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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】圧力感知装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230329BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20230329BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/041 410
G06F3/044 129
H01L29/84 Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019101922
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2019220162
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】1809318.7
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516247225
【氏名又は名称】ケンブリッジ タッチ テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cambridge Touch Technologies Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】ルートレー、 ポール
(72)【発明者】
【氏名】ミッチ、 リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】バスターニ、 ババク
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン、 アロキア
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0179276(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107209590(CN,A)
【文献】特表2019-504407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0199624(US,A1)
【文献】特開2017-174447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0268782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01-3/04895
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルからの信号を処理する装置であって、
前記タッチパネルは、複数の感知電極と少なくとも1つの共通電極との間に配置された圧電材料層を備え、
前記装置は、前記複数の感知電極に接続され、かつ、複数の第1圧力信号を生成するように構成された第1回路を備え、
それぞれの前記第1圧力信号は、一又は複数の感知電極に対応しており、かつ、前記タッチパネルにおいて前記一又は複数の感知電極に近接する箇所に作用する圧力を示しており、
前記装置は、前記少なくとも1つの共通電極に接続され、かつ、前記タッチパネルに加えられた全圧力を示す第2圧力信号を生成するように構成された第2回路を備え、
前記装置は、前記第2圧力信号と前記複数の第1圧力信号との加重和に基づいて外部干渉信号を測定する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記外部干渉信号と予め較正された閾値とを比較し、前記予め較正された閾値以上の前記外部干渉信号に応じて干渉フラグを出力するように構成されており、
前記干渉フラグは、前記第1及び第2圧力信号が一又は複数の外部電界との結合により影響を受けたことを示すものである。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記制御装置は、前記タッチパネルに圧力が加えられた位置を特定し、かつ、
前記干渉フラグが設定されていることに応じて、一又は複数の外部電界への結合の前記影響を低減又は除去するように構成された信号後処理方法を使用して前記第1及び/又は第2圧力信号を処理するようにさらに構成されている。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
一又は複数の外部電界への結合の前記影響を低減又は除去するように構成された信号後処理方法を使用して前記第1及び/又は第2圧力信号を処理することは、前記位置に近接する一又は複数の感知電極を識別し、かつ、前記全圧力を測定するための計算から、前記識別された感知電極を除外することを含んでいる。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記制御装置は、前記除外されずに残っている感知電極に基づいて、前記タッチパネルにおいて前記一又は複数の除外された感知電極に近接している箇所に作用する一又は複数の圧力を推定するようにさらに構成される。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置であって、
前記第1回路は、各感知電極について、前記感知電極の静電容量を示す静電容量信号を生成するように構成されており、
前記制御装置は、前記タッチパネルに圧力が加えられる位置を前記静電容量信号に基づいて特定するように構成されている。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、
前記第1圧力信号及び前記静電容量信号を生成することは、前記感知電極から受信した単一の信号を分離することを含んでいる。
【請求項7】
タッチパネルシステムであって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の装置と、
複数の感知電極と少なくとも1つの共通電極との間に配置された圧電材料層を有するタッチパネルとを備える。
【請求項8】
請求項7に記載のタッチパネルシステムを備える電子機器。
【請求項9】
タッチパネルからの信号を処理する方法であって、
前記タッチパネルは、複数の感知電極と少なくとも1つの共通電極との間に配置された圧電材料層を備え、
前記方法は、
複数の第1圧力信号を生成するステップであって、各第1圧力信号は、一又は複数の感知電極から受信した信号に基づいており、かつ、各第1圧力信号は、前記タッチパネルにおいて前記一又は複数の感知電極に近接する箇所に作用する圧力を示すステップと、
前記少なくとも1つの共通電極から受信した信号に基づいて、前記タッチパネルに加えられた全圧力を示す第2圧力信号を生成するステップと、
前記第2圧力信号と前記複数の第1圧力信号との間の加重和に基づいて外部干渉信号を測定するステップと、
前記外部干渉信号を予め較正された閾値と比較し、前記外部干渉信号が前記予め較正された閾値以上であることに応じて、前記第1及び第2圧力信号が一又は複数の外部電界との結合によって影響されたことを示す干渉フラグを出力するステップとを含んでいる。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記タッチパネルに圧力が加えられる位置を特定するステップと、
前記干渉フラグが設定されていることに応じて、一又は複数の外部電界への結合の前記影響を低減又は除去するように構成された信号後処理方法を使用して前記第1及び/又は第2圧力信号を処理するステップとをさらに含む。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
一又は複数の外部電界への結合の前記影響を低減又は除去するように構成された信号後処理方法を使用して前記第1及び/又は第2圧力信号を処理するステップは、前記位置に近接した一又は複数の感知電極を識別し、前記全圧力を測定するための後続の計算から、前記識別した感知電極を除外することを含んでいる。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記除外されずに残っている感知電極に基づいて、前記タッチパネルにおいて前記一又は複数の除外された感知電極に近接している箇所に作用する一又は複数の圧力を推定するステップをさらに含んでいる。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項に記載の方法であって、
各感知電極から受信した信号に基づき、前記感知電極の静電容量を示す静電容量信号を生成するステップをさらに含み、
前記方法は、前記静電容量信号に基づいて前記タッチパネルに圧力が加えられる位置を特定するステップをさらに含んでいる。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記第1圧力信号及び前記静電容量信号を生成するステップは、前記感知電極から受信した単一の信号を分離することを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、感圧式タッチパネルからの信号を処理する装置及び方法、並びに、それら装置及び方法を用いたタッチパネルシステムに関する。
【背景】
【0002】
抵抗膜方式及び静電容量方式のタッチパネルは、コンピュータやモバイル機器の入力装置として使用される。投影型静電容量タッチパネルは、静電容量方式のタッチパネルの一種であってモバイル機器によく使用される。US2010/0079384A1には、投影型静電容量タッチパネルの一例が記載されている。
【0003】
投影型静電容量タッチパネルは、導電性である対象物に接近されることにより生じる電界の変化を感知し、これによって動作する。投影型静電容量タッチパネルがタッチされた位置は、しばしば静電容量センサのアレイ又はグリッドが用いられて特定される。投影型静電容量タッチパネルは、一般的にはシングルタッチ事象とマルチタッチ事象とを区別することができるが、それらは、圧力感知を行うことができないという欠点を有する。従って、投影型静電容量タッチパネルは、比較的軽いタップと比較的重いプレスとを区別することができない傾向にある。感圧タッチパネルは、タッチパネルとのユーザインタラクションに関してさらなる情報を提供することにより、ユーザーが新しい方法でデバイスと相互作用することを可能にすることができる。
【0004】
WO2016/102975A2には、単一の信号が増幅され、続いて圧力成分と静電容量成分とに分離される、静電容量結合型感圧装置及び方法が記載されている。WO2017/109455A1には、単一の信号を静電容量信号と増幅された圧力信号とに分離する、静電容量結合型感圧装置及び方法が記載されている。
【概要】
【0005】
本発明の第1態様によれば、タッチパネルからの信号を処理する装置が提供される。前記タッチパネルは、複数の感知電極と少なくとも1つの共通電極との間に配置された圧電材料層を含んでいる。前記装置は、前記複数の感知電極に接続される第1回路を含んでいる。前記第1回路は、複数の第1圧力信号を生成するように構成されている。各第1圧力信号は、一又は複数の感知電極に対応しており、かつ、前記タッチパネルにおいて前記一又は複数の感知電極に近接する箇所に作用する圧力を示している。前記装置は、前記少なくとも1つの共通電極に接続された第2回路も含んでいる。前記第2回路は、前記タッチパネルに加えられた全圧力を示す第2圧力信号を生成するように構成されている。前記装置は、前記第2圧力信号と前記複数の第1圧力信号との加重和に基づいて外部干渉信号を測定するように構成された制御装置も含んでいる。前記制御装置は、前記外部干渉信号と予め較正された閾値とを比較するようにも構成されている。前記制御装置は、前記予め較正された閾値より大きい又はそれと同等である前記外部干渉信号に応じ、前記第1及び第2圧力信号が一又は複数の外部電界との結合により影響を受けたことを示す干渉フラグを出力するようにも構成されている。
