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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】架台
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/28 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
B29C55/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019068918
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163805
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】303050355
【氏名又は名称】住友重機械モダン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 靖彦
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-174637(JP,A)
【文献】実開平2-003816(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台であって、
床架構と複数の柱を組み合わせた本体架構と、
前記本体架構の柱梁構面に接続される補強架構と、を備え、
前記補強架構は、前記柱梁構面において柱の高さ方向の中間部に接続されるブレースと、前記柱のブレース接続部に接続される補強梁と、を有し、
記本体架構は、少なくとも一つの階層に作業スペースが設けられる主架構部と、前記主架構部を回転可能に支持する支持架構部と、を備え、
前記補強架構には、前記主架構部の柱梁構面に接続される第1補強架構が含まれる架台。
【請求項2】
前記支持架構部は、前記主架構部を回転可能に下側から支持し、
前記第1補強架構は、前記主架構部の最下階層の柱梁構面に接続される請求項に記載の架台。
【請求項3】
インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台であって、
床架構と複数の柱を組み合わせた本体架構と、
前記本体架構の柱梁構面に接続される補強架構と、を備え、
前記補強架構は、前記柱梁構面において柱の高さ方向の中間部に接続されるブレースと、前記柱のブレース接続部に接続される補強梁と、を有し、
記本体架構は、少なくとも一つの階層に作業スペースが設けられる主架構部と、前記主架構部を回転可能に支持する支持架構部と、を備え、
前記補強架構には、前記支持架構部の柱梁構面に接続される第2補強架構が含まれる架台。
【請求項4】
インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台であって、
床架構と複数の柱を組み合わせた本体架構と、
前記本体架構の柱梁構面に接続される補強架構と、を備え、
前記補強架構は、前記柱梁構面において柱の高さ方向の中間部に接続されるブレースと、前記柱のブレース接続部に接続される補強梁と、を有し、
記本体架構は、主架構部と、前記主架構部の側部に接続される副架構部とを備え、
前記主架構部には、最下階層より上側の階層に第1作業スペースが設けられ、
前記副架構部には、最下階層より上側の階層で第1作業スペースと同じ高さにある階層に第2作業スペースが設けられ、
前記主架構部には、前記上側の階層の柱梁構面にブレースが接続され、
前記ブレースは、前記第1作業スペースと前記第2作業スペースの間の柱梁構面とは別の柱梁構面の内側に配置される架台。
【請求項5】
前記副架構部の最下階層の柱梁構面の内側には、前記主架構部と共通の柱梁構面の他には、前記補強架構及びブレースが配置されない請求項4に記載の架台。
【請求項6】
前記補強架構の下方には、前記補強架構が接続される柱梁構面の内側に通行スペースが設けられる請求項1から5のいずれか1項に記載の架台。
【請求項7】
前記本体架構には、屋上階より下側の階層に階空間が設けられ、
