(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-28
(45)【発行日】2023-04-05
(54)【発明の名称】対基板作業機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
H05K13/02 U
(21)【出願番号】P 2019123452
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 宜裕
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157652(JP,A)
【文献】特開2009-224443(JP,A)
【文献】実開昭53-123463(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送路に沿って作業実施位置まで搬入し、搬出する基板搬送装置と、
前記作業実施位置に搬入された前記基板に所定の作業を実施する作業実施装置と、
前記基板または前記基板に類似した形状の治具板である被搬送体がオペレータによって前記搬送路に挿入されたとき、前記被搬送体を前記基板搬送装置の動作によって移動させる移動部と、
移動した前記被搬送体を検出する検出部と、
前記搬送路に対する前記被搬送体の姿勢が異常である場合に、前記基板搬送装置の動作に伴う前記被搬送体の移動を規制する規制部と、
を備える対基板作業機。
【請求項2】
前記検出部は、前記搬送路の搬入端および搬出端の少なくとも一方端の近傍に設けられて、前記基板の通過を検出する基板通過センサが兼用される、請求項1に記載の対基板作業機。
【請求項3】
前記作業実施位置に搬入された前記基板を位置決めする位置決め装置と、
前記検出部が前記被搬送体を検出しなかった場合に、前記位置決め装置の動作によって前記被搬送体の有無を確認する確認部と、
をさらに備える請求項1または2に記載の対基板作業機。
【請求項4】
前記検出部が前記被搬送体を検出した場合に、前記被搬送体の前記姿勢が正常であり、
前記検出部が前記被搬送体を検出せず、かつ前記確認部が前記被搬送体の有りを確認した場合に、前記被搬送体の前記姿勢が異常であり、
前記検出部が前記被搬送体を検出せず、かつ前記確認部が前記被搬送体の無しを確認した場合に、前記被搬送体が挿入されていない、
と判定する判定部をさらに備える請求項3記載の対基板作業機。
【請求項5】
前記搬送路は、前記基板の両方の側縁がそれぞれ載置された状態で輪転する一対の搬送ベルトと、前記搬送ベルトの上方にそれぞれ配置される一対のレールガイドの間に形成されており、
前記被搬送体の前記姿勢の異常は、前記被搬送体の一方の側縁が前記レールガイドの下側に正しく位置し、他方の側縁が前記レールガイドの上側に誤って位置した前記姿勢である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の対基板作業機。
【請求項6】
前記規制部は、前記治具板の裏面に設けられ、前記レールガイドとの摩擦力によって移動が規制される摩擦材である、請求項5に記載の対基板作業機。
【請求項7】
前記規制部は、前記レールガイドの上面に設けられ、前記被搬送体の移動を摩擦力によって規制する摩擦材である、請求項5に記載の対基板作業機。
【請求項8】
前記規制部は、前記レールガイドの上面に設けられて、前記被搬送体の移動進路を遮る凸部である、請求項5に記載の対基板作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、基板を搬入および搬出する基板搬送装置を備えた対基板作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。一般的に、部品装着機は、基板を搬送路に沿って搬入および搬出する基板搬送装置、ならびに、部品の採取および装着を行う部品装着具を備える。ここで、抜き取り検査やその他の事情により、基板がオペレータによって搬送路に挿入される場合がある。また、部品の装着位置の精度測定作業などを目的として、基板に類似した形状の治具板がオペレータによって搬送路に挿入される場合がある。