(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】収容容器を作成する方法及びその方法により作成された収容容器
(51)【国際特許分類】
B65D 5/22 20060101AFI20230329BHJP
B65D 6/32 20060101ALI20230329BHJP
B65D 5/44 20060101ALN20230329BHJP
【FI】
B65D5/22 B
B65D6/32 B
B65D5/44 G
(21)【出願番号】P 2020102925
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-354228(JP,A)
【文献】特開平11-042710(JP,A)
【文献】特開2019-137444(JP,A)
【文献】米国特許第05037027(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/22
B65D 6/32
B65D 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる中空板材を上部に開口を有する箱状に折曲げた箱体と、前記開口の縁周りに被せられた断面U字型のフレーム部材と、前記開口の各コーナーで隣接するフレームの上から被せられ、外側壁と内側壁とこれらの上辺を橋渡し状に連結して形成された断面がU字型の溝体を主要部とするコーナー部材と、を備え、前記
箱体、フレーム
部材、コーナー部材が重なった位置にコテを押し当ててこれらを一体的に溶着
して収容容器を作成する収容容器の作成方法において、
前記コテが押し当てられる位置であって、前記外側壁の内側には、当該外側壁の板厚を内側から外側に減じた厚さを持つ薄肉部と当該外側壁の板厚のまま前記薄肉部を縦方向に横切るリブを具備する窪み部が設けられ、前記窪み部はさらに、前記コテが差し込まれる範囲を包含し、かつ前記薄肉部は外側壁の高さ途中から下縁部まで続いており、
そのうえ前記リブの幅が前記コテの径よりも小さくされているコーナー部材を、前記各コーナーで隣接する前記フレーム部材の上から被せ、
前記コテが前記リブにかかるように前記リブの位置に前記コテを差し込み、前記箱体、フレーム部材、コーナー部材を一体的に溶着させて、前記窪み部の位置にコテ跡を残すことを特徴とする収容容器を作成する方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂からなる中空板材を上部に開口を有する箱状に折曲げた箱体と、前記開口の縁周りに被せられた断面U字型のフレーム部材と、前記開口の各コーナーで隣接するフレーム
部材の上から被せられ、外側壁と内側壁とこれらの上辺を橋渡し状に連結して形成された断面がU字型の溝体を主要部とするコーナー部材と、を備え、前記
箱体、フレーム
部材、コーナー部材が重なった位置にコテを押し当ててこれらを一体的に溶着されてなる収容容器
において、
前記コテが押し当てられる位置であって、前記外側壁の内側には、当該外側壁の板厚を内側から外側に減じた厚さを持つ薄肉部
と当該外側壁の板厚のまま前記薄肉部を縦方向に横切るリブを具備する窪み部が設けられ、前記窪み部はさらに、前記コテが差し込まれる範囲を包含し、かつ前記薄肉部は外側壁の高さ途中から下縁部まで続いており、
そのうえ前記リブの幅が前記コテの径よりも小さくされているコーナー部材が、前記各コーナーで隣接する前記フレーム部材の上から被せられており、
前記箱体、フレーム部材、コーナー部材を一体的に溶着させることにより前記コーナー部材の窪み部の範囲内に残された前記コテが押し当てられたコテ跡には、前記コテが抜けて溶融した熱可塑性樹脂が表面張力により周囲に広がった孔と、溶融した後に前記肉薄部と前記フレーム部材の間に流れて硬化した熱可塑性樹脂が形成されていることを特徴とする収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック段ボールを用いて組立てられる収容容器に関し、これに用いられるコーナー部材に係るものである。
