(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】農作業用走行車、制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 7/04 20060101AFI20230329BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20230329BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230329BHJP
【FI】
G01C7/04
A01B69/00 303P
G05D1/02 N
(21)【出願番号】P 2020080097
(22)【出願日】2020-04-30
(62)【分割の表示】P 2020056603の分割
【原出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518377562
【氏名又は名称】株式会社レグミン
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】成勢 卓裕
(72)【発明者】
【氏名】丸山 寛智
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 泰助
(72)【発明者】
【氏名】清川 脩平
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208871(JP,A)
【文献】特開2006-101816(JP,A)
【文献】特開2016-12348(JP,A)
【文献】特開2019-135963(JP,A)
【文献】特開2019-62816(JP,A)
【文献】特開2007-185111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 7/04
A01B 69/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業用走行車を制御する制御装置であって、
畝を含む
領域のうち所定の範囲
の点群データにより構成される方向特定用データを作成する方向特定用データ作成部と、
前記方向特定用データに基づいて前記畝の方向を特定する方向特定部と、
前記方向特定部が特定した前記畝の方向に
基づいて前記農作業用走行車を制御する走行制御部と、
を有する制御装置。
【請求項2】
点群データに基づいて前記領域の三次元形状を示す三次元データを作成する三次元データ作成部をさらに有し、
前記方向特定用データ作成部は、前記三次元データに含まれる点群データのうち、前記畝の方向を特定するために有効な前記所定の範囲に対応する一部の点群データを抽出することにより前記方向特定用データを作成する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記
三次元データの作成に用いられる点群データは、レーザー光の照射源がパルス状のレーザー光を照射することにより得られたデータであり、
前記三次元データ作成部は、前記レーザー光の照射源の位置と前記レーザー光の照射位置との関係に基づいて、三次元空間における
点群データの位置を変換することにより、水平面を基準とする前記領域の三次元形状に対応する前記三次元データを作成する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記方向特定用データ作成部は、前記三次元データに含まれる
点群データのうち前記畝の上面よりも低い範囲内の前記所定の範囲に対応する前記一部の点群データを選択することにより、前記方向特定用データを作成する、
請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記方向特定用データ作成部は、前記農作業用走行車の水平面と平行な上面及び下面に囲まれた
前記所定の範囲の点群データを選択することにより、前記方向特定用データを作成する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記方向特定用データ作成部は、前記畝よりも低い複数の前記所定の範囲
の点群データにより構成され、それぞれが同じ高さ範囲に対応する複数の前記方向特定用データを作成し、
前記方向特定部は、前記複数の方向特定用データに基づいて前記畝の方向を特定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記方向特定部は、前記方向特定用データに含まれる所定の高さに対応する