【0006】
各感知電極は、単一の第1圧力信号を提供するものであってもよい。
【0007】
前記制御装置は、さらに、前記タッチパネルに圧力が加えられた位置を特定するように構成されてもよい。設定されている前記干渉フラグに応じて、前記制御装置は、一又は複数の外部電界への結合の前記影響を低減又は除去するように構成された信号後処理方法を使用して、前記第1及び/又は第2圧力信号を処理するように構成されてもよい。
【0008】
一又は複数の外部電界との結合の前記影響を低減又は除去するように構成された信号後処理方法を使用した、前記第1及び/又は第2圧力信号の処理は、前記位置に近接する一又は複数の感知電極を特定すること、及び、前記特定された感知電極を、前記全圧力を測定する計算から除外することを含んでもよい。
【0009】
前記制御装置は、さらに、前記除外されずに残っている感知電極に基づき、前記タッチパネルにおいて前記一又は複数の除外された感知電極に近接する箇所に作用する一又は複数の圧力の推定を行うように構成されてもよい。
【0010】
前記第1回路は、各感知電極について、当該感知電極の静電容量を示す静電容量信号を生成するように構成されてもよい。前記制御装置は、前記タッチパネルに圧力が加えられた位置を前記静電容量信号に基づいて特定するように構成されてもよい。
【0011】
前記第1圧力信号及び前記静電容量信号を生成することは、前記感知電極から受信した単一の信号を分離することを含んでいてもよい。
【0012】
各第1圧力信号は、単一の感知電極に対応するものであってもよい。
【0013】
タッチパネルシステムは、前記装置とタッチパネルとを含んでおり、当該タッチパネルは、複数の感知電極と少なくとも1つの共通電極との間に配置された圧電材料層を含んでいてもよい。
【0014】
電子機器は、前記タッチパネルシステムを含んでもよい。
【0015】
本発明の第2態様によれば、タッチパネルからの信号を処理する方法が提供される。前記タッチパネルは、複数の感知電極と少なくとも1つの共通電極との間に配置された圧電材料層を含んでいる。前記方法は、複数の第1圧力信号を生成することを含んでいる。各第1圧力信号は、一又は複数の感知電極から受信した信号に基づいている。各第1圧力信号は、前記タッチパネルにおいて前記対応する一又は複数の感知電極に近接する箇所に作用する圧力を示している。前記方法は、前記少なくとも1つの共通電極から受信された信号に基づいて第2圧力信号を生成することも含んでおり、当該第2圧力信号は、前記タッチパネルに加えられた全圧力を示すものであってよい。前記方法は、前記第2圧力信号と前記複数の第1圧力信号との加重和に基づいて外部干渉信号を測定することを含んでいてもよい。前記方法は、前記外部干渉信号と予め較正された閾値とを比較することを含んでいてもよい。前記方法は、前記予め較正された閾値より大きい又はそれと同等な前記外部干渉信号に応じ、前記第1及び第2圧力信号が一又は複数の外部電界と結合して影響を受けたことを示す干渉フラグを出力することを含んでいてもよい。
【0016】
前記方法はまた、前記タッチパネルに圧力が加えられた位置を特定すること、及び、設定されている前記干渉フラグに応じて、一又は複数の外部電界との結合による前記影響を低減又は除去するように構成された信号後処理方法を用いて前記第1及び/又は第2圧力信号を処理することを含んでもよい。
【0017】
一又は複数の外部電界との結合の前記影響を低減又は除去するように構成された信号後処理方法を使用して前記第1及び/又は第2圧力信号を処理することは、前記位置に近接する一又は複数の感知電極を特定することを含み、全圧力を測定するために後続の計算から、前記特定された感知電極を除外することを含んでもよい。
【0018】
前記方法は、前記除外されずに残っている感知電極に基づき、前記タッチパネルにおいて前記一又は複数の除外された感知電極に近接する箇所に作用する一又は複数の圧力の推定を行うこと、を含むように構成されていてもよい。
【0019】
前記方法は、各感知電極から受信した信号に基づいて、前記感知電極の静電容量を示す静電容量信号を生成することを含んでいてもよい。前記方法は、前記静電容量信号に基づいて、前記タッチパネルにおける圧力が加えられた位置を特定することを含んでもよい。
【0020】
前記第1圧力信号及び前記静電容量信号を生成することは、前記感知電極から受信した単一の信号を分離することを含んでいてもよい。
【0021】
各第1圧力信号は、単一の感知電極に対応するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の特定の実施形態を例として説明する。
図1図1は、圧電センサの等価回路図である。
図2図2は、第1測定回路の回路図である。
図3図3は、第2測定回路の回路図である。
図4図4は、第3測定回路の回路図である。
図5図5は、第4測定回路の回路図である。
図6図6は、第5測定回路の回路図である。
図7図7は、圧電圧力測定用の第1タッチパネルの断面図である。
図8図8は、圧電圧力測定用の第1の装置を示している。
図9-10】図9及び図10は、圧電圧力測定値を得る方法を示している。
図11図11は、外部干渉源の存在下における実際と理想との圧力信号の潜在的な差を示している。
図12図12は、外部源からの干渉を低減又は除去するために測定された圧力信号を後処理する例を示している。
図13図13は、感知電極及び共通電極上の外部誘導電荷に対応する測定信号を示している。
図14図14は、感知電極及び共通電極上の圧電誘導電荷に対応する測定信号を示している。
図15図15は、圧電圧力測定用の第2の装置を示している。
図16A-16C】図16Aから16Cは、駆動信号に同期したアナログ・デジタル変換器を使用し、重なり合った静電容量及び圧電圧力の信号を分離することを示している。
図17図17は、圧電圧力測定用の電荷増幅器の構成の一例を示している。
図18図18は、圧電圧力測定用の第2タッチパネルの平面図である。
図19図19は、圧電圧力測定用の第3タッチパネルの平面図である。
図20】そして、図20は、圧電圧力測定用の第3の装置を示している。
【詳細な説明】
【0023】
以下の説明では、同一の部品は同一の参照符号によって示されている。
【0024】
状況によっては、さまざまな不要な信号が、ユーザーの指又は導電性のスタイラスを介して、圧電感圧タッチパネル又は静電容量結合型圧電感圧タッチパネルの感知電極に結合する場合がある。このような信号は、所望の圧電圧力信号と共に増幅される場合があり、圧電圧力信号と同程度又はそれより大きい振幅である場合がある。例えば、ユーザーの指は、圧電感圧タッチパネル又は静電容量結合型圧電感圧タッチパネルのセンサーの上に置かれると、感知電極に主電源干渉を結合する場合がある。そのうえで又はそのかわりに、ユーザーは静電気を帯びる可能性があり、この静電気は圧電感圧タッチパネル又は静電容量結合型圧電感圧タッチパネルの感知電極に結合する場合がある。このような不要な信号の影響を低減又は除去することを目的として、信号後処理方法を採用することができる。しかしながら、真の信号を除去又は低減することを回避するために、不要な信号の発生を検出できることが重要である。本明細書では、このような不要な干渉の存在及び/又は程度を簡単かつ確実に検出する方法について説明する。
【0025】
圧電センサは、低周波数で一般的に高い出力インピーダンスを有する二電極装置であり、これは、圧電センサを外部電界からの干渉を拾うことに対して脆弱にする場合がある。機械的歪みによって圧電センサの2つの電極に発生する所望の信号は互いに反対の極性である。これに対し、外部電界への結合による干渉は両方の電極で同じ極性になる。本明細書は、外部電界への結合に起因する干渉がより確実に検出され得るように、圧電材料層の両側に配置された電極からの信号を結合する方法及び装置を説明する。外部電界への結合に起因する干渉の存在を確実に検出すると、このような干渉を低減又は除去することを目的とした信号後処理方法を正確に適用することを可能にすることができる。
【0026】
圧電感知
図1を参照すると、圧電センサ1の等価回路が示されている。
【0027】
圧電センサ1は、コンデンサCpiezoに直列の電圧源Vpiezoとしてモデル化されてもよい。静電容量Cpiezoは第1及び第2の電極間の静電容量を表しており、これら第1及び第2電極は、これら第1及び第2電極の間に圧電材料が位置するように配置されている。電圧源Vpiezoは、圧電センサ1に力が加えられたときに静電容量Cpiezoをまたいで発生する開回路電圧を表す。
【0028】
図2も参照すると、測定回路2の第1の例が示されている。
【0029】
第1測定回路2は、圧電センサ1の両端に接続された入力を有するシングルエンド増幅器A1と、増幅器A1の出力及び反転入力の両端に抵抗器Rfb及びコンデンサCfbが並列に接続された形態である帰還回路とを含んでいる。実際には、第1測定回路2は、さらなる受動素子、帰還回路をリセットするためのスイッチなどを含んでいてもよい。使用される具体的な構成に応じて、第1測定回路2は、電圧、電流、電荷、又はそれらの組み合わせを測定してもよい
【0030】
図3も参照すると、測定回路3の第2の例が示されている。
【0031】
第2測定回路3は、シングルエンド増幅器A1の非反転入力が圧電センサ1の電極に接続されるのではなく接地されていることを除いて、第1測定回路と同じである。このようにして、第2測定回路3は、接地電位にある反転入力に流れる電流I1を測定する。第2測定回路のこの構成は、寄生した(parasitic)静電容量の影響を低減又は除去してもよい。理想的な状況では、測定された電流I1は誘導圧電電流信号Ipiezoに実質的に等しい、すなわちI1≒Ipiezoである。一般的には、第2測定回路3は、圧電センサ1の両端に誘導された電荷Qpiezoに対応する電荷信号を出力Vout1に提供するために、電流信号I1を積分するように構成される。つまり、Vout1は、圧電電荷Qpiezoと関数的に関連しており、同様に圧電センサ1に加えられる力と関数的に関連する。
【0032】
図4も参照すると、測定回路4の第3の例が示されている。
【0033】
第3測定回路4は、外部干渉電磁波源Vintへの静電容量結合を表す等価回路5を含むことを除いて、第2測定回路3と同じである。
【0034】
シングルエンド増幅器A1に関して起こり得る問題は、外部電界が増幅器の入力に電荷を誘導する場合があり、この電荷が圧電圧力信号として解釈される場合があることである。この問題は、圧電感圧タッチスクリーン又は静電容量タッチ結合型の圧電感圧タッチスクリーンの圧電力センサに生じる可能性がある。ユーザーの指又は導電性スタイラスは、測定され得る力を加えると、ガラス及び/又はプラスチックにより構成された一又は複数の薄層によって圧電力センサを形成する電極から、一般的には分離される。ユーザーの指又は導電性スタイラスは、圧電力センサを形成する電極に対して異なる電位にあってもよい。このような電位差は、例えば、静電気の帯電又は電気的性質を有する他電源への結合、例えば、主電源の電力供給によって引き起こされるピックアップによって生じる可能性がある。
【0035】