【背景技術】
【0002】
工場間の通い箱として利用されるプラスチック段ボールは、廃棄の際に分解分別を要しないように構成部材をすべて同一素材に統一して作成されている。例えば、特許文献1においては、プラスチック段ボールを折曲げて、6面の内の上向きの1面を開口とした長方形の箱体とし、開口部の縁周りにフレーム部材、四隅にはコーナー部材を用いて固定する。その固定の際に、プラスチック段ボール、フレーム部材、コーナー部材のすべてをポリオレフィン系の同一素材で統一すると共に、部材間結合を超音波溶着等の熱溶着によって収容容器を作る技術が開示されている。
【0003】
同文献によれば、先端が円筒状の大凸部とその周囲に環状の溝部その外側に環状の小凸部が形成された特殊な超音波溶着のコテをコーナー部材の表面に押し当てることによってコーナー部材とフレーム部材とプラスチック段ボールとを即座に一体的に溶着結合する。コテは、コーナー部材の表面に押し当てるとコーナー部材とフレーム部材を溶融しさらにプラスチック段ボールのある位置まで侵入しこれらを一体的に溶着する。
【0004】
コテ先端のプラスチック段ボールまでプラスチックを溶融させながら侵入させ、環状の溝部をコーナー部材の表面に当接する位置までで止めることにより、コテの先端部と環状の小凸部との間に溶融したプラスチックを挟んで溶着させる。
【0005】
また、特許文献2には、コーナー部材の表面に溶融したプラスチックが溢れ出さないようにする技術が開示されている。同文献によれば、コーナー部材に対してコテの外形寸法よりも大きい内形寸法を有したガイド孔を設け、ガイド孔にコテを挿入した際に、コテの周側面がホーン挿入ガイド孔の入口側の周縁に接触しないようにして、溶融したプラスチックがコテの周側面を伝ってコーナー部材の表面に溢れ出てくるのを抑制している。
【文献】特開2001-354228号公報
【文献】特開2019-137444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、コーナー部材の表面には、コテの先端形状によって型どりされたプラスチックの押し跡が形成される。また、特許文献2によれば、溶着処理が行われたコーナー部材と、されていないコーナー部材との間で、外観を一瞬見ただけでは、区別が付きにくいと言う問題がある。このため、溶着作業忘れが起こりやすいことになる。また、コテにより溶融したプラスチックの量が多い場合には、ガイド孔の中に収まれきれずに、あふれ出す恐れがある。
【0007】
本発明の課題は、上記の問題点を解決し、溶着作業がされたコーナー部材の表面にコテ跡を残して、溶着作業がされていない表面は平坦なままとすることにより溶着作業忘れを防止するとともに、コテ跡自体も、その周りのコーナー部材の表面が平坦なままで維持されたプラスチック段ボールを用いた収容容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による収容容器を作成する方法は、熱可塑性樹脂からなる中空板材を上部に開口を有する箱状に折曲げた箱体と、前記開口の縁周りに被せられた断面U字型のフレーム部材と、前記開口の各コーナーで隣接するフレームの上から被せられ、外側壁と内側壁とこれらの上辺を橋渡し状に連結して形成された断面がU字型の溝体を主要部とするコーナー部材と、を備え、前記箱体、フレーム部材、コーナー部材が重なった位置にコテを押し当ててこれらを一体的に溶着して収容容器を作成する収容容器の作成方法において、