前記補強架構は、前記階空間の少なくとも一部を全周に亘って取り囲むように複数の柱梁構面に個別に接続される請求項1から6のいずれか1項に記載の架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インフレーション法によりインフレーションフィルム(以下、単にフィルムともいう)を製造する製造設備に用いられる架台が記載されている。この架台は、床架構と複数の柱を用いて構成される本体架構を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平02-3816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台に関して検討を進めた。この結果、架台の床架構上で作業者が作業する場合に、架台が大きく振動するケースがあるとの新たな知見を得た。本発明者は、この架台の振動対策ととともに軽量化を図るうえで、従来技術に改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本発明のある態様は、こうした状況に鑑みてなされ、その目的の1つは、インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台に関して、振動対策と軽量化を図れる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本発明のある態様は、インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台であって、床架構と複数の柱を組み合わせた本体架構と、前記本体架構の柱梁構面に接続される補強架構と、を備え、前記補強架構は、前記柱梁構面において柱の高さ方向の中間部に接続されるブレースと、前記柱のブレース接続部に接続される補強梁と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台に関して、振動対策と軽量化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の製造設備を模式的に示す構成図である。
図2】第1実施形態の架台の正面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5】第1実施形態の支持架構部の平面図である。
図6図2の第1補強架構の拡大図である。
図7図2の第2補強架構の拡大図である。
図8】第2実施形態の製造設備を模式的に示す構成図である。
図9】第2実施形態の架台の正面図である。
図10図9のX-X断面図である。
図11図9のXI-XI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、その寸法を適宜拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0010】
本明細書で言及する構造や形状には、言及している構造や形状に厳密に一致するもののみでなく、寸法誤差や製造誤差等の誤差の分だけずれたものも含まれる。本明細書での「接続」、「設置」とは、特に明示がない限り、言及している条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も含む。
【0011】
まず、本発明を想到するに至った背景から説明する。従来、インフレーションフィルムの製造設備に用いられる架台の振動対策を図るうえで、架台の単純な高剛性化を目的として、架台を構成する骨組材の断面の大型化や厚肉化をしていた。また、従来、この振動対策を図るうえで、その振動の原因に関して何ら検討がなされていなかった。
【0012】
本発明者は、この振動の原因に関して解析的手法を用いて検討を進めた。この結果、架台の床架構上での作業者の歩行により架台に振動が入力されたとき、架台が共振することが振動の原因であるとの新たな知見を得た。
【0013】
架台の共振を防ぐうえで、架台の固有振動数は、作業者の歩行により入力される振動の振動数(以下、歩行振動数という)の範囲外に設定することが好ましい。このように架台の固有振動数を設定するうえで、構造設計上、架台の固有振動数を歩行振動数より増大させることになる。このように架台の固有振動数を増大させるうえでは、たとえば、前述のように、骨組材の断面の大型化や厚肉化が考えられる。しかしながら、この手段を採用した場合、架台の大幅な重量化を招き、製品コストの増大を招いてしまう。
【0014】
本発明者は、振動対策と軽量化を図るため、解析的手法を用いて更に検討を進めた。この結果、まず第一には、架台の本体架構の柱梁構面において柱にブレースを接続することが有効であり、このブレースにより架台の固有振動数の効果的な増大を図れるという知見を得た。
