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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】果実酒のろ過・清澄化方法
(51)【国際特許分類】
   C12H 1/07 20060101AFI20230329BHJP
   C12G 1/08 20060101ALI20230329BHJP
   C12G 3/024 20190101ALI20230329BHJP
【FI】
C12H1/07
C12G1/08
C12G3/024
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019040781
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020141597
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中元 浩平
(72)【発明者】
【氏名】堀内 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】中澤 幸生
(72)【発明者】
【氏名】志岐 智
(72)【発明者】
【氏名】岡村 大祐
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-095808(JP,A)
【文献】特開2008-284471(JP,A)
【文献】特開2016-152777(JP,A)
【文献】国際公開第2009/051168(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/155004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12H
C12G
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
果実を発酵させて、澱成分の凝集体を含有する果実酒を得る発酵工程;及び
発酵工程で得られた果実酒を、3次元網目構造の樹脂から構成される多孔質膜に通過させて、該澱成分の凝集体からろ液を分離するろ過・清澄化工程;
を含む果実酒の製造方法であって、
該多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、0.1μm以上1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であり、かつ、1μm 超の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して2%以上30%以下であり、かつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であり、かつ
250nm~650nmの任意の波長における、該ろ過・清澄化工程前の果実酒の吸光度をX1、該ろ過・清澄化工程後の果実酒の吸光度をX2とするとき、X2/X1≧0.75の関係を満たす、
ことを特徴とする果実酒の製造方法。
【請求項2】
前記ろ過・清澄化工程において、発酵工程で得られた果実酒とベントナイトを混合したものを、3次元網目構造の樹脂から構成される多孔質膜に通過させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質膜の表面開口率は25~60%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質膜は中空糸膜である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質膜を構成する樹脂は熱可塑性樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂はフッ素樹脂である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素樹脂は、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-モノクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ヘキサフルオロプロピレン樹脂、及びこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれるいずれか1種である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂はポリエチレン(PE)である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ろ過・清澄化工程の後に、該多孔質膜に洗浄液を通過又は浸漬させて、該多孔質膜の内部を洗浄する洗浄工程を更に含み、該洗浄液が50℃~90℃の湯である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ろ過・清澄化工程の後に、該多孔質膜に洗浄液を通過又は浸漬させて、該多孔質膜の内部を洗浄する洗浄工程を更に含み、該洗浄液が0.05重量%以上0.5重量%以下の次亜塩素酸ナトリウム又は0.4重量%以上4重量%以下の水酸化ナトリウムを含有する水溶液である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記洗浄工程前の前記多孔質膜の引張破断伸度E0と、前記洗浄工程後の前記多孔質膜の引張破断伸度E1との関係が、E1/E0×100≧80%である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄工程前の前記多孔質膜の引張破断伸度E0と、前記洗浄工程をX回(ここで、Xは2~100の整数である。)繰り返した後の前記多孔質膜の引張破断伸度EXとの関係が、EX/E0×100≧70%である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
前記ろ過・清澄化工程前の前記多孔質膜のフラックスL0と、前記洗浄工程後の前記多孔質膜のフラックスL1との関係が、L1/L0×100≧95%である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項14】
前記ろ過・清澄化工程前の前記多孔質膜のフラックスL0と、前記洗浄工程をX回(ここで、Xは2~100の整数である。)繰り返した後の前記多孔質膜のフラックスLXとの関係が、X/L0×100≧90%である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項15】
前記洗浄工程は、前記洗浄液による洗浄を行う洗浄液工程と、その後、残存する洗浄液成分を除去するためのリンス水による濯ぎを行うリンス工程とを含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記リンス工程で使用するリンス水の量は、前記多孔質膜の単位面積当たり100L/m以下である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記リンス工程後に前記ろ過・清澄化工程を再開した後のろ液中の塩素濃度が0.1ppm以下であり、かつ、該ろ過液のpHが8.6以下である、請求項15又は16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質膜を用いた果実酒のろ過・清澄化程を含む果実酒の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、発酵後に酵母や澱成分を含有する果実酒から該凝集物を除去するための多孔質膜を用いるろ過・清澄化工程を含む果実酒の製造方法において、ろ過前後の色度成分の変化が小さく、澱成分の除去率が高く、多孔質膜の洗浄工程後の透水量回復性や洗浄液(薬液)耐性も高い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果実酒は、果実原料を準備し、発酵工程、清澄化工程、熟成工程を経て製造されているが、その品質を安定させるために必要となる要素は多岐にわたる。例えば、赤ワインの場合、その色調を安定させることは品質維持の観点から重要である。加えてより濃い色調の赤ワインは消費者にとって高級感をもたらすほか、アントシアニン等の有用成分を多く含むため好まれる傾向にある。
赤ワインの色度は、原料となるぶどうの品種と栽培環境に大きく影響を受ける。例えば、赤ワインの代表的な品種であるカベルネ・ソービニヨンやメルローは濃い赤味を発現できる品種として知られているが、天候や栽培地域により日照時間を確保できなかったものを原料として使用した赤ワインでは、期待するほどの色度に届かない場合がある。
白ワインにおいても、原料の品種や、栽培される地域や天候によって、生産されたワインの色度が変化する。白ワインの場合、生産管理の観点から、色度に一定の下限値を設けている銘柄がある。赤ワインと同じく色度は主に原料に依存するため、常に一定以上の色度を確保することは困難な場合がある。
このような色調や色度に関する問題に対して、醸し前又は醸し期間中の任意の時点で超音波を作用させる方法(以下、特許文献1参照)や、ワイン原料にペクチナーゼを添加してブドウ果皮を軟化させ、果皮中の色度成分を効率よく溶出させる手法(以下、特許文献2参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-258540号公報
