(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ギヤモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/00 20060101AFI20230329BHJP
F16D 1/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H02K7/00 A
F16D1/02 300
(21)【出願番号】P 2018168512
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】田村 光拡
(72)【発明者】
【氏名】山本 章
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0186104(US,A1)
【文献】特表2005-529577(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
H02K 7/00
F16D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、減速機と、を有するギヤモータであって、
モータのモータ軸と減速機の入力軸との間に配置される連結部材を有し、
前記モータ軸および前記入力軸の少なくとも一方の軸は、軸方向に貫通する第1中空部を有し、
前記モータ軸および前記入力軸の他方の軸と前記連結部材とは、前記第1中空部に露出する第1ボルトにより連結され
、
前記モータ軸および前記入力軸の一方の軸と前記連結部材とは、軸方向において前記第1ボルトと反対方向に挿入される第2ボルトにより連結されることを特徴とするギヤモータ。
【請求項2】
前記連結部材は、前記モータ軸および前記入力軸と別部材とされ、前記一方の軸とインロー嵌合するインロー部を有し、前記他方の軸とはインロー嵌合されないことを特徴とする請求項1に記載のギヤモータ。
【請求項3】
前記連結部材は、前記一方の軸と一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載のギヤモータ。
【請求項4】
前記連結部材は、前記一方の軸の前記第1中空部に連通する第2中空部を有し、前記他方の軸は、前記連結部材の前記第2中空部に連通する第3中空部を有することを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載のギヤモータ。
【請求項5】
前記連結部材は、前記モータ軸および前記入力軸と別部材とされ、前記連結部材と前記一方の軸を連結する連結具は、前記モータ軸の軸方向から見て前記他方の軸と重なっていることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載のギヤモータ。
【請求項6】
前記連結部材は、前記他方の軸を支持する軸受の軸方向移動を規制することを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載のギヤモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤモータに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1において、駆動源から入力される回転を減速して相手機械に伝達する減速装置を開示した。特許文献1に記載の減速装置はモータ側のモータ軸を軸方向から連結可能に構成された入力軸を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、減速装置の入力軸がスプラインによりモータ軸に連結されることが記載されている。しかし、スプラインによる連結部を隙間嵌めにすると、一方の軸と他方の軸との間の隙間によってガタを生じ、減速装置の回転精度が低下するおそれがある。逆にスプラインによる連結部を締り嵌めにすると、一方の軸を他方の軸に圧入する際、これらの軸を支持する軸受に余計な力が加わりその軸受を損傷するおそれがある。したがって、これらの軸を連結することは必ずしも容易であるとはいえない。これらから、本発明者らは、減速機の入力軸とモータ軸との連結を容易にする観点で、従来技術には改良の余地があることを認識した。
【0005】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、減速機の入力軸とモータ軸とを容易に連結できるギヤモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のギヤモータは、モータと、減速機と、を有するギヤモータであって、モータのモータ軸と減速機の入力軸との間に配置される連結部材を有する。モータ軸および入力軸の少なくとも一方の軸は、軸方向に貫通する第1中空部を有する。モータ軸および入力軸の他方の軸と連結部材とは、第1中空部に露出するボルトにより連結される。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、減速機の入力軸とモータ軸とを容易に連結できるギヤモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態のギヤモータを示す側面断面図である。
