(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20230329BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20230329BHJP
H04M 9/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G08B17/00 B
G08B17/00 L
G08B25/00 510H
H04M9/00 D
(21)【出願番号】P 2019009979
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】菊池 浩生
(72)【発明者】
【氏名】楠見 真希
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017066(JP,A)
【文献】特開2018-180580(JP,A)
【文献】特開2010-231581(JP,A)
【文献】実開昭57-046995(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0114430(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
G08B17/00
23/00-31/00
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機から引き出された信号回線に接続された火災感知器により火災を監視する火災報知設備に於いて、
前記受信機に、
前記火災感知器からの火災発報信号を受信した火災発生時に所定の火災警報処理を行う受信制御部と、
前記受信機から引き出された保守電話回線に接続された保守電話子機からの着信を検出して通話接続する保守電話回路部と、
前記受信機から引き出された非常電話回線に接続された非常電話子機からの着信を検出して通話接続する非常電話回路部と、
前記保守電話回路部と前記非常電話回路部の各々による通話を制御すると共に、前記保守電話子機と前記非常電話子機の両方からの着信が重複したときの通話を制御する通話制御部と、
が設けられたことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
請求項1記載の火災報知設備において、
前記通話制御部は、前記保守電話子機と前記非常電話子機の着信が重複したとき、前記保守電話子機と前記非常電話子
機の何れか一方又は両方と前記
受信機側の電話親機を通話接続することを特徴とする火災報知設備。
【請求項3】
請求項2記載の火災報知設備において、
前記通話制御部は、前記保守電話子機と前記非常電話子機の着信が重複したとき、操作部により選択された前記保守電話子機と前記非常電話子機の何れか一方と前記
受信機側の電話親機を通話接続し、他方に対し保留音を送信することを特徴とする火災報知設備。
【請求項4】
請求項2記載の火災報知設備において、
前記通話制御部は、前記保守電話子機と前記非常電話子機の着信が重複したとき、予め設定された優先度に従って前記保守電話子機と前記非常電話子機の何れか一方と前記
受信機側の電話親機を通話接続し、他方に対し保留音を送信することを特徴とする火災報知設備。
【請求項5】
請求項2記載の火災報知設備において、
前記通話制御部は、前記保守電話子機と前記非常電話子機の着信が重複したとき、操作部への操作により前記保守電話子機、前記非常電話子機及び前記
受信機側の電話親機を相互に通話接続することを特徴とする火災報知設備。
【請求項6】
請求項1記載の火災報知設備において、
前記受信機に
はディスプレイが設けられ、
前記受信制御部は、
前記火災発生時に前記ディスプレイに火災発生と火災発生場所を示す火災警報画面を表 示し、
前記非常電話
子機からの着信時に前記ディスプレイに前記非常電話
子機からの着信
、と発信元
及び非常電話通話釦を
表示す
る非常電話着信画面を表示し、
前記保守電話子機
からの着信を検出したときに前記ディスプレイに前記保守電話子機
からの保守着信と保守電話通話釦を表示し、
前記通話制御部は、
前記非常電話通話釦の操作を検出したときに前記
受信機側の電話親機と前記非常電話子機を通話接続し、
前記保守電話通話釦の操作を検出したときに前記
受信機側の電話親機と前記保守電話子機を通話接続することを特徴とする火災報知設備。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れかに記載の火災報知設備に於いて、
前記
保守電話子機と前記非常電話子機と通話する電話親機の送話器として前記受信機に設けられたマイクロホンを使用し、
前記電話親機の受話器として前記受信機に設けられたスピーカを使用し、前記電話親機をハンズフリーとしたことを特徴とする火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警戒区域に設置されて火災時に取り上げることで火災発信する非常電話や保守点検時に使用される保守電話が設けられた火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災報知設備は受信機から引き出された信号回線に接続された火災感知器により火災を監視し、火災発生時に火災警報を出力するようにしている。
【0003】
また、火災報知設備には保守電話設備が設けられている。保守電話設備は、受信機から引き出された保守電話回線を、感知器回線に接続された発信機に設けられた電話ジャックに接続し、保守要員が携帯している保守電話子機を発信機の電話ジャックに差し込んで接続すると受信機で保守電話の着信呼出が行われ、保守電話親機を取り上げると保守電話子機と通話接続され、受信機側の担当者に必要な連絡をとることができる。
【0004】
また、非常用放送設備が設置される防火対象物となる施設については、非常電話設備の設置が義務付けられており、それ以外の施設にあっても、必要に応じて非常電話設備が設けられる。
【0005】
非常電話設備は、火災報知設備における発信機と同様の機能をもつ非常電話子機を警戒区域に設置しており、非常電話子機を取り上げることで自動的に非常電話親機装置へ火災発信を行い、所定時間以内に非常用放送設備により必要な階に非常放送を行う。また、非常電話子機からの発信に対し非常電話親機を取り上げると、子機側の発信者と通話ができ、火災状況等の確認が可能となる。更に、複数の非常電話子機からの発信が重複した場合は、非常電話親機は任意に通話を選択する機能を備えていることから、同時通報があっても対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-064709号公報
【文献】特開2017-004451号公報
