(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ボール軌道追跡システム
(51)【国際特許分類】
A63B 71/06 20060101AFI20230329BHJP
G01S 13/06 20060101ALI20230329BHJP
G01S 13/66 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
A63B71/06 U
G01S13/06
G01S13/66
(21)【出願番号】P 2020025450
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395023118
【氏名又は名称】株式会社テクノクラフト
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 忠世
(72)【発明者】
【氏名】栂坂 昌業
【審査官】竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0114045(KR,A)
【文献】特開2007-226761(JP,A)
【文献】特開2017-023640(JP,A)
【文献】特開2017-012325(JP,A)
【文献】特開平08-266701(JP,A)
【文献】特開2017-169809(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0059624(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/36、69/38、71/06
G01S 13/06-13/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に配設した端末装置を含む外部機器との間で各種データを送受信する通信部と、
移動する目標物に向けて放射した電波の反射波を受信し、前記目標物の軌跡を計測するレーダー装置と、
前記外部機器からの計測開始指示データを前記通信部が受信すると、前記レーダー装置の動作を開始させ、ユーザーが打球したボールを前記目標物として、前記レーダー装置で計測した前記ボールの軌跡データを取り込んで記録する軌跡データ記録部と、
前記ボールの軌跡データを線状の図形データに変換し、この図形データを前記ボールの打撃地点からの景観データと合成して、前記端末装置の表示部に表示できる合成画像を生成し、前記通信部を経由して前記端末装置に前記合成画像を送出する合成画像生成部と、
を備え
、
前記計測開始指示データは、前記端末装置が打球する位置に接近した場合に送信可能となるか、又は前記ユーザーがスイングを行ったことを前記外部機器が検知した場合に送信されることを特徴とするボール軌道追跡システム。
【請求項2】
前記軌跡データ記録部で記録された複数の前記ボールの軌跡データを前記図形データにそれぞれ変換し、複数の前記図形データを共通する一つの景観データと合成して、前記合成画像を生成するように、前記合成画像生成部を構成したことを特徴とする請求項1記載のボール軌道追跡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場などでユーザーが打球したボールの軌道を追跡し、その結果を表示部に表示させるボール軌道追跡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフボールの所在地や軌道を含めたコンテンツを得ながら、ゴルフのプレイを楽しむことができるシステムが、例えば特許文献1で提案されている。当該システムは、ゴルフ場を管理する管理装置と、ゴルフ場の各ホール(コース)に分散して配置した通信端末と、ゴルフボールに内蔵された無線ユニットとを含み、複数の通信端末と無線ユニットとの間の無線通信を利用したビーコン測位により、管理装置がボールの所在地を特定してボールの軌道を解析することで、ユーザーの保有する携帯端末で撮影された周囲の画像に、解析されたボール軌道とコースのプロファイルを重ねて、携帯端末に表示させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシステムでは、管理装置がボールの所在地を特定してボールの軌道を解析するために、予めプレイヤーが打球するボールに無線ユニットを内蔵し、その無線ユニットからの電波を複数の通信端末で受信する必要がある。しかし、プレイ以外で通信端末や無線ユニットを動作させないようにするために、プレイヤーがボールを打球する前後で、通信端末と無線ユニットの動作オン/オフ用スイッチをいちいち切替操作するのは現実的ではない。そのため、ボールに無線ユニットを内蔵することなく、プレイヤーがボールを打球するときにだけ、通信端末によるボールの軌道計測を開始させることが可能なシステムの構築が望まれていた。
【0005】
またゴルフでは、プレイに際して複数人の例えば4人一組で各ホールをラウンドする場合が多い。上述のシステムで、携帯端末で撮影されたコースの画像上に、管理装置で解析された1つのボール軌道だけを表示させても、同一組のプレイヤーが共通の表示部で画面を見る場合には、組全体で各プレイヤーがどのような軌道でボールを打球したのかを、一つの画面で直感的に理解することができない。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するもので、その目的は、ユーザーがボールを打球するときにだけ、ボールの軌道計測を開始させることが可能なボール軌道追跡システムを提供することにある。
【0007】
また本発明の目的は、各ユーザーがどのような軌道でボールを打球したのかを直感的に理解できるボール軌道追跡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願出願人は、上記目的を達成するために、新規なボール軌道追跡システムを発明した。
【0009】
