネンシンのみで培養されたリンパ球は陰性染色コントロールとして機能する(Matsushita, Tedder TF.Identifying regulatory B cells (B10 cells) that produce IL-10 in mice.Methods Mol Biol.2011; 677:99-111)。数字は、全ての被検マウスについての表示ゲート内細胞の頻度(平均±SEM)を示す。PBS処理マウスのデータは複数の時点間で(d7、14および21)有意には相違せず、したがってプールされた。散乱図は、個々のマウスについての平均B10細胞頻度および数を示し、グループにつき6-19匹のマウスが用いられた。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違は以下で示される:*、p<0.05;**、p<0.01;****、p<0.0001。
図2】MC38腫瘍誘発炎症時にマウスでB10細胞数が拡大することを示すグラフである。マウスの皮下にMC38腫瘍細胞(2x106)またはPBSを0日目に投与する前および投与から7、14および21日後に、鼡径リンパ節(図1)および脾臓(図2)のIL-10コンピテントB10細胞を定量した。表示の日に、組織のリンパ球を精製し、モネンシン単独で培養するか、またはLPS、PMA、イオノマイシン、およびモネンシン(L+PIM)とともにex vivoで5時間刺激した。野生型リンパ球を細胞表面CD19および細胞内IL-10について染色してB10細胞の頻度を定量し、一方、Tigerマウスのリンパ球をCD19について細胞質GFP発現とともに染色しフローサイトメトリーによって査定した。代表的なフローサイトメトリーヒストグラムは、生存活性を有する単一CD19+ B細胞によるIL-10発現を示す。モネンシンのみで培養されたリンパ球は陰性染色コントロールとして機能する(Matsushita, Tedder TF.Identifying regulatory B cells (B10 cells) that produce IL-10 in mice.Methods Mol Biol.2011; 677:99-111)。数字は、全ての被検マウスについての表示ゲート内細胞の頻度(平均±SEM)を示す。PBS処理マウスのデータは複数の時点間で(d7、14および21)有意には相違せず、したがってプールされた。散乱図は、個々のマウスについての平均B10細胞頻度および数を示し、グループにつき6-19匹のマウスが用いられた。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違は以下で示される:*、p<0.05;**、p<0.01;****、p<0.0001。
図3】B10細胞枯渇はMC38腫瘍増殖を阻害することを示すグラフである。マウスにPBSまたはMC38細胞(2x106)を投与する前に、B10細胞を枯渇させるMB22-10 mAbまたはコントロールmAbを-7、0、および7日目に投与した。値は、6つの別個の実験(n=23マウス/グループ)からプールされた平均(±SEM)腫瘍体積を示す。グループ間の有意な相違は以下で示される:***、p<0.001。
図4】総B細胞枯渇はMC38腫瘍増殖を変化させないことを示すグラフである。0日目にPBSまたはMC38腫瘍細胞(2x06)をマウスに皮下投与する7日前に、それらに全ての成熟B細胞を枯渇させるCD20(MB20-11)mAbまたはアイソタイプ一致コントロール(CTRL)mAbを投与した。表示の日の平均(±SEM)腫瘍体積を2つの別個の実験(n=8-10匹マウス/グループ)からプールした。グループ間の相違は統計的に有意ではなかった。
図5】治療的B10細胞枯渇および免疫チェックポイント阻害剤は、MC38腫瘍が樹立されたマウスで腫瘍の進行を遅らせることを示すグラフである。0日目に40-100mm3の腫瘍体積を有するマウスを、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbで0、6および12日目に、PD-1 mAbで0、3、6および9日目に、またはCTLA-4 mAbで0、3および6日目に処理した。グラフは0日目の治療開始後からスタートする平均(±SEM)腫瘍体積を示す。値は、2つの別個の実験(n=9-10マウス/グループ)からプールした結果を示す。表示の各処理グループとコントロールmAb処理グループとの間の有意な相違は以下で示される:***、p<0.001。
図6】治療的B10細胞枯渇および免疫チェックポイント阻害剤は、MC38腫瘍樹立マウスで生存を延長することを示すグラフである。0日目に40-100mm3の腫瘍体積を有するマウスを、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbで0、6および12日目に、PD-1 mAbで0、3、6および9日目に、またはCTLA-4 mAbで0、3および6日目に処理した。グラフは、0日目の治療開始後からスタートする図5を基にしたカプランメイヤー生存プロットを示す。値は、2つの別個の実験(n=9-10マウス/グループ)からプールした結果を示す。表示の各処理グループとコントロールmAb処理グループとの間の有意な相違は以下で示される:*、p<0.005。
図7】治療的B10細胞枯渇はMC38腫瘍樹立マウスで腫瘍進行を遅らせ、さらに免疫チェックポイント阻害剤と共働作用して拒絶を促進することを示すグラフである。0日目に40-100mm3の腫瘍体積を有するマウスを、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbで0、6および12日目に、PD-1 mAbで0、3、6および9日目に、および/またはCTLA-4 mAbで0、3および6日目に処理した。グラフは、0日目の治療開始後からスタートする平均(±SEM)腫瘍体積を示す。値は、図5と並行して実施した2つの別個の実験(n=9-10マウス/グループ)からプールした結果を示し、したがってコントロール処理グループは同一である。表示の各治療グループとコントロールmAb処理グループとの間の有意な相違は以下で示される:***、p<0.001。
図8】治療的B10細胞枯渇はMC38腫瘍樹立マウスで腫瘍進行を遅らせ、さらに免疫チェックポイント阻害剤と共働作用して拒絶を促進することを示すグラフである。0日目に40-100mm3の腫瘍体積を有するマウスを、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbで0、6および12日目に、PD-1 mAbで0、3、6および9日目に、および/またはCTLA-4 mAbで0、3および6日目に処理した。グラフは、0日目の治療開始後からスタートするカプランメイヤー生存プロットを示す。値は、図7に示した2つの別個の実験(n=9-10マウス/グループ)からプールした結果を示す。表示の各治療グループとコントロールmAb処理グループとの間の有意な相違は以下で示される:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001***;および†、p<0.001(3つ全ての治療を受けたマウスグループ対二重治療の各組合せを受けたグループの場合)。
図9】B10細胞枯渇はPD-1およびCTLA-4チェックポイント阻害剤を投与されたマウスで腫瘍拒絶を促進することを示すグラフセットである。各線は、図8に示したようにPD-1およびCTLA-4 mAb(左パネル)またはMB22-10、PD-1およびCTLA-4 mAb(右パネル)を投与された個々のマウスの腫瘍体積を示し、31日目の個々のマウスの腫瘍の状況および生存が提供されている。
図10A】MC38腫瘍を有するマウスのB10細胞枯渇を示すグラフセットである。マウスに、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbを0、7および14日目に、PD-1 mAbを0、3、6および9日目に、またはCTLA-4 mAbを0、3および6日目に表示のように投与した。数匹のマウスにはまた表示のようにMC38腫瘍細胞(2x106)を0日目に皮下投与した。腫瘍流入領域リンパ節(tumor-draining lymph node)(図10A)の生存活性を有する単一リンパ球におけるCD19+ B細胞およびB10細胞の頻度を、免疫蛍光染色でフローサイトメトリー分析を用いて21日目に査定した。腫瘍流入領域リンパ節および脾臓内の全てのCD19+ B細胞およびB10細胞の数が表示の処理後の個々のマウスについて示されている。水平バーは平均細胞数を示す。全てのデータは2-4実験(n=6-22総マウス/グループ)からプールされ、コントロールと処理グループ間の平均における有意な相違が示されている:**、p<0.01;***、p<0.001、†、p<0.001。
図10B】MC38腫瘍を有するマウスのB10細胞枯渇を示すグラフセットである。マウスに、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbを0、7および14日目に、PD-1 mAbを0、3、6および9日目に、またはCTLA-4 mAbを0、3および6日目に表示のように投与した。数匹のマウスにはまた表示のようにMC38腫瘍細胞(2x106)を0日目に皮下投与した。脾臓(図10B)の生存活性を有する単一リンパ球におけるCD19+ B細胞およびB10細胞の頻度を、免疫蛍光染色でフローサイトメトリー分析を用いて21日目に査定した。腫瘍流入領域リンパ節および脾臓内の全てのCD19+ B細胞およびB10細胞の数が表示の処理後の個々のマウスについて示されている。水平バーは平均細胞数を示す。全てのデータは2-4実験(n=6-22総マウス/グループ)からプールされ、コントロールと処理グループ間の平均における有意な相違が示されている:**、p<0.01;***、p<0.001、†、p<0.001。
図11A】B10細胞枯渇は免疫チェックポイント阻害剤駆動T細胞活性化を増大させることを示すグラフセットである。マウスに、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbを0、6および12日目に、PD-1 mAbを0、3、6および9日目に、および/またはCTLA-4 mAbを0、3および6日目に投与した。表示のマウスにはまたMC38腫瘍細胞(2x106)を0日目に皮下投与した。リンパ節(図11A)の生存活性を有する単一リンパ球を免疫蛍光染色によりフローサイトメトリー分析で19日目に検査した。リンパ節および脾臓内のCD4+およびCD8+ T細胞数がmAb処理後の個々のマウス(表示のようにMC38腫瘍有りまたは無し)について示されている。水平バーは平均細胞数を示す。全てのデータは別個の2-5実験(n=6-16総マウス/グループ)からプールされた。コントロールと処理グループ間の有意な相違が示されている:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。
図11B】B10細胞枯渇は免疫チェックポイント阻害剤駆動T細胞活性化を増大させることを示すグラフセットである。マウスに、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbを0、6および12日目に、PD-1 mAbを0、3、6および9日目に、および/またはCTLA-4 mAbを0、3および6日目に投与した。表示のマウスにはまたMC38腫瘍細胞(2x106)を0日目に皮下投与した。脾臓(図11B)の生存活性を有する単一リンパ球を免疫蛍光染色によりフローサイトメトリー分析で19日目に検査した。リンパ節および脾臓内のCD4+およびCD8+ T細胞数がmAb処理後の個々のマウス(表示のようにMC38腫瘍有りまたは無し)について示されている。水平バーは平均細胞数を示す。全てのデータは別個の2-5実験(n=6-16総マウス/グループ)からプールされた。コントロールと処理グループ間の有意な相違が示されている:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。
