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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20230329BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20230329BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20230329BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20230329BHJP
【FI】
G03B17/02
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
H04N23/52
G03B30/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018222501
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020086232
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】村山 美樹
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-230751(JP,A)
【文献】特開2015-201685(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158397(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G02B 7/02
H04N 23/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子が実装された基板と、
内部にレンズを保持するレンズ鏡筒であって、外周の少なくとも一部に雄ネジ部を有するレンズ鏡筒と、
前記基板に取り付けられるベース部材であって、前記レンズ鏡筒の前記雄ネジ部が螺合する雌ネジ部を有するベース部材と、
前記基板と前記ベース部材との間に配置され、弾性を有する材料からなる防塵部材と
を備え、
前記防塵部材は、
前記レンズ鏡筒内の前記レンズから前記撮像素子に向かう光を通過させる開口部と、
前記開口部から外側に延びる基部と、
前記レンズ鏡筒の前記雄ネジ部よりも内側で前記レンズ鏡筒に当接する第1の当接部と、
前記第1の当接部に接続され、前記撮像素子の周囲で前記基板に当接する第2の当接部と、
前記第2の当接部よりも内側で前記基板に当接する第3の当接部と
を有し、
前記防塵部材の前記基部には、前記第1の当接部の外側で厚さが薄くなった溝部が形成される、撮像装置。
【請求項2】
前記第1の当接部は、前記開口部を取り囲むように前記基部から突出する突起であって、前記雄ネジ部よりも内側で前記レンズ鏡筒に当接する突起を含む、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記防塵部材は、前記第1の当接部が前記レンズ鏡筒を前記基板とは反対側に付勢するように弾性的に変形可能である、請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記防塵部材の前記溝部は、前記第1の当接部に隣接して前記基板側に凹んでいる、請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記防塵部材の前記溝部は、前記レンズ鏡筒の前記雄ネジ部と前記ベース部材の前記雌ネジ部との螺合部分に対向するように配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像素子が実装された基板と、
内部にレンズを保持するレンズ鏡筒であって、外周の少なくとも一部に雄ネジ部を有するレンズ鏡筒と、
前記基板に取り付けられるベース部材であって、前記レンズ鏡筒の前記雄ネジ部が螺合する雌ネジ部を有するベース部材と、
前記基板と前記ベース部材との間に配置される防塵部材と
を備え、
前記防塵部材は、
前記レンズ鏡筒内の前記レンズから前記撮像素子に向かう光を通過させる開口部と、
前記レンズ鏡筒の前記雄ネジ部よりも内側で前記レンズ鏡筒に当接する第1の当接部と、
前記第1の当接部に接続され、前記撮像素子の周囲で前記基板に当接する第2の当接部と、
前記第2の当接部よりも内側で前記基板に当接する第3の当接部と
を有する、撮像装置。
【請求項7】
