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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】椅子の背もたれ
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/40 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
A47C7/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018210906
(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2020058763
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018190577
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】河本 誠太郎
(72)【発明者】
【氏名】春田 大輔
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060672(JP,A)
【文献】特開2016-093473(JP,A)
【文献】特開2000-079038(JP,A)
【文献】特開2006-110001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0289490(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40
A47C 31/02
B68G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に開口した背フレームと、前記背フレームに手前から重なるように配置された縁部が前記背フレームの外周から内周部に向けて巻き込まれたメッシュ状の背受けシート材と、前記背受けシート材の端縁に固定されて前記背フレームの内周部に取付けられた細長い縁部材と、
を有している背もたれであって、
前記縁部材は、前記背フレームの内周面に重なる帯板と、前記帯板から前記背フレームの外周側に突出した係合突起の群とで構成されて、前記係合突起は、ボスの先端に頭部を有する鉤状又は茸状に形成されて
前記縁部材の係合突起は、前記背フレームに後ろ向き開口するように形成された切り開き部に後ろから嵌め込まれており、
かつ、前記背受けシート材は、前記背フレームを後ろから全体的に覆っている、
椅子の背もたれ。
【請求項2】
前記背受けシート材は、前記帯板のうち背フレームと重なっていない内側面に固定されており、かつ、
背受けシート材の端縁を、前記帯板のうち背フレームと重なっている面まで巻き込むことにより、前記縁部材が前記背受けシート材によって視認できない状態に覆われている、
請求項1に記載した椅子の背もたれ。
【請求項3】
前後に開口した背フレームと、前記背フレームに手前から重なるように配置された縁部が前記背フレームの外周から内周部に向けて巻き込まれたメッシュ状の背受けシート材と、前記背受けシート材の左右側部に固定された上下長手の縦長縁部材と、前記背受けシート材の上部と下部とに固定された左右長手の横長縁部材と、
を有する背もたれであって、
前記縦長縁部材は、前記背フレームにおける上下長手のサイドメンバーの内周面に重なる帯板と、前記帯板から前記背フレームのサイドメンバーの内部に向けて突出した係合突起の群とで構成されており、
前記係合突起は、ボスの先端に頭部を有する鉤状又は茸状に形成されて、
前記背フレームのサイドメンバーには、前記係合突起のボスが入り込んで係合する切り開き部が、後ろ向きに開口するように形成され、
前記横長縁部材は、前記背フレームにおける左右長手のアッパメンバー又はロアメンバーの内周面に重なる帯板と、前記帯板から上下方向の外側に突出した板状の係合片の群とで構成されており、
前記係合片に係合穴が形成されて、前記背フレームのアッパメンバーとロアメンバーとには、前記係合片が入り込む嵌合穴と、前記係合片の係合穴に嵌まる係合爪とが形成されている、
子の背もたれ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、椅子の背もたれに関する。より詳しくは、メッシュタイプの背もたれに関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれとして、前後に開口した背フレームにメッシュ材を張った構造のものがあり、通気性や美観に優れていることから、広く普及している。このメッシュタイプの背もたれにおいては、メッシュ材は背フレームにピンと張られている必要がある。そして、メッシュ材は、編地や織地などの可撓性を有する布帛又はその類似物で構成されているため、メッシュ材の縁部を背フレームに直接に強固に固定することは難しい。