図12A】B10細胞枯渇は免疫チェックポイント阻害剤駆動T細胞活性化を増大させることを示すグラフセットである。マウスに、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbを0、6および12日目に、PD-1 mAbを0、3、6および9日目に、および/またはCTLA-4 mAbを0、3および6日目に投与した。表示のマウスにはまたMC38腫瘍細胞(2x106)を0日目に皮下投与した。図11に示したマウスのリンパ節(図12A)の生存活性を有する単一リンパ球を免疫蛍光染色によりフローサイトメトリー分析で19日目に検査した。リンパ節および脾臓内の活性化CD44hiCD62Llo CD4+およびCD8+ T細胞数がmAb処理後の個々のマウス(表示のようにMC38腫瘍有りまたは無し)について示されている。水平バーは平均細胞数を示す。全てのデータは別個の2-5実験(n=6-16総マウス/グループ)からプールされた。コントロールと処理グループ間の有意な相違が示されている:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。
図12B】B10細胞枯渇は免疫チェックポイント阻害剤駆動T細胞活性化を増大させることを示すグラフセットである。マウスに、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbを0、6および12日目に、PD-1 mAbを0、3、6および9日目に、および/またはCTLA-4 mAbを0、3および6日目に投与した。表示のマウスにはまたMC38腫瘍細胞(2x106)を0日目に皮下投与した。図11に示したマウスの脾臓(図12B)の生存活性を有する単一リンパ球を免疫蛍光染色によりフローサイトメトリー分析で19日目に検査した。リンパ節および脾臓内の活性化CD44hiCD62Llo CD4+およびCD8+ T細胞数がmAb処理後の個々のマウス(表示のようにMC38腫瘍有りまたは無し)について示されている。水平バーは平均細胞数を示す。全てのデータは別個の2-5実験(n=6-16総マウス/グループ)からプールされた。コントロールと処理グループ間の有意な相違が示されている:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。
図13】B10細胞を枯渇された、チェックポイント阻害剤で処理された、担癌マウスにおけるCD25+FoxP3+CD4+ Treg細胞を示すグラフセットである。マウスに、MB22-10またはコントロール(CTRL)mAbを-7、0および7日目に、PD-1 mAbを1、4、7および10日目に、および/またはCTLA-4 mAbを1、4および7日目に投与した。数匹のマウスにはまたMC38腫瘍細胞(2x106)を0日目に表示のように皮下投与した。腫瘍流入領域リンパ節および脾臓を免疫蛍光染色によりフローサイトメトリー分析で14日目に査定した。代表的なヒストグラムは個々のマウスにおける表示のゲート内のCD25+FoxP3+CD4+ Treg細胞の頻度を示す。数は、コントロール(左パネル)およびMC38担癌マウス(右パネル)のリンパ節および脾臓についてのグループ平均(±SEM)である。ドットプロットは細胞数を示し、水平バーはグループ平均を示す。データは別個の2-3実験(n=6-16総マウス/グループ)からプールされた。
図14】B10細胞+Treg細胞枯渇(Ontak)療法は、MC38腫瘍増殖を共働作用的に阻害することを示すグラフである。0、6および12日目のMB22-10またはコントロールmAb処理、および/または0、3および6日目のOntak処理の6-9日前にMC38腫瘍(0.04-0.10 cm3)を開始させた。グラフは、別個の2実験(n=9-12総マウス/グループ)からプールした平均(±SEM)腫瘍体積を示す。コントロールと処理グループ間の有意な相違が示される:**、p<0.01;***、p<0.001。単独療法グループ平均と二重療法グループ平均との間の有意な相違が示される: †、p<0.001。
図15A】MB22-10 mAbおよびOntakは、MC38腫瘍を有するマウスでそれぞれB10細胞およびTreg細胞を別個に枯渇させることを示すグラフセットである。図15AはCD25+FoxP3+CD4+ Treg細胞を示し、MC38腫瘍を有するリンパ節および脾臓内のそれら細胞をMB22-10またはコントロールmAbおよび/またはOntak処理から9日後に定量し、当該処理は図14のように開始した。水平バーは1つの実験(n=4マウス/グループ)の平均細胞数を示す。コントロールと処理グループ間の有意な相違が示されている:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。
図15B】MB22-10 mAbおよびOntakは、MC38腫瘍を有するマウスでそれぞれB10細胞およびTreg細胞を別個に枯渇させることを示すグラフセットである。図15BはB10細胞数を示し、MC38腫瘍を有するリンパ節および脾臓内のそれら細胞をMB22-10またはコントロールmAbおよび/またはOntak処理から9日後に定量し、当該処理は図14のように開始した。水平バーは1つの実験(n=4マウス/グループ)の平均細胞数を示す。コントロールと処理グループ間の有意な相違が示されている:*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。
図16A】ヒトCD22を発現するトランスジェニックマウスで抗ヒトCD22 mAbを用いたときのB10細胞枯渇を示すFACScan散乱プロットおよびグラフのセットである。ヒトCD22遺伝子をその内因性制御エレメントと一緒に用いて作出されたトランスジェニックマウスは、ヒト血液B細胞と同じ程度に細胞表面ヒトCD22をB細胞上で発現した。これらのトランスジェニックマウスをCD22-/-マウスと交配してhCD22-Tg+/+mCD22-/-トランスジェニック(hCD22-Tg)子孫を作出した。hCD22-TgマウスにHB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAb(250μg/マウス)を0日目に投与した。脾臓内のIL-10コンピテントB10細胞を7日後に定量した。IL-10-/-マウスの脾臓リンパ球を陰性コントロールとして査定した。精製リンパ球をモネンシン単独で培養するか、またはLPS、PMA、イオノマイシンおよびモネンシン(L+PIM)で5時間ex vivoで刺激した。全てのリンパ球を細胞表面CD19および細胞内IL-10について染色してB10細胞頻度を定量した。図16Aは代表的なフローサイトメトリーのドットプロットを示し、生存活性を有する単一CD19+ B細胞のIL-10発現を示す。数字は表示ゲート内のB細胞の平均頻度を示す。
図16B】ヒトCD22を発現するトランスジェニックマウスで抗ヒトCD22 mAbを用いたときのB10細胞枯渇を示すFACScan散乱プロットおよびグラフのセットである。ヒトCD22遺伝子をその内因性制御エレメントと一緒に用いて作出されたトランスジェニックマウスは、ヒト血液B細胞と同じ程度に細胞表面ヒトCD22をB細胞上で発現した。これらのトランスジェニックマウスをCD22-/-マウスと交配してhCD22-Tg+/+mCD22-/-トランスジェニック(hCD22-Tg)子孫を作出した。hCD22-TgマウスにHB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAb(250μg/マウス)を0日目に投与した。脾臓内のIL-10コンピテントB10細胞を7日後に定量した。IL-10-/-マウスの脾臓リンパ球を陰性コントロールとして査定した。精製リンパ球をモネンシン単独で培養するか、またはLPS、PMA、イオノマイシンおよびモネンシン(L+PIM)で5時間ex vivoで刺激した。全てのリンパ球を細胞表面CD19および細胞内IL-10について染色してB10細胞頻度を定量した。図16Bは、平均B10細胞頻度および個々のマウスについての数を示す散乱プロットである(3から4つの別個の実験からプールされた各グループ当たり6-10匹のマウス)。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違が示される:*、p<0.05;**、p<0.01。
図17A】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbは、大半の脾臓B細胞を除去しないことを示すFACScan散乱プロットおよびグラフのセットである。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離した脾臓リンパ球を、B220+ B細胞(汎B細胞)頻度について免疫蛍光染色によって査定した。図18Aは、リンパ球中の生存活性を有する単一B220+ B細胞頻度を示す代表的なフローサイトメトリーのドットプロットを示し、数字は表示ゲート内の平均B細胞頻度を示す。
図17B】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbは、大半の脾臓B細胞を除去しないことを示すFACScan散乱プロットおよびグラフのセットである。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離した脾臓リンパ球を、B220+ B細胞(汎B細胞)頻度について免疫蛍光染色によって査定した。図18Bは、平均B細胞頻度および個々のマウスについての数を示す散乱プロットである(3から4つの別個の実験からプールされた各グループ当たり6-10匹のマウス)。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違が示される:*、p<0.05;**、p<0.01。
図18A】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbが脾臓の大半の辺縁帯(CD1dhiCD21hi)表現型およびCD1dhiCD5+ B細胞を除去することを示す散乱プロットおよびグラフである。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離された脾臓リンパ球をCD1d、CD21、CD5およびCD19発現について免疫蛍光染色によって査定した。図18Aは、リンパ球中の生存活性のある単一CD1dhiCD21hiまたはCD1dhiCD5+ B細胞頻度を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラムを示し、数字は表示ゲート内の平均細胞頻度を示す。
図18B】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbが脾臓の大半の辺縁帯(CD1dhiCD21hi)表現型およびCD1dhiCD5+ B細胞を除去することを示す散乱プロットおよびグラフである。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離された脾臓リンパ球をCD1d、CD21、CD5およびCD19発現について免疫蛍光染色によって査定した。図18Bは、個々のマウスの平均B細胞頻度示す散乱プロットである(3から4つの別個の実験からプールされた各グループ当たり6-10匹のマウス)。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違が示される:***、p<0.001。