点群データにより構成される領域の輪郭線の方向に基づいて前記畝の方向を特定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記走行制御部は、前記方向特定部が前記畝の方向を特定できなくなった場合に前記農作業用走行車を停止させる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記点群データを前記農作業用走行車の後方を走行する他の農作業用走行車に送信する通信部をさらに有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
畝が形成された畑を走行する農作業用走行車であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記農作業用走行車の走行方向の前方側にパルス状のレーザー光を照射することにより
生成した点群データを前記制御装置に送信するレーザー光照射装置と、
を有
し、
前記制御装置は、前記レーザー光照射装置から受信した点群データに含まれる前記所定の範囲の点群データにより構成される前記方向特定用データを作成する農作業用走行車。
【請求項11】
コンピュータを、
畝を含む
領域のうち所定の範囲
の点群データにより構成される方向特定用データを作成する方向特定用データ作成部、
前記方向特定用データに基づいて前記畝の方向を特定する方向特定部、及び
前記方向特定部が特定した前記畝の方向に
基づいて農作業用走行車を制御する走行制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業用走行車、農作業用走行車を制御するための制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畑の畝の幅方向における位置を検出し、検出した位置に基づいて幅方向の位置を制御しながら走行する農作業用走行車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の農作業用走行車は、農作業用走行車に設けられた超音波センサと畝との距離を測定し、測定した距離に基づいて農作業用走行車の左右方向の位置を制御する。したがって、従来の農作業用走行車には、畝の一部が崩れていたり畝に凹凸があったりする場合に、農作業用走行車が頻繁に左右方向に移動してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、農作業用走行車が畝の方向に沿って走行する際の安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る制御装置は、畝が形成された畑を走行する農作業用走行車を制御する制御装置であって、前記農作業用走行車の走行方向の前方側における前記畝を含む領域の位置を示す取得点群データのうち、所定の範囲に対応する点群データにより構成される方向特定用データを作成する方向特定用データ作成部と、前記方向特定用データに基づいて前記畝の方向を特定する方向特定部と、前記方向特定部が特定した前記畝の方向に前記農作業用走行車が走行するように前記農作業用走行車を制御する走行制御部と、を有する。
【0007】
前記制御装置は、前記点群データに基づいて前記領域の三次元形状を示す三次元データを作成する三次元データ作成部をさらに有し、前記方向特定用データ作成部は、前記三次元データに含まれる点群データのうち、前記畝の方向を特定するために有効な前記所定の範囲に対応する一部の点群データを抽出することにより前記方向特定用データを作成してもよい。
【0008】
前記取得点群データは、レーザー光の照射源がパルス状のレーザー光を照射することにより得られたデータであり、前記三次元データ作成部は、前記レーザー光の照射源の位置と前記レーザー光の照射位置との関係に基づいて、三次元空間における前記取得点群データの位置を変換することにより、水平面を基準とする前記領域の三次元形状に対応する前記三次元データを作成してもよい。
【0009】
前記方向特定用データ作成部は、前記三次元データに含まれる前記点群データのうち前記畝の上面よりも低い範囲内の前記所定の範囲に対応する前記一部の点群データを選択することにより、前記方向特定用データを作成してもよい。
【0010】
前記制御装置は、前記取得点群データに基づいて複数の前記畝の間の溝の凹凸を特定する凹凸特定部と、前記凹凸特定部が特定した前記凹凸に基づいて前記農作業用走行車における前記畝の上方で作動する作動機構の高さを制御する機構制御部をさらに有してもよい。
【0011】
前記方向特定部が特定した前記畝の方向に基づいて前記農作業用走行車における前記畝の上方で作動する作動機構の左右方向の位置を制御する機構制御部をさらに有してもよい。
【0012】
前記方向特定用データ作成部は、前記農作業用走行車の水平面と平行な上面及び下面に囲まれた範囲内の前記点群データを選択することにより、前記方向特定用データを作成してもよい。
