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特許7252758ヒト及び/又は動物における免疫応答を調節及び/又は刺激するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ヒト及び/又は動物における免疫応答を調節及び/又は刺激するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/06 20060101AFI20230329BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20230329BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20230329BHJP
   A61K 36/064 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
A61K36/06
A23K10/16
A61K31/715
A61K36/064
A61P1/12
A61P1/14
A61P29/00
A61P33/00
A61P37/02
A61P37/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018500382
(86)(22)【出願日】2016-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2016066446
(87)【国際公開番号】W WO2017005936
(87)【国際公開日】2017-01-12
【審査請求日】2019-05-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】15176029.5
(32)【優先日】2015-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517180394
【氏名又は名称】ダンスター フェルマン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】カステックス,マチュー
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】齋藤 恵
【審判官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-203160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0008767(US,A1)
【文献】PLoS ONE,2012年,Volume 7, Issue 7, e40648,https://doi.org/10.1371/journal.pone.0040648
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00-36/9068, A61P1/00-43/00
CAPLUS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖を含む組成物であって、
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖は、キチン、マンナンオリゴ糖、ベータ1,3グルカン及びベータ1,6グルカンであり、その量が、前記組成物の総重量を基準として30~60重量%である組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~50乾燥重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~15乾燥重量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50乾燥重量%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、11、12、13、14又は15乾燥重量%である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60重量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~50乾燥重量%であり、かつ、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として30~60重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50乾燥重量%であり、かつ、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として30~60重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~50乾燥重量%であり、かつ、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50乾燥重量%であり、かつ、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のカンジダ種がカンジダ・ユチリスである、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖が、サッカロマイセス種、ハンセニアスポラ種、ハンゼヌラ種、クルイベロマイセス種、メチニコビア種、ピキア種、スターメレラ種及びトルラスポラ種又はこれらの混合種由来である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
動物において免疫応答を調節及び/又は刺激するのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
動物の腸管の健康、腸管の完全性及び腸管の形態を改善するのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
動物の抗炎症応答を刺激するのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
飼育動物の成長成績パラメータ及び飼料要求率を改善するのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
飼育動物の罹患率、特には抗生物質による治療及び死亡率を低減するのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
飼育動物の死亡率を低下させるのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
動物の下痢を減少させるのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
腸管病原体に対する感受性を低下させるのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
寄生虫侵襲及び関連疾患に対する動物の感受性を低下させるのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
水生動物の皮膚粘液の産生を改善するのに使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト及び/又は動物における免疫応答を調節及び/又は刺激するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵母及びその誘導体は、主としてデクチン1及びβ―グルカン経路を通じた又は消化管内で雑菌との直接の結合を介した、腸管粘膜表面で開始される抗真菌免疫応答の活性化を通じて、動物及びヒトの腸管の健康を改善するための栄養補助食品としてますます使用されるようになっている。両方の作用は、酵母細胞壁内での免疫抗原発現及び腸管上皮細胞内での抗原受容体発現の特異性に依存している。しかしながら、よく知られているβ―グルカン/デクチン1相互作用のほかに、免疫応答の活性化を仲介する、より詳しくは抗真菌免疫応答の活性化を仲介する他の「酵母リガンド」― 受容体相互作用が重要な役割を果たしているかもしれず、また酵母細胞壁の組成及び構造に直接依存していることに注意すべきである。最近では、それらの経路を通じた免疫応答の刺激を謳った非特異的で不活性な酵母製品を使用した市場選択肢が存在している。しかしながら、これらの製品は組成及び成果の点で特異性及び一貫性を欠いている。動物又はヒトの免疫応答の刺激を増強する改善された酵母製品を提供することが非常に望ましいことである。
【発明の概要】
【0003】
本開示においては、少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖(parietal polysaccharides)及び少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖を含む組成物を提供する。驚くことに、少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖を、少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖と組み合わせると、配合率が低いときでさえ、動物又はヒトの免疫応答の刺激を増強することになる。複数の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として1~99乾燥重量%である。1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~50乾燥重量%である。代替の又は補完的な実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として1~100重量%である。1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として20~80重量%である。他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として30~60重量%である。1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種がカンジダ・ユチリスである。他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種は、サッカロマイセス種、ハンセニアスポラ種、ハンゼヌラ種、クルイベロマイセス種、メチニコビア種、ピキア種、スターメレラ種及びトルラスポラ種又はこれらの混合種である。前記少なくとも1種の異なる酵母種には、これら酵母種のいずれかに由来の種間雑種も含まれる。
【0004】
本開示はまた、動物及び/又はヒトにおいて免疫応答を調節及び/又は刺激するのに使用するための前記実施態様で規定した前記組成物の使用を提供する。他の態様においては、前記動物は家畜である。
【0005】
本開示はまた、少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖を含む組成物を動物に投与することにより、動物において免疫応答を調節及び/又は刺激する方法を提供する。1つの実施態様においては、その組合せ物は、食品添加剤、動物飼料又は医薬製品の形態である。他の実施態様においては、前記医薬製品は、経口又は非経口投与することができる。さらに他の実施態様においては、食品添加剤、動物飼料は、完全な動物用飼料又はヒト食餌に添加されるか又は直接に消費される錠剤、ペレット又はビードのように個別に添加される形式で提供することができる。またさらに他の実施態様においては、前記動物は家畜である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以上のように本発明について一般的に述べたが、添付図面を参照して好ましい実施態様を示す。
