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特許7252757撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20230329BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20230329BHJP
   D06M 15/267 20060101ALI20230329BHJP
   D06M 15/285 20060101ALI20230329BHJP
   D06M 15/248 20060101ALI20230329BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C09K3/18 104
D06M15/263
D06M15/267
D06M15/285
D06M15/248
D06M15/643
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018245421
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105363
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 高輔
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌央
(72)【発明者】
【氏名】柘植 好揮
(72)【発明者】
【氏名】笹田 祥弘
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119250(JP,A)
【文献】特開2018-104632(JP,A)
【文献】国際公開第2018/054712(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/163570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
D06M 13/00- 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)に由来する構成単位及び下記一般式(A-2)で表される化合物(A2)に由来する構成単位を含有する非フッ素系ポリマー(α)と、
シリコーン樹脂(β)と、
を含み、
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)と前記化合物(A2)との合計質量が、前記非フッ素系ポリマー(α)を構成する単量体成分の全量に対して、60~100質量%であり、
前記非フッ素系ポリマー(α)の質量及び前記シリコーン樹脂(β)の質量の比率(α)/(β)が、15/85~85/15である、撥水剤組成物。
【化1】

[式(A-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数12~30の1価の炭化水素基を表す。]
【化2】

[式(A-2)中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数1~6の2価の炭化水素基を表し、Zはエステル基またはアミド基を表し、Wは-CO-R13(式中、R13は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す)で表される基、-NH-CO-NHで表される基、又は下記式(A-3)で表される基を表す。
【化3】
【請求項2】
前記非フッ素系ポリマー(α)が、塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくとも1種の単量体(VC)に由来する構成単位を更に含有する、請求項1に記載の撥水剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の撥水剤組成物が付着した繊維製品からなる、撥水性繊維製品。
【請求項4】
繊維製品を、請求項1又は2に記載の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程、を備える、撥水性繊維製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水剤組成物、それを用いた撥水剤組成物撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素系化合物を含むフッ素系撥水剤が知られており、かかるフッ素系撥水剤を繊維製品等に処理することにより、その表面に撥水性が付与された繊維製品が知られている。このようなフッ素系撥水剤は一般にフルオロアルキル基を有する単量体(モノマー)を重合、若しくは共重合させることにより製造される。フッ素系撥水剤で処理された繊維製品は優れた撥水性を発揮するものの、フルオロアルキル基を有する単量体は環境負荷の懸念が明らかとなってきたため、フッ素系化合物を含まずに、フッ素系撥水剤に匹敵する高性能な撥水性能を発現する非フッ素系撥水剤が国際的に求められるようになってきた。
【0003】
そこで、近年、フッ素系化合物を含まない非フッ素系撥水剤について研究が進められている。例えば、下記特許文献1には、特定の(メタ)アクリレートエステル単量体から誘導された繰り返し単位を有する非フッ素重合体、特定の界面活性剤、ならびに水を含む液状媒体を含む水系エマルションである表面処理剤が開示されている。下記特許文献2には、フッ素を含まない重合性単量体として、特定の(メタ)アクリレート及び特定の芳香環、或いは、特定のシクロアルカンを含有する重合性単量体が特定の割合で重合したアクリル系共重合体を含有する、はっ水剤組成物が開示されている。下記特許文献3には、シリコン系化合物、ワックス系化合物、ワックス-ジルコニウム系化合物の少なくとも1種を含む繊維用加工剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-172198号公報
【文献】特開2015-221952号公報
【文献】特開2006-124866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の非フッ素系撥水剤は、十分な撥水性を繊維製品に付与しようとすると、撥水性成分が高濃度となる条件で繊維製品を処理する必要があった。このような条件で処理された繊維製品は、風合いが硬くなり、爪で繊維表面をこすったときに爪痕(チョークマークともいう)が現れやすいという問題がある。
【0006】
また、繊維製品は、表面に付着した水滴が長く残っていると、水が浸み込むという問題がある。そのため、撥水性繊維製品は、撥水性及び耐久撥水性を有しているだけでなく、繊維表面に付着した水滴がすぐに転がり落ちる水はじき性も有していることが求められる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撥水性、耐久撥水性及び水はじき性に優れるとともに、風合いが良好であり、且つチョークマークが発生しにくい撥水性繊維製品、並びにその実現を可能とする撥水剤組成物及び撥水性繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)に由来する構成単位及び下記一般式(A-2)で表される化合物(A2)に由来する構成単位を含有する非フッ素系ポリマー(α)と、シリコーン樹脂(β)と、を含む撥水剤組成物を提供する。
【0009】
【化1】

[式(A-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数12~30の1価の炭化水素基を表す。]
【0010】
【化2】

[式(A-2)中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数1~6の2価の炭化水素基を表し、Zはエステル基またはアミド基を表し、Wは-CO-R13(式中、R13は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す)で表される基、-NH-CO-NHで表される基、又は下記式(A-3)で表される基を表す。
【化3】

【0011】
本発明の撥水剤組成物によれば、上記特定の非フッ素系ポリマー(α)と、シリコーン樹脂(β)とが組み合わせて含まれることにより、撥水性、耐久撥水性、水はじき性及び風合いに優れた撥水性繊維製品を得ることができ、得られる繊維製品はチョークマークが生じにくい。このような効果が得られる理由について本発明者らは以下のとおり推察する。上記非フッ素系ポリマー(α)は、化合物(A2)に由来する構成単位として、エステル基若しくはアミド基と、ウレイド基若しくはケトン基とを有することによって、凝集しやすい特性を有するものと考えられ、このような特性を有する非フッ素系ポリマー(α)とシリコーン樹脂(β)とが含まれる組成物によって処理された繊維は、繊維表面に凹凸構造が形成されやすくなるものと考えられる。そのため、繊維の風合いが損なわれず、チョークマークも発生しにくいような低濃度での処理条件で非フッ素系ポリマー(α)及びシリコーン樹脂(β)を繊維上に付着させても、凹凸構造が形成されることによって十分な撥水性、耐久撥水性及び水はじき性を付与できたと本発明者らは考えている。
【0012】
ところで、撥水加工した繊維製品等は、所定の部分にウレタン樹脂又はアクリル樹脂等をコーティングする加工が行われることがある。この場合の繊維製品は十分な撥水性を有しながらも、コーティングが施される部分はコーティングがはがれにくいことが求められる。コーティングの剥がれにくさは、撥水加工した繊維製品からコーティング膜を剥離するのに必要な応力(剥離強度)を測定することにより評価することができる。本発明の撥水剤組成物によれば、得られる繊維製品は、コーティングに対する十分な剥離強度を有するものになり得る。
【0013】
撥水性、耐久撥水性及び剥離強度の観点から、上記非フッ素系ポリマー(α)は、塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくとも1種の単量体(VC)に由来する構成単位を更に含有することができる。
【0014】
本発明はまた、上記本発明に係る撥水剤組成物が付着した繊維製品からなる撥水性繊維製品を提供する。
【0015】
本発明の撥水性繊維製品は、撥水性、耐久撥水性、水はじき性及び風合いに優れるとともに、チョークマークが生じにくい。また、本発明の撥水性繊維製品は、コーティングに対する十分な剥離強度を有するものになり得る。
【0016】
本発明はまた、繊維製品を、上記本発明に係る撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える撥水性繊維製品の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の撥水性繊維製品の製造方法によれば、撥水性、耐久撥水性、水はじき性及び風合いに優れるとともに、チョークマークが生じにくい撥水性繊維製品を得ることができる。また、本発明の方法で製造された撥水性繊維製品は、コーティングに対する十分な剥離強度を有するものになり得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、撥水性、耐久撥水性及び水はじき性に優れるとともに、風合いが良好であり、且つチョークマークが発生しにくい撥水性繊維製品、並びにその実現を可能とする撥水剤組成物及び撥水性繊維製品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態の撥水剤組成物は、非フッ素系ポリマー(α)と、シリコーン樹脂(β)と、を含む。
【0020】
<非フッ素系ポリマー(α)>
非フッ素系ポリマー(α)は、下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A1)(以下、「(A1)成分」ともいう)に由来する構成単位及び下記一般式(A-2)で表される化合物(A2)(以下、「(A2)成分」ともいう)に由来する構成単位を含有する。
【0021】
【化4】