【0013】
前記方向特定用データ作成部は、前記畝よりも低い複数の前記所定の範囲に対応する前記点群データにより構成され、それぞれが同じ高さ範囲に対応する複数の前記方向特定用データを作成し、前記方向特定部は、前記複数の方向特定用データに基づいて前記畝の方向を特定してもよい。
【0014】
前記方向特定部は、前記方向特定用データに含まれる所定の高さに対応する前記点群データにより構成される領域の輪郭線の方向に基づいて前記畝の方向を特定してもよい。
【0015】
前記走行制御部は、前記畝の方向に基づいて、前記農作業用走行車の車輪の向き及び速度を制御してもよい。
【0016】
前記方向特定部は、前記方向特定用データに基づいて、前記車輪と前記畝との距離をさらに特定し、前記走行制御部は、前記方向特定部が特定した前記距離にさらに基づいて前記農作業用走行車の車輪の向き及び速度を制御してもよい。
【0017】
前記走行制御部は、前記方向特定部が前記畝の方向を特定できなくなった場合に前記農作業用走行車を停止させてもよい。
【0018】
前記制御装置は、前記取得点群データを前記農作業用走行車の後方を走行する他の農作業用走行車に送信する通信部をさらに有してもよい。
【0019】
本発明の第2の態様に係る農作業用走行車は、畝が形成された畑を走行する農作業用走行車であって、上記の制御装置と、前記農作業用走行車の走行方向の前方側にパルス状のレーザー光を照射することにより前記取得点群データを前記制御装置に送信するレーザー光照射装置と、上記の制御装置と、を有する。
【0020】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、コンピュータを、畝が形成された畑を走行する農作業用走行車の走行方向の前方側における前記畝を含む領域の位置を示す取得点群データのうち、所定の範囲に対応する点群データにより構成される方向特定用データを作成する方向特定用データ作成部、前記方向特定用データに基づいて前記畝の方向を特定する方向特定部、及び前記方向特定部が特定した前記畝の方向に前記農作業用走行車が走行するように前記農作業用走行車を制御する走行制御部、として機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、農作業用走行車が畝の方向に沿って走行する際の安定性が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】三次元データ作成部が三次元データを作成する動作について説明するための模式図である。
【
図5】制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[農作業用走行車Sの概要]
図1は、農作業用走行車Sの外観の模式図である。農作業用走行車Sは、畝が形成された畑を走行する車両であり、畑で農作物を生育・収穫するための農作業(例えば、播種、農薬散布、潅水、根切り及び監視の作業)に使用される。農作業用走行車Sは、畝に沿って自動走行する。農作業用走行車Sは、本体1と、作動機構2と、車輪3(車輪3L、車輪3R)と、レーザー光照射装置4、制御装置5と、を有する。なお、
図1には2個の車輪3を示しているが、農作業用走行車Sは前輪及び後輪を合わせて4つの車輪3を有することが想定されている。車輪3の数は任意である。
【0024】
本体1の形状は任意であるが、
図1に示す本体1は、左右対称の形状を有している。本体1は、左右方向の幅が畝の幅よりも大きく、畝の上方において移動する作動機構2を有する。作動機構2は、例えば畝に植えられた農作物を剪定したり、農作物を収穫したりするために動作するアクチュエータ等の機構部品により構成されている。
【0025】
車輪3は、本体1の両側に設けられており、畝と畝との間に形成された溝の中を移動する。車輪3Lと車輪3Rとの間隔は、畝の幅(すなわち溝と溝との間隔)に応じて調整可能に構成されていてもよい。
【0026】
レーザー光照射装置4は、農作業用走行車Sの走行方向の前方側にパルス状のレーザー光を照射する装置であり、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)装置である。レーザー光照射装置4は、本体1の前面に固定されており、農作業用走行車Sの前方の畝及び溝に向けて、複数の方向にレーザー光を照射し、畝及び溝で反射したレーザー光を検出する。レーザー光照射装置4は、例えば、レーザー光を照射する方向を所定の時間ごとに切り替える。
【0027】
レーザー光照射装置4は、レーザー光が畝及び溝で反射した位置を特定し、反射した位置に対応する点群データを生成する。点群データは、レーザー光照射装置4がレーザー光を照射する範囲の中心方向とレーザー光が反射した位置との関係(例えば中心方向に対する角度)、及びレーザー光照射装置4とレーザー光が反射した位置との距離を示す情報を含む。レーザー光の1つのパルスの照射時間は、位置及び距離の所要分解能に影響するが任意の長さであってよく、例えば1nsである。