図19A】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbは循環B細胞頻度を減少させることを示すドットプロットおよび散乱プロットを示す。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離された血液リンパ球を相対的B220+ B細胞頻度について免疫蛍光染色によって査定した。図19Aは、リンパ球中の生存活性を有する単一B220+ B細胞頻度を示す代表的なフローサイトメトリードットプロットを供給し、数字は表示ゲート内の細胞頻度を示す。図19Bは、個々のマウスの平均B220+ B細胞頻度示す散乱プロットである(3から4つの別個の実験からプールされた各グループ当たり6-10匹のマウス)。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違が示される:*、p<0.05;**、p<0.01。
図19B】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbは循環B細胞頻度を減少させることを示すドットプロットおよび散乱プロットを示す。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離された血液リンパ球を相対的B220+ B細胞頻度について免疫蛍光染色によって査定した。図19Aは、リンパ球中の生存活性を有する単一B220+ B細胞頻度を示す代表的なフローサイトメトリードットプロットを供給し、数字は表示ゲート内の細胞頻度を示す。図19Bは、個々のマウスの平均B220+ B細胞頻度示す散乱プロットである(3から4つの別個の実験からプールされた各グループ当たり6-10匹のマウス)。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違が示される:*、p<0.05;**、p<0.01。
図20A】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbはB220+ B細胞と結合することを示すヒストグラムおよび散乱プロットのセットである。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離された血液リンパ球を相対的HB22 mAb結合について、免疫蛍光染色により蛍光色素結合抗マウスIgG1アイソタイプ特異的抗体を用いて査定した。図20Aは、コントロールmAb処理マウスのB細胞と対比した、HB22 mAb処理マウスの単一生存活性B220+ B細胞染色の強度を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラムを示す。
図20B】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbはB220+ B細胞と結合することを示すヒストグラムおよび散乱プロットのセットである。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離された血液リンパ球を相対的HB22 mAb結合について、免疫蛍光染色により蛍光色素結合抗マウスIgG1アイソタイプ特異的抗体を用いて査定した。図20Bは、個々のマウスについて線形スケールでのIgG1に対する平均B220+ B細胞染色(平均蛍光強度)示す散乱プロットである(3から4つの別個の実験からプールされた各グループ当たり6-10匹のマウス)。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違が示される:**、p<0.01;***、p<0.001。
図21A】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbはB細胞表面CD19発現を減少させることを示すヒストグラムおよび散乱プロットである。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離された血液リンパ球を相対的CD19 mAb結合について、免疫蛍光染色によって査定した。図21Aは、コントロールmAb処理マウスのB細胞と対比した、HB mAb処理マウスの単一生存活性CD19+ B細胞染色の強度を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラムを示す。
図21B】hCD22-Tgマウスで、B10細胞枯渇mAbはB細胞表面CD19発現を減少させることを示すヒストグラムおよび散乱プロットである。HB22-103、HB22-107、HB22-115またはアイソタイプ一致(IgG1)mAbのいずれか(250μg/マウス)を図16より7日早く投与されたhCD22-Tgマウスから単離された血液リンパ球を相対的CD19 mAb結合について、免疫蛍光染色によって査定した。図21Bは、個々のマウスについて線形スケールでの平均CD19+ B細胞染色(平均蛍光強度)示す散乱プロットである(3から4つの別個の実験からプールされた各グループ当たり6-10匹のマウス)。バーは平均を示す。グループ平均間の有意な相違が示される:**、p<0.01;***、p<0.001。
図22-1】表示の抗体の可変重鎖および可変軽鎖の配列アラインメントを示す。灰色で各鎖のCDRが示され、各鎖の配列番号が参考に提供されている。
図22-2】表示の抗体の可変重鎖および可変軽鎖の配列アラインメントを示す。灰色で各鎖のCDRが示され、各鎖の配列番号が参考に提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明で用いられる用語は製薬業界業者にはよく理解されていると考えられるが、本明細書で提供される場合には、定義は、本発明の説明を容易にし、さらに用語の使用の説明例を提供するために示される。
本明細書で用いられるように、“a”、“an”および“the”という用語は“one or more(1つ以上)”を意味するが、ただし単数形が明瞭に指定される場合を除く(例えば“a single formulation(1つの単一処方物)”という語句では、明瞭に単数形が指定される)。
【0014】
本明細書で用いられるように、本発明で用いられる抗体の活性に関連して、“優先的に枯渇させる”とは、抗体が、免疫応答中に標的免疫細胞(例えばT細胞または抗原提示細胞)に向けられるB10細胞制御性活性の機能を選択的に失わせ阻害するか、或いは当該活性を機能的に変更または妥協させることを意味する。さらにまた、当該抗体は、そのような抗体による治療の結果として、大半の他のB細胞亜集団と比較して顕著により多くのB10細胞を優先的に枯渇させる。例えば、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体が、治療に用いられるとき、処置されるB細胞集団のB10細胞の少なくとも55%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を優先的に枯渇させるが、一方、当該処置されるB細胞集団の大半の他の亜集団の少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を(機能、活性、割合または相対数の1つ以上に関して)無傷で残すであろう。本明細書で用いられるように、免疫チェックポイント阻害剤を用いる治療レジメンに制御性B10細胞を優先的に枯渇させる抗体を加えることによって与えられる治療効果に関連して、“強化または改善または延長する”とは測定される治療効果の改善を指す。例えば、強化または改善は、優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体の治療レジメンへの添加の結果としての臨床成果(例えば腫瘍サイズまたは進行の軽減)または免疫応答の測定(例えばCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞の活性化、または抗腫瘍応答の持続)によって、そのような添加がない治療(例えば1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤のみの治療)と比較して測定でき、測定される応答は、5%、10%、15%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または前記を超えて改善される。
【0015】
“第一”および“第二”という用語は、2つの化合物または2つの組成物を区別する目的で本明細書において用いられ、これらは明細書の説明でより明確となるであろう。
【0016】
“治療的に有効な量”という語句は、ある組成物または組合せを必要とする個体に投与された後、治療効果を生じるそのような組成物または組合せの量を意味する。免疫療法では、治療効果は、本明細書に記載される方法で治療する前には抑制されているT細胞応答の活性化によって提示され得る。そのような活性化は、当業界で公知の方法(例えば検出可能なマーカーによる標識に続くフローサイトメトリー分析)を用いて1つ以上のT細胞亜集団の増加、またはそのようなT細胞亜集団の活性化マーカーの発現誘発若しくは増加によって測定できる。また別には、活性化はまた、制御性T細胞(例えばCD25+FoxP3+、CD4+細胞)の数または機能の低下によって測定できる。したがって、ある特徴では、治療有効性は以下の臨床成果によって査定できる:治療前または優先的に制御性B10細胞を枯渇させる抗体および免疫チェックポイント阻害剤の組合せによる治療がないときの数と比較して、抗腫瘍T細胞または活性化T細胞の数の増加。
【0017】
癌の治療では、治療効果には以下の1つ以上が含まれ得る(ただしこれらに限定されない):(a)免疫関連応答(全腫瘍負荷に対する免疫関連完全応答または免疫関連部分応答(例えば抗腫瘍免疫応答)として当業者に公知である);および(b)伝統的な全体的客観的応答率(当業者に公知の適切な応答査定基準を用い、かつ治療される癌のタイプに左右される(例えばリンパ腫ンついては以下(Cheson et al., 2014, J.Clin.Oncology 32 (27):3059-3067)および固形非リンパ系腫瘍については以下(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors (RECIST))を参照されたい)(例えば抗腫瘍応答)。
【0018】
“医薬的に許容できる担体”という用語は、本明細書に記載される組成物または組合せの投与、デリバリー、貯蔵、安定性のいずれか1つ以上で有用な任意の化合物または組成物または担体媒体を意味するために本明細書では用いられる。これらの担体には以下が含まれることが当業界で公知である(ただしこれらに限定されない):希釈剤、水、食塩水、適切なベヒクル(例えばリポソーム、微粒子、ナノ粒子、エマルジョン、カプセル)、緩衝剤、医療用非経口ベヒクル、賦形剤、水溶液、懸濁剤、溶媒、エマルジョン、洗剤、キレート剤、可溶化剤、塩、着色剤、ポリマー、ヒドロゲル、界面活性剤、乳化剤、アジュバント、充填剤、保存料、安定化剤、油、結合剤、崩壊剤、吸収剤、香料、および製薬業界で広く知られている同様なもの。
【0019】