【
図2】
図1の連結部材の周辺を拡大して示す側面断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態のギヤモータの連結部材の周辺を示す側面断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態のギヤモータの連結部材の周辺を示す側面断面図である。
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態、比較例および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0011】
[第1実施形態]
図1を参照して、第1実施形態に係るギヤモータ100の構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のギヤモータ100を示す側面断面図である。ギヤモータ100は、減速機10に回転を入力するモータ50と、入力された回転を減速して出力する減速機10と、連結部材70と、を有する。モータ50は、減速機10へ回転を出力するためのモータ軸60を有する。減速機10は、モータ50からの回転が入力される入力軸12を有する。連結部材70は、モータ50のモータ軸60と減速機10の入力軸12との間に配置される。
【0012】
以下、モータ軸60の中心軸線Laに沿った方向を「軸方向」といい、中心軸線Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸方向の一方側(図中右側)を入力側といい、他方側(図中左側)を反入力側という。
【0013】
図2は、連結部材70の周辺を拡大して示す側面断面図である。モータ軸60および入力軸12の少なくとも一方の軸は、軸方向に貫通する第1中空部を有する。連結部材70は、一方の軸の第1中空部に連通する第2中空部を有し、他方の軸は、連結部材70の第2中空部に連通する第3中空部を有する。第1実施形態では、入力軸12を一方の軸として例示し、モータ軸60を他方の軸として例示している。本実施形態では、入力軸12は、軸方向に貫通する入力軸中空部12bを有し、モータ軸60は、軸方向に貫通するモータ軸中空部60bを有し、連結部材70は、軸方向に貫通する連結中空部70sを有する。第1実施形態では、入力軸中空部12bを第1中空部として例示し、モータ軸中空部60bを第3中空部として例示し、連結中空部70sを第2中空部として例示している。
【0014】
図1、
図2に示すように、連結部材70は、入力軸12(一方の軸)の入力軸中空部12b(第1中空部)に連通する連結中空部70s(第2中空部)を有し、モータ軸60(他方の軸)は、連結部材70の連結中空部70s(第2中空部)に連通するモータ軸中空部60b(第3中空部)を有する。この場合、各中空部が、軸方向に連通しているので、各中空部に図示しない配線等を通すことができる。
【0015】
(連結部材)
連結部材70を説明する。連結部材70は、モータ軸60と入力軸12との間に配置され、これらを連結するためのものである。本実施形態の連結部材70は、外周面70aと、内周面70bとを有する全体として円形リング状の部材である。
【0016】
連結部材70の入力側の端部には、第1端面70dが設けられる。連結部材70の反入力側の端部には、第2端面70eが設けられる。第1端面70dは、モータ軸60の反入力側の端面60dに当接する。第2端面70eは、入力軸12の入力側の端面12eに当接する。
【0017】
連結部材70には、モータ軸60と連結するための第1連結部70fが設けられる。本実施形態の第1連結部70fは、ボルト90を挿通するためのボルト孔である。第1連結部70fは、ボルト90の軸部90hを収容する小径部70hと、ボルト90の頭部90jを収容する大径部70jと、を有する。
図2の例では、小径部70hは入力側の第1端面70dに開口し、大径部70jは反入力側の第2端面70e(後述する凸部70kの端面)に開口する。小径部70hと大径部70jとは共通の軸線を有し、互いに連通している。
【0018】
連結部材70には、入力軸12と連結するための第2連結部70gが設けられる。本実施形態の第2連結部70gは、ボルト92を挿通するためのボルト孔であり、第1連結部70fより径方向外側に配置される。第2連結部70gは、ボルト92の軸部92mを収容する小径部70mと、ボルト92の頭部92nを収容する大径部70nと、を有する。小径部70mと大径部70nとは共通の軸線を有し、互いに連通している。