【文献】特開平11-46747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、超音波を作用させる場合、果皮中の色度成分は効率良く溶出させることができるものの、その他の有用成分を分解してしまう可能性がある。また、ペクチナーゼの添加により色度成分の溶出を促進できるものの、添加量の調整を原料ごとに行わなければならないという煩雑性がある。
このような果実酒における色度の低下という問題に対して、本発明者らは、鋭意検討し実験を重ねた結果、果実酒の色度を決定する要因は、原料や原料からの色度成分の抽出方法に起因するものだけではなく、その後段の製造工程にも影響されることを発見した。その中でも、アルコール発酵後、果実酒の清澄化のために従来から行われる珪藻土ろ過において、色度に関わる成分が相当量吸着されてしまい、ろ過前に比べてろ過後の色度が低下するという問題があることを新たに突き止めた。
【0005】
他方、近年、珪藻土ろ過に代替される除濁方法として膜ろ過法が報告されている。膜ろ過法の利点としては、(1)得られる水質の除濁レベルが高く、かつ、安定している(得られる水の安全性が高い)こと、(2)ろ過装置の設置スペースが小さくてすむこと、(3)自動運転が容易であること、(4)使用済み珪藻土の廃棄費用を抑えられること等が挙げられる。膜ろ過による除濁操作には、平均孔径が数nm~数百nmの範囲の平膜又は中空糸状の多孔質限外ろ過膜や精密ろ過膜が用いられる。このように、膜ろ過法による除濁操作は、珪藻土ろ過にはない利点が多くあるために、従来法の代替又は補完手段として、各種ろ過用途への採用が進んでいる。
しかしながら、樹脂素材で多孔質ろ過膜を作製する際、製膜方法が異なると膜を構成する素材のミクロ構造に差異が現れる。また、発酵後の果実酒に含まれる澱成分の除去のためのろ過においては、澱成分の除去率を高く維持しつつ、前述した色度成分の低下を極力抑制することが要求される。さらに、通常、ろ過運転を継続すると膜は目詰まりを起こすため、多孔質ろ過膜を用いたろ過方法の運転には、洗浄工程が伴う。他方、洗浄工程に薬剤を使用すると、膜の強度劣化を誘発する。このとき、多孔質ろ過膜を構成する素材のミクロ構造に差異があると、繰り返される洗浄工程で使用する洗浄液(薬液)による多孔質ろ過膜へのダメージの程度が異なる結果、ろ過性能や寿命に影響を及ぼすという問題もある。
【0006】
かかる問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、澱成分の凝集物を含有する発酵後の果実酒から該凝集物を除去するための多孔質膜を用いるろ過・清澄化工程を含む果実酒の製造方法において、ろ過前後の色度成分の変化が低く、澱成分の除去率が高く、多孔質膜の洗浄工程後の透水量回復性や洗浄液(薬液)耐性も高い方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記した課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、多孔質ろ過膜の被処理液側である膜の内側からろ液側である膜の外側に至る細孔の連通性が良好な膜を使用することで、澱成分の凝集物を含有する果実酒から該凝集物を除去するための多孔質膜を用いるろ過工程を含む果実酒の製造方法において、ろ過前後の果実酒の色度成分の変化が低く、澱成分の除去率が高く、さらに、洗浄工程で使用する洗浄液(薬液)として、50℃~90℃の湯、及び/又は0.05重量%以上0.5重量%以下の次亜塩素酸ナトリウム若しくは0.4重量%以上4重量%以下の水酸化ナトリウムを含有する水溶液を使用した場合であっても、膜の劣化を最小限に抑えることができることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]以下の工程:
果実を発酵させて、澱成分の凝集体を含有する果実酒を得る発酵工程;及び
発酵工程で得られた果実酒を、3次元網目構造の樹脂から構成される多孔質膜に通過させて、該澱成分の凝集体からろ液を分離するろ過・清澄化工程;
を含む果実酒の製造方法であって、
該多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であり、かつ、
250nm~650nmの任意の波長における、該ろ過・清澄化工程前の果実酒の吸光度をX1、該ろ過・清澄化工程後の果実酒の吸光度をX2とするとき、X2/X1≧0.75の関係を満たす、
ことを特徴とする果実酒の製造方法。
[2]以下の工程:
果実を発酵させて、澱成分の凝集体を含有する果実酒を得る発酵工程;及び
発酵工程で得られた果実酒を、3次元網目構造の樹脂から構成される多孔質膜に通過させて、該澱成分の凝集体からろ液を分離するろ過・清澄化工程;
を含む果実酒の製造方法であって、
該多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であり、かつ
250nm~650nmの任意の波長における、該ろ過・清澄化工程前の果実酒の吸光度をX1、該ろ過・清澄化工程後の果実酒の吸光度をX2とするとき、X2/X1≧0.75の関係を満たす、
ことを特徴とする果実酒の製造方法。
[3]以下の工程:
果実を発酵させて、澱成分の凝集体を含有する果実酒を得る発酵工程;及び
発酵工程で得られた果実酒を、3次元網目構造の樹脂から構成される多孔質膜に通過させて、該澱成分の凝集体からろ液を分離するろ過・清澄化工程;
を含む果実酒の製造方法であって、
該多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であり、かつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であり、かつ
250nm~650nmの任意の波長における、該ろ過・清澄化工程前の果実酒の吸光度をX1、該ろ過・清澄化工程後の果実酒の吸光度をX2とするとき、X2/X1≧0.75の関係を満たす、
ことを特徴とする果実酒の製造方法。
[4]前記多孔質膜は、該多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm超10μm未満の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記ろ過・清澄化工程において、発酵工程で得られた果実酒とベントナイトを混合したものを、3次元網目構造の樹脂から構成される多孔質膜に通過させる、前記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記多孔質膜の表面開口率は25~60%である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記多孔質膜は中空糸膜である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記多孔質膜を構成する樹脂は熱可塑性樹脂である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記熱可塑性樹脂はフッ素樹脂である、前記[8]に記載の方法。
[10]前記フッ素樹脂は、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-モノクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ヘキサフルオロプロピレン樹脂、及びこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれるいずれか1種である、前記[9]に記載の方法。
[11]前記熱可塑性樹脂はポリエチレン(PE)である、前記[8]に記載の方法。
[12]前記ろ過・清澄化工程の後に、該多孔質膜に洗浄液を通過又は浸漬させて、該多孔質膜の内部を洗浄する洗浄工程を更に含み、該洗浄液が50℃~90℃の湯である、前記[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記ろ過・清澄化工程の後に、該多孔質膜に洗浄液を通過又は浸漬させて、該多孔質膜の内部を洗浄する洗浄工程を更に含み、該洗浄液が0.05重量%以上0.5重量%以下の次亜塩素酸ナトリウム又は0.4重量%以上4重量%以下の水酸化ナトリウムを含有する水溶液である、前記[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[14]前記洗浄工程前の前記多孔質膜の引張破断伸度E0と、前記洗浄工程後の前記多孔質膜の引張破断伸度E1との関係が、E1/E0×100≧80%である、前記[12]又は[13]に記載の方法。
[15]前記洗浄工程前の前記多孔質膜の引張破断伸度E0と、前記洗浄工程をX回(ここで、Xは2~100の整数である。)繰り返した後の前記多孔質膜の引張破断伸度EXとの関係が、EX/E0×100≧70%である、前記[12]又は[13]に記載の方法。
[16]前記ろ過・清澄化工程前の前記多孔質膜のフラックスL0と、前記洗浄工程後の前記多孔質膜のフラックスL1との関係が、L1/L0×100≧95%である、前記[12]又は[13]に記載の方法。
[17]前記ろ過・清澄化工程前の前記多孔質膜のフラックスL0と、前記洗浄工程をX回(ここで、Xは2~100の整数である。)繰り返した後の前記多孔質膜のフラックスLXとの関係が、X/L0×100≧90%である、前記[12]又は[13]に記載の方法。