前記防塵部材の前記第3の当接部は、前記第1の当接部よりも内側に位置している、請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記防塵部材の前記第2の当接部は、前記基板の前記撮像素子を取り囲んでいる、請求項1からのいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記基板と前記ベース部材との間には部分的に隙間が形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記ベース部材には、前記防塵部材の形状に対応した形状の凹部が形成され、
前記防塵部材は、前記ベース部材の前記凹部に嵌まり込むように構成される、
請求項1からのいずれか一項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に係り、特にベース部材にレンズ鏡筒が固定される撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮像素子が実装された基板にベース部材を取り付け、このベース部材にレンズ鏡筒を固定した撮像装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような撮像装置においては、レンズ鏡筒に形成された雄ネジ部をベース部材に形成された雌ネジ部に螺合させることによりレンズ鏡筒がベース部材に固定されることが多い。レンズ鏡筒とベース部材との螺合の際には、これらの部材を構成する材料の一部が削れて微細な屑が生じることがあり、これが基板上の撮像素子に付着して撮像性能に影響を与えることが懸念される。
【0003】
特許文献1に開示されている撮像装置では、中間部材の凹部に異物を捕捉して撮像素子に対する異物の影響を低減しているが、この凹部は撮像素子が配置されている空間に連通しているため、例えば自動車や電車などの車両に搭載される撮像装置のように振動の多い環境で使用される場合には、凹部に捕捉された異物が振動により凹部から飛び出して撮像素子に付着するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/158397号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、撮像素子に異物が付着することによって撮像性能が低下することを防止できる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、撮像素子に異物が付着することによって撮像性能が低下することを防止できる撮像装置が提供される。この撮像装置は、撮像素子が実装された基板と、内部にレンズを保持するレンズ鏡筒と、上記基板に取り付けられるベース部材と、上記基板と上記ベース部材との間に配置され、弾性を有する材料からなる防塵部材とを備えている。上記レンズ鏡筒は、外周の少なくとも一部に雄ネジ部を有しており、上記ベース部材は、上記レンズ鏡筒の上記雄ネジ部が螺合する雌ネジ部を有している。上記防塵部材は、上記レンズ鏡筒内の上記レンズから上記撮像素子に向かう光を通過させる開口部と、上記開口部から外側に延びる基部と、上記レンズ鏡筒の上記雄ネジ部よりも内側で上記レンズ鏡筒に当接する第1の当接部と、上記第1の当接部に接続され、上記撮像素子の周囲で上記基板に当接する第の当接部と、上記第2の当接部よりも内側で前記基板に当接する第3の当接部とを有し、前記防塵部材の前記基部には、前記第1の当接部の外側で厚さが薄くなった溝部が形成される。本明細書において、「内側」は、上記レンズ鏡筒に保持される上記レンズの光軸に近い側を意味し、「外側」は、上記レンズの光軸から遠い側を意味するものとする。
【0007】
上述した構成によれば、レンズ鏡筒の雄ネジ部とベース部材の雌ネジ部との螺合部分に面する空間が、撮像素子が配置される空間から防塵部材の第1の当接部によって隔絶されることとなる。したがって、撮像装置を組み立てる際に、レンズ鏡筒の雄ネジ部とベース部材の雌ネジ部との螺合により微細な屑が生じ、そのような異物が組立中又は使用中に例えば振動などによって移動したとしても、その異物が撮像素子の配置される空間に侵入することを防止できる。この結果、撮像素子に異物が付着することによって撮像性能が低下することを防止できる。
【0008】
上記第1の当接部は、上記開口部を取り囲むように上記基部から突出する突起であって、上記レンズ鏡筒の上記雄ネジ部よりも内側で上記レンズ鏡筒に当接する突起であってもよい。このように、第1の当接部を突起状に形成することで、レンズ鏡筒と防塵部材との間の接触面積を小さくできるので、撮像装置を組み立てる際にレンズ鏡筒と防塵部材との間に生じる摩擦抵抗を低減することができる。これにより、レンズ鏡筒をベース部材に螺合するときに必要とされる力を小さくできるので、レンズの光軸及び焦点の調整のためにレンズ鏡筒の光軸方向の位置を変化させることが容易になる。