図2の例では、小径部70mは、反入力側の第2端面70eに開口し、大径部70nは入力側の第1端面70dに開口する。
【0019】
モータ軸60および入力軸12の他方の軸と連結部材70とは、第1中空部に露出するボルト90により連結される。したがって、
図1に示すように、モータ軸60(他方の軸)と連結部材70とは、入力軸中空部12bに露出するボルト90により連結される。ここで、「ボルト90が入力軸中空部12bに露出する」とは、入力軸中空部12bの(反入力側の)開口部からボルト90を視認できるということであり、ボルト90が入力軸中空部12bの内側に配置される必要はない。
【0020】
この場合、モータ軸と入力軸を圧入によって連結する場合に比べて、これらの軸を支持する軸受にかかる力を小さくできるので、その軸受を損傷する可能性を低くできる。ボルト90の頭部90jが入力軸12の中空部12bに露出しているので、中空部12bからねじ締め工具を用いて、ボルト90を容易に回転させうる。このため、モータ軸に入力軸を容易に連結できる。
【0021】
本実施形態の連結部材70は、モータ軸60および入力軸12とは別部材とされ、入力軸12(一方の軸)とインロー嵌合するインロー部70cを有する。インロー部70cは、第2端面70eから反入力側に突出する凸部70kの外周面に設けられる。この場合、モータ軸と入力軸を隙間嵌めで連結する場合に比べて、隙間によるガタが生じにくく、減速装置の回転精度の低下を抑制できる。
【0022】
連結部材70は、モータ軸60(他方の軸)とインロー嵌合されてもよいが、本実施形態の連結部材70は、モータ軸60(他方の軸)とはインロー嵌合されない。この場合、入力軸12(一方の軸)とモータ軸60(他方の軸)との軸芯を調整可能な範囲を大きくできる。
【0023】
連結部材70は、モータ軸60および入力軸12とは別部材とされ、連結部材70と一方の軸を連結するボルトの頭部は、他方の軸と重なっている。本実施形態の連結部材70では、連結部材70と入力軸12(一方の軸)を連結するボルト92の頭部92nは、モータ軸60の軸方向から見てモータ軸60(他方の軸)と重なっている。この場合、軸方向から見て頭部92nがこの軸と重なっておらず半径方向外側に位置する場合に比べて連結部材70を小径化できる。また、モータ軸60により、ボルト92の抜け止めができる。
【0024】
図2の例では、連結部材70とモータ軸60(他方の軸)を連結するボルト90の頭部90jは、モータ軸60の軸方向から見て入力軸12(一方の軸)とは重なっておらず、入力軸中空部12bと重なっている。この場合、この中空部を通じてネジ締め工具によって頭部92nを回転できる。
【0025】
連結部材70は、他方の軸を支持する軸受の軸方向移動を規制する。本実施形態のボルト92の頭部92nは、軸方向から見てモータ軸受62と重なっている。このため、連結部材70は、モータ軸60(他方の軸)を支持するモータ軸受62の軸方向移動を規制する。この場合、モータ軸受62の軸方向移動を規制するための特別な機構を省略でき、あるいは、この機構を簡略化できる。
【0026】
連結部材70によって入力軸12とモータ軸60とを連結する工程を説明する。入力軸12の入力側の端面12eには、複数の締結孔12tが周方向に所定の間隔で設けられる。締結孔12tは、第2連結部70gに対応する位置に設けられるタップ孔である。連結部材70は、ボルト92が、第2連結部70gを貫通し、締結孔12tに螺合されることによって、入力軸12に連結される。このとき、連結部材70の入力側は開放され障害物がないので、ねじ締め工具を用いて、ボルト92を容易に回転させることができる。ここで、入力軸12と連結部材70を連結する連結具は、モータ軸60により抜け止めされるため、ボルトに限定されるものではなく、ピン等の各種連結具を使用できる。入力軸12に連結された状態の連結部材70は、以下のようにモータ軸60に対して連結される。
【0027】
モータ軸60の反入力側の端面60dには、複数の締結孔60tが周方向に所定の間隔で設けられる。締結孔60tは、第1連結部70fに対応する位置に設けられるタップ孔である。連結部材70は、ボルト90が、第1連結部70fを貫通し、締結孔60tに螺合されることによって、モータ軸60に連結される。このとき、ボルト90の頭部90jが入力軸12の中空部12bに露出しているので、中空部12bからねじ締め工具を用いて、ボルト90を回転させることができる。このように、先にモータ軸60および入力軸12の一方の軸に連結部材70を固定し、一方の軸に固定された状態の連結部材70を他方の軸に固定することにより、モータ軸60と入力軸12とを容易に連結することができる。
以下、モータ50および減速機10の他の構成を説明する。
【0028】
(モータ)
図1、