すなわち本発明は、移動体に配設した端末装置を含む外部機器との間で各種データを送受信する通信部と、移動する目標物に向けて放射した電波の反射波を受信し、前記目標物の軌跡を計測するレーダー装置と、前記端末装置からの計測開始指示データを前記通信部が受信すると、前記レーダー装置の動作を開始させ、ユーザーが打球したボールを前記目標物として、前記レーダー装置で計測した前記ボールの軌跡データを取り込んで記録する軌跡データ記録部と、前記ボールの軌跡データを線状の図形データに変換し、この図形データを前記ボールの打撃地点からの景観データと合成して、前記端末装置の表示部に表示できる合成画像を生成し、前記通信部を経由して前記端末装置に前記合成画像を送出する合成画像生成部と、を備え、前記計測開始指示データは、前記端末装置が打球する位置に接近した場合に送信可能となるか、又は前記ユーザーがスイングを行ったことを前記外部機器が検知した場合に送信されることを特徴とするボール軌道追跡システムである。
【0010】
また、本発明のボール軌道追跡システムは、前記軌跡データ記録部で記録された複数の前記ボールの軌跡データを前記図形データにそれぞれ変換し、複数の前記図形データを共通する一つの景観データと合成して、前記合成画像を生成するように、前記合成画像生成部を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、端末装置を含む外部機器からの計測開始指示データを通信部で受信できる状態になると、レーダー装置の動作が自動的に開始して、ユーザーが打球したボールの軌跡データが軌跡データ記録部に記録される。そのため、プレイヤーがボールを打球するときにだけ、レーダー装置によるボールの軌道計測を開始させることが可能なボール軌道追跡システムを提供できる。また、移動体に配設された端末装置の表示部には、ボールの打撃地点からの景観データに、ユーザーが打球したボールの軌跡データから得られた図形データを合成した合成画像が表示される。そのため、ボールを探す時間が短縮され、プレイの遅延防止につながるボール軌道追跡システムを提供できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ユーザーがボールを打球する毎に、レーダー装置から軌跡データ記録部にボールの軌跡データが取り込まれて記録され、複数のユーザーによるボールの軌跡データが、それぞれ合成画像生成部で図形データに変換されて、共通する一つの景観データに合成される。この合成画像を合成画像生成部から通信部を経由して端末装置に送出することで、各ユーザーがどのような軌道でボールを打球したのかを、端末装置の表示部に表示される一つの合成画像から直感的に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態となるボール軌道追跡システムを含むゴルフカート運行管理システムの全体概要図である。
【
図2】本発明の一実施形態について、ゴルフカートに備えた端末の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】同、レーダー搭載機器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】同、ボール軌道追跡システムによる動作の第1ステップで、軌道計測の開始操作を行なうまでの手順を示す説明図である。
【
図5】同、ボール軌道追跡システムによる動作の第2ステップで、ボールの軌道を記録するまでの手順を示す説明図である。
【
図6】同、ボール軌道追跡システムによる動作の第3ステップで、端末の表示部に合成画像を表示させるまでの手順を示す説明図である。
【
図7】同、変形例として、腕時計型端末の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0015】
図1~
図7は、本発明の好ましい一実施形態におけるボール軌道追跡システムを示している。先ず、
図1に基づいて、本実施形態のボール軌道追跡システム100が組み込まれるゴルフカート運行管理システム200の全体概要を説明する。
【0016】
ゴルフカート運行管理システム200は周知のように、ゴルフ場内を自走移動する複数台のゴルフカート1の各位置を基地局2が無線でリアルタイムに把握し、全てのゴルフカート1の運行を基地局2で集中自動管理するもので、ナビゲーション端末装置(ナビ)となる端末3を搭載した移動可能なゴルフカート1と、ゴルフ場内の例えばクラブハウスに設置された固定の基地局2と、インターネット網4を介して各種サービスと接続する情報提供用のサーバ5と、を基本的な構成要素とする。
【0017】
移動体となるゴルフカート1は、車体7の前後に左右一対の前輪8と後輪9をそれぞれ備える電動式の四輪車両であって、車体7の前部と後部には、平板状のルーフ11で覆われた前部シート12と後部シート13がそれぞれ配置される。これらのシート12,13には、ユーザーとなるプレイヤーPを最大4人まで着座させることができる。また、シート12,13に着座した一乃至複数のプレイヤーPが、端末3の表示部14と向かい合うように、車体7の前方上部でルーフ11から吊り下がるように端末3が配設される。左右一対の後輪9は、駆動源である電動モータ(図示せず)によって回転駆動され、これらの後輪9が正逆転することによってゴルフカート1が前後進する。
【0018】
車体7前部における前部シート12の運転席側前方には、ステアリング軸16の上端に取り付けられたステアリングホイール17が配置され、ステアリング軸16の下端は、ゴルフカート1の図示しない操舵系に接続される。ここで、前部シート12に着座した運転者がステアリングホイール17を回転操作すると、その回転はステアリング軸16を経て操舵系に伝達され、当該操舵系によって左右一対の前輪8ひいてはゴルフカート1が操舵されるようになっている。
【0019】
一つのゴルフ場内で、各ゴルフカート1の端末3と基地局2とは無線の通信手段19で双方向の通信が可能なように接続される。また、各ゴルフカート1でその現在位置をリアルタイムで高精度に測定するために、それぞれの端末3にはGPS(Global Positioning System)衛星Sからの電波を捕捉する測位装置21(
図2を参照)が装備される。好ましくは、基地局2にも同様の測位装置を備えることで、測位装置21による測位誤差を補正して、各ゴルフカート1の現在位置を基地局2側でより高精度に取得することができる。また測位装置21は、GPS衛星Sのみならず、4機以上のGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの電波を捕捉することで、基地局2に測位装置を備えることなく、ゴルフカート1の現在位置をより高精度に取得できる構成としてもよい。