前記コテが押し当てられる位置であって、前記外側壁の内側には、当該外側壁の板厚を内側から外側に減じた厚さを持つ薄肉部と当該外側壁の板厚のまま前記薄肉部を縦方向に横切るリブを具備する窪み部が設けられ、前記窪み部はさらに、前記コテが差し込まれる範囲を包含し、かつ前記薄肉部は外側壁の高さ途中から下縁部まで続いており、そのうえ前記リブの幅が前記コテの径よりも小さくされているコーナー部材を、前記各コーナーで隣接する前記フレーム部材の上から被せ、
前記コテが前記リブにかかるように前記リブの位置に前記コテを差し込み、前記箱体、フレーム部材、コーナー部材を一体的に溶着させて、前記窪み部の位置にコテ跡を残すことを特徴とする。
また、本発明の収容容器は、熱可塑性樹脂からなる中空板材を上部に開口を有する箱状に折曲げた箱体と、前記開口の縁周りに被せられた断面U字型のフレーム部材と、前記開口の各コーナーで隣接するフレーム部材の上から被せられ、外側壁と内側壁とこれらの上辺を橋渡し状に連結して形成された断面がU字型の溝体を主要部とするコーナー部材と、を備え、前記箱体、フレーム部材、コーナー部材が重なった位置にコテを押し当ててこれらを一体的に溶着されてなる収容容器において、
前記コテが押し当てられる位置であって、前記外側壁の内側には、当該外側壁の板厚を内側から外側に減じた厚さを持つ薄肉部と当該外側壁の板厚のまま前記薄肉部を縦方向に横切るリブを具備する窪み部が設けられ、前記窪み部はさらに、前記コテが差し込まれる範囲を包含し、かつ前記薄肉部は外側壁の高さ途中から下縁部まで続いており、そのうえ前記リブの幅が前記コテの径よりも小さくされているコーナー部材が、前記各コーナーで隣接する前記フレーム部材の上から被せられており、
前記箱体、フレーム部材、コーナー部材を一体的に溶着させることにより前記コーナー部材の窪み部の範囲内に残された前記コテが押し当てられたコテ跡には、前記コテが抜けて溶融した熱可塑性樹脂が表面張力により周囲に広がった孔と、溶融した後に前記肉薄部と前記フレーム部材の間に流れて硬化した熱可塑性樹脂が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるコーナー部材を用いた収容容器によれば、溶着処理が行われた箇所においてはコテ跡が残り、溶着処理がされていない箇所においては外側壁が元のままであるので、溶着作業忘れを防止することができるという効果がある。そして、コテ跡を観察すると、コテが抜けた孔が見えるだけであって、その周りの面は元のままなので審美性を損なわない。また、溶融プラスチックがバリとして残ることもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】収容容器1を説明する図であり、
図1Aは収容容器1の外観であり、
図1Bはプラスチック段ボールの展開状態を示す図、
図1Cは組立途中を示した図である。
【
図2】コーナー部材について説明する図であり、
図2A、
図2Bはコーナー部材の斜視図、
図2Cは一部断面図、
図2Dは窪み部を横に切断したときのX-X断面である。
【
図3】コテによる溶着の様子を示した図であり、
図3Aは溶着台を示す図であり、
図3B~Eはコテがコーナー部材に差し込まれて溶着してゆく様子を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施例によるコーナー部材を用いた収容容器1を説明する。
図1Aは収容容器1の外観であり、
図1Bはプラスチック段ボールの展開状態を示す図、
図1Cは組立途中を示した図である。
収容容器1は、プラスチック段ボール2と、フレーム部材3と、コーナー部材4と、必要に応じて取手部材5とを具備している。プラスチック段ボール2は、中芯とライナーで構成され、内部に空洞がある中空板材である。プラスチック段ボール2と、フレーム部材3と、コーナー部材4と、取手部材5を構成する材料は、将来的なリサイクルを考慮して、同一素材の熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィン系のプラスチックを統一して用いるのが良い。
