(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
H02K 19/26 20060101AFI20230329BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20230329BHJP
F03D 13/20 20160101ALI20230329BHJP
F03D 7/04 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H02K19/26 A
F03D80/00
F03D13/20
F03D7/04 H
(21)【出願番号】P 2018219627
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100146950
【氏名又は名称】南 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】松永 康寛
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116305(JP,A)
【文献】実開平03-038612(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0186112(US,A1)
【文献】特開2009-170920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0262023(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0147201(US,A1)
【文献】国際公開第2015/019478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 19/26
H02P 9/00
H02K 21/24
F03D 80/00
F03D 13/20
F03D 7/04
H01F 30/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の翼と、
前記複数の翼と共に回転し、発電機の回転子を回転させる回転部と、
前記発電機の固定子を含む本体部と、
を備え、
前記固定子が、交流電力を出力するメインコイルを含み、当該メインコイルから出力される交流電力の一部を前記本体部から前記回転部に非接触で伝送する非接触伝送部を有する、風力発電装置において、
前記非接触伝送部が、前記本体部に取り付けられた1次コイルと、前記回転部に取り付けられた2次コイルとを有し、前記メインコイルが出力する交流電力が前記1次コイルに入力され、電磁誘導により前記1次コイルから前記2次コイルに電力が伝送され、
前記発電機がアキシャルギャップ型であり、
前記回転部が風の流れと略垂直である垂直軸を中心として回転し、
前記本体部が前記垂直軸と同軸である静止した支柱と前記垂直軸が中心となるように前記垂直軸と直角に当該支柱に固定された所定の厚さの円盤を有し、
前記メインコイルが複数のコイルで構成されており、当該メインコイルを構成する各コイルが当該円盤に前記垂直軸を中心として円周状に配置されており、
前記回転部が、前記支柱と前記円盤を収容する空洞を有しており、当該空洞において前記円盤の一方の主面と他方の主面にそれぞれ対向する面が前記回転子の面であり、当該回転子の面の両方に前記メインコイルを構成する各コイルを貫く磁束を生じる磁石がそれぞれ配置されており、
前記円盤の一方の主面と他方の主面のいずれか一方または両方に、前記垂直軸を中心として同心円状に巻回された前記1次コイルが前記複数のメインコイルよりも半径方向内側に配置されており、前記各回転子の面において前記1次コイルに対向する位置に同心円状に巻回された前記2次コイルが配置されている
、風力発電装置。
【請求項2】
前記メインコイルが、3相交流電圧を3本の出力線により出力し、
前記2次コイルが、6相交流電圧を6本の出力線により出力し、
前記1次コイルと前記2次コイルが、前記3相交流電圧を、前記メインコイルの3本の出力線間における3つの線間電圧とそれぞれ同じ位相の3つの線間電圧、および当該3つの線間電圧に対してそれぞれ位相が30度進んだ、または位相が30度遅れた3つの線間電圧から成る前記6相交流電圧に変換し、
前記2次コイルの6本の出力線により出力される6相交流電圧を直流電圧に整流する6相整流回路を有する、
請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
複数の翼と、
前記複数の翼と共に回転し、発電機の回転子を回転させる回転部と、
前記発電機の固定子を含む本体部と、
を備え、
前記固定子が、交流電力を出力するメインコイルを含み、当該メインコイルから出力される交流電力の一部を前記本体部から前記回転部に非接触で伝送する非接触伝送部を有し、風力発電装置において、
前記本体部が、前記メインコイルが発生する交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路によって整流された直流電圧を高周波の交流電圧に変換するスイッチング素子を含む高周波スイッチング回路とを有し、
前記非接触伝送部が、前記本体部に取り付けられた1次コイルと、前記回転部に取り付けられた2次コイルとを有し、前記高周波スイッチング回路によって変換された高周波の交流電圧が前記1次コイルに入力され、電磁誘導により前記1次コイルから前記2次コイルに電力が伝送され、
前記回転部が、前記2次コイルから出力される高周波の交流電圧を平滑化し、直流電圧に変換するコンデンサを有し、
前記発電機がアキシャルギャップ型であり、
前記回転部が、風の流れと略垂直である垂直軸を中心として回転し、
前記本体部が前記垂直軸と同軸である静止した支柱と前記垂直軸が中心となるように前記垂直軸と直角に当該支柱に固定された所定の厚さの円盤とを有し、
前記メインコイルが複数のコイルで構成されており、当該メインコイルを構成する各コイルが当該円盤に前記垂直軸を中心として円周状に配置されており、
前記回転部が、前記支柱と前記円盤を収容する空洞を有しており、当該空洞において前記円盤の一方の主面と他方の主面にそれぞれ対向する面が前記回転子の面であり、当該回転子の面の両方に前記メインコイルを構成する各コイルを貫く磁束を生じる磁石がそれぞれ配置されており、
前記円盤の一方の主面と他方の主面のいずれか一方または両方に、前記垂直軸を中心として同心円状に巻回された前記1 次コイルが前記複数のメインコイルよりも半径方向内側に配置されており、前記各回転子の面において前記1 次コイルに対向する位置に同心円状に巻回された前記2次コイルが配置されている
、風力発電装置。
【請求項4】
前記回転部に配置されており、前記メインコイルから出力される交流電力の一部によって動作し、前記各翼の翼角度を変更する翼角度変更部を備える
請求項1~3に記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記翼角度変更部が、前記メインコイルから出力される交流電力の電圧に応じて前記各翼の翼角度を制御する
請求項4に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記固定子が、前記メインコイルを含み、