【0020】
ゴルフ場の各ホールにおいて、プレイヤーPがティーショットを打つティー位置の近傍には、プレイヤーPがゴルフクラブ31をスイングしてボール32を打ったときに、ボール32の打撃位置から着地位置までの軌道を記録するレーダー搭載機器33が配置される。レーダー搭載機器33は、端末3との間で各種データを無線で送受信するための通信部34を備えているが、詳細については後程説明する。本実施形態では、端末3の一部とレーダー搭載機器33とにより、プレイヤーPが打球したボール32の軌道を追跡し、その結果を端末3の表示部14に表示させるボール軌道追跡システム100が構成される。
【0021】
図2は、端末3の電気的構成を示したものである。同図において、端末3は、周知のCPU(中央演算装置)、計時カウンタ、入出力装置などのマイクロコンピュータ、記憶媒体などで構成される端末制御手段22と、GPSアンテナ23付きの測位装置21と、操作部24と、表示部14と、報知部25と、第1送受信部26と、第2送受信部27とにより主に構成される。端末制御手段22の入力側ポートには、測位装置21と、操作部24と、第1送受信部26と、第2送受信部27がそれぞれ接続され、端末制御手段22の出力側ポートには、表示部14と、報知部25と、第1送受信部26と、第2送受信部27がそれぞれ接続される。
【0022】
測位装置21は、端末3が搭載されたゴルフカート1の現在位置を時々刻々と測定し、その結果を測位データとして端末制御手段22に出力するもので、ゴルフカート1の現在位置をリアルタイムで検出する位置検出手段に相当する。したがって、同様の機能を発揮する測位装置21以外の位置検出手段を用いても構わない。
【0023】
操作部24は、少なくともゴルフカート1に搭乗するゴルフのプレイヤー、すなわちゴルファーが手動で操作可能なあらゆる操作体を含む。これは例えば、一乃至複数の押動式の操作体(ボタン、キー)であってもよいし、回転式の操作体(ロータリースイッチ)や、タッチ式の操作体(タッチパネル)や、その他の方式の操作体であってもよい。また、それらの組み合わせであっても何等構わない。
【0024】
表示部14は、端末制御手段22からの表示制御信号を受けて、静止画や動画の画面表示が可能であり、且つゴルファーがその画面を視認できるあらゆる表示器を含む。これは例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイなどの表示部14で構成することができ、表示部14の表面に操作部24として、前述の透明なタッチ式の操作体を配設してもよい。
【0025】
報知部25は、端末制御手段22からの音声制御信号を受けて、主に表示部14が動画を表示しているときに、その動画の進行に合わせて音声を報知するものである。
【0026】
なお、操作部24、表示部14および報知部25は、例えばゴルファーが普段携帯するスマートフォンやタブレット端末で構成してもよい。つまり操作部24、表示部14および報知部25は、有線または無線で端末制御手段22と電気的に接続されていればよい。
【0027】
第1送受信部26は、通信手段19を経由して、基地局2との間で各種の情報を含むデータをやり取りするためのものである。第1送受信部26を通してやり取りされるデータについては、ボール軌道追跡システム100の機能と直接的な関連性が少ないため、基地局2やサーバ5の構成を含めて、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0028】
第2送受信部27は、ゴルフ場に分散して設置された複数のレーダー搭載機器33の通信部34との間で、各種の情報を含むデータをやり取りするためのものである。端末3の第2送受信部27と、レーダー搭載機器33の通信部34は、何れも例えば無線通信規格の一つであるWi-Fi(登録商標:Wireless Fidelity)に準拠した通信モジュールで構成され、双方の通信モジュールの規格に基づく最大到達距離内で、データのやり取りが可能になる。なお、第2送受信部27と通信部34は、Wi-Fi対応の通信モジュールに限定されず、例えばBluetооth(登録商標)に準拠する通信モジュールでもよく、第2送受信部27と通信部34により使用される無線通信規格などは、レーダー搭載機器33の設置間隔などを考慮して、任意に選択されてよい。
【0029】
端末制御手段22は、図示しない記憶媒体に予め記録されたプログラムを読み取ることで、レーダー搭載機器33に対する計測動作を制御する機器動作制御部28と、基地局2やレーダー搭載機器33からの画像データを受けて、この画像データが適切に表示されるように表示部14を制御する表示制御部29として機能する構成となっている。
【0030】
機器動作制御部28は、ゴルフ場内でゴルフカート1がティー位置に近づいたか否かを判定し、ゴルフカート1がティー位置に近づくと、表示制御部29と連携して、レーダー搭載機器33によるボール32の軌道の計測開始操作を促すコマンドボタンとしての計測ボタン51を、表示部14のナビゲーション画面52上に表示させる(
図4を参照)。そして、この状態で計測ボタン51上をタップ操作し、操作部24から計測開始を指示するための操作信号を受け取ると、第2送受信部27を経由してレーダー搭載機器33に計測開始指示データを送信する構成となっている。
【0031】
ここで、ゴルフカート1がティー位置に近づいたか否かを判定するには、機器動作制御部28が測位装置21からの測位データを所定の時間間隔(例えば1秒)ごとに取り込んで、現在のゴルフカート1の位置を算出し、その位置と予め設定されたティー位置との間の距離がどの程度に近づいたのかで、判定してもよい。測位装置21からの測位データは、普段からゴルフカート運行管理システム200が、ゴルフ場内の各ゴルフカート1の現在位置を把握するのに所定の時間間隔で取り込んでいるので、余計な測定手段を動作させずに判定できる利点がある。代わりに、機器動作制御部28が第2送受信部27からレーダー搭載機器33に向けて問い合わせ信号を送信させて、最寄りのレーダー搭載機器33から問い合わせ信号を受信したことに対する確認信号を、第2送受信部27で受信したら、ゴルフカート1がティー位置に近づいたと判定してもよい。この場合、天候の影響などがあっても、ゴルフカート1の端末3と最寄りのティー位置に設置されたレーダー搭載機器33との間で、データのやり取りを確実に保証できる。