[式(A-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数12~30の1価の炭化水素基を表す。]
【0022】
【化5】

[式(A-2)中、R11は水素又はメチル基を表し、R12は炭素数1~6の2価の炭化水素基を表し、Zはエステル基またはアミド基を表し、Wは-CO-R13(R13は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す)で表される基、-NH-CO-NHで表される基、又は下記式(A-3)で表される基を表す。
【化6】

【0023】
ここで、「(メタ)アクリル酸エステル」とは「アクリル酸エステル」又はそれに対応する「メタクリル酸エステル」を意味し、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」等においても同義である。
【0024】
上記(A1)成分は、置換基を有していてもよい炭素数が12~30の1価の炭化水素基を有する。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、撥水性と風合いの観点から、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。この場合、撥水性がより優れるものとなる。炭素数12~30の1価の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基等のうちの1種以上が挙げられる。本実施形態では、上記一般式(A-1)において、Rは無置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0025】
上記炭化水素基の炭素数は、上記と同様の観点から、12~24であることが好ましい。
【0026】
上記炭化水素基の炭素数は、12~22であることがより好ましい。炭素数がこの範囲である場合は、撥水性と風合が特に優れるようになる。炭化水素基として特に好ましいのは、炭素数が18~22の直鎖状のアルキル基である。
【0027】
上記(A1)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコシル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルが挙げられる。
【0028】
上記(A1)成分は、架橋剤と反応可能なヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することができる。この場合、得られる繊維製品の耐久撥水性を更に向上させることができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。また、上記(A1)成分がアミノ基を有する場合、得られる繊維製品の風合いを更に向上させることができる。
【0029】
上記(A1)成分は、1分子内に重合性不飽和基を1つ有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。
【0030】
上記(A1)成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記式(A-2)中、R12は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式の環状を有していてもよい。
【0032】
上記式(A-2)中、Zがエステル基の場合、R12は、炭素数2~4の炭化水素基であり、Wは、-NH-CO-NHで表される基又は上記式(A-3)で表される基であることが好ましい。Zがアミド基である場合、R12は、炭素数2~4の炭化水素基であり、Wは-CO-R13で表される基であり、R13の炭素数が1~2であることが好ましい。
【0033】
上記(A2)成分としては、特に限定されないが、例えば、ダイアセトンアクリルアミド、2-メチルプロペン酸[2-(2-オキソ-2-イミダゾリジニル)エチル]、N-[2-(2-オキソイミダゾリジン-3-イル)エチル]メタクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、繊維製品の耐久撥水性の観点から、上記(A2)成分としては、ダイアセトンアクリルアミド、2-メチルプロペン酸[2-(2-オキソ-2-イミダゾリジニル)エチル]が好ましい。
【0034】
上記(A2)成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)における(A1)成分に由来する構成単位と(A2)成分に由来する構成単位との含有割合は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との比(A1)/(A2)が、99.9/0.1~70/30であることが好ましく、99.8/0.2~80/20であることがより好ましく、99.7/0.3~90/10であることがさらに好ましい。(A1)/(A2)が上記の範囲内であると、得られる繊維製品の耐久撥水性、水はじき性がより良好となる。
【0036】
配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計質量は、非フッ素系ポリマー(α)を構成する単量体成分の全量に対して、60~100質量%が好ましく、70~99質量%がより好ましく、80~98質量%がさらに好ましい。
【0037】
非フッ素系ポリマー(α)は、剥離強度の観点から、(A1)成分及び(A2)成分に加えて、塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくともいずれか1種の単量体(VC)(以下、「(VC)成分」ともいう。)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0038】
(VC)成分は、繊維製品の風合いを維持する観点から、塩化ビニルが好ましい。
【0039】
配合する(VC)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量に対して、撥水性、耐久撥水性及び剥離強度の観点から、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。配合する(VC)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量に対して、撥水性、耐久撥水性及び風合いの観点から、100質量部以下であることが好ましく、75質量部以下であることがより好ましい。
【0040】
非フッ素系ポリマー(α)は、非フッ素系ポリマー(α)の乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性を向上できる点で、(A1)成分及び(A2)成分に加えて、(B1)HLBが7~18である下記一般式(I-1)で表される化合物、(B2)HLBが7~18である下記一般式(II-1)で表される化合物、及び(B3)HLBが7~18である、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物のうちから選ばれる少なくとも1種の反応性乳化剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0041】
【化7】

[式(I-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を表し、Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
【0042】
【化8】

[式(II-1)中、Rは重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
【0043】
「反応性乳化剤」とは、ラジカル反応性を有する乳化分散剤、すなわち、分子内に1つ以上の重合性不飽和基を有する界面活性剤のことであり、(メタ)アクリル酸エステルのような単量体と共重合させることができるものである。
【0044】
また、「HLB」とは、エチレンオキシ基を親水基、それ以外を全て親油基と見なし、グリフィン法により算出したHLB値のことである。
【0045】
本実施形態にて使用される上記(B1)~(B3)の化合物のHLBは、7~18であり、本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性(以降、単に乳化安定性という)の点で、9~15が好ましい。さらには、撥水剤組成物の貯蔵安定性の点で上記範囲内の異なるHLBを有する2種以上の反応性乳化剤(B)を併用することがより好ましい。
【0046】
本実施形態にて使用される上記一般式(I-1)で表される反応性乳化剤(B1)において、Rは水素又はメチル基であり、(A1)成分及び/又は(A2)成分との共重合性の点でメチル基であることがより好ましい。Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましい。Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基である。Yにおけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0047】
上記一般式(I-1)で表される化合物としては、下記一般式(I-2)で表される化合物が好ましい。
【0048】
【化9】

[式(I-2)中、Rは水素又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、mは上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、具体的には、1~80の整数が好ましく、mが2以上のときm個のAOは同一であっても異なっていてもよい。]
【0049】
上記一般式(I-2)で表される化合物において、Rは水素又はメチル基であり、(A1)成分及び/又は(A2)成分との共重合性の点でメチル基であることがより好ましい。Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましい。AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。AOの種類及び組み合わせ、並びにmの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、mは1~80の整数が好ましく、1~60の整数であることがより好ましい。mが2以上のときm個のAOは同一であっても異なっていてもよい。また、AOが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0050】
上記一般式(I-2)で表される反応性乳化剤(B1)は、従来公知の方法で得ることができ、特に限定されるものではない。また、市販品より容易に入手することができ、例えば、花王株式会社製の「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」、「ラテムルPD-450」等を挙げることができる。
【0051】
本実施形態にて使用される上記一般式(II-1)で表される反応性乳化剤(B2)において、Rは重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基であり、トリデセニル基、トリデカジエニル基、テトラデセニル基、テトラジエニル基、ペンタデセニル基、ペンタデカジエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、ヘプタデカトリエニル基等が挙げられる。本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、Rは炭素数14~16の1価の不飽和炭化水素基がより好ましい。
【0052】
は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基である。Yにおけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、アルキレンオキシ基はエチレンオキシ基がより好ましい。
【0053】
上記一般式(II-1)で表される化合物としては、下記一般式(II-2)で表される化合物が好ましい。
【0054】
【化10】