【0003】
そこで、メッシュ材の縁部を細長い樹脂製縁部材に逢着等の手段で固定して、縁部材を背フレームに取り付けることが提案されている。その例として特許文献1には、縁部材を、鉤状部を有する断面コ字形に形成する一方、縁部材のうち内周寄りの部位の前面に、縁部材の鉤状部が嵌まる溝を形成することが開示されている。
【0004】
なお、特許文献1では、正確には、背もたれの上部と下部とに配置した縁部材が上記のとおり鉤状部を有する形態になっていて背フレームに連結されて、背もたれの左右側部では、縁部材は帯板状に形成されており、帯板状の縁部材は、縁部材の外周面に形成された溝に嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-110001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
断面コ字形の縁部材を使用している特許文献1では、2つの問題点により、取付けが面倒であると解される。第1の問題点は、溝が縁部材の前面に形成されているため、縁部材は、メッシュ材を押し退けて鉤状部を溝に嵌め込まねばならず、鉤状部を溝に嵌め込む作業が面倒であるということである。メッシュ材は出来るだけピンと張るのが好ましいが、メッシュ材の張りを強くするほど、この面倒さは強く現れることになる。
【0007】
第2の問題点は、縁部材はその全長に亙ってコ字形に形成されているため、鉤状部を溝に嵌め込むこと自体が面倒であるということである。更に述べると、縁部材が全長に亙って同じ断面形状になっていると、鉤状部の全長が溝に嵌まるように位置決めして押し込まれねばならないが、縁部材は数十センチあって位置決めが面倒であり、しかも、縁部材がメッシュ材で隠れていて鉤状部を溝に対して位置合わせすることが面倒であるため、鉤状部を溝に嵌め込むことは厄介な作業になると思料される。
【0008】
また、取付けの面倒さとは別に、特許文献1では、背フレームの下部に取り付けた縁部材は上方に露出しているため、美観が悪化することも懸念される。
【0009】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の背もたれは、
「前後に開口した背フレームと、前記背フレームに手前から重なるように配置された縁部が前記背フレームの外周から内周部に向けて巻き込まれたメッシュ状の背受けシート材と、前記背受けシート材の端縁に固定されて前記背フレームの内周部に取付けられた細長い縁部材と、を有している」
という基本構成になっている。
【0011】
そして、請求項1の発明は、上記基本構成において、
「前記縁部材は、前記背フレームの内周面に重なる帯板と、前記帯板から前記背フレームの外周側に突出した係合突起の群とで構成されて、前記係合突起は、ボスの先端に頭部を有する鉤状又は茸状に形成されて
前記縁部材の係合突起は、前記背フレームに後ろ向き開口するように形成された切り開き部に後ろから嵌め込まれており、
かつ、前記背受けシート材は、前記背フレームを後ろから全体的に覆っている
という構成になっている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記背受けシート材は、前記帯板のうち背フレームと重なっていない内側面に固定されており、かつ、背受けシート材の端縁を、前記帯板のうち背フレームと重なっている面まで巻き込むことにより、前記縁部材が前記背受けシート材によって視認できない状態に覆われている」
という構成になっている。
【0013】
請求項3の発明に係る背もたれは、
「前後に開口した背フレームと、前記背フレームに手前から重なるように配置された縁部が前記背フレームの外周から内周部に向けて巻き込まれたメッシュ状の背受けシート材と、前記背受けシート材の左右側部に固定された上下長手の縦長縁部材と、前記背受けシート材の上部と下部とに固定された左右長手の横長縁部材と、を有する」
という基本構成において、
前記縦長縁部材は、前記背フレームにおける上下長手のサイドメンバーの内周面に重なる帯板と、前記帯板から前記背フレームのサイドメンバーの内部に向けて突出した係合突起の群とで構成されており、
前記係合突起は、ボスの先端に頭部を有する鉤状又は茸状に形成されて、