【0032】
表示制御部29は、レーダー搭載機器33の後述する合成画像生成部45で生成された合成画像のデータが、通信部34を経由して第2送受信部27で受信されると、この合成画像のデータを表示部14のナビゲーション画面52にボール軌道画面として表示させるものである(
図6を参照)。その他に表示制御部29は、基地局2やレーダー搭載機器33からの画像データを取り込んで、表示部14のナビゲーション画面52が適切に表示されるように、表示部14の動作を制御するものである。
【0033】
図3は、ゴルフ場に立設するレーダー搭載機器33の電気的構成を示したものである。同図において、レーダー搭載機器33は、CPU、計時カウンタ、入出力装置などのマイクロコンピュータで構成される機器制御手段41と、マイクロコンピュータの一部を構成する記録媒体としての記憶
部42の他に、通信部34と、レーダー装置35とにより主に構成される。機器制御手段41の入力側ポートには、通信部34と、レーダー装置35がそれぞれ接続され、機器制御手段41の出力側ポートには、通信部34が接続される。
【0034】
通信部34は、端末3との間で各種の情報を含むデータをやり取りするためのもので、機器制御手段41に組み込まれた後述する軌跡データ記録部44や合成画像生成部45と主に連携して動作する。
【0035】
レーダー装置35は、移動する目標物に向けてパルス電波を発信する送信アンテナ35Aと、目標物に当たったパルス電波の反射波を受信する受信アンテナ35Bと、受信した反射波に基づいて、目標物の三次元位置(座標)を算出し、この三次元位置を連続的にプロットすることにより、目標物の三次元軌道を示す軌跡データを、レーダー装置35の計測結果として外部に出力する演算処理部35Cとにより主に構成される。演算処理部35Cは、CPU、計時カウンタ、入出力装置などのマイクロコンピュータで構成されるが、レーダー装置35にではなく機器制御手段41に設けてもよい。この場合も、演算処理部35Cはレーダー装置35としての機能を有するものとする。
【0036】
本実施形態では、目標物の三次元座標を得るために、複数の受信アンテナ35Bを備える。レーダー装置35の演算処理部35Cは、複数の受信アンテナ35Bの間で受信した反射波の相違に基づき、既知の位置に設けられたレーダー装置35の座標を利用して、目標物の三次元位置を算出する。またレーダー装置35は、パルス電波として30GHZ~300GHZの周波数を有するミリ波を用いたミリ波レーダーで構成するのが好ましい。こうしたミリ波レーダーであれば、ゴルフ場のような室外で雨や霧の状態でも目標物を安定的に捕捉でき、天候に左右されない計測が可能となる。
【0037】
本実施形態のレーダー装置35は、移動する目標物として、プレイヤーPがゴルフクラブ31をスイングして打球したボール32について、その軌跡を計測する。また、
図3には明示していないが、レーダー搭載機器33の設置位置と、プレイヤーPがゴルフクラブ31でボール32をショットする位置との関係から、レーダー装置35によるボール32の軌道の追跡が困難な場合には、ボール32の軌跡を撮影する撮影装置をレーダー搭載機器33に組み込み、レーダー装置35と撮影装置でボール32の軌跡の計測を分担させてもよい。この撮影装置は、後述するボール32の打撃地点からの最新のコース写真を、景観データとして撮影できるので有益である。
【0038】
機器制御手段41は、記憶部42に予め記録されたプログラムを読み取ることで、軌跡データ記録部44と、合成画像生成部45として主に機能する構成となっている。これらの軌跡データ記録部44と合成画像生成部45は、前述の端末制御手段22に組み込まれた機器動作制御部28や表示制御部29と連携して、本実施形態のボール軌道追跡システム100を構成するものである。本実施形態では、軌跡データ記録部44と合成画像生成部45の全機能が機器制御手段41に設けられているものとして説明するが、例えば合成画像生成部45の機能の一部または全てを、端末制御手段22に分散または移動させることで、端末制御手段22の処理負担を軽減させることができる。したがって、ボール軌道追跡システム100として、軌跡データ記録部44と合成画像生成部45の全機能をレーダー搭載機器33に集中させる必要はなく、軌跡データ記録部44や合成画像生成部45においてやり取りするデータ量や情報量を適宜考慮して、軌跡データ記録部44と合成画像生成部45の一部または全ての機能を、端末3に分散または移動させても構わない。
【0039】
軌跡データ記録部44は、端末3の操作部24への操作入力を受けて、機器動作制御部28により端末3の第2送受信部27から送信された計測開始指示データを通信部34で受信すると、それまで停止していたレーダー装置35の動作を開始させ、プレイヤーPがティー位置で打球したボール32を目標物として、レーダー装置35で計測したボール32の三次元軌跡を示す軌跡データを取り込んで記憶部42に記録するものである。なお、ティー位置では同じゴルフカート1に搭乗する同一組の複数のプレイヤーPが順番にボール32を打球するので、軌跡データ記録部44は、プレイヤーPがボールを打球する毎に、レーダー装置35から取り込んだ軌跡データを、打球した順番が特定できるデータと関連付けて記憶部42に記憶する。
【0040】
全てのプレイヤーPがボール32を打球したら、軌跡データ記録部44はレーダー装置35の動作を停止させ、プレイ以外ではレーダー装置35を無駄に動作させないようにする。これは例えば、端末3の操作部24への操作入力を受けて、機器動作制御部28により端末3の第2送受信部27から送信された計測終了指示データを通信部34で受信したら、若しくは、前述した第2送受信部27からの問い合わせ信号を、通信部34で受信できなくなったら、軌跡データ記録部44がレーダー装置35の動作を停止させてもよい。何れも軌跡データ記録部44は、端末3の機器動作制御部28と連携して、レーダー搭載機器33に組み込まれたレーダー装置35の動作開始と動作停止を制御する機能を有する。