前記翼角度変更部が、前記非接触伝送部によって前記本体部から前記回転部に伝送された交流電力の電圧に応じて前記各翼の翼角度を制御する
請求項4または5に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、翼と共に回転する回転部で電力を使用する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アームによって保持される複数の直線翼で構成される垂直型ブレードであって、アームに対する各直線翼の相対角度をそれぞれ独立して回動させることができる回動手段を有する垂直型ブレードを備える垂直型風力発電システムが記載されている。この垂直型風力発電システムは、各直線翼の相対角度を風速に応じて調整することにより垂直型ブレードの回転数を制御することができる。回動手段は、回動軸部、ステッピングモータ、DCモータなどの駆動源、ギヤ、カップリング、シャフトなどから構成される動力伝達部、ベアリングなどを用いた軸支部、駆動源に電力を供給する電池などの電力源より構成される。
そして、特許文献1には、電力源がアームに格納されている構成である場合、垂直型ブレードの回転が停止しているときのみ、垂直型ブレードのシャフトユニット保持部の固定部分と回転部分における接触給電または非接触給電により、電力源へ電力が供給されること、および非接触給電の一例として、送電側コイルと受電側コイルを用い、電力を無線伝送する構成が記載されている。また、太陽光パネルをアームの表面に張り、太陽光パネルから電力源に電力を供給する構成でもよいと記載されている。
【0003】
特許文献2には、タワーの上部に設けられ、タワーの軸方向に沿った方向を回転軸として風向きに応じて回転するナセルと、ナセルに搭載された発電機であってナセルに回転可能に支持された風車により発電する発電機と、ナセルからタワーの下部に設けられた装置に電力を伝送する非接触式電力伝送部とを有する風力発電装置が記載されている。非接触式電力伝送部は、ナセルに固定された基板に設けられた1次コイルと、タワーに固定された基板に設けられた2次コイルとを有する。1次コイルと2次コイルは対向しており、1次コイルに発電機から電力が供給される。この非接触式電力伝送部は、1次コイルが2次コイルと磁界共鳴して、1次コイルに供給された電力を2次コイルに伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-31920号公報
【文献】国際公開2018025420号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
風力発電装置は、風力により発電する。しかし、特許文献1に記載の垂直型風力発電システムでは、垂直型ブレードの回転が停止しているときのみ、すなわち、風力により発電していないときに、シャフトユニット保持部の固定部分が取り付けられた本体部から垂直型ブレードのアームに格納された電力源へ電力を供給する。このため、この垂直型風力発電システムでは、風力により発電された電力を発電と同時に電力源へ供給することができない。
また、特許文献2に記載の風力発電装置では、ナセル(本体部)からタワーに電力を非接触で伝送するが、風車(回転部)は電力を使用しない。このため、ナセルから風車に電力を伝送する必要はない。
【0006】
本発明の目的は、風力により発電された電力を発電と同時に回転部と本体部との間で非接触で伝送することができ、風力により発電された電力の一部を翼と共に回転する回転部で使用することができる風力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の風力発電装置は、
複数の翼と、
前記複数の翼と共に回転し、発電機の回転子を回転させる回転部と、
前記発電機の固定子を含む本体部と、
を備え、
前記固定子が、交流電力を出力するメインコイルを含み、当該メインコイルから出力される交流電力の一部を前記本体部から前記回転部に非接触で伝送する非接触伝送部を有する、風力発電装置において、
前記非接触伝送部が、前記本体部に取り付けられた1次コイルと、前記回転部に取り付けられた2次コイルとを有し、前記メインコイルが出力する交流電力が前記1次コイルに入力され、電磁誘導により前記1次コイルから前記2次コイルに電力が伝送され、
前記発電機がアキシャルギャップ型であり、
前記回転部が風の流れと略垂直である垂直軸を中心として回転し、
前記本体部が前記垂直軸と同軸である静止した支柱と前記垂直軸が中心となるように前記垂直軸と直角に当該支柱に固定された所定の厚さの円盤を有し、
前記メインコイルが複数のコイルで構成されており、当該メインコイルを構成する各コイルが当該円盤に前記垂直軸を中心として円周状に配置されており、
前記回転部が、前記支柱と前記円盤を収容する空洞を有しており、当該空洞において前記円盤の一方の主面と他方の主面にそれぞれ対向する面が前記回転子の面であり、当該回転子の面の両方に前記メインコイルを構成する各コイルを貫く磁束を生じる磁石がそれぞれ配置されており、
前記円盤の一方の主面と他方の主面のいずれか一方または両方に、前記垂直軸を中心として同心円状に巻回された前記1次コイルが前記複数のメインコイルよりも半径方向内側に配置されており、前記各回転子の面において前記1次コイルに対向する位置に同心円状に巻回された前記2次コイルが配置されている。
【0008】
好ましくは、本発明の風力発電装置は、
前記メインコイルが、3相交流電圧を3本の出力線により出力し、
前記2次コイルが、6相交流電圧を6本の出力線により出力し、
前記1次コイルと前記2次コイルが、前記3相交流電圧を、前記メインコイルの3本の出力線間における3つの線間電圧とそれぞれ同じ位相の3つの線間電圧、および当該3つの線間電圧に対してそれぞれ位相が30度進んだ、または位相が30度遅れた3つの線間電圧から成る前記6相交流電圧に変換し、
前記2次コイルの6本の出力線により出力される6相交流電圧を直流電圧に整流する6相整流回路を有する。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の風力発電装置は、
複数の翼と、
前記複数の翼と共に回転し、発電機の回転子を回転させる回転部と、
前記発電機の固定子を含む本体部と、
を備え、
前記固定子が、交流電力を出力するメインコイルを含み、当該メインコイルから出力される交流電力の一部を前記本体部から前記回転部に非接触で伝送する非接触伝送部を有し、風力発電装置において、
前記本体部が、前記メインコイルが発生する交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路によって整流された直流電圧を高周波の交流電圧に変換するスイッチング素子を含む高周波スイッチング回路とを有し、
前記非接触伝送部が、前記本体部に取り付けられた1次コイルと、前記回転部に取り付けられた2次コイルとを有し、前記高周波スイッチング回路によって変換された高周波の交流電圧が前記1次コイルに入力され、電磁誘導により前記1次コイルから前記2次コイルに電力が伝送され、
前記回転部が、前記2次コイルから出力される高周波の交流電圧を平滑化し、直流電圧に変換するコンデンサを有し、