[式(II-2)中、Rは重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、nは上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、具体的には、1~50の整数が好ましく、nが2以上のときn個のAOは同一であっても異なっていてもよい。]
【0055】
上記一般式(II-2)で表される化合物におけるRは、上述した一般式(II-1)におけるRと同様のものが挙げられる。
【0056】
Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、AOの種類及び組み合わせ、並びにnの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、AOはエチレンオキシ基がより好ましく、nは1~50の整数が好ましく、5~20の整数がより好ましく、8~14の整数がさらに好ましい。nが2以上のときn個のAOは同一であっても異なっていてもよい。また、AOが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0057】
本実施形態にて使用される上記一般式(II-2)で表される反応性乳化剤(B2)は、従来公知の方法で対応する不飽和炭化水素基を有するフェノールにアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができ、特に限定されるものではない。例えば、苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0058】
上記対応する不飽和炭化水素基を有するフェノールには、工業的に製造された純品または混合物のほか、植物等から抽出・精製された純品又は混合物として存在するものも含まれる。例えば、カシューナッツの殻等から抽出され、カルダノールと総称される、3-[8(Z),11(Z),14-ペンタデカトリエニル]フェノール、3-[8(Z),11(Z)-ペンタデカジエニル]フェノール、3-[8(Z)-ペンタデセニル]フェノール、3-[11(Z)-ペンタデセニル]フェノール等が挙げられる。
【0059】
本実施形態にて使用される反応性乳化剤(B3)は、HLBが7~18である、ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物である。ヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂としては、ヒドロキシ不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸等)を含んでいてもよい脂肪酸のモノ又はジグリセライド、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸(リシノール酸、リシノエライジン酸、2-ヒドロキシテトラコセン酸等)を含む脂肪酸のトリグリセライドを挙げることができる。本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のトリグリセライドのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ヒマシ油(リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド)の炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物がより好ましく、ヒマシ油のエチレンオキサイド付加物がさらに好ましい。さらに、アルキレンオキサイドの付加モル数は、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化安定性の点で、20~50モルがより好ましく、25~45モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキサイドが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0060】
本実施形態にて使用される反応性乳化剤(B3)は、従来公知の方法でヒドロキシル基及び重合性不飽和基を有する油脂にアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができ、特に限定されるものではない。例えば、リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド、すなわちヒマシ油に苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0061】
本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)における上記(B)成分の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性、及び本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性を向上できる観点で、非フッ素系ポリマー(α)を構成する単量体成分の全量に対して、0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。
【0062】
本実施形態の撥水剤組成物に含まれる非フッ素系ポリマー(α)は、得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(A1)成分及び(A2)成分に加えて、下記(C1)、(C2)、(C3)及び(C4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2の(メタ)アクリル酸エステル単量体(C)(以下、「C成分」ともいう)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0063】
(C1)下記一般式(C-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体
【化11】

[式(C-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rはヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を表す。ただし、分子内における(メタ)アクリロイルオキシ基の数は2以下である。]
【0064】
(C2)下記一般式(C-2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体
【化12】

[式(C-2)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を表す。]
【0065】
(C3)下記一般式(C-3)で表されるメタクリル酸エステル単量体
【化13】

[式(C-3)中、Rは無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基を表す。]
【0066】
(C4)下記一般式(C-4)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体
【化14】

[式(C-4)中、R10は水素又はメチル基を表し、pは2以上の整数を表し、Sは(p+1)価の有機基を表し、Tは重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。]
【0067】
上記(C1)の単量体は、エステル部分にヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体である。架橋剤と反応可能な点から、上記炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。これらの架橋剤と反応可能な基を有する(C1)の単量体を含有する非フッ素系ポリマー(α)を、架橋剤とともに繊維製品に処理した場合に、得られる繊維製品の風合を維持したまま、耐久撥水性を向上することができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基であってもよい。
【0068】
上記鎖状炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。また、鎖状炭化水素基は、上記官能基の他に置換基を更に有していてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、直鎖状であること、及び/又は、飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0069】
具体的な(C1)の単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。さらに得られる繊維製品の風合を向上させる点で、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが好ましい。
【0070】
配合する(C1)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量に対して、撥水性の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C1)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量に対して、撥水性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0071】
上記(C2)の単量体は、エステル部分に炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であり、環状炭化水素基としては、イソボルニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基等が挙げられる。これら環状炭化水素基はアルキル基等の置換基を有していてもよい。ただし、置換基が炭化水素基の場合、置換基及び環状炭化水素基の炭素数の合計が11以下となる炭化水素基が選ばれる。また、これら環状炭化水素基は、エステル結合に直接結合していることが、耐久撥水性向上の観点から好ましい。環状炭化水素基は、脂環式であっても芳香族であってもよく、脂環式の場合、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。具体的な単量体としては、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシルが好ましく、メタクリル酸イソボルニルがより好ましい。
【0072】
配合する(C2)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C2)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0073】
上記(C3)の単量体は、エステル部分のエステル結合に、無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基が直接結合したメタクリル酸エステル単量体である。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~2の直鎖炭化水素基、及び、炭素数3~4の分岐炭化水素基が好ましい。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。具体的な化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチルが挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸t-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0074】
配合する(C3)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C3)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0075】
上記(C4)の単量体は、1分子内に3以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体である。本実施形態では、上記一般式(C-4)におけるTが(メタ)アクリロイルオキシ基である、1分子内に3以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。式(C-4)において、p個のTは同一であっても異なっていてもよい。具体的な化合物としては、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、テトラメチロールメタンテトラアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートがより好ましい。
【0076】
配合する(C4)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C4)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0077】
本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)における上記の(C)成分の単量体の合計構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合の観点で、非フッ素系ポリマー(α)を構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0078】
配合する(C)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。配合する(C)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0079】
本実施形態の撥水剤組成物に含まれる非フッ素系ポリマー(α)は、(A1)成分及び(A2)成分に加えて、これらと共重合可能な単官能の単量体(D)(以下、「(D)成分」ともいう)を、本発明の効果を損なわない範囲において含有することができる。
【0080】
(D)成分としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、(A)成分及び(C)成分以外の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、エチレン、スチレン等のフッ素を含まない(VC)成分以外のビニル系単量体等が挙げられる。なお、(A)成分及び(C)成分以外の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、炭化水素基に、ビニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基、ブロックドイソシアネート基等の置換基を有していてもよく、第4級アンモニウム基等の架橋剤と反応可能な基以外の置換基を有していてもよく、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合等を有していてもよい。(A)成分及び(C)成分以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも得られる繊維製品のコーティングに対する剥離強度を向上できる点で、(メタ)アクリロイルモルホリンがより好ましい。
【0081】
配合する(D)成分の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。配合する上記(D)の単量体の質量は、配合する(A1)成分の質量と(A2)成分の質量との合計100質量部に対して、撥水性の観点から、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましい。
【0082】
本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)は、架橋剤と反応可能なヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが、得られる繊維製品の耐久撥水性を向上させることから好ましい。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。また、非フッ素系ポリマー(α)は、アミノ基を有することが、得られる繊維製品の風合も向上させることから好ましい。
【0083】
本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の重量平均分子量は3万以上であることが好ましい。重量平均分子量が3万以上であると、得られる繊維製品の撥水性が一層向上する傾向がある。さらに、非フッ素系ポリマー(α)の重量平均分子量は、10万以上であることがより好ましい。この場合、得られる繊維製品は、より十分に撥水性を発揮させることができる。非フッ素系ポリマー(α)の重量平均分子量の上限は500万程度が好ましい。
【0084】
非フッ素系ポリマー(α)の重量平均分子量とは、GPC装置(東ソー(株)製GPC「HLC-8020」)により、カラム温度40℃、流量1.0ml/分の条件下で、溶離液にテトラヒドロフランを用いて測定し、標準ポリスチレン換算での値をいう。なお、カラムは、東ソー(株)製の商品名TSK-GEL G5000HHR、G4000HHR、G3000HHRの3本を接続したものを用いる。
【0085】
本実施形態において、非フッ素系ポリマー(α)の105℃における溶融粘度は1000Pa・s以下であることが好ましい。105℃における溶融粘度が1000Pa・s以下である場合、得られる繊維製品の風合を良好に維持しやすくなる傾向にある。また、非フッ素系ポリマー(α)の溶融粘度が1000Pa・s以下である場合、非フッ素系ポリマー(α)を乳化又は分散して撥水剤組成物とした際に、非フッ素系ポリマー(α)が析出したり沈降したりすることを抑制できるため、撥水剤組成物の貯蔵安定性を良好に維持しやすくなる傾向にある。なお、105℃における溶融粘度は、500Pa・s以下であることがより好ましい。この場合、得られる繊維製品等は、十分に撥水性を発揮しつつ、風合もより優れたものとなる。
【0086】
「105℃における溶融粘度」とは、高架式フローテスター(例えば、島津製作所製CFT-500)を用い、ダイ(長さ10mm、直径1mm)を取り付けたシリンダー内に非フッ素系ポリマーを1g入れ、105℃で6分間保持し、プランジャーにより100kg・f/cmの荷重を加えて測定したときの粘度をいう。
【0087】
<シリコーン樹脂(β)>
シリコーン樹脂(β)としては、シリコーンレジン、シリコーンオイルを挙げることができる。シリコーンレジンとは、構成成分としてMQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含み、25℃にて固形状であり、三次元構造を有するオルガノポリシロキサンである。ここで、M、D、T及びQは、それぞれ(R’’)SiO0.5単位、(R’’)SiO単位、R’’SiO1.5単位及びSiO単位を表す。R’’は、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6~15の1価の芳香族炭化水素基を表す。
【0088】
シリコーンレジンは、一般に、MQレジン、MTレジン又はMDTレジンとして知られており、MDQ、MTQ又はMDTQと示される部分を有することもある。
【0089】
シリコーンレジンは、これを適当な溶媒に溶解させた溶液としても入手することができる。溶媒としては、例えば、比較的低分子量のメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、n-ヘキサン、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン及びこれらの溶媒の混合物等が挙げられる。
【0090】
シリコーンレジンの溶液としては、例えば、信越化学工業(株)より市販されているKF7312J(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:デカメチルシクロペンタシロキサン=50:50混合物)、KF7312F(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:オクタメチルシクロテトラシロキサン=50:50混合物)、KF9021L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)、KF7312L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)等が挙げられる。
【0091】
シリコーンレジン単独としては、例えば、東レダウコーニング(株)より市販されているMQ-1600 solid Resin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン)、MQ-1640 Flake Resin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン)などが挙げられる。上記市販品は、トリメチルシリル基含有ポリシロキサンを含み、MQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含むものである。
【0092】
シリコーンオイルとは、直鎖状のオルガノポリシロキサンであり、オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかに有機基を有するものであってもよい。このようなシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪族アミド変性シリコーンオイル、下記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルなどを挙げることができる。なお、下記一般式(1)において、各構造単位はブロックであっても、ランダムであっても、交互に配列していてもよい。
【0093】
【化15】