搬送路における基板の姿勢に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の部品装着機は、コンベアによる基板の搬送中に基板の搬送異常が発生した場合、搬送を停止させた後、基板の姿勢を認識し、認識した基板の姿勢に基づいて、一対の搬送ベルトの一方を逆方向に走行させることにより基板の姿勢を矯正した後、搬送を再開させる。これによれば、基板の搬送異常を確実に解消して、基板の生産性を向上できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板または治具板に相当する被搬送体が基板搬送装置でなくオペレータによって搬送路に挿入されるときに、ヒューマンエラーが発生するおそれが皆無でない。仮に、被搬送体の姿勢が異常のままで対基板作業や精度測定作業が進められると、正確な作業が行われなかったり、部品装着具が誤って被搬送体に衝突したりする。
【0006】
これに対して、特許文献1の技術は、搬送路に対して基板が斜めになる軽微な異常が発生したときに、基板搬送装置の動作により異常を自動的に矯正することができる。しかしながら、ヒューマンエラーに起因する被搬送体の姿勢の異常は、多くの場合に基板搬送装置の動作では解消することができない。したがって、被搬送体の姿勢の異常を検出して作業の実施を保留し、被搬送体の姿勢を手直ししてから作業を実施することが必要となる。この問題点は、部品装着機に限定されず、基板搬送装置を備える様々な対基板作業機に共通する。
【0007】
本明細書では、オペレータによって搬送路に挿入された被搬送体の姿勢の異常を判別することができる対基板作業機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、基板を搬送路に沿って作業実施位置まで搬入し、搬出する基板搬送装置と、前記作業実施位置に搬入された前記基板に所定の作業を実施する作業実施装置と、前記基板または前記基板に類似した形状の治具板である被搬送体がオペレータによって前記搬送路に挿入されたとき、前記被搬送体を前記基板搬送装置の動作によって移動させる移動部と、移動した前記被搬送体を検出する検出部と、前記搬送路に対する前記被搬送体の姿勢が異常である場合に、前記基板搬送装置の動作に伴う前記被搬送体の移動を規制する規制部と、を備える対基板作業機を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示する対基板作業機によれば、オペレータによって搬送路に挿入された被搬送体を基板搬送装置により移動させて検出部で検出することにより、被搬送体が挿入されたことを確認できる。ここで、挿入された被搬送体の姿勢が異常である場合に、規制部は被搬送体の移動を規制するので、検出部が被搬送体を検出しないことから、被搬送体の姿勢の異常が判別される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の対基板作業機の一例である部品装着機の全体構成を示す平面図である。
【
図4】部品装着機の制御の構成を示すブロック図である。
【
図5】規制部としての摩擦材が設けられた治具板の裏面図である。
【
図6】搬送路に挿入された治具板の姿勢が正常である場合の側面図である。
【
図7】搬送路に挿入された治具板の姿勢が異常である場合の側面図である。
【
図8】
図7の状態から位置決め装置が動作した状況を示す側面図である。
【
図9】治具板が元々挿入されていない場合に位置決め装置が動作した状況を示す側面図である。
【
図10】第2実施形態において、規制部としての摩擦材が設けられたレールガイドを示す基板搬送装置の平面図である。
【
図12】第3実施形態において、規制部としての凸部が設けられたレールガイドを示す基板搬送装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.部品装着機1(対基板作業機)の全体構成
第1実施形態の対基板作業機として、