“特異的に結合する”または“結合特異性”という用語は代替的に用いられ、さらに抗体との関連で、抗体が、当該抗体の形成を誘発するために用いられた抗原と、抗体の結合部位と当該抗原との間の非共有結合性相互作用によって1つ以上の非共有結合を形成する能力を指す(例えば、本明細書で例示する抗原にはCD20、CD22、PD-1、PD-L1、CTLA-4が含まれる)。
【0020】
当業者に認知されているように、“同一性”という用語は、当業界で公知の公開方法およびソフトウェアを用いて実施される2つ以上のアミノ酸配列間の比較を表す。例えば、比較されるアミノ酸配列は最適にアラインメントされ、アミノ酸の相違数が数えられてパーセンテージに変換される。例えば、50アミノ酸の第一のアミノ酸配列が50アミノ酸の第二のアミノ酸配列と最適にアラインメントされ、50アミノ酸の5つが第二のアミノ酸と相違する場合、当該第一のアミノ酸配列は、当該第二のアミノ酸配列と10%同一性を有すると称される。
【0021】
“抗体”という用語は、完全長抗体;完全長抗体の誘導体またはフラグメントであって、当該抗体の完全長配列よりも短いものを含むが少なくとも当該完全長抗体の結合特異性を保持するもの(例えば軽鎖および重鎖の可変部分);キメラ抗体;ヒト化抗体;合成抗体;組換え生成抗体を指し、これらは当業者には公知であり、当業界で公知の方法を用いて生成される。抗体のフラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、ダイマー型scFv、Fd、およびFdが含まれるが、ただしこれらに限定されない。フラグメントは合成されるか、または当業界で公知の方法を用いて酵素切断によって生成され得る。抗体はまた、当業界で公知の方法を用いて原核細胞または真核細胞のin vitro翻訳系で生産され得る。本明細書では、抗体はまた、それらの相補性決定領域(CDR)(それらの特異的抗原と結合する抗体の可変鎖の部分)で呼ぶことができる。本明細書ではしたがって例示すれば、抗体は、その重鎖のCDR(VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3)および軽鎖のCDR(VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3)で呼ぶことができる。同様に、IgGクラスの抗体は、そのサブクラスで呼ぶことができる(例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)。関連するIgGサブクラスの抗体のFc部分についてのアミノ酸配列は当業者には公知である。
本明細書では抗体には特に“キメラ”抗体がそのような抗体のフラグメントと同様に含まれるが、ただしそれらは所望の生物学的活性を示す場合に限られる(U.S.Pat.No.4,816,567;Morrison et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855, 1984;Oi et al., Biotechnologies 4(3):214-221, 1986;およびLiu et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-43, 1987)。
【0022】
非ヒト(例えばネズミ)抗体の“ヒト化”または“CDR移植”型は、レシピエントの超可変領域残基が非ヒト種(ドナー抗体)由来の超可変領域残基と交換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、非ヒト種は、所望の特異性、親和性および性能を有する例えばマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類である。本明細書で用いられるときの“超可変領域”という用語は、その抗原との結合に関係する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は“相補性決定領域”または“CDR”のアミノ酸残基を包含する。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FW)残基もまた対応する非ヒト残基で交換される(いわゆる“復帰突然変異”)。さらにまた、ヒト化抗体をレシピエント抗体またはドナー抗体で見出されない残基を含むように改変して、抗体特性(例えば親和性)を改良することができる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ(典型的には2つ)の可変ドメインの実質的に全てを含み、前記では超可変領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものと一致し、さらにFRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。場合によってヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分を含むであろう。更なる詳細については以下を参照されたい:Jones et al., Nature 321:522-525, 1986;およびReichmann et al., Nature 332:323-329, 1988。
【0023】
“単鎖Fv”または“sFv”抗体フラグメントは抗体のVHおよびVLドメインを含み、この場合、これらのドメインは一本のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、FvポリペプチドはさらにまたVHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカーを含み、sFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする。sFvの総括については以下を参照されたい:Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol.113, Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag, New York, pp.269-315, 1994。
【0024】
“ダイアボディ”という用語は2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、当該フラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中に軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間でペアの形成を可能にするには短すぎるリンカーを用いることによって、これらドメインは別の鎖の相補性ドメインとペアを形成するように強制され、2つの抗原結合部位を生じる。ダイアボディは例えば以下により完全に記載されている:EP 404,097;WO 93/11161;およびHollinger el al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448, 1993。
【0025】
本出願を通して用いられるとき、“線状抗体”という表現は、Zapataらの論文(Zapata, et al.Protein Eng.8(10): 1057-1062, 1995)に記載された抗体を指す。簡単に記せば、これらの抗体は一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含み、一対の抗原結合領域を形成する。線状抗体は二特異性または一特異性であり得る。
【0026】
本明細書で用いられる“治療する(treat, treating, treatment)”という用語は、防止的(予防的)または治療的(緩和的)の1つ以上を包含する。
【0027】
本明細書で用いられる“癌”という用語は、哺乳動物(例えば人間)で見出される全てのタイプの癌、新生物または悪性腫瘍を指し、白血病、リンパ腫、癌腫、および肉腫を含む。本明細書で提供される組成物、組合せまたは方法で治療できる例示的癌には固形非リンパ系腫瘍、B細胞白血病、非ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫が含まれる。
“固形非リンパ系腫瘍”という用語は、本明細書では上皮細胞起原の任意の原発性腫瘍を意味することを規定および明言するために用いられ、器官または腺(例えば肝臓、肺臓、脳、副腎、乳房、結腸、膀胱、膵臓、胃、前立腺、胃腸管、または生殖管(子宮頸、卵巣、子宮内膜など))に初発する腫瘍またはその転移を含む。本発明の目的のためには、“固形非リンパ系腫瘍”はまたメラノーマを含む。
【0028】
“個体”という用語は本明細書では哺乳動物(好ましくは人間)を指すために用いられ、より好ましくは、人間で優先的にB10細胞を枯渇させる抗体、またはそのような抗体と免疫チェックポイント阻害剤との組合せによる治療の必要がある人間を指すために用いられる。個体という用語は対象動物および/または患者と互換的に用いることができる。
“免疫チェックポイント阻害剤”という用語は、免疫チェックポイントタンパク質と結合する分子、化合物または組成物を指し、免疫チェックポイントタンパク質の活性を封鎖し、および/または当該阻害剤が結合する免疫チェックポイントタンパク質発現免疫制御性細胞(例えばTreg細胞、腫瘍関連マクロファージなど)の機能を阻害する。免疫チェックポイントタンパク質には以下が含まれる得る(ただしそれらに限定されない):CTLA4(細胞傷害性T-リンパ球関連タンパク質4、CD152)、PD1(PD-1、プログラム死1受容体としても知られている)、PD-L1、PD-L2、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子-3)、OX40、A2AR(アデノシンA2A受容体)、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、BTLA(BおよびTリンパ球減衰因子、CD272)、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)、KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)、TIM3 (T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3)、VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー)、およびIL-2R(インターロイキン-2受容体)。
【0029】