[式(1)中、R20、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、R23は、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数3~22のアルキル基を表し、R30、R31、R32、R33、R34及びR35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数3~22のアルキル基を表し、aは0以上の整数を表し、bは1以上の整数を表し、(a+b)は10~200であり、aが2以上の場合、複数存在するR20及びR21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するR22及びR23はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0094】
このようなシリコーン樹脂の中でも、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、シリコーンオイルが好ましく、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイルがより好ましく、得られる繊維製品の撥水性及び耐久撥水性を一層向上させることから、アルキル変性シリコーンが、又は、得られる繊維製品の風合いを一層向上させ、チョークマークの発生を一層低減できることから、アミノ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、ジメチルシリコーンが更に好ましい。
【0095】
上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンオイルにおいて、上記の炭素数1~4のアルコキシル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。炭素数1~4のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。工業的に製造し易く、入手が容易であるという点で、R20、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0096】
上記の芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基としては、例えば、炭素数8~40のアラルキル基、下記一般式(2)又は(3)で表される基等が挙げられる。
【0097】
【化16】

[式(2)中、R40は、炭素数2~6のアルキレン基を表し、R41は、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基を表し、cは0~3の整数を表す。cが2又は3の場合、複数存在するR41は同一であっても異なっていてもよい。]
【0098】
上記のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0099】
【化17】

