(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】多層回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230329BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20230329BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230329BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230329BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 H
H01L23/12 C
H01L23/12 J
H01L23/12 N
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2017188499
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-09-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 篤士
(72)【発明者】
【氏名】広津留 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 恒希
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳孝
【合議体】
【審判長】清水 稔
【審判官】須原 宏光
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-45974(JP,A)
【文献】特許第5321942(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 3/46
H01L 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一金属層の一方の面上に、ビアホールを有する第一セラミックス基材を接合して、第一積層体を得る第一工程と、
前記第一積層体における前記第一金属層の他方の面上に、第二セラミックス基材を接合して、第二積層体を得る第二工程と、
前記第二積層体における前記ビアホール内に、溶射法によって導体部を形成して、第三積層体を得る第三工程と、
前記第三積層体における前記第一セラミックス基材の前記第一金属層とは反対側の面上に、金属回路を有する第二金属層を形成して、第四積層体を得る第四工程と、
前記第四積層体における前記第二セラミックス基材の前記第一金属層とは反対側の面上に、第三金属層を形成する第五工程と、
を備え、
前記第一金属層、前記第二金属層、前記第三金属層及び前記導体部が、それぞれ、Cu、Cu及びMoを含む合金、並びにCu及びWを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で形成されており、
前記第一セラミックス基材及び前記第二セラミックス基材が、それぞれ、AlN、Si
3N
4又はAl
2O
3で形成されている、多層回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第一セラミックス基材及び前記第二セラミックス基材の厚みが、それぞれ0.2~1.5mmである、請求項1に記載の多層回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記導体部を、Cu粒子、Cu及びMoを含む合金粒子、並びにCu及びWを含む合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の、粒径が10~70μmの金属粒子を用いて形成する、請求項1又は2に記載の多層回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層回路基板及びその製造方法に関し、より詳しくは、多層配線同士がビアを介して接続される構造を有する多層回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット、モーター等の産業機器に用いられるインバータには、パワーモジュールが使用される。パワーモジュールは、通常、セラミックス回路基板と、セラミックス回路基板の一方の面上に設けられた半導体素子と、セラミックス回路基板の他方の面上に半田付け等により設けられ、熱伝導性に優れるCu、Cu-Mo、Cu-C、Al、Al-SiC、Al-C等からなるベース板と、ベース板のセラミックス回路基板とは反対側の面上にネジ止め等により設けられた放熱フィンとを備える。
【0003】