【文献】特開2017-068523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の保守電話設備の機能を備えた火災報知設備と非常電話設備を設けた場合には、保守電話と非常電話からの着信が重複したとき、受信機の作業者は一方としか通話できないため、他方の電話呼出は放っておくことになり、呼出の状態が続いてしまうため、呼出の音声が流れている中通話することとなり煩わしい。また、通話していない他方の電話子機では保留動作も行われないために状況が分からず子機側の電話呼出者のストレスとなっている。
【0008】
さらに、受信機と非常電話親機装置を別々に設置していることから設置スペースが増加し、火災報知設備の発信機から発信と非常電話子機からの発信を別の火災発信として表示しているため、防災担当者等は受信機と非常電話親機装置を同じ火災発信であるにも関わらず、個別に対応しなければならず、また保守電話子機の発信に対しては保守電話親機を取り上げ、非常電話子機の発信に対しては非常電話親機を取り上げて発信者と通話する必要があり、火災発生という緊急時の操作や対処に手間と時間がかる場合がある。
【0009】
本発明は、保守電話設備の機能を損なうことなく火災報知設備の受信機に非常電話設備の機能を組み込むことにより、設置スペースの低減、火災発信時の個別表示の回避、及び火災対処と通話接続の操作性を向上する火災報知設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(火災報知設備)
本発明は、受信機から引き出された信号回線に接続された火災感知器により火災を監視する火災報知設備に於いて、
受信機に、
火災感知器からの火災発報信号を受信した火災発生時に所定の火災警報処理を行う受信制御部と、
受信機から引き出された保守電話回線に接続された保守電話子機からの着信を検出して通話接続する保守電話回路部と、
受信機から引き出された非常電話回線に接続された非常電話子機からの着信を検出して通話接続する非常電話回路部と、
保守電話回路部と非常電話回路部の各々による通話を制御すると共に、保守電話子機と非常電話子機の両方からの着信が重複したときの通話を制御する通話制御部と、
が設けられたことを特徴とする。
【0011】
(保守電話子機と非常電話子機の重複着信)
通話制御部は、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複したとき、保守電話子機と非常電話子機の何れか一方又は両方と受信機側の電話親機を通話接続する。
【0012】
(重複着信の選択操作)
通話制御部は、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複したとき、操作部により選択された保守電話子機と非常電話子機の何れか一方と受信機側の電話親機を通話接続し、他方に対し保留音を送信する。
【0013】
(優先度の設定による重複発信の選択)
通話制御部は、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複したとき、予め設定された優先度に従って保守電話子機と非常電話子機の何れか一方と受信機側の電話親機を通話接続し、他方に対し保留音を送信する。
【0014】
(三者通話)
通話制御部は、保守電話子機と非常電話子機の発信が重複したとき、操作部の操作により保守電話子機、非常電話子機及び受信機側の電話親機を相互に通話接続する。
【0015】
(火災警報画面と通話操作画面)
受信機にはディスプレイが設けられ、
受信制御部は、
火災発生時にディスプレイに火災発生と火災発生場所を示す火災警報画面を表示し、
非常電話子機からの着信時にディスプレイに非常電話子機からの着信、発信元及び非常電話通話釦を表示する非常電話着信画面を表示し、
保守電話子機からの着信を検出したときにディスプレイに保守電話子機からの着信と保守電話通話釦を表示し、
通話制御部は、
非常電話通話釦の操作を検出したときに受信機側の電話親機と非常電話子機を通話接続し、
保守電話通話釦の操作を検出したときに受信機側の電話親機と保守電話子機を通話接続する。
【0016】
(電話親機のハンズフリー化)
保守電話子機と非常電話子機と通話する電話親機の送話器として受信機に設けられたマイクロホンを使用し、電話親機の受話器として受信機に設けられたスピーカを使用し、電話親機をハンズフリーとする。
【発明の効果】
【0017】
(基本的な効果)
本発明は、受信機から引き出された信号回線に接続された火災感知器により火災を監視する火災報知設備に於いて、受信機に、火災感知器からの火災発報信号を受信した火災発生時に所定の火災警報処理を行う受信制御部と、受信機から引き出された保守電話回線に接続された保守電話子機からの着信を検出して通話接続する保守電話回路部と、受信機から引き出された非常電話回線に接続された非常電話子機からの着信を検出して通話接続する非常電話回路部と、保守電話回路部と非常電話回路部の各々による通話を制御すると共に、保守電話子機と非常電話子機の両方からの着信が重複したときの通話を制御する通話制御部とが設けられたため、通話していない他方の電話からの音声による着信報知を停止したり、子機へ保留音を流すことにより作業者の負担を減じることが可能となる。更に、非常電話子機又は保守電話子機との通話は同じ電話親機を使用して共通に行うことができ、場所を変えることなく通話操作も簡単且つ容易にできる。また、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複しても、問題なく通話接続を行うことができる。
【0018】
(保守用電話子機と非常電話子機の重複着信に対する効果)
また、通話制御部は、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複したとき、保守電話子機と非常電話子機の何れか一方又は両方と受信機側の電話親機を通話接続するようにしたため、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複しても、必要に応じて発信者を自由に選択した通話を可能とする。
【0019】
(重複着信の選択操作による効果)
また、通話制御部は、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複したとき、操作部により選択された保守電話子機と非常電話子機の何れか一方と受信機側の電話親機を通話接続し、他方に対し保留音を送信するようにしたため、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複しても、必要に応じて発信者の何れかを選択した通話を可能し、選択されない発信者に保留音を聞かせることで待機させることを可能とする。
【0020】
(優先度の設定による重複発信の選択の効果)