[式(3)中、R42は、炭素数2~6のアルキレン基を表し、R43は、単結合又は炭素数1~4のアルキレン基を表し、dは0~3の整数を表す。dが2又は3の場合、複数存在するR43は同一であっても異なっていてもよい。]
【0100】
上記のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0101】
上記の炭素数8~40のアラルキル基としては、例えば、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。中でも、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、フェニルエチル基及びフェニルプロピル基が好ましい。
【0102】
上記一般式(2)で表される基において、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、R40は炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、cは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0103】
上記一般式(3)で表される基において、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、R42は炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、dは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0104】
上記の芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基としては、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、上記炭素数8~40のアラルキル基、及び上記一般式(2)で表される基が好ましく、得られる繊維製品の撥水性を向上できる点で、上記炭素数8~40のアラルキル基がより好ましい。
【0105】
上記の炭素数3~22のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。炭素数3~22のアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基等が挙げられる。炭素数3~22のアルキル基としては、得られる繊維製品の撥水性を向上できる点で、炭素数8~20のアルキル基が好ましく、炭素数12~18のアルキル基がより好ましい。
【0106】
上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンオイルにおいて、R30、R31、R32、R33、R34及びR35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数1~4のアルコキシ基、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基、又は炭素数3~22のアルキル基である。工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、R30、R31、R32、R33、R34及びR35はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましく、中でもメチル基であることがより好ましい。
【0107】
上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンオイルにおいて、aは0以上の整数である。工業的に製造しやすく、入手が容易であり、得られる繊維製品の樹脂コーティングに対する剥離強度がより優れるという点で、aは、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
【0108】
上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンオイルにおいて、(a+b)は10~200である。工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、(a+b)は、20~100であることが好ましく、40~60であることがより好ましい。(a+b)が上記範囲内であると、シリコーン自体の製造や取り扱いが容易になる傾向にある。
【0109】
上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンオイルは、従来公知の方法により合成することができる。上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンオイルは、例えば、SiH基を有するシリコーンに、ビニル基を有する芳香族化合物及び/又はα-オレフィンをヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
【0110】
上記のSiH基を有するシリコーンとしては、例えば、重合度が10~200であるメチルハイドロジェンシリコーン、又は、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンとの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、工業的に製造しやすく、入手が容易であるという点で、メチルハイドロジェンシリコーンが好ましい。
【0111】
上記のビニル基を有する芳香族化合物は、上記一般式(1)中のR23において、芳香族環を有する炭素数8~40の炭化水素基の由来となる化合物である。ビニル基を有する芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、アリルフェニルエーテル、アリルナフチルエーテル、アリル-p-クミルフェニルエーテル、アリル-o-フェニルフェニルエーテル、アリル-トリ(フェニルエチル)-フェニルエーテル、アリル-トリ(2-フェニルプロピル)フェニルエーテル等が挙げられる。
【0112】
上記のα-オレフィンは、上記一般式(1)中のR23において、炭素数3~22のアルキル基の由来となる化合物である。α-オレフィンとしては、例えばプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等炭素数3~22のα-オレフィンが挙げられる。
【0113】
上記のヒドロシリル化反応は、必要に応じて触媒の存在下、上記SiH基を有するシリコーンに、上記ビニル基を有する芳香族化合物及び上記α-オレフィンを段階的に或いは一度に反応させることにより行ってもよい。
【0114】
ヒドロシリル化反応に用いられるSiH基を有するシリコーン、ビニル基を有する芳香族化合物及びα-オレフィンの使用量はそれぞれ、SiH基を有するシリコーンのSiH基当量、又は数平均分子量等に応じて適宜選択され得る。
【0115】
ヒドロシリル化反応に用いられる触媒としては、例えば、白金、パラジウム等の化合物が挙げられ、中でも白金化合物が好ましい。白金化合物としては、例えば、塩化白金(IV)等が挙げられる。
【0116】
ヒドロシリル化反応の反応条件は、特に制限はなく、適宜調整することができる。反応温度は、例えば10~200℃、好ましくは50~150℃である。反応時間は、例えば、反応温度が50~150℃のとき、3~12時間とすることができる。
【0117】
また、ヒドロシリル化反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。無溶媒下でも反応は進行するが、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、例えば、ジオキサン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0118】
アミノ変性シリコーンオイルとしては、オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかにアミノ基及び/又はイミノ基を含む有機基を有する化合物が挙げられる。このような有機基としては、-R-NHで表される有機基、-R-NH-R’-NH2で表される有機基が挙げられる。R及びR’としては、エチレン基、プロピレン基等の2価の基が挙げられる。アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部が、封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基であってもよい。封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基は、例えば、アミノ基及び/又はイミノ基を封鎖剤で処理することにより得られる。封鎖剤としては、例えば、炭素数2~22の脂肪酸、炭素数2~22の脂肪酸の酸無水物、炭素数2~22の脂肪酸の酸ハライド、炭素数1~22の脂肪族モノイソシアネートなどが挙げられる。
【0119】
アミノ変性シリコーンオイルの官能基当量は、撥水性の観点から、100~20000g/molが好ましく、150~12000g/molがより好ましく、200~4000g/molがより好ましい。
【0120】
アミノ変性シリコーンオイルは25℃で液状であることが好ましい。アミノ変性シリコーンオイルの25℃における動粘度は、10~100,000mm/sであることが好ましく、10~30,000mm/sであることがより好ましく、10~5,000mm/sであることがさらに好ましい。25℃における動粘度が100,000mm/s以下である場合、作業性の確保が容易となる傾向にある。25℃における動粘度とは、JIS K 2283:2000(ウベローデ粘度計)に記載の方法で測定した値を意味する。
【0121】
アミノ変性シリコーンオイルとしては、市販品としても容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、KF8005、KF-868、KF-864、KF-393、KF-8021(いずれも、信越化学工業(株)製、商品名)、TSF-4709、XF42-B1989(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製、商品名)、BY16-872、SF-8417、BY16-853U、BY16-892(いずれも、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0122】
また、アミノ変性シリコーンオイル以外のシリコーンオイルも同様に市販品として容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、KF-101(信越化学工業(株)製、商品名、エポキシ変性シリコーンオイル)、X-22-3701E(信越化学工業(株)製、商品名、カルボキシル変性シリコーンオイル)、SF8428(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、カルビノール変性シリコーンオイル)、KF-9901(信越化学工業(株)製、商品名、メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、X-22-715(信越化学工業(株)製、商品名、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル)、KF-96-3000cp(信越化学工業(株)製、商品名、ジメチルシリコーンオイル)、SF8416(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、アルキル変性シリコーンオイル)、SH203(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル)、SF8410(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、ポリエーテル変性シリコーンオイル)などが挙げられる。
【0123】
シリコーン樹脂(β)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
本実施形態の撥水剤組成物に含まれる、非フッ素系ポリマー(α)及びシリコーン樹脂(β)の含有量は、得られる繊維製品の撥水性及び風合い、チョークマークの点で、非フッ素系ポリマー(α)の質量と、及びシリコーン樹脂(β)の質量の比率(α)/(β)が、2.5/97.5~97.5/2.5であることが好ましく、5/95~95/5であることがより好ましく、10/90~90/10であることが更に好ましく、15/85~85/15であることが特に好ましい。
【0125】
本実施形態の撥水剤組成物には、親水化剤と疎水化剤とにより改質されたシリカ(シリカ表面に親水性基と疎水性基とを有するシリカ)を併用することもできる。このようなシリカ表面に親水性基と疎水性基とを有するシリカとしては、例えば、レオロシールHG-09((株)トクヤマ製、商品名)、AEROSIL NA50H、RA200H、RA200HS(以上、日本アエロジル(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0126】
本実施形態の撥水剤組成物には必要に応じて添加剤等を加えることも可能である。添加剤としては、他の撥水剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、酸化防止剤、消臭剤、各種有機溶剤、キレート剤、帯電防止剤、触媒、架橋剤、抗菌防臭剤、難燃剤、柔軟剤、防皺剤等が挙げられる。
【0127】
界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
消泡剤としては、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール、ジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3-ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。消泡剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0129】
pH調整剤としては、乳酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シュウ酸、ギ酸、クエン酸、リンゴ酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、ホウ酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、アルカノールアミン、ピリジン、モルホリン等の塩基が挙げられる。pH調整剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール等の炭素数1~8の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、ブチルカルビトール等のエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル,3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;ホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアニリド等のアミドが挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
帯電防止剤としては、撥水性の性能を阻害しにくいものを使用するのがよい。帯電防止剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、硫酸化油、スルホン酸塩、第4級アンモニウム塩、イミダゾリン型4級塩などのカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール型、多価アルコールエステル型などの非イオン系界面活性剤、イミダゾリン型4級塩、アラニン型、ベタイン型などの両性界面活性剤、高分子化合物タイプの制電性重合体、ポリアルキルアミンなどが挙げられる。帯電防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0132】
次に、本実施形態の撥水剤組成物の製造方法について説明する。
【0133】
非フッ素系ポリマー(α)を含む組成物は、ラジカル重合法により製造することができる。また、このラジカル重合法の中でも、得られる撥水剤の性能及び環境の面から乳化重合法又は分散重合法で重合することが好ましい。
【0134】
例えば、媒体中で、(A1)成分及び(A2)成分を乳化重合又は分散重合させることにより非フッ素系ポリマー(α)を得ることができる。より具体的には、例えば、媒体中に(A1)成分、(A2)成分及び必要に応じて(B)成分、(C)成分及び(D)成分、並びに乳化補助剤又は分散補助剤を加え、この混合液を乳化又は分散させて、乳化物又は分散物を得る。得られた乳化物又は分散物に、重合開始剤を加えることにより、重合反応が開始され、単量体及び反応性乳化剤を重合させることができる。なお、上述した混合液を乳化又は分散させる手段としては、ホモミキサー、高圧乳化機又は超音波等が挙げられる。
【0135】
上記乳化補助剤又は分散補助剤等(以下、「乳化補助剤等」ともいう)としては、上記反応性乳化剤(B)以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を使用することができる。乳化補助剤等の含有量は、全単量体100質量部に対して、0.5~30質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましい。上記乳化補助剤等の含有量が0.5質量部以上であると、乳化補助剤等の含有量が0.5質量部未満である場合と比較して、混合液の分散安定性が一層向上する傾向にある。乳化補助剤等の含有量が30質量部以下であると、乳化補助剤等の含有量が30質量部を超える場合と比較して、得られる非フッ素系ポリマーの撥水性が一層向上する傾向にある。
【0136】
カチオン界面活性剤としては、炭素数8~24のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数8~24のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8~24のモノアルキルアミン酢酸塩、炭素数8~24のジアルキルアミン酢酸塩、炭素数8~24のアルキルイミダゾリン4級塩、などが挙げられる。これらの中でも乳化性と加工安定性の観点から、炭素数12~18のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数12~18のジアルキルジメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0137】
これらのカチオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
非イオン界面活性剤としては、アルコール類、多環フェノール類、アミン類、アミド類、脂肪酸類、多価アルコール脂肪酸エステル類、油脂類及びポリプロピレングリコールの、アルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0139】
アルコール類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール又はアルケノールや下記一般式(AL-1)又は下記一般式(AL-2)で表されるアセチレンアルコールなどが挙げられる。
【0140】
【化18】

[式中、R51及びR52はそれぞれ独立に、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基又は炭素数2~8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルケニル基を表す。]
【0141】
【化19】

[式中、R53は、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルキル基又は炭素数2~8の直鎖若しくは分岐鎖を有するアルケニル基を表す。]
【0142】
多環フェノール類としては、炭素数1~12の炭化水素基を有していてもよいフェノールやナフトールなどの1価のフェノール類又はそれらのスチレン類(スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン)付加物若しくはそれらのベンジルクロライド反応物などが挙げられる。アミン類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~44の脂肪族アミンなどが挙げられる。
【0143】
アミド類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~44の脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0144】
脂肪酸類としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24の脂肪酸などが挙げられる。
【0145】
多価アルコール脂肪酸エステル類としては、多価アルコールと炭素数2~30(カルボキシル基の炭素を含む)のカルボン酸との縮合反応物が挙げられる。このような多価アルコール脂肪酸エステル類としては、例えば、ソルビタン(アルコール)及び炭素数2~30(カルボキシル基の炭素を含む)のカルボン酸から構成されるソルビタンエステルなどが挙げられる。
【0146】
ソルビタンエステルを構成するカルボン酸の炭素数は2~30であり、5~21であることが好ましい。ソルビタンエステルは、ソルビタンと1つのカルボン酸とのモノカルボン酸エステル、ソルビトールと2つのカルボン酸とのジカルボン酸エステル及びソルビトールと3つのカルボン酸とのトリカルボン酸エステル等であってよく、モノカルボン酸エステルであることが好ましい。
【0147】
ソルビタンエステルは、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される化合物であてよい。
【0148】
【化20】

[式(4)中、R61は炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基を表し、R64、R65及びR66は水素、-CO-R61で表される基、又は-(CHCHO)-(R62O)-R63(R62は炭素数3以上のアルキレン基を表し、R63は水素、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基を表し、eは2以上の整数を表し、fは0以上の整数を表す。)を表す。]
【0149】
【化21】