特に3相モーター等を制御するパワーモジュールにおいては、複雑化した配線により生じるインダクタンスを低減するため、例えば以下のことが行われている。すなわち、複数の回路層と複数のセラミックス絶縁層とを交互に積層してなる多層回路基板を用い、上層と下層の電流の方向が逆になるように配線を配置することで発生する磁界を打ち消す方法や、セラミックス回路基板の一方の面と他方の面にかけて貫通孔(ビアホール)を形成し、ビアホール内を導体で満たすことで貫通導体部(導体部)を有するセラミックス回路基板を作製して、多層回路基板に用いる方法等が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導体部の形成方法としては、例えば、セラミックスグリーンシートに打ち抜き加工によって単数又は複数のビアホールを形成し、該ビアホールに金属粉末、有機溶剤、分散剤、可塑剤、その他添加物等を混合して得られた金属ペーストをスクリーン印刷等で充填し、その後セラミックスグリーンシートとともに所定の温度で焼成する方法が知られている。
【0006】
しかし、上記の方法で形成された導体部は、金属ペーストをビアホールに充填する際に気泡が入りやすく、また、所定の温度で焼成する際に、セラミックスグリーンシートと金属ペーストとの熱収縮率差により隙間が発生するなど、導体部の形成不良を起こしやすい。また、実使用において繰り返し行われる発熱及び冷却によっても導体部の形成不良が起こることが懸念される。導体部の形成不良は、多層回路基板及びパワーモジュールの電気特性不良の原因となる。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、繰り返し行われる発熱及び冷却による電気特性の低下を抑制できる多層回路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第一金属層の一方の面上に、ビアホールを有する第一セラミックス基材を接合する第一工程と、第一金属層の他方の面上に、第二セラミックス基材を接合する第二工程と、ビアホール内に、溶射法によって導体部を形成する第三工程と、第一セラミックス基材の第一金属層とは反対側の面上に、金属回路を有する第二金属層を形成する第四工程と、第二セラミックス基材の第一金属層とは反対側の面上に、第三金属層を形成する第五工程と、を備える、多層回路基板の製造方法を提供する。
【0009】
上記製造方法において、第一セラミックス基材及び第二セラミックス基材の厚みは、それぞれ0.2~1.5mmであってもよく、第一セラミックス基材及び第二セラミックス基材は、それぞれAlN、Si3N4又はAl2O3で形成されていてもよい。
【0010】
また、上記製造方法においては、第一金属層、第二金属層及び第三金属層、並びに導体層を、それぞれCu、Al、Cu及びMoを含む合金、並びにCu及びWを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で形成してもよい。
【0011】
また、本発明は、第一金属層と、第一金属層の一方の面上に設けられた第一セラミックス基材と、第一金属層の他方の面上に設けられた第二セラミックス基材と、第一セラミックス基材の第一金属層とは反対側の面上に設けられた、金属回路を有する第二金属層と、第二セラミックス基材の第一金属層とは反対側の面上に設けられた第三金属層と、を備える多層回路基板であって、第一セラミックス基材がビアホールを有し、ビアホール内に溶射法によって導体部が形成されたものである、多層回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繰り返し行われる発熱及び冷却による電気特性の低下を抑制できる多層回路基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】多層回路基板の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】パワーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、多層回路基板の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、多層回路基板100は、第一金属層1と、第一金属層1の一方の面上に設けられた第一セラミックス基材2と、第一金属層1の他方の面上に設けられた第二セラミックス基材3と、第一セラミックス基材2の第一金属層1とは反対側の面上に設けられた、金属回路を有する第二金属層4と、第二セラミックス基材3の第一金属層1とは反対側の面上に設けられた、第三金属層5とを備える。第一セラミックス基材2はビアホール6を有しており、ビアホール6内には導体部7が形成されている。
【0016】
第一セラミックス基材2のビアホール6に、一方の面から他方の面にかけて導体部7(貫通導体部7)を形成して配線することで、第一セラミックス基材2を挟んだ第一金属層1及び第二金属層4に流れる電流の方向を逆にすることが可能となり、これにより発生する磁界を打ち消し合うことができ、結果としてインダクタンスを大きく低減することができる。
【0017】