【0028】
制御装置5は、農作業用走行車Sの走行方向を制御する装置であり、例えば、プログラムを実行することにより動作するコンピュータである。制御装置5は、レーザー光照射装置4から取得した点群データを解析することにより、畝の方向を特定し、特定した方向に農作業用走行車Sが走行するように車輪3の向きを制御する。
以下、制御装置5の構成及び動作を詳細に説明する。
【0029】
[制御装置5の構成]
図2は、制御装置5の構成を示す図である。制御装置5は、記憶部51及び制御部52を有する。
【0030】
記憶部51は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を有する。記憶部51は、レーザー光照射装置4が生成した点群データを記憶する。また、記憶部51は、制御部52が実行するプログラムを記憶している。
【0031】
制御部52は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部52は、記憶部51に記憶されているプログラムを実行することにより、データ取得部521、三次元データ作成部522、方向特定用データ作成部523、方向特定部524及び走行制御部525として機能する。
【0032】
データ取得部521は、レーザー光照射装置4が生成した点群データをレーザー光照射装置4から取得する。データ取得部521は、取得した点群データを三次元データ作成部522に通知する。データ取得部521は、時刻情報に関連付けられた点群データを所定の時間間隔で取得し、取得した点群データ(以下、「取得点群データ」という場合がある)を時刻情報に関連付けて記憶部51に記憶させてもよい。
【0033】
三次元データ作成部522は、データ取得部521を介して取得した点群データに基づいて、レーザー光照射装置4によってレーザー光が照射された領域の三次元形状を示す三次元データを作成する。三次元データ作成部522は、所定の時間にわたってデータ取得部521が取得した点群データに基づいて三次元データを作成する。所定の時間は、方向特定部524が畝の方向を特定するために十分な数の点群データをデータ取得部521が取得するために必要な時間である。
【0034】
三次元データ作成部522は、レーザー光照射装置4におけるレーザー光の照射源の位置とレーザー光の照射位置との関係に基づいて、三次元空間における取得点群データの位置を変換することにより、水平面を基準とする領域の三次元形状に対応する三次元データを作成する。具体的には、三次元データ作成部522は、農作業用走行車Sの高さ方向において同じ高さの照射位置の高さ方向の座標が同じ値で表された三次元データを作成する。
【0035】
図3は、点群データの模式図である。
図3(a)における点線で囲まれた領域は、データ取得部521が取得した取得点群データが含まれている領域を示しており、レーザー光照射装置4の照射源からレーザー光が当たった位置までの距離又はレーザー光の反射率に応じた濃度で表示されている。
図3においては、レーザー光照射装置4の照射源からレーザー光が当たった位置までの距離が大きいほど薄い色で表示されている。
【0036】
図3(b)は、三次元データ作成部522が作成した三次元データを水平方向(例えば走行面の方向)から視認した状態を示す模式図である。
図3(c)は、
図3(b)に示す三次元データにおいて2本の一点鎖線で囲まれた高さ範囲(Δh)内の点群データを上方から視認した状態を示す模式図である。
【0037】
図4は、三次元データ作成部522が三次元データを作成する動作について説明するための模式図である。
図4(a)は、点群データの一部を畑の上方から視認した状態を示しており、
図4(b)は、点群データの一部を水平方向に視認した状態を示している。図中の破線はレーザー光を示しており、〇は点群データの一部の点データを示している。
図4(a)及び
図4(b)における符号L0は、レーザー光の照射源の位置を示しており、一点鎖線は、レーザー光の照射範囲の中心方向Cを示している。
【0038】
点データa1、b1、c1は、レーザー光の照射範囲において最もレーザー光照射装置4から離れた位置に対応しており、点データa2、b2、c2は、レーザー光の照射範囲において最もレーザー光照射装置4から近い位置に対応している。点データa1、c1、a2、c2は、畝にレーザー光が照射された位置に対応しており、点データb1、b2は溝にレーザー光が照射された位置に対応している。取得点群データにおいて、各点データの位置は、照射源L0からの距離とレーザー光の中心照射方向Cからの角度とに基づいて表される。