図1に示される部品装着機1を例にして説明する。部品装着機1は、部品を基板Kに装着する装着作業を実施する。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう方向がY軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、複数のフィーダ3、部品移載装置4、部品カメラ5、位置決め装置6、および制御装置7などが基台10に組み付けられて構成される。
【0012】
基板搬送装置2は、基板Kを搬送路2A(
図3参照)に沿って作業実施位置まで搬入し、搬出する。位置決め装置6は、作業実施位置に搬入された基板Kを位置決めする。
図1には、作業実施位置の基板Kが描かれている。基板搬送装置2および位置決め装置6の構成については、後で詳述する。
【0013】
複数のフィーダ3は、基台10上のパレット部材11に設けられた複数の溝形状のスロットに着脱可能に装備される。フィーダ3は、本体部31の前側にリール39が装填される。本体部31の後側寄りの上部に、部品を供給する所定の供給位置32が設定される。リール39には、多数のキャビティにそれぞれ部品を収納したキャリアテープが巻回されている。フィーダ3は、図略のテープ送り機構によりキャリアテープを間欠的に送り、部品を供給位置32にセットする。これにより、フィーダ3は、部品の供給動作を行う。
【0014】
部品移載装置4は、基板搬送装置2やフィーダ3よりも上方に配設される。部品移載装置4は、フィーダ3から部品を採取して基板Kに装着する。部品移載装置4は、ヘッド駆動機構40、移動台44、装着ヘッド45、吸着ノズル46、およびマークカメラ47などで構成される。ヘッド駆動機構40は、一対のY軸レール41、42、Y軸スライダ43、および図略の駆動モータを含んで構成される。Y軸レール41、42は、Y軸方向に延び、相互に離隔して平行配置される。X軸方向に長いY軸スライダ43は、両方のY軸レール41、42にまたがって装架され、Y軸方向に移動する。移動台44は、Y軸スライダ43に装架され、X軸方向に移動する。ヘッド駆動機構40は、Y軸スライダ43をY軸方向に駆動するとともに、Y軸スライダ43上の移動台44をX軸方向に駆動する。
【0015】
移動台44は、装着ヘッド45およびマークカメラ47を保持する。装着ヘッド45は、1本または複数本の吸着ノズル46を下側に保持するとともに、ヘッド駆動機構40に駆動されて水平二方向に移動する。吸着ノズル46は、図略の昇降駆動部に駆動されて昇降動作する。吸着ノズル46は、供給位置32の上方から下降し、負圧の供給により部品を吸着採取する吸着動作を行う。また、吸着ノズル46は、基板Kの上方に駆動され、正圧の供給により部品を装着する装着動作を行う。装着ヘッド45や吸着ノズル46は、複数種類あり、自動または手動で交換される。マークカメラ47は、位置決めされた基板Kに付設された位置マークを撮像して、基板Kの正確な作業実施位置を検出する。
【0016】
部品カメラ5は、基板搬送装置2とフィーダ3との間の基台10の上面に、上向きに設けられる。部品カメラ5は、移動台44がフィーダ3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル46が吸着している部品を撮像する。部品カメラ5の画像処理部は、取得した画像データを画像処理して部品の有無および正誤を判定し、さらに部品の吸着姿勢を取得する。画像処理の結果は、吸着ノズル46の装着動作に反映される。フィーダ3、部品移載装置4、および部品カメラ5は、部品の装着作業を実施する作業実施装置に相当する。
【0017】
制御装置7は、基台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置7は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。なお、制御装置7は、複数のCPUが機内に分散配置されて構成されてもよい。制御装置7は、予め記憶したジョブデータにしたがって、部品の装着作業を制御する。ジョブデータは、生産する基板製品の種類ごとに異なる。
【0018】
2.基板搬送装置2および位置決め装置6の構成
次に、基板搬送装置2および位置決め装置6の構成について詳述する。
図2および