【0007】
図1図1は、実施例1のアッセイ1による、異なるサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)菌株に由来する菌体壁多糖と共にインキュベートした単球による活性酸素種(ROS)のin vitro産生に対するラミナリン含有の効果を示す図である。
【0008】
図2図2は、実施例1のアッセイ2による、異なるサッカロマイセス・セレビシエ菌株に由来する菌体壁多糖の異なる濃度のブレンドを有する単球によるROSのin vitro産生を示す図である。
【0009】
図3図3は、実施例1のアッセイ3による、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)菌株に由来する菌体壁多糖又はサッカロマイセス・セレビシエ菌株に由来する菌体壁多糖と共にインキュベートした単球によるROSのin vitro産生に対するラミナリンの比較効果を示す図である。
【0010】
図4a図4aは、実施例1のアッセイ4による、サッカロマイセス・セレビシエ菌株に由来する異なる濃度の菌体壁多糖のみで又はカンジダ・ユチリス菌株に由来する菌体壁多糖と組み合わせて、(a)ラミナリンを用いずにインキュベートした単球によるROSのin vitro産生を示す図である。
図4b図4bは、実施例1のアッセイ4による、サッカロマイセス・セレビシエ菌株に由来する異なる濃度の菌体壁多糖のみで又はカンジダ・ユチリス菌株に由来する菌体壁多糖と組み合わせて、(b)100μgのラミナリンを用いてインキュベートした単球によるROSのin vitro産生を示す図である。
【0011】
図5図5は、実施例2による、ビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus)に感染し、カプラン・マイヤー統計処理に従って菌体壁多糖の異なる組成物で処置したクルマエビ(penaeid shrimp)の生存率関数を示す図である。
【0012】
図6a図6aは、実施例3による、5週目及び10週目の本開示による実験食餌で飼養した後の電子顕微鏡検査によるシーバス(sea bass)の遠位腸の微絨毛密度を示す図である。
図6b図6bは、実施例3による、5週目及び10週目の本開示による実験食餌で飼養した後の電子顕微鏡検査によるシーバス(sea bass)の遠位腸の微絨毛密度を示す図である。
【0013】
図7図7は、実施例3による、10週目の本開示による実験食餌で飼養した後の遠位腸の2つの免疫遺伝子(IL1β及びIL10)の発現を示す図である。
【0014】

図8図8は、実施例6による負荷14日後のエビの生存率(平均±SD)を示し、同じ大文字で示されている平均は、処置間で違いがないことを示す図である(フィッシャー検定、5%確率)。
【0015】
図9図9は、実施例9による、タイセイヨウサケ(Atlantic salmon)及びニジマスのスパチュラ掻爬の方向を示す図である。
【0016】
図10図10は、実施例9による、60SC PARIETAL POLYSACCHARIDES及び(50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES(商標))で補完した実験食餌で8週間飼養したニジマス(O.mykiss)の皮膚試料の粘液産生レベルと関連する遺伝子の相対的発現レベルを示す図である。データはボックスプロットで表されている(n=10/処置)。は、有意な上方制御を示す;P<0.0001。
【0017】
図11図11は、実施例9による、対照給餌魚及び実験食餌で56日間飼養したニジマスの成長成績を示す図である。
【0018】
図12図12は、実施例10による、対照(A及びB)、60SC菌体壁多糖(C及びD)、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES(E及びF)で10週間飼養したシーバスの腸の例を示す図である。縮尺バーは、10μm(画像A、C、及びE)及び1μm(画像B、D、及びF)である。
【0019】
図13図13は、実施例10による、対照食餌並びに実験食餌を(A)5週間及び(B)10週間給餌したシーバスの後腸の微絨毛密度測定値を示す図である。アスタリスクは、対照食餌給餌魚と実験食餌を給餌した魚とに有意差があったことを示す(P<0.001)。
【0020】
図14図14は、実験食餌で10週間飼養した後のシーバス後腸試料の遺伝子発現データを示す図である。ボックスプロットは、実施例10による、HSP70、PCNA、IL-1ベータ、及びIL-10のデータを示す。アスタリスクは、対照給餌魚と比較して、遺伝子発現の上方又は下方制御が有意であることを示す(P<0.05)。
【0021】
図15図15は、実施例11による、20日目(負荷6日後)にアイメリア・アセルブリナ(Eimeria acervulina)、E.マキシマ(E.maxima)、及びE.テネラ(E.tenella)で負荷したブロイラーニワトリの平均腸病変スコアを示す図である。
【0022】
図16図16は、実施例11による治験の終了時のブロイラーニワトリの累積死亡率(%)を示す図である。
【0023】
図17図17は、実施例11による、20日目(負荷6日後)のアイメリア・アセルブリナ、E.マキシマ、及びE.テネラで負荷したブロイラーニワトリの接合子嚢糞便排泄物(糞便物1グラム当たりのコクシジウム接合子嚢(OPG))を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
【0025】
真菌の細胞壁は、キチン、マンノースに基づく構造体及びベータ―グルカンを含む菌体壁多糖から主としてなる。グルカンは、最大で細胞壁の50%を構成し、免疫応答を調節するために治療上使用される生理活性物質である。実験的に、これらの菌体壁多糖は、腫瘍成長や感染を含む様々な攻撃に対する防御を付与することができる。最近では、感染に対する宿主免疫応答の理解に向けて多くの進展がみられる。微生物に対する宿主応答を調節する新規な細胞表面分子が発見されている。この受容体は、病原体関連パターン認識受容体(PRR)と呼ばれ、トル様受容体、C型レクチン受容体、スカベンジャー受容体、及び補体受容体が主に知られている。
【0026】
これらの免疫受容体は、細菌又は真菌の表面にある特異的リガンドによって活性化される。真菌の場合、β―1,3及びβ―1,6グリコシド結合によって結合したグルコース単位は、β―グルカンと称され、主としてサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から抽出されるが、抗菌作用、殺真菌作用及び抗腫瘍作用を誘導することが示されている。これらの分子が防御を誘導する機序は、免疫受容体を含んでおり、その1つはデクチン1、単球上の主要なβ―グルカン受容体である。それは、酵母細胞又は誘導体を認識することができる単一の細胞外C型レクチン様壁多糖認識ドメインを含んでおり、免疫応答の可動化に寄与する。
C型レクチン受容体デクチン1は、サッカロマイセス・セレビシエ由来のベータ―グルカンと結合し、特に食作用及びザイモサン、サッカロマイセス・セレビシエ由来の細胞壁抽出物等の粒子やサッカロマイセス・セレビシエ系統由来の他の酵母誘導体(他の酵母誘導体は限定されないが、酵母細胞壁、不活性酵母又は自己消化酵母)の除去を導く様々な経路の誘導に関与することが記載されている(Marakalaら、Mamm Genome (2011) 22:55-65)。脅威を検出する機構及び感染に対する迅速な応答は高度に保存されており、免疫応答はこの病原体リガンドの、例えばベータ―グルカンの、宿主細胞の表面上のPRRへの結合によって部分的に引き起こされる。炎症に関連して、数時間以内に、非特異的自然免疫系が活性化される。局所炎症は、感染に対するこの迅速な応答に重要な役割を果たしている。自然免疫系における多くのプレーヤーは、好中球、単球、マクロファージ、補体因子、サイトカイン、抗微生物ペプチド及び急性期タンパク質を含めて、複雑で非常に調節された応答で素早く起動して、感染に対して迅速に防御する。最近では、前記経路を通じた免疫応答の刺激を謳った非特異的で不活性な酵母を基礎とする製品に対する市場選択肢が存在している。しかしながら、これらの製品は特異性及び成果の点で一貫性に欠いている。動物又はヒトの免疫応答の刺激を増強する改善された酵母製品を提供することは非常に望ましいことである。
【0027】
本開示は、少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖を含む組成物を提供する。本開示では、「菌体壁多糖」は、キチン、マンナンオリゴ糖、ベータ1,3グルカン及びベータ1,6グルカンである。驚くことに、少なくとも1種のカンジダ種からの前記菌体壁多糖を、少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖と組み合わせると、配合率が低いときでさえ、動物又はヒトの免疫応答の刺激を増強することになる。
【0028】
複数の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として1~99乾燥重量%である。1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として5~90乾燥重量%である。他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として5~80乾燥重量%である。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~75乾燥重量%である。さらにまた他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~60乾燥重量%である。1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~50乾燥重量%である。他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~20乾燥重量%である。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~15乾燥重量%である。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50乾燥重量%である。他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20乾燥重量%である。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、11、12、13、14又は15乾燥重量%である。
【0029】