[式(5)中、R61は炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基を表し、R64、R65及びR66は水素、-CO-R61で表される基、又は-(CHCHO)-(R62O)-R63(R62は炭素数3以上のアルキレン基を表し、R63は水素、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基を表し、eは2以上の整数を表し、fは0以上の整数を表す。)を表す。]
【0150】
上記一般式(4)又は(5)で表される化合物としては、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びトリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0151】
油脂類としては、植物性油脂、動物性油脂、植物性ロウ、動物性ロウ、鉱物ロウ、硬化油などが挙げられる。
【0152】
これらの中でも、撥水性への影響が少ない、耐光性への影響が少ない、共重合体の乳化性が良好になるといった観点から、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール又はアルケノール、及び、上記一般式(AL-1)又は上記一般式(AL-2)で表されるアセチレンアルコールが好ましく、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~24のアルコール、及び、上記一般式(AL-1)又は上記一般式(AL-2)で表されるアセチレンアルコールがより好ましい。
【0153】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン等が挙げられる。撥水性への影響が少ない、非フッ素系ポリマー(α)の乳化性が良好になるといった観点から、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがより好ましい。
【0154】
アルキレンオキサイドの付加モル数は1~200が好ましく、より好ましくは3~100であり、更により好ましくは5~50である。アルキレンオキサイドの付加モル数が上記範囲内であると、撥水性及び製品安定性を高水準で得られやすくなる。
【0155】
本実施形態に係る非フッ素系ポリマー(α)においては、非イオン界面活性剤として、HLBが7~18の非イオン界面活性剤を使用した場合、より良好な水分散液が得られる。ここでHLBとはグリフィンのHLBに準じたものであり、グリフィンの式を下記の式に変更したものである。ここで、親水基とはエチレンオキサイド基を指す。
HLB=(親水基×20)/分子量
【0156】
本実施形態にて使用される上記非イオン界面活性剤のHLBは7~18であり、本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)の乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性(以降、単に乳化安定性という)の点で、9~15が好ましい。さらには、撥水剤組成物の貯蔵安定性の点で上記範囲内の異なるHLBを有する2種以上の非イオン界面活性剤を併用することがより好ましい。また、乳化安定性と撥水性の観点から、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を併用することが好ましい。
【0157】
乳化重合又は分散重合の媒体としては、水が好ましく、必要に応じて水と有機溶剤とを混合してもよい。このときの有機溶剤としては、水と混和可能な有機溶剤であれば特に制限はないが、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類等、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、水と有機溶剤の比率は特に限定されるものではない。
【0158】
上記重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系、又はレドックス系等の公知の重合開始剤を適宜使用できる。重合開始剤の含有量は、全単量体100質量部に対して、重合開始剤0.01~2質量部であることが好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲であると、重量平均分子量が3万以上である非フッ素系ポリマー(α)を効率よく製造することができる。
【0159】
また、重合反応において、分子量調整を目的として、ドデシルメルカプタン、t-ブチルアルコール等の連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤の含有量は、全単量体100質量部に対して0.3質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましい。連鎖移動剤の含有量が0.3質量部以下であると、分子量が低下しすぎることを抑制でき、重量平均分子量が3万以上である非フッ素系ポリマー(α)を効率よく製造することが容易となる傾向にある。
【0160】
なお、分子量調整のためには重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤の添加により所望の重量平均分子量を有する非フッ素系ポリマー(α)を容易に得ることができる。
【0161】
重合反応の温度は、20℃~150℃が好ましい。温度が20℃以上であると、温度が20℃未満である場合と比較して、重合を十分に進行させることが容易となる傾向にある。温度が150℃以下である場合、温度が150℃を超える場合と比較して、反応熱の制御が容易となる。
【0162】
重合反応において、得られる非フッ素系ポリマー(α)の重量平均分子量は、上述した重合開始剤、連鎖移動剤、重合禁止剤の含有量の増減により調整することができ、105℃における溶融粘度は、多官能単量体の含有量、及び、重合開始剤の含有量の増減により調整することができる。なお、105℃における溶融粘度を低下させたい場合は、重合可能な官能基を2つ以上有する単量体の含有量を減らしたり、重合開始剤の含有量を増加させたりすればよい。
【0163】
乳化重合又は分散重合により得られるポリマー乳化液又は分散液における非フッ素系ポリマー(α)の含有量は、組成物の貯蔵安定性及びハンドリング性の観点から、乳化液又は分散液の全量に対して10~50質量%とすることが好ましく、20~40質量%とすることがより好ましい。
【0164】
本実施形態の撥水剤組成物は、上記の方法で得られた非フッ素系ポリマー(α)を含む組成物と、シリコーン樹脂(β)とを混合することにより調製することができる。シリコーン樹脂(β)は、市販品等であってよい。
【0165】
本実施形態の撥水性繊維製品は、上述した本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)と、シリコーン樹脂(β)とが付着した繊維製品からなるものである。
【0166】
本実施形態の撥水性繊維製品の製造方法について説明する。
【0167】
本実施形態の撥水性繊維製品は、繊維製品を上述した撥水剤組成物が含まれる処理液で処理することにより、繊維製品に非フッ素系ポリマー(α)と、シリコーン樹脂(β)とを付着させることで得られる。かかる繊維製品の素材としては特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの合成繊維及びこれらの複合繊維、混紡繊維などが挙げられる。繊維製品の形態は繊維、糸、布、不織布、紙などのいずれの形態であってもよい。
【0168】
繊維製品を上記処理液で処理する方法としては、例えば、浸漬、噴霧、塗布等の加工方法が挙げられる。また、撥水剤組成物が水を含有する場合は、繊維製品に付着させた後に水を除去するために乾燥させることが好ましい。
【0169】
撥水剤組成物の繊維製品への付着量は、要求される撥水性の度合いに応じて適宜調整可能であるが、撥水性と風合いの観点から、繊維製品100gに対して、撥水剤組成物に含まれる非フッ素系ポリマー(α)及びシリコーン樹脂(β)の合計の付着量が0.01~10gとなるように調整することが好ましく、0.05~5gとなるように調整することがより好ましい。
【0170】
また、本実施形態の非フッ素系ポリマー(α)と、シリコーン樹脂(β)を繊維製品に付着させた後は、適宜熱処理することが好ましい。温度条件は特に制限はないが、本実施形態の撥水剤組成物を用いると、100~130℃の温和な条件により繊維製品に十分良好な撥水性を発現させることができる。温度条件は130℃以上(好ましくは200℃まで)の高温処理であってもよいが、かかる場合は、フッ素系撥水剤を用いた従来の場合よりも処理時間を短縮することが可能である。したがって、本実施形態の撥水性繊維製品によれば、熱による繊維製品の変質が抑えられ、撥水処理時の繊維製品の風合が柔軟となり、しかも温和な熱処理条件、すなわち低温キュア条件下で繊維製品に十分な撥水性を付与できる。
【0171】
特に、耐久撥水性を向上させたい場合には、撥水剤組成物が含まれる処理液で繊維製品を処理する上述の工程と、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂、イソシアネート基又はブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物に代表される架橋剤を、繊維製品に付着させてこれを加熱する工程とを含む方法によって、繊維製品を撥水加工することが好ましい。更に、耐久撥水性をより向上させたい場合には、撥水剤組成物が、上述の架橋剤と反応可能な官能基を有する単量体を共重合した非フッ素系ポリマー(α)を含むことが好ましい。
【0172】
メラミン樹脂としては、メラミン骨格を有する化合物を用いることができ、例えば、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどのポリメチロールメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数1~6のアルキル基を有するアルコキシメチル基となったアルコキシメチルメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数2~6のアシル基を有するアシロキシメチル基となったアシロキシメチルメラミンなどが挙げられる。これらのメラミン樹脂は、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。このようなメラミン樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンAPM、ベッカミンM-3、ベッカミンM-3(60)、ベッカミンMA-S、ベッカミンJ-101、及びベッカミンJ-101LF、ユニオン化学工業株式会社製のユニカレジン380K、三木理研工業株式会社製のリケンレジンMMシリーズなどが挙げられる。
【0173】