図3に示されるように、基板搬送装置2は、一対の側板21、22、一対のレールガイド23、24、一対の搬送ベルト25、26、および二個の基板通過センサ27、28などで構成される。一対の側板21、22は、基台10上に平行に立設され、それぞれX軸方向に延在する。一対のレールガイド23、24は、板状であって、側板21、22の上部に水平に設けられる。一対のレールガイド23、24は、X軸方向に延在するとともに、向かい合う内側に張り出している。
【0019】
一対の搬送ベルト25、26は、レールガイド23、24と基台10の間にそれぞれ設けられる。搬送ベルト25、26とレールガイド23、24の間に、基板Kを搬送するための搬送路2Aが形成される。一対の搬送ベルト25、26は、長方形の基板Kの側縁KS、KTがそれぞれ載置された状態で輪転することにより、基板Kを搬送路2Aに沿ってX軸方向に搬送する。一対の搬送ベルト25、26は、逆方向の輪転によって基板Kを搬送逆方向に搬送することができる。
【0020】
搬送路2AのY軸方向の中央に作業実施位置が設定される。搬送路2Aの搬入端2Bの近傍に第1の基板通過センサ27が設けられる。搬送路2Aの搬出端2Cの近傍に第2の基板通過センサ28が設けられる。二個の基板通過センサ27、28として、検出光Lを投光する投光部と、検出光Lを受光する受光部とを組み合わせた遮光検出センサを例示できる。遮光検出センサは、検出光Lが基板Kによって遮られることから、基板Kの前縁KFおよび後縁KRの到来および通過を検出する。
【0021】
一方のレールガイド23は、
図3に破線で示されるように矢印M方向(Y軸方向)にスライド移動可能となっている。一方のレールガイド23がスライド移動して他方のレールガイド24から遠ざかることにより、搬送路2Aが開放される。したがって、オペレータは、搬入端2Bや搬出端2Cを経由することなく、基板Kを搬送路2Aに直接的に挿入することができる。また、オペレータは、基板Kを搬送路2Aから直接的に取り出すことができる。このようなオペレータの操作は、例えば、基板Kの抜き取り検査を行う場合に発生する。
【0022】
さらに、搬送路2Aに直接的に挿入される部材として治具板Z(
図5参照)がある。治具板Zは、基板Kに類似した長方形の形状を有する。治具板Zは、部品の装着位置の精度測定作業のために使用され、これに限定されない。以降の説明では、基板Kおよび治具板Zを含む呼称として、必要に応じ「被搬送体」を用いる。
【0023】
搬送路2Aに挿入された被搬送体は、基板搬送装置2の動作によって移動させられる。そして、二個の基板通過センサ27、28の少なくとも一方は、移動した被搬送体を検出する検出部に兼用される。第1実施形態において、搬入端2Bの近傍の基板通過センサ27が検出部に兼用される。
【0024】
位置決め装置6は、作業実施位置の下側に配置される。位置決め装置6は、装置本体61、複数のクランプロッド62、およびロッド上昇量検出部63(
図4参照)を有する。複数のクランプロッド62は、装置本体61から同期して上昇動作することにより、基板Kを突き上げてレールガイド23、24との間にクランプする。これにより、基板Kは、作業実施位置から移動しないように位置決めされる。クランプロッド62の上昇量は、ロッド上昇量検出部63によって検出される。
【0025】
3.部品装着機1の制御の構成
次に、部品装着機1の制御の構成について詳述する。
図4に示されるように、制御装置7は、基板搬送装置2の搬送ベルト25、26を制御するとともに、基板通過センサ27、28から検出信号を受け取る。また、制御装置7は、複数のフィーダ3、部品移載装置4、および部品カメラ5を制御する。また、制御装置7は、位置決め装置6のクランプロッド62を制御するとともに、ロッド上昇量検出部63から検出信号を受け取る。
【0026】
さらに、制御装置7は、被搬送体の有無および姿勢の検出に関する機能部として、移動部71、確認部72、および判定部73を含む。これらの機能部は、前述した制御装置7の制御を実行するとともに、前述した検出信号を参照する。なお、確認部72および判定部73は、省略される構成も考えられる(詳細後述)。
【0027】