前記発電機がアキシャルギャップ型であり、
前記回転部が、風の流れと略垂直である垂直軸を中心として回転し、
前記本体部が前記垂直軸と同軸である静止した支柱と前記垂直軸が中心となるように前記垂直軸と直角に当該支柱に固定された所定の厚さの円盤とを有し、
前記メインコイルが複数のコイルで構成されており、当該メインコイルを構成する各コイルが当該円盤に前記垂直軸を中心として円周状に配置されており、
前記回転部が、前記支柱と前記円盤を収容する空洞を有しており、当該空洞において前記円盤の一方の主面と他方の主面にそれぞれ対向する面が前記回転子の面であり、当該回転子の面の両方に前記メインコイルを構成する各コイルを貫く磁束を生じる磁石がそれぞれ配置されており、
前記円盤の一方の主面と他方の主面のいずれか一方または両方に、前記垂直軸を中心として同心円状に巻回された前記1 次コイルが前記複数のメインコイルよりも半径方向内側に配置されており、前記各回転子の面において前記1 次コイルに対向する位置に同心円状に巻回された前記2次コイルが配置されている。
【0010】
好ましくは、本発明の風力発電装置は、
前記回転部に配置されており、前記メインコイルから出力される交流電力の一部によって動作し、前記各翼の翼角度を変更する翼角度変更部を備える。
【0011】
好ましくは、本発明の風力発電装置は、
前記翼角度変更部が、前記メインコイルから出力される交流電力の電圧に応じて前記各翼の翼角度を制御する。
【0012】
好ましくは、本発明の風力発電装置は、
前記固定子が、前記メインコイルを含み、
前記翼角度変更部が、前記非接触伝送部によって前記本体部から前記回転部に伝送された交流電力の電圧に応じて前記各翼の翼角度を制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、風力により発電された電力を発電と同時に回転部と本体部との間で非接触で伝送することができ、風力により発電された電力の一部を翼と共に回転する回転部で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の適用例である垂直型風力発電装置の一例の正面図である。
【
図2】
図1の垂直型風力発電装置の上面図である。
図2(A)は翼角度が0°の場合を示し、
図2(B)は翼角度がαの場合を示す。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る本体部と回転部に含まれる回路の構成の一例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部の第1の変形例の構成を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部の第2の変形例の構成を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部の第3の変形例の構成を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部の第4の変形例の構成を示す図である。
【
図11】
図10の非接触伝送部から出力される相電圧の一例を示すベクトル図である。
【
図12】
図10の非接触伝送部から出力される線間電圧間の位相差の一例を示すベクトル図である。
【
図13】
図10の非接触伝送部から出力される各線間電圧の波形の一例を示す図である。
【
図14】6相ダイオードブリッジ整流回路が出力する直流電圧の一例を示す図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部の第5の変形例の構成を示す図である。
【
図16】
図15の非接触伝送部から出力される相電圧の一例を示すベクトル図である。
【
図17】
図15の非接触伝送部から出力される線間電圧間の位相差の一例を示すベクトル図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態に係る本体部と回転部に含まれる回路の構成の一例を示す図である。
【
図19】本発明の第3の実施形態に係る本体部と回転部に含まれる回路の構成の一例を示す図である。
【
図20】本発明の第2の適用例である垂直型風力発電装置の一例の正面図である。
【
図21】
図3に示した本発明の第1の実施形態に係る本体部および回転部に含まれる回路と同様の回路を用いて、
図20の垂直型風力発電装置の本体部および回転部に含まれる回路を実現した構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る風力発電装置について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の第1の適用例である垂直型風力発電装置1の一例の正面図である。
図2は、
図1の垂直型風力発電装置1の上面図である(ただし、翼角度変更部13は省略)。
垂直型風力発電装置1は、回転部10と、翼11と、アーム12と、翼角度変更部13と、本体部20と、タワー21とを有する。
本体部20は、静止したタワー21の上部に固定されている。回転部10は、本体部20の上部に垂直軸を中心として回転できるように取り付けられている。垂直型風力発電装置1は、垂直軸が風の流れと略垂直となるように設置される。翼11は、垂直軸に平行となるようにアーム12によって回転部10に固定されている。回転部10は、翼11が風を受けると、翼11と共に回転し、発電機の回転子を回転させる。
【0019】
図2に示すように、垂直型風力発電装置1の各翼11は垂直軸を中心とする円周上を回転(公転)する。そして、垂直型風力発電装置1は、各翼11が自転する方向に各翼11の翼角度を変更することができる。ここで、垂直型風力発電装置1において、翼角度とは、アーム12に垂直な平面と翼11の縦断面とのなす角度をいう。
図2(A)は翼角度が0°の場合を示し、
図2(B)は翼角度がαの場合を示す。他の構造の垂直型風力発電装置にも翼角度という用語を適用できるように一般化すると、例えば、翼角度とは、各翼37が公転する円周上における各翼37の自転の中心での接線と翼37の縦断面とのなす角度をいう。また、プロペラ(翼)の回転軸が水平である水平型風力発電装置では、翼角度はピッチ角に相当するものとする。
なお、本実施形態では垂直型風力発電装置1は翼11を2枚有するが、垂直型風力発電装置1は翼11を3枚以上有していてもよい。
【0020】
翼角度変更部13は、例えば、アーム12の上または内部に設置される。翼角度変更部13は、例えば、制御回路と、入力電圧検出部と、蓄電池または電解コンデンサと、翼角度可変機構とを有する。翼角度可変機構は、例えば、インバータと、モータと、カップリングと、送りねじと、送りねじナットと、複数のリンクとを含む。
図2に示すように、翼角度変更部13は、各翼11の翼角度を変更することができる。
【0021】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る本体部20と回転部10に含まれる回路の構成の一例を示す。
本体部20と回転部10は、メインコイル31と、非接触伝送部50と、3相ダイオードブリッジ整流回路60と、翼角度変更部13とを有する。