図2を参照して、モータ50をさらに説明する。モータ50としては、減速機10に回転を出力可能なものであれば制限はなく、様々な原理に基づくモータを用いうる。本実施形態のモータ50は、ブラシレスDCモータ(ACサーボモータと称されることもある)である。モータ50は、モータ軸60と、マグネット56と、ステータコア58と、電機子コイル58cと、第1モータハウジング52と、第2モータハウジング54と、を含む。マグネット56は、モータ軸60の外周に固定される環状の磁石である。マグネット56は、その外周面に磁極が設けられ、回転子を構成する。ステータコア58は、マグネット56の外周面と磁気的空隙を介して径方向に対向する複数のティースを有する。電機子コイル58cは、ステータコア58の複数のティースに巻装される。
【0029】
第1モータハウジング52は、ステータコア58の反入力側の一部を環囲する環状の部材である。第2モータハウジング54は、ステータコア58の入力側の一部を環囲する環状の部材である。モータハウジング52、54は、その中央にモータ軸60を貫通させるためのモータ中空部52b、54bを有する。モータハウジング52、54とモータ軸60との間には、それぞれモータ軸受62が設けられる。本実施形態のモータ軸60は、軸方向に離間された2つのモータ軸受62によって、回転可能に支持されている。
【0030】
モータハウジング52、54は、ステータコア58の外周を支持する筒状の部分を有する。ステータコア58は、モータハウジング52、54の内周に、例えば接着によって固定される。第1モータハウジング52は、反入力側に開く傘状のカップ状部52cを有する。カップ状部52cは、減速機10のケーシング22の入力側の外周面22hを環囲し、当該外周面22hとインロー嵌合する嵌合円筒部52dを有する。
【0031】
カップ状部52cは、嵌合円筒部52dの反入力側の端部から径方向外側に張出す円板状のつば部52eを有する。つば部52eの反入力側の端面は、平坦に形成され、ケーシング22から径方向外側に突出するフランジ22eの入力側の端面に当接する。つば部52eには軸方向の貫通孔52fが設けられ、フランジ22eには軸方向の貫通孔22fが設けられる。貫通孔22fは複数設けられ、その幾つかは貫通孔52fと互いに連通し、図示しないボルト等によって締結される。
【0032】
第2モータハウジング54は、ステータコア58の入力側を覆う略円形の部材である。
第2モータハウジング54とモータ軸60との間には、オイルシール64が設けられる。
モータハウジング52、54には、それぞれ軸方向に貫通するボルト締結用の貫通孔52g、54gが設けられる。モータハウジング52、54は、貫通孔52g、54gに挿入されたボルト94によって、互いに連結される。ボルト94は、貫通孔52g、54gの一方に螺合されてもよいし、図示しないナットに螺合されてもよい。
図1の例では、ボルト94は、貫通孔54gに形成されたタップに螺合される。
【0033】
モータ50は、図示しない駆動装置から駆動電力が供給されることにより、公知の原理に基づいてモータ軸60に回転駆動力を出力する。モータ50は、連結部材70を介して入力軸12を回転駆動する。
【0034】
(減速機)
図1、
図2を参照して、減速機10をさらに説明する。減速機10としては、入力回転を減速出力可能なものであれば制限はなく、様々な減速機構を用いることができる。本実施形態の減速機10は、内歯歯車と噛み合う外歯歯車を揺動させることで、内歯歯車および外歯歯車の一方の自転を生じさせ、その生じた自転成分を出力部材から被駆動部材に出力する偏心揺動型減速機である。
【0035】
減速機10は、入力軸12と、外歯歯車14と、内歯歯車16と、キャリヤ18、20と、ケーシング22と、内ピン40と、偏心軸受30と、主軸受24、26と、を主に含む。
【0036】
(入力軸)
入力軸12は、モータ50から入力される回転動力によって回転中心線周りに回転させられる。上述したように、入力軸12の入力側の端面には、複数の締結孔12tが設けられる。締結孔12tは、モータ、ギヤモータ、エンジン等の減速機10の前段に設けられる駆動装置との連結に利用するためのタップ孔である。本実施形態では、締結孔12tは、モータ50のモータ軸60と連結されるために利用される。減速機10の他の使用形態においては、締結孔12tは、モータの回転を入力する歯車やプーリを固定するために使用される。
【0037】
減速機10は、入力軸12の回転中心線が中心軸線Laと同軸線上に設けられるセンタークランクタイプである。本実施形態の入力軸12は、外歯歯車14を揺動させるための複数の偏心部12aを有する偏心体軸である。このような構成の入力軸12は、クランク軸と称されることがある。偏心部12aの軸芯は、入力軸12の回転中心線に対して偏心している。本実施形態では2個の偏心部12aが設けられ、隣り合う偏心部12aの偏心位相は180°ずれている。
【0038】