第3測定回路4では、干渉電磁波源Vintが1対の静電容量Cint1及びCint2を介して圧電センサ1の両電極に接続されている。よって、測定された信号I1は所望の圧電圧力信号Ipiezoと不要な干渉信号Iint1との重ね合わせであり、すなわちI1 = Ipiezo + Iint1である。測定された信号I1に干渉信号成分Iint1を含めることは、加えられた力を測定する際に誤差、例えば加えられた力の誤検出、及び/又は加えられた力の最小の確実に測定可能な増加分の増加を引き起こす場合がある。不要な干渉信号Iint1の影響を低減又は除去するために試験的に信号後処理方法が適用されてもよいが、このような後処理は、測定される信号 I1が知られている場合あるいは、測定された信号I1が不要な干渉信号Iint1に影響された可能性が高い場合にのみ、適用されるのが好ましいであろう。さもなければ、真の信号Ipiezo を低減又は除去してしまう場合がある。
【0036】
差動測定
圧電センサ1を構成する1対の第1電極と第2電極との間にある圧電材料の分極に応じて電流が誘導されると、この電流は、第1電極及び第2電極のそれぞれにおいて互いに反対の符号(sense)を有する。これに対し、外部源Vintによって誘導された干渉信号は、圧電センサ1を形成する第1及び第2電極に対して同じ符号を有する。外部電界への結合によって引き起こされる干渉の影響を低減するためには、差動測定を行うことが一法である。
【0037】
図5も参照すると、測定回路6の第4の例が示されている。
【0038】
第4測定回路6において、第1シングルエンド増幅器A1が第1測定電流I1を受け入れるために、第1シングルエンド増幅器A1の一方の入力が圧電センサ1の第1電極7に接続され、第1増幅器A1の他方の入力は接地される。同様に、第2シングルエンド増幅器A2が第2測定電流I2を受け入れるために、第2シングルエンド増幅器A2の一方の入力は圧電センサ1の第2電極8に接続され、第2増幅器A2の他方の入力は接地される。第3シングルエンド増幅器A3の一方の入力が第1増幅器A1の出力Vout1に接続され、第3シングルエンド増幅器A3の他方の入力が第2増幅器A2の出力Vout2に接続される。増幅器A1、A2、A3のそれぞれは、抵抗―静電容量型帰還回路Rfb1-Cfb1、Rfb2-Cfb2、Rfb3-Cfb3それぞれ有する。
【0039】
干渉源Vint は、第1静電容量Cint1によって第1電極7に静電容量接続され、かつ、第2静電容量Cint2によって第2電極8に静電容量接続されている。前述したように、電流Ipiezoは、第1及び第2電極7、8の間にある圧電材料の分極Pに応じて誘導されたものであり、端子7、8のそれぞれにおいて互いに反対の向き(sense)を有するのに対して、干渉信号Iint1、Iint2は、干渉源Vintによって誘導されたものであり、端子7、8のそれぞれについて同じ符号を有する。したがって、第1及び第2の測定された電流は以下のように近似されてもよい。
第3増幅器A3は差を得るために使用され、Iint1≒Iint2であるとき、第3増幅器A3の出力Voutは以下に関連する。
このように、圧電センサ1の両方の電極7、8から流れる電流を測定することによって、干渉源Vintの影響が低減又は除去されている圧電電流Ipiezoの大きさを測定することが可能となる。
【0040】
あるいは、例えば出力Vout1、Vout2のうちの1つを反転することによって、第1増幅器A1及び第2増幅器A2の出力が代わりに合計される場合、その時は第3増幅器A3の出力Voutが以下に関連する。
このようにして、合計された信号は圧電電流Ipiezoとはほぼ無関係である場合がある。これは直感に反するように見えるかもしれないが、本明細書の発明者らは、合計された信号I1+I2が外部干渉源Vintの有無の指標として役立ち得ることを認識している。よって、外部干渉源Vintの影響を低減するためにこのような後処理が必要とされるとき、合計された信号I1+I2が信号後処理適用のトリガーとして使用され得る。不要な後処理を回避すれば、際だって強い又は鋭い真の信号を不注意で低減又は除去する可能性を減らすことができる。これは、圧電式タッチパネルシステム又は静電容量結合型の圧電式タッチパネルシステムの信頼性及び感知性を向上させる効果を奏し得る。単純な2電極圧電センサ1に適用されても、合計された信号I1 + I2を得ることの有用性はすぐには明らかではないかもしれないが、以下に説明されるように、この方法は、より多数の感知電極を含む圧電タッチパネル10(図7)に適用されるときにより有用なものとなり得る。
【0041】
一般的な場合では、Cint1≠Cint2かつIint1≠Iint2であれば、重み付き差分を使用することができる。例えば、αが較正実験から決定されたスカラー定数である場合にIint1= αIint2であるならば、干渉源の影響Vintは、以下を得ることによって低減又は除去されてもよい。
これに対し、一般的な場合であっても、第1及び第2電極7、8で発生した圧電電流は、共に合計されることにより(例えば、測定誤差まで)実質的に互いに相殺し合うはずである。よって、測定された信号I1、I2が合計されたとき、圧電電流Ipiezoは(何らかの測定誤差を除いて)相殺されるべきであり、次の式を得る。
一般に、測定された信号I1、I2の差又は合計の取得は、アナログ信号レベルで具体的に構成された回路によって、あるいは、デジタル信号に変換した後に後処理することによって、実行され得る。例えば、第4測定回路6は、第1及び第2増幅器A1、A2の出力Vout1、Vout2の差を取得するように構成され、また別の構成では、前記合計は、第3増幅器A3を加算器(図示せず)で置き換えることによって取得されるものであってもよく、あるいは、第1及び第2増幅器A1、A2のいずれか1つの出力Vout1、Vout2を反転することによって取得されるものであってもよい。
【0042】
干渉コンデンサCint1、Cint2の絶対値を知っている必要はない。式(4)から、第2電極8に導入されたノイズに対する第1電極7に導入されたノイズの比αだけが必要であることが認められ得る。比αは、較正実験から得られるものであり、例えば、圧電センサ1へ何ら力が加わらない場合、すなわち、I1 = Iint1 かつ I2 = Iint2である場合において、システムに干渉信号Vintを模したテスト信号を故意に導入し、第1及び第2の測定された電流I1,I2の反応を記録することによって得られるものである。この情報は、補正比をα= I1/I2として定義するために使用され得る。
【0043】
実際には、前記補正は、第4測定回路6において、第1及び第2増幅器A1、A2の出力Vout1、Vout2の差を取得することによって実行され得る。この補正は、テスト信号に応じ、かつ、圧電センサ1に力が何ら加えられていないときに、出力Vout1、Vout2の比を得ることによって同様に較正され得る。もし較正から特定された比β=Vout1/Vout2がほぼ1ではない場合、重み付け差分Vout1-βVout2は、第1及び第2増幅器A1、A2の出力Vout1、Vout2と第3増幅器A3の各入力との間に適切なインピーダンスを挿入することによって得られ得る。あるいは、第3増幅器A3を省略してもよく、重み付き差分Vout1-βVout2をデジタル信号領域における処理により得てもよい。
【0044】
あるいは、合計された信号、例えばI1+I2又はVout1+Vout2が得られるとき、定数αは測定されなくてもよい。一又は複数の閾値Vthreshは、干渉源Vintが何ら存在しない場合の合計された信号Vout1+Vout2に対するものであって事前に較正されるべきものである。続いて、合計された信号Vout1+Vout2が較正された閾値Vthreshを超える場合には、干渉源Vintが測定された信号I1、I2に影響を及ぼしていることが強く示唆されている。
【0045】
図6も参照すると、測定回路9の第5の例が示されている。
【0046】
第5測定回路9において、差動増幅器DA1は一方の入力と他方の入力とを有しており、この一方の入力が第1電極7に接続され、この他方の入力が第2電極8に接続されている。干渉源Vintの影響の低減又は除去は、干渉静電容量Cint1、Cint2の比に従って第1帰還回路Rfb1、Cfb1及び第2帰還回路Rfb2、Cfb2の値を設定することにより、アナログ領域で実施されてもよい。例えば、Cfb1/Cfb2=Cint1/Cint2を選択することによる。このような選択は、前述した較正実験と同様の較正実験を通じ、かつ、例えば帰還静電容量Cfb1、Cfb2を提供するためにトリマコンデンサを使用することによって実行されてもよい。
【0047】
あるいは、合計信号を取得するために、第1及び第2電極7、8からの信号を加算器(図示せず)に入力してもよい。
【0048】
圧電圧力測定用タッチパネルにおける測定
前述の例では、第1および第2の電極7、8が実質的に同一の広がりを持ち、かつ単純な幾何学形状である場合がある圧電センサ1に関して測定が説明されている。このような構成によって比較的簡単に差動測定を行うことが可能になる。しかしながら、圧電圧力測定用又は静電容量結合型の圧電圧力測定用の実際のタッチパネルにおいて、第1電極7は、共通の第2電極8を共有する多くの電極のうちの1つであってもよい。さらに、いくつかの例では、第1電極7は、静電容量測定システムの受信側であるRx電極、及び/又は、静電容量測定システムの送信側であるTx電極としてさらに機能してもよい。このようなタッチパネルでは、第2電極8は共通対向電極であり、この共通対向電極は、多数の第1電極7それぞれよりも、わずかに大きい、あるいは、はるかに大きい総面積を有していてもよい。仮に別々の整合した対向電極を用いるとすれば、Rx電極及び/又はTx電極それぞれに結びついた同一対向電極は、一又は複数のさらなる導電性層パターン、及び、これに関連する電気的接続を必要とすることになる。よって、第4又は第5測定回路6、9に関して示されているような単純な差動測定は、実用的ではない、あるいは、望ましくない場合がある。
【0049】
差動測定の代わりに、本明細書には、圧電圧力測定用タッチパネルからの信号の合計測定値を取得して使用する方法が記載されており、この圧電圧力測定用タッチパネルは、少なくとも1つのパターン化されていない共通電極(第2電極8に対応しており、適宜、対向電極と呼ばれる)を含んでいる。本明細書の方法は、静電容量結合型の圧電圧力測定用タッチパネルに等しく適用可能である。合計された信号は、例えば、干渉源Vint、ユーザーの静電気帯電などによって誘導された不要な干渉信号の有無を検出するために使用されてもよい。本明細書の方法は、圧電圧力測定用又は静電容量結合型の圧電圧力測定用のタッチパネルであって、2つ以上の第2電極8を有しており、かつ、各第2電極8が2つ以上の第1電極7に対して共通しているタッチパネルにも適用可能(わずかな変形と共に)なものである。
【0050】
第1の装置
図7を参照すると、圧電圧力測定用又は静電容量結合型の圧電圧力測定用のタッチパネル10の第1の例が示されている。
【0051】
第1タッチパネル10は、第1の面12と第2の反対側の面13とを有する第1層構造11を含む。複数の第1感知電極14は、第1層構造11の第1の面12上に配置されている。第1感知電極14のそれぞれは、第1の方向xに延びており(すなわち、等価的に細長くなっている)、第1感知電極14同士は第2の方向yにおいて互いに離間する。共通電極15は、第1層構造11の第2の面13を実質的に覆うように配置されている。
【0052】
第1層構造11は一又は複数の層を含んでおり、当該層は少なくとも一つの圧電材料層16を含んでいる。第1層構造11に含まれる各層は、ほぼ平面状であり、厚さ方向zに対して垂直な第1の方向x及び第2の方向yに延びている。第1層構造11の各層の厚さ方向zが第1及び第2の面12、13に対してほぼ垂直になるように、第1層構造11の一又は複数の層が第1及び第2の面12、13の間に配置されている。