メインコイル31を含む発電機の固定子と非接触伝送部50に含まれる1次コイルとは、本体部20に配置されている。非接触伝送部50に含まれる2次コイルと3相ダイオードブリッジ整流回路60と翼角度変更部13とは回転部10に配置されている。
メインコイル31は、コイルC11とコイルC12とコイルC13と有する。コイルC11とコイルC12とコイルC13とはY結線されている。メインコイル31は、コイルC11とコイルC12とコイルC13によって生成された3相交流電圧を3本の出力線により出力する。なお、コイルC11とコイルC12とコイルC13とはΔ結線されていてもよい。
【0022】
非接触伝送部50は、メインコイル31から出力される交流電力の一部を本体部20から回転部10に非接触で伝送する。
非接触伝送部50は、1次コイルC21と、1次コイルC22と、1次コイルC23と、1次コイルC31と、1次コイルC32と、1次コイルC33、および2次コイルC41と、2次コイルC42と、2次コイルC43と、2次コイルC51と、2次コイルC52と、2次コイルC53を有する。
各1次コイルC21,C22,C23,C31,C32,C33は本体部20に配置されており、各2次コイルC41,C42,C43,C51,C52,C53は回転部10に配置されている。
【0023】
1次コイルC21と1次コイルC31とは、コイルC11に接続された出力線とコイルC12に接続された出力線との間に並列に接続されている。1次コイルC21と1次コイルC31に入力された交流電力は、電磁誘導により非接触でそれぞれ2次コイルC41と2次コイルC51に伝送される。同様に、1次コイルC22と1次コイルC32とは、コイルC12に接続された出力線とコイルC13に接続された出力線との間に並列に接続されている。1次コイルC22と1次コイルC32に入力された交流電力は、電磁誘導により非接触でそれぞれ2次コイルC42と2次コイルC52に伝送される。1次コイルC23と1次コイルC33とは、コイルC13に接続された出力線とコイルC11に接続された出力線との間に並列に接続されている。1次コイルC23と1次コイルC33に入力された交流電力は、電磁誘導により非接触でそれぞれ2次コイルC43と2次コイルC53に伝送される。
【0024】
そして、2次コイルC41と2次コイルC51は並列に接続されている。すなわち、2次コイルC41の一端と2次コイルC51の一端が接続され、2次コイルC41の他端と2次コイルC51の他端が接続されている。同様に、2次コイルC42と2次コイルC52は並列に接続されている。すなわち、2次コイルC42の一端と2次コイルC52の一端が接続され、2次コイルC42の他端と2次コイルC52の他端が接続されている。2次コイルC43と2次コイルC53は並列に接続されている。すなわち、2次コイルC43の一端と2次コイルC53の一端が接続され、2次コイルC43の他端と2次コイルC53の他端が接続されている。
【0025】
2次コイルC41と2次コイルC51、2次コイルC42と2次コイルC52、および2次コイルC43と2次コイルC53は、Δ結線されている。すなわち、2次コイルC41と2次コイルC51の他端が2次コイルC42と2次コイルC52の一端に接続され、2次コイルC42と2次コイルC52の他端が2次コイルC43と2次コイルC53の一端に接続され、2次コイルC43と2次コイルC53の他端が2次コイルC41と2次コイルC51の一端に接続されている。
Δ結線された2次コイルC41と2次コイルC51、2次コイルC42と2次コイルC52、および2次コイルC43と2次コイルC53の3本の出力線は、3相ダイオードブリッジ整流回路60に接続される。すなわち、非接触伝送部50によって出力される3相交流電圧は、3相ダイオードブリッジ整流回路60に入力される。
【0026】
3相ダイオードブリッジ整流回路60は、非接触伝送部50に含まれる2次コイルの3本の出力線により出力される3相交流電圧を直流電圧に整流し、その直流電圧を翼角度変更部13に供給する。
3相ダイオードブリッジ整流回路60は、ダイオードの対(ダイオードD11とダイオードD12)を3組有する。各対のダイオードにおいて、一方のダイオードD12のカソードと他方のダイオードD11のアノードは接続されており、その接続部分に非接触伝送部50の出力線の各1本が接続される。各対のダイオードにおけるダイオードD11のカソードは全て接続されており、それらは翼角度変更部13の正入力端子に接続される。また、各対のダイオードにおけるダイオードD12のアノードは全て接続されており、それらは翼角度変更部13の負入力端子に接続される。
【0027】
翼角度変更部13は、入力電圧検出部を有する。入力電圧検出部は、3相ダイオードブリッジ整流回路60によって出力される直流電圧の電圧値を検出する。翼角度変更部13は、例えば、3相ダイオードブリッジ整流回路60によって出力された直流電圧(すなわち、入力電圧検出部によって検出された直流電圧)が所定の第1の電圧より高いときには、所定の第1の電圧になるまで出力された直流電圧に応じて回転部10の回転速度を低下させるように各翼11の翼角度を制御する。一方、翼角度変更部13は、例えば、3相ダイオードブリッジ整流回路60によって出力された直流電圧が所定の第2の電圧より低いときには、所定の第2の電圧になるまで出力された直流電圧に応じて回転部10の回転速度を増加させるように各翼11の翼角度を制御する。すなわち、翼角度変更部13は、メインコイル31から出力される交流電力の一部によって動作し、各翼11の翼角度を変更する。翼角度変更部13は、メインコイル31から出力される交流電力の電圧に応じて各翼11の翼角度を制御する。第1の実施形態に係る翼角度変更部13は、特に、非接触伝送部50によって本体部20から回転部10に伝送された交流電圧に応じて各翼11の翼角度を制御する。
【0028】
図4は、
図1のA-A線断面図である。
図5は、
図1と
図4のB-B線断面図である。
図4と
図5は、
図3に示す回路を、アキシャルギャップ型であって3相4極12スロットの交流発電機で実現した例である。
図4に示すように、本体部20は、垂直軸と同軸である静止した支柱22と、所定の厚さの円盤30とを有する。円盤30は、垂直軸が中心となるように垂直軸と直角に支柱22に固定されている。円盤30は、交流発電機の固定子である。円盤30の外周近傍にはメインコイル31が配置されている。
図5に示すように、メインコイル31は、4組のコイルC11とコイルC12とコイルC13とで構成されている。合計12個の各コイルは、垂直軸を中心として円周状に配置されている。これらの各コイルは、円盤30の上面(一方の主面)から下面(他方の主面)まで貫通しており、それぞれ別々のコア32に巻回されている。これらの各コア32は珪素鋼板またはフェライトでできている。
メインコイル31を構成する各コイルC11,C12,C13が外周近傍に配置されていることにより、その回転速度が大きくなり、交流発電機の発電電力が増大する。
【0029】