入力軸12の入力側は、入力軸軸受34を介して第2キャリヤ20に支持される。入力軸12の反入力側は、入力軸軸受34を介して第1キャリヤ18に支持されている。つまり、入力軸12は、第1キャリヤ18および第2キャリヤ20に対して回転自在に支持されている。入力軸軸受34は、その構成に特別の制限はないが、この例では、球状の転動体を有する玉軸受けである。入力軸軸受34には、与圧を与えてもよいし、与圧を与えていなくてもよい。
【0039】
(外歯歯車)
外歯歯車14は、複数の偏心部12aのそれぞれに対応して個別に設けられる。外歯歯車14は、偏心軸受30を介して偏心部12aの外周に揺動可能に組み込まれている。偏心軸受30は、公知の軸受機構であってもよい。本実施形態の偏心軸受30は、ころ軸受である。外歯歯車14は、それぞれ揺動しながら内歯歯車16に内接噛合する。外歯歯車14の外周には波形の歯が形成されており、この歯が内歯歯車16と接触しつつ移動することで、中心軸を法線とする面内で外歯歯車14が揺動できるようになっている。
【0040】
(内ピン)
外歯歯車14には、その軸心からオフセットされた位置に複数(例えば9つ)の内ピン孔36が形成される。内ピン孔36には内ピン40が貫通している。内ピン40の外周には、円筒状のスリーブ40cが配置されている。スリーブ40cは、内ピン孔36との摺動を円滑にするための摺動促進体として機能する。スリーブ40cの外径は、内ピン孔36の内径よりも偏心量の2倍相当分小さくなっている。スリーブ40cと内ピン40の間には外歯歯車14の揺動成分を吸収するための遊びとなる隙間が設けられるとともに、内ピン40は、スリーブ40cを介して内ピン孔36の一部と常に接触している。内ピン40は、外歯歯車14の自転成分と同期して入力軸12の軸心周りを公転し、第1、第2キャリヤ18、20を入力軸12の軸心周りに回転させる。内ピン40は、第1、第2キャリヤ18、20と外歯歯車14との間の動力の伝達に寄与するピン状部材を構成している。なお、内ピン40の外周にスリーブ40cを設けることは必須ではない。
【0041】
(内歯歯車)
内歯歯車16は、外歯歯車14と噛み合う。本実施形態の内歯歯車16は、ケーシング22に一体化された内歯歯車本体16aと、当該内歯歯車本体16aに周方向に間隔を空けて複数形成された各ピン溝に配置された外ピン17と、を有している。外ピン17は、内歯歯車本体16aに回転自在に支持される円柱状のピン部材である。外ピン17は、内歯歯車16の内歯を構成している。内歯歯車16の外ピン17の数(内歯の数)は、外歯歯車14の外歯数よりもわずかだけ(この例では1だけ)多い。
【0042】
(キャリヤ)
キャリヤ18、20は、外歯歯車14の軸方向側部に配置される。キャリヤ18、20は全体として円形形状をなす。第1キャリヤ18は、外歯歯車14の反入力側の側部に配置され、第2キャリヤ20は、外歯歯車14の入力側の側部に配置される。第1キャリヤ18は、第1主軸受24を介してケーシング22に回転自在に支持される。第2キャリヤ20は、第2主軸受26を介してケーシング22に回転自在に支持される。第1キャリヤ18は、入力軸軸受34を介して入力軸12の反入力側を回転自在に支持する。第2キャリヤ20は、入力軸軸受34を介して入力軸12の入力側を回転自在に支持する。
【0043】
キャリヤ18、20は、内ピン40を介して互いに連結される。本実施形態の内ピン40は、第1キャリヤ18の入力側から第2キャリヤ20に向かって軸方向に延在する。内ピン40は、第1キャリヤ18と一体に形成される。内ピン40の入力側の端部には、反入力側に向かってタップ孔40dが穿設される。第2キャリヤ20には、タップ孔40dと対応する位置に軸方向に貫通するタップ孔20dが穿設される。内ピン40を第2キャリヤ20に当接させた状態で、ボルト96をタップ孔20dとタップ孔40dとに螺合させることによって、キャリヤ18、20が連結される。
【0044】
第1キャリヤ18は、被駆動部材46に回転動力を出力する出力部材として機能する。ケーシング22は、ギヤモータ100を支持するための外部部材に固定される被固定部材として機能する。本実施形態では、第1キャリヤ18の反入力側の端面に、入力側に向かってタップ孔18cが穿設されており、図示しないボルトを用いて被駆動部材46を連結することができる。
【0045】
(主軸受)
第1、第2主軸受24、26は、公知の種々の軸受機構であってもよい。本実施形態の主軸受24、26は、アンギュラ玉軸受である。主軸受24、26は、それぞれ転動体42および外輪44を有しており、内輪は有していない。主軸受24、26の内側の転動面は第1、第2キャリヤ18、20に形成されている。主軸受24、26に予圧を加えることは必須ではないが、本実施形態では予圧を加える。第2主軸受26の反入力側にワッシャ44sが隣接して配置される。
【0046】
(ケーシング)