前記背フレームのサイドメンバーには、前記係合突起のボスが入り込んで係合する切り開き部が、後ろ向きに開口するように形成され、
前記横長縁部材は、前記背フレームにおける左右長手のアッパメンバー又はロアメンバーの内周面に重なる帯板と、前記帯板から上下方向の外側に突出した板状の係合片の群とで構成されており、
前記係合片に係合穴が形成されて、前記背フレームのアッパメンバーとロアメンバーとには、前記係合片が入り込む嵌合穴と、前記係合片の係合穴に嵌まる係合爪とが形成されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、縁部材の係合突起は背フレームの内周面に重なる帯板に設けているため、背受けシート材を背フレームに取り付けるに当たって、背受けシート材を押し退ける必要はない。また、係合突起は帯板の長手方向に断続的に並んでいるため、背フレームの切り開き部に1つずつ嵌め込むことも可能である。これらのことが相まって、背受けシート材の取付けの作業性を向上できる。
【0015】
請求項2の構成では、縁部材はその全体が背受けシート材で覆われていて外部から視認できないため、美観を向上できる。
【0016】
背もたれは、正面視で大まかには四角形になっているため、上下左右の4辺部に縁部材を固定することが普通であり、この場合、各辺の箇所の縁部材を同じ構造に揃えることも可能であるが、背フレームは、左右のサイドメンバーとアッパメンバーとロアメンバーとは構造が相違することがあるため、4辺の縁部材の構造を同じ構造に揃え難い場合がある。また、取付けの容易性の点からも、左右の縁部材の構造と上下の縁部材の構造とを異ならせることが合理的な場合もある。
【0017】
この点、請求項3の構成では、縁部材のアッパメンバー及びロアメンバーの箇所では、係合片と係合爪との組み合わせを採用して、横長縁部材をアッパメンバー及びロアメンバーに対して強固に連結できる一方、サイドメンバーの箇所では、係合突起と切り開き部との組み合わせを採用して、サイドメンバーに対して容易に係合できる。従って、先に横長縁部材をアッパメンバー及びロアメンバーに連結してから、縦長縁部材をサイドメンバーに連結するという手順を採ることにより、背受けシート材を背フレームに対して容易に取り付けることができる。
【0018】
また、背フレームのサイドメンバーの箇所では、上下に並んだ係合突起が切り開き部に嵌合しているため、縦長縁部材の上下位置は正確に規定される。従って、着座した人の押圧力によって縦長縁部材が上下方向にずれることはなくて、背受けシート材を正確に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る椅子を示す図で、(A)は前方斜視図、(B)は側面図、(C)は平面図である。
図2】(A)は正面図、(B)は背面図である。
図3】前方分離斜視図である。
図4】(A)は後方分離斜視図、(B)はアッパサポートの端部の斜視図、(C)はロアサポートの端部の斜視図である。
図5】(A)は背受けシート材を省略した状態での背もたれの後方斜視図、(B)は背受けシート材を省略した状態での背もたれの後方分離斜視図、(C)は縁部材の部分的な正面図、(D)は特に縦長縁部材の部分的な斜視図である。
図6】(A)は上端部のうち左右中間部の縦断側面図で図5(A)のVIA-VIA 視断面図、(B)は図5(A)のVIB-VIB 視断面図、(C)は下端部のうち左右中間部の縦断側面図である。
図7】(A)(B)とも変形例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これの方向は、普通に着座した人から見た状態として特定している(請求項も同様である。)。正面視方向は、着座者と対向した方向である。
【0021】
(1).椅子の概要
本実施形態の椅子は、オフィス等で多用されている回転椅子に適用している。図1,2に示すように、椅子は、主要部材として、座1と背もたれ2、背もたれ2が取り付けられたバックフレーム3、及びキャスタ付き脚装置4を備えている。背もたれ2の後ろにはランバーサポート装置5を配置している。また、椅子には、オプション品として肘掛け装置6とヘッドレスト(或いはショルダーレスト)7とを備えている。
【0022】
例えば図1のとおり、中央部に配置した脚支柱(ガスシリンダ)8にベース体9を固定し、ベース体9に、バックフレーム3がジョイント部材10を介して後傾動自在に連結されている。従って、本実施形態の椅子は、背もたれ2が弾性手段に抗して後傾動するロッキングタイプである。
【0023】