図4に示すように、回転部10は空洞40を有している。支柱22と円盤30は、空洞40の中に収容されている。空洞40内において、支柱22を取り囲むように、円盤30の上面と下面にそれぞれベアリング23が配置されている。回転部10は、ベアリング23によって回転可能に支持されている。空洞40において、円盤30の上面と下面にそれぞれ対向する面は交流発電機の回転子の面である。上側の回転子の面には磁石41が配置されており、下側の回転子の面には磁石42が配置されている。磁石41と磁石42は、例えば永久磁石であり、メインコイル31を構成する各コイルC11,C12,C13を貫く磁束を生じる。
【0030】
図6は、
図4の円で囲まれた領域Cの拡大図である。円盤30の上面には、1次コイルC21と1次コイルC22と1次コイルC23とが配置されている。各1次コイルC21,C22,C23は、
図5に示すように、垂直軸を中心として同心円状に巻回されており、メインコイル31を構成する各コイルC11,C12,C13よりも半径方向内側に配置されている。同様に、円盤30の下面には、1次コイルC31と1次コイルC32と1次コイルC33とが配置されている。各1次コイルC31,C32,C33も、垂直軸を中心として同心円状に巻回されており、メインコイル31を構成する各コイルC11,C12,C13よりも半径方向内側に配置されている。
【0031】
各1次コイルC21,C22,C23は環状に配置されたコア33の上面の溝の中に配置され、各1次コイルC31,C32,C33はコア33の下面の溝の中に配置される。コア33は珪素鋼板またはフェライトでできている。ただし、
図4に示すようにコア33が円盤30を上面から下面まで貫通する場合、コア33が完全な環であると、円盤30の強度が低下する。このため、
図5に示すように、環状部分を扇型の形状に分割して、環状部分の一部のみにコア33を形成することが望ましい。
また、各1次コイルC21、C22、C23の巻き数が同一である場合、最も外周側に配置された1次コイルC21が最も長く、最も内周側に配置された1次コイルC23が最も短くなる。そこで、
図6に示すように、コア33において、1次コイルC21と1次コイルC22との間の幅、1次コイルC22と1次コイルC23との間の幅、1次コイルC23とコア33の内周との間の幅の順番に幅を徐々に広くすることが望ましい。これにより、コア33内を通る各1次コイルC21、C22、C23の磁束の量を等しくすることができる。各1次コイルC31,C32,C33についても各1次コイルC21、C22、C23と同様である。
【0032】
図6に示すように、空洞40の上側の面である回転子の面には、同心円状に巻回された2次コイルC41と2次コイルC42と2次コイルC43が、それぞれ1次コイルC21と1次コイルC22と1次コイルC23に対向する位置に配置されている。同様に、空洞40の下側の面である回転子の面には、同心円状に巻回された2次コイルC51と2次コイルC52と2次コイルC53が、それぞれ1次コイルC31と1次コイルC32と1次コイルC33に対向する位置に配置されている。
また、空洞40の上側の面である回転子の面およびその下側の面である回転子の面には、コア33に対向する位置にそれぞれ環状に配置されたコア43とコア44が配置されている。各2次コイルC41,C42,C43はコア43の下面の溝の中に配置され、各2次コイルC51,C52,C53はコア44の上面の溝の中に配置される。コア43とコア44は珪素鋼板またはフェライトでできている。なお、コア43とコア44も、コア33と同一の形状に分割して形成してもよい。
【0033】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部50の第1の変形例の構成を示す。
第1の変形例である非接触伝送部51は、
図3の非接触伝送部50と同様に、1次コイルC21と、1次コイルC22と、1次コイルC23と、1次コイルC31と、1次コイルC32と、1次コイルC33、および2次コイルC41と、2次コイルC42と、2次コイルC43と、2次コイルC51と、2次コイルC52と、2次コイルC53を有する。また、非接触伝送部51は、各1次コイルC21,C22,C23,C31,C32,C33からそれぞれ各2次コイルC41,C42,C43,C51,C52,C53に非接触で交流電力を伝送する点、および非接触伝送部51によって出力される3相交流電圧が3相ダイオードブリッジ整流回路60に入力される点も
図3の非接触伝送部50と同一である。
【0034】
非接触伝送部51は、1次コイル間の接続および2次コイル間の接続が
図3の非接触伝送部50と異なる。
非接触伝送部51では、1次コイルC21と1次コイルC31とは、コイルC11による交流電力の出力線とコイルC12による交流電力の出力線との間に直列に接続されている。同様に、1次コイルC22と1次コイルC32とは、コイルC12による交流電力の出力線とコイルC13による交流電力の出力線との間に直列に接続されている。1次コイルC23と1次コイルC33とは、コイルC13による交流電力の出力線とコイルC11による交流電力の出力線との間に直列に接続されている。
【0035】
そして、2次コイルC41と2次コイルC51、2次コイルC42と2次コイルC52、および2次コイルC43と2次コイルC53も、それぞれ直列に接続されている。
直列に接続された2次コイルC41と2次コイルC51、2次コイルC42と2次コイルC52、および2次コイルC43と2次コイルC53はY結線されている。Y結線された2次コイルC41と2次コイルC51、2次コイルC42と2次コイルC52、および2次コイルC43と2次コイルC53の3本の出力線は、3相ダイオードブリッジ整流回路60に接続される。
なお、
図7に示す非接触伝送部51を有する回転部10と本体部20も、アキシャルギャップ型の構造とすることができる。この場合、メインコイル31と各1次コイルと各2次コイルは、
図4~
図6に示すように配置される。
【0036】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部50の第2の変形例の構成を示す。
第2の変形例である非接触伝送部52は、各1次コイルとメインコイル31の3本の出力線との接続および1次コイル間の接続が
図3の非接触伝送部50と異なる。その他の点では、非接触伝送部52は
図3の非接触伝送部50と同一である。
【0037】
非接触伝送部52では、1次コイルC21と1次コイルC31とは直列に接続され、その直列回路の一端はコイルC11による交流電力の出力線に接続され、その直列回路の他端からコイルC11による交流電力が出力される。同様に、1次コイルC22と1次コイルC32とは直列に接続され、その直列回路の一端はコイルC12による交流電力の出力線に接続され、その直列回路の他端からコイルC12による交流電力が出力される。1次コイルC23と1次コイルC33とは直列に接続され、その直列回路の一端はコイルC13による交流電力の出力線に接続され、その直列回路の他端からコイルC13による交流電力が出力される。
なお、
図8に示す非接触伝送部52を有する回転部10と本体部20も、アキシャルギャップ型の構造とすることができる。この場合、メインコイル31と各1次コイルと各2次コイルは、
図4~
図6に示すように配置される。
【0038】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部50の第3の変形例の構成を示す。