また、通話制御部は、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複したとき、予め設定された優先度に従って保守電話子機と非常電話子機の何れか一方と受信機側の電話親機を通話接続し、他方に対し保留音を送信するようにしたため、例えば、非常電話子機の発信に高い優先度を設定しておくことで、非常電話子機の発信者は、保守電話子機の発信と重複しても、優先的に受信機側の電話親機と通話接続して防災管理者等の話すことができる。
【0021】
(三者通話の効果)
また、通話制御部は、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複したとき、操作部への操作により保守電話子機、非常電話子機及び受信機側の電話親機を相互に通話接続するようにしたため、非常電話子機の発信者、保守電話子機の発信者、電話親機が設けられた受信機側の防火管理者等は、着信の重複に妨げられることなく必要なやり取りを三者間で行って必要な火災対処を迅速且つ適切に行うことを可能とする。
【0022】
(火災警報画面と通話操作画面の効果)
また、受信機にはディスプレイが設けられ、受信制御部は、火災発生時にディスプレイに火災発生と火災発生場所を示す火災警報画面を表示し、非常電話子機からの着信時にディスプレイに非常電話子機からの着信、発信元及び非常電話通話釦を表示する非常電話着信画面を表示し、保守電話子機からの着信を検出したときにディスプレイに保守電話子機からの着信と保守電話通話釦を表示し、通話制御部は、非常電話通話釦の操作を検出したときに受信機側の電話親機と非常電話子機を通話接続し、保守電話通話釦の操作を検出したときに受信機側の電話親機と保守電話子機を通話接続するようにしたため、受信機に設けられたディスプレイに対する火災警報画面や非常電話着信画面の表示により、非常電話子機の火災発信、保守電話子機の発信に対し、必要とする表示や操作を全て受信機のタッチパネル付きのディスプレイで行うことで、視認性と操作性を高めることができる。
【0023】
(電話親機のハンズフリー化の効果)
また、保守電話子機と非常電話子機と通話す電話親機の送話器として受信機に設けられたマイクロホンを使用し、電話親機の受話器として受信機に設けられたスピーカを使用し、電話親機をハンズフリーとするようにしたため、ディスプレイに表示された三者通話釦を画面操作することで、受信機に設けているスピーカとマイクロホンを使用した発信者との通話でき、この通話をしながら火災対処等に必要な操作を迅速且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】受信機に非常電話と保守電話の設備機能が設けられた本発明によるR型の火災報 知設備の概要を示した説明図
【
図4】保守電話の着信があったときの通常監視画面を示した説明図
【
図5】非常電話の着信があったときの非常電話着信画面を示した説明図
【
図6】
図5に続いて
非常電話の着信があったときの火災警報画面を示した説明図
【
図7】非常電話と保守電話の着信が重複したときの非常電話着信画面を示した説明図
【
図8】
図7で非常電話通話釦を操作したときの非常電話着信画面を示した説明図
【
図9】
図7で保守電話通話釦を操作したときの非常電話着信画面を示した説明図
【
図10】三者通話釦を設けた非常電話着信画面を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
[火災報知設備]
図1は受信機に保守電話と非常電話の設備機能が設けられた本発明によるR型の火災報知設備の概要を示した説明図である。
【0026】
(実施形態の基本的概念)
本実施形態による火災報知設備は、受信機10から引き出された信号回線12-1に接続されたアナログ火災感知器14により火災を監視する火災報知設備に於いて、受信機10に、タッチパネル付きのディスプレイ52と、アナログ火災感知器14からの火災発報信号を受信した火災発生時に所定の火災警報処理を行う受信制御部70と、受信機10から引き出された保守電話回線24の保守接続端子26に対する保守電話子機28の接続による着信を検出して親機スピーカ66と親機マイク68を用いた電話親機と通話接続する保守電話回路部62と、受信機10から引き出された非常電話回線32に接続した非常電話子機34のフックオンによる非常電話着信を検出して受信機10側の電話親機と通話接続すると共に、非常電話着信を受信制御部70に通知して報知させる非常電話回路部64と、保守電話回路部62と非常電話回路部64の各々による通話を制御すると共に、保守電話子機28と非常電話子機34の両方からの着信が重複したときの通話を制御する通話制御部72とが設けられたものであって、従来の非常電話親機装置を別に設置する必要がないことから火災報知設備と非常電話設備の設置スペースが低減し、非常電話設備の操作に必要な火災発信や火災発信元等の表示は、受信機10に設けたディスプレイ52を利用することで、火災報知設備における火災発生時と同等の表示が可能となり、防災担当者等は受信機10で非常電話子機34又は発信機による火災発信の対処や操作を迅速且つ適切に行うことができ、更に、非常電話子機34又は保守電話子機28との通話は同じ親機スピーカ66と親機マイク68を用いたハンズフリーの電話親機を使用して共通に行うことができ、場所を変えることなく通話操作も簡単且つ容易にできるというものである。
【0027】
また、通話制御部72は、保守電話子機28と非常電話子機34の着信が重複したとき、何れか一方と電話親機の通話、又は、両方との三者通話が可能であり、複数の電話子機の着信が重複しても、必要に応じて発信者を自由に選択した通話を可能とする。以下、具体的に説明する。
【0028】
(火災報知設備の概要)
図1に示すように、火災報知設備が設置された建物の一階の管理人室などには例えばR型の受信機10が設置され、受信機10から警戒区域に対し例えば階別の系統毎に分けて信号回線12-1~12-nが引き出されている。なお、以下の説明では、信号回線12-1~12-nを区別する必要がない場合は、信号回線12という場合がある。
【0029】
信号回線12-1には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する複数のアナログ火災感知器14が接続され、また、固有のアドレスが設定された伝送機能を有する中継器16から引き出された感知器回線17にオンオフ火災感知器18及び発信機20が接続され、更に、固有のアドレスが設定された伝送機能を有するアドレッサブル発信機15が接続されている。更に、信号回線12-nには固有のアドレスが設定された伝送機能を有する中継器16を介して防排煙機器22が接続されている。
【0030】
ここで、信号回線12-1~12-nに接続されるアナログ火災感知器14、中継器16等の端末機器に設定される最大アドレス数は例えば255としており、信号回線12には最大255台のアナログ火災感知器14を含む端末機器が接続できる。