【0015】
また、本発明者は、架台の固有振動数の増大にブレースを用いた場合、そのブレースが柱の断面の小型化や薄肉化の妨げになるという認識を得た。詳述する。本体架構の柱梁構面において柱の高さ方向の中間部でブレースを接続した場合を考える。この場合、架台に振動が入力されたとき、ブレースが突っ張ることで、柱のブレース接続部に大荷重が付与される恐れがある。この大荷重に抵抗するうえでは、ブレースが接続された柱の断面の大型化や厚肉化を要してしまい、そのブレースが柱の断面の小型化や薄肉化の妨げになってしまう。
【0016】
本発明者は、この問題をふまえて振動対策と軽量化を図るうえで、第二には、柱のブレース接続部に補強梁を接続することが有効であるとの知見を得た。この補強梁により柱のブレース接続部に付与される大荷重を分散でき、柱の断面の小型化や薄肉化をしても、その撓み変形を効果的に抑えられる。
【0017】
以上の構成により、本体架構の骨組材の断面の小型化や薄肉化を図ったとしても、ブレースにより架台の固有振動数を効果的に増大できるうえ、ブレースが接続された柱の変形を補強梁により抑えられる。この結果、架台に振動が入力された場合の架台の共振や柱の変形を抑えることで振動対策を図りつつ、本体架構の骨組材の断面の小型化や薄肉化により架台の軽量化も図れる。
【0018】
以上のブレースや補強梁を備える補強架構を本体架構の柱梁構面に接続した場合、その柱梁構面の内側には補強架構の下方にスペースを確保できる。本実施形態では、このスペースを作業者等の通行スペースとして利用することで、製造設備を用いる場合の作業性を確保している。以下、このような背景のもとでなされた本発明の実施形態の一例を説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1を参照する。架台10は、インフレーションフィルムの製造設備12に用いられる。製造設備12は、溶融樹脂を押し出す押出機14と、押出機14から押し出された溶融樹脂を上向きに押し出すことでチューブ状のフィルムFを成形するダイ16と、を備える。製造設備12は、更に、チューブ状のフィルムFに空気を吹き付けてフィルムFを固化させるエアーリング18と、チューブ状のフィルムFを引き取る引取機20と、引取機20から繰り出されるフィルムFを巻き取る巻取器22と、を備える。製造設備12は、更に、フィルムFを案内することで引取機20から巻取器22にフィルムFを搬送する複数の搬送ロール24を備える。本実施形態の製造設備12は、この他に、フィルムFを検査する検査装置26と、フィルムFの蛇行を自動的に修正する自動蛇行修正装置28を備える。
【0020】
本実施形態の製造設備12は、フィルムFの搬送経路において引取機20より下流側に設けられ、フィルムFを二つに切り開く切り開き装置30を備える。切り開き装置30により切り開かれた二つのフィルムFは、個別の搬送経路を辿るように搬送ロール24により案内され、個別の巻取器22により巻き取られる。巻取器22によりフィルムFを巻き取ることでフィルム製品としてのロールRが構成される。
【0021】
図2を参照する。架台10は、製造設備12の他の構成要素を支持する。架台10は、床架構32と複数の柱34を組み合わせた本体架構36を備える。本体架構36は、床スラブ等の建物の床38(以下、建物床38という)に下側から支持される。
【0022】
本実施形態の本体架構36は、主架構部40と、主架構部40を下側から支持する支持架構部42とを備える。支持架構部42は建物床38上に配置される。支持架構部42の天面部には旋回軸受やモータが組み込まれた旋回機構44が搭載され、支持架構部42は旋回機構44を介して主架構部40を回転可能に支持する。主架構部40は、旋回機構44のモータの駆動により回転可能である。
【0023】
主架構部40には、屋上階層から最下階層にかけて複数の階層、本実施形態では、三つの階層が設けられる。支持架構部42には地上階層Gfが設けられる。本実施形態の本体架構36には、主架構部40の三つの階層と支持架構部42の地上階層との計四つの階層が設けられることになる。ここでの「地上階層Gf」とは、架台10の周囲の建物床38との間で行き来できる階層をいう。
【0024】
主架構部40には、少なくとも一つの階層に作業スペース46が設けられる。本実施形態では、主架構部40の全ての階層に作業スペース46が設けられる。本実施形態では、支持架構部42の地上階層Gfにも作業スペース46が設けられる。この作業スペース46は、製造設備12を用いた作業者の作業に供するスペースをいう。