代替の又は補完的な実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として1~99乾燥重量%である。1つの実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として50~90乾燥重量%である。他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として70~90乾燥重量%である。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として80~90乾燥重量%である。さらにまた他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85又は90乾燥重量%である。他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも70、75、80、85又は90乾燥重量%である。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89又は90乾燥重量%である。
【0030】
代替の又は補完的な実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として1~100重量%である。1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として20~80重量%である。他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として30~60重量%である。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95重量%である。さらにまた他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として少なくとも20、23、25、27、30、33、35、37、40、43、45、47、50、53、55、57、60、63、65、67、70、73、75、77又は80重量%である。1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60重量%である。
【0031】
1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~50乾燥重量%であり、かつ、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として30~60重量%である。
【0032】
他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50乾燥重量%であり、かつ、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として30~60重量%である。
【0033】
さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10~50乾燥重量%であり、かつ、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60重量%である。
【0034】
さらにまた他の実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50乾燥重量%であり、かつ、前記少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び前記少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖の量が、前記組成物の総重量を基準として少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60重量%である。
【0035】
1つの実施態様においては、前記少なくとも1種のカンジダ種はカンジダ・ユチリス(Candida utilis)である。本開示では、カンジダ・ユチリスには、有性(トルラ酵母(Cyberlindnera jadinii))と無性(カンジダ・ユチリス(Candida utilis))の両方を含むと理解される。他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種は、サッカロマイセス種(Saccharomyces sp)、ハンセニアスポラ種(Hanseniaspora sp)、ハンゼヌラ種(Hansenula sp)、クルイベロマイセス種(Kluyveromyces sp)、メチニコビア種(Metschnikowia sp)、ピキア種(Pichia sp)、スターメレラ種(Starmerella sp)及びトルラスポラ種(Torulaspora sp)又はこれらの混合種である。前記少なくとも1種の異なる酵母種はまた、それら酵母種のいずれか由来の種間雑種も含む。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種はサッカロマイセス種である。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種はサッカロマイセス・セレビシエである。サッカロマイセス・セレビシエはまた、限定されないが、サッカロマイセス・セレビシエ・バー・ボウラディ(Saccharomyces cerevisiae var.boulardii)のような亜種も含む。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種はサッカロマイセス・セレビシエの2又はそれ以上のブレンドである。さらに他の実施態様においては、前記少なくとも1種の異なる酵母種は、少なくとも1種のサッカロマイセス・セレビシエと少なくとも1種のサッカロマイセス・セレビシエ・バー・ボウラディのブレンドである。
【0036】
1つの実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、動物又はヒトにおいて免疫応答を調節及び/又は刺激するのに使用することができる。ここで用語「調節する」が使用されるときは、該用語は免疫応答のあらゆる測定可能な上昇又は減少を指すと理解される。他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、動物又はヒトの健康及び感染抵抗性を改善するのに使用することができる。さらに他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、病原性微生物に対する動物又はヒトの抵抗性を改善するのに使用することができる。さらに他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、動物育種の実績を促進するのに使用することができる。1つの実施態様においては、前記動物は家畜である。典型的な家畜には、限定されないが、魚、エビ、仔牛、仔豚が含まれる。
【0037】
1つの実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、動物の腸管の健康、腸管の完全性及び腸管の形態を改善するのに使用するのに使用することができる。他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、動物の抗炎症応答を刺激するために使用することができる。さらに他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、飼育動物の成長成績パラメータ及び飼料要求率を促進及び/又は改善するために使用することができる。さらに他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、飼育動物の罹患率、特には抗生物質による治療中の罹患率及び死亡率を低減するために使用することができる。1つの実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、飼育動物の死亡率を低減するために使用することができる。他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、動物の下痢を減少させるために使用することができる。さらに他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、腸管病原体に対する感受性を低下させるために使用することができる。さらに他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、寄生虫侵襲及び関連疾患に対する動物の感受性を低下させるために使用することができる。1つの実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、水生動物の皮膚粘液の産生又はその質を促進及び/又は改善するために使用することができる。
【0038】
さらに他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、従来の動物飼料の成分として有用である。
【0039】
さらに他の実施態様においては、前記実施態様で規定した組成物は、通常、動物又はヒトの完全食に添加されるか又は直接的に消費する錠剤、ペレット又はビードとして個別に添加される形式で提供される。
【0040】
本開示は、少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖を含む組成物を動物又はヒトに投与することにより、動物又はヒトにおいて免疫応答を調節及び/又は刺激する方法を提供する。また、少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖を含む組成物を動物又はヒトに投与することにより、動物又はヒトの健康及び/又は感染抵抗性を改善する方法を提供する。また、少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖を含む組成物を動物又はヒトに投与することにより、病原性微生物に対する動物又はヒトの抵抗性を改善する方法を提供する。また、少なくとも1種のカンジダ種からの菌体壁多糖及び少なくとも1種の異なる酵母種からの菌体壁多糖を含む組成物を動物又はヒトに投与することにより、動物育種の実績を促進する方法を提供する。
【0041】
1つの実施態様においては、組合せとして、食品添加剤、飼料添加剤、飼料材料/成分、動物飼料、又は医薬製品の形態がある。他の実施態様においては、該医薬製品は経口的又は非経口的に投与することができる。さらに他の実施態様においては、食品添加剤、動物飼料は、動物又はヒトの完全食に添加されるか又は直接的に消費する錠剤、ペレット又はビードとして個別に添加される形式で提供することができる。さらに他の実施態様においては、前記動物は家畜である。典型的な家畜には、限定されないが、魚、エビ、仔牛、仔豚が含まれる。
【0042】
以下の実施例は本発明をさらに説明、規定するが、いかなる形においても本発明を限定するものではない。
【0043】
実施例
【0044】
実施例1:
【0045】
デクチン1だけが、酵母菌体壁多糖を認識するPRRではない。重要な役割を果たすのは、細胞壁の構造及びアーキテクチャーであると思われる。本明細書において、本発明者は、たとえ菌体壁多糖の組成が類似している場合でも酵母種が異なると、菌体壁多糖ネットワークのアーキテクチャーが異なり、デクチン1の活性化とは必ずしも関連しない異なる一連のPRRが活性化される場合があると仮定した。この仮説を評価するために、デクチン1と高親和性を有する特異的な可溶性リガンドであるラミナリンを使用して、実施例1に示されているようなin vitro競合アッセイを実施した。
【0046】