【0039】
レーザー光照射装置4がレーザー光を斜め方向に照射しているため、点データa1とa2は実際には同じ高さであるにもかかわらず、レーザー光の中心照射方向Cを基準とすると、点データa1は中心照射方向Cの上方にあり、点データa2は中心照射方向Cの下方にある。同様に、点データb1とb2は実際には同じ高さであるにもかかわらず、点データb1は中心照射方向Cの上方にあり、点データb2は中心照射方向Cの下方にある。そこで、三次元データ作成部522は、農作業用走行車Sの走行方向を水平方向とする三次元空間座標にこれらの点データの座標を変換することにより三次元データを作成する。
【0040】
三次元データ作成部522は、三次元データを作成するために、まず、奥行方向又は幅方向の所定の範囲内の取得点群データを抽出する。続いて、三次元データ作成部522は、抽出した取得点群データに含まれる複数の点データそれぞれの位置に基づいて、複数の点データの中心となる位置(例えば
図4における中心位置M)を特定する。そして、三次元データ作成部522は、特定した中心位置Mを回転中心として取得点群データの座標を回転させることにより三次元データを作成する。すなわち、三次元データ作成部522は、農作業用走行車Sの進行方向をX方向、左右方向をY方向、高さ方向をZ方向とする三次元空間における点データの座標を算出することにより三次元データを作成する。なお、三次元データ作成部522は、Z方向において所定の範囲をはずれた点データをノイズとして除去してもよい。
【0041】
図4(c)に示す例において、三次元データ作成部522は、点データa1の座標をA1に変換し、点データa2の座標を、Z方向及びY方向の座標がA1と同じであり、X方向の座標がA1と異なるA2に変換する。三次元データ作成部522は、点データb1の座標を、X方向の座標がA1と同じであり、Y方向及びZ方向の座標がA1と異なるB1に変換する。三次元データ作成部522は、このようにして作成した三次元データを方向特定用データ作成部523に通知する。
【0042】
方向特定用データ作成部523は、農作業用走行車Sの走行方向の前方側における畝を含む領域の位置を示す取得点群データのうち、畝の方向を特定するための有効な所定の範囲に対応する点群データにより構成される方向特定用データを作成する。方向特定用データ作成部523は、例えば、レーザー光照射装置4がパルス状のレーザー光を照射することにより得られた取得点群データに基づいて方向特定用データを作成する。方向特定用データ作成部523は、例えば取得点群データに基づいて作成された三次元データに含まれる点群データのうち、畝の方向を特定するために有効な所定の範囲に対応する一部の点群データを抽出することにより、畝の方向を特定するために用いられる方向特定用データを作成する。方向特定用データ作成部523は、作成した方向特定用データを方向特定部524に通知する。
【0043】
一例として、方向特定用データ作成部523は、三次元データに含まれる点群データのうち畝の上面よりも低い範囲内の所定の範囲に対応する点群データを選択することにより、方向特定用データを作成する。所定の範囲は、例えば、畝における最も低い位置と、溝における最も低い位置との間の高さの範囲である。方向特定用データ作成部523が、このように畝の上面よりも低い範囲内の点群データを使用して方向特定用データを作成することにより、畝に植えられた農作物に照射されて生成された点群データが方向特定用データに含まれないため、畝の方向の特定精度が向上する。また、畝にトンネルや支柱が設けられている場合、畝の上部が欠損している場合、畝の上方で乱反射が生じる場合にも畝の方向の特定精度が向上する。
【0044】
方向特定用データ作成部523は、例えば、農作業用走行車Sの水平面(例えば4つの車輪3の最上端に接する面)と平行な上面及び下面に囲まれた範囲内の点群データを選択することにより、
図3(c)に示したような方向特定用データを作成する。方向特定用データ作成部523は、畝よりも低い複数の所定の範囲に対応する点群データにより構成され、それぞれが同じ高さ範囲に対応する複数の方向特定用データを作成してもよい。
【0045】
なお、方向特定用データ作成部523が方向特定用データを作成する方法は任意である。方向特定用データ作成部523は、例えば、点群データに含まれる複数の点のうち、近接する3点により構成される三角形のポリゴンデータを方向特定用データとして作成してもよい。また、方向特定用データ作成部523は、畝の形状を示す複数の方向特定用データのテンプレートのうち、最も多くの点群と一致するテンプレートの方向特定用データを選択してもよい。
【0046】