導体部7は、例えば、第一セラミックス基材2の中心付近の位置に、1又は複数箇所設けられ、その直径は任意に決めることができるが、例えば0.1~5mmであってもよく、0.2~2mmであってもよい。導体部7が複数存在する場合、隣接する導体部7同士の間隔は任意に決めることができるが、例えば0.3mm以上であってもよく、0.5mm以上であってもよい。導体部7を形成するためのビアホール6の形成方法は特に制限されず、例えば、第一セラミックス基材2の所定の箇所に所望の大きさのビアホールを打ち抜き加工法、レーザー加工法等によって形成することができる。
【0018】
導体部7は、Cu、Cu及びMoを含む合金、並びにCu及びWを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で形成されていることが好ましい。
【0019】
多層回路基板100において、第一セラミックス基材2及び第二セラミックス基材3は、例えば、AlN、Si3N4又はAl2O3で形成されていることが好ましい。第一セラミックス基材2及び第二セラミックス基材3の厚みは、0.2~1.5mmであることが好ましく、0.25~1.0mmであることがより好ましい。第一セラミックス基材2及び第二セラミックス基材3の厚みが0.2mm未満であると耐熱衝撃性が低下し、1.5mmを超えると放熱性が低下する傾向がある。
【0020】
なお、第一セラミックス基材2及び第二セラミックス基材3は、それぞれ同種の材料で形成されていても、異種の材料で形成されていてもよいが、多層回路基板100の製造を容易にする観点から、同種の材料で形成されていることが好ましい。また、第一セラミックス基材2及び第二セラミックス基材3の厚みは、それぞれ実質的に同じでも異なっていてもよいが、多層回路基板100の製造を容易にする観点から、実質的に同じであることが好ましい。
【0021】
第一金属層1、第二金属層4及び第三金属層5は、それぞれCu、Cu及びMoを含む合金、並びにCu及びWを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で形成されていることが好ましい。第一金属層1、第二金属層4及び第三金属層5は、それぞれ同種の材料で形成されていても、異種の材料で形成されていてもよいが、多層回路基板100の製造を容易にする観点から、同種の材料で形成されていることが好ましい。また、第一金属層1、第二金属層4及び第三金属層5の厚みは、それぞれ0.2~3mmであることが好ましく、0.3~2mmであることがより好ましい。第一金属層1、第二金属層4及び第三金属層5の厚みが0.2mm以上であれば、金属層に十分な電流を流すことが可能となり、3mm以下であれば、ヒートサイクル時の熱応力が大きくなりすぎないため、信頼性の低下を抑制することができる。また、各金属層の厚みは、それぞれ実質的に同じでも異なっていてもよいが、ヒートサイクル時の熱応力のバランスの観点から、実質的に同じであることが好ましい。
【0022】
上述した多層回路基板100は、以下の第一工程、第二工程、第三工程、第四工程及び第五工程を備える方法により製造することができる。
【0023】
第一工程は、第一金属層1の一方の面上に、ビアホール6を有する第一セラミックス基材2を接合する工程である。第一工程を経ることで、第一金属層1と、ビアホール6を有する第一セラミックス基材2と、を備える第一積層体を得ることができる。
【0024】
セラミックス基材と金属層とを接合する方法としては、接着剤を用いて両者を接着させる接着法、活性金属法等を単独で又は複数を組み合わせて用いる方法が挙げられる。
【0025】
接着法は、接着剤を用いて両者を接着させる方法であり、例えばアクリル系接着剤等を用いて金属層及びセラミックス基材を接着してもよい。
【0026】
活性金属法は、例えばCuを含む金属層とセラミックス基材とを接合する場合、金属層としてAg(90%)-Cu(10%)-TiH2(3.5%)のろう材を用いて、温度800℃でセラミックス基材とCu板とを接合する方法が挙げられる。Alを含む金属層とセラミックス基材とを接合する場合、金属層としてAl-Cu-Mgクラッド箔をろう材として用い、温度630℃でセラミックス基材とAl板とを接合する方法が挙げられる。
【0027】
また、第一工程では、第一セラミックス基材2に第一金属層1を溶射法により接合してもよい。溶射法については下記第三工程で述べる方法と同様の方法を適用することができる。
【0028】
第二工程は、上記第一工程で得られた第一積層体における第一金属層1の他方の面上に第二セラミックス基材3を接合する工程である。第二工程を経ることで、第一金属層1と、第一金属層1の一方の面上に設けられ、ビアホール6を有する第一セラミックス基材2と、第一金属層1の他方の面上に設けられた第二セラミックス基材3とを備える第二積層体を得ることができる。
【0029】
第二工程において、セラミックス基材と金属層とを接合する方法としては、上記第一工程で述べた方法と同様の方法を適用することができ、ここでは重複する説明を省略する。
【0030】