【0009】
上記防塵部材は、上記第1の当接部が上記レンズ鏡筒を上記基板とは反対側に付勢するように弾性的に変形可能であることが好ましい。このように第1の当接部がレンズ鏡筒を付勢することによって、レンズ鏡筒の雄ネジ部とベース部材の雌ネジ部との間の隙間によって生じるガタつきが抑えられる。したがって、レンズ鏡筒とベース部材との間のガタつきが抑えられた状態で、より正確にレンズ鏡筒のレンズの光軸及び焦点の調整を行うことが可能となる。
【0010】
上記防塵部材の上記溝部は、上記第1の当接部に隣接して上記基板側に凹んでいることが好ましい。このように環状突起に隣接して溝部を形成することにより、外部から力が作用する環状突起の近傍で防塵部材を変形し易くできる。また、第1の当接部に隣接して溝部を形成することにより、第1の当接部がレンズ鏡筒に対して均等に当接しやすくなるので、第1の当接部とレンズ鏡筒との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0011】
この場合において、上記防塵部材の上記溝部は、上記レンズ鏡筒の上記雄ネジ部と上記ベース部材の上記雌ネジ部との螺合部分に対向するように配置されることが好ましい。このように溝部を配置することにより、レンズ鏡筒の雄ネジ部とベース部材の雌ネジ部との螺合により生じる異物を防塵部材の溝部で受け止めて集めることができる。
【0012】
上記防塵部材は、上記第2の当接部よりも内側で上記基板に当接する第3の当接部を有る。このような第3の当接部を設けることによって、防塵部材を基板とベース部材との間に挟んだ際に防塵部材に作用する力を第2の当接部と第3の当接部とに分散することができる。したがって、防塵部材が、基板とベース部材との間で倒れるように変形してしまうことを防止することができる。この場合において、防塵部材に作用する力をより効果的に分散させるために、レンズ鏡筒に当接する第1の当接部よりも内側に第3の当接部を位置させることが好ましい。
【0013】
上記防塵部材の上記第2の当接部は、上記基板の上記撮像素子を取り囲んでいることが好ましい。特に、上記基板と上記ベース部材との間に部分的に隙間が形成されている場合には、この隙間を通じて撮像装置の外部からベース部材の内側に異物が侵入することが考えられるが、第2の当接部によって基板の撮像素子を取り囲むことにより、外部からの異物が撮像素子に付着することを防止することができる。
【0014】
上記ベース部材には、上記防塵部材の形状に対応した形状の凹部が形成され、上記防塵部材は、上記ベース部材の上記凹部に嵌まり込むように構成されていてもよい。このような構成とすれば、撮像装置を組み立てる際に、防塵部材をベース部材に対して容易に位置決めすることができ、撮像装置の製造が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レンズ鏡筒の雄ネジ部とベース部材の雌ネジ部との螺合部分に面する空間が、撮像素子が配置される空間から防塵部材の第1の当接部によって隔絶されることとなる。したがって、撮像装置を組み立てる際に、レンズ鏡筒の雄ネジ部とベース部材の雌ネジ部との螺合により微細な屑が生じ、そのような異物が組立中又は使用中に例えば振動などによって移動したとしても、その異物が撮像素子の配置される空間に侵入することを防止できる。この結果、撮像素子に異物が付着することによって撮像性能が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態における撮像装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1の撮像装置の平面図である。
図3図3は、図1の撮像装置の前方分解斜視図である。
図4図4は、図1の撮像装置の後方分解斜視図である。
図5図5は、図3の撮像装置における防塵部材の正面図である。
図6図6は、図5の防塵部材の背面図である。
図7図7は、図5のA-A線断面図である。
図8図8は、図2のB-B線部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る撮像装置の実施形態について図1から図8を参照して詳細に説明する。なお、図1から図8において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図8においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態における撮像装置1を示す斜視図、図2は平面図、図3は前方分解斜視図、図4は後方分解斜視図である。本実施形態における撮像装置1は、例えば自動車や電車などの車両における監視カメラとして用いられるものである。図1から図4に示すように、本実施形態における撮像装置1は、表面に撮像素子11が実装された平坦な基板10と、基板10に取り付けられるベース部材20と、内部にレンズ31を保持したレンズ鏡筒30とを有している。