【0053】
第1タッチパネル10はまた、第1の面18および第2の反対側の面19を有する第2層構造17を含む。いくつかの第2感知電極20は、第2層構造17の第1の面18上に配置されている。各第2感知電極20は、第2の方向yに延びており(すなわち、等価的に細長くなっている)、第2感知電極20同士は、第1の方向xにおいて互いに離間している。
【0054】
第2層構造17は、一又は複数の誘電体層21を含んでいる。各誘電体層21は、ほぼ平面状であり、厚さ方向zに垂直な第1のx方向及び第2のy方向に延びている。第2層構造17の各誘電体層21の厚さ方向zが第1及び第2の面18、19に対して垂直となるように、第2層構造17の一又は複数の誘電体層21は、第2層構造17の第1及び第2の面18、19の間に配置されている。
【0055】
好ましくは、圧電材料層16は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリ乳酸のような圧電ポリマーを含むか、あるいは、このような圧電ポリマーから形成されている。しかしながら、圧電材料層16は、代わりに、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電セラミック層であってもよい。好ましくは、第1及び第2感知電極14、20、並びに共通電極15は、銀ナノワイヤから形成されている。しかし、第1及び第2感知電極14、20、並びに共通電極15は、代わりに、酸化インジウム錫(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)のような透明導電性酸化物で形成されてもよい。第1及び第2感知電極14、20、並びに共通電極15は、アルミニウム、銅、銀、又は薄膜としての堆積及びパターニングに適した他の金属などの金属膜であってもよい。第1及び第2感知電極14、20、並びに共通電極15は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT / PSS)などの導電性ポリマーであってもよい。第1及び第2感知電極14、20、並びに共通電極15は、金属メッシュ、金属ナノワイヤ、グラフェン、及び/又はカーボンナノチューブから形成されてもよい。誘電体層21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリマー誘電体層又は感圧接着剤(PSA)層を含んでもよい。しかし、誘電体層21は、酸化アルミニウムのようなセラミック絶縁材料層を含んでもよい。
【0056】
第1及び第2の対向面12、13が圧電材料層16の面となるように、第1層構造11は圧電材料層16のみを含んでもよい。あるいは、第1層構造11は、第1層構造11の圧電材料層16と第1の面12との間に積層された一又は複数の誘電体層21を含んでもよい。第1層構造11は、第1層構造11の第2の面13と圧電材料層16との間に積層された一又は複数の誘電体層21を含んでいてもよい。
【0057】
第2層構造17は、第2層構造17の第1及び第2の面18、19が単一の誘電体層21の面であるように、単一の誘電体層21のみを含んでもよい。
【0058】
あるいは、第2層構造17を使用する必要はなく(図17参照)、第2感知電極20は、第1感知電極(図19)と共に第1の面12上に配置されてもよい。
【0059】
図7において、第1タッチパネル10は、x、y及びzとラベル付けされた直交軸が参照されて示されている。しかしながら、第1、第2及び厚さ方向は、右手直交セットを形成する必要はない。
【0060】
図8も参照すると、圧電圧力測定用又は静電容量結合型の圧電圧力測定用の第1の装置22が示されている。
【0061】
第1の装置22は、第1タッチパネル10と、第1回路23と、第2回路24と、制御部25とを備える。各第1及び第2感知電極14、20は、対応する導線26によって第1回路23に接続されている。共通電極15は、第2回路24に接続されている。
【0062】
第1回路23は、第1及び第2感知電極14、20から信号を受信し、かつ/あるいは、第1及び第2感知電極14、20に信号を送信する。第1回路23は、第1圧電圧力信号29を測定する。第1回路23は、各第1及び第2感知電極14、20の一群又は個々に接続可能である。各第1圧電圧力信号29は、一又は複数の第1又は第2感知電極14、20に対応しており、各第1圧電圧力信号29は、タッチパネル10において各第1又は第2感知電極14、20に近接する箇所に作用する圧力を示している。例えば、第1回路は、各第1感知電極14に対応する第1圧電圧力信号29及び各第2感知電極20に対応する第1圧電圧力信号29を測定又は生成してもよい。あるいは、各第1圧電圧力信号29は、1対の隣接する第1又は第2感知電極14、20などに対応してもよい。各感知電極14、20は、1つの第1圧電圧力信号29を提供することになる。
【0063】
任意選択で、第1回路23は、第1及び第2感知電極14、20の各交点28に対応する相互静電容量信号27を測定してもよい。他の例では、第1回路23は、代わりに、各第1及び第2感知電極14、20に対応する自己静電容量信号を測定してもよい。第1回路23は、静電容量信号27と第1圧電圧力信号29とを同時に測定してもよい。あるいは、第1回路23は、静電容量信号27と第1圧電圧力信号29とを交互に測定してもよい。
【0064】
例えば、第1回路23は、その全体の内容が参照によりここに組み込まれるWO2016/102975A2に記載されているように、静電容量結合型の圧電圧力測定用に構成される場合がある。特に、第1回路23は、WO2016/102975A2の図21から図26に示される例に関して説明されているように構成されてもよい。あるいは、第1回路23は、その全体の内容が参照によりここに組み込まれるWO2017/109455A1に記載されているように、静電容量結合型の圧電圧力測定用に構成される場合がある。特に、第1回路23は、WO2017/109455A1の図4から図21に示される例に関する説明のように構成されてもよい。他の例では、第1回路23は、特に図15から図20を参照して以下に説明されるように構成されてもよい。
【0065】
しかしながら、本明細書の方法は、これらの例に限定されず、前述の機能を提供することができる第1回路23であればいずれについても適用可能である。
【0066】
第2回路24は、共通電極15に対応する第2圧電圧力信号30を測定する。第2圧電信号30は、タッチパネル10に加えられた全圧力を示すはずである。複数の共通電極15が使用されるとき、第2圧電信号30は、各共通電極15に対応して生成されてから制御装置25によって合算されてもよい。あるいは、複数の共通電極15が使用されるとき、第2回路24は、全ての共通電極15上に誘導された電荷をもとにして単一の第2圧電信号30を生成してもよい。理想的な条件下でかつ外部干渉がない場合、第2圧電圧力信号30と第1圧電信号29との合計はほぼゼロ(測定誤差まで)になるはずである。なぜなら、感知電極14、20及び共通電極15は、圧電材料層16に引き起こされた分極の両側に配置されるためである。
【0067】
圧電圧力信号29、30、及び任意選択で静電容量信号27は、第1タッチパネル10とのユーザインタラクション、あるいは、第1タッチパネル10を覆う材料層とのユーザインタラクションに応じて生成される。以下の説明では、「ユーザインタラクション」への言及は、ユーザーがタッチパネル10又は上に重なる材料層へのタッチ又はプレスを含むと解釈されるべきである。「ユーザインタラクション」という用語は、ユーザーの指又はスタイラス(導電性かどうかに関係なく)が関わる相互作用を含むと解釈されるべきである。「ユーザインタラクション」という用語はまた、タッチセンサ又はタッチパネルに対して物理的に直接接触していない(すなわち、加えられる圧力が、ゼロであるか、あるいは、無視できる)が近接しているユーザーの指又は導電性であるスタイラスを含むと解釈されるものとする。
【0068】
制御装置25は、第1及び第2圧電圧力信号29、30を受け取り、それらを合計して外部干渉信号32を生成する。外部干渉信号32は、重み付けされていない第1及び第2圧電圧力信号29、30に対する単純な合計であってもよく、あるいは、外部干渉信号32は、第1及び第2圧電圧力信号29、30の加重和であってもよい。制御装置25は、外部干渉信号32を予め較正された閾値(例えばVthresh)と比較するようにも構成されている。制御装置25は、予め較正された閾値以上である外部干渉信号32に応じて、第1及び第2圧力信号29、30が一又は複数の外部電界への結合によって影響されたことを示す干渉フラグIntflagを出力するようにも構成されている。干渉フラグIntflagは、第1の装置22を組み込んでいる機器(図示せず)を制御するプロセッサ(図示せず)に出力されてもよい。任意選択で、外部干渉信号32は、外部干渉の大きさを示すためにプロセッサ(図示せず)に出力してもよい。さらなる例としては、外部干渉信号32はプロセッサ(図示せず)に出力されてもよく、プロセッサ(図示せず)は上述した比較を実行して干渉フラグIntflagを生成してもよい。制御装置25は、未処理の第1及び/又は第2圧電圧力信号29、30をプロセッサ(図示せず)にさらに中継し、プロセッサ(図示せず)は、第1の装置22を組み込んでいる機器(図示せず)を操作する。
【0069】
いくつかの例では、制御装置25ではなくプロセッサ(図示せず)が単に第1及び第2圧力信号29、30をプロセッサ(図示せず)に出力してもよく、プロセッサ(図示せず)が外部干渉信号32を測定してもよい。いくつかの例では、制御装置25は、第1及び第2圧力信号29、30に基づいてタッチ位置データ31を特定してもよい。タッチ位置データ31は、一又は複数のユーザインタラクションの位置、例えばx、y座標を示している。タッチ位置データ31は、第1の装置22を組み込んでいる機器(図示せず)を操作するプロセッサ(図示せず)に出力される。
【0070】
測定が行われると、制御装置25は、静電容量信号27を受信し、第1の装置22を組み込んでいる機器(図示せず)を操作するプロセッサ(図示せず)に静電容量信号27を中継するか、あるいは、静電容量値27のさらなる処理を実行する。例えば、制御装置25は、静電容量値27を処理して、第1の装置22を組み込んでいる機器(図示せず)を操作するプロセッサ(図示せず)に出力するためのタッチ位置データ31を生成してもよい。静電容量信号27は、第1及び第2圧力信号29、30単独よりもタッチ位置データ31のより正確な特定を可能にすることができる。
【0071】
外部電界への結合の存在及び/又は程度を検出する方法
図9及び図10も参照して、圧電圧力測定中に外部電界への結合の存在及び/又は程度を検出する方法を説明する。
【0072】
対象物33、例えば、ユーザーの指は、タッチパネル10に近接又は接触しており、静電帯電によって、あるいは、電磁干渉源Vintのアンテナとして機能することによって、電位Vintに帯電してもよい。対象物33と、感知電極14、20及び共通電極15の全てによる全体の集合体との間には、静電容量結合Cextが存在する。総静電荷QESは、感知電極14、20及び共通電極20の全てによる全体の集合体中に誘導され、QES=CextVintとして近似される。ユーザーがタッチパネル10に対して自分の指及び/又はスタイラスを動かすにつれて正確な幾何学的配置が絶えず変化するし、さらには異なるユーザー間及び同一ユーザーの異なる指間でも幾何学的配置は異なるため、実際にはCextを較正することができなくなる場合があることに注意すべきである。さらに、Vintは、一般的な方法では測定することができない場合がある。しかしながら、Cext及び/又はVintの測定又は推定は、外部電界への結合の存在及び/又は程度を検出する方法には必要ではない。