方向特定部524は、方向特定用データ作成部523が作成した方向特定用データに基づいて畝の方向を特定する。方向特定部524は、例えば、方向特定用データに含まれる所定の高さに対応する点群データに基づいて、最小二乗法又はロバスト推定等の手法を用いて近似直線を計算することにより、畝の方向を特定する。方向特定部524は、例えば、点群データが含まれている領域の輪郭線で囲まれた領域の長手方向の近似直線を計算して計算することにより、同一の高さの領域の方向を特定する。
【0047】
方向特定部524は、方向を特定した領域のうち、所定の高さ以上の領域を畝の領域であると判定し、所定の高さ未満の領域を溝の領域であると特定する。方向特定部524は、特定した畝及び溝の長手方向を畝の方向及び溝の方向として特定する。
【0048】
方向特定部524は、方向特定用データ作成部523が複数の方向特定用データを作成した場合、複数の方向特定用データのそれぞれに基づいて畝の方向を特定する。方向特定部524は、複数の方向特定用データのそれぞれに基づいて特定した畝の方向の統計値(例えば平均値又は中央値)を畝の方向として特定することで、測定誤差の影響を軽減することができる。
【0049】
また、方向特定部524は、方向特定用データに基づいて、車輪3と畝との距離をさらに特定してもよい。方向特定部524は、特定した畝の領域と溝の領域との境界線と、車輪3の右側の位置又は左側の位置との距離を車輪3と畝との距離として特定する。方向特定部524は、特定した畝の方向又は溝の方向、及び車輪3と畝との距離を走行制御部525に通知する。
【0050】
走行制御部525は、方向特定部524が特定した畝の方向に農作業用走行車Sが走行するように農作業用走行車Sを制御する。走行制御部525は、畝の方向に基づいて、農作業用走行車Sの車輪3の向き及び速度を制御する。走行制御部525は、方向特定部524から通知された畝の方向に沿って走行するように、車輪3L及び車輪3Rそれぞれの回転速度又は向きを制御する。
【0051】
また、走行制御部525は、方向特定部524が特定した距離にさらに基づいて農作業用走行車Sの車輪3の回転速度又は向きを制御してもよい。走行制御部525は、例えば車輪3と畝との距離が所定の範囲内になるように車輪3の回転速度又は向きを制御する。
【0052】
具体的には、走行制御部525は、車輪3Lと畝との距離が所定の範囲よりも大きくなったことを検出した場合、車輪3Lの回転速度を車輪3Rの回転速度よりも大きくしたり、車輪3と畝との距離が小さくなるように車輪3の向きを変化させたりする。このように走行制御部525が動作することで、農作業用走行車Sが畝の方向に沿って走行するとともに、畝の方向が変化して車輪3と畝との距離が所定の範囲を超えた場合に、農作業用走行車Sは速やかに畝の方向に沿うように走行方向を変えることができる。
【0053】
なお、走行制御部525は、方向特定部524が畝の方向を特定できなくなった場合に農作業用走行車Sを停止させる。走行制御部525は、方向特定部524が畝の方向を特定できなくなった場合に、GPS衛星から受信した電波に基づく走行に切り替えてもよい。走行制御部525がこのように動作することで、例えば畝が崩れており、方向特定部524が畝の方向を特定できない状態において農作業用走行車Sが走行することにより、畝をさらに崩してしまうことを未然に防止できる。
【0054】
[制御装置5における処理の流れ]
図5は、制御装置5における処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、制御部52が起動した時点から開始している。
【0055】
データ取得部521は、所定の時間間隔で点群データを取得する(S11)。三次元データ作成部522は、データ取得部521が取得した点群データに基づいて三次元データを作成し(S12)、方向特定用データ作成部523は、三次元データにおける畝の上面よりも低い位置に対応する点群データを選択することにより方向特定用データを作成する(S13)。
【0056】
方向特定部524は、方向特定用データに基づいて畝と溝との境界位置を特定することにより、畝の方向を特定する(S14)。走行制御部525は、方向特定部524が特定した方向に農作業用走行車Sが進むように農作業用走行車Sの走行方向を制御する(S15)。
【0057】
制御部52は、動作を停止する指示を受けたか否かを監視し(S16)、停止する指示を受けるまでの間(S16においてNO)、S11からS16までの処理を繰り返す。制御部52は、停止する指示を受けた場合(S16においてYES)、動作を終了する。
【0058】
[第1変形例]
図6は、制御装置5の変形例の構成を示す図である。
図6に示す制御装置5は、凹凸特定部526及び機構制御部527をさらに有するという点で、
図2に示した制御装置5と異なり、他の点で同じである。
【0059】