移動部71は、被搬送体がオペレータによって搬送路2Aに挿入されたときに動作する。被搬送体が挿入されたことは、オペレータによって制御装置7に入力される。移動部71は、基板搬送装置2の動作によって被搬送体を移動させる。詳細には、移動部71は、搬送ベルト25、26を逆方向に輪転させ、検出部に兼用された基板通過センサ27に向かい被搬送体を搬送逆方向に移動させる。
【0028】
基板通過センサ27が被搬送体の後縁を検出すると、移動部71は、直ちに搬送ベルト25、26を停止させる。これにより、搬送路2A上における被搬送体の位置が明確化される。この後、基板搬送装置2は、被搬送体を作業実施位置まで搬送する。続いて、被搬送体が基板Kであるときには部品の装着作業が実施され、被搬送体が治具板Zであるときには精度測定作業が実施される。
【0029】
ここで、搬送ベルト25、26の逆方向の輪転の継続は、所定時間を上限とする。所定時間を経過しても、基板通過センサ27が被搬送体の後縁を検出しなかったとき、移動部71は、搬送ベルト25、26を停止させる。このとき、制御装置7は、何らかの異常が発生したと判定することができる。異常の具体例として二つのケースが考えられる。すなわち、規制部81、82(詳細後述)の作用によって姿勢異常の被搬送体が実際には移動しなかったケース、および、被搬送体が元々挿入されていない異常のケースが考えられる。
【0030】
確認部72は、基板通過センサ27が被搬送体を検出しなかった場合に、位置決め装置6の動作によって被搬送体の有無を確認する。詳細には、確認部72は、クランプロッド62を上昇駆動し、ロッド上昇量検出部63の検出信号に基づいて被搬送体の有無を確認する。
【0031】
判定部73は、基板通過センサ27の検出信号、および、確認部72の確認結果に基づいた判定を行う。詳細には、判定部73は、基板通過センサ27が被搬送体を検出した場合に、被搬送体の姿勢が正常であると判定する。また、判定部73は、基板通過センサ27が被搬送体を検出せず、かつ確認部72が被搬送体の有りを確認した場合に、被搬送体の姿勢が異常であると判定する。さらに、判定部73は、基板通過センサ27が被搬送体を検出せず、かつ確認部72が被搬送体の無しを確認した場合に、被搬送体が元々挿入されていないと判定する。
【0032】
4.規制部81、82の形態およびその作用
次に、治具板Zに設けられた規制部81、82の形態およびその作用について説明する。
図5に示されるように、治具板Zの裏面には、二条の規制部81、82が設けられている。詳述すると、規制部81、82は、それぞれ治具板Zの両方の側縁ZS、ZTの概ね全長に渡って配置されている。規制部81、82は、他の部材との間に大きな摩擦力を発生させて、治具板Zの移動を規制する摩擦材である。摩擦材として、ゴム製シートを例示でき、これに限定されない。
【0033】
オペレータが治具板Zを搬送路2Aに正しく挿入すると、
図6に示される正常状態となる。図示されるように、治具板Zの姿勢が正常である場合、治具板Zの両方の側縁ZS、ZTは、レールガイド23、24の下側に正しく位置する。このため、治具板Zの二条の規制部81、82は、それぞれ搬送ベルト25、26に載置される。したがって、移動部71が基板搬送装置2を動作させることにより、治具板Zは移動する。この結果、基板通過センサ27は、治具板Zを検出し、判定部73は、治具板Zの姿勢が正常であると判定する。
【0034】
一方、オペレータが治具板Zを搬送路2Aに挿入するときにヒューマンエラーが発生すると、
図7に示される異常状態となる。図示されるように、治具板Zの姿勢が異常である場合、治具板Zの一方の側縁ZSは、レールガイド23の下側に正しく位置するが、他方の側縁ZTは、レールガイド24の上側に誤って位置する。このため、治具板Zの他方の規制部82と、レールガイド24の上面とが接触して、大きな摩擦力が発生する。この摩擦力は、治具板Zの移動を規制する。したがって、移動部71が基板搬送装置2を動作させても、治具板Zは移動しない。この結果、基板通過センサ27は、治具板Zを検出せず、確認部72が動作を開始する。
【0035】