【0025】
主架構部40は、複数の第1床架構32Aと、屋上階層より下側の各階層に設けられる複数の第1柱34Aとを有する。本明細書では、共通する複数の構成要素(ここでは床架構や柱)を区別するときは末尾に「A、B・・・」を付し、区別せずに総称するときはこれを省略する。
【0026】
主架構部40の上下に隣り合う第1床架構32Aには、それらの間を行き来するための階段48(図1参照)が設置される。第1床架構32Aの上面には作業者が歩行可能な縞鋼板等の床材(不図示)が設置される。作業スペース46は、この床面上に設けられる。この床材上を作業者が歩行することで主架構部40に振動が加えられる。複数の第1柱34Aは、自らが属する階層の上側の第1床架構32Aと、その第1床架構32Aに対して下側に隣り合う第1床架構32Aとを接続する。
【0027】
支持架構部42は、第2床架構32Bと、第2床架構32Bの下方に設けられる複数の第2柱34Bとを有する。第2床架構32Bは支持架構部42の天面部を構成する。第2柱34Bは、第2床架構32Bと建物床38を接続し、第2床架構32Bを支持している。支持架構部42には第2床架構32Bと建物床38の間に地上階層Gfが設けられる。
【0028】
本体架構36には、屋上階より下側の階層に階空間50が設けられる。本実施形態では、主架構部40の屋上階以外の計2つの各階層と支持架構部42の地上階層Gfとに階空間50が設けられる。階空間50は、その階空間50が属する階層の天井面と床面の間に設けられる。この「天井面」とは、その階空間50の上側の床架構32の下面をいい、「床面」とは、その階空間50の下側の床架構32の上面又は建物床38の上面をいう。
【0029】
図3図4図5を参照する。床架構32は、複数の梁52を格子状に組んで構成される。床架構32を構成する梁52には、床架構32の外周部を構成する外梁52Aと、外梁52Aの内周側に配置される内梁52Bとが含まれる。床架構32には、製造設備12において搬送されるフィルムFが挿通されるフィルム挿通部54が設けられる。フィルム挿通部54は、床架構32を構成する複数の内梁52Bがなす開口部により構成される。フィルム挿通部54は、主架構部40の複数の第1床架構32Aのそれぞれと、支持架構部42の第2床架構32Bとに個別に設けられる。複数の第1床架構32Aや第2床架構32Bのフィルム挿通部54は上下方向で重なる位置に設けられる(図2参照)。これにより、建物床38から主架構部40の上階層(本例では屋上階層)に向けて、各床架構32のフィルム挿通部54を通してフィルムFを搬送可能となる。
【0030】
本実施形態の主架構部40の外周部は、平面視において、多角形状(本例では八角形状)をなす複数の柱梁構面により構成される。本実施形態の支持架構部42の外周部も、平面視において、多角形状(本例では四角形状)をなす複数の柱梁構面により構成される。ここでの柱梁構面とは、同じ階層に設けられる隣り合う柱34と床架構32の梁52が構成する骨組構造をいう。
【0031】
図1を参照する。本実施形態の製造設備12の構成要素の一部は架台10の主架構部40に設置される。この「構成要素の一部」には、引取機20、巻取器22、搬送ロール24、検査装置26、自動蛇行修正装置28等が含まれる。巻取器22は、主架構部40の最下階層に設置される。フィルムFは、複数の搬送ロール24によって、主架構部40の上階層(本例では屋上階層)から最下階層までの各階層を順々に経由するように搬送される。
【0032】
本実施形態において、主架構部40の側方には建物に設置される足場56が配置される。本実施形態においては、二つのフィルムFの搬送経路のそれぞれに対応する二つの足場56が配置される。足場56は、主架構部40の最下階層の第1床架構32Aとの間で作業者や自動搬送台車58等の通行物の行き来を可能にするためのものである。巻取器22によりフィルムFを巻き取ることで得たロールRは、主架構部40の第1床架構32Aから足場56を経由して外部に搬出される。
【0033】
図6図7を参照する。本実施形態の架台10は、前述の通り、本体架構36の柱梁構面に接続される補強架構60を備える点に特徴がある。本実施形態の補強架構60には、主架構部40の柱梁構面に接続される第1補強架構60Aと、支持架構部42の柱梁構面に接続される第2補強架構60Bと、が含まれる。
【0034】