【0019】
図4に示すように、ベース部材20には3つのネジ孔21が形成されており、これらのネジ孔21に対応して基板10には3つの貫通孔12が形成されている。基板10の貫通孔12には取付ネジ13が挿通され、これらの取付ネジ13がベース部材20のネジ孔21に螺合されることにより、ベース部材20が基板10に固定されている。
【0020】
図3及び図4に示すように、レンズ鏡筒30の基板10側の端部の外周には雄ネジ部(ネジ山)32が形成されている。なお、レンズ鏡筒30内に保持されるレンズ31の枚数は特定の枚数に限定されるものではない。
【0021】
ベース部材20には、レンズ鏡筒30に対応した円形の開口22が形成されている。この開口22の内周には、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32に対応して雌ネジ部(ネジ溝)23が形成されている。レンズ鏡筒30の雄ネジ部32をベース部材20の雌ネジ部23に螺合させることにより、レンズ鏡筒30がベース部材20に取り付けられる。
【0022】
図3及び図4に示すように、ベース部材20と基板10との間には、例えばゴムなどの弾性を有する材料からなる防塵部材40が配置されている。より具体的には、ベース部材20の基板10側には、防塵部材40の形状に対応した形状の凹部25が形成されており、このベース部材20の凹部25に防塵部材40が嵌まり込むことによって、ベース部材20と基板10との間に防塵部材40が配置される。
【0023】
図5は防塵部材40の正面図、図6は背面図、図7図5のA-A線断面図である。図5から図7に示すように、防塵部材40は、YZ平面と平行に延びる略矩形状の基部41と、基部41の中央に形成された開口部42と、基部41の外周縁から基板10側(-X方向)に延びる外側延出部43と、基部41のレンズ鏡筒30側の面から+X方向に突出する環状突起44(第1の当接部)と、基部41の基板10側の面から基板10側(-X方向)に延びる矩形筒状の内側延出部45とを有している。
【0024】
図5に示すように、環状突起44は、基部41上で開口部42を取り囲むように配置されている。この環状突起44は基部41を介して外側延出部43に接続されている。また、内側延出部45は、環状突起44よりも内側の位置で開口部42を取り囲むように延びている。
【0025】
図5及び図7に示すように、防塵部材40の基部41には、基板10側(-X方向)に凹んだ溝部46が環状突起44に隣接して形成されている。本実施形態における溝部46は、環状突起44の外側に環状突起44と同心円状に形成されている。図7に示すように、基部41の厚さは溝部46の部分で薄くなっており、防塵部材40は溝部46の部分で曲がりやすくなっている。
【0026】
図8は、図2のB-B線部分断面図である。図8に示すように、防塵部材40は、その開口部42が撮像素子11の+X方向側に位置するように配置されている。これによって、レンズ鏡筒30内のレンズ31からの光は、防塵部材40の開口部42を通過して基板10上の撮像素子11上に照射されるようになっている。
【0027】
図8に示すように、防塵部材40の環状突起44は、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32よりも内側でレンズ鏡筒30の端面30Aに当接している。例えば、防塵部材40の溝部46がない場合には、防塵部材40の環状突起44がレンズ鏡筒30の端面30Aに当接した際に防塵部材40が不均一に曲がる(変形する)可能性がある。防塵部材40の曲がり方が不均一になると、環状突起44がレンズ鏡筒30の端面30Aに接触する際に環状突起44の一部とレンズ鏡筒30の端面30Aとの間に隙間が生じる可能性がある。本実施形態では、上述のように環状突起44に隣接して溝部46を形成しているので、環状突起44がレンズ鏡筒30の端面30Aに対して均等に当接しやすくなり、環状突起44とレンズ鏡筒30の端面30Aとの間に隙間が生じることを防止することができる。
【0028】
また、防塵部材40の外側延出部43は、基板10上の撮像素子11の外側で基板10の表面10Aに当接しており、撮像素子11の周囲で基板10に当接する第2の当接部として機能する。防塵部材40の内側延出部45は、基板10上の撮像素子11の外側かつ外側延出部43の内側で基板10の表面10Aに当接しており、外側延出部43よりも内側で基板10に当接する第3の当接部として機能する。