[18]前記洗浄工程は、前記洗浄液による洗浄を行う洗浄液工程と、その後、残存する洗浄液成分を除去するためのリンス水による濯ぎを行うリンス工程とを含む、前記[12]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]前記リンス工程で使用するリンス水の量は、前記多孔質膜の単位面積当たり100L/m以下である、前記[18]に記載の方法。
[20]前記リンス工程後に前記ろ過・清澄化工程を再開した後のろ液中の塩素濃度が0.1ppm以下であり、かつ、該ろ過液のpHが8.6以下である、前記[18]又は[19]に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る果実酒の製造方法におけるろ過・清澄化工程は、多孔質ろ過膜の被処理液側である膜の内側からろ液側である膜の外側に至る細孔の連通性が良好な膜を使用するため、ろ過前後の果実酒の色度の変化が低く、澱成分の除去率が高く、さらに、洗浄工程で使用する洗浄液(薬液)として、50℃~90℃の湯、及び/又は0.05重量%以上0.5重量%以下の次亜塩素酸ナトリウム若しくは0.4重量%以上4重量%以下の水酸化ナトリウムを含有する水溶液を使用した場合であっても、膜の劣化を最小限に抑えることができる。それゆえ、本発明に係る果実酒の製造方法は、ろ過性能、及びその回復性、薬液耐性に優れ、かつ、高寿命の方法である。具合的には、本発明に係る果実酒の製造方法におけるろ過・清澄化工程に用いる多孔質膜は多孔の連通性が高いため、果実酒の色度成分の膜への吸着が少なく、ろ過前後での色度の変化が25%以下であり、かつ、澱成分の除去率は95%超である。さらに、洗浄工程において、4重量%と比較的低い濃度の水酸化ナトリウム水溶液を洗浄液として使用した場合であっても、多孔質膜の透水量を十分に回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の果実酒の製造方法におけるろ過・清澄化工程に用いる多孔質膜の断面のSEM画像の一例である(黒部分は樹脂、白部分は細孔(開孔)を示す)。
図2】実施例1で用いた多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域(丸1~丸4)において、樹脂部の総面積に対する、所定面積を有する樹脂部の面積の合計の割合(%)を示すヒストグラムである。
図3】実施例2で用いた多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域(丸1~丸4)において、樹脂部の総面積に対する、所定面積を有する樹脂部の面積の合計の割合(%)を示すヒストグラムである。
図4】実施例3で用いた多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域(丸1~丸4)において、樹脂部の総面積に対する、所定面積を有する樹脂部の面積の合計の割合(%)を示すヒストグラムである。
図5】比較例3で用いた多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域(丸1~丸4)において、樹脂部の総面積に対する、所定面積を有する樹脂部の面積の合計の割合(%)を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態ともいう。)について詳細に説明する。尚、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<果実酒の製造方法>
本実施形態の果実酒の製造方法は、以下の工程:
果実を発酵させて、澱成分の凝集体を含有する果実酒を得る発酵工程;及び
発酵工程で得られた果実酒を、3次元網目構造の樹脂から構成される多孔質膜に通過させて、該澱成分の凝集体からろ液を分離するろ過・清澄化工程;
を含む果実酒の製造方法であって、
該多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であり、かつ、
250nm~650nmの任意の波長における、該ろ過・清澄化工程前の果実酒の吸光度をX1、該ろ過・清澄化工程後の果実酒の吸光度をX2とするとき、X2/X1≧0.75の関係を満たす、
ことを特徴とする。
X2/X1≧0.85であることが好ましく、より好ましくはX2/X1≧0.9である。
多孔質膜の形状としては特に制限はなく、平膜、管状膜、中空糸膜であることができるが、ろ過装置の省スペース性の観点から、すなわち、膜モジュール単位体積当たりの膜面積を大きくすることができるため、中空糸膜が好ましい。
【0013】
本実施形態の果実酒の製造方法におけるろ過工程としては、例えば、多孔質中空糸膜の中空部(内側表面)に発酵により凝集した澱成分の凝集物を含有する果実酒(被処理液)を供給し、多孔質中空糸膜の膜厚(肉厚)部を通過させ、多孔質中空糸膜の外側表面から滲み出した液体をろ液として取り出す、いわゆる内圧式のろ過工程であってもよいし、多孔質中空糸膜の外側表面から被処理液を供給し、多孔質中空糸膜の内側表面から滲み出したろ液を、中空部を介して取り出す、いわゆる外圧式のろ過工程であってもよい。また、果実酒の種類としては、例えば、赤ワイン、白ワイン、シードル(りんご酒)、あんず酒、ゆず酒、梅酒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また醸造工程を含まないソフトドリンクの清澄化に関しても限定されるものではない。
本明細書中、用語「多孔質膜の内部」とは、多数の細孔が形成されている膜厚(肉厚)部を指す。
【0014】
好ましくは、本実施形態の果実酒の製造方法は、前記ろ過・清澄化工程の後に、該多孔質膜に洗浄液を通過又は浸漬させて、該多孔質膜の内部を洗浄する洗浄工程を更に含み、該洗浄液は50℃~90℃の湯(以下、熱水ともいう。)であることができる。
より好ましくは、本実施形態の果実酒の製造方法は、前記ろ過・清澄化工程の後に、該多孔質膜に洗浄液を通過又は浸漬させて、該多孔質膜の内部を洗浄する洗浄工程を更に含み、該洗浄液が0.05重量%以上0.5重量%以下の次亜塩素酸ナトリウム又は0.4重量%以上4重量%以下の水酸化ナトリウムを含有する水溶液(以下、薬液ともいう。)であることができる。上記洗浄工程においては、熱水洗浄の後に、薬液洗浄をすることが好ましい。
洗浄工程は、前記洗浄液による洗浄を行う洗浄液工程と、その後、残存する洗浄液成分を除去するためのリンス水による濯ぎを行うリンス工程とを含むことができる。洗浄液が熱水の場合、熱水の温度は、好ましくは55℃以上85℃以下、より好ましくは60℃以上80℃以下であることができる。洗浄液が前記薬液の場合、薬液の温度は、好ましくは15℃以上35℃以下、より好ましくは20℃以上35℃以下であることができる。また、前記薬液中の水酸化ナトリウムの濃度は、0.7重量%以上4重量%以下がより好ましく、1重量%以上4重量%以下がさらに好ましい。前記薬液中の次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、0.1重量%以上0.5重量%以下がより好ましく、0.2重量%以上0.5重量%以下がさらに好ましい。洗浄工程としては、例えば、ろ過工程における果実酒の流れ方向とは逆方向に、すなわち、ろ液側から原液側に洗浄液を通過させることによって多孔質膜のろ過面(原液側表面)から付着物(不溶解成分)を引き離して、除去する逆圧水洗浄、エアによって多孔質膜を揺らして多孔質膜に付着した不溶解成分を振るい落とすエアスクラビングなどが挙げられる。前記リンス工程で使用するリンス水の量は、好ましくは、前記多孔質膜の単位面積当たり100L/m以下、より好ましくは50L/m以下であることができる。また、前記リンス工程後に前記ろ過工程を再開した後のろ液中の塩素濃度が0.1ppm以下であり、かつ、該ろ過液のpHが8.6以下であることが好ましい。
ろ過・清澄化工程前の原液には、ろ過助剤を予め添加してもよい。ろ過助剤としては、活性炭、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、コロイダルシリカ、ベントナイト等が挙げられる。添加時の濃度は原液の種類にもよるが、50ppm~5000ppm程度の間で適宜調整できる。添加時の濃度が低すぎる場合、凝集効果が十分ではない場合がある。また、添加時の濃度が高すぎる場合、ろ過時に悪影響を与える可能性がある。ろ過助剤のサイズは吸着させたい物質にもよるが、中空糸膜の細孔に十分に大きく、詰まりづらく、中空糸膜表面を擦過しづらいものが好適に用いられる。
本実施形態の果実酒の製造方法におけるろ過工程に用いる多孔質膜の構造、素材(材料)、及び製造方法を、以下、詳述する。
【0015】
<多孔質膜>
多孔質膜は、該多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であるもの;同各領域において、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であるもの;同各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であり、かつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であるもの;のいずれかである。好ましい多孔質膜は、同各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であり、1μm超10μm未満の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であり、かつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であるものである。