バックフレーム3は、左右中間部に位置した上下長手の背支柱11と、その上端に水平旋回可能に取付けた左右長手のアッパサポート12と、背支柱11の下端に一体に設けた左右のロアサポート13とを有しており、アッパサポート12の左右両端とロアサポート13の先端とは自由端になっている。背支柱11及びアッパサポート12は、合成樹脂製である。なお、背支柱11とロアサポート13とは、後ろからカバーで覆われている。
【0024】
着座した人の押圧力か背もたれ2の右側部又は左側部に偏って作用すると、アッパサポート12が水平旋回して、背もたれ2を捩じれ変形させることができる。従って、使用者の身体の動きに追従して、背もたれ2が捩じれ変形する。背支柱11も、着座した人の押圧力によって捩じれ変形させることが可能である。
【0025】
図1(C)のとおり、アッパサポート12は手前に向けて凹むように(後ろに向けて膨らむように)、平面視で弓なりに反った形態になっており、その左右両端部に、背もたれ2の左右両端部が連結されている。従って、アッパサポート12と背もたれ2との間には大きな空間が空いている。この空間の存在により、背もたれ2の上端部が着座者の押圧力(体圧)によって後ろ向きに伸び変形することが許容されている。
【0026】
他方、例えば図4に明示するように、ロアサポート13は、背面視において上面と下面とが先端に向けて高くなるように湾曲しており、かつ、左右ロアサポート13の下面と背支柱11の下面とで形成される下面(すなわち,バックフレーム3の下面)も、下向きに膨れた湾曲面になっている。従って、バックフレーム3は、全体として錨に似た形態になっている。
【0027】
背もたれ2は、前後に開口した背フレーム15にメッシュ状の背受けシート材16を張った構造になっており、背受けシート材16は、背フレーム15の外周から後ろに巻き込まれている。従って、背フレーム15は背受けシート材16によって外周側及び後ろから覆われている。背フレーム15は合成樹脂製であり、上下に長い左右のサイドメンバー17と、サイドメンバー17の上端に一体に繋がった水平状のアッパメンバー18と、サイドメンバー17の下端に一体に繋がった水平状のロアメンバー19とで構成されており、例えば、椅子に組み付けていない単体の状態で、人が容易に捩じり変形させ得る強度になっている。
【0028】
(2).バックフレームと背もたれとの連結構造
図4(A)や図5(A)(B)に示すように、背もたれ2を構成するアッパメンバー18の左右両端には、下向き鉤状の係止爪20が後ろ向きに突設されている一方、バックフレーム3におけるアッパサポート12の左右両端には、係止爪20が上から嵌まり込む係合枠部21を形成している。
【0029】
また、図4(A)の示すように、背もたれ2を構成するロアメンバー19の左右両端部に、四角錐の頭部分を切断した態様(四周各面が四角形の台錘形)のテーパ状角形突起22を後ろ向きに突設している一方、図4(C)に示すように、ロアサポート13の先端部には、テーパ状角形突起22が入り込むテーパ状角形凹所23を形成し、テーパ状角形凹所23に後ろから挿通したビス(図示せず)によって、テーパ状角形突起22をテーパ状角形凹所23に引き込んでいる。
【0030】
ビスは、ロアサポート13に後ろから挿通しており、図4(A)に示すように、背もたれ2のテーパ状角形突起22には前向きの角形ポケット穴24を形成して、ポケット穴24に、図4(C)に示すナット25を回転不能に嵌め入れている。
【0031】
既述のとおり、アッパサポート12と背もたれ2との間には空間が空いているが、ロアサポート13背もたれ2との間にも、空間が空いている。また、背もたれ2の左右側部の後ろは開放されている。従って、背もたれ2は、着座者の押圧力によって後ろ向きに凹むように容易に弾性変形し得る。これにより、高いフィット性を確保することができる。
【0032】
(3).背フレーム・縦長縁部材
図5に明示するように、背フレーム15を構成する各メンバー17,18,19は、前面板17a,18a,19aと内周板17b,18b,19bとを有して基本的には、L型又はこれに近い断面形状になっており、後面には、前面板17a,18a,19aから後ろ向きに突出した第1リブ26と、各メンバー17,18,19を横切る姿勢の第2リブ27の群とが形成されている。各前面板17a,18a,19aの外周部は、背受けシート材16への応力集中を防止するため、丸みを帯びた形状になっている。
【0033】
サイドメンバー17の前面板17aは、後ろに行くに従って内周側にずれるように傾斜しているが、アッパメンバー18とロアメンバー19との前面板18a、19aは、ほぼ水平姿勢になっている。従って、アッパメンバー18とロアメンバー19とは、前面板18a,19aと内周板17b,18b,19cとがL型に繋がっている。