なお、上記第一工程及び第二工程に関しては、必ずしも第一工程を経た後に第二工程を経る必要はなく、例えば、第二工程を経た後に第一工程を経てもよく、第一工程及び第二工程を実質的に同時に経てもよい。
【0031】
第三工程は、上記第二工程で得られた第二積層体におけるビアホール6内に、溶射法によって導体部7を形成する工程である。これにより第二積層体におけるビアホール6内に導体部7が形成された第三積層体を得ることができる。
【0032】
溶射法(コールドスプレー法)は、例えば、複数の金属粒子から構成される金属紛体を、10~270℃(好ましくは20~260℃)に加熱するとともに250~1050m/s(好ましくは350~950m/s)の速度まで加速してから吹き付けることにより、セラミックス基材上に金属層を形成させる工程と、セラミックス基材及びセラミックス基材上に形成された金属層を不活性ガス雰囲気下で加熱処理する工程とを備える。金属紛体を構成する粒子として、Cu粒子、Cu及びMoを含む合金粒子、並びにCu及びWを含む合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることにより、これらを含む導体部が形成される。金属紛体の吹付は、例えば、スプレーガンを使用すればよく、金属紛体を噴射するための作動ガスとしては、例えば、窒素が使用される。
【0033】
金属粒子は、導体部中の気泡の発生を抑えるために、球形粒子であることが好ましく、また、粒径のバラツキが小さいことが好ましい。金属粒子の(平均)粒径は、10~70μmであることが好ましく、20~60μmであることがより好ましい。金属粒子の粒径が10μm未満であると、吹付の際に、例えばノズルの先端の部分に金属紛体が詰まりやすくなる傾向がある。一方、金属粒子の粒径が70μmを超えると、金属紛体の速度を十分に上げることが困難になる傾向がある。ここで、「粒径」は、各粒子の最大幅を意味する。十分な数の金属紛体の粒子の粒径を測定し、その結果から平均粒径を求めることができる。
【0034】
溶射法を用いてビアホール6内に導体部7を形成する方法を採用することで、金属ペーストをビアホールに充填する工程、所定の温度で焼成する工程等が不要となり、気泡の混入や熱収縮率差による隙間の発生を抑制することができる。
【0035】
第四工程は、上記第三工程で得られた第三積層体における第一セラミックス基材2の第一金属層1とは反対側の面上に、金属回路を有する第二金属層4を形成する工程である。第四工程を経ることにより、第一金属層1と、第一金属層1の一方の面上に設けられた第一セラミックス基材2と、第一金属層1の他方の面上に設けられた第二セラミックス基材3と、第一セラミックス基材2の第一金属層1とは反対側の面上に設けられた、金属回路を有する第二金属層4と、を備える第四積層体を得ることができる。
【0036】
セラミックス基材と金属層とを接合する方法としては、上記第一工程で述べた接着法、活性金属法等を単独で又は複数を組み合わせて用いることができるほか、第三工程で述べた溶射法を用いて、セラミックス基材に金属層を接合することもできる。接着法、活性金属法及び溶射法については既に第一工程及び第三工程で述べたとおりであり、ここでは重複する説明を省略する。
【0037】
なお、金属回路を有する第二金属層4を形成する方法としては、上述した各方法により金属層を接合した後、エッチングすることにより回路パターンを形成してもよいし、回路パターンに対応する開口部を有するマスク材を第一セラミックス基材2の第一金属層1とは反対側の面上に配置した状態で、溶射法によって第二金属層4を形成してもよい。なお、第二金属層4の表面に無電解Niめっき等を施してもよい。
【0038】
第五工程は、上記第四工程で得られた第四積層体における第二セラミックス基材3の第一金属層1とは反対側の面上に、第三金属層5を形成する工程である。これにより、多層回路基板100を得ることができる。
【0039】
セラミックス基材と金属層とを接合する方法としては、上記第四工程で述べた方法と同様の方法を適用することができ、ここでは重複する説明を省略する。
【0040】
なお、上記第四工程及び第五工程に関しては、必ずしも第四工程を経た後に第五工程を経る必要はなく、例えば、第五工程を経た後に第四工程を経てもよく、第四工程及び第五工程を実質的に同時に経てもよい。
【0041】
図2はパワーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
図2に示すように、パワーモジュール200は、ベース板20と、ベース板20上に第一の半田21を介して接合された、上述した多層回路基板10と、多層回路基板10上に第二の半田22を介して接合された半導体素子23とを備えている。
【0042】
ベース板20は、第一の半田21を介して多層回路基板10における第三金属層5に接合されている。半導体素子23は、第二の半田22を介して第二金属層4の所定の部分に接合されているとともに、アルミワイヤ(アルミ線)等の金属ワイヤ24で第二金属層4の所定の部分に接合されている。なお、