【0016】
図1は、本実施形態の果実酒の製造方法におけるろ過・清澄化工程に用いる多孔質膜の断面のSEM画像の一例である。かかるSEM画像は、中空糸多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の領域の内、内側に最も近い領域の内、内側に最も近い領域内の所定視野を撮影して得たSEM画像写真を二値化処理した画像である。
尚、前記各領域内では、中空糸多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面と、該内側表面に平行する断面との間では、樹脂部の存在分布の差異、すなわち、孔の連通性の異方性は事実上無視することができる。
本明細書中、用語「樹脂部」とは、多孔質膜において多数の孔を形成する、樹脂から構成される3次元網目構造の樹状骨格部分である。図1に黒色で示す部分が樹脂部であり、白色の部分が孔である。
多孔質膜内部には、膜の内側から外側まで屈曲しながら連通している連通孔が形成されており、多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であれば、孔の連通性が高い(すなわち、膜内部の連通孔の存在割合が高い)ものとなり、被処理液のフラックス(透水量、透水性)、洗浄後の透水量保持率が高く、引張破断伸度で指標される薬液洗浄後の膜へのダメージも軽減される。しかしながら、樹脂部の総面積に対する1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計の割合が高すぎると、多孔質膜において多数の孔を形成する、樹脂から構成される3次元網目構造の樹状骨格部分が細すぎるものとなるため、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であることを維持しつつ、1μm超の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して2%以上30%以下で存在するものが好ましく、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下で存在するものがより好ましく、1μm超10μm未満の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であり、かつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して2%以上15%以下で存在するものがさらに好ましい。1μm超の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して2%以上30%以下で存在すれば、樹脂から構成される3次元網目構造の樹状骨格部分が細すぎないため、多孔質膜の強度、引張破断伸度を適切に維持することができる。
【0017】
図2~5は、それぞれ、実施例1、実施例2、実施例3、比較例3で用いた多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域(丸1~丸4)において、樹脂部の総面積に対する、所定面積を有する樹脂部の面積の合計の割合(%)を示すヒストグラムである。図1には、樹脂部が粒状に表れている。図2~5は、この粒状の樹脂部のそれぞれの面積を計測し、その粒状の樹脂部の面積毎について、各領域内の所定サイズの視野における全樹脂部の総面積に対する面積割合をヒストグラムとして示している。図2~5における丸1は、多孔質膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、該内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の領域の内、最も内側に近い領域の番号であり、丸4は、最も内側に近い領域の番号である。例えば、実施例1丸1は、実施例1の多孔質中空糸膜の最も内側の領域内の所定サイズの視野を撮影したときのヒストグラムである。多孔質中空糸膜の各領域内の樹脂部の面積分布の測定方法については、後述する。
【0018】
多孔質膜の表面開口率は25~60%であることが好ましく、より好ましくは25~50%であり、更に好ましくは25~45%である。処理対象液と接触する側の表面開口率が25%以上であれば、目詰まり、膜表面擦過による透水性能の劣化が小さくなるため、ろ過安定性を高めることができる。他方、表面開口率が高く、孔径が大きすぎると、要求される分離性能を発揮できないおそれがある。そのため、多孔質膜の平均細孔径は100~700nmであることが好ましく、100~600nmがより好ましい。平均細孔径が100~700nmであれば、分離性能は十分であり、孔の連通性も確保できる。表面開口率、平均細孔径の測定方法については、それぞれ後述する。
【0019】
多孔質膜の膜厚は、好ましくは80~1,000μmであり、より好ましくは100~300μmである。膜厚が80μm以上であれば、膜の強度が確保でき、他方、1000μm以下であれば、膜抵抗による圧損が小さくなる。
【0020】
多孔質中空糸膜の形状としては、円環状の単層膜を挙げることができるが、分離層と分離層を支持する支持層とで違う孔径を持つ多層膜であってもよい。また、膜の内側表面と外側表面で、突起を持つなど異形断面構造であてもよい。
【0021】
(多孔質膜の素材(材質))
多孔質膜を構成する樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であり、フッ素樹脂がより好ましい。フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-モノクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ヘキサフルオロプロピレン樹脂、及びこれら樹脂の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、オレフィンとハロゲン化オレフィンとの共重合体、ハロゲン化ポリオレフィン、それらの混合物が挙げられる。熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(ヘキサフルオロプロピレンのドメインを含んでもよい)、これらの混合物が挙げられる。これらの樹脂は、は熱可塑性ゆえに取り扱い性に優れ、且つ強靱であるため、膜素材として優れる。これらの中でもフッ化ビニリデン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、ヘキサフルオロプロピレン樹脂又はそれらの混合物、エチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンのホモポリマー又はコポリマー、あるいは、ホモポリマーとコポリマーの混合物は、機械的強度、化学的強度(耐薬品性)に優れ、且つ成形性が良好であるために好ましい。より具体的には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合物、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合物、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0022】
多孔質膜は、熱可塑性樹脂以外の成分(不純物等)を5質量%程度まで含み得る。例えば、多孔質膜製造時に用いる溶剤が含まれる。後述するように、多孔質膜の製造時に溶剤として用いた第1の溶剤(以下、非溶剤ともいう)、第2の溶剤(以下、良溶剤若しくは貧溶剤ともいう)、又はその両方が含まれる。これらの溶剤は、熱分解GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)により検出することができる。
【0023】
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、及びエポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
また、第2の溶剤は、第1の溶剤と異なり、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、及びエポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であることができる。炭素数6以上30以下の脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等が挙げられる。また、エポキシ化植物油としては、エポキシ大豆油、エポキシ化亜麻仁油等が挙げられる。
第1の溶剤は、熱可塑性樹脂と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、熱可塑性樹脂が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であることが好ましい。
第2の溶剤は、熱可塑性樹脂と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度で熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解する良溶剤であることが好ましい。