【0034】
図3に示すように、背受けシート材16は、左右の縦長縁部材28と、上下の横長縁部材29とを介して背フレーム15に取付けられている。縦長縁部材28及び横長縁部材29は、ポリプロピレン等の樹脂を使用した成型品である。背受けシート材16は、編地又は織地であるが、積層品も採用可能である。
【0035】
図5,6に示すように、縦長縁部材28と横長縁部材29とは、背フレーム15の内周板17b,18b,19bに重なる帯板28a,29aを有しており、縦長縁部材28の帯板28aに、背フレーム15の内周板17bに向けて(背フレーム15の外側に向けて)突出した係合突起28bが、上下方向に適宜間隔で並んで多数形成されている。同様に、横長縁部材29の帯板29aには、背フレーム15の内周板18b,19bに向けて(背フレーム15の外側に向けて)突出した係合片29bが、左右方向に適宜間隔で並んで多数形成されている。
【0036】
縦長縁部材28の係合突起28bは、ボス28dの先端にフランジ状の頭部(爪部)28cを有する茸状又は鉤状に形成されている一方、背フレーム15におけるサイドメンバー17の内周板17bには、係合突起28bのボス28dが嵌合する切り開き部30が、背フレーム15の内周方向に向けて開口するように形成している。係合突起28bの頭部28cの前方と上下両側とに張り出しており、切り開き部30は、係合突起28bのボス28dのみが入り込む溝幅になっている。従って、係合突起28bの頭部28cが切り開き部30の全周に引っ掛かるようになっている。
【0037】
図5(A)(B)に示すように、切り開き部30及び係合突起28bは、サイドメンバー17における上下に隣り合った第2リブ27の間に位置している。
【0038】
図6(A)に明示するように、縦長縁部材28の係合突起28bは、帯板28aの後半部に形成されている。そして、背受けシート材16の端縁16aは縦長縁部材28の帯板28aに内周面に縫着等で固定されているが、縦長縁部材28の帯板28aのうち係合突起28bよりも前の部位に、サイドメンバー17の内周板17bとの間に隙間が空くように薄肉化された前縁部28eを形成して、背受けシート材16の端縁16bを延長させて、端縁延長部16bを前縁部28eの外側面に巻き込んでいる。背受けシート材16の端縁延長部16bは前縁部28eに接着してもよいし、縫着等で固定してもよい。
【0039】
背受けシート材16の端縁延長部16bが帯板28aの前縁部28eに巻き込まれているため、縦長縁部材28はその全体が背受けシート材16で覆われており、人が視認することはできない。従って、美観に優れている。
【0040】
(4).横長縁部材
横長縁部材29の係合片29bは、前後の広幅面を有する板状に形成されており、背フレーム15のアッパメンバー18及びロアメンバー19の内周板18b,19bには、横長縁部材29の係合片29bが貫通する嵌合穴31が形成されている。更に、横長縁部材29の係合片29bに角形の係合穴32を形成している一方、アッパメンバー18及びロアメンバー19の前面板18a,19aに、係合穴32と噛み合う係合爪33を形成している。係合穴32と係合爪33とは、弾性に抗して噛み合う係合手段(或いは係合部)を構成している。
【0041】
背フレーム15は、図6の状態で前後方向に相対動する金型を使用した射出形成によって製造されている。そこで、型抜きを容易化するため、嵌合穴31は前面板18a,19aまで開口している(前面板18a,19aに入り込む突起部を有する金型を使用して、嵌合穴31を容易に成型できる。)。アッパメンバー18及びロアメンバー19の前面板18a,19aに係合穴32を形成して、係合片29bに係合爪33を形成することも可能であるが、この場合も、係合穴32は容易に型抜きできる状態で成型できる。
【0042】
横長縁部材29においても、背受けシート材16の横長端縁16aは、帯板29aの内面に縫着等の手段で固定されている。そして、横長縁部材29において、係合片29bは帯板29aの前部に位置しているが、帯板29aには、係合片29bの手前に位置した前縁部29dが存在しており、前縁部29dに背受けシート材16の端縁延長部16bが巻き込まれている。従って、上下の横長縁部材29は、背受けシート材16で覆われていて後ろから視認することはできないし、背受けシート材16の裁断面が露出しないように美麗に処理されている。従って、美観に優れている。
【0043】