【0073】
この方法は、電極14、15、20に誘導された未知の総静電荷QESが、電極14、15、20のそれぞれに誘導された個々の静電荷の合計から構成されるという前提に基づいている。
【0074】
以下においては、M個の第1感知電極14のうちのm番目をymと代わりに表記する場合があり、N個の第2感知電極20のうちのn番目をxnと代わりに表記する場合がある。対象物33によってN個の第2感知電極20のn番目xnに誘導された静電荷をSxnなどと表すと、対象物33によってM個の第1感知電極14のm番目ymに誘導された静電荷はSymなどと表され、かつ、対象物33によって対向電極15上に誘導された静電荷はSCEと表され、そして、総静電荷QESは次のように近似されてもよい。
圧電材料層16の分極が共通電極15と感知電極xn、ymとの間に誘導されたると、感知電極xn、ymに誘導された電荷は、共通電極15に誘導された電荷と反対の極性を有する。すなわち、対象物33への外部結合は、システム接地又はコモンモード電圧とすべての電極xn、ym、15による全体の集合体との間において電荷の流れを誘導し、一方、圧電材料層16の分極は、対向電極15と感知電極xn、ymとの間において電荷の流れを誘導する。前述のように、1つの結論は、圧電材料層16の分極によって電荷が誘導されると、この電荷の合計は、ゼロになるか、少なくとも測定誤差内になると予想される、ということである。
【0075】
圧電材料層16の分極PによってN個の第2感知電極のn番目xnに誘導される圧電電荷がFxn等と表記され、圧電材料層16の分極によってM個の第1感知電極のm番目yn に誘導される圧電電荷がFym等と表記され、そして、圧電材料層16の分極によって対向電極15上に誘導される圧電電荷がFCEと表されると、その時、総誘導圧電電荷QPTは次のように近似されてもよい。
対向電極15上に圧電電荷FCEが誘導されると、タッチパネル10に加えられた全ての力は良好に測定され得ることに留意されたい。
【0076】
特に図10を参照すると、N個の第2感知電極20のn番目xnに誘導される電荷は、次のように表されてもよい。
同様に、M個の第1感知電極14のm番目ymに誘導される電荷は、次のように記述されてもよい。
そして、対向電極15に誘導された電荷は、次のように記述されてもよい。
外部電界への結合の存在及び/又は程度を検出する方法では、すべての感知電極xn、ymで測定された電荷Qxn、Qymが共通電極15で測定された電荷SCEと合計されて次の式が生み出される。
ここで、Qextは、共通電極15と全ての感知電極xn, ymによって測定された全電荷の合計である。外部干渉信号32は、合計Qextに対応するか関連してもよい。式(6)及び(7)を参照すると、理想的な条件下では、式(11)の第1の括弧で囲まれた項は総静電荷QESに等しく、式(11)の第2の括弧で囲まれた項はゼロに等しい。実際、非理想的な条件下においては、外部干渉信号32であるQextは、やはり総静電荷QESに次のように近似されてもよい。
実際には、N個の第2感知電極20のn番目xnに対応する電圧出力がVxnであってQxnなどに関連しているとするように、電荷Qxn、Qym、QCEは、電荷増幅器34を使用して検出されてもよい。通常、電荷増幅器34が入力電流を積分するであろう。例えば、N個の第2感知電極のn番目xnの電流がIxnであれば、その時、時間tにおけるN個の第2感知電極のn番目xnの電圧Vxnは、理想的な条件下では次のように表されてもよい。
ここで、Gxnは、N個の第2感知電極xnに接続されたN個の電荷増幅器34のn番目の利得であり、τは、積分変数である。同様に、M個の第1感知電極のm番目ym の電圧は、次のように表されてもよい。
ここで、Gymは、M個の第1感知電極ynに接続されたM個の電荷増幅器34のm番目の利得であり、Iymは、M個の第1感知電極のm番目ymの電流であり、τは、積分変数である。同様に、共通電極15の電圧は次のように表されてもよい。
ここで、GCEは共通電極15に接続された電荷増幅器34の利得であり、ICEは共通電極15上の電流であり、そしてτは積分変数である。外部干渉信号32は、この例においてはVextと表記されており、全ての電荷増幅器34の信号の合計として近似されてもよい。
Gxn≒Gym≒GCE≒Gであるように利得が全て実質的に等しい場合、電圧Vextに関する外部干渉信号32は、電荷Qextに関する外部干渉信号32の単純な倍数、すなわちVext≒G・Qextとして表されてもよい。しかしながら、実際には、電荷増幅器34の利得Gxn、Gym、GCEは同一ではない。さらに、各電荷増幅器34においては、実際には、電圧出力における低周波数成分及びDC成分の時間依存減衰(適宜「ロールオフ」とも呼ばれる)に加えて、DCオフセット及びドリフトが生じる。
【0077】
したがって、実際面では、外部干渉信号32は、干渉源Vintによって誘導された電荷QESの測定値にノイズ項を加えたものに対応したものとしてみなされてもよい。
ここで、GTは電荷増幅器34の総合利得に関する定数であり、εは前述の様々な原因から生じる瞬間的な誤差又はノイズを表す項目である。ノイズ項εは、主に、個々の電荷増幅器34の利得Gxn, Gym, GCE同士のわずかな不均衡のために相殺されなかった圧力信号の残留成分から主に構成されると考えられる。定数GTの値は、較正されてもよいが較正される必要はない。必要とされるのは適切な閾値Vthreshを決定することだけであり、それを超えると、外部干渉信号32であるVextが干渉源Vintの影響を検出していることが確実に特定することができる。
【0078】
例えば、タッチパネル10は、遮蔽された入れ物内において、非導電性であるスタイラス又は同等の対象物33を用いて力が入力される領域に配置されてもよい。このような状況下では、外部から誘導される総電荷QESがほぼゼロになるはずであるため、式(17)は次のようになる。
加えられた力の適切な範囲、例えば0.5N~10Nの間にわたる適切な長さの信号を記録した後、適切な閾値Vthreshが、εの測定値に基づいて決定される場合がある。閾値Vthreshは、記録されたεの最大絶対値の倍数として設定されてもよい。例えば、Vthresh = 1.5×max(|ε|)又はVthresh = 2×max(|ε|)などである。
【0079】
あるいは、εの測定値に基づいて標準誤差σεが算出されてもよく、閾値電圧Vthreshは標準誤差σεの倍数に設定されてもよい。例えば、Vthresh=3×σε又はVthresh=5×σεである。
【0080】
使用中、制御装置25は、電荷増幅器出力VCE, Vxn, Vymにわたる和として外部干渉信号32であるVextを取得してもよく、Vextを予め較正された閾値Vthreshと比較してもよい。外部干渉信号32の振幅が閾値Vthreshよりも小さい場合、すなわち、|Vext|<Vthreshの場合、圧電圧力信号29、30は、外部干渉源Vintによって大きく影響されたものである可能性は低い。この場合、干渉フラグIntflagは、未設定のままであるか、「偽」又はゼロなどの値に設定される。しかしながら、外部干渉信号32の振幅が閾値Vthresh以上である場合、すなわち、|Vext|≧Vthreshであると、圧電圧力信号29、30は、おそらく外部干渉源Vintによって影響されているものである。この場合、干渉フラグIntflagは、例えば、「真」、1(unity)などの適切な値で設定される。
【0081】
第1及び第2圧電圧力信号29、30における外部電気干渉の存在及び/又は程度を特定する機能は、外部干渉源Vintの影響を低減又は除去するための適切な後処理方法の適用を可能にすることができる。
【0082】
いくつかの例では、すべての電荷増幅器34の出力Vxn, Vym, VCE に対する単純な非加重和(unweighted sum)よりも、出力Vxn, Vym, VCE に対する加重和として外部干渉信号32を計算することが有利である場合がある。例えば、重み付き外部干渉信号32であるV'extは、次の式に従って決められてもよい。
ここで、AxnはGT/Gxnに対応する定数であり、AymはGT/Gymに対応する定数であり、ACEはGT/GCEに対応する定数であり、ε'はノイズ低減信号である。また、重み付け係数Axn、Aym、ACEが適切に較正された式(16)もまた参照すると、重み付けされた外部干渉信号32であるV'extは、電荷増幅器34の利得Gxn、Gym、GCEのあらゆる変動からの影響を受けにくくなり得る。重み付け係数Axn、Aym、ACEのすべてが等しい、すなわちAxn = Aym = ACEであるとき、式(17)が式(19)の特別な場合に対応することは明らかである。
【0083】
外部の電気的ノイズを低減又は除去する後処理の例
本明細書の主題は、外部電界への結合の存在及び/又は程度、例えば外部干渉源Vintからの干渉を測定する方法である。外部電界への結合の存在がいったん検出されると、例えば外部干渉源Vintの影響による結果を低減又は除去するために使用される後処理の種類は、特に限定されない。任意の適切な後処理を使用することができる。しかしながら、外部電界への結合の存在及び/又は程度を特定する既述の方法の有用性を説明することを助けるために、適切な後処理方法の具体的かつ非限定的な例を検討することは有用である場合がある。
【0084】
圧電式又は静電容量結合型圧電式の感知用のタッチパネル10においては、加えられた力の作用は、一般的には、少なくともある程度まで感知電極14、20のすべてによって検出される。これは、タッチパネル10がカバーレンズ(不図示)を含んでおりカバーレンズが多くの場合堅いガラスであること、圧電材料層16のほぼすべての部分が面内伸縮を行うようにタッチパネル10がまとまって曲がること、に起因すると考えられる。最大歪み及び最大圧電圧力信号29は、タッチパネル10上の機械的境界面の状態に依存するものであるため、ユーザインタラクションの位置の真下で生成される必要はないことに留意すべきである。
【0085】
例えば、図11も参照すると、N=21における第2感知電極20(x1~x21)の16番目の上方に直接力が加えられた結果として理想的な基礎圧力信号値35の視覚的説明図が示されている。
【0086】
単に例示の目的のために、基礎圧力信号値35は、両端(x1、x21)のいずれかで単純に支持されているオイラー梁としてモデル化されたタッチパネル10の歪みに比例するように表されている。基礎圧力信号値35は、外部電界からの干渉がない時に測定されるかもしれない値を表している。実際には、タッチパネル10の歪みは、実質的にさらに複雑なプレート歪み問題に当たるであろう。しかしながら、図11の例証は、ユーザインタラクションの位置が第1圧力信号29の最大値に対応する必要がないことを視覚化するのを助けるのに役立つ。一般に、第1及び第2感知電極14、20の一群又は全部からの圧力信号29は、一又は複数のユーザインタラクションによって加えられた力を推測するために、関連するプレート歪み問題を反転させることに使用されてもよい。
【0087】
これに対し、感知電極14、20間の相互静電容量に対するユーザインタラクションの影響は、タッチパネル10に接触している対象物33に対して直近及び次に直近の電極14、20に集中することが多い。同様に、対象物33によって感知電極10に結合された電気的干渉は、一般的には対象物33に最も近い感知電極14、20に対して最大である。
【0088】