第2の溶剤は、熱可塑性樹脂と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃では熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度では熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることがより好ましい。
【0024】
また、本実施形態の果実酒の製造方法におけるろ過・清澄化工程においては、熱可塑性樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた多孔質中空糸膜であって、第1の溶剤(非溶剤)を含むものを用いることができる。
この場合、第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、エポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であって、ポリフッ化ビニリデンと第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、ポリフッ化ビニリデンが第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であることができる。非溶媒としては、アジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)が好ましい。
また、上記多孔質中空糸膜は、第1の溶剤とは異なる第2の溶剤を含んでもよい。この場合、第2の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、エポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であって、ポリフッ化ビニリデンと第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解する良い溶剤であることが好ましい。また、第2の溶剤は、第2の混合液の温度が25℃ではポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度ではポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることがより好ましい。貧溶媒としては、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が好ましい。
【0025】
(多孔質膜の物性)
多孔質膜は、引張破断伸度の初期値は60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上、特に好ましくは120%以上である。引張破断伸度の測定方法については後述する。
【0026】
また、実用上の観点から、多孔質膜の圧縮強度は0.2MPa以上が好ましく、より好ましくは0.3~1.0MPa、更に好ましくは0.4~1.0MPaである。
【0027】
<多孔質膜の製造方法>
以下、多孔質中空糸膜の製造方法について説明する。但し、本実施形態の果実酒の製造方法におけるろ過・清澄化工程に用いる多孔質中空糸膜の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
本実施形態の果実酒の製造方法におけるろ過・清澄化工程に用い多孔質中空糸膜の製造方法は、(a)溶融混練物を準備する工程と、(b)溶融混練物を多重構造の紡糸ノズルに供給し、紡糸ノズルから溶融混練物を押し出すことによって中空糸膜を得る工程と、(c)可塑剤を中空糸膜から抽出する工程とを含むものであることができる。溶融混練物が添加剤を含む場合には、工程(c)の後に、(d)添加剤を中空糸膜から抽出する工程をさらに含んでもよい。
【0028】
溶融混練物の熱可塑性樹脂の濃度は好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは25~45質量%であり、更に好ましくは30~45質量%である。この値が20質量%以上であれば、機械的強度を高くすることができ、他方、60質量%以下であれば、透水性能を高くすることができる。溶融混練物は添加剤を含んでもよい。
溶融混練物は、熱可塑性樹脂と溶剤の二成分からなるものであってもよく、熱可塑性樹脂、添加剤、及び溶剤の三成分からなるものであってもよい。溶剤は、後述するように、少なくとも非溶剤を含む。
工程(c)で使用する抽出剤としては、塩化メチレンや各種アルコールなど熱可塑性樹脂は溶けないが可塑剤と親和性が高い液体を使用することが好ましい。
添加剤を含まない溶融混練物を使用する場合には、工程(c)を経て得られる中空糸膜を多孔質中空糸膜として使用してもよい。添加剤を含む溶融混練物を使用して多孔質中空糸膜を製造する場合には、工程(c)後に、中空糸膜から(d)添加剤を抽出除去して多孔性中空糸膜を得る工程をさらに経ることが好ましい。工程(d)における抽出剤には、湯、又は酸、アルカリなど使用した添加剤を溶解できるが熱可塑性樹脂は溶解しない液体を使用することが好ましい。
【0029】
添加剤として無機物を使用してもよい。無機物は無機微粉が好ましい。溶融混練物に含まれる無機微粉の一次粒径は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは5nm以上30nm未満である。無機微粉の具体例としては、シリカ(微粉シリカを含む)、酸化チタン、塩化リチウム、塩化カルシウム、有機クレイ等が挙げられ、これらのうち、コストの観点から微粉シリカが好ましい。上述の「無機微粉の一次粒径」は電子顕微鏡写真の解析から求めた値を意味する。すなわち、まず無機微粉の一群をASTM D3849の方法によって前処理を行う。その後、透過型電子顕微鏡写真に写された3000~5000個の粒子直径を測定し、これらの値を算術平均することで無機微粉の一次粒径を算出することができる。
多孔質中空糸膜内部の無機微粉について、蛍光X線等により存在する元素を同定することで、存在する無機微粉の素材(材料)を同定することができる。
添加剤として有機物を使用する場合、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子を使用すると中空糸膜に親水性を付与することができる。また、グリセリン、エチレングリコールなど粘度の高い添加剤を使用すると溶融混練物の粘度をコントロールすることができる。
【0030】
次に、本実施形態の多孔質中空糸膜の製造方法における(a)溶融混練物を準備する工程について詳細に説明する。
本実施形態の多孔質中空糸膜の製造方法では、熱可塑性樹脂の非溶剤を、良溶剤又は貧溶剤に混合させる。混合後の混合溶媒は、使用する熱可塑性樹脂の非溶剤である。このように膜の原材料として非溶剤を用いると、3次元網目構造を持つ多孔質中空糸膜が得られる。その作用機序は必ずしも明らかではないが、非溶剤を混合させて、より溶解性を低くした溶剤を用いた方がポリマーの結晶化が適度に阻害され、3次元網目構造になりやすいと考えられる。例えば、非溶剤、及び貧溶剤又は良溶剤は、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、エポキシ化植物油等の各種エステル等からなる群から選ばれる。
熱可塑性樹脂を常温で溶解させることができる溶剤を良溶剤、常温では溶解できないが高温にして溶解させることができる溶剤をその熱可塑性樹脂の貧溶剤、高温にしても溶解させることができない溶剤を非溶剤と呼ぶが、良溶剤、貧溶剤、及び非溶剤は、以下のようにして判定することができる。
試験管に2g程度の熱可塑性樹脂と8g程度の溶剤を入れ、試験管用ブロックヒーターにて10℃刻み程度でその溶剤の沸点まで加温し、スパチュラなどで試験管内を混合し、熱可塑性樹脂が溶解するものが良溶剤又は貧溶剤、溶解しないものが非溶剤である。100℃以下の比較的低温で溶解するものが良溶剤、100℃以上沸点以下の高温にしないと溶解しないものを貧溶剤と判定する。
例えば、熱可塑性樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、溶剤としてアセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、セバシン酸ジブチル又はアジピン酸ジブチルを用いると、200℃程度でPVDFはこれらの溶剤に均一に混ざり合い溶解する。他方、溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル、又はセバシン酸ビス2エチルヘキシルを用いると温度を250℃まで上げても、PVDFはこれらの溶剤には溶解しない。
また、熱可塑性樹脂としてエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)を用い、溶剤としてアジピン酸ジエチルを用いると、200℃程度でETFEは均一に混ざり合い溶解する。他方、溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DIBA)を用いると溶解しない。
また、熱可塑性樹脂としてエチレン-モノクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)を用い、溶剤としてクエン酸トリエチルを用いると200℃程度で均一に溶解し、トリフェニル亜リン酸(TPP)を用いると溶解しない。
【実施例