補強架構60は、柱梁構面において柱34の高さ方向(鉛直方向)の中間部に接続されるブレース62と、柱34に対するブレース62の接続箇所となる柱34のブレース接続部64に接続される補強梁66とを有する。ブレース62は、補強架構60が接続される柱梁構面のせん断変形を拘束するためのものである。ブレース62は、柱34に対して斜めに配置される。ブレース62の一端部は、柱34のブレース接続部64に接続され、その他端部は、その柱梁構面の梁52に少なくとも接続される。ブレース62は、ボルト等を用いて柱34や梁52にガセットプレート等の継手部材68を介して又は直接に接続される。
【0035】
補強梁66は、ブレース62の下方に配置される。本実施形態の補強梁66の両端部は、柱梁構面を構成する隣り合う柱34のブレース接続部64に接続される。補強架構60の設けられる階層の天井面を形成する床架構32と、その階層の隣り合う柱34と補強梁66は、ブレース62が内側に配置されるブレース構面70を構成する。
【0036】
第1補強架構60Aは、複数(本例では二つ)の第1ブレース62Aを備える。本実施形態において、第1ブレース62Aは、ブレース構面70の対角上の一対の柱梁接続部に接続される。このブレース構面70の上側の柱梁接続部は、ブレース構面70の上側の内隅部に設けられる。ブレース構面70の下側の柱梁接続部とは前述の柱34のブレース接続部64が構成する。本実施形態の複数の第1ブレース62Aは、ブレース構面70の第1対角上の一対の柱梁接続部に接続されるとともに、第1対角とは異なる第2対角上の一対の柱梁接続部に接続され、全体としてX字状をなすように配置される。
【0037】
第2補強架構60Bは、複数(本例では二つ)の第2ブレース62Bを備える。二つの第2ブレース62Bの一端部は、柱34のブレース接続部64に接続され、その他端部は梁52の共通のブレース接続部72に接続される。これにより、二つの第2ブレース62Bが接続される第2床架構32Bの梁52の撓み変形を効果的に抑えられる。
【0038】
補強架構60の下方には、補強架構60が接続される柱梁構面の内側に通行スペース74が設けられる。通行スペース74は、補強架構60と、補強架構60が設けられる階層の下側の床架構32又は建物床38との間に設けられる。
【0039】
通行スペース74には、第1補強架構60Aの下方にて主架構部40の柱梁構面の内側に設けられる第1通行スペース74Aと、第2補強架構60Bの下方にて支持架構部42の柱梁構面の内側に設けられる第2通行スペース74Bとが含まれる。
【0040】
通行スペース74の高さは、通行スペース74の内側を通行物が通行可能な大きさに設定される。本実施形態において、第1通行スペース74Aに対応する通行物は、主架構部40の最下階層の第1床架構32Aと足場56の間を行き来する台車58(図1参照)である。本実施形態において、第2通行スペース74Bに対応する通行物は建物床38を歩行する作業者である。
【0041】
図3を参照する。本図では、補強梁66の中心線(二点鎖線)を用いて第1補強架構60Aの位置を示す。第1補強架構60Aは、第1補強架構60Aが属する階層の階空間50の少なくとも一部を全周に亘って取り囲むように複数の柱梁構面に個別に接続される。本実施形態の第1補強架構60Aは、この条件を満たすように、主架構部40の外周部に設けられる多角形状をなす複数の柱梁構面に個別に接続される。本実施形態の第1補強架構60Aは、この条件を満たすように、主架構部40の最下階層の複数の柱梁構面に個別に接続される。本実施形態においては、図示しないが、全ての第1補強架構60Aの補強梁66は高さ方向の位置が揃うように配置される。本実施形態においては、図示はしないが、全ての第1補強架構60Aの下方に第1通行スペース74Aが設けられる。
【0042】
図5を参照する。本図では、補強梁66の中心線(二点鎖線)を用いて第2補強架構60Bの位置を示す。第2補強架構60Bは、第2補強架構60Bが属する階層(地上階層Gf)の階空間50の少なくとも一部を全周に亘って取り囲むように複数の柱梁構面に個別に接続される。本実施形態の第2補強架構60Bは、この条件を満たすように、支持架構部42の外周部に設けられる多角形状をなす複数の柱梁構面に個別に接続される。本実施形態においては、図示しないが、全ての第2補強架構60Bの補強梁66は高さ方向の位置が揃うように配置される。本実施形態においては、図示はしないが、全ての第2補強架構60Bの下方に第2通行スペース74Bが設けられる。