この例では、本発明者は、異なる酵母菌株及び酵母種から抽出された菌体壁多糖の様々な組み合わせが先天性免疫応答に及ぼす影響を評価することを選択した。これら実験で使用した細胞モデルは、ヒト単球の初代培養だった。酸素種を生成する単球の能力を評価した。化学ルミネセンスを利用して、アニオンスーパーオキシドの産生を研究した。この分子は、単球表面に見られる酵素複合体であるNADPHオキシダーゼから放出される。酸素種は、単球により食菌された生細菌又は生真菌を死滅させることに関与する。
【0047】
物質及び方法
【0048】
細胞培養
【0049】
末梢血単核細胞(PBMC)を、健常血液ドナーのバフィコートから標準的フィコール-ハイパック密度勾配法により得た。ヒト単球は、5%COを含む湿潤雰囲気中にて、マクロファージ培養に最適化されたSFM培地で2時間37℃にてプラスチックに付着させることにより単核細胞から単離した。単球を多ウェル培養プレートに播種し、カルシウムもマグネシウムも含まないHBSSで洗浄することにより非付着細胞を除去した。残りの付着細胞(>85%単球)を、刺激前にSFMでインキュベートした。
【0050】
酸素種産生のアッセイ
【0051】
単核細胞を、96ウェルマイクロプレートに配置した。活性酸素種(ROS)産生は、サーモスタットで温度管理(37℃)された照度計(Wallac1420 Victor2、フィンランド)を使用して、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン(ルミノール、Sigma社)の存在下で化学ルミネセンスにより測定した。100μg/mlの様々な菌体壁多糖のみの存在下で又は段階的レベルのラミナリン(アッセイに応じて、0、1、10、及び100μg/ml)の存在下で、ルミノール(66μΜ)と共に基本条件にて細胞をインキュベートした後、化学ルミネセンスの発生を60分間連続してモニターした。100μg/mlのザイモサンを陽性対照として使用した。
【0052】
この研究で使用した酵母菌体壁多糖:
【0053】
異なる酵母菌株から抽出した菌体壁多糖:
サッカロマイセス・セレビシエ菌株:L60、L62、L69、L72
カンジダ・ユチリス菌株:L75(NRRL-900)
様々なアッセイで試験した菌体壁多糖のレベル:
カンジダ・ユチリス菌株:菌体壁多糖レベルは、組成物の総重量を基準として30乾燥重量%に標準化した。
サッカロマイセス・セレビシエ菌株:菌体壁多糖レベルは、組成物の総重量を基準として30、35、45、及び60乾燥重量%に標準化した。
カンジダ・ユチリス及びサッカロマイセス・セレビシエの組み合わせ:多糖レベルは、組成物の総重量を基準として30、35、45、及び50乾燥重量%に標準化した。これら組み合わせ中のカンジダ・ユチリスに由来する菌体壁多糖のレベルは、それぞれ、組成物の総重量を基準として15、15、10、15、及び5乾燥重量%、又は組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として50、43、25、33、及び10乾燥重量%だった(図4a及び4b)。
【0054】
結果:
【0055】
アッセイ1:サッカロマイセス・セレビシエの異なる菌株に由来する菌体壁多糖と共に異なる濃度のラミナリンでインキュベートした単球によるROSのin vitro産生。サッカロマイセス・セレビシエの4つの異なる菌株に由来する各菌体壁多糖画分を、画分の総重量を基準として60乾燥重量%に標準化し、デクチン1との親和性を試験した。図1に示されているように、全ての菌株に由来する菌体壁多糖は、ROSの産生を誘導することができ、ラミナリンは、線形用量応答様式でこの誘導を阻害した。
【0056】
アッセイ2:サッカロマイセス・セレビシエに由来する菌体壁多糖の、単球によるROSのin vitro産生に対する用量応答。2つの異なるサッカロマイセス・セレビシエ菌株(L62及びL69)に由来する菌体壁多糖のブレンドを、ブレンドの総重量を基準として30、35、45、及び60乾燥重量%に調製及び標準化し、それらによるROS産生の誘導を試験した。図2に示されているように、試験した濃度範囲にわたって線形用量応答が得られた。
【0057】
アッセイ3:カンジダ・ユチリス菌株に由来する菌体壁多糖又はサッカロマイセス・セレビシエに由来する菌体壁多糖と共にインキュベートした単球によるROSのin vitro産生に対するラミナリンの比較効果。カンジダ・ユチリスの権利専有菌株に由来する菌体壁多糖画分を、画分の総重量を基準として30乾燥重量%に標準化し、デクチン1との親和性を試験した。同様に、サッカロマイセス・セレビシエの菌株(L62)に由来する菌体壁多糖画分を、画分の総重量を基準として30及び60乾燥重量%にそれぞれ標準化し、デクチン1との親和性を試験した。図3に示されているように、ラミナリンの非存在下では、カンジダ・ユチリスの菌体壁多糖画分及びサッカロマイセス・セレビシエの菌体壁多糖画分は、ROSの産生を誘導することができた。図3では、ラミナリンの濃度の増加は、サッカロマイセス・セレビシエの菌体壁多糖画分によるROSの産生阻害を増加させている。しかしながら、ラミナリンの濃度が増加しても、100μg/mlでさえ、カンジダ・ユチリスの菌体壁多糖画分によるROSの産生は阻害されなかった。
【0058】
アッセイ4:サッカロマイセス・セレビシエ菌株に由来する異なる濃度の菌体壁多糖のみで又はカンジダ・ユチリスに由来する菌体壁多糖と組み合わせて、(a)ラミナリンを用いずに及び(b)100μgのラミナリンを用いてインキュベートした単球によるROSのin vitro産生。
【0059】
図4a及び4bに示されているように、異なる組成物中にカンジダ・ユチリスに由来する菌体壁多糖が存在すると、たとえ含有割合が低くとも(つまり組成物の総重量を基準として5乾燥重量%)、単球によるROS産生の増強に結び付く。図4bに示されているように、カンジダ・ユチリスに由来する菌体壁多糖及び少なくとも1つのサッカロマイセス・セレビシエに由来する菌体壁多糖を含む組成物は、より低い含有割合(つまり、組成物の総重量を基準として5乾燥重量%又は組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として10乾燥重量%)でも、サッカロマイセス・セレビシエに由来する多糖のみ(図1及び図3に示されているような)と比べて、ラミナリンの阻害効果による影響を受けなかった。
【0060】
実施例2:
【0061】
カンジダ・ユチリス(CU)に由来する菌体壁多糖及びサッカロマイセス・セレビシエ(SC)に由来する菌体壁多糖を含む組成物を、クルマエビのビブリオ症に対する感受性を軽減するための予防的給餌戦略として試験した。菌体壁多糖は、組成物の総重量を基準として50重量%の量だった(50SC/CU)。
【0062】
SC菌体壁多糖のみと比べた50SC/CU菌体壁多糖の利益を評価するために、本発明者は、幼若クルマエビにin vivo疾患負荷を適用した。感染方法は浸漬だった。本発明者は、急性肝膵臓壊死症候群を誘導可能な病原性ビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus)を使用する。
【0063】
試験した菌体壁多糖は以下の通りだった:
・カンジダ・ユチリスNRRL-900に由来する菌体壁多糖を6乾燥重量%(組成物の総重量を基準として、又は組成物中の菌体壁多糖の総重量を基準として12乾燥重量%)含有する50SC/CU菌体壁多糖:3用量を試験した:飼料中0.04%、0.08%、0.12%。
・S.セレビシエの1つの菌株(CNCM I 1079)に由来する60SC菌体壁多糖を、飼料中0.12%で試験した。
【0064】
1.1×10CFU/mlでAHPNSを誘導可能な病原性V.パラヘモリチカス菌株の100ml培養(TSB+2%NaCl(TSB+)で18時間28℃にて増殖)で浸漬負荷する前に、試験候補で補完した又は補完しなかった食餌で21日間飼養した2.07±0.05gの幼若バナメイエビ(Litopenaeus vannamei)で治験を実施した。死亡率を10日間モニターし、各食餌での累積生存率を、各治験内の対照と統計的に比較した。また、カプラン・マイヤー生存曲線(Kaplan及びMeier、1958年)を食餌毎に構築し、この曲線をログランク検定を使用して比較して、曲線間の差、及び生存傾向が曲線間で異なっていたか否かを決定した。有意水準はP=0.05に設定した。
【0065】
50SC/CU処置は、線形用量応答を示し、病原性菌株により誘導される死亡率を低下させた(ログランク(マンテル-コックス)、p<0.01)。生存率は、0.04%の含有割合の場合、陽性対照(感染)と比較して更に有意に改善した。60SC/CUのみでは、0.12%でわずかな改善を示したに過ぎなかった。
【0066】
プロトコール:
【0067】
幼若バナメイエビを、ビブリオ・パラヘモリチカス(急性肝膵臓壊死症-AHPNDを引き起こす因子)と浴接触させる前に、試験製品と混合した市販調製エビ食餌で21日間飼養して、飼料添加物が生存率及び感染率に影響を及ぼすことになるか否かを決定した。
【0068】
養魚槽及び実験計画:
【0069】
この例で使用したSPF(特定病原体除去)動物は、WSSV(白点症候群ウイルス)、TSV(田浦症候群ウイルス、IMNV(感染性筋壊死ウイルス)、AHPND(急性肝膵臓壊死症)を含む重要な感染症が、組織病理学的技法及びPCR技法の両方を使用して検査されている。12日齢の後期仔魚を、孵卵所からウェットラボに移し、1~2グラムのサイズに達するまで厳重なバイオセキュリティーで更に45日間飼育した。研究を開始する1日前に、1~2グラムのSPFバナメイエビを各々27 90L水槽に移した(35尾エビ/水槽)。各水槽中のエビは全て、治験終了時に成長速度を算出するために、養殖前に集団で計量した。これら水槽中の動物には全て、それぞれの試験食餌を21日給餌した(表1)。
【0070】
1処置当たり4つの重複水槽に、試験製品を含有する調製飼料を給餌した。4つの水槽を陽性対照に指定し、他の4つの水槽が陰性対照としての役目を果たした。また、陰性対照水槽を市販エビ食餌ペレットで飼養したが、ビブリオ・パラヘモリチカスを引き起こすEMS/AHPNDで負荷しなかった。全ての水槽に、体重のおよそ5%に相当する各食餌を毎日与えた。
【0071】
飼料添加物を含有する飼料を投与した21日後に、16個の処置水槽をビブリオ・パラヘモリチカスで負荷した。一方で、陽性対照水槽は、添加物を一切含まない同じエビ食餌で飼養し、治験の21日目にビブリオ・パラヘモリチカスで負荷した。負荷エビを更に10日間維持して、生存率を記録し、成長速度をモニターした。
【0072】
負荷方法:
【0073】
この研究では、エビを浸漬負荷にかけた。ビブリオ・パラヘモリチカスの一貫して病原性の菌株を接種し、18時間インキュベートしたトリプシン大豆ブロス+2%(TSB+)塩化ナトリウムを、水槽に直接添加した。光学密度吸光度(OD600nm)で測定される細菌密度を達成するように、細菌懸濁液を水槽に添加した。負荷期間中、エビは、それぞれの食餌処置で更に10日間維持した。
【0074】
結果
【0075】
治験終了時の統計処理後の最終生存率は、表1に報告されている。図5には、異なる群のエビの実験経過中の生存率の分布が、カプラン・マイヤー手順に従って報告されている。
【0076】
表1:最終生存率:処置観察の要約
【0077】
表2及び表3には、異なる群のエビの生存率分布間の統計的差異が示されている。
【0078】
表2に示されているように、適用した試験は全て、生存率分布間で非常に有意な処置効果を明らかにした。
【0079】
