(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】仮想アース、その材料及び仮想アース作製用キット
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
H04R1/00 318Z
(21)【出願番号】P 2022180413
(22)【出願日】2022-11-10
【審査請求日】2023-02-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトにて公開 公開日 令和4年2月20日 アドレス http://composite-inshulator.p2.weblife.me/homee.html http://composite-inshulator.p2.weblife.me/audioj.html http://composite-inshulator.p2.weblife.me/_src/1698/Konade01_SDS.pdf
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315018635
【氏名又は名称】株式会社金井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】金井 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 満
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3200305(JP,U)
【文献】特開平7-265791(JP,A)
【文献】特開2015-151545(JP,A)
【文献】仮想アースの自作:結構音が変わります。|Plastic Audio,[online],2021年12月15日,p.1-14,[令和5年2月27日検索],インターネット<URL:https://plastic-audio.com/kasougnd/>
【文献】電位が下がらなければアースじゃない(自作仮想アースの材料配合を考える2)|奏KaNaDe/複合材料ノート,[online],2020年10月07日,p.1-10,[令和5年2月27日検索],インターネット<URL:https://ameblo.jp/spdc7249/entry-12629750854.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想アース用材料であって、アラミド繊維、アルミノシリケート、カルシウムシリケート、非晶質シリカ、活性炭、粉末ゴムを含む混合物からなる粉末状仮想アース用材料において、アルミノシリケートとして合成ゼオライトを含むことを特徴とする仮想アース用材料。
【請求項2】
前記合成ゼオライトを混合物全量に対し5~50重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の仮想アース用材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載された混合物の粉末を水と混練し成形した成形物からなることを特徴とする仮想アース。
【請求項4】
請求項1または2に記載された混合物の粉末を充填した袋体とアース用導線ケーブルと紙製箱体とからなることを特徴とする仮想アース作製用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器に用いられる仮想アースとして好適な仮想アース用材料、その材料から作製される仮想アース、及び仮想アースを作製するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭においては、冷蔵庫や洗濯機やエアコンは漏電による感電対策としてアースに接続することが推奨されている。音響機器においては、音質向上のために電気ノイズを極力減らすことが求められるのでアースをとることが好ましいとされる。しかし、家庭内のアース線への接続は、他の家電機器と共用されることになり、それらの機器からの電気ノイズを音響機器へ招き入れるという悪い影響がもたらされる。独立したアースとして地中に電極を埋め、これに音響機器を接続すれば、他の機器の干渉を受けることがなく良好な効果を得られるが、一般家庭、特に集合住宅の家庭では実現が難しい。
このことから、音響機器の内部や外部からの電気ノイズを減らすため、地面に接続する必要のない、電気ノイズを強く吸着する機能を持つ材料からなる仮想アースを独立した専用のアースとして音響機器に接続することが考えられた。
【0003】
従来の技術としてオーディオ用のカーペット型仮想アースが知られている(特許文献1)が、機能を持つ材料として炭素繊維が使用されている。電気ノイズにはプラスイオンとマイナスイオンによるものがあり、炭素系材料は、その表面の極性からアニオン系のマイナスイオンの電気ノイズを吸着することはできるが、カチオン系のプラスイオンの電気ノイズの吸着をすることができない。そのため電気ノイズの吸収は不十分であったと考えられる。
【0004】
そこで本発明者らは、マイナスイオンを吸着する材料と、プラスイオンを吸着する材料とを併用することによる電気ノイズの低減をめざし、種々の材料を検討した。従来技術における炭素繊維は、製造時の高温処理工程によりマイクロポーラス構造を持たないことから、アニオン系のマイナスイオンの電気ノイズを吸着する性能は不十分と考え、マイクロポーラス構造を持つ炭素系材料として活性炭を採用した。また、カチオン系のプラスイオンの吸着作用を有する材料として、天然のアルミノシリケート系鉱物であるベントナイトを採用し、両者を含む材料からなる仮想アースを開発した。これは従来の仮想アースよりは優れた効果を有するものではあったが、その性能はまだ十分であるとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、音響機器の内部や外部からの電気ノイズをより効果的に減らすことができる仮想アースの作製に好適な材料、それから作製される仮想アース、及び、仮想アースを作製するためのキットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記仮想アースにおける天然のアルミノシリケート系鉱物であるベントナイトに代えて、合成ゼオライトを使用することにより、更に優れた電気ノイズ吸収能力を持たせることができることを知見し、発明の完成に至った。
【0008】