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例、比較例における各物性値は以下の方法で各々求めた。
【0032】
(1)多孔質中空糸膜の外径、内径
多孔質中空糸膜を、長さ方向に直交する断面でカミソリを使って薄くスライスし、100倍拡大鏡にて、外径と内径を測定した。一つのサンプルについて、長さ方法に30mm間隔で60箇所の切断面で測定を行い、平均値を中空糸膜の外径と内径とした。
【0033】
(2)電子顕微鏡撮影
多孔質中空糸膜を、長さ方向に直交する断面で円環状に裁断し、10%リンタングステン酸+四酸化オスミウム染色を実施し、エポキシ樹脂に包埋した。次いで、トリミング後、試料断面にBIB加工を施して平滑断面を作製し、導電処理し、検鏡試料を作製した。作製した検鏡試料を、HITACHI製電子顕微鏡SU8000シリーズを使用し、加速電圧1kVで膜の断面の電子顕微鏡(SEM)画像を5,000~30,000倍で、膜厚(肉厚部)断面の内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域(図2~5における丸1~丸4)内で所定の視野で撮影した。平均孔径に応じて倍率を変えて測定することができ、具体的には、平均孔径が0.1μm以上の場合には、5000倍、平均孔径が0.05μm以上0.1μm未満の場合には、10,000倍、平均孔径が0.05μm未満の場合には、30,000倍とした。尚、視野のサイズは、2560×1920ピクセルとした。
画像処理には、ImageJを用い、撮影したSEM画像に対してThreshold処理(Image-Adjust-Treshold:大津法(Otsuを選択))を施すことより、孔の部分と樹脂部とで二値化した。
表面開口率:二値化画像の樹脂部と孔部との割合を算出することにより表面開口率を測定した。
樹脂部の面積分布:ImageJの「Analyze Particle」コマンド(Analyz Particle:Size0.10-Infinity)を使用し、撮影したSEM画像に含まれる二値化された粒状の樹脂部の大きさをそれぞれ計測した。SEM画像に含まれる全樹脂部の総面積をΣSとし、1μm以下の樹脂部の面積をΣS(<1μm)とした場合に、ΣS(<1μm)/ΣSを算出することによって、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積割合を算出した。同様に、所定範囲の面積を有する樹脂部の面積割合を算出した。
尚、二値化処理を施す際のノイズ除去については、0.1μm未満の面積の樹脂部をノイズとして除去し、0.1μm以上の面積の樹脂部を分析対象とした。また、ノイズ除去は、メディアンフィルタ処理(Process-Filters-Median:Radius:3.0pixels)を施すことによって行った。
また、SEM画像の端で切れている粒状の樹脂部についても計測対象とした。また、「Incude Holes」(穴をうめる)の処理は行わなかった。また、「雪だるま」型を「扁平」型などに形状を補正する処理は行わなかった。
平均細孔孔径:ImageJの「Plugins-Bone J-Thickness」コマンドを使用して測定した。尚、空間サイズは空隙に入る最大の円サイズとして定義した。
【0034】
(3)フラックス(透水性、初期純水フラックス)
多孔質中空糸膜をエタノールに浸漬した後、純水浸漬を数回繰り返した後、約10cm長の湿潤中空糸膜の一端を封止し、他端の中空部内に注射針を挿入し、25℃の環境下にて注射針から0.1MPaの圧力で25℃の純水を注入し、膜の外側表面から透過してくる純水量を測定し、下記式:
初期純水フラックス[L/m/h]=60×(透過水量[L])/{π×(膜外径[m])×(膜有効長[m])×(測定時間[min])}
により純水フラックスを決定し、透水性を評価した。
尚、「膜有効長」は、注射針が挿入されている部分を除いた、正味の膜長を指す。
【0035】
(4)実液ろ過時の透水性能保持率
次に(i)循環タンクに純水を投入し、膜間差圧=0.05MPaになるように循環ろ過を行って1分間透過水を採取し、初期透水量とした。
次いで、(ii)配管内の水を抜いた後、循環タンクに果実酒原液を投入し、膜間差圧=0.15MPaになるように循環ろ過した。
次いで、(iii)配管の中の果実酒残液を抜いた後、循環タンクに純水を投入し、膜間差圧=0.05MPaになるように循環ろ過し、水洗を行った。
次いで、(iv)配管の中の水を抜いた後、循環容器に調合した薬液を投入し、膜循環ろ過を行って30分薬液洗浄を行った。薬液には0.2重量%の次亜塩素酸ナトリウムと1重量%の苛性ソーダを混合させた水溶液を用いた。
次いで、(v)薬液洗浄後、配管の中の薬液を抜いた後、循環タンクに純水を投入し、膜間差圧=0.05MPaになるように循環ろ過を行い、出てきた透過水を10L/mのタイミングで繰り返し採取、透過水の塩素濃度が0.1ppm以下、かつ、pHが8.6以下になった時点で水洗を終了し、そのリンスの水量を記録した。また、引き続き同じ膜間差圧で循環ろ過を行って1分間透過水を採取、透水量とし、初期透水量と比較し、これを実液ろ過時の透水性能保持率とした。
各パラメーターは、下記式で算出した:
膜間差圧={(入圧)+(出圧)}/2
膜内表面積[m]=π×(中空糸膜内径[m])×(中空糸膜有効長[m])
膜面線速[m/s]=4×(循環水量[m/s])/{π×(膜内径[m])}。また、操作は全て25℃、膜面線速1.0m/秒で行った。
【0036】
(5)引張破断伸度(%)
サンプルとして多孔質中空糸膜をそのまま用い、張破断伸度をJIS K7161に従って算出した。引張破断時の荷重と変位を以下の条件で測定した。
測定機器:インストロン型引張試験機(島津製作所製AGS-5D)
チャック間距離:5cm
引張り速度:20cm/分
【0037】
(6)吸光度
吸光度の測定にはSHIMADZU製UVmini-1240を使用した。スキャン範囲を250nmから700nmとし、ろ過前後の果実酒を石英セルに入れ測定した。光路長は果実酒の種類、及び希釈倍率によって、1cm又は5cmの2種類を適宜選択した。液温は20℃にて測定を実施した。ろ過前後の果実酒の測定前に、予め純水にてバックグラウンド測定を行った後、試料液でセルを3回共洗いした後測定を実施した。測定後、420nm、520nm、620nmの吸光度から、各試料液の色調、及び色彩強度を算出した。ここでいう色調とは(420nmの吸光度)/(520nmの吸光度)の値であり、果実酒の鮮やかさの指標として用いられる。また、色彩強度とは(420nmの吸光度)+(520nmの吸光度)+(620nmの吸光度)の値であり、果実酒の持つ色の濃さを示す指標として用いた。
【0038】
(7)pH
果実酒のpHの測定にはHORIBA製 pH METER F-22を使用した。測定前にpH = 4.01, 6.86, 9.18の標準液にて校正を行った後、液温20℃におけるろ過前後の果実液のpHを測定した。
【0039】
(8)糖度
果実酒の糖度の測定にはATAGO製 ポケット糖度計 PAL-Sを使用した。試料液0.5 mLをステージに滴下し、液温20℃における試料液の糖度を測定した。
【0040】
(9)濁度
果実酒の濁度の測定には、HACH製 2100P TURBIDIMETERを使用した。試料液15 mLをガラスセルに入れ、液温20℃における試料液の濁度を測定した。
【0041】
(10)粘度
果実酒の粘度の測定には、山一電機株式会社製 VISCOMATE 粘度計 MODEL VM-1Gを使用した。試料液30 mLを50 mL容器ガラスビーカーに入れ、液温20℃における試料液の粘度を測定した。
【0042】
(11)ヘイズ(Haze)
果実酒のヘイズの測定には、は日本電色工業株式会社製 Haze Meter NDH4000を使用した。試料液20 mLをガラスセルに入れ、液温20℃における試料液の曇り度を測定した。
【0043】
(12)アルカリ耐性試験
前記(4)に記載した実液ろ過後、多孔性中空糸膜を10cmにカットし、20本を500mlの4%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、10日間40℃に保持した。水酸化ナトリウムに浸漬前後の膜の引張破断伸度をn20で測定し、その平均値を算出した。NaOH浸漬後伸度保持率を、以下の式:
NaOH浸漬後伸度保持率=(浸漬後の引張破断伸度)/(浸漬前の引張破断伸度)×100
で定義し、アルカリ耐性を評価した。尚、浸漬前の引張破断伸度は、洗浄工程前における引張破断伸度に相当し、浸漬後の引張破断伸度は、洗浄工程後の引張破断伸度に相当する。
また、上述した実液ろ過後、上述した4%水酸化ナトリウム水溶液への浸漬による洗浄工程を10回繰り返した。そして、引張破断伸度の初期値(浸漬前の引張破断伸度)をE0とし、洗浄工程を10回繰り返した後の多孔性中空糸膜の引張破断強度の値をEXとし、EX/E0×100を「10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率」として算出してアルカリ耐性を評価した。
また、上述した実液ろ過後、中空糸膜を4%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、10日間40℃に保持した。水酸化ナトリウムに浸漬後、上述した初期純水透水量を測定したときと同じろ過圧力にて10分間ろ過を行い、ろ過8分目から10分目までの2分間透過水を採取し、洗浄工程後透水量とした。初期純粋透水量をLO(フラックスL0)とし、洗浄工程後透水量をL1(フラックスL1)とし、L1/L0×100をNaOH浸漬後透水量保持率として算出した。