【0012】
プラスチック段ボール2は、直方体の6つの面のうち上部には面を持たずに開口とした収容容器1の代表的な形態である箱体の展開図に従って切り落とされ、折り曲げ線に必要な溝が設けられる。プラスチック段ボール2を折り曲げて箱体の形態にする。
【0013】
図1Bにおいて、プラスチック段ボール2は底面部2aの四辺に一対の長辺側壁部2b、一対の短辺側壁部2cが設けられている。長辺側壁部2bには、さらに折り曲げた時に短辺側壁部2cと重なるシロ部2dが設けられている。短辺側壁部2cには、取手取付け穴2eが設けられている。さらに、シロ部2dには、短辺側壁部2cと重なったときに取手取付け穴2eが貫通するようにU字型の切り取り部2fが設けられている。尚、
図1Bにおいて、実線が切り取られた外形を示し、点線は折り曲げ線に必要な溝が設けられた折り線であり、すべてが谷折りである。
【0014】
図1Cにおいて、プラスチック段ボール2を折り曲げて立体状にしたのち、一対の長辺側壁部2b及び一対の短辺側壁部2cの上縁で囲まれる開口の縁周りに樹脂製のフレーム部材3を被せる。このフレーム部材3は箱体の機械的強度を増し、物が当たり易い開口の縁周りを破損し難くして耐久性を増すために用いられているものである。収容容器1ではフレーム部材3として、シングルフレーム3aとダブルフレーム3bとを用いる。プラスチック段ボール2が一重構造の長辺側壁部2bの上縁にはシングルフレーム3aが、プラスチック段ボールが二重構造になる短辺側壁部2cの上縁にはダブルフレーム3bがそれぞれ被せられる。シングルフレーム3aは、1枚分のプラスチック段ボールの厚さに相当する幅を有する断面U字型の溝体である。また、ダブルフレーム3bは、2枚分のプラスチック段ボールの厚さに相当する幅を有する断面U字型の溝体である。
【0015】
そして、箱体の四隅の各コーナーにおいて、隣接するシングルフレーム3aとダブルフレーム3bの上からコーナー部材4を被せて嵌合連結する。
図1Aの完成した収容容器1において、コーナー部材4には、コテ(図示せず)を押し当てることにより形成されたコテ跡Kが残っている。このコテ跡Kは、コテの外径とほぼ一致している。コーナー部材4の構成およびコテによる溶着については、後述する。さらに、必要に応じて、取手部材5を短辺側壁部2cの側面に取り付ける。取手部材5は、短辺側壁部2cの外側から、取手取付け穴2eにはめ込んで取り付けられ、取手取付け穴2eの裏側から締結部材5aがはめ込まれて固定される。
【0016】
[コーナー部材1の構成]
図2を用いて、コーナー部材4について説明する。コーナー部材4は、射出成形により一体的に形成されたプラスチック部品である。
図2A、
図2Bにコーナー部材4の斜視図を示す。コーナー部材4は、四隅の各コーナーにおいてシングルフレーム3aとそれに隣接するダブルフレーム3bを上から嵌合するため、平面視においてL型である。また、コーナー部材4は断面がU字型の溝体を主要部としており、溝体の上側に延長壁部4bが必要に応じて設けられる。コーナー部材4の主要部たる溝体の溝の形状は、外側壁4aと内側壁4cと、これらの上辺を橋渡し状に連結して形成されている。コーナー部材4は、溝の間隔d1、d2において左右が対称になる2種類のものがある。そして、コーナー部材4の上面には、延長壁部4bは、外側壁4aの上縁部に沿って突状に延在して形成される。延長壁部4bは、収容容器1を複数段に重ねるときに、上側におかれる収容容器1の底面部2aの周囲を囲み支持する。
【0017】
図2Cは、コーナー部材4の外側壁4aの内側を示している。外側壁4aの内側には、コテ10が差し込まれる位置に、外側壁4aの板厚t1を内側から外側に減じた厚さを持つ薄肉部7(板厚t2、