【0041】
合成画像生成部45は、軌跡データ記録部44が記憶部42に記録したボール32の軌跡データを読み出して、ボール32の軌跡に沿った線状の図形データに変換し、この図形データをボール32の打撃地点からの景観データとなる例えばコース写真の画像データに重ね合わせて、端末3の表示部14に表示できるような合成画像に生成する。合成画像生成部45は、この合成画像のデータを通信部34から端末3の第2送受信部27に送信するために、通信部34の動作を制御する構成となっている。
【0042】
また合成画像生成部45は、レーダー装置35の動作が開始してから停止するまでの間に、ゴルフカート1に搭乗する複数のプレイヤーPが、ティー位置でゴルフクラブ31をスイングして順にボール32を打球したときに、軌跡データ記録部44で記録された各プレイヤーPのボール32の軌跡データを図形データにそれぞれ変換し、複数の図形データを別々にではなく共通する一つの景観データと合成して、合成画像を生成する構成を備えている。
【0043】
次に、上記構成の特にボール軌道追跡システム100に関係する動作について、
図4~
図6を参照しながら詳しく説明する。
【0044】
図4は、ボール軌道追跡システム100による動作の第1ステップで、ゴルフカート1に搭載された端末3を利用して、ボール32の軌道計測の開始操作を行なうまでの手順を示したものである。ゴルフ場内を移動するゴルフカート1が、レーダー搭載機器33を付近に設置したティー位置に近づくと、端末3の機器動作制御部28は表示制御部29と連携して、表示部14に表示されるナビゲーション画面52上に、レーダー搭載機器33によるボール32の軌道の計測開始操作を促す計測ボタン51を表示させる。
【0045】
ここでのナビゲーション画面52とは、ナビゲーション端末装置(ナビ)である端末3の表示部14に表示される画面であり、通常はゴルフカート運行管理システム200の基地局2から提供され、測位装置21により所定の時間間隔で測定されたゴルフカート1の現在位置を、ゴルフ場のレイアウトを示す地図情報上に時々刻々と示す基本画面が表示されている。この基本画面上に計測ボタン51を重ねたナビゲーション画面52を、機器動作制御部28と表示制御部29との連携で表示部14に表示させることにより、ゴルフカート1に搭乗する各プレイヤーPは、ゴルフカート1が近付く次のティー位置で、自身の打球したボール32の軌跡が計測可能なことを自然に理解できる。
【0046】
図4に示すように、計測ボタン51が端末3の表示部14に表示された状態で、プレイヤーPがボール32の軌道計測を行いたい場合には、表示部14に表示される計測ボタン51上をタップ操作する。表示部14の表面にはタッチパネルによる操作部24が配設されており、計測ボタン51へのタップ操作により、ボール32の軌道計測の開始を指示するための操作信号が、操作部24から端末制御手段22に送出される。端末制御手段22の機器動作制御部28は、この操作信号を受けてレーダー搭載機器33に計測開始指示データを送信するように、第2送受信部27の動作を制御する。
【0047】
図5は、ボール軌道追跡システム100による動作の第2ステップで、プレイヤーPが計測ボタン51上をタップ操作してから、ボール32の軌道を記録するまでの手順を示したものである。プレイヤーPが計測ボタン51上をタップ操作することにより、端末3の第2送受信部27から送信された計測開始指示データを、最寄りのレーダー搭載機器33の通信部34が受信すると、レーダー搭載機器33と端末3との間で双方向の通信が確立されたペアリング状態となり、レーダー搭載機器33の軌跡データ記録部44は、それまで停止していたレーダー装置35の動作を開始させ、レーダー装置35によるボール32の軌道計測を準備する。このように本実施形態では、ゴルフカート1が通信部34に近づいて、プレイヤーPが端末3側で計測ボタン51上をタップ操作したときに、端末3からの計測開始指示データをレーダー搭載機器33の通信部34で受信すると、レーダー装置35の動作が自動的に開始するので、プレイヤーPがボール32を打球する前に専用の切替スイッチをいちいち操作することなく、ボール32を打球するときにだけ、レーダー装置35によるボール32の軌道計測を開始させることが可能になる。
【0048】
その後、ゴルフカート1に搭乗していたプレイヤーPが車体7から降り、ティー位置でゴルフクラブ31をスイングしてショットを打つと、動作中のレーダー装置35は、必要に応じて撮影装置からの計測結果を取り込みながら、プレイヤーPが打球したボール32の打撃位置から着地位置までの三次元位置を算出して連続的にプロットし、その計測結果としてボール32の三次元軌道を示す軌跡データを、機器制御手段41の軌跡データ記録部44に出力する。ここで、ゴルフカート1に搭乗する同一組のプレイヤーPが2人以上いる場合には、各プレイヤーPがティー位置でショットを打つたびに、レーダー装置35からボール32の三次元軌道を示す軌跡データが機器制御手段41に出力される。軌跡データ記録部44は、レーダー装置35から軌跡データを取り込むたびに、その軌跡データを打球した順番が特定できるデータと関連付けて記憶部42に記憶する。
【0049】
図6は、ボール軌道追跡システム100による動作の第3ステップで、ティー位置で全てのプレイヤーPによるショットが終了した後に、コース写真上での各プレイヤーPのボール32の軌跡を示す合成画像を、端末3の表示部14に表示させるまでの手順を示したものである。端末3の機器動作制御部28は表示制御部29と連携して、プレイヤーPが表示部14に表示される計測ボタン51上をタップ操作した後に、レーダー搭載機器33からのデータ受信操作を促すコマンドボタンとしての受信ボタン53を、それまで表示部14に表示されていた計測ボタン51に代わってナビゲーション画面52となる基本画面上に表示させる。受信ボタン53を表示させるタイミングは任意であるが、最初のプレイヤーPがボール32を打球したときの軌跡データが、レーダー搭載機器33においてレーダー装置35から軌跡データ記録部44に取り込まれたときに、軌跡データ記録部44から通信部34を経由して、端末3の第2送受信部27に送信される取り込み確認データを受けて、機器動作制御部28が表示制御部29と連携して、表示部14に受信ボタン53を表示させてもよい。このようにすれば、表示部14に出現する受信ボタン53により、少なくとも一人のプレイヤーPについて、レーダー装置35によりボール32の軌道を計測できたことを確認できる。