また、上述した実液ろ過後、上述した4%水酸化ナトリウム水溶液への中空糸膜の浸漬による洗浄工程を10回繰り返した。そして、上述した初期純水透水量を測定したときと同じろ過圧力にて10分間ろ過を行い、ろ過8分目から10分目までの2分間透過水を採取し、繰り返し洗浄工程後透水量とした。初期純粋透水量をLO(フラックスL0)とし、繰り返し洗浄工程後透水量をLX(フラックスLX、X=10)とし、LX/L0×100を「10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率」として算出した。
【0044】
[実施例1]
熱可塑性樹脂としてPVDF樹脂(クレハ社製、KF-W#1000)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)27.7質量%と、貧溶剤としてアセチルクエン酸トリブチル(ATBC, 沸点343℃)9.3質量%とを用いて、溶融混練物を調製した。得られた溶融混連物の温度は240℃であった。得られた溶融混連物を2重管構造の紡糸ノズルを用い、中空糸状押出し物を120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔質構造を発達させた。得られた中空糸状押出し物を、5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。巻き取った中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させてDOAとATBCを抽出除去し、次いで、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換し、次いで、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去して、多孔質中空糸膜を作製した。
得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表1示す。得られた多孔質中空糸膜は、3次元網目構造を有していた。また、フラックス(透水性)が高く、連通性の高い膜であった。
【0045】
得られた中空糸膜を用いてろ過・清澄化工程を実施した。処理液には鴇ヤマ・ソーヴィニヨンの赤ワイン(秋田ワイナリー)を使用した。下記の器具によりろ過実験系を構築した。送液ポンプには、コールパーマー社製のマスターフレックス(登録商標、型番7523-60)を使用した。ポンプヘッドには同じくコールパーマー社製のマスターフレックス(登録商標)イージーロード(型番7518-10)を使用した。送液チュープはファーメッド(登録商標)BPTポンプチューブ(型番06508-25)、及びマスターフレックス(登録商標)シリコンチューブ(型番96400-16)を使用した。有効膜面積 120cm2、全長130mmのモジュールを作製し、ろ過評価に供した。
中空糸膜内表面側に原液を導入できるよう、モジュール下部を供給側、上部を循環側、上部のサイドノズルをろ過側となるようポンプチューブを繋いだ後、100 mLの原液を氷冷浴にて20 ℃以下に冷却した状態とし、送液ポンプにより600 L/minの速度で循環送液することでモジュール内を共洗いした。10分間の共洗いの後、循環液をすべて排出した。その後2000 mLの原液を氷冷浴にて20 ℃以下に冷却した状態とし、送液ポンプにより600 L/minの速度で送液した。循環側の出圧が55 kPaとなるようろ過弁を開放し、20分間クロスフローろ過を行った。その際、ろ過液は原液タンクへ移送し混合を続けた。その後循環側の出圧が55 kPaとなるようろ過弁を開放し、20分間クロスフローろ過を行った。計1900 mLのろ過液をメスシリンダーで回収した。ろ過終了後、原液とろ過液の吸光度、pH、糖度、濁度、粘度、ヘイズをそれぞれ測定し評価した。
ろ過工程前後の赤ワインの吸光度を測定したところ、ろ過前後の吸光度の比率は以下の表2に示す通り、420nmにおいて0.98、520nmにおいて0.98、620nmにおいて0.95となった。また、ろ過前後の色彩強度の比率は0.99となった。
また、実液ろ過時の透水性能保持率は75%であり、NaOH浸漬後伸度保持率は80%であり、NaOH浸漬後透水量保持率は99%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率は70%であり、そして10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率は95%であった。
また、前記(4)実液ろ過時の透水性能保持率の測定において、透過水の塩素濃度が0.1ppm以下、かつ、pHが8.6以下になった時点で水洗を終了したときのリンスの水量は40(L/m)であった。
【0046】
[実施例2]
熱可塑性樹脂としてETFE樹脂(旭硝子社製、TL-081)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)18.5質量%と、貧溶剤としてアジピン酸ジイソブチル(DIBA)18.5質量%とを用いて、溶融混練物を調製した。得られた溶融混連物の温度は240℃であった。得られた溶融混連物を2重管構造の紡糸ノズルを用い、中空糸状押出し物を120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔質構造を発達させた。得られた中空糸状押出し物を、5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。巻き取った中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させてDOAとDIBAを抽出除去し、次いで、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換し、次いで、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去して、多孔質中空糸膜を作製した。
得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表1示す。得られた多孔質中空糸膜は、3次元網目構造を有していた。また、フラックス(透水性)が高く、連通性の高い膜であった。
得られた中空糸膜を用いてろ過工程を実施した。処理液には実施例1と同じく鴇ヤマ・ソーヴィニヨンの赤ワインを使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の赤ワインの吸光度を測定したところ、ろ過前後の吸光度の比率は以下の表2に示す通り、420nmにおいて0.98、520nmにおいて0.98、620nmにおいて0.97となった。またろ過前後の色彩強度の比率は1.00となった。
また、実液ろ過時の透水性能保持率は70%であり、NaOH浸漬後伸度保持率は98%であり、NaOH浸漬後透水量保持率は100%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率は90%であり、そして10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率は96%であった。
また、前記(4)実液ろ過時の透水性能保持率の測定において、透過水の塩素濃度が0.1ppm以下、かつ、pHが8.6以下になった時点で水洗を終了したときのリンスの水量は35(L/m)であった。
【0047】
[実施例3]
熱可塑性樹脂として熱可塑性樹脂としてECTFE樹脂(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、Halar901)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてトリフェニル亜リン酸(TPP)29.6質量%と、貧溶剤としてアジピン酸ビス2-エチルヘキシル(DOA)7.4質量%とを用いて、溶融混練物を調製した。得られた溶融混連物の温度は240℃であった。得られた溶融混連物を2重管構造の紡糸ノズルを用い、中空糸状押出し物を120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔質構造を発達させた。得られた中空糸状押出し物を、5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。巻き取った中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させてTPPとDOAを抽出除去し、次いで、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換し、次いで、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去して、多孔質中空糸膜を作製した。
得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表1示す。得られた多孔質中空糸膜は、3次元網目構造を有していた。また、フラックス(透水性)が高く、連通性の高い膜であった。