ケーシング22は、減速機10の外殻をなす部材である。本実施形態のケーシング22は、全体として中空の筒状をなし、その内周部には内歯歯車16が設けられる。
図1の例では、ケーシング22の外周部にフランジ22eが設けられる。フランジ22eは、ケーシング22の外周面から径方向外側に突出する。フランジ22eの入力側の端面は、平坦に形成され、モータハウジング52のつば部52eの反入力側の端面に当接する。フランジ22eには、つば部52eの貫通孔52fと連通する貫通孔22fが設けられる。貫通孔22fは、複数設けられてもよい。
【0047】
(オイルシール)
減速機10の隙間には、必要に応じてオイルシール48が設けられる。本実施形態では、入力軸12と、キャリヤ18、20との間、ケーシング22と、キャリヤ18、20との間にそれぞれオイルシール48が設けられている。
【0048】
以上のように構成された減速機10の動作を説明する。モータ50から入力軸12に回転動力が伝達されると、入力軸12の偏心部12aが入力軸12を通る回転中心線周りに回転し、その偏心部12aにより外歯歯車14が揺動する。このとき、外歯歯車14は、自らの軸芯が入力軸12の回転中心線周りを回転するように揺動する。外歯歯車14が揺動すると、外歯歯車14と内歯歯車16の外ピン17の噛合位置が順次ずれる。この結果、入力軸12が一回転する毎に、外歯歯車14の歯数と内歯歯車16の外ピン17の数との差に相当する分、外歯歯車14および内歯歯車16の一方の自転が発生する。本実施形態においては、外歯歯車14が自転し、第1キャリヤ18から減速回転が出力される。第1キャリヤ18が回転することによって、第1キャリヤ18に連結された被駆動部材46が回転駆動される。
以上が、第1実施形態の説明である。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るギヤモータ100の構成について説明する。第2実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
図3は、第2実施形態のギヤモータ100の連結部材70の周辺を示す側面断面図であり、
図2に対応する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、モータ軸60、入力軸12および連結部材70の形状が相違し、その他の構成は同様である。したがって、重複する説明を省略し、主に相違点を説明する。
【0050】
第2実施形態では、モータ軸60を一方の軸として例示し、入力軸12を他方の軸として例示し、モータ軸中空部60bを第1中空部として例示し、入力軸中空部12bを第3中空部として例示する。
【0051】
また、中空部の半径において、第1実施形態では、入力軸中空部12bは、モータ軸中空部60bより大きい例を示したが、第2実施形態では、モータ軸中空部60bは、入力軸中空部12bより大きい。また、第2実施形態では、凸部70kは第1端面70dから入力側に突出しており、インロー部70cは、モータ軸60のモータ軸中空部60bとインロー嵌合する。また、第2実施形態の第1連結部70fは、第2連結部70gより径方向外側に配置される。このように、本発明は、モータ軸60と入力軸12とのいずれを「一方の軸」とした場合でも構成可能であり、モータ50のモータ軸60と減速機10の入力軸12とを連結できる。
【0052】
以上の構成を有する第2実施形態においても、第1実施形態と同様に動作し、第1実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。
【0053】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るギヤモータ100の構成について説明する。第3実施形態の図面および説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
図4は、第3実施形態のギヤモータ100の連結部材70の周辺を示す側面断面図であり、
図2に対応する。第3実施形態は、第1実施形態に対して、連結部材70の形状が相違し、その他の構成は同様である。したがって、重複する説明を省略し、主に相違点を説明する。
【0054】
第1実施形態の説明では、モータ軸60または入力軸12にインロー嵌合するインロー部が連結部材70の反入力側に設けられる例を示したが、このようなインロー部は、連結部材70の入力側に設けられてもよいし、連結部材70の入力側および反入力側のそれぞれに設けられてもよい。第3実施形態の連結部材70は、その入力側および反入力側それぞれに、モータ軸60または入力軸12にインロー嵌合するインロー部が設けられる。
【0055】