【0050】
図6(A)に示すように、端末3側でプレイヤーPが表示部14に表示された受信ボタン53上をタップ操作すると、レーダー搭載機器33からのデータ受信を指示するための操作信号が、操作部24から端末制御手段22に送出される。端末制御手段22の機器動作制御部28は、この操作信号を受けてレーダー搭載機器33にデータ受信指示データを送信するように、第2送受信部27の動作を制御する。
【0051】
端末3の第2送受信部27から送信されたデータ受信指示データを、最寄りのレーダー搭載機器33の通信部34が受信すると、そのレーダー搭載機器33側で合成画像生成部45は、記憶部42に記録されているボール32の軌跡データを読み出して、ボール32の軌跡に沿った矢印付き線状の図形データに変換し、当該図形データをボール32の打撃地点からのコース写真と合成して、最終的に端末3側の表示部14に表示できるような合成画像に生成する。この合成画像のデータは、合成画像生成部45により通信部34を経由して端末3の第2送受信部27に送信される。
【0052】
コース写真の画像データは、例えばレーダー搭載機器33の撮影装置により予め撮影されたものが、記憶部42に記憶保持されており、コース写真の撮影位置が判っていれば、コース写真の二次元画像上の位置と現実の座標位置との関連付けが可能になる。この関連付けを利用して、合成画像生成部45は、ボール32の軌跡データに対応した現実の座標位置から、実際のボール32の軌跡に沿ったコース写真上における線状の二次元位置を特定して、図形データを生成する。また軌跡データ記録部44が、プレイヤーPが打ったボール32の三次元位置に時間情報を関連付けることで、合成画像生成部45で生成される線状の図形データのどちら側の端が、ボール32の着地位置に相当するのかを特定できる。合成画像生成部45は、着地位置に相当する線の一端に矢印を設けて、図形データを生成する。
【0053】
さらに合成画像生成部45は、記憶部42から読み出したボール32の軌跡データが複数存在する場合に、個々の軌跡データをボール32の軌跡に沿った矢印付き線状の図形データにそれぞれ変換する。各々の軌跡データには、例えばレーダー搭載機器33から軌跡データを取り込んだ時刻のように、打球した順番を特定できるデータが予め関連付けされているので、合成画像生成部45はこのデータを利用して、矢印付きの線と共に打球した順番を示す図形データを生成する。
【0054】
図6(B)は、こうして合成画像生成部45で生成された図形データ61-1~61-4を、コース写真62上に重ね合わせて合成した合成画像のデータを、端末3の第2送受信部27が受信したときに、表示制御部29が表示部14のナビゲーション画面52に表示させるボール軌道画面の例を示している。表示部14のナビゲーション画面52には、合成画像のデータに含まれている図形データ61とコース写真62がそれぞれ表示される。ナビゲーション画面52の前景画像となる4つの図形データ61-1~61-4はそれぞれ、プレイヤーPの打ったボール32の軌道を示す矢印付き線と、打った順番を示す丸で囲まれた数字(丸数字)との組み合わせで構成される。ナビゲーション画面52の背景画像となるコース写真62は、ボール32の打撃地点から見たコースの景観を示しており、共通する一つのコース写真62上で、各プレイヤーPの打ったボール32の軌道を、図形データ61-1~61-4により一目で直感的に理解できるようになっている。
【0055】
本実施形態では、1台のゴルフカート1の最大乗車人数に合わせて、最高で4つの軌道を図形データ61-1~61-4で表示させることができるが、軌跡データ記録部44や合成画像生成部45による設定変更により、その数は任意とすることができる。また、各図形データ61-1~61-4には、プレイヤーPがボール32を打った順番が示されているが、これは
図6(B)に示す丸数字に限らず、文字などの記号であってもよい。それぞれの図形データ61-1~61-4において、線の一端に設けた矢印の先端が、コース写真62上でのボール32の着地地点となるので、各プレイヤーPは自身がボール32を打った順番を丸数字で確認しながら、実際にボール32がどこに着地したのかを、表示部14のナビゲーション画面52となるボール軌道画面で直ちに理解することができる。これにより、ボール32を探す手間が短縮され、プレイの遅延防止に繋がる。
【0056】
レーダー搭載機器33は、レーダー装置35によるボール32の軌跡計測が一通り終了すると、レーダー装置35の動作を停止させる。好ましくは、端末3側で受信ボタン53上がタップ操作されたのに伴い、合成画像生成部45が記憶部42に記憶されている全ての軌跡データを読み出して、そこから前述のように合成画像のデータを通信部34から送信したときに、レーダー装置35の動作を自動的に停止させることで、プレイヤーPがボール32を打球した後に専用の切替スイッチをいちいち操作することなく、レーダー装置35の動作を無意識に停止させることが可能となる。
【0057】
以上のように、本実施形態のボール軌道追跡システム100は、移動体となるゴルフカート1に配設した端末装置に相当する端末3との間で、各種の情報を含むデータを無線で送受信する通信部34と、移動する目標物に向けて放射した電波の反射波を受信し、目標物までの距離と目標物の方向から、目標物の軌跡を計測するレーダー装置35と、端末3からの計測開始指示データを通信部34が受信すると、レーダー装置35の動作を開始させ、ユーザーとなるプレイヤーPが打球したボール32を目標物として、レーダー装置35で計測したボール32の軌跡を示す軌跡データを取り込んで、記憶部42に記録する軌跡データ記録部44と、ボール32の軌跡データを線状の図形データに変換し、この図形データをボール32の打撃地点からの景観データとなる例えばコース写真と合成して、端末3の表示部14に表示できるような合成画像を生成し、通信部34を経由して端末3に合成画像を送出する合成画像生成部45と、を備えている。