【0031】
また、受信機10から警戒区域に対し保守電話回線24が引き出されており、保守電話回線24には電話ジャックを用いた保守電話端子26が接続され、保守電話端子26には定期点検時に点検要員等が携帯している保守電話子機28が電話プラグ30により接続され、受信機10側と通話を行う。
【0032】
保守電話端子26は、図示はしないが、実際は、信号回線12-1側に設けられたアドレッサブル発信機15及び発信機20の中に組み込まれており、アドレッサブル発信機15及び発信機20の保守扉15a,20aを開いて中の電話ジャックに保守電話子機28の電話プラグ30の差し込むことにより接続することができる。
【0033】
また、受信機10から警戒区域に対し非常電話回線32が引き出されており、非常電話回線32には非常電話子機34が接続されている。非常電話子機34は送受話器を取り上げるとフックスイッチがオンし、これにより固有の発信元アドレスを含む非常電話発信信号を受信機10に送信し、受信機10に着信元を示す非常電話着信を表示させる。また、非常電話子機34を取り上げることで受信機10側と通話することもできる。非常電話子機34は通話機能を有する非常電話子機装置と固有の発信元アドレスを含む信号を受信機10に送信する等の受信機と通信する機能を有する中継器に分かれて構成されても良い。
【0034】
また、本実施形態は、火災報知設備に加え、非常用放送設備が設けられており、受信機10と同じ管理人室等に設置された非常用放送盤36から警戒区域に対し例えば階別の系統毎に分けて放送回線38が引き出され、放送回線38には放送用のスピーカ40が接続されている。
【0035】
(受信機の機能構成)
受信機10には、メインCPU42と複数のサブCPU基板44-1~44-nが設けられ、サブCPU基板44-1~44-nにはサブCPU46-1~46-nと伝送部48-1~48-nが設けられている。
【0036】
メインCPU42とサブCPU46-1~46-nは、シリアル転送バス50で接続されており、相互にデータを送受信する。なお、以下の説明では、サブCPU46-1~46-n及び伝送部48-1~48-nを区別する必要がない場合はサブCPU46及び伝送部48という場合がある。
【0037】
メインCPU42には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ52が接続され、ディスプレイ52には受信機10による火災監視に必要な情報がそのときの受信機10の状況に応じて表示される。ディスプレイ52による火災監視に必要な情報には、通常監視時及び火災時に発生したイベント、運用管理に必要な情報、対処操作に必要な情報等の全ての情報、更に、受信機の運用管理や操作に必要な情報も含まれる。また、ディスプレイ52には保守電話及び保守電話の発信情報や操作情報が表示される。
【0038】
メインCPU42に対して表示手段として機能するディスプレイ52に加え、LED等の表示灯を用いた表示部54が設けられる。表示部54には火災代表灯、ガス漏れ代表灯等が設けられる。
【0039】
また、メインCPU42に対しては操作部56が接続され、操作部56には火災監視に必要な火災断定スイッチ、主音響停止スイッチ、地区音響一時停止スイッチ等の各種スイッチ等が設けられている。更に、メインCPU42には移報部60が接続され、移報部60は非常電話子機34の取り上げによる非常電話着信時に、発信元を含む非常電話着信移報信号を非常用放送盤36に出力し、火災発生階及び直上階を放送区域に選択して非常放送を行わせる。
【0040】
また、メインCPU42にはプログラムの実行により機能する受信制御部70と通話制御部72が設けられる。
【0041】
更に、受信機10には、非常電話設備及び保守電話設備としての機能を実現するため、
保守電話回路部62、非常電話回路部64、親機スピーカ66、親機マイク68が設けられるが、その詳細は後の説明で明らかにされる。ここで、親機スピーカ66は火災発生時に音響火災警報を出力する音響警報部としての機能を兼ね備える。
【0042】
(受信機の外観)
図2は受信機の外観を正面から示した説明図である。受信機10の盤面には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ52が配置される。ディスプレイ52はカラー画像を画面表示し、また、タッチパネルが画面に配置されることで、画面タッチ操作による選択や入力を可能としている。なお、ディスプレイ52は液晶表示パネル以外にELパネル等の適宜の画像表示パネルが使用できる。
【0043】
ディスプレイ52の下側で盤面の左右中央となる利用者にとって見やすく且つ操作しやすい位置に、ガイドスイッチ74が配置されている。ガイドスイッチ74は照光機能を備えた照光スイッチを使用しており、照光スイッチはLED等の表示灯を内蔵している。火災イベント発生してディスプレイ52にガイダンス対象となる情報が表示されると、ガイドスイッチ74の照光機能が有効となって点滅し、利用者にガイドスイッチ74の操作を促すようにしている。
【0044】
また、ディスプレイ52の下側の盤面には、火災断定スイッチ76、主音響停止スイッチ78及び地区音響一時停止スイッチ80が配置され、火災イベントが発生した場合の火災対処操作を可能としている。ガイドスイッチ74の下側の盤面には小扉90が下側を軸として前開き自在に設けられており、小扉90の内側には、復旧スイッチを含む各種の操作スイッチが設けられている。
【0045】
また、火災断定スイッチ76の左側には親機マイク68が配置され、ディスプレイ52の横に設けられた音響孔88の内部に設けられた
図1に示す親機スピーカ66との組み合わせにより、ハンズフリーによる電話親機を構成している。即ち、受信機10に設けられた親機スピーカ66が電話親機の受話器として機能し、親機マイク68が電話親機の送話器として機能し、ハンズフリーで保守電話子機28又は非常電話子機34との通話を可能としている。
【0046】
また、ディスプレイ52の上側の盤面には火災代表灯84とガス漏れ代表灯86が設けられている。更に、受信機10の盤面の下側にはプリンタ82が配置され、受信機10で発生したイベントを印字出力するようにしている。
【0047】
なお、本実施形態は、親機スピーカ66と親機マイク68によりハンズフリーで使用する電話親機を構成しているが、
図2に想像線で示すように、受信機10の盤面に送受話器92を設けても良い。
【0048】
(受信機の火災監視制御)
図1に示すように、サブCPU基板44-1のサブCPU46-1を例にとると、伝送部48-1に指示してアナログ火災感知器14との間で所定の通信プロトコルに従って信号を送受信することで、火災監視制御を行っている。伝送部48-1からアナログ火災感知器14に対する下り信号は電圧モードで伝送している。この電圧モードの信号は、信号回線12-1の線路電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0049】