免疫チェックポイント阻害剤は当業界では周知であり、市場でまたは臨床的に利用可能である。当該阻害剤には免疫チェックポイントタンパク質を阻害する抗体が含まれるが、ただし前記に限定されない。チェックポイント阻害剤の実例を、当該阻害剤が標的とする免疫チェックポイントタンパク質の関係から下記のように提供する。CTLA-4阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害剤にはトレメリムマブおよびイピリムマブ(Yervoyとして販売)が含まれるが、ただし前記に限定されない。PD-1阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害剤には、ニボルマブ(BMS-936558/MDX-1106(Bristol-Myers Squibb))、ピジリズマブ(CureTech)、AMP-514(MedImmune)、ペムブロリズマブ(Merck)、AUNP12(ペプチド(Aurigene and Pierre))が含まれるが、ただし前記に限定されない。PD-L1阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害剤には、BMS-936559/MDX-1105(Bristol-Myers Squibb)、MPDL3280A(Genentech)、MED14736(MedImmune)、MSB0010718C(EMD Sereno)が含まれるが、ただし前記に限定されない。B7-H3阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害剤にはMGA271(Macrogenics)が含まれるが、ただし前記に限定されない。LAG3阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害剤には、IMP321(Immuntep)、BMS-986016(Bristol-Myers Squibb)が含まれるが、ただし前記に限定されない。KIR阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害剤にはIPH2101(lirilumab(Bristol-Myers Squibb))が含まれるが、ただし前記に限定されない。OX40阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害剤にはMEDI-6469(MedImmune)が含まれるが、ただし前記に限定されない。IL-2Rを標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、優先的にTreg細胞(例えばFoxP-3+ CD4+細胞)を枯渇させるためにIL-2毒素融合タンパク質を含む。前記にはデニリューキンジフチトクス(denileukin diftitox)(Ontak(Eisai))が含まれるが、ただし前記に限定されない。
【0030】
“優先的にB10細胞を枯渇させる抗体”という用語は、本明細書では、特異的にCD20またはCD22と結合し優先的にB10細胞を枯渇させる抗体サブセットを指すために用いられる。優先的にB10細胞を枯渇させるこの抗体サブセットの能力は1つ以上の要件を必要とするように思われる。前記要件には、当該サブセットがCD22またはCD20上で結合する場合に(例えば抗体依存細胞性細胞傷害が非効率的であるかまたは検出できないような細胞表面からの隔たり)、以下が含まれ得る(ただしこれらに限定されない):親和性、アビジティー、標的分子と架橋する能力、抗体のアイソタイプ、および抗原内在化を生じB10細胞枯渇を生じる細胞性シグナルを伝達または阻害する能力。そのような抗体はまた当業界で公知の方法を用いて操作して、Fc部分を改変し(例えばアミノ酸の欠失または置換)、Fc受容体を発現する免疫エフェクター細胞のFc受容体との結合能力を失わせるか、または非効率的にすることができる。優先的にB10細胞を枯渇させる抗体は、in vitroまたはin vivo動物モデル系での免疫が、抗体を生成した後で当業界で公知の方法を用いて抗体結合特異性および優先的B10細胞枯渇能力についての選別スクリーニングのために必要であるという意味で非天然であり得る。このような場合に、人間の個体が優先的にB10細胞を枯渇させる天然の抗体を有するとはクローン欠損のゆえに誰も考えないであろう。実施例2-6および図1-15は優先的にB10細胞を枯渇させる抗体(MB22-10と称される)の実例である。MB22-10抗体は以下に記載されている:Horikawa et al., J Immunol 2013 vol 190: 1158-1168;Haas et al., J.Immunology, 2006, 177:3063-3073;Poe et al.PLoS One 2011 6:e22464;およびMatsushita et al., J Immunology 2010 185:2240-2252。CD22またはCD20との抗体の結合に続くトランスメンブレンシグナルの発生を介して、抗体がホモタイプ接着(細胞凝集)を媒介する能力はまた、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体をスクリーニングするための代用マーカーとして用いることができる、これに関しては、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体のマーカーとして、B細胞ホモタイプ接着の使用が実施例1で示されている。そのようなマーカーを用いながら、ヒトCD20と結合し優先的にヒトB10細胞を枯渇させることができる抗体の例には、ルツキシマブのCDRで構成される抗体が含まれ、IgG4 AbのFc部分または補体を活性化せず抗体依存細胞媒介細胞傷害(ADCC)にも関与しないように操作(engineer)されてあるFc部分を有する。そのようなマーカーを用いながら、ヒトCD20と結合し優先的にヒトB10細胞を枯渇させることができる抗体の例には、トシツモマブのCDRで構成される抗体が含まれ、IgG4 AbのFc部分または補体を活性化せず抗体依存細胞媒介細胞傷害(ADCC)にも関与しないように操作されてあるFc部分を有する。ルツキシマブおよびトシツモマブは当業者に周知であり、良く特徴づけられた抗体である。
【0031】
個体で癌を治療するか、または抗腫瘍応答を開始、強化若しくは延長する方法が本明細書で提供される。前記方法は、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を対象動物に投与して固形非リンパ系腫瘍を治療する工程を含む。別の実施態様では、前記方法は、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体および免疫チェックポイント阻害剤を癌または腫瘍に罹患している任意の個体に投与する工程を含む。優先的にB10細胞を枯渇させる抗体および免疫チェックポイント阻害剤の組合せは任意の方法で投与することができる。それらは、実施例で示されたように当該成分の各々にとって最適な投与タイムコースで個体に別々に投与される投与レジメンでは別々の投与として与えることができる。また別には、組合せはユニット組成物として投与してもよい。当業者は併用療法レジメンを開発することができる。
【0032】
優先的にB10細胞を枯渇させる抗体および免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む、その必要がある個体でT細胞活性化を開始、強化または延長する方法もまた提供される。前記方法はまた任意の手段で達成することができ、2つ以上の組成物または両方の治療薬を含むユニット組成物を用いてもよい。
【0033】
免疫チェックポイント阻害剤の効能を開始または強化または延長するか、または免疫チェックポイント阻害剤の毒性若しくは用量を減少させることを可能にする方法もまた提供される。前記方法は、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を含む組成物を、免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物とともに併用療法レジメンで個体に投与する工程を含む。
【0034】
免疫応答の刺激によって緩和された疾患を治療する方法もまた提供される。これらの方法は、その必要がある個体に、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を含む組成物および免疫チェックポイント阻害剤を含む更なる組成物を投与する工程を含む。
【0035】
本明細書に記載される方法で、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体は、MB22-10、MB22-103、MB22-106、MB22-107、MB22-115、ルツキシマブ、およびトシツモマブから成る群から選択される抗体のCDR部分または本明細書に記載される組合せのいずれかを含む抗体から選択することができる。優先的にB10細胞を枯渇させる抗体は、B細胞のホモタイプ接着を適切に誘発する。
【0036】
本明細書で提供される任意の治療方法では、抗体または組合せの投薬量は、投与態様、投与処方、癌のタイプ、癌の病期、そのような組成物を投与される個体のサイズおよび健康状態のような因子、並びに治療に適切な投薬量を決定する分野で習熟した医師によって考慮され得る他の因子に左右されるであろう。例えば、本明細書で提供される治療方法では、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体または免疫チェックポイント阻害剤は、(個体の体重当たり)約0.1mg/kgから約50mg/kg、約0.5mg/kgから約20mg/kg、約0.5mg/kgから約10mg/kg、約0.5mg/kgから約5mg/kg、または約0.5mg/kgから約1mg/kgの間の投薬量範囲で投与され得る。当業者は公知の原則および薬物デリバリーと薬物動態のモデルを適用して、前臨床および臨床試験で検査される蓋然性の高い投薬量範囲を確認し、本明細書で提供される治療方法で用いられる組成物または組合せの治療的に有効な量を決定することができる。本明細書で提供される治療方法で有用な組成物または組合せは、さらにまた医薬的に許容できる担体を含み、貯蔵、安定性、投与およびデリバリーの1つ以上を容易にすることができる。担体は、組成物または組合せを例えば粉体または固体形にできるように微粒子化することができる。担体は、組成物または組合せを注射するか塗布するかまたは他の態様で投与できるように半固形、ゲルまたは液状形であってもよい。本明細書で提供される治療方法で有用な組成物または組合せのその必要がある個体(例えば人間)への投与態様は、医薬組成物のデリバリーに適切な、特に癌の治療に適切な当業界で公知の任意の態様であり得る。投与態様には、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、灌流、および蠕動技術によるものが含まれるが、ただしこれらに限定されない。本明細書で提供される治療方法で有用な組成物または組合せはまた、当業者に公知の他の癌治療(化学療法および放射線療法を含むがただし前記に限定されない)と併用することができる。
【0037】
投与の頻度、順序、併用療法の用量及び投薬レジメンは、医師が医学文献、個体の健康状態、年齢及び性別、治療されるべき疾患または症状または異常、組成物または併用療法の投与態様および用量スケジュール、および他の関連する考察を勘案しながら決定することができる。本明細書で提供される治療方法では、免疫チェックポイント阻害剤は、治療的に有効な適切な頻度で個体に投与することができる。例えば、免疫チェックポイント阻害剤は、週に2回、毎週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、毎月1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月に1回、5ヶ月に1回、または6ヶ月に1回投与することができる。本明細書で提供される治療方法では、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体は、治療的に有効な適切な頻度で個体に投与することができる。例えば、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体は1回投与するか、免疫チェックポイント阻害剤と同じ頻度で投与するか、または免疫チェックポイント阻害剤と異なる頻度で投与することができる。本明細書で提供される組合せを用いる治療方法では、1つの例として、免疫チェックポイント阻害剤の投与は優先的にB10細胞を枯渇させる抗体の投与に先行する。本明細書で提供される組合せを用いる治療方法では、免疫チェックポイント阻害剤の投与は優先的にB10細胞を枯渇させる抗体の投与の後に続く。