再び図11を参照すると、測定された圧力信号値36は、対象物33が第1及び第2感知電極14、20に結合する結果として、力の作用点に近い基礎圧力信号値35からずれる場合がある。例えば、この例では、測定値V16は、ユーザインタラクションに直近の第2感知電極20のx16に対応しており、対象物33によって結合された外部干渉によって強く影響を受けた可能性がある。値V15、V17は、次に直近の第2感知電極20であるx15、x17に対応しており、対象物33によって結合されたいずれかの外部干渉によって著しく影響を受けた可能性もある。このような局所的なずれは、外部電界との結合によって引き起こされて誤差を引き起こす場合がある。例えば、測定された圧力信号値36に基づく近似プロセスが、基礎となる値35からずれ、それによって一又は複数のユーザインタラクションによって加えられる力の不正確な再構成をもたらす場合がある。図11では、測定された圧力信号値36への多項式最適近似線37(3次、破線)を使用した近似の例は、基礎となる圧力信号値35から著しく歪んで離れている、と認められ得る。このずれは主に、外部電界、例えば対象物33に結合された干渉源Vintとの結合によって最も影響を受ける値V15、V16、V17による結果として生じる。
【0089】
しかしながら、測定された圧力信号値36が外部干渉に結合されたかを特定するために本明細書の方法が採用される場合、外部干渉の影響を低減又は除去するために後処理方法が採用され得る。
【0090】
例えば、図12も参照すると、1つの単純で非限定的な例において、上述した直近のV16及び次に直近のV15、V17の測定値は、外部電界への結合の検出に応じて、すなわち、干渉フラグ Intflagが「真」や1(unity)などの値で設定された時に、単純に除外されてもよい。たとえば、Vext≧Vthreshの時である。
【0091】
直近のV16および次に直近のV15、V17の測定値が除外されると、多項式最適近似線37(3次、破線)は、基礎となる圧力信号値35とよりよく一致することを示すことが観測され得る。どのような関数の形態において近似又は補間を行っても同様の効果が予測されるだろう。
【0092】
この方法において、外部電界への結合の検出がないとき(すなわち、干渉フラグIntflagが、設定されていないか、または、「偽」、ゼロなどの値を有するとき)、加えられた圧力/力をできるだけ正確に測定するために、すべての測定圧力信号値36が、タッチパネル10の歪みに関する最も正確な近似を特定するために使用されてもよい。しかしながら、本明細書の方法が外部干渉源Vintとの結合を検出するとき、例えば、Vext≧Vthreshのとき(すなわち、干渉フラグIngflagが「真」、1などの値で設定されるとき)、外部干渉の影響を低減又は除去するために、最も影響を受ける値が除外されてもよい。
【0093】
図11及び図12を参照して図示及び説明された前述の例は、本明細書の方法を使用して外部干渉の存在及び/又は程度を単純かつ確実に特定できることの技術的重要性を説明するためだけに提供されている。
【0094】
さらなる例では、除外されていない測定圧力信号値36への近似を使用して、一又は複数の除外された測定圧力信号値36に対する置換値を補間または外挿してもよい。
【0095】
実験データ
図13も参照すると、感知電極xn、ym及び共通電極15上に外部から誘導された電荷を示す実験データが示されている。
【0096】
第1電圧信号38(実線)は、共通電極15について測定された電荷増幅器34の出力に対応する。第2電圧信号39(破線)は、感知電極xn、ymについて測定された電荷増幅器の出力に対応する。図13に示される信号38、39は対象物33を使用して得られたものであり、対象物33は、静電電位に帯電した指の形状であり、かつ、タッチパネル10にほぼ接触するように保持されている。圧力は、タッチパネル10にはかけられていない。
【0097】
図13では、第1および第2電圧信号38、39は対応する符号を有する(すなわち、信号は所与の時間に実質的に同じ極性を有する)ことが観測される場合がある。
【0098】
図14も参照すると、感知電極xn、ym及び共通電極上の圧電誘導電荷を示す実験データが示されている。
【0099】
第1及び第2電圧信号38、39は、図13と同様に、それぞれ共通電極15及び感知電極xn、ymに対応する。しかしながら、図14に示されるデータは、外部電界からのノイズが実質的にない圧電圧力信号を生成するために、非導電性対象物を用いてタッチパネル10をタップすることに応じて取得されたものである。
【0100】
図14では、第1及び第2電圧信号38、39は反対の符号を有する(すなわち、これら信号は所与の時間に実質的に反対の極性を有する)ことが認められ得る。
【0101】
観測された極性は、図の38、39のどちらの場合でも、理想的な場合と正確には一致せず、DCオフセットの小さな変動やその他の測定エラーの所産であると考えられる。
【0102】
第2の装置
静電容量結合型感圧装置は、WO2016/102975A2に記載されており、特にこの文献の図22から図26において言及されている。
【0103】
第2の装置40(本明細書の図15)の理解を助けるために、WO2016/102975A2に記載されているように、静電容量結合型感圧装置の動作を簡単に検討することは有用であるであろう。以下の説明は、本明細書の第1タッチパネル10の構造を参照して行われる。
【0104】
圧電材料層16は分極されている。その結果、ユーザインタラクションによって加えられた圧力は、圧電材料層16の分極を誘導する歪みを引き起こす。圧電材料層16の分極は、厚さ方向に成分E z を有する誘導電界E p をもたらす。分極を生じさせる変形は、圧縮又は伸張から生じる場合がある。分極を生じさせる上記変形は、主に、ユーザインタラクションにより加えられた圧力に応じた圧電材料層16における面内ひずみであってもよい。
【0105】
誘導電界E p は、共通電極15と感知電極14、20のいずれか一方との間に電位差を生じさせる。電子は、誘導電界E p が電極14、15、20の帯電によって生じる電界E q によって相殺されるまで、電極14、15、20上において、あるいは、電極14、15、20から離れて流れる。すなわち、電界E q は電荷Fxn、Fym、FCEから生じる。
【0106】
タッチパネル10が静電容量結合型感圧用に使用される場合、感知電極14、20から受信された信号は、一般に、圧電信号圧力信号と印加又は感知された静電容量測定信号との重ね合わせの形をとる。静電容量結合型感圧装置は、WO2016 / 102975A2に記載されているように、特に図22-図26において言及されているように、第1及び第2の周波数依存フィルタ(図示せず)を用いて動作し、感知電極14、20から受信した信号を、静電容量情報を含む第1成分と圧電圧力情報を含む第2成分とに分離する。第1及び第2周波数依存フィルタ(図示せず)は、物理フィルタであってもよく、または、デジタル信号処理中に適用されるものであってもよい。これが可能な理由は、互いに異なっていて分離可能な周波数成分を圧電圧力信号と静電容量測定信号とが一般的に有することである。
【0107】
例えば、1対の感知電極14、20間の相互静電容量は、一般的には0.1pF以上3000pF未満又はそれ以上であり、好ましくは100pF以上2500pF以下の範囲内に入ってもよい。この範囲の静電容量に効果的に結合するために、静電容量測定信号は、通常、10kHzもしくは10kHz以上、20kHzもしくは20kHz以上、50kHzもしくは50kHz以上、または、100kHzもしくは100kHz以上の基本周波数を有してもよい。これに対し、圧電圧力信号は、一般的には数Hzから数百又は数千Hzの範囲にわたる広帯域周波数成分を含む。これは、少なくとも部分的には、圧電圧力信号が人間であるユーザーによるユーザインタラクションから生じるためである。
【0108】
図15も参照すると、静電容量結合型の差動圧電圧力測定用の第2の装置40が示されている。
【0109】
WO2016/102975A2に記載されている装置では、第1及び第2周波数依存フィルタ(図示せず)は、例えば制御装置により、フロントエンドモジュールの一部としてハードウェアで、または、デジタル領域で実装されている。これに対し、本明細書の第2の装置40は、第1サンプリング周波数fpiezoにて静電容量測定信号42と同期されたアナログデジタル変換器(ADC)41a、41bを使用して、第1圧電圧力信号29を選択する第1周波数依存フィルタを実装する。第2の装置40は、静電容量信号27を取得するためにデジタル領域で第2周波数依存フィルタを実装する。例えば、デジタルハイパスフィルタを適用することによるか、または、第1圧電圧力信号29のより新しい一又は複数のサンプル値を用いて基線(baseline)を提供することによる。
【0110】
第2の装置40は、静電容量結合型の差動圧力感知用の第1タッチパネル10とタッチ制御装置43とを含む。第2の装置40は、例えば携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータなどの電子機器(図示せず)に組み込まれてもよい。第1タッチパネル10は、電子機器(図示せず)のディスプレイ(図示せず)を覆うように接着されてもよい。この場合、第1タッチパネル10の材料は実質的に透明であるべきである。カバーレンズ(図示せず)が第1タッチパネル10を覆って接着されてもよい。カバーレンズ(図示せず)は、好ましくはガラスであるが、いかなる透明な材料であってもよい。
【0111】
タッチ制御装置43は、制御装置25を含む。タッチ制御装置43はまた、一対の増幅器モジュール44a、44b、一対のマルチプレクサ45a、45b、一対の一次ADC41a、41b及び一対の二次ADC46a、46bを含む第1回路23を含んでいる。タッチ制御装置はまた、共通電極電荷増幅器47及び共通電極ADC48を含む第2回路24を含んでいる。制御装置25は、リンク49を使用している電子機器(図示せず)の一又は複数のプロセッサ(図示せず)と通信してもよい。制御装置25は、駆動静電容量測定信号42であるVsig(t)(図16、以下では簡潔に「駆動信号」とも呼ばれる)を増幅器モジュール44a、44bの一方又は両方に提供するための信号源(図示せず)を含んでいる。
【0112】
第2の装置40は次の例を参照して説明される。第1感知電極14が送信側であるTx電極であり、かつ、第2感知電極20が受信側であるRx電極であるように、駆動信号42であるVsig(t)が第1増幅器モジュール44aに供給される。
【0113】
各増幅器モジュール44a、44bは、いくつかの単独の電荷増幅器34を含む。第1増幅器モジュール44aの各電荷増幅器34は、導線26を介して、対応する第1感知電極14に接続されている。第1増幅器モジュール44aの各電荷増幅器34の出力は、第1マルチプレクサ45aの対応する入力に接続されている。このようにして、第1マルチプレクサ45aは、指定された第1感知電極14に対応する増幅信号50aを出力してもよい。
【0114】
第1一次ADC41aは、第1マルチプレクサ45aの出力から現在指定されている第1感知電極14に対応する増幅信号50aを受信する。現在指定されている第1感知電極14に対応する増幅信号50aは、駆動信号42であるVsig(t)と圧電圧力信号29であるVpiezo(t)との重ね合わせを含む。第1一次ADC41aはまた、制御装置25から第1同期信号51a(「クロック信号」とも呼ばれる)を受信する。第1同期信号51aは、第1サンプリング周波数fpiezoにおいて、かつ、対応する駆動信号42であるVsig(t)の振幅が接地、コモンモードもしくは最小値に実質的に等しい時において、サンプルを取得するように第1一次ADC41aをトリガする。このようにして、第1一次ADC41aは、サンプリング信号の形態にある第1フィルタ信号52aを得ることができ、この第1フィルタ信号52aは、第1マルチプレクサ45aに接続された第1感知電極14によって生成される圧電圧力信号29であるVpiezo(t)にほぼ対応する。第1同期信号51aは、駆動信号42であるVsig(t)の全ての周期分のサンプルを取得するために第1一次ADC41aをトリガする必要は無く、代わりに、例えば、1周期おき、10周期毎、100周期毎などの間に、第1一次ADC41aをトリガしてサンプルを取得することができる。