これに対しアナログ火災感知器14から伝送部48-1に対する上り信号は電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、信号回線12-1に伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号が受信機10に伝送される。
【0050】
サブCPU46-1による火災監視制御は、通常の監視中にあっては、一定周期毎に、伝送部48-1に指示して、一括AD変換コマンドを含むブロードキャストの一括AD変換信号を送信しており、この一括AD変換信号を受信したアナログ火災感知器14は、煙濃度又は温度をセンサデータとして検出して保持する。続いて、サブCPU46-1は、端末アドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を送信している。
【0051】
アナログ火災感知器14は自己アドレスに一致するアドレスを持つ呼出信号を受信すると、そのとき保持しているセンサデータを含む応答信号を伝送部48-1に送信する。また、アナログ火災感知器14は煙濃度又は温度が所定の火災注意レベルを超えると受信機10の伝送部48-1に対し火災割込み信号を送信する。
【0052】
サブCPU46-1は伝送部48-1を介して火災割込み信号を受信すると、グループ検索コマンド信号を送信して火災を検出しているアナログ火災感知器14を含むグループを特定し、続いて、グループ内検索コマンド信号を送信して火災を検出しているアナログ火災感知器14のアドレスを特定してセンサのアナログデータを集中的に収集し、シリアル転送バス50を介してメインCPU42に送信する。
【0053】
メインCPU42はサブCPU46-1から受信したアナログデータを所定の火災判定レベルと比較しており、アナログデータが火災判定レベルに達した場合に火災と判定し、表示部54の火災代表灯84を点灯し、親機スピーカ66から火災発生を示す所定の主音響警報を出力させ、ディスプレイ52に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させ、更に、移報部60により火災発生場所を含む火災移報信号を非常用放送盤36に出力して所定の非常放送を行わせる。
【0054】
また、サブCPU基板44-nに設けられたサブCPU46-nと伝送部48-nは、メインCPU42で火災が検知された場合に予め記憶された連動情報に基づき防排煙機器22の連動制御が行う。
【0055】
[電話設備]
(受信機の電話回路部)
図1の受信機10のメインCPU42に設けられた通話制御部72に対応して受信機10には、保守電話回路部62、非常電話回路部64、親機スピーカ66及び親機マイク68が設けられる。受信機10に設けられる電話親機は、受話器となる親機スピーカ66と送話器となる親機マイク68で構成される。以下の説明で電話親機といった場合は、親機スピーカ66と親機マイク68を意味し、親機スピーカ66と親機マイク68で構成された電話親機という場合もある。
【0056】
保守電話回路部62は保守電話回線24に所定の直流電圧を印加しており、何れかの保守電話端子(電話ジャック)26に携帯型の保守電話子機28の電話プラグ30が差し込まれて接続すると、このとき流れる回線電流を検出して発信を検出し、受信機10の通話制御部72に保守電話発信信号を出力する。保守電話発信信号を受信した通話制御部72は、ディスプレイ52に保守電話発信画面を表示し、保守電話呼出音を出力し、保守電話通話釦の画面操作により保守電話子機28と電話親機を通話接続させる。
【0057】
非常電話回路部64は非常電話回線32に所定の直流電圧を印加しており、何れかの非常電話子機34が取り上げられるとフックスイッチがオンし、予め設定された発信元アドレスを含む非常電話発信信号が送信され、この非常電話発信信号を受信すると発信元アドレスを含む非常電話発信信号を受信機10の通話制御部72に出力する。非常電話発信信号を受信した通話制御部72は、受信制御部70に指示してディスプレイ52に非常電話発信と着信元を示す非常電話着信画面を表示し、非常電話呼出音を出力し、非常電話通話釦の画面操作により非常電話子機34と電話親機を通話接続させる。
【0058】
また、通話制御部72は非常電話信号を受信してから所定時間以内に移報部60に指示して発信元を示す非常電話移報信号を非常用放送盤36に出力し、所定の火災放送を発信元の火災階およびその上の直上階に行わせる。
【0059】
[通話制御]
通話制御部72は、保守電話回路部62及び非常電話回路64からの発信信号に基づき、電話親機との通話制御に必要な操作表示をディスプレイ52に行い、画面操作に基づく制御を行うものであり、以下、詳細に説明する。
【0060】
(通常監視状態の画面)
図3は受信機のディスプレイに表示される通常監視画面を示した説明図である。
図3に示すように、受信機10の通常監視状態にあっては、ディスプレイ52に通常監視画面94が表示される。通常監視画面94は、正常動作中表示96に続いて、メニュー釦98,100,102が配置され、「手順を学ぶ」、「操作する」、「情報を見る」のメニューが表示され、メニュー釦98,100,102の何れかをタッチ操作すると、各メニューに対応した情報や操作場面が表示される。
【0061】
(保守電話着信画面)
図4は保守電話の着信があったときの通常監視画面を示した説明図である。
図1に示した保守電話端子26の何れかに、定期点検時等に点検要員が携帯している保守電話子機28の電話プラグ30を差し込んで
保守電話回線24に接続すると、保守電話子機28の接続で保守電話回線24に流れる回線電流を受信機10の保守電話回路部62が検出し、メインCPU42に設けられた通話制御部72に保守電話発信信号を出力する。
【0062】
保守電話回路部62から保守電話発信信号を入力した通話制御部72は、
図4に示すように、ディスプレイ52に表示している通常監視画面94の下側の空き領域に、保守電話着信表示104、通話釦106及び保留釦108を表示する。保守電話着信表示
104には例えば「保守電話を着信しました 通話ボタンを押すと発信元と通話できます」とするガイダンスが示される。また、保守電話回路部62から保守電話発信信号を入力した通話制御部72は、
図1に示した親機スピーカ66から所定の保守電話着信音(保守電話呼出音)を出力させる。
【0063】
このような保守電話の着信を知った受信機10側の防災管理者等は、画面表示されている通話釦106をタッチ操作することとなり、通話制御部72は通話釦106の操作を検出し、発信元の保守電話子機28と受信機10側の電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68を通話可能な状態に接続する通話接続を行う。