凹凸特定部526は、データ取得部521が取得した取得点群データに基づいて複数の畝の間の溝の凹凸を特定する。凹凸特定部526は、例えば取得点群データに基づいて三次元データ作成部522が作成した三次元データに含まれる点群データの高さ方向の位置に基づいて、溝における最も低い位置を基準とする溝内の走行方向における複数の位置それぞれの高さを特定することにより、凹凸を特定する。
【0060】
機構制御部527は、凹凸特定部526が特定した凹凸に基づいて農作業用走行車Sにおいて畝の上方で作動する作動機構2の高さを制御する。農作業用走行車Sが溝の凹凸によって高さ方向の位置が変動することにより作動機構2の高さ方向の位置も変動すると、農作物の位置に対する作動機構2の高さが変動してしまう。その結果、例えば作動機構2が農作物の根元を切断するための機構を有する場合に、溝に凸部があることによって、農作物の根元よりも高い位置で農作物が切断されてしまう。
【0061】
これに対して、機構制御部527が溝の凹凸に応じて、作動機構2の高さ方向の位置が一定の範囲になるように作動機構2を制御することで、作動機構2が農作物の位置に対する作動機構2の高さが変動しない。その結果、作動機構2が農作物の根元を切断するための機構を有する場合に、作動機構2は、ほぼ同じ位置で農作物を切断することが可能になる。
【0062】
なお、
図6に示す制御装置5が凹凸特定部526を有しておらず、機構制御部527は、方向特定部524が特定した畝の方向に基づいて作動機構2の左右方向の位置を制御してもよい。機構制御部527は、例えば畝の方向が閾値以上変化した場合、農薬を噴霧するために用いられる作動機構2の左右方向の位置を変化させたり、農作物の根元を切断するための機構の左右方向の位置を変化させたりする。機構制御部527は、農作業用走行車Sの進行方向と畝の方向とが閾値以上ずれたことを条件として作動機構2の左右方向の位置を変化させてもよい。
【0063】
[第2変形例]
以上の説明においては、制御装置5が農作業用走行車Sに搭載されている場合を例示したが、制御装置5は農作業用走行車Sに搭載されていなくてもよい。制御装置5が、車輪3を駆動する電子機器との間でデータを送受信する通信機能を有しており、走行制御部525は、走行方向を示すデータを当該電子機器に送信することによって農作業用走行車Sの走行方向を制御してもよい。
【0064】
[第3変形例]
以上の説明においては、方向特定部524が特定した畝の方向に基づいて走行制御部525が農作業用走行車Sの左右方向の位置を制御する場合を例示したが、走行制御部525は、方向特定部524が特定した畝の方向に基づいて他の制御を行ってもよい。走行制御部525は、例えば畝の方向に基づいて農作業用走行車Sの走行トルクを制御する。具体的には、走行制御部525は、方向特定部524が特定した畝又は溝の方向が上方に傾いている場合(すなわち上り傾斜になっている場合)の走行トルクを、畝又は溝の方向が下方に傾いている場合(すなわち下り傾斜になっている場合)よりも大きくする。走行制御部525がこのように動作することで、畑の傾斜によらず農作業用走行車Sの走行速度が安定する。
【0065】
[第4変形例]
以上の説明においては、方向特定用データ作成部523が、三次元データ作成部522が作成した三次元データに含まれる点群データの一部の点群データにより構成される方向特定用データを作成したが、方向特定用データ作成部523は、データ取得部521が取得した取得点群データ自体を方向特定用データとしてもよい。この場合、レーザー光照射装置4は、予め設定された高さの範囲(例えば、畝に植えられた農作物よりも低い範囲)のみにレーザー光を照射する。レーザー光照射装置4及び方向特定用データ作成部523がこのように動作することで、三次元データから方向特定用データに変換する処理が不要になるので、方向特定部524が畝の方向を特定するために要する時間を短縮することができる。
【0066】
[第5変形例]
図7は、制御装置5の他の例を示す図である。
図7に示す制御装置5は、通信部53をさらに有する点で、
図2に示した制御装置5と異なり、他の点で同じである。
【0067】
通信部53は、例えば、農作業用走行車Sの後方を走行する他の農作業用走行車Sbとの間でデータを送受信するための無線通信ユニットをする。通信部53は、レーザー光照射装置4から取得された取得点群データを農作業用走行車Sの後方を走行する他の農作業用走行車Sbに送信する。
【0068】
農作業用走行車Sbは、三次元データ作成部522、方向特定用データ作成部523、方向特定部524及び走行制御部525として機能する制御部を有している。農作業用走行車Sbは、農作業用走行車Sから受信した取得点群データに基づいて走行方向を特定し、特定した方向に走行する。農作業用走行車Sが、通信部53を介して三次元データ又は方向特定用データを農作業用走行車Sbに送信し、農作業用走行車Sbは、受信した三次元データ又は方向特定用データに基づいて走行してもよい。