【0115】
例えば、図16Aから図16Cも参照すると、第1フィルタ信号52aの形態にある圧電圧力信号29を取得する例が示されている。
【0116】
視覚に訴えることを目的として、図16Aから図16Cでは、駆動信号42であるVsig(t)及び重ね合わされた圧電圧力信号29であるVpiezo(t)においては、周波数及び振幅における不一致が実際に予想されるよりもはるかに小さくなって示されている。実際には、駆動信号42であるVsig(t)は、圧電圧力信号29であるVpiezo(t)よりも著しく大きな振幅を有すると予想され、かつ、圧電圧力信号29であるVpiezo(t)よりも数桁大きい度合いで周波数を変化させると予想される。
【0117】
特に図16Aを参照すると、基本周波数fdを有する駆動信号42であるVsig(t)の一例は、50:50のデューティ比及び1/fdの周期を有するパルス波の形態をとってもよい。この例では、第1同期信号51aは、駆動信号42であるVsig(t)が最小又はゼロである期間のほぼ中間において、第1一次ADC41aをトリガする。例えば、第1一次ADC41aは、時間t1,t2=t1+1/fd,t3=t1+2/fdなどでサンプルを取得することができる。
【0118】
特に図16Bを参照すると、第1感知電極14が送信電極Txとして作用し、かつ、第2感知電極20が受信電極Rxとして作用する場合、増幅信号50aは圧電圧力信号29であるVpiezo(t)と駆動信号42であるVsig(t)との重ね合わせとして近似されてもよい。第1同期信号51aは、増幅信号50aに対する駆動信号42であるVsig(t)の寄与が接地、コモンモード又は最小値に実質的に等しい時に、増幅信号50aのサンプルをトリガする。このようにして、実質的に圧電圧力信号29であるVpiezo(t)のみのサンプリングを得ることができる。
【0119】
特に図16Cを参照すると、第1フィルタ信号52aは、その後、時間t1、t2、t3などにおける圧電圧力信号29であるVpiezo(t)の一連のサンプリング形態をとる。
【0120】
第1二次ADC46aは、現在指定されている第1感知電極14に対応する増幅信号50aを第1マルチプレクサ45aの出力から受信する。第1二次ADC46aは、駆動信号42であるVsig(t)の基本周波数fdの少なくとも数倍であるサンプリング周波数fcapで増幅信号50aをサンプリングする。第1二次ADC46aは、デジタル化された増幅信号53aを制御装置25に出力する。制御装置25は、デジタル化された増幅信号53aを受信し、かつ、デジタルハイパスフィルタを適用してデジタル領域において第2のフィルタリングされた信号を取得する。第2のフィルタリングされた信号は、静電容量信号27に対応する。
【0121】
あるいは、圧電圧力信号29であるVpiezo(t)は、一般的には、駆動信号42であるVsig(t)の基本周波数fdよりも数桁低い周波数で変化するため、制御装置25は、第1のフィルタリングされた信号52aの最新のサンプリング値、例えばVpiezo(t3)を追加のオフセットとして扱い、かつ、この値をデジタル増幅信号53aから減算してもよい。より正確な基線補正、例えば、第1のフィルタリングされた信号52aの最新の2つのサンプリング値に基づく線形補間、または、第1のフィルタリングされた信号52aの3つの最新のサンプリング値に基づく二次補間、が用いられてもよい。
【0122】
一次及び二次ADC41a、46aは同じであってもよい。しかしながら、一次及び二次ADC41a、46aが異なることは有利である場合がある。特に、一次ADC41aは、駆動信号Vsig(t)に対応するより大きな振幅を測定する必要なしに、圧電圧力信号29であるVpiezo(t)のダイナミックレンジ用に最適化されてもよい。さらに、第1サンプリング周波数fpizeoは最大でも静電容量測定信号42であるVsig(t)の基本周波数fdに等しくなければならないので、二次ADC46aと比較して一次ADC41aにはより低い帯域幅が必要とされる。コスト重視の用途では、これにより、一次ADC41a用のより安価なADCの使用が可能になる。これに対し、性能重視の用途では、これにより、同じダイナミックレンジ内でより多くの信号レベルを区別することを可能とする高精度ADCを使用することが可能になる(16ビットADCは、一般的には他の要件が同じなら8ビットADCよりも遅い)。
【0123】
第2感知電極20からの信号の処理は、第1感知電極14からの信号の処理と同様であるが、しかし、第2感知電極20が受信側であるRx電極であるので、第2一次ADC41bに対する第2同期信号51bは第1同期信号51aに対してオフセットされてもよい。
【0124】
第2増幅器モジュール44bの各電荷増幅器34は、対応する第2感知電極20に導線26を介して接続され、第2増幅器モジュール44bの各電荷増幅器34の出力は、第2マルチプレクサ45bの対応する入力に接続される。このようにして、第2マルチプレクサ45bは、指定された第2感知電極20に対応する増幅信号50bを出力してもよい。
【0125】
現在指定されている第2感知電極20に対応する増幅信号50bは、受信静電容量測定信号(図示せず)Vmeas(t)と圧電圧力信号29であるVpiezo(t)との重ね合わせを含む。受信容量測定信号Vmeas(t)(以下、簡潔に「受信信号」と呼ぶ)は、指定された第2感知電極20と第1感知電極14との間の相互静電容量によって指定された第2感知電極20に結合された駆動信号42であるVsig(t)である。受信信号Vmeas(t)は、駆動信号42であるVsig(t)に関連し、かつ、駆動信号42であるVsig(t)と同様の形態を有し、特に実質的に同じ周波数成分を有する。しかしながら、受信信号Vmeas(t)は、駆動信号Vsig(t)と比較して振幅の変化及び/又は位相の変化を含んでもよい。第2一次ADC41bは、制御装置25から第2同期信号51b(「クロック信号」とも呼ばれる)を受信する。第2同期信号51bは、第2一次ADC41bをトリガしてサンプルの取得を行い、この取得は、サンプリング周波数がfpiezoであり、かつ、対応する受信信号であるVmeas(t)の振幅が接地、コモンモード又は最小値に実質的に等しい時に行う。駆動信号42であるVsig(t)の形態、及び駆動信号42であるVsig(t)と受信信号Vmeas(t)との間の一般的な位相シフトに応じて、第1及び第2同期信号51a、51bの間にいくつかの可能な関係がある。
【0126】
受信信号Vmeas(t)が駆動信号42であるVsig(t)とほぼ同相であるとき、第2同期信号51bは第1同期信号51aと同じであってもよい。第2同期信号51bは、増幅信号50bに対する受信信号Vmeas(t)の寄与が実質的に接地、コモンモード又は最小値に等しいときに増幅信号50bのサンプリングをトリガする。このようにして、実質的に、圧電圧力信号29であるVpiezo(t)のみのサンプリングを得てもよい。
【0127】
同様に、図16Aに示されるようなパルス波の形態の駆動信号42であるVsig(t)に対して、受信信号Vmeas(t)と駆動信号42であるVsig(t)との間で生ずる最大約φ±π/2の小さな位相シフトφは、第1及び第2同期信号51a、51bの間に、いかなるオフセットも必要とせずに適応される場合がある。パルス波の場合、駆動信号42であるVsig(t)及び受信信号Vmeas(t)は、それぞれの周期における半分の間、それぞれ実質的にゼロに等しいので、そのような位相シフトは許容される。
【0128】
より大きな位相シフトφまたは駆動信号42であるVsig(t)の異なる非方形波形に対して、対応するタッチパネル10について期待された/測定された静電容量の範囲内で、第2同期信号51bは、受信信号Vmeas(t)の信号レベルが低い、またはゼロの期間に第2一次ADC41bをトリガするように、第2同期信号51bは、第1同期信号51aに対してオフセットされてもよい。すなわち、第2同期信号51bは、駆動信号42であるVsig(t)の代わりに、第2一次ADC41bのサンプリングを受信信号Vmeas(t)に一致させてもよい。
【0129】
あるいは、第2同期信号51bは、受信信号Vmeas(t)の状態に応じて発生し得る。例えば、単純な比較回路は、受信信号Vmeas(t)が予め較正された範囲内の接地、コモンモード又は最小値の範囲内に降下したことに応じて、第2同期信号51bの生成に使用され得る。第2同期信号51bをトリガする回路は遅延タイマを含んでもよい。
【0130】
このようにして、第2一次ADC41bは、第2マルチプレクサ45bを介して接続された第2感知電極20によって生成された圧電圧力信号29であるVpiezo(t)にほぼ対応するサンプリング信号の形態で第2フィルタ信号52bを取得してもよい。第2同期信号51bは、駆動信号42であるVsig(t)又は測定信号Vmeas(t)の各単一周期間にサンプルを取得するために第2一次ADC41bをトリガする必要は無く、代わりに、例えば第2一次ADC41bをトリガして、例えば、1周期ごと、10周期ごと、100周期ごとなどでサンプルを取得してもよい。
【0131】
制御装置25は、第2同期信号54をマルチプレクサ45a、45b及び/又は増幅器34に提供してもよい。第2同期信号54は、制御装置25によって定められたシーケンスに従って、マルチプレクサ45a、45bに第1及び第2感知電極14、20の各組み合わせを指定させてもよい。このようにして、タッチ制御装置25は、制御装置25によって定められたシーケンスに従って、第1及び第2感知電極14、20の各対から増幅信号50a、50bを受信してもよい。このシーケンスは、予め定められてもよく、例えば、繰り返す前に、いったん第1感知電極14及び第2感知電極20の各対を選択してもよい。このシーケンスは動的に決定されてもよく、例えば、一又は複数のユーザインタラクションが検出された時に、制御装置25は、ユーザーのタッチをより速く、かつ/あるいは、より正確にトラッキングするために、検出された各ユーザインタラクション位置に隣接する第1及び第2感知電極14、20のサブセットを走査してもよい。
【0132】
共通電極電荷増幅器47は、共通電極15から信号を受け取り、かつ、共通電極増幅信号55を生成する。共通電極ADC48は、共通電極増幅信号55を受け取り、かつ、それを圧電サンプリング周波数fpiezoでサンプリングして第2圧電信号30を生成する。任意選択で、共通電極ADC48はまた、第1同期信号と同一又はオフセットが付いている場合がある第3同期信号51cによって同期されて、駆動信号42であるVsig(t)の接地、コモンモード又は最小の値、及び/又は、受信信号であるVmeas(t)の接地、コモンモード又は最小値に対応する時間に、第2圧電信号30をサンプリングする。共通電極ADC48の同期は、静電容量測定値からのクロストークを低減又は回避するのに役立ち得る。
【0133】
得られたフィルタリングされた信号52a、52bに基づいて、制御装置25は、指定された第1及び第2感知電極14、20に対応する外部干渉信号値32a、32bを計算してもよい。外部干渉信号値32a、32bは、前述の方法を使用して第1及び第2圧電圧力信号29、30に基づいて測定される。外部干渉信号値32a、32bは、リンク49を介して出力されてもよい。