【0058】
このような構成とすることにより、ゴルフカート1が通信部34に近づいて、端末3からの計測開始指示データを通信部34で受信できる状態になると、レーダー装置35の動作が自動的に開始して、プレイヤーPが打球したボールの軌跡データが軌跡データ記録部に記録される。そのため、プレイヤーPがボール32を打球するときにだけ、レーダー装置35によるボール32の軌道計測を開始させることが可能なボール軌道追跡システム100を提供できる。また、ゴルフカート1に配設された端末3の表示部14には、ボール32の打撃地点からのコース写真に、プレイヤーPが打球したボール32の軌跡データから得られた図形データを合成した合成画像が表示される。そのため、ボール32を探す時間が短縮され、プレイの遅延防止につながるボール軌道追跡システム100を提供できる。
【0059】
また、本実施形態のボール軌道追跡システム100は、軌跡データ記録部44で記録された複数のボール32の軌跡データを図形データにそれぞれ変換し、複数の図形データを共通する一つの景観データと合成して、合成画像を生成するように、合成画像生成部45を構成している。
【0060】
この場合、プレイヤーPがボール32を打球する毎に、レーダー装置35から軌跡データ記録部44にボール32の軌跡データが取り込まれて記録され、複数のプレイヤーPによるボール32の軌跡データが、それぞれ合成画像生成部45で図形データに変換されて、共通する一つの景観データに合成される。この合成画像を合成画像生成部45から通信部34を経由して端末3に送出することで、各プレイヤーPがどのような軌道でボールを打球したのかを、端末3の表示部14に表示される一つの合成画像から直感的に理解できる。
【0061】
次に、上記実施形態の変形例として、スマートウォッチなどの腕時計端末を利用したボール軌道追跡システム100について、添付図面を参照しながら説明する。なお、
図2に示す端末3や
図3に示すレーダー搭載機器33の各構成と、それに伴う上述の動作や作用効果は、本変形例でもそのまま適用される。
【0062】
図7は、各プレイヤーPが装着可能な腕時計型端末70の、特にボール軌道追跡システム100に関連する構成を示したものである。同図において、腕時計型端末70は、制御手段71と、慣性計測部72と、GPS(Global Positioning System:地球測位システム)受信部73と、送受信部74と、記憶部75と、表示部76と、操作部77と、報知部78と、を備えている。
【0063】
制御手段71は、CPU(中央演算装置)を含んで構成され、記憶部75に記憶されたプログラム75Aに基づいて腕時計型端末70の全体を制御する。このCPUがプログラム75Aにしたがって演算処理を実行することにより、後述するスイング判定部81や報知制御部82などの腕時計型端末70の各機能が実現される。
【0064】
慣性計測部72は、何れも慣性センサーとしての加速度センサー72A及びジャイロセンサー72Bが組み込まれている。加速度センサー72Aは、プレイヤーPの手首(左手首又は右手首)における直交三軸方向の加速度を計測することができ、ジャイロセンサー72Bは、プレイヤーPの手首における直交三軸の各軸回りの角速度を計測することができる。慣性計測部72は、腕時計型端末70を装着したプレイヤーPの一連のスイング動作時における手首の加速度や角速度を計測する。慣性計測部72により計測された加速度情報や角速度情報は、プレイヤーPのスイング動作時における手首の加速度波形や角速度波形として、制御手段71に送出される。
【0065】
GPS受信部73は、腕時計型端末70の現在位置を取得する位置計測部を構成し、複数の人工衛星79からの電波を無線で受信することで、腕時計型端末70ひいてはその腕時計型端末70を装着するプレイヤーPの三次元位置(経度、緯度及び高度)を計測し、その位置情報を制御手段71に送出するものである。なお、腕時計型端末70の現在位置を検出できるものであれば、GPS受信部73以外の位置検出装置を利用してもよい。また、人工衛星79には原子時計が搭載されている。この人工衛星79からは特定の周波数にて極めて正確な時刻信号波が発信されており、これをGPS受信部73により受信することで、腕時計型端末70の時間軸が規定される。GPS受信部73及び人工衛星79が位置計測部として機能する。
【0066】
送受信部74は、無線の通信手段を介して他の機器、例えば、端末3やレーダー搭載機器33との双方向通信を可能にするものである。そのため、腕時計型端末70は必要に応じて、端末3やレーダー搭載機器33等と各種情報を無線で送受信することができる。
【0067】
記憶部75は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの各種記憶装置を用いて構成され、慣性計測部72により計測された加速度情報及び角速度情報、GPS受信部73が受信した腕時計型端末70の位置情報等の各種情報を書き込み及び読み出し可能となっている。また、記憶部75には予めゴルフ場のコースの地図情報75Bが記憶されている。地図情報75Bは、位置座標情報を含む2次元地図又は3次元地図であり、変更・追加・削除等の更新が可能である。
【0068】
表示部76は、制御手段71からの表示制御信号を受け、腕時計型端末70の現在位置等の様々な表示を行なうものである。図示しないが、表示部76は腕時計型端末70の本体正面に露出して設けられる液晶モジュールや液晶パネルにより構成され、これらの液晶モジュールや液晶パネルは周知のように、多数のサブ画素を格子状に配列したドットマトリクスによる表示を行なうものである。表示部76は、記憶部75に記憶される腕時計型端末70の現在位置や地図情報75B等を、必要に応じて適切なタイミングで表示して提示する情報提示部として機能する。
【0069】
操作部77は、プレイヤーPによる操作を受けて、電気的な操作信号を制御手段71に送出するもので、例えば腕時計型端末70の本体側部に設けられた一乃至複数のボタンや、液晶モジュールや液晶パネルで構成された表示部76の表面部に設けられたタッチセン