【0038】
優先的にB10細胞を枯渇させることができる抗体もまた提供される。特異的にヒトCD22と結合する抗体は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域(“VH”)は3つの相補性決定領域(VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3)を含み、軽鎖可変領域(“VL”)は3つの相補性決定領域(VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3)を含み、さらに、VH CDR1は配列番号:27、28並びに配列番号:27および28と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一の配列から成る群から選択され;VH CDR2は配列番号:29、30および31並びに配列番号:29および30および31と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一の配列から成る群から選択され;VH CDR3は配列番号:32および33並びに配列番号:32および33と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一の配列から成る群から選択され;VL CDR1は配列番号:34、37、40、43並びに配列番号:34、37、40、43と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一の配列から成る群から選択され;VL CDR2は配列番号:35、38、41および44並びに配列番号:35、38、41および44と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一の配列から成る群から選択され;VL CDR3は配列番号:36、39、42および45並びに配列番号:36、39、42および45と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一の配列から成る群から選択される。これらのCDRを用いて、ヒト抗体のFW領域および定常領域と組合わせることによってヒト化抗体を作製し、ヒトCD22特異的ヒト化抗体を作製することができる。CDRはFW領域内に以下となるように配置される:当該重鎖可変領域(“VH”)が3つの相補性決定領域、VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、4つのフレームワーク領域、VH FW1、VH FW2、VH FW3およびVH FW4がVH FW1-VH CDR1-VH FW2-VH CDR2-VH FW3-VH CDR3-VH FW4の順序で存在し、当該軽鎖可変領域(“VL”)がまた3つの相補性決定領域、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含み、4つのフレームワーク領域VL FW1、VL FW2、VL FW3およびVL FW4がVL FW1-VL CDR1-VL FW2-VL CDR2-VL FW3-VL CDR3-VL FW4の順序で存在する。当業者は、本明細書で提供されるCD22特異的CDRまたは重鎖および軽鎖可変領域を土台にしたヒト化抗体を作製することができる。
【0039】
ある実施態様では、抗体は、配列番号:27、29および32のVH CDR並びに配列番号:40、41および42のVL CDRを含むか(HB22-103)、またはこれらの配列と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一性を有する配列を含む。ある実施態様では、抗体は、配列番号:27、30および32のVH CDR並びに配列番号:37、38および39のVL CDRを含むか(HB22-106)、またはこれらの配列と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一性を有する配列を含む。ある実施態様では、抗体は、配列番号:28、31および33のVH CDR並びに配列番号:34、35および36のVL CDRを含むか(HB22-107)、またはこれらの配列と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一性を有する配列を含む。さらに別の実施態様では、抗体は、配列番号:27、30および32のVH CDR並びに配列番号:43、44および45のVL CDRを含むか(HB22-115)、またはこれらの配列と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一性を有する配列を含む。さらにまた別の実施態様では、抗体は、配列番号:2、3、4および5並びに配列番号:2、3、4および5と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一の配列から成る群から選択されるVH、および配列番号:15、16、19および20並びに配列番号:15、16、19および20と80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%同一の配列から成る群から選択されるVLを含む。抗体は配列番号:3および16を含むことができる。抗体は配列番号:4および20を含むことができる。抗体は配列番号:5および15を含むことができる。これらの抗体がいずれもヒトCD22の同じエピトープに向かうように、本出願で識別される多様な重鎖および軽鎖配列並びに多様なCDRを互換的に用いることができる。我々はVHおよびVLを互換的に用いることができることを既に示し、我々は、これら識別抗体間でCDRは同様に互換性であろうと予想する。
【0040】
提供される配列は抗体の可変領域のための配列のみである。これらの領域は抗体の特異性を決定するが、抗体のエフェクター機能は一般的には抗体の定常領域(および特異的アイソタイプ)に依存することは当業者には理解されよう。当業者は、本明細書で提供される可変領域を基にして個々の目的のために抗体を操作できる。実施例に記載するように、優先的にB10細胞を枯渇させる得る抗体は一般的にはB10細胞のホモタイプ接着を誘発できる抗体である。いくつかの実施態様では、抗体はヒトまたはヒト化IgG4抗体のFc部分を含む。いくつかの実施態様では、抗体は、補体を活性化せず抗体依存細胞媒介細胞傷害(ADCC)にも関与しないように操作されてあるFc領域を含む。
本明細書に記載されるCD22と結合できる抗体は、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体として本明細書に記載の方法のいずれかで用いることができる。
【0041】
本開示は、本明細書に示される構築物、成分の配合、または方法の工程の特定の詳細に限定されない。本明細書に開示される組成物および方法は、下記の開示に照らせば当業者には明白である多様な態様で作製、実施、使用、達成および/または形成できる。本明細書で用いられる語法および用語は単に説明を目的とし、特許請求の範囲を制限するものとみなされるべきではない。多様な構造および方法の工程に言及するために本明細書および特許請求の範囲で用いられる順序に関する指示(例えば第一、第二および第三)は、いずれか特定の構造若しくは工程またはそのような構造若しくは工程についてのいずれか具体的な順序または構成を指すと解釈されることは意図されない。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特段に指定されないかぎり或いは文脈と明瞭に矛盾しないかぎり任意の適切な順序で実施することができる。いずれかのおよび全ての例の使用、または本明細書で提供される例示的言葉(例えば“such as”)は、開示を容易にすることのみを意図し、特段に規定されないかぎり開示の範囲のいかなる限定も示唆しない。本明細書のいかなる言葉もさらに図面に示されるいかなる構造も、特許請求されていないいずれかの成分が本開示の内容の実施に必須であることを示していると解釈されるべきではない。“including(含む)”、“comprising(含む)”または“having(有する)”という用語およびその文法的変形の本明細書における使用は、その後に挙げられる成分およびその等価物を追加の成分とともに包含することを意味する。ある種の成分を“including(含む)”、“comprising(含む)”または“having(有する)”として列挙される実施態様もまた、それらある種の成分“から本質的に成る”およびそれら成分“から成る”ことが意図される。
【0042】
本明細書で値の範囲を列挙することは、特段に指示されないかぎり、当該範囲内に入るそれぞれ別個の値を個々に言及する簡略方法として提供することが単に意図され、それぞれ別個の値は、それが本明細書で個々に列挙されたかのように明細書に取り込まれる。例えば、濃度範囲が1%から50%と記載される場合、例えば2%から40%、10%から30%、または1%から3%などの値を本明細書に明確に列挙することが意図される。これらは具体的に意図されるものの単なる例であり、列挙された最低値と最高値の間の全ての可能な組合せ並びに最低値および最高値が本開示に明確に記載されていると考えられる。列挙される特定の量または量の範囲を説明する“about(約)”という語は、当該列挙された量に非常に近い値が当該量に含まれることを示すことが意図される(前記値は例えば製造公差、計測における装置及び人為的誤差などに起因し得るまたは本来そのような値である)。量に関係する全てのパーセンテージは特段の指示がなければ重量による。
【0043】
いずれの参考文献(本明細書に引用される非特許または特許文書類を含む)も従来技術を構成するものと容認されるものではない。特に、特段の指定がなければ、本明細書のいずれの文書類に対する言及も、これらの文書類のいずれかが米国または他のいずれかの国の業界の一般的な通常知識の部分を構成するということを容認するものではない。当該参考文献の著者が主張する考察について、本出願人は、本明細書に引用するいずれの文書類の正確さおよび適切性にも反論する権利を保留する。本明細書に引用する全ての参考文献が、明確にそうではないことが示されないかぎり参照によってその全体が本明細書に含まれる。いずれかの定義および/または当該引用文献で見出される記述の間に何らかの相違点が存在するという場合には、本開示が優先するであろう。
以下の実施例は単に例証することが意図され、添付される本発明の特許請求の範囲の制限を意味しない。
【0044】
[実施例1]