表2:統計比較:異なるレベルの処置の生存率分布の同等性に関する試験
【0080】
表3に示されているように、各感染群の死亡率の動態を、カプラン-マイヤー法及びログランク(マンテル-コックス)検定を使用して、陰性対照(未感染群)と比較した場合、細菌負荷は、全ての群のエビの生存率に有意な影響を及ぼした。加えて、こうしたin vivo結果により、サッカロマイセス・セレビシエ及びカンジダ・ユチリスに由来する菌体壁多糖を含む組成物が、自然防御の調節及び/又は刺激に有益な効果を示し、負荷条件下の動物成績を向上させることが確認される(表3)。
【0081】
表3:ログランク(マンテル-コックス)検定を使用した分布の統計比較:異なる処置間の生存率分布の同等性に関する検定
【0082】
実施例3
【0083】
シーバスでの本例の結果は、<<50SC/CU菌体壁多糖>>対<<60SC菌体壁多糖>>が魚成績及びストレス応答に対して肯定的な影響を及ぼすことを示した。
【0084】
15.4gの平均体重を有するヨーロピアンシーバス(Dicentrarchus labrax)を、0.08%の<<50SC/CU菌体壁多糖>>対0.2%の<<60SC菌体壁多糖>>による10週間の飼養治験にかけた。
【0085】
表4に示されているように高レベルの大豆粉末(40%)を含むように飼料を配合した。
【0086】
表4:食餌配合
【0087】
1処置当たり25匹の魚の水槽を3つ使用した。塩分ストレスを8週目に適用した。記録したパラメータ:成長成績/腸形態/腸微生物叢。
【0088】
表5には、10週目の最終成績が示されている。
【0089】
表5:10週目の成績
【0090】
データは全て、平均±標準偏差(SD)として示されている。データは、必要に応じて変換し、ウィンドウズ用のSPSS statisticsバージョン18(SPSS Inc.社、シカゴ、イリノイ州、米国)を使用して統計的分析を実施した。P<0.05レベルで有意性があると認めた。データは全て、一方向ANOVAを使用して分析した。対照と実験群との有意差は、マン-ホイットニーのノンパラメトリック検定を使用して決定した。
【0091】
図6a及び図6bには、それぞれ5週目及び10週目の実験食餌で飼養した後のシーバス遠位腸の微絨毛密度の走査型電子顕微鏡検査結果が示されている。データは、平均±S.D(n=3)として表されている。対応する対照との有意差は、()P<0.01、及び(**)P<0.001で表示されている。データは、必要に応じて変換し、ウィンドウ用SPSS statisticsバージョン18(SPSS Inc.社、シカゴ、イリノイ州、米国)を使用して統計的分析を実施し、P<0.05レベルで有意性を認めた。一方向ANOVAを使用してデータを分析し、対照と実験群との有意差は、チューキーのポストホック検定を使用して決定した。
【0092】
表6:5週目及び10週目の光学顕微鏡検査
【0093】
表6のデータは全て、平均±標準偏差(SD)として示されている。データは、必要に応じて変換し、ウィンドウズ用SPSS statisticsバージョン18(SPSS Inc.社、シカゴ、イリノイ州、米国)を使用して統計的分析を実施した。P<0.05レベルで有意性があると認めた。データは全て、一方向ANOVAを使用して分析した。対照と実験群との有意差は、ポストホックチューキーのHSD検定を使用して決定した。
【0094】
図7には、10週目における本開示により実験食餌で飼養した後のシーバスの遠位腸での2つの免疫遺伝子(IL1β及びIL10)の発現が示されている。
【0095】
実施例4:
【0096】
この例は、第2段階飼養において本開示による菌体壁多糖の組み合わせで離乳仔豚を補完した効果を示すものである。
【0097】
治験設定
【0098】
治験の期間:42日間
【0099】
動物材料及び畜産条件:
【0100】
離乳仔豚を、1檻当たり仔豚12匹で収容した。1つの建物にて、6つの檻を2つの処置(対照及び処置)の1つに割り当てた。2回の治験を経時的に繰り返して、1処置当たり12個の重複檻を生成し、2回分を一緒に分析した。
【0101】
試験製品:6%CUを有する50SC/CU菌体壁多糖
【0102】
処置:治験は、2つの処置で構成されていた。
・T-1:対照-酵母誘導体を含まない通常食餌
・T-2:0.08%の50SC/CU菌体壁多糖で補完された対照食餌
【0103】
食餌
【0104】
動物を、表7に示されているような2段階食餌で飼養した。
【0105】
[表7]
表7:2段階食餌
【0106】
測定した畜産パラメータ:
・各飼養段階の開始時及び終了時の1檻当たりの体重、
・第2飼養段階の1檻当たりの飼料消費量
・死亡率及び淘汰率
【0107】
統計的分析
【0108】
結果は、SPSSを使用して、GLM(一般化線形モデル)単変量モデルで分析する。
【0109】
結果:
【0110】
A.成長成績
【0111】
表8に示されているように、最終体重及び平均1日増体量に有意な効果が検出された。この効果は、主に、処置群では、第2段階中の成績が有意により良好であり、1日成長速度及び飼料要求率が有意により高いことにより説明される。
【0112】
【0113】
他の観察:対照檻では3(三)匹の仔豚が死亡したが、処置檻の1つで1匹の仔豚が死亡したに過ぎなかった。死亡は全て脳膜炎によるものであった。処置群では、耳への噛みつきがあまり観察されなかった。対照群では、糞がより緩かった。
【0114】
実施例5:
【0115】
この例は、離乳前後の仔牛の畜産成績及び健康成績に対する、固形飼料により補完された場合の50SC/CU菌体壁多糖組成物の効果を評価するものである。
【0116】
研究期間:6週間。
【0117】
物質及び方法
【0118】
関与した動物:
動物の総数:開始時129匹、終了時125匹。
性別:雄
血統:フリージアン(由来:フランスの異なる農場)
【0119】
実験処置
【0120】
2つの食餌処置を、異なる製品で補完した同じミール粉末を使用して比較した。
T0として:製品を一切含まない対照食餌。
T1:50SC/CU菌体壁多糖で補完した同じ食餌
・最初の2週間:5g/動物/日=2.7g/kgの開始飼料
・その後:3g/動物/日=1.6g/kgの開始飼料
【0121】
実験設計
【0122】
農場到着時に、動物を無作為に檻に割り当てた。6日後、治験を開始した。動物を計量し、平均体重及び体重の平均標準偏差により檻を均一化した。檻は全て同時期に実施した。開始体重は、平均で53.9±4.3kgであり、開始時の平均日齢は、27.3±4.4日だった。
【0123】
実施場所の説明及び飼養
【0124】
動物は全て、同じ建物に収容し、わら敷きの檻には10~11匹動物を入れた。1処置当たり4つの檻が関与した:各11匹の動物の3つの檻及び各10匹の動物の1つの檻=1処置当たり43匹の動物。全ての檻は、檻の給餌器間で接触がない給餌器を有していた。ストローは2つの檻で共有したが、処置間の相互汚染はなかった。ミルクは、午前8:00及び午後6:00の1日2回個々に分配した。仔牛用濃縮液を、給餌葉桶で1日1回手作業で分配した。分配量は、毎日分配前に計量した。動物は全て、ストローを自由に使用した。
【0125】
動物は、以下のスケジュールに従って飼養した。
・到着日~2週間:2×1.5L/日の初乳ミルク希釈液(25%CP及び19.5%脂肪)、その後代用ミルク(22%CP及び18%脂肪)+固形飼料(粉末ミール)自由摂取+ストロー自由摂取+水自由摂取。
・2週間~離乳(34日):1×2L/日の代用ミルク(19%CP及び15%脂肪)+固形飼料(粉末ミール)自由摂取+ストロー自由摂取+水自由摂取。
・離乳~出荷:固形飼料(粉末ミール)自由摂取+ストロー自由摂取+水自由摂取
【0126】
仔牛が良好な身体状態を示し、1kg/日/動物を超えて食べ始めたら、離乳を終了した。
【0127】
記録したパラメータ及び適用した方法
【0128】
個々の生体重:仔牛は、研究の開始時から終了時まで2週間毎に午前10:00に個々に計量した(合計で4回の体重測定)。飼料消費量:檻毎に週1回記録した飼料消費量(濃縮液)=毎日提供した飼料重量の合計-その週の最終日の未消費重量
【0129】
結果
【0130】
体重(BW)及び平均1日増体量(ADG)
【0131】
表9に示されているように、T1で飼養した動物の平均体重(BW)は、T0で飼養した動物よりも良好である傾向があった。処置と期間とに相互作用は見出されなかった。初期BW及び最終BW(それぞれBW0及びBW42)は、T1の数値がより高かった。
【0132】
表9:治験中の体重
【0133】
表10に示されているように、T1の動物はT0の動物よりも数値的に増体量が良好だったが、平均1日増体量には処置間で差異はなかった。
【0134】
表10:治験中の平均1日増体量
【0135】
檻内の標準偏差は、飼育者らが更により多くの摂取の結果としてのより良好な均一性を求めている場合、体重及び増体量の不均一性の良好な指標となる。T1の標準偏差はT0よりも有意に低く、これは対照動物が処置動物よりも体重の不均一性が大きいことを意味している(表11)。成長の不均一性を見ると、統計的有意差は観察されなかったが、対照動物は、数値的には処置群動物よりも不均一性が高かった。
【0136】
表11:治験中のBW及びADGの標準偏差(檻内)
【0137】
濃縮液摂取及び飼料効率(FE)及び飼料要求率(FCR)
【0138】
総濃縮液摂取量(檻毎の全期間の総摂取量/動物数)の統計的分析は、差異を示さなかった。飼料要求率分析は、処置間の有意差を一切示さなかった。
【0139】
下痢及び罹患率
【0140】
表12に示されているように、T1の動物は、対照T0と比較して、下痢をした日数が少なく、抗生物質での治療回数が少なかった。
【0141】
表12:下痢をした日数及び抗生物質での治療回数
【0142】
少なくとも1回下痢を治療した動物のパーセントに適用したマン・ホイットニー検定は、T0と比較してT1が有意な低減を示し、抗生物質で少なくとも1回治療した動物のパーセントは低下傾向を示した。
【0143】
抗生物質で少なくとも1回及び下痢を少なくとも1回治療した動物のパーセント
【0144】
実施例6:
【0145】
幼若バナメイエビを、微胞子虫寄生虫であるエンテロシトゾーン・ヘパトペナエイ(Enterocytozoon hepatopenaei)で負荷する14日前に、LALLEMAND社により提供された飼料添加物製品を混合した市販の調製エビ食餌で14日間飼養して、飼料添加剤のいずれかの用量が、生存率に肯定的な効果を及ぼし、感染率及び寄生虫量を低減するか否かを決定した。
【0146】
物質及び方法
【0147】
SPF(特定病原体除去)幼若エビをこの研究に使用した。これらのエビは、WSSV(白点症候群ウイルス)、TSV(田浦症候群ウイルス)、IMNV(感染性筋細胞壊死ウイルス)、EMS/AHPND(早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死症候群)、及びEHP(エンテロシトゾーン・ヘパトペナエイ)を含む重要な感染症が検査されていた。研究を開始する1日前に、1.50±0.09グラムのSPFバナメイエビを各々、20pptの塩水を90L含む120L水槽に移した(30尾エビ/水槽)。各水槽は、活性サンゴを含む浸漬型生物フィルターを装備していた。
【0148】
実験設計
【0149】