なお、治具板Zの一方の側縁ZSがレールガイド23の上側に誤って位置し、他方の側縁ZTがレールガイド24の下側に正しく位置するという第2の異常状態も発生し得る。さらに、治具板Zの両方の側縁ZS、ZTがレールガイド23、24の上側に誤って位置するという第3の異常状態も皆無とは言えない。第2および第3の異常状態でも、治具板Zは移動せず、確認部72が動作を開始する。
【0036】
なお、オペレータが治具板Zを挿入することなく、誤って「治具板Zを挿入した」と制御装置7に入力する入力ミスを考慮しない場合、確認部72および判定部73は不要となる。この場合、制御装置7は、基板通過センサ27が治具板Zを検出しないことから、直ちに、治具板Zの姿勢異常を判定することができる。
【0037】
上記した入力ミスを考慮する場合、制御装置7は、治具板Zの姿勢異常であるのか、それとも、治具板Zが元々挿入されていないのかを判定することができない。この場合、確認部72および判定部73が動作することで、判定が可能となる。
【0038】
確認部72は、
図8に示されるように、位置決め装置6のクランプロッド62を上昇駆動する。すると、クランプロッド62は、挿入された位置から移動していない治具板Zを突き上げ、一方の側縁ZSおよび規制部81をレールガイド23との間にクランプする。このとき、ロッド上昇量検出部63は、クランプロッド62の先端とレールガイド23、24の間の離間寸法Dを検出する。この結果、確認部72は、離間寸法Dの存在に基づいて治具板Zの有りを確認できる。判定部73は、治具板Zの姿勢が異常であると判定する。
【0039】
次に、オペレータが治具板Zを挿入することなく、誤って「治具板Zを挿入した」と制御装置7に入力した場合を想定する。この場合、移動部71が基板搬送装置2を動作させても、基板通過センサ27が治具板Zを検出することは有り得ず、確認部72が動作を開始する。すると、
図9に示されるように、クランプロッド62は、上昇してレールガイド23、24に当接する。このとき、ロッド上昇量検出部63は、離間寸法Dが存在しないことを検出する。この結果、確認部72は、離間寸法Dが存在しないことに基づいて治具板Zの無しを確認できる。判定部73は、治具板Zが元々挿入されていないと判定する。
【0040】
治具板Zの姿勢が異常である場合や治具板Zが元々挿入されていない異常の場合に、制御装置7は、異常が発生した旨の警報をオペレータに報知して、以降の精度測定作業の実施を保留する。オペレータは、搬送路2Aの治具板Zを正しい姿勢に手直しし、または治具板Zを搬送路2Aに正しく挿入し、その旨を制御装置7に入力する。すると、移動部71および判定部73が再度動作して、今回は治具板Zの姿勢が正常であることを判定できる。
【0041】
仮に、治具板Zに規制部81、82が設けられていないと、治具板Zの姿勢が異常であっても、一方の搬送ベルト25のみからの駆動によって治具板Zが移動する。このため、治具板Zの姿勢が異常のままで、精度測定作業が開始されてしまう。すると、精度測定作業が正しく実施されない。また、姿勢異常の治具板Zの搬送路2Aから上方に突出した部分に対して、移動する吸着ノズル46や吸着された部品、マークカメラ47などが衝突するおそれが発生する。
【0042】
これに対して、第1実施形態では、精度測定作業が開始される以前に、治具板Zの姿勢異常を確実に解消することができる。これにより、治具板Zを使用した精度測定作業が正しく実施される。さらに、上述した衝突のおそれは、確実に回避される。
【0043】
また、治具板Zに規制部81、82を設けたことにより、規制部81、82と搬送ベルト25、26の間に大きな摩擦力が発生する。したがって、治具板Zは、搬送ベルト25、26上を滑ることがなく、高い位置精度が維持される。加えて、位置決め装置6のクランプロッド62は、ゴム製シートからなる規制部81、82を介して、治具板Zを位置決めする。したがって、治具板Zを繰り返し使用しても、経年摩耗が抑制される。
【0044】
第1実施形態の部品装着機1によれば、オペレータによって搬送路2Aに挿入された治具板Zを基板搬送装置2により移動させて基板通過センサ27で検出することにより、治具板Zが挿入されたことを確認できる。ここで、挿入された治具板Zの姿勢が異常である場合に、規制部81、82は治具板Zの移動を規制するので、基板通過センサ27が治具板Zを検出しないことから、治具板Zの姿勢の異常が判別される。