【0029】
ここで、防塵部材40の厚さ(図7における外側延出部43の先端から環状突起44の先端までの距離H)は、基板10の表面10Aとレンズ鏡筒30の端面30Aとの間の距離よりも大きくなっている。したがって、防塵部材40を基板10とベース部材20との間に配置した場合には、図8に示すように、防塵部材40が弾性変形して、防塵部材40の環状突起44がレンズ鏡筒30の端面30Aに密着するとともに、外側延出部43及び内側延出部45が基板10の表面10Aに密着する。このように防塵部材40が弾性変形することにより、防塵部材40の環状突起44がレンズ鏡筒30を+X方向に付勢するようになっている。
【0030】
レンズ鏡筒30の雄ネジ部32とベース部材20の雌ネジ部23との螺合を円滑にするために、両者の間にはわずかな隙間が形成されているが、この隙間によってレンズ鏡筒30とベース部材20との間でガタつきが生じることとなる。本実施形態では、上述のように防塵部材40の環状突起44がレンズ鏡筒30を+X方向に付勢しているため、このようなガタつきが抑えられる。
【0031】
上述のように弾性変形する防塵部材40を外側延出部43だけで支持することは難しいので、本実施形態では、外側延出部43に加えて、外側延出部43の内側に内側延出部45を設けている。このように内側延出部45を設けることによって、防塵部材40を基板10とベース部材20との間に挟んだ際に防塵部材40に作用する力を外側延出部43と内側延出部45とに分散することができる。したがって、防塵部材40が、基板10とベース部材20との間で倒れるように変形してしまうことを防止することができる。この場合において、防塵部材40に作用する力をより効果的に分散させるためには、本実施形態のように、内側延出部45をレンズ鏡筒30に当接する環状突起44よりも内側に配置することが好ましい。
【0032】
上述したような防塵部材40を基板10とベース部材20との間に配置することによって、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32とベース部材20の雌ネジ部23との螺合部分に面する空間S1(図8参照)が、撮像素子11が配置される空間S2(図8参照)と防塵部材40の環状突起44で隔絶される。また、本実施形態では、防塵部材40の溝部46が上記螺合部分に対向するようになっている。
【0033】
上述した構成の撮像装置1を組み立てる際には、まず、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32をベース部材20に雌ネジ部23に螺合してレンズ鏡筒30をベース部材20に取り付ける。この状態で、ベース部材20の凹部25(図4参照)に防塵部材40を嵌め込む。次に、撮像素子11が実装された基板10を取付ネジ13を用いてベース部材20に固定する。
【0034】
このとき、防塵部材40の環状突起44がレンズ鏡筒30の端面30Aに当接するが、ベース部材20と基板10との間で防塵部材40が弾性変形するため、防塵部材40の環状突起44がレンズ鏡筒30を基板10とは反対側に付勢することとなる。これにより、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32とベース部材20の雌ネジ部23との間の隙間によって生じるガタつきが抑えられる。したがって、レンズ鏡筒30とベース部材20との間のガタつきが抑えられた状態で、レンズ鏡筒30のレンズ31の光軸及び焦点の調整をより正確に行うことができる。このレンズ31の光軸及び焦点の調整は、レンズ鏡筒30をベース部材20に対して回転させることによって行われる。
【0035】
ここで、上述したように、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32とベース部材20の雌ネジ部23との螺合部分に面する空間S1(図8参照)は、防塵部材40の環状突起44によって撮像素子11が配置される空間S2(図8参照)から隔絶されている。したがって、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32とベース部材20の雌ネジ部23との螺合により微細な屑が生じたとしても、そのような異物が空間S1から空間S2に侵入することがなく、撮像素子11に異物が付着することによって撮像性能が低下することを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態では、防塵部材40の溝部46が上記螺合部分に対向するように構成されているため、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32とベース部材20の雌ネジ部23との螺合により生じる異物を防塵部材40の溝部46で受け止めて集めることができる。