実験は、完全無作為化設計として設定し、全ての処置を、異なる水槽で無作為に設計した。治験の総期間:29日間。表13に記載の通り、01日の順化、14日間の飼料添加物投与、その後同じ飼養処置下で14日間のEHP負荷を含む。全水槽のエビには、治験中1日4回それぞれの食餌を十分に与えた(表14)。5つの水槽を、飼料添加物を含む調製飼料で飼養した。5つの水槽を、共棲飼育負荷の陽性対照に設計し、5つの水槽は、陰性対照として役目を果たした。
【0150】
表13:実験のタイミング
【0151】
表14
【0152】
EHP研究で使用した全ての120L養魚層の定義
【0153】
エビ食餌製造
【0154】
飼料添加剤を飼料粉末と混合し、結合剤(CMC-カルボキシメチルセルロース)及び水分を添加してから、加圧肉挽器で押出した。その後、飼料を摂氏50度で6時間乾燥した。飼料を、研究に使用する予想サイズ(長さ1.5~2mm)に粉砕した。
【0155】
負荷方法
【0156】
標準共棲飼育負荷法を使用して、EHP、即ち微胞子虫の寄生虫病を引き起こすエンテロシトゾーン・ヘパトペナエイを小幼若エビに負荷し、自然の感染経路を擬態した。
【0157】
SPF及び罹患エビを、水が自由に往き来できるネット仕切りで分離した。共棲飼育負荷法は、以下のように設計されている:各120リットルのプラスチック水槽に、50立方リットル矩形ネットを取り付ける。負荷中、20尾のEHP感染エビを、懸垂ネット内側に放ち、30尾のSPFエビを外側に放った。EHP感染エビ及びSPFエビは両方とも、各々それぞれの処置の試験食餌で更に14日間飼養した。また、陰性対照(F)を同じ負荷方法で処置した。しかしながら、20尾のEHP感染エビではなく、20尾のSPエビを、懸垂ネットの内側に放った。負荷期間中、陰性対照のネット内側のエビ及びネット外側のエビは両方とも、市販エビ食餌で飼養した。
【0158】
EHP罹患エビの寄生虫量密度は、負荷開始時ではエンテロシトゾーン・ヘパトペナエイの5.05E+06 CFU/gだった。
【0159】
試料採取及び観察
【0160】
qPCRによるEHPの検査を、3時点において、05尾のエビ/水槽/時点で実施した:SPFエビがEHP未感染状態であることを確認する14日目(負荷直前)、寄生虫量を定量化する15日目(負荷の24時間後)及び18日目(負荷の96時間後)。負荷研究終了時に、生存動物を全て生存として計数した。
【0161】
統計的分析
【0162】
7つの処置の平均の比較は、フィッシャーのLSD検定を使用してANOVAにより実施し、P<0.05の場合に有意差があるとみなした。
【0163】
結果
【0164】
エビ成績パラメータ
28日間の実験期間にわたる平均生産パラメータは、表15に示されている。値は、5つの重複試料の平均を表わす。

表15
【0165】
負荷治験生存率
【0166】
負荷14日後の処置の生存率
【0167】
負荷14日後のエビの生存率は、図8に処置の(平均±SD)として示されている。同じ大文字で示されている平均は、処置間で違いがない(フィッシャー検定、5%確率)。

表16
【0168】
EHP寄生虫量に関するqPCR検査の結果は、表16に示されている。負荷実験の開始時(負荷直前)の処置群は、EHP未感染状態にある。負荷の48時間後、処置Aの実験エビ及び陽性対照(G)は、この疾患に罹患しているが、陰性対照(F)は、EHP未感染状態だった。したがって、これは、この治験設定が許容可能であり、陰性対照には相互汚染が起こらなかったことを示す。48時間後の処置A及びGのEHP寄生虫量は類似していた。しかしながら、負荷120時間後では、処置AのEHP寄生虫量は、5つの水槽のうちの4つで検出限界未満であったが、陰性対照の水槽は全てEHP陽性だった(5/5)。
【0169】
実施例7
【0170】
熱ストレスに対するブロイラーの耐性に対する50SC/CU菌体壁多糖の効果の評価
【0171】
熱ストレスは、世界的に、家禽生産を難しくする最も重要な環境ストレス因子の1つである。熱ストレスは、家禽成績に負の影響を及ぼし、成長及び製品安全性を低下させる。熱ストレス期間中、ブロイラーニワトリは、熱射病による死亡を防止するために、かなりの体温調節適応を行うが、これは、成績に有害な影響を及ぼす。
【0172】
実験設計
【0173】
場所:私有実験農場(フランス)
【0174】
実験設計:2群
【0175】
対照(C):補完物なし。50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES(Y):開始期間及び成長期間でそれぞれ800g/トン及び400g/トンの50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES。仕上げ期間中は、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDESを補完しない(800-400-0)。
【0176】
食餌:
【0177】
3段階(開始、成長、及び仕上げ)。この3つの飼養段階は、0~10日、11~25日、及び26~35日だった。
【0178】
動物:
【0179】
到着時に20羽の鳥/檻の密度に達するように13個の檻に無作為に割り当てた(C:6つの檻、Y:7つの檻)Ross PM3血統のブロイラーで治験を実施した。
【0180】
熱ストレス負荷:
【0181】
熱ストレス負荷をD20で実施した。D19からD20にかけての夜間に、室温を31℃に上昇させた。
【0182】
測定:1檻当たりの死亡数及び日付。
【0183】
統計的分析:
【0184】
治験中の2群間の死亡率の差(及び特に鳥の熱ストレスに対する耐性)を、カプラン-マイヤー検定により分析した。p値がp<0.1の場合、群間に有意差があるとみなした。そうでなければ、統計的分析では、有意ではない(NS)とみなされる。
【0185】
結果
【0186】
熱ストレス負荷に対する鳥の死亡率及び耐性:結果は、表17に示されている
【0187】
表17
【0188】
40羽の鳥:50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES群では9羽の鳥、及び対照群では31羽の鳥が熱ストレス負荷中に死亡した。死亡した鳥の総数は、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES群で17羽、及び対照群で38羽だった。カプラン-マイヤー分析(2群の平均生存期間を比較する統計的検定)は、強い有意性を示し(p<0.001)、評価は以下の通りだった:C群及びY群の平均生存期間は、それぞれ29.6日間及び32.9日間だった。したがって、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES群は、対照群よりも急性熱ストレス負荷に、より耐性だった。
【0189】
結論として、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDESの給餌は、熱ストレスに対するより良好な耐性に結び付いた。
【0190】
実施例8
【0191】
緒言及び目的
【0192】
本治験の目的は、薬物除去後の離乳後仔豚成績、罹患率、及び下痢発生に対する50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDESの効果を試験することだった。
【0193】
実験設計
【0194】
動物及び畜舎
【0195】
合計で、4つの後続バッチの480匹の離乳仔豚(雌親系統:ラージホワイト(Large White)×ランドレース(Landrace);雄親系統:ダンブレッドデュロック(Danbred Duroc))を、4つの檻を有する8つの育仔室に各群20匹の仔豚/檻で分配した。仔豚は、初期体重が檻内及び処置間で可能な限り均一になるように分配し、各檻に10匹の雌及び10匹の雄を配置した。
【0196】
仔豚は、7及び21日齢でミコプラズマに対するワクチン接種を受け、21日齢でサーコウイルスに対するワクチン接種を受けた。
【0197】
期間
【0198】
治験は、平均で19日齢で離乳させることから開始して、55日間継続した。
【0199】
処置
【0200】
仔豚は、2段階給餌プログラムで飼養し、全実験期間中は自由に飼料及び水を与えた。
【0201】
2つの処置を行った(表18):対照(C)及び治験1(T1)。
【0202】
農場で現在使用されている抗生物質戦略は、以下の通りである:プレ開始段階:120ppmコリスチン+300ppmアモキシシリン+2400ppmのZnO;開始段階:1600ppm ZnO。
【0203】
仔豚負荷が目的の本治験では、薬物は、プレ開始段階:2400ppm ZnO;開始段階:ブランク飼料とした。
【0204】
表18 処置
【0205】
実験設定及び観察
・体重:個々、実験の開始時及び終了時及び食餌変更時。
・飼料摂取量:1檻当たり。食餌変更時に、供給した飼料と変更した日に残っていた飼料の差として。
・罹患率:定期的な集団単位の予防を含む、個体及び集団単位の医療行為。
・死亡率:日付、体重、及び考えられる理由。
・下痢:1檻当たり。下痢発生の日常的点検。
【0206】
統計
【0207】
以下のモデルによるSPSS 22.0(IBM)の一般線形モデルでの分散分析:
jk=μ+axIBW+バッチ+処置+バッチ*処置+ejk
【0208】
式中、
【0209】
Y=最終体重(FBW)、平均1日増体量(ADG)、平均1日飼料摂取量(ADFI)、飼料要求率(FCR)、死亡率;IBW=共変数として使用される初期体重;バッチ=バッチ(j=1、2、3、4)に起因する固定効果;処置=処置(k=C、T1)に起因する固定効果;バッチ*処置=実験処置とバッチとの相互作用;e=エラー。実験は、檻単位で行った。P<0.05から有意性があると宣言した。
【0210】
処置とバッチとの相互作用は見出されなかった。したがって、相互作用をモデルから取り除いた。
【0211】
結果
【0212】
成績
【0213】
FBW(P<0.01)、開始期間の成長及び全体的な成長(P<0.05)、及び開始期間のFCR(P<0.05)には有意差があった。T1の仔豚は、BWがより高く、成長がより早く、FCRがより低い仔豚であった。更に、T1仔豚は、開始期間でより早く成長し(P<0.1)、開始期間でより多くの飼料を消費する(P<0.1)傾向があった。成績結果は表19に示されている。
【0214】
表19 処置C及びT1の仔豚の期間毎の及び全体の成績
【0215】
プレ開始期間よりも開始期間において差異がより大きいという事実は、農場での健康状態が良好であり、仔豚がブランク食餌でより負荷されたのはプレ開始段階中よりも開始期間だったという事実によると思われる。
【0216】
死亡率は、実験期間にわたって低く、処置間に差はなかった。全期間の平均で、死亡率は1.8%だった。合計で、13匹の仔豚が治験中に死亡した。
【0217】
結論:
【0218】
この治験の主な結論は、以下の通りである。
・離乳後の食餌に50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDESを添加することにより、限定的な薬物処方を伴う対照食餌と比べて、最終体重、全体の平均1日増体量、及び全体飼料要求率が数値的な向上する。
・この影響は、恐らくは農場での健康状態に応じて、プレ開始期間よりも開始期間でより大きいと思われる。
・50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDESは、開始段階中のZnO及び/又は抗生物質の良好で有望な代用物である可能性がある。