図2に示すパワーモジュール200において、第二金属層4は、電気回路(金属回路)を形成している。第一金属層1及び第三金属層5は、金属回路を形成していてもしていなくともよい。
【0043】
ベース板20上に設けられた上記各構成要素は、例えば一面が開口した中空箱状の樹脂製の筐体25で蓋され、筐体25内に収容されている。ベース板20と筐体25との間の中空部分には、シリコーンゲル等の充填材26が充填されている。第二金属層4の所定部分には、筐体25の外部と電気的な接続が可能なように、筐体25を貫通する電極27が第三の半田28を介して接合されている。
【0044】
ベース板20の縁部には、パワーモジュール200に例えば放熱部品を取り付ける際のネジ止め用の取付け穴20aが形成されている。取付け穴20aの数は、例えば4個以上である。ベース板20の縁部には、取付け穴20aに代えて、ベース板20の側壁が断面U字状となるような取付け溝が形成されていてもよい。
【0045】
パワーモジュール200は、上述した本実施形態に係る多層回路基板100を備えるため、3相モーター等を制御するインバータとして好適に用いられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
第一セラミックス基材として、窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:28mm×24mm×0.32mmt)を用いた。基材の中心付近にレーザー加工にて9点のφ0.3mmのビアホールを0.6mm間隔で形成した。第一金属層としてのCu板(Ag-Cu-TiH2ろう材、サイズ:24mm×20mm×0.3mmt)の一方の面にビアホールを形成した上記第一セラミックス基材を、他方の面にビアホールを形成していない第二セラミックス基材としての窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:28mm×24mm×0.32mmt)を、活性金属法により800℃にて接合した。続いて、Cu粉末(福田金属箔粉工業社製水アトマイズ粉、メジアン径:17μm)を溶射法(300℃、750m/s)によりビアホール内に吹き付け、導体部を形成した。その後、第一セラミックス基材及び第二セラミックス基材の第一金属層とは反対側の面上にそれぞれ第二金属層及び第三金属層としてのCu板(Ag-Cu-TiH2ろう材、サイズ:24mm×20mm×0.3mmt)を活性金属法により800℃にて接合した後、第二金属層に対してエッチングによりCu回路を形成させ、無電解Niめっきを施し、多層回路基板を作製した。
【0048】
[実施例2]
第一セラミックス基材及び第二セラミックス基材を、活性金属法に代えて接着法により接合したこと、並びに、第二金属層及び第三金属層としてのCu板を活性金属法に代えて接着法により接合したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、多層回路基板を作製した。なお、上記接着法は、アクリル系接着剤を用いて室温(25℃)で接合する方法を採用した。
【0049】
[比較例1]
Cu粉末を溶射法によりビアホール内に吹き付ける操作に代えて、ビアホールにろう材(Ag-Cu-TiH2ろう材)を流し込むことで導体部を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、多層回路基板を作製した。
【0050】
[比較例2]
Cu粉末を溶射法によりビアホール内に吹き付ける操作に代えて、ビアホールにAg-Cu-TiH2ろう材及びCuボール(日立金属株式会社製、φ0.25mm)を1個充填して導体部を形成したこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、多層回路基板を作製した。
[多層回路基板の評価]
【0051】
実施例1,2及び比較例1,2で得られた多層回路基板に対し、125℃の環境に30分放置した後に、-40℃の環境に30分放置する操作を1サイクルとして、1000サイクルのヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験後においても、実施例1,2の多層回路基板については金属部材の導通が確認されたが、比較例1,2では一部のサンプルで導通が確認されなかった。
【0052】
表1に、実施例1,2及び比較例1,2で得られた多層回路基板の製造方法(各金属層の接合方法及び導体部の形成方法)、並びにヒートサイクル試験後の電気特性をまとめて示す。なお、表1において、ヒートサイクル試験後の電気特性は、多層回路基板におけるすべての導体部の個数(全数)及び導通が確認されなかった導体部の個数(NG数)をNG数/全数として示す。
【0053】
【符号の説明】
【0054】
1…第一金属層、2…第一セラミックス基材、3…第二セラミックス基材、4…第二金属層、5…第三金属層、6…ビアホール、7…導体部。