図4に示すように、第3実施形態の連結部材70には、入力側の第1端面70dから入力側に突出する凸部70pが設けられる。この例の凸部70pは、第1端面70dの最内周部分に設けられる。凸部70pの外周面に、モータ軸60(他方の軸)の内周面60fとインロー嵌合するインロー部70qが設けられている。本実施形態の連結部材70は、入力軸12に加えてモータ軸60にもインロー嵌合する。このため、連結部材70によって入力軸12とモータ軸60の軸芯を精度よく揃えることができる。
【0056】
なお、この構成では、減速機10のケーシング22の外周面22hと、カップ状部52cの嵌合円筒部52dとの間の嵌合隙間を、製造バラツキを許容できる程度に大きくすることが望ましい。
【0057】
以上の構成を有する第3実施形態においても、第1実施形態と同様に動作し、第1実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した各実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。各実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の各実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0059】
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、各実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。各実施形態と重複する説明を適宜省略し、各実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0060】
第1実施形態の説明では、連結部材70が、モータ軸60および入力軸12とは別部材とされる例を示したが、本発明はこれに限定されない。連結部材70は、モータ軸60および入力軸12のいずれかと一体的に形成されてもよい。この場合、連結部材70を別に形成するための製造工数や、連結部材70を連結するための製造工数を削減できる。また、連結部の機械的強度を向上できる。一例として、連結部材70と入力軸12とは、切削加工等によって一体形成されてもよい。
【0061】
第1実施形態の説明では、連結部材70が、入力軸12(一方の軸)にボルト92によって連結される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、連結部材70は、入力軸12に溶接等によって連結されてもよい。
【0062】
第1実施形態の説明では、モータ軸60、入力軸12および連結部材70がそれぞれ互いに連通する中空部を有する例を示したが、本発明はこれに限定されない。モータ軸60および入力軸12がそれぞれ中空部を有することは必須ではなく、これらのいずれか(他方の軸)は中空部を有しなくてもよい。連結部材70が中空部を有することは必須ではなく、連結部材70は中空部を有しなくてもよい。
【0063】
第1実施形態の説明では、減速機がいわゆるセンタークランクタイプの偏心揺動型減速機である例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種の減速機構を採用できる。例えば、減速機は、内歯歯車の軸心からオフセットした位置に複数のクランク軸が配置されるいわゆる振り分けタイプの偏心揺動型減速機であってもよい。
【0064】
第1実施形態の説明では、減速機が偏心揺動型減速機である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、減速機は、筒型の外歯歯車を有する撓み噛み合い式減速機(波動減速機と称されることがある)であってもよい。減速機は、カップ型やシルクハット型の撓み噛み合い式減速機であってもよい。
【0065】
第1実施形態の説明では、外歯歯車14を2枚備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。3枚以上の外歯歯車14を備えてもよい。例えば、入力軸には、それぞれ120°ずつ位相がずれた3つの偏心部12mを設け、この3つの偏心部12mに揺動される3枚の外歯歯車14を備えてもよい。また、外歯歯車14は1枚であってもよい。
【0066】
上述の各変形例は上述の実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0067】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0068】
10・・減速機、 12・・入力軸、 14・・外歯歯車、 16・・内歯歯車、 18、20・・キャリヤ、 24、26・・主軸受、 50・・モータ、 52、54・・モータハウジング、 60・・モータ軸、 60b・・モータ軸中空部、 62・・モータ軸受、 70・・連結部材、 70c、70q・・インロー部、 70s・・連結中空部、 90・・ボルト、 90j・・頭部、 92・・ボルト、 92n・・頭部、 100・・ギヤモータ。