【0037】
レンズ31の光軸及び焦点の調整が完了した後、レンズ鏡筒30とベース部材20とを互いに固定する。図1に示すように、レンズ鏡筒30の雄ネジ部32に形成されたカット面34により、レンズ鏡筒30とベース部材20との間には隙間Rが形成されるが、例えば、この隙間Rから例えば接着剤を注入することでレンズ鏡筒30とベース部材20とを固定することができる。
【0038】
以上のようにして撮像装置1が完成する。このような撮像装置1によれば、防塵部材40の溝部46に集まった異物が使用中に例えば振動などによって移動したとしても、防塵部材40の環状突起44によって空間S1と空間S2とが隔絶されているため、異物が空間S1から空間S2に侵入することが防止され、撮像素子11に異物が付着することによって撮像性能が低下することを防止することができる。
【0039】
なお、レンズ鏡筒30とベース部材20との間のガタつきは、例えば板バネなどによりレンズ鏡筒30を付勢することでも低減することができるが、そのような場合には、空間S2への異物の侵入を防止する防塵部材に加えて板バネを用意する必要がある上に、レンズ鏡筒30とベース部材20とを固定した後は、そのような板バネは不要なものとなってしまう。これに対して、本実施形態によれば、防塵部材40が、空間S2への異物の侵入を防止する機能とレンズ鏡筒30を+X方向に付勢する機能とを兼ね備えているので、撮像装置の製造コストを低減することができる。
【0040】
また、本実施形態における防塵部材40の外側延出部43は、基板10の撮像素子11の全周にわたって撮像素子11を取り囲んでいるため、外部からの異物が撮像素子11に付着することも防止できる。平坦な基板10とベース部材20との間で正確な面合わせを行うために、ベース部材20のネジ孔21が形成される3つのネジ取付部24(図4参照)はわずかに突出しており、この3つのネジ取付部24の端面と基板10の表面10Aとの間で面合わせが行われる。したがって、ネジ取付部24以外の部分では、基板10とベース部材20との間にわずかな隙間Gが形成されることとなる(図8参照)。この隙間Gを通じて外部からベース部材20の内側に異物が侵入することが考えられるが、本実施形態では、防塵部材40の外側延出部43が上述のように撮像素子11を取り囲んでいるため、外部からの異物が撮像素子11に付着することが防止される。
【0041】
上述した実施形態では、レンズ鏡筒30に当接する第1の当接部を円環状の突起44としているが、これに限られるものではない。例えば、開口部42の周囲に矩形状に形成された突起やその他の形状に形成された突起を第1の当接部とすることもできる。さらに、第1の当接部を突起状に形成する必要はなく、レンズ鏡筒30の端面30Aと面接触するように第1の当接部を構成してもよい。ただし、レンズ鏡筒30に当接する第1の当接部を環状突起44のように突起状に形成することで、レンズ鏡筒30と防塵部材40との間の接触面積を小さくできるので、撮像装置1を組み立てる際にレンズ鏡筒30と防塵部材40との間に生じる摩擦抵抗を低減することができる。このようにレンズ鏡筒30と防塵部材40との間の摩擦抵抗を低減することで、レンズ鏡筒30をベース部材20に螺合するときに必要とされる力を小さくできるので、レンズ31の光軸及び焦点の調整のためにレンズ鏡筒30の光軸方向の位置を変化させることが容易になる。
【0042】
上述した実施形態においては、外側延出部43が環状突起44の外側に設けられているが、外側延出部43の半径方向の位置と環状突起44の半径方向の位置とが一致していてもよい。すなわち、環状突起44が外側延出部43からレンズ31側(+X方向側)に延びていてもよい。この場合には、内側延出部45がなくても、防塵部材40が基板10とベース部材20との間で倒れなくなる。これにより、防塵部材40の平面形状を小さくすることができる。
【0043】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 撮像装置
10 基板
11 撮像素子
13 取付ネジ
20 ベース部材
21 ネジ孔
22 開口
23 雌ネジ部
24 ネジ取付部
25 凹部
30 レンズ鏡筒
31 レンズ
32 雄ネジ部
40 防塵部材
41 基部
42 開口部
43 外側延出部(第2の当接部)
44 環状突起(第1の当接部)
45 内側延出部(第3の当接部)
46 溝部
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8