【0064】
具体的には、保守電話子機28の送話による音声信号は保守電話回路部62で受信され、メインCPU42でAD変換してデジタル音声信号として通話制御部72に読み込まれ、ノイズ抑圧等の音声処理を施した後にDA変換と音声増幅を行って親機スピーカ66から出力される。
【0065】
また、親機マイク68からの送話による音声信号はメインCPU42にAD変換してデジタル音声信号として通話制御部72に読み込まれ、高域強調等の所定の音声処理が施された後、DA変換によりアナログ音声信号として保守電話回路部62に出力され、音声増幅して保守電話回線24に送信されることで、保守電話子機28の受話器から音声を出力させる。
【0066】
また、通話制御部72は、保守電話の通話接続中に、画面表示された保留釦108のタッチ操作を検出すると、保守電話子機28と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68との通話接続を切離し、所定の保留音信号を保守電話子機28に送って保留音を出力させ、同時に、保留釦108の表示を点滅又は明滅して保留中にあることを表示させる。なお、親機スピーカ66から必要に応じて保留音を出力しても良い。
【0067】
保留中に、保留釦108を再度タッチ操作すると、これを通話制御部72が検出し、保留を解除して保守電話子機28と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68との通話接続を再開させる。
【0068】
保守電話の通話終了は、例えば、通話釦106を再度タッチ操作すると、これを通話制御部72が検出して保守電話子機28と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68との通話接続を切離して解除する。また、保守電話子機28を保守電話端子26から外すことによる回線電流の遮断を保守電話回路部62で検出して通話制御部72に出力したときに、通話接続を切り離して解除する。
【0069】
なお、保守電話の発信画面に通話終了釦を設けてタッチ操作することで通話接続を切離して解除するようにしても良いし、また、保守電話子機28に通話釦を設け、そのオンオフ操作で通話開始と通話終了を操作しても良い。
【0070】
(火災発生時の画面)
図5は非常電話の着信があったときの非常電話着信画面を示した説明図である。
図1の火災報知設備において、監視員等が巡回中に火災を発見した場合には、近くに設置されている非常電話子機34を取り上げるとフックスイッチがオンし、非常電話回線32を介して受信機10に、発信元アドレスを含む非常電話発信信号を送信する。受信機10の非常電話回路部64は、非常電話子機34からの非常電話発信信号を受信するとこれをメインCPU42に設けられた通話制御部72に出力する。
【0071】
非常電話子機34からの非常電話発信信号を受信した通話制御部72は、
図4に示す非常電話着信画面110をディスプレイ
52に表示する。非常電話着信画面110は、非常電話着信表示112として例えば「非常電話を着信しました 画面下部の状況を確認し、対処していください」を表示し、メニュー釦98,100,102の下
の非常電話着信表示116には例えば「非常電話を着信しました 通話ボタンを押すと発信元と通話できます」とするガイダンスが表示され、また発信地区と時刻を示す「1階 南4地区 12:07:25」が表示される。このような非常電話の着信を知った受信機10側の防災管理者等は、現場確認のために画面表示されている通話釦118をタッチ操作することとなり、通話制御部72は通話釦118の操作を検出し、発信元の非常電話子機34と受信機10側の電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68を通話可能な状態に接続する通話接続を行う。
【0072】
具体的には、非常電話子機34の送話による音声信号は非常電話回路部64で受信され、メインCPU42でAD変換してデジタル音声信号として通話制御部72に読み込まれ、ノイズ抑圧等の音声処理を施した後にDA変換と音声増幅を行って親機スピーカ66から出力される。
【0073】
また、親機マイク68からの送話による音声信号はメインCPU42にAD変換してデジタル音声信号として通話制御部72に読み込まれ、高域強調等の所定の音声処理が施された後、DA変換によりアナログ音声信号として非常電話回路部64に出力され、音声増幅して非常電話回線32に送信されることで、非常電話子機34の受話器から音声を出力させる。
【0074】
このような非常電話を使用した発信元との通話により火災が確認された場合、防災管理者等は受信機10に設けられた
図2に示す火災断定スイッチ76を操作し、受信制御部70は火災断定を検出し、地区音響一斉鳴動、連動制御等の所定の火災断定処理を行うことになる。
【0075】
また、通話制御部72は、非常電話の通話接続中に、画面表示された保留釦120のタッチ操作を検出すると、非常電話子機34と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68との通話接続を切離し、所定の保留音信号を非常電話子機34に送って保留音を出力させ、同時に、保留釦120の表示を点滅又は明滅して保留中にあることを表示させる。なお、親機スピーカ66から必要に応じて保留音を出力しても良い。
【0076】
保留中に、保留釦120を再度タッチ操作すると、これを通話制御部72が検出し、保留を解除して非常電話子機34と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68との通話接続を再開させる。
【0077】
非常電話の通話終了は、例えば、通話釦118を再度タッチ操作すると、これを通話制御部72が検出して非常電話子機34と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68との通話接続を切離して解除する。また、非常電話子機34をフックに戻すことでフックスイッチがオフとなり、回線電流の遮断を非常電話回路部64で検出して通話制御部72に出力することで通話接続を切り離して解除する。
【0078】
(非常電話着信と非常用放送の連動)
図1の受信機10に設けられた通話制御部72は、非常電話子機34の取り上げによる
非常電話発信信号を受信した場合、所定時間以内、例えば10秒以内に、移報部60に指示して発信地区を含む非常電話発信移報信号を非常
用放送
盤36に出力する。
【0079】
受信機10から非常電話発信移報信号を受信した非常用放送盤36は、発信地区となる火災発生階およびその直上階を放送区域に指定して火災放送を行う。この火災放送は、例えば「火事です。火事です。1階南地区で火災が発生しました。落ち着いて避難してください。」とする。また、非常用放送盤36は、非常放送の開始から所定時間が経過すると、全ての放送区域に非常放送を行う全館一斉放送とする。