図5(A)(B)から理解できるように、横長縁部材29の係合片29bは、アッパメンバー18及びロアメンバー19における隣り合った第2リブ27の間に位置している。従って、嵌合穴31と係合爪33も、隣り合った第2リブ27の間に位置している。
【0044】
アッパメンバー18に連結した横長縁部材29の帯板29aは、アッパメンバー18の内周板18bの後ろに大きくはみ出ている(オーバーハングしている。)。このため、背受けシート材16にテンションが掛かると、図6(B)に白抜き矢印で示すように、オーバーハング部29eが上向きに曲がり変形して、背受けシート材16をアッパメンバー18に対して滑り移動させることができる。
【0045】
図7では、横長縁部材29の係合手段の変形例を示している。これらの例では、係合片29bを帯板29aの前後中間部に配置しており、(A)では、係合片29bに係合穴33を形成している。他方、(B)では、係合片29bに係合爪33を形成して、アッパメンバー18の前面板18aに係合穴33を形成している。
【0046】
(5).まとめ
各縁部材28,29の係合突起28a及び係合片29bは背フレーム15に内周側から嵌め込むものであるため、背受けシート材16を押し退ける作業は不要である。また、係合突起28b及び係合片29bは断続的に並んだ状態で多数形成されているため、1個ずつ背フレーム15に係合させることが可能であり、位置決めの厄介さはない。これらにより、背フレーム15への背受けシート材16の取付けを、容易に行える。
【0047】
背フレーム15への背受けシート材16の取付けの手順は、まず、横長縁部材29をアッパメンバー18及びロアメンバー19に連結し、次いで、縦長縁部材28をサイドメンバー17に取付けるのが合理的である。アッパメンバー18への横長縁部材29の取付けと、ロアメンバー19への横長縁部材29の取付けとは、いずれを先に行ってもよい。
【0048】
そして、背受けシート材16を背フレーム15のサイドメンバー17に取り付けるに当たって、切り開き部30への係合突起28bの嵌め込みは、フックを引っ掛ける容量でワンタッチ的に行うことができるため、背受けシート材16の取付け作業を能率良く行える。また、着座した人の押圧力によって背受けシート材16にテンションが掛かると、係合片29bを切り開き部30に対して強く引っ掛けるように作用するため、使用中に係合突起28bが切り開き部30から外れるようなことはない。係合片29bと係合爪33との関係も同様である。
【0049】
本実施形態の椅子は、既述のとおり、背もたれ2は着座した人の押圧力(体圧)によって捩じれ変形するようになっており、このため、特に背フレーム15のアッパメンバー18とサイドメンバー17とに、曲げ力や捩じり力が作用しやすいが、実施形態のように、隣り合った第2リブ27の間に係合突起28b及び係合片29bを配置すると、背フレーム15が捩じれ変形する構成であっても、縁部材28,29を、サイドメンバー17及びアッパメンバー18にしっかりと連結された状態に保持できる利点がある。
【0050】
また、上部の横長縁部材29に、アッパメンバー18から後ろに張り出したオーバーハング部29eを形成しているため、背受けシート材16をアッパメンバー18に対して滑り移動させることができるが、背受けシート材16とアッパメンバー18とが相対的に滑り移動することにより、背もたれ2大きくねじれ変形することが許容されている。
【0051】
本願発明は、図示した実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、背フレームを構成する各メンバーは、後ろ向きに開口したコ字形のようなチャンネル状に形成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明は、椅子の背もたれに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0053】
2 背もたれ
3 バックフレーム
11 背支柱
12 アッパサポート
13 ロアサポート
15 背フレーム
16 背受けシート材
16a 端縁
16b 端縁延長部
17 サイドメンバー
18 アッパメンバー
19 ロアメンバー
17a,18a,19a 前面板
17b,18b,19b 内周板
28 縦長縁部材
28 縦長縁部材
28c 頭部(爪部)
28e 前縁部
28a 帯板
28b 係合突起
29 横長縁部材
29a 帯板
29b 係合片
30 切り開き部
31 嵌合穴
32 係合穴
33 係合爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7