【0069】
農作業用走行車Sbの方向特定部524は、農作業用走行車Sから取得点群データ、三次元データ又は方向特定用データを受信したタイミングから、農作業用走行車Sと農作業用走行車Sbとの距離、及び農作業用走行車Sbの速度に基づいて定まる時間だけ遅延させたタイミングで取得点群データ、三次元データ又は方向特定用データを使用して、走行方向を特定してもよい。このように、農作業用走行車Sが農作業用走行車Sbに取得点群データ、三次元データ又は方向特定用データを送信することにより、農作業用走行車Sbにレーザー光照射装置4が搭載されていなくても、農作業用走行車Sbが畝の方向に沿って走行することができる。
【0070】
[第6変形例]
以上の説明においては、畝に農作物だけが植えられている場合が想定されていたが、畝に農作物以外の物体が設置されていてもよい。例えば、農作物を覆うトンネルが形成されている場合に、方向特定部524は、トンネルの方向を畝の方向として特定してもよい。
【0071】
また、このような場合、方向特定部524が畝の方向を特定できないことも想定される。そこで、方向特定部524が畝の方向を特定できない場合、方向特定用データ作成部523は、方向特定用データとして使用する点群データの範囲を広げてもよい。
【0072】
[第7変形例]
以上の説明においては、レーザー光照射装置4がレーザー光の照射方向を変化させる場合を例示したが、レーザー光照射装置4が、農作業用走行車Sの高さ方向に配置された、水平方向にレーザー光を照射する多数の光源を備えており、これらの多数の光源が水平方向にレーザー光を照射することにより点群を取得してもよい。
【0073】
[第8変形例]
以上の説明においては、農作業用走行車Sがレーザー光照射装置4を有しており、レーザー光照射装置4が照射したレーザー光に基づいて生成される点群データに基づいて畝の方向を特定する場合を例示した。レーザー光を用いることにより、雨の日や、視界が悪い場合などであっても、天候等に左右されずに農作業用走行車Sを自律走行させて農作業が可能となる。しかしながら、農作業用走行車Sが点群データを取得する手段はレーザー光照射装置4に限らず、畝の形状を点群データとして取得可能な手段であってもよい。例えば、農作業用走行車Sは、被写体までの距離を示す距離データを作成可能なステレオカメラ(複眼カメラ)により点群データを取得してもよい。
【0074】
農作業用走行車Sがステレオカメラを有する場合、ステレオカメラは、例えば2つのカメラで農作業用走行車Sの前方を撮影して得られる2つの撮像画像において同一の被写体の位置に対応する2つの画素間の距離(視差)に基づいて、カメラから被写体までの距離を特定する。ステレオカメラは、各画素に対応するカメラから被写体までの距離を示すデータを点群データとして制御装置5に入力する。三次元データ作成部522は、ステレオカメラの撮像可能範囲に対応する領域の三次元形状を示す三次元データを作成する。このように、農作業用走行車Sがステレオカメラを有する場合であっても、農作業用走行車Sがレーザー光照射装置4を有する場合と同様の処理により畝の方向を特定することができる。
【0075】
[農作業用走行車Sによる効果]
以上説明したように、農作業用走行車Sは、走行方向の前方側にパルス状のレーザー光を照射するレーザー光照射装置4を搭載している。そして、制御装置5は、レーザー光照射装置4がレーザー光を照射することによって取得された点群データに基づいて、農作業用走行車Sが走行する畑における畝の方向を特定し、特定した方向に農作業用走行車Sが走行するように農作業用走行車Sを制御する。農作業用走行車Sがこのような構成を有することで、農作業用走行車Sが、特定した畝の方向に基づいて走行することができるので、畝の一部が崩れていたり畝に凹凸があったりする場合に、農作業用走行車が頻繁に左右方向に移動することなく、畝の方向に沿って走行することができる。
【0076】
また、農作業用走行車Sは、畝及び溝の高さ方向の変化も検出することにより、傾斜に応じて走行トルクを変化させることができるので、走行性能を向上させることができる。また、農作業用走行車Sは、畝及び溝の高さ方向の変化も検出することにより、急な下り傾斜がある場合に停止させたりすることができるので、安全性を向上させることもできる。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0078】
1 本体
2 作動機構
3 車輪
4 レーザー光照射装置
5 制御装置
51 記憶部
52 制御部
521 データ取得部
522 三次元データ作成部
523 方向特定用データ作成部
524 方向特定部
525 走行制御部
526 凹凸特定部
527 機構制御部