図2D参照)と板厚t2より厚い厚さのリブ8を具備する窪み部6が設けられている。本実施例では、リブ8の厚さは、外側壁4aの板厚t1のままとした。窪み部6は、コテ10が差し込まれる範囲を包含する大きさであり、かつ薄肉部7は外側壁4aの高さ途中から下縁部まで、板厚t2の状態で続いている。コテ10が差し込まれる範囲を破線Pで示した。窪み部6の設けられた位置においては、外側壁4aの外側から観察すると孔の無い平坦な面になっている。リブ8は、窪み部6を縦方向に横切るように設けられている。リブ8は、その上側が板厚t1の外側壁4aに続いており、下側は外側壁4aの下縁部まで続いている。
【0018】
図2Dは窪み部を横に切断したときのX-X断面を示している。同図において、リブ8の幅h1は、コテ10の径h2よりも小さい。コテ10が差し込まれたとき、コテ10がリブ8にかかる位置である。望ましくは、コテ10でリブ8が上下に分断され、コテ10の左右両端が薄肉部7にかかる位置にリブ8は設けられるのが良い。尚、図において、コテ10の位置を破線で示した。
【0019】
[コーナー部材1を用いた溶着]
図3は、コテ10による溶着の様子を示している。
図3Aは、基台11a、ガイド11b、コテ10からなる溶着台11を示している。コテ10は、超音波溶着のコテを用いる(電熱線によるコテでも良い)。超音波溶着では、コテ10の先端部を20kHzの超音波周波数で振動させ加熱する。基台11a上に設けられたガイド11bは、底面部2aが突き当てられコテ10が差し込まれる底面部2aからの高さを規定する。また、コテ10の基台11aから高さは、コテ10が差し込まれる横方向の距離を規定する。溶着台11を利用することにより、ガイド11bに底面部2aを突き当てて、コテ10側にスライドさせることにより、コーナー部材4に設けられた窪み部6の正確な位置にコテ10を差し込むことができる。また、窪み部6の位置はコーナー部材4に共通であり、また、コテ10の差し込み位置は高度な正確性を必要としないため、ある程度熟練してくれば、手持ちのコテを用いても、ある程度正確に窪み部6の位置にコテ10を差し込むことができる。
【0020】
図3B~Eは、コテ10がコーナー部材4に差し込まれて溶着してゆく様子を示している。
図3Bにおいて、リブ8が裏側に存在する外側壁4aに対向してコテ10が配置される。一方、収容容器1側は、外側壁4a、シングルフレーム3a(若しくはダブルフレーム3b)、プラスチック段ボール2、シングルフレーム3a(若しくはダブルフレーム3b)、内側壁4cの順で重なっている。コテ10は、この重なった位置に押し当てられて、これらの部材を溶着するのである。
【0021】
図3Cにおいて、コテ10が差し込まれる。薄肉部7はコテ10により瞬時に溶けて孔Sが開くが、表面張力により孔Sの周囲を広げるように移動し、コテ10から離れる。このため、振動が伝わらずにそれ以上の溶融は起こさない。この孔Sは、コテ10の周囲に微少な間隔で広がった孔である。一方、リブ8は、背面がシングルフレーム3a(若しくはダブルフレーム3b)により支持されているので、コテ10の超音波振動により効果的に発熱し溶融する。コテ10が押し込まれている状態であるので、溶融したプラスチックMは、コテ10と共に背面のシングルフレーム3a(若しくはダブルフレーム3b)側に押し付けられる。コテ10がリブ8を貫くことにより、コーナー部材4とシングルフレーム3a(若しくはダブルフレーム3b)との溶着に関与する溶融プラスチックの量が確保される。
【0022】
図3Dにおいて、コテ10はシングルフレーム3a(若しくはダブルフレーム3b)、プラスチック段ボール2、シングルフレーム3a(若しくはダブルフレーム3b)を貫通し、内側壁4cの途中で差し込みが停止される。溢れた溶融プラスチックMは、プラスチック段ボール2の空洞構造の中や、薄肉部7とシングルフレーム3a(若しくはダブルフレーム3b)の間に分散して流れる。
【0023】