【0080】
(複数着信の非常電話着信画面)
図6は
図5に続いて非常電話の着信があったときの非常電話着信画面を示した説明図である。
図1の火災報知設備において、非常電話子機34の取り上げによる非常電話発信が行われた後に、別の非常電話子機34の取り上げによる非常電話発信が行われた場合、非常電話
着信表示116の下には、新たな非常電話発信表示116-2として例えば「非常電話を着信しました 通話ボタンを押すと発信元と通話できます」とするガイダンスが発信地区「1階 南3地区 12:10:13」と共に表示され、併せて、通話釦118-2と保留釦120-2が表示される。
【0081】
このような新たな非常電話の着信を知った受信機10側の防災管理者等は、画面表示されている通話釦118-2をタッチ操作することにより別の非常電話子機34と受信機10側の電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68を通話接続し、必要な通話連絡を行うことができる。
【0082】
[非常電話と保守電話の発信重複]
図7は非常電話と保守電話の着信が重複したときの非常電話着信画面を示した説明図、
図8は
図7で非常
電話の通話釦を操作したときの非常電話着信画面を示した説明図、
図9は
図7で保守
電話の通話釦を操作したときの非常電話着信画面を示した説明図である。
【0083】
(重複発信の画面表示)
図1の火災報知設備において、定期的な保守点検中に火災が発生したような場合には、保守電話と非常電話の両方の着信が行われることが想定される。
【0084】
この場合、巡回中の監視員が火災を発見して非常電話子機34を取り上げることで非常電話発信信号が受信機10に送信され、また、火災を発見した点検員が携帯している保守電話子機28の電話プラグ30を近くの保守電話端子26の電話ジャックに挿入することで受信機10に保守電話発信信号が送信され、受信機10の通話制御部72は、
図7に示す非常電話着信画面110をディスプレイ52に表示する。
【0085】
図7の非常電話着信画面110は、
図5に示した非常電話着信画面110に、
図4に示した
表示と同じ保守電話
着信表示104、通話釦106及び保留釦108を追加したものであり、受信機10側の防災管理者等は、必要に応じて非常電話と保守電話の何れか一方を選択して通話することができる。
【0086】
例えば、防災管理者等が非常電話の通話釦118をタッチ操作したとすると、通話制御部72は、
図8に示す非常電話着信画面110に切り替わり、発信元の非常電話子機34と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68を通話接続して非常電話による通話を可能とし、同時に、保守電話子機28に対しては保留音信号を送信して保留音を出力させる制御を行う。また、通話制御部72は、非選択となった保守電話
着信表示104、通話釦106及び保留釦108を、点線で示すように、非常電話の通話接続が解除されまでの間、画面に薄く表示させる。
【0087】
また、防災管理者等が保守電話の通話釦106をタッチ操作したとすると、通話制御部72は、
図9に示す非常電話着信画面110に切り替わり、発信元の保守電話子機28と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68を通話接続して
保守電話による通話を可能とし、同時に、非常電話子機34に対しては保留音信号を送信して保留音を出力させる制御を行う。また、通話制御部72は、非選択となった非常電話
着信表示116、通話釦118及び保留釦120を、点線で示すように、保守電話の通話接続が解除されまでの間、画面に薄く表示させる。
【0088】
(優先度による重複発信の選択)
また、通話制御部72は、保守電話子機28と非常電話子機34の着信が重複したとき、予め設定された優先度に従って保守電話子機28と非常電話子機34の何れか一方と電話親機を通話接続し、他方に対し保留音を送信する制御を行うようにしても良い。
【0089】
このため所定の設定操作により、通話制御部72に、例えば、非常電話子機34の発信に高い優先度を設定しておく。この場合、非常電話と保守電話の発信が重複した場合、
図8の
非常電話着信画面110に示すように、通話制御部72は、高い優先度を設定した非常電話着信表示116、通話釦118及び保留釦120を画面表示し、同時に、低い優先度を設定している保守電話
着信表示104、通話釦106及び保留釦108を、点線で示すように、非常電話の通話接続が解除されまでの間、画面に薄く表示させる。同時に、通話制御部72は優先度の高い非常電話について、発信元の非常電話子機34と電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68を自動的に通話接続し、発信元との通話を可能とする制御を行う。
【0090】
勿論、必要に応じて保守電話に高い優先度を設定し、非常電話に低い優先度を設定しても良い。
【0091】
非常電話を優先させるメリットは下記のとおりである。非常電話は火災通報と同様の意味を持ち、非常用放送盤36より非常放送を行わせる。そのため非常電話を優先することで非常電話からの火災通報を優先可能となる。
【0092】
保守電話を優先させるメリットは下記のとおりである。感知器発報時に監視員は現場に向かい状況を受信機に連絡する場合に保守電話を用いる。そのため保守電話を優先させることで現場の監視員からの連絡を優先可能となる。
【0093】
上記のとおり、感知器発報時には保守電話を優先させるメリットが生じるため、感知器発報又はプリアラームが出力されているときには保守電話を優先とし通常時は非常電話を優先させるように、監視員が運用しても良いし又は受信機が設定されてもよい。
【0094】
(三者通話)
図10は三者通話釦を設けた非常電話着信画面を示した説明図である。受信機10の通話制御部72は、非常電話と保守電話の発信が重複した場合、
図10に示す三者通話釦130を設けた非常電話着信画面110をディスプレイ52に表示する。
【0095】
この非常電話着信画面110は
図7に示した非常電話着信画面110の保留釦108,120に代えて新たに三者通話釦130を配置している。
【0096】
受信機10側の防災監視者等は、非常電話と保守電話の着信が重複して
図10の非常電話着信画面110が表示された場合、三者通話釦130をタッチ操作すると、これを通話制御部72が検出し、発信元となる非常電話子機34、保守電話子機28及び電話親機を構成する親機スピーカ66と親機マイク68を相互に通話接続して三者通話を可能とする制御を行う。
【0097】