【0045】
5.第2実施形態の規制部83、84の形態およびその作用
次に、第2実施形態では、被搬送物として基板Kおよび治具板Zのどちらも使用することができる。第2実施形態において、部品装着機1の全体構成は第1実施形態と同様であり、規制部83、84の形態が第1実施形態と相違する。
図10に示されるように、第2実施形態の規制部83、84は、一対のレールガイド23、24の上面にそれぞれ設けられている。詳述すると、規制部83、84は、レールガイド23、24の上面のうち向かい合う内側寄りに設けられ、位置決め装置6の上方から基板通過センサ27の近傍まで延在する。規制部83、84は、被搬送物との間に大きな摩擦力を発生させて、被搬送物の移動を規制する摩擦材である。摩擦材の材質は、第1実施形態と同じゴム製シートでもよいし、異なる材質でもよい。
【0046】
基板Kや治具板Zの姿勢が異常である場合、例えば
図11に示されるように、側縁KTや側縁ZTがレールガイド24の規制部84の上側に誤って位置する。このため、基板Kや治具板Zの裏面と、規制部84との間に大きな摩擦力が発生する。この摩擦力は、基板Kや治具板Zの移動を規制する。したがって、移動部71が基板搬送装置2を動作させても、基板Kや治具板Zは移動しない。以下、第1実施形態と同様の作用および効果が発生する。
【0047】
6.第3実施形態の規制部85、86の形態およびその作用
次に、第3実施形態では、被搬送物として基板Kおよび治具板Zのどちらも使用することができる。第3実施形態において、部品装着機1の全体構成は第1実施形態と同様であり、規制部85、86の形態が第1および第2実施形態と相違する。
図12に示されるように、第3実施形態の規制部85、86は、一対のレールガイド23、24の上面にそれぞれ設けられている。詳述すると、規制部85、86は、レールガイド23、24の上面の向かい合う内側のうち、基板通過センサ27よりも少しだけ作業実施位置に寄った箇所に配置される。かつ、規制部85、86は、レールガイド23、24の上面から上方に突出した凸部に形成されている。
【0048】
凸部形状の規制部85、86は、基板Kや治具板Zの移動進路を遮るために設けられる。凸部形状の規制部85、86は、上記した配置箇所が好ましく、かつ、移動進路を確実に遮ることが可能な最小の高さであることが好ましい。これにより、凸部形状の規制部85、86に対して、移動する吸着ノズル46や吸着された部品、マークカメラ47などが干渉するおそれを回避することができる。
【0049】
基板Kや治具板Zの姿勢が異常である場合、例えば
図13に示されるように、側縁KTや側縁ZTがレールガイド24の上側に誤って位置する。このため、移動部71が基板搬送装置2を動作させたとき、基板Kや治具板Zは、規制部85、86に当接するまで移動するが、基板通過センサ27には到達しない。したがって、基板通過センサ27は、基板Kや治具板Zを検出しない。以下、第1実施形態と同様の作用および効果が発生する。
【0050】
7.実施形態の応用および変形
なお、搬入側の基板通過センサ27を検出部に兼用しているが、搬出側の基板通過センサ28を検出部に兼用することも可能である。この場合、第2および第3実施形態で説明した規制部83~86の位置は、基板通過センサ28の側に変更される。また、第1~第3実施形態は、部品装着機1以外の対基板作業機、例えば、基板搬送装置2を備える半田印刷機や基板検査機に応用することができる。第1~第3実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:部品装着機 2:基板搬送装置 21、22:側板 23、24:レールガイド 25、26:搬送ベルト 27、28:基板通過センサ 2A:搬送路 4:部品移載装置 6:位置決め装置 61:装置本体 62:クランプロッド 63:ロッド上昇量検出部 7:制御装置 71:移動部 72:確認部 73:判定部 81~86:規制部 K:基板 KS、KT:側縁 Z:治具板 ZS、ZT:側縁