グリオキザール樹脂としては、従来公知のものを使用することができる。グリオキザール樹脂としては、例えば、1,3-ジメチルグリオキザール尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシプロピレン尿素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の官能基は、他の官能基で置換されていてもよい。このようなグリオキザール樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンN-80、ベッカミンNS-11、ベッカミンLF-K、ベッカミンNS-19、ベッカミンLF-55Pコンク、ベッカミンNS-210L、ベッカミンNS-200、及びベッカミンNF-3、ユニオン化学工業株式会社製のユニレジンGS-20E、三木理研工業株式会社製のリケンレジンRGシリーズ、及びリケンレジンMSシリーズなどが挙げられる。
【0174】
メラミン樹脂及びグリオキザール樹脂には、反応を促進させる観点から触媒を使用することが好ましい。このような触媒としては、通常用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化亜塩等のホウ弗化化合物;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の中性金属塩触媒;燐酸、塩酸、ホウ酸等の無機酸などが挙げられる。これら触媒には、必要に応じて、助触媒として、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸等の有機酸などを併用することもできる。このような触媒としては、例えば、DIC株式会社製のキャタリストACX、キャタリスト376、キャタリストO、キャタリストM、キャタリストG(GT)、キャタリストX-110、キャタリストGT-3、及びキャタリストNFC-1、ユニオン化学工業株式会社製のユニカキャタリスト3-P、及びユニカキャタリストMC-109、三木理研工業株式会社製のリケンフィクサーRCシリーズ、リケンフィクサーMXシリーズ、及びリケンフィクサーRZ-5などが挙げられる。
【0175】
イソシアネート基又はブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物としては、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ナフタレンイソシアネートなどの単官能(モノ)イソシアネート化合物や、多官能イソシアネート化合物を使用することができる。
【0176】
多官能イソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。多官能イソシアネート化合物としては、例えば、アルキレンジイソシアネート、アリールジイソシアネート及びシクロアルキルジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネート化合物の二量体又は三量体などの変性ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。アルキレンジイソシアネートの炭素数は、1~12であることが好ましい。
【0177】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、2,4又は2,6-トリレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレン又はナフチレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、2,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、3,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-エチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルシクロヘキサン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルシクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3-イソシアネート-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、酸-ジイソシアネート二量体、ω,ω’-ジイソシアネートジエチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルトルエン、ω,ω’-ジイソシアネートジエチルトルエン、フマル酸ビス(2-イソシアネートエチル)エステル、1,4-ビス(2-イソシアネート-プロプ-2-イル)ベンゼン、及び、1,3-ビス(2-イソシアネート-プロプ-2-イル)ベンゼンが挙げられる。
【0178】
トリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)-チオフォスファートなどが挙げられる。
【0179】
ジイソシアネート化合物から誘導される変性ポリイソシアネート化合物としては、2つ以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビウレット構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、三量体構造などを有するポリイソシアネート、トリメチロールプロパンの脂肪族イソシアネートのアダクト体などを挙げることができる。また、ポリメリックMDI(MDI=ジフェニルメタンジイソシアネート)も多官能イソシアネート化合物として使用することができる。
【0180】
多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0181】
多官能イソシアネート化合物が有するイソシアネート基は、そのままでもよく、ブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネート基であってもよい。ブロック剤としては、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチル-4-ニトロピラゾール、3,5-ジメチル-4-ブロモピラゾール、ピラゾールなどのピラゾール類;フェノール、メチルフェノール、クロルフェノール、iso-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、iso-アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム類;マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン化合物類;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;イミダゾール、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。これらの中でも、撥水性の観点から、ピラゾール類及びオキシム類が好ましい。
【0182】
多官能イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート構造に親水基を導入して界面活性効果を持たせることにより、ポリイソシアネートに水分散性を付与した水分散性イソシアネートを用いることもできる。また、反応を促進するため、有機錫、有機亜鉛等の公知の触媒を併用することもできる。
【0183】
架橋剤や触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0184】
架橋剤は、例えば、架橋剤を有機溶剤に溶解するか、水に乳化分散させた処理液に被処理物(繊維製品)を浸漬し、被処理物に付着した処理液を乾燥する方法により、被処理物に付着させることができる。そして、被処理物に付着した架橋剤を加熱することにより、架橋剤と被処理物及び非フッ素系ポリマー(α)との反応を進行させることができる。架橋剤の反応を十分に進行させてより効果的に洗濯耐久性を向上させるために、このときの加熱は110~180℃で1~5分間行うのがよい。架橋剤の付着及び加熱の工程は、上述の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程と同時に行ってもよい。同時に行う場合、例えば、撥水剤組成物及び架橋剤を含有する処理液を被処理物に付着させ、水を除去した後、更に、被処理物に付着している架橋剤を加熱する。撥水加工工程の簡素化や、熱量の削減、経済性を考慮した場合、撥水剤組成物の処理工程と同時に行うことが好ましい。
【0185】
また、架橋剤を過度に使用すると風合を損ねるおそれがある。上記架橋剤は、被処理物(繊維製品)に対して0.1~50質量%の量で用いることが好ましく、0.1~10質量%の量で用いることが特に好ましい。
【0186】
こうして得られる本実施形態の撥水性繊維製品は、屋外で長期間使用した場合であっても、十分に撥水性を発揮することができ、また、上記撥水性繊維製品はフッ素系の化合物を使用していないことから、環境にやさしいものとすることができる。
【0187】
本実施形態の撥水性繊維製品は、所定の部分にコーティング加工を行うことができる。コーティング加工としては、スポーツ用途やアウトドア用途での透湿防水加工や防風加工等が挙げられる。加工方法としては、例えば、透湿防水加工の場合、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等と媒体とを含むコーティング液を、撥水処理された繊維製品の片面に塗布し、乾燥することにより加工することができる。
【0188】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0189】
例えば、本発明の撥水剤組成物に含まれる非フッ素系ポリマー(α)を製造する場合において、上記実施形態では、重合反応をラジカル重合により行っているが、紫外線、電子線、γ線のような電離性放射線などを照射する光重合により重合反応を行ってもよい。
【0190】
また、本発明においては、撥水剤組成物を繊維製品に処理して撥水性繊維製品としているが、撥水剤組成物で処理される製品としては、繊維製品用途に限らず、金属、ガラス、樹脂等の物品であってもよい。
【0191】
また、かかる場合、撥水剤組成物を上記物品に付着させる方法や撥水剤の付着量は、被処理物の種類などに応じて、任意に定めることができる。
【実施例
【0192】
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0193】
<ポリマー分散液の調製>
表1及び2に示される組成(表中、数値は(g)を示す)を有する混合液を、以下に示す手順により重合して、ポリマー又は疎水性化合物の分散液を得た。
【0194】
(合成例1)
オートクレーブに、アクリル酸ステアリル23.4g、ダイアセトンアクリルアミド0.6g、ノイゲンXL-100(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=14.7)0.2g、ノイゲンXL-60(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=12.5)1.3g、ノイゲンXL-40(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=10.5)0.5g,ステアリルトリメチルンモニウム硫酸塩0.4g、トリプロピレングリコール12.5g及び水54.9gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.2gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で、塩化ビニル6gをオートクレーブの内圧が0.3MPaを保つよう継続的に圧入しながら、60℃にて6時間ラジカル重合させて、非フッ素系ポリマー(α)を30.0質量%含む非フッ素系ポリマー(α)分散液を得た。