第3の変形例である非接触伝送部53は、1次コイルと2次コイルとして1次コイルC21と2次コイルC41のみを有する点が
図3の非接触伝送部50と異なる。また、これに伴い、回転部10に、3相ダイオードブリッジ整流回路60の代わりに単相ダイオードブリッジ整流回路61が配置される。
【0039】
非接触伝送部53では、1次コイルC21は、コイルC11による交流電力の出力線とコイルC12による交流電力の出力線との間に接続される。1次コイルC21に入力された交流電力は、電磁誘導により非接触で2次コイルC41に伝送される。2次コイルC41の2本の出力線は、単相ダイオードブリッジ整流回路61に接続される。すなわち、非接触伝送部53によって出力される単相交流電圧は、単相ダイオードブリッジ整流回路61に入力される。
【0040】
単相ダイオードブリッジ整流回路61は、ダイオードの対(ダイオードD11とダイオードD12)を2組有する。各対のダイオードにおいて、一方のダイオードD12のカソードと他方のダイオードD11のアノードは接続されており、その接続部分に非接触伝送部53の出力線の各1本が接続される。各対のダイオードにおけるダイオードD11のカソードは接続されており、それらは翼角度変更部13の正入力端子に接続される。また、各対のダイオードにおけるダイオードD12のアノードは接続されており、それらは翼角度変更部13の負入力端子に接続される。
なお、
図9に示す非接触伝送部53と単相ダイオードブリッジ整流回路61を有する回転部10と本体部20も、
図4~
図6に示すアキシャルギャップ型の構造とすることができる。この場合、メインコイル31は
図4~
図6に示すように配置される。1次コイルC21は円盤30の上面または下面に配置され、2次コイルC41は空洞40の上側の面または下側の面の1次コイルC21に対向する位置に配置される。
【0041】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部50の第4の変形例の構成を示す。
第4の変形例である非接触伝送部54は、2次コイルC41と、2次コイルC42と、2次コイルC43と、2次コイルC61と、2次コイルC62と、2次コイルC63から6本の出力線により6相交流電力が出力される点が
図3の非接触伝送部50と異なる。また、これに伴い、回転部10に、3相ダイオードブリッジ整流回路60の代わりに6相ダイオードブリッジ整流回路62が配置される。
【0042】
非接触伝送部54では、1次コイルC21と1次コイルC31、1次コイルC22と1次コイルC32、1次コイルC23と1次コイルC33は、それぞれ並列に同極性となるように接続されている。また、2次コイルC41と2次コイルC61、2次コイルC42と2次コイルC62、および2次コイルC43と2次コイルC63は、それぞれ直列に同極性となるように接続されている。
2次コイルC41と2次コイルC61の接続部分、2次コイルC42と2次コイルC62の接続部分、および2次コイルC43と2次コイルC63の接続部分は結線されており、この部分が6相交流電力の中性点Nである。直列接続された2次コイルC41と2次コイルC61の一端と他端からそれぞれ交流電力e41とe61が出力される。同様に、直列接続された2次コイルC42と2次コイルC62の一端と他端からそれぞれ交流電力e42とe62が出力される。直列接続された2次コイルC43と2次コイルC63の一端と他端からそれぞれ交流電力e43とe63が出力される。各交流電力e41、e42、e43、e61、e62、e63は、中性点Nを基準電位とする相電圧である。
【0043】
図11に示すように、交流電圧e61は、交流電圧e41よりも位相が180度進んでいる。また、
図11には、線間電圧e42-e41と線間電圧e61-e41が示されている。両者の電圧の大きさは同一である。線間電圧e61-e41は、線間電圧e42-e41に対して位相が30度進んでいる。交流電圧e41と交流電圧e61と線間電圧e42-e41の大きさの比は、1:(ルート3-1):ルート3である。ここで、ルート3≒1.732である。
交流電圧e42と交流電圧e62および交流電圧e43と交流電圧e63も、交流電圧e41と交流電圧e61と同様の関係である。
【0044】
線間電圧e42-e41と線間電圧e43-e42と線間電圧e41-e43は、メインコイル31の3本の出力線間における3つの線間電圧とそれぞれ同じ位相である。
図12に示すように、線間電圧e61-e41と線間電圧e62-e42と線間電圧e63-e43は、線間電圧e42-e41と線間電圧e43-e42と線間電圧e41-e43の各々に対して、それぞれ位相が30度進んでいる。すなわち、非接触伝送部54は、メインコイル31の3本の出力線間における3つの線間電圧とそれぞれ同じ位相の3つの線間電圧に対して、それぞれ位相が30度進んだ3つの線間電圧も出力する。
図12に示す6つの線間電圧の大きさは等しい。交流電圧e41と交流電圧e61と線間電圧e42-e41と同様に、交流電圧e42と交流電圧e62と線間電圧e43-e42の大きさの比は1:(ルート3-1):ルート3であり、交流電圧e43と交流電圧e63と線間電圧e41-e43の大きさの比は1:(ルート3-1):ルート3である。
【0045】
6相ダイオードブリッジ整流回路62は、ダイオードの対(ダイオードD11とダイオードD12)を6組有する。各対のダイオードにおいて、一方のダイオードD12のカソードと他方のダイオードD11のアノードは接続されており、その接続部分に非接触伝送部54の出力線の各1本が接続される。各対のダイオードにおけるダイオードD11のカソードは全て接続されており、それらは翼角度変更部13の正入力端子に接続される。また、各対のダイオードにおけるダイオードD12のアノードは全て接続されており、それらは翼角度変更部13の負入力端子に接続される。
【0046】
図13は、非接触伝送部54の6本の出力線に生じる各線間電圧の波形の一例を示す。6相ダイオードブリッジ整流回路62は、6つの線間電圧を整流し、
図14に示す直流電圧を生成する。生成された直流電圧は、翼角度変更部13に入力される。
6相ダイオードブリッジ整流回路62が出力する直流電圧は、基本波の12倍の周波数のリプル成分を含む。このリプル成分の振幅は、
図3の3相ダイオードブリッジ整流回路60が出力する直流電圧のリプル成分の振幅よりも小さい。
なお、
図10に示す非接触伝送部54と6相ダイオードブリッジ整流回路62を有する回転部10と本体部20も、アキシャルギャップ型の構造とすることができる。この場合、メインコイル31と各1次コイルと各2次コイルは、
図4~
図6に示すように配置される。
【0047】
図15は、本発明の第1の実施形態に係る非接触伝送部50の第5の変形例の構成を示す。
第5の変形例である非接触伝送部55は、
図10の非接触伝送部54と同様に、6本の出力線により6相交流電力を出力する。ただし、第5の変形例である非接触伝送部55において、2次コイルC41と2次コイルC42と2次コイルC43とはΔ結線されており、2次コイルC51と2次コイルC52と2次コイルC53とはY結線されている点が、
図10の非接触伝送部54と異なる。
また、