得られた中空糸膜を用いてろ過工程を実施した。処理液には実施例1と同じく鴇ヤマ・ソーヴィニヨンの無ろ過赤ワイン(秋田ワイナリー)を使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の赤ワインの吸光度を測定したところ、ろ過前後の吸光度の比率は以下の表2に示す通り、420nmにおいて0.99、520nmにおいて0.98、620nmにおいて0.98となった。また、ろ過前後の色彩強度の比率は0.99となった。
また、実液ろ過時の透水性能保持率は80%であり、NaOH浸漬後伸度保持率は97%であり、NaOH浸漬後透水量保持率は98%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率は95%であり、そして10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率は95%であった。
また、前記(4)実液ろ過時の透水性能保持率の測定において、透過水の塩素濃度が0.1ppm以下、かつ、pHが8.6以下になった時点で水洗を終了したときのリンスの水量は50(L/m)であった。
【0048】
[比較例1]
発酵工程後のワインをスタンダードスーパーセル(セライト社製)の珪藻土と混合し、内外醸機社製フィルタープレスにより圧力=1.0MPaとなるようにろ過を実施した。処理液には実施例1と同じく鴇ヤマ・ソーヴィニヨンの赤ワインを使用した。ろ過工程前後の赤ワインの吸光度を測定したところ、ろ過前後の吸光度の比率は以下の表2に示す通り、420nmにおいて0.68、520nmにおいて0.67、620nmにおいて0.64となった。また、ろ過前後の色彩強度の比率は0.67となった。
【0049】
[比較例2]
溶剤をATBCのみとしたこと以外は、実施例1と同様にして製膜し、比較例2の中空糸膜を得た。得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表1示す。得られた多孔質中空糸膜は、球晶構造を有していた。また、フラックスが低く、連通性の低い膜であった。
得られた中空糸膜を用いてろ過工程を実施した。処理液には実施例1と同じく鴇ヤマ・ソーヴィニヨンの赤ワインを使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の赤ワインの吸光度を測定したところ、ろ過前後の吸光度の比率は以下の表2に示す通り、420nmにおいて0.70、520nmにおいて0.70、620nmにおいて0.69となった。また、ろ過前後の色彩強度の比率は0.7となった。
また、実液ろ過時の透水性能保持率は30%であり、NaOH浸漬後伸度保持率は30%であり、NaOH浸漬後透水量保持率は150%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率は20%であり、そして10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率は200%であった。
また、前記(4)実液ろ過時の透水性能保持率の測定において、透過水の塩素濃度が0.1ppm以下、かつ、pHが8.6以下になった時点で水洗を終了したときのリンスの水量は140(L/m)であった。
【0050】
[比較例3]
微粉シリカを0%とし、溶剤をγ-ブチロラクトンのみとしたこと以外は、実施例1と同様にして製膜し、比較例3の中空糸膜を得た。得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表1示す。得られた多孔質中空糸膜は、球晶構造を有していた。また、フラックスは低く、連通性の低い膜であった。
得られた中空糸膜を用いてろ過工程を実施した。処理液には実施例1と同じく鴇ヤマ・ソーヴィニヨンの赤ワインを使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の赤ワインの吸光度を測定したところ、ろ過前後の吸光度の比率は以下の表2に示す通り、420nmにおいて0.68、520nmにおいて0.68、620nmにおいて0.67となった。また、ろ過前後の色彩強度の比率は0.68となった。 また、実液ろ過時の透水性能保持率は30%であり、NaOH浸漬後伸度保持率は30%であり、NaOH浸漬後透水量保持率は160%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率は20%であり、そして10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率は180%であった。
また、前記(4)実液ろ過時の透水性能保持率の測定において、透過水の塩素濃度が0.1ppm以下、かつ、pHが8.6以下になった時点で水洗を終了したときのリンスの水量は150(L/m)であった。
【0051】
[比較例4]
溶剤をDOAのみとした以外は、実施例3と同様にして製膜し、比較例4の中空糸膜を得た。得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表1示す。得られた多孔質中空糸膜は、球晶構造を有していた。また、フラックスは低く、連通性の低い膜であった。
得られた中空糸膜を用いてろ過工程を実施した。処理液には実施例1と同じく鴇ヤマ・ソーヴィニヨンの赤ワインを使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の赤ワインの吸光度を測定したところ、ろ過前後の吸光度の比率は以下の表2に示す通り、420nmにおいて0.61、520nmにおいて0.60、620nmにおいて0.57となった。また、ろ過前後の色彩強度の比率は0.6となった。
【0052】
[実施例4]
中空糸膜の成膜条件は実施例1と同じ条件で実施した。得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表3に示す。処理液には複数の種類をブレンドした濃縮果汁を発酵した直後の赤ワインを原液として使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の各種分析結果を以下の表4に示す。
【0053】
[比較例5]
ろ過方法は比較例1と同じく珪藻土ろ過を選択した。処理液には実施例4と同じ原液を使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の各種分析結果を以下の表2に示す。
【0054】
[実施例5]
中空糸膜の成膜条件は実施例1と同じ条件で実施した。得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表3に示す。処理液にはリースリング・フォルテ種の無ろ過白ワイン(朝日町ワイン)を原液として使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の各種分析結果を以下の表4に示す。
【0055】
[比較例6]
ろ過方法は比較例1と同じく珪藻土ろ過を選択した。処理液には実施例5と同じ原液を使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の各種分析結果を以下の表4に示す。
【0056】
[実施例6]
中空糸膜の成膜条件は実施例1と同じ条件で実施した。得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表3に示す。処理液には青森県産りんごを使用した無ろ過シードル(弘前シードル工房)を原液として使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の各種分析結果を以下の表4に示す。
【0057】
[比較例7]
ろ過方法は比較例1と同じく珪藻土ろ過を選択した。処理液には実施例6と同じ原液を使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の各種分析結果を以下の表4に示す。
【0058】
[実施例7]
中空糸膜の成膜条件は実施例1と同じ条件で実施した。得られた多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種物性を以下の表3に示す。処理液には杏露酒(キリンビバレッジ)を原液として使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の各種分析結果を以下の表4に示す。
【0059】
[比較例8]
ろ過方法は比較例1と同じく珪藻土ろ過を選択した。処理液には実施例7と同じ原液を使用した。ろ過実験方法は実施例1と同様の仕様にて実施した。ろ過工程前後の各種分析結果を以下の表4に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
以上の結果から、連通性が良好な膜は、ろ過性能、色度成分の透過性、薬液耐性に優れ、かつ、高寿命であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る果実酒の製造方法におけるろ過・清澄化工程は、多孔質ろ過膜の(被処理液側である膜の内側からろ液側である膜の外側に至る細孔の連通性が良好な膜を使用するため、ろ過前後の果実酒の色度の低下が小さく、澱成分の除去率が高く、さらに、洗浄工程で使用する洗浄液(薬液)として、50℃~90℃の湯、及び/又は0.05重量%以上0.5重量%以下の次亜塩素酸ナトリウム若しくは0.4重量%以上4重量%以下の水酸化ナトリウムを含有する水溶液を使用した場合であっても、膜の劣化を最小限に抑えることができる。それゆえ、本発明に係る果実酒の製造方法は、ろ過性能、薬液耐性に優れ、かつ、高寿命の方法である。
図1
図2
図3
図4
図5