図3Eにおいて、コテ10が引き抜かれるとコテ10に付着して外側壁4aの外に溢れようとする溶融プラスチックMは、コテ10の周囲を取り囲んだ薄肉部7の固形プラスチックにより、抜けだしを阻止される。その結果、コテ跡を観察すると、コテ10が抜けた孔が見えるだけであって、その周りは余溶け出しによる盛り上がり変形が少なく元の平坦のままであって、完成した収容容器1の審美性を損なわない。また、溶融プラスチックMがバリとして残ることもない。リブ8は、コテ10の挿入により一部が
溶解して分断されるが、一部は残り薄肉部7の破断を抑制する。
【0024】
そして、溶着処理が行われた箇所においてはコテ跡が残り、溶着処理がされていない箇所においては外側壁4aが元のままである。このため、溶着作業を行ったかどうかの確認をコテ跡の有無により判別できることになる。コテ跡があると無いのでは外観が大きく異なるため、溶着作業忘れを容易に発見することができる。
【0025】
上記実施例においては、窪み部6の薄肉部7は外側壁4aの高さ途中から下縁部まで伸ばしたが、コテ10が差し込まれる範囲を包含する大きさであれば、下縁部までなくとも良い。但し、この場合、コーナー部材4を射出成形で作成する場合に、型抜きの工程が複雑になり、製造原価が増加するという問題がある。また、リブ8が存在しない箇所の薄肉部7は破断しやすくなる。
【0026】
また、リブ8の幅h1はコテの径h2よりも小さくする必要があることを前提に、リブ8の大きさ形状は、変更可能である。例えば、上記実施例においては、リブ8の上側を板厚t1の外側壁4aまで続けたが、続いていなくても良い。板厚t1の外側壁4aまで続かないようにした場合、コーナー部材4を射出成形で作成する場合に、型抜きの工程が複雑になり、製造原価が増加するという問題がある。
【0027】
尚、上記実施例では、これに限定されるものではないが、薄肉部7の板厚t2は0.3mmとし、その他の外側壁4aの板厚t1は2mmとした。尚、コーナー部材は、射出成形で製造されるプラスチック部品であり、薄肉部7の板厚t2の成形については製造上の限界がある。薄肉部7の板厚t2が薄ければ、薄肉部7の裏側に多くの量の溶融プラスチックを収容することができるが、構造は弱くなる。一方、板厚t2が板厚t1に近づけば、溶融プラスチックが溢れることになる。よって、板厚t2は板厚t1の半分以下とすることが一応の目安となる。
【0028】
[他の実施例]
図4に他の実施例を示す。
図4A、4Bは、リブ8を設けない場合の実施例であって、他の構成は先の実施例と同じである。電気抵抗加熱のコテを用いる場合には、窪み部6は薄肉部7のみで構成しても良い。ただし、この例においては、コテが差し込まれる範囲を包含する大きな範囲で薄肉部7が外側壁4aの下縁側に存在することになり、収容容器1の製品としての強度が低下するという問題がある。
【0029】
図4C、4Dは、リブ8を設けない場合のさらなる他の実施例であって、他の構成は先の実施例と同じである。この例においては、外側壁4aの下縁側において、その表面に補強ブリッジ12が一体的に形成されている。補強ブリッジ12は、外側壁4aの下縁側に薄肉部7の左右に跨がって、板厚t1の部分を橋渡し上に連結するプラスチックの肉厚が増加した部分である。補強ブリッジ12を形成することにより、薄肉部7の強度が補強されると言う効果がある。また、手持ちのコテを用いて溶着する場合に、窪み部の位置の目印にすることが出来る。
【符号の説明】
【0030】
1 収容容器
2 プラスチック段ボール
2a 底面部
2b 長辺側壁部
2c 短辺側壁部
2d シロ部
2e 取手取付け穴
2f 切り取り部
3 フレーム部材
3a シングルフレーム
3b ダブルフレーム
4 コーナー部材
4a 外側壁
4b 延長壁部
4c 内側壁
5 取手部材
5a 締結部材
6 窪み部
7 薄肉部
8 リブ
10 コテ
11 溶着台
11a 基台
11b ガイド
12 補強ブリッジ