サとして構成される。
【0070】
報知部78は、記憶部75に記憶された情報等を音声によりプレイヤーPに報知するものであり、例えばスピーカーである。報知部78は、プレイヤーPのショット後におけるボール32の地点を音声により提示する際に情報提示部として機能する。
【0071】
制御手段71は、慣性計測部72から取り込んだ加速度波形や角速度波形により、腕時計型端末70を装着するプレイヤーPがスイングを行なったか否かを検知するスイング判定部81を備えている。スイング判定部81は、プレイヤーPがスイングを行なったと判定した場合に、前述の計測開始指示データをレーダー搭載機器33に送信するもので、ここでの計測開始指示データは、送受信部74から直接的にレーダー搭載機器33へ送信してもよいし、或いは端末3を中継してレーダー搭載機器33へ送信してもよい。スイング判定部81を制御手段71に組み込んだ腕時計型端末70や、機器動作制御部28を端末制御手段22に組み込んだ端末3は、何れもレーダー搭載機器33の通信部34が計測開始指示データを受信できるように構成された外部機器に相当する。
【0072】
さらに制御手段71は、レーダー搭載機器33側で機器制御手段41がプレイヤーPのショット後におけるボール32の地点を特定するボール着地地点情報を生成し、このボール着地地点情報を通信部34から直接または端末3を中継して送受信部74で受信したときに、ボール32の位置を報知部78から音声でプレイヤーPに知らせるような報知制御信号を、当該報知部78に送出する報知制御部82を備えている。プレイヤーPに自身の打ったボール32の位置を知らせるのは、こうした報知制御部82による報知部78からの音声報知、又は前述した端末3の表示部14に表示されるボール軌道画面により可能となる。
【0073】
そして本変形例では、各プレイヤーPが上述の腕時計型端末70を予め自身の手首に装着し、ボール32の置かれたティー位置でゴルフクラブ31をスイングしてショットを打つと、腕時計型端末70の慣性計測部72から制御手段71に取り込まれる加速度波形や角速度波形に急峻な変化が生じる。これを受けてスイング判定部81は、プレイヤーPがスイングを行なったと判定すると、送受信部74から直接若しくは端末3を中継して、レーダー搭載機器33に計測開始指示データを送信する。腕時計型端末70の送受信部74から送信された計測開始指示データを、最寄りのレーダー搭載機器33の通信部34が受信すると、レーダー搭載機器33の軌跡データ記録部44は、それまで停止していたレーダー装置35の動作を開始させ、レーダー装置35によるボール32の軌道計測を行ない始める。したがって、上述のような端末3の表示部14に表示される計測ボタン51上で、プレイヤーPがタップ操作をわざわざ行わなくても、外部機器となる腕時計型端末70の機能を利用して、レーダー搭載機器33に計測開始指示データを自動的に送信できる。
【0074】
また、前述の受信ボタン53が端末3の表示部14に表示された状態で、その受信ボタン53上をタップ操作すると、合成画像生成部45により通信部34から端末3の第2送受信部27に合成画像のデータが送信される。このとき、レーダー搭載機器33と腕時計型端末70との間で、直接若しくは端末3を中継して無線での通信が確立されていれば、機器制御手段41が生成したプレイヤーPのショット後におけるボール32の地点を特定するボール着地地点情報を、腕時計型端末70の送受信部74で受信することができる。送受信部74から報知制御部82にボール着地地点情報が取り込まれると、報知制御部82から報知部78への報知制御信号により、プレイヤーPに自身の打ったボール32の位置を音声で知らせることができる。
【0075】
なお、こうした音声報知の機能は、上述した端末3への操作ではなく、腕時計型端末70に備えた操作部77への手元操作により、端末3の表示部14に表示されるボール軌道画面とは別なタイミングで、独立して簡単に行えるようにしてもよい。
【0076】
以上のように本変形例では、少なくともゴルフカート1に配設した端末3や、さらにはプレイヤーPが装着する腕時計型端末70等の外部機器との間で、各種の情報を含むデータを無線で送受信する通信部34と、移動する目標物に向けて放射した電波の反射波を受信し、目標物までの距離と目標物の方向から、目標物の軌跡を計測するレーダー装置35と、外部機器となる腕時計型端末70からの計測開始指示データを通信部34が受信すると、レーダー装置35の動作を開始させ、プレイヤーPが打球したボール32を目標物として、レーダー装置35で計測したボール32の軌跡を示す軌跡データを取り込んで、記憶部42に記録する軌跡データ記録部44と、ボール32の軌跡データを線状の図形データに変換し、この図形データをボール32の打撃地点からの景観データとなる例えばコース写真と合成して、端末3の表示部14に表示できるような合成画像を生成し、通信部34を経由して端末3に合成画像を送出する合成画像生成部45と、を備えたボール軌道追跡システム100を提案している。
【0077】
そのためこの場合も、腕時計型端末70からの計測開始指示データを通信部34で受信できる状態になると、レーダー装置35の動作が自動的に開始して、プレイヤーPが打球したボールの軌跡データが軌跡データ記録部に記録される。そのため、プレイヤーPがボール32を打球するときにだけ、レーダー装置35によるボール32の軌道計測を開始させることが可能なボール軌道追跡システム100を提供できる。また、ゴルフカート1に配設された端末3の表示部14には、ボール32の打撃地点からのコース写真に、プレイヤーPが打球したボール32の軌跡データから得られた図形データを合成した合成画像が表示される。そのため、ボール32を探す時間が短縮され、プレイの遅延防止につながるボール軌道追跡システム100を提供できる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 ゴルフカート(移動体)
3 端末(端末装置、外部機器)
14 表示部
32 ボール
34 通信部
35 レーダー装置
44 軌跡データ記録部
45 合成画像生成部
70 腕時計型端末(外部機器)
100 ボール軌道追跡システム
P プレイヤー(ユーザー)