【0043】
以上の架台10の効果を説明する。
【0044】
(A)本体架構36の柱梁構面には、前述のブレース62と補強梁66を有する補強架構60が接続される。よって、前述の通り、振動対策と軽量化を図れる。
【0045】
(B)補強架構60の下方には通行スペース74が設けられる。よって、補強架構60を用いて振動対策や軽量化を図りつつも、補強架構60が通行物の通行の妨げとなり難くなり、製造設備12を用いる場合に良好な作業性を確保できる。
【0046】
(C)補強架構60は、本体架構36の階空間50の少なくとも一部を全周に亘って取り囲むように複数の柱梁構面に接続される。これにより、作業者の歩行等により架台10の本体架構36に振動が入力されたとき、その平面視での振動の入力方向によらず、架台の共振を効果的に防げるようになる。これは、前述の架台の共振を防ぐために行った解析的手法による検討の結果として得られたものである。
【0047】
補強架構60には、支持架構部42により回転可能に支持される主架構部40の柱梁構面に接続される第1補強架構60Aが含まれる。この主架構部40は、建物床38に直接に支持されておらず、建物床38に直接に支持される場合と比べて振動し易い状況にある。このような前提のもとでも、主架構部40の振動を第1補強架構60Aにより効果的に防げる。
【0048】
第1補強架構60Aは、主架構部40の最下階層の柱梁構面に設けられる。この階層の主架構部40の振動を第1補強架構60Aにより防ぐことで、主架構部40の他の階層の振動による振幅を小さくでき、主架構部40全体の振動を効果的に防げる。
【0049】
なお、前述した作業者の歩行により架台に入力される振動の振動数(歩行振動数)は、通常、1.6Hz~2.2Hzの範囲内となる。架台10は、この歩行振動数として想定される振動数範囲を超えた2.5Hz以上の固有振動数となるように構成される。これは、本体架構36や補強架構60を構成する骨組材の断面積や、補強架構60や他のブレースの配置位置又は数を調整することで実現される。ここでの「骨組材」には、柱、梁、ブレースが含まれる。これにより、床架構上での作業者の歩行により架台に振動が入力されたときでも、その振動に起因する架台の共振を効果的に防げる。
【0050】
図5図7を参照する。本体架構36の支持架構部42は、複数の内梁52Bの接続部82と第2柱34Bを接続する第3ブレース84を備える。第3ブレース84は、平面視において、第2柱34Bに対して最も近い位置にある複数の内梁52Bの接続部82であって、複数の梁52がなす構面で第2柱34Bと対角上にある接続部82に接続される。第3ブレース84は、複数の第2柱34Bのそれぞれに対応して個別に設けられる。これにより、第3ブレース84が接続される第2床架構32B全体の撓み変形を効果的に抑えられる。
【0051】
(第2の実施の形態)
図8を参照する。第2実施形態の製造設備12は、第1実施形態の構成の他に、フィルムFに表面処理を施す表面処理装置76を備える。
【0052】
図9を参照する。第2実施形態の架台10は、第1実施形態と比べて、本体架構36の構成が主に相違する。本体架構36は、主架構部40と、主架構部40の側部に接続される副架構部78とを備える。本実施形態の主架構部40と副架構部78のそれぞれは建物床38上に配置される。
【0053】
主架構部40には、屋上階層から最下階層にかけて複数の階層、本実施形態では、五つの階層が設けられる。副架構部78には、屋上階層から最下階層にかけて複数の階層、本実施形態では、四つの階層が設けられる。本実施形態において、副架構部78の階層数は主架構部40の階層数より1つだけ少なくなるように設定される。主架構部40の最下階層と副架構部78の最下階層は地上階層Gfとなる。
【0054】
主架構部40には、屋上階層より1つ下側の階層から最下階層より上側の階層、詳しくは、第2階層~第4階層に第1作業スペース46Aが設けられる。副架構部78には、屋上階層から最下階層より上側の階層、詳しくは、第2階層~第4階層に第2作業スペース46Bが設けられる。副架構部78には、最下階層より上側の階層で、第1作業スペース46Aと同じ高さにある第2階層~第4階層に第2作業スペース46Bが設けられることになる。本実施形態では、主架構部40や副架構部78の地上階層Gfにも作業スペース46が設けられる。
【0055】