合成ゼオライトは、一般式M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2Oで表され、天然のアルミノシリケート系鉱物にはない0.2nm~1nmの範囲の微細な細孔を持つ規則的な結晶構造を有している。そのマイクロポーラス構造によりカチオン系のプラスイオンの吸着作用が増大し、それにより電気ノイズ(ノイズ電圧)を大幅に下げる効果があると考えられる。
また、従来使用されていた、アニオン系のマイナスイオンの吸着作用がありマイクロポーラス構造を持つカーボン種である活性炭との併用によって、更なる効果がもたらされる。
【0009】
本発明は、音響機器に用いられる仮想アースに関するものであり、以下の技術を基礎とする。
(1)仮想アース用材料であって、アラミド繊維、アルミノシリケート、カルシウムシリケート、非晶質シリカ、活性炭、粉末ゴムを含む混合物からなる粉末状仮想アース用材料において、アルミノシリケートとして合成ゼオライトを含むことを特徴とする仮想アース用材料。
(2)合成ゼオライトを混合物全量に対し5~50重量%含むことを特徴とする(1)に記載の仮想アース用材料。
(3)上記(1)、(2)に記載された混合物の粉末を水と混練し成形した成形物からなることを特徴とする仮想アース。
(4)上記(1)、(2)に記載された混合物の粉末を充填した袋体とアース用導線ケーブルと紙製箱体とからなることを特徴とする仮想アース作製用キット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、音響機器の内部や外部からの電気ノイズをより効果的に減らし、良質な音質を得ることのできる小型の仮想アースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の紙製箱体に収納された仮想アースを示す写真である。
【
図2】音響機器への仮想アースの接続例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の仮想アース用材料は、マイクロポーラス構造を有する合成ゼオライト、活性炭を機能性材料として含み、他に充填材として、ベントナイト、カルシウムシリケート、非晶質シリカ、アルミナ、ジルコニウムなどの無機物、アラミド繊維などの有機繊維、粉末ゴムなどの電気伝導度の低い材料が挙げられる。
微細粉とした上記機能性材料、及び同様に細粉化した充填材の数種類を所定量配合した仮想アース用組成物を混合機で均一に混合する。
なお、合成ゼオライトは、仮想アース材料全量に対し5~50重量%含有することが好ましい。
【0013】
上記粉末状仮想アース材料に水を加えて混練して粘土状とし、成形することにより仮想アースを作製する。簡便な方法として、粉末状の材料を適量耐水性の袋体に取り分け、水を加えて袋越しに手で捏ね十分混練して粘土状になったものを、適宜な箱体に納めて立方体に成形する。箱体は、静電気の起きにくい紙製が好ましい。これに導線ケーブルを挿入し、音響機器に接続して仮想アースとして使用する。
【0014】
適用される音響機器は、トランスを有する機器全般であり、パワーアンプ、プリアンプ、CDプレーヤー、フォノイコライザーアンプ、クリーン電源、アンプ内蔵スピーカー、アンプ内蔵レコードプレーヤー、DAコンバーター、FMチューナー等であり、各機器のグランド(空マイナス端子)または電源アース端子に、仮想アースをケーブルを介して接続して使用する。使用する機器のどれか1台に仮想アース1つを接続すれば良いが、全ての機器にそれぞれ仮想アースを接続しても良い。
【実施例】
【0015】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0016】
〈仮想アースの作製〉
表1に示す組成の粉末の仮想アース材料をアイリッヒミキサーにて5分間混合、得られた混合物200gをビニール袋に小分けし、適度な長さの銅の導線を挿して200gの水道水を添加して揉みほぐし、6時間放置して十分吸水し粘土状になったことを確認し、14×11×3.5cmの小型の紙箱に入れ、表1に記載の仮想アース装置を得た。
【0017】
【0018】
〈ノイズ評価〉
GW Instek製オシロスコープで、音響機器のグランドの残留電気ノイズ電圧(グランド電位)について、プリメインアンプのグランドに仮想アースを接続し、接続の有無の場合を計測した。
【0019】
〈音質評価〉
音質評価は、プリメインアンプ(Accuphase E-5000)、DAコンバーター(ESOTERIC N-05)、CDプレーヤー(Accuphase DP-550)、スピーカー(FOSTEX GX100 Limited)を用い、プリメインアンプの電源アース端子への仮想アース接続の有無の場合を比較した。
音質評価項目は、(1)主音(低音、中音、高音)の再現性、(2)余韻の再現性、(3)立体感の再現性、の3項目とした。
音質評価曲は、クラシック、ジャズ、ニューミュージック等の様々な周波数帯域の音楽が含まれるAccuphaseのSpecial Sound Selection CD No.1と2を使用した。
【0020】
音質評価者は、嗜好、性別、年齢(28才~70才)の異なる16名で行い、平均を取った。
◎:13~16人が良いと評価
○:8~12人が良いと評価
△:3~7人が良いと評価
×:0~2人が良いと評価
【0021】
作製した仮想アースをプリメインアンプの電源アース端子に接続し、残留ノイズ電圧と音質評価の結果を表1に示した。
なお、仮想アースを接続しない場合を参考例として示した。
表1の結果にみられるように、活性炭に加え、合成ゼオライトを所定の範囲で加えることで、残留電気ノイズをより低減し、音楽成分の主音や余韻や立体感に優れた音質を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によって、音響機器の内部や外部からの電気ノイズをより効果的に減らすことができる仮想アースの作製に好適な材料を得ることができ、その材料から作製された仮想アース、及び、その仮想アースを簡便に作製することができるキットを提供することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 材料粉末混練物
2 袋体
3 アース用導線ケーブル
4 箱体
【要約】
【課題】
音響機器の内部や外部からの電気ノイズをより効果的に減らし、良質な音質を得ることのできる小型の仮想アースを提供すること。
【解決手段】
アラミド繊維、アルミノシリケート、カルシウムシリケート、非晶質シリカ、活性炭、粉末ゴムを含む混合物からなる粉末状仮想アース用材料であって、アルミノシリケートとして合成ゼオライトを含む仮想アース用材料を、水と混練し粘土状として、これを成形したものに導線ケーブルを挿入し仮想アースとする。
粉末材料を充填した袋体とアース用導線ケーブルと紙製箱体とを組み合わせて仮想アース作製用キットとする。
【選択図】
図1