図10の非接触伝送部54と同様に、回転部10に6相ダイオードブリッジ整流回路62が配置される。
【0048】
図16は、非接触伝送部55から出力される相電圧の一例を示す。
Δ結線された2次コイルC41と2次コイルC42と2次コイルC43は、それらの両端からそれぞれ相電圧E41と相電圧E42と相電圧E43を出力する。なお、Δ結線では、相電圧と線間電圧は等しい。
2次コイルC51と2次コイルC52と2次コイルC53の一端は結線されている。この部分が3相交流電力の中性点Nである。2次コイルC51と2次コイルC52と2次コイルC53は、他端からそれぞれ中性点Nを基準電位とする相電圧e51と相電圧e52と相電圧e53を出力する。
【0049】
線間電圧e52-e51と線間電圧e53-e52と線間電圧e51-e53は、メインコイル31の3本の出力線間における3つの線間電圧とそれぞれ同じ位相である。
図17に示すように、線間電圧E42と線間電圧E43と線間電圧E41は、それぞれ線間電圧e52-e51と線間電圧e53-e52と線間電圧e51-e53から位相が30度遅れている。すなわち、非接触伝送部55は、メインコイル31の3本の出力線間における3つの線間電圧とそれぞれ同じ位相の3つの線間電圧に対して、それぞれ位相が30度遅れた3つの線間電圧も出力する。
図17に示す6つの線間電圧の大きさは等しい。
なお、
図15に示す非接触伝送部55と6相ダイオードブリッジ整流回路62を有する回転部10と本体部20も、アキシャルギャップ型の構造とすることができる。この場合、メインコイル31と各1次コイルと各2次コイルは、
図4~
図6に示すように配置される。
【0050】
図18は、本発明の第2の実施形態に係る本体部20と回転部10に含まれる回路の構成の一例を示す。
第2の実施形態に係る本体部20と回転部10は、メインコイル31と、3相ダイオードブリッジ整流回路60と、高周波スイッチング回路70と、非接触伝送部56と、コンデンサCdと、翼角度変更部13とを有する。
第2の実施形態では、メインコイル31を含む発電機の固定子と、3相ダイオードブリッジ整流回路60と、高周波スイッチング回路70と、非接触伝送部56に含まれる1次コイルC21および1次コイルC31とは、本体部20に配置される。また、非接触伝送部56に含まれる2次コイルC41および2次コイルC51と、コンデンサCdと、翼角度変更部13とは、回転部10に配置される。
第2の実施形態に係るメインコイル31と翼角度変更部13の構成は、第1の実施形態に係るメインコイル31と翼角度変更部13と同一である。
【0051】
3相ダイオードブリッジ整流回路60の構成は、第1の実施形態に係る3相ダイオードブリッジ整流回路60と同一である。ただし、第1の実施形態に係る3相ダイオードブリッジ整流回路60と異なり、各対のダイオードにおいて、一方のダイオードD12のカソードと他方のダイオードD11のアノードの接続部分にはメインコイル31を構成する各コイルC11、C12,C13による交流電力の出力線が接続される。また、各対のダイオードにおけるダイオードD11のカソードは高周波スイッチング回路70の正入力端子に接続され、各対のダイオードにおけるダイオードD12のアノードは高周波スイッチング回路70の負入力端子に接続される。すなわち、本実施形態に係る3相ダイオードブリッジ整流回路60は、メインコイル31が発生する交流電圧を直流電圧に整流し、その直流電圧を高周波スイッチング回路70に出力する。
【0052】
高周波スイッチング回路70は、3相ダイオードブリッジ整流回路60によって整流された直流電圧を高周波の交流電圧に変換するスイッチング素子を有する。スイッチング素子は、例えばNMOSトランジスタで構成することができる。
非接触伝送部56に含まれる1次コイルC21と1次コイルC31は並列に接続されている。1次コイルC21と1次コイルC31には、高周波スイッチング回路70によって出力される高周波の交流電圧が入力される。非接触伝送部56に含まれる2次コイルC41と2次コイルC51も並列に接続されている。1次コイルC21と1次コイルC31に入力された交流電力は、電磁誘導により非接触でそれぞれ2次コイルC41と2次コイルC51に伝送される。
【0053】
コンデンサCdは、2次コイルC41と2次コイルC51から出力される高周波の交流電圧を平滑化し、直流電圧に変換する。
コンデンサCdによって変換された直流電圧は、翼角度変更部13に入力される。翼角度変更部13は、例えば、コンデンサCdによって変換された直流電圧(すなわち、入力電圧検出部によって検出された直流電圧)が所定の第1の電圧より高いときには、所定の第1の電圧になるまで出力された直流電圧に応じて回転部10の回転速度を低下させるように各翼11の翼角度を制御する。一方、翼角度変更部13は、例えば、コンデンサCdによって変換された直流電圧が所定の第2の電圧より低いときには、所定の第2の電圧になるまで出力された直流電圧に応じて回転部10の回転速度を増加させるように各翼11の翼角度を制御する。すなわち、翼角度変更部13は、メインコイル31から出力される交流電力の一部によって動作し、各翼11の翼角度を変更する。翼角度変更部13は、メインコイル31から出力される交流電力の電圧に応じて各翼11の翼角度を制御する。第2の実施形態に係る翼角度変更部13は、特に、非接触伝送部56によって本体部20から回転部10に伝送された交流電力の電圧に応じて各翼11の翼角度を制御する。
なお、
図18に示す第2の実施形態に係る回路を有する回転部10と本体部20も、
図4~
図6に示すアキシャルギャップ型の構造とすることができる。この場合、メインコイル31は
図4~
図6に示すように配置される。1次コイルC21と1次コイルC31はそれぞれ円盤30の上面と下面に配置され、2次コイルC41と2次コイルC51はそれぞれ空洞40の上側の面と下側の面における1次コイルC21と1次コイルC31に対向する位置に配置される。
【0054】
図19は、本発明の第3の実施形態に係る本体部20と回転部10に含まれる回路の構成の一例を示す。
第3の実施形態に係る本体部20と回転部10は、メインコイル31と、3相ダイオードブリッジ整流回路60と、翼角度変更部13と、非接触伝送部57とを有する。
第3の実施形態では、メインコイル31を含む発電機の固定子と、3相ダイオードブリッジ整流回路60と、翼角度変更部13と、非接触伝送部57に含まれる各1次コイルC21,C22,C23とは、回転部10に配置される。非接触伝送部57に含まれる各2次コイルC41,C42,C43は、本体部20に配置される。
【0055】
第3の実施形態に係るメインコイル31と3相ダイオードブリッジ整流回路60と翼角度変更部13の構成は、第2の実施形態に係るメインコイル31と3相ダイオードブリッジ整流回路60と翼角度変更部13と同一である。