50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES処置を陽性対照と比較して、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDESが抗生物質の代わりになる可能性を試験すること、及び抗生物質に加えて50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDESを添加することが及ぼす補完的効果の可能性を試験することが推奨される。
【0219】
実施例9
【0220】
施設、試料詳細、及び実験食餌
【0221】
ニジマス(Oncorhynchus mykiss)幼魚で実験を行った。4週間の順化後、480匹の魚(23.07±0.2g)を、通気再循環真水を含有する16×150リットルのガラス繊維水槽に無作為に分配した(1水槽当たり30匹の魚)。魚は、3回の給餌時間(0900、1300、及び1700時)に分けて1日当たり体重の3%の一定量体制による食餌で56日間で飼養した。魚は、隔週で24時間の飢餓期間後にバッチ計量し、14.5±0.5℃にて、12時間:12時間の明期:暗期の光周期で飼育した。水のpHは、6.8~7.5に維持し、溶存酸素は7.5~8mg/lに、アンモニウムは0.04~0.08mg/lに、亜硝酸塩は0.02~0.06mg/lに、及び硝酸塩は54~58mg/lに維持した。ニジマスは、処置毎に4つの重複水槽により4つの食餌体制の1つで飼養した:1]対照、2]60SC PARIETAL POLYSACCHARIDES、3]50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES、連続給餌、及び4]50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES、56日間にわたって間欠投与した(食餌の組成は表21を参照)。
【0222】
[表21]
表21.プリマス実験用の実験食餌の配合。各成分は、1食餌当たりのg/kgとして表されている。
【0223】
方法
【0224】
粘液収集
【0225】
魚は、無作為に選択し、治験実施施設のプロトコールに従って人道的に絶命させることになる。麻酔薬の好ましい選択は、MS222である。魚を網にかける場合、魚の粘膜表面への損傷が最小限になるようにできるだけ迅速に行うように注意しなければならない。絶命直後に、小さなスパチュラを使用してえら蓋の端部から肛門まで魚の一方の側をこすることにより粘液を収集することになる(図9:タイセイヨウサケ及びニジマスの場合のスパチュラ掻爬の方向)。魚の尾部末端に蓄積した粘液を、1mlの事前に計量した注射器へと移すことになる。粘液を1mlのエッペンドルフチューブに保存し、直ちに-80℃に凍結し、分析まで待機した。
【0226】
リアルタイムqPCR試料の収集
【0227】
皮膚試料(<100mg)をニジマスから収集し、1mL RNAlater溶液(Applied Biosystems社、ウォリントン、英国)に移し、4℃で24時間保管し、その後RNA抽出まで-80℃で保管した。RNAを抽出した後、qPCRを実施して、粘液産生の特異的バイオマーカーの発現を観察した。
【0228】
成長成績の計算
【0229】
成長は、増体量(WG)、比成長速度(SGR)、飼料要求率(FCR)、タンパク質効率比(PER)、条件因子(K)で評価した。計算は、以下の数式を使用して行った:NWG(g)=FW-IW;SGR(%BW/日)=100((lnFW-lnIW)/T);FCR(g/g)=FI/WG;PER=WG/PI;K=FW/(FL)。式中、FW=最終体重(g)、IW=初期体重(g)、T=給餌期間(日)、WG=湿増体量(g)、FI=飼料摂取量(g)、PI=タンパク質摂取量(g)、及びFL=最終体長(cm)。
【0230】
結果
【0231】
粘液試料の分析
【0232】
粘液産生のデータは、表22に示されている。粘液産生は、対照と比べて60SC及び50SC/CUを給餌した魚で増加した。数値的には50SC/CUの方が好ましく有利だった。
【0233】
[表22]
表22.実験食餌を給餌した28日及び56日後の魚の皮膚粘液産生(mg/cm)。データは、平均±SDとして表されている。
【0234】
リアルタイムqPCR分析
【0235】
ニジマスの皮膚試料の遺伝子発現解析は、対照給餌魚(1.16±0.48NEL)と比較して、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES食餌を連続的に給餌した魚(2.31±1.26NEL;P=0.0003)及び間欠的に給餌した魚(2.09±0.58NEL;P<0.0001)の粘液産生の特異的バイオマーカーの発現が有意に上方制御されたことを明らかにした。データは、図10に示されており、この図には、60SC PARIETAL POLYSACCHARIDES及び(50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES(商標))で補完した実験食餌で8週間飼養したニジマス(O.mykiss)の皮膚試料中のこの遺伝子の相対的発現が示されている。データは、ボックスプロットで表されている(n=10/処置)。は、上方制御が有意であることを示す;P<0.0001。
【0236】
成長成績
【0237】
実験食餌で56日間給餌したニジマスは、対照給餌魚と比較して成長成績に有意差を示さなかった。データは、図11に示されており、この図には、実験食餌を56日間給餌したニジマスの成長成績が示されている。
【0238】
実施例10:
【0239】
魚、実験設計、及び食餌配合
【0240】
4週間の順化後、225匹のシーバス(15.45±0.1g)を、無作為に9×110リットルのガラス繊維水槽に分配した(1水槽当たり25匹の魚)。シーバスを、3回の給餌時間9:00、13:00、及び16:30時に分けて1日当たり体重の2.0%の一定割合で10週間飼養した。魚は、隔週で24時間の飢餓期間後にバッチ計量し、24.14±0.85℃にて塩分26.58±4.32で12時間:12時間の明期:暗期の光周期で飼育した。水のpHは、6.8~7.5に維持し、溶存酸素は7.5~8mg/lに、アンモニウムは0.04~0.08mg/lに、亜硝酸塩は0.02~0.06mg/lに、及び硝酸塩は54~58mg/lに維持した。
【0241】
高含有レベルの大豆粉(40%含有)を含むように食餌を配合した。食餌の配合は、表23に示されている。
【0242】
表23.実験食餌の配合。各成分は(含有レベル%)として表されている。
【0243】
方法
【0244】
光学顕微鏡分析(LM)
【0245】
魚の遠位腸を取り出し、10%マリンホルマリン(marine formalin)で固定し、48時間4℃で維持した後、保存用の70%エタノールに移した。分析前に、腸試料を脱水し(Leica社製TP1020)、Dimitriglouら(Journal of animal science、2009年、87巻、3226~3234頁)に従ってパラフィンワックスに包埋した。
【0246】
試料を、5μm厚に切片化し(Leica社製RM2235ミクロトーム)、オーブンで一晩乾燥し、その後ヘマトキシリン及びエオシン(HE)で自動染色した(Leica社製Autostainer XL)。DPXを使用してスライドにカバーグラスを装着し、静置して乾燥させた。その後、染色した試料の画像を撮影した(Leica社製DMIRB顕微鏡及びOlympus社製E410デジタルSLRカメラ)。画像分析は、Image J 1.47v(国立衛生研究所、ベテスダ、メリーランド州、米国)ソフトウェアを使用して実施した。LM画像を使用して、杯状細胞(GC)の他に、折り畳み長さ(FL)及び固有層幅(LP-W)を算出し、200μmにわたって測定した。周囲長比(PR)の場合、8ビットに転換した後、画像閾値を調整した。内周長を外周長で除算して、比率を算出した。データは、平均±標準偏差(SD)として示されており、統計的分析は、ウィンドウズ用SPSS statisticsバージョン15(SPSS Inc.社、イリノイ州、米国)を使用して実施し、P<0.05で受け入れた。組織学的データは、一方向ANOVAを使用して分析した。対照と処置群との有意差は、ポストホックチューキーのHSD検定を使用して決定した。
【0247】
走査型電子顕微鏡(SEM)
【0248】
試料を、2.5%グルタルアルデヒド+0.1M カコジル酸ナトリウム緩衝液で固定した(1:1容積、pH7.2)。その後、試料を、各段階にて段階的エタノール系列(30%アルコール、50%、70%、90%、及び100%×2)で15分間脱水し、中間流体としてエタノール及び遷移流体としてCОを用いて臨界点乾燥した(K850 Emitech)。その後、試料を金でスパッタコーティングし(K550 Emitech)、JSM6610LV走査電子顕微鏡で観察した。各試料毎に、×500~×20,000の範囲の倍率で複数の画像を撮影し、全体的な腸完全性を評価した。微絨毛密度測定は、×20,000倍率の画像を使用して、Image J(V1.45)を使用して実施した(図13)。SEMデータは、一方向ANOVAを使用して分析した。対照と処置群との有意差は、ポストホックチューキーのHSD検定を使用して決定した。
【0249】
リアルタイムqPCR試料の収集
【0250】
ヨーロピアンシーバスから後腸試料(<100mg)を収集し、1mL RNAlater溶液(Applied Biosystems社、ウォリントン、英国)に移し、4℃で24時間保管し、その後RNA抽出まで-80℃で保管した。
【0251】
RNA抽出及びcDNA合成
【0252】
TRI試薬(Ambion、Life technologies社、英国)を、製造業者の指示に幾つかの変更を加えて使用して、全RNAを抽出した。手短かに言えば、50~100mgの腸試料をRNAlater溶液から取り出し、試料を無菌薄紙間に挟んで押圧することにより過剰な溶液を除去した。試料(<100mg)を、1mLのTRI試薬を含むチューブに移し、10分間ホモジナイズした。この200μlクロロホルムを添加し、混合した後、試料を12,000×gで15分間遠心分離した。上部水相を、等容積のイソプロパノールを含むチューブに移した。混合物をボルテックスし、14,000×gで15分間遠心分離した。上清を廃棄し、沈殿したRNAペレットを1mlの75%エタノールを使用して洗浄した。全RNAを、ジエチルピロカルボネート(DEPC)に溶解し、製造業者(Qiagen社、英国)の指示書に従ってRNeasy Plus Miniキットを使用して精製して、あらゆる狭雑ゲノムDNAを除去した。各試料中のRNAの濃度及び品質は、260/280nm及び260/230吸光度比を測定することにより決定した(NanoDrop Technologies社、Wilmigton、米国)。RNAの完全性は、試料をBio-analyserにかけることにより確認した。RNA完全性値(RIN、RNA integrity number)は、8.0~9.5の範囲だった(Agilent technologies社、英国)。試料を、-80℃で保管した。合計1μgの量のRNAをcDNA合成に使用した。iScript cDNA合成キット(Bio-Rad社、英国)を使用した。反応物を、5分間25℃に、次に30分間42℃に置き、5分間85℃で不活化した。iScript cDNA合成キットには、オリゴdT及び幅広く様々な標的で作用するランダム六量体の組み合わせが含まれている。
【0253】
リアルタイムPCRアッセイ
【0254】