この三者通話接続は、親機マイク68からの音声信号を親機音声信号、非常電話子機34からの音声信号を非常電話音声信号、保守電話子機28からの音声信号を保守電話音声信号とすると次のようになる。
【0098】
親機マイク68からの親機音声信号は、AD変換によりメインCPU42に読み込まれた後にDA変換して保守電話回路部62と非常電話回路部64に分けられ、保守電話回線24と非常電話回線32に送信される。
【0099】
また、非常電話子機34からの非常電話音声信号はAD変換してメインCPU42に読み込まれ後、DA変換して親スピーカ66に出力されると共に、親機マイク68からのAD変換された親機音声信号と合成され、DA変換により保守電話回路部62に出力され、保守電話回線24に送信される。
【0100】
また、保守電話子機34からの保守電話音声信号はAD変換してメインCPU42に読み込まれ後、DA変換して親スピーカ66に出力されると共に、親機マイク68からのAD変換された親機音声信号と合成され、DA変換により非常電話回路部64に出力され、非常電話回線32に送信される。
【0101】
このような三者通話接続による受信機10の電話親機では、非常電話子機34と保守電話子機28の発信者の声を聞くことができ、非常電話子機34では電話親機と保守電話子機28の発信者の声を聞くことができ、更に、保守電話子機28では電話親機と非常電話子機34の発信者の声を聞くことができ、三者が一同に会したと同じ通話連絡が可能となる。
【0102】
なお、非常電話と保守電話の三者通話接続は、メインCPU42による音声信号の分離と合成によらず、スイッチ切替え等のハードウェアによる音声信号の分離と合成にしても良い。
【0103】
[本発明の変形例]
(非常電話と保守電話の選択)
上記の実施形態は、保守電話子機と非常電話子機の着信が重複したときディスプレイの操作により通話接続する対象を設定しているがこれに限らない。
【0104】
親機側の音声入力部を保守電話用と非常電話用にそれぞれ用意し、いずれかの操作により通話接続する対象を選択するようにしても良い。保守電話は保守電話用送話器のジャックへの差込により操作を認識し、非常電話は非常電話用送話器のフックアップにより操作を認識する。
【0105】
また、保守電話子機と非常電話子機のいずれを優先の通話対象とするか選択する物理スイッチを受信機の盤内に配置しても良い。
【0106】
また、保守電話子機と非常電話子機の受話については同時に行い、受信機からの送話についてのみ切り替えるようにしても良い。
【0107】
(非常電話と保守電話の着信表示)
上記の実施形態は、保守電話子機と非常電話子機の着信はディスプレイにより表示しているがこれに限らない。
【0108】
例えば、非常電話子機の着信はディスプレイで表示し、保守電話の着信は盤内に配置された保守電話灯により表示するようにしても良い。非常電話子機は固有の発信元アドレスを含む非常電話発信信号を送信し設置場所を認識可能であるためディスプレイで発信元を示すことが好適である。
【0109】
(保守電話と非常電話の通話)
受信機を含めた三者間通話でなく、保守電話と非常電話のみで二者通話できるようにしても良い。
【0110】
(非常放送の一時連動停止)
受信機は非常電話着信時に発信元を含む非常電話着信移報信号を非常用放送盤36に出力し、火災発生階及び直上階を放送区域に選択して非常放送を行わせるが、この移報出力を行わせない連動停止操作を可能としても良い。全ての非常電話着信の連動停止操作を一つの操作で行うものであっても良いし、受信した非常電話毎に連動停止操作を行うものであっても良い。また、その両方を可能としても良い。
【0111】
(受信機からの非常用放送)
受信機と非常用放送盤の間に音声信号を送信する回線を接続し、受信機から非常用放送盤に音声信号を送信して非常用放送を行わせるようにしても良い。これにより、非常電話子機又は保守電話子機から非常放送を行うことを可能とする。
【0112】
(電話親機)
図2に想像線で示したように、受信機10に送受話器92を設けた場合の画面表示は、電話親機を親機スピーカ66と親マイク68で構成してハンズフリーとした場合と同じであり、発信呼出に対し送受話器92を取り上げ、画面表示された通話釦をタッチ操作することで、発信者との通話を可能とする。
【0113】
(P型受信機)
上記の実施形態は、R型の受信機からの信号回線を介してR型の火災感知器を接続した火災報知設備を例にとっているが、P型の受信機から引き出した感知器回線にアドレスを設定すると共に伝送機能を備えたアドレッサブル火災感知器を接続した火災報知設備についても、同様に、保守電話と非常電話の設備機能を持たせることで、従来の非常電話親機装置を別に設置する必要がないことから火災報知設備と非常電話設備の設置スペースが低減し、非常電話設備の操作に必要な火災発信や火災発信元等の表示は、受信機に設けたディスプレイを利用することで、火災報知設備の発信機による火災発信及び発信元と同等の表示が可能となり、防災担当者等は受信機で非常電話子機又は発信機による火災発信の対処や操作を迅速且つ適切に行うことができ、更に、非常電話子機又は保守電話子機との通話は同じ電話親機を使用して共通に行うことができ、場所を変えることなく通話操作も簡単且つ容易にできる。
【0114】
(自動放送機能)
また、上記の実施形態は、非常電話の火災発信に非常用放送設備による非常放送を連動させているが、非常用放送設備が設置されていない防火対象物の火災報知設備について、上記の実施形態による非常電話設備と保守電話設備の機能を設けても良い。
【0115】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0116】
10:受信機
12-1~12-n:信号回線
14:アナログ火災感知器
15:アドレッサブル発信機
16:中継器
17:感知器回線
18:オンオフ火災感知器
20:発信機
22:防排煙機器
24:保守電話回線
26:保守電話端子
28:保守電話子機
30:電話プラグ
32:非常電話回線
34:非常電話子機
36:非常用放送盤
38:放送回線
40:スピーカ
42:メインCPU
44-1~44-n:サブCPU基板
46-1~46-n:サブCPU
48-1~48-n:伝送部
52:ディスプレイ
54:表示部
56:操作部
60:移報部
62:保守電話回路部
64:非常電話回路部
66:親機スピーカ
68:親機マイク
70:受信制御部
72:通話制御部
74:ガイドスイッチ
76:火災断定スイッチ
78:主音響停止スイッチ
80:地区音響一時停止スイッチ
82:プリンタ
84:火災代表灯
86:ガス漏れ代表灯
88:音響孔
92:送受話器
94:通常監視画面
96:正常動作中表示
98,100,102:メニュー釦
104:保守電話着信表示
106,118,118-2:通話釦
108,120,120-2:保留釦
110:非常電話着信画面
112:非常電話着信表示
116,116-2:非常電話着信表示
130:三者通話釦