【0195】
(合成例2~8)
表1に記載の材料を用いた以外は、合成例1と同様に重合を行い、非フッ素系ポリマー(α)を30.0質量%含む非フッ素系ポリマー(α)分散液をそれぞれ得た。
【0196】
(比較合成例1~5)
表2に記載の材料を用いた以外は、合成例1と同様に重合を行い、その他非フッ素系ポリマーを30.0質量%含むその他非フッ素系ポリマー分散液をそれぞれ得た。
【0197】
(比較合成例6)
1000mLフラスコに、1,4-ブタンジオール240.3g、ステアリン酸758.5g及びp-トルエンスルホン酸1.2gを入れ、窒素気流下、130~200℃で4時間脱水反応を行ない、生成物を得た。得られた生成物の酸価及び水酸基価を測定した結果、酸価は0.5mgKOH/gであり、水酸基価は162.1mgKOH/gであった。別容器に、上述の生成物574.1g、ヘキサメチレンジイソシアネート270.5g及びビスマス系触媒(日東化成株式会社製、ネオスタンU-600)0.9gを入れ、80℃で3時間反応を行なった。反応はNCO%が8.0になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾール154.6gを入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。500mLステンレス容器に、得られた疎水性化合物40g、メチルエチルケトン50g、デカグリン1-L(非イオン界面活性剤、第一工業製薬製)5g、デカグリン1-SV(非イオン界面活性剤、第一工業製薬製)5g及びアーカードT-28(カチオン界面活性剤、ライオンスペシャリティケミカルズ製)5gを入れ、50℃に加熱して溶解させた。次いで80℃の熱水295gを加え、超音波乳化機US-600E(株式会社日本精機製作所)を使用して80℃を維持しながら20分間乳化した。その後冷却し、疎水性化合物の10%分散液を得た。
【0198】
【表1】
【0199】
【表2】
【0200】
なお、合成例1~8及び比較合成例1~5で得られたポリマー分散液中の各ポリマーは、ガスクロマトグラフ(GC-15APTF、(株)島津製作所製)により、いずれも全単量体の98%以上が重合していることが確認された。
【0201】
表1及び2に示される材料の詳細は以下のとおりである。
ノイゲンXL-100(14.7)(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=14.7)
ノイゲンXL-60(12.5)(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=12.5)
ノイゲンXL-40(10.5)(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、HLB=10.5)
【0202】
<シリコーン樹脂を含む分散液の調製>
(調製例1)
シリコーン樹脂としてSF 8416(アルキル変性シリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)20質量部と、SPAN60(ソルビタン系非イオン界面活性剤、HLB= 4.7、花王(株)製)1質量部、TWEEN80(ソルビタン系非イオン界面活性剤、HLB=15.0、花王(株)製)1質量部と、ブチルジグリコール5質量部を混合した。次いで、得られた混合物に、水73.0質量部を少量ずつ混合しながら添加し、シリコーン樹脂(β)を20質量%含む分散液を得た。
【0203】
(調製例2~4)
シリコーン樹脂として下記の樹脂を用いたこと以外は調製例1と同様にして、シリコーン樹脂を20質量%含むシリコーン樹脂分散液を得た。
(調製例2)BY 16-872(アミノシリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)
(調製例3)KF-9901(メチルハイドロジェンシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)
(調製例4)KF-96-3000cs(ジメチルシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)
【0204】
(調製例5)
KF8005(アミノ変性シリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)18.5質量部と、蟻酸0.15質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物0.5質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に、水80.85質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アミノ変性シリコーンを18.5質量%含む分散液を得た。
【0205】
MQ-1600(シリコーンレジン=トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)15質量部に、ジメチルシリコーン(6cs、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)15質量部を添加し、シリコーンレジンが溶解するまで混合して、混合物を得た。得られた混合物18.5質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物0.5質量部とを混合した。次いで、水81質量部を少量ずつ混合しながら添加し、シリコーンレジンとジメチルシリコーンとを合計で18.5質量%含む分散液を得た。
【0206】
上記アミノ変性シリコーン分散液と、シリコーンレジンとジメチルシリコーンとを含む分散液とを、100:117の割合で混合させ、シリコーン樹脂(β)としてアミノ変性シリコーンとシリコーンレジンとジメチルシリコーンとを質量比で9.2:5.4:5.4で含む、20質量%シリコーン樹脂分散液を得た。
【0207】
<撥水剤組成物の調製>
(実施例1~15、比較例1~9)
表3~5に示される組成(表中、数値は(質量%)を示す)となるように、非フッ素系ポリマー(α)分散液、その他非フッ素系ポリマー分散液、又は疎水性化合物分散液、及びシリコーン樹脂(β)分散液及び水を混合し、撥水剤組成物をそれぞれ得た。
【0208】
(繊維製品の撥水性評価)
JIS L 1092(2009)のスプレー法に準じてシャワー水温を20℃として試験をした。本試験においては、染色を行ったポリエステル100%布又はポリエステル(PET)/ポリウレタン(PU)混紡布(ポリエステル/ポリウレタン=80/20)を、実施例及び比較例の撥水剤組成物に浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で30秒の条件で熱処理して、得られた布の撥水性を評価した。結果は目視にて下記の等級で評価した。なお、特性がわずかに良好な場合は等級に「+」をつけ、特性がわずかに劣る場合は等級に「-」をつけた。結果を表3~5に示す。
撥水性:状態
5:表面に付着湿潤のないもの
4:表面にわずかに付着湿潤を示すもの
3:表面に部分的湿潤を示すもの
2:表面に湿潤を示すもの
1:表面全体に湿潤を示すもの
0:表裏両面が完全に湿潤を示すもの
【0209】
(繊維製品の風合評価)
風合は、染色を行ったポリエステル100%布を、実施例及び比較例の撥水剤組成物を処理液に浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で30秒間熱処理したものを用いて評価した。結果はハンドリングにて下記に示す5段階で評価した。結果を表3~5に示す。
1:硬い ~ 5:柔らかい
【0210】
(繊維製品の耐久撥水性評価)
JIS L 1092(2009)のスプレー法に準じてシャワー水温を20℃として試験をした。実施例及び比較例の撥水剤組成物に、ブロックドイソシアネート系架橋剤(NKアシストNY-50)を0.03質量%の濃度となるように添加し、処理液を調製した。次いで、調製した処理液に、染色を行ったポリエステル100%布を浸漬処理した。浸漬処理後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で60秒間熱処理して得られた布(L-0)、及びJIS L 0217(1995)の103法による洗濯を30回(L-30)行った後の布の撥水性を上記撥水性評価方法と同様に評価した。また、ポリエステル(PET)/ポリウレタン(PU)混紡布(ポリエステル/ポリウレタン=80/20)の場合も、熱処理温度を170℃から160℃に変えたこと以外は、ポリエステル100%布の場合と同様に評価した。結果を表3~5に示す。
【0211】
(繊維製品のコーティングに対する剥離強度)
JIS K 6404-5(1999)に準拠して試験を行った。本試験においては、染色を行ったナイロン100%布を、実施例及び比較例の撥水剤組成物に、浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で30秒熱処理して得られたものを基布とした。その得られた基布に、熱圧着装置を用いて、ホットメルト接着テープ(サン化成株式会社製「MELCOテープ」)を150℃で1分間熱接着させ、基布とシームテープとの層間の剥離強度をオートグラフ(AG-IS、島津製作所(株)製)にて測定した。掴み具の移動速度を100mm/minで引っ張り、応力の平均値を剥離強度[N/inch]とした。結果を表3~5に示す。
【0212】
(繊維製品のはじき性評価)
JIS L 1092(2009)のスプレー法に準じてシャワー水温を20℃として試験を行い、スプレー撥水時の水はじき度合いを目視で確認し、下記に示す5段階で評価した。本試験においては、染色を行ったポリエステル/ポリウレタン混紡布(ポリエステル/ポリウレタン=80/20)を、実施例及び比較例の撥水剤組成物に浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で30秒の条件で熱処理して、得られた布のはじき性を評価した。なお、特性がわずかに良好な場合は等級に「+」をつけ、特性がわずかに劣る場合は等級に「-」をつけた。結果を表3~5に示す。
はじき性:状態
5:布に接触した水が細かい水滴状を保ち、かつ水が布表面からとびはねている
4:布に接触した水が細かい水滴状を保ち、布表面を転がり落ちる
3:布に接触した水が大きな水滴状を保ち、布表面を転がり落ちる
2:布に接触した水が水滴状を保たず、布表面をまっすぐ落ちる
1:布に接触した水が水滴を保たず蛇行しながら落ちていく
【0213】
(繊維製品のチョークマーク評価)
チョークマークは、染色を行ったポリエステル100%布を、実施例及び比較例の撥水剤組成物に浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、更に170℃で30秒間熱処理したものを用いて評価した。加工布表面を爪でひっかき目視にて下記に示す5段階で評価した。結果を表3~5に示す。
5:明瞭な爪痕が認められる
4:爪痕が認められる
3:少し爪痕が認められる
2:殆ど爪痕が認められない
1:爪痕が全くない
【0214】
【表3】
【0215】
【表4】
【0216】
【表5】