本実施例は、B10細胞の優先的枯渇を識別し提示するin vivo実験を実施するのではなく、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体をスクリーニングおよび識別するin vitro代用マーカーの使用を示す。本実施例では、精選CD20抗体またはCD22抗体とそれらの対応するヒト細胞表面受容体との結合は、Fcγ受容体非依存シグナリング経路を介して、ネズミB細胞およびヒトB細胞の迅速で強力なホモタイプ接着を誘発する能力を有する。ホモタイプ接着を誘発する抗体の能力を査定するアッセイを以前に記載されたように実施した(Kansas and Tedder, 1991, J.Immunol., 147(12):4094-4102)。簡単に記せば、細胞を10%ウシ胎児血清含有細胞培養液で洗浄し、5x106細胞を含む0.5mLを15mLの丸底チューブに加えた。続いて、細胞受容体(例えばCD20またはCD22)の飽和に必要な濃度(間接免疫蛍光染色によりフローサイトメトリー分析で決定)の5から10倍過剰濃度でスクリーニングされるべき抗体を添加した。細胞および抗体をボルテックス攪拌し、処理細胞懸濁物のそれぞれ0.1mLを平底の96ウェルプレートに加えた。続いて、プレートを37℃で1から2時間インキュベートした。細胞のホモタイプ接着の半定量採点を以下の基準を用いて実施した:“0”はホモタイプ接着が全くなかったことを意味する(90%を超える細胞が凝集しなかった);“+”は大半の細胞が凝集しないが10-20細胞の数個のクラスターが観察されたことを意味する;“++”は約50%の細胞が中サイズの凝集塊で残りは単一細胞であったことを意味する;“+++”はほぼすべての細胞が中から大凝集塊で20%未満が非凝集細胞であったことを意味する;“++++”は90%を超える細胞が大きな凝集塊であったことを意味する。表1に示すように、本実施例で例示される優先的にB10細胞を枯渇させる抗体(MB22-10)は、用いたB細胞に応じて、約++の半定量スコアを示した。MB22-10はマウスCD22特異的抗体である。トシツモマブもまた表1に示され、+++および++++の半定量スコアを用いたB細胞に応じて示したが、リツキシマブは約++の半定量スコアを示した。したがって、トシツモマブおよびリツキシマブ(B10細胞ホモタイプ接着を生じるFcガンマ受容体非依存シグナルを発生させる能力を有する)もまた、B10細胞枯渇CD22抗体(例えばMB22-10)によって誘発される分子経路を介してB10細胞を枯渇させる能力を有するであろう。
【0045】
表1
【0046】
[実施例2]
本実施例では、単独療法として優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を投与することによる免疫療法の方法および癌治療の方法が標準的動物モデルで示される。C57BL/6マウスの毛を剃った背部側面の皮下に200μLのPBS中の2x106 MC38(結腸腺癌)腫瘍細胞を0日目に注射した。表示の日に、組織リンパ球を精製し、モネンシン単独で培養するかまたはex vivoでLPS、PMA、イオノマイシン、およびモネンシン(L+PIM)で5時間刺激した。野生型リンパ球を細胞表面CD19および細胞内IL-10について染色してB10細胞頻度を定量し、一方、フローサイトメトリーによって査定される細胞質GFP発現によりTigerマウスのリンパ球をCD19について染色した。代表的なフローサイトメトリーヒストグラムは、リンパ節(図1)および脾臓(図2)の生存活性を有する単一CD19+ B細胞によるIL-10発現を示す。図1および2は、全B細胞に対する割合としてのB10細胞の相対的頻度は担癌マウスの流入領域リンパ節では変化はなかったが、担癌マウスの脾臓では顕著に増加したことを示している。右の散乱プロットは、担癌マウスの流入領域リンパ節および脾臓のB10細胞の総数は、非担癌マウスと比較して特に腫瘍開始後初期時点で顕著に増加したことを示す。
【0047】
同様な実験で、優先的にB10細胞を枯渇させる、CD22を標的とする抗体(IgG2c)を精製し、-7、0および7日目に(合計で300μg/マウス)マウスの腹腔内に投与しB10細胞を枯渇させた(“テストグループ”)。第二のグループのマウスには汎B細胞枯渇抗体(IgG2c、250μg/マウス)を同じ投与態様で投与した(前記抗体は、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体と比較して成熟B細胞を持続的に枯渇させるその能力のために-7日目にだけ投与された(“B細胞コントロールグループ”))。コントロールグループとして、パラレルグループのマウス(“アイソタイプコントロールグループ”)にアイソタイプ一致コントロールモノクローナル抗体を、処置抗体と比べて同じ投薬量、投与態様および頻度で投与した。腫瘍体積をモニターし、以下の等式を用いて算出した:
V=(LxWxW)/2、式中、V=体積(cm3)、L=長さ、およびW=幅(cm)。
腫瘍サイズは腫瘍注射後30日までモニターし、腫瘍体積が2.0 cm3を超える前にマウスを安楽死させた。平均腫瘍体積が算出され、各マウスグループが最初のマウス数の半分を超える数を保持するかぎり平均腫瘍体積が表示される。カプランメイヤープロットを用いてマウスの生存を示した。
【0048】
コントロールモノクローナル抗体処置マウスと対比して、B10細胞枯渇は腫瘍増殖を顕著に阻害し、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体による処置の結果として、B10細胞枯渇マウスでは各時点で平均腫瘍体積は37%減少した(Pは0.05以下)(図3)。全B細胞枯渇の結果として観察される腫瘍増殖では、コントロールモノクローナル抗体処置グループと対比して有意な影響はなかった(図4)。1つの治療方法で投与された、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を含む組成物は、攻撃的腫瘍株の比較的高い腫瘍用量で試験した場合ですら、単独療法として腫瘍増殖に対して有意な治療効果を示した。これは、CD22抗体の投与が固形非リンパ系腫瘍の増殖低下を生じるという我々の知識を示す最初のものである。
【0049】
[実施例3]
本実施例では、標準的な動物モデルおよび方法を以下について用いた:(a)癌の治療または抗腫瘍免疫応答の促進;(b)T細胞活性化または既存の免疫応答の再活性化(当該個体ではそのような既存の免疫応答は阻害または抑制されている);(c)免疫チェックポイント阻害剤の効能(例えば治療有効性)の開始または強化の査定;(d)免疫チェックポイント阻害剤の毒性の低下または低用量で得られる免疫チェックポイント阻害剤の治療効果の強化の査定。当該方法は、併用療法レジメンでは、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体および1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を含む組合せを、樹立腫瘍を有するマウスで投与する工程を含む。上記実施例2に記載したMC38腫瘍を用いるモデルに対して、樹立腫瘍体積は治療開始時(0日目)に個々のマウスで40-100mm3であった。優先的にB10細胞を枯渇させる抗体(MB22-10モノクローナル抗体、IgG2c、100μg/マウス)は0、6および12日目に投与した(合計300μg/マウス)。抗PD-1抗体(モノクローナル抗体、100μg/マウス)は0、3、6および9日目に投与した(合計400μg/マウス)。抗CTLA-4抗体(モノクローナル抗体、100μg/マウス)は0日目に投与し、その後3および6日目の治療(合計200μg/マウス)が続いた。種々のマウスグループが以下のいずれかを与えられた:優先的にB10細胞を枯渇させる1つの抗体若しくは1つの免疫チェックポイント阻害剤による単独療法、または2つの免疫チェックポイント阻害剤、または優先的にB10細胞を枯渇させる1つの抗体および1つの免疫チェックポイント阻害剤を含む組合せ、または優先的にB10細胞を枯渇させる1つの抗体および2つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を含む組合せ。
【0050】
図5に示すように、アイソタイプコントロール抗体処置を受けたマウスと比較して、単独療法を受けたマウスではMC38腫瘍の増殖に対して有意な効果があった。図6に示すように、アイソタイプコントロール抗体処置を受けたマウスと比較して、単独療法を受けたマウスでは生存率もまた有意に延長されたが、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体、抗PD-1抗体または抗CTLA-4抗体を投与されたマウスグループ間では有意な相違はなかった。
【0051】
アイソタイプコントロール抗体を与えられたマウスと比較して、以下の(i)-(iii)のいずれかで処置されたマウスは有意に延長された平均腫瘍進行および低下した平均腫瘍増殖を示した:(i)2つの免疫チェックポイント阻害剤、または(ii)優先的にB10細胞を枯渇させる1つの抗体および1つの免疫チェックポイント阻害剤を含む組合せ、または(iii)優先的にB10細胞を枯渇させる1つの抗体および2つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を含む組合せ(図7)。図8は、生存率もまた単独療法と比較したとき改善されたことを示す。最も驚くことは、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体および2つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を含む組合せを用いる処置で観察される共働作用である。
【0052】
図9で示される結果は、3つの抗体組合わせで処置されたマウスで腫瘍進行が最も遅いことを示し、この場合、10匹のうち6匹がそれらの腫瘍を拒絶し、チェックポイント阻害剤併用療法を実施されたマウスでは10匹に対して4匹であった。したがって、B10枯渇および免疫チェックポイント阻害剤を含む三重抗体組合わせはより遅い腫瘍進行をもたらし、より多くのマウスがそれらの腫瘍を拒絶し全体的生存を増加させた。
【0053】
次に併用療法の効果をMC38腫瘍をもつまたはもたないマウスで試験し、免疫系に対するそれらの共働作用、特にこれらの抗体処理が総B細胞数を変化させるか否かを、処理マウスの流入領域リンパ節および脾臓のCD19発現細胞およびB10細胞によって測定して確認した。マウスには下記抗体を表示のようにさらに上記と同じ投薬量で投与した:0、7および14日目にMB22-10若しくはコントロール(CTRL)mAb;0、3,6および9日目にPD-1 mAb;または0、3および6日目にCTLA-4 mAb。数匹のマウスにはまた表示のように0日目にMC38腫瘍細胞(2x106)を皮下に投与した。腫瘍流入領域リンパ節(図10A)および脾臓(図10B)の生存活性を有する単一リンパ球におけるCD19+ B細胞およびB10細胞の頻度を、21日目にフローサイトメトリー分析を用いて免疫蛍光染色によって査定した。腫瘍流入領域リンパ節および脾臓内の全てのCD19+ B細胞およびB10細胞の数が表示の処理後の個々のマウスについて示される。水平バーは平均細胞数を示し、星印は統計的有意を示す。抗体処理は、腫瘍が存在しないとき脾臓または流入領域リンパ節内の総CD19+ B細胞数を変化させなかった。腫瘍流入領域リンパ節の細胞密度は担癌マウスで有意に増加したが、これはB10細胞枯渇抗体で処理されたマウスでは逆転した。
【0054】
正常な非担癌マウスのB10細胞枯渇抗体単独処理または免疫チェックポイント阻害剤との併用処理は、リンパ節および脾臓の両方でB10細胞数を減少させた。担癌マウスは、腫瘍のないマウスと対比してリンパ節および脾臓の両方でB10細胞数の有意な増加を示したが、この増加はB10細胞を枯渇させるCD22標的抗体で処理されたマウスで完全に逆転した。したがって、単独療法としてのB10細胞枯渇mAbは腫瘍存在下でB10細胞の枯渇に有効であり、リンパ節腫脹軽減によって示されるように治療有用性をもたらすことが示された。
【0055】
[実施例4]