ただし、本実施形態に係る3相ダイオードブリッジ整流回路60は、メインコイル31を構成する各コイルC11,C12,C13によって出力される交流電圧を整流して直流電圧に変換し、翼角度変更部13に供給する。翼角度変更部13は、例えば、3相ダイオードブリッジ整流回路60から出力される直流電圧(すなわち、入力電圧検出部によって検出された直流電圧)が所定の第1の電圧より高いときには、所定の第1の電圧になるまで出力された直流電圧に応じて回転部10の回転速度を低下させるように各翼11の翼角度を制御する。一方、翼角度変更部13は、例えば、3相ダイオードブリッジ整流回路60から出力される直流電圧が所定の第2の電圧より低いときには、所定の第2の電圧になるまで出力された直流電圧に応じて回転部10の回転速度を増加させるように各翼11の翼角度を制御する。すなわち、翼角度変更部13は、メインコイル31から出力される交流電力の一部によって動作し、各翼11の翼角度を変更する。翼角度変更部13は、メインコイル31から出力される交流電力の電圧に応じて各翼11の翼角度を制御する。
【0056】
1次コイルC21は、コイルC11による交流電力の出力線とコイルC12による交流電力の出力線との間に接続されている。1次コイルC21に入力された交流電力は、電磁誘導により非接触で2次コイルC41に伝送される。同様に、1次コイルC22は、コイルC12による交流電力の出力線とコイルC13による交流電力の出力線との間に接続されている。1次コイルC22に入力された交流電力は、電磁誘導により非接触で2次コイルC42に伝送される。1次コイルC23は、コイルC13による交流電力の出力線とコイルC11による交流電力の出力線との間に接続されている。1次コイルC23に入力された交流電力は、電磁誘導により非接触で2次コイルC43に伝送される。
【0057】
2次コイルC41と2次コイルC42と2次コイルC43とは、Y結線されている。Y結線された2次コイルC41と2次コイルC42と2次コイルC43の3本の出力線から3相交流電力が発電機の出力として外部に出力される。
なお、
図19に示す第3の実施形態に係る回路を有する回転部10と本体部20も、
図4~
図6に示すアキシャルギャップ型の構造とすることができる。ただし、この場合、磁石が円盤30に配置され、メインコイル31が空洞40の上側の面と下側の面に配置されることとなる。
【0058】
図20は、本発明の第2の適用例である垂直型風力発電装置2の一例の正面図である。
図21は、
図3に示した本発明の第1の実施形態に係る本体部20および回転部10に含まれる回路と同様の回路を用いて、
図20の垂直型風力発電装置2の本体部および回転部に含まれる回路を実現した構成の一例を示す。
垂直型風力発電装置2は、回転部10と、翼11と、アーム12と、本体部20と、タワー21と、LEDランプ80とを有する。
垂直型風力発電装置2は、翼角度変更部13の代わりにLEDランプ80がアーム12の上に配置されている点が本発明の第1の適用例である垂直型風力発電装置1と異なる。その他の点では、垂直型風力発電装置2は、垂直型風力発電装置1と同一である。
また、
図21に示す本体部20と回転部10に含まれる回路は、翼角度変更部13の代わりに発光制御部81が回転部10に配置されている点が
図3に示した第1の実施形態に係る本体部20と回転部10に含まれる回路と異なる。その他の点では、
図21に示す本体部20と回転部10に含まれる回路は、
図3に示した第1の実施形態に係る本体部20と回転部10に含まれる回路と同一である。
【0059】
3相ダイオードブリッジ整流回路60に含まれる各対のダイオードにおけるダイオードD11のカソードは、発光制御部81の正入力端子に接続される。また、各対のダイオードにおけるダイオードD12のアノードは発光制御部81の負入力端子に接続される。
発光制御部81は、非接触伝送部50によって本体部20から回転部10に伝送された交流電力の電圧に応じてLEDランプ80を発光させる。
なお、本発明の第2の適用例である垂直型風力発電装置2に、第1の実施形態に係る非接触伝送部の第1~第5の変形例、第2の実施形態、および第3の実施形態の本体部および回転部に含まれる回路を使用できることはもちろんである。
【0060】
また、上述した本発明の第1の適用例である垂直型風力発電装置では2枚の翼の翼角度を同一の角度に固定する例を示したが、特許文献1に記載の垂直型風力発電システムと同様に、本発明の第1の適用例でも各翼の翼角度をそれぞれ独立して回動させることができるようにしてもよい。
また、本発明は、上述した翼角度の変更やLEDランプの発光に限らず、例えばヒーターの加熱等他の用途にも適用することができる。
【0061】
また、上述した実施形態に係る交流発電機についてアキシャルギャップ型の構造の例を示したが、これらはラジアルギャップ型の構造とすることもできる。
さらに、上述した実施形態では垂直型風力発電装置の例を示したが、プロペラ(翼)の回転軸が水平である水平型風力発電装置に本発明を適用できることはもちろんである。
【0062】
以上説明したように、本発明によれば、風力により発電された電力を発電と同時に回転部と本体部との間で非接触で伝送することができ、風力により発電された電力の一部を翼と共に回転する回転部で使用することができる。
【0063】
また、例えば、風が強くなるにつれて、発電機から出力される交流電圧は高くなる。しかし、本発明の第1の適用例によれば、翼角度変更部は、発電機から出力される交流電圧が所定の第3の電圧より高いときには、所定の第3の電圧になるまで出力された交流電圧に応じて回転部の回転速度が低下するように各翼の翼角度を制御する。このため、風速を測定する装置を有していないにもかかわらず、強風のために回転部が過回転することにより風力発電装置が破壊されるのを防ぐことができる。一方、例えば、風が弱いと、発電機から出力される交流電圧は低くなる。しかし、翼角度変更部は、発電機から出力される交流電圧が所定の第4の電圧より低いときには、所定の第4の電圧になるまで出力された交流電圧に応じて回転部の回転速度が増加するように各翼の翼角度を制御する。このため、風速を測定する装置を有していないにもかかわらず、本発明に係る風力発電装置は効率良く発電することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計または製造上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、請求項に記載されている発明や発明の実施形態に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1,2…垂直型風力発電装置、10…回転部、11…翼、12…アーム、13…翼角度変更部、20…本体部、21…タワー、22…支柱、23…ベアリング、30…円盤、31…メインコイル、32…メインコイルのコア、33…1次コイルのコア、40…空洞、41,42…磁石、43,44…2次コイルのコア、負荷装置、50,51,52,53,54,55,56,57…非接触伝送部、60…3相ダイオードブリッジ整流回路、61…単相ダイオードブリッジ整流回路、62…6相ダイオードブリッジ整流回路、70…高周波スイッチング回路、63B…ハーフブリッジ回路、70…整流部、71…ダイオードブリッジ整流回路、80…LEDランプ、81…発光制御部、C11,C12,C13…メインコイルを構成するコイル、C21,C22,C23,C31,C32,C33…非接触伝送部の1次コイル、C41,C42,C43,C51,C52,C53,C61,C62,C63…非接触伝送部の2次コイル、D11,D12…ダイオード、Cd…コンデンサ