主架構部40は、第1実施形態と同様、複数の第1床架構32Aと、屋上階層より下側の各階層に設けられる複数の第1柱34Aとを有する。複数の第1柱34Aは、自らが属する階層の上側の第1床架構32Aと、その第1床架構32Aに対して下側に隣り合う第1床架構32A又は建物床38とを接続する。
【0056】
副架構部78は、複数の第3床架構32Cと、屋上階層より下側の各階層に設けられる複数の第3柱34Cとを有する。第3床架構32Cの上面にも作業者が歩行可能な縞鋼板等の床材(不図示)が設置される。第2作業スペース46Bは、この床面上に設けられる。複数の第3柱34Cは、自らが属する階層の上側の第3床架構32Cと、その第3床架構32Cに対して下側に隣り合う第3床架構32C又は建物床38とを接続する。
【0057】
図9図11を参照する。図10では、第2階層の床架構32と第1階層の構造のみを示し、図11では、第3階層の床架構32と第2階層の構造のみを示す。第1床架構32Aには、フィルムFが挿通されるフィルム挿通部54が設けられる。本実施形態では屋上階層の床面となる第1床架構32A以外の各階層の第1床架構32Aにフィルム挿通部54が設けられる。これにより、建物床38から主架構部40の上層階(本例では屋上階層より1つ下側の階層)に向けて、各床架構32のフィルム挿通部54を通してフィルムFを搬送可能となる。
【0058】
本実施形態の主架構部40の外周部は、平面視において、多角形状(詳しくは四角形状)をなす複数の柱梁構面により構成される。本実施形態の副架構部78の外周部は、平面視において、主架構部40がなす多角形状の一辺と共通する辺を持つ多角形状(詳しくは四角形状)をなす柱梁構面により構成される。
【0059】
主架構部40と副架構部78は互いに共通する柱34と梁52が構成する共通柱梁構面80を備える。図10図11では共通柱梁構面80のある範囲を一点鎖線で示す。地上階層Gfより上階の階層にある共通柱梁構面80には、本体架構36の外周部に設けられる外柱34Dの他に、その外周部の内側に設けられる内柱34Eが含まれる(図11参照)。地上階層Gfにある共通柱梁構面80には、外柱34Dのみが含まれ、内柱34Eは含まれない(図10参照)。
【0060】
図8を参照する。本実施形態の製造設備12の構成要素の一部は架台10の主架構部40や副架構部78に設置される。この「構成要素の一部」には、引取機20、搬送ロール24、自動蛇行修正装置28、表面処理装置76等が含まれる。巻取器22は、建物床38に設置される。フィルムFは、複数の搬送ロール24によって、主架構部40の上層階(詳しくは屋上階層の一つ下側の階層)を経由したうえで、副架構部78の上層階(詳しくは屋上階層)から下階側の階層を順々に経由するように搬送される。
【0061】
図9を参照する。本実施形態の架台10も、第1実施形態と同様、本体架構36の主架構部40の柱梁構面に接続される第1補強架構60Aを備える。第1補強架構60Aは、二つの第1ブレース62Aを備える。二つの第1ブレース62Aの一端部は、柱34のブレース接続部64に接続され、その他端部は梁52の共通のブレース接続部72に接続される。第1補強架構60Aの下方には第1通行スペース74Aが設けられる。第1通行スペース74Aに対応する通行物は作業者であり、その高さは作業者が通行可能な大きさに設定される。
【0062】
図10を参照する。本図では、補強梁66の中心線(二点鎖線)を用いて第1補強架構60Aの位置を示す。第1補強架構60Aは、第1補強架構60Aが属する階層の階空間50の少なくとも一部を全周に亘って取り囲むように複数の柱梁構面に個別に接続される。本実施形態の第1補強架構60Aは、この条件を満たすように、主架構部40の外周部に設けられる多角形状をなす複数の柱梁構面に個別に接続される。本実施形態の第1補強架構60Aは、この条件を満たすように、主架構部40の最下階層の複数の柱梁構面に個別に接続される。なお、副架構部78の最下階層の柱梁構面の内側には、主架構部40と共通の柱梁構面の他には、第1補強架構60Aや他のブレースが配置されない。
【0063】
以上の構成によっても、第1実施形態の(A)~(C)で説明した事項と同様の効果を得られる。
【0064】
本実施形態の架台10の他の特徴を説明する。図9を参照する。主架構部40には、最下階層より上側の階層の柱梁構面に第4ブレース86が接続される。詳しくは、第2階層目と第3階層目の柱梁構面に第4ブレース86が接続される。一つの柱梁構面の内側には、二つの第4ブレース86が配置される。本実施形態において、二つの第4ブレース86の一端部は、柱梁構面の下側の柱梁接続部に接続され、他端部は梁52の共通のブレース接続部に接続される。