【0134】
前述したように、制御装置25は、駆動信号42であるVsig(t)を第1増幅モジュール44aの各増幅器34に供給する。第1増幅器モジュール44aの各増幅器34の入力は、駆動信号42であるVsig(t)を使用して第1タッチパネル10の対応する第1感知電極14を駆動するために使用されてもよい。制御装置25によって取得されたデジタル化された第1及び第2のデジタル化された増幅信号53a、53bと駆動信号42であるVsig(t)に基づいて、制御装置25は、指定された第1及び第2感知電極14、20間の相互静電容量をもとにした静電容量値27及び/又はタッチデータ31を計算する。静電容量値27及び/又はタッチデータ31は、リンク49を介して出力されてもよい。
【0135】
図17も参照すると、第2の装置40での使用に適した電荷増幅器34a、34b、47による一つの構成の一例が示されている。
【0136】
一つの構成では、各電荷増幅器34a、34b、47は、反転入力、非反転入力、及び出力を有する演算増幅器OPを含む。
【0137】
例えば、第1増幅器モジュール44aの一部を形成する各電荷増幅器34aは、直列に接続された入力抵抗Ri及び第1スイッチSW1を介して対応する第1感知電極14に結合するための反転入力を有する演算増幅器OPを含む。演算増幅器OPの非反転入力は、駆動信号42であるVsig(t)に接続されている。駆動信号42であるVsig(t)は、制御装置25によって提供されてもよく、第2の装置40とは別のモジュール(図示せず)によって提供されてもよく、または、外部源から第2の装置40により受信されてもよい。反転入力は、実質的に非反転入力と同じ電圧になるので、反転入力に対応する第1感知電極14を駆動させることができる。電荷増幅器34aの帰還回路は、演算増幅器OPの反転入力と出力との間に並列に接続された帰還抵抗Rf、帰還静電容量Cf及び第2スイッチSW2を含む。演算増幅器OPの出力は、増幅信号50aを供給する。
【0138】
第2増幅器モジュール44bの一部を形成する各電荷増幅器34bは、演算増幅器OPの非反転入力が駆動信号42であるVsig(t)の代わりにコモンモード電圧VCMに結合され、反転入力が第1感知電極14の代わりに第2感知電極20に接続されている事を除き、第1増幅器モジュール44aの各電荷増幅器34aと同じである。
【0139】
共通電極用電荷増幅器47は、共通電極用電荷増幅器47の反転入力が共通電極15に接続され、共通電極用電荷増幅器47の第1スイッチSW1が省略されている点を除いて、第2増幅モジュール44bと同じである。
【0140】
演算増幅器OPの他端子であって動力供給端子のようなものが存在してもよいが、これら他端子は、ここに記載されている当該又は他の概略回路図には示されていない。
【0141】
第2スイッチSW2は、対応する帰還コンデンサCfの放電を可能にする。第2スイッチSW2の開閉は、制御装置25によって提供される二次同期信号54によって制御されてもよい。このようにして、各電荷増幅器34a、34bの帰還コンデンサCfは定期的に放電され、過度のドリフトを防ぐために演算増幅器OPの帰還回路をリセットしてもよい。任意選択で、共通電極電荷増幅器47の第2スイッチSW2も第2同期信号54を使用して同期されてもよい。
【0142】
第1スイッチSW1は、制御装置25によって提供される二次同期信号54によって制御されてもよく、それにより必要に応じて、増幅器34a、34bを対応する感知電極14、20に接続するか、あるいは、それらから切断することが可能になる。
【0143】
第1感知電極14は、送信側であるTx電極である必要はなく、かつ、第2感知電極20は、受信側であるRx電極である必要はない。かわりに、制御装置25は、第2感知電極20が送信側であるTx電極であり、かつ、受信信号Vmeas(t)が第1感知電極14を使用して検出されるように、駆動信号42であるVsig(t)を第2増幅器モジュール44bに提供してもよい。
【0144】
他の例では、第2の装置40は、相互静電容量測定用に構成される必要はなく、代わりに各第1及び第2感知電極14、20の自己静電容量を測定するように構成されてもよい。この場合、自己静電容量測定信号(図示せず)は、第1及び第2増幅器モジュール44a、44bの両方に供給されてもよい。
【0145】
第2タッチパネル
第1タッチパネル10では、第1及び第2感知電極14、20は、細長い長方形の電極の形態で示されている。しかしながら、他の形状が使用されてもよい。
【0146】
図18も参照すると、第1及び第2感知電極14、20の代わりの幾何学的形状を有する第2タッチパネル56が示されている。
【0147】
各第1感知電極14は、長方形であるかわりに、いくつかのパッド部57を含んでもよく、これらパッド部57は、第1の方向xにおいて等間隔に配置され、かつ、比較的狭い架橋部58によって第1の方向xにおいて互いに接続されている。同様に、各第2感知電極20はいくつかのパッド部59を含んでもよく、これらパッド部59は、第2の方向yにおいて等間隔に配置され、かつ、比較的狭い架橋部60によって第2の方向yにおいて互いに接続されている。第1感知電極14のパッド部57は、第2の方向yにおいて第1の幅W1を有する菱形であり、第1感知電極14の架橋部58は第2の方向yにおいて第2の幅W2を有する。第2感知電極20のパッド部59及び架橋部60は、第1感知電極14と同様の形状及び幅W1、W2をそれぞれ有する。
【0148】
第1及び第2感知電極14、20は、第2感知電極20の架橋部60が第1感知電極14の架橋部58を覆うように配置されている。あるいは、第1及び第2感知電極14、20は、第2感知電極20のパッド部59が第1感知電極14のパッド部57を覆うように配置されてもよい。パッド部57、59は、菱形である必要はなく、代わりに円形であってもよい。パッド部57、59は、三角形、正方形、五角形又は六角形のような正多角形であってもよい。パッド部57、59は、I字形又はZ字形であってもよい。
【0149】
第2タッチパネル56とは別の幾何学的形状であっても、第1又は第2の装置22、40と組み合わせて等しく適用可能である。
【0150】
第3タッチパネル
図19も参照すると、第3タッチパネル61は、第1又は第2の装置22、40と組み合わせて使用されてもよい。
【0151】
第3タッチパネル61は、第3タッチパネル61が第2層構造17を含まないこと、第2感知電極20が第1感知電極14に加えて第1層構造11の第1の面12に配置されていることを除いて、第1タッチパネル10と実質的に同じである。各第1感知電極14は、第1の方向xに延びる連続導電領域にある。例えば、各第1感知電極14はいくつかのパッド部62を含み、これらパッド部62は、第1の方向xにおいて等間隔に配置され、かつ、比較的狭い架橋部63によって第1の方向xに互いに接続されていてもよい。各第2感知電極20は、第2の方向yにおいて等間隔に配置された複数のパッド部64を含んでもよい。しかしながら、第2感知電極20のパッド部64は、第1層構造11の第1の面12上に配置され、第1感知電極14で散在させられており、かつ、それらによって分離されている。各第2感知電極20に対応するパッド部64は、導電性ジャンパ65によって共に接続されている。ジャンパ65はそれぞれ第1感知電極14の一部をまたいでおり、ジャンパ65は絶縁材料薄層(図示せず)によって第1感知電極14から絶縁されており、この絶縁材料薄層は、ジャンパ65と第1感知電極14との交差部の周囲の領域に局在してもよい。
【0152】
あるいは、絶縁材料薄層(図示せず)が、第1層構造11の第1の面12、第1感知電極14、及び第2感知電極20の導電パッド64を覆ってもよい。第2の方向yに延びる導線(図示せず)を誘電体層(図示せず)の上方に配置し、1つの第2感知電極20を構成しているパッド部64を各導線(図示せず)で覆ってもよい。上に重なる導線(図示せず)は、絶縁薄層(図示せず)を貫通して形成されたビア(図示せず)を使用し、各第2感知電極20を構成するパッド部64同士を接続するものであってもよい。
【0153】
修正
上記の実施形態に対して多くの修正を加えることができることは理解されよう。このような修正は、等価な他の特徴を含むものであり、これらの特徴は、圧力型及び/又は投影型の静電容量感知タッチパネルの設計、製造及び使用において既に知られており、かつ、本明細書で既に説明された特徴に代えて又は当該特徴に加えて用いられ得るものであってよい。一つの実施形態の特徴は、他の実施形態の特徴によって置換又は補足されてもよい。
【0154】
第3の装置
図20も参照すると、第3の装置69は、静電容量結合型感圧用の第1タッチパネル10と第2制御装置70とを含んでいる。
【0155】
第2制御装置70は、第2制御装置70において、第1感知電極14からの入力信号が第1マルチプレクサ45aによって単一の電荷増幅器34aに接続されていることを除いて、第1制御装置43と同じである。電荷増幅器34aは第1増幅信号50aを出力し、第1増幅信号50aは、第1制御装置43と同様に、第1一次ADC41a、第1二次ADC46a及び制御装置25によって処理されている。同様に、第2感知電極20からの入力信号は、第2マルチプレクサ45bによって単一の電荷増幅器34bに接続されている。電荷増幅器34bは第2増幅信号50bを出力し、第2増幅信号50bは、第1制御装置43と同様に、第2一次ADC41b、第2二次ADC46b及び制御装置25によって処理される。共通電極15からの信号の取得及び処理は、第2の装置40の場合と同じである。
【0156】
第1制御装置43と同様に、一次及び二次ADC41、46の使用は必須ではない。代わりとして、信号52、53を順次取得するために、圧電サンプリング周波数fpiezo及び静電容量サンプリング周波数fcapで交互に動作することができる単一のADC(図示せず)を使用できる。
【0157】
上述した例は、主に静電容量結合型圧電タッチパネル及び装置に関連して説明されたものであるが、本明細書の方法は、静電容量を測定せずに圧電圧力信号のみを測定するタッチパネル装置にも使用されてもよいことを理解されたい。
【0158】
前述の例においては第1圧電圧力信号29は対応している第1又は第2感知電極14、20のそれぞれにより生成されるが、そうである必要はない。他の例においては、2つ以上の隣接する感知電極14、20のグループからの信号は、単一の電荷増幅器34によって結合され、2つ以上の隣接する感知電極14、20のグループに誘導された電荷に対応する第1圧電圧力信号29を生成してもよい。
【0159】
前述の例は、第1及び第2感知電極14、20が垂直方向に延びているタッチパネルを参照して主に説明されてきたが、そうである必要はない。他の例では、第2感知電極20は省略されてもよく、第1感知電極は別々のタッチパネルの二次元アレイの形態をとってもよい。本明細書の第1及び第2の方法は、このような例と共に依然として使用されてもよい。
【0160】
特許請求の範囲は本出願において特徴の特定の組み合わせに対して定式化されているが、本発明の開示の範囲はまた、それがいずれかの請求項において現在請求されているのと同じ発明に関連するかどうか、そしてそれが本発明と同じ技術的問題の一部又は全部を軽減するかどうかに関わらず、本明細書に明示的又は暗黙的に開示されているいずれかの新規な特徴又は任意の新規な特徴の組み合わせ、又はその任意の一般化も含むことを理解されたい。出願人は、本出願又はそれから派生する任意のさらなる出願の審査中に、そのような特徴及び/又はそのような特徴の組合せに対して新しい請求項が定式化される場合があることをここに通知する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20