本実施例では、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体だけでの処理(単独療法)または免疫チェックポイント阻害剤との併用療法レジメンでの処理が標準動物モデルで示される。後者の治療法は、CD4+およびCD8+ T細胞活性化の両方(そのような細胞活性化は抗腫瘍免疫応答の増大で重要な役割を果たす)を増大(強化、開始および/または延長)させることができる。脾臓およびリンパ節のCD4+およびCD8+ T細胞の総数および活性化を1回の処理に続いて7日目に、細胞表面CD44及びCD62L発現のそれらのパターンによって定量した。腫瘍のないマウスについて図11Aで示されるように、リンパ節のCD4+細胞およびCD8+細胞の相対数は、コントロール抗体だけを投与されたマウスと比較して、単独療法または併用療法処理マウスで劇的には変化しなかった。図11Bに示されるように、脾臓のCD4+細胞およびCD8+細胞の相対数は、コントロール抗体だけを投与されたマウスと比較して、抗PD-1または抗CTLA-4単独療法で処理されたマウスで減少したが、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の併用療法で処理されたマウスほどではなかった。しかしながら、CD4+細胞およびCD8+細胞の両方が、MC38を投与され図11Aに示されるマウスの腫瘍流入領域リンパ節内で増加した。
【0056】
脾臓の活性化CD4+ T細胞および活性化CD8+ T細胞(低CD62L発現および高CD44発現を有する(それぞれCD62LloCD44hiCD4+、CD62LloCD44hiCD8+))の数は、腫瘍のないマウスでは各単独療法によって有意に増加した。しかしながら、活性化CD4+ T細胞および活性化CD8+ T細胞の数で観察されたもっとも有意な増加は、他の治療と比較して、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体および2つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を含む併用療法の後であった(図12B)。リンパ節におけるCD62LloCD4+ T細胞数およびCD62LloCD8+ T細胞数もまた、コントロール治療と比較して、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体および2つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を含む併用療法の後で増加した(図12A)。これらの結果は、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体による治療は、単独または免疫チェックポイント阻害剤との併用において、腫瘍免疫応答を媒介してT細胞(CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞)の活性化に寄与できることを示している。したがって、本発明の1つの特徴に関する技術的解決は、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体は単独でCD4 TおよびCD8 T両細胞の活性化を増大させることができるので、T細胞活性化の促進に向けられる任意の免疫チェックポイント阻害剤の効能を強化できるということである。
【0057】
制御性T細胞(CD25+FoxP3+CD4+細胞)の数もまた上記のように処置したマウスで査定された。図13に示されるように、抗体のいずれかによる単独療法は、リンパ節または脾臓の制御性T細胞の数に影響を与えなかった。対照的に、担癌マウスは、三重抗体併用治療後の脾臓で有意に高い制御性T細胞レベルを示した。処置されなかった担癌マウスのCD4+制御性T細胞の数はリンパ節で有意に増加したが、脾臓では変化は観察されなかった。流入領域リンパ節で観察された制御性T細胞の増加は、担癌マウスがB10細胞を枯渇させることができるCD22抗体で処置されたときに逆転した。これらの結果は、B10細胞を枯渇させるCD22抗体の投与は、処置動物の制御性T細胞応答の低下およびT細胞活性化の増加に寄与し、それによってより有効な抗腫瘍免疫応答を支援できることを提唱している。
【0058】
[実施例5]
実施例2および3に記載した標準的動物モデルおよび方法を用いて、本実施例はさらにまた、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体および免疫チェックポイント阻害を含む処置における抗腫瘍免疫応答の開始または強化を例証する。これらの実験で用いられる免疫チェックポイント阻害剤はデニリューキンジフチトクス(Ontak)であった。樹立MC38腫瘍(-100mm3)を有するマウスに、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体またはアイソタイプ一致コントロール抗体の処置を0、6および12日目に実施した(合計300μg/マウス)。デニリューキンジフチトクスを、1つのグループのマウスに単独療法として、または優先的にB10細胞を枯渇させる抗体を投与されたマウスに併用療法で0、3および6日目に(合計15μg/マウス)投与した。図14に示されるように、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体およびIL-2毒素融合タンパク質(デニリューキンジフチトクス)を含む併用療法を受けた個々のマウスで処置から16日後に腫瘍進行(平均腫瘍体積)の有意な低下が、IL-2毒素融合タンパク質(デニリューキンジフチトクス)を含む単独療法を受けた個々のマウスと比較して存在する。したがって、本発明の1つの特徴に関する技術的解決は、免疫チェックポイント阻害剤が関与する単独療法と比較して、優先的にB10細胞を枯渇させる抗体は免疫チェックポイント阻害剤と共働作用的に機能して、抗腫瘍応答を開始、強化または延長させることができる。
【0059】
同様な実験を実施して、マウスでB10細胞および制御性T細胞を枯渇させるCD22抗体およびIL-2毒素融合タンパク質(デニリューキンジフチトックス)の相対的効果を査定した。実験を樹立MC38腫瘍を有するマウスで上記に示したように実施し、結果は図15A(制御性T細胞)および図15B(B10細胞)で示される。結果は、CD22抗体、IL-2毒素融合タンパク質または併用による治療開始から9日後の脾臓および流入領域リンパ節について示される。B10細胞の数は、CD22抗体単独またはIL-2毒素融合タンパク質との併用で処置されたマウスの脾臓およびリンパ節で減少しただけであった。図15Aに示されるように、T制御性細胞の数は、IL-2毒素融合タンパク質単独またはCD22抗体との併用で処置されたマウスの脾臓で有意に減少したが、制御性T細胞は、IL-2融合タンパク質で処置されたマウスのリンパ節で有意に減少しただけであった。併用療法はリンパ節の制御性T細胞の数を減少させなかった。これらの結果は、B10細胞を枯渇させるCD22抗体の投与は、処置マウスの制御性T細胞応答の低下およびT細胞活性化の増加に寄与し、それによってより有効な抗腫瘍免疫応答を支援できることを提唱する。
【0060】
[実施例6]
これらの前臨床実験で用いられたCD22抗体はマウスCD22に特異的であったが、他の抗マウスCD22 mAbによって共有されない機能的特性を示す。具体的は、大半のCD22特異抗体はB10細胞をin vivoで枯渇できない。上記でより詳しく考察したように、この抗体がCD22において結合するエピトープはおそらく他の部分とはまったく別個であり、ホモタイプ接着を誘発しADCCまたはCDCを誘発しない細胞表面におけるそれらの空間的相互作用は、ここで提供される方法で使用されるCD22特異的抗体の重要な特色である。我々は、したがって優先的にB10細胞を枯渇させる性能においてマウスMB22-10抗体を模倣する能力を有するヒトCD22特異抗体を特定しようと試みた。完全なヒト、ヒト化、またはキメラモノクローナル抗体は本明細書で提供される方法でヒト治療薬として有用であろう。
【0061】
良く特徴付けられたCD22抗体の大量の機能的スクリーニングから我々が選別した新規な抗体は、HB22-103、HB22-106、HB22-107およびHB22-115と称される。図22は、これら抗体の重鎖および軽鎖可変領域と他のヒトCD22特異抗体との配列アラインメントを提供する。CDRは各鎖について強調され(灰色)て標識されている。図16-21は、優先的にB10細胞を枯渇させるこれらの抗体の能力について我々の最初の特徴付けを提供する。
【0062】
それらのin vivo査定では、脾臓のB10細胞を枯渇させるモノクローナル抗体の能力を、表示の各抗体の250μgをヒトCD22トランスジェニックマウスに投与することによって評価した(抗体は良く特徴付けられたCD22抗体の大量の機能的スクリーニングに由来する)。抗体投与から7日後に脾臓の単核細胞を収集し、モネンシン、LPS、PMAおよびイオノマイシンで5時間in vitroで刺激し、続いて、B細胞識別にCD19を用い、IL-10コンピテントB細胞の識別に細胞質IL-10発現を用いて選別した。二重陽性細胞はB10細胞を示す。HB22-103、HB22-106、HB22-107およびHB22-115によるin vivo処理後にトランスジェニックマウスで見出されたB10細胞数(図16A参照)を、図16Bに示すようにコントロール処理マウスの数と比較した。HB22-103およびHB22-107 CD22抗体は、野生型マウスでMB22-10が存在する場合の60-80%に脾臓のIL-10コンピテントB10細胞数を有意に枯渇させることができた(図16)。同様に、HB22-103、HB22-107およびHB22-115抗体は脾臓B細胞の大多数を枯渇させなかったが(図17)、CD1dhiCD21hiおよびCD1dhiCD5+細胞セットを脾臓から効果的に除去した(図18)。マウスでMB22-10抗体で生じたように、循環B細胞数は減少し(図19)、循環B細胞のCD19およびCD22の細胞表面密度は、各CD22抗体による処理後にダウンレギュレートされた(図20-21)。CD22レベルは、抗体処理マウスの残留B細胞でダウンレギュレートされたが、なおmIgG1と結合する能力をもち抗体がin vivoでB細胞と結合することを示した。したがって、HB22-103、HB22-107およびHB22-115はMB22-10抗体の機能的特徴の多くを提示し、臨床における進歩のための強力な候補である。
【0063】
図19-21は3つのヒトCD22特異抗体の更なる条件付けを提供する。マウスを表示の抗体で上記のように処理し、抗体の投与から7日後に脾臓を採集した。各抗体で処理されたマウスの脾臓のB220+ B細胞の総数は、HB22-103またはHB22-107がマウスに投与されたとき、コントロールと比較して図19Aおよび19Bに示されるように有意に変化した。図20Aおよび20Bに示すように、IgG1を発現する細胞のパーセンテージは、CD22抗体処理マウスの各々で有意に増加した。図21Aおよび21Bで示されるように、CD19のレベルおよびCD19+細胞のパーセンテージはともに各CD22抗体処理後に有意にダウンレギュレートされた。最後に、別個のCD22抗体(HB22-7)による細胞の更なる処理は、CD22陽性細胞のパーセンテージが、コントロール処理マウスと比較して、CD22抗体in vivo処理マウスの細胞で有意に低いことを示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22-1】
図22-2】
【配列表】
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