【0065】
図11を参照する。本図では、第4ブレース86の中心線(二点鎖線)を用いて第4ブレース86の位置を示す。第4ブレース86は、同じ階層にある第1作業スペース46Aと第2作業スペース46Bの間にある共通柱梁構面80とは別の柱梁構面の内側に配置される。本実施形態では、主架構部40の外周部を構成する四つの柱梁構面のうち、共通柱梁構面80とは別の三つの柱梁構面の内側に第4ブレース86が配置される。これにより、第1作業スペース46Aと第2作業スペース46Bを行き来するうえでブレース62が妨げとならず、製造設備12を用いる場合に良好な作業性を確保できる。
【0066】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。次に、各構成要素の変形例を説明する。
【0067】
製造設備12はインフレーション法によりインフレーションフィルムFを製造可能であればよく、その具体例は特に限られない。たとえば、製造設備12のダイ16は、溶融樹脂を上向きに押し出す例を説明したが、溶融樹脂を下向きに押し出すことでチューブ状のフィルムFを成形してもよい。
【0068】
補強架構60が設けられる本体架構36の階層は特に限られない。同じ階層内で補強架構60が設けられる数は特に限られない。
【0069】
第1実施形態の主架構部40と支持架構部42の両方に補強架構60が用いられる例を説明したが、それらの一方のみに補強架構60が用いられてもよい。
【0070】
第1実施形態の主架構部40の柱梁構面に接続される補強架構60の具体例は特に限られない。たとえば、主架構部40の柱梁構面には、第1補強架構60Aではなく第2補強架構60Bが接続されてもよいし、第1補強架構60Aと第2補強架構60Bの両方が接続されてもよい。
【0071】
第1実施形態の支持架構部42の柱梁構面に接続される補強架構60の具体例は特に限られない。たとえば、支持架構部42の柱梁構面には、第2補強架構60Bではなく第1補強架構60Aが接続されてもよいし、第1補強架構60Aと第2補強架構60Bの両方が接続されてもよい。
【0072】
第2実施形態の主架構部40の柱梁構面に接続される補強架構60の具体例は特に限られない。たとえば、主架構部40の柱梁構面には、第1実施形態の第1補強架構60Aが接続されてもよいし、第1実施形態の第1補強架構60Aと第2実施形態の第1補強架構60Aの両方が接続されてもよい。
【0073】
第2実施形態の最下階層より上側の階層の柱梁構面に接続される補強架構の具体例は特に限られない。たとえば、前述した第4ブレース86に代えて、第1実施形態の第1補強架構60A、第2補強架構60B及び第2実施形態の第1補強架構60Aの何れか一つ、又は、これらの組み合わせが接続されてもよい。
【0074】
補強梁66は、その両端部が隣り合う柱34それぞれのブレース接続部64に接続される例を説明したが、少なくとも一端部が柱34のブレース接続部64に接続されていればよい。これは、たとえば、柱梁構面に接続されるブレース62の数が一つの場合を想定している。
【0075】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との記載を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0076】
以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。たとえば、実施形態に対して変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形例に対して実施形態や他の変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…架台、12…製造設備、32…床架構、34…柱、36…本体架構、38…床、40…主架構部、42…支持架構部、46…作業スペース、46A…第1作業スペース、46B…第2作業スペース、50…階空間、52…梁、60…補強架構、60A…第1補強架構、60B…第2補強架構、62…ブレース、64…ブレース接続部、66…補強梁、72…ブレース接続部、74…通行スペース、78…副架構部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11