PCR反応は、StepOne Plus(商標)リアルタイムPCRサーマルサイクラー(Applied Biosystems社)を使用して、SYBRグリーン法で実施した。分析する各試料毎にPCR反応を重複して実施した。各PCR反応は、2μlの希釈(1/10)cDNAを、蛍光挿入剤としてSYBRグリーンを含有する5.5μlの2×濃縮iQ(商標)SYBRグリーンスーパーミックス(Bio-Rad社)、0.3μΜ順方向プライマー、及び0.3μΜ逆方向プライマーと混合することにより384ウェルプレートに準備した。使用したプライマー及びそれらの配列は、表1に示されている。全反応のサーマルプロファイルは、95℃で10分間、その後95℃で15秒間、59℃で60秒間の40サイクルだった。蛍光モニタリングは、各サイクルの終わりで行った。更なる解離曲線分析を実施し、全ての場合で単一ピークが観察された。mRNA及びcDNAの量及び質のばらつきを排除することにより結果を標準化するために、各試料でβ-アクチン及びGAPDHを基準遺伝子として使用した(Bustinら、2009年)。実際は、基準遺伝子としてのGAPDH及びβ-アクチンの安定性及び適合性は、geNorm(商標)ソフトウェアにより使用されるアルゴリズムにより確認した(Vandesompeleら、Genome biology、2002年、3巻(7号)、リサーチ0034)。
【0255】
各基準遺伝子毎に発現安定性値「M」を生成した。増幅産物は、陰性対照では観察されなかった。対照テンプレートでは、プライマー二量体形成は観察されなかった。遺伝子発現の変化は、処置と同時に試料採取した対照に対して表わされている。
【0256】
閾値サイクル(Ct)は、蛍光がバックグラウンド蛍光よりも明確に高くなった地点として定義され、各実験実施毎に手作業で決定した。各プライマー組のPCR効率は、cDNAの系列希釈(n=3)及びその結果得られるCt対cDNA入力の対数のプロットを使用し、数式E(PCR効率)=10(-1/傾き)を使用して決定した。標的遺伝子の標準化発現レベル(NEL)を、未知試料対対照試料のCt偏差(ΔCt)に基づいて算出し、geNorm(商標)マニュアル(http://medgen.ugent.be/~jvdesomp/genorm/)及びVandesompeleら(Genome biology、2002年、3巻(7号)、リサーチ0034)に概説されている計算に従って、基準遺伝子GAPDH及びβ-アクチンと比較して表した。
【0257】
RT-qPCRデータの統計は全て、Rの並べ替え検定を使用して実施した。
【0258】
成長成績の計算
【0259】
成長は、増体量(WG)、比成長速度(SGR)、飼料要求率(FCR)、タンパク質効率比(PER)、条件因子(K)で評価した。計算は、以下の数式を使用して行った:NWG(g)=FW-IW;SGR(%BW/日)=100((lnFW-lnIW)/T);FCR(g/g)=FI/WG;PER=WG/PI;K=FW/(FL)。式中、FW=最終体重(g)、IW=初期体重(g)、T=給餌期間(日)、WG=湿増体量(g)、FI=飼料摂取量(g)、PI=タンパク質摂取量(g)、及びFL=最終体長(cm)。
【0260】
結果
【0261】
光学顕微鏡検査
【0262】
光顕微鏡検査により、対照食餌及び実験食餌を給餌したシーバスが、完全な上皮障壁及び組織化絨毛様粘膜折り畳みの粘膜配置を示したことが明らかになった。腸粘膜は、散在性IELで構成される単層上皮及び固有層(LP)で構成されていた(図12Aを参照)。対照食餌を給餌した魚と比較した周囲長比は(周囲長比がより大きいと、吸収性腸表面がより大きいことを示し、これは、より多数の及び/又はより長い粘膜折り畳みによりもたらされる)、実験期間の5週目及び10週目の両方で、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES食餌を給餌した魚で有意に上昇した(表24A及び表24Bを参照)。対照的に、60SCPARIETAL POLYSACCHARIDES食餌体制で飼養した魚は、対照給餌魚と比較して、給餌の10週後でPRが有意に上昇したに過ぎなかった(表24Bを参照)。
【0263】
表24A.実験食餌を給餌した5週間後の光顕微鏡データ。データは、平均±標準偏差(n=6/処置)として示されている。上付き文字a-bは、チューキーのHSDポストホック検定を使用した有意差を示す。
【0264】
表24B.実験食餌で給餌した10週後の光顕微鏡データ。データは、平均±標準偏差(n=18/処置)として示されている。上付き文字a-bは、チューキーのHSDポストホック検定を使用した有意差を示す。
【0265】
SEM分析
【0266】
全ての魚の上皮表面は健康であると考えられた。均一な腸細胞形成及び稠密に充填された微絨毛を有し、細胞又は微絨毛の障害又は壊死の徴候はなかった。各処置内の魚の代表的な画像は、図12に示されており、微絨毛密度測定分析は、図13A及び図13Bに示されている。実験食餌を給餌した5週間後(図13Aを参照)、対照給餌魚(1.58±0.5a.u.)と比較して、60SC菌体壁多糖(2.90±1.0a.u.)及び50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES(4.81±1.0a.u.)を給餌した魚は、微絨毛密度が有意に上昇したことが明らかになった(P<0.001)。同様に、実験食餌を給餌した10週間後(図13Bを参照)、60SC菌体壁多糖(3.51±0.4a.u.)及び50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES(3.48±0.7a.u.)を給餌した魚は、対照食餌を給餌した魚と比較して(1.66±0.2)、微絨毛密度が有意に上昇したことが明らかになった(P<0.001)。
【0267】
リアルタイムqPCR
【0268】
遺伝子発現データは、対照給餌魚と比較して(0.48±0.15NEL)、60SC菌体壁多糖(0.17±0.07NEL)及び50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES(0.11±0.08NEL)食餌を給餌した魚は、ヒートショックタンパク質70(HSP70)の有意な下方制御を示した(P=0.03)ことを明らかにした。同様に、増殖細胞核抗原(PCNA)遺伝子発現の場合、60SC菌体壁多糖(0.14±0.1NEL)及び50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES(0.12±0.04NEL)を給餌した魚は、対照食餌を給餌した魚と比較して(0.47±0.14NEL)、有意な下方制御を示した(P=0.03)。対照的に、炎症性エフェクターサイトカインインターロイキン-1ベータ(IL-1ベータ)の遺伝子発現データは、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES食餌を給餌した魚(1.74±0.4NEL)が、対照食餌を給餌した魚と比較して(0.51±0.4NEL)、有意な上方制御を示した(P=0.03)ことを明らかにした。同様に、抗炎症性エフェクターサイトカインインターロイキン-10(IL-10)の遺伝子発現データは、50SC/CU PARIETAL POLYSACCHARIDES食餌を給餌した魚(2.79±2.0NEL)が、対照食餌を給餌した魚と比較して(0.36±0.2NEL)、有意な上方制御を示した(P=0.05)ことを明らかにした。データは全て図14に示されている。
【0269】
実施例11:アイメリア・アセルブリナ、E.マキシマ、及びE.テネラの混合負荷と接触させた市販ブロイラーニワトリの50SC/CU菌体壁多糖の抗コクシジウム効力
【0270】
目的
【0271】
この研究の目的は、アイメリア・アセルブリナ、E.マキシマ、及びE.テネラの混合物に対する、50SC/CU菌体壁多糖の抗コクシジウム効力/感受性を測定することであった。
【0272】
実験設計
【0273】
この研究は、各々が10羽のニワトリで開始した45個のケージで構成されていた。8つの処置を、9回反復した。
【0274】
処置
【0275】
動物
【0276】
孵化した日の雄ブロイラーニワトリ(系統Ross708)を、この治験に使用した。孵卵所にて鳥を性別分けし、日常的なワクチン接種を行った。健康と思われるニワトリのみを、この研究に使用した。研究は、鳥を実験ケージに割り当て、ケージに入れた時点(0日目)で開始した。研究中は鳥を補充しなかった。鳥は、0、14、20、及び28日目にケージで計量した。
【0277】
禽舎
【0278】
ニワトリを、到着時にバタリーケージに入れた。1動物当たりの床面積は0.51sq.ft/鳥だった。サーモスタットで制御されたガス炉/空気調節装置により均一な温度を維持した。更に、壁面に沿って垂下されている蛍光灯により連続照明を提供した。飼料及び水を自由摂取で提供した。
【0279】
生物作用剤
【0280】
コクシジウム接種原は、3つの種のエイメリア混合培養で構成されていた。これらの種は、E.アセルブリナ、E.マキシマ、及びE.テネラだった。コクシジウム接種原は、感染処置しようとする鳥に経口胃管栄養で投与した。
【0281】
この研究の14日目に、無感染処置の鳥には各々、1mlの蒸留水を経口ピペット(p.o.)で投与した。感染処置の鳥には、1ml容積に希釈して、E.アセルブリナ、E.マキシマ、及びE.テネラを、それぞれ75,000、25,000、及び50,000の平均接合子嚢数に滴定したコクシジウム接種原を投与した(p.o.)。
【0282】
病変スコアリング
【0283】
20日目に、1ケージ当たり5(五)羽の鳥を人道的に安楽死させ、集団で計量した。鳥は、腸の感染領域に応じてコクシジウム症病変スコアリングで点数化した。
【0284】
負荷スケジュール
・D14:コクシジウム症負荷=それぞれ75,000、25,000、及び50,000のE.アセルブリナ、E.マキシマ、及びE.テネラ
・D20:糞便物(ケージ毎に混合)中の接合子嚢数(oocysts count)
腸病変スコアリング(5羽の鳥/ケージ)
結果
【0285】
結果は、図15図17に示されている。
【0286】
図15に示されているように、50SC/CU菌体壁多糖を給餌した動物は、アイメリア・アセルブリナ、E.マキシマ、及びE.テネラ感染に伴う特異的な病変が低かった。この効果は、有意に低い平均病変スコアリングをもたらした。
【0287】
興味深いことには、エイメリア種に感染したブロイラーニワトリの死亡率も、実験の経過にわたって、図16に示されているような用量依存的な様式で数値的に低下した。
【0288】
50SC/CU菌体壁多糖を給餌した鳥の20日目(感染6日後)の糞便排泄物の病原体接合子嚢は、図17に示されているように用量依存的な様式で有意に低下した。
【0289】
こうした結果は、50SC/CH菌体壁多糖でブロイラーニワトリを飼養することにより、エイメリア種の感染に伴う負の効果を緩和することができるという事実を支持している。
【0290】
本発明は、その特定の実施形態に関して説明されているが、更なる改変が可能であることが理解されるだろう。本出願は、本発明が関する技術分野内で公知の範囲内又は通常の実施内に入るような本開示からの逸脱、上記に記載されている必須特徴に適用することができるもの、及び以下のような添付の特許請求の範囲を含む、概して本発明の原理に従った本発明のあらゆる変異、使用、又は応用を包含することが意図されていることが理解されるだろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17